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特開2024-155027両吸込羽根車及び両吸込羽根車の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155027
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】両吸込羽根車及び両吸込羽根車の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/24 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
F04D29/24 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069389
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】宦 晴ユン
(72)【発明者】
【氏名】香川 修作
(72)【発明者】
【氏名】中村 陽一
(72)【発明者】
【氏名】趙 令家
(72)【発明者】
【氏名】野村 俊行
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 高幹
(72)【発明者】
【氏名】陳 思詠
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB46
3H130AB58
3H130AC30
3H130BA66C
3H130CA06
3H130CB05
3H130CB09
3H130EA06C
3H130ED01C
(57)【要約】
【課題】ポンプの右上がり特性を改善することができる、簡易な構成で容易に製造可能な両吸込羽根車を提供する。
【解決手段】 両吸込羽根車であって、回転軸に固定されるように構成される主板と、回転軸に沿って主板の第1の側及び第2の側に設けられる一対の側板と、両吸込羽根車の内周部から外周部に向かう流路を形成するように、一対の側板の各々と主板との間で周方向に配置される複数の羽根と、を備え、主板が、一対の側板の外径及び複数の羽根の外径より大きい外径を有する、両吸込羽根車。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両吸込羽根車であって、
回転軸に固定されるように構成される主板と、
前記回転軸に沿って前記主板の第1の側及び第2の側に設けられる一対の側板と、前記両吸込羽根車の内周部から外周部に向かう流路を形成するように、前記一対の側板の各々と前記主板との間で周方向に配置される複数の羽根と、を備え、
前記主板が、前記一対の側板の外径及び前記複数の羽根の外径より大きい外径を有する、両吸込羽根車。
【請求項2】
請求項1に記載の両吸込羽根車であって、
前記一対の側板と前記複数の羽根が等しい外径を有する、両吸込羽根車。
【請求項3】
請求項1に記載の両吸込羽根車であって、
前記複数の羽根は、前記主板の前記第1の側に設けられる複数の第1の羽根と、前記主板の前記第2の側に設けられる複数の第2の羽根とを含み、
前記複数の第1の羽根と前記複数の第2の羽根は、前記両吸込羽根車の周方向に関して互い違いになるように配置されている、両吸込羽根車。
【請求項4】
請求項2に記載の両吸込羽根車であって、
前記複数の羽根は、前記主板の前記第1の側に設けられる複数の第1の羽根と、前記主板の前記第2の側に設けられる複数の第2の羽根とを含み、
前記複数の第1の羽根と前記複数の第2の羽根は、前記両吸込羽根車の周方向に関して互い違いになるように配置されている、両吸込羽根車。
【請求項5】
請求項3に記載の両吸込羽根車であって、
前記複数の第1の羽根と前記複数の第2の羽根が互いに等しい枚数で設けられており、
前記複数の第1の羽根及び前記複数の第2の羽根が、それぞれ、前記主板の前記第1の側及び前記主板の前記第2の側で、互いに等しい翼ピッチで且つ互いに位相がずれるように位置決めされている、両吸込羽根車。
【請求項6】
請求項4に記載の両吸込羽根車であって、
前記複数の第1の羽根と前記複数の第2の羽根が互いに等しい枚数で設けられており、
前記複数の第1の羽根及び前記複数の第2の羽根が、それぞれ、前記主板の前記第1の側及び前記主板の前記第2の側で、互いに等しい翼ピッチで且つ互いに位相がずれるように位置決めされている、両吸込羽根車。
【請求項7】
請求項1に記載の両吸込羽根車であって、
前記主板は、前記第1の側及び前記第2の側で、それぞれ、前記一対の側板及び前記複数の羽根の外周縁部より外周側に延在する、環状の第1の表面及び第2の表面を有し、
前記第1の表面及び前記第2の表面は、それぞれ、複数の溝を含む、両吸込羽根車。
【請求項8】
請求項2に記載の両吸込羽根車であって、
前記主板は、前記第1の側及び前記第2の側で、それぞれ、前記一対の側板及び前記複数の羽根の外周縁部より外周側に延在する、環状の第1の表面及び第2の表面を有し、
前記第1の表面及び前記第2の表面は、それぞれ、複数の溝を含む、両吸込羽根車。
【請求項9】
請求項3に記載の両吸込羽根車であって、
前記主板は、前記第1の側及び前記第2の側で、それぞれ、前記一対の側板及び前記複数の羽根の外周縁部より外周側に延在する、環状の第1の表面及び第2の表面を有し、
前記第1の表面及び前記第2の表面は、それぞれ、複数の溝を含む、両吸込羽根車。
【請求項10】
請求項4に記載の両吸込羽根車であって、
前記主板は、前記第1の側及び前記第2の側で、それぞれ、前記一対の側板及び前記複数の羽根の外周縁部より外周側に延在する、環状の第1の表面及び第2の表面を有し、
前記第1の表面及び前記第2の表面は、それぞれ、複数の溝を含む、両吸込羽根車。
【請求項11】
請求項5に記載の両吸込羽根車であって、
前記主板は、前記第1の側及び前記第2の側で、それぞれ、前記一対の側板及び前記複数の羽根の外周縁部より外周側に延在する、環状の第1の表面及び第2の表面を有し、
前記第1の表面及び前記第2の表面は、それぞれ、複数の溝を含む、両吸込羽根車。
【請求項12】
請求項6に記載の両吸込羽根車であって、
前記主板は、前記第1の側及び前記第2の側で、それぞれ、前記一対の側板及び前記複数の羽根の外周縁部より外周側に延在する、環状の第1の表面及び第2の表面を有し、
前記第1の表面及び前記第2の表面は、それぞれ、複数の溝を含む、両吸込羽根車。
