(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155038
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】経口用剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20241024BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20241024BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20241024BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20241024BHJP
A21D 2/08 20060101ALI20241024BHJP
A23L 29/20 20160101ALI20241024BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20241024BHJP
A23G 1/32 20060101ALI20241024BHJP
A23G 3/36 20060101ALI20241024BHJP
A23G 4/06 20060101ALI20241024BHJP
A23G 9/32 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/105
A23L35/00
A23L2/00 F
A23L2/52
A21D2/08
A23L29/20
A23L23/00
A23G1/32
A23G3/36
A23G4/06
A23G9/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069405
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000116297
【氏名又は名称】ヱスビー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野(建部) 七海
(72)【発明者】
【氏名】小池 麻里子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 建吾
(72)【発明者】
【氏名】恩田 浩幸
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4B032
4B036
4B041
4B117
【Fターム(参考)】
4B014GL03
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
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4B032DB01
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4B041LK05
4B117LC04
4B117LK06
(57)【要約】
【課題】肌への美容効果を高める経口用剤を提供する。
【解決手段】課題は、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体の摂取量が5mg以上/日であることを特徴とする経口用剤、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を有し、肌の弾力を増加させることを特徴とする経口用剤、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を有し、経表皮水分蒸散量を減少させることを特徴とする経口用剤、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を有し、皮膚水分量を増加させることを特徴とする経口用剤、又はシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を有し、血中ペントシジン濃度を減少させることを特徴とする経口用剤によって解決される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体の摂取量が5mg以上/日である、
ことを特徴とする経口用剤。
【請求項2】
シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を有し、肌の弾力を増加させる、
ことを特徴とする経口用剤。
【請求項3】
シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を有し、経表皮水分蒸散量を減少させる、
ことを特徴とする経口用剤。
【請求項4】
シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を有し、皮膚水分量を増加させる、
ことを特徴とする経口用剤。
【請求項5】
シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を有し、血中ペントシジン濃度を減少させる、
ことを特徴とする経口用剤。
【請求項6】
前記シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を含有するシナモン及び/又はシナモン抽出物を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の経口用剤。
【請求項7】
前記シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を含有するシナモン及び/又はシナモン抽出物を0.0001~80質量%含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の経口用剤。
【請求項8】
形態が液状、固形、液体、ゲル、気泡、乳液、粉末、顆粒、ペースト及びクリームのいずれか一つである、
請求項1~5のいずれか1項に記載の経口用剤。
【請求項9】
経口用剤が飲食品である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の経口用剤。
【請求項10】
錠剤、カプセル、飲料、ゼリー、菓子、パン、ケーキ、カレー粉、カレー、レトルト食品及び調味料のいずれか一つの形状である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の経口用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より体内の老化を引き起こす現象の一つとして糖化が知られている。糖化とは、グルコース等の還元糖とアミノ酸や蛋白質を反応物とするアミノ・カルボニル反応のことをいい、糖化は、還元糖とアミノ酸や蛋白質のアミノ基との反応からシッフ塩基が生成され、アマドリ転位によって安定なアマドリ化合物が生成される過程と、これに続く、当該アマドリ化合物が脱水、酸化、縮合、環状化等を経て糖化最終産物に変化する工程からなる化学反応ということができる。この化学反応では、例えば摂取された糖が体内の蛋白質等と反応(代表的なものにメイラード反応がある。)して、蛋白質の変性物質である糖化最終産物(AGEs)が生成することが知られている。
【0003】
糖化最終産物とは、糖化によって生成される生成物の総称であり、例えばペントシジン、ピロピリジン、クロスリン、カルボキシメチルリジン等がこれに属する。この糖化最終産物は、蛋白質の本来の機能が失われたものであり、体内に蓄積すると、動脈硬化や皮膚の老化等を引き起こす。糖化最終産物の一つであるペントシジンは、蛋白質から生成される蛍光性、架橋性を有し、特に皮膚コラーゲン中に加齢と共に蓄積されるものであり、コラーゲン繊維に架橋構造を形成して皮膚の弾力性低下を引き起こす原因物質として知られている。
【0004】
この糖化に関しては様々な研究がなされており、当初は主に食品を対象に進められ、その後ヒトや動物についても対象に含められるようになった。糖化によって生成される糖化蛋白は、老化現象や糖尿病合併症、アルツハイマー等の疾患の発症に関与することが明らかとなり、現在、この糖化を阻害・抑制する研究もなされてきている。
【0005】
体内における最終産物の蓄積は、健常な人であっても日常的に進み、おおよそ飲食品の摂取や化粧料の皮膚への塗布により体内に吸収されて蓄積する場合と、体内での糖化によって産生し蓄積される場合とを挙げることができる。最近ではこのような体内における糖化最終産物の生成・蓄積を抑制することが、老化現象や疾患の発生の抑制につながり、ひいては人体、特に肌の美容に効果的であるのではないかと考えられている。
【0006】
