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特開2024-1551転写基板、微小構造体の転写方法、及び半導体素子の実装方法
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  • 特開-転写基板、微小構造体の転写方法、及び半導体素子の実装方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001551
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】転写基板、微小構造体の転写方法、及び半導体素子の実装方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231227BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20231227BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20231227BHJP
   C09J 125/08 20060101ALI20231227BHJP
   H01L 21/50 20060101ALI20231227BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C09J7/38
C08J5/18 CEQ
C08J5/18 CET
C09J153/02
C09J125/08
H01L21/50 C
C08L53/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100276
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 有希
(72)【発明者】
【氏名】鵜野 和英
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴史
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F071AA12
4F071AA12X
4F071AA22
4F071AA22X
4F071AA75
4F071AA78
4F071AC02
4F071AC10
4F071AC11
4F071AE05
4F071AE19
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH12
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC02
4J002BP011
4J002GQ05
4J004AA05
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA08
4J004FA05
4J040DB051
4J040DM011
4J040HB03
4J040HB31
4J040JB09
4J040KA23
4J040KA27
4J040LA01
4J040NA19
4J040NA20
4J040PA20
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】微小構造体の移送に適した粘着層を有する転写基板、前記転写基板を用いた微小構造体の転写方法、及び前記転写方法を適用した半導体素子の実装方法を提供する。
【解決手段】第1の基板に仮固定された微小構造体をピックアップして、第2の基板に転写するための転写基板であって、ベース基板と、前記ベース基板上に形成された粘着層とを含み、前記粘着層が、主鎖の構成単位としてスチレン構成単位を含むエラストマーであって、前記スチレン構成単位の含有量が14質量%以上50質量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーを含有する粘着層形成用組成物からなる、転写基板。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板に仮固定された微小構造体をピックアップして、第2の基板に転写するための転写基板であって、
ベース基板と、前記ベース基板上に形成された粘着層とを含み、
前記粘着層が、
主鎖の構成単位としてスチレン構成単位を含むエラストマーであって、前記スチレン構成単位の含有量が14質量%以上50質量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーを含有する粘着層形成用組成物からなる、
転写基板。
【請求項2】
前記エラストマーが水添物である、請求項1に記載の転写基板。
【請求項3】
前記エラストマーの両端がスチレンのブロック重合体である、請求項1に記載の転写基板。
【請求項4】
前記エラストマーがスチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物である、請求項1に記載の転写基板。
【請求項5】
(a)第1の基板に仮固定された微小構造体を、請求項1~4のいずれか一項に記載の転写基板の前記粘着層に転写して、前記転写基板にピックアップする工程と、
(b)前記転写基板にピックアップされた前記微小構造体を、第2の基板の粘着層に転写する工程と、
を含む、微小構造体の転写方法。
【請求項6】
(i)半導体素子を保持する供給基板から、前記半導体素子を、第1の転写基板の粘着層に転写して前記第1の転写基板にピックアップする工程と、
(ii)前記第1の転写基板にピックアップされた半導体素子を、第2の転写基板の粘着層に転写して前記第2の転写基板にピックアップする工程と、
(iii)前記第2の転写基板にピックアップされた半導体素子を、実装基板の粘着層に転写する工程と、を含み、
前記第2の転写基板が、請求項1~4のいずれか一項に記載の転写基板である、
半導体素子の実装方法。
【請求項7】
前記実装基板の粘着層は、前記第2の転写基板の粘着層よりも、強い粘着力を有し、前記工程(iii)における転写が、前記第2の転写基板の粘着層と前記実装基板の粘着層との粘着力の差に基づいて行われる、請求項6に記載の半導体素子の実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写基板、微小構造体の転写方法、及び半導体素子の実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエレクトロニクス機器には、高性能化のみではなく、省スペース化及び省エネルギー化が求められる。そのため、搭載される電気電子部品も小型化及び微細化しており、その組立工程も複雑化している。
