(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154393
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】静電チャックを備える基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241023BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241023BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20241023BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20241023BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20241023BHJP
C23C 16/505 20060101ALI20241023BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20241023BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/31 C
H01L21/302 101B
H01L21/302 101G
H02N13/00 D
C23C16/458
C23C16/505
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024065415
(22)【出願日】2024-04-15
(31)【優先権主張番号】63/460,155
(32)【優先日】2023-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】田辺 伸章
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084CC12
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2G084DD15
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2G084DD55
4K030CA04
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4K030KA46
5F004AA16
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5F004BB13
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5F131EB17
5F131EB18
5F131EB78
5F131EB81
(57)【要約】
【課題】安定したチャック力を得ることができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】静電チャックを備える基板処理装置は、誘電体で形成された下部電極と、下部電極に対向して設けられた上部電極と、上部電極に接続され、第1周波数の交流電力を供給する第1交流電源と、下部電極の中に設けられた下部電極を加熱するヒータと、ヒータに接続された第1フィルタ回路と、第1フィルタ回路を介して前記ヒータに接続された絶縁変圧器と、絶縁変圧器と接続される第2交流電源と、下部電極に設けられた、内部電極と、内部電極に接続された第2フィルタ回路と、第2フィルタ回路を介して内部電極に接続され、静電チャックに用いられる直流電源と、を備え、直流電源は、定電流制御であり、絶縁変圧器の2次コイルがフローティングした状態である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電チャックを備える基板処理装置であって、
誘電体で形成された下部電極と、
前記下部電極に対向して設けられた上部電極と、
前記上部電極に接続され、第1周波数の交流電力を供給する第1交流電源と、
前記下部電極の中に設けられて前記下部電極を加熱するヒータと、
前記ヒータに接続された第1フィルタ回路と、
前記第1フィルタ回路を介して前記ヒータに接続された絶縁変圧器と、
前記絶縁変圧器に接続された第2交流電源と、
前記下部電極に設けられた内部電極と、
前記内部電極に接続された第2フィルタ回路と、
前記第2フィルタ回路を介して前記内部電極に接続され、静電チャックに用いられる直流電源と、
を備え、
前記直流電源は、定電流制御であり、
前記絶縁変圧器の2次コイルがフローティングした状態である、
ことを特徴とする、基板処理装置。
【請求項2】
