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特開2024-155049基板を処理する方法、及び基板を処理する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155049
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】基板を処理する方法、及び基板を処理する装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20241024BHJP
   C23C 16/02 20060101ALI20241024BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
C23C16/02
H01L21/88 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069426
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石坂 忠大
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 隆
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F033
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA12
4K030AA16
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA01
4K030BA18
4K030CA04
4K030CA12
4K030DA04
4K030EA05
4K030EA06
4K030FA01
4K030GA02
4K030LA15
5F004AA09
5F004BA19
5F004BB26
5F004BC05
5F004BC06
5F004CA02
5F004CA04
5F004DA00
5F004DA04
5F004DA20
5F004DB13
5F004EA28
5F004EA34
5F004EB01
5F004EB04
5F033GG01
5F033HH07
5F033JJ07
5F033JJ18
5F033KK27
5F033KK28
5F033KK29
5F033NN01
5F033PP06
5F033QQ48
5F033QQ94
5F033RR04
5F033XX09
(57)【要約】
【課題】基板の凹部内に形成された金属シリサイド層の表面の酸化膜を除去する技術を提供すること。
【解決手段】基板を処理する方法は、シリコン含有層に対して、凹部の形成された絶縁体層が積層され、前記凹部内にて前記シリコン含有層に積層して設けられた金属シリサイド層の表面の酸化膜に対し、フッ化水素ガス及びアンモニアガスを供給して前記酸化膜に含まれるシリコン酸化物分と反応させて除去する工程と、前記酸化膜に対してハロゲン化金属ガスを供給して前記酸化膜に含まれる金属酸化物分と反応させて除去する工程と、を含む。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する方法であって、
シリコン含有層に対して、凹部の形成された絶縁体層が積層され、前記凹部内にて前記シリコン含有層に積層して設けられた金属シリサイド層の表面の酸化膜に対し、フッ化水素ガス及びアンモニアガスを供給して前記酸化膜に含まれるシリコン酸化物分と反応させて除去する工程と、
前記酸化膜に対してハロゲン化金属ガスを供給して前記酸化膜に含まれる金属酸化物分と反応させて除去する工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記シリコン酸化物分を除去する工程は、前記基板を加熱することにより、前記シリコン酸化物分が前記フッ化水素ガス及び前記アンモニアガスと反応して生成した反応生成物を除去する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリコン酸化物分を除去する工程の後に、前記基板を加熱した状態にて、前記金属酸化物分を除去する工程を実施することにより、前記金属酸化物分の除去と、前記シリコン酸化物分が前記フッ化水素ガス及び前記アンモニアガスと反応して生成した反応生成物の除去とを並行して実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記シリコン酸化物分を除去する工程と、前記金属酸化物分を除去する工程とを繰り返し実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シリコン含有層は、シリコンゲルマニウム層であり、前記金属シリサイド層は、モリブデンシリサイド層であり、金属酸化物分は、モリブデン酸化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化金属ガスはWClガスまたはMoClガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ハロゲン化金属に含まれる金属を第1金属と呼ぶとき、前記金属酸化物分を除去する工程にて、前記金属酸化物分に代わって、前記第1金属の酸化物が前記基板に残留する場合に、前記第1金属の酸化物が残留している前記基板に対し、前記第1金属よりも酸化されやすい第2金属の膜を成膜することにより、前記第1金属の酸化物を還元する工程と、
次いで、前記第1金属の酸化物を還元する工程にて、前記第1金属の酸化物に代わって形成された前記第2金属の酸化物をエッチングガスにより除去する工程と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1金属はタングステンであり、前記第2金属はチタンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記エッチングガスは、塩素ガスである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記シリコン酸化物分を除去する工程、及び前記金属酸化物分を除去する工程を実施した後、前記基板に導電体を成膜し、前記凹部内に導電体を埋め込む工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
