(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154689
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】半導体スイッチ回路
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20241024BHJP
H03K 17/10 20060101ALI20241024BHJP
H01L 21/8232 20060101ALI20241024BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L27/04 C
H03K17/10
H01L27/06 F
H01L27/06 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068658
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 大介
【テーマコード(参考)】
5F038
5F048
5J055
【Fターム(参考)】
5F038AC05
5F038AC09
5F038CA02
5F038CD13
5F038DF02
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5F048BD10
5J055AX07
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5J055BX17
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5J055CX24
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5J055DX83
5J055EX02
5J055EY01
5J055EY10
5J055EY21
5J055EZ12
5J055GX01
5J055GX07
5J055GX08
(57)【要約】
【課題】高周波信号の電圧が入力するFET列の各FETそれぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にする容量をチップ面積の増加を招くことなく付加することができる半導体スイッチ回路を提供する。
【解決手段】3個のFETが直列に接続されるFET列の一端のFET1が伝送経路に接続され、高周波信号の電圧がFET列に入力される場合に、各FETのドレイン-ソース間電圧を均等にする容量C1、2が、FET1、2のドレイン電極とソース電極間に付加されている。ドレイン電極およびソース電極は、複数の金属層がコンタクト金属で接続される多層金属層で構成され、かつ櫛型形状に配置され、ドレイン電極およびソース電極で構成される容量の容量値は、多層金属層の少なくとも2層目より上層の金属層の一部の形状を、異なるものとすることによりそれぞれ異なるものとされている半導体スイッチ回路。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n(nは3以上の整数)個のFETが直列に接続されるFET列の一端のFETのドレイン電極またはソース電極が、第1端子および第2端子を備える高周波信号の伝送経路に接続され、
オフ状態の前記FET列の前記n個のFETに前記高周波信号の電圧が入力される場合に、前記n個のFETそれぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にする容量が、前記FET列を構成する一部のFETのドレイン電極とソース電極間にそれぞれ付加されている
半導体スイッチ回路であって、
前記n個のFETそれぞれの前記ドレイン電極および前記ソース電極は、複数の金属層がコンタクト金属で接続される多層金属層で構成され、かつ相互に対向する櫛型形状に配置され、
前記容量は、前記容量が付加されるFETの前記ドレイン電極および前記ソース電極で構成され、
前記容量の容量値は、前記容量が付加されるFETの前記多層金属層の少なくとも2層目より上層の前記金属層の一部の形状を、異なるものとすることによりそれぞれ異なるものとされている
半導体スイッチ回路。
【請求項2】
n(nは3以上の整数)個のFETが直列に接続されるFET列の両端のFETのドレイン電極またはソース電極が、第1端子または第2端子を備える高周波信号の伝送経路にそれぞれ接続され、
オフ状態の前記FET列の前記n個のFETに前記高周波信号の電圧が入力される場合に、前記n個のFETそれぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にする容量が、前記FET列を構成する一部のFETのドレイン電極とソース電極間にそれぞれ付加されている
半導体スイッチ回路であって、
前記n個のFETそれぞれの前記ドレイン電極および前記ソース電極は、複数の金属層がコンタクト金属で接続される多層金属層で構成され、かつ相互に対向する櫛型形状に配置され、
前記容量は、前記容量が付加されるFETの前記ドレイン電極および前記ソース電極で構成され、
前記容量の容量値は、前記容量が付加されるFETの前記多層金属層の少なくとも2層目より上層の前記金属層の一部の形状を、異なるものとすることによりそれぞれ異なるものとされている
半導体スイッチ回路。
【請求項3】
前記ドレイン電極および前記ソース電極の前記多層金属層の少なくとも2層目より上層の前記金属層の一部の形状は、前記容量のそれぞれの容量値に応じて、前記ドレイン電極と前記ソース電極の対向面積が各FET間で異なるような形状とされている、
請求項1または2いずれか記載の半導体スイッチ回路。
【請求項4】
前記FET列の前記高周波信号の電圧の入力側のFETの前記対向面積が最も広く、前記FET列の前記高周波信号の電圧の入力側のFETからの接続順に各FETにおける前記対向面積が狭くなる、
