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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155048
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069424
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 隆
(72)【発明者】
【氏名】吉永 洋
(72)【発明者】
【氏名】杉山 龍平
(72)【発明者】
【氏名】松田 諒平
(72)【発明者】
【氏名】山口 嘉紀
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA40
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB36
2H033BB37
2H033BB38
2H033BC03
2H033BE00
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】スティックスリップによる異音の発生を抑制する。
【解決手段】無端状のベルト部材21と、ベルト部材21を加熱する加熱源と、ベルト部材21の端部を回転可能に保持する保持部材27を備え、未定着画像を担持する記録媒体を加熱して、未定着画像を記録媒体に定着させる定着装置において、ベルト部材21と保持部材27との間で回転可能に配置される筒状部材28を備え、筒状部材28は、保持部材27に対して相対的に摺動する摺動面に潤滑剤を保持する凹部28cを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルト部材と、
前記ベルト部材を加熱する加熱源と、
前記ベルト部材の端部を回転可能に保持する保持部材を備え、
未定着画像を担持する記録媒体を加熱して、前記未定着画像を前記記録媒体に定着させる定着装置において、
前記ベルト部材と前記保持部材との間で回転可能に配置される筒状部材を備え、
前記筒状部材は、前記ベルト部材及び前記保持部材の少なくとも一方に対して相対的に摺動する摺動面に潤滑剤を保持する凹部又は凸部を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記筒状部材は、前記保持部材の内周面と前記保持部材の外周面との間に配置される筒状部と、前記筒状部よりも径方向外側へ突出し、前記ベルト部材の端部に対して軸方向に対向するように配置される鍔部を有する請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記鍔部は、前記筒状部材の周方向の一部に設けられる請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記筒状部材は、前記ベルト部材よりも薄く形成される請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記加熱源は、前記ベルト部材の内側に配置される輻射熱式のヒータである請求項1に記載の定着装置。
【請求項6】
前記凹部は、前記筒状部材の周方向に伸びる溝である請求項1に記載の定着装置。
【請求項7】
前記凹部は、前記筒状部材の軸方向に伸びる溝である請求項1に記載の定着装置。
【請求項8】
前記溝は、前記筒状部材の軸方向の外側端部に達しないように設けられる請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
前記凹部又は前記凸部は、点状の凹部又は凸部である請求項1に記載の定着装置。
【請求項10】
前記筒状部材は、軸方向に向かって波状に形成される部分を有する請求項1に記載の定着装置。
【請求項11】
前記筒状部材は、周方向に向かって波状に形成される部分を有する請求項1に記載の定着装置。
【請求項12】
前記波状に形成される部分は、前記筒状部材の軸方向の外側端部に達しないように設けられる請求項11に記載の定着装置。
【請求項13】
前記筒状部材は、最大幅の前記記録媒体が通過する通過領域よりも外側に配置される請求項1に記載の定着装置。
【請求項14】
請求項1に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタなどの画像形成装置として、トナーを用いて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置が知られている。
【0003】
電子写真方式の画像形成装置においては、用紙などの記録媒体を加熱して、トナー画像を記録媒体に定着させる定着装置が設けられている。
【0004】
一般的に、定着装置は、互いに接触してニップ部を形成する一対の回転体、一対の回転体の少なくとも一方を加熱する加熱源など備えている。トナー画像が転写された記録媒体が、加熱源によって加熱された回転体同士の間(ニップ部)に進入すると、未定着画像が加熱及び加圧されることにより記録媒体に定着される。
【0005】
また、回転体として無端状のベルト部材を用いた定着装置が知られている。斯かる定着装置においては、ベルト部材の両端部を一対の保持部材によって回転可能に保持する構成が採用されている。
【0006】
一対の保持部材を用いてベルト部材を保持する構成においては、ベルト部材が回転すると、保持部材に対してベルト部材が摺動する。このとき、ベルト部材の摺動に伴って摩耗粉が発生すると、ベルト部材と保持部材との間の摩擦抵抗が経時的に増加し、スティックスリップによる異音が発生する課題がある。
【0007】