【請求項13】
請求項7に記載の両吸込羽根車であって、
前記第1の表面の前記溝が、前記第1の表面の内周側縁部から外周側縁部まで直線状に延在し、前記第2の表面の前記溝が、前記第2の表面の内周側縁部から外周側縁部まで直線状に延在している、両吸込羽根車。
【請求項14】
請求項7に記載の両吸込羽根車であって、
前記第1の表面の前記溝と前記第2の表面の前記溝が、前記両吸込羽根車の周方向に関して互い違いになるように配置されている、両吸込羽根車。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の両吸込羽根車を備える、両吸込ポンプ。
【請求項16】
請求項15に記載の両吸込ポンプであって、
前記両吸込羽根車を収容するボリュートケーシングを備え、
前記両吸込羽根車の中心軸線を含む、前記ボリュートケーシングの内側断面は、前記両吸込羽根車の外周側で矩形状の凹部を形成している、両吸込ポンプ。
【請求項17】
請求項16に記載の両吸込ポンプであって、
前記矩形状の凹部は、前記両吸込羽根車から前記中心軸線の方向に離間して互いに平行に延在する壁面を含む、両吸込ポンプ。
【請求項18】
両吸込羽根車を製造する方法であって、
両吸込羽根車としてのベース羽根車を用意する工程であって、前記ベース羽根車は、回転軸に固定されるように構成される主板と、前記回転軸に沿って前記主板の第1の側及び第2の側に配置される一対の側板と、前記ベース羽根車の内周部から外周部に向かう流路を形成するように、前記一対の側板の各々と前記主板との間で周方向に配置される複数の羽根と、を備えており、前記主板、前記一対の側板及び前記複数の羽根が互いに等しい外径を有する、ベース羽根車を用意する工程と、
前記主板が前記一対の側板の外径及び前記複数の羽根の外径より大きい外径を有するように、前記ベース羽根車の前記一対の側板及び前記複数の羽根の外周部をカットする工程と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両吸込羽根車及び両吸込羽根車の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心ポンプである両吸込ポンプは、通常、横方向に配置される回転軸に取り付けられる、両吸込羽根車を備える。一例として、図8に、両吸込ポンプ10の全体概要を示す。図示されるように、両吸込羽根車40は、両吸込ポンプ10のポンプケーシング20内で横方向に延在する回転軸30に固定される。ポンプケーシング20内の流体は、左右2つの吸込口50から両吸込羽根車40の内部に吸い込まれ、両吸込羽根車40の外周部から吐出される。図9は、両吸込羽根車40の一例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は側断面図である。
【0003】
図8の例において、ポンプケーシング20は、両吸込羽根車40(以下、単に、羽根車40とも称する)を収容するボリュートケーシング21と、ボリュートケーシング21の外側に一体に設けられる吸込ケーシング22とを備える。吸込ケーシング22の1つの吸込口(図示せず)から始まる流路は、吸込ケーシング22の内部でボリュートケーシング21によって2つに分離された後に渦巻状に捲かれる。流体は、渦巻状の流路を通り、ボリュートケーシング21の両側に設けられた吸込口50から、ボリュートケーシング21内に流入する。
【0004】
図示の例において、羽根車40は、回転軸30に取り付けられる共通のボス部60を備えた左右のインペラ部61、61を備えている。各インペラ部61は、ボス部60の左右の一方で回転軸30の方向に間隔をあけて配置される、円形の外形を有する環状の側板70を備える。例えば図9(c)に示すように、各インペラ部61の側板70によって、羽根車40の左右の吸込口80が形成される。また、図9(c)に示すように、羽根車40は、ボス部60と側板70との間及び側板70と側板70との間に配置される複数の羽根90を備えている。例えば図9(a)及び図9(b)に示すように、複数の羽根90は、通常、回転軸30の周りに等しい間隔(図示される翼ピッチP)で配置され、隣り合う羽根90の間に流体の流路100が形成される。羽根車40の内周側で、左右の吸込口80から流入した流体は、ボス部60を通過後に合流する。流体は、流路100内で羽根車40の回転の遠心力によって加速され、羽根車40の外周側の出口から吐出する。
【0005】
また、例えば図9(a)及び図9(c)に示されるように、羽根車40は、通常、側板70及び羽根90が等しい外径を有する。なお、ここで、「羽根の外径」とは、図9(a)の正面図において、複数の羽根90の外周を成す円(この例では側板70の円形の外形と一致する)の直径Dに相当する。従って、「羽根の外径」は、図9(a)に示す羽根車40の中心軸線Cと各羽根90の出口縁(換言すれば、外周縁部)91とを結ぶ直線距離(換言すれば、半径方向距離)Rの二倍に相当する。
【0006】
従って、図9(c)に示されるように、側板70の外周縁部71と羽根90の外周縁部91は、羽根車40の半径方向に関して同一の位置にある(換言すれば、中心軸線Cの方向で整列した位置にある)。
【0007】
なお、上記従来例では、羽根車40の羽根90は、ボス部60と側板70との間及び側板70と側板70との間に設けられている。しかし、羽根車40は、ボス部60と一体成形される、円形の外形を有する環状の主板を有してもよい。図10は、主板110を有する両吸込羽根車40Aの一例を示す部分側断面図である。図10に示すように、両吸込羽
根車40A(以下、単に、羽根車40Aとも称する)は、図示されない回転軸に固定される主板110を備えることができる。主板110は、回転軸に固定されるボス部111と、側板70Aと対向するように、ボス部111から半径方向に延在するシュラウド部112とを含んでいる。この場合、左右のインペラ部61A、61Aが、それぞれ、対応する側板70Aと主板110との間で流体の流路を形成する複数の羽根90Aを備える。なお、図10は、羽根車40Aを収容するポンプケーシングのボリュートケーシング20Aも示している。ボリュートケーシング20Aは、羽根車40Aの外周側で矩形状の凹部を形成する点で、図8に示すボリュートケーシング21と異なるが、これについては、後述する。
【0008】