これら糖化最終産物の生成を抑制する物質としてアミノグアニジンを例示できる。この物質は、糖尿病合併症の治療薬として研究され、糖尿病合併症に有効であることがモデル動物で確認されているが、他方でアミノグアニジンが副作用を引き起こすことが知られている。今後研究を進めていく中でこのような副作用をもたらさない、糖化最終産物の生成抑制用剤を開発することが肝要となっている。
【0007】
こうした糖化、特にメイラード反応を抑制する物質等に関する技術文献として特許文献1,2を例示することができる。特許文献1には、トランスケイ皮酸などのフェニルプロパノイド、カルコン及びベンゼン誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とするメイラード反応阻害剤が開示されている。そして、これら物質からなるメイラード反応阻害剤がペントシジン生成抑制作用を有することを確認し、人又は動物に対して内用又は外用しても安全なものであるとしている。
【0008】
また、特許文献2には、ケイヒ等の植物原料を減圧条件下に乾留して得られる減圧乾留物を有効成分とするメイラード反応抑制剤が開示されている。なお、非特許文献1や非特許文献2は、特許文献1,2に類する技術を開示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003-212774号公報
【特許文献2】特開2014-205658号公報
【非特許文献1】Sirichai Adisakwattana 「桂皮酸とその誘導体がフルクトースを介したタンパクの糖化を阻害する。」 International Journal of Molecular Sciences 2012, 13, 1778-1789; doi:10.3390/ijms13021778
【非特許文献2】Malgorzata Starowicz and Henryk Zielinski 「ヨーロッパ料理に一般的に使用される高抗酸化レベルのスパイスによる高度糖化最終産物生成の阻害」 antioxidants (Basel) 2019 Apr; 8(4): 100;doi:10.3390/antiox8040100
【非特許文献3】Determination of Urinary and Serum Pentosidine and Its Application to Elder Patients(Biol. Pharm. Bull. 21(10) 1005-1008(1998))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1は、メイラード反応抑制剤として、トランスケイ皮酸などのフェニルプロパノイド、カルコン及びベンゼン誘導体を主に掲げているが、メイラード反応抑制効果を奏する物質はこれだけに限られるものではないし、また実施例ではメイラード反応抑制剤をマウス、兎等の動物に投与しているが、人体、特に肌に対してはその効果が奏するかは不明であるといえる。また、特許文献2には、メイラード反応抑制剤である減圧乾留物が植物原料由来のものとの記述がされているものの、当該メイラード反応抑制の効果が植物原料のうちのどの物質によって奏されるのかということについては不明であり、特定がなされていない。さらに、両特許文献は、人体での実験を行っていないので、糖化最終産物を抑制することが人体にどのような効果を及ぼすかについては全く不明である。以上の背景技術に鑑み、本発明は解決しようとする主たる課題は、肌の美容に効果的である経口用剤を提供すること、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、鋭意研究を重ね、シンナムアルデヒドが肌への美容効果を高めることを見出し、上記課題を解決した発明の態様が次に示すものである。
(第1の態様)
シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体の摂取量が5mg以上/日である、
ことを特徴とする経口用剤。
【0012】
コラーゲンは保水性、弾性等を有する蛋白質であり、肌への美容効果があるものである。そして、厳密にはわからないが、おそらくシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体は皮膚繊維芽細胞に作用してコラーゲン、特にI型コラーゲンの産生能を亢進させる、つまりI型コラーゲンの産生を誘導すると考えられる。すなわち、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体が口腔内に付与されることでコラーゲンの崩壊が抑制され、肌の保水性や弾性が維持又は向上する。この考えに基づけば、上記態様の経口用剤は、肌の美容を高める効果があるといえ、後述する実施例では、その効果を奏することが明らかになった。
【0013】
また、副次的な効果として、次のものがある。シンナムアルデヒドはシナモン臭を有し、このシナモン臭にリラックス効果や集中力を高める効果がある。よって、上記態様の経口用剤は、シナモン臭を発し、そばに置いておいたり、摂取したりすることでリラックス効果や集中力を高める効果が得られる。上記態様の他、次に掲げる態様も好ましい。
【0014】
(第2の態様)
シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を有し、肌の弾力を増加させる、
ことを特徴とする経口用剤。
(第3の態様)
シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を有し、経表皮水分蒸散量を減少させる、
ことを特徴とする経口用剤。
(第4の態様)
シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を有し、皮膚水分量を増加させる、
ことを特徴とする経口用剤。
(第5の態様)
シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を有し、血中ペントシジン濃度を減少させる、
ことを特徴とする経口用剤。
(第6の態様)
前記シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を含有するシナモン及び/又はシナモン抽出物を含む、
第1の態様~第5の態様のいずれか1つの経口用剤。
(第7の態様)
前記シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を含有するシナモン及び/又はシナモン抽出物を0.0001~80質量%含む、
第1の態様~第5の態様のいずれか1つの経口用剤。
(第8の態様)
形態が液状、固形、液体、ゲル、気泡、乳液、粉末、顆粒、ペースト及びクリームのいずれか一つである、
第1の態様~第5の態様のいずれか1つの経口用剤。
(第9の態様)
経口用剤が飲食品である、
第1の態様~第5の態様のいずれか1つの経口用剤。
(第10の態様)
錠剤、カプセル、飲料、ゼリー、菓子、パン、ケーキ、カレー粉、カレー、レトルト食品及び調味料のいずれか一つの形状である、
第1の態様~第5の態様のいずれか1つの経口用剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、肌への美容効果を高める経口用剤となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
【0018】
(経口用剤の組成)
本形態の経口用剤は、組成としてシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を含有するものである。また、当該経口用剤には、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を含有する植物や、当該植物から抽出して得られる抽出物が含まれていてもよい。また、当該経口用剤には、人工合成物が含まれていてもよく、例えば人工的に合成して得られるシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体が含まれていてもよい。他方、当該経口用剤に、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体の他、シナモンやシナモン抽出物が含まれている形態やシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を含有するシナモンやシナモン抽出物が含まれている形態であってもよく、これらの形態であれば、香ばしいシナモン臭が漂うので経口用剤として好ましい。その他、当該経口用剤には、後述する添加剤、着色剤、その他の物質が含まれ得る。
【0019】
シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体は、人工的に合成して得ることもできるし、植物から抽出して得られた抽出物からシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体のみを分離して得ることもできる。シンナムアルデヒドを人工的に合成する場合は、シンナミルアルコール類縁体からの合成や、ベンズアルデヒドとアセトアルデヒドのアルドール縮合反応による合成等を例示できる。シンナムアルデヒドを植物から得る場合は、植物の各部位(例えば花、果皮、果実、茎、葉、枝、幹、樹皮、根、種子等)をそのまま又は粉砕した後、溶媒抽出して得られた抽出物を得て、当該抽出物をカラム分離クロマトグラフィー等の一般的な分離手段を行うことで得ることができる。シンナムアルデヒドが相対的に多く含まれる植物としては、シナモン、クスノキ等の樹木を例示でき、これら植物の樹皮から得ることができる。シナモンはセイロンシナモン、シナモンカシア、シナモンアロマティクム、シナモンヴェルム、セイロンニッケイ、ニッキ等の植物の総称であり、セイロンシナモン、シナモンカシア、シナモンアロマティクム、シナモンヴェルム、セイロンニッケイ、ニッキの群から選択される1種又は2種以上の組み合わせからなる植物からシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を抽出することができる。特にセイロンシナモンやシナモンカシアは、相対的に高濃度にシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体が含まれ、好適である。ジヒドロシンナミルアルコールやジヒドロシンナムアルデヒド等を例示することができる。
【0020】
本発明に係る経口用剤には、シナモンが含まれていてもよい。当該シナモンの形態は、特に限定されないが、シナモン抽出物の形態の他、例えば粉末の形態や、シナモン粉末が液体に分散された形態であってもよい。シナモン粉末であれば市中で購入することができる。
【0021】
シンナムアルデヒドは、植物から抽出して得ることができ、ニッケイを原料とする場合は、ニッケイを乾燥処理して得たシナモンを用いて次の通り得ることができる。抽出手段は、特に限定されないが、水系溶媒や有機溶媒を用いて行うことができ、水系溶媒としては水、低級アルコール、多価アルコール、酸を挙げることができる。低級アルコールとしては例えばメタノール、エタノール、プロパノールを挙げることができ、多価アルコールとしては、例えばプロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、グリセリン、酸としては希酢酸、希塩酸を挙げることができる。この他、アセトン等のケトン類、エチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステル等のエステル類であっても抽出溶媒とすることができる。また、有機溶媒であれば、キシレン、ベンゼン、クロロホルムを挙げることができる。水、低級アルコール、多価アルコール、酸、ケトン類、エステル類、有機溶媒はそれぞれ単独で用いてもよいし、これらから選択された2種以上からなる混合液にして用いてもよい。特に、水、アルコール、エタノール、アセトンは、取得の容易性及び取り扱いの容易性の観点から抽出溶媒として用いるのに適する。
【0022】
シナモンからシンナムアルデヒドを抽出するには、特に限定されないが水抽出やエタノール抽出により抽出することができる。抽出する場合に用いられる水系溶媒を水としたときは、シナモン1質量部に対して水を5~20質量部、好ましくは10~15質量部用いると効果的な抽出がなされ好ましい。水による抽出は、熱水によって行われるとよく、例えば、抽出温度を80~100℃、抽出時間を60~120分として抽出操作を行い、抽出液を得る。その後、この抽出液を室温まで放冷して、遠心分離操作を行う。遠心分離操作は遠心分離機により、例えば、3500rpmで5~10分の設定で遠心分離を行うとよい。遠心分離された抽出液の上清を分取してろ紙等を用いて固液分離操作を行い、液部を得る。液部を乾燥(例えば、凍結乾燥)させてシナモン抽出物を得ることができる。
【0023】
なお、抽出溶媒は水のほか、エタノール水溶液を用いてもよい。この場合は、エタノールの気化を防ぐため抽出温度を常温(例えば5~30℃、好ましくは25℃)とするとよい。抽出液に対して、遠心分離操作、固液分離操作を行って得られた液部については、濃縮操作(例えばエバポレーターによる操作)を行い、エタノール分を除去した後に乾燥させてシナモン抽出物とすることもできる。
【0024】
得られた抽出物には、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体が含まれる。シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体の分離については、例えばカラムによる分離過程において分画範囲を調節して、上記抽出液をカラムに通して分画液を得ることで、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を分離することができる。
【0025】
シナモン抽出物には、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体が含まれる。そして、これらの他、代表的なものとしてケイヒ酸、クマリン、安息香酸、о-メトキシ-シンナムアルデヒド、シンナミルアルコール、4-アリル-2,6-ジメトキシフェノールを挙げることができ、また、その他にもベンズカテキン、1-メトキシ-7-メチル-3,4-ジヒドロベンゾ[c]ピラン、(+)-(1S,3R,4S)-4(A)-メチルアダマンタン、1-(2’-ヒドロキシフェニル)プロパ-2-エン-1-ベンゼントリオール、1,3,5-ベンゼントリオール、4-プロピル-1,2-ベンゼンジオール、3,4,5-トリメトキシフェノール、4-((1E)-3-ヒドロキシ-1-プロペニル)-2-メトキシフェノール、およびバニリルマンデル酸を例として挙げることができる。シンナムアルデヒドの誘導体としては、特に限定されないが、例えば、シンナムアルデヒドジメチルアセタール、o-メトキシシンナムアルデヒド、3-メトキシ-4-ヒドロキシシンナムアルデヒドを挙げることができる。
【0026】
シンナムアルデヒドは、幾何異性体として(Z)-シンナムアルデヒド、(E)-シンナムアルデヒドの形態をとるが、(E)-シンナムアルデヒドの方が抽出され易いため、本発明に係る経口用剤に含まれるシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体がシナモン抽出物に含まれるものである場合は、当該シンナムアルデヒドは(E)-シンナムアルデヒドが支配的に含まれたもの(例えば、本発明に係る経口用剤に含まれるシンナムアルデヒドの50%超が、(E)-シンナムアルデヒドからなるもの)となる。
【0027】
また、当該抽出物は、抽出溶媒をできるだけ取り除いて乾燥させておくと、嵩が小さくなり保管したり経口投与したりする上で都合がよい。乾燥手法としては、特に限定されないが、例えばエアードライ乾燥、凍結乾燥、噴霧式乾燥等の手法が挙げられる。
【0028】
当該抽出物を乾燥させるためには、乾燥に先立ち抽出溶媒を除去して濃縮する等の処理を行うとよい。濃縮の手法は、特に限定されないが、例えばエバポレータ(遠心式薄膜真空蒸発装置等の真空蒸発装置や減圧濃縮装置等)で抽出溶媒をある程度取り除いた後の残液をカラムに通し、当該抽出物が含まれる分画範囲を分画液として分離し、濃縮液を得る手法を挙げることができる。カラム分離に用いられるカラムの充填剤としては、例えばシリカゲル、ODS基修飾型シリカゲル、イオン交換樹脂を例示することができる。その他にも、濃縮の手法として、凍結濃縮法、逆浸透膜による膜濃縮法、超音波霧化分離法等、公知の手法を例示できる。なお、シンナムアルデヒドはHPLCを用いた公知の手法で同定が可能である。
【0029】
当該抽出物は、そのままの状態にしておくこともできるが、吸着、脱色、精製等して液状、ペースト状、ゲル状、粉末状とすればその後の取り扱いが容易となり好ましい。用途に応じ、更に脱臭、脱色等の精製処理を行ってもよく、精製処理としては、活性炭カラム等に通す処理を行う等公知の処理を適宜選択することができる。
【0030】
本発明に係る経口用剤はシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を含有するものであるが、前記シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体の含有量は、5mg/日以上であるとよく、10~350mg/日であるとより好ましく、10~50mg/日であると好適である。シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体は特有の味を有し、前記シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体の含有量が5mg/日未満だと、当該経口用剤を経口内に含んだ時に当該味が薄く経口内に拡がる香ばしさに欠けるおそれがある。