【0003】
例えば、マイクロLEDディスプレイは、マイクロLEDをサブピクセルとして配置されたディスプレイである。マイクロLEDは、数μm~数十μm程度の微小構造体であり、一般的なLED用のボンダー等では移送することが困難である。そこで、マイクロLEDを選択的にピックアップして回路基板に配置するための仮固定材として、ベース基板上に粘着層を有する転写基板が利用されている。
粘着層の形成に用いられる粘着層形成用組成物としては、シリコーン系粘着剤等が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-123620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイクロLED等の微小構造体のピックアップ及び転写を効率的に行うためには、転写基板上の粘着層の性質が重要である。そのため、粘着層として適した粘着層形成用組成物の開発が求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、微小構造体の移送に適した粘着層を有する転写基板、前記転写基板を用いた微小構造体の転写方法、及び前記転写方法を適用した半導体素子の実装方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、第1の基板に仮固定された微小構造体をピックアップして、第2の基板に転写するための転写基板であって、ベース基板と、前記ベース基板上に形成された粘着層とを含み、前記粘着層が、主鎖の構成単位としてスチレン構成単位を含むエラストマーであって、前記スチレン構成単位の含有量が14質量%以上50質量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーを含有する粘着層形成用組成物からなる、転写基板である。
【0008】
本発明の第2の態様は、(a)第1の基板に仮固定された微小構造体を、第1の態様にかかる転写基板の前記第1の粘着層に転写して、前記転写基板にピックアップする工程と、(b)前記転写基板にピックアップされた前記微小構造体を、第2の基板の粘着層に転写する工程と、を含む、微小構造体の転写方法である。
【0009】
本発明の第3の態様は、(i)半導体素子を保持する供給基板から、前記半導体素子を、第1の転写基板の粘着層に転写して前記第1の転写基板にピックアップする工程と、(ii)前記第1の転写基板にピックアップされた半導体素子を、第2の転写基板の粘着層に転写して前記第2の転写基板にピックアップする工程と、(iii)前記第2の転写基板にピックアップされた半導体素子を、実装基板の粘着層に転写する工程と、を含み、前記第2の転写基板が、第1の態様にかかる転写基板である、半導体素子の実装方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、微小構造体の移送に適した粘着層を有する転写基板、前記転写基板を用いた微小構造体の転写方法、及び前記転写方法を適用した半導体素子の実装方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態の転写基板を示す模式図である。
図2】一実施形態の転写基板を示す模式図である。
図3図2に示す転写基板200の製造方法の一例を示す模式図である。
図4】一実施形態の転写基板を示す模式図である。
図5】一実施形態の半導体素子の製造方法の一工程を示す模式図である。
図6】一実施形態の半導体素子の製造方法の一工程を示す模式図である。
図7】一実施形態の半導体素子の製造方法の一工程を示す模式図である。
図8図2に示す転写基板200により、微小構造体をピックアップした状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」又は「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基又はアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有していてもよい」又は「置換基を有してもよい」と記載する場合、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0013】
「スチレン構成単位」とは、スチレン若しくはスチレン誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。スチレン構成単位は、スチレンから誘導される構成単位とスチレン誘導体から誘導される構成単位とを包含する。
「スチレン誘導体」とは、スチレンのα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。それらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいスチレンのベンゼン環に、置換基が結合したもの等が挙げられる。尚、α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
スチレンのα位の水素原子を置換する置換基としては、前記α置換アクリル酸エステルにおいて、α位の置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0014】
上記α位の置換基としてのアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、炭素原子数1~5のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基)等が挙げられる。
また、α位の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
また、α位の置換基としてのヒドロキシアルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、水酸基で置換した基が挙げられる。該ヒドロキシアルキル基における水酸基の数は、1~5が好ましく、1が最も好ましい。
ベンゼン環に結合する置換基としては、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、炭素原子数1~5のアルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0015】