図10に示すように、主板110を有する羽根車40Aがボリュートケーシング20A内に位置決めされたとき、通常、各側板70Aの外周縁部70A-1、各羽根90Aの外周縁部90A-1及び主板110の外周縁部110-1は、羽根車40Aの半径方向に関して同一の位置にある。換言すれば、側板70A、羽根90A及び主板110の外周縁部70A-1、90A-1、110-1は、羽根車40Aの中心軸線Cから、同じ半径方向距離R1を有する。
【0009】
従来、両吸込ポンプのような遠心ポンプの性能調整を行うため、例えばポンプ揚程を下げることを目的として、羽根車の外周をカットして羽根車の直径を小さくすることが行われている。この場合、羽根車は、側板及び羽根(主板がある場合には主板、側板及び羽根)が等しい外径を有するようにカットされる。例えば、図10に示される主板110を有する羽根車40Aの外周部を、図11に示すようにカットする。すなわち、側板70A、羽根90A及び主板110のそれぞれの外周部を同じ量だけカットする。これにより、外周縁部70A-1、90A-1、110-1と羽根車40Aの中心軸線Cとの間の半径方向距離が、R1からR2に減少する(R1>R2)。
【0010】
しかし、図11に示す従来のカット方法で遠心ポンプの羽根車をカットした場合、図12に示すように、ポンプのQH曲線に、山形部を形成する右上がり特性が生じる。ポンプの性能特性を示すいわゆるQH曲線は、ポンプの吐出量(Q)が増加するにつれてポンプ揚程(H)が低下する、全体に右下がりの勾配を有することが望ましい。そのような右下がり特性を有するポンプでは、ポンプの運転が安定する。これに対し、図12に示すような右上がり特性を有するポンプでは、右上がり特性(すなわち、QH曲線の山形部)の前後でポンプが運転されると、ポンプの運転が不安定になりやすい。これは、遠心ポンプのような比較的低比速度(Ns)の羽根車を低流量域で運転する場合に特に問題となる。
【0011】
遠心ポンプの右上がり特性を解消するためには、ポンプケーシング内の流路形状の設計変更を行うことが考えられる。しかし、望ましい設計形状に至るまでに、検証及び/又は実験を繰り返す必要があり、さらに、設計変更されたポンプケーシングを含むポンプ全体を、再製造する必要がある。これは、長時間の作業を必要とするだけでなく、コストを著しく増大させる。
【0012】
また、遠心ポンプの右上がり特性を改善する具体的な方法として、例えば、羽根の出口縁を、羽根車の中心軸線からの距離が次第に変化するように斜めにカットする方法が提案されている(特許文献1)。このカット方法は、羽根の出口縁の傾斜の向きによって、「Vカット」または「Aカット」と称される。羽根の出口縁を斜めにカットすることにより、流体が羽根の出口からポンプケーシング舌端に到達する時間が、回転軸方向に沿って変化する。これにより、圧力変動が軽減される。しかし、「Vカット」または「Aカット」は、羽根の出口縁のみをカットする方法であるため、複雑な加工を必要とする。また、「Vカット」または「Aカット」による右上がり特性の改善効果は十分でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実開昭56-74896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、ポンプの右上がり特性を改善することができる、簡易な構成で容易に製造可能な両吸込羽根車を提供することができる。
【0015】
また、本発明の一実施形態によれば、ポンプの右上がり特性を改善することができる、簡易な構成で容易に製造可能な両吸込羽根車の製造方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一実施形態によれば、両吸込羽根車であって、回転軸に固定されるように構成される主板と、回転軸に沿って主板の第1の側及び第2の側に設けられる一対の側板と、両吸込羽根車の内周部から外周部に向かう流路を形成するように、一対の側板の各々と主板との間で周方向に配置される複数の羽根と、を備え、主板が、一対の側板の外径及び複数の羽根の外径より大きい外径を有する、両吸込羽根車が提供される。
【0017】
また、本発明の一実施形態によれば、両吸込羽根車を製造する方法が提供される。方法は、両吸込羽根車としてのベース羽根車を用意する工程を含む。ベース羽根車は、回転軸に固定されるように構成される主板と、回転軸に沿って主板の第1の側及び第2の側に配置される一対の側板と、ベース羽根車の内周部から外周部に向かう流路を形成するように、一対の側板の各々と主板との間で周方向に配置される複数の羽根と、を備えており、主板、一対の側板及び複数の羽根が互いに等しい外径を有する。方法は、さらに、主板が一対の側板の外径及び複数の羽根の外径より大きい外径を有するように、ベース羽根車の一対の側板及び複数の羽根の外周部をカットする工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態による両吸込羽根車を示す全体斜視図である。
図2図1の両吸込羽根車を示す図であり、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は側断面図である。
図3】本発明の第1実施形態による作用効果を、従来技術と比較して説明する図である。
図4】本発明の第1実施形態による両吸込ポンプのQH曲線を、従来技術と比較して示す図である。
図5】本発明の第2実施形態による両吸込羽根車を示す図であり、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は側断面図である。
図6】本発明の第3実施形態による両吸込羽根車を示す全体斜視図である。
図7図6の両吸込羽根車を示す図であり、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は側断面図である。
図7A】第3実施形態の変形例を示す図である。
図8】従来の両吸込羽根車を含む両吸込ポンプの一例を示す概略断面図である。
図9】従来の両吸込羽根車の一例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は側断面図である。
図10】従来の両吸込羽根車の他の例を示す部分側断面図である。
図11】従来の両吸込羽根車の外周カットを説明する図である。