【0031】
また、当該経口用剤に、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を含有するシナモン及び/又はその抽出物が、好ましくは0.0001~80質量%、より好ましくは0.001~50質量%、さらに好ましくは0.02~20質量%含まれていると、当該経口用剤を摂取しやすく好ましい。
【0032】
本発明に係る経口用剤に含めることができるものとしては、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体の他に添加剤がある。添加剤としては、本発明に係る経口用剤が奏する効果を損なわないもの、例えば生理活性を持たない物質が好ましい。このような観点から添加剤としては、例えばデンプン、デキストリン、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、麦芽糖、還元麦芽糖水飴、結晶セルロース等、二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウム、グアーガム、アラビアガム、寒天、カラギナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ジェランガム、ペクチン、キチン、タマリンドシードガム、ゼラチン、ペクチン、アルギン酸、キトサン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース、マルトデキストリン、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、カゼイン、ビタミンB、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類等を挙げることができる。この中でもデンプン、二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体との反応性が極めて乏しく、生理活性を持たないため、経口用剤に含める添加剤として好ましい。
【0033】
また、本発明に係る経口用剤に含まるものとして、次に掲げる着色剤を挙げることができる。当該着色剤の例としては、アントシアニン、ベタニン、カンタキサンチン、カラメル、カルミン、クルクミン、リボフラビン、サフランを例示でき、この他にもビートルート、ザクロ、サクランボ、ニンジン、アカキャベツ、紅藻等の抽出物を挙げることができる。
【0034】
本発明に係る経口用剤には、その他の物質、例えば乳製品、血流促進効果を付与する物質、香料、刺激効果を付与する物質、チロシナーゼ活性阻害効果を付与する物質、甘味料、栄養強化を付与する物質、抗酸化効果を付与する物質、保存料、ゲル化剤、乳化剤等が含有されていてもよい。しかしながら、これらに限定されるものではない。
【0035】
乳製品として、練乳、生クリーム、牛乳、マーガリン、チーズ、バター、粉乳、ホエー等を例示できる。
【0036】
血流促進効果を付与する物質として、センブリエキス、ニンニクエキス、ゲンチアナエキス、人参エキス、アロエエキス、ミノキシジル、塩化カルプロニウム、トウキエキス、セファランチン等を例示できる。
【0037】
香料として、天然動物性香料であるカストリウム、ジャコウ、シベット、アンバーグリス等、植物性香料であるアニス精油、ペルーバルサム精油、イランイラン精油、イリス精油、ウイキョウ精油、オレンジ精油、カナンガ精油、カラウェー精油、カルダモン精油、グアヤクウッド精油、クミン精油、ベルガモット精油、橙花精油、ゲラニウム精油、レモン精油、コリアンデル精油、シダーウッド精油、シトロネラ精油、ジャスミン精油、ジンジャーグラス精油、杉精油、スペアミント精油、西洋ハッカ精油、大茴香精油、チュベローズ精油、シソ精油、冬緑精油、トルーバルサム精油、バチュリー精油、バラ精油、パルマローザ精油、桧精油、ヒバ精油、ボアドローズ精油、プチグレン精油、ベイ精油、ベチバ精油、芳樟精油、マンダリン精油、ユーカリ精油、ライム精油、ラベンダー精油、リナロエ精油、レモングラス精油、ローズマリー精油、和種ハッカ精油、コーヒー精油、カカオ精油等を例示できる。
【0038】
刺激効果を付与する物質として、ハッカ油、トウガラシチンキ、カンタリスチンキ、ショウキョウチンキ、カンフル、ノニル酸バニルアミド、メントール等を例示できる。
【0039】
チロシナーゼ活性阻害効果を付与する物質として、ヤマグワ、クワ、クララ、ヨモギ、マツホド、ハトムギ、ホップ、ユーカリ、桔梗、続随子、センキュウ、サイコ、ハマボウフウ、キハダ、牡丹皮、シャクヤク、ゲンノショウコ、葛根、甘草、トウキ、五倍子、アロエ、ショウマ、紅花、緑茶等の植物エキス、胎盤エキス、ビタミンC、エラグ酸、コウジ酸、ビタミンE、N-アセチルチロシン、グルタチオン、アルブチン、ハイドロキノン、ルシノール、シルク抽出物等を例示できる。
【0040】
甘味料として、砂糖、甘茶、ガラクトース、果糖、アラビノース、キシロース、ステビア、マンノース、麦芽糖、蜂蜜、ブドウ糖、ミラクリン、モネリン、甘草抽出物等を例示できる。
【0041】
栄養強化を付与する物質として、ヘム鉄、貝殻焼成カルシウム、酵母、卵黄粉末、小麦胚芽、ヘミセルロース、シアノコラバミン等を例示できる。
【0042】
抗酸化効果を付与する物質として、プロポリス、ヒドロキシチロソール、ステアリン酸エステル、ノルジヒドログアセレテン酸、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、セサモール、ゴシポール等を例示できる。
【0043】
保存料として、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カルシウム、ソルビン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムからなる群より選択される1種又は2種以上の組み合わせを例示できる。
【0044】
ゲル化剤として、ジェランガム、アルギン酸ナトリウムからなる群より選択される1種又は2種以上の組み合わせを例示できる。
【0045】
乳化剤として、酢酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノオレート、レシチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウムからなる群より選択される1種又は2種以上の組み合わせを例示できる。
【0046】
この他、提供する用途に応じて、食品添加物、例えば酸化防止剤、増粘多糖類、緩衝剤、充填剤、湿潤剤、滑沢剤、放出剤、コーティング剤等を本発明に係る経口用剤に含まれてもよい。
【0047】
(経口用剤)
本発明に係る経口用剤は、口腔内に付与して用いられるものをいい、例えば、飲食品、内服薬、吸入薬等の経口医薬品等のように口腔内に付与された後に、その全部または一部が食道、気道等の体腔を通過するもの、舌下錠等の口腔用錠剤、口腔用軟膏等の経口医薬品のようにその全部又は一部が口腔粘膜から吸収されるもの、及び歯磨き、うがい薬、洗口剤等の口腔ケア製品、噛みたばこ、ガム等のように一旦口腔内に付与した後に、その全部又は一部が口腔から体外に排出されるもの等を挙げることができる。
【0048】
本発明に係る経口用剤の形態は、特に限定されないが、例えば固形、液体、ゲル、気泡、乳液、粉末、顆粒、ペースト及びクリームのいずれか一つとすることができる。
【0049】
本発明に係る経口用剤の具体的な形態としては飲食品であってもよく、飲食品としては、錠剤、カプセル、飲料(紅茶、ジュース、コーヒー,茶、炭酸飲料、スポーツ飲料等)、ゼリー、菓子(ガム、キャンディー、キャラメル、チョコレート、クッキー、スナック、グミ、錠菓等)、パン、ケーキ、カレー粉、カレー、レトルト食品及び調味料(味噌、醤油等)を例示できる。ここで飲食品とは、例えば、飲料、食品、サプリメント、特別用途食品、保健機能食品、栄養補助食品、健康補助食品等をいうが、これらに限るものではない。これらのうちの代表的な飲食品についての構成成分を次に例示する。
【0050】
錠剤であれば、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体、滑沢剤、微粒二酸化ケイ素、香料、甘味料、麦芽糖が含有されてなるものとすることができる。滑沢剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸、硬化油、及びタルクからなる群より選択される1種又は2種以上の組み合わせを例示でき、特にショ糖脂肪酸エステルを例示できる。微粒二酸化ケイ素は、微粒シリカゲル、微粉末シリカ、軽質無水ケイ酸からなる群より選択される1種又は2種以上の組み合わせを例示できる。錠剤の具体的成分としては、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を1質量%、滑沢剤を5.0質量%、微粒二酸化ケイ素を2.0質量%、香料を適量、甘味料を適量、残部を麦芽糖とすることができる。