本明細書及び本特許請求の範囲において、化学式で表される構造によっては不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがあるが、その場合は一つの式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0016】
(転写基板)
本発明の第1の態様にかかる転写基板は、第1の基板に仮固定された微小構造体をピックアップして、第2の基板に転写するために用いられる。本態様にかかる転写基板は、ベース基板と、前記ベース基板上に形成された粘着層とを含む。前記粘着層は、エラストマーを含有する粘着層形成用組成物からなる。前記エラストマーは、主鎖の構成単位としてスチレン構成単位を含む。前記エラストマーにおいて、前記スチレン構成単位の含有量は、14質量%以上50質量%以下である。エラストマーの重量平均分子量は10,000以上、200,000以下である。
【0017】
<粘着層形成用組成物>
≪エラストマー≫
粘着層形成用組成物に含有されるエラストマーは、スチレン構成単位を含む。スチレン構成単位は、スチレンから誘導される構成単位でもよく、スチレン誘導体から誘導される構成単位でもよい。エラストマーが有するスチレン構成単位は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0018】
エラストマー中のスチレン構成単位の含有量は、14質量%以上、50質量%以下の範囲である。エラストマーの重量平均分子量は、10,000以上、200,000以下の範囲であれる。スチレン構成単位の含有量及び重量平均分子量が前記の範囲であると、エラストマーを炭化水素系溶剤に溶解させやすい。スチレン構成単位の含有量の下限値としては、17重量%以上が好ましい。スチレン構成単位の含有量の上限値としては、40重量%以下が好ましい。重量平均分子量の下限値としては、20,000以上が好ましい。重量平均分子量の上限値としては、150,000以下が好ましい。
【0019】
エラストマーの種類は、特に限定されない。エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマー(SEP)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SBBS)、エチレン-プロピレンターポリマー(EPT)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー)(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEEPS)、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレンエチレンプロピレン-スチレンブロックコポリマー(セプトンV9461(クラレ社製)、セプトンV9475(クラレ社製))、並びにスチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレンブチレン-スチレンブロックコポリマー(反応性のポリスチレン系ハードブロックを有する、セプトンV9827(クラレ社製))等が挙げられる。これらの中で、スチレン構成単位の含有量及びエラストマーの重量平均分子量が上述の範囲であるものを用いることができる。
【0020】
エラストマーは、水添物であってもよい。例えば、上記例示したエラストマーの水添物を用いることができる。水添物を用いることにより、熱に対する安定性が向上し、分解及び/又は重合等の変質が起こりにくくなる。また、炭化水素系溶剤への溶解性及び耐薬品性も良好となる。
【0021】
エラストマーは、その両端がスチレンのブロック重合体であるものが好ましい。すなわち、エラストマーは、主鎖の両端に、スチレン構成単位の繰り返し構造からなるブロック(以下、「スチレンブロック」ともいう)を有するものが好ましい。熱安定性の高いスチレンブロックを両末端に有することで、エラストマーの耐熱性が向上する。スチレンブロックが反応性のポリスチレン系ハードブロックであると、耐熱性、耐薬品性がより向上する。
【0022】
エラストマーは、スチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物が好ましい。この場合、エラストマーの熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。また、熱安定性の高いスチレンブロックを両末端に有することで、耐熱性が向上する。このようなエラストマーは、炭化水素系溶剤への溶解性、及び耐薬品性の観点からもより好ましい。
【0023】
エラストマーとして用いられ得る市販品としては、例えば、クラレ社製「セプトン(商品名)」、クラレ社製「ハイブラー(商品名)」、旭化成社製「タフテック(商品名)」、JSR社製「ダイナロン(商品名)」等が挙げられる。
【0024】
粘着層形成用組成物中のエラストマーの含有量としては、例えば、粘着層形成用組成物100質量部に対して、10質量部以上、80質量部以下が好ましく、20質量部以上、60質量部以下がより好ましい。
【0025】
粘着層形成用組成物が含有するエラストマーは、1種でもよく、2種以上でもよい。粘着層形成用組成物が2種以上のエラストマーを含む場合、複数の種類のエラストマーのうち少なくとも一つが、主鎖の構成単位としてスチレン構成単位を含み当該スチレン構成単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲であればよい。
粘着層形成用組成物が2種以上のエラストマーを含む場合、粘着層形成用組成物が含有する全エラストマーにおいて、スチレン構成単位の含有量が上記の範囲となるように調整してもよい。例えば、スチレン構成単位の含有量が30質量%であるクラレ社製のSepton4033(商品名)と、スチレン構成単位の含有量が13質量%であるSepton2063(商品名)とを重量比1対1で混合する。この場合、粘着層形成用組成物に含まれるエラストマー全体のスチレン構成単位の含有量は21~22質量%となる。また、例えば、スチレン構成単位の含有量が10質量%のエラストマーとスチレン構成単位の含有量が60質量%のエラストマーとを1対1で混合すると、エラストマー全体のスチレン構成単位の含有量は35重量%となる。
粘着層形成用組成物に含有されるエラストマーは、全て上記の範囲の含有量でスチレン構成単位を含み、且つ、上記の範囲の重量平均分子量であることが好ましい。
【0026】
≪任意成分≫
粘着層形成用組成物は、上記エラストマーに加えて、任意の成分を含有してもよい。
