(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154199
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】媒体検知装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 7/14 20060101AFI20241023BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B65H7/14
B41J2/01 305
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067907
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下島 一浩
(72)【発明者】
【氏名】宮川 寛亮
【テーマコード(参考)】
2C056
3F048
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB13
2C056EB37
2C056FA13
2C056FA14
2C056HA29
3F048AA05
3F048AB01
3F048BA11
3F048BB10
3F048BD07
3F048BD08
3F048CA02
3F048DC13
3F048EA03
3F048EB22
(57)【要約】
【課題】媒体の浮き検知機構における組付けに対する要求精度を低くしつつ、媒体の浮き検知精度を向上させる媒体検知装置を提供する。
【解決手段】外周面からの乖離方向における媒体の位置を、光を用いて検知する媒体検知センサと、媒体検知センサを保持するセンサ保持部材と、ドラム状部材の回転軸に設けられ、当該回転軸の方向において光を遮る遮光部材と、ドラム状部材を回動可能に支持する筐体と、を備え、媒体検知センサは、ドラム状部材の回転軸における一の端部側から他の端部側に向けて光を出射する投光センサと、当該光を受光する受光センサと、により構成され、遮光部材は、筐体に設けられ、センサ保持部材は、遮光部材が光の一部を遮り、当該光の他の一部を遮らない状態になるように、投光センサ及び受光センサの相対的な位置関係を、媒体の搬送方向との平行方向及び光の光軸方向との垂直方向において調整可能に保持する、媒体検知装置による。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム状部材の外周面に沿って搬送される媒体を検知する媒体検知装置であって、
前記外周面からの乖離方向における前記媒体の位置を、光を用いて検知する媒体検知センサと、
前記媒体検知センサを保持するセンサ保持部材と、
前記ドラム状部材の回転軸に設けられ、当該回転軸の方向において前記光を遮る遮光部材と、
前記ドラム状部材を回動可能に支持する筐体と、
を備え、
前記媒体検知センサは、ドラム状部材の回転軸における一の端部側から他の端部側に向けて前記光を出射する投光センサと、当該光を受光する受光センサと、により構成され、
前記遮光部材は、前記筐体に設けられ、
前記センサ保持部材は、前記遮光部材が前記光の一部を遮り、当該光の他の一部を遮らない状態になるように、前記投光センサ及び前記受光センサの相対的な位置関係を、前記媒体の搬送方向との平行方向及び前記光の光軸方向との垂直方向において調整可能に保持する、
ことを特徴とする媒体検知装置。
【請求項2】
前記遮光部材は、前記ドラム状部材の半径方向における相対的な位置関係が所定の位置関係となるように設けられている、
請求項1に記載の媒体検知装置。
【請求項3】
前記遮光部材は、前記ドラム状部材の前記一の端部側の前記筐体と、当該ドラム状部材の前記他の端部側の前記筐体のそれぞれに設けられ、前記光の出射方向の直交方向と平行する平面に投影されたときに形成される遮光部材同士の間隔が、所定の間隔を形成するように前記筐体に固定されている、
請求項1又は2に記載の媒体検知装置。
【請求項4】
前記遮光部材は、
前記ドラム状部材の前記一の端部側の前記筐体の一部と、前記他の端部側の前記筐体の一部を、それぞれ切り欠いた切欠部であって、前記光の出射方向の直交方向と平行する平面に投影されたときに形成される切欠部同士の間隔が、所定の間隔を形成するように前記筐体に形成されている、
