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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154764
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】危険判定システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20241024BHJP
   G08B 21/18 20060101ALI20241024BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20241024BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G08B25/04 H
G08B21/18
G01M99/00 Z
H01M12/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068796
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拓海
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 宇史
【テーマコード(参考)】
2G024
5C086
5C087
5H032
【Fターム(参考)】
2G024AD34
2G024BA27
2G024CA04
2G024FA06
2G024FA14
5C086AA34
5C086AA45
5C086BA01
5C086CA24
5C086FA02
5C086FA12
5C086FA17
5C086FA18
5C087AA10
5C087AA12
5C087AA21
5C087AA32
5C087AA44
5C087DD02
5C087DD24
5C087EE12
5C087GG66
5C087GG84
5H032AA02
5H032HH10
(57)【要約】
【課題】歪みセンサを設置しやすく、又、メンテナンスも容易な危険判定システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】家屋の壁部の開口部に設置され、当該家屋の歪みを計測する歪みセンサと、前記歪みセンサの計測結果から前記家屋の倒壊の危険度を判定する判定部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家屋の壁部の開口部に設置され、当該家屋の歪みを計測する歪みセンサと、
前記歪みセンサの計測結果から前記家屋の倒壊の危険度を判定する判定部と、を備える危険判定システム。
【請求項2】
前記歪みセンサは、前記家屋のサッシ又は建具の歪みを計測する請求項1に記載の危険判定システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記歪みセンサの計測結果から前記家屋の柱の歪みを算出し、当該算出結果に基づいて、前記家屋の倒壊の危険度を判定する請求項2に記載の危険判定システム。
【請求項4】
前記家屋の窓部に付着した水を利用して発電する水電池を備え、
前記歪みセンサ及び前記判定部の少なくとも1つは、前記水電池が発電した電力を用いて動作する請求項1又は2に記載の危険判定システム。
【請求項5】
前記水電池が発電していることを検知した場合に、前記家屋に人が在室しているかを判定する在室判定部を備える請求項4に記載の危険判定システム。
【請求項6】
前記在室判定部は、前記水電池が発電した電力を用いて動作する請求項5に記載の危険判定システム。
【請求項7】
前記判定部は、前記歪み又は前記歪みの変化によって前記家屋の倒壊の危険度を判定する請求項1又は2に記載の危険判定システム。
【請求項8】
判定部は、前記歪みと家屋の状態との関係を機械学習した学習済みモデルに基づいて前記家屋の倒壊の危険度を判定する請求項1又は2に記載の危険判定システム。
【請求項9】
コンピュータに、
家屋の壁部の開口部に設置され、当該家屋の歪みを計測する歪みセンサの計測結果から前記家屋の倒壊の危険度を判定する処理を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、危険判定システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特に雪が降る冬期になると積雪により建物が倒壊するおそれがあることから、センサで家屋の屋根の積雪荷重を検出し、検出された積雪荷重を予め設定された値と比較して家屋倒壊の危険を判断する家屋倒壊予知方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-249474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、柱に歪みセンサを設置することは、柱が壁に隠れていることが多く、家屋を建てた後に設置することや、設置後のメンテナンスも困難である。