【0027】
溶剤:
粘着層形成用組成物は、エラストマーを溶解するための溶剤を含有してもよい。溶剤は、エラストマーを溶解する機能を有するものであればよく、例えば、非極性の炭化水素系溶剤、極性及び無極性の石油系溶剤等を用いることができる。
【0028】
炭化水素系溶剤としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素が挙げられる。炭化水素系溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の炭素原子数1~15の直鎖状炭化水素;炭素原子数3~15の分岐鎖状の炭化水素;p-メンタン、o-メンタン、m-メンタン、ジフェニルメンタン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、1,4-テルピン、1,8-テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、α-ピネン、β-ピネン、ツジャン、α-ツジョン、β-ツジョン、カラン、ロンギホレン等が挙げられる。
【0029】
石油系溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ナフタレン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレンなどが挙げられる。
【0030】
溶剤は、縮合多環式炭化水素を含み得る。溶剤が、縮合多環式炭化水素を含むことによって、粘着層形成用組成物を液状形態で(特に低温にて)保存した際に生じ得る白濁化を避けることができ、製品安定性を向上させることができる。縮合多環式炭化水素とは、2つ以上の単環がそれぞれの環の辺を互いに1つだけ供給してできる縮合環の炭化水素である。縮合多環式炭化水素としては、2つの単環が縮合されてなる炭化水素を用いることが好ましい。
【0031】
縮合多環式炭化水素としては、5員環及び6員環の組み合わせ、又は2つの6員環の組み合わせが挙げられる。5員環及び6員環を組み合わせた炭化水素としては、例えば、インデン、ペンタレン、インダン、テトラヒドロインデン等が挙げられる。2つの6員環を組み合わせた炭化水素としては、例えば、ナフタレン、テトラヒドロナフタレン(テトラリン)及びデカヒドロナフタレン(デカリン)等が挙げられる。
【0032】
溶剤が縮合多環式炭化水素を含む場合、溶剤に含まれる成分は縮合多環式炭化水素のみであってもよいし、例えば、飽和脂肪族炭化水素等の他の溶剤を含有してもよい。この場合、縮合多環式炭化水素の含有量が炭化水素系溶剤全体の40質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがより好ましい。縮合多環式炭化水素の含有量が炭化水素系溶剤全体の40質量部以上である場合には、エラストマーに対する高い溶解性が発揮できる。縮合多環式炭化水素と飽和脂肪族炭化水素との混合比が上記範囲内であれば、縮合多環式炭化水素の臭気を緩和させることができる。
【0033】
前記飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素;炭素原子数3~15の分岐鎖状の炭化水素;p-メンタン、o-メンタン、m-メンタン、ジフェニルメンタン、1,4-テルピン、1,8-テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン等が挙げられる。
【0034】
粘着層形成用組成物における溶剤の含有量としては、粘着層形成用組成物を用いて成膜する粘着層の厚さに応じて適宜調整すればよい。例えば、粘着層形成用組成物の全質量を100質量部としたとき、溶剤の含有量は、20質量部以上、90質量部以下の範囲であることが好ましい。溶剤の含有量が上記範囲内であれば、粘度調整が容易となる。
【0035】
熱重合禁止剤:
粘着層形成用組成物は熱重合禁止剤を含有していてもよい。熱重合禁止剤は、熱によるラジカル重合反応を防止する機能を有する。具体的には、熱重合禁止剤はラジカルに対して高い反応性を示すため、モノマーよりも優先的に反応してモノマーの重合を禁止する。熱重合禁止剤を含むことにより、高温環境下(特に、250℃~350℃)において重合反応が抑制される。
【0036】
熱重合禁止剤としては、熱によるラジカル重合反応を防止するのに有効であれば特に限定されるものではないが、フェノールを有する熱重合禁止剤が好ましい。これにより、大気下での高温処理後にも良好な溶解性が確保できる。そのような熱重合禁止剤としては、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤を用いることが可能である。そのような熱重合禁止剤としては、例えば、ピロガロール、ベンゾキノン、ヒドロキノン、メチレンブルー、tert-ブチルカテコール、モノベンジルエーテル、メチルヒドロキノン、アミルキノン、アミロキシヒドロキノン、n-ブチルフェノール、フェノール、ヒドロキノンモノプロピルエーテル、4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス(2-メチルフェノール)、4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[1-〔4-(1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル)フェニル〕エチリデン]ビスフェノール、4,4’,4”-エチリデントリス(2-メチルフェノール)、4,4’,4”-エチリデントリスフェノール、1,1,3-トリス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルプロパン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、3,9-ビス[2-(3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、トリエチレングリコール-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、n-オクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名IRGANOX1010、チバ・ジャパン社製)、トリス(3,5-ジ-tert-ブチルヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられる。熱重合禁止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