請求項1又は2に記載の媒体検知装置。
【請求項5】
前記センサ保持部材は、前記投光センサと前記受光センサの光軸を調整可能な状態で、当該投光センサ及び当該受光センサを保持する、
請求項1に記載の媒体検知装置。
【請求項6】
前記センサ保持部材は、前記投光センサと前記受光センサの光軸の調整を、高さ方向若しくは左右方向、又は高さ方向及び左右方向において可能となるように、前記媒体検知センサを保持する、
請求項5に記載の媒体検知装置。
【請求項7】
前記センサ保持部材は、前記筐体において、前記投光センサと前記受光センサの光軸を調整可能な状態で保持される、
請求項1に記載の媒体検知装置。
【請求項8】
媒体を搬送するドラム状部材の外周面に配置され、当該媒体に液体を吐出して画像を形成する複数の液体吐出ヘッドと、
当該ドラム状部材の外周面に保持されて搬送される媒体を検知する媒体検知部と、
を有し、
当該媒体検知部は、請求項1に記載の媒体検知装置である、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体検知装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラム状の部材の外周面に沿って媒体を搬送し、当該媒体に画像を形成する画像形成装置が知られている。当該画像形成装置では、ドラム状の部材の外周面から媒体が浮き上がると画像形成の質に影響を与えるので、外周面からの媒体の浮きを検知する媒体検知装置を備えるものが知られている。
【0003】
媒体検知装置において、媒体の搬送面と平行に、検知ビームを投光部から受光部に向けて出射して用紙の浮きの有無を検知する構成において、検知ビームの高さ調整のための投光用平行平板を回動自在に設けた媒体検知装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている媒体検知装置では、投光用平行平板を精度よく組み付ける必要がある。また、投光用平行平板を回動して検知ビームの高さを精度良く調整するには位置調整及び確認に時間を要する。
【0005】
すなわち、従来技術では、媒体の浮き検知の精度を高めるには、検知機構の組付け精度を高くするための調整、搬送面に対する媒体の浮きを精度よく検知するための調整において課題がある。
【0006】
本発明は、媒体の浮き検知機構における組付けに対する要求精度を低くしつつ、媒体の浮き検知精度を向上させる媒体検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、ドラム状部材の外周面に沿って搬送される媒体を検知する媒体検知装置であって、前記外周面からの乖離方向における前記媒体の位置を、光を用いて検知する媒体検知センサと、前記媒体検知センサを保持するセンサ保持部材と、前記ドラム状部材の回転軸に設けられ、当該回転軸の方向において前記光を遮る遮光部材と、前記ドラム状部材を回動可能に支持する筐体と、を備え、前記媒体検知センサは、ドラム状部材の回転軸における一の端部側から他の端部側に向けて前記光を出射する受光センサ、及び当該光を受光する投光センサにより構成され、前記遮光部材は、前記筐体に設けられ、前記センサ保持部材は、前記遮光部材が前記光の一部を遮り、当該光の他の一部を遮らない状態になるように、前記投光センサ及び前記受光センサの相対的な位置関係を、前記媒体の搬送方向との平行方向及び前記光の光軸方向との垂直方向において調整可能に保持する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、媒体の浮き検知機構における組付けに対する要求精度を低くしつつ、媒体の浮き検知精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態の全体構成を示す概略図。
【
図2】本発明に係る媒体検知装置の一実施形態の全体構成を示す概略図。
【
図3】本発明に係る媒体検知装置が備えるセンサ保持部材の構成図。
【
図4】本実施形態における媒体検知の原理を説明する図。
【
図5】本実施形態に係る遮蔽部材を精度よく固定する工程を説明する図。
【
