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特開2024-153658基板上の無機放射線パターン形成組成物の安定化界面
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153658
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】基板上の無機放射線パターン形成組成物の安定化界面
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20241022BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20241022BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20241022BHJP
   G03F 7/20 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
G03F7/11 502
B32B7/12
G03F7/11 503
G03F7/004
G03F7/004 531
G03F7/20 521
G03F7/20 501
G03F7/20 503
G03F7/20 504
G03F7/20 506
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024108182
(22)【出願日】2024-07-04
(62)【分割の表示】P 2022501217の分割
【原出願日】2020-07-10
(31)【優先権主張番号】62/873,489
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511130955
【氏名又は名称】インプリア・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Inpria Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】カーディノー,ブライアン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シュー-ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ストワーズ,ジェイソン ケイ
(72)【発明者】
【氏名】コクシス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル・デ・シェッペル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】下層コーティングを含む多層構造を使用することによる有機金属コーティング界面を安定化させる方法を提供する。
【解決手段】下層は、架橋性官能基及び接着促進官能基を有する有機ポリマーで構成され、下層組成物は光酸発生剤を含むことができる。ポリマー下層の上に配置される、アルキルスズオキソヒドロキソ組成物などの有機金属放射線感受性パターン形成組成物をベースとするパターン形成のための多層構造。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する基板と、前記基板表面の少なくとも一部の上にある下層コーティングと、前記下層コーティングの少なくとも一部の上にある放射線感受性の有機金属レジストコーティングとを含む多層構造であって、前記下層コーティングが、架橋性部分及び/又は接着促進部分を有するポリマー組成物を含む、多層構造。
【請求項2】
前記下層コーティングと前記有機金属レジストコーティングとの間の接着が放射線に対して感受性である、請求項1に記載の多層構造。
【請求項3】
前記ポリマー組成物が、側鎖架橋性部分を有する繰り返し単位、及び/又は末端鎖架橋性部分を有するポリマーを含み、前記繰り返し単位が、官能化アクリレート、官能化ビニルケトン、官能化アクリルアミド、その他の官能化ビニル若しくは非ビニル繰り返し単位、又はそれらの混合物を含み、前記架橋性部分は、ヒドロキシド、エーテル、グリシジル、エポキシド、メトキシメチル尿素、アクリレート、又はそれらの組み合わせで末端官能化することができ、前記ポリマー組成物が、溶液からの適切な膜形成特性を有する、請求項1又は請求項2に記載の多層構造。
【請求項4】
前記繰り返し単位が式(1)の構造を有し、ここで、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はCF基であり、Aは、-CO-結合、-CO-結合、又は-CONH-結合であり、Rは、エーテル、グリシジル、エポキシド、メトキシメチル尿素、アクリレート、又はそれらの組み合わせであるか、又は
前記繰り返し単位が式(2)の構造を有し、ここで、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はCF基であり、Rは、水素結合が可能な接着促進部分へのアルキル結合を含むか、又は
前記繰り返し単位が式(3)の構造を有し、ここで、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はCF基であり、Aは、-CO-結合、-CO-結合、又は-CONH-結合であり、Rは、水素結合が可能な接着促進部分へのアルキル結合を含む、
請求項3に記載の多層構造。
【請求項5】
前記繰り返し単位の5%~65%が側鎖架橋性部分を有する、請求項3に記載の多層構造。
【請求項6】
前記ポリマー組成物が架橋され、前記下層コーティングが約2nm~約40nmの平均厚さを有し、前記下層コーティングの厚さが前記平均から約25%未満で変動する、請求項1~5のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項7】
前記ポリマー組成物が、側鎖接着促進部分及び/又は末端鎖接着促進部分を有する繰り返し単位を含み、前記繰り返し単位が、官能化スチレン、官能化アクリレート、官能化ビニルケトン、官能化アクリルアミド、官能化ウレタンアクリレート、官能化フェノール樹脂、その他の官能化ビニル若しくは非ビニル繰り返し単位、又はそれらの組み合わせを含み、前記接着促進部分は、アミン、イミン、イミド、オキシム、カルボン酸アミド、カルボン酸、チオール、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、アルコール、スルホン酸、スルホン酸、スルホニウム塩、感光性部分、例えばスルホン酸スルホニウム、スルホン酸ヨードニウム、N-スルホン酸イミド、N-スルホン酸イミン、又はそれらの組み合わせで末端官能化することができ、前記ポリマー組成物が、溶液からの適切な膜形成特性を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項8】
前記接着促進部分が、水素結合が可能であり、アミン、イミン、イミド、オキシム、カルボン酸アミド、カルボン酸、チオール、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、アルコール、スルホン酸、スルホン酸、又はスルホニウム塩を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項9】
前記接着促進部分が、式(4)の構造によって表される感光性部分を含み、ここで、Xは、トリフェニルスルホニウム又はビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムである、請求項1~8のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項10】
前記接着促進部分が、式(5)の構造によって表される感光性部分を含み、ここで、Zは、式(6)の構造から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項11】
前記基板が、シリコンウエハ、シリカ基板、その他の無機材料、ポリマーシート、及びそれらの組み合わせを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項12】
無機レジストコーティングが、金属原子に対する放射線感受性配位子を有する材料を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項13】
前記放射線感受性配位子がアルキル配位子を含み、前記金属原子がスズである、請求項12に記載の多層構造。
【請求項14】
前記有機金属レジストコーティングが、式RSnO(2-z/2-x/2)(OH)(ここで、0<x<3、0<z≦2、x+z≦4であり、Rは、スズ原子と炭素結合を形成するヒドロカルビル基である)で概略的に表される酸化水酸化アルキルスズを含む、請求項12に記載の多層構造。
【請求項15】
前記有機金属レジストコーティングが1nm~50nmの平均厚さを有する、請求項12~14のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項16】
前記有機金属レジストコーティングが、放射線開裂のために金属に対してより少ない配位子を有する前記コーティングの部分でパターン形成される、請求項1~15のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項17】
極紫外光の照射によって、非照射のコーティングと比較して溶解性が変化する、請求項1~16のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項18】
極紫外光の照射によって、前記下層と前記無機レジストコーティングとの間の接着相互作用が変化する、請求項13~17のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項19】
基板と、放射線感受性の有機金属レジストコーティングとの間の接着性を改善する方法であって:
有機金属放射線感受性コーティングを、構造の表面上に堆積して、前記表面の少なくとも一部を覆うステップを含み、前記構造が、基板と、前記基板上の安定化コーティングとを含み、前記表面の少なくとも一部が、前記安定化コーティングによって形成され、前記安定化コーティングが、接着促進部分を有する架橋したポリマー組成物を含む、方法。
【請求項20】
選択されたパターンにより、ある線量の放射線を前記多層構造に露光するステップをさらに含み、前記接着促進部分が感光性部分を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記多層構造が、100mJ/cm以下の放射線線量の極紫外放射線に露光されるか、又は30kVにおいて2mC/cm以下の線量の電子ビームで露光される、請求項19又は請求項20に記載の方法。
【請求項22】
選択されたパターンにより、より低い接着力の領域と、より高い接着力の領域とが存在する、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項23】
前記堆積が蒸着を含む、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記堆積が溶液堆積を含む、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記堆積されたままのコーティングを、供給源化合物を有する雰囲気中で熱処理して、前記堆積されたままのコーティングを加水分解させて、オキソ-ヒドロキソネットワークを形成するステップをさらに含む、請求項19~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
パターン形成されたコーティング材料の形成方法であって:
多層コーティングを現像して、金属原子を含むパターン形成されたレジストコーティングの一部を除去するステップを含み、前記パターン形成されたレジストコーティングの対となる部分の少なくとも一部が、前記パターン形成されたレジストコーティングとの所望の接着相互作用を提供する接着部分を有するポリマーアンダーコーティングの上に配置される、方法。
【請求項27】
