(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154536
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】被加工物の分割方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 B
H01L21/78 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068393
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】清水 芳昭
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA43
5F063CB07
5F063CB20
5F063CB30
5F063DD79
5F063DD83
(57)【要約】
【課題】熱膨張性の樹脂シートを熱膨張させる場合に比べてより確実に被加工物を分割可能である新規な分割手法を提供する。
【解決手段】一面と、一面とは反対側に位置する他面と、を有する板状の被加工物の分割方法であって、被加工物を透過する波長を有するレーザービームの集光点を他面よりも一面に近い被加工物の内部に位置付けた状態で、一面又は他面に設定される分割予定ラインに沿って集光点と被加工物とを相対的に移動させることにより、被加工物の内部に分割起点を形成する分割起点形成工程と、被加工物よりも熱伝導率又は線熱膨張率が小さい固定部材を被加工物の他面に固定する固定工程と、被加工物を加熱して膨張させて分割起点から被加工物の厚さ方向に沿って亀裂を伝播させることにより、他面に固定された固定部材を支点にして被加工物を分割予定ラインに沿って分割する分割工程と、を備える被加工物の分割方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面と、該一面とは反対側に位置する他面と、を有する板状の被加工物の分割方法であって、
該被加工物を透過する波長を有するレーザービームの集光点を該他面よりも該一面に近い該被加工物の内部に位置付けた状態で、該一面又は該他面に設定される分割予定ラインに沿って該集光点と該被加工物とを相対的に移動させることにより、該被加工物の内部に分割起点を形成する分割起点形成工程と、
該分割起点形成工程の後、該被加工物よりも熱伝導率又は線熱膨張率が小さい固定部材を該被加工物の該他面に固定する固定工程と、
該固定工程の後、該被加工物を加熱して膨張させて該分割起点から該被加工物の厚さ方向に沿って亀裂を伝播させることにより、該他面に固定された該固定部材を支点にして該被加工物を該分割予定ラインに沿って分割する分割工程と、
を備えることを特徴とする被加工物の分割方法。
【請求項2】
該固定部材は、板材を有し、
該固定工程では、粘着層を介して、該板材と、該被加工物と、を固定することを特徴とする請求項1に記載の被加工物の分割方法。
【請求項3】
該固定部材は、樹脂製のフィルムを有し、
該固定工程では、粘着層を介さずに、該フィルムと、該被加工物の該他面と、を密着させることで、該フィルムを該被加工物に固定することを特徴とする請求項1に記載の被加工物の分割方法。
【請求項4】
該固定部材は、熱収縮性を有することを特徴とする請求項3に記載の被加工物の分割方法。
【請求項5】
該分割工程では、該被加工物を加熱すると共に該固定部材を冷却することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の被加工物の分割方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一面と、当該一面とは反対側に位置する他面と、を有する板状の被加工物の分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信デバイスに使用される光導波路として、シリコンチップが用いられることがある。例えば、シリコンチップは、シリコン単結晶基板を有する円板状の被加工物を複数に分割することで製造される。
【0003】
シリコンチップを光導波路として用いる場合、光は、分割により露出したシリコンチップの端面からシリコンチップの内部に入る。端面の凹凸は光損失につながるので、シリコンチップの端面は鏡面に近い平坦性を有することが望ましい。そこで、鏡面に近い平坦性を有する端面が形成される様に被加工物を分割するべく、種々の工夫がなされている。
【0004】
被加工物を分割する方法として、被加工物の内部に改質層を形成した後、改質層を起点に被加工物を分割する方法が知られている。具体的には、まず、被加工物を透過する波長を有するパルス状のレーザービームを用いて、被加工物の一面に設定されている分割予定ラインに沿って被加工物の内部に改質層を形成する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