熱重合禁止剤の含有量は、エラストマーの種類、並びに粘着層形成用組成物の用途及び使用環境に応じて適宜決定すればよいが、例えば、エラストマー100質量部に対して、0.1質量部以上、10質量部以下が好ましい。熱重合禁止剤の含有量が上記範囲内であれば、熱による重合を抑える効果が良好に発揮される。
【0038】
粘着層形成用組成物は、熱重合禁止剤を溶解し、エラストマーを溶解するための溶剤とは異なる組成からなる添加溶剤を含有してもよい。添加溶剤としては、特に限定されないが、接着剤組成物に含まれる成分を溶解する有機溶剤を用いることができる。
【0039】
有機溶剤としては、例えば、粘着層形成用組成物の各成分を溶解し、均一な溶液にすることができればよく、任意の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
有機溶剤の具体例としては、例えば、極性基として酸素原子、カルボニル基又はアセトキシ基等を有するテルペン溶剤が挙げられ、例えば、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール、テルピネン-1-オール、テルピネン-4-オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4-シネオール、1,8-シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファーが挙げられる。また、γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、上記多価アルコール類又は上記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤等を挙げることができる。
【0041】
添加溶剤の含有量は、熱重合禁止剤の種類等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、熱重合禁止剤1質量部に対して、1質量部以上、50質量部以下が好ましく、1~30質量部がさらに好ましく、1~15質量部が最も好ましい。熱重合禁止剤の含有量が上記範囲内であれば、熱重合禁止剤を十分に溶解することができる。
【0042】
粘着層形成用組成物には、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、混和性のある他の物質をさらに含んでいてもよい。例えば、粘着性を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤及び界面活性剤等、慣用されている各種添加剤をさらに用いることができる。
【0043】
<粘着層形成用組成物の調製方法>
粘着層形成用組成物の調製方法は特に限定されず、公知の方法を用いればよい。例えば、エラストマー、及び適宜任意成分を溶剤に溶解させ、既存の攪拌装置を用いて、攪拌することにより、粘着層形成用組成物を得ることができる。熱重合禁止剤を添加する場合には、熱重合禁止剤を、予め熱重合禁止剤を溶解させるための添加溶剤に溶解させたものを添加することが好ましい。
【0044】
<ベース基板>
転写基板に用いられるベース基板の材質は、特に限定されない。ベース基板の材質としては、例えば、プラスチックフィルム、ガラス、合成石英ガラス、金属等が挙げられるが、これらに限定されない。ベース基板は、化学強化処理等を施したものでもよい。ベース基板は、粘着層の密着性を向上させるために、プライマー処理、プラズマ処理等を施したものでもよい。微小構造体移送時の位置ずれを抑制し、移送精度を高める観点から、ベース基板は、平坦度の高い合成石英ガラス基板を用いることが好ましい。
【0045】
<転写基板の構成>
本実施形態の転写基板は、ベース基板と、前記ベース基板上に形成された粘着層と、を含む。図1は、一実施形態の転写基板100を示す。転写基板100は、ベース基板110の一方の面上に、粘着層120を有している。粘着層120は、上記粘着層形成用組成物により形成されている。粘着層120の厚さは、特に限定されないが、成型性及び平坦性の観点から、1μm~1cmが好ましく、10μm~5mmがより好ましい。
【0046】
粘着層120を形成する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、ベース基板110上に、上記粘着層形成用組成物を塗布し、乾燥させることにより、粘着層120を形成することができる。ベース基板110上に、粘着層形成用組成物を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布等の方法が挙げられる。粘着層形成用組成物の乾燥は、加熱乾燥で行ってもよく、減圧乾燥で行ってもよい。
【0047】
粘着層の形成は、フィルム上に粘着層が形成された粘着フィルムを用いて行ってもよい。例えば、粘着フィルムの粘着層がベース基板110に接するように、ベース基板110上に粘着フィルムを積層し、加熱ローラ等を用いて熱圧着する。その後、フィルムを剥離することにより、ベース基板110上に粘着層120を形成することができる。
【0048】
図2は、別の実施形態の転写基板200を示す。転写基板200は、ベース基板210の一方の面上に、粘着層220を有している。粘着層220は、上記粘着層形成用組成物により形成されている。粘着層220の表面は、複数の凸部221及び凹部222が形成された凹凸構造を有している。微小構造体のピックアップの際には、凸部221に微小構造体が粘着して仮固定される。
【0049】
ベース基板210上に粘着層220を形成する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、モールド成型により、粘着層220を形成することができる。図3は、モールド成型により、粘着層220を形成する方法の一例を示す模式図である。ベース基板210とモールドMとの間に、上記粘着層形成用組成物を充填し、乾燥させた後、モールドMを脱型することで、転写基板200を得ることができる。モールドMとしては、例えば、シリコンウエハーや石英基板上にフォトレジストにより所望の凹凸をつけたレジスト型、付加硬化型樹脂にパターン露光して凹凸をつけた樹脂型等を用いることができる。樹脂型の場合、基材として各種プラスチックフィルムを用いることができる。ベース基板210とモールドMとの間に、粘着層形成用組成物を充填する方法としては、ベース基板210とモールドMのいずれか又は両方に、粘着層形成用組成物を塗布した後、ベース基板210及びモールドMを貼り合せる方法が挙げられる。