基板を処理する装置であって、
前記基板が載置される載置台を備えた処理容器と、フッ化水素ガス及びアンモニアガスの混合ガスを前記処理容器に供給するための混合ガス供給部とを備えた第1処理モジュールと、
前記基板が載置される載置台を備えた処理容器と、ハロゲン化金属ガスを前記処理容器に供給するためのハロゲン化金属ガス供給部とを備えた第2処理モジュールと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、シリコン含有層に対して、凹部の形成された絶縁体層が積層され、前記凹部内にて前記シリコン含有層に積層して設けられた金属シリサイド層の表面の酸化膜に対し、前記混合ガスを供給して前記酸化膜に含まれるシリコン酸化物分と反応させて除去するステップと、前記酸化膜に対して前記ハロゲン化金属ガスを供給して前記酸化膜に含まれる金属酸化物分と反応させて除去するステップと、を実行するための制御信号を出力するように構成された、装置。
【請求項12】
前記第1処理モジュールの前記処理容器、及び前記第2処理モジュールの前記処理容器が接続された真空搬送室と、前記真空搬送室内に配置された基板搬送機構と、を備え、
前記制御部は、前記シリコン酸化物分を除去するステップの実施と、前記金属酸化物分を除去するステップの実施との間に、前記基板搬送機構により、前記真空搬送室を介して、前記第1処理モジュールの前記載置台と、前記第2処理モジュールの前記載置台との間で前記基板を搬送するステップを実施する制御信号を出力するように構成された、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第2処理モジュールは、前記基板を加熱する加熱部を備え、
前記制御部は、前記シリコン酸化物分を除去するステップの後に、前記基板を加熱した状態にて、前記金属酸化物分を除去するステップを実施することにより、前記金属酸化物分の除去と、前記シリコン酸化物分が前記フッ化水素ガス及び前記アンモニアガスと反応して生成した反応生成物の除去とを並行して実施する制御信号を出力するように構成された、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記シリコン含有層は、シリコンゲルマニウム層であり、前記金属シリサイド層は、モリブデンシリサイド層であり、金属酸化物分は、モリブデン酸化物である、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記ハロゲン化金属ガスはWClガスまたはMoClガスである、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記基板が載置される載置台を備えた処理容器と、前記ハロゲン化金属に含まれる金属を第1金属と呼ぶとき、前記第1金属よりも酸化されやすい第2金属の成膜ガスを前記処理容器に供給するための成膜ガス供給部と、前記第2金属の酸化物をエッチングするためのエッチングガスを供給するためのエッチングガス供給部と、を備えた第3処理モジュールを備え、
前記制御部は、前記金属酸化物分を除去するステップにて、前記金属酸化物分に代わって、前記第1金属の酸化物が前記基板に残留する場合に、前記第1金属の酸化物が残留している前記基板に対し、前記成膜ガスを供給して前記第2金属の膜を成膜することにより、前記第1金属の酸化物を還元するステップと、次いで、前記第1金属の酸化物を還元するステップにて、前記第1金属の酸化物に代わって形成された前記第2金属の酸化物を前記エッチングガスにより除去するステップと、を実行するための制御信号を出力するように構成された、請求項11に記載の装置。
【請求項17】
前記第1金属はタングステンであり、前記第2金属はチタンである、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記エッチングガスは、塩素ガスである、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記基板が載置される載置台を備えた処理容器と、導電体の原料ガスを前記処理容器に供給するための原料ガス供給部とを備えた第4処理モジュールを備え、
前記制御部は、前記シリコン酸化物分を除去するステップ、及び前記金属酸化物分を除去するステップを実施した後、前記第4処理モジュールの前記載置台に前記基板を載置し、前記処理容器内に前記原料ガスを供給して前記基板に導電体を成膜し、前記凹部内に導電体を埋め込むステップを実行するための制御信号を出力するように構成された、請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板を処理する方法、及び基板を処理する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、基板である半導体ウエハ(以下、「ウエハ」ともいう)上に形成された絶縁体層にビアホールやトレンチなどの凹部を形成し、この凹部内に配線材料である導電体を埋め込む処理がある。この際、凹部内に露出している金属の表面に大気との接触による自然酸化膜が形成されている場合がある。このような自然酸化膜を除去せずに導電体の埋め込みを行うと、配線抵抗が増大する原因となってしまう。
【0003】
特許文献1には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ランタノイド、アクチノイド及び後期遷移金属のうちの1つ又は複数から選択された金属と、Siとを含み得る金属酸化層を含む基板を、金属ハロゲン化物に曝露してエッチングする技術が記載されている、また、特許文献2には、ハフニウム、タングステン、モリブデン、およびチタンのうちの1つ以上を含む酸化物層を、フッ素化剤に曝露して、フッ化物層を形成した後、当ハロゲン化物エッチャントに曝露して、前記フッ化物層を除去する技術が記載されている。
しかしながらこれらの特許文献には、金属シリサイドの酸化膜に特化して、当該酸化膜を効果的に除去する技術の記載は見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-507509号公報
