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特開2024-154576ダイアタッチフィルム及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154576
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ダイアタッチフィルム及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20241024BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L21/52 E
H01L21/52 B
C09J7/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068470
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 幸太
(72)【発明者】
【氏名】中村 奏美
【テーマコード(参考)】
4J004
5F047
【Fターム(参考)】
4J004AB01
4J004AB05
4J004BA03
4J004DA02
4J004DA03
4J004DB02
4J004EA05
4J004FA05
5F047BA21
5F047BB03
5F047CA00
(57)【要約】
【課題】半導体チップを被接着物に加熱により接着する際に、半導体チップにかかる応力を低減しつつ半導体チップの変形を抑制することが可能なダイアタッチフィルムを提供する。
【解決手段】所定の接着温度まで加熱されることによって半導体チップを被接着物に接着するダイアタッチフィルムであって、半導体チップに接着される第1接着剤層1と、被接着物に接着される第2接着剤層2と、を備え、第2接着剤層2の接着温度における貯蔵弾性率を、第1接着剤層1の接着温度における貯蔵弾性率よりも低くする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の接着温度まで加熱されることによって半導体チップを被接着物に接着するダイアタッチフィルムであって、
前記半導体チップに接着される第1接着剤層と、
前記被接着物に接着される第2接着剤層と、を備え、
前記第2接着剤層の前記接着温度における貯蔵弾性率が、前記第1接着剤層の前記接着温度における貯蔵弾性率よりも低いことを特徴とするダイアタッチフィルム。
【請求項2】
前記第1接着剤層の表面は粘着性を有する請求項1に記載のダイアタッチフィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のダイアタッチフィルム、及び保護シートを備え、前記保護シートは、前記第2接着剤層の表面に、粘着力によって貼り付けられており、前記保護シートと前記第2接着剤層との間の剥離強度は、前記第1接着剤層と前記第2接着剤層との間の剥離強度よりも低いことを特徴とするダイアタッチシート。
【請求項4】
支持体上に、ダイアタッチフィルムを挟んで、半導体チップがセットされたワークにおいて、前記ダイアタッチフィルムを所定の接着温度まで加熱し、前記半導体チップと前記支持体とを接着する半導体装置の製造方法であって、
前記ダイアタッチフィルムは、前記半導体チップに接着される第1接着剤層と、前記支持体に接着される第2接着剤層と、を備え、前記第2接着剤層の前記接着温度における 貯蔵弾性率が、前記第1接着剤層の前記接着温度における貯蔵弾性率よりも低いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
支持体上に複数の半導体チップが積層され、前記支持体と前記半導体チップとの間、及び隣接する前記半導体チップの間にダイアタッチフィルムが挟まれたワークにおいて、前記ダイアタッチフィルムを所定の接着温度まで加熱し、前記半導体チップと前記支持体とを、及び隣接する前記半導体チップを接着する半導体装置の製造方法であって、
前記ダイアタッチフィルムは、前記支持体から遠い方の半導体チップに接着される第1接着剤層と、前記支持体または前記支持体に近い方の半導体チップに接着される第2接着剤層と、を備え、前記第2接着剤層の前記接着温度における 貯蔵弾性率が、前記第1接着剤層の前記接着温度における貯蔵弾性率よりも低いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ワークにおいて、隣接する2つの前記半導体チップの間に挟まれた前記ダイアタッチフィルムの前記第2接着剤層の表面の一部が前記半導体チップと接している請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアタッチフィルム及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイアタッチフィルムは、半導体パッケージにおいて、基板等の支持体の上に半導体チップを実装する場合、及び半導体チップを積層して実装する場合に、半導体チップを固定する用途で用いられるフィルム状接着剤である。
【0003】
ダイアタッチフィルムを用いて、半導体チップの位置を固定することによって、支持体と半導体チップとをワイヤボンディングなどで接続する際の位置ずれによる接続不良を抑制することが可能である。
【0004】
ダイアタッチフィルムには、一般的に熱可塑性樹脂が含まれており、ダイアタッチフィルムを加熱することで、半導体チップと支持体とが接着される。ダイアタッチフィルムを加熱する際に、半導体チップ及び支持体も加熱され、これらの熱変形等により、半導体チップが支持体から剥離する向きの応力がかかる。この応力によって半導体チップが支持体から剥離することを抑制するためにダイアタッチフィルムの弾性率を低くすることが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、硬化性化合物、硬化剤及びポリイミド粒子を含有する硬化性樹脂組成物からなるダイアタッチフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-82480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実装する半導体チップの薄型化が進んでおり、半導体チップを支持体に実装する際、ダイアタッチフィルムの弾性率が小さいと、半導体チップが支持体から剥離する方向の応力は低減されるが、半導体チップの変形を抑制することができない。