前記現像ステップが、前記パターン形成されたレジストコーティングの前記除去された部分に対応するポリマーアンダーコーティングの一部を同時に除去するステップことを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記現像ステップ後に、前記パターン形成されたレジストコーティングの前記除去された部分に対応するポリマーアンダーコーティングの一部を除去するステップをさらに含む、請求項26又は請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、“Stabilized Interfaces of Inorganic Radiation Patterning Compositions on Substrates”と題される2019年7月12日に出願されたCardineauらによる米国特許出願第62/873,489号明細書(参照により本明細書に援用される)の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、放射線を用いてコーティングへの非常に高解像度のパターン形成を可能にするための、有機金属コーティング層に接触する安定化層を含む多層構造の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体デバイスを首尾良く製造するためには、リソグラフィパターン形成、例えば堆積、光パターン形成、及びエッチングの複数の反復するステップが必要である。この反復プロセスが進行するときに、初期ステップのプロセスにおけるあらゆる欠陥又はエラーによって、十分に処理された回路の性能などの、後のステップの結果に悪影響が生じることがある。発生する欠陥又はエラーの修正又は修復は非常に困難なため、欠陥を回避することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リソグラフィによって製造されるデバイスサイズを縮小し続ける試みにおいて、非常に小さな画像の形成が可能となり得る非常に短い波長を有する極紫外光を使用するためのフォトリソグラフィシステムが開発されている。有機金属コーティングは、高解像度パターン形成の実現に適したフォトレジスト材料として有用であることが示されており、パターン形成用極紫外光のため、及びeビームパターン形成のための商業的利用に非常に有望である。有機金属レジストを十分に活用するために、商業的環境のための処理の実用的な改善を行うことで、これらの材料の十分な潜在能力が利用可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、表面を有する基板と、基板表面の少なくとも一部の上にある下層コーティングと、下層コーティングの少なくとも一部の上にある有機金属レジスト層とを含む多層構造であって、下層コーティングが、架橋性部分と接着促進部分とを有するポリマー組成物である多層構造が記載される。
【0006】
さらなる一態様では、下層コーティングと有機金属レジスト層との間の接着性を改善する方法が記載される。この方法は、構造の表面上に有機金属放射線感受性コーティングを堆積して、表面の少なくとも一部を覆うことを含み、この構造は、基板と、基板上の安定化コーティングとを含む。一般に、表面の少なくとも一部は安定化コーティングによって形成され、安定化コーティングは、接着促進部分を有する架橋したポリマー組成物を含む。
【0007】
別の一態様では、パターン形成されたコーティング材料を形成する方法が記載され、この方法は、多層コーティングを現像して、金属原子を含むパターン形成されたレジストコーティングの一部を除去することを含み、パターン形成されたレジストコーティングの対となる部分の少なくとも一部が、パターン形成されたレジストコーティングとの所望の接着相互作用を提供する接着部分を有するポリマーアンダーコーティングの上に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】有機金属レジストと下層との間の接着が不十分であるパターン形成された多層構造の側面図である。
図2】有機金属レジストと下層との間の接着が強すぎるパターン形成された多層構造の側面図である。
図3】多層構造の側面図である。
図4】潜像を有する、放射線でパターン形成された多層構造の側面図である。
図5】潜像を現像して、照射されていないフォトレジスト材料が除去されて、パターン形成された構造が形成された後の図4の構造の側面図である。
図6】非照射領域の下の下層が除去されて、パターン形成された構造が形成される図5の構造の側面図である。
図7】潜像を現像して、照射されたコーティング材料が除去されて、パターン形成された構造が形成された後の図4の構造の側面図である。
図8】非照射領域の下の下層が除去されて、パターン形成された構造が形成される図7の構造の側面図である。
図9】放射線で増強された接着領域を示す多層構造の側面図である。
図10】本開示の実施形態によるフォトリソグラフィプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
放射線感受性有機金属レジストコーティングが下層コーティング(「下層」)によって安定化され、それによって商業的設定においてより一貫した処理を行うことができる多層構造が記載される。幾つかの実施形態では、下層と、選択されたパターンによる有機金属レジストコーティングとの間の接着を制御する方法を実施することで、処理を支援することができる。特に、ネガ型パターン形成の場合、選択された増強接着パターンが、選択された放射線パターンと一致するように、下層は放射線に対して感受性であってよい。ポジ型パターン形成などの別の実施形態では、選択された低接着パターンが、選択された放射線パターンと一致するように、下層は放射線に対して感受性であってよい。したがって、本明細書に記載の方法では、多層構造を使用することによって、改善された品質を有するパターン形成された有機金属レジストコーティングが形成される。多層構造は、一般に、基板層、下層、及び有機金属レジスト層を含む。下層は、架橋可能な官能基、及び/又は安定化促進官能基を有するポリマー組成物と、小分子光酸発生剤などの他の任意選択の成分とを含むことができる。下層は、有機金属レジストコーティングを安定化させて、有機金属レジストコーティングの基板からの剥離の傾向を減少させ、及び/又は基板表面欠陥の進行を減少させる。下層によって、放射線でパターン形成された有機金属コーティングのフィーチャの改善された均一性、再現性、及び安定性を得ることもできる。
【0010】
従来のフォトレジストは、有機材料、特にポリマーで構成され、リソグラフィなどの種々の用途における使用が見出されている。したがって、商業的プロセスでこれらのレジストの効果的で効率的な使用を進めることが非常に注目されている。従来のフォトレジストでは、極紫外光を用いた非常に高解像度の処理の実現は困難であった。
【0011】
種々の用途の有機金属フォトレジスト(「レジスト」)を開発する過程において、有機金属レジストコーティングの全体及び/又は界面の性質の調整を可能にする材料及びプロセスに関して、満たされていない要求が存在することが分かった。本明細書に記載の方法及び構造は、放射線感受性有機金属レジストコーティングの改善された性能のためのレジスト層の表面及び界面の安定性を増加させるための種々の手段を提供する。本明細書に示されるように、有機金属レジストコーティングの安定性を改善するための構造及びプロセスが記載される。
【0012】
有機金属レジストによって、EUVフォトリソグラフィの微細パターン形成能力をさらに活用する能力が得られることが分かっているが、有機金属レジストは、それらが堆積される表面によってさまざまな程度の欠陥及び忠実度を示すことが明らかとなっている。例えば、高極性表面上、例えば-OHに富む表面組成物上に有機金属レジストを堆積すると、より多くのスカミングが生じる場合があることが確認されている。逆に、極性の低い表面上、例えば水酸化物基の量が少ない表面組成物上への堆積では、パターンの破壊が生じる場合があることが確認されている。したがって、適切な実施形態では、有機金属レジストと表面との間に中間層、又は下層を設けることが望ましい場合があり、それによってレジストが接触する表面の性質を選択的に制御できる。幾つかの実施形態に適切となるために、下層は、数nm~数十nm程度の厚さの非常に均一な薄層としてコーティングすることができる。
【0013】
本明細書に記載のような下層によって、スカミング、ブリッジング、線の蛇行、及び線の破壊などのパターン形成の欠陥の発生を減少させることができ、それによって、有機金属フォトレジストを用いてパターン形成されたフィーチャ及びデバイスの品質を改善することができる。したがって、商業的なプロセス設定では、多層構造を用いた処理によって、プロセス結果の再現性を改善することができ、プロセスの欠陥による製品の不合格を減少させることができる。複数のパターン形成された層を用いて複雑なパターンが形成される構造の堆積において、構造の異なる層を処理するために、異なる下層コーティングを設けることができ、特定の層のパターン形成の場合に、基板の組成に基づくと不必要であると予想される場合には、特定の層を処理するために下層が使用されない場合がある。幾つかの実施形態では、下層は、所与の線量の放射線でのレジストのエッチング速度を増加又は低下させるため、レジスト上への放射線の迷反射を防止するため、及び屈折率を調整するための手段として使用することができる。
【0014】
有機金属をベースとする放射線感受性レジストによって、特に極紫外光を用いて、非常に微細な線及び緻密なパターンの形成を実現する能力が得られる。特に、酸化水酸化アルキルスズ組成物を商業的に許容できる処理方法で使用することができる。これらの組成物の強いEUV吸収と、非常に高いエッチングコントラストを実現する能力とによって、非常に微細なパターンが形成される。また、これらの組成物は、ネガ型レジスト又はポジ型レジストのいずれかとしての機能を果たすことができる。表面上への初期の堆積の段階から、リソグラフィパターンの現像及び使用の段階まで、有機金属レジストコーティングを安定化させる下層の使用によって、有機金属レジストの魅力的な性質が高められている。特に、下層は、有機金属レジストコーティングを基板に制御可能に接着するための中間接着層として使用することができる。相互作用の強さは、下層材料の組成によって、及び選択された量及び種類の放射線を使用することによって制御することができる。このようにして、仕様による性能を実現できない製品の不良品発生率を低下させることができる、改善された有機金属レジストパターン形成を実現することができる。製品の不具合による廃棄物を減少させる能力は、商業的製造に大きな価値を付与することができる。
【0015】
小さな放射線に基づくリソグラフィフィーチャを形成するためのパターン形成は、極紫外放射線などの放射線を、パターンに基づくマスクを通して放射線感受性材料上に投影することと、現像液を用いてパターンを現像することとを含む。結果として得られるパターンの品質は、種々の要因によって決定される。本開示の目的では、第1の要因は、パターン形成前のレジストコーティングの品質である。例えば、コーティングされる表面に対する有機金属レジストの接着が十分でないと、表面からの有機金属レジスト層の意図せぬ剥離が生じることがある。パターンの品質に影響を与える第2の要因は、ある領域からはレジストが完全に除去され、別の領域のレジストは維持される能力である。例えば、フォトレジストの表面に対する接着が強すぎる場合、表面上のレジストの意図せぬ残留が生じることがある。したがって、いずれの場合でも、現像液を用いてパターンが現像されると、対応する接着関連の欠陥が現像されたパターン中に存在することがある。
【0016】
非常に小さなフィーチャのパターン形成は、最近開発された放射線感受性有機金属レジスト組成物を用いて実現されている。特に、酸化水酸化アルキルスズ組成物では、スズに関連する高いEUV吸収と、放射線によるアルキル-スズ結合の破壊後の非常に高いエッチングコントラストとに少なくとも部分的には基づいて、所望のパターン形成性能が得られる。酸化水酸化アルキルスズ組成物では、放射線露光領域が初期の現像後に残存するネガ型レジスト、又は未露光領域が初期の現像後に残存するポジ型レジストのいずれにおいても機能できるさらなる特徴が得られる。いずれの場合も、現像プロセスは、構造の残存部分を実質的に変化させない処理条件を伴うことが意図される。酸化水酸化アルキルスズ組成物の場合、ネガ型レジストのパターン形成は、未照射のレジストが溶解する有機溶媒現像剤を用いて行うことができ、ポジ型レジストのパターン形成は、照射したレジストが溶解する水性アルカリ組成物を用いて行うことができる。ネガ型処理又はポジ型処理で行うためのこの能力は、非常に小さなスケールでより一貫した均一なパターンを得るための現在の複合処理において効率的に利用される。
【0017】