【0050】
粘着層220は、凹凸構造を有するシート状に粘着層形成用組成物を成型し、ベース基板210に貼り合わせることにより形成してもよい。粘着層形成用組成物をシート状に成型する方法としては、モールドMと同様の凹凸構造を有する型を用いる方法が挙げられる。成型方法は、ロール成形、プレス成型、トランスファー成型、コンプレッション成型等の公知の成型方法から適宜選択することができる。シート状成型物は、ホコリ等の付着防止や硬化時の酸素阻害抑制のために、プラスチックフィルム等に挟み込んで成型することが好ましい。シート状成型物がベース基板210よりも大きい場合、所望の大きさにカットしてもよい。シート状成型物とベース基板210との密着性を上げるため、これらの貼り合せ面にプラズマ処理、エキシマ処理、化学処理等を施してもよい。貼り合せ強度を向上させるために、上述した各種粘着剤・接着剤等を使用してもよい。貼り合せ方法としては、ロール貼り合せや真空プレス等を用いることができる。
【0051】
凸部221の大きさ及び配列は、移送対象の微小構造体、及び微小構造体の配置に応じて、適宜設計することができる。凸部221の上面部は平坦であり、上面部の面形状は、特に限定されない。凸部221の上面の形状としては、円形、楕円形、四角形等が挙げられる。四角形等の場合、エッジに丸みがつけられていてもよい。凸部221の上面部の径は、例えば、0.1μm~1cmが好ましく、1μm~1mmがより好ましい。凸部221の側面部の形状も特に限定されない。凸部221の側面部は、ベース基板210に対して垂直であってもよく、傾斜していてもよい。
凸部221の高さは、特に限定されないが、例えば、0.1μm~1cmが好ましく、1μm~1mmがより好ましい。空間を隔てて隣り合う凸部221のピッチ距離は、0.1μm~10cmが好ましく、1μm~1mmがより好ましい。凹部222における粘着層220の厚さは、特に限定されないが、0.1μm~1cmが好ましく、1μm~5mmがより好ましい。
【0052】
図3は、別の実施形態の転写基板300を示す。転写基板300は、ベース基板310の一方の面上に、粘着層320を有している。粘着層320は、複数の島状粘着部321により構成される。島状粘着部321は、上記粘着層形成用組成物により形成されている。
【0053】
島状粘着部321の形状、大きさ、及び配置は、特に限定されない。島状粘着部321の形状、大きさ、及び配置としては、転写基板200における凸部221と同様のものが挙げられる。
【0054】
<用途>
本態様にかかる転写基板は、第1の基板に仮固定された微小構造体をピックアップして、第2の基板に転写するために用いれらる。微小構造体としては、例えば、半導体素子が挙げられる。半導体素子としては、例えば、発光ダイオード(LED)、トランジスタ、集積回路(IC)が挙げられる。中でも、半導体素子は、LEDが好ましく、マイクロLEDがより好ましい。マイクロLEDは、例えば、0.5~200μmの幅、0.5~200μmの長さ、及び0.5~200μmの高さを有してもよい。半導体素子は、実装基板(例えば、回路基板)の配線と接続するために、バンプなどの接続電極を有してもよい。
【0055】
半導体素子は、通常、結晶成長基板上に2次元状(例えば格子状)に複数個配列して形成されている。結晶成長基板は、通常は円形又は四角形を有し、例えばシリコン、ガリウムヒ素、サファイヤ等からなる。
半導体素子は、以下の様にして形成することもできる。例えば、被加工物である円板形状のウエハの表面に格子状に配列された分割予定ラインによって複数の領域を区画する。この区画された領域それぞれに半導体素子を形成し、当該ウエハの裏面を研削して所定の厚さに成形する。次いで、ダイシング装置により分割予定ラインに沿って当該ウエハを切断する。このようにして、半導体素子を形成することができる。
【0056】
第1基板としては、例えば、結晶成長基板から微小構造体が転写された転写基板が挙げられる。第2基板としては、例えば、微小構造体の実装基板(回路基板等)が挙げられる。本態様にかかる転写基板は、後述の微小構造体の転写方法、及び半導体素子の実装方法に、用いることができる。本態様にかかる転写基板は、多数の微小な半導体素子を、実装基板に高精度に実装するために、好適に用いることができる。
【0057】
(微小構造体の転写方法)
本発明の第2の態様にかかる微小構造体の転写方法は、(a)第1の基板に仮固定された微小構造体を、第1の態様にかかる転写基板の前記第1の粘着層に転写して、前記転写基板にピックアップする工程(以下、「工程(a)」という)と、(b)前記転写基板にピックアップされた前記微小構造体を、第2の基板の粘着層に転写する工程(以下、「工程(b)」という)と、を含む。
【0058】
本実施形態にかかる微小構造体の転写方法の概要を図6及び図7に基づいて、説明する。
まず、第1の基板(第1の転写基板10)に仮固定された微小構造体(半導体素子2)を、転写基板100の粘着層120に接触させて、微小構造体(半導体素子2)を粘着層120に転写する。これにより、転写基板100に、微小構造体(半導体素子2)をピックアップする(工程(a);図6)。
次いで、転写基板100にピックアップされた微小構造体(半導体素子2)を、第2の基板(実装基板20)の粘着層22に接触させて、微小構造体(半導体素子2)を第2の基板(実装基板20)に転写する(工程(b);図7)。
【0059】
<工程(a)>
工程(a)は、第1の基板に仮固定された微小構造体を、第1の態様にかかる転写基板の前記第1の粘着層に転写して、前記転写基板にピックアップする工程である。
【0060】
第1の基板は、微小構造体が仮固定された基板である。微小構造体としては、上記と同様のものが挙げられ、マイクロLEDが好ましい。微小構造体が第1の基板に仮固定される方法は、特に限定されない。例えば、第1の基板は、図6に示す第1の転写基板10のように、ベース基板11上に粘着層12を有するものであってもよい。第1の基板の粘着層12は、例えば、熱又は光により硬化して、粘着性が低下する材質により構成されていてもよい。粘着層12は、例えば、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂により形成することができる。粘着層12の材質の具体例としては、例えば、熱硬化性シリコーン樹脂光硬化性シリコーン樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂等が挙げられる。