【0051】
ハードカプセルであれば、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体、コーティング剤、微粒二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウム、でんぷんが含有されてなるものとすることができる。コーティング剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される1種又は2種以上の組み合わせを例示できる。ハードカプセルの具体的組成としては、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を1.2質量%、コーティング剤を20.0質量%、微粒二酸化ケイ素を適量、ステアリン酸カルシウムを適量、残部をでんぷんとすることができる。
【0052】
ソフトカプセルであれば、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体、ゼラチン、ミツロウ、可塑剤、植物油脂が含有されてなるものとすることができる。可塑剤としては、グリセリン脂肪酸エステルや、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコールを例示できる。ソフトカプセルの具体的組成としては、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を1質量%、ゼラチンを30.0質量%、ミツロウを5.0質量%、可塑剤を5.0質量%、残部を植物油脂とすることができる。
【0053】
飲料であれば、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を0.01質量%、果糖ブドウ糖液糖を2.0質量%、香料を適量、保存料を適量、残部を水とすることができる。
【0054】
ゼリーであれば、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を0.1質量%、砂糖を50.0質量%、ゲル化剤を1.0質量%、香料を適量、保存料を適量、残部を水とすることができる。
【0055】
粉末飲料であれば、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を2質量%、乳化剤を適量、でんぷんを適量、残部をデキストリンとすることができる。
【0056】
カレーであれば、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を0.025質量%、小麦粉を7質量%、油脂を5質量%、食塩を2質量%、カレー粉(シナモンを含まず)を1.6質量%、砂糖を1質量%、野菜・果実由来原料を適量、香料を適量、乳化剤を適量、色素を適量、残部を水とすることができる。
【0057】
なお、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体はシナモン粉末に含有されている場合があるので、本発明に係る経口用剤にシナモンを含有させることで、実質的にシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を含有する経口用剤とすることもできる。この場合、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体がシナモンの構成成分としてシナモンに含まれているので、単位質量当たりのシナモンにおけるシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体の含有量(すなわち、シナモンに占めるシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体の含有割合)を加味して、上記経口用剤にシナモンを含有させるとよい。例えば、上記ハードカプセルの具体的成分として、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体の代わりにシナモンを含有させる場合は、シナモンを約50質量%とするとよい。このハードカプセルであれば、1粒が420mgである当該ハードカプセルを、一日あたり1粒以上、より好ましくは2粒以上、更に好ましくは10粒以上摂取することが望ましい。
【0058】
単位質量当たりのシナモンにおけるシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体の含有量は、シナモンの種類により異なる。例えばセイロンシナモンであれば、セイロンシナモン1000mg当たりシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体は1~50mg含まれ、シナモンカシアであれば、シナモンカシア1000mg当たりシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体は2~100mg含まれている。
【0059】
本発明に係る経口用剤は、用途(医薬、飲食品等)や用法、摂取対象者(年齢、体重等)に応じて適宜摂取量を調整するとよい。
【0060】
本発明に係る経口用剤が飲食品である場合は、特に限定されないが、例えば一食分の飲食品に含まれるシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体の摂取量を10~50mgとすると好ましい。
【0061】
本発明に係る実施形態がシンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を有し、肌の弾力を増加させる特徴を有する経口用剤であると好ましい。当該経口用剤が肌の弾力を増加させるメカニズムは厳密にはわからないが、おそらく次のように考えられる。肌の弾力の低下等がもたらす肌の老化は、皮膚機能の低下やシワ等の外見的変化として現れる。この原因としては細胞外マトリックス、例えばコラーゲンの崩壊が一つに挙げられる。コラーゲンは生体内で産生される主要な蛋白質の一つであるが、加齢とともにその産生量が減少する。
【0062】
これを踏まえ、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体が皮膚繊維芽細胞に作用してコラーゲン、特にI型コラーゲンの産生能を亢進させる、つまりI型コラーゲンの産生を誘導すると本発明者等は考えた。すなわち、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体が口腔内に付与されることでコラーゲンの崩壊を抑制し、ひいては肌の弾力の低下を抑制あるいは肌の弾力の増加を引き起こすのではないかとの考えのもと、後述する実施例により、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体が肌の弾力の低下を抑制あるいは肌の弾力の増加を引き起こすことが明らかにされた。よって、肌の弾力が増加するという特徴を有する本発明に係る経口用剤は、肌への美容効果を高めるという効果を有するものといえる。
【0063】
また、本発明に係る実施形態が、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を有し、経表皮水分蒸散量を減少させる特徴を有する経口用剤であると好ましい。体内の水分は、発汗により外部に放出されるもの以外にも、皮膚表面にある角層を透過して外部へ蒸散するものがある。この蒸散する水分量は経表皮水分蒸散量の測定によって明らかにすることができる。角層は体内の水分の蒸散を抑制する機能(バリア機能ともいう。)を有し、体内が水分を喪失して乾燥するのを防いでいる。この体内の水分の蒸散が少ないほど、当然肌の美容に優れているといえる。しかしながら、肌の老化が進行すると角層のバリア機能が低下し、水分が蒸散し易くなる。経表皮水分蒸散量を減少させる特徴を有する本発明に係る経口用剤は、各層から外部への体内水分の蒸散を抑制する効果を有するといえ、肌の美容、具体的には肌の潤い、肌の弛み、肌のシワ、肌のハリの改善に優れた効果を有する。
【0064】
