(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154574
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法、感光性樹脂組成物、感光性樹脂フィルム、プリント配線板及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20241024BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20241024BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20241024BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241024BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/40
G03F7/027
H05K1/03 610H
H05K3/28 F
H05K3/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068467
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 宏平
(72)【発明者】
【氏名】野尻 剛
(72)【発明者】
【氏名】片木 秀行
(72)【発明者】
【氏名】中村 英博
(72)【発明者】
【氏名】野本 周司
(72)【発明者】
【氏名】中村 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】澤本 颯人
【テーマコード(参考)】
2H196
2H225
5E314
【Fターム(参考)】
2H196AA26
2H196BA05
2H196BA06
2H196DA01
2H196EA02
2H196GA08
2H196JA04
2H225AC33
2H225AC36
2H225AD02
2H225AD15
2H225AE12P
2H225AM49P
2H225AM92P
2H225AP08P
2H225AP11P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225CA13
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC13
5E314AA25
5E314AA27
5E314AA32
5E314AA42
5E314BB02
5E314CC15
5E314DD07
5E314FF05
5E314FF17
5E314GG11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】層間絶縁層の表面粗さを低減しながらも、銅めっきとの高い接着強度を発現するプリント配線板の製造方法、プリント配線板を提供し得る感光性樹脂組成物、感光性樹脂フィルム、得られるプリント配線板及びプリント配線板を有する半導体パッケージを提供する。
【解決手段】(1)~(4)を含む、プリント配線板の製造方法。
(1)70℃、20分の条件で濃度5~100ml/Lの硫酸水溶液に95質量%以上溶解する粒子を含む感光性樹脂フィルムを、回路基板の片面又は両面にラミネートする。(2)ラミネートされた感光性樹脂フィルムに対して露光及び現像することによって、ビアを有する層間絶縁層を形成する。(3-1)ビア及び層間絶縁層の表面の粗化処理を行う。(3-2)粗化処理された層間絶縁層を酸性溶液で処理することによって層間絶縁層の表面に存在する粒子(X)を溶解する。(4)層間絶縁層上に回路パターンを形成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(4)を含む、プリント配線板の製造方法。
(1):70℃、20分の条件で濃度5~100ml/Lの硫酸水溶液に95質量%以上溶解する粒子(X)を含む感光性樹脂フィルムを、回路基板の片面又は両面にラミネートすること。
(2):前記(1)でラミネートされた感光性樹脂フィルムに対して露光及び現像することによって、ビアを有する層間絶縁層を形成すること。
(3-1):前記ビア及び前記層間絶縁層の表面の粗化処理を行うこと。
(3-2):粗化処理された層間絶縁層を酸性溶液で処理することによって層間絶縁層の表面に存在する前記粒子(X)を溶解すること。
(4):前記層間絶縁層上に回路パターンを形成すること。
【請求項2】
前記(3-1)における粗化処理を、粗化液を用いて実施する、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記(3-1)における粗化処理を、ドライエッチングで実施する、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記(3-1)における粗化処理後の層間絶縁層の表面粗さ(Ra)が0.30μm以下である、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記(3-2)で使用する前記酸性溶液が硫酸水溶液を含む、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
前記粒子(X)の体積平均粒子径が0.1~3μmである、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
前記感光性樹脂フィルムが前記粒子(X)を10~70体積%含有する、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
70℃、20分の条件で濃度5~100ml/Lの硫酸水溶液に95質量%以上溶解する粒子(X)を含む感光性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、(A)エチレン性不飽和基及び酸性置換基を有する光重合性化合物及び(B)熱硬化性樹脂を含有する、請求項8に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記(A)成分が、下記一般式(A-1)で表される脂環式骨格を含む、請求項9に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
A1は炭素数1~12のアルキル基を表し、前記脂環式骨格中のどこに置換していてもよい。m
1は0~6の整数である。*は他の構造への結合部位である。)
【請求項11】
前記粒子(X)の平均粒子径が0.1~3μmである、請求項8に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
前記粒子(X)の含有量が、固形分全量基準で10~70体積%である、請求項8に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項8に記載の感光性樹脂組成物からなる、フォトビア形成用感光性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項8に記載の感光性樹脂組成物を含む、感光性樹脂フィルム。
【請求項15】
請求項8に記載の感光性樹脂組成物又は請求項14に記載の感光性樹脂フィルムを含む、プリント配線板。
【請求項16】
請求項15に記載のプリント配線板と、半導体素子と、を含む半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリント配線板の製造方法、感光性樹脂組成物、感光性樹脂フィルム、プリント配線板及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び高性能化が進み、プリント配線板は、回路層数の増加、配線の微細化による高密度化が進行している。特に、半導体チップが搭載されるBGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)等の半導体パッケージ基板の高密度化は著しく、配線の微細化に加え、絶縁層の薄膜化及び層間接続用のビア(ビアホールとも称される)のさらなる小径化が求められている。
【0003】
従来から採用されてきたプリント配線板の製造方法として、層間絶縁層と導体回路層を順次積層して形成するビルドアップ方式(例えば、特許文献1参照)によるプリント配線板の製造方法が挙げられる。プリント配線板では、配線の微細化に伴い、回路をめっきによって形成する、セミアディティブ工法が主流となっている。
従来のセミアディティブ工法では、例えば、(1)導体回路上に熱硬化性樹脂フィルムをラミネートした後、当該熱硬化性樹脂フィルムを加熱によって硬化させて「層間絶縁層」を形成する。(2)次に、層間接続用のビアをレーザ加工によって形成した後、アルカリ過マンガン酸処理等によってデスミア処理及び粗化処理を行う。(3)その後、基板に無電解銅めっき処理を施した後、レジストを用いてパターン形成後、電気銅めっきを行うことによって、銅の回路層を形成する。(4)次いで、レジストを剥離した後、無電解層のフラッシュエッチングを行うことによって、銅の回路が形成されてきた。
【0004】
前述の通り、熱硬化性樹脂フィルムを硬化することによって形成された層間絶縁層にビアを形成する方法としてはレーザ加工が主流となっているが、レーザ加工機を用いたレーザ照射によるビアの小径化は限界に達しつつある。さらに、レーザ加工機によるビアの形成では、それぞれのビアホールを一つずつ形成する必要があり、高密度化によって多数のビアを設ける必要がある場合、ビアの形成に多大な時間を要し、製造効率が悪いという問題がある。
【0005】
このような状況下、多数のビアを一括で形成可能な方法として、酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤、無機充填材、及びシラン化合物を含有し、且つ、無機充填材の含有量が10~80質量%である感光性樹脂組成物を用いて、フォトリソグラフィー法によって、複数の小径ビアを一括で形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2では、層間絶縁層又は表面保護層の材料として、従来の熱硬化性樹脂組成物の代わりに感光性樹脂組成物を用いることに起因する銅めっきとの接着性の低下の抑制を課題の1つとし、さらに、ビアの解像性、シリコン素材の基板及びチップ部品との密着性を課題とした上で、これらを解決したとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-304931号公報
【特許文献2】特開2017-116652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、近年、配線の微細化がますます進んできている。配線のさらなる微細化を達成する手段の一つとして、層間絶縁層の表面粗さを低減する方法が挙げられる。しかし、層間絶縁層の表面粗さを低減すると、銅めっきとの接着性が低下するため、これらは二律背反の関係にある。そのため、層間絶縁層の表面粗さの低減と銅めっきとの接着性の向上との両立が困難であり、配線のさらなる微細化を達成することが容易ではない状況にある。
【0008】
そこで、本開示の目的は、層間絶縁層の表面粗さを低減しながらも、銅めっきとの高い接着強度を発現するプリント配線板の製造方法を提供すること、並びに、当該プリント配線板を提供し得る感光性樹脂組成物及び感光性樹脂フィルムを提供すること、さらに、前記製造方法によって得られるプリント配線板及び前記プリント配線板を有する半導体パッケージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、本開示によって前記目的を達成できることを見出した。
本開示は、下記の実施形態[1]~[16]を含む。
[1]下記(1)~(4)を含む、プリント配線板の製造方法。
(1):70℃、20分の条件で濃度5~100ml/Lの硫酸水溶液に95質量%以上溶解する粒子(X)を含む感光性樹脂フィルムを、回路基板の片面又は両面にラミネートすること。
(2):前記(1)でラミネートされた感光性樹脂フィルムに対して露光及び現像することによって、ビアを有する層間絶縁層を形成すること。
(3-1):前記ビア及び前記層間絶縁層の表面の粗化処理を行うこと。
(3-2):粗化処理された層間絶縁層を酸性溶液で処理することによって層間絶縁層の表面に存在する前記粒子(X)を溶解すること。
(4):前記層間絶縁層上に回路パターンを形成すること。
[2]前記(3-1)における粗化処理を、粗化液を用いて実施する、上記[1]に記載のプリント配線板の製造方法。
[3]前記(3-1)における粗化処理を、ドライエッチングで実施する、上記[1]に記載のプリント配線板の製造方法。
[4]前記(3-1)における粗化処理後の層間絶縁層の表面粗さ(Ra)が0.30μm以下である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
[5]前記(3-2)で使用する前記酸性溶液が硫酸水溶液を含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
[6]前記粒子(X)の体積平均粒子径が0.1~3μmである、上記[1]~[5]のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
[7]前記感光性樹脂フィルムが前記粒子(X)を10~70体積%含有する、上記[1]~[6]のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
[8]70℃、20分の条件で濃度5~100ml/Lの硫酸水溶液に95質量%以上溶解する粒子(X)を含む感光性樹脂組成物。
[9]さらに、(A)エチレン性不飽和基及び酸性置換基を有する光重合性化合物及び(B)熱硬化性樹脂を含有する、上記[8]に記載の感光性樹脂組成物。
[10]前記(A)成分が、下記一般式(A-1)で表される脂環式骨格を含む、上記[9]に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
A1は炭素数1~12のアルキル基を表し、前記脂環式骨格中のどこに置換していてもよい。m
1は0~6の整数である。*は他の構造への結合部位である。)
[11]前記粒子(X)の平均粒子径が0.1~3μmである、上記[8]~[10]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[12]前記粒子(X)の含有量が、固形分全量基準で10~70体積%である、上記[8]~[11]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[13]上記[8]~[12]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる、フォトビア形成用感光性樹脂組成物。
[14]上記[8]~[12]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を含む、感光性樹脂フィルム。
[15]上記[8]~[12]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物又は上記[14]に記載の感光性樹脂フィルムを含む、プリント配線板。