特許文献1(特開2018-194737号公報)においては、ベルト部材(定着ベルト)と保持部材(フランジ部材)との間にフッ素樹脂から成る筒状部材(ベルトキャップ)を介在させ、ベルト部材と保持部材との間の摩擦抵抗を低減させる構成が提案されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の構成においては、保持部材と筒状部材との間、及び、筒状部材とベルト部材との間における摩擦抵抗を十分に低減させることができず、スティックスリップによる異音が発生する虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、スティックスリップによる異音の発生を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、無端状のベルト部材と、前記ベルト部材を加熱する加熱源と、前記ベルト部材の端部を回転可能に保持する保持部材を備え、未定着画像を担持する記録媒体を加熱して、前記未定着画像を前記記録媒体に定着させる定着装置において、前記ベルト部材と前記保持部材との間で回転可能に配置される筒状部材を備え、前記筒状部材は、前記ベルト部材及び前記保持部材の少なくとも一方に対して相対的に摺動する摺動面に潤滑剤を保持する凹部又は凸部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スティックスリップによる異音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る定着装置の斜視図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る定着装置の特徴部分の構成を示す図である。
図5】定着ベルトに対して筒状部材と保持部材とが組み付けられた状態を示す断面図である。
図6】溝内に保持される潤滑剤を示す筒状部材の断面図である。
図7】本発明の第二実施形態に係る筒状部材の斜視図である。
図8】本発明の第三実施形態に係る筒状部材の斜視図である。
図9】本発明の第四実施形態に係る筒状部材の斜視図である。
図10】本発明の第五実施形態に係る筒状部材の断面図である。
図11】本発明の第六実施形態に係る筒状部材の斜視図である。
図12】本発明の第七実施形態に係る筒状部材の斜視図である。
図13】本発明の第八実施形態に係る筒状部材の斜視図である。
図14】比較例に係る定着装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付し、一度説明した後ではその説明を省略する。
【0014】
<本発明の第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。ここで、本明細書中における「画像形成装置」には、プリンタ、複写機、ファクシミリ、印刷機、又は、これらのうちの二つ以上を組み合わせた複合機などが含まれる。また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字及び図形などの意味を持つ画像を形成するだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を形成することも意味する。まず、図1を参照して、本発明の第一実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
【0015】
<画像形成装置の全体構成>
図1に示されるように、本発明の第一実施形態に係る画像形成装置1000は、用紙などのシート状の記録媒体に画像を形成する画像形成部100と、記録媒体に画像を定着させる定着部200と、記録媒体を画像形成部100へ供給する記録媒体供給部300と、記録媒体を装置外へ排出する記録媒体排出部400を備えている。
【0016】
(画像形成部)
画像形成部100には、4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkと、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkが備える感光体2に静電潜像を形成する露光装置6と、記録媒体に画像を転写する転写装置8が設けられている。
【0017】
各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色のトナー(現像剤)を収容している以外、基本的に同じ構成である。具体的に、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、表面に画像を担持する像担持体としての感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電部材3と、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置4と、感光体2の表面を清掃するクリーニング部材5を備えている。
【0018】
転写装置8は、中間転写ベルト11と、一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13を備えている。中間転写ベルト11は、無端状のベルト部材であり、複数の支持ローラによって張架されている。一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11の内側に4つ設けられている。各一次転写ローラ12が中間転写ベルト11を介して各感光体2に接触することにより、中間転写ベルト11と各感光体2との間に一次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11の外周面に接触し、二次転写ニップを形成している。
【0019】
(定着部)
定着部200においては、記録媒体を加熱して画像を記録媒体に定着させる定着装置20が設けられている。定着装置20は、互いに接触してニップ部を形成する一対の回転体21,22などを備えている。