図6】本実施形態に係るセンサ保持部材の位置を調整する方法を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の実施形態としてインクジェットプリンタ1000の構成を説明する。
【0011】
[インクジェットプリンタ1000の全体構成]
図1は、インクジェットプリンタ1000の全体構成を示す図である。インクジェットプリンタ1000は、例えば、オンデマンド方式のライン走査型を採用した画像形成装置であって、画像形成部210と、給紙部220と、レジスト調整部230と、乾燥部240と、記録媒体反転部250と、排紙部290と、浮き検知装置300と、を備えている。
【0012】
まず給紙部220の給紙スタック221に積載された記録媒体としての用紙W1が、エアー分離部222によって一枚ずつピックアップされ、画像形成部210の方向に搬送される。給紙部220から搬送された用紙W1は、レジスト調整部230に達すると、レジスト調整部230の内部に設けられたレジストローラ対231によって、搬送方向に対する用紙W1の傾きが補正される。
【0013】
レジストローラ対231において補正(レジスト調整)がなされた用紙W1は、画像形成部210に送られる。そして、搬送ローラ対214によって円筒形状のドラム211の表面に送られる。ドラム211には記録媒体グリッパ212が複数設けられている。送られてきた用紙W1は、一つの記録媒体グリッパ212に先端が挟まれて、ドラム211の回転によって複数のヘッドアレイ100(100K~100P)に対向する位置へ搬送される。
【0014】
画像形成部210では、円筒形状のドラム211の回転方向における表面に沿って、インクジェット方式により液体インクを吐出する複数のヘッドアレイ100が、所定のインク色を充填した状態で配置されている。各ヘッドアレイ100は、ドラム211の外周面の曲がり具合に合わせて、放射状の所定の位置に配置されている。各ヘッドアレイ100は、ドラム211の表面に対して、液体の吐出方向が直交するように角度が調整されている。すなわち、各ヘッドアレイ100は、ドラム211の回転軸からの放射方向において各々異なる角度で配置されている。
【0015】
言い換えると、液体吐出モジュールとしての複数のヘッドアレイ100は、ドラム211の回転中心に向けて、ドラム211の表面に保持された用紙W1の外周面にインク(液体)を吐出するように、ドラム211への対向角度が各々調整される。
【0016】
また、ドラム211の外周面には、空吐出受け213が設けられており、ヘッドアレイ100が用紙W1にインクを吐出していないときに空吐出されたインクを受け取るようになっている。画像が形成されると用紙W1は、乾燥部240に搬送される。
【0017】
乾燥部240には乾燥ユニット241が設けられていて、この乾燥ユニット241の下方を用紙W1が通過することによって、用紙W1の水分が蒸発するようになっている。また、乾燥部240には、記録媒体反転機構251を含む記録媒体反転部250が設けられている。両面印刷時には、記録媒体反転部250で用紙W1を反転し反転搬送部252により再度画像形成部210の方向へ搬送する。なお、ドラム211に達する前に画像形成部210内部に設けられたレジストローラ253によって用紙W1の傾きが補正される。乾燥部240による乾燥を終えた用紙W1は排紙部290に搬送されて、用紙W1の端部が整合された状態で積載される。
【0018】
画像形成部210における液滴吐出動作の制御の一部は、画像形成部210が備える画像形成制御部215において行われるものとする。また、画像形成制御部215は、インクジェットプリンタ1000の全体の動作を制御することの可能であって、浮き検知装置300における用紙W1の浮き検知制御処理も実行する。なお、給紙部220、レジスト調整部230、乾燥部240、浮き検知装置300のそれぞれにおいて個別に制御部を備え、画像形成制御部215と連携することでインクジェットプリンタ1000の全体の動作を制御するように構成してもよい。
【0019】
図1に示すように、用紙W1の搬送方向はX方向とする。また、画像形成処理を実行するときに用紙W1を搬送するドラム211の回転方向は、X-Z平面においてCCW方向(反時計方向)である。
【0020】