【特許文献2】特開2022-536475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、基板の凹部内に形成された金属シリサイド層の表面の酸化膜を除去する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の基板を処理する方法は、
シリコン含有層に対して、凹部の形成された絶縁体層が積層され、前記凹部内にて前記シリコン含有層に積層して設けられた金属シリサイド層の表面の酸化膜に対し、フッ化水素ガス及びアンモニアガスを供給して前記酸化膜に含まれるシリコン酸化物分と反応させて除去する工程と、
前記酸化膜に対してハロゲン化金属ガスを供給して前記酸化膜に含まれる金属酸化物分と反応させて除去する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板の凹部内に形成された金属シリサイド層の表面の酸化膜を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示に係る基板処理装置の構成例を示す平面図である。
図2】前記基板処理装置に設けられているTi成膜モジュールの構成例を示す縦断側面図である。
図3】実施形態に係るウエハ処理の流れの一例を示す説明図である。
図4A】実施形態に係る処理が行われるウエハの表面の第1の拡大縦断側面図である。
図4B】前記ウエハの表面の第2の拡大縦断側面図である。
図4C】前記ウエハの表面の第3の拡大縦断側面図である。
図4D】前記ウエハの表面のウエハの第4の拡大縦断側面図である。
図4E】前記ウエハの表面のウエハの第5の拡大縦断側面図である。
図4F】前記ウエハの表面のウエハの第6の拡大縦断側面図である。
図5】第2の実施形態に係る基板処理装置の構成例を示す平面図である。
図6】第2の実施形態に係るウエハ処理の流れの一例を示す説明図である。
図7】第3の実施形態に係る基板処理装置の構成例を示す平面図である。
図8】第3の実施形態に係るウエハ処理の流れの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<基板処理装置1>
以下、金属シリサイド層であるMoSi層64の表面の酸化膜(MoSiO層65a)を除去し、導電体であるRu膜67の成膜を行う機能を備えた装置(以下、「基板処理装置1」と記載する)の一実施形態について説明する。
【0010】
基板処理装置1の構成の説明を開始する前に、基板処理装置1にて処理対象となるウエハWの表面構造の一例について説明する。図4Aに示すように、処理対象のウエハWには、シリコン含有層であるSiGe層61に対してSiO層62が積層され、このSiO層62には導電体であるルテニウム(Ru)を埋め込むための凹部60が形成されている。凹部60の底部には、ショットキーバリア高さを調節するためのモリブデン(Mo)層が形成され、SiGe層61からのシリコン(Si)の拡散によりMoSi層64となっている。
【0011】
上述の構成を備えたウエハWが、基板処理装置1に向けて半導体製造工場内を搬送されてくると、大気との接触により、MoSi層64の表面には酸化膜であるMoSiO層65aが形成される。そこで、本実施形態の基板処理装置1は、当該MoSiO層65aを除去してからRuの埋め込みを行う構成となっている。
【0012】
図1は、基板処理装置1の構成例を示す概略平面図である。この基板処理装置1は、大気搬送室11と、ロードロック室12と、第1の基板搬送室13及び第2の基板搬送室14と、複数の処理モジュール151~154と、を備えている。
【0013】
第1の基板搬送室13及び第2の基板搬送室14は夫々平面視四角形状に構成され、例えば2個の受け渡し部17を介して連結されている。これら第1、第2の基板搬送室13、14、及び受け渡し部17の内部は真空圧雰囲気に設定され、その圧力は互いに揃うように構成される。また、第1、第2の基板搬送室13、14の内部には、各々、第1、第2の搬送機構131、141が配置されている。
【0014】
受け渡し部17は、第1の基板搬送室13に設けられた第1の搬送機構131との間、または第2の基板搬送室14に設けられた第2の搬送機構141との間でウエハの受け渡しを行うように構成されている。第1の基板搬送室13、第2の基板搬送室14及び受け渡し部17は、本実施形態の真空搬送室に相当する。また、第1の搬送機構131及び第2の搬送機構141は、本実施形態の基板搬送機構に相当する。
【0015】
これら第1、第2の基板搬送室13、14が並ぶ方向を長さ方向とし、第1の基板搬送室13を手前側、第2の基板搬送室14を奥手側とする。このとき第1の基板搬送室13の手前側には、例えば3個のロードロック室12を介して大気圧雰囲気に設定された大気搬送室11が接続されている。第1及び第2の基板搬送室13、14と受け渡し部17との間、ロードロック室12と第1の基板搬送室13との間、ロードロック室12と大気搬送室11との間には、夫々ウエハの搬送口と、当該搬送口を開閉するゲートバルブが存在するが、図示は省略する。
【0016】
大気搬送室11には、例えば4個のロードポート101が接続され、各ロードポート101には、複数枚のウエハWを収容したキャリアCが載置される。大気搬送室11には大気搬送機構111が設けられており、大気搬送室11に接続されたキャリアCと、ロードロック室12との間でウエハWを搬送することができる。
【0017】
手前側から見て、第1の基板搬送室13の左右2つの壁部には、各々、1基の酸化物除去(COR:Chemical Oxide Removal)モジュール151、加熱処理(PHT:Post Heat Treatment)モジュール152と、2基のTi成膜モジュール153とが接続されている。そして、第1の基板搬送室13に設けられた第1の搬送機構131が、これら4基のモジュール151~153と、受け渡し部17と、ロードロック室12との間でウエハWを搬送するように構成される。図1中、符号GV1はゲートバルブを指している。
【0018】
