(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154134
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】研削方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241023BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20241023BHJP
B28D 5/04 20060101ALI20241023BHJP
B28D 5/02 20060101ALI20241023BHJP
B24B 7/22 20060101ALI20241023BHJP
B24B 49/04 20060101ALI20241023BHJP
B24B 49/16 20060101ALI20241023BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
H01L21/304 622S
H01L21/304 611Z
H01L21/304 631
B23K26/53
B28D5/04 Z
B28D5/02 Z
B24B7/22 Z
B24B49/04 Z
B24B49/16
B24B49/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067787
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佳一
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C069
4E168
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034AA13
3C034BB73
3C034CA02
3C034CA17
3C034CA18
3C034CA26
3C034CA30
3C034CB03
3C034DD07
3C034DD10
3C043BB03
3C043CC04
3C043DD06
3C069AA06
3C069BC03
3C069CA04
3C069EA04
4E168AE01
4E168JA12
4E168JA13
5F057AA20
5F057AA41
5F057BA01
5F057BA12
5F057BB03
5F057BB07
5F057BB09
5F057BB12
5F057BC06
5F057CA02
5F057CA11
5F057DA11
5F057DA19
5F057DA22
5F057DA31
5F057EB16
5F057EB18
5F057FA13
5F057GA02
5F057GA03
5F057GA12
5F057GA16
5F057GA28
5F057GB04
5F057GB05
5F057GB13
5F057GB31
(57)【要約】
【課題】剥離後のウェーハやインゴットの剥離面に形成された分離層を除去するための研削量を低減する研削方法を提供すること。
【解決手段】インゴットの内部にレーザビームを照射することによって分離層を形成し、分離層を起点にインゴットから剥離された、剥離面に分離層が表面側に残るウェーハから分離層を研削するウェーハの研削方法は、ウェーハの裏面をチャックテーブルで保持する保持ステップ1001と、チャックテーブルに保持されたウェーハを研削ホイールで研削する研削ステップ1002と、を備え、研削ステップ1002は、ウェーハの表面側に形成された分離層の有無を監視しながら研削を実施し、分離層がなくなったら研削を終了させることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インゴットの内部にレーザビームを照射することによって分離層を形成し、該分離層を起点にインゴットから剥離された、剥離面に分離層が表面側に残るウェーハから該分離層を研削するウェーハの研削方法であって、
該ウェーハの裏面をチャックテーブルで保持する保持ステップと、
該チャックテーブルに保持された該ウェーハを研削ホイールで研削する研削ステップと、を備え、
該研削ステップは、
該ウェーハの表面側に形成された分離層の有無を監視しながら研削を実施し、該分離層がなくなったら研削を終了させることを特徴とする研削方法。
【請求項2】
該研削ステップは、
該分離層の予想厚さ分を研削ホイールの移動量と設定し、該移動量を監視し該分離層を予想厚さ分研削する事前研削ステップと、
該分離層の有無を監視しながら研削を実施する終点研削ステップと、を備える請求項1記載の研削方法。
【請求項3】
該研削ステップは、
該ウェーハの厚みを測定しながら研削を実施し、該ウェーハの厚み変化量と研削ホイールが装着されたスピンドルの移動量とから該研削ホイールの消耗率を算出し、該消耗率の変化により該分離層の有無を検知することを特徴とする請求項1または請求項2記載の研削方法。
【請求項4】
該研削ステップは、
該ウェーハを保持するチャックテーブルもしくは研削ホイールが装着されたスピンドルにかかる研削荷重を監視しながら研削を実施し、該研削荷重の変化により該分離層の有無を検知することを特徴とする請求項1または請求項2記載の研削方法。
【請求項5】
該研削ステップは、
