(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154967
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20241024BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20241024BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B32B15/08 J
H05K3/28 C
H05K3/46 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069237
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】田村 礼
(72)【発明者】
【氏名】冨士川 亘
(72)【発明者】
【氏名】深澤 憲正
【テーマコード(参考)】
4F100
5E314
5E316
【Fターム(参考)】
4F100AB01D
4F100AB17
4F100AB24
4F100AB33
4F100AG00
4F100AK01E
4F100AK21B
4F100AK21E
4F100AK25B
4F100AK25E
4F100AK33B
4F100AK36B
4F100AK36E
4F100AK46E
4F100AK49E
4F100AK51B
4F100AK51E
4F100AK53
4F100AK53B
4F100AK53E
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00E
4F100AT00A
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00
4F100CB00E
4F100DC11
4F100DC11C
4F100DC11D
4F100DC11E
4F100DE01
4F100DG01
4F100DH01
4F100EC04
4F100EH46
4F100EH71D
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ65
4F100EJ65B
4F100EJ65C
4F100EJ65E
4F100GB43
4F100JJ03
4F100JK06
4F100JK14
4F100JK14A
4F100JK14B
4F100JK14C
4F100JK14D
4F100JK14E
4F100JL08
4F100JL11
4F100JL11E
4F100JL14
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
4F100YY00E
5E314AA01
5E314AA24
5E314AA42
5E314BB06
5E314BB10
5E314BB13
5E314CC01
5E314DD06
5E314EE01
5E314FF01
5E314FF16
5E314GG11
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC12
5E316CC13
5E316CC14
5E316CC16
5E316CC17
5E316CC32
5E316CC37
5E316CC38
5E316CC39
5E316DD03
5E316DD13
5E316DD17
5E316DD23
5E316DD24
5E316DD32
5E316DD33
5E316DD47
5E316DD48
5E316EE32
5E316EE33
5E316GG08
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH06
5E316HH11
(57)【要約】
【課題】平滑な基材と平滑な銅配線に対し、表面に薄膜の接着層を形成することで、多層化配線板の層間樹脂との高い密着を発現し、伝送特性に優れ、高い信頼性を持つ金属回路基板を提供することができる。
【解決手段】基材表面にプライマー及びめっき下地層及び金属めっき層順次形成した積層体を用いて、銅配線を形成した積層体の配線表面に接着層を設けた積層体が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。具体的には、支持体(A)の上に、有機樹脂成分を含有するプライマー層(B)、めっき下地層(C)及び金属めっき層(D)及び接着層(E)が順次積層されたことを特徴とする積層体、及び、それを用いたプリント配線板、パッケージ基板及びインターポーザを提供するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体(A)の少なくとも一面に、順にプライマー層(B)とパターニングされためっき下地層(C)と金属めっき層(D)が積層され、めっき下地層(C)と金属めっき層(D)の表面にのみ、厚みが0.001~1μmの接着層(E)が積層することを特徴とする積層体。
【請求項2】
支持体(A)の少なくとも一面に、順にプライマー層(B)とパターニングされためっき下地層(C)と金属めっき層(D)が積層され、さらにプライマー層(B)とパターニングされためっき下地層(C)と金属めっき層(D)の表面に、厚みが0.001~1μmの接着層(E)が積層することを特徴とする積層体。
【請求項3】
さらにプライマー層(B)と接着層(E)若しくは接着層(E)の上に、層間樹脂層(F)を有することを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項4】
前記支持体(A)のレーザー顕微鏡で測定したときの表面粗さ(最大高さSz)が、0.001~50μmであることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項5】
前記プライマー層(B)のレーザー顕微鏡で測定したときの表面粗さ(最大高さSz)が、0.001~30μmであることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項6】
前記めっき下地層(C)のレーザー顕微鏡で測定したときの表面粗さ(最大高さSz)が、0.001~30μmであることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項7】
前記金属めっき層(D)のレーザー顕微鏡で測定したときの表面粗さ(最大高さSz)が、0.001~20μmであることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項8】
前記接着層(E)のレーザー顕微鏡で測定したときの表面粗さ(最大高さSz)が、0.001~20μmであることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項9】
前記プライマー層(B)が少なくともウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンから選ばれることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項10】
前記プライマー層(B)が1層以上であることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項11】
前記パターニングされためっき下地層(C)が1層以上であることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項12】
前記接着層(E)が少なくともメルカプトシラン化合物、ビニルシラン化合物、ビニルフェニルシラン化合物、エポキシシラン化合物、アクリロキシシラン化合物、メタクリロキシシラン化合物、アミノシラン化合物、ウレイドシラン化合物、クロロプロピルシラン化合物、スルフィドシラン化合物、イソシアネートシラン化合物、トリアゾールシラン化合物、チアジアゾールシラン化合物、イソシアナトプロピルシラン化合物、スチリルシラン化合物、カルボキシシラン化合物、アルコキシシラン化合物、トリアジンシラン化合物、イミダゾールシラン化合物、アゾールシラン化合物、ピロールシラン化合物、ピラゾールシラン化合物、テトラゾールシラン化合物、インドールシラン化合物、イソインドールシラン化合物、インダゾールシラン化合物、ベンズイミダゾールシラン化合物、ベンゾトリアゾールシラン化合物、トリアジンチオール化合物、トリアジンアジド化合物、トリアジンアミノ化合物、トリアジンイソイアナート化合物、トリアジンウレタン化合物、トリアジンエステル化合物、トリアジンシラン化合物、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネートポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンを一種類以上から選ばれることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項13】
前記接着層(E)が少なくとも銅、スズ、銀、ビスマス、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、チタン、モリブデン、クロム、マンガン、ルテニウム、インジウム、亜鉛、タングステン、アルミニウム、ジルコニウムを1種類以上から選ばれることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項14】
支持体(A)の少なくとも一面に、前記プライマー層(B)を形成する工程1、
前記プライマー層(B)の表面に前記めっき下地層(C)を形成する工程2、
前記めっき下地層(C)の表面に金属めっき層(D)を形成する工程3、
前記金属めっき層(D)の表面に接着層(E)を形成する工程4
を有することを特徴とする請求項1または2記載の積層体の製造方法。
【請求項15】
仮支持体(G)にめっき下地層(C)とプライマー層(B)を順次形成した転写用積層体を製造する工程1、
前記転写用積層体の前記プライマー層(B)が形成された面を、支持体(A)の少なくとも一面に貼り合わせる工程2、
支持体(A)に貼り合わせた前記転写用積層体の前記仮支持体(G)を剥がし、支持体(A)の少なくとも一面に前記プライマー層(B)と前記めっき下地層(C)を形成する工程3、
前記めっき下地層(C)の表面に金属めっき層(D)を形成する工程4、
前記金属めっき層(D)の表面に接着層(E)を形成する工程5
を有することを特徴とする請求項1または2記載の積層体の製造方法。
【請求項16】
支持体(A)の少なくとも一面に、前記プライマー層(B)を形成する工程1、
前記プライマー層(B)の表面に前記めっき下地層(C)を形成する工程2、
前記めっき下地層(C)の表面に金属めっき層(D)を形成する工程3、
前記金属めっき層(D)の表面に接着層(E)を形成する工程4、
さらにプライマー層(B)と接着層(E)若しくは接着層(E)の上に、層間樹脂層(F)を形成する工程5、
を有することを特徴とする請求項3記載の積層体の製造方法。
【請求項17】
仮支持体(G)にめっき下地層(C)とプライマー層(B)を順次形成した転写用積層体を製造する工程1、
前記転写用積層体の前記プライマー層(B)が形成された面を、支持体(A)の少なくとも一面に貼り合わせる工程2、
支持体(A)に貼り合わせた前記転写用積層体の前記仮支持体(G)を剥がし、支持体(A)の少なくとも一面に前記プライマー層(B)と前記めっき下地層(C)を形成する工程3、
前記めっき下地層(C)の表面に金属めっき層(D)を形成する工程4、
前記金属めっき層(D)の表面に接着層(E)を形成する工程5、
さらにプライマー層(B)と接着層(E)若しくは接着層(E)の上に、層間樹脂層(F)を形成する工程6、
を有することを特徴とする請求項3記載の積層体の製造方法。
【請求項18】
請求項1または2記載の積層体を有することを特徴とするプリント配線板、パッケージ基板、インターポーザ、LED電極用配線基板、光電融合デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板、高周波伝送用プリント配線板、リジッドプリント配線板、パッケージ基板、インターポーザ、アンテナ、半導体チップ等の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、高速化により、プリント配線板の高密度化、高性能化が要求されており、この要求に応えるため、表面が平滑な銅配線が求められている。その中で、配線基板の銅配線を粗化処理せずに加工することで、微細回路を持つ小型電子回路基板や優れた高周波伝送特性を持つ高速電子回路基板が注目されている。
【0003】
従来の配線基板は、一般的に黒化処理と呼ばれる、配線表面の粗化処理を行っている。この黒化処理は小型用途及び高速伝送用途での多層プリント配線板において、内層用の回路基板に形成された銅回路と、外装用回路基板または銅箔を積層させるプリプレグやボンディングシート等の層間樹脂との間の接着性を担っている。しかしながら、配線表面を粗化することで、配線の導体損失低下に伴う高周波伝送特性の悪化や、微細回路を精度良く形成することが困難であった。
【0004】
現在、配線表面を微細にエッチングする低粗化処理を用いることで、配線の平滑性と密着の両立を図っているが、トレードオフの関係であるため、将来要求される電子回路基板の高速化や微細化には限界がある。
【0005】
そこで、従来の粗化処理によるアンカー効果を用いた物理的接着方法ではなく、配線に粗化処理を行うことなく、化学的接着方法を用いて平滑な配線表面とプリプレグやボンディングシート等の層間樹脂とを密着させる技術が開発されている。
【0006】
特許文献1では、配線に用いられる金属を粗化処理することなく、金属と樹脂等の絶縁材との間の密着性を維持することができる金属の表面処理液の組成物及び表面処理方法に関する発明が記載されている。
【0007】
特許文献2では、配線表面を粗化処理することなく、銅表面に、銅とスズと第三の金属の合金からなる樹脂接着層を配線表面に形成することで、銅と樹脂の接着力を向上することができる銅の表面処理液の組成物及び表面処理方法に関する発明が記載されている。
【0008】
特許文献3では、配線表面を粗化処理することなく、弾性体層と分子接着層の二層を形成することにより、金属と樹脂等の絶縁材との間の密着性を保持することだけでなく、積層体製造時に課題となる、応力集中の緩和、信頼性向上、耐熱性向上することができる接着層の組成物及び形成方法に関する発明が記載されている。
【0009】
前記の平滑な配線表面とプリプレグやボンディングシート等の層間樹脂とを密着させる技術は配線表面とプリレグやボンディングシート等との密着を担うが、平滑な基材とプリプレグやボンディングシート等の層間樹脂とを密着させることが難しい。加えて、銅配線表面のみを処理するため、基材と配線の界面を平滑に密着させるためのプロセスに適合することが出来ない欠点がある
【0010】
そこで、基材と銅配線の表面を平滑に形成し、優れた密着力と高周波伝送特性を有し、多層構造からなるプリント配線板の構造と製造方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2015-92020号公報
【特許文献2】特開2012-94918号公報
【特許文献3】WO2009/154083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、平滑な基材と平滑な銅配線に対し、表面に薄膜の接着層を形成することで、多層化配線板の層間樹脂との高い密着を発現し、伝送特性に優れ、高い信頼性を持つ金属回路基板を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、基材表面にプライマー及びめっき下地層及び金属めっき層順次形成した積層体を用いて、銅配線を形成した積層体の配線表面に接着層を設けた積層体が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明は、支持体(A)の上に、有機樹脂成分を含有するプライマー層(B)、めっき下地層(C)及び金属めっき層(D)及び接着層(E)が順次積層されたことを特徴とする積層体、及び、それを用いたプリント配線板、パッケージ基板及びインターポーザを提供するものである。
【0015】
すなわち、具体的に本発明は、
1.支持体(A)の少なくとも一面に、順にプライマー層(B)とパターニングされためっき下地層(C)と金属めっき層(D)が積層され、めっき下地層(C)と金属めっき層(D)の表面にのみ、厚みが0.001~1μmの接着層(E)が積層することを特徴とする積層体。
2.支持体(A)の少なくとも一面に、順にプライマー層(B)とパターニングされためっき下地層(C)と金属めっき層(D)が積層され、さらにプライマー層(B)とパターニングされためっき下地層(C)と金属めっき層(D)の表面に、厚みが0.001~1μmの接着層(E)が積層することを特徴とする積層体。