[16]上記[15]に記載のプリント配線板と、半導体素子と、を含む半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、層間絶縁層の表面粗さを低減しながらも、銅めっきとの高い接着強度を発現するプリント配線板の製造方法を提供すること、並びに、当該プリント配線板を提供し得る感光性樹脂組成物及び感光性樹脂フィルムを提供すること、さらに、前記製造方法によって得られるプリント配線板及び前記プリント配線板を有する半導体パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】フォトビア形成工程(2)を示す模式図である。
【
図3】粗化処理工程(3-1)を示す模式図である。
【
図4】粒子(X)溶解工程(3-2)を示す模式図である。
【
図5】回路パターン形成工程(4)を示す模式図である。
【
図7】実施例2において形成したビアのSEM画像である。
【
図8】実施例11において形成したビアのSEM画像である。
【
図9】実施例2における粒子(X)溶解工程(3-2)後の層間絶縁層表面のSEM画像である。
【
図10】実施例5における粒子(X)溶解工程(3-2)後の層間絶縁層表面のSEM画像である。
【
図11】実施例8における粒子(X)溶解工程(3-2)後の層間絶縁層表面のSEM画像である。
【
図12】実施例11における粒子(X)溶解工程(3-2)後の層間絶縁層表面のSEM画像である。
【
図13】比較例5における粒子(X)溶解工程(3-2)後の層間絶縁層表面のSEM画像である。
【
図14】実施例13における粗化処理工程(3-1)後の層間絶縁層表面のSEM画像である。
【
図15】実施例13における粒子(X)溶解工程(3-2)後の層間絶縁層表面のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。数値範囲「AA~BB」という表記においては、両端の数値AA及びBBがそれぞれ下限値及び上限値として数値範囲に含まれる。
本開示において、例えば、「10以上」という記載は、10及び10を超える数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。また、例えば、「10以下」という記載は、10及び10を未満の数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。
本開示において、感光性樹脂組成物中の各成分の含有量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、感光性樹脂組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有量を意味する。
本開示において「環形成炭素数」とは、環を形成するのに必要な炭素原子の数であり、環が有する置換基の炭素原子の数は含まれない。例えば、シクロヘキサン骨格及びメチルシクロヘキサン骨格のいずれも、環形成炭素数は6である。
「XX(メタ)アクリレート」という表記は、XXアクリレート及びXXメタクリレートの一方又は双方を意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の一方又は双方を意味する。
本開示において、「樹脂成分」とは、後述する(A)成分及び(B)成分等であり、必要に応じて含有してもよい他の成分(例えば、(C)、(D)、(F)、(G)、(H)、(I)及び(J)成分等)も含まれるが、無機充填材及び顔料等の無機化合物は含まれない。また、「固形分」とは、感光性樹脂組成物に含まれる水及び後述する希釈剤を除いた不揮発分のことであり、25℃付近の室温で液状、水飴状及びワックス状のものも含む。
本開示において、「比誘電率」は、特に説明がなくとも、10GHz帯における比誘電率のことである。
また、本開示中における記載事項を任意に組み合わせた態様も本実施形態に含まれる。
【0013】
[プリント配線板の製造方法]
本開示の一実施形態に係る(以下、単に本実施形態と称する場合がある。)のプリント配線板の製造方法は、下記(1)~(4)を含む、プリント配線板の製造方法である。
(1):70℃、20分の条件で濃度5~100ml/Lの硫酸水溶液に95質量%以上溶解する粒子(X)(以下、単に「粒子(X)」と称することがある)を含む感光性樹脂フィルムを、回路基板の片面又は両面にラミネートすること(以下、「ラミネート工程(1)」と称する)。
(2):前記(1)でラミネートされた感光性樹脂フィルムに対して露光及び現像することによって、ビアを有する層間絶縁層を形成すること(以下、「フォトビア形成工程(2)」と称する)。
(3-1):前記ビア及び前記層間絶縁層の表面の粗化処理を行うこと(以下、「粗化処理工程(3-1)」と称する)。
(3-2):粗化処理された層間絶縁層を酸性溶液で処理することによって層間絶縁層の表面に存在する前記粒子(X)を溶解すること(以下、「粒子(X)溶解工程(3-2)」と称する)。
(4):前記層間絶縁層上に回路パターンを形成すること(以下、「回路パターン形成工程(4)」と称する)。
ここで、本開示において、前記の様に、便宜上、所定の操作について「XX工程」と称することがあるが、XX工程は、本開示に具体的に記載された態様のみに限定されるものではない。
【0014】
本実施形態では、粗化処理工程(3-1)の後に前記粒子(X)溶解工程(3-2)を設けることによって、層間絶縁層表面に存在している前記粒子(X)を溶解して層間絶縁層表面に窪みを作製することができ、それによって、層間絶縁層の表面粗さを小さくしながらも、銅めっきとの高い接着強度を得ることができる。
以下、各工程について順に説明する。
【0015】
(ラミネート工程(1))
ラミネート工程(1)は、真空ラミネーターを用いて、本実施形態の感光性樹脂フィルムを回路基板(回路パターン102を有する基板101)の片面又は両面にラミネートする工程である(
図1参照)。真空ラミネーターとしては、ニチゴー・モートン株式会社製のバキュームアップリケーター、株式会社名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、株式会社日立製作所製のロール式ドライコーター、株式会社レゾナック製の真空ラミネーター等が挙げられる。
【0016】
感光性樹脂フィルムに保護フィルムが設けられている場合には、保護フィルムを剥離又は除去した後、感光性樹脂フィルムが回路基板と接する状態で、加圧及び加熱しながら回路基板に圧着してラミネートすることができる。
該ラミネートは、例えば、感光性樹脂フィルム及び回路基板を必要に応じて予備加熱してから、圧着温度70~130℃、圧着圧力0.1~1.0MPa、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下で実施することができるが、特にこの条件に限定されるものではない。また、ラミネートの方法は、バッチ式であっても、ロールでの連続式であってもよい。
最後に、回路基板にラミネートされた感光性樹脂フィルムを25℃付近へ冷却することで、層間絶縁層103となる。感光性樹脂フィルムがキャリアフィルムを有する場合、キャリアフィルムはここで剥離してもよいし、後述する通り、露光後に剥離してもよい。
【0017】
(フォトビア形成工程(2))
フォトビア形成工程(2)では、回路基板にラミネートされた感光性樹脂フィルムの少なくとも一部に対して露光し、次いで現像を行う。露光によって、活性光線が照射された部分が光硬化してパターンが形成される。露光方法に特に制限はなく、例えば、活性光線を、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを介する、つまり経由させることによって画像状に照射する方法(マスク露光法)を採用してもよいし、LDI(Laser Direct Imaging)露光法、DLP(Digital Light Processing)露光法等の直接描画露光法によって、活性光線を画像状に照射する方法を採用してもよい。
活性光線の光源としては、公知の光源を用いることができる。光源としては、具体的には、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、アルゴンレーザ等のガスレーザ;YAGレーザ等の固体レーザ;半導体レーザ等の紫外線又は可視光線を有効に放射するものなどが挙げられる。露光量は、使用する光源及び感光層の厚さ等によって適宜選定されるが、例えば高圧水銀灯からの紫外線照射の場合、感光層の厚さ1~100μmでは、通常、10~1,000mJ/cm2程度が好ましく、50~700mJ/cm2がより好ましく、150~550mJ/cm2がさらに好ましい。
【0018】
現像においては、感光層の未硬化部分が基板上から除去されることで、光硬化部分が層間絶縁層として基板上に形成されることになる。
感光層上にキャリアフィルムが存在している場合には、該キャリアフィルムを除去してから、未露光部分の除去(現像)を行う。現像方法には、ウェット現像とドライ現像があり、いずれを採用してもよいが、ウェット現像が広く用いられており、本実施形態においてもウェット現像を採用できる。
ウェット現像の場合、感光性樹脂組成物に対応した現像液を用いて、公知の現像方法によって現像する。現像方法としては、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング、スクラッピング、揺動浸漬等を用いた方法が挙げられる。これらの中でも、ビアの解像性向上の観点からは、スプレー方式が好ましく、スプレー方式の中でも高圧スプレー方式がより好ましい。現像は、1種の方法で実施すればよいが、2種以上の方法を組み合わせて実施してもよい。
現像液の構成は、感光性樹脂組成物の構成に応じて適宜選択される。アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤系現像液等が挙げられ、これらの中でもアルカリ性水溶液が好ましい。
【0019】
フォトビア形成工程(2)では、露光及び現像をした後、0.2~10J/cm
2程度(好ましくは0.5~5J/cm
2)の露光量のポストUVキュア、及び60~250℃程度(好ましくは120~200℃)の温度のポスト熱キュアを必要に応じて行うことによって、層間絶縁層をさらに硬化させてもよく、また、さらに硬化させることが好ましい。
以上の方法によって、ビア104を有する層間絶縁層が形成される(
図2参照)。ビアの形状に特に制限はなく、断面形状で説明すると、四角形、逆台形(上辺が下辺よりも長い)等が挙げられ、正面(ビア底が見える方向)から見た形状で説明すると、円形、四角形等が挙げられる。本実施形態におけるフォトリソ法によるビアの形成では、断面形状が逆台形(上辺が下辺よりも長い)のビアを形成することができ、この場合、銅めっきのビア壁面への付き回り性が高くなるために好ましい。
【0020】
本工程によって形成されるビア104のサイズ(直径)は、40μm未満にすることができ、さらには、35μm以下、30μm以下、25μm以下又は20μm以下にすることも可能であり、レーザ加工によって作製するビアのサイズよりも小径化することができる。本工程によって形成されるビアのサイズ(直径)の下限値に特に制限はないが、5μm以上であってもよいし、10μm以上であってもよいし、15μm以上であってもよい。
但し、本工程によって形成されるビア104のサイズ(直径)は40μm未満に限定されるものではなく、例えば、5~300μmの範囲で任意に選択してもよく、15~100μmであってもよいし、20~80μmであってもよい。
【0021】
(粗化処理工程(3-1))
粗化処理工程(3-1)では、ビア及び層間絶縁層の表面の粗化処理を行う(
図3参照)。粗化処理によって、ビア及び層間絶縁層の表面に微細な凹凸のアンカーが形成される。粗化処理後の層間絶縁層の表面粗さ(Ra)は、配線の微細化の観点から、好ましくは0.30μm以下、より好ましくは0.25μm以下、さらに好ましくは0.01~0.12μm、特に好ましくは0.02~0.10μm、最も好ましくは0.02~0.09μmである。
ここで、本開示において、ここで、表面粗さ(Ra)は、高性能非接触3次元表面形状粗さ測定システム(Wyko NT9100、ブルカージャパン株式会社製)を用いて測定した結果であり、詳細には実施例に記載の方法によって測定した値である。
【0022】
前記粗化処理方法に特に制限はなく、ビア及び層間絶縁層の公知の粗化処理方法を採用することができる。粗化処理方法としては、特に制限されるものではないが、粗化液を用いて実施する方法、ドライエッチングで実施する方法等が挙げられる。ここで、粗化液を用いて実施する方法はウエットエッチングとも称される。
【0023】
前記粗化液としては、酸化剤を使用することができる。前記酸化剤としては、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等を溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素-硫酸、硝酸等が挙げられる。前記アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩濃度は、5~10質量%が好ましい。市販の酸化剤としては、コンセントレート・コンパクトCP、ドージングソリューションセキュリガンス(登録商標)P(いずれもアトテックジャパン株式会社製)等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。なお、前記フォトビア形成工程(2)においてスミアが発生した場合には、該スミアを前記粗化液によって除去してもよい。粗化処理と、スミアの除去(デスミア)は、同時に行うことができる。
【0024】
前記粗化液を用いて実施する場合、好ましくは、ビア表面及び層間絶縁層表面の膨潤処理を行った後、ビア表面及び層間絶縁層表面の粗化処理を行う。ここで、前記膨潤処理には、市販の膨潤液を使用することができる。膨潤液としては、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。当該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等が挙げられる。市販の膨潤液としては、スウェリング・ディップ・セキュリガンス(登録商標)P、スウェリング・ディップ・セキュリガンス(登録商標)SBU(いずれもアトテックジャパン株式会社製)等が挙げられる。前記膨潤処理の時間及び温度に特に制限はないが、好ましくは50~90℃、より好ましくは60~80℃であり、好ましくは1~20分、より好ましくは3~15分、さらに好ましくは3~8分である。
【0025】
なお、前記膨潤処理の後及び前記粗化処理の後、必要に応じて、水洗処理を施してもよい。当該水洗処理の時間及び温度に特に制限はないが、好ましくは5~40℃、より好ましくは15~30℃で、好ましくは0.1~10分、より好ましくは0.5~7分である。水洗処理は、水を貯めるだけのいわゆる「貯水洗」と、水を流しながら実施するいわゆる「流水洗」とを併用してもよいし、いずれか一方のみを実施してもよいが、少なくとも流水洗を実施することが好ましく、貯水洗と流水洗の両方を実施することがより好ましい。
【0026】
前記ドライエッチングとしては、RIE(Reactive Ion Etching)等が挙げられ、前記RIEとしては、反応性ガスを利用したドライエッチング、プラズマを利用したドライエッチングが挙げられる。これらの中でも、ドライエッチングとしてはプラズマを利用したドライエッチングが好ましい。プラズマを利用したドライエッチングは、市販のプラズマエッチング装置を使用すればよい。プラズマを利用したドライエッチングの条件は、特に制限されるものではないが、好ましくは酸素プラズマを用い、好ましくは出力100~500W、より好ましくは出力200~400Wである。
