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  • 特開-感光性樹脂組成物、及び半導体装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154901
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20241024BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20241024BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/027 514
C08F290/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069117
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】岩田 真理子
【テーマコード(参考)】
2H225
4J127
【Fターム(参考)】
2H225AC31
2H225AC34
2H225AC63
2H225AC64
2H225AC66
2H225AD06
2H225AN10P
2H225AN29P
2H225AN60N
2H225AN84P
2H225CA12
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
2H225CD05
4J127AA03
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC131
4J127BD261
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127BF441
4J127BF44X
4J127BF531
4J127BF53X
4J127BG161
4J127BG16Z
4J127BG311
4J127BG31Z
4J127CB281
4J127DA23
4J127FA17
(57)【要約】
【課題】本開示は、高周波数において低い誘電正接を示す絶縁樹脂膜を形成できる感光性樹脂組成物に関する。
【解決手段】光重合性基を有するポリイミド前駆体と、複数の芳香族環を含む部分構造を有する化合物である添加剤と、光重合開始剤と、溶媒と、を含む感光性樹脂組成物。複数の芳香族環から選ばれる任意の1つの芳香族環が、複数の芳香族環から選ばれる1以上の他の芳香族環と、共有結合により直接結合している、又は縮合環を形成している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性基を有するポリイミド前駆体と、
複数の芳香族環を含む部分構造を有する化合物である添加剤と、
光重合開始剤と、
溶媒と、
を含み、
前記複数の芳香族環から選ばれる任意の1つの芳香族環が、前記複数の芳香族環から選ばれる1以上の他の芳香族環と、共有結合により直接結合している、又は縮合環を形成している、
感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記複数の芳香族環から選ばれる任意の1つの芳香族環が、前記複数の芳香族環から選ばれる1以上の他の芳香族環と共有結合により直接結合している、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記複数の芳香族環から選ばれる任意の1つの芳香族環が、前記複数の芳香族環から選ばれる1以上の他の芳香族環と縮合環を形成している、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記部分構造が3以上の芳香族環を含む、請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記部分構造が、下記式(10)又は(20)で表される芳香族化合物から1以上の水素原子を除いた基である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
【請求項6】
前記部分構造を有する前記化合物が、光重合性基を更に有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
当該感光性樹脂組成物が光重合性モノマ―を更に含み、
前記光重合性モノマ―が、前記ポリイミド前駆体及び前記添加剤とは異なる化合物である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
配線パターンを有する導電層、及び該導電層の間を絶縁する絶縁樹脂層を有する配線層を備え、
