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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153950
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】通信複合ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20241022BHJP
   H01B 11/00 20060101ALI20241022BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20241022BHJP
   B61G 5/10 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01B7/00 310
H01B11/00 Z
H01B7/00 301
H01B7/18 H
B61G5/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024137624
(22)【出願日】2024-08-19
(62)【分割の表示】P 2020042275の分割
【原出願日】2020-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】吉田 優弥
(57)【要約】
【課題】いずれの通信ケーブルにおいても所定の基準値を超えるリターンロスが発生することのない通信複合ケーブルを実現する。
【解決手段】撚られた複数本の通信ケーブルを有し、2つの鉄道車両間に跨って配策される通信複合ケーブルであって、前記複数本の通信ケーブルのうちの少なくとも2本は、撚られた複数本の対撚り線を備え、前記対撚り線のそれぞれは、撚られた複数本の絶縁電線を備え、前記複数本の通信ケーブル,対撚り線及び絶縁電線の撚り方向が同一である、通信複合ケーブル。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撚られた複数本の通信ケーブルを有し、2つの鉄道車両間に跨って配策される通信複合ケーブルであって、
前記複数本の通信ケーブルのうちの少なくとも2本は、撚られた複数本の対撚り線を備え、
前記対撚り線のそれぞれは、撚られた複数本の絶縁電線を備え、
前記複数本の通信ケーブル,対撚り線及び絶縁電線の撚り方向が同一である、通信複合ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の通信複合ケーブルにおいて、
テンションメンバと、
前記テンションメンバの周囲に配置された5本の前記通信ケーブルと、
前記テンションメンバ及び通信ケーブルの周囲に配置された介在と、を有する、通信複合ケーブル。
【請求項3】
請求項2に記載の通信複合ケーブルにおいて、
5本の前記通信ケーブルのうち、3本の通信ケーブルの伝送帯域は600MHzであり、
5本の前記通信ケーブルのうち、2本の通信ケーブルの伝送帯域は100MHzである、通信複合ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ケーブルに関するものであり、特に、複数本の通信ケーブルを有する通信複合ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数本の通信ケーブルを有する通信複合ケーブルが知られている。従来の通信複合ケーブルの一例として、伝送帯域が異なる2本以上のLAN(Local Area Network)ケーブルを含む鉄道車両用のジャンパーケーブルが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-188249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本件発明者は、通信複合ケーブルにおけるリターンロスについて、ある周波数で所定の基準値を超える値(ピーク値)が発生するとの知見を得た。かかる知見に基づいて研究を進めたところ、通信複合ケーブルに含まれている個々の通信ケーブル単体ではリターンロスに異常が見られないことが確認された。具体的には、通信複合ケーブル製造前の複数本の通信ケーブルについて個別にリターンロスを測定したところ、ピーク値の発生は確認されなかった。一方、ピーク値の発生が確認されなかった複数本の通信ケーブルが撚られた通信複合ケーブルでは、少なくとも1本以上の通信ケーブルにおいてピーク値の発生が確認された。