次に、エキスパンド装置を使用して、被加工物に貼り付けられている粘着テープを引っ張ることで粘着テープを拡張し、被加工物に外力を印加する。これにより、改質層を分割の起点として被加工物をシリコンチップに分割する(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかし、エキスパンド装置を使用すれば、その分だけ製造コストが増加する。そこで、より安価な手法で被加工物を分割する方法が模索されていた。エキスパンド装置に代わる分割方法として、熱膨張性の樹脂シートを用いた分割方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
具体的には、分割予定ラインに沿って被加工物の内部に改質層を形成した後、被加工物よりも大きな熱膨張率を有する樹脂材料で形成された熱膨張性の樹脂シートを熱膨張させることにより、被加工物に外力を印加して分割する。
【0008】
しかし、樹脂シートを熱膨張させることにより被加工物を分割しようとしても、エキスパンド装置を用いる場合に比べて被加工物を分割し難い。そこで、より確実に被加工物を分割するためには、被加工物の厚さ方向において重なる様に何層もの改質層を被加工物内に形成する必要があった。
【0009】
しかし、改質層が形成された領域では、レーザー加工時に生じる多光子吸収で結晶性が変化(例えば、単結晶相からアモルファス相に変化)しているので、改質層が形成されている領域は、上述のシリコンチップの端面において鏡面にはならない。
【0010】
つまり、被加工物の厚さ方向において重なる改質層の数が増えるほど、端面における鏡面の面積が減少し、即ち、光の入口として機能する範囲が減少する。加えて、改質層の数が増えるほど、レーザー加工に要する時間が長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002-192370号公報
【特許文献2】特開2011-166002号公報
【特許文献3】特開2014-086611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、熱膨張性の樹脂シートを熱膨張させる場合に比べてより確実に被加工物を分割可能である新規な分割手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、一面と、該一面とは反対側に位置する他面と、を有する板状の被加工物の分割方法であって、該被加工物を透過する波長を有するレーザービームの集光点を該他面よりも該一面に近い該被加工物の内部に位置付けた状態で、該一面又は該他面に設定される分割予定ラインに沿って該集光点と該被加工物とを相対的に移動させることにより、該被加工物の内部に分割起点を形成する分割起点形成工程と、該分割起点形成工程の後、該被加工物よりも熱伝導率又は線熱膨張率が小さい固定部材を該被加工物の該他面に固定する固定工程と、該固定工程の後、該被加工物を加熱して膨張させて該分割起点から該被加工物の厚さ方向に沿って亀裂を伝播させることにより、該他面に固定された該固定部材を支点にして該被加工物を該分割予定ラインに沿って分割する分割工程と、を備える被加工物の分割方法が提供される。
【0014】
好ましくは、該固定部材は、板材を有し、該固定工程では、粘着層を介して、該板材と、該被加工物と、を固定する。
【0015】
また、好ましくは、該固定部材は、樹脂製のフィルムを有し、該固定工程では、粘着層を介さずに、該フィルムと、該被加工物の該他面と、を密着させることで、該フィルムを該被加工物に固定する。また、好ましくは、該固定部材は、熱収縮性を有する。
【0016】
また、好ましくは、該分割工程では、該被加工物を加熱すると共に該固定部材を冷却する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様に係る被加工物の分割方法では、まず、他面よりも一面に近い被加工物の内部に分割起点を形成する(分割起点形成工程)。その後、被加工物よりも熱伝導率又は線熱膨張率が小さい固定部材を、被加工物の他面に固定する(固定工程)。
【0018】
固定工程の後、被加工物を加熱して膨張させて分割起点から被加工物の厚さ方向に沿って亀裂を伝播させることにより、他面に固定された固定部材を支点にして被加工物を分割予定ラインに沿って分割する(分割工程)。
【0019】
それゆえ、熱膨張性の樹脂シートを熱膨張させて被加工物に外力を印加する場合に比べて、より確実に被加工物を分割できる。更に、この分割方法を用いれば、被加工物に機械的な負荷をかけていないにも関わらず、機械的な負荷をかけたエキスパンド装置を用いた場合よりも高い分割性能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】分割起点形成工程を示す一部断面側面図である。
【
図5】分割工程における被加工物の加熱を示す一部断面側面図である。
【
図6】分割工程において亀裂が第2面まで伝播した様子を示す一部断面側面図である。
【
図7】分割工程で分割された被加工物を示す一部断面側面図である。