ドライエッチングの時間及び温度に特に制限はないが、好ましくは5~40℃、より好ましくは15~30℃で、好ましくは0.1~10分、より好ましくは0.5~7分である。
【0027】
粗化処理工程(3-1)によって、
図3に示す様に、層間絶縁層103の表面に粒子(X)の一部が飛び出す形で現れる。なお、粒子(X)については後述する。
【0028】
(粒子(X)溶解工程(3-2))
粒子(X)溶解工程(3-2)では、粗化処理された層間絶縁層を酸性溶液で処理することによって層間絶縁層の表面に存在する前記粒子(X)を溶解する(
図4参照)。
前記酸性溶液としては、特に制限されるものではないが、硫酸水溶液、塩酸水溶液、過硫酸ナトリウム水溶液、過硫酸アンモニウム水溶液、過硫酸カリウム水溶液等が挙げられる。酸性溶液は、硫酸水溶液又は塩酸水溶液を含むことが好ましく、硫酸水溶液を含むことがより好ましく、硫酸水溶液であることがさらに好ましい。
前記硫酸水溶液の濃度は、粒子(X)の溶解性の観点から、好ましくは5~100ml/L、より好ましくは10~80ml/L、さらに好ましくは15~50ml/Lであり、10~30ml/Lであってもよいし、また、35~80ml/Lであってもよいし、35~60ml/Lであってもよい。
前記塩酸水溶液の濃度は、粒子(X)の溶解性の観点から、好ましくは5~100g/L、より好ましくは10~80g/L、さらに好ましくは15~50g/Lであり、10~30ml/Lであってもよいし、また、35~80ml/Lであってもよいし、35~60ml/Lであってもよい。
なお、特に制限されるものではないが、前記酸性溶液は、毒性を有するもの(例えばフッ酸)ではないことが好ましい。
【0029】
なお、当該粒子(X)溶解工程(3-2)は、後述の回路パターン形成工程(4)の前に設けられていてもよいし、回路パターン形成工程(4)中に設けられていてもよい。
また、当該粒子(X)溶解工程(3-2)は、前記粗化処理工程(3-1)において粗化液を用いる場合には、粗化処理後の中和工程と見なすこともできるし、前記粗化処理工程(3-1)においてドライエッチング処理を行う場合には、後述の回路パターン形成工程(4)においてセミアディティブプロセスを行う際のシード層形成の前処理と見なすこともできる。いずれにせよ、粒子(X)溶解工程(3-2)によって、層間絶縁層表面に存在する前記粒子(X)を溶解し、
図4に示す様に窪み2を生じさせることが重要である。
【0030】
層間絶縁層を酸性溶液で処理する際の温度は、粒子(X)の溶解性の観点から、好ましくは15~80℃、より好ましくは20~75℃、さらに好ましくは25~70℃であり、40~70℃であってもよいし、50~70℃であってもよいし、60~70℃であってもよい。
酸性溶液で処理する時間は、特に制限されるものではないが、粒子(X)の溶解性の観点から、好ましくは0.1~40分、より好ましくは0.3~35分、さらに好ましくは3~30分、特に好ましくは5~25分、最も好ましくは15~25分である。
層間絶縁層を酸性溶液で処理する方法に特に制限はないが、例えば、(1)層間絶縁層を有する基板を酸性溶液に浸漬させて、必要に応じて、層間絶縁層を有する基板を揺動する方法、(2)層間絶縁層を有する基板を酸性溶液に浸漬させて、必要に応じて、酸性溶液を撹拌する方法、(3)層間絶縁層へ酸性溶液を噴射する方法等が挙げられる。粒子(X)の溶解性の観点から、前記方法(1)又は(2)が好ましい。
【0031】
前記酸性溶液での処理の後、必要に応じて、水洗処理を施してもよい。当該水洗処理の時間及び温度に特に制限はないが、好ましくは5~40℃、より好ましくは15~30℃で、好ましくは0.1~10分、より好ましくは0.5~7分である。水洗処理は、貯水洗と流水洗とを併用してもよいし、いずれか一方のみを実施してもよいが、少なくとも流水洗を実施することが好ましく、貯水洗と流水洗の両方を実施することがより好ましい。
【0032】
(回路パターン形成工程(4))
回路パターン形成工程(4)は、前記粒子(X)溶解工程(3-2)の後に、前記層間絶縁層上に回路パターンを形成する工程である(
図5参照)。
回路パターンの形成は微細配線形成の観点から、セミアディティブプロセスによって実施することが好ましい。セミアディティブプロセスによって回路パターンの形成と共にビアの導通が行われる。
セミアディティブプロセスにおいては、まず、前記粒子(X)溶解工程(3-2)後のビア底、ビア壁面及び層間絶縁層の表面全体にパラジウム触媒等を用いた上で無電解銅めっき処理を施してシード層105を形成する。該シード層105は電気銅めっきを施すための給電層を形成するためのものであり、好ましくは0.1~2.0μm程度の厚さで形成される。該シード層105の厚さが0.1μm以上であれば、電気銅めっき時の接続信頼性が低下するのを抑制できる傾向があり、2.0μm以下であれば、配線間のシード層をフラッシュエッチングする際のエッチング量を大きくする必要がなく、エッチングの際に配線に与えるダメージを抑えられる傾向がある。
【0033】
なお、シード層形成前の前処理として、必要に応じて、クリーナー処理(コンディショナー処理とも言う。)及び水洗処理、並びに、ソフトエッチング及び水洗処理を施してもよい。
クリーナー処理は、好ましくは40~80℃、より好ましくは50~70℃で、好ましくは0.1~10分、より好ましくは0.5~7分、市販のアルカリクリーナー(コンディショナー液)で処理すればよい。クリーナー処理後の水洗処理については、前述の水洗処理と同様に説明され、好ましい態様も同じである。
ソフトエッチングは、過硫酸ナトリウム及び硫酸、又は、過硫酸アンモニウム及び硫酸によって、好ましくは10~40℃、より好ましくは20~35℃で、好ましくは0.1~3分、より好ましくは0.3~1分処理することで実施できる。ソフトエッチング後の水洗処理については前述の水洗処理と同様に説明され、好ましい態様も同じである。当該ソフトエッチングは、前記粒子(X)溶解工程(3-2)として実施することもできる。
【0034】
前記無電解銅めっき処理は、銅イオンと還元剤の反応によって、ビア及び層間絶縁層の表面に金属銅を析出させて行う。
前記無電解めっき処理方法及び前記電解めっき処理方法は公知の方法を適用すればよく、特に限定されるものではない。
無電解銅めっき液としては市販品を使用することができ、市販品としては、アトテックジャパン株式会社製の「MSK-DK」、上村工業株式会社製の「スルカップ(登録商標)PEAシリーズ」等が挙げられる。
【0035】
前記無電解銅めっき処理を施した後、無電解銅めっき上に、ロールラミネーターによってドライフィルムレジストを熱圧着する。ドライフィルムレジストの厚さは電気銅めっき後の配線高さよりも高くしなければならず、この観点から、5~30μmの厚さのドライフィルムレジストが好ましい。ドライフィルムレジストとしては、株式会社レゾナック製の「フォテック(登録商標)」シリーズ等が用いられる。
ドライフィルムレジストの熱圧着後、例えば、所望の配線パターンが描画されたマスクを通してドライフィルムレジストの露光を行う。露光は、前記感光性樹脂フィルムにビアを形成する際に使用し得るものと同様の装置及び光源で行うことができる。露光後、アルカリ水溶液を用いてドライフィルムレジストの現像を行い、未露光部分を除去することで、レジストパターン106を形成する。この後、必要に応じてプラズマ等を用いてドライフィルムレジストの現像残渣を除去する作業を行ってもよい。
現像後、電気銅めっきを行うことによって、銅の回路層(回路パターン)107の形成及びビアフィリングを行う。
【0036】
電気銅めっき後、アルカリ水溶液又はアミン系剥離剤を用いてドライフィルムレジストの剥離を行う。ドライフィルムレジストの剥離後、配線間のシード層の除去(フラッシュエッチング)を行う。フラッシュエッチングは、硫酸と過酸化水素等の酸性溶液と酸化性溶液とを用いて行われる。フラッシュエッチング後、必要に応じて配線間の部分に付着したパラジウム等の除去を行う。パラジウムの除去は、好ましくは、硝酸、塩酸等の酸性溶液を用いて行うことができる。
【0037】
前記ドライフィルムレジストの剥離後又はフラッシュエッチング工程の後、好ましくはポストベーク処理を行う。ポストベーク処理は、未反応の熱硬化成分を十分に熱硬化することができ、さらにそれによって、絶縁信頼性、硬化特性及び銅めっきとの接着強度を向上させる傾向にある。熱硬化条件は樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度が150~240℃、硬化時間が15~100分間であることが好ましい。ポストベーク処理によって、一通りのフォトビア法によるプリント配線板100Aの製造工程が完成するが、必要な層間絶縁層の数に応じて本プロセスを繰り返すことで多層化したプリント配線板100Aを製造する(
図6参照)。そして、最外層には好ましくはソルダーレジスト層108を形成する。
【0038】
[感光性樹脂組成物]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、70℃、20分の条件で濃度5~100ml/Lの硫酸水溶液に95質量%以上溶解する粒子(X)を含む感光性樹脂組成物である。当該感光性樹脂組成物をプリント配線板の層間絶縁層の材料として用いることにより、前記粒子(X)溶解工程(3-2)によって粒子(X)を溶解させることが可能となる。
【0039】
本実施形態の感光性樹脂組成物はフォトリソグラフィーによるビア形成(フォトビア形成とも称する。)に適しているため、フォトビア及び層間絶縁層からなる群から選択される1種以上の形成に好適である。ここで、本開示において、たとえば層間絶縁層等の様に「層」と表記されている場合、ベタ層である態様の他、ベタ層ではなく、少なくとも一部が島状となっている態様、穴が開いている態様、及び隣接層との界面が不明確になっている場合等も「層」に含まれる。なお、前記ベタ層とは、特に加工を施していないシート状の層のことを言う。
なお、本実施形態の感光性樹脂組成物は、ネガ型感光性樹脂組成物に好適である。
以下、粒子(X)について詳述した後に、本実施形態の感光性樹脂組成物が含有し得るその他の成分について詳述する。
【0040】
<粒子(X)>
粒子(X)は、前述の通り、70℃、20分の条件で濃度5~100ml/Lの硫酸水溶液に95質量%以上溶解する粒子である。当該粒子(X)は、前記粒子(X)溶解工程(3-2)において溶解し易い粒子である。前記硫酸水溶液の濃度は、粒子(X)の前記粒子(X)溶解工程(3-2)における溶解性の観点から、好ましくは10~80ml/L、より好ましくは15~50ml/Lである。
粒子(X)は、70℃、20分の条件で濃度5~100ml/Lの硫酸水溶液に好ましくは97質量%以上溶解する粒子であり、より好ましくは99質量%以上溶解する粒子であり、100質量%溶解する粒子であってもよい。ここで、前記溶解量は、硫酸水溶液中に粒子(X)を沈めて、70℃で1時間撹拌したときの溶解量である。粒子(X)の溶解量は、70℃、20分の条件で前記所定濃度の硫酸水溶液に粒子(X)を沈めた後、ろ過したときに得られる粒子(X)の重さから算出できる。なお、ろ過したときに固形分が得られない場合には、粒子(X)が100%溶解したと言える。
【0041】
粒子(X)は、無機粒子であってもよいし、有機粒子であってもよい。
前記無機粒子としては、特に制限されるものではないが、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、過酸化マグネシウム、二ホウ化マグネシウム、窒化マグネシウム、硫化マグネシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、リン酸マグネシウム、スピネル、滑石(タルク)、蛇紋石等のマグネシウム含有無機粒子;酸化カルシウム、水酸化カルシウム、硫化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸水素カルシウム、チオ硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、セレン化カルシウム、セレン酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、メタケイ酸カルシウム、四ホウ酸カルシウム、クロム酸カルシウム、二クロム酸カルシウム等のカルシウム含有無機粒子;酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛等の亜鉛含有無機粒子などが挙げられる。これらの中でも、前記粒子(X)溶解工程(3-2)における溶解性の観点から、マグネシウム含有無機粒子、亜鉛含有無機粒子が好ましく、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛がより好ましく、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムがさらに好ましい。
前記有機粒子としては、特に制限されるものではないが、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン、ポリアダマンチル(メタ)アクリレート、ポリt-ブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの中でも、前記粒子(X)溶解工程(3-2)における溶解性の観点から、ポリアダマンチル(メタ)アクリレート、ポリt-ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0042】
粒子(X)の体積平均粒子径は、特に制限されるものではないが、銅めっきとのピール強度の観点から、好ましくは0.1~3μm、より好ましくは0.2~2.0μm、さらに好ましくは0.3~1.7μm、特に好ましくは0.3~1.5μmであり、0.5~1.5μmであってもよいし、0.7~1.5μmであってもよい。
ここで、本開示において、体積平均粒子径は、サブミクロン粒子アナライザ(ベックマン・コールター株式会社製、商品名:N5)を用いて、ISO13321に準拠して、屈折率1.38で、溶剤中に分散した粒子を測定し、粒度分布における積算値50%(体積基準)に相当する粒子径として求めたものである。
【0043】
本実施形態の感光性樹脂組成物において、粒子(X)の含有量は、特に限定されるものではないが、固形分全量基準で、好ましくは10~70体積%、より好ましくは15~60体積%、さらに好ましくは20~55体積%であり、25~50体積%であってもよいし、25~40体積%であってもよい。粒子(X)の含有量が前記下限値以上であると、層間絶縁層の表面粗さを低減しながらも、銅めっきとの高い接着強度を発現する傾向があり、前記上限値以下であると、解像性を良好に維持できる傾向がある。
なお、粒子(X)の含有量が固形全量基準で15体積%以上であることによって、銅めっきとの高い接着強度の向上効果がより一層高くなる傾向にある。
【0044】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、さらに、(A)エチレン性不飽和基及び酸性置換基を有する光重合性化合物及び(B)熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。以下、当該(A)成分及び(B)成分の順に詳述し、その後、その他の成分についても詳述する。
【0045】
<(A)エチレン性不飽和基及び酸性置換基を有する光重合性化合物>
(A)成分は、エチレン性不飽和基及び酸性置換基を有する光重合性化合物である。