【0008】
本発明は、半導体チップを被接着物に加熱により接着する際に、半導体チップにかかる応力を低減しつつ半導体チップの変形を抑制することが可能なダイアタッチフィルム、及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
【0010】
[1]所定の接着温度まで加熱されることによって半導体チップを被接着物に接着するダイアタッチフィルムであって、前記半導体チップに接着される第1接着剤層と、前記被接着物に接着される第2接着剤層と、を備え、前記第2接着剤層の前記接着温度における貯蔵弾性率が、前記第1接着剤層の前記接着温度における貯蔵弾性率よりも低いことを特徴とするダイアタッチフィルム。
[2]前記第1接着剤層の表面に粘着性を有する[1]に記載のダイアタッチフィルム。
[3][1]または[2]に記載のダイアタッチフィルム及び保護シートを備え、前記保護シートは、前記第2接着剤層の表面に、粘着力によって貼り付けられており、前記保護シートと前記第2接着剤層との間の剥離強度は、前記第1接着剤層と前記第2接着剤層との間の剥離強度よりも低いことを特徴とするダイアタッチシート。
[4]支持体上に、ダイアタッチフィルムを挟んで、半導体チップがセットされたワークにおいて、前記ダイアタッチフィルムを所定の接着温度まで加熱し、前記半導体チップと前記支持体とを接着する半導体装置の製造方法であって、前記ダイアタッチフィルムは、前記半導体チップに接着される第1接着剤層と、前記支持体に接着される第2接着剤層と、を備え、前記第2接着剤層の前記接着温度における 貯蔵弾性率が、前記第1接着剤層の前記接着温度における貯蔵弾性率よりも低いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
[5]支持体上に複数の半導体チップが積層され、前記支持体と前記半導体チップとの間、及び隣接する前記半導体チップの間にダイアタッチフィルムが挟まれたワークにおいて、前記ダイアタッチフィルムを所定の接着温度まで加熱し、前記半導体チップと前記支持体とを、及び隣接する前記半導体チップを接着する半導体装置の製造方法であって、前記ダイアタッチフィルムは、前記支持体から遠い方の半導体チップに接着される第1接着剤層と、前記支持体または前記支持体に近い方の半導体チップに接着される第2接着剤層と、を備え、前記第2接着剤層の前記接着温度における 貯蔵弾性率が、前記第1接着剤層の前記接着温度における貯蔵弾性率よりも低いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
[6]前記ワークにおいて、隣接する2つの前記半導体チップの間に挟まれた前記ダイアタッチフィルムの前記第2接着剤層の表面の一部が前記半導体チップと接している[5]に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、半導体チップを被接着物に加熱により接着する際に、半導体チップにかかる応力を低減しつつ半導体チップの変形を抑制することが可能なダイアタッチフィルム、及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態にかかるダイアタッチフィルムの断面の構成の一例を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態の一例にかかるダイアタッチシートの構成を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態の他の一例にかかるダイアタッチシートの構成を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一例におけるラミネート工程を説明する模式図である。
図5】本発明の一実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一例におけるダイシング工程を説明する模式図である。
図6】本発明の一実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一例におけるピックアップ工程を説明する模式図である。
図7】本発明の一実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一例における接着工程を説明する模式図である。
図8】本発明の一実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一例における配線工程を説明する模式図である。
図9】本発明の一実施形態の他の例にかかる半導体装置の製造方法における接着工程を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られない。
【0014】
以下の説明において、貯蔵弾性率は、次のような方法によって測定される値である。まず、厚さ25μmの試験片(例えばダイアタッチフィルム)が12枚積層された幅4mm、長さ20mmのサンプルを得る。得られたサンプルについて、動的弾性率測定装置(UBM株式会社製、商品名:E4000HP)を用いて、昇温速度3℃/分、及び周波数10Hzの条件で、20~200℃の範囲で、温度と、サンプルの長さ方向の貯蔵弾性率との関係を求める。ここで得られた関係に基づいて、所定の温度におけるサンプルの貯蔵弾性率が求められる。
【0015】
<1.ダイアタッチフィルム>
[1-1.ダイアタッチフィルムの構成]