また、本発明に係る実施形態が、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を有し、皮膚水分量を増加させる特徴を有する経口用剤であると好ましい。皮膚水分量は、加齢とともに低下する傾向にあり、数値が大きいほど皮膚がより多くの水分を保持しているといえる。皮膚水分量の低下は、肌の乾燥や肌のシワ、たるみを引き起こす要因とされ、肌の美容には皮膚水分量を維持又は増加することが効果的である。よって、皮膚水分量を増加させる特徴を有する本発明に係る経口用剤は、肌の美容に効果的なものといえる。
【0065】
また、本発明に係る実施形態が、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を有し、血中ペントシジン濃度を減少させる特徴を有する経口用剤であると好ましい。ペントシジンは糖化最終産物の一つであり、このペントシジンを抑制することが肌への美容効果を向上させることにつながる。ペントシジンは体内においては血液に含まれる血中ペントシジン量を測定することで把握することができる。血中ペントシジン量が多いほど、体内に糖化最終産物の蓄積量が多いといえる。
【0066】
血中のペントシジン濃度を抑制することは、肌への美容効果を向上させる他、ペントシジン生成に関連する疾患の抑制にもつながる。ペントシジン生成に関連する疾患として代表的なものは、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、癌、慢性腎不全、重症アトピー性皮膚炎、骨粗しょう症、糖尿病、糖尿病合併症、リウマチ様関節炎、重症アトピー性皮膚炎、アルツハイマー型認知症、統合失調症等がある。また、加齢に伴う血管組織老化、加齢臭や口臭の発生等を例示できる。本発明に係る経口用剤は、これらの発症を予防又は症状の改善に有益とも考えられる。
【0067】
上記に掲げる実施形態の他にも、本発明に係る実施形態が、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を含み、肌の弾力を増加させ、かつ血中ペントシジン濃度を減少させる経口用剤や、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を含み、経表皮水分蒸散量を減少させ、かつ血中ペントシジン濃度を減少させる経口用剤、シンナムアルデヒド及び/又はその誘導体を含み、皮膚水分量を増加させ、かつ血中ペントシジン濃度を減少させる経口用剤も、肌の美容効果を高めることができ、好ましい実施形態である。
【実施例0068】
試験1~試験9を実施した。試験の詳細を次に示す。試験1~試験8は、全て同一の期間に行われ、下記摂取前測定は2022年2月13、14日に、摂取後測定は2022年4月18日に日本国内でそれぞれ行われた。試験1~試験8までの被験者は年齢が40歳から61歳までの範囲の女性とした。摂取前測定を行った環境試験室は、両日ともに温度21±1℃、湿度50±5%であった。なお、被験者の中には、外的事情により試験期間の途中で続行が困難となった者がおり、その者のデータは除いて評価を行った。
【0069】
(試験1 肌の弾力及び血中ペントシジン量の測定について)
試験1の内容は次のとおりである。
(1-1)カプセルを摂取する前の測定を行った。摂取前測定では、被験者の、肌の弾力R2値と血中ペントシジン量(pmоl/mL)を測定した。この測定結果を摂取前値という。
【0070】
(1-2)被験者は、上記(1-1)を行った日の7日後を初日として、1日当たりカプセル10粒ずつを毎日摂取し、これを8週間(56日間)継続した。ここで、被験者は3群の試験群(1A群が2名、1B群が3名及び1C群が3名)に分けられた。摂取するカプセルは2種類(被験カプセル、プラセボカプセル)用意され、被験カプセルはシンナムアルデヒドの含有量が1粒当たり5mgであり、プラセボカプセルはシンナムアルデヒドの含有量が1粒当たり0mgであった。被験カプセル及びプラセボカプセルは全く同じ外観をなし区別がつかないものであり、被験者は、提供されたカプセルが被験カプセルであるか、プラセボカプセルであるかは区別できない。カプセルの処方を表1、表2に示す。また、被験者各群のシンナムアルデヒドの摂取量を表3に示す。なお、被験カプセルに含まれるシンナムアルデヒドの含量(摂取量)は、シナモン粉末の含量から換算できる。また、シナモン粉末は、シナモンカシアを用いた。
【0071】
1A群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たり被験カプセル2粒とプラセボカプセル8粒の計10粒であった。
1B群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たり被験カプセル10粒であった。
1C群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たりプラセボカプセル10粒であった。
【0072】
(1-3)摂取後測定を行った。摂取後測定では、上記(1-2)の最後の摂取日の翌日に、被験者の、肌の弾力R2値と血中ペントシジン量(pmоl/mL)を測定した。この測定結果を摂取後値という。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
カプセル摂取前と摂取後における肌の弾力R2と血中ペントシジン量の測定結果を表4に示す。
【0077】
【0078】
(試験2 経表皮水分蒸散量及び血中ペントシジン量の測定について)
試験2の内容は次のとおりである。
(2-1)カプセルを摂取する前の測定を行った。摂取前測定では、被験者の、経表皮水分蒸散量(g/(h・m2))と血中ペントシジン量(pmоl/mL)を測定した。この測定結果を摂取前値という。
【0079】
(2-2)被験者は、上記(2-1)を行った日の7日後を初日として、1日当たりカプセル10粒ずつを毎日摂取し、これを8週間(56日間)継続した。ここで、被験者は3群の試験群(2A群が2名、2B群が4名及び2C群が4名)に分けられた。摂取するカプセルは、上記試験1で使用したカプセルと同じ2種類のカプセル(被験カプセル、プラセボカプセル)であった。被験者各群のシンナムアルデヒドの摂取量を表3に示す。
【0080】
2A群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たり被験カプセル2粒とプラセボカプセル8粒の計10粒であった。
2B群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たり被験カプセル10粒であった。
2C群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たりプラセボカプセル10粒であった。
【0081】
(2-3)摂取後測定を行った。摂取後測定では、上記(2-2)の最後の摂取日の翌日に、被験者の、経表皮水分蒸散量と血中ペントシジン量(pmоl/mL)を測定した。この測定結果を摂取後値という。
【0082】
カプセル摂取前と摂取後における経表皮水分蒸散量と血中ペントシジン量の測定結果を表5に示す。
【0083】
【0084】
(試験3 皮膚水分量及び血中ペントシジン量の測定について)
試験3の内容は次のとおりである。
(3-1)カプセルを摂取する前の測定を行った。摂取前測定では、被験者の、皮膚水分量(0~120までの相対値)と血中ペントシジン量(pmоl/mL)を測定した。この測定結果を摂取前値という。
【0085】
(3-2)被験者は、上記(3-1)を行った日の7日後を初日として、1日当たりカプセル10粒ずつを毎日摂取し、これを8週間(56日間)継続した。ここで、被験者は3群の試験群(3A群が3名、3B群が6名及び3C群が2名)に分けられた。摂取するカプセルは、上記試験1で使用したカプセルと同じ2種類のカプセル(被験カプセル、プラセボカプセル)であった。被験者各群のシンナムアルデヒドの摂取量を表3に示す。
【0086】
3A群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たり被験カプセル2粒とプラセボカプセル8粒の計10粒であった。
3B群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たり被験カプセル10粒であった。
3C群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たりプラセボカプセル10粒であった。
【0087】
(3-3)摂取後測定を行った。摂取後測定では、上記(3-2)の最後の摂取日の翌日に、被験者の、皮膚水分量と血中ペントシジン量(pmоl/mL)を測定した。この測定結果を摂取後値という。
【0088】
カプセル摂取前と摂取後における皮膚水分量と血中ペントシジン量の測定結果を表6に示す。
【0089】
【0090】
(試験4 血中ペントシジン量の測定について)
試験4の内容は次のとおりである。