(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
(A)成分は、エチレン性不飽和基を有するため、光重合性、特にラジカル重合性を発現する化合物である。
(A)成分が有するエチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリロイル基等の光重合性を示す官能基が挙げられる。これらの中でも、反応性及びビアの解像性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0047】
(A)成分は、アルカリ現像を可能とする観点から、酸性置換基を有するものである。
(A)成分が有する酸性置換基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。これらの中でも、ビアの解像性の観点から、カルボキシ基が好ましい。
(A)成分の酸価は、好ましくは20~200mgKOH/g、より好ましくは40~180mgKOH/g、さらに好ましくは70~150mgKOH/g、特に好ましくは90~120mgKOH/gである。(A)成分の酸価が前記下限値以上であると、感光性樹脂フィルムの希アルカリ溶液への溶解性が優れる傾向があり、前記上限値以下であると、比誘電率が優れる傾向がある。(A)成分の酸価は、実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、酸価が異なる2種以上の(A)成分を併用してもよく、その場合、前記2種以上の(A)成分の酸価の荷重平均の酸価が、前記いずれかの範囲内となることが好ましい。
【0048】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは600~30,000、より好ましくは800~25,000、さらに好ましくは1,000~18,000、よりさらに好ましくは1,000~8,000、特に好ましくは1,200~5,000、最も好ましくは1,200~3,500である。(A)成分の重量平均分子量(Mw)が前記範囲であると、銅めっきとの接着強度、耐熱性及び絶縁信頼性が優れる傾向がある。ここで、本開示中、重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって、標準ポリスチレン換算することで求めた値であり、詳細には、実施例に記載の方法に従って測定した値である。
【0049】
(A)成分は、比誘電率の観点から、脂環式骨格を含むことが好ましいが、脂環式骨格を含まなくてもよい。
(A)成分が有する脂環式骨格としては、ビアの解像性、銅めっきとの接着強度及び電気絶縁信頼性の観点から、環形成炭素数5~20の脂環式骨格が好ましく、環形成炭素数5~18の脂環式骨格がより好ましく、環形成炭素数6~18の脂環式骨格がさらに好ましく、環形成炭素数8~14の脂環式骨格が特に好ましく、環形成炭素数8~12の脂環式骨格が最も好ましい。
また、前記脂環式骨格は、ビアの解像性、銅めっきとの接着強度及び電気絶縁信頼性の観点から、2環以上からなることが好ましく、2~4環からなることがより好ましく、3環からなることがさらに好ましい。2環以上の脂環式骨格としては、ノルボルナン骨格、デカリン骨格、ビシクロウンデカン骨格、飽和ジシクロペンタジエン骨格等が挙げられる。これらの中でも、ビアの解像性、銅めっきとの接着強度及び電気絶縁信頼性の観点から、飽和ジシクロペンタジエン骨格が好ましい。
同様の観点から、(A)成分は、下記一般式(A-1)で表される脂環式骨格を含むものが好ましい。
【0050】
【化2】
(式中、R
A1は炭素数1~12のアルキル基を表し、前記脂環式骨格中のどこに置換していてもよい。m
1は0~6の整数である。*は他の構造への結合部位である。)
【0051】
前記一般式(A-1)中、RA1が表す炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
m1は0~6の整数であり、0~2の整数が好ましく、0がより好ましい。
m1が2~6の整数である場合、複数のRA1はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。さらに、複数のRA1は、可能な範囲で同一炭素原子上に置換していてもよいし、異なる炭素原子上に置換していてもよい。
*は他の構造への結合部位であり、脂環式骨格上のいずれの炭素原子で結合されていてもよいが、下記一般式(A-1’)中の1又は2で示される部位の炭素原子と、3又は4のいずれかで示される部位の炭素原子にて、それぞれ結合されていることが好ましい。
【0052】
【化3】
(式中、R
A1、m
1及び*は、一般式(A-1)中のものと同じである。)
【0053】
また、(A)成分は、ビアの解像性及び銅めっきとの接着強度の観点から、(a1)エポキシ樹脂を(a2)エチレン性不飽和基含有有機酸で変性した化合物[以下、(A’)成分と称することがある。]に、(a3)飽和基又は不飽和基含有多塩基酸無水物を反応させてなる酸変性ビニル基含有樹脂であることが好ましい。ここで、酸変性ビニル基含有樹脂の「酸変性」とは酸性置換基を有することを意味し、「ビニル基」とはエチレン性不飽和基を意味する。
以下、(a1)エポキシ樹脂、(a2)エチレン性不飽和基含有有機酸及び(a3)飽和基又は不飽和基含有多塩基酸無水物から得られる(A)成分の好適な態様について説明する。
【0054】
((a1)エポキシ樹脂)
(a1)エポキシ樹脂としては、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。
(a1)エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(a1)エポキシ樹脂は、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、グリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂、グリシジルエステルタイプのエポキシ樹脂等に分類される。これらの中でも、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂が好ましい。
【0055】
(a1)エポキシ樹脂は、主骨格の違いによっても種々のエポキシ樹脂に分類することができ、脂環式骨格を有するエポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、その他のエポキシ樹脂等に分類することができる。これらの中でも、脂環式骨格を有するエポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。なお、特に制限されるものではないが、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂及びその他のエポキシ樹脂はいずれも、脂環式骨格を有していないことが好ましい。
【0056】
-脂環式骨格を有するエポキシ樹脂-
脂環式骨格を有するエポキシ樹脂が有する脂環式骨格については、前述した(A)成分が有する脂環式骨格と同様に説明され、好ましい態様も同じである。
脂環式骨格を有するエポキシ樹脂としては、下記一般式(A-2)で表されるエポキシ樹脂が好ましい。
【0057】
【化4】
(式中、R
A1は炭素数1~12のアルキル基を表し、前記脂環式骨格中のどこに置換していてもよい。R
A2は炭素数1~12のアルキル基を表す。m
1は0~6の整数、m
2は0~3の整数である。nは0~50の数である。)
【0058】
一般式(A-2)中、RA1は一般式(A-1)中のRA1と同じであり、好ましい態様も同じである。
一般式(A-2)中のRA2が表す炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
一般式(A-2)中のm1は一般式(A-1)中のm1と同じであり、好ましい態様も同じである。
一般式(A-2)中のm2は0~3の整数であり、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
一般式(A-2)中のnは丸括弧内の構造単位の繰り返し数を表し、0~50の数である。通常、エポキシ樹脂は丸括弧内の構造単位の繰り返し数が異なるものの混合物となっているため、その場合、nはその混合物の平均値で表される。nとしては、0~30の数が好ましい。
【0059】
脂環式骨格を有するエポキシ樹脂としては、市販品を使用してもよく、市販品としては、XD-1000(日本化薬株式会社製、商品名)、EPICLON(登録商標)HP-7200(DIC株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0060】
-ノボラック型エポキシ樹脂-
ノボラック型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールSノボラック型エポキシ樹脂等のビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂としては、特に制限されるものではないが、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
また、ノボラック型エポキシ樹脂としては、下記一般式(A-3)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0061】
【化5】
(式中、R
A3は水素原子又はメチル基を示し、Y
A1はそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を示す。2つのR
A3はそれぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。2つのY
A1のうちの少なくとも一方はグリシジル基を示す。)
【0062】
RA3は、ビアの解像性及び銅めっきとの接着強度の観点から、いずれも水素原子であることが好ましい。また、これと同様の観点から、YA1は、いずれもグリシジル基であることが好ましい。
一般式(A-3)で表される構造単位を有する(a1)エポキシ樹脂中の該構造単位の構造単位数は1以上の数であり、好ましくは10~100の数、より好ましくは15~80の数、さらに好ましくは15~70の数である。構造単位数が前記範囲内であると、銅めっきとの接着強度、耐熱性及び絶縁信頼性が向上する傾向がある。
一般式(A-3)において、RA3がいずれも水素原子であり、YA1がいずれもグリシジル基のものは、EXA-7376シリーズ(DIC株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。また、RA3がいずれもメチル基であり、YA1がいずれもグリシジル基のものは、EPON SU8シリーズ(三菱ケミカル株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0063】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジグリシジルオキシジフェニルメタン等が挙げられる。
アラルキル型エポキシ樹脂としては、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
その他のエポキシ樹脂としては、スチルベン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0064】
((a2)エチレン性不飽和基含有有機酸)
(a2)エチレン性不飽和基含有有機酸としては、エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸が好ましい。
(a2)成分が有するエチレン性不飽和基としては、(A)成分が有するエチレン性不飽和基として挙げられたものと同じものが挙げられる。
(a2)成分としては、アクリル酸、アクリル酸の二量体、メタクリル酸、β-フルフリルアクリル酸、β-スチリルアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α-シアノ桂皮酸等のアクリル酸誘導体;水酸基含有アクリレートと二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物;ビニル基含有モノグリシジルエーテル又はビニル基含有モノグリシジルエステルと二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物などが挙げられる。
(a2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
前記半エステル化合物は、水酸基含有アクリレート、ビニル基含有モノグリシジルエーテル及びビニル基含有モノグリシジルエステルからなる群から選択される1種以上のエチレン性不飽和基含有化合物と、二塩基酸無水物と、を反応させることで得られる。該反応は、エチレン性不飽和基含有化合物と二塩基酸無水物とを等モルで反応させることが好ましい。
【0066】
前記半エステル化合物の合成に用いられる水酸基含有アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ビニル基含有モノグリシジルエーテルとしては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
前記半エステル化合物の合成に用いられる二塩基酸無水物としては、飽和基を含有するものであってもよいし、不飽和基を含有するものであってもよい。二塩基酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0068】
(a1)成分と(a2)成分との反応において、(a1)成分のエポキシ基1当量に対して、(a2)成分の使用量は、好ましくは0.6~1.05当量、より好ましくは0.7~1.02当量、さらに好ましくは0.8~1.0当量である。(a1)成分と(a2)成分とを前記比率で反応させることで、(A)成分の光重合性が向上し、得られる感光性樹脂組成物のビアの解像性が向上する傾向がある。
【0069】
(a1)成分と(a2)成分は、有機溶剤に溶解させて反応させることが好ましい。
有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル系化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
(a1)成分と(a2)成分との反応には、反応を促進させるための触媒を用いることが好ましい。該触媒としては、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン等のアミン系触媒;メチルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド等の第四級アンモニウム塩触媒;トリフェニルホスフィン等のホスフィン系触媒などが挙げられる。これらの中でも、ホスフィン系触媒が好ましく、トリフェニルホスフィンがより好ましい。触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
触媒を使用する場合、その使用量は、適度な反応速度を得る観点から、(a1)成分と(a2)成分との合計100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.05~5質量部、さらに好ましくは0.1~2質量部である。
【0071】