【0005】
そこで、本開示は、上記の点に鑑みてなされたものであり、柱に設置する場合に比べ、歪みセンサを設置しやすく、又、メンテナンスも容易な危険判定システム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の危険判定システムは、家屋の壁部の開口部に設置され、当該家屋の歪みを計測する歪みセンサと、前記歪みセンサの計測結果から前記家屋の倒壊の危険度を判定する判定部と、を備える。
【0007】
第1の態様の危険判定システムによれば、柱に設置する場合に比べ、歪みセンサを設置しやすく、又、メンテナンスも容易な危険判定システムを提供することができる。
【0008】
また、第2の態様の危険判定システムでは、前記歪みセンサは、前記家屋のサッシ又は建具の歪みを計測する。
【0009】
第2の態様の危険判定システムによれば、木質材料である柱に歪みセンサを設置する場合に比べ、信頼性のある歪みを計測することが可能となる。
【0010】
また、第3の態様の危険判定システムでは、前記判定部は、前記歪みセンサの計測結果から前記家屋の柱の歪みを算出し、当該算出結果に基づいて、前記家屋の倒壊の危険度を判定する。
【0011】
第3の態様の危険判定システムによれば、柱の歪みを当該柱から直接計測する場合に比べ、信頼性のある歪みを計測することが可能となる。
【0012】
また、第4の態様の危険判定システムでは、前記家屋の窓部に付着した水を利用して発電する水電池を備え、前記歪みセンサ及び前記判定部の少なくとも1つは、前記水電池が発電した電力を用いて動作する。
【0013】
第4の態様の危険判定システムによれば、電源がない場合であっても、歪みを計測することが可能となる。
【0014】
また、第5の態様の危険判定システムでは、前記水電池が発電していることを検知した場合に、前記家屋に人が在室しているかを判定する在室判定部を備える。
【0015】
第5の態様の危険判定システムによれば、居住者の安否確認もすることが可能となる。
【0016】
また、第6の態様の危険判定システムでは、前記在室判定部は、前記水電池が発電した電力を用いて動作する。
【0017】
第6の態様の危険判定システムによれば、電源がない場合であっても、居住者の安否確認をすることが可能となる。
【0018】
また、第7の態様の危険判定システムでは、前記判定部は、前記歪み又は前記歪みの変化によって前記家屋の倒壊の危険度を判定する。
【0019】
第7の態様の危険判定システムによれば、1回の計測結果又は複数回の計測結果によって、家屋の倒壊の危険度を判定することが可能となる。
【0020】
また、第8の態様の危険判定システムでは、判定部は、前記歪みと家屋の状態との関係を機械学習した学習済みモデルに基づいて前記家屋の倒壊の危険度を判定する。
【0021】
第8の態様の危険判定システムによれば、学習済みモデルを用いて家屋の倒壊の危険度を判定することが可能となる。
【0022】
また、第9の態様のプログラムは、コンピュータに、家屋の壁部の開口部に設置され、当該家屋の歪みを計測する歪みセンサの計測結果から前記家屋の倒壊の危険度を判定する処理を実行させる。
【0023】
第9の態様のプログラムによれば、柱に設置する場合に比べ、歪みセンサを設置しやすく、又、メンテナンスも容易な危険判定システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、柱に設置する場合に比べ、歪みセンサを設置しやすく、又、メンテナンスも容易な危険判定システム及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本開示の実施の形態に係る危険判定装置の設置の一例の概略構成図である。
図2】本開示の実施の形態に係る危険判定装置の設置の一例の概略構成図である。
図3】本開示の実施の形態に係る危険判定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】本開示の実施の形態に係る危険判定装置の機能構成の例を示すブロック図である。
図5】本開示の実施の形態に係る柱とサッシの負担面積を説明するための概略平面図である。
図6】本開示の実施の形態に係る危険判定装置による危険判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】本開示の第2実施形態に係る危険判定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図8】本開示の第2実施形態に係る危険判定装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、本明細書では、各説明箇所において、方向についての定義等が示されていない場合には、家屋10の屋根側を上、地面側を下という。また、同様に上下方向を縦、上下方向に直交する左右方向を横という。