CORモジュール151にて実施するCOR処理及びPHTモジュール152にて実施するPHT処理は、既述のMoSiO層65aに含まれるシリコン酸化物分を除去するプリクリーン処理である。ここでMoSiO層65aは、SiとMoと酸素(O)とを含む複合酸化物として構成されている。本開示では、当該複合酸化物に含まれるSiの酸化部分(SiO)を「シリコン酸化物分」と呼び、Moの酸化部分(MoO)を「モリブデン酸化物分」とも呼ぶ。金属シリサイド層の酸化膜であるMoSiO層65aにおいて、「モリブデン酸化物分」は、当該金属シリサイド層の「金属酸化物分」に相当している。
【0019】
CORモジュール151は、フッ化水素(HF)ガス及びアンモニア(NH)ガスを用い、前記自然酸化膜のエッチング処理(COR処理)を実施するように構成される。また、PHTモジュール152は、ウエハWを加熱することによって、COR処理にて生成された反応生成物を昇華させて除去するPHT処理を実施するように構成されている。CORモジュール151、PHTモジュール152の構成例については、後段で説明する。CORモジュール151は本実施の形態の第1処理モジュールに相当する。
【0020】
次いで、Ti成膜モジュール153は、MoSi層64とRu配線67aとの間に設けられるコンタクト用の金属層となるTi層66の成膜を実施するように構成されている。さらに本実施形態のTi成膜モジュール153は、COR処理に及びPHT処理によりシリコン酸化物分が除去された後のMoSiO層65a(既にSiOが除去されているので、以下、「MoO層65b」ともいう)の除去を行う機能も備えている。MoO層65bは、本実施の形態の金属酸化物分に相当している。またMoO層65bの除去を行う観点で、Ti成膜モジュール153は、本実施形態の第2処理モジュールに相当している。
Ti成膜モジュール153の具体的な構成例については、後段で図2を参照しながら説明する。
【0021】
また、手前側から見て、第2の基板搬送室14の左右2つの壁部には、各々2基ずつ、合計4基のRu成膜モジュール154が接続されている。そして、第2の搬送機構141が、これら4基のRu成膜モジュール154と受け渡し部17との間でウエハWを搬送するように構成される。図2中、符号GV2は、ゲートバルブを指している。
【0022】
各Ru成膜モジュール154は、導電体であるRuの原料ガスを用いて、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、Ru膜67の成膜を実施するように構成されている。Ru成膜モジュール154は、本実施形態の第4処理モジュールに相当している。
【0023】
<Ti成膜モジュール153>
次いで、図2を参照しながらTi成膜モジュール153の具体的な構成例について説明する。Ti成膜モジュール153は、ウエハWに対して成膜ガスを供給し、プラズマCVD法により、Ti層66の成膜を行うように構成されている。またTi成膜モジュール153は、MoSiO層65aのシリコン酸化物分の除去が行われたウエハWに対し、ハロゲン化金属ガスを供給することにより、残るMoO層65bを除去する機能も備える。
【0024】
図2は、本実施形態のTi成膜モジュール153の縦断側面図である。Ti成膜モジュール153は、塩素に対する耐食性を備え、接地されたる金属製のほぼ円筒状の処理容器210を備えている。処理容器210の底面の中央部には下方に向けて突出する例えば円筒状の排気室211が形成され、排気室211の側面には、排気路212が接続されている。排気路212には、例えばバタフライバルブからなる圧力調整バルブや真空ポンプを含む真空排気部213が接続されている。真空排気部213は、予め設定された真空圧力まで処理容器210内を真空排気する役割を果たす。この処理容器210内の空間にてウエハWの処理が行われる。
【0025】
処理容器210の側面には、既述の第1の基板搬送室13との間でウエハWの搬入出を行うための搬入出口214が形成されている。この搬入出口214はゲートバルブ215(図1のGV1)により開閉自在に構成されている。さらに処理容器210を構成する壁部内には、処理容器210内の温度を調節するためのヒーター216が埋設されている。
【0026】
また処理容器210内にはウエハWをほぼ水平に保持するための載置台22が設けられている。載置台22は、排気室211の底部から伸びる支持部221によって支持されている。載置台22には加熱部であるヒーター220が埋設され、ウエハWを設定温度に加熱することができる。本例では、ウエハWの加熱温度は、350~800℃の範囲内の例えば450℃に設定されている。
【0027】
また載置台22には、整合器222を介して、イオンの引き込み用の高周波電力を供給する高周波電源223が接続されている。さらに載置台22には、載置台22上のウエハWを保持して昇降させるための図示しない昇降ピンが設けられている。昇降ピンの昇降により載置台22と第1の基板搬送室13側の第1の搬送機構131との間でウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0028】
また処理容器210の天井面には、ウエハWに向けて基板処理ガスを供給するための扁平な円盤状のシャワーヘッド23が設けられている。シャワーヘッド23は、絶縁部材217を介して処理容器210に取り付けられている。
シャワーヘッド23の内部には、ガスを拡散させるための拡散室231が形成されている。またシャワーヘッド23の底面には、ウエハWに向けてガスを吐出する多数の吐出孔232が分散して設けられている。さらにシャワーヘッド23の上面側にはヒーター235が埋設されている。
【0029】
上述のシャワーヘッド23には、整合器233を介して、プラズマ形成用の高周波電力を供給する高周波電源234が接続されている。即ち、本実施形態の基板処理装置1は、上部電極をなすシャワーヘッド23と、下部電極をなす載置台22とにより平行平板型のプラズマ処理装置を構成している。これらシャワーヘッド23と載置台22との間の空間にウエハWを載置し、成膜ガスを供給して高周波電力を印加することにより、これらのガスが電離してプラズマが形成される。高周波電源234は、450KHz、13.56MHz、27MHz、40MHz、60MHz、100MHzまたは2.45GHzのいずれの周波数の高周波電力を供給するように構成してもよい。例えば、高周波電源234からは、0Wより大きく、2000W以下の範囲内の高周波電力が供給される。
【0030】