(a1)成分と(a2)成分との反応には、反応中の重合を防止する目的で、重合禁止剤を使用することが好ましい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等が挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合禁止剤を使用する場合、その使用量は、(a1)成分と(a2)成分との合計100質量部に対して、好ましくは0.01~1質量部、より好ましくは0.02~0.8質量部、さらに好ましくは0.1~0.5質量部である。
【0072】
(a1)成分と(a2)成分との反応温度は、十分な反応性を得ながら均質に反応を進行させるという観点から、好ましくは60~150℃、より好ましくは80~120℃、さらに好ましくは90~110℃である。
【0073】
以上の通り、(a1)成分と(a2)成分とを反応させてなる(A’)成分は、(a2)成分としてエチレン性不飽和基含有モノカルボン酸を用いる場合には、(a1)成分のエポキシ基と(a2)成分のカルボキシ基との開環付加反応により形成される水酸基を有するものとなる。次に、該(A’)成分に、さらに(a3)成分を反応させることによって、(A’)成分の水酸基((a1)成分中に元来存在する水酸基も含む)と(a3)成分の酸無水物基とが半エステル化された、酸変性ビニル基含有樹脂を得ることができる。
【0074】
((a3)多塩基酸無水物)
(a3)成分としては、飽和基を含有するものであってもよいし、不飽和基を含有するものであってもよい。(a3)成分としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸等が挙げられる。これらの中でも、ビアの解像性の観点から、テトラヒドロ無水フタル酸が好ましい。(a3)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
(A’)成分と(a3)成分との反応において、例えば、(A’)成分中の水酸基1当量に対して、(a3)成分を0.1~1.0当量反応させることで、酸変性ビニル基含有樹脂の酸価を調整することができる。
【0076】
(A’)成分と(a3)成分との反応温度は、十分な反応性を得ながら均質に反応を進行させるという観点から、好ましくは50~150℃、より好ましくは60~120℃、さらに好ましくは70~100℃である。
【0077】
本実施形態の感光性樹脂組成物中における(A)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、耐熱性、比誘電率及び耐薬品性の観点から、感光性樹脂組成物の樹脂成分全量基準で、好ましくは10~80質量%、より好ましくは15~75質量%、さらに好ましくは25~70質量%、特に好ましくは35~70質量%、最も好ましくは45~70質量%である。
【0078】
<(B)熱硬化性樹脂>
(B)成分は、熱硬化性樹脂である。当該(B)成分には、前記(A)成分は含まれない。
本実施形態の感光性樹脂組成物が(B)熱硬化性樹脂を含有することによって、銅めっきとの接着強度及び絶縁信頼性の向上に加えて、耐熱性が向上する傾向がある。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。また、特にこれらに制限されず、公知の熱硬化性樹脂を使用できる。これらの中でも、銅めっきとの接着強度、絶縁信頼性及び耐熱性の観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
(B)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
エポキシ樹脂としては、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。エポキシ樹脂は、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、グリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂、グリシジルエステルタイプのエポキシ樹脂等に分類される。これらの中でも、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂が好ましい。
【0080】
また、エポキシ樹脂は、主骨格の違いによっても種々のエポキシ樹脂に分類され、前記それぞれのタイプのエポキシ樹脂において、さらに次の様に分類される。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール系エポキシ樹脂;ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂等のビスフェノール系ノボラック型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等の、前記ビスフェノール系ノボラック型エポキシ樹脂以外のノボラック型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂等のナフタレン骨格含有エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂;ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂;飽和ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;脂肪族鎖状エポキシ樹脂;ゴム変性エポキシ樹脂;などに分類される。
【0081】
これらの中でも、エポキシ樹脂は、特に、耐熱性、電気絶縁信頼性、現像性及び銅めっきとの接着強度の観点から、ビスフェノール系エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂及びビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂及びビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0082】
本実施形態の感光性樹脂組成物中における(A)成分の酸性置換基と、(B)成分のエポキシ基の当量比[エポキシ基/酸性置換基]は、特に限定されるものではないが、絶縁信頼性、比誘電率、耐熱性及び銅めっきとの接着強度の観点から、好ましくは0.5~6.0、より好ましくは0.7~4.0、さらに好ましくは0.8~2.0、特に好ましくは0.9~1.8である。
【0083】
本実施形態の感光性樹脂組成物中における(B)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、絶縁信頼性、比誘電率、耐熱性及び銅めっきとの接着強度の観点から、感光性樹脂組成物の樹脂成分全量基準で、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%、さらに好ましくは10~25質量%、最も好ましくは15~25質量%である。
【0084】
<(C)架橋剤>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、さらに、(C)成分として、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、2個以上のエチレン性不飽和基を有し、酸性置換基を有さない架橋剤であることが好ましい。架橋剤は、(A)成分が有するエチレン性不飽和基と反応することによって、感光性樹脂フィルムの硬化後の架橋密度を高めるものである。したがって、本実施形態の感光性樹脂組成物は、架橋剤を含有することによって、耐熱性及び比誘電率がより一層向上する傾向がある。
(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
(C)成分としては、2個のエチレン性不飽和基を有する二官能モノマー、及び3個以上のエチレン性不飽和基を有する多官能モノマーが挙げられる。(C)成分は、前記多官能モノマーを含むことが好ましい。
(C)成分が有するエチレン性不飽和基としては、(A)成分が有するエチレン性不飽和基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0086】
前記二官能モノマーとしては、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジ(メタ)アクリレート;ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の脂環式骨格を有するジ(メタ)アクリレート;2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシフェニル)プロパン、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート等の芳香族ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらの中でも、より低い比誘電率を得るという観点から、脂環式骨格を有するジ(メタ)アクリレートが好ましく、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートがより好ましい。
【0087】
前記多官能モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリメチロールプロパン由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物;テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等のテトラメチロールメタン由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のジトリメチロールプロパン由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物;ジグリセリン由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。これらの中でも、ビアの解像性、銅めっきとの接着強度の観点から、トリメチロールプロパン由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートがより好ましい。
ここで、前記「XXX由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物」(但し、XXXは化合物名である。)とは、XXXと(メタ)アクリル酸とのエステル化物を意味し、当該エステル化物には、アルキレンオキシ基で変性された化合物も包含される。
【0088】
本実施形態の感光性樹脂組成物が(C)架橋剤を含有する場合、(C)架橋剤の含有量は、特に限定されるものではないが、耐熱性及び比誘電率の観点から、(A)成分100質量部に対して、好ましくは1~85質量部、より好ましくは5~70質量部、さらに好ましくは10~50質量部、特に好ましくは10~40質量部である。
【0089】
<(D)エラストマ>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、さらに、(D)成分として、エラストマを含有することが好ましい。本実施形態の感光性樹脂組成物は(D)エラストマを含有することで、銅めっきとの接着強度がより一層向上する傾向がある。また、本実施形態の感光性樹脂組成物は、(D)エラストマを含有することによって、前記(A)成分の硬化収縮によって生じる可能性がある歪み(内部応力)に起因する「可とう性及び銅めっきとの接着強度の低下」を抑制する効果が得られる傾向がある。
(D)エラストマは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
(D)エラストマは、分子末端又は分子鎖中に反応性官能基を有するものであってもよい。
反応性官能基としては、酸無水物基、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、イソシアナト基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基等が挙げられる。これらの中でも、ビアの解像性及び銅めっきとの接着強度の観点から、酸無水物基、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基が好ましく、酸無水物基、エポキシ基がより好ましく、酸無水物基がさらに好ましい。
酸無水物基としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等に由来する酸無水物基であることが好ましく、無水マレイン酸に由来する酸無水物基であることがより好ましい。
(D)エラストマが酸無水物基を有する場合、ビアの解像性及び比誘電率の観点から、1分子中に有する酸無水物基の数は、好ましくは1~10、より好ましくは3~10、さらに好ましくは6~10である。
【0091】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(D)エラストマとして、エチレン性不飽和基及び酸性置換基を有するエラストマを含有することが好ましい。
酸性置換基及びエチレン性不飽和基としては、(A)成分が有する酸性置換基及びエチレン性不飽和基と同じものが挙げられる。これらの中でも、(D)エラストマは、酸性置換基として、前述の酸無水物基を有し、エチレン性不飽和基としては、後述する1,2-ビニル基を有するものが好ましい。
【0092】
(D)エラストマとしては、ポリブタジエン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ、スチレン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、アクリル系エラストマ、シリコーン系エラストマ、これらのエラストマの誘導体等が挙げられる。これらの中でも、銅めっきとの接着強度の向上、さらには樹脂成分との相容性、溶解性の向上の観点から、ポリブタジエン系エラストマが好ましい。
【0093】
ポリブタジエン系エラストマは、1,2-ビニル基を含み、かつ、1,4-トランス体の構造単位と1,4-シス体の構造単位とを有するものが好適に挙げられる。
前記の通り、ポリブタジエン系エラストマは、ビアの解像性の観点から、酸無水物で変性されている、酸無水物基を有するポリブタジエン系エラストマであることが好ましく、無水マレイン酸に由来する酸無水物基を有するポリブタジエン系エラストマであることがより好ましい。
ポリブタジエン系エラストマは、市販品として入手可能であり、その具体例としては、「POLYVEST(登録商標)MA75」、「POLYVEST(登録商標)EP MA120」(以上、エボニック社製、商品名)、「Ricon(登録商標)100」、「Ricon(登録商標)130MA8」、「Ricon(登録商標)131MA5」、「Ricon(登録商標)131MA17」、「Ricon(登録商標)184MA6」(以上、クレイバレー社製、商品名)等が挙げられる。
【0094】
ポリブタジエン系エラストマは、銅めっきとの接着強度の観点から、エポキシ基を有するポリブタジエン[以下、エポキシ化ポリブタジエンと称することがある。]であってもよい。
エポキシ化ポリブタジエンは、銅めっきとの接着強度及び柔軟性の観点から、下記一般式(D-1)で表されるエポキシ化ポリブタジエンであることが好ましい。
【0095】
【化6】