【0005】
そこで、本件発明者は、いずれの通信ケーブルにおいても所定の基準値を超えるリターンロスが発生することのない通信複合ケーブルを実現すべくさらに研究を進め、本件発明を完成させるに至った。
【0006】
本発明の目的は、いずれの通信ケーブルにおいても基準値を超えるリターンロスが発生することのない通信複合ケーブルを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の通信複合ケーブルは、撚られた複数本の通信ケーブルを有する。前記複数本の通信ケーブルのうちの少なくとも2本は、撚られた複数本の対撚り線を備え、前記対撚り線のそれぞれは、撚られた複数本の絶縁電線を備える。そして、前記複数本の通信ケーブル,対撚り線及び絶縁電線の撚り方向は同一である。
【0008】
本発明の一態様では、通信複合ケーブルは、テンションメンバと、前記テンションメンバの周囲に配置された5本の前記通信ケーブルと、前記テンションメンバ及び通信ケーブルの周囲に配置された介在と、を有する。
【0009】
本発明の他の一態様では、5本の前記通信ケーブルのうち、3本の通信ケーブルの伝送帯域は600MHzであり、5本の前記通信ケーブルのうち、2本の通信ケーブルの伝送帯域は100MHzである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、いずれの通信ケーブルにおいても基準値を超えるリターンロスが発生することのない通信複合ケーブルが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の通信複合ケーブルの一例を示す断面図である。
図2図1に示される通信複合ケーブルにおける通信ケーブルの撚り方向を模式的に示す説明図である。
図3図1に示される通信複合ケーブルにおける対撚り線及び絶縁電線の撚り方向を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の通信複合ケーブルの実施形態の一例について説明する。本実施形態に係る通信複合ケーブルは、2つの鉄道車両間に跨って配策されるジャンパーケーブルである。尚、以下の説明では、同一又は実質的に同一の構成や要素等については、原則として同一の符号を用いる。
【0013】
図1に示されているジャンパーケーブル1は、テンションメンバ10,複数本の通信ケーブル20,介在30,押えテープ40及びシース50を有している。尚、本実施形態に係るジャンパーケーブル1が有する通信ケーブル20の本数は5本である。以下の説明では、図1に示されている5本の通信ケーブル20のそれぞれを「通信ケーブル20a」,「通信ケーブル20b」,「通信ケーブル20c」,「通信ケーブル20d」,「通信ケーブル20e」と呼んで区別する場合がある。つまり、ジャンパーケーブル1が有する5本の通信ケーブル20を符号によって区別する場合がある。もっとも、かかる区別は説明の便宜上の区別に過ぎない。
【0014】
テンションメンバ10は、ジャンパーケーブル1の中心に配置されており、高張力線11と、高張力線11の周囲に設けられた弾性介在層12と、を有している。本実施形態における高張力線11は、撚られた複数本のピアノ線である。
【0015】
弾性介在層12は、エラストマーによって形成されている。具体的には、弾性介在層12は、ポリオレフィン系エラストマーによって形成されている。より具体的には、弾性介在層12は、エチレンプロビレンゴム等のポリオレフィン系ゴムに、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂を混合させたポリオレフィン系エラストマーを高張力線11の周囲に押し出すことによって形成されている。
【0016】
介在30は、テンションメンバ10,通信ケーブル20及び介在30の集合体の断面形状が円形又は略円形となるように、テンションメンバ10と通信ケーブル20との隙間や通信ケーブル20の周囲の隙間に配置されている。介在30には、例えば、プラスチックやジュート等で形成された繊維状介在や糸状介在が用いられる。
【0017】
図1に示されている5本の通信ケーブル20a,20b,20c,20d,20eは、テンションメンバ10の周囲において、所定の撚りピッチで同方向に撚られている。この結果、ジャンパーケーブル1の横断面内(図1に示されている断面内)では、テンションメンバ10の周囲に当該テンションメンバ10の周方向に沿って通信ケーブル20a,20b,20c,20d,20eが等間隔又は略等間隔で配置されている。