前記第1交流電源が、1MHz~30MHzの範囲の周波数の交流電力を前記上部電極に供給することを特徴とする、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記上部電極に、更に100kHz~1000kHzの範囲の周波数の交流電力を供給することを特徴とする、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第2交流電源が、50Hzまたは60Hzの交流電力を前記ヒータに供給することを特徴とする、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記内部電極は、キャパシタを介してグランドと接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
静電チャックを備える基板処理装置であって、
誘電体で形成された下部電極と、
前記下部電極に対向して設けられた上部電極と、
前記上部電極に接続され、第1周波数の交流電力を供給する第1交流電源と、
前記下部電極の中に設けられて前記下部電極を加熱するヒータと、
前記ヒータに接続された第1フィルタ回路と、
前記第1フィルタ回路を介して前記ヒータに接続された絶縁変圧器と、
前記絶縁変圧器に接続された第2交流電源と、
前記下部電極に設けられた内部電極と、
前記内部電極に接続された第2フィルタ回路と、
前記第2フィルタ回路を介して前記内部電極に接続され、静電チャックに用いられる直流電源と、
を備え、
前記直流電源は、定電圧制御であり、
前記絶縁変圧器の2次コイルが可変抵抗を介してグランドと接続されていることを特徴とする、基板処理装置。
【請求項7】
前記第1交流電源が1MHz~30MHzの範囲の周波数の交流電力を前記上部電極に供給することを特徴とする、請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記上部電極に、更に100kHz~1000kHzの範囲の周波数の交流電力を供給することを特徴とする、請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第2交流電源が50Hzまたは60Hzの交流電力を前記ヒータに供給することを特徴とする、請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記内部電極は、キャパシタを介してグランドと接続されていることを特徴とする、請求項6に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜などの基板処理に用いられる基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラズマ処理反応室を備えた製膜装置が開示されている。
【0003】
下部電極と上部電極の間に材料ガスを供給しつつ下部電極に高周波電力を供給することで下部電極と上部電極の間にプラズマを生成し、下部電極の上の基板に処理を施す基板処理装置がある。そのような基板処理装置において、静電チャック(ESC:Electric Static Chuck)で基板を下部電極に吸着させる場合、安定したチャック力が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、下部電極を構成するAlNなどの材料は高温での体積抵抗にばらつきがあり、一定のESC電圧を印加しても、ESC電流がばらつき、チャック力が不安定になることがあった。チャック力が安定しない場合、製膜した膜の応力値や均一性に影響を与える。本発明は、上記の事情を鑑みなされた発明であり、チャック力の安定性に優れた基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る静電チャックを備える基板処理装置は、誘電体で形成された下部電極と、該下部電極に対向して設けられて上部電極と、該上部電極に接続され、第1周波数の交流電力を供給する第1交流電源と、該下部電極の中に設けられた該下部電極を加熱するヒータと、該ヒータに接続された第1フィルタ回路と、該第1フィルタ回路を介して前記ヒータに接続された絶縁変圧器と、該絶縁変圧器と接続された第2交流電源と、該下部電極に設けられた内部電極と、該内部電極に接続された第2フィルタ回路と、該第2フィルタ回路を介して該内部電極に接続され、静電チャックに用いられる直流電源と、を備え、該直流電源が、定電流制御であり、前記絶縁変圧器の2次コイルがフローティングした状態である。
【0007】
本発明の他の態様に係る静電チャックを備える基板処理装置は、誘電体で形成された下部電極と、該下部電極に対向して設けられた上部電極と、該上部電極に接続され、第1周波数の交流電力を供給する第1交流電源と、該下部電極の中に設けられて前記下部電極を加熱するヒータと、該ヒータに接続された第1フィルタ回路と、該第1フィルタ回路を介して前記ヒータに接続された絶縁変圧器と、該絶縁変圧器と接続された第2交流電源と、該下部電極に設けられた内部電極と、該内部電極に接続された第2フィルタ回路と、該第2フィルタ回路を介して前記内部電極に接続され、静電チャックに用いられる直流電源と、を備え、該直流電源が、定電圧制御であり、該絶縁変圧器の2次コイルが可変抵抗を介してグランドと接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記各態様によれば、安定したチャック力を得ることができる。
【0009】