画像形成部210では、円筒形状のドラム211の回転方向における表面に沿って、インクジェット方式により液体インクを吐出する複数のヘッドアレイ100が、所定のインク色を充填した状態で配置されている。各ヘッドアレイ100は、ドラム211の外周面の曲がり具合に合わせて、放射状の所定の位置に配置されている。各ヘッドアレイ100は、ドラム211の表面に対して、液体の吐出方向が直交するように角度が調整されている。すなわち、各ヘッドアレイ100は、ドラム211の回転軸からの放射方向において各々異なる。
【0021】
言い換えると、液体吐出ヘッドとしての複数のヘッドアレイ100は、ドラム211の回転中心に向けて、ドラム211の表面に保持された用紙W1の外周面にインク(液体)を吐出するように、ドラム211への対向角度が各々調整される。
【0022】
また、ドラム211の外周面には、空吐出受け213が設けられており、ヘッドアレイ100が用紙W1にインクを吐出していないときに空吐出されたインクを受け取るようになっている。画像が形成されると用紙W1は、乾燥部240に搬送される。
【0023】
乾燥部240には乾燥ユニット241が設けられていて、この乾燥ユニット241の下方を用紙W1が通過することによって、用紙W1の水分が蒸発するようになっている。また、乾燥部240には、記録媒体反転機構251を含む記録媒体反転部250が設けられている。両面印刷時には、記録媒体反転部250で用紙W1を反転し反転搬送部252により再度画像形成部210の方向へ搬送する。なお、ドラム211に達する前に画像形成部210内部に設けられたレジストローラ253によって用紙W1の傾きが補正される。乾燥部240による乾燥を終えた用紙W1は排紙部290に搬送されて、用紙W1の端部が整合された状態で積載される。
【0024】
画像形成部210における液滴吐出動作の制御の一部は、画像形成部210が備える画像形成制御部215において行われるものとする。なお、画像形成制御部215は、インクジェットプリンタ1000の全体の動作を制御してもよい。また、給紙部220、レジスト調整部230、乾燥部240、のそれぞれにおいて個別に制御部を備え、画像形成制御部215と連携することでインクジェットプリンタ1000の全体の動作を制御するように構成してもよい。
【0025】
図1に示すように、用紙W1の搬送方向はX方向とする。また、画像形成処理を実行するときに用紙W1を搬送するドラム211の回転方向は、X-Z平面においてCCW方向(反時計方向)である。
【0026】
また、インクジェットプリンタ1000は、記録媒体グリッパ212に保持されてドラム211の外周面に沿った状態で、複数のヘッドアレイ100に向けて用紙W1が搬送されるときに、用紙W1の浮き(ドラム211の外周面からの乖離)を検知するための浮き検知装置300を備える。すなわち、浮き検知装置300は、ドラム211の外周面からの乖離方向における用紙W1の位置を検知して、外周面に対して用紙W1が浮いているか否か(浮きが生じているか否か)を検知することができる。
【0027】
[媒体検知装置の実施形態]
次に、本発明に係る媒体検知装置の実施形態としての浮き検知装置300について説明する。
図2は、浮き検知装置300の全体構成を例示する図である。浮き検知装置300は、筐体310を構成する前フレーム311と後フレーム312の間に、ドラム状部材としてのドラム211を回転可能に支持している。
【0028】
なお、筐体310は、インクジェットプリンタ1000の本体筐体の一部に相当するものでもよいし、本体筐体の内部空間に設けられた別体のものでもよい。筐体310は、ドラム211に対して、所定の位置関係を維持するものであればよい。インクジェットプリンタ1000に取り付けられた浮き検知装置300は、インクジェットプリンタ1000の媒体検知部として機能する。
【0029】
浮き検知装置300は、用紙検知センサ320を備える。用紙検知センサ320は、検知光323を出射する投光センサとしての投光部321と、検知光323を受光する受光センサとしての受光部322の一対にて構成される。投光部321と受光部322は、対向配置されて一体となり、投光部321から出射された検知光323を受光部322で受光する受光量により変化する出力信号のレベルによって、投光部321と受光部322の間の物体を検知することが可能となるように構成されている。