【
図8】
図8(A)は2層の改質領域が形成された被加工物を本実施形態の分割方法で分割したシリコンチップの端面を示す写真であり、
図8(B)は6層の改質領域が形成された被加工物をエキスパンド装置で分割したシリコンチップの端面を示す写真である。
【
図9】分割起点形成工程の変形例を示す一部断面側面図である。
【
図10】分割工程の変形例を示す一部断面側面図である。
【
図11】第2の実施形態に係る固定工程を示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、被加工物11(
図2参照)の分割方法のフロー図である。本実施形態では、分割起点形成工程S10、固定工程S20及び分割工程S30の順に各工程を実行する。
【0022】
まず、
図2を参照し、分割起点形成工程S10で加工される円板状(即ち、板状)の被加工物11について説明する。本実施形態の被加工物11は、シリコン単結晶基板(即ち、シリコンウェーハ)であり、特に、デバイス等が形成されていないミラーウェーハである。
【0023】
但し、被加工物11は、シリコン単結晶基板に限定されない。被加工物11には、被加工物11の劈開を妨げない程度に、1つ以上の薄膜及び/又は1つ以上の層が形成されていてもよい。被加工物11には、デバイスが形成されてもよい。
【0024】
被加工物11は、それぞれ略円形の第1面(即ち、一面)11a及び第2面(即ち、他面)11bを有する。第1面11aと、第2面11bとは、被加工物11の厚さ方向11cにおいて反対側に位置している。
【0025】
厚さ方向11cは、例えば、常温常圧下において第1面11a及び第2面11bに直交する方向である。但し、第2面11bよりも第1面11aに近い位置に配置された熱源で被加工物11を加熱しているときには、厚さ方向11cは、相対的に熱変形量が小さい第2面11bに直交する方向と見なしてもよい。
【0026】
第1面11aには、それぞれ所定方向に沿って配置された複数の分割予定ライン15(
図3参照)が設定されている。
図3において、分割予定ライン15は黒点で示されている。なお、本実施形態の分割予定ライン15は、第1面11aに描かれているわけではなく、被加工物11の形状、サイズ等に応じて適宜定められる仮想的な直線である。
【0027】
但し、第1面11aに分割予定ライン15が描かれていてもよい。また、分割予定ライン15は、第1面11aに代えて、第2面11bに設定されてもよい。本実施形態では、所定方向(
図3でのX軸方向)に沿って10本の分割予定ライン15が互いに平行に配置されている。なお、他の例において、複数の分割予定ライン15は、第1面11aにおいて格子状に配置されてもよい。
【0028】
本実施形態の被加工物11の径は、例えば、約200mmから300mmであり、第1面11aから第2面11bまでの厚さは、例えば、約300μmである。しかし、被加工物11の径及び厚さは、この例に限定されるものではない。
【0029】
被加工物11の第1面11aには、第1面11aを保護するための保護テープ13が貼り付けられている。保護テープ13は、例えば、樹脂製の基材層と、樹脂製の粘着剤で形成された粘着層(糊層)と、の積層構造を有する。
【0030】
被加工物11の第1面11aには、保護テープ13の粘着層側が貼り付けられている。被加工物11は、保護テープ13を介して第1面11a側がチャックテーブル4で吸引保持される。
【0031】
次に、
図2を参照し、レーザー加工装置2について説明する。なお、
図2にそれぞれ示すX軸方向(加工送り方向)、Y軸方向(割り出し送り方向)、及び、Z軸方向(高さ方向、鉛直方向)は、互いに直交する。
【0032】
チャックテーブル4は、金属で形成された円板状の枠体を有する。枠体の上部には、枠体よりも小径の円板状の凹部が形成されており、この凹部には、多孔質板セラミックスで形成された円板状の多孔質板が固定されている。
【0033】
枠体には、多孔質板に負圧を供給するための所定の流路(不図示)が形成されている。枠体には、管部(不図示)を介して真空ポンプ等の吸引源(不図示)が接続されており、多孔質板には、吸引源から所定の流路を介して負圧が伝達される。
【0034】
多孔質板の上面と、枠体の上面とは、略面一となっており、被加工物11を吸引保持する保持面として機能する。チャックテーブル4の下方には、Z軸方向と略平行な回転軸の周りにチャックテーブル4を回転させる回転駆動機構(不図示)が設けられている。
【0035】
回転駆動機構は、例えば、ロータ及びステータを有する。この場合、チャックテーブル4はロータに固定され、ロータと共に回転する。これに代えて、回転駆動機構は、モータ、駆動プーリ、従動プーリ、並びに、駆動プーリ及び従動プーリに巻回された無端ベルトを有してもよい。この場合、チャックテーブル4は従動プーリに対して固定され、従動プーリと共に回転する。
【0036】
チャックテーブル4及び回転駆動機構は、ボールねじ式のX軸方向移動機構(不図示)によりX軸方向に沿って移動され、且つ、ボールねじ式のY軸方向移動機構(不図示)によりY軸方向に沿って移動される様に構成されている。