この概要は、いくつかの概念を簡略化した形で紹介するために提供されている。これらの概念については、以下の開示の例示的な実施形態の詳細な説明でさらに詳しく説明される。この概要は、特許請求の範囲における主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、特許請求の範囲における主題の範囲を制限するために使用されることを意図したものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る基板処理装置の等価回路である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の断面図である。
【
図5】第2実施形態に係る基板処理装置の等価回路である。
【
図7】従来例に係る基板処理装置の等価回路である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図中の要素は簡潔さと明瞭さのために描かれており、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではないことに留意すべきである。例えば、図中の一部の要素の寸法は、本開示の図示された実施形態の理解を深めるために、他の要素に比べて誇張されている場合がある。
【0012】
以下に特定の実施形態および例を開示するが、当業者であれば、本開示は、具体的に開示された実施形態および/または本開示の使用、ならびにそれらの明らかな修正および同等物を超える範囲に及ぶことを理解するであろう。したがって、開示の範囲は、以下に記載される特定の開示された実施形態によって制限されるべきではないことが意図されている。
【0013】
本明細書で使用される「基板」という用語は、改質される可能性のある、またはデバイス、回路、またはフィルムが形成される可能性のある、あらゆる下層材料を指す場合がある。「基板」は、連続的または非連続的、剛性または柔軟性、固体または多孔質、およびそれらの組み合わせであってもよい。基板は、粉末、プレート、ワークピースなど、どのような形状であってもよい。プレート状の基板には、様々な形状やサイズのウェハが含まれる場合がある。基板は、例えばシリコン、シリコンゲルマニウム、酸化シリコン、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、およびシリコンカーバイドなどの半導体材料から作製され得る。
【0014】
たとえば、粉末状の基板は医薬品製造に応用できる可能性がある。多孔質基板は、ポリマーから構成される。ワークピースの例としては、医療機器(ステントや注射器など)、宝飾品、工具、電池製造用部品(アノード、カソード、セパレータなど)、太陽電池の部品などが挙げられる。
【0015】
ここに提示された図は、特定の材料、構造、またはデバイスの実際の図を示すものではなく、開示の実施形態を説明するために使用される単なる理想的な表現である。
【0016】
図示および説明されている特定の実装は、開示内容とその裁量の形態を例示するものであり、側面および実装の範囲をいかなる形でも制限するものではない。実際、簡潔にするために、システムの従来の製造、接続、準備、およびその他の機能面については詳細に説明しない場合がある。さらに、様々な図に示されている接続線は、様々な要素間の例示的な機能関係および/または物理的な結合を表すことを目的としている。実際のシステムには、多くの代替的または追加の機能関係または物理的接続が存在する可能性があり、また、一部の実施形態では存在しない可能性もある。
【0017】
本明細書で説明する構成および/またはアプローチは、本質的に例示的なものであり、多数のバリエーションが可能であることから、これらの特定の実施形態または実施例は、限定的な意味で考慮されるべきではないことを理解されたい。ここで説明する特定のルーチンまたは方法は、任意の数の処理戦略の1つ以上を表す場合がある。したがって、図示されている様々な行為は、図示されている順序で実行される場合もあれば、他の順序で実行される場合もあり、省略される場合もある。
【0018】
本開示の主題には、本明細書に開示された様々なプロセス、システム、構成、およびその他の特徴、機能、動作、および/または特性の、すべての新規かつ自明でない組み合わせおよびサブ組み合わせ、ならびにそれらのすべての同等物が含まれる。
【0019】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置を説明する。
図1は、第1実施形態に係る基板処理装置100の断面図である。基板処理装置100は、チャンバ12を備える。チャンバ12の中に、誘電体で形成された下部電極14と、下部電極14に対向して配置される上部電極16とが設けられる。下部電極14の材料は、例えばAlNなどのセラミックである。上部電極16には、複数のスリット16aが設けられる。各スリット16aを通って、下部電極14と上部電極16との間に材料ガスが供給される。
【0020】