【0030】
用紙検知センサ320の投光部321と受光部322はいずれも、センサ保持部材としてのセンサブラケット330に保持されている。投光部321と受光部322は、センサブラケット330に保持されて所定の相対的な位置関係が維持される。センサブラケット330は、用紙検知センサ320が用いる検知光323を、ドラム211の外周面に沿って搬送される用紙W1の搬送方向との平行方向において回動可能となるように保持する。また、センサブラケット330は、用紙検知センサ320が用いる検知光323を、検知光323の光軸方向との垂直方向において回動可能になるように保持する。センサブラケット330に対する用紙検知センサ320の保持の態様及び、上記した回動を可能にする構造に関する詳細は後述する。
【0031】
筐体310は、ドラム211の回転軸の一端側を支持する前フレーム311と、当該回転軸の他端側を支持する後フレーム312とを含む。ドラム211は、筐体310によって、所定の位置で回転可能に支持される。また、筐体310は、検知光323の一部を遮光して他の一部を遮光せずに通過可能となるような隙間を形成する遮光部材340を備えている。
【0032】
遮光部材340は、前フレーム311に固定される第一遮光部材341と、後フレーム312に固定される第二遮光部材342との対向配置により構成される。第一遮光部材341と第二遮光部材342は、ドラム211の回転軸の方向(ドラム211の長手方向であって、
図2におけるX軸方向)との直交方向、すなわち、ドラム211の半径方向における位置が所定の相対的な位置関係を形成するように、筐体310に対して精度良く固定されている。
【0033】
また、第一遮光部材341と第二遮光部材342は、投光部321と受光部322の間(用紙検知センサ320の内側)に相当する位置に固定されている。したがって、投光部321から出射された検知光323の一部は、第一遮光部材341と第二遮光部材342によって遮光される。
【0034】
第一遮光部材341と第二遮光部材342は、検知光323の光軸方向との直交方向における検知光323の広がり(幅)よりも、検知光323の通過を可能とする空間が狭くなるような間隔を形成するように固定されている。以下、第一遮光部材341と第二遮光部材342を検知光323が通過し得る幅間隔に相当する距離を「配置距離」と表記する。すなわち、配置距離とは、ドラム211の回転軸の軸方向において第一遮光部材341と第二遮光部材342を投影したときの第一遮光部材341と第二遮光部材342とに生ずる隙間の距離に相当する。
【0035】
検知光323は、第一遮光部材341と第二遮光部材342の配置間隔に相当する幅の帯状レーザ光のごとく、ドラム211の軸方向に出射される。この帯状レーザ光となる検知光323の幅が、ドラム211からの用紙W1の浮きを検知する検知幅となる。
【0036】
なお、筐体310に第一遮光部材341と第二遮光部材342を固定するのではなく、筐体310の一部を切り欠いて切欠部を形成し、この切欠部が第一遮光部材341及び第二遮光部材342と同様の作用効果を発揮するように形成してもよい。この場合、切欠部の遮光により検知光323の幅が制限されて帯状レーザ光となる。
【0037】
したがって、ドラム211に対して、用紙検知センサ320を保持したセンサブラケット330を回動させることで、ドラム211に対する検知光323の位置及び向きを調整する。このとき、第一遮光部材341と第二遮光部材342の配置間隔は、筐体310に対して精度よく固定されているので、センサブラケット330を調整することで、第一遮光部材341と第二遮光部材342の配置間隔を検知光323が通過する状態にできる。すなわち、
図6に例示するように、検知光323がドラム211の軸と平行であって、かつ、検知幅が遮光部材340の配置間隔になるように、センサブラケット330を回動させることで、検知光323の位置及び向きを調整することができる。
【0038】
[センサ保持部材及び媒体検知センサの実施形態]
次に、センサ保持部材としてのセンサブラケット330、及び媒体検知センサとしての用紙検知センサ320の実施形態について、より詳細に説明する。
【0039】