(式中、a、b及びcはそれぞれ、丸括弧内の構造単位の比率を表しており、aは0.05~0.40、bは0.02~0.30、cは0.30~0.80であり、さらに、a+b+c=1.00、且つ(a+c)>bを満たす。yは、角括弧内の構造単位の数を表し、10~250の整数である。)
【0096】
前記一般式(D-1)において角括弧内の各構造単位の結合順序は順不同である。つまり、左に示された構造単位と、中心に示された構造単位と、右に示された構造単位とは、入れ違っていてもよく、それぞれを、(a)、(b)、(c)で表すと、-[(a)-(b)-(c)]-[(a)-(b)-(c)-]-、-[(a)-(c)-(b)]-[(a)-(c)-(b)-]-、-[(b)-(a)-(c)]-[(b)-(a)-(c)-]-、-[(a)-(b)-(c)]-[(c)-(b)-(a)-]-、-[(a)-(b)-(a)]-[(c)-(b)-(c)-]-、-[(c)-(b)-(c)]-[(b)-(a)-(a)-]-など、種々の結合順序があり得る。
銅めっきとの接着強度及び柔軟性の観点から、aは好ましくは0.10~0.30、bは好ましくは0.10~0.30、cは好ましくは0.40~0.80である。また、これと同様の観点から、yは好ましくは30~180の整数である。
【0097】
ポリエステル系エラストマとしては、例えば、ジカルボン酸又はその誘導体とジオール化合物又はその誘導体とを重縮合することによって得られるものが挙げられる。
ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの芳香核の水素原子が、メチル基、エチル基、フェニル基等で置換された芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。
ジオール化合物としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール等の脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、レゾルシン等の芳香族ジオールなどが挙げられる。
また、ポリエステル系エラストマとして、芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート)部分をハードセグメント成分に、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリテトラメチレングリコール)部分をソフトセグメント成分にしたマルチブロック共重合体が好適に挙げられる。マルチブロック共重合体は、ハードセグメントとソフトセグメントの種類、比率、分子量の違いによって様々なグレードのものがある。
【0098】
(D)エラストマの数平均分子量は、特に制限されるものではないが、好ましくは10,000~80,000であり、20,000~70,000であってもよく、30,000~65,000であってもよく、40,000~60,000であってもよい。(D)エラストマの数平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって、標準ポリスチレン換算することで求められる。
【0099】
本実施形態の感光性樹脂組成物が(D)エラストマを含有する場合、(D)エラストマの含有量は、特に限定されるものではないが、耐熱性及び銅めっきとの接着強度の観点から、感光性樹脂組成物の樹脂成分全量基準で、好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは1~10質量%、さらに好ましくは1~8質量%、特に好ましくは3~8質量%である。
【0100】
<(E)無機充填材>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、さらに、(E)成分として、無機充填材を含有していてもよい。当該(E)成分は、前記粒子(X)を含まない。つまり、(E)成分は前記粒子(X)以外の無機充填材である。
本実施形態の感光性樹脂組成物が(E)無機充填材を含有することで、低熱膨張係数、耐熱性及び難燃性がより一層向上する傾向にある。
(E)成分としては、特に限定されないが、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー(焼成クレー等)、モリブデン酸亜鉛等のモリブデン酸化合物、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。(E)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、無機充填材としては、熱膨張係数、耐熱性及び難燃性の観点から、シリカ、アルミナ、マイカが好ましく、シリカ、アルミナがより好ましく、シリカがさらに好ましい。シリカとしては、破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ(溶融球状シリカ)等が挙げられる。
【0101】
(E)成分の体積平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは0.01~20μm、より好ましくは0.1~10μm、さらに好ましく0.2~1μm、特に好ましくは0.3~0.8μmである。
【0102】
((E)成分の含有量)
本実施形態の感光性樹脂組成物が(E)成分を含有する場合、(E)成分の含有量は、前記粒子(X)による効果を損なわないようにする観点から、感光性樹脂組成物の固形分全量基準で、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。本実施形態の感光性樹脂組成物は(E)成分を含有していなくてもよい。
【0103】
<(F)有機充填材>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、さらに、(F)成分として、有機充填材を含有していてもよい。当該(F)成分は、前記粒子(X)を含まない。つまり、(F)成分は前記粒子(X)以外の有機充填材である。
本実施形態の感光性樹脂組成物は(F)有機充填材を含有することで感光性樹脂組成物及び感光性樹脂フィルムが低比重となる傾向があり、また、材質によっては比誘電率がより一層低減する傾向がある。
(F)成分は、フッ素原子を有する樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル及びシリコーンからなる群から選択される少なくとも1種から形成される樹脂粒子を含むことが好ましい。これらの中でも、比誘電率の低減効果の観点から、(F)成分は、フッ素原子を有する樹脂から形成される樹脂粒子を含むことが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂から形成される樹脂粒子を含むことがより好ましい。
前記樹脂粒子の体積平均粒子径は、特に限定されるものではないが、好ましくは20~1,000nm、より好ましくは30~800nm、さらに好ましくは50~500nm、特に好ましくは100~300nmである。体積平均粒子径の測定方法については前述の通りである。
【0104】
本実施形態の感光性樹脂組成物が(F)有機充填材を含有する場合、(F)有機充填材の含有量は、前記粒子(X)による効果を損なわないようにする観点から、感光性樹脂組成物の樹脂成分全量基準で、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。本実施形態の感光性樹脂組成物は(F)成分を含有していなくてもよい。
【0105】
<(G)硬化剤>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、さらに、(G)成分として、硬化剤を含有することが好ましい。本実施形態の感光性樹脂組成物は、(G)硬化剤を含有することで、耐熱性、比誘電率等をより一層向上できる傾向がある。
(G)硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0106】
(G)硬化剤としては、前記(B)熱硬化性樹脂用の硬化剤を使用すればよい。例えば、前記(B)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合はエポキシ樹脂硬化剤を使用することが好ましく、当該エポキシ樹脂硬化剤としては、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、m-キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン;これらの有機酸塩及び/又はエポキシアダクト;三フッ化ホウ素のアミン錯体;エチルジアミノ-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-キシリル-S-トリアジン等のトリアジン誘導体;ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック、トリアジン環含有フェノールノボラック樹脂等のポリフェノールなどが挙げられる。
前記ポリフェノールは、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン等で変性された、変性ポリフェノールであってもよい。前記ポリフェノールの水酸基当量は、特に制限されないが、好ましくは40~300g/eqであり、40~250g/eqであってもよく、60~200g/eqであってもよく、80~160g/eqであってもよく、100~140g/eqであってもよい。ここで、水酸基当量(g/eq)は、無水酢酸によるアセチル化法を利用して滴定によって求めることができる。
【0107】
本実施形態の感光性樹脂組成物が(G)硬化剤を含有する場合、(G)硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、耐熱性及び比誘電率をより一層向上させるという観点から、感光性樹脂組成物の樹脂成分全量基準で、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~5質量%、さらに好ましくは0.1~1質量%である。
【0108】
<(H)硬化促進剤>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、さらに、(H)成分として、硬化促進剤を含有することが好ましい。本実施形態の感光性樹脂組成物は、(H)硬化促進剤を含有することで、耐熱性、比誘電率等をより一層向上できる傾向がある。
(H)硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0109】
(H)硬化促進剤としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-1-ベンジル-1H-イミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、イソシアネートマスクイミダゾール(ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂と2-エチル-4-メチルイミダゾールの付加反応物)等のイミダゾール系化合物;トリメチルアミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N-ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、ヘキサ(N-メチル)メラミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m-アミノフェノール等の第三級アミン;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス-2-シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン;トリ-n-ブチル(2,5-ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスニウムクロライド等のホスホニウム塩;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩;前記の多塩基酸無水物;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6-トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。
これらの中でも、優れた硬化作用を得るという観点から、イミダゾール系化合物が好ましい。
【0110】
本実施形態の感光性樹脂組成物が(H)硬化促進剤を含有する場合、(H)硬化促進剤の含有量は、特に限定されるものではないが、耐熱性及び比誘電率をより一層向上させるという観点から、感光性樹脂組成物の樹脂成分全量基準で、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~5質量%、さらに好ましくは0.1~2質量%である。
【0111】
<(I)光重合開始剤>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、さらに、(I)成分として、光重合開始剤を含有することが好ましい。本実施形態の感光性樹脂組成物は、(I)光重合開始剤を含有することで、ビアの解像性がより一層向上する傾向がある。
(I)光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ビアの解像性の観点から、本実施形態の感光性樹脂組成物は、(I)成分を2種以上含むことが好ましい。
【0112】
(I)光重合開始剤としては、エチレン性不飽和基を光重合させることができるものであれば、特に限定されず、通常用いられる光重合開始剤から適宜選択することができる。
(I)光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン系化合物;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン系化合物;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン系化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物;1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン1-(O-アセチルオキシム)、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-[O-(エトキシカルボニル)オキシム]等のオキシムエステル系化合物などが挙げられる。
【0113】
これらの中でも、オキシムエステル系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物が好ましく、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン1-(O-アセチルオキシム)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドがより好ましい。オキシムエステル系化合物は、光硬化性を向上させるという利点があり、アシルホスフィンオキサイド系化合物は、感光性樹脂フィルムを硬化して得られる硬化物の底部の硬化度を向上させ、アンダーカットを抑制するという利点がある。オキシムエステル系化合物とアシルホスフィンオキサイド系化合物とを併用することで、より一層、ビアの解像性が高まる傾向がある。
【0114】