(4-1)カプセルを摂取する前の測定を行った。摂取前測定では、被験者の、血中ペントシジン量(pmоl/mL)を測定した。この測定結果を摂取前値という。
【0091】
(4-2)被験者は、上記(4-1)を行った日の7日後を初日として、1日当たりカプセル10粒ずつを毎日摂取し、これを8週間(56日間)継続した。ここで、被験者は3群の試験群(4A群が5名、4B群が8名及び4C群が5名)に分けられた。摂取するカプセルは、上記試験1で使用したカプセルと同じ2種類のカプセル(被験カプセル、プラセボカプセル)であった。被験者各群のシンナムアルデヒドの摂取量を表3に示す。
【0092】
4A群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たり被験カプセル2粒とプラセボカプセル8粒の計10粒であった。
4B群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たり被験カプセル10粒であった。
4C群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たりプラセボカプセル10粒であった。
【0093】
(4-3)摂取後測定を行った。摂取後測定では、上記(4-2)の最後の摂取日の翌日に、被験者の、血中ペントシジン量(pmоl/mL)を測定した。この測定結果を摂取後値という。
【0094】
カプセル摂取前と摂取後における血中ペントシジン量の測定結果を表7に示す。
【0095】
【0096】
(試験5 皮膚水分量及び経表皮水分蒸散量の測定について)
試験5の内容は次のとおりである。
(5-1)カプセルを摂取する前の測定を行った。摂取前測定では、被験者の、皮膚水分量(0~120までの相対値)と経表皮水分蒸散量(g/(h・m2))を測定した。この測定結果を摂取前値という。
【0097】
(5-2)被験者は、上記(5-1)を行った日の7日後を初日として、1日当たりカプセル10粒ずつを毎日摂取し、これを8週間(56日間)継続した。ここで、被験者は2群の試験群(5B群が3名及び5C群が1名)に分けられた。摂取するカプセルは、上記試験1で使用したカプセルと同じ2種類のカプセル(被験カプセル、プラセボカプセル)であった。被験者各群のシンナムアルデヒドの摂取量を表3に示す。
【0098】
5B群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たり被験カプセル10粒であった。
5C群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たりプラセボカプセル10粒であった。
【0099】
(5-3)摂取後測定を行った。摂取後測定では、上記(5-2)の最後の摂取日の翌日に、被験者の、皮膚水分量と経表皮水分蒸散量(g/(h・m2))を測定した。この測定結果を摂取後値という。
【0100】
カプセル摂取前と摂取後における皮膚水分量と経表皮水分蒸散量の測定結果を表8に示す。
【0101】
【0102】
(試験6 皮膚水分量及び経表皮水分蒸散量の測定について)
試験6の内容は次のとおりである。
(6-1)カプセルを摂取する前の測定を行った。摂取前測定では、被験者の、皮膚水分量(0~120までの相対値)と経表皮水分蒸散量(g/(h・m2))を測定した。この測定結果を摂取前値という。
【0103】
(6-2)被験者は、上記(6-1)を行った日の7日後を初日として、1日当たりカプセル10粒ずつを毎日摂取し、これを8週間(56日間)継続した。ここで、被験者は3群の試験群(6A群が5名、6B群が6名及び6C群が2名)に分けられた。摂取するカプセルは、上記試験1で使用したカプセルと同じ2種類のカプセル(被験カプセル、プラセボカプセル)であった。被験者各群のシンナムアルデヒドの摂取量を表3に示す。
【0104】
6A群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たり被験カプセル2粒とプラセボカプセル8粒の計10粒であった。
6B群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たり被験カプセル10粒であった。
6C群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たりプラセボカプセル10粒であった。
【0105】
(6-3)摂取後測定を行った。摂取後測定では、上記(6-2)の最後の摂取日の翌日に、被験者の、皮膚水分量と経表皮水分蒸散量(g/(h・m2))を測定した。この測定結果を摂取後値という。
【0106】
カプセル摂取前と摂取後における皮膚水分量と経表皮水分蒸散量の測定結果を表9に示す。
【0107】
【0108】
(試験7 経表皮水分蒸散量及び肌の弾力の測定について)
試験7の内容は次のとおりである。
(7-1)カプセルを摂取する前の測定を行った。摂取前測定では、被験者の、経表皮水分蒸散量(g/(h・m2))と肌の弾力R2値を測定した。この測定結果を摂取前値という。
【0109】
(7-2)被験者は、上記(7-1)を行った日の7日後を初日として、1日当たりカプセル10粒ずつを毎日摂取し、これを8週間(56日間)継続した。ここで、被験者は3群の試験群(7A群が2名、7B群が1名及び7C群が6名)に分けられた。摂取するカプセルは、上記試験1で使用したカプセルと同じ2種類のカプセル(被験カプセル、プラセボカプセル)であった。被験者各群のシンナムアルデヒドの摂取量を表3に示す。
【0110】
7A群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たり被験カプセル2粒とプラセボカプセル8粒の計10粒であった。
7B群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たり被験カプセル10粒であった。
7C群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たりプラセボカプセル10粒であった。
【0111】
(7-3)摂取後測定を行った。摂取後測定では、上記(7-2)の最後の摂取日の翌日に、被験者の、経表皮水分蒸散量(g/(h・m2))と肌の弾力R2値を測定した。この測定結果を摂取後値という。
【0112】
カプセル摂取前と摂取後における皮膚水分量と肌の弾力の測定結果を表10に示す。
【0113】
【0114】
(試験8 皮膚水分量及び肌の弾力の測定について)
試験8の内容は次のとおりである。
(8-1)カプセルを摂取する前の測定を行った。摂取前測定では、被験者の、皮膚水分量(0~120までの相対値)と肌の弾力R2値を測定した。この測定結果を摂取前値という。
【0115】
(8-2)被験者は、上記(8-1)を行った日の7日後を初日として、1日当たりカプセル10粒ずつを毎日摂取し、これを8週間(56日間)継続した。ここで、被験者は3群の試験群(8A群が2名、8B群が4名及び8C群が3名)に分けられた。摂取するカプセルは、上記試験1で使用したカプセルと同じ2種類のカプセル(被験カプセル、プラセボカプセル)であった。被験者各群のシンナムアルデヒドの摂取量を表3に示す。
【0116】
8A群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たり被験カプセル2粒とプラセボカプセル8粒の計10粒であった。
8B群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たり被験カプセル10粒であった。
8C群の被験者各々が摂取したカプセルは、1日当たりプラセボカプセル10粒であった。
【0117】
(8-3)摂取後測定を行った。摂取後測定では、上記(8-2)の最後の摂取日の翌日に、被験者の、皮膚水分量(0~120までの相対値)と肌の弾力R2値を測定した。この測定結果を摂取後値という。
【0118】
カプセル摂取前と摂取後における皮膚水分量と肌の弾力の測定結果を表11に示す。
【0119】
【0120】
(試験9 ペントシジン濃度測定について)
シンナムアルデヒドとペントシジン濃度の関係についてのin vitrоによる試験を次に示す。
<工程(A) 糖化反応溶液の作製>
(1)1/15mol/Lリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.0)600μLと、40mg/mLヒト血清由来アルブミン(富士フイルム和光純薬株式会社)200μLと、6mol/Lグルコース溶液(富士フイルム和光純薬株式会社)100μLと加えて糖化反応溶液を得た。
(2)この糖化反応溶液にシンナムアルデヒド(富士フイルム和光純薬株式会社)を10%DMSO溶液で希釈したサンプル液100μLを加えて培養液1とし、この培養液を60℃で48時間培養した。ここで、培養液1は、3種(培養液11,12,13)作製され、シンナムアルデヒドがそれぞれ13.2μg/mL、132μg/mL、1320μg/mLになるように調製した。