【0027】
<第1実施形態>
図1及び図2を用いて、第1実施形態に係る危険判定装置100の設置の一例を説明する。本実施形態における危険判定装置100は、家屋10の歪みを計測し、計測結果から、家屋10が倒壊する危険性があるかを判定する装置である。本実施形態では、主として、木造家屋の屋根の上の積雪により当該家屋10が倒壊する危険性があるかを判定している。そして、家屋10が倒壊すると判定した場合は、ユーザに向けて報知する装置である。ここで、危険判定装置100は、危険判定システムの一例である。なお、本実施形態における「システム」とは、単一の装置によって構成されたものとして記載したが、複数の装置によって構成されたものであってもよい。例えば、後述する歪みセンサ200と判定部111とを別の装置に搭載してもよい。この場合には、歪みセンサ200を搭載する装置と判定部111を搭載する装置とがネットワークにより接続される。
【0028】
危険判定装置100は、図1及び図2に示すように、家屋10の壁部11の開口部12であって、特にサッシ30に設けられる。このようにすることで、危険判定装置100を備えたサッシ30を構成することが可能となり、新しいサッシ30のみを開口部12に設けるリフォーム工事をするだけで、危険判定装置100を備えた家屋10にすることが可能となる。また、危険判定装置100をサッシ30の枠部31の内側に設けることも可能であり、歪みセンサ200や配線などを隠すことで見栄えを損なうことなく設置することも可能である。また、危険判定装置100を後付けする場合にも、壁などに隠れた柱に設置する場合に比べ、設置がし易いという利点がある。
【0029】
サッシ30は、枠部31と窓部32を備える。枠部31は、家屋10の壁部11の開口部12に接し、窓部32を取付ける枠である。窓部32は、サッシ30の可動部分であって、窓ガラスを備える。本実施形態では、危険判定装置100は、サッシ30のうち、枠部31の縦枠31Aに配置される。なお、サッシ30の枠部31に配置される場合に限定されず、窓部32に配置してもよいし、他の場所、例えばサッシ30と隣接する柱20、壁部11、又は建具に配置してもよい。
【0030】
図3は、本実施の形態に係る危険判定装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0031】
図3に示すように、本実施の形態に係る危険判定装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、記憶部104、及び入出力I/F(InterFace)105を備えている。各構成は、バス106を介して相互に通信可能に接続されている。
【0032】
CPU101は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU101は、ROM102又は記憶部104からプログラムを読み出し、RAM103を作業領域としてプログラムを実行する。CPU101は、ROM102又は記憶部104に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM102又は記憶部104には、プログラムが格納されている。
【0033】
ROM102は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM103は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。記憶部104は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はフラッシュメモリ等により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0034】
ここで、本実施の形態における記憶部104に記憶される情報としては、例えば、歪みセンサ200の計測結果などがある。
【0035】
入出力I/F105は、歪みセンサ200と通信するためのインタフェースである。
【0036】
その他、危険判定装置100には、図示しないが、危険度をユーザに向けて報知するランプやスピーカなどの警報部を備えてもよい。
【0037】
歪みセンサ200は、家屋10の歪みを計測するが、特に、サッシ30又は建具の歪みを計測する。本実施形態におけるサッシ30又は建具は、樹脂又はアルミなどの材料で形成されることが望ましい。樹脂又はアルミなどの材料で形成されることで、木質材料である柱20に比べ、耐久性も高く、湿度の変化による収縮と膨張などもしないため、信頼性のある歪みを計測可能とするためである。
【0038】
本実施形態では、歪みセンサ200がサッシ30歪みを計測する場合を例にして説明する。また、本実施形態では、上述したように危険判定装置100をサッシ30の縦枠31Aに配置したが、危険判定装置100の歪みセンサ200のみをサッシ30の縦枠31Aに配置してもよい。