図1は、本実施形態にかかるダイアタッチフィルム10の断面の構成の一例を示す模式図である。本実施形態にかかるダイアタッチフィルム10は、所定の接着温度まで加熱されることによって、半導体チップと被接着物とを接着する。被接着物は、基板等の支持体でもよい。また、被接着物は、半導体チップでもよく、この場合、ダイアタッチフィルム10は、隣接する2つの半導体チップを接着する。
【0016】
本実施形態にかかるダイアタッチフィルム10は、半導体チップに接着される第1接着剤層1と、被接着物に接着される第2接着剤層2とを備える。第2接着剤層2の接着温度における貯蔵弾性率は、第1接着剤層1の接着温度における貯蔵弾性率よりも低い。
【0017】
接着温度とは、ダイアタッチフィルム10による接着を行う温度である。例えば、後述する第1接着剤層1及び第2接着剤層2の一方または両方に熱硬化性樹脂が含まれ、その熱硬化性樹脂を硬化させることにより接着を行う構成である場合、接着温度はその熱硬化性樹脂を硬化させる温度である。接着温度は、120℃としてもよい。また、接着温度は範囲を有していてもよい。例えば、接着温度は、60℃以上であってもよく、80℃以上であってもよく、100℃以上であってもよい。また、例えば接着温度は、200℃以下であってもよく、160℃以下であってもよく、140℃以下であってもよい。
【0018】
(1-1-1.第1接着剤層)
第1接着剤層1の接着温度における貯蔵弾性率Gは、0.50MPa以上であることが好ましく、0.70MPa以上であることがより好ましく、0.90MPa以上であることがさらに好ましい。第1接着剤層1の剛性が向上し、ダイアタッチフィルム10を用いた半導体チップの実装工程において、半導体チップが変形することを抑制するためである。
【0019】
第1接着剤層1の接着温度における貯蔵弾性率Gは、10MPa以下であることが好ましく、5.0MPa以下であることがより好ましく、2.0MPa以下であることがさらに好ましく、1.3MPa以下であることが特に好ましい。ダイアタッチフィルム10を用いた半導体チップの実装工程において、第1接着剤層1を半導体チップの変形にある程度追従できるようにすることで、半導体チップにかかる応力の上昇を抑制するためである。
【0020】
第1接着剤層1の厚さtは、特に限定されないが、1.0μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましく、4.0μm以上であることがさらに好ましい。第1接着剤層1の剛性が向上し、ダイアタッチフィルム10を用いた半導体チップの実装工程において、半導体チップが変形することを抑制するためである。
【0021】
第1接着剤層1の厚さtは、特に限定されないが、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。ダイアタッチフィルム10を用いた半導体チップの実装工程において、第1接着剤層1を半導体チップの変形にある程度追従できるようにすることで、半導体チップにかかる応力の上昇を抑制するためである。また、ダイアタッチフィルム10の薄型化のためである。なお、第1接着剤層1の厚さtは、20μm以下であってもよく、10μm以下であってもよい。
【0022】
第1接着剤層1の表面(第2接着剤層2と接しない方の面)は、粘着性を有することが好ましい。半導体チップを、ダイアタッチフィルム10に仮固定することで、半導体チップを被接着物上に置く際の作業性が向上するためである。
【0023】
(1-1-2.第2接着剤層)
第2接着剤層2の接着温度における貯蔵弾性率Gは、0.10MPa以上であってもよく、0.20MPa以上であってもよく、0.30MPa以上であってもよく、0.40MPa以上であってもよい。
【0024】
第2接着剤層2の接着温度における貯蔵弾性率Gは、1.0MPa以下であることが好ましく、0.80MPa以下であることがより好ましく、0.60MPa以下であることがさらに好ましい。ダイアタッチフィルム10を用いた半導体チップの実装工程において、第2接着剤層2の変形により半導体チップにかかる応力の上昇を抑制するためである。
【0025】
第2接着剤層2の厚さtは、特に限定されないが、1.0μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましく、4.0μm以上であることがさらに好ましい。ダイアタッチフィルム10を用いた半導体チップの実装工程において、第2接着剤層2の変形により半導体チップにかかる応力の上昇を抑制するためである。
【0026】
第2接着剤層2の厚さtは、特に限定されないが、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。ダイアタッチフィルム10の薄型化のためである。なお、第2接着剤層2の厚さtは、20μm以下であってもよく、10μm以下であってもよい。
【0027】
第2接着剤層2の表面(第1接着剤層1と接しない方の面)は、粘着性を有することが好ましい。半導体チップを被接着物に置いた後に、各接着剤層を硬化するまでの間、半導体チップが被接着物上で動くことを抑制できるためである。。
【0028】
(1-1-3.第1接着剤層及び第2接着剤層の貯蔵弾性率の関係)
第2接着剤層2の接着温度における貯蔵弾性率Gと、第1接着剤層1の接着温度における貯蔵弾性率Gとの比の値G/Gは、0.90以下であることが好ましく、0.80以下であることがより好ましく、0.70以下であることがさらに好ましく、0.60以下であることが特に好ましい。ダイアタッチフィルム10を用いた半導体チップの実装工程において、半導体チップにかかる応力の上昇を抑制しつつ、半導体チップが変形することを抑制するためである。
【0029】
上記の比の値G/Gは、0.10以上であってもよく、0.20以上であってもよく、0.30以上であってもよく、0.40以上であってもよい。
【0030】
(1-1-4.第1接着剤層及び第2接着剤層の厚さの関係)