請求項3記載の半導体スイッチ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体スイッチ回路に関し、特に、高周波信号の伝送を切り替える半導体スイッチ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の通信端末には、高周波信号の送受信を切り替えるアンテナスイッチや、アンテナのインピーダンスを切り替えるアンテナチューニングスイッチと呼ばれるスイッチ回路が用いられている。このようなスイッチ回路としては、例えば、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)で構成される半導体スイッチ回路が知られている。
【0003】
この種の半導体スイッチ回路は、オフ状態の耐電力を向上させるため複数のFETを直列に接続する半導体スイッチ回路が用いられている。
図9は、一般的なSPST(Single Pole Single Throw)スイッチとしての半導体スイッチ回路の説明図である。
図9に示す例は、端子P1と端子P2間に高周波信号(RF信号)が伝送される伝送経路が配置され、この伝送経路に3個のFET1~3で構成されるFET列がシャント型に接続されている。
【0004】
図9に示す半導体スイッチ回路の場合、端子P3に印加されるFET1~3のゲート電圧を制御することで、端子P1と端子P2間の高周波信号の伝送が切り替えられる。具体的には、端子P3に制御電圧が印加されFET1~3が全てオフ状態のとき、端子P1と端子P2間に高周波信号が伝送され、端子P1と端子P2間が導通状態となる。また端子P3に制御電圧が印加されFET1~3が全てオン状態のとき、例えば端子P1から入力する高周波信号はグランドに流れ、端子P1と端子P2間が遮断状態となる。
【0005】
図9に示す半導体スイッチ回路では、FET1~3が全てオフ状態のとき、理論上、FET1のドレイン-ソース間にかかる電圧は高周波信号の電圧の1/3となる。しかしながら半導体基板に形成される半導体スイッチ回路においては、半導体基板表面に形成されるFETと半導体基板裏面等のグランドとの間に対地容量が形成され、この対地容量の影響により、FET列の各FETそれぞれのドレイン-ソース間電圧が均等とはならず、伝送経路側に接続されるFETほどドレイン-ソース間電圧が大きくなるという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するため、対地容量を補正する容量素子を接続し、FET列の各FETそれぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にすることが開示されている(特許文献1)。
図10は、対地容量の影響による問題を解決する一般的なSPSTスイッチとしての半導体スイッチ回路の説明図である。FET1および2と半導体基板裏面等のグランドとの間に、それぞれ対地容量Cgnd1および2が形成される場合、対地容量を補正するために容量素子C1および2が接続される。このように容量C1および2が接続されることで、FET列の各段のインピーダンスが均等となり、FET列の各FETそれぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように容量C1および2を接続することで、FET列の各段のインピーダンスを均等とし、FET列の各FETそれぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にすることができる。しかしながら、容量C1および2を接続するには半導体基板上に容量素子を配置する必要があるため、素子数の増加とともに、チップ面積の増加を招いてしまう。
【0009】
そこで、本発明は、高周波信号の電圧が入力するFET列の各FETそれぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にする容量をチップ面積の増加を招くことなく付加することができる半導体スイッチ回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体スイッチ回路の一実施形態は、n(nは3以上の整数)個のFETが直列に接続されるFET列の一端のFETのドレイン電極またはソース電極が、第1端子および第2端子を備える高周波信号の伝送経路に接続され、オフ状態の前記FET列の前記n個のFETに前記高周波信号の電圧が入力される場合に、前記n個のFETそれぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にする容量が、前記FET列を構成する一部のFETのドレイン電極とソース電極間にそれぞれ付加されている半導体スイッチ回路であって、前記n個のFETそれぞれの前記ドレイン電極および前記ソース電極は、複数の金属層がコンタクト金属で接続される多層金属層で構成され、かつ相互に対向する櫛型形状に配置され、前記容量は、前記容量が付加されるFETの前記ドレイン電極および前記ソース電極で構成され、前記容量の容量値は、前記容量が付加されるFETの前記多層金属層の少なくとも2層目より上層の前記金属層の一部の形状を、異なるものとすることによりそれぞれ異なるものとされている半導体スイッチ回路である。
【0011】
また別の本発明の半導体スイッチ回路の一実施形態は、n(nは3以上の整数)個のFETが直列に接続されるFET列の両端のFETのドレイン電極またはソース電極が、第1端子または第2端子を備える高周波信号の伝送経路にそれぞれ接続され、オフ状態の前記FET列の前記n個のFETに前記高周波信号の電圧が入力される場合に、前記n個のFETそれぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にする容量が、前記FET列を構成する一部のFETのドレイン電極とソース電極間にそれぞれ付加されている半導体スイッチ回路であって、前記n個のFETそれぞれの前記ドレイン電極および前記ソース電極は、複数の金属層がコンタクト金属で接続される多層金属層で構成され、かつ相互に対向する櫛型形状に配置され、前記容量は、前記容量が付加されるFETの前記ドレイン電極および前記ソース電極で構成され、前記容量の容量値は、前記容量が付加されるFETの前記多層金属層の少なくとも2層目より上層の前記金属層の一部の形状を、異なるものとすることによりそれぞれ異なるものとされている半導体スイッチ回路である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ドレイン電極およびソース電極が、多層金属層で構成され、かつ相互に対向する櫛型形状に配置され、多層金属層の少なくとも2層目より上層の金属層の一部の形状が変更されることで、FET毎にドレイン電極とソース電極によって対地容量を補正するために必要とされる容量値を有する容量が付加される構成とすることができる。このようにFETのドレイン電極およびソース電極により容量を構成することで、チップ面積の増加を招くことなく容量を設けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態であるSPSTスイッチとしての半導体スイッチ回路(実施形態1)を説明する図である。