研削ホイールが装着されたスピンドルの負荷電流値を監視しながら研削を実施し、該負荷電流値の変化により該分離層の有無を検知することを特徴とする請求項1または請求項2記載の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インゴットに対して透過性を有する波長のレーザビームの集光点を単結晶インゴットの内部に位置づけて照射し、切断予定面に改質層及びクラックを含む分離層を形成し、外力を付与してウェーハを分離層が形成された切断予定面に沿って割断して、インゴットからウェーハを分離する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウェーハをインゴットから剥離するとウェーハやインゴットの剥離面が凹凸となるため、剥離後のウェーハやインゴットは、凹凸の除去、すなわちウェーハやインゴットの剥離面に形成された分離層の除去のための研削が行われる。この研削では、ウェーハやインゴットの剥離面に形成された分離層を完全に除去することが必須となるが、剥離後のウェーハやインゴットは、生産性コスト低下のためになるべく少ない量での研削が求められるという課題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、剥離後のウェーハやインゴットの剥離面に形成された分離層を除去するための研削量を低減する研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の研削方法は、インゴットの内部にレーザビームを照射することによって分離層を形成し、該分離層を起点にインゴットから剥離された、剥離面に分離層が表面側に残るウェーハから該分離層を研削するウェーハの研削方法であって、該ウェーハの裏面をチャックテーブルで保持する保持ステップと、該チャックテーブルに保持された該ウェーハを研削ホイールで研削する研削ステップと、を備え、該研削ステップは、該ウェーハの表面側に形成された分離層の有無を監視しながら研削を実施し、該分離層がなくなったら研削を終了させることを特徴とする。
【0007】
該研削ステップは、該分離層の予想厚さ分を研削ホイールの移動量と設定し、該移動量を監視し該分離層を予想厚さ分研削する事前研削ステップと、該分離層の有無を監視しながら研削を実施する終点研削ステップと、を備えてもよい。
【0008】
該研削ステップは、該ウェーハの厚みを測定しながら研削を実施し、該ウェーハの厚み変化量と研削ホイールが装着されたスピンドルの移動量とから該研削ホイールの消耗率を算出し、該消耗率の変化により該分離層の有無を検知してもよい。
【0009】
該研削ステップは、該ウェーハを保持するチャックテーブルもしくは研削ホイールが装着されたスピンドルにかかる研削荷重を監視しながら研削を実施し、該研削荷重の変化により該分離層の有無を検知してもよい。
【0010】
該研削ステップは、研削ホイールが装着されたスピンドルの負荷電流値を監視しながら研削を実施し、該負荷電流値の変化により該分離層の有無を検知してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本願発明は、研削ステップでウェーハもしくはインゴットの剥離面(表面側)に形成された分離層の有無を監視しながら研削を実施し、分離層がなくなったら研削を終了させるため、剥離後のウェーハやインゴットの剥離面(表面側)に形成された分離層を除去するための研削量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係る研削方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、
図1の実施形態に係る研削方法を実施する研削装置の構成例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3の研削装置の要部の一部を示す分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る研削方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係る研削方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図2は、
図1の実施形態に係る研削方法を実施する研削装置1の構成例を示す斜視図である。実施形態に係る研削方法は、
図1に示すように、保持ステップ1001と、研削ステップ1002と、を備える。実施形態に係る研削方法の保持ステップ1001及び研削ステップ1002は、いずれも、例えば、
図2に示す研削装置1を用いて実施される。
【0015】
実施形態に係る研削方法の研削対象である被加工物100は、本実施形態では、
図2に示すように、例えば、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素などを基板とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハ、もしくは、同様の材料であるシリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素などを母材とする単結晶の半導体インゴット等のインゴットである。
【0016】
被加工物100は、単結晶のインゴットの内部に、インゴットに対して透過性を有するレーザビームを照射することによって改質層が形成され、さらに改質層の両側から伸長するクラックが形成されることにより、改質層及びクラックを含む分離層が形成され、この分離層を起点にインゴットから剥離されたウェーハ、もしくは、この分離層を起点にウェーハが剥離されたインゴットである。なお、改質層は、例えば、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域である。