図3は、センサブラケット330の概要を説明するための図であって、用紙検知センサ320の組付け態様を説明する図である。
図3に示すように、センサブラケット330は長尺の板状部材であって、長手方向がドラム211(
図2参照)の回転軸方向に相当する。センサブラケット330は、長手方向の一方の端部に投光部321を固定する構造を有し、他方の端部に受光部322を固定する構造を有する。
【0040】
センサブラケット330において、投光部321が固定される側の端部近傍にはセンサ回動用長孔331と光軸回転用孔332が形成され、受光部322が固定される側の端部近傍には受光部固定丸孔335が形成されている。したがって、受光部322は所定の位置において所定の向き(投光部321に相対する向き)にて、センサブラケット330に固定される。
【0041】
センサ回動用長孔331は、検知光323の出射方向を調整するために、投光部321の受光部322に対する向きを調整するための調整機構を構成する。投光部321の向きを調整するときは、投光部321の向きを回転させる軸としての光軸回転用孔332を回転中心として、センサ回動用長孔331に沿って投光部321が回動する。
【0042】
投光部321は、センサブラケット330に対し、センサ回動用長孔331及び光軸回転用孔332においてネジ333をもって締結されている。光軸回転用孔332側のネジ333を緩めた状態で投光部321をセンサブラケット330の表面に沿って回動させることで、投光部321の左右の向きを調整できる。すなわち、センサブラケット330は、検知光323の出射方向の左右方向の調整をできる状態で、投光部321を保持できる。
【0043】
また、投光部321は、光軸回転用孔332側にて、センサブラケット330の表面との間に高さ調整部材としてのスペーサ334を挟んでセンサブラケット330に保持させることで、スペーサ334の厚さ調整により、検知光323の上下方向の向きを調整できる。すなわち、センサブラケット330は、検知光323の出射方向の上下方向の調整をできる状態で、投光部321を保持できる。
【0044】
センサブラケット330の精度によって用紙検知センサ320の光軸の位置の精度が影響を受ける。したがって、センサブラケット330に保持した状態で用紙検知センサ320の光軸の上下方向、及び左右方向に投光部321若しくは受光部322のどちらか一方、又は両方の保持状態を調整することで、光軸を調整できる。
【0045】
この点において、本実施形態では、
図3を用いて説明したとおり、受光部322は、センサブラケット330に対し、決め穴(丸穴355)に締結部材としてのネジ333を用いてネジ締結して固定されている。そして、投光部321は、センサブラケット330に対し、決め穴(光軸回転用孔332)とセンサ回動用長孔331に締結部材としてのネジ333を用いてネジ締結して固定され、光軸回転用孔332を回転中心として、センサ回動用長孔331の長手方向に沿って一部が移動可能となっている。これによって、投光部321から出射される検知光323の左右方向を調整できる。
【0046】
また、検知光323の出射方向の上下方向(高さ方向)の調整は、投光部321とセンサブラケット330の間にスペーサ334を入れることで調整可能となっている。検知光323の、受光部322の受光窓に対する相対的な高さが合わないときは、スペーサ334の有無、及びスペーサ334の厚みを調整する。
【0047】
また、センサブラケット330は、筐体310に固定された状態で回動可能にするための回動用孔336を有する。回動用孔336にて締結部材を用いて筐体310にセンサブラケット330を固定しつつ、
図6に例示したように、センサブラケット330を回動させることで、検知光323の幅を適正にできる。
図6に例示した場合では、幅W1になる場合が検知光323はドラム211の外周面に対して平行となっている。幅W2では適正幅よりも広すぎであり、幅W3では狭すぎる。すなわち、センサブラケット330の向きを調整するときには、検知光323の幅W1に相当する出力信号のレベルを検知できるか否かを判定基準とすればよい。
【0048】
[用紙検知センサ320の出力]
次に、用紙検知センサ320の出力と用紙W1の浮き検知との関係について
図4を用いて説明する。