チャンバ12および上部電極16には、Oリング21を介して排気ダクト20が固定されている。排気ダクト20は、上部電極16と下部電極14との間の空間を囲む。上部電極16と下部電極14との間に供給されて基板処理に利用されたガスは、排気ダクト20を通って、チャンバ12の外部に排出される。
【0021】
上部電極16は、マッチングユニット22を介し、第1交流電源24と電気的に接続されている。第1交流電源24は、例えば、1MHz~30MHzの範囲の周波数の交流電力を提供する。1MHz~30MHzの範囲の周波数は、「第1周波数」の例である。この1MHz~30MHzの周波数は、高周波(High Radio Frequency:HRF)と呼ばれる。本実施形態では、例示として、第1交流電源24が13.56MHzの交流電力を供給している。また、基板処理装置100は、第1交流電源24とは別に、図示しない第3交流電源を備えていてもよい。この場合の第3交流電源は、100kHz~1000kHzの範囲の周波数の交流電力を供給する。この100kHz~1000kHzの範囲の周波数は低周波(Low Radio Frequency)と呼ばれる。第3交流電源も、マッチングユニット22を介し、上部電極16と電気的に接続されている。本実施形態では、例示として、第3交流電源が430kHzの交流電力を供給する。
【0022】
下部電極14は、支持部(シャフト)26によって、支持されている。下部電極14と支持部26とは、互いに一体的に形成されたサセプタである。下部電極14は、RF電極と呼ばれることもある。
【0023】
下部電極14の中に、下部電極14を加熱するヒータ28が設けられている。ヒータ28は、例えば平面視で渦巻き状に形成されている。ヒータ28は、支持部26を通る配線によって、第1フィルタ回路32と接続される。絶縁変圧器34は、第1フィルタ回路32を介してヒータ28と接続されている。具体的には、絶縁変圧器34の2次コイルC2に、第1フィルタ回路32が接続されている。2次コイルC2は、フローティングした状態である。また、第1フィルタ回路32は、直流的に絶縁された状態で接地している。第1フィルタ回路32は、例えばローパスフィルタである。第1フィルタ回路32は、高周波ノイズを低減する。ヒータ28に用いられる第2交流電源36は、絶縁変圧器34と接続している。具体的には、第2交流電源36は、絶縁変圧器34の1次コイルC1と接続している。第2交流電源36がヒータ28に電流を供給することで、下部電極14が加熱され、下部電極14の上に載置された基板(不図示)も加熱される。第2交流電源36は例えば、周波数50Hzまたは60Hzの交流電力を印加する。
【0024】
下部電極14の中に内部電極30が設けられている。内部電極30の材質は、例えば、タングステン、タンタル、モリブデン、ニオブ、ルテニウム、ハフニウム等の高融点金属である。内部電極30の形状は、金網状あるいはパンチングメタル状である。内部電極30は、支持部26を通る配線によって、第2フィルタ回路37と接続されている。第2フィルタ回路37は、直流電源38が接続されている。直流電源38は、静電チャックに用いられ、定電流制御である。直流電源38は、静電チャックを提供するために、内部電極30に定電流制御によって、一定のESC(Electric Static Chuck)電流を流す。また、内部電極30は、ブロッキングキャパシタ35を介し、グランドと接続されている。
【0025】
第1実施形態の基板処理装置100において、絶縁変圧器34の2次コイルC2が、フローティングした状態である。また、第1フィルタ回路32は、直流的に絶縁されている。そのため、ヒータ28を介してヒータ電源側へリーク電流(地絡電流)が流れない。加えて、ヒータ側にリーク電流が流れないため、基板処理装置100において、直流電源38は、定電流制御によって、一定のESC電流を下部電極14から上部電極16へ流すことができる。そのため、ESC電流を安定化させることができる。
【0026】
基板処理装置の動作
基板処理中の基板処理装置の動作について説明する。
図2は、基板処理中の動作を分かりやすく説明するために、
図1の構成を簡易に表現した図となる。下部電極14の上に基板50を配置した状態で基板処理を開始する。基板50は、例えばSiウェハである。基板50は、ヒータ28によって、予め定められた温度に昇温される。上部電極16と下部電極14との間に材料ガスを供給しつつ、第1交流電源24により上部電極16に前記第1周波数の交流電力を供給する。これによって、上部電極16と下部電極14との間にプラズマ52が発生する。この状態で直流電源38によって、内部電極30にESC電圧を印加すると電極間のプラズマを介してESC(DC)電流が上部電極16側へ流れ、基板50と下部電極14の界面ギャップで帯電分極が誘起されることで、ジョンセン・ラーベック(JR)力が発生し、基板50が下部電極14に静電吸着する。これによって、静電チャックを行える。
【0027】
図3に、基板処理装置100の動作時の等価回路を示す。絶縁変圧器34の2次コイルC2がフローティングした状態である。この