【
図2】実施形態1の半導体スイッチ回路の平面模式図である。
【
図3】実施形態1の半導体スイッチ回路におけるFET1のドレイン電極およびソース電極の構成を説明する部分摸式図である。
【
図4】実施形態1の半導体スイッチ回路におけるFET1のドレイン電極およびソース電極の構成を説明する断面模式図である。
【
図5】本発明の別の一実施形態であるSPSTスイッチとしての半導体スイッチ回路(実施形態2)を説明する図である。
【
図6】実施形態2の半導体スイッチ回路の平面模式図である。
【
図7】本発明のまた別の一実施形態であるSPNTスイッチとしての半導体スイッチ回路(実施形態3)を説明する図である。
【
図8】実施形態3の半導体スイッチ回路の平面模式図である。
【
図9】一般的なSPSTスイッチとしての半導体スイッチ回路の説明図である。
【
図10】一般的なSPSTスイッチとしての半導体スイッチ回路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の半導体スイッチ回路について、図面を参照して説明するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではなく、以下に説明する部材、材料等は、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。また図面において同一符号は同等あるいは同一のものを示し、各構成要素間の大きさや位置関係などは便宜上のものであり、実態を厳密に反映したものではない。
【0015】
(実施形態1)
本発明の実施形態1について説明する。
図1は、本発明の実施形態1のSPSTスイッチとしての半導体スイッチ回路を説明する図である。本実施形態の半導体スイッチ回路は、端子P1と端子P2間に高周波信号(RF信号)の伝送経路が配置され、この伝送経路にn個のFET1~nで構成されるFET列が接続されている。ここでnは、3以上の整数である。
【0016】
図1に示す半導体スイッチ回路は、一般的なシャント型のSPSTスイッチ同様、端子P1と端子P2間の高周波信号の伝送が、端子P3に印加されるFET1~nのゲート電圧を制御することで切り替えられる。具体的には、端子P3に制御電圧を印加してFET1~nが全てオフ状態のとき、端子P1と端子P2間に高周波信号が伝送される。また端子P3に制御電圧を印加してFET1~nが全てオン状態のとき、端子P1から入力する高周波信号はグランドに流れ、端子P2に高周波信号は伝送されない。なお、
図1ではFETnの一つの端子がグランドに接続されているが、FET1~nをオン状態またはオフ状態に制御可能な電位に接続されていればこれに限定されるものではない。以下の説明においては、
図1に示すようにグランドに接続されている場合を例にとり説明する。
【0017】
図1に示すように半導体スイッチ回路の場合、半導体基板表面に形成されるFETと半導体基板裏面等のグランドとの間に対地容量(Cgnd1~n-1)が形成される。この対地容量の影響により、直列に接続されるオフ状態のn個のFETそれぞれにかかる電圧が均等とはならず、伝送経路側に接続するFETほどドレイン-ソース間電圧が大きくなる。そこで、対地容量を補正する容量C1~n-1を接続してn個のFETのドレイン-ソース間電圧を均等にする。
【0018】
本実施形態では、容量C1~n-1を半導体基板上に独立した容量素子として形成し接続するのではなく、FET1~n-1内に容量を形成し、容量を付加する構成とする。具体的には、FET1~n-1それぞれのドレイン電極およびソース電極により容量C1~n-1を形成する。なお、FET列を構成するFETの数が多くなる(nが大きくなる)と、高周波信号の電圧の入力側のFET1から離れて配置されるFETについては、容量の付加が必要なくなる場合がある。その場合は、容量を付加する必要があるFET列の一部のFETのみに所定の容量値を有する容量を付加すればよい。
【0019】
例えば一例として、FET列を構成するFETの数が11個の場合、高周波信号の電圧の入力側のFETから接続順が9番目までのFETには、その接続順に徐々に容量値が小さくなる容量を付加し、10番目および11番目のFETには容量を付加しない構成とすることができる。
【0020】
図2は、n=3の場合の本実施形態の半導体スイッチ回路の平面模式図である。なお、
図2では、
図1に示す端子P3と各FETのゲート電極間に接続される抵抗は図示を省略している。
図2に示すように、FET1~3はそれぞれ、ドレイン電極およびソース電極が櫛型形状に形成され、ドレイン電極とソース電極が相互に対向して配置されている。またドレイン電極およびソース電極は、後述するように多層金属層で構成されている。端子P1および端子P2間の伝送経路に接続するFET1の電極をドレイン電極とすると、FET1においてドレイン電極に対向する電極がソース電極となる。このFET1のソース電極は、FET2のドレイン電極と接続され、FET2においてドレイン電極に対向する電極がソース電極となる。このFET2のソース電極は、FET3のドレイン電極と接続され、FET3においてドレイン電極に対向する電極がソース電極となり、このソース電極はグランドに接続される。なお、例えば端子1から入力される高周波信号が負に振れている場合は、上記ドレイン電極がソース電極として、また上記ソース電極がドレイン電極として機能することになる。