前記絶縁樹脂層が、請求項1に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性樹脂組成物、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ上に形成される再配線層を構成する絶縁樹脂層(絶縁材)が、感光性樹脂組成物によって形成されることがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-196482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、高周波数において低い誘電正接を示す絶縁樹脂膜を形成できる感光性樹脂組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は以下を含む。
[1]
光重合性基を有するポリイミド前駆体と、
複数の芳香族環を含む部分構造を有する化合物である添加剤と、
光重合開始剤と、
溶媒と、
を含み、
前記複数の芳香族環から選ばれる任意の1つの芳香族環が、前記複数の芳香族環から選ばれる1以上の他の芳香族環と、共有結合により直接結合している、又は縮合環を形成している、
感光性樹脂組成物。
[2]
前記複数の芳香族環から選ばれる任意の1つの芳香族環が、前記複数の芳香族環から選ばれる1以上の他の芳香族環と共有結合により直接結合している、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]
前記複数の芳香族環から選ばれる任意の1つの芳香族環が、前記複数の芳香族環から選ばれる1以上の他の芳香族環と縮合環を形成している、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]
前記部分構造が3以上の芳香族環を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5]
前記部分構造が、下記式(10)又は(20)で表される芳香族化合物から1以上の水素原子を除いた基である、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

[6]
前記部分構造を有する前記化合物が、光重合性基を更に有する、[1]~[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[7]
当該感光性樹脂組成物が光重合性モノマ―を更に含み、
前記光重合性モノマ―が、前記ポリイミド前駆体及び前記添加剤とは異なる化合物である、[1]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[8]
配線パターンを有する導電層、及び該導電層の間を絶縁する絶縁樹脂層を有する配線層を備え、
前記絶縁樹脂層が、[1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0006】
高周波数(例えば10GHz程度)において低い誘電正接を示す絶縁樹脂膜を形成できる感光性樹脂組成物が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】半導体装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は以下の例に限定されない。
【0009】
感光性樹脂組成物の一例は、光重合性基を有するポリイミド前駆体と、複数の芳香族環を含む部分構造を有する化合物である添加剤と、光重合開始剤と、溶媒とを含む。この感光性樹脂組成物によって感光性樹脂膜を形成することと、感光性樹脂膜の一部を、露光及び現像によって除去することによりパターンを有する絶縁樹脂膜を形成することとを含む方法により、半導体装置の配線層等を構成する絶縁樹脂膜を形成することができる。
【0010】
添加剤
添加剤は、複数の芳香族環を含む部分構造(以下「多環部分構造」ともいう。)を有する。この多環部分構造中の複数の芳香族環から選ばれる任意の1つの芳香族環が、複数の芳香族環から選ばれる1以上の他の芳香族環と共有結合により直接結合していてもよい。あるいは、添加剤の多環部分構造中の複数の芳香族環から選ばれる任意の1つの芳香族環が、複数の芳香族環から選ばれる1以上の他の芳香族環と縮合環を形成していてもよい。すなわち、多環部分構造に含まれる全ての芳香族環は、1以上の他の芳香族環と共有結合によって直接結合しているか、又は1以上の他の芳香族環と縮合環を形成している。添加剤の多環部分構造が、他の芳香族環と共有結合により直接結合した芳香族環、及び縮合環を形成している芳香族環の両方を含んでもよい。多環部分構造中の1つの芳香族環が、縮合環を形成するとともに、他の芳香族環と共有結合により直接結合していてもよい。
【0011】
添加剤の多環部分構造は、分子の回転運動等が制限された剛直な構造である。剛直な多環部分構造を含む添加剤がポリイミド中に導入されることによりポリイミド中の極性官能基の回転運動が制限され、それが高周波数における誘電正接の低減に寄与すると考えられる。
【0012】
添加剤の多環部分構造は、3以上の芳香族環を含んでもよい。3以上の芳香族環を含む多環部分構造を有する化合物は、より低い誘電正接を示す傾向がある。この傾向は、多環部分構造中の2以上の芳香族環が縮合環を形成している場合に特に顕著であり得る。多環部分構造を構成する芳香族環の数は、5以下、又は4以下であってもよい。多環部分構造を構成する芳香族環が芳香族炭化水素基であってもよい。