【0037】
チャックテーブル4の上方には、保持面で保持された被加工物11に向けてレーザービームLを照射するためのレーザービーム照射ユニット6が設けられている。レーザービーム照射ユニット6は、長手方向がY軸方向に沿って配置された円筒状の筐体8を有する。
【0038】
筐体8は、ボールねじ式のZ軸方向移動機構(不図示)によりZ軸方向に沿って移動する様に構成されている。筐体8の内部は、パルス状のレーザービームLが通過する経路となっている。
【0039】
レーザービームLは、Nd:YAG結晶等のレーザー媒質を有するレーザー発振器(不図示)から出射する。レーザー発振器は、レーザー媒質に励起光を照射するランプ等の励起光源と、レーザービームLが出射されるタイミングを制御するQスイッチと、を含む。
【0040】
レーザービームLは、被加工物11を透過する波長を有し、被加工物11がシリコン単結晶基板である本実施形態において、レーザービームLの波長は1342nmである。但し、被加工物11を構成する材料に応じて、使用される波長は適宜変更される。
【0041】
筐体8の先端部には、ヘッド部10が固定されている。ヘッド部10内には、Z軸方向に沿って、ミラー(不図示)と、集光レンズ(不図示)と、が配置されている。
【0042】
レーザービームLは、ミラーで進行方向が変えられた後、集光レンズを通過して被加工物11へ照射される。このとき、レーザービームLは、被加工物11内部において略一点に集光する様に集光レンズで集光される。
【0043】
筐体8の側方には、第1面11a側を撮像して分割予定ライン15(
図3参照)を設定するための顕微鏡カメラユニット12が設けられている。顕微鏡カメラユニット12は、いずれも不図示の対物レンズと、光源と、撮像素子と、を有する。
【0044】
例えば、光源は、赤外線を発光可能なLED(Light Emitting Diode)を有し、撮像素子は、第1面11aで反射された赤外線を光電変換可能なイメージセンサ(CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ、又は、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサ)を有する。
【0045】
なお、被加工物11の第2面11bに分割予定ライン15が設定されている場合、光源として、赤外線に代えて可視光帯域の波長を有する光を発光可能なLEDが採用され、撮像素子として、可視光を光電変換可能なイメージセンサが採用される。
【0046】
図2は、分割起点形成工程S10を示す斜視図である。
図3は、分割起点形成工程S10を示す一部断面側面図であり、被加工物11及び保護テープ13については、
図2のAAでの断面を示す。
【0047】
分割起点形成工程S10では、まず、チャックテーブル4の保持面で保護テープ13を介して被加工物11を吸引保持する。このとき、被加工物11の第2面11bが上方に露出する。そして、分割予定ライン15がX軸方向と略平行になる様にチャックテーブル4の向きを調整する。
【0048】
次に、レーザービームLの集光点P(
図3参照)を第2面11bよりも第1面11aに近い深さ位置(即ち、被加工物11の内部)に位置付けた状態で、各分割予定ライン15に沿って集光点Pと被加工物11とを所定の速度で相対的に移動させる。
【0049】
本実施形態では、被加工物11における集光点Pを第1の深さに固定した状態で、一の分割予定ライン15のX軸方向の一端から他端まで集光点Pが移動する様に、チャックテーブル4を所定の加工送り速度でX軸方向に沿って移動させる(第1のパス)。
【0050】
これにより、被加工物11の内部において、一の分割予定ライン15に沿って改質領域17を形成する。改質領域17では、多光子吸収により結晶性が変化している。改質領域17は、レーザービームLが照射されていない領域に比べて脆弱な領域であり、分割工程S30において分割起点として機能する。
【0051】
次に、チャックテーブル4をY軸方向に沿って所定のインデックス量だけ割り出し送りし、走査済の分割予定ライン15に対してY軸方向に隣接する別の分割予定ライン15に沿って同様にレーザービームLを照射して、改質領域17を形成する。
【0052】
この様にして、全ての分割予定ライン15に沿って第1の深さに改質領域17を形成する。その後、第1の深さよりも第2面11bに近い第2の深さに集光点Pを位置付け、全ての分割予定ライン15に沿って同様に改質領域17を形成する(第2のパス)。
【0053】
ところで、まず、第2の深さに改質領域17を形成し、次に、第1の深さに改質領域17を形成する場合には、第1の深さに改質領域17を形成する際に、先に形成された第2の深さの改質領域17でレーザービームLが散乱されるので、第1の深さの改質領域17が形成され難い。
【0054】