図3に示すように、基板処理装置100の静電チャック動作時の等価回路は、第2フィルタ回路37の抵抗R1と、下部電極14及びプラズマの抵抗R2と、およびマッチングユニット22の抵抗R3とからなる回路となる。本実施形態では、電流が分岐しないことから、定電流制御でESC電流を安定して制御することが可能となる。ジョンセン・ラーベック(JR)チャック力は、電流値に比例することが知られている。よって、安定したESC電流によって、基板処理装置100は、安定したチャック力を得ることができる。
【0028】
第1実施形態に係る基板処理装置100は、絶縁変圧器の2次コイルがフローティングした状態である。そのため、リーク電流は基本的にゼロにすることができる。また、第1実施形態に係る基板処理装置100において、リーク電流がほぼゼロである状態で、直流電源38が、定電流制御である。そのため、安定したチャック力を得ることができる。
【0029】
第1実施形態に係る基板処理装置100による処理内容は、プラズマ処理を伴うものであれば特に限定されない。本実施形態の基板処理装置100を、プラズマ励起原子層堆積装置(PEALD装置)として利用してもよいし、プラズマ励起化学気相成膜装置(PECVD装置)として利用してもよい。
【0030】
(第2実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置を説明する。
図4は、第2実施形態に係る基板処理装置100Aの断面図である。基板処理装置100Aは、チャンバ12を備える。チャンバ12の中に、誘電体で形成された下部電極14と、下部電極14に対向して配置される上部電極16とが設けられる。下部電極14の材料は、例えばAlNなどのセラミックである。上部電極16には、複数のスリット16aが設けられる。各スリット16aを通って、下部電極14と上部電極16との間に材料ガスが供給される。
【0031】
チャンバ12および上部電極16には、Oリング21を介して排気ダクト20が固定されている。排気ダクト20は、上部電極16と下部電極14との間の空間を囲む。上部電極16と下部電極14との間に供給されて基板処理に利用されたガスは、排気ダクト20を通って、チャンバ12の外部に排出される。
【0032】
上部電極16は、マッチングユニット22を介し、第1交流電源24と電気的に接続されている。第1交流電源は、例えば、1MHz~30MHzの範囲の周波数の交流電力を提供する。1MHz~30MHzの範囲の周波数は、「第1周波数」の例である。本実施形態では、例えば、13.56MHzの交流電力を供給している。また、基板処理装置100Aは、第1交流電源24とは別に、図示しない第3交流電源を備えていてもよい。この場合の第3交流電源は、例えば、100kHz~1000kHzの範囲の周波数の交流電力を供給する。第3交流電源も、マッチングユニット22を介し、上部電極16と電気的に接続されている。本実施形態では、例示として、第3交流電源が、430kHzの交流電力を供給する。
【0033】
下部電極14は、支持部26によって、支持されている。下部電極14と支持部26とは、互いに、一体的に形成されたサセプタである。下部電極14は、RF電極と呼ばれることもある。
【0034】
下部電極14の中に、下部電極14を加熱するヒータ28が設けられている。ヒータ28は例えば平面視で渦巻き状に形成されている。ヒータ28は、支持部26を通る配線によって、第1フィルタ回路32と接続される。絶縁変圧器34は、第1フィルタ回路32を介してヒータ28と接続されている。具体的には、絶縁変圧器34の2次コイルC2に第1フィルタ回路32が接続されている。2次コイルC2は、可変抵抗39を介してグランドと接続されている。また、第1フィルタ回路32は直流的に絶縁された状態で接地している。第1フィルタ回路32は、例えばローパスフィルタである。第1フィルタ回路32は、高周波ノイズを低減する。ヒータ28に用いられる第2交流電源36は、絶縁変圧器34と接続している。具体的には、第2交流電源36は、絶縁変圧器34の1次コイルC1と接続している。第2交流電源36がヒータ28に電流を供給することで、下部電極14が加熱され、下部電極14の上に載置された基板(不図示)も加熱される。第2交流電源36は例えば、ヒータ28に周波数50Hzまたは60Hzの交流電力を印加する。
【0035】
下部電極14の中に内部電極30が設けられている。内部電極30の材質は例えば、タングステン、タンタル、モリブデン、ニオブ、ルテニウム、ハフニウム等の高融点金属である。内部電極30の形状は金網状あるいはパンチングメタル状である。内部電極30は支持部26を通る配線によって、第2フィルタ回路37と接続している。第2フィルタ回路37は、直流電源38Aが接続されている。直流電源38Aは、静電チャックに用いられ、定電圧制御である。また、内部電極30は、ブロッキングキャパシタ35を介し、グランドと接続されている。
【0036】
第2実施形態の基板処理装置100Aにおいて、絶縁変圧器の2次コイルが可変抵抗を介し、接地し、直流電源38Aが定電圧制御である。そのため、可変抵抗によってヒータ間の体積抵抗のばらつきによるリーク電流(地絡連流)の大小を一定に補正し、ESC電流によるチャック力を一定範囲内に制御できる。一般に、リーク電流の多いヒータのチャック力不足を補正するためにESC電圧を一定以上に上げると下部電極14周辺で直流放電が発生しやすい。第2実施形態の基板処理装置100Aを用いることで、一定の低いESC電圧でチャック力(ESC電流)を制御することができ、直流放電を抑制することができる。