図12】遠心ポンプのQH曲線の一例であり、右上がり特性を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明はあくまでも一例を示すものであって、本願発明の技術的範囲を以下の実施形態に限定する趣旨ではない。また、図面では、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
[第1実施形態]
【0020】
以下、図1図4に参照して、本発明の第1実施形態による両吸込羽根車を説明する。図1は、本発明の第1実施形態による両吸込羽根車200を示す全体斜視図である。図2は、図1の両吸込羽根車200を示す図であり、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は側断面図である。
【0021】
第1実施形態の両吸込羽根車200(以下、単に、羽根車200とも称する)は、回転軸(例えば、図8に示す従来構成の両吸込ポンプ10の回転軸30)に固定されるように構成される主板210を備える。主板210は、円形の外形を有する、実質的に環状の部材である。主板210は、回転軸が挿通されるボス部211と、ボス部211から半径方向外向きに延在するシュラウド部212と、を含む。主板210は、ボス部211を介して図示されない回転軸に固定されるように構成されている。図1には、羽根車200の中心軸線Cも示されている。また、羽根車200は、回転軸に沿って(換言すれば、中心軸線Cに沿って)主板210の第1の側及び第2の側に配置され、円形の外形を有する環状の一対の側板220a、220bを備える。図1では、第1の側に配置される側板220aのみが示されている。側板220a、220bは、ボス部211の周りに配置される吸込部221a、221bを含む。吸込部221a、221bは、羽根車200の内部に向かう流体の流れを許容する吸込口230を形成する。また、側板220a、220bは、吸込部221a、221bから半径方向外向きに延在するシュラウド部222a、222bを含む。
【0022】
羽根車200は、さらに、回転軸に沿って主板210の第1の側に配置される複数の第1の羽根260aと主板210の第2の側に配置される複数の第2の羽根260bとを含む。なお、図1では、主板210の第1の側の第1の羽根260aのみが示されている。複数の第1及び第2の羽根260a、260bは、主板210と側板220a、220bとの間で周方向に配置される。周方向で隣り合う第1の羽根260aの間及び周方向で隣り合う第2の羽根260bの間に、羽根車200の内周部から外周部に向かう流路が形成されている。
【0023】
第1実施形態において、複数の第1の羽根260aと複数の第2の羽根260bは、同じ枚数ずつ、配置されている。また、図2(a)に示すように、複数の第1の羽根260aは、主板210の第1の側で、周方向に等間隔(換言すれば、等翼ピッチP1)で配置されている。同様に、複数の第2の羽根260bは、主板210の第2の側で、周方向に等間隔(換言すれば、等翼ピッチP2)で配置されている。第1の実施形態において、図2(a)及び図2(b)に示されるように、第1の側における翼ピッチP1と第2の側の翼ピッチP2は等しい。しかし、第1の実施形態において、第1及び第2の羽根260a、260bの配置は、図示のものに限られない。例えば、第1の羽根260aの枚数と第2の羽根260bの枚数は異なっていてもよい。また、主板210の各側において、羽根260a、260bは等翼ピッチP1、P2で配置されていなくてもよい(例えば主板210の各側において、翼ピッチは周方向に可変であってもよい)。また、第1の側における翼ピッチP1と第2の側の翼ピッチP2は異なっていてもよい。
【0024】
第1実施形態では、例えば図2(c)に示されるように、一対の側板220a、220bの外径と、第1の羽根260a及び第2の羽根260bの外径は、互いに等しく設定されている。従って、側板220a、220bの外周縁部220a-1、220b-1と、
第1及び第2の羽根260a、260bの外周縁部260a-1、260b-1とは、中心軸線Cから等しい半径方向距離R3にある。主板210の外径は、一対の側板220a、220bの外径より大きく、かつ、第1の羽根260a及び第2の羽根260bの外径より大きい。従って、主板210の外周縁部210-1は、中心軸線Cから半径方向距離R4にあり、R4は、R3より大きい。換言すれば、主板210は、一対の側板220a、220b及び複数の第1及び第2の羽根260a、260bの外周縁部を越えて、半径方向外向きに延在する環状の延長部270を含んでいる。延長部270は、半径方向長さR5(R5=R4-R3)を有している。
【0025】
上記したように、性能調整のために羽根車を外周カットする場合、図11のように主板110、側板70A、羽根90Aの全てを均一に(すなわち、等しい外径になるように)カットすることが行われている。しかし、この場合、ポンプのQH曲線に図12に示すような右上がり特性が生じることが分かっている。これは、例えば図3(a)に示すように、外周がカットされた後の羽根車(一例として、図11に示す羽根車40Aを示す)の外周部付近で、主板110の第1の側からの流体流れと第2の側からの流体流れが干渉し合うからと考えられる。干渉により羽根90Aの出口端の流れは、第1の側と第2の側との間で非対称となる。また、干渉によって、羽根90Aの出口端からの流れをブロックする渦が形成される場合もある。これは、ポンプケーシングの内部損失を増大させる。ポンプの流量が少ないほど上記の流れ干渉は強くなるので、ポンプケーシングの損失が大きくなる。その結果として、小流量側のポンプ揚程が低下し、これにより、右上がり特性が現れると考えられる。
【0026】
第1実施形態の羽根車200を備える遠心ポンプでは、例えば図3(b)に示すように、主板210の第1の側の流体と第2の側の流体は、第1及び第2の羽根260a、260bの出口端を出た後も、互いに干渉し合うことなく主板210の延長部270に沿って流れることができる。従って、第1及び第2の羽根260a、260bの出口端の流れは対称的である。また、第1及び第2の羽根260a、260bの出口端の流れを妨げる渦が形成されることも無い。これにより、図3(a)に示すような、均一カット後に生じるポンプケーシングの内部損失(特に小流量側でのポンプケーシングの内部損失)を低減することができる。
【0027】