これに対して本実施形態では、まず、第1の深さに改質領域17を形成し、次に、第1の深さに比べてヘッド部10に近い第2の深さに改質領域17を形成するので、第1の深さに改質領域17を形成するときのレーザービームLの散乱を低減できる。
【0055】
各改質領域17からは被加工物11の厚さ方向11cに沿って亀裂19が伸展する。
図3に示す例では、第1の深さの改質領域17から第1面11aに達する亀裂19が形成されている。
【0056】
また、第1の深さの改質領域17と、第2の深さの改質領域17とは、亀裂19で接続されている。更に、第2の深さの改質領域17から第2面11bには達せずに被加工物11の内部で伸展が止まった亀裂19が形成されている。本実施形態の分割起点形成工程S10において使用される加工条件の一例を下記に示す。
【0057】
波長 :1342nm
平均出力 :1.0W
繰り返し周波数:90kHz
加工送り速度 :600mm/s
パス数 :2
集光点深さ位置:第1の深さは第1面11aから40μm(第1のパス)
第2の深さは第1面11aから100μm(第2のパス)
【0058】
パス数とは、1つの分割予定ライン15の一端から他端まで(又は他端から一端まで)集光点Pが移動する回数を意味する。なお、本実施形態では、下記の様にパス数を2とするが、パス数を1としてもよい。
【0059】
改質領域17が形成される深さ位置は、第2面11bよりも第1面11aに近い、即ち、被加工物11の厚さの半分の位置から第1面11aまでの間に設定される。
【0060】
より好ましくは、第1面11aから分割を開始させるために、改質領域17が形成される深さ位置は、第1面11aを起点とする被加工物11の厚さの1/3の深さ位置から第1面11aまでの間に、設定される。
【0061】
分割起点形成工程S10の後、粘着層21を介して板材(固定部材)23を被加工物11の第2面11bに固定する固定工程S20を行う(
図4参照)。
図4は、固定工程S20を示す一部断面側面図である。板材23は、被加工物11の直径よりも大きな一辺を有する正方形状を有する。
【0062】
固定工程S20では、まず、略平坦な支持面18aに保護テープ13が接する様に、被加工物11を支持台18に載置する。次に、第1面23aに樹脂製の粘着層21が設けられた板材23の第1面23a側を、被加工物11の第2面11bに押し当てる。
【0063】
これにより、保護テープ13、被加工物11及び板材23が一体化された被加工物ユニット25が形成される。粘着層21は、紫外線硬化樹脂、ワックス等で形成されている。紫外線硬化樹脂は、紫外線が照射される前は粘着性を有するが、紫外線の照射後には粘着性を略失う。
【0064】
最終的には、分割後の被加工物11から板材23が除去されるので、被加工物11における粘着層21の残渣を低減するためには、紫外線硬化樹脂を使用する方が好ましい。但し、本実施形態を実施できる限り、粘着層21の材料は、特段限定されない。
【0065】
板材23は、被加工物11よりも小さい熱伝導率、又は、被加工物11よりも小さい線熱膨張率を有する。本実施形態の板材23は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)で形成されており、シリコン単結晶基板で構成されている被加工物11よりも小さい熱伝導率を有する。
【0066】
PETの熱伝導率は、300Kから500Kの範囲において、0.2[Wm-1K-1]から0.3[Wm-1K-1]である。これに対して、シリコン単結晶基板の熱伝導率は、300Kで約160[Wm-1K-1]であり、500Kで80[Wm-1K-1]である。
【0067】
つまり、PETは、シリコン単結晶基板に比べて熱が伝わり難い。それゆえ、板材23に比べて被加工物11が熱源に近くなる様に配置した状態で、被加工物ユニット25を加熱すると、板材23の熱膨張が始まるよりも早く被加工物11が膨張し始める。
【0068】
但し、PETの線熱膨張率は、300Kで約6.5×10-5[K-1]であり、シリコン単結晶基板の線熱膨張率は、300Kで約2.6×10-6[K-1]、500Kで約3.6×10-6[K-1]である。つまり、PETの線熱膨張率は、シリコン単結晶基板の線熱膨張率よりも大きい。
【0069】
しかし、後続の分割工程S30では、板材23に比べて被加工物11の方が熱源に近い位置に配置されている。更に、被加工物11と板材23との間には、樹脂製の粘着層21が設けられているので、板材23が被加工物11に直接密着している場合に比べて、板材23の温度上昇速度は更に遅くなる。
【0070】
それゆえ、板材23の熱伝導率が被加工物11の熱伝導率よりも小さければ、板材23の熱膨張の開始タイミングよりも被加工物11の熱膨張が十分に早く始まり、改質領域17を起点とする被加工物11の劈開が進行する。
【0071】
ところで、板材23は、ダイヤモンド製であってもよい。ダイヤモンドの熱伝導率は、300Kで約1000[Wm-1K-1]から約2000[Wm-1K-1]であり、シリコン単結晶基板の熱伝導率よりも十分に大きいので、シリコン単結晶基板に比べて熱が伝わりやすい。