【0017】
被加工物100は、インゴットから剥離されたウェーハである場合、インゴットから剥離された剥離面に凹凸を有する分離層が残る。被加工物100は、ウェーハが剥離されたインゴットである場合、ウェーハが剥離された剥離面に凹凸を有する分離層が残る。本明細書では、被加工物100の分離層が残る剥離面側を表面側と称し、被加工物100の分離層が残る剥離面とは反対の面側を裏面側と称する。
【0018】
被加工物100は、インゴットから剥離されたウェーハである場合、実施形態に係る研削方法により表面側から分離層が除去され、その後、例えば、一方の面に互いに交差(直交)する分割予定ラインが形成され、分割予定ラインによって区画された各領域にチップ状のデバイスが形成され、分割予定ラインに沿って切削装置等によって分割されることで、個々の半導体デバイスチップが製造される。被加工物100は、ウェーハが剥離されたインゴットである場合、実施形態に係る研削方法により表面側から分離層が除去され、その後、上記したように再びインゴットに対して透過性を有するレーザビームを照射することによって改質層が形成され、さらに改質層の両側から伸長するクラックが形成されることにより、改質層及びクラックを含む分離層が形成され、この分離層を起点にインゴットからウェーハが剥離される。
【0019】
実施形態に係る研削方法の保持ステップ1001及び研削ステップ1002を実施する研削装置1は、
図2に示すように、チャックテーブル10と、研削ユニット20と、接触式厚み測定ユニット30と、制御ユニット40と、を備える。なお、本実施形態では、研削ユニット20(スピンドル21)が1つ設けられたいわゆる単軸型の研削装置1を使用するが、本発明ではこれに限定されず、研削ユニット20(スピンドル21)が2つ設けられたいわゆる2軸型の研削装置や、研削ユニット20(スピンドル21)が3つ以上設けられた研削装置を使用してもよい。
【0020】
図3は、
図2の研削装置1の要部を示す断面図である。
図4は、
図3の研削装置1の要部の一部を示す分解断面図である。チャックテーブル10は、被加工物100を裏面側から保持する。チャックテーブル10は、不図示の移動ユニットにより、
図2の左手前側に位置する搬入搬出位置と、
図2の右奥側に位置する研削ユニット20に接近した研削位置との間で、水平方向と平行なX軸方向に移動自在に設けられている。
【0021】
チャックテーブル10は、
図3及び
図4に示すように、凹部が形成された円盤状の枠体11と、凹部内に嵌め込まれた円盤形状の吸着部12と、を備える。チャックテーブル10の吸着部12は、多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等から形成され、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。チャックテーブル10の吸着部12の上面は、載置された被加工物100を下方側から吸引保持する保持面13である。枠体11の上面と保持面13とは、本実施形態では、
図2に示すように、チャックテーブル10の保持面13の中心13-1を頂点とし、外周が僅かに低い円錐面状に形成されている。なお、保持面13は、本発明ではこれに限定されず、平坦に形成されていてもよい。
【0022】
チャックテーブル10は、
図3及び
図4に示すように、下方に、チャックテーブル10を支持する環状のベアリング14が設けられており、環状のベアリング14の下方には、環状の支持板15が固定されている。ベアリング14は、チャックテーブル10を支持板15に対して回転可能に支持している。支持板15の下方には、環状のテーブルベース16が設けられている。
【0023】
チャックテーブル10は、回転駆動源17により、保持面13の中心13-1を通り、保持面13を形成する円錐の底面に直交する所定の回転軸回りに回転自在に設けられている。
図3及び
図4に示すように、回転駆動源17は、ベアリング14、支持板15及びテーブルベース16のそれぞれの中央に設けられた開口に位置付けられており、チャックテーブル10の枠体11の下方に接続されている。
【0024】
図3及び
図4に示すように、支持板15とテーブルベース16との間には、荷重センサ18が設けられている。荷重センサ18は、チャックテーブル10の保持面13の周方向に沿って等間隔(例えば120度)で複数箇所(例えば3箇所)に設けられている。荷重センサ18は、チャックテーブル10にかかる荷重を測定し、測定した荷重を制御ユニット40に出力する。荷重センサ18は、研削ユニット20による研削中に、チャックテーブル10にかかる研削荷重を測定し、測定した研削荷重を制御ユニット40に出力する。
【0025】
図3及び
図4に示すように、テーブルベース16の下方には、チャックテーブル10の回転軸を鉛直方向と平行なZ軸方向に対して傾斜させる回転軸調整ユニット19が設けられている。チャックテーブル10は、回転軸調整ユニット19により、回転軸が鉛直方向に平行なZ軸方向に対して所定の範囲内の傾斜角だけ傾斜することができ、これに伴い、保持面13は、保持面13を形成する円錐の底面がXY平面に平行な水平面に対して同じ傾斜角だけ傾斜することができる。
【0026】
研削ユニット20は、
図2及び