3.さらにプライマー層(B)と接着層(E)若しくは接着層(E)の上に、層間樹脂層(F)を有することを特徴とする1または2記載の積層体。
4.前記支持体(A)のレーザー顕微鏡で測定したときの表面粗さ(最大高さSz)が、0.001~50μmであることを特徴とする1~3いずれか一つに記載の積層体。
5.前記プライマー層(B)のレーザー顕微鏡で測定したときの表面粗さ(最大高さSz)が、0.001~30μmであることを特徴とする1~4いずれか一つに記載の積層体。
6.前記めっき下地層(C)のレーザー顕微鏡で測定したときの表面粗さ(最大高さSz)が、0.001~30μmであることを特徴とする1~5いずれか一つに記載の積層体。
7.前記金属めっき層(D)のレーザー顕微鏡で測定したときの表面粗さ(最大高さSz)が、0.001~20μmであることを特徴とする1~6いずれか一つに記載の積層体。
8.前記接着層(E)のレーザー顕微鏡で測定したときの表面粗さ(最大高さSz)が、0.001~20μmであることを特徴とする1~7いずれか一つに記載の積層体。
9.前記プライマー層(B)が少なくともウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンから選ばれることを特徴とする1~8いずれか一つに記載の積層体。
10.前記プライマー層(B)が1層以上であることを特徴とする1~9いずれか一つに記載の積層体。
11.前記パターニングされためっき下地層(C)が1層以上であることを特徴とする1~10いずれか一つに記載の積層体。
12.前記接着層(E)が少なくともメルカプトシラン化合物、ビニルシラン化合物、ビニルフェニルシラン化合物、エポキシシラン化合物、アクリロキシシラン化合物、メタクリロキシシラン化合物、アミノシラン化合物、ウレイドシラン化合物、クロロプロピルシラン化合物、スルフィドシラン化合物、イソシアネートシラン化合物、トリアゾールシラン化合物、チアジアゾールシラン化合物、イソシアナトプロピルシラン化合物、スチリルシラン化合物、カルボキシシラン化合物、アルコキシシラン化合物、トリアジンシラン化合物、イミダゾールシラン化合物、アゾールシラン化合物、ピロールシラン化合物、ピラゾールシラン化合物、テトラゾールシラン化合物、インドールシラン化合物、イソインドールシラン化合物、インダゾールシラン化合物、ベンズイミダゾールシラン化合物、ベンゾトリアゾールシラン化合物、トリアジンチオール化合物、トリアジンアジド化合物、トリアジンアミノ化合物、トリアジンイソイアナート化合物、トリアジンウレタン化合物、トリアジンエステル化合物、トリアジンシラン化合物、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネートポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンを一種類以上から選ばれることを特徴とする1~11いずれか一つに記載の積層体。
13.前記接着層(E)が少なくとも銅、スズ、銀、ビスマス、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、チタン、モリブデン、クロム、マンガン、ルテニウム、インジウム、亜鉛、タングステン、アルミニウム、ジルコニウムを1種類以上から選ばれることを特徴とする1~12いずれか一つに記載の積層体。
14.支持体(A)の少なくとも一面に、前記プライマー層(B)を形成する工程1、
前記プライマー層(B)の表面に前記めっき下地層(C)を形成する工程2、
前記めっき下地層(C)の表面に金属めっき層(D)を形成する工程3、
前記金属めっき層(D)の表面に接着層(E)を形成する工程4
を有することを特徴とする1または2,4~13いずれか一つに記載の積層体の製造方法。
15.仮支持体(G)にめっき下地層(C)とプライマー層(B)を順次形成した転写用積層体を製造する工程1、
前記転写用積層体の前記プライマー層(B)が形成された面を、支持体(A)の少なくとも一面に貼り合わせる工程2、
支持体(A)に貼り合わせた前記転写用積層体の前記仮支持体(G)を剥がし、支持体(A)の少なくとも一面に前記プライマー層(B)と前記めっき下地層(C)を形成する工程3、
前記めっき下地層(C)の表面に金属めっき層(D)を形成する工程4、
前記金属めっき層(D)の表面に接着層(E)を形成する工程5
を有することを特徴とする1または2,4~13いずれか一つに記載の積層体の製造方法。
16.支持体(A)の少なくとも一面に、前記プライマー層(B)を形成する工程1、
前記プライマー層(B)の表面に前記めっき下地層(C)を形成する工程2、
前記めっき下地層(C)の表面に金属めっき層(D)を形成する工程3、
前記金属めっき層(D)の表面に接着層(E)を形成する工程4、
さらにプライマー層(B)と接着層(E)若しくは接着層(E)の上に、層間樹脂層(F)を形成する工程5、
を有することを特徴とする3~13いずれか一つに記載の積層体の製造方法。
17.仮支持体(G)にめっき下地層(C)とプライマー層(B)を順次形成した転写用積層体を製造する工程1、
前記転写用積層体の前記プライマー層(B)が形成された面を、支持体(A)の少なくとも一面に貼り合わせる工程2、
支持体(A)に貼り合わせた前記転写用積層体の前記仮支持体(G)を剥がし、支持体(A)の少なくとも一面に前記プライマー層(B)と前記めっき下地層(C)を形成する工程3、
前記めっき下地層(C)の表面に金属めっき層(D)を形成する工程4、
前記金属めっき層(D)の表面に接着層(E)を形成する工程5、
さらにプライマー層(B)と接着層(E)若しくは接着層(E)の上に、層間樹脂層(F)を形成する工程6、
を有することを特徴とする3~13いずれか一つに記載の積層体の製造方法。
18.1~13いずれか一つに記載の積層体を有することを特徴とするプリント配線板、パッケージ基板、インターポーザ、LED電極用配線基板、光電融合デバイス。
【発明の効果】
【0016】
本発明の積層体は、従来の粗化処理により銅配線と層間樹脂を密着させる方法に比べて、平滑な配線形状を維持したまま、銅配線と層間樹脂の密着性に優れ、配線形状由来の導体損失を低減し、優れた高周波伝送特性を持つ特徴がある。従って、本発明の積層体は、例えば、プリント配線板、リジットプリント配線版、フレキシブルプリント配線板、パッケージ基板、金属基板、タッチパネル用メタルメッシュ、有機太陽電池、有機EL素子、LED電極用配線基板、有機トランジスタ、非接触ICカード等のRFID、電磁波シールド、LED照明基材、デジタルサイネージ、光電融合デバイス、インターポーザなどの電子部材として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】支持体の片面にプライマー層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成し、パターニングした後に、配線表面に接着層を形成した本発明の積層体の断面図である。
【
図2】支持体の両面にプライマー層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成し、パターニングした後に、配線表面に接着層を形成した本発明の積層体の断面図である。
【
図3】支持体の片面にプライマー層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成し、パターニングした後に、配線表面と基材表面に接着層を形成した本発明の積層体の断面図である。
【
図4】支持体の両面にプライマー層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成し、パターニングした後に、配線表面と基材表面に接着層を形成した本発明の積層体の断面図である。
【
図5】支持体の片面にプライマー層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成し、パターニングした後に、配線表面に接着層を形成した後、層間樹脂層を形成した本発明の積層体の断面図である。
【
図6】支持体の両面にプライマー層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成し、パターニングした後に、配線表面に接着層を形成した後、層間樹脂層を形成した本発明の積層体の断面図である。
【
図7】支持体の片面にプライマー層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成し、パターニングした後に、配線表面と基材表面に接着層を形成した後、層間樹脂層を形成した本発明の積層体の断面図である。
【
図8】支持体の両面にプライマー層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成し、パターニングした後に、配線表面と基材表面に接着層を形成した後、層間樹脂層を形成した本発明の積層体の断面図である。
【
図9】支持体の片面にプライマー層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成し、パターニングした後に、配線表面に接着層を形成した後、層間樹脂層と金属層を形成した、本発明の積層体の断面図である。
【
図10】支持体の片面にプライマー層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成し、パターニングした後に、配線表面と基材表面に接着層を形成した後、層間樹脂層と金属層を形成した、本発明の積層体の断面図である。
【
図11】支持体の両面にプライマー層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成し、パターニングした後に、配線表面に接着層を形成した後、層間樹脂層を介して、積層させた本発明の積層体の断面図である。
【
図12】支持体の両面にプライマー層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成し、パターニングした後に、配線表面と基材表面に接着層を形成した後、層間樹脂層を介して、積層させた本発明の積層体の断面図である。
【
図13】支持体の片面にプライマー層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成し、パターニングした後に、配線表面と基材表面に厚膜の接着層を形成した後、層間樹脂層を形成した本発明の積層体の断面図である。
【
図14】支持体の片面にプライマー層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成し、パターニングした後に、層間樹脂層を形成した、従来の積層体の断面図である。
【
図15】支持体の片面に金属層を形成し、パターニングした後、層間樹脂層を形成した、従来の積層体の断面図である。
【
図16】支持体の片面に金属層を形成し、パターニングした後に、配線表面に接着層を形成した後、層間樹脂層を形成した、従来の積層体の断面図である。
【
図17】支持体の片面にめっき下地層、金属めっき層を順次形成し、パターニングした後に、配線表面に接着層を形成した後、層間樹脂層を形成した、従来の積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の積層体は、支持体(A)の少なくとも一面に、プライマー層(B)とめっき下地層(C)と金属めっき層(D)と接着層(E)を有することを特徴とする積層体、および、製造方法である。
【0019】
本発明の積層体は、支持体(A)の片面に、プライマー層(B)等を順次積層した積層体であってもよく、前記支持体(A)の両面にプライマー層(B)等を順次積層した積層体であってもよい。
【0020】
本発明の積層体は、支持体(A)の少なくとも一面に、プライマー層(B)とめっき下地層(C)と金属めっき層(D)と薄膜の接着層(E)を有することを特徴とする積層体、および、製造方法である。
【0021】
本発明の積層体は、支持体(A)の少なくとも一面に、プライマー層(B)とめっき下地層(C)と金属めっき層(D)と薄膜の接着層(E)と層間樹脂層(F)を有することを特徴とする積層体、および、製造方法である。
【0022】
本発明の積層体は、支持体(A)の少なくとも一面に、プライマー層(B)とめっき下地層(C)と金属めっき層(D)と薄膜の接着層(E)と層間樹脂層(F)の上に金属層や配線板を有することを特徴とする積層体、および、製造方法である。
【0023】
支持体(A)の材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、モディファイドポリイミド樹脂(MPI)、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂をグラフト共重合化した塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ビスマレイミドートリアジン樹脂(BT樹脂)、フッ素樹脂複合ポリイミド樹脂(ポリイミド樹脂の表面にフッ素樹脂層を形成したフィルム)、熱可塑性ポリイミド樹脂複合ポリイミド樹脂(ポリイミド樹脂の表面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を形成したフィルム)、セルロースナノファイバー、シリコン、シリコンカーバイド、窒化ガリウム、サファイア、セラミックス、ガラス、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、アルミナ等が挙げられる。
【0024】
また、前記支持体(A)として、熱硬化性樹脂及び無機充填材を含有する樹脂基材を好適に用いることもできる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリフェニレンエーテル(PPE)等が挙げられる。一方、前記無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ珪酸ガラス等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂と無機充填剤は、それぞれ1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0025】
また、無機充填材は、粉末状、フレーク状、繊維状等のものを使用することができる。
【0026】
前記支持体(A)の形態としては、平面状のフレキシブル材、リジッド材、リジッドフレキシブル材のいずれのものも用いることができる。より具体的には、前記絶縁性基材(A)にフィルム、シート、板状に成形された市販材料を用いてもよいし、上記した樹脂の溶液、溶融液、分散液から、平面状に成形した材料を用いてもよい。また、前記支持体(A)は、金属等の導電性材料の上に、上記した樹脂の材料を形成した基材であってもよく、回路パターンが形成されたプリント配線板の上に、上記した樹脂の材料を積層形成した基材であっても良い。
【0027】
フレキシブル配線板の場合は、ポリイミド樹脂、モディファイドポリイミド樹脂(MPI)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、フッ素樹脂複合ポリイミド樹脂(ポリイミド樹脂の表面にフッ素樹脂層を形成したフィルム、ポリイミド樹脂とフッ素樹脂を交互に積層した多層フィルム)、熱可塑性ポリイミド樹脂複合ポリイミド樹脂(ポリイミド樹脂の表面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を形成したフィルム)等を用いることができる。
【0028】
前記支持体(A)の形状がフィルム状またはシート状である場合、特に厚さは限定されるものではないが、柔軟性や折り曲げ性を考慮すると、通常、1~5,000μm程度であり、1~500μmであることがより好ましく、1~200μmであることがより好ましい。
【0029】
リジット配線板の場合は、ガラス繊維とエポキシ樹脂の複合基材(ガラスエポキシ樹脂、FR-4、FR-5)、紙とエポキシ樹脂の複合基材(FR-3)、ガラス不織布とエポキシ樹脂の複合基材(CEM-3)、紙とガラス不織布とエポキシ樹脂の複合基材(CEM-1)、紙とフェノール樹脂の複合基材(紙フェノール樹脂、FR-1、FR-2)、ガラス繊維とPPE樹脂の複合基材(例えばパナソニック製メグトロン6、メグトロン7、メグトロン8)、ガラス繊維とマレイミド樹脂の複合基材、ビスマレイミドートリアジン樹脂(BT樹脂)、セラミックとフッ素樹脂の複合基材(例えばロジャース製RO3003)、シリカとエポキシ樹脂の複合基材(例えば味の素社製ビルドアップフィルム)、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シクロオレフィンポリマー、シリコン、シリコンカーバイド、窒化ガリウム、酸化ガリウム、サファイア、セラミックス、アルミナセラミック、アルミナ、ガラス、ダイアモンドライクカーボン、アルミニウム、ステンレス、銅、銀、金、鉄、ニッケル、等を用いることができる。