【0072】
しかし、ダイヤモンドの線熱膨張率は、300Kで約1.0×10-6[K-1]であり、シリコン単結晶基板の線熱膨張率よりも小さい。それゆえ、シリコン単結晶基板を介してダイヤモンド製の板材23にいくら熱が伝わろうとも、板材23の熱膨張は略問題とならない。
【0073】
これに対して、板材23が、被加工物11よりも大きい熱伝導率を有し、且つ、被加工物11よりも大きい線熱膨張率を有する場合、被加工物11と同等に、又は、被加工物11よりも板材23が熱膨張する可能性がある。
【0074】
板材23は、被加工物11の第2面11b側に配置されており、改質領域17は第2面11bよりも第1面11a側に形成されているので、板材23が被加工物11と同等以上に熱膨張すると、改質領域17を起点とする被加工物11の劈開が進行し難い。
【0075】
それゆえ、シリコン単結晶基板に比べて高い熱伝導率及び線熱膨張率を有する銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)等の材料で板材23が形成されている場合、板材23は、被加工物11を固定する機能を発揮し難い。
【0076】
これに対して本実施形態では、板材23の変形を略抑制することで板材23が被加工物11の第2面11b側を固定すると共に、熱源に比較的近い改質領域17を起点として被加工物11の熱膨張による自発的な劈開を進行させることができる。
【0077】
なお、上述の材料は一例であり、被加工物11の熱膨張率及び線熱膨張率と、板材23の熱膨張率及び線熱膨張率と、の相対的な大小関係により、板材23を構成する材料が選択されればよい。
【0078】
固定工程S20の後、分割工程S30を行う。分割工程S30では、まず、
図5に示す通り、略平坦な支持面20aに保護テープ13が接する様に、被加工物ユニット25をホットプレート20上に配置する。
【0079】
ホットプレート20の支持面20aは、セラミックス、アルミニウム合金、ステンレス鋼等で形成されており、ホットプレート20の内部に設けられた発熱体により加熱され、支持面20aの温度は、例えば、常温から約400℃までの範囲で制御される。
【0080】
本実施形態では、板材23ではなく第1面11aが支持面20aに近接する様に配置した上で、支持面20aを約200℃に加熱する。
図5は、分割工程S30における被加工物11の加熱を示す一部断面側面図である。
【0081】
なお、
図5では、被加工物11へ供給される熱を矢印Bで示す。被加工物11を加熱すると、被加工物11が熱膨張する。上述の様に、第1面11a側の熱膨張が時間的に早く進行すると、第1面11aの中央部が外周部よりも突出する様に被加工物11は変形する。
【0082】
そして、熱膨張に伴って生じる被加工物11の内部応力(改質領域17から左右に進む矢印参照)は、改質領域17(即ち、分割起点)から被加工物11の厚さ方向11cに沿って亀裂19が伝播することにより、被加工物11が劈開した結果、開放される。
【0083】
なお、改質領域17の直上に位置する第2面11bの線状領域17aは、板材23により固定されているので、被加工物11の劈開が進行しても略固定されたままである。つまり、板材23を支点にして第1面11a側から裂ける様に、被加工物11の劈開が進行する。
【0084】
この様にして、被加工物11は、各分割予定ライン15に沿って短冊状に分割される。
図6は、分割工程S30において亀裂19が第2面11bまで伝播した様子を示す一部断面側面図である。
【0085】
亀裂19が第2面11bまで伝播すると、被加工物11は各々短冊状の複数のシリコンチップに分割される。所定時間の加熱の後、ホットプレート20による被加工物11の加熱を停止する。
図7は、分割工程S30で分割された被加工物11を示す一部断面側面図である。
【0086】
本実施形態では、ホットプレート20と被加工物11との間に熱膨張性の樹脂シートを配置してこの樹脂シートを熱膨張させて被加工物11に外力を印加する場合に比べて、より確実に被加工物11を分割できる。
【0087】
つまり、樹脂シートの熱膨張により被加工物11に印加される外力を利用するよりも、板材23で第2面11bを固定した上で、改質領域17を分割起点として劈開を進行させる方が、被加工物11を分割しやすい。しかも、分割後の端面は、劈開面であるので、鏡面に近い平坦面となる。
【0088】
加えて、熱膨張性の樹脂シートを用いる場合に比べて、厚さ方向11cにおける改質領域17の数を低減しても被加工物11を分割できるので、分割起点形成工程S10でのパス数を低減できる。更に、改質領域17の数を低減できるので、分割工程S30で発生する加工屑の量も低減できる。
【0089】
なお、本実施形態の分割方法を用いれば、被加工物11に機械的な負荷をかけていないにも関わらず、機械的な負荷をかけたエキスパンド装置を用いた場合よりも高い分割性能を発揮できる。
【0090】
図8(A)は、2層の改質領域17が形成された被加工物11を本実施形態の分割方法で分割したシリコンチップの端面を示す写真である。