図3に示すように、スピンドル21と、研削ホイール22と、研削送りユニット24と、研削流体供給ユニット25と、負荷電流値検出センサ26と、荷重センサ28と、を備える。スピンドル21は、鉛直方向(Z軸方向)に平行な軸心回りに回転可能に設けられ、下端に着脱可能に装着された研削ホイール22を鉛直方向に平行な軸心回りに回転可能に支持する。研削ホイール22は、下面に研削砥石23を環状に配置している。研削ホイール22が環状に配置している研削砥石23は、本実施形態では、例えば、ダイヤモンド、cBN(cubic Boron Nitride)等の砥粒を、メタルボンド、レジンボンド、ビトリファイドボンド等のボンド材(結合材)で固定することによって形成されている。
【0027】
研削ユニット20は、スピンドル21が、研削位置に位置付けられたチャックテーブル10の保持面13に、鉛直方向に対向するように配置されている。研削装置1は、本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、研削位置に位置付けられたチャックテーブル10の回転軸と、研削ユニット20のスピンドル21及び研削ホイール22の回転軸とが、水平方向にずれて配設されており、研削ユニット20でチャックテーブル10に保持された被加工物100の被研削面を研削している際に、チャックテーブル10に保持された被加工物100の被研削面の一部を上方に向けて露出させる。
【0028】
研削送りユニット24は、研削ユニット20のスピンドル21及びスピンドル21に装着された研削ホイール22を研削位置に位置付けられたチャックテーブル10に対して研削送り方向(鉛直方向と平行なZ軸方向)に沿って相対的に移動させる研削送りをすることにより、スピンドル21及び研削ホイール22と研削位置に位置付けられたチャックテーブル10とを相対的に研削送り方向に沿って接近および離間させる。
【0029】
研削送りユニット24は、モータと、ボールねじと、ガイドと、を有する公知のボールねじ機構である。研削送りユニット24は、Z軸の軸心回りに回転自在に設けられたボールねじと、ボールねじを軸心回りに回転させるモータと、スピンドル21をZ軸方向に移動自在に支持するガイドと、を有して構成されている。研削送りユニット24は、制御ユニット40により、モータの駆動が制御されることにより、送り速度、及び、移動量等が制御される。ここで、送り速度は、研削送りユニット24により、スピンドル21及び研削ホイール22を研削位置に位置付けられたチャックテーブル10に対してZ軸方向に沿って相対的に接近および離間させる速度のことを指す。また、移動量は、研削送りユニット24によりスピンドル21及び研削ホイール22を研削位置に位置付けられたチャックテーブル10に対してZ軸方向に沿って相対的に接近および離間させた量(高さ)のことを指す。送り速度は、単位時間当たりの移動量となる。
【0030】
研削送りユニット24は、モータの回転位置を読み取るエンコーダを含み、エンコーダが読み取ったモータの回転位置に基づいて、スピンドル21の研削位置に位置付けられたチャックテーブル10に対するZ軸方向の相対的な位置を検出し、検出した相対的な位置を制御ユニット40に出力する。ここで、Z軸方向の相対的な位置は、研削装置1に備え付けられた装置直交座標系(XYZ座標)が使用される。装置直交座標系は、例えば、研削位置に位置付けられたチャックテーブル10上の中心が原点に設定される。また、研削送りユニット24は、研削開始前、研削中及び研削終了後に、例えば一定時間毎(例えば、毎秒)に、スピンドル21の研削位置に位置付けられたチャックテーブル10に対するZ軸方向の相対的な位置を検出することにより、送り速度や移動量を検出し、検出した送り速度や移動量を制御ユニット40に出力する。なお、研削送りユニット24は、エンコーダによりスピンドル21の研削位置に位置付けられたチャックテーブル10に対するZ軸方向の相対的な位置を検出する構成に限定されず、Z軸方向に平行なリニアスケールと、研削送りユニット24によりZ軸方向に移動自在に設けられリニアスケールの目盛を読み取る読み取りヘッドと、により構成してもよい。
【0031】
研削流体供給ユニット25は、研削位置に位置付けられたチャックテーブル10に保持された被加工物100に純水等の研削流体を供給する。負荷電流値検出センサ26は、スピンドル21に設けられたスピンドルモータに接続されて設けられており、スピンドル21に設けられたスピンドルモータに流れる電流値であるスピンドル21の負荷電流値を検出する。なお、スピンドル21の負荷電流値は、研削ホイール22で被加工物100を研削する際の研削負荷や研削抵抗が増加すると上昇傾向になるものである。
【0032】
図3に示すように、スピンドル21の下方の、スピンドル21とスピンドル21の外周を覆うカバー部材との間には、荷重センサ28が設けられている。荷重センサ28は、スピンドル21に装着される研削ホイール22の周方向に沿って等間隔(例えば120度)で複数箇所(例えば3箇所)に設けられている。荷重センサ28は、研削ホイール22が装着されたスピンドル21にかかる荷重を測定し、測定した荷重を制御ユニット40に出力する。荷重センサ28は、研削ユニット20による研削中に、研削ホイール22が装着されたスピンドル21にかかる研削荷重を測定し、測定した研削荷重を制御ユニット40に出力する。
【0033】
研削ユニット20は、スピンドル21を鉛直方向に平行な軸心回りに回転駆動することにより、スピンドル21の下端に装着した研削ホイール22を鉛直方向に平行な軸心回りに回転させ、研削位置に位置付けられてスピンドル21に対向配置された、被加工物100を保持するチャックテーブル10を回転軸回りに回転させた状態で、回転させたチャックテーブル10に保持された被加工物100に対し、研削流体供給ユニット25により研削流体を供給しながら、研削送りユニット24により、回転する研削ホイール22を研削送り方向に沿って押圧することによって、研削ホイール22の研削砥石23で被加工物100を研削する。研削ホイール22は、被加工物100を研削面に沿って研削して、被加工物100の被研削面を研削面と平行に形成する。