第1の基板(第1の転写基板10)のベース基板11の材質としては、第1の態様にかかる転写基板のベース基板と同様のものが挙げられる。粘着層12に光硬化性樹脂を使用する場合、ベース基板11は光を透過する材質であることが好ましい。この場合、ベース基板11の微小構造体(半導体素子2)を仮固定していない側の面から光を照射することにより、ベース基板11を介して粘着層12に光を照射することができる。
【0061】
例えば、図6に示すように、転写基板100を、第1の基板(第1の転写基板10)に仮固定された微小構造体(半導体素子2)に接触された状態で、第1の転写基板10の粘着層12を熱硬化又は光硬化させる。これにより、粘着層12の粘着性が低下する。その結果、転写基板100の粘着層120の粘着性に基づいて、微小構造体(半導体素子2)が、粘着層120に転写される。
【0062】
第1の基板(第1の転写基板10)の粘着層12が光硬化性樹脂により形成されている場合には、位置選択的な光照射を行ってもよい。この場合、光照射された位置に仮固定される微小構造体(半導体素子2)のみを選択的にピックアップすることができる。
【0063】
<工程(b)>
工程(b)は、第1の態様にかかる転写基板にピックアップされた微小構造体を、第2の基板の粘着層に転写する工程である。
【0064】
第2の基板は、第1の態様にかかる転写基板にピックアップされた微小構造体が転写される基板である。第2の基板は、図7に示す実装基板20のように、ベース基板21上に粘着層22を有するものであってもよい。第2の基板の粘着層22は、転写基板100の粘着層120よりも、粘着力が強いことが好ましい。第2の基板の粘着層の粘着力が、転写基板100の粘着層120の粘着力よりも強い場合、この粘着力の差に基づいて、転写基板100の粘着層120に仮固定された微小構造体を、第2基板の粘着層に転写することができる。例えば、図7に示すように、転写基板100に仮固定された微小構造体(半導体素子2)を、第2の基板(実装基板20)の粘着層22に接触させる。このとき、第2の基板(実装基板20)の粘着層22の粘着力が、転写基板100の粘着層120の粘着力より強いと、転写基板100に仮固定されていた微小構造体(半導体素子2)が、第2の基板(実装基板20)の粘着層22に転移する。これにより、転写基板100に仮固定された複数の微小構造体(半導体素子2)を、第2の基板に一括して転移させることができる。第2の基板の粘着層の粘着力は、例えば、転写基板100の粘着層120の粘着力よりも、例えば、0.1MPa以上強いことが好ましく、0.2MPa以上強いことがより好ましい。
【0065】
このようにして、第1の基板から第2の基板への微小構造体の転写を行うことができる。本態様にかかる微小構造体の転写方法は、例えば、後述の半導体素子の実装方法に適用することができる。
【0066】
図6及び図7の例では、第1の態様にかかる転写基板として、粘着層の表面が平板である転写基板100を用いる例を示したが、第1の態様にかかる転写基板は、粘着層の表面に凹凸構造を有するもの(例えば、図2の転写基板200)であってもよく、島状粘着部を有するもの(例えば、図3の転写基板300)であってもよい。微小構造体(半導体素子2)が、転写基板200にピックアップされた状態を図8に示す。
【0067】
(半導体素子の実装方法)
本発明の第3の態様にかかる半導体素子の実装方法は、(i)半導体素子を保持する供給基板から、前記半導体素子を、第1の転写基板の粘着層に転写して前記第1の転写基板にピックアップする工程(以下、「工程(i)」ともいう)と、(ii)前記第1の転写基板にピックアップされた半導体素子を、第2の転写基板の粘着層に転写して前記第2の転写基板にピックアップする工程(以下、「工程(ii)」ともいう)と、(iii)前記第2の転写基板にピックアップされた半導体素子を、実装基板の粘着層に転写する工程(以下、「工程(iii)」ともいう)と、を含む。前記第2の転写基板は、上記第1の態様にかかる転写基板である。
【0068】
本実施形態にかかる半導体素子の実装方法の概要を、図5~8に基づいて、説明する。
まず、半導体素子2を保持する供給基板1から、半導体素子2を、第1の転写基板10の粘着層12に転写する。これにより、第1の転写基板10に、半導体素子2をピックアップする(図5;工程(i))。
次いで、第1の転写基板10にピックアップされた半導体素子2を、転写基板100の粘着層120に転写する。これにより、転写基板100に、半導体素子2をピックアップする(工程(ii);図6)。
次いで、転写基板100にピックアップされた半導体素子2を、実装基板20の粘着層22に転写する(工程(b);図7)。
これにより、実装基板20に、半導体素子2を実装することができる。
【0069】
<工程(i)>
工程(i)は、半導体素子を保持する供給基板から、前記半導体素子を、第1の転写基板の粘着層に転写して前記第1の転写基板にピックアップする工程である。
【0070】
半導体素子として、上記と同様のものが挙げられ、マイクロLEDが好ましい。供給基板としては、半導体素子が形成された結晶成長基板が挙げられる。
第1の転写基板は、ベース基板11上に粘着層12を有する基板であり、上述の第1の基板の例として記載したものと同様のものが挙げられる。
【0071】
供給基板から第1の転写基板に半導体素子を転写する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。そのような方法としては、例えば、レーザーリフトオフ(LLO)法による方法が挙げられる。例えば、図5に示すように、供給基板1に保持された半導体素子2を、第1の転写基板10の粘着層12に接触させて、供給基板1の半導体素子2が形成されていない側からレーザ光を照射する。これにより、半導体素子2が供給基板1から剥離して、第1の転写基板10の粘着層12に仮固定される。例えば、サファイヤ基板等の供給基板に保持されている窒化ガリウム半導体素子の場合、エキシマレーザ及びYAGレーザ等のレーザ光の照射により照射部分の窒化ガリウムが溶解し、窒化ガリウム半導体素子が供給基板から剥離する。半導体素子がマイクロLEDである場合、半導体素子の信頼性の観点から、KrFエキシマレーザを用いることが好ましい。具体的には、レーザ光を選択的に照射して、選択対象となる半導体素子と供給基板の界面にレーザーアブレーションを生じさせる。窒化ガリウム半導体素子では、半導体素子と供給基板との間で、窒化ガリウムが金属ガリウムと窒素に分解してガスが発生し、半導体素子を供給基板から剥離することができる。