【0013】
他の芳香族環と共有結合により直接結合した芳香族環を含む多環部分構造の例は、下記式(10)で表される芳香族化合物(ビフェニレン)から1以上の水素原子を除いた基を含む。
【化2】
【0014】
他の芳香族環と縮合環を形成している芳香族環を含む多環部分構造の例は、下記式(20)又は(30)で表される芳香族化合物(アントラセン又はナフタレン)から1以上の水素原子を除いた基を含む。
【化3】
【0015】
添加剤としての化合物が、多環部分構造中の芳香族環に結合した置換基を有していてもよい。1つの置換基が2つの芳香族環に結合していてもよく、同一又は異なる芳香族環に結合した2つ置換基が互いに結合して環状基(例えば、芳香族環とアルカンジイル基とから形成された環状基)を形成していてもよい。多環部分構造中の芳香族環に結合した置換基は、例えば、置換されていてもよい芳香族基(例えば、フェニル基等の芳香族炭化水素基)、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルケニルオキシ基、置換されていてもよいアルキルカルボニルオキシ基、又は置換されていてもよいアルケニルカルボニルオキシ基であってもよい。アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基及びアルケニルオキシ基の炭素数は、1以上20以下であってもよく、15以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、又は5以下であってもよい。アルキルカルボニルオキシ基中のアルキル基、及びアルケニルカルボニルオキシ基中のアルケニル基の炭素数も、上記範囲内であってもよい。これらの基が更に置換されているとき、その置換基は、例えば、置換されていてもよいフェニル基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルケニルオキシ基、炭素数1~20のアルキルカルボニルオキシ基、又は炭素数1~20のアルケニルカルボニルオキシ基であってもよく、光重合性基であってもよい。
【0016】
添加剤としての化合物が、上記の多環部分構造と、光重合性基とを有していてもよい。光重合性基を有する化合物は、絶縁樹脂膜の高周波数における更なる低誘電正接化及び/又は低誘電率化に寄与し得る。光重合性基は、多環部分構造中の芳香族環と直接結合していてもよいし、多環部分構造中の芳香族環に結合した置換基に結合していてもよい。光重合性基はエチレン性不飽和基であってもよい。エチレン性不飽和基を含む置換基の例としては、メタクリロイル基、アクリロイル基、及びアリル基が挙げられる。添加剤としての化合物が有し得る光重合性基の数は、例えば1以上4以下であってもよく、1又は2であってもよい。
【0017】
多環部分構造中の芳香族環に結合した置換基は、非置換のアルキル基、非置換のアルコキシ基、メタクリロイルオキシ基若しくはアクリロイルオキシ基で置換されたアルキル基、メタクリロイルオキシ基若しくはアクリロイルオキシ基で置換されたアルコキシ基、置換されていてもよいフェニル基で置換されたアルキル基、置換されていてもよいフェニル基で置換されたアルカンジイル基、又はこれらの組合せであってもよい。
【0018】
式(10)で表される芳香族化合物から1以上の水素原子を除いた基を多環部分構造として含む化合物の例は、下記式(11)、(12)、(13)、又は(14)で表される化合物を含む。
【化4】
【0019】
式(20)で表される芳香族化合物から1以上の水素原子を除いた基を多環部分構造として含む化合物の例は、下記式(21)で表される化合物を含む。
【化5】
【0020】
式(30)で表される芳香族化合物から1以上の水素原子を除いた基を多環部分構造として含む化合物の例は、下記式(31)で表される化合物を含む。
【化6】
【0021】
感光性樹脂組成物における添加剤の含有量は、ポリイミド前駆体100質量部に対して、例えば1質量部以上50質量部以下であってもよい。添加剤の含有量が大きいと、低誘電正接化の効果が大きくなる傾向がある。添加剤の含有量が、ポリイミド前駆体100質量部に対して5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、又は20質量部以上であってもよく、45質量部以下、40質量部以下、35質量部以下、又は30質量部以下であってもよい。
【0022】
ポリイミド前駆体
ポリイミド前駆体は、光重合反応によって現像液に不溶又は難溶な架橋重合体を形成するとともに、加熱によりイミド化されてポリイミドを形成するポリマーである。ポリイミド前駆体は、例えば下記式(A)で表される複数の構成単位を含むポリアミドであることができる。
【0023】
【化7】
【0024】