【0039】
次に、危険判定装置100が実現する機能構成について説明する。
図4は、危険判定装置100のCPU101の機能構成の例を示すブロック図である。
【0040】
図4に示すように、危険判定装置100は、機能構成として、受付部110、判定部111、及び報知部112を有する。各機能構成は、CPU101がROM102又は記憶部104に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0041】
受付部110は、歪みセンサ200から計測結果を受け付ける。
【0042】
判定部111は、受付部110が受け付けた歪みセンサ200の計測結果から家屋10の倒壊の危険度を判定する。具体的な危険度の判定については後述する。
【0043】
報知部112は、判定部111の判定結果を元に、危険度をユーザに向けて報知する警報部に出力する。具体的には、報知部112は、警報部がランプの場合は、当該ランプを点灯や点滅する信号を出力する。また、警報部がスピーカの場合は、当該スピーカを用いて予め定めた警報音を鳴らす信号を出力する。また、報知部112は、危険を知らせるメールを予め定められた者が所有する端末(例えば、スマートフォン)に送信してもよい。
【0044】
次に、判定部111による、危険度の判定について説明する。
【0045】
歪みセンサ200は、図2に示すように、胴差し22と間柱21を介してサッシ30にかかる圧縮力を計測する。圧縮力は、屋根の上の積雪が家屋10を上から圧縮する力である。また、圧縮力は屋根の上の雪重量Wに比例する(圧縮力∝雪重量W)。雪重量Wのうち、サッシ30が負担する雪重量Wは次の数式(1)で表される。
【0046】
【数1】
【0047】
ここで、Eは、サッシ30に使われている材料のヤング係数であり、Aは、サッシ30枠部31のうちの縦枠31Aの横方向の断面積であり、εは、歪みセンサ200により計測されるサッシ30の圧縮歪みである。
【0048】
上述の数式(1)から、サッシ30が負担する雪重量Wを算出する。
そして、柱20とサッシ30との負担面積から柱20の圧縮歪みεを算出する。負担面積については、図5を用いて説明する。図5は、家屋10のサッシ30と柱20の配置を説明するための概略平面図である。図5に示すように、柱20の負担面積Mは、他の柱20との中間地点同士を結ぶ線に囲まれた範囲の面積である。サッシ30の負担面積は、サッシ30の横方向の断面積である。なお、サッシ30の負担面積は、サッシ30の横方向の断面積に限定されず、まぐさ23の横方向の断面積であってもよい。そして、例えば、サッシ30と柱20の負担面積の比が、サッシ30「1」に対し、柱20「10」である場合は、柱20が負担する雪重量Wは、W=W×10となる。雪重量Wのうち、柱20が負担する雪重量Wは次の数式(2)で表される。
【0049】
【数2】
【0050】
ここで、Eは、柱20に使われている木材のヤング係数であり、Aは、柱20の横方向の断面積、εは、柱20の圧縮歪みである。
【0051】
出した雪重量Wを数式(2)に入れ、柱20の圧縮歪みεを算出する。そして、判定部111は、算出したεをしきい値と比較して、危険度を判定する。ここで、しきい値は、本実施形態では、柱20に使われている木材の降伏歪みεを元にした値である。なお、しきい値は、柱20に使われている木材の降伏歪みεを元にした値に限定されず、他の値であってもよい。
【0052】
具体的には、柱20の圧縮歪みεを予め定められたしきい値と比較し、当該しきい値を超えていた場合は、家屋10の倒壊の危険ありと判定する。
【0053】
また、しきい値を複数段階設定し、段階毎に危険度を判定してもよい。例えば、第1しきい値を超えた場合は、家屋10の倒壊の危険度を「注意」と判定し、第1しきい値よりも高い第2しきい値を超えた場合は、家屋10の倒壊の危険度を「警告」と判定し、第2しきい値よりも高い第3しきい値を超えた場合は、家屋10の倒壊の危険度を「避難」と判定してもよい。
【0054】
具体的には、「段階1:ε>(ε/3)」、「段階2:ε>(ε/2)」、「段階3:ε>ε」とする。段階1は、降伏歪みεの3分の1の値をしきい値とする段階であり、古い木造家屋の場合は、柱20の損傷の可能性がある段階である。段階2は、降伏歪みεの2分の1の値をしきい値とする段階であり、多雪地域で積雪期間が続く場合に柱20の損傷の可能性がある段階である。段階3は、降伏歪みεをしきい値とする段階であり、柱20の損傷の緊急性がある段階である。
【0055】
なお、築年数、床面積、屋根面積、建築工法、多雪地域、などによって、しきい値を変更してもよい。
【0056】
次に、図6を用いて危険判定装置100の作用について説明する。図6は、危険判定装置100による危険判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。CPU101がROM102又は記憶部104からプログラムを読み出して、展開して実行することにより、当該処理が行なわれる。ここで、図6に示した危険判定処理は、危険判定装置100が稼働している間、所定の周期で繰り返し実行される処理である。