有機金属放射線感受性レジストは、式RSnO(2-z/2-x/2)(OH)(ここで、0<x<3、0<z≦2、x+z≦4であり、Rは、スズ原子と炭素結合を形成するヒドロカルビル基である)で概略的に表される酸化水酸化アルキルスズなどのアルキルスズ組成物をベースとして開発されている。これらの組成物の特に有効な形態は、上記式中でz=1である酸化水酸化モノアルキルスズである。アルキルスズをベースとするフォトレジスト材料は、“Organometallic Solution Based High Resolution Patterning Compositions”と題されるMeyersらに付与された米国特許第9,310,684号明細書(以降、’684号特許)、“Organometallic Solution Based High Resolution Patterning Compositions and Corresponding Methods”と題されるMeyersらに付与された米国特許第10,642,153B1号明細書(以降、’153号特許)、及び“Organotin Oxide Hydroxide Patterning Compositions,Precursors,and Patterning”と題されるMeyersらに付与された米国特許第10,228,618 B1号明細書(以降、’618号特許)にさらに記載され、そのそれぞれが参照により本明細書に援用される。有機スズパターン形成組成物は、以下にさらに記載される。
【0018】
アルキルスズ組成物が特に有望な結果を示しているが、別の有機金属レジスト組成物の探求が行われている。例えば、“Patterned Inorganic Layers,Radiation Based Patterning Compositions and Corresponding Methods”と題されるStowersらに付与された米国特許第9,176,377号明細書、“Metal Peroxo Compounds with Organic Co-ligands for Electron Beam,Deep UV,and Extreme UV Photoresist Applications”と題されるBassらに付与された米国特許出願公開第2013/0224652号明細書、及び“Method of Making Electronic Materials”と題されるMaloneyらの米国特許出願公開第2002/0076495号明細書が参照され、これらすべてが参照により本明細書に援用される。種々の金属をベースとする別の有機金属パターン形成組成物が、参照により本明細書に援用され“Molecular Organometallic Resists for EUV”と題されるFreedmanらに付与され公開された米国特許第9,372,402B2号明細書に記載されている。有機コーティングを有する金属酸化物粒子を有するレジストが、参照により本明細書に援用され“Metal Oxide Nanoparticles and Photoresist Compositions”と題されるSarmaらの米国特許出願公開第2015/0234272A1号明細書に記載される。一般に、本明細書に記載の下層材料は、一般に有機金属レジストのために有用となりうる。
【0019】
下層ポリマー組成物は、基板と有機金属レジストとの両方に対して良好な接着性が得られるように選択することができる。適切な固有安定性を得るために、下層組成物は、一般に堆積後、有機金属レジストの堆積の前に架橋され、この架橋は、熱及び/又は放射線を使用し、触媒及び/又は架橋剤を使用するか、又は使用せずに行うことができる。下層組成物は、一般に、接着特性を得るために選択された量の官能基を有し、幾つかの適切な官能基が以下に記載される。適切なポリマーは、ビニルポリマー又は非ビニルポリマーであってよい。さらに、下層ポリマー組成物は、極紫外光などの放射線でレジストがパターン形成されるときに結合が変化する放射線感受性であってよい。例えば、ポリマーは、放射線への露光後の接着性を増加させるために光酸発生剤を含むことができる。例えば、ネガ型レジストの場合、レジストは、放射線への露光後に組成が変化し、下層は、露光したレジストに対する接着性が増加し、そのため、パターンは、初期の接着性と放射線で増加した接着性との2つの機構によって安定化する。ポジ型パターン形成では、有機金属レジストの露光によって、露光したコーティング材料の極性が十分に変化し、例えば極性が増加し、それによって、露光したコーティング材料が水性溶媒又は別の高極性溶媒で選択的に除去できる。ポジ型レジストの場合、未露光のレジストと下層との間の初期接着は、露光後に維持することができる。したがって、露光したレジストを選択的に除去した後にパターンを形成する未露光のレジストは、下層の存在によって安定化させることができる。
【0020】
ポリマー下層は、従来のポリマーフォトレジストとともに使用するために、フォトリソグラフィ技術分野において知られている。これらの下層は、例えば、レジスト組成物を塗布する前に基板表面の平坦化を改善するために使用することができる。例えば、参照により本明細書に援用され“Method for Forming Organic Film and Method for Manufacturing Substrate for Semiconductor Apparatus”と題されるOgiharaらの米国特許出願公開第2017/0309493号明細書(以降、’493号出願)を参照されたい。ポリマーレジストを用いたEUVリソグラフィによる微細パターン形成を改善するために、3層構造が試みられている。中央層は、ケイ素又は金属を含むことができる。’493号出願には、ケイ素をベースとする中央層が教示されている。3層レジスト構造の中央層中に別の金属を用いた3層構造が、参照により本明細書に援用され“Composition and Pattern Forming Method”と題されるNakagawaらの米国特許出願公開第2016/0187777号明細書に記載されている。本明細書に記載のポリマー下層は、有機金属レジストの所望の安定化が得られるよう計画された組成を有し、幾つかの実施形態では、パターン形成プロセスがさらに容易になる。
【0021】
放射線照射による架橋を促進して、パターン形成の機能を向上させるために、フォトレジスト中に光酸発生剤が使用されている。本明細書において使用される場合、放射線照射時の有機金属レジストへの結合を向上させるために、光酸発生剤を下層中に使用することができる。幾つかの実施形態では、パターン形成プロセス中に活性化の準備ができた状態のままの光酸発生剤を有するレジストを堆積する前に、下層を架橋させる。
【0022】
図1は、パターン形成され現像された多層構造100を概略的に示しており、有機金属レジストフィーチャ106、108、110が、基板102上に存在する下層104から剥離している。通常の特許の図面のように、これらの図は縮尺通りではなく、これらの図の場合、基板は一般にコーティングよりもはるかに厚い。剥離は、特定のフィーチャの種類を含むことがあり、多層の特定の領域に局在化する場合がある。図2は、パターン形成され現像された有機金属多層構造120を示しており、残留有機金属レジスト132、134、136、138が、有機金属レジストフィーチャ126、128、130の間に残存している。多層構造は、下層124及び基板122を含む。一般に「スカミング」と呼ばれる現象である、下層上の残留有機金属レジストは、有機金属レジストコーティングと下層との間の過度な接着と関連していることが分かった。上に有機金属レジストがコーティングされる表面としての下層を安定化させることによって、レジスト材料の表面への接着を、処理条件及び必要なパターン解像度に合わせることができ、それによって、例えば平均フィーチャ幅、平均線幅粗さ、ピッチ、及び品質の均一性が改善されたパターン形成された有機金属コーティングが可能となる。品質に関して、望ましくない剥離及び/又はスカミングを減少させたり無くしたりすることができる。品質及び均一性の改善は、品質管理試験に不合格となるパターン形成されたウエハが対応して減少することによって、廃棄物の大幅な減少に寄与することができる。
【0023】
図3は、放射線でパターン形成された有機金属レジストを形成するために使用される多層構造140の一部としての下層144を示している。この実施形態では、多層構造は、基板142と、基板上にコーティングされた下層144と、下層上にコーティングされた有機金属レジスト146とを含む。一実施形態では、多層構造140はベークされ、次にパターン形成された放射線に露光される。図4を参照すると、基板152、下層154、及びパターン形成された有機金属のコーティング156を含む、パターン形成された多層構造150が示される。パターン形成された有機金属のコーティング156は、照射された有機金属コーティング材料の領域160、164、168と、非照射の有機金属のコーティング材料の領域158、162、166、170とを含む。領域160、164、168と、領域158、162、166、170とによって形成されたパターンは、有機金属のコーティング中の潜像になる。
【0024】
ネガ型画像形成に関して、図5を参照すると、図4中に示される多層構造の潜像は、場合により照射後熱処理の後に、現像剤と接触させることで現像されて、基板182を含むパターン形成されて現像された多層構造180が形成されている。画像の現像後、有機金属レジストフィーチャ190、194、198は、照射領域160、164、168の場所に存在する。下層164は、開口部188、192、196、200を介して上面に沿って部分的に露出することができる。開口部188、192、196、200は、それぞれ非照射領域158、162、166、170の場所に位置する。
【0025】
幾つかの実施形態では、図6を参照すると、パターン形成され現像された多層構造210は、パターン形成された下層214と、有機金属レジストのフィーチャ218、222、226と、非照射領域158、162、166、170の下にあり開口部216、220、224、228を介して上面に沿って部分的に露出する基板212とからなることができる。幾つかの実施形態では、1つの現像ステップで図6の構造が形成されるように、有機金属コーティング156の現像が、図4の下層154の露出部分の除去にも有効である場合がある。
【0026】
ポジ型画像形成に関して、図4中に示される潜像を現像して、パターン形成された構造180及び/又は210の対となる画像を有するパターン形成された構造を形成することができる。図7を参照すると、図4中に示される多層構造の潜像は、場合により照射後熱処理の後に、現像剤と接触させることで現像されて、基板232を含むポジ型パターンが形成され現像された多層構造230が形成されている。画像の現像後、有機金属レジストフィーチャ236、240、244、248は、非照射領域158、162、166、170の場所に存在する。下層234は、開口部238、242、246を介して上面に沿って部分的に露出することができる。開口部238、242、246は、それぞれ照射領域160、164、168の場所に位置する。
【0027】
幾つかの実施形態では、図8を参照すると、パターン形成され現像された多層構造240は、パターン形成された下層244と、有機金属レジストのフィーチャ246、248、250、及び252と、照射領域160、164、及び168の下にあり開口部254、256、及び258を介して上面に沿って部分的に露出する基板242とからなることができる。幾つかの実施形態では、1つの現像ステップで図8の構造が形成されるように、有機金属コーティング156の現像が、図4の下層154の露出部分の除去にも有効である場合がある。
【0028】
幾つかの実施形態では、下層材料は、架橋可能な官能基及び/又は接着促進官能基を有するポリマー組成物である。下層材料の接着促進官能基は、双極子-双極子力、水素結合、イオン力、及び/又は同様のものを介して有機金属レジスト材料と相互作用することができる。
【0029】
有用な一実施形態は、複数の架橋性官能基及び複数の極性官能基を有するポリマー材料で構成される下層の上にレジストコーティングを形成することによって、放射線パターン形成の前に有機金属レジストコーティングを安定化させることに基づく。
【0030】
幾つかの実施形態では、図9に示されるように、下層材料は、放射線によって活性化される接着促進官能基を有するポリマー組成物である。多層コーティング構造の照射領域262及び264によって、パターン形成された有機金属レジストコーティング材料270と、基板260上にある下層272との間に接着性向上領域266及び268が形成される。幾つかの実施形態では、照射領域262及び264は、下層を実質的に通過して延在し、EUV照射の場合、有機ポリマーは一般に低い吸収を示し、そのため放射線による膜の透過が特に起こり得る。幾つかの実施形態では、放射線活性化官能基は光酸発生剤(PAG)である。幾つかの実施形態では、PAGは、限定するものではないが有機金属レジストの放射線パターン形成中など、その場で活性化する。
【0031】