図4は、第1実施形態と従来技術を比較して示す、QH曲線のグラフである。図4中、縦軸のH.dpは、設計点揚程を示し、横軸のQ.dpは、設計点流量を示す。また、図4中、1は、第1実施形態の羽根車200によるポンプ特性を示し、2は、図11に参照して説明した従来カット後の羽根車40Aによるポンプ特性を示す。第1実施形態の羽根車200と図11の羽根車40Aとは、主板210と主板110が異なる外径を有することを除いて、同じ構成を有している。また、羽根車200を収容するポンプケーシングと羽根車40Aを収容するポンプケーシングは、同じ流路形状を有している。
【0028】
図4に示すように、従来カット後の羽根車40Aを使用する両吸込ポンプは、山形部2aを有する右上がり特性を示す。これに対し、第1実施形態の羽根車200を使用する両吸込ポンプでは、右上がり特性が解消され、QH曲線は、全体に右下がりの勾配を示す。これは、例えば、次のような理由によると考えられる。すなわち、第1実施形態では、従来技術の主板110と比較して主板210の外径が大きいので、遠心力による羽根車200の仕事が増え、羽根車揚程が増加する。これに加えて、図3に参照して説明したように、主板210の延長部270によってポンプケーシングの内部損失(特に小流量側でのポンプケーシングの内部損失)が低減される。従って、全体としてポンプ揚程が増加し(特に小流量側のポンプ揚程が増加し)、性能曲線が右上がりから右下がりへ反転したものと考えられる。
【0029】
このように、第1実施形態によれば、遠心ポンプの右上がり特性を解消することができる両吸込羽根車200が提供される。第1実施形態の両吸込羽根車200は、一対の側板220a、220b及び複数の第1及び第2の羽根260a、260bより大きい外径の主板210を有する。これは、例えば、既存の設計の両吸込羽根車の側板と羽根のみを均一にカットするという簡易な方法で製造することができる。第1実施形態の両吸込羽根車200を使用することにより、ポンプケーシング内の流路形状を変更するような長時間及び高コストの作業を行うことなく、両吸込ポンプの性能調整を行うことができる。また、第1実施形態の両吸込羽根車200は、従来の羽根のみをAカットまたはVカットする複雑な加工を必要としない、簡易な構成を有している。このように、第1実施形態の両吸込羽根車200は、遠心ポンプの性能調整に優れており、かつ、容易に製造可能な簡易な構成を有している。
【0030】
また、第1実施形態によれば、図8及び図9に示すような主板を有しない羽根車40に比べて、複数の第1及び第2の羽根260a、260bの出口付近の羽根車200の強度を大きくすることができる。また、主板210を、組立の際のポンプケーシングと羽根車200との位置合わせの基準として利用することができる。位置合わせは、従来既知の方法で行うことができる。また、ポンプの運転状態を監視するように、ポンプケーシングの外側に振動センサを取り付ける場合がある。この場合、外径の大きい主板210は比較的大きく振れるので、センサによる振動の検知が容易になる。
【0031】
なお、主板210の延長部270の半径方向長さR5は、ポンプ運転中の主板210の共振及び強度と、右上がり特性の改善とのバランスにより適宜決めることができる。
【0032】
また、第1実施形態では、一対の側板220a、220bの外径と複数の第1及び第2の羽根260a、260bの外径とが、等しく設定されている。しかし、一対の側板220a、220bの外径と複数の第1及び第2の羽根260a、260bの外径とは、異なっていてもよい。また、第1及び第2の羽根260a、260bに、従来のAカットまたはVカットが施されていてもよい。第1実施形態では、主板210の外径が、一対の側板220a、220bの外径と複数の第1及び第2の羽根260a、260bの外径のいずれと比較しても大きくなるように設定されていればよい。
【0033】
第1実施形態の両吸込羽根車200は、例えば、次のような方法で製造することができる。一例として、例えば図10に示すような互いに等しい外径を有する主板、側板及び複数の羽根を含む両吸込羽根車(以下、ベース羽根車)を用意し、その後、主板が、一対の側板及び複数の羽根の外径より大きい外径を有するように、一対の側板及び複数の羽根の外周部をカットする。ベース羽根車は、鋳造、溶接等の従来既知の方法で製造することができる。側板及び羽根の外周カットの量は、羽根車200が取り付けられる両吸込ポンプの用途に応じて、適宜決めることができる。具体的には、側板及び羽根の外周カットの量は、例えば、ベース羽根車が取り付けられた両吸込ポンプの運転の結果等に応じて決めることができる。また、側板及び羽根の外周カットの量は、例えば、ベース羽根車についての既知の性能データ等に基づいて決めることができる。
[第2実施形態]
【0034】
図5は、本発明の第2実施形態を示す。(a)は第2実施形態による両吸込羽根車300(以下、単に、羽根車300とも称する)を示す正面図である。同様に、(b)は底面図、(c)は側断面図である。
【0035】
第2実施形態の羽根車300は、複数の第1の羽根360a及び複数の第2の羽根360bの配置を除いて、第1の実施形態の羽根車200と同じ構成を備えている。
【0036】
従って、第1実施形態と同様に、羽根車300は、主板310と、回転軸に沿って主板310の第1の側と第2の側に配置される一対の側板320a、320bと、を含む。また、羽根車300は、主板310の第1の側に配置される複数の第1の羽根360aと主板310の第2の側に配置される複数の第2の羽根360bとを含む。主板310は、回転軸に固定されるように構成されるボス部311とボス部311から半径方向外側に延在するシュラウド部312とを備える。各側板320a、320bは、吸込口330を形成する吸込部321a、321bと、シュラウド部322a、322bとを含む。また、第1実施形態と同様に、主板310の外径は、側板320a、320bの外径より大きく、かつ、複数の第1及び第2の羽根360a、360bの外径より大きい。側板320a、320bの外径と第1及び第2の羽根360a、360bの外径とは互いに等しい。従って、図3(c)に示すように、側板320a、320bの外周縁部320a-1、320b-1と中心軸線Cとの間の半径方向距離、及び、複数の第1及び第2の羽根360a、360bの外周縁部360a-1、360b-1と中心軸線Cとの間の半径方向距離は、互いに等しくR3に設定されている。主板310の外周縁部310-1と中心軸線Cとの間の半径方向距離は、R3より大きいR4に設定されている。主板310は、側板320a、320bの外周縁部320a-1、320b-1、及び、複数の第1及び第2の羽根360a、360bの外周縁部360a-1、360b-1を越えて、半径方向外側に延在する環状の延長部370を含む。延長部370は、半径方向長さR5(R5=R4-R3)を有している。