第1接着剤層1の厚さtと第2接着剤層2の厚さtとの比の値t/tは、0.40以上であることが好ましく、0.60以上であることがより好ましく、0.80以上であることがさらに好ましい。ダイアタッチフィルム10の厚さの上昇を抑制しつつ、第1接着剤層1の剛性を向上させ、ダイアタッチフィルム10を用いた半導体チップの実装工程において、半導体チップが変形することを抑制するためである。
【0031】
第1接着剤層1の厚さtと第2接着剤層2の厚さtとの比の値t/tは、1.6以下であることが好ましく、1.4以下であることがより好ましく、1.2以下であることがさらに好ましい。ダイアタッチフィルム10の厚さの上昇を抑制しつつ、ダイアタッチフィルム10を用いた半導体チップの実装工程において、第2接着剤層2の変形により半導体チップにかかる応力の上昇を抑制するためである。
【0032】
第1接着剤層1の厚さt及び第2接着剤層2の厚さtは同じ、すなわち、t/tは、1.0であってもよい。
【0033】
第1接着剤層1の厚さt及び第2接着剤層2の厚さtの合計値t+tは、300μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。ダイアタッチフィルム10の薄型化のためである。
【0034】
(1-1-5.第1接着剤層及び第2接着剤層の材質)
第1接着剤層1及び第2接着剤層2の材質は特に限定されないが、熱硬化性樹脂が含まれることが好ましく、熱硬化性樹脂が30質量%以上含まれることがより好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられるが、これに限定されない。第1接着剤層1の貯蔵弾性率G及び第2接着剤層2の貯蔵弾性率Gは、例えば、熱硬化性樹脂の官能基の種類及び官能基以外の化学構造により制御できる。
【0035】
また、第1接着剤層1及び第2接着剤層2は、熱硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤を含んでもよい。第1接着剤層1及び第2接着剤層2において、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂が含まれる場合、硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂が挙げられるがこれに限定されない。第1接着剤層1の貯蔵弾性率G及び第2接着剤層2の貯蔵弾性率Gは、例えば、硬化剤の官能基の種類及び官能基以外の化学構造により制御できる。
【0036】
第1接着剤層1及び第2接着剤層2は、熱硬化性樹脂以外の樹脂成分、無機フィラー、カップリング剤、硬化促進剤等を含んでもよい。第1接着剤層1の貯蔵弾性率G及び第2接着剤層2の貯蔵弾性率Gは、熱硬化性樹脂及び硬化剤以外の成分の種類及び含有量により制御できる。
【0037】
<2.ダイアタッチシート>
[2-1.ダイアタッチシートの構成例1]
図2は、本実施形態の一例にかかるダイアタッチシート100の構成を示す模式図である。この例にかかるダイアタッチシート100では、ダイアタッチフィルム10及び保護シート3を備え、保護シート3は、第2接着剤層2の表面(第1接着剤層1と接しない方の面)に、粘着力によって貼り付けられている。第2接着剤層2と、保護シート3との間は界面剥離可能であることが好ましい。
【0038】
この構成によれば、後述する半導体装置の製造工程において、第1接着剤層1に半導体ウェハーが貼り付けられた後、第2接着剤層2へ支持体を貼り付けるまでの間、例えば、後述するダイシング工程等において、異物の付着等に対して第2接着剤層2が保護シート3によって保護される。
【0039】
保護シート3と第2接着剤層2との間の剥離強度は、第1接着剤層1と第2接着剤層2との間の剥離強度よりも低い。この構成により、第2接着剤層2を支持体へ貼り付けるために、保護シート3を第2接着剤層2から剥離する際に、第1接着剤層1と第2接着剤層2とが剥離することを防止できる。
【0040】
保護シート3と第2接着剤層2との間の剥離強度は、第1接着剤層1と半導体チップ(後述する)との間の接着前における剥離強度よりも低いことが好ましい。この構成により、例えば、後述する半導体装置の製造方法におけるピックアップ工程等において、半導体チップからダイアタッチフィルム10が剥離することを抑制できる。
【0041】
保護シート3は、ダイシングテープとしてもよい。保護シート3の材質は、例えば樹脂フィルムである。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。また、保護シート3は、プライマー塗布、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理等の表面処理をされた樹脂フィルムであってもよい。保護シート3は、粘着性を有することが好ましい。保護シート3は、例えば、樹脂フィルムに粘着性が付与された構成であり、樹脂フィルムの片面に粘着剤層が付与された構成であってもよい。
【0042】
[2-2.ダイアタッチシートの構成例2]
図3は、本実施形態の他の一例にかかるダイアタッチシート110の構成を示す模式図である。この例にかかるダイアタッチシート110は、ダイアタッチフィルム10と、第1保護シート31と、第2保護シート32とを備える。第1保護シート31は、ダイアタッチフィルム10の第1接着剤層1の表面(第2接着剤層2と接しない方の面)に、粘着力によって貼り付けられている。第2保護シート32は、ダイアタッチフィルム10の第2接着剤層2の表面(第1接着剤層1と接しない方の面)に、粘着力によって貼り付けられている。第1接着剤層1と第1保護シート31との間、及び第2接着剤層2と第2保護シート32との間は界面剥離可能であることが好ましい。
【0043】
第1保護シート31及び第2保護シート32の材質及び構成は、例えば、保護シート3の説明にて例示された材質及び構成であってもよいが、それらに限定されない。また、第1保護シート31及び第2保護シート32の材質及び構成は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0044】