図4は、用紙W1がドラム211の外周面に沿って搬送されるときに、配置距離の幅を通過する検知光323による用紙検知センサ320の出力信号レベルの変化の様子を例示したグラフである。
【0049】
図2を用いて説明したとおり、センサブラケット330を所定の位置で固定したとき、センサブラケット330にて保持されている投光部321と受光部322はドラム211の長手方向の外側に位置する。また、投光部321と受光部322は、第一遮光部材341と第二遮光部材342の外側に配置されていて、検知光323は配置距離によって表される隙間を通過する。
【0050】
図4(A)に示すように、配置距離に相当する検知区間Bにおいて用紙検知センサ320の出力信号のレベルは「HIGH」になる。また、検知区間Bは、ドラム211の貫通部分と被貫通部分を含む位置に当たるので、ドラム211によって遮光されるドラム区間Cにおける出力信号のレベルは「LOW」になる。
【0051】
ドラム211の外周面と平行する検知光323の出力信号レベルがLOWになる(検知光323が遮光される)距離に対して、用紙W1の厚さと、所定の閾値を加味した距離Dに相当する距離を、判定基準距離Xthとして予め設しておく。
【0052】
図4(B)は、用紙W1の浮きが生じていない状態を例示しているので、判定基準距離Xthに相当する距離の出力信号レベルは「HIGH」(遮光されていない)である。
【0053】
図4(C)は、用紙W1の浮きが生じている場合を例示している。この場合は、判定基準距離Xthよりも短い距離において出力信号レベルが「LOW」になっている。すなわち、用紙W1によって検知光323が遮光されている。
【0054】
すでに説明のとおり、センサブラケット330は、用紙検知センサ320の光軸を精度よく調整し固定した状態を維持する。そして、このセンサブラケット330を筐体310に回動可能に固定して、検知光323が配置距離の間を通過して出力信号レベルが「HIGH」になるように調整する。
【0055】
センサブラケット330の回動による調整は、検知光323による出力信号のレベルに基づいて行うことができる。したがって、センサブラケット330を回動させながら所定の出力信号の状態を確認して調整することで、ドラム211の外周面に対し精度よく検知光323を配置できる。
【0056】
帯状の検知光323を使用しているので、用紙W1の厚さが変わっても検知光323の検知範囲(配置距離に相当する検知区間B)にて、用紙W1の浮きを検知することができる。その結果、従来技術のように用紙厚さに合わせて検知光323の位置を移動させる必要がない。また、従来技術においては必要となっていたモータなどの調整駆動源が不要となる。
【0057】
また、経時的変化によって、センサブラケット330の組付け位置の精度が低下した場合であっても、インクジェットプリンタ1000による画像形成動作の前に、用紙W1が無い状態でドラム211の表面検知をすることにより、経時的変化による判定基準距離Xthの誤差を低減できる。
【0058】
[遮光部材340の調整]
次に、遮光部材340を筐体310に組み付けたときの配置距離を精度良く設定可能にするジグ350について
図5を説明する。
図5に示すように、ジグ350をドラム211に取り付けた状態で、遮光部材340(第一遮光部材341と第二遮光部材342)を、ジグ350に突き当てて、本体フレームとしての筐体310に固定する。
【0059】
ジグ350とドラム211の軸方向とを平行とするためには、ドラム211の表面に予めジグ孔216が形成されている。ジグ孔216は、丸孔と長孔からなり、これら丸孔と長孔はドラム211の軸と平行関係になるように形成されている。
【0060】
ジグ350にはピン351を貫通させる丸孔がジグ孔216に対向する位置に形成されているので、ジグ350を貫通させたピン351をドラム211のジグ孔216に合わせた状態で、ジグ350をドラム211に固定する。
【0061】
ジグ350は、ドラム211に固定された状態において、筐体310と所定の間隔を形成する位置調整部352を備えている。位置調整部352は、