【0034】
接触式厚み測定ユニット30は、本実施形態では、
図2に示すように、研削位置付近に設けられている。接触式厚み測定ユニット30は、
図2に示すように、第1プローブ31と、第2プローブ32と、を備える。第1プローブ31及び第2プローブ32は、本実施形態では、いずれも接触した位置の高さを測定する接触式のプローブである。
【0035】
第1プローブ31は、被加工物100を保持したチャックテーブル10の保持面13の被加工物100の外側に接触することで、保持面13のZ軸方向における位置、すなわち保持面13の高さを測定する。第2プローブ32は、チャックテーブル10の保持面13に保持された被加工物100の上面(被研削面)に接触することで、被加工物100の上面のZ軸方向における位置(上面位置)、すなわち被加工物100の上面の高さ(上面高さ)を測定する。第1プローブ31及び第2プローブ32は、いずれも、測定した位置(高さ)の結果を制御ユニット40に出力する。また、第1プローブ31及び第2プローブ32は、いずれも、研削開始前、研削中及び研削終了後に、例えば一定時間毎(例えば、毎秒)に、チャックテーブル10の保持面13の高さ及び被加工物100の上面の高さを検出することにより、保持面13の高さの時間変化及び被加工物100の上面の高さの時間変化を取得し、取得したこれらの時間変化を制御ユニット40に出力する。
【0036】
制御ユニット40は、研削装置1の各種構成要素の動作を制御して、実施形態に係る研削方法を含む被加工物100の研削処理等を研削装置1に実施させる。制御ユニット40は、研削ユニット20による被加工物100の研削中に、研削位置に位置付けられたチャックテーブル10に設けられた荷重センサ18により、当該チャックテーブル10にかかる研削荷重を取得し、研削送りユニット24により、スピンドル21の送り速度や移動量を取得し、負荷電流値検出センサ26により、スピンドル21の負荷電流値を取得し、荷重センサ28により、研削ホイール22が装着されたスピンドル21にかかる研削荷重を取得し、接触式厚み測定ユニット30により、保持面13の高さの時間変化及び被加工物100の上面の高さの時間変化を取得する。制御ユニット40は、研削送りユニット24によるスピンドル21の送り速度や移動量を制御する。
【0037】
制御ユニット40は、接触式厚み測定ユニット30により取得した、保持面13の高さ及び被加工物100の上面の高さに基づいて、被加工物100の上面の高さから保持面13の高さを差し引くことにより、被加工物100の厚みを算出する。制御ユニット40は、接触式厚み測定ユニット30により取得した、保持面13の高さの時間変化及び被加工物100の上面の高さの時間変化に基づいて、被加工物100の厚みの時間変化や被加工物100の厚みの変化量を算出し、この算出した被加工物100の厚みの時間変化や被加工物100の厚みの変化量に基づいて、研削ホイール22で被加工物100を研削した研削量を算出する。このように、制御ユニット40は、接触式厚み測定ユニット30により、実質的に、被加工物100の厚み、及び、被加工物100の厚みの時間変化や被加工物100の厚みの変化量を測定することができる。
【0038】
制御ユニット40は、研削送りユニット24により取得したスピンドル21の移動量と、接触式厚み測定ユニット30により実質的に測定して取得した被加工物100の厚みの変化量とに基づいて、スピンドル21の移動量から被加工物100の厚みの変化量を差し引くことにより、スピンドル21に装着された研削ホイール22の消耗量を算出する。また、制御ユニット40は、研削送りユニット24により取得したスピンドル21の移動量と、接触式厚み測定ユニット30により実質的に測定して取得した被加工物100の厚みの変化量とに基づいて、所定の単位時間(例えば、1秒)当たりのスピンドル21の移動量から所定の単位時間当たりの被加工物100の厚みの変化量を差し引き、この差し引いた値を所定の単位時間当たりの被加工物100の厚みの変化量で割ることにより、所定の単位時間におけるスピンドル21に装着された研削ホイール22の消耗率を算出する。また、制御ユニット40は、所定の単位時間における研削ホイール22の消耗率の時間変化のデータに基づいて、所定の時間(例えば、10秒間)当たりの研削ホイール22の消耗率の移動平均を算出する。
【0039】
制御ユニット40は、チャックテーブル10及びスピンドル21のそれぞれにかかる研削荷重の時間変化のデータに基づいて、所定の時間(例えば、10秒間)当たりのチャックテーブル10及びスピンドル21のそれぞれにかかる研削荷重の移動平均を算出する。制御ユニット40は、スピンドル21の負荷電流値の時間変化のデータに基づいて、所定の時間(例えば、10秒間)当たりのスピンドル21の負荷電流値の移動平均を算出する。
【0040】
制御ユニット40は、本実施形態では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット40が含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット40の演算処理装置は、制御ユニット40の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、研削装置1を制御するための制御信号を、制御ユニット40の入出力インターフェース装置を介して研削装置1の各構成要素に出力する。