【0030】
また、支持体(A)としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維等の合成繊維、カーボンファイバー等の無機繊維、セルロースナノファイバー等の天然繊維等が挙げられる。
【0031】
支持体(A)の表面は、高周波伝送が必要となるプリント配線板において、平滑であることが好ましい。第5世代移動通信システム(5G)やミリ波による通信では、高速通信のため交流電流の周波数が高くなっており、周波数が高くなるほど銅配線の表層に電流が流れる表皮効果が起こるため、電流が流れる銅配線の最表層の凹凸が大きいと、抵抗となり伝送損失が大きくなる。そのため、支持体(A)の表面は平滑であることが好ましく、レーザー顕微鏡で測定した時の表面粗さ(最大高さSz)が0.001~50μmの範囲が好ましく、0.01~20μmの範囲が好ましく、0.05~10μmの範囲がより好ましい。なお、表面粗さ(最大高さSz)とは、ISO 25178に記された評価方法で測定したものであり、表面の最も高い点から最も低い点までの距離を表す。
【0032】
支持体(A)を平滑化する方法としては、支持体(A)の表面を物理的に平滑にする方法、化学処理により平滑にする方法がある。物理的に平滑にする方法としては、平滑なロールとロールの間に前記支持対(A)を通して表面を平滑にするカレンダー加工、切削加工、研削加工、砥粒研磨、放電加工、レーザー加工、ウォータージェット加工などが挙げられる。また、化学処理により平滑にする方法としては、電解研磨、エッチング研磨などが上げられる。
【0033】
また、支持体(A)が未硬化もしくは半硬化の熱硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂の場合、平滑な銅箔やアルミ箔などの金属箔、平滑なポリイミドフィルムやフッ素樹脂フィルムなどの耐熱性フィルムを平滑化処理基材として用い、支持体(A)の表面に平滑面を熱圧着で貼り合わせ、その後剥がすことで、支持体(A)の表面に平滑面を転写する方法で平滑化処理することができる。特に、支持体(A)がエポキシ樹脂やポリフェニレンエーテル樹脂等の熱硬化性樹脂とガラス繊維、無機フィラーを含むリジット基板用の基材の場合、銅箔の平滑面をプレスなどを用い基材に熱圧着し、その後銅箔を塩化銅や塩化鉄でエッチングすることで銅箔を除去し、基材表面を平滑にすることができる。前記平滑化処理基材の表面粗さが、最終的に平滑にしたい支持体(A)の表面粗さに影響する。そのため、平滑化処理基材の表面粗さは、平滑であることが好ましく、レーザー顕微鏡で測定した時の表面粗さ(最大高さSz)が0.001~50μmの範囲が好ましく、0.01~20μmの範囲が好ましく、0.05~10μmの範囲がより好ましい。なお、表面粗さ(最大高さSz)とは、ISO 25178に記された評価方法で測定したものであり、表面の最も高い点から最も低い点までの距離を表す。
【0034】
また、前記支持体(A)と後述するプライマー層(B)との密着性を向上できることから、前記支持体(A)の表面に、微細な凹凸の形成、その表面に付着した汚れの洗浄、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基等の官能基の導入のための表面処理等が施されていてもよい。具体的には、コロナ放電処理等のプラズマ放電処理、紫外線処理等の乾式処理、水、酸・アルカリ等の水溶液又は有機溶剤等を用いる湿式処理等が施されていてもよい。
【0035】
プライマー層(B)は後述するめっき下地層(C)との密着を担うだけでなく、後述する層間樹脂層(F)と密着を担う。層間樹脂層(F)を熱圧着により形成することで、プライマーと層間樹脂層(F)の未反応官能基が反応することで密着性が向上する。
【0036】
前記プライマー層(B)は、前記支持体(A)の表面の一部又は全部に樹脂溶液を塗工し、前記樹脂溶液中に含まれる水性媒体、有機溶剤等の溶媒を除去することによって形成することができる。
【0037】
前記プライマー層(B)を前記支持体(A)の表面に塗工する方法としては、例えば、グラビア方式、コーティング方式、スクリーン方式、ローラー方式、ロータリー方式、スプレー方式等の方法が挙げられる。
【0038】
前記プライマー層(B)の表面は、後述するめっき下地層(C)との密着性をより一層向上することを目的として、例えば、コロナ放電処理法等のプラズマ放電処理法、紫外線処理法等の乾式処理法、水や酸性又はアルカリ性薬液、有機溶剤等を用いた湿式処理法によって、表面処理されていることが好ましい。
【0039】
前記プライマー層(B)を前記支持体(A)の表面に塗工した後、その塗工層に含まれる溶媒を除去する方法としては、例えば、乾燥機を用いて乾燥させ、前記溶媒を揮発させる方法が一般的である。乾燥温度としては、前記溶媒を揮発させることが可能で、かつ前記支持体(A)に熱変形等の悪影響を与えない範囲の温度に設定すればよい。
【0040】
前記プライマー層(B)の膜厚は、本発明の積層体を用いる用途によって異なるが、前記支持体(A)と後述するめっき下地層(C)との密着性をより向上する範囲が好ましく、前記プライマー層(B)の膜厚は、0.01μm~100μmの範囲が好ましく、0.05μm~50μmの範囲が好ましく、0.1μm~30μmの範囲がより好ましく、0.2μm~5μmの範囲がさらに好ましい。
【0041】
前記プライマー層(B)の表面は、前述に記載した通り、表面は平滑であることが好ましい。そのため、レーザー顕微鏡で測定した時の表面粗さ(最大高さSz)が0.001~30μmの範囲が好ましく、0.01~20μmの範囲が好ましく、0.05~10μmの範囲がより好ましい。なお、表面粗さ(最大高さSz)とは、ISO 25178に記された評価方法で測定したものであり、表面の最も高い点から最も低い点までの距離を表す。
【0042】
前記プライマー層(B)の形成に用いるプライマー層の樹脂組成物(b)としては、各種樹脂と溶媒とを含有するものを用いることができる。
【0043】
前記樹脂(b)としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネートポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。なお、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂は、例えば、ウレタン樹脂存在下でアクリル単量体を重合することにより得られる。また、これらの樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0044】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂は、アミノトリアジン環構造とフェノール構造とがメチレン基を介して結合したノボラック樹脂である。前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂は、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のアミノトリアジン化合物と、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、ビスフェノールA、フェニルフェノール、ナフトール、レゾルシン等のフェノール化合物と、ホルムアルデヒドとをアルキルアミン等の弱アルカリ性触媒の存在下又は無触媒で、中性付近で共縮合反応させるか、メチルエーテル化メラミン等のアミノトリアジン化合物のアルキルエーテル化物と、前記フェノール化合物とを反応させることにより得られる。
【0045】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂は、メチロール基を実質的に有していないものが好ましい。また、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂には、その製造時に副生成物として生じるアミノトリアジン構造のみがメチレン結合した分子、フェノール構造のみがメチレン結合した分子等が含まれていても構わない。さらに、若干量の未反応原料が含まれていてもよい。
【0046】
前記フェノール構造としては、例えば、フェノール残基、クレゾール残基、ブチルフェノール残基、ビスフェノールA残基、フェニルフェノール残基、ナフトール残基、レゾルシン残基等が挙げられる。また、ここでの残基とは、芳香環の炭素に結合している水素原子が少なくとも1つが抜けた構造を意味する。例えば、フェノールの場合は、ヒドロキシフェニル基を意味する。
【0047】
前記トリアジン構造としては、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のアミノトリアジン化合物由来の構造が挙げられる。
【0048】
前記フェノール構造及び前記トリアジン構造は、それぞれ1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、密着性をより向上できることから、前記フェノール構造としてはフェノール残基が好ましく、前記トリアジン構造としてはメラミン由来の構造が好ましい。
【0049】
また、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂の水酸基価は、密着性をより向上できることから、50~200mgKOH/gの範囲が好ましく、80~180mgKOH/gの範囲がより好ましく、100~150mgKOH/gの範囲がさらに好ましい。
【0050】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0051】
また、前記アミノトリアジン環を有する化合物として、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂を併用することが好ましい。
【0052】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド誘導体由来の構造を有する含リンエポキシ化合物、ジシクロペンタジエン誘導体由来の構造を有するエポキシ樹脂、エポキシ化大豆油等の油脂のエポキシ化物などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0053】
前記エポキシ樹脂の中でも、密着性をより向上できることから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ基と、後述するめっき下地層(C)に含有する塩基性窒素原子含有基が反応し、共有結合を形成するため、後述するめっき下地層(C)と前記プライマー層(B)の界面の密着性が向上する。
【0054】
また、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、密着性をより向上できることから、100~300g/当量の範囲が好ましく、120~250g/当量の範囲がより好ましく、150~200g/当量の範囲がさらに好ましい。
【0055】
前記プライマー層(B)が、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂及びエポキシ樹脂を含有する層とする場合、密着性をより向上できることから、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂中のフェノール性水酸基と前記エポキシ樹脂中のエポキシ基とのモル比[(x)/(y)]は、0.1~5の範囲以下が好ましく、0.2~3の範囲以下がより好ましく、0.3~2の範囲がさらに好ましい。
【0056】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂とエポキシ樹脂との反応を促進するため、硬化促進剤を併用してもよい。前記硬化促進剤としては、例えば、一級、二級又は三級のアミノ基を有するアミン化合物が挙げられる。また、前記アミン化合物としては、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれのものも用いることができる。また、前記硬化促進剤として、メルカプタン、酸無水物、酸フッ化ホウ素、ホウ酸エステル、有機酸ヒドラジット、ルイス酸、有機金属化合物、オニウム塩、カチオン性化合物等も用いることができる。
【0057】
また、フェノキシ樹脂を含有するものを用いることが好ましい。前記プライマー層(B)は、前記支持体(A)前記めっき下地層(C)との密着性を向上させる機能を有するものである。本発明において、フェノキシ樹脂は、重量平均分子量が10,000~100,000の範囲にあるものを用いることが好ましい。前記プライマー層(B)に高分子量のフェノキシ樹脂を用いることにより、ポリマーの伸度を向上させ、さらに密着性を向上することができる。
【0058】
フェノキシ樹脂は、2価のフェノール化合物とエピクロロヒドリンとの反応、または、2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる、ポリヒドロキシポリエーテルである。2価のフェノール化合物としてはビスフェノール類が挙げられる。フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA構造(骨格)を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF構造を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールS構造を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールM構造を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールP構造を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールZ構造を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。その他、ノボラック構造、アントラセン構造、フルオレン構造、ジシクロペンタジエン構造、ノルボルネン構造、ナフタレン構造、ビフェニル構造、アダマンタン構造等の骨格構造を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。これらフェノキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのなかでも、ビスフェノール構造を有するものが好ましく、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格がより好ましい。また、フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基であってもよい。
【0059】
本発明において、使用するフェノキシ樹脂の重量平均分子量は10,000~100,000の範囲が好ましい。分子量が10,000以上であると長期耐熱試験後のめっき密着力が高くなり、また、分子量が100,000以下であると有機溶剤への溶解性が向上し、前記プライマー層(B)を形成する際の塗工液の粘度が適当になるため、ハンドリングが良好となる。フェノキシ樹脂の好ましい重量平均分子量は20,000~80,000であり、より好ましくは22,000~50,000である。なお、フェノキシ樹脂の重量平均分子量は上記反応において、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とのモル比や反応時間により調整することができる。なお、本明細書において、重量平均分子量は、後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した、標準ポリスチレンで換算した値を採用した。GPCの測定には、測定装置として高速GPC装置(HLC-8420GPC、東ソー株式会社製)を用い、カラムはTSKgelG5000HxL/G4000HxL/G3000HxL/G2000HxL(東ソー株式会社製)を直列に連結して使用し、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、RI検出器を用いて測定した。また、フェノキシ樹脂とは、一般的に高分子量のエポキシ樹脂を意味するが、本明細書において「エポキシ樹脂」とは、重量平均分子量が10,000未満のものを意味するものとし、上記したフェノキシ樹脂とは区別するものとする。
【0060】