図10は、下層と有機金属レジストとの間の接着を制御する方法の概略であり:基板上に下層材料を薄膜として堆積又はコーティングし280、ベークを行い282、下層上にフォトレジスト材料を薄層として堆積又はコーティングし284、露光前ベーク又はソフトベークを行い286、放射線のパターンに露光して潜像を形成し288、露光後ベークを行い290、次に適切な溶媒を用いて現像を行うことで292、レジストの現像パターンが形成される。実施形態による方法は、パターン形成されたフィーチャの間の未露光又は露光不足の有機金属レジストから残留物を除去するために、パターン形成され現像された多層構造をリンスすること294をさらに含むことができる。
【0032】
本明細書に記載の方法及び構造により、欠陥、例えば、パターンの破壊及び/又はスカミングが減少することによって、パターン形成された有機金属レジストのプロセスウィンドウが改善される。
【0033】
下層及び下層組成物
適切な性質及び組成を有する下層は、パターン形成された特徴の安定性を向上させることができ、フィーチャ間のスカミング、線の破壊、又は層間剥離などの欠陥を減少させることができる。本明細書に記載されるものなどの適切な下層が使用されると、パターン形成されたフィーチャと下層との間の接着を制御することができる。幾つかの実施形態では、下層組成物は、有機金属レジストとの相互作用を安定化させるための適切な官能基を有する架橋ポリマーを含むことができる。幾つかの実施形態では、ネガ型レジストが使用され、下層と有機金属レジストの放射線に露光した領域との間の接着力が増加し、同時に、下層と有機金属レジストの未露光領域との間の接着力は低いままとなる。有機金属レジスト層への露光後の接着を向上させるために、光酸発生剤を使用することができる。ネガ型レジストの現像及び任意選択のリンス処理の間、下層と有機金属レジストとの間の低接着領域及び高接着領域は、未露光のフォトレジストをより十分に除去し、より高い完全性のフィーチャを有するパターンを形成するために有利に使用することができる。幾つかの実施形態では、感光性レジストに有用なものなどの従来の感光性ポリマー組成物を、本明細書に記載の下層組成物中に使用することができる。
【0034】
下層は、一般に、溶液堆積によって形成され、引き続いて処理が行われる。下層前駆体溶液は、対応する処理とともに次の項で議論される。下層溶液を乾燥させると、これは初期特性を有する。次に、初期乾燥プロセス中の架橋又は放射線照射による架橋が起こらないのであれば、一般にコーティングの架橋が行われる。架橋した下層は、第2の組の特性を有する。
【0035】
一般に、下層と有機金属レジストとを含む多層レジストプロセスに下層膜形成性組成物が使用される。下層組成物は、1つ以上の架橋性部分と1つ以上の接着促進部分とを含むポリマー組成物を含むことができる。幾つかの実施形態では、下層組成物は熱酸発生剤をさらに含むことができる。架橋性部分は、コーティング中の下層及びレジストの溶解/混合を防止し、基板、特にパターン形成された線が不安定になる軟質基板の機械的性質を改善する機能を果たすことができる。架橋は一般に、アンダーコートの形成後、及びレジストの堆積前に実施される。所望のポリマー特性に寄与できる官能基の以下の議論において、ポリマー主鎖は概略的にビニルポリマー主鎖としてか、又は単に概略的に破線として示すことができ、ポリマー主鎖のさらなる議論は以下にさらに記載される。
【0036】
一実施形態では、架橋性部分(R2)は、式(1):
【化1】
(ここで、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はCF基であり、Aは、-CO-結合、-CO-結合、又は-CONH-結合であり、Rは、ヒドロキシド、エーテル、グリシジル、エポキシド、メトキシメチル尿素などである)
の構造を有する繰り返し単位に共有結合することができる。下層膜形成性組成物が構造単位Aを含む場合は、下層ポリマーの架橋レベルを増加させることができる。
【0037】
構造(1)による架橋性部分を有するポリマー単位の具体例を以下に示す:
【化2】
別の官能基を含むポリマー組成物を使用することができる。例えば、参照により本明細書に援用され“Functionalized Inclusion Complexes as Crosslinkers”と題される米国特許第8,207,264 B2号明細書には、架橋性官能基を包接化合物又はポリエチレングリコールなどのポリマー主鎖に結合させる適切な結合基を有する架橋ポリマー組成物が記載されている。参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2006/0293482 A1号明細書、“Organo Functionalized Silane Monomers and Siloxane Polymers of the Same”には、ペンダント架橋性基を有するオルガノシロキサンが記載されている。米国特許出願公開第2009/0047517 A1号明細書、“Multilayer Polymer Films”には、ポリマー層間の架橋が記載されている。上記参考文献は参照により本明細書に援用される。参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2017/0088758 A1号明細書、“Polyurethane Adhesive Layers for Electro-optic Assemblies”。
【0038】
下層組成物のポリマーは、有機金属レジストと下層との間の接着性を改善するための1つ以上の別個のモノマー単位をさらに含むことができる。幾つかの実施形態では、接着促進部分は、有機金属レジストに共有結合するために極性及び/又はプロトン性の組成物を含むことができる。幾つかの実施形態では、光酸発生剤によって、接着促進部分の形成を支援することができ、そのため接着促進部分が形成されることにより有機金属レジストへの接着力を高めるために、光活性化を使用できる。別の実施形態では、下層の組成物をベースとすることができる未露光のレジストにより高い親和性を付与するために、感光性基を使用することができる。幾つかの実施形態では、アンダーコートへの放射線照射による有機下層の光分解によって、照射された有機金属パターン形成組成物の親和性が低下して、ポジ型パターン形成に望ましくなりうるように、照射されたレジストの除去を促進することができる。ポリマー下層に光分解によって、極性及び/又は水素結合特性を低下させることができる。
【0039】
幾つかの実施形態では、接着促進部分は、構造(2):
【化3】
(ここで、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はCF基であり、Rは、水素結合が可能な官能基を提供する)
を有するモノマー単位を含むことができる。水素結合が可能な適切な官能基は、アミン、イミン、イミド、オキシム、カルボン酸アミド、カルボン酸、チオール、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、アルコール、スルフィン酸、スルホン酸、又はスルホニウム塩である。幾つかの実施形態では、ポリマーは複数のこのような官能基を含むことができる。
【0040】
構造(2)による接着促進側鎖の具体例を以下に示す:
【化4】
【0041】
さらなる実施形態では、接着促進部分は、構造(3):
【化5】
(ここで、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はCF基であり、Aは、-CO-結合、-CO-結合、又は-CONH-結合であり、Rは、水素結合が可能な官能基を提供する)
を有するモノマー単位を含むことができる。水素結合が可能な好ましい官能基は、アミン、イミン、イミド、オキシム、カルボン酸アミド、カルボン酸、チオール、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、アルコール、スルフィン酸、スルホン酸、又はスルホニウム塩である。構造(3)による接着促進側鎖の具体例を以下に示す:
【化6】
【0042】
“Functionalized Polymer Compositions and Films Formed from the Same”と題される米国特許第9,527,971 B2号明細書は、無水物及び/又はカルボン酸官能化エチレン/α-オレフィンコポリマーを対象としており、参照により本明細書に援用される。
【0043】
さらなる実施形態では、下層ポリマー組成物は、側鎖接着促進部分を有する繰り返し単位及び/又は末端鎖接着促進部分を有するポリマーを有する。非限定的な例としては、官能化スチレン、官能化アクリレート、官能化ビニルケトン、官能化アクリルアミド、官能化ウレタンアクリレート、官能化フェノール樹脂、その他の官能化ビニル若しくは非ビニル繰り返し単位、又はそれらの混合物を挙げることができる。接着促進部分は、アミン、イミン、イミド、オキシム、カルボン酸アミド、カルボン酸、チオール、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、アルコール、スルホン酸、スルホン酸、スルホニウム塩、感光性部分、そのようなスルホン酸スルホニウム、スルホン酸ヨードニウム、N-スルホン酸イミド、N-スルホン酸イミンなどで末端官能化することができ、そのポリマー組成物は、溶液からの適切な膜形成特性を有する。
【0044】
光酸発生剤。幾つかの実施形態では、ポリマー下層材料は、光酸発生剤(PAG)を含み、適切な放射線源への露光によって照射領域中に光酸が発生する。PAG組成物は特に限定されないが、特に有用な組成物の例としては、スルホン酸スルホニウム、スルホン酸ヨードニウム、N-スルホン酸イミド、及びN-スルホン酸イミンが挙げられる。PAGは下層中の1つ以上のポリマーに共有結合することができ、及び/又は小分子PAGを下層中の1つ以上のポリマーとブレンドすることができる。幾つかの実施形態では、特に有用なイオン性PAGは、ポリマー主鎖に供給結合し、側鎖構造(4):
【化7】
(ここで、Xは、トリフェニルスルホニウム又はビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムである)
を有する。
【0045】
幾つかの実施形態では、非イオン性PAGは、ポリマー主鎖に共融結合することができ、側鎖構造(5):
【化8】
(ここで、Zは、以下の官能基
【化9】
の中の1つであり、*は、PAGのスルホネートのO原子への結合である)
を有する。適切なポリマー主鎖構造は、特に限定されないが、特に有用なポリマー又はコポリマーは、側鎖構造4及び/又は5などのPAG側鎖を有するポリエチレン又はポリプロピレン系のモノマー単位を有することができる。例えば、参照により本明細書に援用されるWang et al.,“Novel polymeric anionic photoacid generators(PAGS) and corresponding polymers for 193 nm lithography”,J.Mater.Chem.,2006,16,3701-3707を参照されたい。別のPAG組成物も想定され、それらは本開示の範囲内となる。後述のように、下層材料中で発生した光酸は、照射領域中の接着性を向上させることができる。
【0046】
参照により本明細書に援用され「感光性組成物、感光性平版印刷版及び感光性平版印刷版の製版方法」と題される特開2000-206680号公報には、ノボラック樹脂又はポリビニルフェノール樹脂と光酸発生剤との組み合わせの使用が記載されている。その他のイオン性及び非イオン性のPAG部分を使用することができ、“Photoacid Generator Compounds and Compositions”と題される米国特許出願公開第2009/0258315A1号明細書及び“Composition for Preparing Organic Insulating Film and Organic Insulating Film Prepared from the Same”と題される米国特許出願公開第2005/0279995A1号明細書が、参照により本明細書に援用される。
【0047】
光活性化を使用して又は使用せずに接着性を改善するためのポリマー官能基に関して、相互作用に利用可能な官能基の量を制御するために、ポリマーブレンド及び/又はコポリマーを用いること。例えば、ポリマーブレンドは、異なる官能基を有する複数のポリマーを含むことができ、例えば、接着促進官能基を有しない1つのポリマー、接着促進官能基を有する1つ以上のポリマー、光活性化接着促進官能基を有する1つ以上のポリマー、接着促進官能基と架橋性基とを有する1つ以上のコポリマー、又はそのようなポリマー及び官能基のあらゆる組み合わせを含むことができる。一般に、各成分ポリマーは、少なくとも約1重量パーセント、さらなる実施形態では少なくとも約5重量パーセント、さらなる実施形態では少なくとも約10重量パーセントで存在する。ポリマーは一般に、ポリマーが適切なブレンドを形成するよう、適切な化学的類似性を有するように選択することができる。当業者であれば、上記の明示される範囲内のさらなる範囲のポリマー成分が想定され、本開示の範囲内となることを理解するであろう。