【0020】
(記録媒体供給部)
記録媒体供給部300には、記録媒体としての用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から用紙Pを送り出す給紙ローラ15が設けられている。以下、「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は、紙(用紙)だけでなくOHPシート又は布帛、金属シート、プラスチックフィルム、あるいは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。また、「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙及びアート紙など)、トレーシングペーパなども含まれる。
【0021】
(記録媒体排出部)
記録媒体排出部400には、用紙Pを画像形成装置外に排出する一対の排紙ローラ17と、排紙ローラ17によって排出された用紙Pを載置する排紙トレイ18が設けられている。
【0022】
<画像形成動作>
次に、図1を参照しつつ本発明の第一実施形態に係る画像形成装置1000の画像形成動作について説明する。
【0023】
画像形成動作が開始されると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2及び転写装置8の中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が、回転を開始し、給紙カセット14から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触することにより静止し、用紙Pに転写される画像が形成されるまで用紙Pの搬送が一旦停止される。
【0024】
各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、まず、帯電部材3によって、感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が、各感光体2の表面(帯電面)を露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各感光体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4がトナーを供給し、各感光体2上にトナー画像が形成される。各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。なお、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkのうち、いずれか一つを使用して単色画像を形成したり、いずれか2つ又は3つの作像ユニットを用いて2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。また、中間転写ベルト11へトナー画像が転写された後は、クリーニング部材5によって各感光体2上の残留トナーなどが除去される。
【0025】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。そして、用紙Pは、定着装置20へと搬送され、互いに接触する一対の回転体21,22の間(ニップ部)を通過する。このとき、用紙P上のトナー画像が一対の回転体21,22によって加熱及び加圧されることにより、トナー画像が用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、記録媒体排出部400へ搬送され、排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出される。これにより、一連の画像形成動作が終了する。
【0026】
<定着装置の構成>
続いて、図2に基づき、本発明の第一実施形態に係る定着装置20の構成について説明する。
【0027】
図2に示されるように、本実施形態に係る定着装置20は、一対の回転体21,22のほか、ハロゲンヒータ23、ニップ形成部材24、支持部材25、反射部材26などを備えている。
【0028】
一対の回転体21,22のうち、用紙Pの未定着画像担持面側に配置される回転体21は、無端状のベルト部材により構成される定着ベルトである。また、定着ベルト21と対向するように配置される回転体22は、定着ベルト21との間にニップ部Nを形成する加圧ローラである。
【0029】
定着ベルト21は、内側から順に、基材、弾性層、離型層などを有する。基材は、例えば、層厚が30~50μmであって、ニッケル、ステンレスなどの金属材料、あるいはポリイミドなどの樹脂材料により構成される。弾性層は、例えば、層厚が100~300μmであって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴムなどのゴム材料により構成される。定着ベルト21が弾性層を有していることにより、ニップ部における定着ベルト21の表面に微小な凹凸が形成されなくなるため、用紙P上のトナー画像に熱が均一に伝わりやすくなる。離型層は、例えば、層厚が10~50μmであって、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)などの材料により構成される。定着ベルト21が、離型層を有していることにより、用紙P上のトナー画像に対する離型性が確保される。小型化及び低熱容量化を図る場合は、定着ベルト21の全体の厚さが1mm以下で、直径が30mm以下であることが好ましい。
【0030】