上記フェノキシ樹脂として市販のものを使用してもよく、例えば、三菱ケミカル株式会社製の1256、4250(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、4275(ビスA/ビスF混合タイプ)、YL6794、YL7213、YL7290、YL7482、YL7553、YX8100(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、X6954(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂、YX7200(シクロヘキサン骨格含有フェノキシ樹脂)、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のYP-70(ビスフェノールF型フェノキシ樹脂)、ZX356-2(ビスフェノールAおよびビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂)、YPB-40PXM40(臭素含有フェノキシ樹脂)、ERF-001M30(リン含有フェノキシ樹脂)、FX―280、FX―293、FX-310(フルオレン骨格含有フェノキシ樹脂)、Gabriel Phenoxies社製のPKHA、PKHB、PKHB+、PKHC、PKHH、PKHJ、PKFE等が挙げられる。
【0061】
本発明において、前記プライマー層(B)には、上記フェノキシ樹脂と併用してエポキシ樹脂が含まれていることが好ましい。フェノキシ樹脂とエポキシ樹脂とを併用することにより、より一層、常態時および長期耐熱試験後の後述する金属めっき層(D)との密着性並びに密着性が向上する。
【0062】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド誘導体由来の構造を有するリン含有エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン誘導体由来の構造を有するエポキシ樹脂、エポキシ化大豆油等の油脂のエポキシ化物等が挙げられる。これらエポキシ樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
フェノキシ樹脂と併用するエポキシ樹脂としては、後述する金属めっき層(D)の密着性をより向上できることから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂が好ましく、さらに、液状のエポキシ樹脂が好ましく、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0064】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、密着性をより向上できることから、100~5,000g/当量であることが好ましく、120~2,000g/当量であることがより好ましく、120~250g/当量であることがさらに好ましい。
【0065】
前記プライマー層(B)中のフェノキシ樹脂に加えてエポキシ樹脂がさらに含まれる場合、フェノキシ樹脂とエポキシ樹脂との配合割合は、質量基準におい90:10~10:90であることが好ましく、85:15~15:80であることがより好ましい。
【0066】
前記プライマー層(B)としては、金属めっき層(D)が熱などの負荷を受けて変形する際に、後述する金属めっき層(D)に追従出来る、耐熱性に優れた熱可塑性樹脂からなることが好ましく、一例としてフェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を用いることが好ましい。
【0067】
前記プライマー層(B)は、1層でも良く、2層以上あっても良い。2層以上のプライマー層(B)を形成した場合、例えば、後述するめっき下地層(C)に近い層は、後述するめっき下地層(C)との密着性を向上させ、一方で、前記支持体(A)に近いプライマー層(B)は、前記支持体(A)との密着性を向上させることができる。また、後述するめっき下地層(C)に近い1層目のプライマー層(B)は、後述するめっき下地層(C)や後述する金属めっき層(D)に近い層になり、導電性パターンを形成した際に、銅配線に近い部分となるため、絶縁信頼性を向上させる目的で、プライマー層(B)の樹脂組成物を選択し、形成することができる。
【0068】
また、前記プライマー層(B)の塗料は、前記支持体(A)の表面に塗工することになるので、塗工しやすい粘度とするため、有機溶剤を配合することが好ましい。前記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソプロピルアルコール、ダイアセトンアルコール、エチレングリコール、トルエン等が挙げられる。これらの溶剤は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0069】
また、前記プライマー層(B)の塗料には、必要に応じて、皮膜形成助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を適宜添加してもよい。
【0070】
前記プライマー層(B)の塗料を塗工する方法としては、例えば、グラビア方式、コーティング方式、スクリーン方式、ローラー方式、ロータリー方式、スプレー方式、キャピラリー方式、ドクターロール方式等の方法が挙げられる。
【0071】
前記プライマー層(B)の塗料を、前記支持体(A)の表面に形成した後、その塗工層に含まれる有機溶剤を除去する方法としては、例えば、乾燥機を用いて乾燥させ、有機溶剤を揮発させる方法が一般的である。
【0072】
前記プライマー層(B)の乾燥温度としては、50℃~400℃の範囲が好ましく、80℃~340℃の範囲がより好ましく、120℃~280℃の範囲が好ましく、150℃~200℃の範囲がさらに好ましい。
【0073】
めっき下地層(C)は、前記プライマー層(B)上に形成されたものであり、前記めっき下地層(C)を構成する金属としては、遷移金属又はその化合物が挙げられ、中でもイオン性の遷移金属が好ましい。このイオン性の遷移金属としては、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト等が挙げられる。これらのイオン性の遷移金属の中でも、銅、銀、金は、電気抵抗が低く、腐食に強い導電性パターンが得られることから好ましい。また、前記めっき下地層(C)は多孔質状のものが好ましく、この場合、その層中に空隙を有する。
【0074】
本発明の積層体の製造方法としては、まず、前記支持体(A)の上に、前記プライマー層(B)を形成し、その後、ナノサイズの金属ナノ粒子(c)を含有する流動体を塗工し、流動体中に含まれる有機溶剤等を乾燥により除去することによって、前記めっき下地層(C)を形成した後、電解又は無電解めっきにより後述する金属めっき層(D)を形成する方法が挙げられる。この前記めっき下地層(C)の形成の際、前記金属ナノ粒子(c)を含有する流動体を前記プライマー層(B)の上に塗工、乾燥して、めっき下地層(C’)を形成した後、焼成して前記めっき下地層(C’)中に存在する分散剤を含む有機化合物を除去して空隙を形成して多孔質状の前記めっき下地層(C)とすることで、後述する金属めっき層(D)との密着性が向上することから好ましい。
【0075】
前記めっき下地層(C)の形成に用いる前記金属ナノ粒子(c)の形状は、粒子状又繊維状のものが好ましい。また、前記金属ナノ粒子(c)の大きさはナノサイズのものを用いるが、具体的には、前記金属ナノ粒子(c)の形状が粒子状の場合は、微細なメッシュ状の導電性パターンを形成でき、抵抗値をより低減できるため、平均粒子径が1~100nmの範囲が好ましく、1~50nmの範囲がより好ましい。なお、前記「平均粒子径」は、前記導電性物質を分散良溶媒にて希釈し、動的光散乱法により測定した体積平均値である。この測定にはマイクロトラック社製「ナノトラックUPA-150」を用いることができる。
【0076】
一方、前記金属ナノ粒子(c)の形状が繊維状の場合は、微細なメッシュ状の導電性パターンを形成でき、抵抗値をより低減できるため、繊維の直径が5~100nmの範囲が好ましく、5~50nmの範囲がより好ましい。また、繊維の長さは、0.1~100μmの範囲が好ましく、0.1~30μmの範囲がより好ましい。
【0077】
前記流動体中の前記金属ナノ粒子(c)の含有率は、1~90質量%の範囲が好ましく、1~60質量%の範囲がより好ましく、さらに1~10質量%の範囲がより好ましい。
【0078】
前記流動体に配合される成分としては、前記金属ナノ粒子(c)を溶媒中に分散させるための分散剤や溶媒、また必要に応じて、後述する界面活性剤、レベリング剤、粘度調整剤、成膜助剤、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。
【0079】
前記金属ナノ粒子(c)を溶媒中に分散させるため、低分子量又は高分子量の分散剤を用いることが好ましい。前記分散剤としては、例えば、ドデカンチオール、1-オクタンチオール、トリフェニルホスフィン、ドデシルアミン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン;ミリスチン酸、オクタン酸、ステアリン酸等の脂肪酸;コール酸、グリシルジン酸、アビンチン酸等のカルボキシル基を有する多環式炭化水素化合物などが挙げられる。これらの中でも、前記めっき下地層(C)を多孔質状とすることで前記めっき下地層(C)と後述する金属めっき層(D)との密着性を向上できることから、高分子分散剤が好ましく、この高分子分散剤としては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンイミン、前記ポリアルキレンイミンにポリオキシアルキレンが付加した化合物、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、前記ウレタン樹脂や前記アクリル樹脂にリン酸基を含有する化合物等が挙げられる。
【0080】
上記のように、前記分散剤に高分子分散剤を用いることで、低分子分散剤と比較して、前記めっき下地層(C)中の分散剤を除去して多孔質状とし、その空隙サイズを大きくすることができ、ナノオーダーからサブミクロンオーダーの大きさの空隙を形成することができる。この空隙に後述する金属めっき層(D)を構成する金属が充填されやすくなり、充填された金属がアンカーとなり、前記めっき下地層(C)と後述する金属めっき層(D)との密着性を大幅に向上することができる。
【0081】
前記金属ナノ粒子(c)を分散させるために必要な前記分散剤の使用量は、前記金属ナノ粒子(c)100質量部に対し、0.01~50質量部が好ましく、0.01~10質量部がより好ましい。
【0082】
また、前記めっき下地層(C)と後述する金属めっき層(D)との密着性をより向上する目的で、焼成により分散剤を除去して多孔質状の前記めっき下地層(C)を形成する場合は、前記ナノサイズの金属粉100質量部に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。
【0083】
前記流動体に用いる溶媒としては、水性媒体や有機溶剤を用いることができる。前記水性媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等が挙げられる。また、前記有機溶剤としては、アルコール化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
【0084】
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0085】
また、前記流動体には、上記の金属粉、溶媒の他に、必要に応じてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、イソプレングリコール等を用いることができる。
【0086】
前記界面活性剤としては、一般的な界面活性剤を用いることができ、例えば、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ヘキサメタリン酸塩等が挙げられる。
【0087】
前記レベリング剤としては、一般的なレベリング剤を用いることができ、例えば、シリコーン系化合物、アセチレンジオール系化合物、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0088】
前記粘度調整剤としては、一般的な増粘剤を用いることができ、例えば、アルカリ性に調整することによって増粘可能なアクリル重合体や合成ゴムラテックス、分子が会合することによって増粘可能なウレタン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、水添加ヒマシ油、アマイドワックス、酸化ポリエチレン、金属石鹸、ジベンジリデンソルビトールなどが挙げられる。
【0089】
前記成膜助剤としては、一般的な成膜助剤を用いることができ、例えば、アニオン系界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ塩など)、疎水性ノニオン系界面活性剤(ソルビタンモノオレエートなど)、ポリエーテル変性シロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0090】
前記消泡剤としては、一般的な消泡剤を用いることができ、例えばシリコーン系消泡剤や、ノニオン系界面活性剤、ポリエーテル,高級アルコール、ポリマー系界面活性剤等が挙げられる。
【0091】
前記防腐剤としては、一般的な防腐剤を用いることができ、例えば、イソチアゾリン系防腐剤、トリアジン系防腐剤、イミダゾール系防腐剤、ピリジン系防腐剤、アゾール系防腐剤、ヨード系防腐剤、ピリチオン系防腐剤等が挙げられる。
【0092】
前記流動体の粘度(25℃でB型粘度計を用いて測定した値)は、0.1~500,000mPa・sの範囲が好ましく、0.5~10,000mPa・sの範囲がより好ましい。また、前記流動体を、後述するインクジェット印刷法、凸版反転印刷等の方法によって塗工(印刷)する場合には、その粘度は5~20mPa・sの範囲が好ましい。
【0093】
前記プライマー層(B)の上に前記流動体を塗工や印刷する方法としては、例えば、インクジェット印刷法、反転印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法、パッド印刷、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等が挙げられる。
【0094】
これらの塗工方法の中でも、電子回路等の高密度化を実現する際に求められる0.01~100μm程度の細線状でパターン化された前記めっき下地層(C)を形成する場合には、インクジェット印刷法、反転印刷法を用いることが好ましい。
【0095】
前記インクジェット印刷法としては、一般にインクジェットプリンターといわれるものを用いることができる。具体的には、コニカミノルタEB100、XY100(コニカミノルタIJ株式会社製)、ダイマティックス・マテリアルプリンターDMP-3000、ダイマティックス・マテリアルプリンターDMP-2831(富士フィルム株式会社製)等が挙げられる。
【0096】
また、反転印刷法としては、凸版反転印刷法、凹版反転印刷法が知られており、例えば、各種ブランケットの表面に前記流動体を塗工し、非画線部が突出した版と接触させ、前記非画線部に対応する流動体を前記版の表面に選択的に転写させることによって、前記ブランケット等の表面に前記パターンを形成し、次いで、前記パターンを、前記支持体(A)の上(表面)に転写させる方法が挙げられる。
【0097】
また、前記支持体(A)が成形品の場合のパターンの印刷については、パッド印刷法が知られている。凹版の上にインクを載せ、スキージで書き取ることでインクを均質に凹部に充填し、インクを載せた版上に、シリコンゴムやウレタンゴム製のパッドを押し当て、パターンをパッド上に転写し、成形品へ転写させる方法が挙げられる。
【0098】
前記めっき下地層(C)は、1層でも良く、2層以上あっても良い。2層以上のめっき下地層(C)を形成した場合、例えば、1層目のめっき下地層(C)に生じた塗膜欠陥を2層目のめっき下地層(C)が覆い隠すことで、塗膜欠陥を無くすことが出来る。
【0099】
前記流動体を塗工や印刷した後の乾燥温度としては、50℃~400℃の範囲が好ましく、80℃~340℃の範囲がより好ましく、120℃~320℃の範囲が好ましく、150℃~300℃の範囲が好ましく、180℃~280℃の範囲がさらに好ましい。
【0100】