【0057】
ステップS100において、危険判定装置100のCPU101(受付部110)により、歪みセンサから計測結果を受け付ける。そして、次のステップS102に進む。
【0058】
ステップS102において、危険判定装置100のCPU101(判定部111)により、ステップS100で受け付けた歪みセンサの計測結果から、家屋10の倒壊の危険度を判定する。家屋10の倒壊の危険度が、家屋10の倒壊の危険ありである場合は、次のステップS104に進む。一方、家屋10の倒壊の危険ありではない場合、すなわち、家屋10の倒壊の危険がない場合は、処理を終了する。
ステップS104において、危険判定装置100のCPU101(報知部112)により、報知が行われる。そして、処理を終了する。
【0059】
<第2実施形態>
次に、図7及び図8を用いて第2実施形態について説明する。
上述した第1実施形態では、柱20の圧縮歪みεを予め定められたしきい値と比較し、当該しきい値を超えていた場合は、家屋10の倒壊の危険ありと判定するが、第2実施形態では、学習済みモデルPを用いて、家屋10の倒壊の危険ありと判定する点で異なっている。なお、上述した第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、重複する部分については説明を簡略又は省略する。
【0060】
図7は、第2実施形態に係る危険判定装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0061】
図7に示すように、本実施の形態に係る危険判定装置100は、CPU101、ROM102、RAM103、記憶部104、及び入出力I/F105を備えている。各構成は、バス106を介して相互に通信可能に接続されている。そして、記憶部104に、教師データQと学習済みモデルPとが記憶される。
【0062】
教師データQは、歪みセンサ200の計測結果である歪みと家屋10の状態との関係についてのデータであり、具体的には、柱20の圧縮歪みεと家屋10が倒壊した場合の組み合わせである。
【0063】
学習済みモデルPは、歪みセンサ200の計測結果である歪みと家屋10の状態との関係を教師データQとして機械学習することで生成されるものである。
【0064】
次に、第2実施形態における危険判定装置100が実現する機能構成について説明する。
【0065】
図8は、第2実施形態における危険判定装置100のCPU101の機能構成の例を示すブロック図である。
【0066】
図8に示すように、危険判定装置100は、機能構成として、受付部110、学習部120、判定部111、及び報知部112を有する。各機能構成は、CPU101がROM102又は記憶部104に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0067】
学習部120は、教師データQを用いて機械学習することで学習済みモデルPを生成する処理を行う。学習済みモデルPの生成は、例えば、ニューラルネットワークを用いて行われる。なお、機械学習は、危険判定装置100が行う場合に限定されず、他の装置が機械学習を行い、得られた学習済みモデルPを危険判定装置100に記憶してもよい。
【0068】
判定部111は、歪みセンサ200の計測結果である歪みと家屋10の状態との関係を機械学習した学習済みモデルPに基づいて危険度を判定する。具体的には、柱20の圧縮歪みεを学習済みモデルPへの入力データとし、危険度を学習済みモデルPからの出力データとする。ここで、危険度は、家屋10の倒壊の危険性の確率又は危険度の段階である。
【0069】
なお、本開示は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0070】
例えば、上述した実施形態では、歪みセンサ200のサッシ30の圧縮歪みεについての計測結果から柱20の圧縮歪みεを算出し、当該柱20の圧縮歪みεから家屋10の倒壊の危険度を判定しているが、柱20の圧縮歪みεを算出することなく、サッシ30の圧縮歪みεについての計測結果から家屋10の倒壊の危険度を判定してもよい。
【0071】
具体的には、サッシ30の圧縮歪みεを予め定められたしきい値と比較し、当該しきい値を超えていた場合は、家屋10の倒壊の危険ありと判定する。また、しきい値を複数段階設定し、段階毎に危険度を判定してもよい。例えば、第1しきい値を超えた場合は、家屋10の倒壊の危険度を「注意」と判定し、第1しきい値よりも高い第2しきい値を超えた場合は、家屋10の倒壊の危険度を「警告」と判定し、第2しきい値よりも高い第3しきい値を超えた場合は、家屋10の倒壊の危険度を「避難」と判定してもよい。
【0072】
また、判定部111は、歪みセンサ200の予め定められた期間の計測結果の平均を元に、倒壊の危険度を判定してもよい。