【0041】
研削装置1は、チャックテーブル10の搬入搬出位置に近接して、不図示のカセット、位置合わせユニット、搬入ユニット、搬出ユニット、洗浄ユニット、及び搬出入ユニットを備えていても良い。カセットは、複数の被加工物100を収容するための収容器である。位置合わせユニットは、カセットから取り出された被加工物100が仮置きされて、その中心位置合わせを行うためのテーブルである。搬入ユニットは、吸着パッドを有し、位置合わせユニットで位置合わせされた研削前の被加工物100を吸着保持して搬入搬出位置に位置付けられたチャックテーブル10上に搬入する。搬出ユニットは、搬入搬出位置に位置付けられたチャックテーブル10上に保持された研削後の被加工物100を吸着保持して洗浄ユニットに搬出する。洗浄ユニットは、研削後の被加工物100を洗浄し、研削された被研削面に付着している研削屑等のコンタミネーションを除去する。搬出入ユニットは、研削前の被加工物100をカセットから位置合わせユニットへ搬出するとともに、研削後の被加工物100を洗浄ユニットからカセットへ搬入する。搬出入ユニットは、例えばU字型の形状をしたハンドを備えるロボットピックであり、U字型ハンドによって被加工物100を吸着保持して被加工物100を搬送する。
【0042】
実施形態に係る研削方法について説明する。本明細書では、以下において、主に被加工物100としてのウェーハを研削して、ウェーハの剥離面(表面側)に形成された分離層を除去するウェーハの研削方法について説明するが、本発明ではこれに限定されず、被加工物100としてインゴットを研削して、インゴットの剥離面(表面側)に形成された分離層を除去するインゴットの研削方法も含む。
【0043】
保持ステップ1001は、被加工物100であるウェーハの裏面をチャックテーブル10で保持するステップである。保持ステップ1001では、まず、不図示の搬出入ユニットにより、不図示のカセットに収容された被加工物100(ウェーハ)を搬出して、不図示の位置合わせユニットに搬送し、位置合わせユニットにより、搬送された被加工物100(ウェーハ)を中心位置合わせした後に、不図示の搬入ユニットにより、位置合わせユニットで中心位置合わせされた被加工物100(ウェーハ)を、搬入搬出位置に位置付けられたチャックテーブル10の保持面13上に搬入する。保持ステップ1001では、次に、保持面13上に搬入された被加工物100(ウェーハ)の裏面を、チャックテーブル10の保持面13で吸引保持し、その後、不図示の移動ユニットにより、保持面13で被加工物100(ウェーハ)を吸引保持したチャックテーブル10を、搬入搬出位置から研削位置に移動させる。
【0044】
研削ステップ1002は、チャックテーブル10に保持された被加工物100であるウェーハを研削ホイール22で研削するステップである。研削ステップ1002では、まず、スピンドル21を鉛直方向に平行な軸心回りに回転駆動することにより、スピンドル21の下端に装着した研削ホイール22を鉛直方向に平行な軸心回りに回転させ、研削位置に位置付けられてスピンドル21に対向配置された、被加工物100(ウェーハ)を保持するチャックテーブル10を、回転軸回りに回転させる。研削ステップ1002では、次に、回転させたチャックテーブル10に保持された被加工物100(ウェーハ)に対し、研削流体供給ユニット25により研削流体を供給しながら、研削送りユニット24により回転する研削ホイール22を研削送り方向に沿って押圧することによって、研削ホイール22の研削砥石23で被加工物100(ウェーハ)を研削する。
【0045】
図5は、
図1の研削ステップ1002を説明する図である。
図5は、研削ステップ1002と同様にして、スピンドル21の送り速度を例えば0.4μm/sで一定に維持して、その他の研削ホイール22で被加工物100(ウェーハ)を研削する研削条件も同じに維持して、研削ホイール22で、剥離面(表面側)に15μm程度の厚みの分離層が形成された被加工物100(ウェーハ)の剥離面(表面側)を研削した際の、被加工物100(ウェーハ)の研削量に対する研削ホイール22の消耗率の変化のグラフを示している。ここで、算出した研削ホイール22の消耗率は、
図5に示すように、算出するタイミングによって大きなばらつきが生じる場合がある。そこで、本実施形態では、この研削ホイール22の消耗率のばらつきを考慮して、研削ホイール22の消耗率の時間変化に基づいて算出される、所定の時間(例えば、10秒間)当たりの研削ホイール22の消耗率の移動平均を使用する。また、本実施形態では、研削ホイール22の消耗率と同様に、チャックテーブル10及びスピンドル21のそれぞれにかかる研削荷重や、スピンドル21の負荷電流値についても、その所定の時間(例えば、10秒間)当たりの移動平均を使用する。
【0046】
図5のグラフは、被加工物100(ウェーハ)の研削量が15μm程度以下の領域では、研削ホイール22の消耗率の移動平均が所定の閾値(
図5に示す例では0.7%)より大きくなり、被加工物100(ウェーハ)の研削量が増加するに従って研削ホイール22の消耗率の移動平均が次第に減少し、被加工物100(ウェーハ)の研削量が15μm程度より大きい領域では、研削ホイール22の消耗率の移動平均が所定の閾値以下の低い値に落ち着くことを示している。ここで、
図5において被加工物100(ウェーハ)の研削量が15μm程度以下の領域は、研削ホイール22で被加工物100(ウェーハ)の分離層を研削している領域であり、