【0048】
これとは別に、又はこれに加えて、コポリマーが別個のモノマーによって得られる2つ以上の異なる繰り返し単位を含むコポリマーを使用することができる。繰り返し単位は、非接着促進官能基、接着促進官能基、光活性化接着促進官能基、架橋性官能基、又はそれらのあらゆる組み合わせを有することができ、ここで接着促進官能基及び架橋性官能基は、一括して活性官能基と呼ぶことができる。このコポリマーは、ランダムコポリマー又はブロックコポリマー又はそれらの組み合わせであってよい。一般に、コポリマーは、少なくとも約1パーセントの指定の種類の繰り返し単位、さらなる実施形態では少なくとも約5パーセントの指定の種類の繰り返し単位、別の実施形態では少なくとも約10パーセントの指定の種類の繰り返し単位を含む。ポリマー鎖のすべての部分が活性官能基を有することができるが、幾つかの実施形態ではポリマーは75パーセント以下の活性官能基を有する繰り返し部分を有することができ、さらなる実施形態では65パーセント以下、別の実施形態では50パーセント以下の活性官能基を有する繰り返し部分を有することができる。活性官能基の範囲を形成するために、活性官能基に対する上限カットオフ値及び下限カットオフ値を適切に組み合わせることができる。接着性向上特性又は光誘導性接着促進特性を有する具体的な官能基は前述している。当業者であれば、上記の明示される範囲内のポリマー繰り返し単位の相対量のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを認識するであろう。
【0049】
溶媒
一般に、あらゆる適切な溶媒を使用することができるが、選択された溶媒に対して、下層膜形成性組成物が適切な溶解性及び安定性を示すことが一般に望ましい。適切な溶媒の例としては、一般に、例えば、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン、2,4-ペンタンジオン、ジアセトンアルコールなど)、エーテル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)など)、エステル(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、酢酸エチル、プロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)、メチルアセトアセトエート(methyl acetoacetoate)など)、アルコール(プロパノール、ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、シクロヘキサノール、イソアミルアルコールなど)、アミド(アセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピイロリドン(N-methylpyyrolidone)など)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、フルオロカーボン、クロロベンゼンなど)それらの混合物などが挙げられる。特に関心の高い溶媒としては、PGME、PGMEA、及び乳酸エチルが挙げられるが、その他の溶媒も想定され、本開示の範囲内となる。
【0050】
下層膜形成性組成物は、他の添加剤をさらに含むことができ、これらは一般にそれぞれ10重量パーセント以下、さらなる実施形態では約5重量パーセント以下の量で存在する。当業者であれば、明示される範囲内の添加剤量のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを認識するであろう。適切な添加剤としては、例えば、粘度調整剤、架橋触媒、湿潤剤、界面活性剤、その他の性質改質剤、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0051】
下層膜の形成
下層膜コーティングは、一般に、スピンコーティング、スプレーコーティング、スロットコーティングなどの従来の堆積方法によって形成することができる。典型的なスピンコーティングプロセスでは、シリコンウエハなどの基板の表面上に下層膜形成性組成物が堆積され、その後、溶媒の急激な蒸発が誘発されて基板の表面上に固体膜が形成されるように、基板を回転させる。幾つかの実施形態では、ウエハは、約500rpm~約10,000rpm、さらなる実施形態では約1000rpm~約7500rpm、さらなる実施形態では約2000rpm~約6000rpmの速度で回転させることができる。回転速度は、所望のコーティング厚さが得られるように調節することができる。スピンコーティングは、約5秒~約5分、さらなる実施形態では約15秒~約2分の時間で行うことができる。基板全体に最初に組成物全体を広げるために、例えば50rpm~250rpmの初期低速回転を使用することができる。バックサイドリンス、エッジビード除去ステップなどを、水又はその他の適切な溶媒を用いて行って、エッジビードを除去することができる。当業者であれば、上記の明示される範囲内のスピンコーティングパラメーターのさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを認識するであろう。当業者であれば、本明細書の開示に基づいて下層を形成するための別のコーティングプロセスを対応して適応させることができる。
【0052】
下層の厚さは、一般に、下層膜形成性組成物中に使用されるポリマーの質量、組成物の粘度、及びスピンコーティングに使用される回転速度によって決定される。スピンコーティング以外のコーティングプロセスの場合、厚さは一般に、コーティングパラメーターの選択によって調節することもできる。幾つかの実施形態では、引き続くパターン形成プロセスにおける小さく高解像度のフィーチャの形成を容易にするために、薄いコーティングを使用することが望ましい場合がある。例えば、乾燥後の下層は、約10ミクロン以下、別の実施形態では約1ミクロン以下、さらなる実施形態では約250ナノメートル(nm)以下、さらなる実施形態では約1nm~約50nm、別の実施形態では約2nm~約40nm、幾つかの実施形態では約3nm~約25nmの平均厚さを有することができる。幾つかの実施形態では、下層乾燥厚さの有機金属層乾燥厚さの比を考慮することが有用となりうる。例えば、下層乾燥厚さの放射線感受性有機金属層乾燥厚さに対する比は、約3:1~1:10、さらなる実施形態では約2:1~約1:7.5であってよい。当業者であれば、上記の明示される範囲内の厚さ及び厚さの比のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを認識するであろう。一般に、下層は、処理を容易にするために比較的均一である。幾つかの実施形態では、コーティングの厚さのばらつきは、平均コーティング厚さから±50%以下、さらなる実施形態では±40%以下、さらなる実施形態では平均コーティング厚さに対して約25%以下で変動する。より大きな基板上の高い均一性のコーティングなどの幾つかの実施形態では、コーティングの均一性の評価は、1センチメートルのエッジの排除などのエッジ排除領域を用いて評価することができ、すなわち、コーティングの均一性は、エッジから1センチメートルの範囲内又はその他の選択された排除サイズのコーティング部分では評価されない。当業者であれば、上記の明示される範囲内のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを認識するであろう。
【0053】
下層のベーク。下層コーティング組成物の緻密化のため、幾つかの実施形態では架橋のために、下層がコーティングされた基板を加熱することが一般に望ましい。幾つかの実施形態では、下層は、約45℃~約300℃、さらなる実施形態では約55℃~約250℃の温度に加熱することができる。加熱は、一般に少なくとも約0.1分、さらなる実施形態では約0.5分~約30分、さらなる実施形態では約0.75分~約10分実施することができる。当業者であれば、上記の明示される範囲内の加熱温度及び時間のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを認識するであろう。さらなる又は別の実施形態では、下層は、熱、UV放射線などの放射線、電子アーク、又はその他の適切な架橋機構を用いて架橋させることができる。有機金属パターン形成組成物の堆積の前の下層の架橋が不十分である場合、パターン形成プロセスが、下層の架橋又はさらなる架橋を引き起こす役割を果たす。
【0054】
基板
基板は一般に、上に下層を堆積することができる表面を提供し、基板自体は、パターン形成が可能な複数の層を含むことができ、下層を支持する表面は、最上層の露出面と関連する。幾つかの実施形態では、基板表面は、下層の接着のための表面を準備するために処理することができる。また、表面は、必要に応じて清浄にしたり、及び/又は滑らかにしたりすることができる。適切な基板表面は、あらゆる適切な材料を含むことができる。特に関心の高い一部の基板は、基板の表面全体にわたって及び/又は層中に、例えば、シリコンウエハ、シリカ基板、その他の無機材料、有機ポリマーなどのポリマー基板、それらの複合材料、及びそれらの組み合わせを含む。非常に薄い円柱構造などのウエハが好都合となり得るが、あらゆる成形構造を使用することができる。ポリマー基板、又は非ポリマー構造上にポリマー層を有する基板は、それらが低コストであり可撓性であることに基づいて特定の用途に望ましい場合があり、適切なポリマーは、本明細書に記載の多層構造の処理に使用できる比較的低い処理温度に基づいて選択することができる。適切なポリマーとしては、例えば、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエステル、ポリアルケン、それらのコポリマー、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0055】
有機金属レジスト。適切な基板上への下層の堆積及び形成の後、続いて下層の表面上にレジストを堆積して多層構造を形成することができる。前述のように、本明細書に記載の下層は、一連の有機金属をベースとするパターン形成組成物とともに有用となりうる。以下の議論は、酸化水酸化有機スズ及び関連の前駆体組成物に集中している。酸化水酸化有機スズをベースとするものなどの有機金属レジストは、リソグラフィによる光パターン形成に有用なレジストとして優れた性質を有することが示されている。有機スズパターン形成材料は、前述の引用の’684号特許、’153号特許、及び’618号特許にさらに記載されている。
【0056】
適切な有機スズ材料は、式RSnO(2-(z/2)-(x/2))(OH)(ここで、0<z≦2及び0<(z+x)≦4であり、Rは、1~31個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、又は別個のR基を有するそれらの混合物であり、これはN個の別個の組成物の場合、Rと書くことができる)で表される放射線感受性パターン形成組成物の化学的性質に一般に基づいている。コーティング層中、組成物は、共通のオキソ/ヒドロキソネットワーク中に一体化される。特に、化合物がRCSn(NR’)と表すことができ、R及びRが独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rが、水素又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基である場合の幾つかのパターン形成組成物の場合、分岐アルキル配位子が望ましいことがある。後述するように、このアルキル配位子Rの表現は、一般にRCSn(X)(ここで、Xはトリアルコキシド部分又はトリアミド部分に対応する)で表される別の実施形態にも同様に適用可能である。幾つかの実施形態では、R及びRは、環状アルキル部分を形成することができ、Rは、環状部分の別の基に連結することもできる。適切な分岐アルキル配位子は、例えば、イソプロピル(R及びRがメチルであり、Rが水素である)、tert-ブチル(R、R、及びRがメチルである)、tert-アミル(R及びRがメチルであり、Rが-CHCHである)、sec-ブチル(Rがメチルであり、Rが-CHCHであり、Rが水素である)、ネオペンチル(R及びRが水素であり、Rが-C(CHである)、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロブチル、及びシクロプロピルであってよい。適切な環状基の例としては、例えば、1-アダマンチル(第3級炭素で金属に結合する-C(CH(CH)(CH又はトリシクロ(3.3.1.13,7)デカン)及び2-アダマンチル(第2級炭素で金属に結合する-CH(CH)(CH(CH)(CH)又はトリシクロ(3.3.1.13,7)デカン)が挙げられる。別の実施形態では、ヒドロカルビル基としては、アリール基若しくはアルケニル基、例えば、ベンジル若しくはアリル、又はアルキニル基を挙げることができる。別の実施形態では、ヒドロカルビル配位子Rとしては、C及びHのみからなり1~31個の炭素原子を含むあらゆる基を挙げることができる。要約すると、スズに結合する適切なアルキル基の幾つかの例としては、例えば、直鎖又は分岐アルキル(i-Pr((CHCH-)、t-Bu((CHC-)、Me(CH-)、n-Bu(CHCHCHCH-))、シクロアルキル(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル)、オレフィン(アルケニル、アリール、アリル)、若しくはアルキニル基、又はそれらの組み合わせが挙げられる。さらなる実施形態では、適切なR基としては、シアノ、チオ、シリル、エーテル、ケト、エステル、若しくはハロゲン化基、又はそれらの組み合わせを含むヘテロ原子官能基で置換されたヒドロカルビル来を挙げることができる。