式(A)中、Xは炭素数6~40の4価の有機基を示し、Yは炭素数6~40の2価の有機基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~40の1価の有機基を示す。ポリイミド前駆体に含まれる式(A)で表される複数の構成単位において、R、R、X及びYが同一でも異なってもよい。ポリイミド前駆体中の式(A)で表される構成単位のうち少なくとも一部において、R又はRのうち少なくとも一方が光重合性基を含む。ポリイミド前駆体に含まれる式(A)で表される構成単位中の全てのR及びRのうち、光重合性基を含む1価の有機基の割合は、50モル%以上100モル%以下、又は75モル%以上100モル%以下であってもよい。
【0025】
光重合性基を含むR又はRは、例えば下記式(a1)で表される1価の有機基であってもよい。
【化8】
【0026】
式(a1)中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示し、nは2~10の整数を示す。Rが水素原子又はメチル基であってもよい。R及びRが水素原子であってもよい。nは、感光特性の観点から2以上10以下の整数、又は2以上4以下の整数であってもよい。
【0027】
式(A)中のXで表される4価の有機基は、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい環状脂肪族基、又はこれらの組合せを含んでいてもよい。Xが、-COOR基又は-COOR基と結合した炭素原子と、アミド基と結合した炭素原子とを含む有機基であってもよく、その場合、-COOR基又は-COOR基と結合した炭素原子とアミド基と結合した炭素原子とが直接結合していてもよい。
【0028】
式(A)中のXが下記式(a2)、(a3)、(a4)又は(a5)で表される4価の基であってもよい。
【化9】
【0029】
式(a2)~(a5)中、R10はフッ素原子、炭素数1~10の炭化水素基、又は炭素数1~10のフッ素化炭化水素基を示し、m1は1又は2を示し、m2は1~3の整数を示し、m3は1~4の整数を示し、1つの4価の基中の複数のR10、m1及びm2は、それぞれ同一でも異なってもよい。式(a3)中、Zは直接結合、メタンジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル基、カルボニル基、スルホニル基、チオ基、カルボニルオキシ基、オキシ基、又はフルオレン-9,9-ジイル基を示し、kは0~2の整数を示す。1つの4価の基中の複数のZが同一でも異なってもよい。R10がフッ素原子、炭素数1~10のアルキル基(例えばメチル基)、又は炭素数1~10のフッ素化アルキル基(例えばトリフルオロメチル基)であってもよい。m1、m2及びm3が、それぞれ0であってもよい。
【0030】
式(A)中のYで表される2価の有機基は、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい環状脂肪族基、シロキサン基、又はこれらの組合せを含んでいてもよい。式(A)中のYが下記式(a6)、(a7)又は(a8)で表される2価の基であってもよい。
【化10】
【0031】
式(a6)~(a7)中、R11はフッ素原子、炭素数1~10の炭化水素基、又は炭素数1~10のフッ素化炭化水素基を示し、m1は1~4の整数を示し、m2は1~4の整数を示し、m3は1~4の整数を示し、1つの4価の基中の複数のR11、m1及びm2は、それぞれ同一でも異なってもよい。
【0032】
式(a7)中、Zは直接結合、メタンジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル基、カルボニル基、スルホニル基、チオ基、カルボニルオキシ基、オキシ基、フルオレン-9,9-ジイル基、又はアミド基を示し、kは0~2の整数を示す。1つの4価の基中の複数のZが同一でも異なってもよい。R11がフッ素原子、炭素数1~10のアルキル基(例えばメチル基)、又は炭素数1~10のフッ素化アルキル基(例えばトリフルオロメチル基)であってもよい。m1、m2及びm3が、それぞれ0であってもよい。
【0033】
式(a8)中、Zはオキシ基、又はアリーレン基(例えばフェニレン基)を示し、R12は炭素数1~10のアルキル基(例えばメチル基)を示し、p及びqはそれぞれ独立に1~10の整数を示す。1つの4価の基中の複数のR12が同一でも異なってもよい。p及びqが1~3の整数であってもよい。
【0034】
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、8000以上150000以下、9000以上50000以下、又は18000以上40000以下であってもよい。ここでの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される、標準ポリスチレンに換算された値を意味する。
【0035】
感光性樹脂組成物におけるポリイミド前駆体の含有量は、感光性樹脂組成物のうち溶媒以外の成分の合計質量を基準として、50質量%以上95質量%以下であってもよい。
【0036】