【0121】
(3)糖化反応を抑制するポジティブコントロールとして、上記糖化反応溶液に上記サンプル液の代わりにアミノグアニジン水溶液(Alfa Aesar(AFA))を100μL加えて培養液2とし、この培養液2を60℃で48時間培養した。ここで、培養液2は、アミノグアニジンが24.6μg/mLとなるように調製した。
【0122】
(4)糖化反応を促進させるネガティブコントロールとして、上記糖化反応溶液に、10%DMSO溶液を100μL加えたものを培養液3とし、この培養液3を60℃で48時間培養した。ここで、培養液3は、DMSO溶液が1%になるように蒸留水を加えて調製した。
【0123】
(5)上記糖化反応溶液にシナモンセイロン熱水抽出物を10%DMSO溶液で希釈したサンプル液100μLを加えて培養液4とし、この培養液を60℃で48時間培養した。ここで、培養液4は、2種(培養液41,42)作製され、シナモンセイロン熱水抽出物がそれぞれ100μg/mL、10μg/mLになるように調製した。
【0124】
(6)上記糖化反応溶液にシナモンカシア熱水抽出物を10%DMSO溶液で希釈したサンプル液100μLを加えて培養液5とし、この培養液を60℃で48時間培養した。ここで、培養液5は、2種(培養液51,52)作製され、シナモンカシア熱水抽出物がそれぞれ100μg/mL、10μg/mLになるように調製した。
【0125】
ここで、シナモンセイロン熱水抽出物は次のとおりに調製した。シナモンセイロン粉末20gを蒸留水180gに懸濁させ、10%(W/W)シナモン懸濁液を得た。このシナモン懸濁液を撹拌しながら95~100℃で60分間加熱した後、室温になるまで放冷して抽出液を得た。その後、この抽出液を3500rpmで5分の設定で遠心分離を行った。遠心分離された抽出液の上清を分取してろ紙(No.5B)を用いて固液分離操作を行い、液部を得た。当該液部を凍結乾燥機で凍結乾燥させてシナモンセイロン熱水抽出物を得た。シナモンカシア熱水抽出物においてもシナモンセイロン熱水抽出物と同様の操作手順で得た。
【0126】
<工程(B) ペントシジン濃度の測定>
ペントシジンの測定は、FSKペントシジン(伏見製薬所)のプロトコルに示される下記の手順で行った。
(1)培養液の個数分用意された酵素剤それぞれに蒸留水を100μLずつ添加して酵素液とした。
(2)上記工程(A)で得られた培養後の培養液11を450μL測り採り、上記(1)の酵素液に添加し、ホルダーに入れた。上記工程(A)で得られた培養後の培養液12,13,2,3,41,42,51,52それぞれにおいても同様に、上記(1)の酵素液に添加し、ホルダーに入れた。この時、これらとは別に、ブランクとして蒸留水450μLを上記(1)の酵素液に添加し、ホルダーに入れた。
(3)55℃に設定したウォーターバス中で、上記(2)で得られた培養液又は蒸留水が添加された酵素液を、酵素反応を促進させるため、90分間加温した。
(4)上記(3)の手順終了後の酵素液を、直ちに沸騰水中で15分間加熱し、酵素を失活させた。
(5)冷却後、酵素失活後の酵素液に補助液50μLを添加して混合し、混合液とした。
(6)上記(5)の混合液をELISA測定用試料とした。
(7)固相プレート3ウェルに50μLずつ、上記(6)の測定用試料及び検量線作製用のスタンダード等分注した。
(8)試薬のブランク値を測定するウェル以外のウェルに第一抗体溶液を50μLずつ分注し、よく混合した後プレートをシールして、37℃で1時間静置して反応させた。
(9)1時間経過後、各ウェルに入っている液体を捨て、洗浄液200μLを各ウェルに分注した。プレートを左右に振動させてよく洗浄してから洗浄液を捨てた。洗浄液を分注し及び捨てる操作を3回繰り返した後、ペーパータオルでプレートを軽く叩き、水気を取り除いた。ただし、完全に乾燥させないようにした。
(10)第二抗体溶液100μLを各ウェルに分注した後、プレートをシールし常温(15~25℃)で1時間静置して反応させた。
(11)1時間経過後、上記(9)と同様の操作を行い、プレートの水気を取り除いた。
(12)各ウェルに発色剤100μLを分注してよく混合した後、アルミホイルで遮光して10分間静置した。
(13)10分間経過後、反応停止液100μLを各ウェルに分注した。
(14)上記(13)の後、マイクロプレートリーダー450nm(主波長)/630nm(参照波長)で測定した。結果を
図1に示した。
【0127】
結果から、シンナムアルデヒドを含む検体ではペントシジン濃度が、コントロールと比較して低減していることが分かる。すなわち、シンナムアルデヒドが、メイラード反応を抑制する効果があるといえる。
【0128】
(測定方法)
肌の弾力、血中ペントシジン量、経表皮水分蒸散量及び皮膚水分量の測定方法を次に示す。肌の弾力、血中ペントシジン量、経表皮水分蒸散量及び皮膚水分量の測定は、カプセルを摂取する前及び8週間分のカプセルを摂取した後のそれぞれのタイミングで測定を行った。なお、肌の弾力、血中ペントシジン量、経表皮水分蒸散量及び皮膚水分量の測定は、室内で行われた。
【0129】
(肌の弾力)
肌の粘弾性とは、柔軟性(柔らかさ)と弾力(伸びた皮膚が一定時間内にバネのように元に戻る程度)などの力学的な性質のことをいい、老化度(肌年齢)のひとつの指標である。肌の粘弾性のうち、肌の弾力R2値についてはCourage-Khazaka製の測定機器「キュートメーター(Cutometer(登録商標) MPA580)、プローブ径2mm)で測定することができる。測定手順について
図2を参照しつつ説明すると、当該測定機器で肌を吸引すると肌の表面の高さ(吸引高さ)が吸引方向に変位し、吸引開始2秒後に肌の変位量が上限に達する。このときの肌の変位量をUf値とする。その後吸引を解除すると、肌の変位量が減少し吸引解除2秒後の肌の変位量がR1値となる。その後、長時間かけて肌の変位は当初の位置、すなわち変位量0に収束する。ここで、Uf値とR1値を測定しておくことで、弾力R2値を次の式1により求めることができる。
[式1]
R2=(Uf-R1)/Uf
【0130】
肌の弾力R2(肌の変位量)の測定部位は、被験者の左上腕内側とした。被験者のUf値及びR1値については、上記測定機器を用いて被験者の当該測定部位における肌の変位量の測定を5回行って得られた5点のUf値群及びR1値群について、各群につき最大値及び最小値を除いた3点のデータの平均値をそれぞれ求め、これらを被験者のUf値及びR1値とした。これらUf値とR1値から上記式1の演算によってR2値を求めた。
【0131】
カプセル摂取後における肌の弾力R2値がカプセル摂取前における肌の弾力R2値以上であれば、被験カプセルを摂取したことによって、肌の弾力が維持され又は増加したと評価できる。
【0132】
(血中ペントシジン量)
カプセルを摂取する前及び8週間分のカプセルを摂取した後に被験者の血液を回収し、血中ペントシジン量を測定した。血中ペントシジン量の測定方法は、前述の非特許文献3に開示される方法で行うことができる。
【0133】
(経表皮水分蒸散量)
経表皮水分蒸散量の測定は、肌表面から蒸発する水分量を経時的に測定するものであり、この測定により被験者の水分保持能力を評価することができる。経表皮水分蒸散量の測定は、Courage-Khazaka製の測定機器「テヴァメーター(Tewameter(登録商標) TM300)」で測定することができる。経表皮水分蒸散量の測定部位は、被験者の左上腕内側とした。測定手順は、上記測定機器を用いて肌表面から蒸発する水分量を1秒毎に60秒間以上、連続して測定することにより行った。測定終了前の30点(すなわち、測定終了前の30秒間)のデータを時系列順に5点毎に区切ってデータ群とし、6つ(=30点/5点)のデータ群を得た。これら6つのデータ群のそれぞれについて標準偏差を求め、合計6つの標準偏差を得た。得られた6つの標準偏差のうち最小の標準偏差を示すデータ群(最小の標準偏差が複数となる場合は、測定終了時に最も近いデータ群)を選択した。選択されたデータ群に含まれる5点の測定値の平均値を、当該被験者の経表皮水分蒸散量とした。
【0134】
(皮膚水分量)
皮膚水分量の測定は、皮膚表面から15μmの深さ(主に角層)に含まれる「水分量」を測定するものである。皮膚水分量の測定は、Courage-Khazaka製の測定機器「コルネオメーター(Corneometer(登録商標) CM825)」で測定することができる。皮膚水分量の測定部位は、被験者の左上腕内側又は左頬骨頭頂部とした。被験者の皮膚水分量については、上記測定機器を用いて被験者の当該測定部位における、皮膚水分量の測定を5回行って得られた5点の皮膚水分量のうち、最大値及び最小値を除いた3点のデータの平均値を求め、これを被験者の皮膚水分量とした。