【0037】
第2実施形態において、複数の第1の羽根360aと複数の第2の羽根360bは、同じ枚数ずつ、配置されている。また、複数の第1の羽根360aは、主板310の第1の側で、周方向に等間隔(換言すれば、等翼ピッチP1)で配置されている。複数の第2の羽根360bは、主板310の第2の側で、周方向に等間隔(換言すれば、等翼ピッチP2)で配置されている。第1実施形態と同様に、第1の側における翼ピッチP1と第2の側の翼ピッチP2は等しい。
【0038】
しかし、第1実施形態と異なり、第2の実施形態では、例えば図5(a)及び図5(b)に示すように、複数の第1の羽根360aと複数の第2の羽根360bは、主板310に対する位相が互いにずれている。位相のずれ量(すなわち、角度)は特に限られない。図5(a)の例では、角度θのずれ量が設定されている。例えば、図示されるように、翼ピッチP1、P2(P1=P2)の約1/4程度に相当する角度θが設定されてよい。このように、第2実施形態では、主板310の第1の側と第2の側との間で、複数の第1及び第2の羽根360a、360bが互いに重ならない位置に配置される。第2実施形態に関して第1及び第2の羽根360a、360bの具体的な位置は図示のものに限定されない。第1及び第2の羽根360a、360bは、主板310の第1の側と第2の側との間で、周方向に互い違いに配置されるものであればよい。
【0039】
互いに位相がずれた第1及び第2の羽根360a、360bは、圧力変動を抑制する機能も有し得る。具体的には、第1及び第2の羽根360a、360bがポンプケーシング舌部を通過する際の、圧力変動が抑制され得る。
[第3実施形態]
【0040】
図6は、本発明の第3実施形態による両吸込羽根車400(以下、単に、羽根車400とも称する)を示す全体斜視図である。図7は、第3実施形態による羽根車400を示す図であり、(a)は、正面図、(b)は底面図、(c)は側断面図である。
【0041】
第3実施形態の羽根車400は、主板410の延長部470の表面に溝480a、480bが形成されている点において、第1実施形態と異なる。その他の構成において、第3実施形態は、第1実施形態と同様である。
【0042】
従って、第1実施形態と同様に、羽根車400は、主板410と、回転軸に沿って主板410の第1の側と第2の側に配置される一対の側板420a、420bとを含む。また、羽根車400は、主板410の第1の側に配置される複数の第1の羽根460aと主板410の第2の側に配置される複数の第2の羽根460bとを含む。主板410は、回転軸に固定されるように構成されるボス部411とボス部411から半径方向外側に延在するシュラウド部412とを備える。各側板420a、420bは、吸込口430を形成する吸込部421a、421bと、シュラウド部422a、422bとを含む。第1実施形態と同様に、主板410の外径は、一対の側板420a、420bの外径より大きく、かつ、複数の第1及び第2の羽根460a、460bの外径より大きい。側板420a、420bの外径と第1及び第2の羽根460a、460bの外径とは互いに等しい。従って、図7(c)に示すように、側板420a、420bの外周縁部420a-1、420b-1と中心軸線Cとの間の半径方向距離、及び、複数の第1及び第2の羽根460a、460bの外周縁部460a-1、460b-1と中心軸線Cとの間の半径方向距離は、互いに等しくR3に設定されている。主板410の外周縁部410-1と中心軸線Cとの間の半径方向距離は、R3より大きいR4に設定されている。主板410は、側板420a、420bの外周縁部420a-1、420b-1、及び、複数の第1及び第2の羽根460a、460bの外周縁部460a-1、460b-1を越えて、半径方向外側に延在する環状の延長部470を含む。延長部470は、半径方向長さR5(R5=R4-R3)を有している。
【0043】
また、第3実施形態において、複数の第1の羽根460aと複数の第2の羽根460bは、同じ枚数ずつ、配置されている。また、複数の第1の羽根460aは、主板410の第1の側で、周方向に等翼ピッチで配置されている。複数の第2の羽根460bは、主板410の第2の側で、周方向に等翼ピッチで配置されている。第1の側における翼ピッチと第2の側の翼ピッチは等しい。例えば、図7(b)に示すように、主板410の第1の側と第2の側との間で、第1の羽根460aと第2の羽根460bは周方向に関して互いに重なり合う位置に、すなわち同じ位相で、主板410に対して位置決めされている。これは、第1実施形態の第1及び第2の羽根260a、260bと同じ配置である。
【0044】
第3実施形態において、主板410の延長部470は、主板410の第1の側及び第2の側で、それぞれ、環状の第1の表面及び第2の表面(符号省略)を有する。延長部470の第1の表面及び第2の表面は、側板420a、420bの外周縁部420a-1、420b-1及び複数の第1及び第2の羽根460a、460bの外周縁部460a-1、460b-1より外周側に延在する。延長部470の第1の表面は、羽根車400の周方向に配置される複数の溝480aを含む。同様に、延長部470の第2の表面は、羽根車400の周方向に配置される複数の溝480bを含む。図6では、主に、第1の表面に配置される溝480aが示されている。溝480a、480bは、延長部470の内周側から外周側に向かう方向に延在することができる。図示の例では、溝480a、480bは、直線状に延びている。しかし、例えば、第1及び第2の羽根460a、460bのように、溝480a、480bは、湾曲して延びていてもよい。また、図示の例では、溝480a、480bの内周側縁部及び外周側縁部は、それぞれ、延長部470の内周側縁部及び外周側縁部と一致している。しかし、これに限られず、例えば、溝480a、480bの内周側縁部は、延長部470の内周側縁部より外周側に位置してもよい。
【0045】
延長部470の溝480a、480bは、羽根車400のための補助羽根として機能することができる。補助羽根は、第1の羽根460a及び第2の羽根460bに追加して主板410に設けられる。溝480a、480bの凹部が、羽根車400に追加の流路を形成する。従って、第3実施形態の羽根車400は、第1実施形態の羽根車200と比較して、ポンプ揚程を上げることができる。