本実施形態の感光性樹脂組成物が(I)光重合開始剤を含有する場合、(I)光重合開始剤の含有量は、特に限定されるものではないが、感光性樹脂組成物の樹脂成分全量基準で、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.05~10質量%、さらに好ましくは0.05~3質量%、特に好ましくは0.05~1.0質量%である。(I)光重合開始剤の含有量が前記下限値以上であると、露光される部位が現像中に溶出することを低減できる傾向があり、前記上限値以下であると、耐熱性が向上する傾向がある。
【0115】
<(J)光増感剤>
本実施形態の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、(J)成分として光増感剤を含有させてもよい。
(J)光増感剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ビアの解像性の観点から、本実施形態の感光性樹脂組成物は、(J)成分を2種以上含んでいてもよい。
(J)光増感剤としては、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;トリアルキルアミン、トリエタノールアミン等の第3級アミン;N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸アミル等のジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル;4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン;トリフェニルホスフィン等のホスフィン系化合物;N,N-ジメチルトルイジン等のトルイジン系化合物;9,10-ジメトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセン等のアントラセン系化合物;ペリレン系化合物;クマリン系化合物などが挙げられる。
(J)光増感剤としては、ビアの解像性、ビアの形状改善の観点から、好ましくはビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンであり、より好ましくは4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンである。
【0116】
本実施形態の感光性樹脂組成物が(J)光増感剤を含有する場合、(J)光増感剤の含有量は、特に限定されるものではないが、感光性樹脂組成物の樹脂成分全量基準で、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.05~3質量%、さらに好ましくは0.1~1.5質量%、特に好ましくは0.1~1.0質量%である。(J)光増感剤の含有量が前記下限値以上であると、感光性樹脂フィルムを硬化して得られる硬化物の底部の硬化度が十分に高くなる傾向があり、前記上限値以下であると、前記硬化物の底部の硬化度が程よく小さくなる傾向がある。
【0117】
<(K)添加剤>
本実施形態の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の顔料;メラミン等の接着助剤;シリコーン化合物等の整泡剤;重合禁止剤;増粘剤;難燃剤;等の公知慣用の各種添加剤を含有させてもよい。
これらの(K)添加剤の含有量は、各々の目的に応じて適宜調整すればよいが、各々について、感光性樹脂組成物の樹脂成分全量基準で、好ましくは0.01~5質量%であり、0.05~3質量%であってもよく、0.1~1質量%であってもよい。
【0118】
<希釈剤>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、必要に応じて希釈剤を含有していてもよい。希釈剤としては、有機溶剤等を使用できる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル系化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。希釈剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0119】
本実施形態の感光性樹脂組成物が希釈剤を含有する場合、希釈剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の固形分全量の濃度を、好ましくは40~90質量%、より好ましくは50~85質量%、さらに好ましくは60~80質量%の範囲に調整する目的で適宜選択すればよい。希釈剤の使用量を前記範囲に調整することで、感光性樹脂組成物の塗布性が向上し、より高精細なパターン形成が可能となる。
【0120】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、各成分をロールミル、ビーズミル等で混練及び混合することによって得ることができる。
ここで、本実施形態の感光性樹脂組成物は、液体の状態(液状)で使用してもよいし、フィルムの状態(フィルム状)で使用してもよい。
液状で使用する場合、本実施形態の感光性樹脂組成物の塗布方法は特に制限はないが、印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、ジェットディスペンス法、インクジェット法、浸漬塗布法等の各種塗布方法が挙げられる。これらの中でも、感光層をさらに容易に形成する観点から、印刷法、スピンコート法が好ましい。
また、フィルム状で用いる場合は、例えば、後述する感光性樹脂フィルムの形態で用いることができ、この場合はラミネーター等を用いてキャリアフィルム上に積層することで所望の厚さの感光層を形成することができる。なお、フィルム状で使用する方が、プリント配線板の製造効率が高くなるために好ましい。
【0121】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、フォトリソグラフィーによるビア形成(フォトビア形成とも称する。)に適しているため、本開示は、本実施形態の感光性樹脂組成物からなるフォトビア形成用感光性樹脂組成物も提供する。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、プリント配線板の層間絶縁層として有用であるが、ソルダーレジスト用途としても有用である。
【0122】
[感光性樹脂フィルム]
本実施形態の感光性樹脂フィルムは、本実施形態の感光性樹脂組成物を含むものであり、換言すると、本実施形態の感光性樹脂組成物を用いて形成されるものである。当該感光性樹脂フィルムは、層間絶縁層を形成するための感光層として有用である。
本実施形態の感光性樹脂フィルムは、本実施形態の感光性樹脂組成物を用いて形成されるため、前記粒子(X)を10~70体積%含有するものである。なお、感光性樹脂フィルム中の各成分及びその含有量については、本実施形態の感光性樹脂組成物中の各成分及びその含有量の説明の通りである。
【0123】
本実施形態の感光性樹脂フィルムは、キャリアフィルム上に設けられている態様であってもよい。
本実施形態の感光性樹脂フィルムは、例えば、キャリアフィルム上に、本実施形態の感光性樹脂組成物を、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター等の公知の塗工装置で塗布及び乾燥することによって形成することができる。
キャリアフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンなどが挙げられる。キャリアフィルムの厚さは、好ましくは5~100μm、より好ましくは10~60μm、さらに好ましくは15~45μmである。
【0124】
また、本実施形態の感光性樹脂フィルムは、キャリアフィルムと接する面とは反対側の面に保護フィルムを設けることもできる。保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムなどを用いることができる。また、前述のキャリアフィルムと同様の重合体フィルムを用いてもよく、異なる重合体フィルムを用いてもよい。
【0125】
感光性樹脂組成物を塗布することによって形成される塗膜の乾燥は、熱風乾燥、遠赤外線、又は、近赤外線を用いた乾燥機等を用いることができる。乾燥温度としては、好ましくは60~150℃、より好ましくは70~120℃、さらに好ましくは80~110℃である。また、乾燥時間としては、好ましくは1~60分間、より好ましくは2~30分間、さらに好ましくは5~20分間である。乾燥後における感光性樹脂フィルム中の残存希釈剤の含有量は、プリント配線板の製造工程において希釈剤が拡散するのを避ける観点から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0126】
感光性樹脂フィルム(感光層)の厚さ(乾燥後の厚さ)は、特に限定されるものではないが、プリント配線板の薄型化の観点から、好ましくは1~100μm、より好ましくは3~50μm、さらに好ましくは5~40μmである。
【0127】
本実施形態の感光性樹脂フィルムは、ビアの解像性及び銅めっきとの接着強度に優れているため、主に、プリント配線板の層間絶縁層として適しているが、ソルダーレジスト用途としても有用である。
【0128】
[プリント配線板]
本実施形態のプリント配線板は前記製造方法によって得られるものであって、前記の本実施形態の感光性樹脂組成物又は本実施形態の感光性樹脂フィルムを含むものである。換言すると、前記の本実施形態の感光性樹脂組成物又は本実施形態の感光性樹脂フィルムを用いて形成される層間絶縁層を含有するものである。ここで、「層間絶縁層を含有する」という表現には、層間絶縁層をそのまま含有する場合と、層間絶縁層に例えば、ビア形成等の加工、粗化処理等の各種処理、及び配線形成、などが施された後の状態で含有する場合とが含まれる。
本実施形態のプリント配線板は微細配線の形成が可能であり、且つ銅めっきとの接着性に優れているため、半導体パッケージのインターポーザとして利用することもできる。
【0129】
[半導体パッケージ]
本開示は、本実施形態のプリント配線板と半導体素子とを含む半導体パッケージも提供する。本実施形態の半導体パッケージは、本実施形態のプリント配線板の所定の位置に半導体チップ、メモリ等の半導体素子を搭載した後、封止樹脂等によって半導体素子を封止することによって製造できる。
【実施例0130】
以下、実施例によって更に詳細に本実施形態を説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、(A)成分の酸価及び重量平均分子量は下記方法に従って測定した。また、各例で得られた感光性樹脂組成物を用いて、以下に示す方法によって特性を評価した。
【0131】
<酸価の測定方法>
(A)成分の酸価は、(A)成分を中和するのに要した水酸化カリウム水溶液の量から算出した。
【0132】
<重量平均分子量の測定方法>
(A)成分の重量平均分子量は、下記のGPC測定装置及び測定条件で測定し、標準ポリスチレンの検量線を使用して換算した値を重量平均分子量とした。また、検量線の作成は、標準ポリスチレンとして5サンプルセット(「PStQuick MP-H」及び「PStQuick B」、東ソー株式会社製)を用いた。
(GPC測定装置)
装置:高速GPC装置「HCL-8320GPC」、検出器は示差屈折計又はUV、東ソー株式会社製
カラム :カラムTSKgel SuperMultipore HZ-H(カラム長さ:15cm、カラム内径:4.6mm)、東ソー株式会社製
(測定条件)
溶媒 :テトラヒドロフラン(THF)
測定温度 :40℃
流量 :0.35ml/分
試料濃度 :10mg/THF5ml
注入量 :20μl
【0133】
[1.表面粗さ(Ra)]
各実施例及び比較例においてデスミア処理した後の評価用積層体Aの表面を、高性能非接触3次元表面形状粗さ測定システム(Wyko NT9100、ブルカージャパン株式会社製)によって、各例で作製したプリプレグ表面の表面粗さ(Rz)を白色干渉方式で測定した。
【0134】
[2.銅めっきとの接着強度の評価]
各実施例及び比較例で作製した評価用積層体Bについて、JIS C6481(1996年)に準拠し、23℃にて垂直引き剥がし強さを測定した。
【0135】
<合成例1>エチレン性不飽和基及び酸性置換基を有する光重合性化合物(A1)の合成
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製「XD-1000」、エポキシ当量252g/eq、軟化点74.2℃、(a1)成分、脂環式骨格の環形成炭素数:10)350質量部、アクリル酸((a2)成分)70質量部、メチルハイドロキノン0.5質量部、カルビトールアセテート120質量部を仕込み、90℃に加熱して攪拌することにより反応させ、混合物を溶解した。
次に、得られた溶液を60℃に冷却し、トリフェニルホスフィン2質量部を加え、100℃に加熱して、溶液の酸価が1mgKOH/gになるまで反応させた。反応後の溶液に、テトラヒドロ無水フタル酸((a3)成分)98質量部とカルビトールアセテート85質量部とを加え、80℃に加熱して、6時間反応させた。
その後、室温まで冷却し、固形分濃度73質量%のエチレン性不飽和基及び酸性置換基を有する光重合性化合物(A1)[酸価;60mgKOH/g、重量平均分子量;2,000]を得た。
【0136】
<合成例2>エチレン性不飽和基及び酸性置換基を有する光重合性化合物(A2)の合成
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製「EOCN-104S」、(a1)成分)350質量部、アクリル酸((a2)成分)70質量部、メチルハイドロキノン0.5質量部、カルビトールアセテート120質量部を仕込み、90℃に加熱して攪拌することにより反応させ、混合物を溶解した。
次に、得られた溶液を60℃に冷却し、トリフェニルホスフィン2質量部を加え、100℃に加熱して、溶液の酸価が1mgKOH/gになるまで反応させた。反応後の溶液に、テトラヒドロ無水フタル酸((a3)成分)98質量部とカルビトールアセテート85質量部とを加え、80℃に加熱して、6時間反応させた。
その後、室温まで冷却し、固形分濃度73質量%のエチレン性不飽和基及び酸性置換基を有する光重合性化合物(A2)[酸価;60mgKOH/g、重量平均分子量;6,500]を得た。
【0137】
実施例1~12及び比較例1~6
(1)感光性樹脂組成物の製造
表1に示す配合組成(表中の数値の単位は質量部であり、溶液の場合は固形分換算量である。)に従って組成物を配合した(但し、粒子(X)は予め(A)成分と混合しておいた)後、3本ロールミルで混練した。その後、固形分濃度が65質量%になるようにする目的でメチルエチルケトンを加えて、感光性樹脂組成物を得た。
(2)感光性樹脂フィルムの製造
厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人株式会社製、商品名「G2-16」)をキャリアフィルムとして利用した。該キャリアフィルム上に、各例で調製した感光性樹脂組成物を、乾燥後の膜厚が25μmとなるように調整しながら塗布し、熱風対流式乾燥機を用いて100℃で10分間乾燥することによって、感光性樹脂フィルム(感光層)を形成した。続いて、該感光性樹脂フィルム(感光層)のキャリアフィルムと接している側とは反対側の表面上に、ポリエチレンフィルム(タマポリ株式会社製、商品名「NF-15」)を保護フィルムとして貼り合わせ、キャリアフィルム及び保護フィルムを貼り合わせた感光性樹脂フィルムを作製した。