この構成によれば、第1接着剤層1に半導体ウェハーが貼り付けられる直前まで第1接着剤層1が第1保護層31によって保護される。また、この構成によれば、後述する半導体装置の製造工程において、第1接着剤層1に半導体ウェハーが貼り付けられた後、第2接着剤層2を支持体へ貼り付けるまでの間、例えば、後述するダイシング工程等において、異物の付着等に対して第2接着剤層2が第2保護シート32によって保護される。
【0045】
第2保護シート32と第2接着剤層2との間の剥離強度は、第1接着剤層1と第2接着剤層2との間の剥離強度よりも低い。この構成により、第2接着剤層2を支持体へ貼り付けるために、第2保護シート32を第2接着剤層2から剥離する際に、第1接着剤層1と第2接着剤層2とが剥離することを防止できる。
【0046】
また、半導体装置の製造工程において、第2接着剤層2を支持体へ貼り付ける前に、第1接着剤層1に半導体ウェハーを貼り付ける工程を行う場合、第1保護シート31と第1接着剤層1との間の剥離強度は、第2保護シート32と第2接着剤層2との間の剥離強度よりも低いことが好ましい。この構成により、第1接着剤層1を半導体ウェハーへ貼り付けるために、第1保護シート31を第1接着剤層1から剥離する際に、第2保護シート32と第2接着剤層2とが剥離することを抑制できる。
【0047】
また、上記の順番で半導体装置の製造工程を行う場合、第1保護シート31と第1接着剤層1とを剥離する時点でのこれらの剥離強度は、第2接着剤層2と半導体ウェハーとの間の剥離強度よりも低いことが好ましい。この構成により、第1保護シート31を第1接着剤層1から剥離する際に、第2接着剤層2と半導体ウェハーとが剥離することを抑制できる。
【0048】
<3.ダイアタッチフィルムの製造方法>
以下、本実施形態にかかるダイアタッチフィルム10の製造方法の例について説明するが、本実施形態にかかるダイアタッチフィルムの製造方法はこれらの例に限定されない。
【0049】
[3-1.ダイアタッチフィルムの製造方法の例1]
本実施形態の一例にかかるダイアタッチフィルム10の製造方法は、第1基材上に第1接着剤層1を形成させる第1接着剤層形成工程と、第2基材上に第2接着剤層2を形成させる第2接着剤層形成工程と、第1基材上に形成された第1接着剤層1及び第2基材上に形成された第2接着剤層2を接合させる接合工程と、を有する。なお、第1接着剤層形成工程及び第2接着剤層形成工程の順序は、特に限定されておらず、第1接着剤層形成工程を先に行ってもよく、第2接着剤層形成工程を先に行ってもよく、第1接着剤層形成工程及び第2接着剤層形成工程を並行して行ってもよい。
【0050】
第1接着剤層形成工程は、例えば、第1基材に第1接着剤組成物を塗布し、第1基材上に塗布された第1接着剤組成物を乾燥させることにより、第1基材上に第1接着剤層1を形成させる。
【0051】
第1基材は、例えば、図3に示されるダイアタッチシート110における、第1保護シート31としてもよい。第1基材の材質及び構成は、例えば、保護シート3の説明にて例示された材質及び構成であってもよいが、それらに限定されない。
【0052】
第1接着剤組成物は、ワニスであることが好ましい。成分が均一な接着剤層を形成でき、接着剤その厚さの制御がしやすいためである。ワニスは、例えば、第1接着剤層1及び第2接着剤層2として含まれる成分が溶剤に溶解している構成が挙げられる。溶剤としては、有機溶剤が挙げられ、有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられるがこれらに限定されない。なお、第1接着剤組成物は、ワニスに限られず、分散液等であってもよい
【0053】
第1接着剤組成物を第1基材に塗布する方法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0054】
第1基材上に塗布された第1接着剤組成物を乾燥させる方法としては、例えば、加熱乾燥が挙げられる。加熱温度及び加熱時間は、第1基材及び第1接着剤組成物の成分に応じて適宜調整することが好ましい。加熱温度及び加熱時間は、第1接着剤組成物に含まれる成分の化学反応を抑制できる範囲の温度であることが好ましい。
【0055】
第2接着剤層形成工程は、例えば、第2基材に第2接着剤組成物を塗布し、第2基材上に塗布された第2接着剤組成物を乾燥させることにより、第2基材上に第2接着剤層2を形成させる。
【0056】
第2接着剤層形成工程にて行われうる各操作の説明については、第1接着剤層形成工程と同様である。第2接着剤層形成工程は、第1接着剤層形成工程と同様の操作で行われてもよく、異なっていてもよい。
【0057】
第2基材は、例えば、図2に示されるダイアタッチシート100における、保護シート3としてもよく、図3に示されるダイアタッチシート110における、第2保護シート32としてもよい。第2基材の材質及び構成は、例えば、保護シート3の説明にて例示された材質及び構成であってもよいが、それらに限定されない。
【0058】
第2接着剤組成物の構成の説明については、第1接着剤組成物と同様である。ただし、第2接着剤層2の接着温度における貯蔵弾性率が第1接着剤層1の接着温度における貯蔵弾性率よりも低くなるように、第2接着剤組成物の構成を決定することが好ましい。
【0059】
接合工程では、例えば、第1基材上に形成された第1接着剤層1と第2基材上に形成された第2接着剤層2とが接するように貼り合わせる。貼り合わせは、例えば、ロールラミネーター、真空ラミネーター等を用いて行われる。貼り合わせは、第1接着剤層1及び第2接着剤層2が加熱された状態で行われてもよく、加熱せずに行われてもよい。
【0060】
接合工程の後、第1基材または第2基材を剥離してもよく、第1基材及び第2基材の両方を剥離してもよい。接合工程の後、第1基材のみを剥離して、第2基材を保護シート3として残す場合、図2にかかるダイアタッチシート100の構成となる。接合工程の後、第1基材及び第2基材のいずれも残す場合、図3にかかるダイアタッチシート110の構成となる。
【0061】