加圧ローラ22は、芯材と、芯材の外周面に設けられる弾性層と、弾性層の外周面に設けられる離型層などを有する。芯材は、例えば、鉄などの金属材料により構成される。また、芯材は、中実の部材であるほか、中空の部材であってもよい。弾性層の材料としては、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。離型層は、例えば、PFA又はPTFEなどのフッ素樹脂により構成される。
【0031】
ハロゲンヒータ23は、赤外線(赤外光)を放射して輻射熱により定着ベルト21を加熱する輻射熱式の加熱源である。本実施形態においては、ハロゲンヒータ23が、定着ベルト21の内側に2つ配置されている。各ハロゲンヒータ23から輻射熱が放射されると、定着ベルト21が内側から加熱される。なお、加熱源として、ハロゲンヒータのほか、カーボンヒータなどの他の輻射熱式のヒータを用いてもよい。また、加熱源として、電磁誘導加熱(IH)方式の加熱源を用いてもよい。加熱源の数は、2つに限らず、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0032】
ニップ形成部材24は、定着ベルト21の内側に配置され、加圧ローラ22との間に定着ベルト21を挟んでニップ部Nを形成する部材である。ニップ形成部材24が、定着ベルト21を介して加圧ローラ22の外周面に接触することにより、定着ベルト21と加圧ローラ22との間にニップ部Nが形成される。
【0033】
支持部材25は、ニップ形成部材24を支持する部材である。支持部材25によってニップ形成部材24の加圧ローラ22側の面とは反対側の面が支持されることにより、加圧ローラ22からの加圧力が支持部材25によって受け止められる。これにより、加圧力によるニップ形成部材24の撓みが抑制され、均一な幅のニップ部Nが得られる。
【0034】
反射部材26は、ハロゲンヒータ23から放射される輻射熱を定着ベルト21に向けて反射する部材である。ハロゲンヒータ23からの輻射熱が反射部材26によって定着ベルト21へ反射されることにより、定着ベルト21が効果的に加熱される。また、本実施形態においては、反射部材26が、ハロゲンヒータ23と支持部材25との間に配置されているため、支持部材25への不要な輻射熱の付与も抑制され、省エネルギー化も図れる。
【0035】
図3は、本発明の第一実施形態に係る定着装置20の斜視図である。
【0036】
図3に示されるように、定着ベルト21の両端部には、定着ベルト21を回転可能に保持する一対の保持部材27が配置されている。なお、本明細書中でいう、定着ベルト21の「両端部」及び「端部」は、図3中の矢印Xにて示される定着ベルト21の長手方向における両端部及び端部を意味する。
【0037】
保持部材27は、断面C字状に形成される保持部27aと、規制部27bと、固定部27cを有する。保持部27aは、定着ベルト21の端部内に挿入される部分である。保持部27aが定着ベルト21の内に挿入されることにより、定着ベルト21が保持部27aによって回転可能に保持される。また、保持部27aの切り欠かれた部分をニップ部Nに対応する位置に配置することにより、ニップ部Nにおける定着ベルト21の変形が許容される。規制部27bは、保持部27a及び定着ベルト21よりも大きい外径に形成されている。このため、定着ベルト21に長手方向Xの寄りが生じたとしても、定着ベルト21の端部が規制部27bに突き当たることによって、定着ベルト21の長手方向Xの寄りが規制される。固定部27cは、定着装置20の側板などのフレーム部材に固定される部分である。固定部27cがフレーム部材に固定されることにより、定着ベルト21が回転体保持部材27を介して回転可能に支持される。
【0038】
本発明の第一実施形態に係る定着装置20は、次のように動作する。
【0039】
画像形成動作が開始されると、加圧ローラ22が図2中の矢印方向へ回転を開始し、これに伴って定着ベルト21が従動回転する。また、ハロゲンヒータ23によって定着ベルト21の加熱が開始される。そして、定着ベルト21の温度が画像を定着可能な温度になると、未定着画像(未定着トナーT)を担持する用紙Pが、定着ベルト21と加圧ローラ22との間(ニップ部N)へ搬送される。これにより、用紙P上の未定着画像が加熱及び加圧され用紙Pに定着される。その後、用紙Pは、ニップ部Nを通過し、定着装置20から排出される。
【0040】
<定着装置における課題>
ここで、本発明の第一実施形態とは異なる構成を例に、定着装置における課題について説明する。
【0041】
図14は、比較例に係る定着装置90の構成を示す図である。
【0042】
比較例に係る定着装置90は、本発明の第一実施形態に係る定着装置20と同じように、定着ベルト91の両端部を回転可能に保持する一対の保持部材97を備えている。
【0043】
このような構成においては、定着ベルト91の円滑な回転を確保するため、従来から、定着ベルト91の内周面と保持部材97(保持部97a)の外周面との間に潤滑剤を介在させる方法が提案されている。
【0044】
しかしながら、比較例に係る定着装置90においては、潤滑剤を用いても、定着ベルト91と保持部材97との間の摩擦抵抗を長期に亘って良好に低減させることができない理由がある。
【0045】
理由の1つとしては、定着ベルト91内に挿入される保持部97aが断面C字状に形成されていることが挙げられる。保持部97aが断面C字状に形成されていると、定着ベルト91と保持部97aとの間に介在する潤滑剤が、保持部97aの切り欠かれた部分97dから漏れ出てしまう。その結果、定着ベルト91と保持部97aとの間に介在する潤滑剤が少なくなり、摩擦低減効果が低下することになる。
【0046】
理由の2つ目は、保持部97aの外周面が凹凸の無い滑らかな面により構成されている点である。保持部97aの外周面が滑らかであると、保持部97aの外周面に潤滑剤が保持されにくい。また、定着ベルト91の内周面に対する保持部97aの接触面積も多くなる。このため、定着ベルト21と保持部97aとの間の摩擦抵抗が大きくなりやすい傾向にある。