【0018】
図2に示されるように、ジャンパーケーブル1が有する通信ケーブル20a,20b,20c,20d,20eの撚り方向は右方向である。言い換えれば、通信ケーブル20a,20b,20c,20d,20eは、全て右撚り(S撚り)されている。以下の説明では、ジャンパーケーブル1が有する通信ケーブル20の撚り方向を「第1撚り方向」と呼ぶ場合がある。尚、図2では、図1に付されているハッチング等は省略されている。
【0019】
再び図1を参照する。図示されている5本の通信ケーブル20のうち、通信ケーブル20a,20b,20d,20eは、同一の基本構造を有している。具体的には、通信ケーブル20a,20b,20d,20eは、4本の対撚り線21と、それら対撚り線21の周囲に設けられた内部シース22及び遮蔽層23と、を備えている。但し、通信ケーブル20aでは、4本の対撚り線21の外側に内部シース22が設けられ、内部シース22の外側に遮蔽層23が設けられている。一方、通信ケーブル20b,20d,20eでは、4本の対撚り線21の外側に遮蔽層23が設けられ、遮蔽層23の外側に内部シース22が設けられている。また、通信ケーブル20b,20d,20eが備える各対撚り線21の周囲には遮蔽テープ27が巻かれているが、通信ケーブル20aが備える各対撚り線21の周囲には遮蔽テープが巻かれていない。
【0020】
通信ケーブル20a,20b,20d,20eが備える4本の対撚り線21は所定ピッチで撚られており、それぞれの対撚り線21を構成している2本の絶縁電線24も所定ピッチで撚られている。また、それぞれの対撚り線21を構成している絶縁電線24は、導体25と、導体25の周囲に設けられた絶縁層26と、を備えている。
【0021】
図1に示されている通信ケーブル20cは、所定ピッチで撚られた4本の絶縁電線24を備えている。それぞれの絶縁電線24は、導体25と、導体25の周囲に設けられた絶縁層26と、を備えている。4本の絶縁電線24の周囲には遮蔽層23が設けられ、遮蔽層23の周囲には内部シース22が設けられている。
【0022】
図3に示されるように、通信ケーブル20aが備える4本の対撚り線21は、右撚り(S撚り)されている。図示は省略するが、図1に示されている通信ケーブル20b,20d,20eが備える4本の対撚り線21も、全て右撚り(S撚り)されている。以下の説明では、通信ケーブル20a,20b,20d,20eのそれぞれが備える4本の対撚り線21の撚り方向を「第2撚り方向」と呼ぶ場合がある。
【0023】
図3に示されるように、通信ケーブル20aが備える各対撚り線21を構成している2本の絶縁電線24は、全て右撚り(S撚り)されている。図示は省略するが、図1に示されている通信ケーブル20b,20d,20eが備える各対撚り線21を構成している2本の絶縁電線24も、全て右撚り(S撚り)されている。以下の説明では、対撚り線21を構成している2本の絶縁電線24の撚り方向を「第3撚り方向」と呼ぶ場合がある。尚、図3では、図1に付されているハッチング等は省略されている。
【0024】
図1に示されている通信ケーブル20a,20cと、通信ケーブル20b,20d,20eとは、伝送帯域が異なる。具体的には、通信ケーブル20aは、カテゴリー5のLANケーブル(0.5mm2×4P)であり、伝送帯域は100MHz(IEC61156-6準拠)である。一方、通信ケーブル20b,20d,20eは、カテゴリー7のLANケーブル(AWG24×4P)であり、伝送帯域は600MHz(IEC61156-6準拠)である。また、通信ケーブル20cは、カテゴリー5のLANケーブル(0.5mm2×4C)であり、伝送帯域は100MHz(IEC61156-6準拠)である。つまり、ジャンパーケーブル1は、2本のCAT5のLANケーブルと、3本のCAT7のLANケーブルと、を含むイーサネット(登録商標)系通信複合ケーブルである。
【0025】
それぞれの通信ケーブル20における内部シース22の厚みは、5本の通信ケーブル20の外径が同一又は略同一となるように調整されている。ここで、5本の通信ケーブル20の外径が同一又は略同一とは、5本の通信ケーブル20の外径の平均値に対する各通信ケーブル20の外径の差が±0.5mmの範囲内であることを意味する。
【0026】