前記めっき下地層(C)の単位面積当たりの質量は、1~10,000mg/m2の範囲が好ましく、1~5,000mg/m2の範囲が好ましい。前記めっき下地層(C)に対し、無電解めっきを施す場合は、前記めっき下地層(C)を触媒として使うため、前記めっき下地層(C)の膜厚が薄くて良く、具体的には、1~5,000mg/m2が好ましく、10~1,000mg/m2が好ましく、10~500mg/m2が好ましく、50~500mg/m2がより好ましい。一方、前記めっき下地層(C)に電解めっきを施す場合は、前記めっき下地層(C)に導電性があり、低抵抗である方が良いため、膜厚が厚い方が良く、100~10,000mg/m2が好ましく、300~5,000mg/m2が好ましく、後述する金属めっき層(D)と前記めっき下地層(C)の密着性や、めっき下地層(C)を薄くし低コスト化するため、500~2,000mg/m2がより好ましい。
【0101】
前記めっき下地層(C)に電解めっきを施す場合の前記めっき下地層(C)の表面抵抗は、電解めっきを均質に形成するため、低抵抗であることが好ましい。表面抵抗は、0.1~10,000Ω/□の範囲であることが好ましく、0.15~1,000Ω/□の範囲がより好ましく、0.15~500Ω/□の範囲がより好ましく、0.2~100Ω/□の範囲がより好ましく、0.2~10Ω/□の範囲がより好ましく、0.2~5Ω/□の範囲がさらに好ましい。
【0102】
前記めっき下地層(C)の表面は、前述に記載した通り、表面は平滑であることが好ましい。そのため、レーザー顕微鏡で測定した時の表面粗さ(最大高さSz)が0.001~30μmの範囲が好ましく、0.01~20μmの範囲が好ましく、0.05~10μmの範囲がより好ましい。なお、表面粗さ(最大高さSz)とは、ISO 25178に記された評価方法で測定したものであり、表面の最も高い点から最も低い点までの距離を表す。
【0103】
また、前記支持体(A)の上に前記プライマー層(B)と前記めっき下地層(C)を形成する方法として、仮支持体(G)に前記めっき下地層(C)と前記プライマー層(B)を順次積層させることで、転写用積層体を作製し、前記転写用積層体のプライマー層(B)の面を、前記支持体(A)の少なくとも一面に貼り合わせる方法がある。
【0104】
転写法で貼り合わせる方法は、前記支持体(A)の上に既存のドライプロセスで実施するスパッタ法やウエットプロセスで塗工する方法と比較し、前記支持体(A)の上に、前記プライマー層(B)と前記めっき下地層(C)を熱圧着により一括で形成することを可能にする簡便な方法であるため、生産性に優れており、製造コストを抑えられる。更に、熱圧着により圧力を加えることで前記プライマー層(B)に前記めっき下地層(C)を埋没させることにより、前記プライマー層(B)と前記めっき下地層(C)の界面の密着力を強固にする観点から好ましい。
【0105】
前記仮支持体(G)としては、前記転写用積層体を貼り合わせた後、最終的に剥がす必要があるため、前記仮支持体(G)と前記めっき下地層(C)は界面で容易に剥離できるものを選択することが好ましい。例えば、高分子フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンナフタレートなどの芳香族ポリエステル;ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレンー六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレンーエチレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレンーエチレン共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロジオキシソール共重合体、フッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂;ポリメチルペンテン(TPX)、ポリプロピレン(PP)[二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)も含む]、及びポリエチレン(PE)[高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む]などのオレフィン樹脂;ポリスチレン(PS);ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリイミド、透明ポリイミドなどのポリイミド樹脂;ポリアミドイミド、ポリアミドなどのポリアミド樹脂;ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ABSとポリカーボネートとのポリマーアロイ、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、エポキシ樹脂などが上げられる。中でも、芳香族ポリエステル、ポリエチレン、オレフィン樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、LCP、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレンを前記仮支持体(G)として用いることが好ましい。
【0106】
また、前記仮支持体(G)として、金属を用いることができ、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、ステンレス、ベリリウム銅、燐青銅、ニッケル、ニクロム、ニッケル合金、錫、亜鉛、鉛、金、亜鉛、鉛、タンタル、モリブデン、ニオブ、鉄、銀、を用いることが出来る。その他、無機基材としては、シリコン、セラミックス、ガラス等からなる前記仮支持体(G)として用いることができる。
【0107】
前記仮支持体(G)の形状は、特に限定されるものではないが、フィルム状又はシート状の場合が取り扱い易い。前記仮支持体(G)の膜厚としては、通常、1~5,000μmの範囲が好ましく、1~300μmの範囲がより好ましく、1~200μmの範囲がより好ましく、1~100μmの範囲がより好ましく、1~50μmの範囲がさらに好ましい。前記仮支持体(G)は、前記支持体(A)に貼り合わせ、めっき下地層(C)とプライマー層(B)を前記支持体(A)に転写し積層した後、不要となるため、作業性を失わない程度に薄膜であることが好ましい。
【0108】
前記仮支持体(G)の表面は、転写用積層体からめっき下地層(C)とプライマー層(B)を転写し易くするため、平滑であることが好ましい。具体的には、レーザー顕微鏡で測定した時の表面粗さ(最大高さSz)が0.001~50μmの範囲が好ましく、0.01~20μmの範囲が好ましく、0.05~10μmの範囲がより好ましい。なお、表面粗さ(最大高さSz)とは、ISO 25178に記された評価方法で測定したものであり、表面の最も高い点から最も低い点までの距離を表す。
【0109】
また、これら前記仮支持体(G)の表面に離型層を形成したものを用いることができる。離型層は、前記仮支持体(G)に、シリコーン系離型剤や、非シリコーン系離型剤を塗工することで形成できる。非シリコーン系離型剤としては、アルキド樹脂 、メラミン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、尿素樹脂、ポリオレフィン、パラフィン、シリカ複合アクリル樹脂、シリカ複合メラミン樹脂、シリカ複合ウレタン樹脂、シリカ複合エポキシ系樹脂、シリカ複合フェノール樹脂、シリカ複合ポバール樹脂、シリカ複合ポリスチレン系樹脂、シリカ複合ポリ酢酸ビニル系樹脂、シリカ複合ポリイミド系樹脂、シリカ複合ポリアミドイミド系樹脂を用いることができる。シリコーン樹脂の離型層は、前記転写用積層体の前記仮支持体(G)を剥がす際に、前記めっき下地層(C)の表面にシリコーン樹脂が移行し、後述する前記めっき下地層(C)へ金属めっき層(D)を形成する際に、前記めっき下地層(C)と前記金属めっき層(D)の密着性を阻害する。そのため、離型層としては、非シリコーン系離型剤を用いることが好ましく、ポリオレフィン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、シリカ複合アクリル樹脂、シリカ複合メラミン樹脂、シリカ複合ウレタン樹脂、シリカ複合エポキシ系樹脂、シリカ複合フェノール樹脂、シリカ複合ポバール樹脂、シリカ複合ポリスチレン系樹脂、シリカ複合ポリ酢酸ビニル系樹脂、シリカ複合ポリイミド系樹脂、シリカ複合ポリアミドイミド系樹脂を用いることが好ましい。
【0110】
離型層の膜厚は、離型性を確保できれば特に限定されることはないが、離型層が前記めっき下地層(C)の表面に付着するのを防止するため薄膜であることが好ましい。具体的には、0.01~50μmが好ましく、さらに0.01~10μmがより好ましく、さらに0.01~1μmがより好ましい。
【0111】
前記仮支持体(G)としては、金属を用いることが好ましい。後述する前記仮支持体(G)の表面に、金属ナノ粒子を用いた前記めっき下地層(C)を形成する際、金属を用いると高分子フィルムを用いた場合に比べ、より高温で乾燥することができ、めっき下地層(C)の表面抵抗を下げることで、めっき下地層自体の導電性を上げることができる。また、導電性パターンを形成する工程において、後述する前記転写用積層体のプライマー層(B)の面を前記支持体(A)に貼り合わせたあと、前記仮支持体(G)の面から両面を貫通する貫通孔、もしくは、内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成する際、ドリルやレーザーで孔を形成することになるが、高分子フィルムを前記仮支持体(G)として用いた場合は、孔開け加工の際、高分子のスミアが発生し、貫通孔もしくは非貫通孔を導電化する工程で、めっき析出不具合が発生する場合がある。一方、金属を使うと、従来のプリント基板のドリルやレーザーを用いた孔開け加工の工法が適用でき、前記仮支持体(G)としては、銅やアルミニウムを用いることが好ましい。
【0112】
前記仮支持体(G)に後述する前記めっき下地層(C)を塗工する際、必要に応じて、前記仮支持体(G)の表面に、塗料を濡れ易くする目的で表面処理をしてもよい。具体的には、コロナ放電処理等のプラズマ放電処理、紫外線処理等の乾式処理、水、酸・アルカリ等の水溶液又は有機溶剤等を用いる湿式処理等の方法が挙げられる。前記仮支持体(G)を過剰に表面処理をすると、後述する前記仮支持体(G)と前記めっき下地層(C)の界面で剥離しにくくなるため、適度に表面処理を実施することが好ましい。
【0113】
前記仮支持体(G)の上に前記めっき下地層(C)を塗工や印刷する方法としては、例えば、インクジェット印刷法、反転印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、パッド印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法、ロータリーコート法、キャピラリーコート法、マイクログラビア塗工法、ドクターロール方式等が挙げられる。
【0114】
前記めっき下地層(C)は、1層でも良く、2層以上あっても良い。2層以上のめっき下地層(C)を形成した場合、例えば、1層目のめっき下地層(C)に生じた塗膜欠陥を2層目のめっき下地層(C)が覆い隠すことで、塗膜欠陥を無くすことが出来る。
【0115】
前記仮支持体(G)の上に前記めっき下地層(C)を塗工する際、塗工や印刷した後の乾燥温度としては、50℃~400℃の範囲が好ましく、80℃~340℃の範囲がより好ましく、120℃~320℃の範囲が好ましく、150℃~300℃の範囲が好ましく、180℃~280℃の範囲がさらに好ましい。
【0116】
前記プライマー層(B)は、前記仮支持体(G)の表面に形成した前記めっき下地層(C)の一部又は全部に前記プライマー層(B)を塗工し、前記プライマー層(B)の塗料中に含まれる有機溶剤を除去することによって形成できる。
【0117】
前記プライマー層(B)の塗料を塗工する方法としては、例えば、グラビア方式、コーティング方式、スクリーン方式、ローラー方式、ロータリー方式、スプレー方式、キャピラリー方式、ドクターロール方式等の方法が挙げられる。
【0118】
前記プライマー層(B)の塗料を、前記仮支持体(G)の表面に形成した前記めっき下地層(C)の表面に塗工した後、その塗工層に含まれる有機溶剤を除去する方法としては、例えば、乾燥機を用いて乾燥させ、有機溶剤を揮発させる方法が一般的である。乾燥温度としては、用いた有機溶剤を揮発させることが可能な範囲の温度に設定する必要がある。
【0119】
前記プライマー層(B)の乾燥温度としては、50℃~400℃の範囲が好ましく、80℃~340℃の範囲がより好ましく、120℃~280℃の範囲が好ましく、150℃~200℃の範囲がさらに好ましい。
【0120】
次に、転写用積層体を支持体(A)に転写する方法について説明する。
転写方法としては、転写用積層体のプライマー層(B)の面を前記支持体(A)に、熱と圧力を用いて貼り合わせる方法を用いることができる。特に限定されることはないが、例えば、熱ラミネート法、無溶剤ラミネート法、押し出しラミネート法、ウエットラミネート法、熱ロール転写法、インモールド転写法、プレス法、真空プレス法、水圧転写法等を用いることができる。
【0121】
前記支持体(A)がフレキシブル材でロールフィルムである場合は、熱ロールラミネート法、無溶剤ラミネート法、押し出しラミネート法、ウエットラミネート法を用いることが好ましい。特に簡便に処理できることから、熱ロールラミネート法がより好ましい。一方、前記支持体(A)がリジット材の場合は、枚葉で熱圧着する場合が多いため、プレス法、真空プレス法、真空熱ラミネート法を用いることが好ましい。
【0122】
熱圧着条件について、加熱条件は、50℃~400℃の範囲が好ましく、80℃~350℃の範囲がより好ましく、80℃~280℃の範囲がより好ましく、100℃~200℃の範囲がより好ましく、120~180℃の範囲がより好ましい。圧力条件としては、0.05MPa~35MPaの範囲が好ましく、0.3MPa~20MPaの範囲がより好ましい。
【0123】
熱圧着の処理時間としては、熱ロールラミネートの場合、搬送しながらロールの線圧により熱圧着することになるため、1秒以内で処理することになる。一方で、枚葉で処理するプレスや真空プレス、真空熱ラミネートの場合は、1秒~120分の範囲が好ましく、30秒~60分の範囲が好ましく、30秒~15分の範囲がより好ましく、生産性の観点から1分~5分の範囲で処理することが好ましい。
【0124】
また、熱圧着する場合、転写用積層体と前記支持体(A)の間に空気が入り込んだり、前記支持体(A)や転写用積層体から発生するガスで、転写用積層体と前記支持体(A)の間にガスがたまり転写率が低下するため、真空プレスを用いて真空下で熱圧着をすることが好ましい。真空条件としては、絶対圧力として100hPa以下が好ましく、50hPa以下がより好ましく、13hPa以下がより好ましい。加熱条件や圧力条件は、前述と同じ条件で処理することが好ましい。
【0125】
次に、転写用積層体のプライマー層(B)の面を支持体(A)に貼り合わせ、仮支持体(G)を剥離する方法について説明する。
前記仮支持体(G)を剥離する方法は特に限定されないが、前記熱圧着時に前記支持体(A)と前記プライマー層(B)の密着性が低い場合(仮接着状態)は、前記支持体(A)に前記プライマー層(B)と前記めっき下地層(C)が十分転写せず、一部転写用積層体側に残る場合があるため、剥離する際の前記仮支持体(G)の引き剥がす方向と速度が重要となる。具体的には、前記支持体(A)に対し、90度~180度方向に引き剥がすことが好ましく、120度~180度の範囲で引き剥がすことが好ましく、150度~180度方向に引き剥がすことが好ましい。引き剥がす際は、前記支持体(A)側ではなく、前記仮支持体(G)側を前述の角度で引き剥がすこと好ましい。引き剥がす速度は0.01m/分~20m/分の範囲であることが好ましく、0.05~10m/分の範囲であることがより好ましく、0.5~5m/分の範囲であることがより好ましい。
【0126】
次に、転写用積層体のプライマー層(B)の面を前記支持体(A)に貼り合わせ、その後、転写用積層体の前記仮支持体(G)を引き剥がした後の積層体の後処理について説明する。
支持体(A)とプライマー層(B)の密着性をより向上させるため、熱処理を実施しても良い。熱処理条件としては、80℃~400℃の範囲が好ましく、100℃~350℃の範囲がより好ましく、120℃~325℃の範囲がより好ましく、150℃~300℃の範囲がより好ましい。熱処理時間としては、1秒~168時間の範囲が好ましく、30秒~72時間の範囲がより好ましく、生産性の観点から1分~30分の範囲がさらに好ましい。
【0127】