【0046】
延長部470の補助羽根として機能できる限り、溝480a、480bが形成される具体的な位置、溝480a、480bの本数及び寸法等は、特に限られない。図7Aは、溝480a、480bの深さ方向(すなわち、羽根車400の中心軸線Cの方向)の断面図の例を示す。溝480a、480bは、例えば図7Aの(a)に示すように矩形の凹断面形状を有してもよく、図7Aの(b)に示すように、V形状の断面形状を有してもよい。溝480a、480bは、他の断面形状、例えば、半円形の断面形状等を有してもよい。延長部470の補助羽根として機能できる限り、溝480a、480bの幅(図7AのWで示される)、深さ(図7AのTで示される)、長さ(換言すれば、流路長)、向き等は特に限られない。溝480a、480bは、延長部470を厚さ方向に貫通しない深さTを有していればよい。また、溝480a、480bの幅W及び深さTの少なくとも一方が、溝480a、480bの流路長に沿って変化してもよい。
【0047】
また、図示の例では、例えば図7(b)に示すように、溝480aと溝480bは、主板410の第1の側と第2の側との間で、羽根車400の周方向に関して互い違いになるように位置決めすることができる。この場合、溝480a、480bの深さTを比較的大きくすることができる。しかし、溝480aと溝480bは、主板410の第1の側と第2の側との間で、周方向に関して、全体または部分的に互いに重なる位置に配置されてもよい。
【0048】
また、第3実施形態の両吸込羽根車400の第1及び第2の羽根460a、460bは、第2実施形態の第1及び第2の羽根360a、360bのように、互いに位相がずれた位置に配置されていてもよい。
【0049】
また、他の実施形態によれば、第1~第3実施形態による両吸込羽根車200、300、400のいずれかを備える両吸込ポンプを提供することができる。両吸込ポンプのポンプケーシングとして、例えば、図8に示すような、従来の両吸込ポンプ10のポンプケーシング20を使用することができる。第1~第3実施形態による両吸込羽根車200、300、400を使用することにより、従来のポンプケーシングの流路形状を変更することなく、両吸込ポンプの右上がり特性を改善することができる。しかし、両吸込羽根車200、300、400を収容するボリュートケーシングは、例えば第1実施形態を示す図3(b)に示されるように、両吸込羽根車の外周側で矩形状の凹部を形成する内側断面を有することが好ましい。図3(b)に示すボリュートケーシング20Aは、図10に示す形状と同様の内側断面形状を有している。具体的には、図3(b)に示すボリュートケーシング20Aの内面が、両吸込羽根車200の中心軸線Cを含む断面において、両吸込羽根車200から中心軸線Cの方向に離間して互いに平行に延びる壁面24a、24bを含む。互いに平行な壁面24a、24bと、壁面24a、24bの間で羽根車200の周方向に延びる周面26とによって、矩形状の凹部が画定される。これにより、右上がり特性をさらに改善することができる。
【0050】
両吸込羽根車の外周側に形成される断面矩形状の凹部は、他の流路形状と比較して、流量の増加に伴う壁面摩擦による損失を大きくする。従って、締め切り流量点(Q=0)におけるケーシング損失及びポンプ揚程(H)に対して、例えば吐出量(Q)が設計点に対して約20%の低流量域で、ケーシング損失が大きく増加し、その分、ポンプ揚程(H)が下がる。これにより、QH曲線の右上がり部分(例えば、図4の2aで示される)のポンプ揚程を下げることができると考えられる。従って、ボリュートケーシング20Aの断面矩形状の凹部は、両吸込羽根車200、300、400の主板210、310、410の効果と相まって、右上がり特性の改善に効果的であると考えられる。
【0051】
なお、図3(b)では、周面26から延びる互いに平行な壁面24a、24bは、主板
210の外周縁付近で終端し、そこから内周側に傾斜面28a、28bが設けられている。傾斜面28a、28bは、互いから離れるように、壁面24a、24bから外向きに傾斜して延びている。上記したように、各実施形態の羽根車200、300、400は、図10に示すようなベース羽根車の側板及び複数の羽根の外周部をカットすることにより形成することができる。壁面24a、24bと傾斜面28a、28bとの間の移行部の位置は、ポンプケーシングの肉厚及び円板摩擦等を考慮して、例えばベース羽根車の外周縁(換言すれば、主板の最大外径)に合わせることができる。しかし、本願発明の実施形態において、両吸込ポンプのポンプケーシングの具体的な形状は、特に限られない。従って、ボリュートケーシング20Aの内側断面は、羽根車200、300、400の外周側で、矩形状でなくてもよく、例えば図8のような台形状であってもよい。台形状の断面を有する凹部は、羽根車200、300、400の周方向に延びる周面と、互いに向かって接近するように周面から内向きに傾斜して延びる傾斜面とにより画定され得る。また、ボリュートケーシング20Aが羽根車200、300、400の外周側で矩形状凹部を形成する場合でも、その他の部分についてのボリュートケーシング20Aの内面形状は、特に限られない。例えば、傾斜面28a、28bに代えて、壁面24a、24bにつながる互いに平行な追加の壁面が設けられてもよい。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0053】
本発明は、以下の態様を含む。
1. 両吸込羽根車であって、
回転軸に固定されるように構成される主板と、
回転軸に沿って主板の第1の側及び第2の側に設けられる一対の側板と、両吸込羽根車の内周部から外周部に向かう流路を形成するように、一対の側板の各々と主板との間で周方向に配置される複数の羽根と、を備え、
主板が、一対の側板の外径及び複数の羽根の外径より大きい外径を有する、両吸込羽根車。
2. 上記1.に記載の両吸込羽根車であって、
一対の側板と複数の羽根が等しい外径を有する、両吸込羽根車。
3. 上記1.に記載の両吸込羽根車であって、
複数の羽根は、主板の第1の側に設けられる複数の第1の羽根と、主板の第2の側に設けられる複数の第2の羽根とを含み、
複数の第1の羽根と複数の第2の羽根は、両吸込羽根車の周方向に関して互い違いになるように配置されている、両吸込羽根車。