【0021】
FET1~3のドレイン電極とソース電極の間に配置されるゲート電極は、図示しない抵抗を介して端子P3に接続され、端子P3から制御電圧が印加される。
【0022】
図3は、
図2に示す半導体スイッチ回路のFET1のドレイン電極およびソース電極の構成を説明する部分摸式図であり、多層金属層で構成されるドレイン電極およびソース電極の一部を示しており、層間絶縁膜は図示されていない。SOI構造の半導体基板1表面の半導体層にドレイン領域またはソース領域となる半導体領域2が形成されており、この半導体領域2間がチャネル領域となる。
図2に示す半導体スイッチ回路のFET2および3は、後述するように第2金属層M2とコンタクト金属4の配置のみが異なる構造となる。
【0023】
多層金属層は一例として、例えばアルミニウム等で第1金属層M1および第2金属層M2が構成され、例えばタングステン等でコンタクト金属3、4が構成される。半導体基板1表面の半導体層に形成される半導体領域2には、コンタクト金属3が接続され、このコンタクト金属3により上層の第1金属層M1が接続されている。さらにコンタクト金属4により第1金属層M1は上層の第2金属層M2に接続されている。ドレイン領域として機能する半導体領域2に接続する多層金属層がドレイン電極となり、ソース領域として機能する半導体領域2に接続する多層金属層がソース電極となる。以下の説明は5をドレイン電極、6をソース電極として説明する。7はゲート電極である。
【0024】
FET1~3のゲート幅方向のドレイン電極5およびソース電極6は、相互に対向する櫛型形状に配置されている。このドレイン電極5およびソース電極6は、第1金属層M1、第2金属層M2およびコンタクト金属3、4で構成されている。また第1金属層M1は、ゲート幅の長さとほぼ等しく形成され、第2金属層M2は、下層の第1金属層M1の長さより短く形成されている。
図2において第2金属層M2の長さは、FET1~3それぞれにおいて異なり、FET1よりFET2が短く形成され、FET2よりFET3が短く形成され、オフ状態のFET列のFET1~3に高周波信号の電圧が入力するとき高周波信号の電圧の入力側のFETからその接続順に短く形成されている。この第2金属層M2の長さの違いは、ドレイン電極5とソース電極6が対向する長さの違いとなる。この長さは、FET1が最も長く、FET1よりFET2が短くなる。FET3は、ドレイン電極5とソース電極6は対向しない構成とされている。FET1~3の第2金属層M2は通常同時に形成され、同じ厚さに形成されるため、第2金属層M2の長さの違いは、ドレイン電極5とソース電極6の対向面積の違いともなり、FET列に高周波信号の電圧が入力するときに高周波信号の電圧の入力側のFETからその接続順に対向面積が狭くなり、また対向しない構成とされている。
【0025】
図4は、
図3に示す半導体スイッチ回路のドレイン電極5およびソース電極6の構成を説明する断面模式図であり、FET1のドレイン電極5およびソース電極6が対向している部分を通り、ゲート幅方向に直交する断面を示している。またFET1は、MOS型FETで構成される例を示している。半導体基板1表面の半導体領域2に接続するようにコンタクト金属3が形成され、このコンタクト金属3により上層の第1金属層M1に接続され、さらにコンタクト金属4により上層の第2金属層M2に接続されている。
【0026】
このような断面構造の半導体スイッチ回路では、対向して配置されるドレイン電極5とソース電極6間に寄生容量が発生し、FET1内に容量が形成される。ここでFET1~3の第1金属層M1およびコンタクト金属3の形状は等しく、第1金属層M1およびコンタクト金属3が相互に対向配置されていることにより形成される容量の容量値は、FET1~3において同一となる。一方、第2金属層M2およびコンタクト金属4は、FET1~3において形状が異なることから、第2金属層M2およびコンタクト金属4が相互に対向配置されることにより形成される容量の容量値はFET1~3においてそれぞれ異なることになる。
【0027】
図2に示すように本実施形態の半導体スイッチ回路では、各FETにおいて第2金属層M2等からなるドレイン電極とソース電極が対向して配置される領域が5か所存在する。したがってFET1においては、
図4に示す容量C1aの5個分の容量値を有する容量がドレイン電極5とソース電極6により形成される。同様にFET2においても容量が形成されるが、第2金属層M2の長さはFET1の第2金属層M2の長さより短い。そのため、ドレイン電極とソース電極により形成される容量の容量値はFET1に形成される容量の容量値より小さくなる。またFET3においては、第2金属層M2の長さはさらに短くなり、対向配置される領域はない。そのためドレイン電極とソース電極により形成される容量の容量値は、FET2に形成される容量の容量値より小さくなる。
【0028】
このように第2金属層M2およびコンタクト金属4の形状が異なるドレイン電極およびソース電極により容量値の異なる容量を形成することで、その容量値の差分が対地容量を補正する容量となり、
図2に示す容量C1およびC2が接続されることと等価となる。このように所定の容量値を有する容量がFET1~3それぞれのドレイン電極5およびソース電極6間に付加される構成とすることで、オフ状態のFET1~3に高周波信号の電圧が入力される場合に、FET1~3それぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にすることができる。なお、nが3以上の場合も同様に、第2金属層M2およびコンタクト金属4の形状が異なるドレイン電極およびソース電極により容量値の異なる容量を形成することができ、容量を付加する必要があるFET列の一部のFETのみに対地容量を補正する容量を付加する構成とすることで、FET列のFETそれぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にすることができる。
【0029】