ポリイミド前駆体は、例えば、テトラカルボン酸二無水物と光重合性基を有するアルコール化合物を含むアルコールとの反応により、部分的にエステル化されたテトラカルボン酸を生成させることと、続いて、部分的にエステル化されたテトラカルボン酸とジアミンとを重縮合させることとを含む方法によって得ることができる。この方法によって得られるポリイミド前駆体は、通常、式(A)で表される構成単位を含み、Xがテトラカルボン酸に由来する残基であり、Yがジアミンに由来する残基である。
【0037】
光重合性モノマ―
感光性樹脂組成物が、光重合性モノマーを更に含んでもよい。この光重合性モノマーは、1以上の光重合性基を有する化合物であり、ポリイミド前駆体及び添加剤とは異なる化合物から選ばれる。光重合性モノマーの光重合性基は、例えばメタクリロイル基又はアクリロイル基であってもよい。光重合性モノマーは、アルコール化合物のアクリル酸エステル、アルコール化合物のメタクリル酸エステル、アクリルアミド及びその誘導体、並びにメタクリルアミド及びその誘導体から選ばれる1種以上であってもよい。アクリル酸エステルは、モノアクリレート又はポリアクリレート(例えばジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート)であることができる。メタクリル酸エステルは、モノメタクリレート又はポリメタクリレート(例えばジメタクリレート、トリメタクリレート、テトラメタクリレート)であることができる。
【0038】
アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを形成するアルコール化合物の例は、アルキルアルコール、アルカンポリオール、ポリエーテルポリオール、芳香族ポリオール並びにこれらアルコール化合物のエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物を含む。アルキルアルコールの例は、イソボルネオールを含む。アルカンポリオールの例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールを含む。ポリエーテルポリオールの例は、ポリエチレングリコール(例えばジエチレングリコール、テトラエチレングリコール)、及びポリプロピレングリコールを含む。芳香族ポリオールの例は、ビスフェノールA、及びトリヒドロキシベンゼンを含む。
【0039】
感光性樹脂組成物における光重合性モノマーの含有量は、ポリイミド前駆体100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下であってもよい。光重合性モノマーの含有量は、ポリイミド前駆体100質量部に対して、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、又は30質量部以上であってもよく、45質量部以下、又は40質量部以下であってもよい。
【0040】
光重合開始剤
光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であってもよく、その例として、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、及びフルオレノン等のベンゾフェノン誘導体;2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン誘導体;チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、及びジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;ベンジル、ベンジルジメチルケタール、及びベンジル-β-メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体;ベンゾイン、及びベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン誘導体;1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、及び1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム等のオキシム類;N-フェニルグリシン等のN-アリールグリシン類;ベンゾイルパークロライド等の過酸化物類;芳香族ビイミダゾール類;並びにチタノセン類が挙げられる。光重合開始剤が光酸発生剤であってもよく、その例としてはα-(n-オクタンスルフォニルオキシイミノ)-4-メトキシベンジルシアニドが挙げられる。
【0041】
光重合開始剤の含有量は、ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下、又は1質量部以上8質量部以下であってもよい。
【0042】
溶媒