次の工程では、めっき下地層(C)の表面に、後述する金属めっき層(D)やパターンレジストを形成するため、これらの密着性を低下させる成分を洗浄する洗浄処理を実施することが好ましい。密着性を低下させる成分としては、例えば、仮支持体(G)が樹脂フィルムの場合はフィルム中に存在しフィルム表面にブリードしてくるオリゴマー成分、仮支持体(G)に離型層を形成した場合、離型剤の成分が一部めっき下地層(C)に移染した成分、金属の仮支持体(G)の場合は仮支持体上の金属酸化物の皮膜がある。前記洗浄処理としては、めっき下地層(C)の表面に存在する有機物の加熱による酸化分解、コロナ放電処理等のプラズマ放電処理、紫外線処理等の乾式処理、水、酸・アルカリ等の水溶液、オゾンを含む水(オゾンナノバブル)、または有機溶剤等を用いる湿式処理等の方法が挙げられる。
【0128】
本発明の積層体を後述する金属配線として用いる場合、前記めっき下地層(C)、金属めっき層(D)等を後述するエッチングにより除去し、金属配線のパターンを形成して金属配線を作製する方法がある。
【0129】
本発明の積層体を構成する金属めっき層(D)は、例えば、前記積層体を導電性パターン等に用いる場合に、長期間にわたり断線等を生じることなく、良好な通電性を維持可能な信頼性の高い配線パターンを形成することを目的として設けられる層である。
【0130】
前記金属めっき層(D)を構成する金属としては、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等が挙げられる。これらの中でも、電気抵抗が低く、腐食に強い導電性パターンが得られることから銅が好ましい。
【0131】
本発明の積層体においては、前記めっき下地層(C)中に存在する空隙に金属めっき層(D)を構成する金属が充填されていることが好ましく、前記支持体(A)と前記めっき下地層(C)との界面近傍に存在する前記めっき下地層(C)中の空隙まで、前記金属めっき層(D)を構成する金属が充填されているものが、前記めっき下地層(C)と前記金属めっき層(D)との密着性がより向上するため好ましい。
【0132】
前記金属めっき層(D)は、前記めっき下地層(C)の上に形成される層であるが、その形成方法としては、めっき処理によって形成する方法が好ましい。このめっき処理としては、例えば、電解めっき法、無電解めっき法等の湿式めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法等の乾式めっき法などが挙げられる。また、これらのめっき法を2つ以上組み合わせて、前記金属めっき層(D)を形成しても構わない。
【0133】
上記の無電解めっき法は、例えば、前記めっき下地層(C)を構成する金属に、無電解めっき液を接触させることで、無電解めっき液中に含まれる銅等の金属を析出させ金属皮膜からなる無電解めっき層(皮膜)を形成する方法である。
【0134】
前記無電解めっき液としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等の金属と、還元剤と、水性媒体、有機溶剤等の溶媒とを含有するものが挙げられる。
【0135】
前記還元剤としては、例えば、ジメチルアミノボラン、次亜燐酸、次亜燐酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、フェノール等が挙げられる。
【0136】
また、前記無電解めっき液としては、必要に応じて、酢酸、蟻酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマール酸等のジカルボン酸化合物;リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸化合物;グリシン、アラニン、イミノジ酢酸、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸化合物;イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等のアミノポリカルボン酸化合物などの有機酸、又はこれらの有機酸の可溶性塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物等の錯化剤を含有するものを用いることができる。
【0137】
前記無電解めっき液は、20~98℃の範囲で用いることが好ましい。
【0138】
前記電解めっき法は、例えば、前記めっき下地層(C)を構成する金属、又は、前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(皮膜)の表面に、電解めっき液を接触した状態で通電することにより、前記電解めっき液中に含まれる銅等の金属を、カソードに設置した前記めっき下地層(C)を構成する導電性物質又は前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(皮膜)の表面に析出させ、電解めっき層(金属皮膜)を形成する方法である。
【0139】
前記電解めっき液としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等の金属の硫化物と、硫酸と、水性媒体とを含有するもの等が挙げられる。具体的には、硫酸銅と硫酸と水性媒体とを含有するものが挙げられる。
【0140】
前記電解めっき液は、20~98℃の範囲で用いることが好ましい。
【0141】
上記電解めっき処理法では、毒性の高い物質を用いることなく、作業性がよいため、電解めっき法を用いた銅からなる前記金属めっき層(D)を形成することが好ましい。
【0142】
また、前記乾式めっき処理工程としては、スパッタリング法、真空蒸着法等を用いることができる。前記スパッタリング法は、真空中で不活性ガス(主にアルゴン)を導入し、金属めっき層(D)を形成材料に対してマイナスイオンを印加してグロー放電を発生させ、次いで、前記不活性ガス原子をイオン化し、高速で前記金属めっき層(D)の形成材料の表面にガスイオンを激しく叩きつけ、前記金属めっき層(D)の形成材料を構成する原子及び分子を弾き出し勢いよく前記めっき下地層(C)の表面に付着させることにより金属めっき層(D)を形成する方法である。
【0143】
スパッタリング法による前記金属めっき層(D)の形成材料としては、例えば、クロム、銅、チタン、銀、白金、金、ニッケル-クロム合金、ステンレス、銅-亜鉛合金、インジウムチンオキサイド(ITO)、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ニオブ、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0144】
前記スパッタリング法によりめっき処理する際には、例えば、マグネトロンスパッタ装置等を用いることができる。
【0145】
前記金属めっき層(D)の厚さは0.05~100μmの範囲が好ましく、さらに1~50μmがより好ましく、さらに5~18μmがより好ましい。前記金属めっき層(D)の厚さは、前記金属めっき層(D)の形成する際のめっき処理工程における処理時間、電流密度、めっき用添加剤の使用量等を制御することによって調整することができる。
【0146】
前記金属めっき層(D)の表面は、前述に記載した通り、表面は平滑であることが好ましい。そのため、レーザー顕微鏡で測定した時の表面粗さ(最大高さSz)が0.001~20μmの範囲が好ましく、0.01~15μmの範囲が好ましく、0.05~10μmの範囲がより好ましい。なお、表面粗さ(最大高さSz)とは、ISO 25178に記された評価方法で測定したものであり、表面の最も高い点から最も低い点までの距離を表す。
【0147】
前記金属めっき層(D)のパターニング方法としては、例えば、サブトラクティブ法、セミアディティブ法等のフォトリソ-エッチング法、前記めっき下地層(C)の印刷パターン上にめっきする方法等が挙げられる。
【0148】
前記サブトラクティブ法は、予め製造した本発明の積層体を構成する金属めっき層(D)の上に、所望のパターン形状に対応した形状のエッチングレジスト層を形成し、その後の現像処理によって、前記レジストの除去された部分の前記めっき下地層(C)、前記金属めっき層(D)等を薬液で溶解し除去することによって、所望のパターンを形成する方法である。前記薬液としては、塩化銅、塩化鉄等を含有する薬液を用いることができる。
【0149】
前記セミアディティブ法は、前記支持体(A)の両面又は片面に前記プライマー層(B)及び前記めっき下地層(C)を形成し、前記めっき下地層(C)の表面に、所望のパターンに対応した形状のめっきレジスト層を形成し、次いで、電解めっき法、無電解めっき法又はそれらの組み合わせによって金属めっき層(D)を形成した後、前記めっきレジスト層とそれに接触した前記めっき下地層(C)とを薬液等に溶解し除去することによって、所望のパターンを形成する方法である。
【0150】
また、前記めっき下地層(C)の印刷パターン上にめっきする方法は、前記支持体(A)の両面又は片面に形成した前記プライマー層(B)の上に、インクジェット法、反転印刷法等で前記めっき下地層(C)のパターンを印刷し、前記めっき下地層(C)の表面に、電解めっき法、無電解めっき法又はそれらの組み合わせによって前記金属めっき層(D)を形成することによって、所望のパターンを形成する方法である。
【0151】
前記手法により、金属めっき層(D)をパターニングし、銅配線を形成した後、銅配線の表面に接着層(E)を形成することで配線の粗化処理をすることなく、後述する層間樹脂層(F)との密着に優れる信頼性の高い積層体を製造することが可能となる。
【0152】
前記接着層(E)は、パターニングされた前記金属めっき層(D)の表面の一部又は全部に後述する組成物を含む溶液を塗工し、前記溶液中に含まれる水性媒体、有機溶剤等の溶媒を除去することによって形成することができる。
【0153】
前記接着層(E)をパターニングされた前記金属めっき層(D)の表面に塗工する方法としては、例えば、コーティング方式、ディッピング方式、ローラーコート方式、スピンコート方式、ロータリー方式、スプレー方式、ディスペンサー方式、インクジェット印刷法、パッド印刷法、反転印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法等が挙げられる。具体的にはディップ方式により浸漬させる方法が挙げられる。
【0154】
前記接着層(E)を形成するため前記金属めっき層との密着性をより一層向上することを目的として、例えば、コロナ放電処理法等のプラズマ放電処理法、紫外線処理法等の乾式処理法、水や酸性又はアルカリ性薬液、有機溶剤等を用いた湿式処理法によって、表面処理されていることが好ましい。
【0155】
前記接着層(E)をパターニングされた前記金属めっき層(D)の表面に塗工した後、その塗工層に含まれる溶媒を除去する方法としては、例えば、乾燥機を用いて乾燥させ、前記溶媒を揮発させる方法が一般的である。乾燥温度としては、前記溶媒を揮発させることが可能で、かつ前記支持体(A)と前記プライマー層(B)と前記めっき下地層(C)と前記金属めっき層(D)に熱変形等の悪影響を与えない範囲の温度に設定すればよい。
【0156】
後述する組成物(e)、(e’)、(e’’)、(e’’’)からなる前記接着層(E)の膜厚は、本発明の積層体を用いる用途によって異なるが、パターニングされた前記金属めっき層(D)と後述する層間樹脂層(F)との密着性をより向上し、かつ対樹脂密着性の低下がない範囲が好ましく、前記接着層(E)の膜厚は、0.001~1μmが好ましく、さらに0.005~0.8μmの範囲が好ましく、0.01~0.5μmの範囲がより好ましい。
【0157】
前記接着層(E)の表面は、前述に記載した通り、表面は平滑であることが好ましい。そのため、レーザー顕微鏡で測定した時の表面粗さ(最大高さSz)が0.001~20μmの範囲が好ましく、0.01~15μmの範囲が好ましく、0.05~10μmの範囲がより好ましい。なお、表面粗さ(最大高さSz)とは、ISO 25178に記された評価方法で測定したものであり、表面の最も高い点から最も低い点までの距離を表す。
【0158】
前記接着層(E)の形成に用いる接着層の組成物(e)としては、各種有機化合物と溶媒とを含有するものを用いることができる。
【0159】
前記組成物(e)としては、有機シラン化合物が有機及び無機との密着を担うのに最も好適である。例えば、メルカプトシラン化合物、ビニルシラン化合物、ビニルフェニルシラン化合物、エポキシシラン化合物、アクリロキシシラン化合物、メタクリロキシシラン化合物、アミノシラン化合物、ウレイドシラン化合物、クロロプロピルシラン化合物、スルフィドシラン化合物、イソシアネートシラン化合物、トリアゾールシラン化合物、チアジアゾールシラン化合物、イソシアナトプロピルシラン化合物、スチリルシラン化合物、カルボキシシラン化合物、アルコキシシラン化合物、トリアジンシラン化合物、イミダゾールシラン化合物、アゾールシラン化合物、ピロールシラン化合物、ピラゾールシラン化合物、テトラゾールシラン化合物、インドールシラン化合物、イソインドールシラン化合物、インダゾールシラン化合物、ベンズイミダゾールシラン化合物、ベンゾトリアゾールシラン化合物等が挙げられる。また、これらのシラン化合物は、1種で用いることも2種類以上併用することもできる。例えば、四国化成工業製株式会社製Glicap処理を用いることができる。
【0160】
前記組成物(e’)として、有機樹脂組成物もまた、有機及び無機との密着を担うのに好適である。例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネートポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。なお、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂は、例えば、ウレタン樹脂存在下でアクリル単量体を重合することにより得られる。また、これらの樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0161】
前記組成物(e’’)として、分子接合に用いられる有機化合物もまた、有機及び無機との密着を担うのに好適である。例えば、トリアジンチオール化合物、トリアジンアジド化合物、トリアジンアミノ化合物、トリアジンイソイアナート化合物、トリアジンウレタン化合物、トリアジンエステル化合物、トリアジンシラン化合物等が挙げられる。また、これらの樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。例えば、株式会社いおう化学研究所製分子接合処理を用いることができる。
【0162】
また、前記組成物(e)からなる接着層(E)の塗料は、パターニングされた前記金属めっき層(D)の表面に塗工することになるので、塗工しやすい粘度とするため、水性媒体や有機溶剤を配合することが好ましい。前記水性媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等が挙げられる。また、前記有機溶剤としては、アルコール化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
【0163】
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0164】
また、前記組成物(e)からなる接着層(E)の塗料は、必要に応じて、皮膜形成助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を適宜添加してもよい。
【0165】
前記組成物(e)からなる接着層(E)の塗料を、パターニングされた前記金属めっき層(D)の表面に形成した後、その塗工層に含まれる溶剤を除去する方法としては、例えば、乾燥機を用いて乾燥させ、有機溶剤を揮発させる方法が一般的である。
【0166】
前記組成物(e)からなる接着層(E)の塗料の乾燥温度としては、10℃~200℃の範囲が好ましく、20℃~150℃の範囲がより好ましく、30℃~120℃の範囲がさらに好ましい。
【0167】
また、前記組成物(e’)若しくは前記組成物(e’’)からなる接着層(E)の塗料は、パターニングされた前記金属めっき層(D)の表面に塗工することになるので、塗工しやすい粘度とするため、有機溶剤を配合することが好ましい。前記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソプロピルアルコール、ダイアセトンアルコール、エチレングリコール、トルエン等が挙げられる。これらの溶剤は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0168】
また、前記組成物(e’)若しくは前記組成物(e’’)からなる接着層(E)の塗料には、必要に応じて、皮膜形成助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を適宜添加してもよい。
【0169】