【0047】
さらに、理由の3つ目としては、保持部材97の材料選択の自由度が低い点である。一般的に、保持部材97は適度な強度と耐熱性を有することが求められるため、限られた範囲の材料の中から選択することが強いられる。このため、保持部材97の材料として摩擦抵抗の低減及び潤滑剤の保持に適した材料を選択しにくい制約がある。
【0048】
以上のように、比較例に係る定着装置90においては、潤滑剤を用いても、定着ベルト91と保持部材97との間の摩擦抵抗を長期に亘って低減することができない理由がある。このため、比較例に係る定着装置90においては、スティックスリップによる異音が発生する虞がある。
【0049】
スティックスリップは、定着ベルト91の摺動に伴って定着ベルト91と保持部材97との間で振動が発生する現象である。定着ベルト91と保持部材97との間でスティックスリップ生じると、スティックスリップの振動が定着ベルト91などに伝播し、異音が発生することがある。比較例に係る定着装置90においては、潤滑剤を用いても、定着ベルト91と保持部97aとの間の摩擦抵抗を長期に亘って低減することができないため、摩耗粉の発生に伴って摩擦抵抗が経時的に増加すると、スティックスリップによる異音が発生する虞がある。
【0050】
これに対して、本発明の第一実施形態に係る定着装置においては、スティックスリップによる異音の発生を抑制するため、次のような構成を採用している。以下、本発明の第一実施形態の特徴部分の構成について説明する。
【0051】
<定着装置の特徴部分について>
図4に、本発明の第一実施形態に係る定着装置20の特徴部分の構成を示す。
【0052】
図4に示されるように、本発明の第一実施形態に係る定着装置20は、定着ベルト21と保持部材27との間に回転可能に配置される筒状部材28を備えている。なお、図4において、保持部材27が有する固定部27cは省略している。
【0053】
ここで、以下の説明において、筒状部材28の回転軸28xと平行な方向を「軸方向」という。また、「軸方向」に対して直交する方向を「径方向」といい、筒状部材28の回転軸28xを中心とする円の円周方向を「周方向」という。
【0054】
筒状部材28は、筒状部28aと、鍔部28bを有する。筒状部28aは、周方向に渡って切れ目のない無端状に形成されている。鍔部28bは、筒状部28aの軸方向一端部に筒状部28aよりも径方向外側へ突出するように設けられている。
【0055】
筒状部材28は、保持部材27よりも薄く、可撓性及び柔軟性を有する材料により構成されている。具体的に、保持部材27は、例えば厚さが1mm以上2mm以下の剛性を有する耐熱性樹脂などにより構成されているのに対し、筒状部材28は、例えば厚さが0.3mm以下の可撓性及び柔軟性を有する材料により構成される。ここでいう保持部材27の厚さは、例えば保持部27aの径方向の厚さT1、規制部27bの軸方向の厚さT2である。また、筒状部材28の厚さは、例えば筒状部28aの径方向の厚さt1、鍔部28bの軸方向の厚さt2である。筒状部材28の材料としては、保持部材27を構成する材料よりも摩擦係数が低く、潤滑剤を保持する性能(濡れ性など)に優れるポリイミドなどが好ましい。
【0056】
筒状部材28は、可撓性及び柔軟性を有する材料により構成されているため、弾性変形可能である。本実施形態においては、筒状部28aが、外力を受けない状態で円筒形状に形成されているが、筒状部28aは完全な円筒形状でなくてもよい。
【0057】
筒状部28aの内周面には、凹部である複数の溝28cが設けられている。複数の溝28cは、軸方向に伸び、筒状部28aの周方向全体に渡って等間隔に設けられている。
【0058】
図5は、定着ベルト21に対して筒状部材28と保持部材27とが組み付けられた状態を示す断面図である。
【0059】
図5に示されるように、筒状部材28及び保持部材27は、定着ベルト21の端部内に挿入される。詳しくは、筒状部材28の筒状部28aが、定着ベルト21の端部内に挿入され、筒状部28aの内側に保持部材27の保持部27aが挿入される。
【0060】
筒状部材28及び保持部材27が定着ベルト21の端部内に挿入された状態においては、筒状部材28の筒状部28aが、定着ベルト21の内周面と保持部27aの外周面との間に配置される。また、筒状部材28の鍔部28bは、定着ベルト21の端部21aと規制部27bとの間に配置される。鍔部28bは、定着ベルト21の端部21aに対して軸方向に対向するように配置されるため、定着ベルト21に軸方向の寄りが発生した場合は、定着ベルト21の端部21aが鍔部28bに接触し、鍔部28bが規制部27bに押し当てられることにより、定着ベルト21の軸方向の寄りが規制される。また、鍔部28bがあることにより、定着ベルト21内への筒状部材28の進入も防止される。
【0061】
また、筒状部材28は、定着ベルト21と保持部材27との間に配置された状態で、定着ベルト21及び保持部材27の少なくとも一方に対して回転可能に保持されている。すなわち、筒状部材28は、定着ベルト21が回転すると、定着ベルト21の回転に伴って従動回転してもよいし、定着ベルト21が筒状部材28に対して回転してもよい。
【0062】
このように、本発明の第一実施形態においては、定着ベルト21と保持部材27の間に筒状部材28が配置されていることにより、定着ベルト21と保持部材27との間の摩擦抵抗を長期に亘って良好に低減することができる。
【0063】
すなわち、筒状部材28は、周方向に渡って切れ目のない無端状の筒状部28aを有しているので、筒状部28aの周方向全体に渡って、筒状部28aと定着ベルト21との間、及び、筒状部28aと保持部材27との間において、潤滑剤を良好に保持することができる。