【0072】
<工程(ii)>
工程(ii)では、第1の転写基板にピックアップされた半導体素子を、第2の転写基板の粘着層に転写して前記第2の転写基板にピックアップする工程である。
【0073】
本工程では、第2の転写基板として、第1の態様にかかる転写基板を用いる。図6は、第2の転写基板として、図1に示す転写基板100を用いている。第2の転写基板は、図2に示す転写基板200を用いてもよく、図4に示す転写基板300を用いてもよい。
工程(ii)は、上述の工程(a)と同様に行うことができる。
【0074】
<工程(iii)>
工程(iii)は、第2の転写基板にピックアップされた半導体素子を、実装基板の粘着層に転写する工程である。
【0075】
実装基板としては、例えば、配線等を有する回路基板が挙げられる。回路基板の具体例としては、例えば、ディスプレイ基板、照明基板、トランジスタ、集積回路(IC)等の機能デバイスを有する基板が挙げられる。実装基板は、リジッド基板であってもよく、フレキシブル基板であってもよい。実装基板は、例えば、リジッドな樹脂製基板、セラミック基板、ガラス基板、フレキシブルな樹脂製基板等であってもよい。
【0076】
実装基板20は、図7に示す実装基板20のように、ベース基板21上に粘着層22が形成されたものでもよい。本工程における転写は、転写基板100の粘着層120と実装基板20の粘着層22との粘着力の差に基づいて行われてもよい。例えば、実装基板20の粘着層22の粘着力が、転写基板100の粘着層120の粘着力よりも強い場合、当該粘着力の差に基づいて、転写基板100の粘着層120に仮固定された半導体素子2を、実装基板20の粘着層22に転写することができる。転写基板100から実装基板20への半導体素子2の転写は、上述の工程(b)と同様に行うことができる。
【0077】
半導体素子2を実装基板20に実装する際に、実装基板20を全体的に加熱してもよい。加熱方法としては、例えば、ホットプレート、赤外線加熱ランプ、レーザ、抵抗発熱体等を用いる方法が挙げられる。例えば、半導体素子2に設けられたはんだバンプ等の電極を、実装基板20に形成された電極パッド等の電極と接合可能な温度に実装基板20を加熱する。これにより、半導体素子2の電極と実装基板20の電極とを電気的に接続することができる。
【0078】
<任意工程>
本態様にかかる方法は、上記工程(i)~(iii)に加えて、任意工程を含んでもよい。任意工程としては、例えば、各工程の転写後に半導体素子を洗浄する工程、洗浄後の半導体素子を乾燥する工程等が挙げられる。
【0079】
本態様にかかる半導体素子の実装方法では、第2の転写基板として上記第1の態様にかかる転写基板を用いる。そのため、実装基板との粘着力の差に基づいて、多数の半導体素子を高精度に実装基板に実装することができる。
【実施例0080】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0081】
(粘着層形成用組成物の調製)
表1、2に記載のとおり、各例の粘着層形成用組成物を調製した。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
表1、2に記載の各成分は以下のとおりである。
エラストマーとしては、クラレ社製のセプトン(商品名)のSepton2004(SEP:ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック)、HG252(SEEPS-OH:ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン末端水酸基変性)、Septon4033(SEPS:ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン)、Septon8007(SEBS:ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン)、Septon2104(SEPS:ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン)、Septon4055(SEEPS:ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン)、Septon4077(SEEPS:ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン)、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレンブチレン-スチレンブロックコポリマー(セプトンV9827、反応性のポリスチレン系ハードブロックを有する(クラレ社製))、旭化成社製のタフテック(商品名)のMP-10(SEBS、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(末端アミン変性)、H1053(SEBS、水添スチレン系熱可塑性エラストマー)、H1043(SEBS、水添スチレン系熱可塑性エラストマー)を用いた。「水添」とは、スチレンとブタジエンのブロックコポリマーの二重結合を水素添加したポリマーである。
表1、2中のエラストマーの重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)にて測定した。スチレン含有量は各商品に添付の説明に記載されていた数値である。
【0085】
熱重合禁止剤としては、BASF社製の「IRGANOX(商品名)1010」を用いた。主溶剤としては、デカヒドロナフタレンを用いた。添加溶剤として、酢酸ブチルを用いた。
【0086】
(転写基板の製造)
ベース基板に、各例の粘着層形成用組成物をスピン塗布して、100℃、160℃、及び200℃で各5分間焼成した。これにより、膜厚50μmの粘着層を有する転写基板を得た。
【符号の説明】
【0087】
1 供給基板
2 半導体素子
10 第1の転写基板
11 第1の転写基板のベース基板
12 第1の転写基板の粘着層
20 実装基板
22 実装基板の粘着層
100,200,300 転写基板(第2の転写基板)
110,210,310 転写基板(第2の転写基板)のベース基板
120,220,320 転写基板(第2の転写基板)の粘着層
221 凸部
222 凹部
321 島状粘着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8