またシャワーヘッド23の拡散室231には、ガス供給路40の下流側端部が接続されている。このガス供給路40の上流側には、Ti層66の成膜ガスを構成るTiClガスの供給用流路であるTiClガス供給管41、プラズマ発生用に添加されるArガスの供給用流路であるArガス供給管42、及び、反応ガスであるHガスの供給用流路であるHガス供給管43が合流している。
【0031】
TiClガス供給管41の上流側端部には、TiClガス供給源410が接続され、上流側から順に流量調節部M41、バルブV41が介設されている。またArガス供給管42の上流側端部には、Arガス供給源420が接続され、上流側から順に流量調節部M42、バルブV42が介設されている。さらにHガス供給管43の上流側端部には、Hガス供給源430が接続され、上流側から順に流量調節部M43、バルブV43が介設されている。
【0032】
これらTiClガス、Hガス及びArガスの混合ガス(成膜ガス)は、ガス供給路40を介してシャワーヘッド23の拡散室231に流れ込み、吐出孔232を通って処理容器210内に供給される。
【0033】
さらにガス供給路40の上流側には、WClガス供給管51が合流している。WClガスは、MoO層65bを除去するためのハロゲン化金属ガスに相当する。WClガス供給管51の上流側端部には、WClガス供給源510が接続され、上流側から順に流量調節部M51、バルブV51が介設されている。WClガスを供給するための供給源510や流量調節部M51などは、本実施形態のハロゲン化金属ガス供給部を構成している。WClガスについても、ガス供給路40を介してシャワーヘッド23の拡散室231に流れ込み、吐出孔232を通って処理容器210内に供給される。
【0034】
<その他の処理モジュール151、152、153>
図示は省略するが、CORモジュール151、PHTモジュール152及びRu成膜モジュール154についても、処理容器210と載置台22とを備える点は、既述のTi成膜モジュール153と同様である。そして、CORモジュール151については、COR処理に用いるHFガス及びNHガスの混合ガスが、ガス供給路40を介して処理容器210に供給される。HFガス及びNHガスを各々供給するガス供給源や流量調節部などは、本実施形態の混合ガス供給部を構成している。
【0035】
また、PHTモジュール152においてはPHT処理が実施される不活性ガス雰囲気を形成するNガスが、ガス供給路40を介して処理容器210に供給される。PHTモジュール152においては、載置台22のヒーター220により、例えばウエハWは60~250℃の範囲内の例えば200℃に加熱される。
また、本実施形態のCORモジュール151やPHTモジュール152には、プラズマ形成用の高周波電源234などは設けられていない。
【0036】
さらにRu成膜モジュール154においては、Ru膜67の原料ガスであるRu(CO)12ガスと、キャリアガスであるCOガスとが、ガス供給路40を介して処理容器210に供給される。Ru(CO)12ガス、COガスの供給を行うガス供給源や流量調節部などは、本実施形態の原料ガス供給部に相当する。なお、本実施形態のRu成膜モジュール154は、例えば熱CVD法によりRu膜67の成膜を行うように構成されている。このため、図2を用いて説明したTi成膜モジュール153とは異なり、シャワーヘッド23に接続された整合器233、高周波電源234や、載置台22に接続された整合器222、高周波電源223を備えていない。
【0037】
<制御部100>
上述の構成を備えた基板処理装置1は、図1図2に示すように制御部100を備えている。制御部100は、プログラムを記憶した記憶部、メモリ、CPUを含むコンピュータにより構成される。プログラムは、制御部100から基板処理装置1の各部に向けて制御信号を出力し、各ガスの給断や高周波電力の供給制御を行うことにより、各種モジュール151~154を用いた基板処理を実行するように命令(ステップ)が組まれている。プログラムは、コンピュータの記憶部、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)、不揮発性メモリなどに格納され、この記憶部から読み出されて制御部100にインストールされる。
【0038】
<基板処理>
上述の構成を備えた基板処理装置1を用いて実施される基板処理の内容について、図3及び図4A図4Fを参照しながら説明する。
基板処理装置1においては、先ず大気搬送機構111により、キャリアC内に収容されたウエハWを取り出して、大気圧雰囲気のロードロック室12に受け渡し、ロードロック室12内を真空圧雰囲気に調節する。次いで、第1の搬送機構131により、ロードロック室12内のウエハWをCORモジュール151に搬送し、処理容器210内の載置台22上に載置する。
【0039】
CORモジュール151では、載置台22に載置されたウエハWの温度を、60℃以下の例えば27℃に調節する。そして、既述の混合ガス供給部から、HFガス及びNHガスの混合ガスを処理容器210内のウエハWに供給する(図4A)。60℃以下の温度では、HFガス及びNHガスの分子のウエハWに対する吸着確率が高いことが分かっている。このため、ウエハW表面では各ガスの分子が密に吸着し、凹部60の底面側に形成されたMoSiO層65aにもこれらのガスの分子が到達して吸着する。この結果、MoSiO層65aを構成するシリコン酸化物分(SiO)とHF分子及びNH分子との化学反応が進行し、反応生成物が形成されることにより、シリコン酸化物分が除去(エッチング)される(図3の処理P11、シリコン酸化物分を除去する工程)。
【0040】
COR処理にて生成される反応生成物は、フルオロケイ酸アンモニウム((NHSiF)や水分(HO)を含む。反応生成物は、凹部60の底部や側壁面、SiO層62の上面などに付着する。また、このCOR処理では、フッ化水素ガスとアンモニアガスとの反応によりフッ化アンモニウム(NHF)も生成する。このフッ化アンモニウムの分子もエッチャントとして作用し、シリコン酸化物分と反応して反応生成物を形成する。また、COR処理では、フッ化アンモニウム自体も固体成分としてウエハWの表面に堆積する場合がある。
【0041】