【0138】
(ラミネート工程(1))
上記方法で製造した「キャリアフィルム及び保護フィルムを貼り合わせた感光性樹脂フィルム」から保護フィルムを剥離しながら、厚さ1.0mmの銅張積層基板上にプレス式真空ラミネータ(株式会社名機製作所製、商品名「MVLP-500」)を用いて、圧着圧力0.4MPa、プレス熱板温度75℃、真空引き時間25秒間、ラミネートプレス時間25秒間、気圧4kPa以下でラミネートを行い、積層体を得た。
得られた積層体について、超高圧水銀ランプを光源とした平行光露光機(株式会社オーク製作所製、商品名「EXM-1201」)を用いて200mJ/cm2(波長365nm)で全面露光した。次に、紫外線露光装置を用いて2,000mJ/cm2(波長365nm)の露光量で露光した後、170℃で1時間加熱することによって、銅張積層基板上に硬化物を形成した「評価用積層体」を得た。
【0139】
(フォトビア形成工程(2))
前記評価用積層体について、キャリアフィルム上からi線ステッパー(UX-7、ウシオ電機株式会社製)でステップタブレットとビア評価用マスクを用い、210mJ/cm
2(波長365nm)で露光した。そして、キャリアフィルムを剥離した後、スプレー式現像機を用いて、30℃で、1質量%炭酸ナトリウム水溶液にて40秒現像を行うことで、サイズ約60μmのビアを形成した。実施例2及び実施例11について、走査電子顕微鏡(SEM)測定(倍率:2,500倍)で得たビアの画像をそれぞれ
図7及び
図8に示す。
図7(実施例2)では、ビアトップの開口径が55.6μm、ビアボトムの開口径が53.6μmであった。また、
図8(実施例11)では、ビアトップの開口径が56.0μm、ビアボトムの開口径が53.8μmであった。いずれにおいても、ビアの解像度に優れていることが分かる。
【0140】
(粗化処理工程(3-1);粗化液による粗化処理)
次いで、まず、膨潤液として、水酸化ナトリウムを添加した「スウェリングディップセキュリガントMV」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)2L[水酸化ナトリウム濃度;3g/L]を70℃に加温した後、評価用積層体を5分間浸漬処理した。その後、25℃で1分間貯水洗を行い、続いて、25℃で3分間流水洗を行った。
次に、粗化液として、水酸化ナトリウムを添加した「ドージングセキュリガントPMV」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)2L[水酸化ナトリウム濃度;40g/L]を60℃に加温した後、評価用積層体を5分間浸漬処理した。その後、70℃で1分間、純水で貯水洗を行った。
【0141】
(粒子(X)溶解工程(3-2);各比較例では粒子(X)を用いていないが、実施例同様に当該工程を経ている。)
次に、硫酸濃度が48ml/Lとなるように硫酸水溶液を添加した「リダクションソリューションセキュリガントMV」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)(総量;2,000ml)を表1に記載の温度に加温した後、評価用積層体を表1に記載の時間、浸漬処理した。その後、25℃で1分間貯水洗を行い、続いて、25℃で3分間流水洗を行った。
この粒子(X)溶解工程(3-2)後の評価用積層体を評価用積層体Aと称する。
ここで、実施例2、5、8及び11並びに比較例5では、当該評価用積層体Aの表面について走査電子顕微鏡(SEM)測定を行い、表面画像を撮影した。結果を
図9~13に示す。
【0142】
(回路パターン形成工程(4))
次に、60℃のアルカリクリーナ「クリーナーセキュリガント902」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)で5分間処理した後、脱脂洗浄した。洗浄後、評価用積層体を23℃のプリディップ液「プリディップネオガントB」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)で1分間処理した。その後、評価用積層体を35℃のアクチベーター液「アクチベーターネオガント834」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)で5分間処理してから、次に、30℃の還元液「リデューサーネオガントWA」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)によって評価用積層体を5分間処理した。
こうして得られた評価用積層体を化学銅液(「ベーシックプリントガントMV-TP1」、「カッパープリントガントMV-TP1」、「モデレータープリントガントMV-TP1」、「スタビライザープリントガントMV-TP1」、「リデューサーCu」(全てアトテックジャパン株式会社製、商品名)及び水酸化ナトリウム)に入れ、めっき厚0.5μm程度になるまで無電解めっきを実施した。該無電解めっき後に、残留している水素ガスを除去するため、120℃の温度で30分間アニール処理を行った。その後、硫酸銅電解めっきを行い、アニール処理を180℃で60分間行い、厚さ25μmの導体層を形成した。この評価用積層体を評価用積層体Bと称する。
その後、評価用積層体Bに対して、セミアディティブ工程によって回路パターンを形成した。各測定及び評価結果を表1に示す。
【0143】
【0144】
表1で使用した各成分は以下の通りである。
[(A)エチレン性不飽和基及び酸性置換基を有する光重合性化合物]
・A1;合成例1で得たエチレン性不飽和基及び酸性置換基を有する光重合性化合物(A1)、脂環式骨格を含有する。
・A2;合成例2で得たエチレン性不飽和基及び酸性置換基を有する光重合性化合物(A2)、脂環式骨格を含有しない。
【0145】
[(B)熱硬化性樹脂]
・B1;「YX-4000」(三菱ケミカル株式会社製、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、エポキシ当量;180~192g/eq)
【0146】
[(C)架橋剤]
・C1;「DPHA」(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
・C2;「TMPTA」(トリメチロールプロパントリアクリレート)
【0147】
[(D)エラストマ]
・D1;「Ricon(登録商標)131MA17」(クレイバレー社製、マレイン酸変性ポリブタジエン、数平均分子量54,000(カタログ値))
【0148】
[(X)粒子(70℃、20分の条件で濃度5~100ml/Lの硫酸水溶液に95質量%以上溶解する粒子)]
・X1;水酸化マグネシウム1:「ECOMAG(登録商標)Z-10」(水酸化マグネシウム、体積平均粒子径1.2μm、タテホ化学工業株式会社製)
・X2;「マグサーモ MS-S」(炭酸マグネシウム、体積平均粒子径1.2μm、神島化学工業株式会社製)
・X3;「LPZINC-KS-2」(酸化亜鉛、体積平均粒子径2μm、堺化学工業株式会社製)
・X4;水酸化マグネシウム2:「マグシーズ(登録商標)V-6F」(水酸化マグネシウム、体積平均粒子径0.9μm、神島化学工業株式会社製)
【0149】
[(E)無機充填材]
E1;球状溶融シリカ(体積平均粒子径0.5μm)
【0150】
[(I)光重合開始剤]
・I1;光重合開始剤1:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、アセトフェノン系化合物
・I2;光重合開始剤2:2,4-ジエチルチオキサントン、チオキサントン系化合物
【0151】
表1から、実施例1~12では、層間絶縁層の表面粗さを小さく抑えたまま、銅めっきとの接着強度を高くすることに成功したことが分かる。これは、
図9~
図12が示す様に、層間絶縁層の表面に存在していた粒子(X)が溶解して窪みが形成されたことによるものと推察する。
一方、粒子(X)を用いた比較例1~3では、粒子が存在しない分だけ表面粗さは小さいが、この場合、銅めっきとのピール強度が極めて小さくなった。また、粒子(X)の代わりに粒子(X)には該当しない無機充填材を用いた比較例4~6では、表面粗さが小さい状態では、銅めっきとのピール強度が低くなった。
図13が示す様に、層間絶縁層の表面に無機充填材が存在していることが原因であると推察する。
【0152】
実施例13及び比較例7
実施例1及び比較例4と同様にして、それぞれの感光性樹脂フィルムを作製し、ラミネート工程(1)を経て銅張積層基板上に硬化物を形成した「評価用積層体」を得た。その後、下記操作を行った。
(粗化処理工程(3-1);ドライエッチング)
上記で得た評価用積層体の表面を、酸素プラズマを用いて、出力300W、温度25℃、処理時間5分の条件でプラズマ処理した。
(粒子(X)溶解工程(3-2)及び回路パターン形成工程(4))
次に、60℃のアルカリクリーナ「クリーナーセキュリガント902」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)で5分間処理した後、25℃で1分間貯水洗を行い、続いて25℃で3分間流水洗を行った。ここで、実施例13では、得られた評価用積層体の表面について走査電子顕微鏡(SEM)測定(倍率:1万倍)を行い、表面画像を撮影した。結果を
図14に示す。
続いて、過硫酸ナトリウムと硫酸水溶液の混合液(硫酸濃度:18.5ml/L)によって、評価用積層体の表面を27℃で30秒間処理することで、ソフトエッチングを行うと共に、粒子(X)を溶解させた。当該処理は実施例13のみならず、粒子(X)を用いていない比較例7でも実施した。その後、25℃で1分間貯水洗を行い、続いて25℃で3分間流水洗を行った。ここで、実施例13では、得られた評価用積層体の表面について走査電子顕微鏡(SEM)測定(倍率:1万倍)を行い、表面画像を撮影した。結果を
図15に示す。
上記処理後、評価用積層体を25℃のプリディップ液「プリディップネオガントB」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)で1分間処理した。その後、評価用積層体を40℃のアクチベーター液「アクチベーターネオガント834」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)で5分間処理してから、25℃で1分間貯水洗を行い、続いて25℃で3分間流水洗を行った。
次に、30℃の還元液「リデューサーネオガントWA」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)によって評価用積層体を5分間処理し、25℃で1分間貯水洗を行い、続いて25℃で3分間流水洗を行った。
こうして得られた評価用積層体を化学銅液(「ベーシックプリントガントMV-TP1」、「カッパープリントガントMV-TP1」、「モデレータープリントガントMV-TP1」、「スタビライザープリントガントMV-TP1」、「リデューサーCu」(全てアトテックジャパン株式会社製、商品名)及び水酸化ナトリウム)に入れ、めっき厚0.5μm程度になるまで無電解めっきを実施した。該無電解めっき後に、残留している水素ガスを除去するため、120℃の温度で30分間アニール処理を行った。その後、硫酸銅電解めっきを行い、アニール処理を180℃で60分間行い、厚さ25μmの導体層を形成した。この評価用積層体を評価用積層体Cと称する。
その後、評価用積層体Cに対して、セミアディティブ工程によって回路パターンを形成した。各測定及び評価結果を表2に示す。
【0153】
【0154】
表2から、実施例13では、
図14から
図15へ層間絶縁層の表面の変化から分かるように、粒子(X)溶解工程(3-2)後に粒子(X)が溶解しており、その結果、層間絶縁層の表面粗さを小さく抑えたまま、銅めっきとの接着強度を高くすることに成功したことが分かる。
一方、粒子(X)の代わりに粒子(X)には該当しない無機充填材を用いた比較例7では、表面粗さが小さい状態では、銅めっきとのピール強度が低くなった。
【0155】
実施例14及び比較例8
実施例2及び比較例5と同様にして、それぞれの感光性樹脂フィルムを作製し、ラミネート工程(1)を経て銅張積層基板上に硬化物を形成した「評価用積層体」を得た。その後、下記操作を行った。
(粗化処理工程(3-1);ドライエッチング)
上記で得た評価用積層体の表面を、酸素プラズマを用いて、出力300W、温度25℃、処理時間5分の条件でプラズマ処理した。
(粒子(X)溶解工程(3-2))
前記プラズマ処理を行った評価用積層体の表面について、硫酸濃度49ml/Lとなるように硫酸水溶液を添加した「リダクションソリューションセキュリガントMV」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)(総量;2,000ml)を表3に記載の温度に加温した後、評価用積層体を表3に記載の時間、浸漬処理した。当該処理は実施例14のみならず、粒子(X)を用いていない比較例8でも実施した。
(回路パターン形成工程(4))
次に、60℃のアルカリクリーナ「クリーナーセキュリガント902」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)で5分間処理した後、25℃で1分間貯水洗を行い、続いて25℃で3分間流水洗を行った。
続いて、過硫酸ナトリウムと硫酸水溶液の混合液(硫酸濃度:18.5ml/L)によって、評価用積層体の表面を27℃で0.5分間処理することで、ソフトエッチングを行った。その後、25℃で1分間貯水洗を行い、続いて25℃で3分間流水洗を行った。
上記処理後、評価用積層体を25℃のプリディップ液「プリディップネオガントB」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)で1分間処理した。その後、評価用積層体を40℃のアクチベーター液「アクチベーターネオガント834」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)で5分間処理してから、25℃で1分間貯水洗を行い、続いて25℃で3分間流水洗を行った。
次に、30℃の還元液「リデューサーネオガントWA」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)によって評価用積層体を5分間処理し、25℃で1分間貯水洗を行い、続いて25℃で3分間流水洗を行った。
こうして得られた評価用積層体を化学銅液(「ベーシックプリントガントMV-TP1」、「カッパープリントガントMV-TP1」、「モデレータープリントガントMV-TP1」、「スタビライザープリントガントMV-TP1」、「リデューサーCu」(全てアトテックジャパン株式会社製、商品名)及び水酸化ナトリウム)に入れ、めっき厚0.5μm程度になるまで無電解めっきを実施した。該無電解めっき後に、残留している水素ガスを除去するため、120℃の温度で30分間アニール処理を行った。その後、硫酸銅電解めっきを行い、アニール処理を180℃で60分間行い、厚さ25μmの導体層を形成した。この評価用積層体を評価用積層体Cと称する。
その後、評価用積層体Cに対して、セミアディティブ工程によって回路パターンを形成した。各測定及び評価結果を表2に示す。
【0156】
【0157】
表3から、実施例14では、粒子(X)溶解工程(3-2)後に粒子(X)が溶解しており、その結果、層間絶縁層の表面粗さを小さく抑えたまま、銅めっきとの接着強度を高くすることに成功したと言える。
一方、粒子(X)の代わりに粒子(X)には該当しない無機充填材を用いた比較例8では、表面粗さが小さい状態では、銅めっきとのピール強度が低くなった。