溶媒は、ポリアミド前駆体を良好に溶解するものから選択することができ、極性有機溶媒であってもよい。溶媒の例としては、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、及び2-オクタノンが挙げられる。これらは単独又は2種以上の組合せで用いることができる。
【0043】
溶媒の含有量は、ポリイミド前駆体100質量部に対して、30質量部以上1500質量部以下、100質量部以上1000質量部以下、又は100質量部以上860質量部以下であってもよい。
【0044】
半導体装置
感光性樹脂組成物から形成された絶縁樹脂層を有する半導体装置は、例えば、半導体チップと、半導体チップ上に設けられた配線層とを有する。配線層は、配線パターンを有する導電層と、導電層の間を絶縁する絶縁樹脂層とを有する。絶縁樹脂層が、本開示に係る感光性樹脂組成物の硬化物であることができる。半導体装置が、配線層として再配線層を有するファンアウト半導体パッケージであってもよい。
【0045】
図1は、絶縁樹脂層を含む再配線層を有する半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。図1に示される半導体装置1は、第一面10a及びその反対側の第二面10bを有する半導体チップ10と、半導体チップ10の第一面10a上に設けられた再配線層13と、再配線層13上で半導体チップ10の周囲に設けられた封止材層11と、半導体チップ10の第二面10b及び封止材層11を覆う保護層12と、再配線層13の半導体チップ10とは反対側に設けられた半田ボール14とを備える。
【0046】
再配線層13は、半導体チップ10の第一面10a側の接続端子10cの端子ピッチを広げるための層であり、配線パターンを有する導電層13bと、導電層13bの間を絶縁する絶縁樹脂層13aとを有する。導電層13bが銅配線であってもよい。
【実施例0047】
本発明は以下の実施例に限定されない。
1.材料
(A)ポリイミド前駆体
式(A)で表される構成単位(Xが下記式(a3-1)で表される4価の基で、Yが下記式(a-7)で表される2価の基で、R又はRのうち少なくとも一方が2-ヒドロキシエチルメタクリロイルオキシ基である)を有するポリイミド前駆体(重量平均分子量:31500)を準備した。
【化11】

【化12】
【0048】
(B)添加剤
上述の式(11)、(12)、(13)、(14)、(21)又は(31)で表される化合物、及び、下記式(41)(r+sの合計が平均で10)表される化合物
【化13】
【0049】
(C)光重合開始剤
Irgacure OXE02(BASFジャパン株式会社)
(D)光重合性モノマ―
テトラエチレングリコールジメタクリレート(東京化成工業株式会社)
(E)溶媒
N-メチル―2―ピロリドン
【0050】
2.感光性樹脂組成物
表1に示される配合比(質量部)で各成分を混合し、混合物をフィルターでろ過して、#0~#8の液状の感光性樹脂組成物を得た。
【0051】
3.評価
各感光性樹脂組成物を、直径6インチのシリコンウエハ上にスピンコートで塗布した。塗膜を100℃で5分加熱することにより溶媒を除去して、感光性樹脂膜を形成した。感光性樹脂膜の全面を、露光機(ML-320FSAT、ミカサ株式会社)を用いて紫外線に露光することにより感光性樹脂層を硬化させた。露光量は600mJであった。紫外線露光により形成された絶縁樹脂膜を、シクロペンタノン及び洗浄液(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)との接触により処理し、続いて絶縁樹脂膜を窒素雰囲気下、200℃で2時間加熱することにより硬化させた。硬化後の絶縁樹脂膜の厚さを膜厚測定機(Dektak X-S、ブルカージャパン株式会社)によって測定した。絶縁樹脂膜に、カッターにより7×7cmの正方形の辺に沿う切り込みを入れた。シリコンウエハ及び絶縁樹脂膜を5%フッ素水に浸漬することにより、シリコンウエハから絶縁樹脂膜を剥離して、誘電特性測定用の絶縁樹脂膜の試験片を得た。試験片を100℃で10分の加熱により乾燥した。乾燥後の試験片の10GHzにおける誘電率Dk及び誘電正接Dfを、スプリッドシリンダ共振器を用いた空洞共振器摂動法により測定した。測定装置としてネットワークアナライザ(MS46122B、アンリツ株式会社)を用いた。
【0052】
【表1】
【0053】
測定結果が表1に示される。表中、#0の絶縁樹脂膜のDk及びDfを基準とするDk及びDfの増減率(%)も示されている。直接結合した複数の芳香族環、又は縮合芳香族環を含む多環部分構造を有する添加剤を含む#2~#7の感光性樹脂組成物は、添加剤を含まない#1と比較して、10GHzにおける誘電正接Dfを大きく低下させることが確認された。誘電正接Dfの低減効果は、2つの芳香族環がプロパン-2,2-ジイル基を介して結合された部分構造を有する添加剤を含む#8の感光性樹脂組成物と比較しても大きかった。
【符号の説明】
【0054】
1…半導体装置、10…半導体チップ、11…封止材層、12…保護層、13…再配線層(配線層)、13a…絶縁樹脂層、13b…導電層、14…半田ボール。
図1