COR処理によりシリコン酸化物分が除去されたウエハWは、CORモジュール151からPHTモジュール152に搬送され、処理容器210内の載置台22上に載置される。PHTモジュール152においては、ウエハWを加熱することによって、COR処理にて発生した反応生成物や固体のフッ化アンモニウムを昇華させて除去する。具体的には、処理容器210内に、Nガスを供給し、載置台22に載置されたウエハWの温度を200℃に調節する。この結果、加熱されたウエハWに付着している反応生成物や固体のフッ化アンモニウムが昇華し、Nガスを共に処理容器210の外部へ排出される(図3の処理P11、反応生成物を除去する工程)。
【0042】
続いて、第1の搬送機構131により、ウエハWをTi成膜モジュール153に搬送する。既述のようにTi成膜モジュール153では、MoSiO層65aからシリコン酸化物分が除去された後の残部であるMoO層65b(金属酸化物分)の除去、及びTi層66の成膜の2つの処理が実施される。
【0043】
まず、Ti成膜モジュール153の載置台22にウエハWを載置したら、真空排気部213により処理容器210内が予め設定された圧力となるよう真空排気を行う。また、ヒーター220によりウエハWを既述の450℃に加熱する。しかる後、ハロゲン化金属ガス供給部から、処理容器210内にWClガスを供給する(図4B)。
【0044】
図4Bに示すように、WClガスがウエハWに到達すると、下記(1)式に示す反応が進行する。
2MoO(s)+2WCl(g)→WOCl(g)+2MoOCl(g)+WCl(s) …(1)
【0045】
ウエハWの表面には、固体のWClが残留する。塩素の残留が好ましくない場合には、WClガスの供給と共にHガス供給源430からのHガスの供給を行い、下記(2)式に示す反応を進行させる。
WCl(s)+H(g)→W(s)+2HCl(g) …(2)
ガスと反応させることにより、HClガスとして塩素が除去され、ウエハWの表面には金属タングステン(W)のみが残留する。
【0046】
上記(1)式を進行させることにより、COR処理の後に凹部60内に残留していたMoO層65bを除去することができる(図3の処理P12、金属酸化物分を除去する工程)。この結果、図4Cに示すように凹部60内は、MoSi層64の表面の酸化物(図4AのMoSiO層65a)が除去された状態となる。
【0047】
MoO層65bを除去する処理を完了したら、コンタクト用の金属層であるTi層66の形成を行う。具体的には、Ti成膜モジュール153の処理容器210へのWClガスの供給を停止する。そして、ウエハWの加熱、処理容器210内の圧力調節を継続したまま、各ガス供給源410、420、430から、予め設定された流量にてTiClガス、Hガス及びArガスを供給する。この結果、これらの混合ガスである成膜ガスが処理容器210へと導入される。さらに、高周波電源234から高周波電力を印加して成膜ガスをプラズマ化することにより、ウエハWへのTiの成膜が進行する(図3の処理P13)。
【0048】
予め設定された時間、Tiの成膜を行ったら、成膜ガスの供給、高周波電力の印加を停止する。この結果、図4Dに示すように、凹部60の底面にはTi層66が形成される。
【0049】
続いて、第1の搬送機構131、受け渡し部17及び第2の搬送機構141を介して、ウエハWをRu成膜モジュール154に搬送する。第1の基板搬送室13、受け渡し部17及び第2の基板搬送室14には不活性ガスが供給され、成膜モジュールからのガス拡散を防止している。圧力は、例えば20~200Paの範囲内の100Paに制御されている。また、搬送中の表面の酸化を防止するために、これらの空間(第1の基板搬送室13、受け渡し部17及び第2の基板搬送室14)の真空排気を行う真空排気機構(不図示)の到達真空度は1.33×10-5Pa以下に設定している。Ru成膜モジュール154では、凹部60内に形成されたTi層66の上面側にRuが埋め込まれるようにRu膜67の成膜を行う(図3のP14、導電体を埋め込む工程)。
【0050】
具体的には、Ru成膜モジュール154の処理容器210内にウエハWを搬入して載置台22に載置し、ヒーター220によりウエハWを、例えば130~200℃の範囲内の150℃に加熱する。さらに、処理容器210内の圧力調節を行い、処理容器210内にRu(CO)12ガス(キャリアガスであるCOガスを含んでいる)を供給する。
【0051】
これにより、処理容器210内に供給されたRu(CO)12がウエハW上で熱分解する熱CVDが進行する。そして、予め設定された期間、熱CVDを実施することにより、図5Cに示すようにMoSiO層65aが除去された凹部60内にRu膜67の埋め込みを行うことができる。
【0052】
Ru膜67の成膜が終了した後、第2の搬送機構141、受け渡し部17、第1の搬送機構131を介してウエハWをロードロック室12に搬送する。次いで、ロードロック室12内の雰囲気を大気圧雰囲気に切り替えた後、大気搬送機構111により処理後のウエハWをキャリアCに戻す。搬出されたウエハWは、外部のCMP(Chemical Mechanical Polishing)装置にて研磨処理される。この処理により、上面側が除去され、図4Fに示すように凹部60にRu配線67aが埋め込まれたウエハWを得ることができる。
【0053】
上述の実施形態によれば、基板の凹部60内に形成された金属シリサイド層(MoSi層64)の表面の酸化膜(MoSiO層65a)を除去することができる。この結果、凹部60にRu膜67(Ru配線67a)が埋め込まれた後の配線抵抗の増大を抑えることができる。特に、第1、第2の基板搬送室13、14を介して処理モジュール151~154間でのウエハWの搬送が行われる基板処理装置1では、大気への暴露を避けつつ基板処理を実施することが可能となり、不要な自然酸化膜の形成を抑制することができる。
【0054】
<第2実施形態>
次いで、第2実施形態に係る基板処理装置1aの構成及び作用について、図5図6を参照しながら説明する。なお、図5図7に示す基板処理装置1a、1bにおいては、図1を用いて説明した基板処理装置1と共通の構成要素に対しては、当該図に示したものと同じ符号を付してある。
【0055】
第2実施形態に係る基板処理装置1aは、ハロゲン化金属であるWClガスを用いて金属酸化物分であるMoO層65bの除去が行われる際に、既述の(1)式と異なる反応も進行する問題に対応した構成となっている。後述するように、当該反応においては、MoO層65bに代わってWClガスに含まれるタングステン(W)(以下、第2の実施形態において「第1金属」とも呼ぶ)の酸化物が形成される。このWの酸化物が凹部60内に残留すると、Ruを埋め込んだ後の配線抵抗の増大の原因となってしまうため、Wの酸化物の除去が必要となる場合がある。