対地容量を補正する所定の容量値となるようにドレイン電極およびソース電極の形状を変更する場合、ドレイン電極およびソース電極の電極抵抗が増加することは好ましくない。そのため、ドレイン電極およびソース電極を複数の金属層をコンタクト金属で接続する多層金属層で構成し、第1金属層M1をドレイン領域およびソース領域全体に接続するように形成し、それより上層の金属層の形状を変更することで十分低い電極抵抗とするのが好ましい。多層金属層を構成する金属層は、3層以上とすることもできる。例えば3層の金属層とした場合、3層目の金属層を形状の異なるドレイン電極およびソース電極とすることができ、2層の金属層でドレイン電極およびソース電極を構成する場合と比較して電極抵抗を小さくすることができる。また、3層の金属層の2層目および3層目の金属層を形状の異なるドレイン電極およびソース電極とすることもでき、2層の金属層でドレイン電極およびソース電極を構成する場合と比較して電極抵抗を小さくでき、かつドレイン電極とソース電極の対向面積を大きくすることができ、対地容量を補正する容量値の幅を拡げることも可能となる。なお、対地容量を補正する容量値の幅を拡げるためには、例えば
図2に示すFET3のドレイン電極およびソース電極で構成される容量の容量値を下げることが望ましいが、ドレイン電極およびソース電極の電極抵抗を十分に低くするため、
図2に示すようにFET3の第2金属層M2をゲート幅方向の半分程度の長さまで形成している。これは、ドレイン電極およびソース電極間の主な電流経路となる領域の電極抵抗を低くするための構成である。
【0030】
図4では、半導体領域2がコンタクト金属3と直接接続する構造について説明したが、半導体領域2の表面にコンタクト抵抗を低減する別の金属層を配置してもよい。この別の金属層は、通常、FET1~3に同時に形成されるため、この別の金属層により寄生容量が生じたとしてもその容量値は同一となり、FET1~3それぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にするための容量は、上記説明した通り、第2金属層M2およびコンタクト金属4の形状が異なるドレイン電極およびソース電極により形成されることとなる。
【0031】
以上説明したように本実施形態の半導体スイッチ回路は、FETのドレイン電極およびソース電極により対地容量を補正する容量値を有する容量が形成されるため、半導体基板上に独立した容量素子を形成する必要はなく、チップ面積の増加を招くことはない。容量は、多層金属層を構成する金属層の形状を変更するのみで容易に形成することができ、特別な製造工程を追加する必要もないので簡便に形成することができ好ましい。
【0032】
(実施形態2)
次に本発明の実施形態2について説明する。
図5は、本発明の実施形態2のSPSTスイッチとしての半導体スイッチ回路を説明する図である。本実施形態の半導体スイッチ回路は、端子P11または端子P12を有する高周波信号(RF信号)の伝送経路間にn個のFET11~1nで構成されるFET列が接続されている。ここでnは、3以上の整数である。
【0033】
図5に示す半導体スイッチ回路は、一般的なSPSTスイッチ同様、入力端子としての端子P11と出力端子としての端子P12間の高周波信号の伝送が、端子P13に印加されるFET11~1nのゲート電圧を制御することにより切り替えられる。具体的には、端子P13に制御電圧を印加してFET11~1nが全てオン状態のとき、端子P11と端子P12間に高周波信号が伝送される。また端子P13に制御電圧を印加してFET11~1nが全てオフ状態のとき、端子P11と端子P12間の高周波信号の伝送が遮断される。
【0034】
本実施形態の半導体スイッチ回路においても、上記実施形態1同様、半導体基板表面に形成されるFETと半導体基板裏面等のグランドとの間に対地容量(Cgnd11~1n-1)が形成される。この対地容量の影響により、直列に接続されるオフ状態のn個のFETそれぞれにかかる電圧が均等とはならず、入力端子(端子P11)側に接続するFETほどドレイン-ソース間電圧が大きくなる。そこで、対地容量を補正する容量C11~1n-1を接続してn個のFETのドレイン-ソース間電圧を均等にする。
【0035】
本実施形態においても、容量C11~1n-1を半導体基板上に独立した容量素子として形成し接続するのではなく、FET11~1n-1内に容量を形成し、容量を付加する構成とする。具体的には、FET11~1n-1それぞれのドレイン電極およびソース電極により容量C11~1n-1を形成する。なお、FET列を構成するFETの数が多くなる(nが大きくなる)と、高周波信号の電圧の入力側のFET11から離れて配置されるFETについては、容量の付加が必要なくなる場合がある。その場合は、容量を付加する必要があるFET列の一部のFETのみに所定の容量値を有する容量を付加すればよい。
【0036】
図6は、n=3の場合の本実施形態の半導体スイッチ回路の平面模式図である。なお、
図6では、
図5に示す端子P13と各FETのゲート電極間に接続される抵抗は図示を省略している。
図6に示すように、FET11~13はそれぞれ、ドレイン電極およびソース電極が櫛型形状に形成され、ドレイン電極とソース電極が相互に対向して配置されている。また、ドレイン電極およびソース電極は、上記実施形態1において
図3および4で説明したドレイン電極およびソース電極同様、多層金属層で構成されている。上記実施形態1の半導体スイッチ回路と比較して、本実施形態の半導体スイッチ回路は伝送経路の配置が相違している。
【0037】
図6に示すように本実施形態の半導体スイッチ回路も、FET11~13のゲート幅方向のドレイン電極およびソース電極が櫛型形状に配置されている。このドレイン電極およびソース電極は、第1金属層M1、第2金属層M2およびコンタクト金属3、4で構成されている。また第1金属層M1は、ゲート幅の長さとほぼ等しく形成され、第2金属層M2は、下層の第1金属層M1の長さより短く形成されている。第2金属層M2の長さは、FET11~13それぞれにおいて異なり、FET11よりFET12が短く形成され、FET12よりFET13が短く形成され、オフ状態のFET列のFET11~13に高周波信号の電圧が入力するとき高周波信号の電圧の入力側のFETからその接続順に短く形成されている。この第2金属層M2の長さの違いは、ドレイン電極とソース電極が対向する長さの違いとなる。この長さは、FET11が最も長く、FET11よりFET12が短くなる。FET13は、ドレイン電極とソース電極が対向しない構成とされている。FET11~13の第2金属層M2は通常同時に形成され、同じ厚さに形成されるため、第2金属層M2の長さの違いは、ドレイン電極とソース電極の対向面積の違いともなり、FET列に高周波信号の電圧が入力するときに高周波信号の電圧の入力側のFETからその接続順に対向面積が狭くなり、また対向しない構成とされている。