それぞれの通信ケーブル20における内部シース22は、ポリオレフィン系樹脂によって押出成形されている。それぞれの通信ケーブル20の最外層(内部シース22又は遮蔽層23)は、テンションメンバ10の弾性介在層12と接している。
【0027】
上記のとおり、ジャンパーケーブル1が有する5本の通信ケーブル20a,20b,20c,20d,20eは、右撚り(S撚り)されている。また、通信ケーブル20a,20b,20d,20eのそれぞれが備える4本の対撚り線21も、右撚り(S撚り)されている。さらに、各対撚り線21を構成している2本の絶縁電線24も、右撚り(S撚り)されている。尚、通信ケーブル20cは対撚り線21を備えていない。よって、通信ケーブル20cについては、対撚り線21の撚り方向(第2撚り方向)は観念されない。
【0028】
以上のように、本実施形態に係るジャンパーケーブル1は、複数本の通信ケーブル20を有している。そして、本実施形態に係るジャンパーケーブル1では、第1撚り方向,第2撚り方向及び第3撚り方向の3つの撚り方向が全て同一の方向(右方向)に統一されている。
【0029】
上記のような技術的特徴を有する本実施形態のジャンパーケーブル1が有する通信ケーブル20のリターンロスを測定した結果、所定の基準値を超えるピーク値は検出されなかった。具体的には、ジャンパーケーブル1に含まれているそれぞれの通信ケーブル20を用いて所定周波数の電気信号を伝送したときのリターンロスを測定したところ、いずれの通信ケーブル20においても、基準値を超えるリターンロスは検出されなかった。
【0030】
比較のために、第1撚り方向のみが本実施形態のジャンパーケーブル1と異なる通信複合ケーブルを用意し、同様の測定を行った。用意した通信複合ケーブルは、第2撚り方向及び第3撚り方向が「右」であるのに対し、第1撚り方向は「左」である。この結果、基準値を超えるリターンロスが検出された。
【0031】
尚、上記基準値(dB)は、伝送する電気信号の周波数をf(MHz)としたとき、下記(式1)によって算出される値である。
25-8.6log(f/20)(但、20≦f<600)・・・(式1)
上記測定結果より、第1撚り方向(通信ケーブル20の撚り方向),第2撚り方向(対撚り線21の撚り方向)及び第3撚り方向(対撚り線21を構成している絶縁電線24の撚り方向)の3つの撚り方向が同一である本実施形態のジャンパーケーブル1では、基準値を超えるリターンロスが発生しないことが確認された。また、上記測定結果より、第1撚り方向,第2撚り方向及び第3撚り方向の3つの撚り方向が同一である本実施形態のジャンパーケーブル1では、通信ケーブル20,対撚り線21及び絶縁電線24の三者の撚りのいずれもが開くことがなく、よって、リターンロスに異常が発生しなかったものと推認される。
【0032】
尚、図1に示されている押えテープ40は樹脂テープであり、遮蔽テープ27はアルミが蒸着されたPETテープである。また、ジャンパーケーブル1の最外層を形成しているシース50は、ポリオレフィン系エラストマーによって形成されている。
【0033】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本発明の通信複合ケーブルに含まれる通信ケーブルは、LANケーブルに限られない。また、通信ケーブルの数や種類等は、次の(1),(2)を満たすことを条件に適宜変更することができる。
(1)撚られた2本以上の対撚り線を備える通信ケーブルが少なくとも2本含まれていること。
(2)上記対撚り線のそれぞれは、撚られた2本以上の絶縁電線を含んでいること。
【0034】
また、第1撚り方向,第2撚り方向及び第3撚り方向の3つの撚り方向が統一されていればよく、その方向は右方向(S撚り)であってもよく、左方向(Z撚り)であってもよい。
【0035】
図1に示されている高張力線11は、ピアノ線以外の鋼線に置換することができる。また、弾性介在層12は、上記組成とは異なる組成のポリオレフィン系エラストマーによって形成することができ、また、弾性介在層12やシース50は、ポリオレフィン系エラストマー以外の材料によって形成することもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 ジャンパーケーブル
10 テンションメンバ
11 高張力線
12 弾性介在層
20,20a,20b,20c,20d,20e 通信ケーブル
21 対撚り線
22 内部シース
23 遮蔽層
24 絶縁電線
25 導体
26 絶縁層
27 遮蔽テープ
30 介在
40 押えテープ
図1
図2
図3