【0057】
共通のオキソ/ヒドロキソネットワーク中に一体化することができる有機スズオキソ/ヒドロキシルコーティング組成物を形成するための前駆体組成物は、1つ以上の可溶性有機スズオキソ/ヒドロキソ化合物、又は加水分解によってオキソ及び/又はヒドロキソ配位子を形成する加水分解性配位子を有する対応する化合物を含むことができる。複数の化合物を有する前駆体組成物の場合、それらの化合物は、金属-炭素結合を有する別個の有機配位子、及び同じ若しくは別個のhyrolyzable配位子を有することができる。例えば、放射線感受性のコーティングを形成するための前駆体組成物は、RSnX4-n(ここで、n=1又は2であり、Rは、前述のような1~31個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、Xは、加水分解性M-X結合を有する配位子である)で表される1つ以上の化合物、及びそれらの混合物の溶液を含むことができる。適切な加水分解性配位子としては、例えば、アルキニドRC≡C、アルコキシドRO、カルボキシレートRCOO、ハライド、ジアルキルアミド又はそれらの組み合わせを挙げることができる。特に、有機スズトリアルコキシド組成物は、式RSn(OR(ここで、R基は、Rに関して前述したものと同じ部分の1つであってよい)で表すことができる。幾つかの実施形態では、前述の有機スズ前駆体組成物は、MX及び/又はMO((m/2)-l/2)(OH)(ここで、0<z≦2、0<(z+w)≦4、m=Mm+の形式上の価数、0≦l≦m、及びM=M’又はSnであり、M’は、周期表の2~16族の非スズ金属である)で表される組成物をさらに含むことができる。一般に、有機スズフォトレジストは、小さなフィーチャ及びパターンの形成を可能にする高解像度と高い耐エッチング性との両方を示す。n=1であるモノアルキルスズ組成物は、商業的パターン形成用途に特に有効であることが分かっている。コーティングプロセス中又はコーティングステップ後のその場加水分解を使用して、パターン形成前に、加水分解性M-X結合を加水分解して、コーティング中にオキソ/ヒドロキソネットワークを形成することができる。“Organotin Clusters,Solutions of organotin Clusters,and Application to High Resolution Patterning”と題されるCardineauらの米国特許出願公開第2019/0053001号明細書、及び“Tin Dodecamers and Radiation Patternable Coatings With Strong EUV Absorption”と題されるCardineauらの米国特許出願公開第2019/0308998号明細書(どちらも参照により本明細書に援用される)に記載されるように、3つのスズ原子を有するなど、加水分解性配位子の少なくとも一部が、オキソ架橋又はヒドロキシル基で置換することが可能な適切な配位子転位を用いて、前駆体化合物が溶液中でクラスターを形成することもできる。
【0058】
感光性有機スズコーティングの形成は、スピンコーティングなどの当業者に周知の種々の技術によって実現することができる。前述のスズをベースとするレジストのための、前駆体の溶液堆積の場合、スズ濃度は、一般に、スズの量を基準として約1mM~約1M、さらなる実施形態では約2mM~約750mM、別の実施形態では約5mM~約500mMの範囲内であってよい。幾つかの実施形態では、“Organotin Oxide Hydroxide Patterning Compositions,Precursors,and Patterning”と題されるMeyersらの米国特許第10,228,618B2号明細書、及び“EUV Photopatterning of Vapor-Deposited Metal Oxide-Containing Hardmasks”と題されるSmithらの米国特許第9,996,004B2号明細書(どちらも参照により本明細書に援用される)にそれぞれ記載されるような原子層堆積(ALD)又は化学蒸着(CVD)技術などの蒸着技術によって、感光性有機スズコーティングを形成することができる。
【0059】
コーティングの厚さは、一般に、前駆体溶液の濃度、粘度、及び回転速度によって決定されうる。蒸着などの別のコーティングプロセスの場合、厚さは一般に、コーティングパラメーターを選択することによって調節することもできる。幾つかの実施形態では、小さく高解像度のフィーチャを形成しやすくするために、薄いコーティングの使用が望ましい場合がある。幾つかの実施形態では、コーティング材料は、現像前の平均乾燥厚さが、約1ミクロン以下、さらなる実施形態では約250ナノメートル(nm)以下、さらなる実施形態では約1ナノメートル(nm)~約50nm、別の実施形態では約1nm~約40nm、幾つかの実施形態では約1nm~約25nmであってよい。露光領域の現像後のコーティング厚さの範囲は、一般に上記と同じ範囲内となり、現像による比較的少量の露光材料の除去を実現できる。当業者であれば、上記の明示される範囲内の溶液の濃度及び厚さのさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを認識するであろう。厚さは、膜の光学的性質に基づくX線反射率及び/又は偏光解析の非接触方法を用いて評価することができる。
【0060】
有機スズコーティングの堆積及び形成の後、エッジビード除去(EBR)リンスステップが一般に使用される。EBR処理は、典型的には、フォトレジストの堆積後のあらゆる熱処理又はベークの前に行われ、ウエハ又は基板の周囲端部を溶媒でリンスして選択された領域中のフォトレジストを除去することを伴う。参照により本明細書に援用され“Methods of Reducing Metal Residue in Edge Bead Region from Metal-Containing Resists”と題されるWallerらの米国特許第10,627,719号明細書に記載されるように、EBR及びバックサイドリンスは、エッジビードリンス溶液をウエハの端部及び裏面に塗布することを伴う。
【0061】
ソフトベーク/塗布後ベーク。ソフトベーク、又は塗布後ベーク(PAB)は、典型的には放射線露光の前に、前駆体組成物中の加水分解性結合の加水分解、及び/又は溶媒のさらなる除去、及びコーティング材料の緻密化の促進のために行われる。幾つかの実施形態では、PABは、約25℃~約250℃、さらなる実施形態では約50℃~約200℃、さらなる実施形態では約80℃~約150℃の温度で行うことができる。塗布後の加熱は、一般に少なくとも約0.1分、さらなる実施形態では約0.5分~約30分、さらなる実施形態では約0.75分~約10分の間、行うことができる。当業者であれば、上記の明示される範囲内のPAB温度及び時間のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを認識するであろう。コーティングされた材料は、一般に、オキソ-ヒドロキソ配位子の金属への結合をベースとし、それらの金属が幾つかのアルキル配位子も有するポリマー金属オキソ-ヒドロキソネットワーク、又はアルキル配位子を有する多核金属オキソ-ヒドロキソ種で構成される分子固体を含む。
【0062】
多層コーティングのパターン形成
パターン形成は、一般に、放射線の所望の空中パターンにレジストを露光することによって実現される。放射線は、一般に選択されたパターンにより発生させることができる。放射線パターンは、レジスト材料中に照射領域と非照射領域との対応するパターン又は潜像に転写される。照射領域は、化学的に変化したレジスト材料を含み、非照射領域は一般に形成されたままのレジスト材料を含む。前述のスズをベースとする有機金属レジスト材料の場合、放射線の吸収によって、金属と有機配位子との間の結合の破壊を可能にするエネルギーが得られ、そのため、有機系配位子の少なくとも一部は、もはや材料の安定化には使用できない。な量の放射線を吸収すると、露光したコーティング材料は縮合し、すなわち強化された金属酸化物-水酸化物ネットワークを形成し、これは周囲雰囲気から吸収した水を含む場合がある。
【0063】
放射線は、一般に、マスクを介して多層構造に向けることができるか、又は多層構造全体を制御可能に走査する放射線ビームであってよい。放射線パターンで実現可能な解像度は、一般に放射線の波長によって決定され、より短い波長の放射線を用いて、より高い解像度のパターンを一般に実現することができる。したがって、特に高解像度のパターンを実現するためには、極紫外(EUV)源、紫外(UV)源、又は荷電粒子(電子ビーム、イオンビームなど)源の使用が望ましくなりうる。ネガ型パターン現像を使用する実施形態では、レジストが照射されて、パターン形成された多層構造の一部となることができる領域の下に下層が残存する。照射されたレジスト領域の下ではない、言い換えると放射線パターンによらない下層材料は、現像ステップ及び/又はリンスステップ中に除去することができる。リンスステップは、“Patterned Organometallic Photoresists and Methods of Patterning”と題され参照により本明細書に援用されるKocsisらの米国特許出願公開第2020/0124970号明細書に記載されている。
【0064】
電磁放射線量は、露光時間にわたって放射フラックスを積分することによって求められるフルエンス又は線量によって特徴づけることができる。幾つかの実施形態では、適切な放射線フルエンスは、約1mJ/cm~約200mJ/cm、さらなる実施形態では約2mJ/cm~約150mJ/cm、さらなる実施形態では約3mJ/cm~約100mJ/cmであってよい。一実施形態では、EUV放射は約150mJ/cm以下の線量で行うことができるか、又は電子ビームは30kVにおいて約2mC/cm以下の線量で行うことができる。当業者であれば、上記の明示される範囲内の放射線フルエンスのさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを認識するであろう。
【0065】
電子ビームは、ビームのエネルギーによって特徴づけることができ、適切なエネルギーは約5eV~約200keV、さらなる実施形態では約7.5eV~約100keVの範囲であってよい。近接効果を補正した30keVにおけるビーム線量は、約0.1マイクロクーロン/平方センチメートル(μC/cm)~約5マイクロクーロン/平方センチメートル(mC/cm)、さらなる実施形態では約0.5μC/cm~約1mC/cm、別の実施形態では約1μC/cm~約100μC/cmの範囲であってよい。当業者であれば、本明細書の教示に基づいて別のビームエネルギーにおける対応する線量を計算することができ、上記の明示される範囲内の電子ビーム特性のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを認識するであろう。
【0066】
ネガ型及びポジ型のパターン形成。多層構造の放射線への露光後、照射後熱処理、すなわち露光後ベーク(PEB)が一般に行われる。PEBステップによってレジストがアニールされて、非照射領域はあまり縮合することなく、照射領域がさらに縮合する。
【0067】