【0038】
そこで本実施形態においても、第2金属層M2およびこの第2金属層M2と下層の第1金属層M1とを接続するコンタクト金属の形状が異なるドレイン電極およびソース電極により容量値の異なる容量を形成することで、その容量値の差分が対地容量を補正する容量となり、
図6に示す容量C11および12が接続されることと等価となる。このように所定の容量値を有する容量がFET11~13それぞれのドレイン電極およびソース電極間に付加される構成とすることで、オフ状態のFET11~13に高周波信号の電圧が入力される場合に、FET11~13それぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にすることができる。なお、nが3以上の場合も同様に、第2金属層M2およびコンタクト金属4の形状が異なるドレイン電極およびソース電極により容量値の異なる容量を形成することができ、容量を付加する必要があるFET列の一部のFETのみに対地容量を補正する容量を付加する構成とすることで、FET列のFETそれぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にすることができる。
【0039】
また、対地容量を補正する所定の容量値となるようにドレイン電極およびソース電極の形状を変更する場合、ドレイン電極およびソース電極の電極抵抗が増加することは好ましくない。そのため、ドレイン電極およびソース電極を複数の金属層をコンタクト金属で接続する多層金属層で構成し、第1金属層M1をドレイン領域およびソース領域全体に接続するように形成し、それより上層の金属層の形状を変更することで十分低い電極抵抗となる構成とするのが好ましい。多層金属層を構成する金属層は、3層以上とすることもできる。例えば3層の金属層とした場合、3層目の金属層を形状の異なるドレイン電極およびソース電極とすることができ、2層の金属層でドレイン電極およびソース電極を構成する場合と比較して電極抵抗を小さくすることができる。また、3層の金属層の2層目および3層目の金属層を形状の異なるドレイン電極およびソース電極とすることもでき、2層の金属層でドレイン電極およびソース電極を補正する場合と比較して電極抵抗を小さくでき、かつドレイン電極とソース電極の対向面積を大きくすることができ、対地容量を補正する容量値の幅を拡げることも可能となる。ドレイン電極およびソース電極の電極抵抗を十分に低くするため、
図6に示すようにFET13の第2金属層M2をゲート幅方向の半分程度の長さまで形成し、ドレイン電極およびソース電極間の主な電流経路となる領域の電極抵抗を低くする構成とするのが好ましい。コンタクト抵抗低減等のため、半導体領域とコンタクト金属との間に、別の金属層が配置されてもよい。
【0040】
以上説明したように本実施形態の半導体スイッチ回路も、FETのドレイン電極およびソース電極により対地容量を補正する容量値を有する容量が形成されるため、半導体基板上に容量素子を形成する必要はなく、チップ面積の増加を招くことはない。容量は、多層金属層を構成する金属層の形状を変更するのみで容易に形成することができ、特別な製造工程を追加する必要もないので簡便に形成することができ好ましい。
【0041】
(実施形態3)
次に本発明の実施形態3について説明する。本発明は、実施形態2で説明したSPSTスイッチとしての半導体スイッチ回路を組み合わせて、個別端子が複数のSPNT(Single Pole N Throw)スイッチとしての半導体スイッチ回路を構成することもできる。
【0042】
図7は、本発明の実施形態3のSPNTスイッチとしての半導体スイッチ回路を説明する図である。本実施形態の半導体スイッチ回路は、共通端子としての端子P21と、N個の個別端子としての端子P22、24、・・・PXとを有し、端子P21と複数の端子P22、24、・・・およびPXのいずれかとの間の高周波信号(RF信号)の伝送が、端子P23、25、・・・およびPYに印加されるFET11~1n、FET21~2n、・・・およびFETN1~Nnのゲート電圧を制御することで切り替えられる。具体的には、端子P23、25、・・・PYのいずれかに制御電圧を印加してFET11~1n、FET21~2n、・・・FETN1~NnのいずれかのFET列がオン状態、それ以外のFET列が全てオフ状態のとき、オン状態のFET列を含む伝送経路に高周波信号が伝送される。なおSPNTスイッチの場合、高周波信号の入力端子は、端子P21に限らず、端子P22、24・・・およびPXのいずれかの場合もある。例えば一例として、FET11~1nがオン状態、FET21~2n、・・・およびFETN1~Nnが全てオフ状態のとき、端子P21と端子P22間に高周波信号が伝送される。ここで端子P21を入力端子、端子P22を出力端子とすると、オフ状態のFET21~2n、・・・およびFETN1~Nnで構成されるそれぞれのFET列に端子P21から入力した高周波信号の電圧が入力する。また端子P22を入力端子、端子P21を出力端子とすると、入力端子P22から入力しFET11~1nを伝送した高周波信号の電圧が、オフ状態のFET21~2n、・・・およびFETn1~Nnで構成されるそれぞれのFET列に入力する。このように高周波信号がどの端子から入力される場合であっても、高周波信号の電圧は、オフ状態のFET列の端子P21側のFETから入力される。
【0043】