図8(B)は、比較例に係る実験結果であり、6層の改質領域17が形成された被加工物11をエキスパンド装置で分割したシリコンチップの端面を示す写真である。
【0091】
図8(A)及び
図8(B)において、シリコンチップの厚さは同じ300μmである。なお、
図8(A)に示す実験では、20mm角の矩形板状のシリコン単結晶基板を被加工物11として用い、被加工物11を短冊状に分割した。
【0092】
図8(A)に示す写真では、2層の改質領域17の間に細長い黒色領域が存在するが、この黒色領域では、厚さ方向11cにおいて亀裂19が完全にはつながっていない。なお、第2面11b側の改質領域17と第2面11bとの間には、広範囲に亘って鏡面領域11eが形成されている。
【0093】
図8(B)に示す写真において、被加工物11の第1面11a近傍の2層の改質領域17は、分割予定ライン15に沿って略連続的に形成されているが、この2層よりも第2面11bに近い4層の改質領域17は、分割予定ライン15に沿って所定の間隔11dで形成されている。
【0094】
所定の間隔11dを一辺とする矩形状の領域には、鏡面領域11eが形成されているが、
図8(B)の鏡面領域11eの幅(即ち、所定の間隔11d)は、
図8(A)の鏡面領域11eの幅の略1/5である。
【0095】
図8(B)に示す例では、分割後のシリコンチップの端面に劈開面が形成される様にエキスパンド装置で被加工物11を分割するために、6層もの改質領域17を要している。
【0096】
その結果、
図8(B)に示す例では、
図8(A)に示す例に比べて、鏡面領域11eの幅が狭い。つまり、
図8(B)に示す例に比べて、
図8(A)に示す例では、パス数及び加工屑を低減でき、劈開面の面積を増加させることができる。
【0097】
(第1変形例)次に、分割起点形成工程S10の変形例について説明する。
図9は、分割起点形成工程S10の変形例を示す一部断面側面図である。当該変形例では、1層目の改質領域17から第1面11aへ延びる亀裂19が第1面11aに達していない。
【0098】
レーザー加工時の加工条件等に起因して、分割起点形成工程S10時には亀裂19が第1面11aに達していないこともあるが、分割工程S30を経れば、亀裂19は第1面11aに達し、被加工物11はシリコンチップに分割される。
【0099】
(第2変形例)次に、分割工程S30の変形例について説明する。
図10は、分割工程S30の変形例を示す一部断面側面図である。当該変形例では、分割工程S30において、ホットプレート20で被加工物11を加熱すると共に板材23を冷却する。
【0100】
図10に示す例では、送風機(不図示)を利用して板材23の第2面23b側に常温の風を送ることで板材23を冷却する。
図10では、風を矢印Cで示す。なお、常温よりも低い温度の風で板材23を冷却してもよいし、冷水が循環するヒートシンクを板材23に接触させる又は板材23近傍に配置することで板材23を冷却してもよい。
【0101】
板材23を冷却することで、板材23の熱膨張がより確実に抑えられるので、被加工物11の第2面11bを固定する板材23の機能をより確実にできる。分割工程S30における被加工物11の加熱温度が比較的高い場合や、加熱時間が比較的長い場合等、板材23を冷却する方が好ましい場合もある。
【0102】
(第2の実施形態)次に、第2の実施形態について説明する。
図11は、第2の実施形態に係る固定工程S20を示す一部断面側面図である。第2の実施形態の固定工程S20では、被加工物11よりも熱伝導率又は線熱膨張率が小さい樹脂製のフィルム27を固定部材として用いる。
【0103】
フィルム27は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィンで形成されている。但し、フィルム27は、ポリオレフィンに限定されず、他の熱可塑性樹脂で構成されてもよい。
【0104】
他の熱可塑性樹脂の材料としては、具体的には、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリアセタール、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン-6,ナイロン-66,ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレン、エーテルポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン-酢酸ビニル-無水マレイン酸三元共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン-ビニルアルコール共重合体等から選択される一種又は二種以上を用いることができる。
【0105】