【0064】
さらに、本発明の第一実施形態においては、図6に示されるように、筒状部28aの内周面に複数の溝28cが設けられているので、溝28cによって潤滑剤10を保持できる。このように、筒状部材28は、保持部材27に対して相対的に摺動する摺動面(内周面)に潤滑剤10を保持する溝28cを有しているので、筒状部材28と保持部材27との間の摩擦抵抗を長期に亘って良好に低減できるようになる。
【0065】
また、筒状部28aの内周面に複数の溝28cが設けられているため、筒状部28aと保持部27aとの間の接触面積を減らすこともできる。従って、接触面積が少なくなることによる摩擦抵抗の低減効果も得られるようになる。
【0066】
また、筒状部材28が、保持部材27とは別部材であるので、筒状部材28の材料として保持部材27とは異なる材料を選択できるようになる。これにより、筒状部材28の材料として、摩擦抵抗の低減及び潤滑剤の保持に適した材料を選択できるようになり、定着ベルト21と保持部材27との間の摩擦抵抗をより効果的に低減できるようになる。
【0067】
以上のように、本発明の第一実施形態によれば、定着ベルト21と保持部材27との間に、潤滑剤の保持に優れ摩擦抵抗の低い筒状部材28を介在させることにより、定着ベルト21と保持部材27との間の摩擦抵抗を長期に亘って良好に低減できるようになる。また、保持部材27と筒状部材28との間でスティックスリップが生じたとしても、筒状部材28が緩衝材として機能することにより、筒状部材28から定着ベルト21へのスティックスリップによる振動の伝播を抑制できるようになる。このため、本発明の第一実施形態によれば、スティックスリップによる異音の発生を効果的に抑制できるようになる。
【0068】
また、本発明の第一実施形態においては、次のような作用効果も得られる。
【0069】
本発明の第一実施形態においては、筒状部材28が、可撓性及び柔軟性を有する材料により構成されているので、定着ベルト21が回転した際に、定着ベルト21が楕円形などに変形しても、そのときの定着ベルト21の変形に応じて筒状部材28も変形できる。このように、筒状部材28が定着ベルト21の変形に応じて変形可能に構成されているため、筒状部材28によって定着ベルト21の挙動が妨げられることがなく、円滑な定着ベルト21の回転を実現できる。
【0070】
また、可撓性及び柔軟性を向上させるために、筒状部材28を定着ベルト21より薄く形成してもよい。これにより、筒状部材28が定着ベルト21の変形に対してより柔軟に追従できるようになるので、定着ベルト21をより円滑に回転させることが可能となる。
【0071】
図4に示されるように、筒状部28aの内周面に設けられる溝28cは、筒状部材28の軸方向の外側端部281に達しないように設けられることが好ましい。なお、ここでいう「外側端部」とは、定着ベルト21に対して筒状部材28が挿入される方向とは反対方向における筒状部材28の端部を意味する。また、以下の説明中の「外側端部」も同じ意味である。溝28cが筒状部材28の外側端部281に達しないように設けられることにより、潤滑剤が溝28cに沿って外側へ漏れ出るのを抑制できる。これにより、筒状部材28と保持部材27との間に介在する潤滑剤の減少を抑制でき、潤滑剤をより長期に亘って良好に保持できるようになる。
【0072】
また、図5に示されるように、筒状部材28は、最大幅の用紙が通過する通過領域である最大通紙領域Wよりも外側に配置されることが好ましい。筒状部材28が最大通紙領域Wよりも外側に配置されていれば、筒状部材28はハロゲンヒータ23からの熱を積極的に吸収して定着ベルト21へ伝達しなくてもよいので、筒状部材28の内周面にハロゲンヒータ23の熱を効果的に吸収するための黒色塗装を施す必要はない。その場合、筒状部材28の材料として、摩擦抵抗の低減及び潤滑剤の保持に適した材料を選択しやすくなる。
【0073】
続いて、本発明の第一実施形態とは異なる他の実施形態について説明する。以下、主に本発明の第一実施形態とは異なる部分について説明し、同じ部分については適宜説明を省略する。
【0074】
<本発明の第二実施形態の構成>
図7は、本発明の第二実施形態に係る筒状部材28の斜視図である。
【0075】
第二実施形態に係る筒状部材28は、筒状部28aの内周面において周方向に伸びる複数の溝28cを有する。複数の溝28cは、周方向に連続する環状の溝であり、軸方向に渡って等間隔に設けられている。
【0076】
このように、潤滑剤を保持する溝28cは、周方向に伸びる溝であってもよい。また、この場合、各溝28cは、筒状部材28の外側端部281に達しないため、潤滑剤が溝28cに沿って外側へ漏れ出ることもない。このため、潤滑剤を長期に亘って良好に保持することが可能である。
【0077】
<本発明の第三実施形態の構成>
図8は、本発明の第三実施形態に係る筒状部材28の斜視図である。
【0078】
第三実施形態に係る筒状部材28は、筒状部28aの内周面に点状に形成された複数の凹部28dを有する。複数の凹部28dは、互いに間隔をあけて配置されている。
【0079】
このように、筒状部28aの内周面に点状に形成された複数の凹部28dが設けられていることにより、各凹部28dによって潤滑剤を保持できる。また、筒状部28aの内周面と保持部27aの外周面との間の接触面積も減らすことができる。このため、第三実施形態においても、筒状部28aの内周面と保持部27aの外周面との間の摩擦抵抗を長期に亘って良好に低減でき、スティックスリップによる異音の発生を抑制できる。
【0080】
<本発明の第四実施形態の構成>
図9は、本発明の第四実施形態に係る筒状部材28の斜視図である。
【0081】
第四実施形態に係る筒状部材28は、筒状部28aの外周面に、軸方向に伸びる複数の溝28cを有する。