本実施形態の半導体スイッチ回路においても、上記実施形態1および2同様、半導体基板表面に形成されるFETと半導体基板裏面等のグランドとの間に対地容量(Cgnd11~1n-1、Cgnd21~2n-1、・・・およびCgndN1~Nn-1)が形成される。この対地容量の影響により、各伝送経路の直列に接続されるオフ状態のn個のFETそれぞれにかかる電圧が均等とはならず、共通端子(端子P21)側に接続するFETほどドレイン-ソース間電圧が大きくなる。そこで、対地容量を補正する容量C11~1n-1、C21~2n-1、・・・およびCN1~Nn-1を接続して各伝送経路のn個のFETのドレイン-ソース間電圧を均等にする。
【0044】
本実施形態においても、容量C11~1n-1、C21~2n-1、・・・およびCN1~Nn-1を半導体基板上に独立した容量素子として形成し接続するのではなく、FET11~1n-1内、FET21~2n-1内、・・・およびFETN1~Nn-1内にそれぞれ容量を形成し、容量を付加する構成とする。具体的には、FET11~1n-1、FET21~2n-1、・・・およびFETN1~Nn-1それぞれのドレイン電極およびソース電極により容量C11~1n-1、C21~2n-1、・・・およびCN1~Nn-1を形成する。なお、各FET列を構成するFETの数が多くなる(nが大きくなる)と、高周波信号の電圧の入力側のFET11、FET21、・・・およびFETN1からそれぞれ離れて配置されるFETについては、容量の付加が必要なくなる場合がある。その場合は、容量を付加する必要があるFET列の一部のFETのみに所定の容量値を有する容量を付加すればよい。
【0045】
図8は、N=3、n=3の場合の本実施形態の半導体スイッチ回路の平面模式図である。なお、
図8では、
図7に示す端子P23、25、・・・PYと各FETのゲート電極間に接続される抵抗は図示を省略している。
図8に示すFET11~13、FET21~23およびFET31~33はそれぞれ、上記実施形態2で説明した
図6に示す半導体スイッチ回路のFET11~13と同一の形状とされており、ドレイン電極およびソース電極が櫛型形状に形成され、ドレイン電極とソース電極が相互に対向して配置されている。また、ドレイン電極およびソース電極は、上記実施形態1において
図3および4で説明したドレイン電極およびソース電極同様、多層金属層で構成されている。本実施形態の半導体スイッチ回路は、上記実施形態2で説明した半導体スイッチ回路を3個並列に配置し、共通端子としての端子P21と、個別端子としての端子P22、24および26を備え、端子P21および端子P22を有する高周波信号(RF信号)の伝送経路、端子21および端子24を有する高周波信号の伝送経路、ならびに端子21および端子P26を有する高周波信号の伝送経路が配置され、各伝送経路にそれぞれ3個のFET11~13、FET21~23およびFET31~33で構成されるFET列が接続されている。
【0046】
図8に示すように本実施形態の半導体スイッチ回路も、FET11~13、FET21~23およびFET31~33のゲート幅方向のドレイン電極およびソース電極が櫛型形状に配置されている。このドレイン電極およびソース電極は、第1金属層M1、第2金属層M2およびコンタクト金属3、4で構成されている。また第1金属層M1は、ゲート幅の長さとほぼ等しく形成され、第2金属層M2は、下層の第1金属層M1の長さより短く形成されている。第2金属層M2の長さは、FET11~13それぞれにおいて異なり、FET11よりFET12が短く形成され、FET12よりFET13が短く形成され、オフ状態のFET列のFET11~13に高周波信号の電圧が入力するとき高周波信号の電圧の入力側のFETからその接続順に短く形成されている。この第2金属層M2の長さの違いは、ドレイン電極とソース電極が対向する長さの違いとなる。この長さは、FET11が最も長く、FET11よりFET12が短くなる。FET13は、ドレイン電極とソース電極が対向しない構成とされている。FET11~13の第2金属層M2は通常同時に形成され、同じ厚さに形成されるため、第2金属層M2の長さの違いは、ドレイン電極とソース電極の対向面積の違いともなり、FET列に高周波信号の電圧が入力するときに高周波信号の電圧の入力側のFETからその接続順に対向面積が狭くなり、また対向しない構成とされている。FET21~23またはFET31~33で構成されるFET列においても同様である。
【0047】
そこで本実施形態においても、第2金属層M2およびこの第2金属層M2と下層の第1金属層M1とを接続するコンタクト金属の形状が異なるドレイン電極およびソース電極により容量値の異なる容量を形成することで、その容量値の差分が対地容量を補正する容量となり、
図8に示す容量C11および12、C21および22、ならびにC31および32が接続されることと等価となる。このように所定の容量値を有する容量が、FET11~13、FET21~23およびFET31~33それぞれのドレイン電極およびソース電極間に付加される構成とすることで、オフ状態のFET11~13、FET21~23およびFET31~32に高周波信号の電圧が入力される場合に、FET11~13、FET21~23およびFET31~32それぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にすることができる。なお、nが3以上の場合も同様に、第2金属層M2およびコンタクト金属4の形状が異なるドレイン電極およびソース電極により容量値の異なる容量を形成することができ、容量を付加する必要があるFET列の一部のFETのみに対地容量を補正する容量を付加する構成とすることで、FET列のFETそれぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にすることができる。
【0048】