図5において被加工物100(ウェーハ)の研削量が15μm程度より大きい領域は、研削ホイール22で被加工物100(ウェーハ)の分離層の研削が終了し、分離層ではない部分を研削している領域である。
【0047】
このように、研削ホイール22で被加工物100(ウェーハ)を研削する研削条件を同じに維持した場合、研削ホイール22で被加工物100(ウェーハ)の分離層を研削する際には、研削ホイール22で被加工物100(ウェーハ)の分離層でない部分を研削する際と比較して、研削ホイール22の消耗率の移動平均が大きくなることから、研削ホイール22にかかる研削負荷が大きくなっていることがわかる。また、研削ホイール22で被加工物100(ウェーハ)を研削する研削条件を同じに維持した場合、研削ホイール22で被加工物100(ウェーハ)の分離層を研削する際には、研削ホイール22で被加工物100(ウェーハ)の分離層でない領域を研削する際と比較して、さらに、研削される被加工物100(ウェーハ)を保持するチャックテーブル10及び被加工物100(ウェーハ)を研削する研削ホイール22が装着されたスピンドル21のそれぞれにかかる研削荷重が小さくなり、被加工物100(ウェーハ)を研削する研削ホイール22が装着されたスピンドル21の負荷電流値が低くなる。
【0048】
このため、研削ステップ1002では、以下の第1例、第2例、及び第3例の方法で、分離層の有無を監視することができる。そして、本実施形態では、研削ステップ1002は、被加工物100(ウェーハ)の剥離面(表面側)に形成された分離層の有無を監視しながら研削を実施し、分離層がなくなったら、すなわち分離層がないと検知した際に、研削を終了させる。
【0049】
研削ステップ1002の第1例では、制御ユニット40は、被加工物100(ウェーハ)の厚みを測定しながら研削を実施し、被加工物100(ウェーハ)の厚み変化量と研削ホイール22が装着されたスピンドル21の移動量とから研削ホイール22の消耗率を算出し、消耗率の変化により分離層の有無を検知する。
【0050】
研削ステップ1002の第1例では、具体的には、制御ユニット40は、研削送りユニット24により取得したスピンドル21の送り速度と、接触式厚み測定ユニット30により実質的に測定して取得した被加工物100(ウェーハ)の厚みの時間変化とに基づいて、スピンドル21の送り速度から被加工物100(ウェーハ)の厚みの時間変化を差し引くことにより、スピンドル21に装着された研削ホイール22の消耗率を算出し、研削ホイール22の消耗率の時間変化に基づいて、所定の時間当たりの研削ホイール22の消耗率の移動平均を算出する。研削ステップ1002の第1例では、そして、所定の時間当たりの研削ホイール22の消耗率の移動平均が所定の閾値より大きくなった場合、分離層がまだ残存していると検知し、所定の時間当たりの研削ホイール22の消耗率の移動平均が例えば所定の時間内で所定の閾値以下となった場合、分離層が無くなって、分離層の研削が終了したと検知する。
【0051】
ここで、研削ステップ1002の第1例における所定の閾値は、分離層でない部分を研削する際に算出される所定の時間当たりの研削ホイール22の消耗率の移動平均よりも十分に大きく、分離層を研削する際に算出される所定の時間当たりの研削ホイール22の消耗率の移動平均を十分に上回らない値に予め定められ、制御ユニット40に記憶される。
【0052】
研削ステップ1002の第1例では、例えば、
図5に示す例では、被加工物100(ウェーハ)の研削量が15μm手前(
図5に示す例では約14μm)を境に、研削ホイール22の消耗率の移動平均が、所定の閾値(
図5に示す例では0.7%)より大きい状態から、所定の閾値以下の状態に移行していることがわかる。このような場合では、制御ユニット40は、算出した研削ホイール22の消耗率の移動平均が例えば所定の時間内で所定の閾値以下となったことを検知したタイミングで、分離層が無くなって、分離層の研削が終了したと検知し、研削ステップ1002の第1例を終了する。
【0053】
研削ステップ1002の第2例では、制御ユニット40は、研削される被加工物100(ウェーハ)を保持するチャックテーブル10もしくは研削ホイール22が装着されたスピンドル21にかかる研削荷重を監視しながら研削を実施し、研削荷重の変化により分離層の有無を検知する。
【0054】
研削ステップ1002の第2例では、具体的には、制御ユニット40は、荷重センサ18により、研削される被加工物100(ウェーハ)を保持するチャックテーブル10にかかる研削荷重を取得し、荷重センサ28により、研削ホイール22が装着されたスピンドル21にかかる研削荷重を取得し、チャックテーブル10及びスピンドル21のそれぞれにかかる研削荷重の時間変化に基づいて、所定の時間当たりのチャックテーブル10及びスピンドル21のそれぞれにかかる研削荷重の移動平均を算出する。研削ステップ1002の第2例では、そして、所定の時間当たりのチャックテーブル10もしくはスピンドル21にかかる研削荷重の移動平均が所定の閾値より小さくなった場合、分離層がまだ残存していると検知し、所定の時間当たりのチャックテーブル10もしくはスピンドル21にかかる研削荷重の移動平均が例えば所定の時間内で所定の閾値以上となった場合、分離層が無くなって、分離層の研削が終了したと検知する。研削ステップ1002の第2例では、制御ユニット40は、算出したチャックテーブル10もしくはスピンドル21にかかる研削荷重の移動平均が例えば所定の時間内で所定の閾値以上となったことを検知したタイミングで、分離層が無くなって、分離層の研削が終了したと検知し、研削ステップ1002の第2例を終了する。