【0082】
この場合、複数の溝28cが筒状部28aの内周面ではなく外周面に設けられているため、特に筒状部28aの外周面と定着ベルト21の内周面との間において、潤滑剤を良好に保持できる。また、筒状部28aの外周面に複数の溝28cがあることにより、筒状部28aの外周面と定着ベルト21の内周面との間の接触面積を減らすこともできる。すなわち、定着ベルト21に対して相対的に摺動する筒状部28aの摺動面(外周面)に、接触面積を減らし、潤滑剤10を保持する溝28cが設けられていることにより、筒状部材28と定着ベルト21との間の摩擦抵抗を長期に亘って良好に低減できるようになる。これにより、特に、筒状部材28と定着ベルト21との間において、スティックスリップによる異音の発生を抑制できるようになる。
【0083】
また、筒状部28aの外周面に設けられる凹部は、軸方に伸びる溝28cのほか、図7に示されるような周方向に伸びる溝28c、あるいは、図8に示されるような点状の凹部28dであってもよい。いずれの場合も、筒状部28aの外周面において潤滑剤を良好に保持できると共に、定着ベルト21の内周面に対する接触面積を減らすことができるので、筒状部材28と定着ベルト21との間のスティックスリップによる異音の発生を効果的に抑制できる。
【0084】
また、溝状又は点状の凹部を、筒状部28aの外周面と内周面の両方に設けてもよい。その場合、筒状部28aの外周面と内周面の両方において潤滑剤を良好に保持できると共に、定着ベルト21及び保持部材27の両方に対する接触面積を減らすことができるようになる。このため、筒状部材28と定着ベルト21との間、及び、筒状部材28と保持部材27との間において、スティックスリップによる異音の発生を効果的に抑制できるようになる。
【0085】
<本発明の第五実施形態の構成>
図10は、本発明の第五実施形態に係る筒状部材28の断面図である。
【0086】
図10に示されるように、溝状又は点状の凹部に代えて、筒状部28aの内周面に、複数の凸部28eを設けてもよい。筒状部28aの内周面に複数の凸部28eがあることにより、凸部28e同士の間において潤滑剤10を保持できる。また、凸部28eがあることにより、筒状部材28と保持部材27との間の接触面積も減らすことができる。また、凸部28eは、筒状部28aの内周面のほか、外周面に設けられてもよい。筒状部28aの内周面及び外周面の少なくとも一方に複数の凸部28eが設けられることにより、筒状部材28と定着ベルト21との間、又は、筒状部材28と保持部材27との間において、摩擦抵抗を長期に亘って良好に低減でき、スティックスリップによる異音の発生を抑制できるようになる。なお、凸部28eの形状は、筒状部28aの軸方向に伸びる形状であってもよいし、周方向に伸びる形状であってもよい。また、凸部28eは、点状であってもよい。
【0087】
<本発明の第六実施形態の構成>
図11は、本発明の第六実施形態に係る筒状部材28の斜視図である。
【0088】
第六実施形態においては、鍔部28bが、筒状部材28の周方向の一部に設けられている。
【0089】
鍔部28bは、定着ベルト21内への筒状部材28の進入を防止できればよいので、筒状部材28の周方向の全体に渡って連続して設けられる場合に限らず、周方向の一部に断続的に設けれていてもよい。また、鍔部28bが、周方向の一部に設けられる場合は、筒状部28aの可撓性及び柔軟性が向上するため、筒状部材28が定着ベルト21の変形に対してより柔軟に追従できるようになる。
【0090】
<本発明の第七実施形態の構成>
図12は、本発明の第七実施形態に係る筒状部材28の斜視図である。
【0091】
第七実施形態に係る筒状部材28は、周方向に向かって波状に形成される波状部分28fを有する。この場合、筒状部28aの少なくとも一部が周方向に向かって波状に形成されている。このため、筒状部28aの外周面及び内周面の両方に、軸方向に伸びる複数の凹部28g及び軸方向に伸びる複数の凸部28hが形成されている。
【0092】
このように、筒状部28aの外周面及び内周面の両方に凹部28g及び凸部28hが形成されていることにより、凹部28g内又は凸部28h同士の間において潤滑剤を保持できる。また、凹部28g及び凸部28hがあることにより、筒状部材28と定着ベルト21との間、及び、筒状部材28と保持部材27との間の接触面積も減らすことができる。このため、第七実施形態に係る構成においても、筒状部材28と定着ベルト21との間、及び、筒状部材28と保持部材27との間の摩擦抵抗を長期に亘って良好に低減でき、スティックスリップによる異音の発生を抑制できる。
【0093】
また、筒状部28aが波状に形成されているため、筒状部28aが径方向に変形しやすくなる。これにより、筒状部材28が定着ベルト21の変形に対してより柔軟に追従できるようになる。
【0094】
なお、波状部分28fは、筒状部材28の外側端部281に達しないように設けられることが好ましい。波状部分28fが外側端部281に達しないように設けられることにより、潤滑剤が軸方向に伸びる凹部28gに沿って外側へ漏れ出るのを抑制できるため、潤滑剤をより長期に亘って良好に保持できるようになる。
【0095】
<本発明の第八実施形態の構成>
図13は、本発明の第八実施形態に係る筒状部材28の斜視図である。
【0096】
第八実施形態に係る筒状部材28は、軸方向に向かって波状に形成される波状部分28fを有する。この場合、筒状部28aの外周面及び内周面の両方に、周方向に伸びる複数の凹部28g及び周方向に伸びる複数の凸部28hが形成されている。
【0097】