ネガ型パターン形成が使用される実施形態では、下層材料は、照射領域中での光酸によって誘導される反応を可能にするためのPAGを含むことができ、これによってそれらの下層領域の極性及び/又は水素結合特性がさらに増加し、その結果、それらの下層領域の直接上にある有機金属コーティングの接着性が向上する。前述の議論のように、照射された有機金属レジスト材料は、金属酸化物-水酸化物ネットワークとして記載することができ、したがって極性表面及び/又は水素結合特性を有する表面に対してより高い結合親和性を有する。水素結合は、酸触媒作用を受けた下層材料の領域と、有機金属レジスト材料の照射領域との間の親和性の増加において特に有効であることが発見されている。下層材料の照射された領域と、照射されたレジスト材料との間のこの高い結合親和性によって、初期接着よりも接着性を増加させることができる。
【0068】
照射された有機金属レジストコーティングと下層との間の適切な接着によって、層間剥離、線の破壊、及び線の蛇行などの後の処理中の欠陥を減少させることができる。このような処理、例えば現像の間、十分に縮合していない有機金属レジスト材料は、洗い落とすことができる。しかし、照射された有機金属レジストコーティング領域と、それらの領域に接触する下層との間の接着力が不十分であると、照射されたレジスト材料でさえも、部分的又は完全に表面から分離することがあり、それによって線の蛇行又は層間剥離が生じる。下層と照射された有機金属レジストコーティングとの間の接着力の制御された増加によって、例えば下層材料の水素結合特性の増加によって、このような欠陥を減少させることができる。
【0069】
非照射領域は光酸を発生させないので、それらの領域は、接着力が低いままであり、したがって非照射領域中の有機金属レジストコーティングと下層との間の接着力は増加しない。非照射領域中の有機金属レジストコーティングと下層との間のより低い接着力によって、スカミング及びマイクロブリッジングなどの後の処理中の欠陥を改善することができる。理論によって限定しようと意図するものではないが、これらの欠陥の種類は、名目上は非照射の領域中に部分的に加水分解又は縮合した化学種が存在するために生じると考えられる。これらの部分的に加水分解又は縮合した化学種は、より高い極性を有する及び/又はより高い水素結合特性を有する表面及び材料に対してより高い親和性を有し、それらはこれらの材料及び表面に結合又は吸着することができ、結果として現像後に残存して、例えばパターンを形成する。下層組成物がPAGを含む別の実施形態では、前述のように、高い接着力は、照射された有機金属レジストコーティングの結合を促進することができる、同時に、非照射領域中のスカミング及び/又はマイクロブリッジングの形成は、それらの領域がより低い水素結合能力を有するため、又はより低い極性を有することによって、抑制することができる。
【0070】
ポジ型パターン形成のための下層は、有機金属レジストコーティングと下層との間の接着力の差を大きくするために、PAGなどの接着促進部分を高濃度で含むことができる。除去されるべき有機金属レジストコーティングの領域に放射線を照射すると、例えば酸によって誘導される機構によってか、下層組成物中のポリマーの主鎖の開裂によってか、又は別の機構によって、下にある領域中の下層材料の光分解を開始することができる。ポジ型パターン形成の場合、実施形態は、下層と非照射の有機金属レジストコーティングとの間のより高い接着力、及び照射された有機金属レジストコーティングと下層との間のより低い接着力を含むことができる。したがって、パターン形成されポジ型で現像された有機金属レジストコーティングは、下層によって効果的に安定化させることができる。別の実施形態では、照射領域の下の下層は、現像ステップ中、及び/又は別のリンスステップ中に効果的に除去することができる。別の実施形態では、下層組成物は、フォトレジストとしての使用に適切なポリマー及びその他の材料、下層中の1つ以上のポリマーに共有結合するPAG、及び/又は小分子PAGを含むことができる。当業者であれば、下層のための別のポリマー組成物が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを認識するであろう。
【0071】
別の実施形態では、下層組成物は、水素結合に関与する官能基、又はレジストのパターン形成前の多層構造からの剥離に対して有機金属レジストコーティングを安定化させる別のポリマー基を有することができる。幾つかの実施形態では、下層は、摩耗又は多層構造からの剥離に対して有機金属レジストコーティングを安定化させ、PAGを含む場合も含まない場合もある。下層組成物がPAGを含まない実施形態では、下層は、スカミング及びマイクロブリッジングなどの欠陥の形成を抑制するために低濃度の接着促進部分を有することができる。
【0072】
露光後ベーク。放射線照射後の熱処理は、約45℃~約250℃、さらなる実施形態では約50℃~約190℃、さらなる実施形態では約60℃~約175℃の温度で行うことができる。露光後の加熱は、一般に少なくとも約0.1分、さらなる実施形態では約0.5分~約30分、さらなる実施形態では約0.75分~約10分の間行うことができる。当業者であれば、上記の明示される範囲内の放射線照射後の加熱温度及び時間のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを認識するであろう。
【0073】
現像。放射線照射後の熱処理を行った後、有機金属レジストコーティングは、潜像を形成する照射領域と非照射領域とによってパターン形成される。画像の現像は、潜像を有するパターン形成された多層構造を現像剤組成物に接触させて、ネガ型画像を形成するために非照射のコーティング領域、又はポジ型画像を形成するために照射されたコーティング領域のいずれかを除去することを伴う。下層及び有機金属コーティングの二重コーティングは、逐次的に又は同時に現像することができる。下層が放射線感受性でもある場合、下層は仮想画像のパターン形成を有することもできる。幾つかの実施形態では、下層が放射線照射に基づくパターンを有する場合も有しない場合も、現像ステップは、除去されたレジスト材料の位置において下層を同時に除去して基板を露出させることが望ましい場合がある。前述の有機スズレジスト材料を使用すると、適切な現像液又は1つの溶液を用いて、有効なネガ型パターン形成又はポジ型パターン形成を所望の解像度で行うことができる。1つの現像剤が、同時に除去される両方のコーティングには有効でない場合、有機金属コーティングを仮想画像に沿って現像して下層の領域を露出させることができ、このパターンにより下層にエッチングを行って、基板を露出させることができる。
【0074】
一般に、現像剤の選択は、照射及び非照射の両方の下層及び有機金属レジストコーティング材料に対する溶解度パラメーター、並びに現像剤の揮発性、可燃性、毒性、粘度、及び別のプロセス材料との潜在的な化学的相互作用の影響を受けることがある。有機金属レジストに関して、照射された領域は、少なくとも部分的に縮合して、金属酸化物の性質が高まって、照射された材料は、有機溶媒による溶解に対して抵抗性となり、一方、非照射の組成物は、有機溶媒に対して可溶性のままである。したがって、ネガ型パターンの現像に有機溶媒を効果的に使用することができる。逆にポジ型パターンは、照射された組成物が溶媒と可溶性であり、非照射の組成物が溶媒に対して不溶性のままとなるように選択された、水性の酸又は塩基などの極性溶媒を用いて、効果的に現像することができる。
【0075】
特に、ネガ型画像形成に適切な現像剤としては、例えば、芳香族化合物(例えば、ベンゼン、キシレン、トルエン)、エステル(例えば、プロピレングリコールモノメチルエステルアセテート、酢酸エチル、乳酸エチル、酢酸n-ブチル、ブチロラクトン)、アルコール(例えば、4-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、イソプロパノール、アニソール)、ケトン(例えば、2-ヘプタノン、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン)などが挙げられる。ポジ型画像形成に適切な現像剤としては、水酸化第4級アンモニウム組成物、例えば水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。現像は、約5秒~約30分、さらなる実施形態では約8秒~約15分、さらなる実施形態では約10秒~約10分の間行うことができる。当業者であれば、上記の明示される範囲内のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを認識するであろう。
【0076】
ポリマーアンダーコートの現像又はエッチングは、適切な処理条件を用いて行うことができる。幾つかの実施形態では有機金属レジストコーティング及び下層は、共通の現像剤で同時に現像される。ネガ型パターン形成の場合、現像中に除去される組成物は、有機溶媒に対して可溶性である。したがって、非照射の場所のポリマー下層は、少なくとも、有機溶媒に対して可溶性となるべきである。ポリマーが処理中にあまり架橋しない場合、最初に可溶性のコーティング組成物は、同時現像に適切な有機溶媒に対して可溶性のままとなりうる。ポジ型現像の場合、放射線照射された有機金属パターン形成組成物は、塩基性溶液で除去される。例えば、ポリマーの架橋した基が塩基性溶液中で加水分解する場合、ポリマー下層は、現像されたことによってエッチングされる場合がある。
【0077】
一実施形態では、ネガ型現像に適切な有機金属レジストコーティングは、従来のポジ型レジスト又は類似の組成物であるポリマー組成物を含む下層の上に形成することができる。例えば、従来の(有機)ポジ型レジスト下層材料は、化学増幅レジスト(CAR)であってよい。CARは、限定するものではないが、式(7)のモノマー構造を有し、そのビニル基が重合して対応するビニルポリマーを形成することができる、繰り返し単位などの側鎖酸-感光性基を有するポリマーを含むことができる:
【化10】
(ここで、R=-(CHR’及びn=0~10であり、R’は、例えば、CH、アダマンチル、又はt-ブチルである)。この例では、放射線に露光すると、下層の露光領域は、O-R結合の開裂などによって、極性がより高くなり、水素結合能力がより高くなる。極性が増加することで、レジストの露光領域と下層との間の接着力画像化する。有機溶媒などの適切なネガ型現像剤を用いた有機金属レジストと従来のポジ型レジスト下層との同時現像によって、有機金属レジストと従来のポジ型レジストの非照射領域を選択的に除去することができる。
【0078】
幾つかの実施形態では、下層としての使用に適切となる従来のレジスト材料としては、架橋可能な側鎖を有するポリマーが挙げられる。適切なポリマー繰り返し単位の非限定的な例としては、式(1)の構造を有するものが挙げられる。ポジ型レジストの化学的性質は、本明細書に記載の下層に望ましい特性を有するが、市販のフォトレジスト組成物の詳細は、所望の下層の性質のためには設計されていない場合がある。したがって、濃度、添加剤、溶媒、及びその他の性質を調節することで、所望の厚さ及び現像特性を得るための下層組成物を提供することができる。
【0079】
別の一実施形態では、ポジ型現像に適切な有機金属レジストコーティングを、従来のポジ型レジスト下層の上に形成することができる。この場合、水性TMAH又はその他の水酸化第4級アンモニウムなどの適切なポジ型現像溶媒を用いた構造の同時現像によって、有機金属レジストと従来のポジ型レジストとの照射領域を選択的に除去することができる。当業者は、その他の水性及び/又は極性現像溶媒を使用できることを理解されよう。
【0080】
別の実施形態では、有機金属レジストコーティングと下層とは、逐次的に現像することができる。例えば、逐次現像ステップは、露出した下層に対して選択的である溶媒を用いた溶媒系の第2の現像ステップを伴うことができる。これとは別に、又はこれに加えて、例えば、第2の現像ステップとしてプラズマエッチングを用いてドライエッチングを行って、図7中に示されるように、第1の現像ステップ後に露出した下層を選択的に除去することができる。適切なプラズマエッチングは、例えばOプラズマを用いて行うことができる。
【0081】
さらなる実施形態では、有機金属レジストコーティングと下層との同時現像又は逐次現像のいずれかの後に、リンスステップを行うことができる。リンスステップとのこのような組み合わせによって、現像された構造の品質を改善することができる。リンスは、共通の現像剤である溶媒混合物を用いて行うことができる。リンスのための溶媒混合物の使用は上記にさらに説明しており、この議論がこの場合にも同様に適用される。
【0082】