4. 上記2.に記載の両吸込羽根車であって、
複数の羽根は、主板の第1の側に設けられる複数の第1の羽根と、主板の第2の側に設けられる複数の第2の羽根とを含み、
複数の第1の羽根と複数の第2の羽根は、両吸込羽根車の周方向に関して互い違いになるように配置されている、両吸込羽根車。
5. 上記3.に記載の両吸込羽根車であって、
複数の第1の羽根と複数の第2の羽根が互いに等しい枚数で設けられており、
複数の第1の羽根及び複数の第2の羽根が、それぞれ、主板の第1の側及び主板の第2の側で、互いに等しい翼ピッチで且つ互いに位相がずれるように位置決めされている、両吸込羽根車。
6. 上記4.に記載の両吸込羽根車であって、
複数の第1の羽根と複数の第2の羽根が互いに等しい枚数で設けられており、
複数の第1の羽根及び複数の第2の羽根が、それぞれ、主板の第1の側及び主板の第2の側で、互いに等しい翼ピッチで且つ互いに位相がずれるように位置決めされている、両吸込羽根車。
7. 上記1.に記載の両吸込羽根車であって、
主板は、第1の側及び第2の側で、それぞれ、一対の側板及び複数の羽根の外周縁部より外周側に延在する、環状の第1の表面及び第2の表面を有し、
第1の表面及び第2の表面は、それぞれ、複数の溝を含む、両吸込羽根車。
8. 上記2.に記載の両吸込羽根車であって、
主板は、第1の側及び第2の側で、それぞれ、一対の側板及び複数の羽根の外周縁部より外周側に延在する、環状の第1の表面及び第2の表面を有し、
第1の表面及び第2の表面は、それぞれ、複数の溝を含む、両吸込羽根車。
9. 上記3.に記載の両吸込羽根車であって、
主板は、第1の側及び第2の側で、それぞれ、一対の側板及び複数の羽根の外周縁部より外周側に延在する、環状の第1の表面及び第2の表面を有し、
第1の表面及び第2の表面は、それぞれ、複数の溝を含む、両吸込羽根車。
10. 上記4.に記載の両吸込羽根車であって、
主板は、第1の側及び第2の側で、それぞれ、一対の側板及び複数の羽根の外周縁部より外周側に延在する、環状の第1の表面及び第2の表面を有し、
第1の表面及び第2の表面は、それぞれ、複数の溝を含む、両吸込羽根車。
11. 上記5.に記載の両吸込羽根車であって、
主板は、第1の側及び第2の側で、それぞれ、一対の側板及び複数の羽根の外周縁部より外周側に延在する、環状の第1の表面及び第2の表面を有し、
第1の表面及び第2の表面は、それぞれ、複数の溝を含む、両吸込羽根車。
12. 上記6.に記載の両吸込羽根車であって、
主板は、第1の側及び第2の側で、それぞれ、一対の側板及び複数の羽根の外周縁部より外周側に延在する、環状の第1の表面及び第2の表面を有し、
第1の表面及び第2の表面は、それぞれ、複数の溝を含む、両吸込羽根車。
13. 上記7.に記載の両吸込羽根車であって、
第1の表面の溝が、第1の表面の内周側縁部から外周側縁部まで直線状に延在し、第2の表面の溝が、第2の表面の内周側縁部から外周側縁部まで直線状に延在している、両吸込羽根車。
14. 上記7.に記載の両吸込羽根車であって、
第1の表面の溝と第2の表面の溝が、両吸込羽根車の周方向に関して互い違いになるように配置されている、両吸込羽根車。
15. 上記1.~14.のいずれかに記載の両吸込羽根車を備える、両吸込ポンプ。
16. 上記15.に記載の両吸込ポンプであって、
両吸込羽根車を収容するボリュートケーシングを備え、
両吸込羽根車の中心軸線を含む、ボリュートケーシングの内側断面は、両吸込羽根車の外周側で矩形状の凹部を形成している、両吸込ポンプ。
17. 上記16.に記載の両吸込ポンプであって、
矩形状の凹部は、両吸込羽根車から中心軸線の方向に離間して互いに平行に延在する壁面を含む、両吸込ポンプ。
18. 両吸込羽根車を製造する方法であって、
両吸込羽根車としてのベース羽根車を用意する工程であって、ベース羽根車は、回転軸に固定されるように構成される主板と、回転軸に沿って主板の第1の側及び第2の側に配置される一対の側板と、ベース羽根車の内周部から外周部に向かう流路を形成するように、一対の側板の各々と主板との間で周方向に配置される複数の羽根と、を備えており、主板、一対の側板及び複数の羽根が互いに等しい外径を有する、ベース羽根車を用意する工程と、
主板が一対の側板の外径及び複数の羽根の外径より大きい外径を有するように、ベース羽根車の一対の側板及び複数の羽根の外周部をカットする工程と、
を含む、方法。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の実施形態は、両吸込羽根車及び両吸込ポンプに広く使用することができる。
【符号の説明】
【0055】
C 中心軸線
R、R1、R2、R3、R4 半径方向距離
R5 半径方向長さ
D 外径
P、P1、P2 翼ピッチ
θ 位相ずれ角度
T 深さ
W 幅
1、2 QH曲線
2a 山形部
10 両吸込ポンプ
20 ポンプケーシング
20A、21 ボリュートケーシング
22 吸込ケーシング
24a、24b 壁面
26 周面
28a、28b 傾斜面
30 回転軸
40、40A 両吸込羽根車
50 吸込口
60 ボス部
61、61A インペラ部
70、70A 側板
71、70A―1 外周縁部
80 吸込口
90、90A 羽根
91、90A―1 外周縁部
100 流路
110 主板
110-1 外周縁部
111 ボス部
112 シュラウド部
200、300、400 両吸込羽根車
210、310、410 主板
211、311、411 ボス部
212、312、412 シュラウド部
220a、220b、320a、320b、420a、420b 側板
230、330、430 吸込口
221a、321a、421a 吸込部
222a、322a、422a シュラウド部
260a、260b、360a、360b、460a、460b 羽根
210-1、220a―1、220b-1、260a―1、260b-1 外周縁部
310-1、320a―1、320b-1、360a―1、360b-1 外周縁部
410-1、420a―1、420b-1、460a―1、460b-1 外周縁部
270、370、470 延長部
480a、480b 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図7A
図8
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図10
図11
図12