前記組成物(e’)若しくは前記組成物(e’’)からなる接着層(E)の塗料を、パターニングされた前記金属めっき層(D)の表面に形成した後、その塗工層に含まれる有機溶剤を除去する方法としては、例えば、乾燥機を用いて乾燥させ、有機溶剤を揮発させる方法が一般的である。
【0170】
前記組成物(e’)若しくは前記組成物(e’’)からなる接着層(E)の乾燥温度としては、50℃~400℃の範囲が好ましく、80℃~340℃の範囲がより好ましく、120℃~280℃の範囲が好ましく、150℃~200℃の範囲がさらに好ましい。
【0171】
前記接着層(E)の形成に用いる接着層の組成物(e’’’)としては、各種金属イオンと溶媒とを含有するものを用いることができる。
【0172】
前記組成物(e’’’)として、複数の金属からなる合金の組成物もまた、有機及び無機との密着を担うのに好適である。例えば、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ、銀、ビスマス、亜鉛、アルミニウム、チタン、鉄、マンガン、インジウム、モリブデン、金、パラジウム、白金、ジルコニウム、タングステン、ルテニウム等が挙げられる。また、これらの金属は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。例えば、メック株式会社製フラットボンド処理を用いることができる。
【0173】
前記組成物(e’’’)からなる接着層(E)の形成方法としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等の金属の硫化物と、硫酸と、水性媒体とを含有するもの等が挙げられる。具体的には、硫酸などの無機酸や酢酸などの有機酸と硫酸第一スズなどの第一スズ塩と酢酸銀などの金属の塩とチオ尿素などの反応促進剤とジエチレングリコールなどの拡散系保持溶媒を含有する水溶液を用いる。この混合水溶液と、パターニングされた金属めっき層(D)を接触させることで、金属めっき層(D)の金属が前記組成物(e’’’)の金属に置き換わることで接着層(E)を形成することができる(置換めっき法)。よって、前記組成物(e’’’)を用いた場合、パターニングされた前記金属めっき層(D)と、パターニングされた前記めっき下地層(C)の表面にのみ、前記接着層(E)が形成できる。
【0174】
前記前記組成物(e’’’)からなる接着層(E)を形成する処理液を用いた表面処理時の表面処理温度としては、10℃~70℃の範囲が好ましく、20℃~60℃の範囲がより好ましく、30℃~50℃の範囲がさらに好ましい。
【0175】
また、前記組成物(e)、(e’)、(e’’)(e’’’)からなる接着層(E)は、1層でも良く、2層以上あっても良い。例えば、前記組成物(e’’’)からなる接着層(E)を形成した後に、前記組成物(e)からなる接着層(E)を更に形成することで、前記金属めっき層(D)と後述する層間樹脂層(F)とをより強固に密着させることが出来る。また、前記組成物(e)の有機シラン化合物を用いることが好ましい。
【0176】
次に、接着層(E)を形成した積層体と層間樹脂層(F)との積層方法について説明する。
【0177】
層間樹脂層(F)は接着層(E)が積層した積層体を多層化する際に配線表面の接着層(E)及び基材表面のプライマー層(B)と好適に密着することができる。
【0178】
層間樹脂層(F)の形成に用いられる組成物としては、絶縁性に優れた樹脂を用いることができる。例えば、ガラス繊維とエポキシ樹脂の複合基材(ガラスエポキシ樹脂、FR-4、FR-5)、紙とエポキシ樹脂の複合基材(FR-3)、ガラス不織布とエポキシ樹脂の複合基材(CEM-3)、紙とガラス不織布とエポキシ樹脂の複合基材(CEM-1)、紙とフェノール樹脂の複合基材(紙フェノール樹脂、FR-1、FR-2)、ガラス繊維とPPE樹脂の複合基材(例えばパナソニック製メグトロン6、メグトロン7、メグトロン8)、ガラス繊維とマレイミド樹脂の複合基材、ビスマレイミドートリアジン樹脂(BT樹脂)、セラミックとフッ素樹脂の複合基材(例えばロジャース製RO3003)、シリカとエポキシ樹脂の複合基材(例えば味の素社製ビルドアップフィルム)、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シクロオレフィン樹脂、モディファイドポリイミド樹脂(MPI)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、フッ素樹脂複合ポリイミド樹脂(ポリイミド樹脂の表面にフッ素樹脂層を形成したフィルム、ポリイミド樹脂とフッ素樹脂を交互に積層した多層フィルム)、熱可塑性ポリイミド樹脂複合ポリイミド樹脂(ポリイミド樹脂の表面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を形成したフィルム)等が挙げられる。
【0179】
また、層間樹脂層(F)としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維等の合成繊維、カーボンファイバー等の無機繊維、セルロースナノファイバー等の天然繊維等が挙げられる。
【0180】
また、層間樹脂層(F)は、プリプレグ状、無電解めっき用接着剤、フィルム状樹脂、液状樹脂、感光性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができる。また、前記接着層(E)は、ソルダーレジスト、エッチングレジスト、導電性樹脂、導電性ペースト、導電性接着剤、誘電体用樹脂、穴埋め用樹脂、フレキシブルカバーレイフィルム等との密着力も向上させる。
【0181】
層間樹脂層(F)を接着層(E)が形成した積層体へ形成する方法として、前記支持体(A)がフレキシブル材でロールフィルムである場合は、熱ロールラミネート法、無溶剤ラミネート法、押し出しラミネート法、ウエットラミネート法を用いることが好ましい。特に簡便に処理できることから、熱ロールラミネート法がより好ましい。一方、前記支持体(A)がリジット材の場合は、枚葉で熱圧着する場合が多いため、プレス法、真空プレス法、真空熱ラミネート法、を用いることが好ましい。
【0182】
熱圧着条件について、加熱条件は、50℃~400℃の範囲が好ましく、80℃~350℃の範囲がより好ましく、80℃~280℃の範囲がより好ましく、100℃~200℃の範囲がより好ましく、120~180℃の範囲がより好ましい。圧力条件としては、0.05MPa~35MPaの範囲が好ましく、0.3MPa~20MPaの範囲がより好ましい。
【0183】
熱圧着の処理時間としては、熱ロールラミネートの場合、搬送しながらロールの線圧により熱圧着することになるため、1秒以内で処理することになる。一方で、枚葉で処理するプレスや真空プレス、真空熱ラミネートの場合は、1秒~120分の範囲が好ましく、30秒~60分の範囲が好ましく、30秒~15分の範囲がより好ましく、生産性の観点から1分~5分の範囲で処理することが好ましい。
【0184】
また、熱圧着する場合、前記接着層(E)を有する積層体と前記層間樹脂層(F)の間に空気が入り込んだり、前記接着層(E)を有する積層体や前記層間樹脂層(F)から発生するガスで、接着層(E)を有する積層体と前記層間樹脂層(F)の間にガスがたまり転写率が低下するため、真空プレスを用いて真空下で熱圧着をすることが好ましい。真空条件としては、絶対圧力として100hPa以下が好ましく、50hPa以下がより好ましく、13hPa以下がより好ましい。加熱条件や圧力条件は、前述と同じ条件で処理することが好ましい。
【0185】
また、前記接着層(E)を有する積層体と前記層間樹脂層(F)を貼り合わせる際、多層配線板を形成するために、層間樹脂層上に導電層や配線板を積層することで、多層配線板を形成することが出来る。
【0186】
前記層間樹脂層(F)を形成する際に銅箔を積層することで、積層体の多層構造を形成することが出来るため、接着層(E)を形成した積層体、層間樹脂層(F)、銅箔を順次貼り合わせることにより、多層配線板を形成することが出来る。
【0187】
前記層間樹脂層(F)を形成する際に配線板を積層することで、積層体の多層構造を形成することが出来るため、接着層(E)を形成した積層体、層間樹脂層(F)、配線板を順次貼り合わせることにより、多層配線板を形成することが出来る。
【0188】
前記層間樹脂層(F)を形成した後、多層化配線の接続を行うため、スパッタ法や無電解めっきによる導電化処理を行うことで、導電層を形成した多層配線板を形成することが出来る。
【0189】
上記、導電層を形成した多層配線板は導電化処理の前に、層間樹脂層にスルーホールを形成した後に導電化処理を行うことで、金属層と導電層を電気的に接続することが可能である。
【0190】
従来の粗化処理により形成した多層配線板に対し、本発明は平滑な基材と平滑な銅配線に対し、表面に薄膜の接着層を形成することで、多層化配線板の層間樹脂との高い密着を発現し、伝送特性に優れ、高い信頼性を持つ金属回路基板を提供することができる。従って、本発明の積層体は、例えば、プリント配線板、リジットプリント配線版、フレキシブルプリント配線板、パッケージ基板、金属基板、タッチパネル用メタルメッシュ、有機太陽電池、有機EL素子、LED電極用配線基板、有機トランジスタ、非接触ICカード等のRFID、電磁波シールド、LED照明基材、デジタルサイネージ、光電融合デバイス、インターポーザなどの電子部材として好適に用いることができる。
【実施例0191】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、いずれも質量基準である。
【0192】
[調製例1:プライマー層(B)形成用の塗工液(1)の調製]
フェノキシ樹脂4250(三菱ケミカル株式会社製ビスフェノールA/ビスフェノールF混合タイプ、分子量60,000、固形分100質量%)を60質量部、アミノトリアジンノボラック樹脂(DIC株式会社製「フェノライトLA-7052」、固形分60質量%)33質量部、エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON EXA-830CRP」;ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ基当量162g/当量)17質量部、トリメリット酸無水物を3質量部、および、硬化触媒として四国化成株式会社製「TBZ」0.5質量部を混合し、シクロヘキサノンを用いて不揮発分が2質量%となるように希釈し、均一に混合することで、プライマー層(B)形成用の塗工液(1)を得た。
【0193】
[調製例2:めっき下地層(C)形成用の塗工液(1)の調製]
窒素雰囲気下、メトキシポリエチレングリコール(数平均分子量2,000)20質量部、ピリジン8.0質量部およびクロロホルム20mlを含む混合物に、p-トルエンスルホン酸クロライド9.6質量部を含むクロロホルム(30ml)溶液を、氷冷撹拌しながら30分間滴下した後、浴槽温度40℃で4時間攪拌し、クロロホルム50mlを混合した。
次いで、得られた生成物を、5質量%塩酸水溶液100mlで洗浄し、次いで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで洗浄し、次いで飽和食塩水溶液100mlで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、濾過、減圧濃縮し、ヘキサンで数回洗浄した後、濾過し、80℃で減圧乾燥することによって、p-トルエンスルホニルオキシ基を有するメトキシポリエチレングリコールを得た。
p-トルエンスルホニルオキシ基を有するメトキシポリエチレングリコール5.39質量部、ポリエチレンイミン(アルドリッチ社製、分子量25,000)20質量部、炭酸カリウム0.07質量部およびN,N-ジメチルアセトアミド100mlを混合し、窒素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。
次いで、酢酸エチルとヘキサンとの混合溶液(酢酸エチル/ヘキサンの体積比=1/2)300mlを加え、室温で強力攪拌した後、生成物の固形物を濾過した。その固形物を、酢酸エチルとヘキサンの混合溶液(酢酸エチル/ヘキサンの体積比=1/2)100mlを用いて洗浄した後、減圧乾燥することによって、ポリエチレンイミンにポリエチレングリコールが結合した化合物を得た。
得られたポリエチレンイミンにポリエチレングリコールが結合した化合物を0.592質量部含む水溶液138.8質量部と、酸化銀10質量部とを混合し、25℃で30分間攪拌した。次いで、ジメチルエタノールアミン46質量部を攪拌しながら徐々に加え、25℃で30分間攪拌した。続いて、10質量%アスコルビン酸水溶液15.2質量部を攪拌しながら徐々に加え20時間攪拌を続けることによって銀の分散体を得た。
得られた銀の分散体にイソプロピルアルコール200mlとヘキサン200mlの混合溶剤を加え2分間攪拌した後、3,000rpmで5分間遠心濃縮を行った。上澄みを除去した後、沈殿物にイソプロピルアルコール50mlとヘキサン50mlの混合溶剤を加えて2分間攪拌した後、2,000rpm10分間遠心濃縮を行った。上澄みを除去した後、沈殿物にさらに水20質量部を加えて2分間攪拌して、減圧下有機溶剤を除去した。さらに水10質量部を加えて攪拌分散した後、該分散体を-40℃の冷凍機に1昼夜放置して凍結し、これを凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製 FDU-2200)で24時間処理することによって、灰緑色の金属光沢があるフレーク状の塊からなる塩基性窒素原子含有基を有する分散剤を含有する銀粒子を得た。
得られた塩基性窒素原子含有基を有する分散剤を含有する銀粒子の粉末を、エタノール45質量部と、イオン交換水55質量部との混合溶媒に分散させて、5質量%のめっき下地層(C)形成用の塗工液(1)を調製した。得られた銀粒子について、電気炉で500℃1時間加熱した灰分から分散剤の割合を計算した結果、銀固形分100質量%に対し5質量%であることを確認した。
【0194】
<調整例3:転写用積層体(1)の調整>
離型フィルム(東洋紡株式会社製「TN-200」、離型PETフィルム;厚さ38μm)の離型層を形成している面に、調整例2で得られためっき下地層(C)形成用の塗工液(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて塗工し、150℃で5分間乾燥することによって、前記めっき下地層(C)に相当する銀層を乾燥後の厚さが0.1μmとなるように塗工した。その後、調整例1で得られたプライマー層(B)形成用の塗工液(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて塗工し、180℃で3分間乾燥することによって、前記プライマー層(B)に相当する層を乾燥後の厚さが0.3μmとなるように塗工することによって、前記仮支持体(G)に相当する離型フィルムの表面に、めっき下地層(C)とプライマー層(B)を形成し、転写用積層体(1)を得た。
【0195】
(調整例4:単層回路基板の積層体(1)の調整)
プリプレグ(パナソニック株式会社製R5670、ガラス繊維含有、厚み0.1mm、表面粗さSz:20.815μm)の両面に銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の光沢面(非粗化面)を貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。その後、40℃の塩化第二鉄エッチング液(含有量40質量%)に3分間浸漬し、銅箔を全面エッチングすることで、前記支持体(D)に相当するプリプレグが硬化したリジット基材を得た。リジット基材の表面粗さはSz4.215μmであり、平滑化されていることを確認した。その後、前記リジット基材の両面にコロナ処理(春日電機株式会社製「コロナ表面改質評価装置TEC-4AX」、電極-基材間距離0.5mm、100W)を実施した。その後、調整例3で得た転写用積層体(1)の前記プライマー層(B)が形成された面を、前記リジッド基材の両面に貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、プレスの上面熱板をSUS,下面熱板をSUSにして、上面熱板温度を150℃、下面熱板温度を150℃にして、圧力5MPa、10分間熱圧着した。次いで、前記リジッド基材の両面に熱圧着した転写用積層体(1)の離型フィルムのみを剥離することによって、プリプレグを硬化したリジッド基材の両面に前記プライマー層(B)とめっき下地層(C)を形成した。
【0196】