また、対地容量を補正する所定の容量値となるようにドレイン電極およびソース電極の形状を変更する場合、ドレイン電極およびソース電極の電極抵抗が増加することは好ましくない。そのため、ドレイン電極およびソース電極を複数の金属層をコンタクト金属で接続する多層金属層で構成し、第1金属層M1をドレイン領域およびソース領域全体に接続するように形成し、それより上層の金属層の形状を変更することで十分低い電極抵抗となる構成とするのが好ましい。多層金属層を構成する金属層は、3層以上とすることもできる。例えば3層の金属層とした場合、3層目の金属層を形状の異なるドレイン電極およびソース電極とすることができ、2層の金属層でドレイン電極およびソース電極を構成する場合と比較して電極抵抗を小さくすることができる。また、3層の金属層の2層目と3層目の金属層を形状の異なるドレイン電極およびソース電極とすることもでき、2層の金属層でドレイン電極およびソース電極を補正する場合と比較して電極抵抗を小さくでき、かつドレイン電極とソース電極の対向面積を大きくすることができ、対地容量を補正する容量値の幅を拡げることも可能となる。ドレイン電極およびソース電極の電極抵抗を十分に低くするため、
図8に示すようにFET13、23および33の第2金属層M2をゲート幅方向の半分程度の長さまで形成し、ドレイン電極およびソース電極間の主な電流経路となる領域の電極抵抗を低くする構成とするのが好ましい。コンタクト抵抗低減等のため、半導体領域とコンタクト金属との間に、別の金属層が配置されてもよい。
【0049】
以上説明したように本実施形態の半導体スイッチ回路も、FETのドレイン電極およびソース電極により対地容量を補正する容量値を有する容量が形成されるため、半導体基板上に独立した容量素子を形成する必要はなく、チップ面積の増加を招くことはない。容量は、多層金属層を構成する金属層の形状を変更するのみで容易に形成することができ、特別な製造工程を追加する必要もないので簡便に形成することができ好ましい。
【0050】
以上の実施形態において、共通端子が1個の場合について説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、複数の共通端子を備える半導体スイッチ回路とすることもできる。
【0051】
また上記実施形態において、FET列を構成するFETにより形成される容量のみでは、ドレイン-ソース間電圧を均等にする大きな容量値の容量を形成できない場合、半導体基板上に容量素子を形成してもよい。このような場合であってもFET列を構成するFETのドレイン電極およびソース電極により容量を形成することで、半導体基板上に形成する容量素子の容量値は小さくすることができ、大幅なチップ面積の増加を招くことはない。
【0052】
(まとめ)
(1)本発明の半導体スイッチ回路の一実施形態は、n(nは3以上の整数)個のFETが直列に接続されるFET列の一端のFETのドレイン電極またはソース電極が、第1端子および第2端子を備える高周波信号の伝送経路に接続され、オフ状態の前記FET列の前記n個のFETに前記高周波信号の電圧が入力される場合に、前記n個のFETそれぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にする容量が、前記FET列を構成する一部のFETのドレイン電極とソース電極間にそれぞれ付加されている半導体スイッチ回路であって、前記n個のFETそれぞれの前記ドレイン電極および前記ソース電極は、複数の金属層がコンタクト金属で接続される多層金属層で構成され、かつ相互に対向する櫛型形状に配置され、前記容量は、前記容量が付加されるFETの前記ドレイン電極および前記ソース電極で構成され、前記容量の容量値は、前記容量が付加されるFETの前記多層金属層の少なくとも2層目より上層の前記金属層の一部の形状を、異なるものとすることによりそれぞれ異なるものとされている。
【0053】
(2)本発明の半導体スイッチ回路の一実施形態は、n(nは3以上の整数)個のFETが直列に接続されるFET列の両端のFETのドレイン電極またはソース電極が、第1端子または第2端子を備える高周波信号の伝送経路にそれぞれ接続され、オフ状態の前記FET列の前記n個のFETに前記高周波信号の電圧が入力される場合に、前記n個のFETそれぞれのドレイン-ソース間電圧を均等にする容量が、前記FET列を構成する一部のFETのドレイン電極とソース電極間にそれぞれ付加されている半導体スイッチ回路であって、前記n個のFETそれぞれの前記ドレイン電極および前記ソース電極は、複数の金属層がコンタクト金属で接続される多層金属層で構成され、かつ相互に対向する櫛型形状に配置され、前記容量は、前記容量が付加されるFETの前記ドレイン電極および前記ソース電極で構成され、前記容量の容量値は、前記容量が付加されるFETの前記多層金属層の少なくとも2層目より上層の前記金属層の一部の形状を、異なるものとすることによりそれぞれ異なるものとされている。
【0054】
(3)また別の実施形態によれば、上記(1)または(2)の半導体スイッチ回路において、前記ドレイン電極および前記ソース電極の前記多層金属層の少なくとも2層目より上層の前記金属層の一部の形状は、前記容量のそれぞれの容量値に応じて、前記ドレイン電極と前記ソース電極の対向面積が各FET間で異なるような形状とされている。
【0055】
(4)さらに別の実施形態によれば、上記(3)の半導体スイッチ回路において、前記FET列の前記高周波信号の電圧の入力側のFETの前記対向面積が最も広く、前記FET列の前記高周波信号の電圧の入力側のFETからの接続順に各FETにおける前記対向面積が狭くなる構成とされている。
【0056】
本発明の半導体スイッチ回路によれば、FET列を構成する一部のFETのドレイン電極とソース電極によって対地容量を補正するために必要とされる容量値を有する容量が付加される構成とされ、チップ面積の増加を招くことなく対地容量を補正する容量を設けることが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1 半導体基板
2 半導体領域
3、4 コンタクト金属
5 ドレイン電極
6 ソース電極
7 ゲート電極
M1 第1金属層
M2 第2金属層
P1~3、P11~13、P21~27、PX、PY 端子
C1、C2、C11、C12、C21、C22、C31、C32、Cn-1、C1n-1、C2n-1、CN1、CN2、CNn-1 容量
Cgnd1、Cgnd2、Cgnd11、Cgnd12、Cgnd21、Cgnd22、Cgndn-1、Cgndn-2、Cgnd1n-1、Cgnd1n-2、Cgnd2n-1、Cgnd2n-2、CgndN1、CgndN2、CgndNn-1、CgndNn-2 対地容量