【0073】
また、判定部111は、歪みの変化によって家屋10の倒壊の危険度を判定してもよい。すなわち、歪みセンサ200の1回の計測結果だけではなく、複数回の計測結果をもとに倒壊の危険度を判定してもよい。
【0074】
具体的には、歪みセンサ200の計測結果を記憶部104に記憶しておき、計測期間と計測結果との関係から、家屋10の倒壊の危険度を判定する。例えば、1年間などの予め定められた期間の間で、歪みの値が、予め定められた値分増加した場合は、家屋10の倒壊の危険があるとの判定をする。このように構成することで、家屋10の経年劣化による倒壊の可能性についても判定することが可能となる。1回の計測結果では、家屋10の倒壊の危険度がないような場合であっても、徐々に歪みの値が大きくなるような歪みの値の増加傾向から、家屋10の倒壊の危険度を判定することができる。
【0075】
また、上述した実施形態は、危険判定装置100を乾電池又は商用電力により動作しているが、これに限定されず、水電池300が発電した電力を用いて、危険判定装置100の一部又は全部が動作してもよい。
【0076】
具体的には、家屋10の窓部に付着した水を利用して発電する水電池300を備える。そして、歪みセンサ及び判定部の少なくとも1つは、水電池300が発電した電力を用いて動作するようにしてもよい。このように構成することで、例えば、商用電力を契約していない空き家であっても倒壊の危険を判定することができ、又、停電時であっても倒壊の危険を判定することができる。ここで、家屋10の窓部に付着した水は、主として、サッシ30の窓部32のガラスに発生した結露である。なお、家屋10の窓部に付着した水は、雨水、夜露、氷、霜が解けた水などであってもよい。また、水電池300に代えて又は水電池300に加えて、熱電発電や太陽光発電などで得られた電力を用いてもよい。
【0077】
また、危険判定装置100には、水電池300が発電していることを検知した場合に、家屋10に人が在室しているかを判定する在室判定部を備えてもよい。すなわち、水電池300は主として、サッシ30の窓部32のガラスに発生した結露であり、結露が発生するということは、当該家屋10において、居住者が活動しており、存命である可能性が高いということを意味している。そのため、結露により水電池300が発電している場合は、人が在室していると判定している。このように構成することで、離れて暮らす高齢者などの居住者の安否確認をすることが可能となる。また、在室判定部は、乾電池又は商用電力により動作しているが、これに限定されず、水電池300が発電した電力を用いて動作してもよい。
【0078】
上記実施形態では、プログラムがROM102又は記憶部104に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0079】
本開示の技術に関して、以下の付記を開示する。
<付記>
(付記1)
家屋の壁部の開口部に設置され、当該家屋の歪みを計測する歪みセンサと、
前記歪みセンサの計測結果から前記家屋の倒壊の危険度を判定する判定部と、を備える危険判定システム。
【0080】
(付記2)
前記歪みセンサは、前記家屋のサッシ又は建具の歪みを計測する付記1に記載の危険判定システム。
【0081】
(付記3)
前記判定部は、前記歪みセンサの計測結果から前記家屋の柱の歪みを算出し、当該算出結果に基づいて、前記家屋の倒壊の危険度を判定する付記2に記載の危険判定システム。
【0082】
(付記4)
前記家屋の窓部に付着した水を利用して発電する水電池を備え、
前記歪みセンサ及び前記判定部の少なくとも1つは、前記水電池が発電した電力を用いて動作する付記1又は付記2に記載の危険判定システム。
【0083】
(付記5)
前記水電池が発電していることを検知した場合に、前記家屋に人が在室しているかを判定する在室判定部を備える付記4に記載の危険判定システム。
【0084】
(付記6)
前記在室判定部は、前記水電池が発電した電力を用いて動作する付記5に記載の危険判定システム。
【0085】
(付記7)
前記判定部は、前記歪み又は前記歪みの変化によって前記家屋の倒壊の危険度を判定する付記1から付記6のいずれか1つに記載の危険判定システム。
【0086】
(付記8)
判定部は、前記歪みと家屋の状態との関係を機械学習した学習済みモデルに基づいて前記家屋の倒壊の危険度を判定する付記1から付記7のいずれか1つに記載の危険判定システム。
【0087】
(付記9)
コンピュータに、
家屋の壁部の開口部に設置され、当該家屋の歪みを計測する歪みセンサの計測結果から前記家屋の倒壊の危険度を判定する処理を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0088】
10 家屋
11 壁部
20 柱
30 サッシ
100 危険判定装置
200 歪みセンサ
300 水電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8