現像後の加熱。現像ステップの終了後、パターン形成された多層構造は、材料をさらに縮合させ、材料をさらに脱水するために熱処理することができる。この熱処理は、酸化物コーティング材料が最終的なデバイス中に組み込まれる実施形態では特に望ましいことがあるが、コーティング材料の安定性がさらなるパターン形成の促進のために望ましい場合、有機金属コーティング材料がレジストとして使用され最終的に除去される幾つかの実施形態では熱処理を行うことが望ましいことがある。特に、パターン形成されたコーティング材料が所望のレベルのエッチング選択性を示す条件下で、パターン形成された多層構造のベークを行うことができる。幾つかの実施形態では、パターン形成されたコーティング材料は、約100℃~約300℃、さらなる実施形態では約175℃~約2750℃、さらなる実施形態では約200℃~約250℃の温度に加熱することができる。加熱は、少なくとも約1分間、別の実施形態では約2分~約1時間、さらなる実施形態では約2.5分~約25分で行うことができる。加熱は、空気中、真空中、又はAr若しくはNなどの不活性ガス環境中で行うことができる。当業者であれば、上記の明示される範囲内の熱処理の温度及び時間のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを認識するであろう。
【0083】
有機スズパターン形成組成物の場合、パターン形成の欠陥を除去し、パターン形成品質を改善するために使用できる現像後リンスが開発されている。このリンスプロセスは、参照により本明細書に援用され“Organometallic Photoresist Developer Compositions and Processing Methods”と題されるJiangらの米国特許出願第16/845,511号明細書にさらに記載されている。リンス組成物は、Hansen溶解度パラメーターに基づいて選択可能な溶媒混合物を含むことができる。適切なリンス組成物は、約0.25体積パーセント~約45体積パーセントの水、アルコール、グリコールエーテル、ピロリドン、ラクトン、カルボン酸、又はそれらの組み合わせと、少なくとも55体積パーセントのケトン、エーテル、エステル、又はそれらの組み合わせとを有する溶媒混合物を含むことができる。
【0084】
パターン形成後、パターン形成された材料は、パターン形成された材料中の間隙中への材料の堆積、及び/又はパターン形成された材料中の間隙の間の基板材料を除去するためのエッチングなどのさらなる処理に使用することができる。次に、パターン形成されたレジスト材料は、希塩基又はBClプラズマなどの適切なエッチャント組成物を用いたさらなる処理の後に除去することができる。この処理は、パターン形成層のスタックを形成して機能部品を形成するために頻繁に繰り返される。
【0085】
以上の実施形態は、説明的であることを意図したものであって、限定的であることを意図したものではない。さらなる実施形態は請求項の範囲内である。さらに、特定の実施形態を参照して本発明を説明してきたが、当業者であれば、本発明の意図及び範囲から逸脱することなく形態及び詳細の変更が可能であることを認識するであろう。上記の文献の参照によるあらゆる援用は、明示される本開示に反する主題は組み込まれないように限定される。特定の構造、組成、及び/又はプロセスが部品、要素、成分、又はその他の区分とともに本明細書に記載される範囲内で、特に明記されなければ、本開示が、特定の実施形態、上記の特定の部品、要素、成分、その他の区分、又はそれらの組み合わせを含む実施形態、並びに議論で示唆されるような主題の基本的な性質を変化させないさらなる特徴を含むことができる、このような特定の部品、成分、若しくはその他の区分、又はそれらの組み合わせから本質的になる実施形態を含むものと理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する基板と、前記基板表面の少なくとも一部の上にある下層コーティングと、前記下層コーティングの少なくとも一部の上にある放射線感受性の有機金属レジストコーティングとを含む多層構造であって、前記下層コーティングが、架橋性部分及び接着促進側鎖を有するポリマー組成物を含む、多層構造であって、
前記ポリマー組成物の繰り返し単位は、官能化スチレン、官能化アクリレート、官能化ビニルケトン、官能化アクリルアミド、官能化ウレタンアクリレート、官能化フェノール樹脂、その他の官能化ビニル繰り返し単位、又はそれらの組み合わせを含み、前記繰り返し単位の側鎖は、アミン、イミン、イミド、オキシム、カルボン酸アミド、カルボン酸、チオール、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、スルホニウム塩、感光性部分、又はそれらの組み合わせで末端官能化され、前記ポリマー組成物は、溶液からの適切な膜形成特性を有する、多層構造。
【請求項2】
表面を有する基板と、前記基板表面の少なくとも一部の上にある下層コーティングと、前記下層コーティングの少なくとも一部の上にある放射線感受性の有機金属レジストコーティングとを含む多層構造であって、前記下層コーティングが、架橋性部分及び接着促進側鎖を有するポリマー組成物を含む、多層構造であって、
前記ポリマー組成物の繰り返し単位は、官能化スチレン、官能化アクリレート、官能化ビニルケトン、官能化アクリルアミド、官能化ウレタンアクリレート、官能化フェノール樹脂、その他の官能化ビニル繰り返し単位、又はそれらの組み合わせを含み、前記繰り返し単位の側鎖は、アミン、イミン、イミド、オキシム、カルボン酸アミド、カルボン酸、チオール、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸又はそれらの組み合わせで末端官能化され、前記ポリマー組成物は、溶液からの適切な膜形成特性を有する、多層構造。
【請求項3】
前記下層コーティングと前記有機金属レジストコーティングとの間の接着が放射線に対して感受性である、請求項1又は2に記載の多層構造。
【請求項4】
前記繰り返し単位が、側鎖架橋性部分及び/又は末端鎖架橋性部分を有し、前記繰り返し単位が、官能化アクリレート、官能化ビニルケトン、官能化アクリルアミド、その他の官能化ビニル繰り返し単位、又はそれらの混合物を含み、前記架橋性部分は、ヒドロキシド、エーテル、グリシジル、エポキシド、メトキシメチル尿素、アクリレート、又はそれらの組み合わせで末端官能化することができ、前記ポリマー組成物が、溶液からの適切な膜形成特性を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項5】
前記繰り返し単位が式(1):
【化1】
の構造を有し、ここで、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はCF基であり、Aは、-CO-結合、-CO-結合、又は-CONH-結合であり、Rは、エーテル、グリシジル、エポキシド、メトキシメチル尿素、アクリレート、又はそれらの組み合わせであるか、又は
前記繰り返し単位が式(2):
【化2】

の構造を有し、ここで、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はCF基であり、Rは、水素結合が可能な接着促進部分へのアルキル結合を含むか、又は
前記繰り返し単位が式(3):
【化3】

の構造を有し、ここで、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はCF基であり、Aは、-CO-結合、-CO-結合、又は-CONH-結合であり、Rは、水素結合が可能な接着促進部分へのアルキル結合を含む、
請求項に記載の多層構造。
【請求項6】
前記繰り返し単位の5%~65%が側鎖架橋性部分を有する、請求項に記載の多層構造。
【請求項7】
前記ポリマー組成物が架橋され、前記下層コーティングが2nm~40nmの平均厚さを有し、前記下層コーティングの厚さが前記下層コーティングの前記平均厚さから25%未満で変動する、請求項1~6のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項8】
前記繰り返し単位の側鎖が、水素結合が可能であり、アミン、イミン、イミド、オキシム、カルボン酸アミド、カルボン酸、チオール、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、又はスルホン酸を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項9】
前記繰り返し単位の側鎖が、式(4):
【化4】
の構造によって表される感光性部分を含み、ここで、Xは、トリフェニルスルホニウム又はビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムである、請求項1に記載の多層構造。
【請求項10】
前記繰り返し単位の側鎖が、式(5):
【化5】

の構造によって表される感光性部分を含み、ここで、Zは、式(6):
【化6】
又は
の構造から選択され、ここで、*は、PAGのスルホネートのO原子への結合である、請求項1~8のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項11】
前記基板が、シリコンウエハ、シリカ基板、その他の無機材料、ポリマーシート、及びそれらの組み合わせを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項12】
前記有機金属レジストコーティングが、材料に存在する金属原子に結合する放射線感受性配位子を有する材料を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項13】
前記放射線感受性配位子がアルキル配位子を含み、前記金属原子がスズである、請求項12に記載の多層構造。
【請求項14】
前記有機金属レジストコーティングが、式RSnO(2-z/2-x/2)(OH)(ここで、0<x<3、0<z≦2、x+z≦4であり、Rは、スズ原子と炭素結合を形成するヒドロカルビル基である)で概略的に表される酸化水酸化アルキルスズを含む、請求項12に記載の多層構造。
【請求項15】
前記有機金属レジストコーティングが1nm~50nmの平均厚さを有する、請求項11~14のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項16】
前記有機金属レジストコーティングが、パターン形成され、前記有機金属レジストコーティングの第1の部分が、アルキル配位子-金属結合の放射線開裂のために前記有機金属レジストコーティングよりも金属に結合するより少ないアルキル配位子を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項17】
前記有機金属レジストコーティングがパターン形成され、前記有機金属レジストコーティングの第1の部分が、アルキル配位子金属結合の放射線開裂のため、前記有機金属レジストコーティングの第2の部分より少ない、金属に結合したアルキル配位子を有し、前記有機金属レジストコーティングの前記第1の部分が、照射された材料を含み、前記接着促進部分が、感光性部分を含む、請求項1に記載の多層構造。
【請求項18】
極紫外光の照射によって、非照射のコーティングと比較して溶解性が変化する、請求項1~17のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項19】
極紫外光の照射によって、前記下層と前記有機金属レジストコーティングとの間の接着相互作用が変化する、請求項14~18のいずれか一項に記載の多層構造。
【請求項20】
前記下層コーティングが、少なくとも一部の有機溶媒に対して可溶性である、請求項1又は2に記載の多層構造。
【請求項21】
前記下層コーティングが、3nm~25nmの平均厚さを有し、前記下層コーティングの厚さが、前記下層コーティングの前記平均厚さから約25%未満で変動する、請求項1又は2に記載の多層構造。
【請求項22】
前記下層の乾燥厚さ-対-前記有機金属レジストコーティングの乾燥厚さの比が、3:1~1:2である、請求項1又は2に記載の多層構造。
【請求項23】
前記基板がシリコンウエハを含み、前記下層コーティングが前記基板上に直接配置される、請求項1又は2に記載の多層構造。
【請求項24】
前記感光性部分が、スルホン酸スルホニウム、スルホン酸ヨードニウム、N-スルホン酸イミド、N-スルホン酸イミン又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の多層構造。
【請求項25】
前記繰り返し単位の側鎖が、アミン、イミン、イミド、オキシム、カルボン酸アミド、カルボン酸、チオール、チオカルボン酸若しくはジチオカルボン酸又はそれらの組み合わせで末端官能化される、請求項1又は2に記載の多層構造。
【外国語明細書】