[3-2.ダイアタッチフィルムの製造方法の例2]
本実施形態の他の一例にかかるダイアタッチフィルム10の製造方法は、基材上に第2接着剤組成物を塗布し、塗布された第2接着剤組成物を乾燥させて第2接着剤層2を形成させる第2接着剤層形成工程と、基材上に形成された第2接着剤層2上に第1接着剤組成物を塗布し、塗布された第1接着剤組成物を乾燥させて第1接着剤層1を形成させる第1接着剤層形成工程と、を有する。
【0062】
基材は、例えば、図2に示されるダイアタッチシート100における、保護シート3としてもよく、図3に示されるダイアタッチシート110における、第2保護シート32としてもよい。基材の材質及び構成は、例えば、保護シート3の説明にて例示された材質及び構成であってもよいが、それらに限定されない。
【0063】
<4.半導体装置の製造方法>
[4-1.半導体装置の製造方法の例1]
本実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一例について、図4図8を参照しながら説明する。この一例にかかる半導体装置の製造方法では、ダイアタッチフィルム10は、図2に示される形態を有するダイアタッチシート100が用いられるが、これに限定されない。なお、後述する各工程のうち、接着工程以外の工程は、不要であれば行わなくてもよい。不要な工程の例については後述する。
【0064】
(4-1-1.ラミネート工程)
図4は、本実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一例におけるラミネート工程を説明する模式図である。ラミネート工程では、半導体ウェハー200をダイアタッチフィルム10(ダイアタッチシート100)の第1接着剤層1に貼り付ける(ラミネートする)。半導体ウェハー200は予め厚み方向に溝を形成するように、ハーフカットされていてもよい。ラミネートする際には、ロール等により加圧してもよく、ダイアタッチフィルム10及び半導体ウェハー200のいずれかまたは両方を加熱してもよい。
【0065】
ラミネートにおいて、加熱を行う場合、ダイアタッチフィルム10の温度は50℃以上とすることが好ましく、60℃以上とすることがより好ましく、70℃以上とすることがさらに好ましい。ダイアタッチフィルム10の第1接着剤層1と、半導体ウェハー200との間でより良好な密着性が得られるためである。ラミネートにおいて、加熱を行う場合、ダイアタッチフィルム10の温度は、120℃以下とすることが好ましく、100℃以下とすることがより好ましく、90℃以下とすることがさらに好ましい。ラミネート中、第1接着剤層1及び第2接着剤層2の流動を抑制し、ダイアタッチフィルム10の厚さの変化を引き起こすことを抑制できるためである。
【0066】
(4-1-2.ダイシング工程)
図5は、本実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一例におけるダイシング工程を説明する模式図である。ダイシング工程では、ダイアタッチフィルム10が貼り付けられた半導体ウェハー200を所定の形状に切断(ダイシング)し、半導体チップ201を得る。ダイシング方法としては、例えば、回転刃を用いるブレードダイシング、レーザーによって切断する方法等が挙げられるが、これらに限定されない。この例において、ダイシング工程では、保護シート3は切断されない。そのため、以下のピックアップ工程において、半導体チップ201を取り出す際に、効率的にダイアタッチフィルム10から保護シート3から剥離させることができる。
【0067】
(4-1-3.ピックアップ工程)
図6は、本実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一例におけるピックアップ工程を説明する模式図である。ピックアップ工程では、半導体チップ201を、半導体チップ201にダイアタッチフィルム10が貼り付けられた状態で取り出す。この製造方法の例においては、ピックアップ工程において、半導体チップ201がラミネートされたダイアタッチフィルム10を保護シート3から剥離させる。この工程において、半導体チップ201を1つずつピックアップしてもよく、複数の半導体チップ201を同時にピックアップしてもよい。
【0068】
(4-1-4.接着工程)
図7は、本実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一例における接着工程を説明する模式図である。接着工程では、支持体300上に、ダイアタッチフィルム10を挟んで、半導体チップ201がセットされたワーク700において、ダイアタッチフィルム10を所定の接着温度まで加熱し、半導体チップ201と支持体300とを接着する。
【0069】
この例にかかる製造方法においては、半導体チップ201に貼り付けられたダイアタッチフィルム10が支持体300に接するように、ピックアップ工程において取り出された半導体チップ201を、支持体300上の所定の位置にセットし、これをワーク700とする。ワーク700における、ダイアタッチフィルム10を、所定の接着温度で加熱し、半導体チップ201と支持体300とを接着する。
【0070】
支持体300は、例えば、半導体チップ201が接着される面に電気回路301が形成された基板である。支持体300の平面視における形状は、特に限定されず、矩形等の多角形、円形、楕円形等が挙げられる。
【0071】
接着温度は、ダイアタッチフィルム10に接着機能を十分に発現させる温度である。第1接着剤層1及び第2接着剤層2のうち少なくとも一方に熱硬化性樹脂が含まれている場合、接着温度は、接着時間が長いほど低くすることができ、接着時間が短いほど高くする必要がある。また、接着の際に、半導体チップ201及び支持体300の間に圧力をかけてもよい。
【0072】
接着後、第1接着剤層1は第1接着層となり、第2接着剤層2は第2接着層となる。
【0073】