【0056】
そこでWの酸化物の除去の必要性に対応して、本実施形態の基板処理装置1aでは、Wよりも酸化されやすい金属である、例えばチタン(Ti)(以下、第2の実施形態において「第2金属」とも呼ぶ)の成膜を行う。この結果、TiによりWの酸化物が還元され、MoO層65bに代わって形成されたTiの酸化物をエッチングガスにより除去する構成となっている。
【0057】
上記の観点で、基板処理装置1aは、WClガスを用いてMoO層65bの除去のみを実施するプリクリーニングモジュール156と、Wの酸化物を還元するためのTiの成膜と、その酸化物の除去を行う還元用Ti成膜モジュール155と、コンタクト用のTi層66のみの成膜を行うTi成膜モジュール153aとを備える。
【0058】
個別の図示は省略するが、プリクリーニングモジュール156、還元用Ti成膜モジュール155、Ti成膜モジュール153aについても、各々、処理容器210と載置台22とを備える点は、図2を用いて説明したTi成膜モジュール153と同様である。
プリクリーニングモジュール156は、図2に記載のハロゲン化金属ガス供給部(WClガス供給管51、WClガス供給源510流量調節部M51、バルブV51)のみを備え、Ti層66の成膜用のTiClガス、Arガス、Hガスを供給する構成は備えていない。また、処理容器210に供給されたガスをプラズマ化する高周波電源234や、イオン引き込み用の高周波電源223なども備えていない。プリクリーニングモジュール156は、第2実施形態の第2処理モジュールに相当する。
【0059】
還元用Ti成膜モジュール155は、図2に示すTi成膜モジュール153とほぼ同様に構成され、TiClガス、Hガス及びArガスの混合ガスである成膜ガスを供給するための成膜ガス供給部を備えている。一方、還元用Ti成膜モジュール155は、WClガスを供給する供給部に替えて、Tiの酸化物を除去するためのエッチングガスを供給するエッチングガス供給部を備える点がTi成膜モジュール153と相違する。本例の還元用Ti成膜モジュール155では、エッチングガス塩素(Cl)ガスを用いる。例えばエッチングガス供給部は、Clガスの供給源や流量調節部などにより構成される(いずれも不図示)。
【0060】
Ti成膜モジュール153aは、図2に示すTi成膜モジュール153とほぼ同様に構成され、TiClガス、Hガス及びArガスの混合ガスである成膜ガスを供給するための成膜ガス供給部を備えている。一方、Ti成膜モジュール153aは、WClガスを供給するハロゲン化金属ガス供給部を備えていない点がTi成膜モジュール153と相違する。Ti成膜モジュール153aは、本実施形態の第3処理モジュールに相当する。
【0061】
図5に示す基板処理装置1aにおいては、第1の基板搬送室13に対し、CORモジュール151とPHTモジュール152とが1基ずつ接続されている点は、第1実施形態の基板処理装置1と同様である。一方、第2実施形態の基板処理装置1aにおいては、2基のTi成膜モジュール153に代えて、プリクリーニングモジュール156と還元用Ti成膜モジュール155とが1基ずつ接続されている点は第1実施形態の基板処理装置1とは異なる。また、第2の基板搬送室14に対し、Ti成膜モジュール153aが1基接続され、Ru成膜モジュール154は3基となっている。
【0062】
この基板処理装置1aを用いたウエハWの処理について、図6を参照しながら説明する。図6においては、図3を用いて説明した第1実施形態に係る基板処理との相違点を中心に説明する。
【0063】
処理対象のウエハWに対し、CORモジュール151、PHTモジュール152を用いてCOR処理、PHT処理を実施する(図6の処理P11)。しかる後、ウエハWをプリクリーニングモジュール156に搬入してWClガスを供給し、MoO層65bの除去を行う(図6の処理P12A、金属酸化物分を除去する工程)。
【0064】
この際、図4Bに示すように、WClガスがウエハWに到達すると、既述の(1)式の反応と並行して下記(3)式に示す反応も進行する。
MoO(s)+WCl(g)→WO(s)+2MoCl(g) …(3)
【0065】
ここで、(1)式の反応にてMoO層65bとWClガスとが反応する際のギブスの自由エネルギーは、絶対温度673Kにおいて-241kJ/molである。一方、(3)式の反応におけるギブスの自由エネルギーは、同じ温度条件下で-126kJ/molである。従って、(1)式も(3)式もギブスの自由エネルギーが負であり、どちらも反応が進行する。
【0066】
(3)式の反応により、MoO層65bが除去される一方、ウエハWの表面には第1金属であるWの酸化物(WO)が形成される。そこで第2実施形態の基板処理装置1aでは、当該ウエハWを還元用Ti成膜モジュール155に搬入し、成膜ガスを供給して第2金属である還元用のTiを成膜する(図6の処理P12B)。還元用のTiの成膜により、TiとWOとが接触すると、下記(4)式の反応が進行し、WOが還元されてWとなる(第1金属の酸化物を還元する工程)。
WO(s)+3Ti(s)→ W+3TiO …(4)
【0067】
しかる後、成膜ガスの供給を停止し、処理容器210内に供給するガスをClガスに切り替える。この結果、下記(5)式に示す反応が進行し、TiOが除去される(図6の処理P12C、第2金属の酸化物を除去する工程)。
TiO(s)+Cl(g)→TiOCl(g) …(5)
【0068】
上記の処理により、ウエハWの表面には金属タングステン(W)が残留する。また、WOと接触しなかったTiについても、エッチングされずにそのままウエハWの表面に残存する。当該Tiのうち、凹部60内に形成されているものは、後段のTi成膜モジュール153aにて形成されるTiと一体となりTi層66を構成する。また、SiO層62の表面に形成されたTiは、Ru膜67の形成後、CMP処理により研磨除去される。
【0069】