【0037】
図5に、基板処理装置100Aの動作時の等価回路を示す。絶縁変圧器34の2次コイルC2が可変抵抗を介しグランドと接続されている(接地されている)。基板処理装置100Aの静電チャック動作時の等価回路は、第2フィルタ回路37の抵抗R1、下部電極14及びプラズマの抵抗R2、マッチングユニット22の抵抗R3、下部電極14の体積抵抗R4および可変抵抗39からなる回路となる。この等価回路では、第2フィルタ回路37の抵抗R1は、ノード41と接続され、下部電極14及びプラズマの抵抗R2は、ノード41と接続され、第1フィルタ回路32の抵抗R4はノード41と接続されている。本実施形態では、可変抵抗R5を制御することで、R4側に流れるリーク電流を補正することができる。これによって、ESC電流を所定の範囲にすることができ、チャック力を安定させることが可能となる。
【0038】
第2実施形態に係る基板処理装置100Aによる処理内容は、プラズマ処理を伴うものであれば特に限定されない。本実施形態の基板処理装置100Aを、プラズマ励起原子層堆積装置(PEALD装置)として利用してもよいし、プラズマ励起化学気相成膜装置(PECVD装置)として利用してもよい。
【0039】
(従来例)
以上説明の本発明構成と対比するために、以下、図面を参照し、従来例に係る基板処理装置を説明する。
図6は、従来例に係る基板処理装置100Bの断面図である。基板処理装置100Bは、チャンバ12を備える。チャンバ12の中に誘電体で形成された下部電極14と、下部電極14に対向して配置される上部電極16とが設けられる。下部電極14の材料は、例えばAlNなどのセラミックである。上部電極16には、スリット16aが設けられる。スリット16aを通って、下部電極14と上部電極との間に材料ガスが供給される。
【0040】
チャンバ12および上部電極16には、Oリングを介し排気ダクト20が固定されている。排気ダクトは、上部電極16と下部電極14との間の空間を囲む。上部電極16と下部電極14との間に供給され、基板処理に利用されたガスは、排気ダクト20を通って、外部に排出される。
【0041】
上部電極16は、マッチングユニット22を介し、第1交流電源24と接続されている。第1交流電源は、例えば、1MHz~30MHzの範囲の周波数の交流電力を供給する。
【0042】
下部電極14は、支持部26によって、支持されている。下部電極14と支持部26とは一体的に形成されたサセプタである。
【0043】
下部電極14の中に下部電極14を加熱するヒータ28が設けられている。ヒータ28は例えば平面視で渦巻き状に設けられている。ヒータ28は、支持部26を通る配線によって、第1フィルタ回路32と接続される。絶縁変圧器34は、第1フィルタ回路32を介してヒータ28と接続されている。具体的には、絶縁変圧器34の2次コイルC2に第1フィルタ回路32が接続されている。2次コイルC2は、第1実施形態と異なり、グランドと接続されている。ヒータ28に用いられる第2交流電源36は、絶縁変圧器34に接続されている。具体的には、第2交流電源36は、絶縁変圧器34の1次コイルC1に接続されている。第2交流電源36がヒータ28に電流を供給することで、下部電極14が加熱され、下部電極14の上の基板も加熱される。
【0044】
下部電極14の中に内部電極30が設けられている。内部電極30は支持部26を通る配線によって、第2フィルタ回路37に接続されている。第2フィルタ回路37は、直流電源38Bが接続されている。直流電源38Bは、静電チャックに用いられる。直流電源38Bは、静電チャックを提供するために、内部電極30に定電圧制御によって、一定の電圧を印加する。また、内部電極30は、ブロッキングキャパシタ35を介し、グランドに接続されている。
【0045】
図7に従来例に係る基板処理装置100Bの動作時の等価回路を示す。基板処理装置100Bにおいて、2次コイルC2がグランドに接続されている。そのため、ヒータ28で加熱した時に下部電極14の抵抗値R4が低下し、リーク電流がヒータ28側の接地されたヒータ電源回路に流れる。従来例では、直流電源38Bは、定電圧制御であるので、下部電極14の体積抵抗R4に応じ、リーク電流が変動する。そのため、上述した各実施形態とは異なり、ヒータごとのばらつきによって、ESC電流が変動する場合がある。
【0046】
以上、本発明の各実施形態に係る基板処理装置について、従来構造と対比しながら詳述した。なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0047】
12 チャンバ
14 下部電極
16 上部電極
22 マッチングユニット
24 第1交流電源
28 ヒータ
32 第1フィルタ回路
34 絶縁変圧器
36 第2交流電源
37 第2フィルタ回路
38 直流電源
【外国語明細書】