上記のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体を構成する不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が例示される。ここで、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸との二元共重合体のみならず、更に他の単量体が共重合された多元共重合体を包含するものである。
【0106】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体に共重合されてもよい上記他の単量体としては、酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル等のビニルエステルや、アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸n-ブチル,メタクリル酸メチル,メタクリル酸イソブチル,マレイン酸ジメチル,マレイン酸ジエチル等の不飽和カルボン酸エステルを挙げることができる。
【0107】
フィルム27は、硬さの指標となる貯蔵弾性率が常温において1×106Pa以上1×109Pa以下であり、貼付用の加熱時において1×106Pa以上1×107Pa以下であることが好ましい。但し、貼付用の加熱時の貯蔵弾性率は、常温での貯蔵弾性率よりも低い(即ち、加熱時の方が柔らかい)。
【0108】
フィルム27がポリオレフィンで構成されている場合、貼付時にはフィルム27は80℃以上100℃以下の所定温度に加熱される。このとき、貯蔵弾性率は1×106Pa以上1×107Pa以下となる。
【0109】
フィルム27は、被加工物11と略同径の円形であるが、被加工物11よりも大径であってもよい。固定工程S20では、粘着層21(
図4参照)を介さずに、フィルム27を上述の所定温度に加熱しながらフィルム27を被加工物11の第2面11bに押圧する。
【0110】
この様に、フィルム27と、被加工物11の第2面11bと、を密着させることで、フィルム27を被加工物11に固定する。フィルム27は、粘着層21を介さずに被加工物11に貼り付けられるので、被加工物11からフィルム27を剥がしても粘着剤が残らない点が有利である。
【0111】
フィルム27がポリオレフィンで構成されている場合、フィルム27を70℃以上100℃以下の所定温度、より好ましくは、70℃以上90℃以下の所定温度に加熱し、フィルム27に印加する圧力を0.08MPa以上0.15MPa以下の所定値(例えば、0.1MPa)として、フィルム27を被加工物11に押圧する。
【0112】
その後、加熱及び押圧を止めて、常温で冷却することにより、被加工物11の第2面11bにフィルム27が貼り付けられ、且つ、被加工物11の第1面11aに保護テープ13が貼り付けられた被加工物ユニット25が形成される。
【0113】
上述の熱可塑性樹脂の熱伝導率は、シリコン単結晶基板に比べて十分に低く、加えて、熱収縮性を有する。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、PET等は、150℃から200℃の範囲の所定温度で熱収縮を起こす。
【0114】
フィルム27が熱収縮性を有する場合、分割工程S30でフィルム27を熱収縮させることにより、第2面11bの外周から中心に向かう向きに力を作用させることができる。これにより、被加工物11の劈開をより促進させることができる。
【0115】
その他、上述の実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。第2の実施形態に、上述の第1の変形例及び/又は第2の変形例を適用することもできる。
【0116】
被加工物11として、GaN単結晶基板、SiC単結晶基板、サファイア単結晶基板を用いることもできる。この場合、分割起点形成工程S10で使用されるレーザービームLの波長は、被加工物11を透過する様に適宜選択される。なお、個々の被加工物11の熱膨張率又は熱伝導率に応じて、板材23又はフィルム27の材料も適宜選択される。
【0117】
また、上述の実施形態及び変形例では、被加工物11を短冊状に分割する例を示したが、被加工物11を格子状に分割してもよい。被加工物11を格子状に分割する場合、複数の分割予定ライン15が第1面11aにおいて格子状に設定されている。分割起点形成工程S10では、各分割予定ライン15に沿って1層以上の改質領域17が形成される。
【符号の説明】
【0118】
2:レーザー加工装置、4:チャックテーブル
6:レーザービーム照射ユニット、8:筐体、10:ヘッド部
11:被加工物、11a:第1面(一面)、11b:第2面(他面)、11c:厚さ方向
11d:所定の間隔、11e:鏡面領域
12:顕微鏡カメラユニット
13:保護テープ、15:分割予定ライン
17:改質領域、17a:線状領域、19:亀裂
18:支持台、18a:支持面
20:ホットプレート、20a:支持面
21:粘着層、23:板材(固定部材)、23a:第1面、23b:第2面
25:被加工物ユニット
27:フィルム(固定部材)
B,C:矢印、L:レーザービーム、P:集光点
S10:分割起点形成工程、S20:固定工程、S30:分割工程