この場合も、筒状部28aの外周面及び内周面の両方に凹部28g及び凸部28hが形成されていることにより、凹部28g内又は凸部28h同士の間において潤滑剤を保持できる。なお、この場合、各凹部28gは、筒状部材28の外側端部281に達しないため、潤滑剤が凹部28gに沿って外側へ漏れ出ることはない。また、凹部28g及び凸部28hがあることにより、筒状部材28と定着ベルト21との間、及び、筒状部材28と保持部材27との間の接触面積も減らすことができる。このため、第八実施形態に係る構成においても、筒状部材28と定着ベルト21との間、及び、筒状部材28と保持部材27との間の摩擦抵抗を長期に亘って良好に低減でき、スティックスリップによる異音の発生を抑制できる。
【0098】
また、筒状部28aが波状に形成されているため、筒状部28aが径方向に変形しやすくなる。これにより、筒状部材28が定着ベルト21の変形に対してより柔軟に追従できるようになる。
【0099】
以上、本発明の各実施形態について説明した。なお、本発明に係る定着装置は、上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能である。
【0100】
例えば、鍔部28bが周方向の一部に設けられる構成は、図11に示される例に限らず、図7図8図9図10図12図13に示される各実施形態においても適用可能である。
【0101】
また、潤滑剤を保持する複数の凹部及び凸部の形状は、筒状部28aの内周面と外周面において同じ形状でなくてもよい。例えば、筒状部28aの内周面に設けられる凹部を溝状に形成し、筒状部28aの外周面に設けられる凹部を点状に形成してもよい。また、筒状部28aの内周面に複数の凹部を設け、筒状部28aの外周面に複数の凸部を設けてもよい。
【0102】
また、本発明の態様をまとめると、本発明には、少なくとも下記の態様が含まれる。
【0103】
[第1の態様]
第1の態様は、無端状のベルト部材と、前記ベルト部材を加熱する加熱源と、前記ベルト部材の端部を回転可能に保持する保持部材を備え、未定着画像を担持する記録媒体を加熱して、前記未定着画像を前記記録媒体に定着させる定着装置において、前記ベルト部材と前記保持部材との間で回転可能に配置される筒状部材を備え、前記筒状部材は、前記ベルト部材及び前記保持部材の少なくとも一方に対して相対的に摺動する摺動面に潤滑剤を保持する凹部又は凸部を有する定着装置である。
【0104】
[第2の態様]
第2の態様は、第1の態様において、前記筒状部材は、前記保持部材の内周面と前記保持部材の外周面との間に配置される筒状部と、前記筒状部よりも径方向外側へ突出し、前記ベルト部材の端部に対して軸方向に対向するように配置される鍔部を有する定着装置である。
【0105】
[第3の態様]
第3の態様は、第2の態様において、前記鍔部は、前記筒状部材の周方向の一部に設けられる定着装置である。
【0106】
[第4の態様]
第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様において、前記筒状部材は、前記ベルト部材よりも薄く形成される定着装置である。
【0107】
[第5の態様]
第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様において、前記加熱源は、前記ベルト部材の内側に配置される輻射熱式のヒータである定着装置である。
【0108】
[第6の態様]
第6の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様において、前記凹部は、前記筒状部材の周方向に伸びる溝である定着装置である。
【0109】
[第7の態様]
第7の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様において、前記凹部は、前記筒状部材の軸方向に伸びる溝である定着装置である。
【0110】
[第8の態様]
第8の態様は、第7の態様において、前記溝は、前記筒状部材の軸方向の外側端部に達しないように設けられる定着装置である。
【0111】
[第9の態様]
第9の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様において、前記凹部又は前記凸部は、点状の凹部又は凸部である定着装置である。
【0112】
[第10の態様]
第10の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様において、前記筒状部材は、軸方向に向かって波状に形成される部分を有する記載の定着装置である。
【0113】
[第11の態様]
第11の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様において、前記筒状部材は、周方向に向かって波状に形成される部分を有する定着装置である。
【0114】
[第12の態様]
第12の態様は、第11の態様において、前記波状に形成される部分は、前記筒状部材の軸方向の外側端部に達しないように設けられる定着装置である。
【0115】
[第13の態様]
第13の態様は、第1から第12のいずれか1つの態様において、前記筒状部材は、最大幅の前記記録媒体が通過する通過領域よりも外側に配置される定着装置である。
【0116】
[第14の態様]
第14の態様は、第1から第13のいずれか1つの態様の定着装置を備える画像形成装置である。
【符号の説明】
【0117】
20 定着装置
21 定着ベルト(ベルト部材)
22 加圧ローラ
23 ハロゲンヒータ
27 保持部材
28 筒状部材
28c 溝
28d 凹部
28e 凸部
28f 波状部分
28g 凹部
28h 凸部
100 画像形成部
1000 画像形成装置
P 用紙(記録媒体)
W 最大通紙領域
【先行技術文献】
【特許文献】
【0118】
【特許文献1】特開2018-194737号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14