その後、セミアディティブ法で導電性パターンを形成した。パターンは、後述する評価に必要な形状とした。前記めっき下地層(C)の表面に、めっきレジスト(昭和電工マテリアルズ株式会社製「RY-5125」、厚み25μm)を110℃、0.4MPa、1m/分で前記めっき下地層(C)の表面に貼り合わせ、露光機(サンハヤト株式会社製「BOX-W10」)で、2分間処理(316mJ/cm2)の露光処理を行い、次いで現像液(1質量%炭酸ナトリウム水溶液)に5分浸漬し、現像処理を行うことでめっきレジストを形成した。その後、めっきレジストを現像により除去した後のめっき下地層(C)の部分に、電解銅めっきにより厚み18μmの金属めっき層(D)を形成した。次いで、3質量%水酸化ナトリウムに3分間浸漬することで、めっきレジストを剥離した。次いで、エッチング液(ADEKA株式会社製SVE-A810)を用いて、前記めっき下地層(C)を溶解させることで、回路パターンを形成した単層回路基板の積層体(1)を得た。
【0197】
(調整例5:単層回路基板の積層体(2)の調整)
プリプレグ(パナソニック株式会社製R5670、ガラス繊維含有、厚み0.1mm、表面粗さSz:20.815μm)の両面に銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の粗化面を貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。
【0198】
その後、サブトラクティブ法で導電性パターンを形成した。パターンは、後述する評価に必要な形状とした。エッチングレジスト(昭和電工マテリアルズ株式会社製「RY-5125」、厚み25μm)を110℃、0.4MPa、1m/分で前記金属層(D)の表面に貼り合わせ、露光機(サンハヤト株式会社製「BOX-W10」)で、2分間処理(316mJ/cm2)の露光処理を行い、次いで現像液(1質量%炭酸ナトリウム水溶液)に5分浸漬し、現像処理を行うことでパターンレジストを形成した。次いで、塩化第二銅溶液を用いて、前記金属層(D)を溶解させた後に3質量%水酸化ナトリウムに3分間浸漬することで、めっきレジストを剥離することで、回路パターンを形成した単層回路基板の積層体(2)を得た。
【0199】
(調整例6:単層回路基板の積層体(3)の調整)
プリプレグ(パナソニック株式会社製R5670、ガラス繊維含有、厚み0.1mm、表面粗さSz:20.815μm)の両面に銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の光沢面(非粗化面)を貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。その後、40℃の塩化第二鉄エッチング液(含有量40質量%)に3分間浸漬し、銅箔を全面エッチングすることで、前記支持体(D)に相当するプリプレグが硬化したリジット基材を得た。リジット基材の表面粗さはSz4.215μmであり、平滑化されていることを確認した。その後、前記リジット基材の両面にコロナ処理(春日電機株式会社製「コロナ表面改質評価装置TEC-4AX」、電極-基材間距離0.5mm、100W)を実施した。その後、調製例2:めっき下地層(C)形成用の塗工液(1)を、卓上小型スピンコーター(ミカサ株式会社製Opticoat MS-A150)を用いて塗工し、120℃で5分間乾燥させることによって、前記めっき下地層(C)に相当する銀層を乾燥後の厚さが0.1μmとなるように塗工した。
【0200】
その後、セミアディティブ法で導電性パターンを形成した。パターンは、後述する評価に必要な形状とした。前記めっき下地層(C)の表面に、めっきレジスト(昭和電工マテリアルズ株式会社製「RY-5125」、厚み25μm)を110℃、0.4MPa、1m/分で前記めっき下地層(C)の表面に貼り合わせ、露光機(サンハヤト株式会社製「BOX-W10」)で、2分間処理(316mJ/cm2)の露光処理を行い、次いで現像液(1質量%炭酸ナトリウム水溶液)に5分浸漬し、現像処理を行うことでめっきレジストを形成した。その後、めっきレジストを現像により除去した後のめっき下地層(C)の部分に、電解銅めっきにより厚み18μmの金属めっき層(D)を形成した。次いで、3質量%水酸化ナトリウムに3分間浸漬することで、めっきレジストを剥離した。次いで、エッチング液(ADEKA株式会社製SVE-A810)を用いて、前記めっき下地層(C)を溶解させることで、回路パターンを形成した単層回路基板の積層体(3)を得た。
【0201】
(実施例1)
前記、単層回路基板の積層体(1)に5質量%の塩酸を60秒間室温でスプレーして洗浄した後、水洗、乾燥させた。その後、3-[3-(トリメトキシシリル)プロピルチオ]―1,2,4,―トリアゾール1質量%、エチレングリコールモノブチルエーテル20質量%、残部イオン交換水からなる水溶液に1分間、室温で浸漬させ、水洗、乾燥させることで積層体(1)の配線表面にのみ厚み100nmの接着層(E)を形成させた多層化回路基板用積層体(1)を得た。
【0202】
(実施例2)
前記、単層回路基板の積層体(1)に5質量%の塩酸を60秒間室温でスプレーして洗浄した後、水洗、乾燥させた。その後、調製例1:プライマー層(B)形成用の塗工液(1)を1分間、室温で浸漬させ、洗浄、乾燥させることで、積層体(1)の配線表面にのみ厚み100nmの接着層(E)を形成させた多層化回路基板用積層体(2)を得た。
【0203】
(実施例3)
前記、単層回路基板の積層体(1)に5質量%の塩酸を60秒間室温でスプレーして洗浄した後、水洗、乾燥させた。その後、6―(3―(トリエトキシシリル)プロピルアミノ)―1,3,5―トリアジンー2,4―ジチオール・モノナトリウムを0.2質量%、エタノール5質量%、残部イオン交換水からなる水溶液に1分間、室温で浸漬させ、水洗、乾燥させることで積層体(1)の配線表面にのみ厚み100nmの接着層(E)を形成させた多層化回路基板用積層体(3)を得た。
【0204】
(実施例4)
前記、単層回路基板の積層体(1)に5質量%の塩酸を60秒間室温でスプレーして洗浄した後、水洗、乾燥させた。その後、酢酸20質量%、酢酸第一スズ2質量%、酢酸銀3質量%、チオ尿素15質量%、ジエチレングリコール30質量%及び残部イオン交換水からなる水溶液に30℃、30秒間の条件で浸漬させたのち水洗、乾燥させることで積層体(1)の配線表面にのみ厚み100nmの接着層(E)を形成させた多層化回路基板用積層体(4)を得た。
【0205】
(実施例5)
調整液に浸漬させた後、乾燥させることで配線表面と基材表面の接着層(E)を形成する以外は、実施例1と同様な方法で多層化回路基板用積層体(5)を得た。
【0206】
(実施例6)
厚み25μmの接着層(E)を用いる以外は、実施例5と同様な方法で多層化回路基板用積層体(6)を得た。
【0207】
(比較例1)
前記、単層回路基板の積層体(1)の両面に5質量%の塩酸を60秒間室温でスプレーして洗浄した後、水洗、乾燥させた多層化回路基板用積層体(R1)を得た。
【0208】
(比較例2)
前記、単層回路基板の積層体(1)の両面に、5質量%の塩酸を60秒間室温でスプレーして洗浄した後、水洗、乾燥させた。その後、過酸化水素・硫酸によるマイクロエッチングにて粗化処理を行い、配線のみを粗化した多層化回路基板用積層体(R2)を得た。
【0209】
(比較例3)
前記、単層回路基板の積層体(2)の両面に5質量%の塩酸を60秒間室温でスプレーして洗浄した後、水洗、乾燥させた多層化回路基板用積層体(R3)を得た。
【0210】
(比較例4)
前記、単層回路基板の積層体(2)に、5質量%の塩酸を60秒間室温でスプレーして洗浄した後、水洗、乾燥させた。その後、過酸化水素・硫酸によるマイクロエッチングにて粗化処理を行い、配線のみを粗化した多層化回路基板用積層体(R4)を得た。
【0211】
(比較例5)
前記、単層回路基板の積層体(2)に5質量%の塩酸を60秒間室温でスプレーして洗浄した後、水洗、乾燥させた。その後、3-[3-(トリメトキシシリル)プロピルチオ]―1,2,4,―トリアゾール1質量%、エチレングリコールモノブチルエーテル20質量%、残部イオン交換水からなる水溶液に1分間、室温で浸漬させ、水洗、乾燥させることで前記単層回路基板の積層体(2)の配線表面にのみ厚み100nmの接着層(E)を形成させた多層化回路基板用積層体(R5)を得た。
【0212】
(比較例6)
前記、単層回路基板の積層体(3)に5質量%の塩酸を60秒間室温でスプレーして洗浄した後、水洗、乾燥させた。その後、3-[3-(トリメトキシシリル)プロピルチオ]―1,2,4,―トリアゾール1質量%、エチレングリコールモノブチルエーテル20質量%、残部イオン交換水からなる水溶液に1分間、室温で浸漬させ、水洗、乾燥させることで前記単層回路基板の積層体(3)の配線表面にのみ厚み100nmの接着層(E)を形成させた多層化回路基板用積層体(R6)を得た。
【0213】
<基材表面粗さ;レーザー顕微鏡による評価>
前記で得た多層化回路基板用積層体の基材の表面粗さをレーザー顕微鏡により測定を行った。測定に用いた範囲は250×250μmの表面粗さSzを用いて判定を行った。
上記で測定した基材の表面粗さの値から、下記の基準にしたがって密着性を評価した。
A:基材の表面粗さSz値が3.0μm未満である。
B:基材の表面粗さSz値が3.0μm以上、4.0μm未満である。
C:基材の表面粗さSz値が4.0μm以上、6.0μm未満である。
D:基材の表面粗さSz値が6.0μm以上、10.0μm未満である。
E:基材の表面粗さSz値が10.0μm以上である。
【0214】
<銅配線表面粗さ;レーザー顕微鏡による評価>
前記で得た多層化回路基板用積層体の配線の表面粗さをレーザー顕微鏡により測定を行った。測定に用いた範囲は250×250μmの表面粗さSzを用いて判定を行った。
上記で測定した基材の表面粗さの値から、下記の基準にしたがって密着性を評価した。
A:基材の表面粗さSz値が3.0μm未満である。
B:基材の表面粗さSz値が3.0μm以上、4.0μm未満である。
C:基材の表面粗さSz値が4.0μm以上、6.0μm未満である。
D:基材の表面粗さSz値が6.0μm以上、10.0μm未満である。
E:基材の表面粗さSz値が10.0μm以上である。
【0215】
<常態密着強度;基材とプリプレグ界面のピール試験による評価>
前記で得た多層化回路基板用積層体の両面にプリプレグ(パナソニック株式会社製R5670、ガラス繊維含有、厚み0.1mm、表面粗さSz:20.815μm)と銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の粗化面を貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。その後、基材とプリプレグ界面のピール強度測定を行った。ピール強度測定は、IPC-TM-650、NUMBER2.4.9に準拠した方法により行った。測定に用いるリード幅は5mm、そのピールの角度は90°とした。
上記で測定した加熱前の剥離強度の値から、下記の基準にしたがって密着性を評価した。
A:剥離強度の値が700N/m以上である。
B:剥離強度の値が600N/m以上、700N/m未満である。
C:剥離強度の値が500N/m以上、600N/m未満である。
D:剥離強度の値が400N/m以上、500N/m未満である。
E:剥離強度の値が400N/m未満である。
【0216】
<常態密着強度;銅配線とプリプレグ界面のピール試験による評価>
前記で得た多層化回路基板用積層体の両面にプリプレグ(パナソニック株式会社製R5670、ガラス繊維含有、厚み0.1mm、表面粗さSz:20.815μm)と銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の粗化面を貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。その後、配線とプリプレグ界面のピール強度測定を行った。ピール強度測定は、IPC-TM-650、NUMBER2.4.9に準拠した方法により行った。測定に用いるリード幅は5mm、そのピールの角度は90°とした。
上記で測定した加熱前の剥離強度の値から、下記の基準にしたがって密着性を評価した。
A:剥離強度の値が700N/m以上である。
B:剥離強度の値が600N/m以上、700N/m未満である。
C:剥離強度の値が500N/m以上、600N/m未満である。
D:剥離強度の値が400N/m以上、500N/m未満である。
E:剥離強度の値が400N/m未満である。
【0217】
<耐熱性試験:基材とプリプレグの界面における膨れ発生数の評価>
前記で得た多層化回路基板用積層体の両面にプリプレグ(パナソニック株式会社製R5670、ガラス繊維含有、厚み0.1mm、表面粗さSz:20.815μm)と銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の粗化面を貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。その後、260℃の恒温器に5分間入れた後に取り出す作業を10回繰り返し、積層体に発生する膨れの発生数を評価した。目視にて膨れが発生しているか判断し、膨れの数をカウントした。基材とプリプレグが界面を形成している領域から100mm×100mmを切り出して、評価を行った。
A:膨れの数が0個である。
B:膨れの数が0個以上、5個未満である。
C:膨れの数が5個以上、10個未満である。
D:膨れの数が10個以上、20個未満である。
E:膨れの数が20個以上である。
【0218】
<耐熱性試験:銅膜とプリプレグの界面における膨れ発生数の評価>
前記で得た多層化回路基板用積層体の両面にプリプレグ(パナソニック株式会社製R5670、ガラス繊維含有、厚み0.1mm、表面粗さSz:20.815μm)と銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の粗化面を貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。その後、260℃の恒温器に5分間入れた後に取り出す作業を10回繰り返し、積層体に発生する膨れの発生数を評価した。目視にて膨れが発生しているか判断し、膨れの数をカウントした。銅膜とプリプレグが界面を形成している領域から100mm×100mmを切り出して、評価を行った。
A:膨れの数が0個である。
B:膨れの数が0個以上、5個未満である。
C:膨れの数が5個以上、10個未満である。
D:膨れの数が10個以上、20個未満である。
E:膨れの数が20個以上である。
【0219】
<伝送特性評価;ストリップライン構造の伝送特性評価>
前記で得た多層化回路基板用積層体の片面にプリプレグ(パナソニック株式会社製R5670、ガラス繊維含有、厚み0.1mm、表面粗さSz:20.815μm)と銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の粗化面を貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。その後、最外層の銅箔と内層回路の導通を取るためにCO2レーザーにて、スルーホール形成を行い、過マンガン酸処理によりデスミア工程を行った。その後、Sn/Pd触媒を用いて、触媒担持後、無電解銅めっき処理を行い、パネルめっきにより内層回路と銅箔の接続を取った後、サブトラクティブ法にて最外層のパターニングを行うことで、ストリップライン構造の伝送特性評価用クーポンを作製した。
伝送特性評価のストリップライン線路の構造は内層配線幅が100μm、厚み:35μm、インピーダンスが50Ωとなるように設計し、伝送特性は60GHzでの伝送損失の値を評価した。
上記で測定した伝送特性評価の値から、下記の基準にしたがって評価した。
A:伝送損失の値が-11dB以上である。
B:伝送損失の値が-11dB未満、-12dB以上である。
C:伝送損失の値が-12dB未満、-13dB以上である。
D:伝送損失の値が-13dB未満、-14dB以上である。
E:伝送損失の値が-14dB未満である。
【0220】
実施例1~6は、単層回路基板の積層体(1)を用い、各種接着層(E)を形成したものであり、良好な結果であった。
【0221】
一方、比較例1は、単層回路基板の積層体(1)を用い、接着層(E)を形成していない例になり、銅配線とプリプレグの密着力は低く、銅配線とプリプレグ界面で膨れが多数見られた。また、比較例2は、銅配線の表面を粗化処理しているため、銅配線の表面粗さが大きく、伝送特性評価における伝送損失が大きくなった。比較例3~5では、粗化された銅箔を用いた銅配線となるため、伝送特性における伝送損失が大きくなった。また、比較例6は、単層回路基板の積層体(3)を用いたプライマー層(B)を設けなかった例である。プライマー層(B)を設けていないため、平滑な基材とプリプレグの界面の密着力が低くかった。また、銅膜とプリプレグ界面の密着力も低く、評価後のサンプルの剥離部を詳細に調べた結果、基材とめっき下地層(C)の界面で破壊していた。また、耐熱試験後に、基材とプリプレグの界面、銅膜とプリプレグの界面の両方で膨れが多数発生した。
【0222】
【0223】