図5に例示するように、ジグ350の長手方向(ドラム211の軸方向)の両端部に形成されている。筐体310に遮光部材340を固定して、ドラム211の軸と直交する方向の端部を位置調整部352にそれぞれ突き当てることで、第一遮光部材341と第二遮光部材342の配置距離が精度よく形成される。
【0062】
この状態において、第一遮光部材341と第二遮光部材342を筐体310に固定することで、第一遮光部材341と第二遮光部材342を筐体310とドラム211に対して精度よく固定することができる。その結果、前述したとおり、検知光323をドラム211の外周面に対して精度よく調整できるようになる。
【0063】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0064】
[本発明の態様]
本発明の内容は、例えば、以下のとおりである。
<1>
ドラム状部材の外周面に沿って搬送される媒体を検知する媒体検知装置であって、
前記外周面からの乖離方向における前記媒体の位置を、光を用いて検知する媒体検知センサと、
前記媒体検知センサを保持するセンサ保持部材と、
前記ドラム状部材の回転軸に設けられ、当該回転軸の方向において前記光を遮る遮光部材と、
前記ドラム状部材を回動可能に支持する筐体と、
を備え、
前記媒体検知センサは、ドラム状部材の回転軸における一の端部側から他の端部側に向けて前記光を出射する投光センサと、当該光を受光する受光センサと、により構成され、
前記遮光部材は、前記筐体に設けられ、
前記センサ保持部材は、前記遮光部材が前記光の一部を遮り、当該光の他の一部を遮らない状態になるように、前記投光センサ及び前記受光センサの相対的な位置関係を、前記媒体の搬送方向との平行方向及び前記光の光軸方向との垂直方向において調整可能に保持する、ことを特徴とする媒体検知装置である。
<2>
前記遮光部材は、前記ドラム状部材の半径方向における相対的な位置関係が所定の位置関係となるように設けられている、<1>に記載の媒体検知装置である。
<3>
前記遮光部材は、前記ドラム状部材の前記一の端部側の前記筐体と、当該ドラム状部材の前記他の端部側の前記筐体のそれぞれに設けられ、前記光の出射方向の直交方向と平行する平面に投影されたときに形成される遮光部材同士の間隔が、所定の間隔を形成するように前記筐体に固定されている、前記<1>又は前記<2>に記載の媒体検知装置である。
<4>
前記遮光部材は、
前記ドラム状部材の前記一の端部側の前記筐体の一部と、前記他の端部側の前記筐体の一部を、それぞれ切り欠いた切欠部であって、前記光の出射方向の直交方向と平行する平面に投影されたときに形成される切欠部同士の間隔が、所定の間隔を形成するように前記筐体に形成されている、前記<1>又は前記<2>に記載の媒体検知装置である。
<5>
前記センサ保持部材は、前記投光センサと前記受光センサの光軸を調整可能な状態で、当該投光センサ及び当該受光センサを保持する、前記<1>乃至前記<4>のいずれか一つに記載の媒体検知装置である。
<6>
前記センサ保持部材は、前記投光センサと前記受光センサの光軸の調整を、高さ方向若しくは左右方向、又は高さ方向及び左右方向において可能となるように、前記媒体検知センサを保持する、前記<5>に記載の媒体検知装置である。
<7>
前記センサ保持部材は、前記筐体において、前記投光センサと前記受光センサの光軸を調整可能な状態で保持される、前記<1>乃至前記<6>のいずれか一つに記載の媒体検知装置である。
<8>
媒体を搬送するドラム状部材の外周面に配置され、当該媒体に液体を吐出して画像を形成する複数の液体吐出ヘッドと、
当該ドラム状部材の外周面に保持されて搬送される媒体を検知する媒体検知部と、
を有し、
当該媒体検知部は、前記<1>乃至前記<7>のいずれか一つに記載の媒体検知装置である、ことを特徴とする画像形成装置である。
【符号の説明】
【0065】
100 :ヘッドアレイ
210 :画像形成部
211 :ドラム
300 :浮き検知装置
310 :筐体
311 :前フレーム
312 :後フレーム
320 :用紙検知センサ
321 :投光部
322 :受光部
323 :検知光
330 :センサブラケット
340 :遮光部材
341 :第一遮光部材
342 :第二遮光部材
1000 :インクジェットプリンタ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】