なお既述のように、Wの酸化物(WO)が形成される(3)式の反応と並行して(1)式の反応が進行する。この結果、ウエハWの表面に固体のWClが残留することが好ましくない場合には、例えば還元用のTiの成膜前にHガスの供給を行い、(2)式の反応を進行させて塩素の除去を行ってもよい点は、第1実施形態に係る基板処理装置1と同様である。
【0070】
TiOの除去が完了するタイミングとなったら、ウエハWをTi成膜モジュール153aに搬入し、成膜ガスを供給してコンタクト用の金属層であるTi層66の形成を行う(図6の処理P13A)。しかる後、Ru膜67を成膜する処理や、処理後のウエハWを搬出する動作については、既述の基板処理装置1を用いる場合と同様なので、再度の説明を省略する。
【0071】
ここで第2金属はチタン(Ti)に限定されるものではない。例えばタングステン(W)よりも酸化されやすい第2金属としてMoやTaを成膜し、その後、MoやTaの酸化物を塩素ガスによりエッチングしてもよい。
【0072】
<第3実施形態>
続いて、第3実施形態に係る基板処理装置1bの構成及び作用について、図5図6を参照しながら説明する。
第3実施形態に係る基板処理装置1bは、COR処理にて生成された反応生成物を除去するPHT処理用のPHTモジュール152が設けられていない。このため、プリクリーニングモジュール156にてMoO層65bの除去を行う際のウエハWの加熱操作を利用し、反応生成物の除去を並行して行う構成となっている。
【0073】
図7に示す基板処理装置1bにおいては、第1の基板搬送室13に対し、CORモジュール151と、プリクリーニングモジュール156とが2基ずつ接続されている。従って、PHTモジュール152を備えていない点と、MoO層65bの除去のみを実施するプリクリーニングモジュール156を用いる点とにおいて第1実施形態に係る基板処理装置1と相違する。また、第2の基板搬送室14に対しては、Ti成膜モジュール153aが1基接続され、Ru成膜モジュール154は3基となっている。
【0074】
なお、図7の基板処理装置1bは、Ti成膜モジュール153における、既述の(1)式の反応の進行に対応した構成を例示している。Ti成膜モジュール153における(3)式の反応の進行に対応する場合には、例えば第1の基板搬送室13に対し、CORモジュール151、プリクリーニングモジュール156、還元用Ti成膜モジュール155を各々1基ずつ接続する構成としてもよい。
【0075】
この基板処理装置1bを用いたウエハWの処理について、図8を参照しながら説明する。図8においては、図3を用いて説明した第1実施形態に係る基板処理との相違点を中心に説明する。
【0076】
初めに処理対象のウエハWに対し、CORモジュール151を用いてCOR処理を実施する(図8のP11A)。しかる後、ウエハWをプリクリーニングモジュール156に搬入してWClガスを供給し、MoO層65bの除去を行う。この際、ウエハWが400~800℃の範囲内の温度(例えば450℃)に加熱されることにより、MoO層65bの除去と並行して、COR処理にて生成した反応生成物が昇華して除去される(図8の処理P12D)。
【0077】
ここで、図8には、CORモジュール151におけるCOR処理(シリコン酸化物分(SiO)の除去)と、プリクリーニングモジュール156におけるMoO層65bの除去とを複数回、繰り返す例を示してある。これらの処理を繰り返すことにより、MoSi層64の表面のMoSiO層65aを確実に除去することができる。これらの処理の繰り返し回数は、2~10回の範囲内で実施する場合を例示できる。
【0078】
特に、図7に示す第3実施形態に係る基板処理装置1bでは、PHTモジュール152の設置を省略し、COR処理の反応生成物の除去とMoO層65bの除去とをプリクリーニングモジュール156内にて並行して実施する構成となっている。このため、3つの処理モジュール(CORモジュール151、PHTモジュール152、Ti成膜モジュール153)を用いて処理を繰り返す場合と比較して、1サイクル当たりの処理時間を短縮することができる。
【0079】
また、図7に示す基板処理装置1bの例では、CORモジュール151とTi成膜モジュール153との組を2組設けることが可能となり、繰り返し処理を実施することに伴うトータル処理時間の過剰な長時間化を抑制することができる。
但し、COR処理とWClガスによる処理とを複数回、繰り返す場合であっても、PHTモジュール152を用いたPHT処理の実施は排除されるものではない。CORモジュール151、PHTモジュール152及びTi成膜モジュール153を用いた処理を繰り返してもよい。
【0080】
こうして所定回数、双方の処理を繰り返し、MoSiO層65aが除去されたら、Ti成膜モジュール153aにてコンタクト用のTi層66の形成を行い、Ru成膜モジュール154にてRu膜67を成膜する。その後のウエハWを搬出する動作については、既述の基板処理装置1を用いる場合と同様なので、再度の説明を省略する。
【0081】
<バリエーション>
以上に説明した各実施形態において、MoSi層64の表面の金属酸化物分(MoO層65b)を除去するために用いるハロゲン化金属ガスは、WClガスの例に限定されない。例えばWClガスやMoClガスを用いてMoO層65bの除去を行ってもよい。
【0082】
また、シリコン含有層の構成は、図4Aを用いて説明したSiGe層61の例に限らず、ゲルマニウムを含まない単独のシリコン層であってもよい。金属シリサイド層の構成についても、MoSi層64の例の他、TiSi層やWSi層であってもよい。これらの金属シリサイドの表面に酸化膜が形成されている場合においても、COR処理とハロゲン化金属ガスによる処理との組み合わせにより、これらの酸化膜を除去することができる。
【0083】
また、COR処理(HFガス及びNHガス)によるシリコン酸化物分の除去と、ハロゲン化金属ガスによる金属酸化物分の除去において、必ずしもCOR処理から実施しなくてもよい。先にハロゲン化金属ガスによる処理を実施してからCOR処理を行ってもよい。
【0084】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1、1a、1b
基板処理装置
151 酸化物除去(COR)モジュール
153 Ti成膜モジュール
22 載置台
23 シャワーヘッド
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5
図6
図7
図8