接着工程において、半導体チップ201を支持体300上にセットした後、半導体チップ201と支持体300とを接着させるまでの間、半導体チップ201が容易に動かないように、例えば第2接着剤層2に粘着性を付与して、ダイアタッチフィルム10と支持体300とを粘着力により固定してもよい。
【0074】
(4-1-5.配線工程)
図8は、本実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一例における配線工程を説明する模式図である。配線工程は、例えば、支持体300上に形成された電気回路301と半導体チップ201との間で電気的接続をさせるための配線302を形成させる。配線302の形成は、例えば、ワイヤボンディング等により行われる。
【0075】
すなわち、配線工程により、電気回路301が形成された支持体300と、支持体300の電気回路301が形成されている面上に形成された接着層と、接着層上に形成された半導体チップ201と、半導体チップ201と電気回路301との間で電気的接続をする配線302と、を備え、接着層は、半導体チップ201に接する第1接着層と、支持体300に接する第2接着層とを有する構成が得られる。図8に示されるこの構成を半導体装置800としてもよい。
【0076】
(4-1-6.その他の工程等)
半導体装置の製造方法の例は、以上で説明した工程に限定されない。例えば、ダイアタッチシート100の代わりに、図3に示されるダイアタッチシート110を用いる場合、ラミネート工程の前に、ダイアタッチシート110から保護シート31を剥離する工程を行なってもよい。
【0077】
また、例えば、ダイアタッチシート100の代わりに、保護シートを有さないダイアタッチフィルム10が用いられる場合、ラミネート工程と、ダイシング工程との間にダイシングテープを第1接着剤層1に貼り付ける工程を行ってもよい。
【0078】
また、例えば、所望の形状の半導体チップを入手できる場合、ダイシング工程を行わなくてもよい。また、所望の形状の半導体チップに保護シートを有さないダイアタッチフィルム10が予め貼り付けられている場合、ラミネート工程、ダイシング工程、及びピックアップ工程を行わなくてもよい。
【0079】
また、例えば、後述する支持体300と半導体チップ201との間の配線を有さない半導体装置として出荷する場合等においては、配線工程を行わなくてもよい。この場合、支持体300と、支持体300上に形成された接着層と、接着層上に形成された半導体チップ201と、を備え、接着層は、半導体チップ201に接する第1接着層と、支持体300に接する第2接着層と、を有する構成、すなわち図7に示される構成が半導体装置として得られる。
【0080】
[4-2.半導体装置の製造方法の例2]
図9は、本実施形態の他の例にかかる半導体装置の製造方法における接着工程を説明する模式図である。この構成において、以下、支持体300に近い方を下側、支持体300から遠い方を上側と称することもある。
【0081】
この例にかかる半導体装置の製造方法におけるワーク900において、支持体300上に複数の半導体チップ201(1)~201(n)(nは2以上の整数で、nが小さいほど支持体300に近い半導体チップで、以下同様である)が積層されている。支持体300と半導体チップ201(1)との間、及び隣接する半導体チップ201(k-1)、201(k)(kは整数かつ1≦k≦nで、kが小さいほど支持体300に近い半導体チップで、以下同様である。)の間にはダイアタッチフィルム10が挟まれている。この例にかかる半導体装置の製造方法では、ダイアタッチフィルム10を所定の接着温度まで加熱し、半導体チップ201と支持体300とを、及び隣接する半導体チップ201(k-1)、201(k)を接着する。
【0082】
図9における二点鎖線と実線とに囲まれた部分には、支持体300側にダイアタッチフィルム10、その上に半導体チップ201(k)を有する構成が1つまたは複数含まれている。図9に示される例では、支持体300上の電気回路は図示されていないが、図7及び図8の例と同様に支持体300上に電気回路が形成されていてもよい。また、図9に示される例では、nは4以上であるが、nは2でもよく、nは3でもよい。以下の説明において、半導体チップ201(1)~201(n)のうち、不特定の半導体チップを称する場合は、半導体チップ201とする。
【0083】
この例にかかる半導体装置の製造方法におけるダイアタッチフィルム10では、第1接着剤層1は支持体300から遠い方の半導体チップ201(k)に接着され、第2接着剤層2は支持体300(k=1の場合)または支持体300に近い方の半導体チップ201(k-1)(k≧2の場合)に接着される。
【0084】
この例にかかるワーク900においては、隣接する2つの半導体チップ201(k)、201(k-1)の間に挟まれたダイアタッチフィルム10の第2接着剤層2の表面の一部が半導体チップ201(k-1)と接している。
【0085】
例えば、図9の例では、積層されるn個の半導体チップ201(1)~201(n)が同形状で、支持体300の主表面に平行な所定の向きに一定量オフセットさせて、これらの半導体チップ201(1)~201(n)が積層される。積層の構成は、この例に限られず、隣接する半導体チップ間の少なくともいずれかのオフセットの向き及び距離のいずれかまたは両方が、他の隣接する半導体チップ間に対して異なる構成としてもよい。
【0086】
なお、この構成に限られず、ワーク900は、半導体チップ201(1)と支持体300との間に挟まれたダイアタッチフィルム10の第2接着剤層2の表面の一部が支持体300と接している構成であってもよい。また、例えば、ワークは、隣接する2つの半導体チップ201(k)、201(k-1)の間に挟まれたダイアタッチフィルム10の第1接着剤層1の表面の一部が半導体チップ201(k)と接している構成であってもよい。
【0087】
さらに、例えば、同形状の複数の半導体チップを揃えて、すなわち、上下の半導体チップの全面が互いに重なるように(すなわち、オフセットさせずに)積層してもよい。また、一部またはすべての半導体チップの形状が他の半導体チップの形状と異なっていてもよい。