【0055】
ここで、研削ステップ1002の第2例における所定の閾値は、分離層でない部分を研削する際に算出されるチャックテーブル10もしくはスピンドル21にかかる研削荷重の移動平均よりも十分に小さく、分離層を研削する際に算出されるチャックテーブル10もしくはスピンドル21にかかる研削荷重の移動平均を十分に下回らない値に予め定められ、制御ユニット40に記憶される。
【0056】
研削ステップ1002の第3例では、制御ユニット40は、研削ホイール22が装着されたスピンドル21の負荷電流値を監視しながら研削を実施し、負荷電流値の変化により分離層の有無を検知する。
【0057】
研削ステップ1002の第3例では、具体的には、制御ユニット40は、負荷電流値検出センサ26により、スピンドル21の負荷電流値を取得し、スピンドル21の負荷電流値の時間変化に基づいて、所定の時間当たりのスピンドル21の負荷電流値の移動平均を算出する。研削ステップ1002の第3例では、そして、所定の時間当たりのスピンドル21の負荷電流値の移動平均が所定の閾値より低くなった場合、分離層がまだ残存していると検知し、所定の時間当たりのスピンドル21の負荷電流値の移動平均が例えば所定の時間内で所定の閾値以上となった場合、分離層が無くなって、分離層の研削が終了したと検知する。研削ステップ1002の第3例では、制御ユニット40は、算出したスピンドル21の負荷電流値の移動平均が例えば所定の時間内で所定の閾値以上となったことを検知したタイミングで、分離層が無くなって、分離層の研削が終了したと検知し、研削ステップ1002の第3例を終了する。
【0058】
ここで、研削ステップ1002の第3例における所定の閾値は、分離層でない部分を研削する際に算出されるスピンドル21の負荷電流値の移動平均よりも十分に低く、分離層を研削する際に算出されるスピンドル21の負荷電流値の移動平均を十分に下回らない値に予め定められ、制御ユニット40に記憶される。
【0059】
また、被加工物100(ウェーハ)の剥離面(表面側)に形成される分離層の厚さは、予め調査することにより、概ねどの程度の厚さであるかを予想できる。このため、研削ステップ1002は、
図1に示すように、分離層の有無の監視を省略し、分離層の予想厚さ分を研削ホイール22の移動量と設定し、当該移動量を監視し分離層を当該予想厚さ分研削する事前研削ステップ1011と、分離層の有無を監視しながら研削を実施し、分離層がなくなったら研削を終了させる終点研削ステップ1012と、を備えるようにしてもよい。研削ステップ1002は、このように事前研削ステップ1011と終点研削ステップ1012とを備えるようにすることで、分離層の有無を監視しながら研削する時間を必要最小限に低減することにより、より効率よく、剥離後のウェーハやインゴットの剥離面(表面側)に形成された分離層を除去するための研削量を低減できる。
【0060】
以上のような構成を有する実施形態に係る研削方法は、研削ステップ1002で被加工物100(ウェーハもしくはインゴット)の剥離面(表面側)に形成された分離層の有無を監視しながら研削を実施し、分離層がなくなったら、すなわち分離層がないと検知した際に、研削を終了させる。このため、実施形態に係る研削方法は、剥離後のウェーハやインゴットの剥離面(表面側)に形成された分離層を除去するための研削量を低減できるという作用効果を奏する。
【0061】
また、実施形態に係る研削方法は、研削ステップ1002が、分離層の有無の監視を省略し、分離層の予想厚さ分を研削ホイール22の移動量と設定し、当該移動量を監視し分離層を当該予想厚さ分研削する事前研削ステップ1011と、分離層の有無を監視しながら研削を実施し、分離層がなくなったら研削を終了させる終点研削ステップ1012と、を備えるようにすることができる。このため、実施形態に係る研削方法は、分離層の有無を監視しながら研削する時間を必要最小限に低減することにより、より効率よく、剥離後のウェーハやインゴットの剥離面(表面側)に形成された分離層を除去するための研削量を低減できる。
【0062】
また、実施形態に係る研削方法は、第1例では、制御ユニット40が、被加工物100(ウェーハもしくはインゴット)の厚みを測定しながら研削を実施し、被加工物100(ウェーハもしくはインゴット)の厚み変化量と研削ホイール22が装着されたスピンドル21の移動量とから研削ホイール22の消耗率を算出し、消耗率の変化により分離層の有無を検知する。また、実施形態に係る研削方法は、第2例では、制御ユニット40が、研削される被加工物100(ウェーハもしくはインゴット)を保持するチャックテーブル10もしくは研削ホイール22が装着されたスピンドル21にかかる研削荷重を監視しながら研削を実施し、研削荷重の変化により分離層の有無を検知する。また、実施形態に係る研削方法は、第3例では、制御ユニット40が、研削ホイール22が装着されたスピンドル21の負荷電流値を監視しながら研削を実施し、負荷電流値の変化により分離層の有無を検知する。これらのため、実施形態に係る研削方法は、分離層の有無を精度よく好適に検知する事ができる。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 研削装置
10 チャックテーブル
21 スピンドル
22 研削ホイール
100 被加工物(本発明に係るウェーハに相当)
1001 保持ステップ
1002 研削ステップ
1011 事前研削ステップ
1012 終点研削ステップ