【0088】
以下、この例にかかる製造方法の接着工程の一例について説明する。なお、接着工程以外の工程は、上記の例と同様であるため説明を省略する。また、ここでは、半導体チップ201(k)を第k半導体チップ201(k)と称することもある。
【0089】
まず、第1半導体チップ201(1)に貼り付けられたダイアタッチフィルム10が支持体300に接するように、ピックアップ工程で取り出された第1半導体チップ201(1)を、支持体300上の所定の位置にセットする。
【0090】
その後、k≧2においては、ピックアップ工程で取り出された第k半導体チップ201(k)を、ダイアタッチフィルム10が第1半導体チップ201(k-1)に接するように、第(k-1)半導体チップ201(k-1)上の所定の位置にセットしていき、ワーク900を作製する。
【0091】
その後、ワーク900において、ダイアタッチフィルム10を、所定の接着温度で加熱し、半導体チップ201と支持体300とを接着する。接着温度と接着時間との関係については上の例で説明したとおりである。接着後、第1接着剤層1は第1接着層となり、第2接着剤層2は第2接着層となる。
【0092】
なお、ワーク900の作製中に、すなわち、第n半導体チップ201(n)がセットされる前に、すでにセットされているダイアタッチフィルム10を1回または2回以上中間加熱してもよい。中間加熱の条件は、ワーク900の加熱と同様であってもよく、異なっていてもよい。
【0093】
また、半導体チップ201間の電気的接続、及び半導体チップ201と支持体300上の電気回路との間で電気的接続をさせるための配線を形成させてもよい。配線の形成は、例えば、ワイヤボンディング等により行われる。配線の形成は、接着工程中に行われてもよく、接着工程後に行われてもよい。
【0094】
この例にかかる製造方法により製造される半導体装置は、支持体300上に複数の半導体チップ201(1)~201(n)が積層され、支持体300と半導体チップ201(1)との間、及び隣接する半導体チップ201(k)、201(k-1)の間に接着層を有し、接着層は、支持体300から遠い方の半導体チップ201(k)に接する第1接着層と、支持体300(k=1の場合)または支持体300に近い方の半導体チップ201(k-1)(k≧2の場合)に接する第2接着層と、を備える。
【0095】
この半導体装置において、各半導体チップ201の形状、隣接する半導体チップ201(k)及び201(k-1)の位置関係(例えば、オフセットの向き及び距離)について、特に限定されず、例としては、上で説明したとおりである。
【0096】
<5.本実施形態の効果>
本実施形態にかかるダイアタッチフィルム10は、所定の接着温度まで加熱されることによって半導体チップ201を被接着物に接着する。本実施形態にかかるダイアタッチフィルム10は、半導体チップ201に接着される第1接着剤層1と、被接着物に接着される第2接着剤層2と、を備え、第2接着剤層2の接着温度における貯蔵弾性率が、第1接着剤層の接着温度における貯蔵弾性率よりも低い。
【0097】
ダイアタッチフィルム10を接着温度まで加熱する際に、ダイアタッチフィルム10に接する半導体チップ201及び被接着物も加熱され、熱変形する。しかし、本実施形態の構成によれば貯蔵弾性率の高い第1接着剤層1が半導体チップ201に接しているため、第1接着剤層1が半導体チップ201の変形を抑制する。また、この構成によれば、貯蔵弾性率の低い第2接着剤層2が被接着物に接しているため、半導体チップ201の熱変形及び被接着物の熱変形に合わせて柔らかい第2接着剤層2が変形し、半導体チップ201に応力がかかることを抑制する。
【0098】
以上のことから、本実施形態にかかるダイアタッチフィルム10によれば、半導体チップ201を被接着物に加熱によって接着する際に、半導体チップ201にかかる応力を低減しつつ半導体チップ201の変形を抑制することが可能である。
【0099】
また、本実施形態にかかる半導体装置の製造方法によれば、ダイアタッチフィルム10を用いることで、半導体チップ201を被接着物に加熱によって接着する際に、半導体チップ201にかかる応力を低減しつつ半導体チップ201の変形を抑制することが可能となる。
【0100】
さらに、支持体300上に複数の半導体チップ201が積層された半導体装置の製造においては、半導体チップ201にかかる応力及び熱変形がより蓄積されやすい。そのため、このような構成においては、本実施形態にかかるダイアタッチフィルム10及び半導体装置の製造方法の適用による効果がより大きくなる。
【0101】
例えば、隣接する2つの半導体チップの間に挟まれたダイアタッチフィルムの一部が半導体チップと接している、すなわち、一方の半導体チップの一部が他方の半導体チップと重なるワーク(例えば、図9に示されるワーク900)を用いる場合、次のような課題がある。ダイアタッチフィルムの、半導体チップに接する部分と接しない部分との境は、半導体チップを剥離させる向きの応力が集中しやすい。また、一方の半導体チップの、他方の半導体チップに重ならない部分は、他方の半導体チップの変形を抑制しにくい。
【0102】
この課題に対して、本実施形態にかかるダイアタッチフィルム10及び半導体装置の製造方法の適用(例えば、図9に示される構成)による効果はさらに大きくなる。貯蔵弾性率の低い第2接着剤層2が変形し、上記の境における応力の集中を抑制できるだけでなく、貯蔵弾性率の高い第1接着剤層1が、第1接着剤層1に接する半導体チップ201(k)の変形を抑制できるためである。
【符号の説明】
【0103】
10:ダイアタッチフィルム
1:第1接着剤層
2:第2接着剤層
3:保護シート
31:第1保護シート
32:第2保護シート
100、110:ダイアタッチシート
200:半導体ウェハー
201、201(1)、201(2)・・・201(n):半導体チップ
300:支持体
301:電気回路
302:配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9