(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155163
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】樹脂粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/16 20060101AFI20241024BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20241024BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20241024BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20241024BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20241024BHJP
C08L 25/08 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C08J3/16 CFD
G03G9/08 384
G03G9/097 365
G03G9/087 325
G03G9/087 331
C08L67/00
C08L25/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069622
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】溝口 由花
(72)【発明者】
【氏名】武井 章生
(72)【発明者】
【氏名】雨森 涼香
(72)【発明者】
【氏名】中山 慎也
【テーマコード(参考)】
2H500
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA08
2H500BA12
2H500BA22
2H500BA26
2H500CA03
2H500CA06
4F070AA18
4F070AA47
4F070DA22
4F070DA39
4F070DB04
4F070DB09
4J002AE032
4J002AE042
4J002AE052
4J002BB032
4J002BC072
4J002BC073
4J002BG042
4J002BG052
4J002BG053
4J002CF011
4J002CF031
4J002CF051
4J002CF061
4J002CF071
4J002CF081
4J002CH001
4J002CK011
4J002CK021
4J002CL001
4J002EP016
4J002EU026
4J002FD162
4J002FD166
4J002HA09
(57)【要約】
【課題】高温定着性に優れ、高画質の画像が得られる樹脂粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、結着樹脂及び離型剤を含有する樹脂粒子の製造方法であって、
a)ポリエステル樹脂を含む前記結着樹脂を有機溶媒に溶解または分散させた油相を作製する工程と、
b)前記離型剤と有機溶媒とを混合し、加熱後、冷却により析出させて分散液を作製する工程と、
c)前記結着樹脂及び前記離型剤を含む樹脂粒子を凝集させる工程を含み、
b)の冷却過程において離型剤が析出し始めるまでの降温速度をA、離型剤が完全に析出し終わるまでの降温速度をBとしたときに、A≦2Bである、樹脂粒子の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び離型剤を含有する樹脂粒子の製造方法であって、
a)ポリエステル樹脂を含む前記結着樹脂を有機溶媒に溶解または分散させた油相を作製する工程と、
b)前記離型剤と有機溶媒とを混合し、加熱後、冷却により析出させて分散液を作製する工程と、
c)前記結着樹脂及び前記離型剤を含む樹脂粒子を凝集させる工程とを含み、
b)の冷却過程において離型剤が析出し始めるまでの降温速度をA、離型剤が完全に析出し終わるまでの降温速度をBとしたときに、A≦2Bである、
樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記b)の工程において、離型剤とともに少なくともスチレンアクリル樹脂を含む第2成分の材料を混合する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
b)で作製した分散液をa)で作製した油相に混合し、水を添加して油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる工程を有する請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
b)で作製した分散液を、c)の凝集工程に加える請求項1又は2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフセット印刷に迫る高画質印刷への要求が高くなっている。高画質印刷を満たす要件の中でも、幅広い定着性の実現や光沢ムラの抑制のためには、トナー内部の離型剤の均一性が重要である。
【0003】
特許文献1では、高温側の定着性を維持する方法として、製造時にプレポリマーを添加して、トナー粒子形成後に重合させる方法が開示されている。しかしながら、この方法で製造されるトナーでは、光沢ムラを低減するためには不十分であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高温定着性に優れ、高画質の画像が得られる樹脂粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
トナー内部の離型剤の均一性について検討した結果、離型剤を析出させる際の冷却温度をコントロールすることで、離型剤の結晶性を高め、分散径を小さくし、粒子内部での離型剤の均一性を制御できることを見出した。
【0006】
本発明は、結着樹脂及び離型剤を含有する樹脂粒子の製造方法であって、
a)ポリエステル樹脂を含む前記結着樹脂を有機溶媒に溶解または分散させた油相を作製する工程と、
b)前記離型剤と有機溶媒とを混合し、加熱後、冷却により析出させて分散液を作製する工程と、
c)前記結着樹脂及び前記離型剤を含む樹脂粒子を凝集させる工程とを含み、
b)の冷却過程において離型剤が析出し始めるまでの降温速度をA、離型剤が完全に析出し終わるまでの降温速度をBとしたときに、A≦2Bである、
樹脂粒子の製造方法である。
【0007】
b)の工程において、離型剤が析出する際には発熱反応が伴うために、降温速度Bは降温速度Aよりも小さくなるが(A>B)、A≦2Bとなるように、降温速度Bを制御することで離型剤の結晶性が上がり、析出後の離型剤の分散径を小さくすることが可能となる。離型剤粒子の分散径を小さくすることで、樹脂粒子中の離型剤の分散径も小さくすることができ、定着時の光沢ムラを低減できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温定着性に優れ、高画質の画像を得られる樹脂粒子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る樹脂粒子の製造方法について、詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断りがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
なお、本発明は樹脂粒子の製造方法に係るものであるが、以下では樹脂粒子の具体例としてトナーを例に挙げて本発明を説明する。従って、以下では樹脂粒子をトナーという。
【0011】
本実施形態に係るトナーの製造方法においては、まず有機溶媒中に結着樹脂、着色剤、離型剤等を溶解あるいは分散させた油相を作製する。以下、油相作製工程で使用する材料について説明する。
【0012】
<結着樹脂>
本実施形態に係るトナーの製造で用いる結着樹脂は、特に限定されないが、非晶質樹脂又は結晶性樹脂、あるいはその両方を含有することが好ましい。
[非晶質樹脂]
非晶質樹脂としては、非晶質ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
【0013】
(非晶質ポリエステル樹脂)
本実施形態における非晶性ポリエステル樹脂としては、線状のポリエステル樹脂が好ましく、また未変性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0014】
前記未変性ポリエステル樹脂とは、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるポリエステル樹脂であって、イソシアネート化合物などにより変性されていないポリエステル樹脂である。
【0015】
前記非晶質ポリエステル樹脂は、耐熱保存性に優れる点で、構成成分としてジカルボン酸成分を含み、前記ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を50mol%以上含有することが好ましい。
【0016】
前記多価アルコールとしては、例えば、ジオールなどが挙げられる。
【0017】
前記ジオールとしては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール;水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記多価カルボン酸としては、例えば、ジカルボン酸などが挙げられる。
【0019】
前記ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸;ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
また、酸価、水酸基価を調整する目的で、前記非晶質ポリエステル樹脂は、その樹脂鎖の末端に3価以上のカルボン酸及び3価以上のアルコールの少なくともいずれかを含んでいてもよい。
【0021】
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、又はそれらの酸無水物などが挙げられる。
【0022】
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0023】
前記非晶質ポリエステル樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定において、重量平均分子量(Mw)は3,000~10,000であることが好ましく、4,000~7,000がより好ましい。数平均分子量(Mn)は、1,000~4,000であることが好ましく、1,500~3,000がより好ましい。Mw/Mnは、1.0~4.0であることが好ましく、1.0~3.5がより好ましい。
【0024】
分子量が上記下限値の3,000以上の場合、トナーの耐熱保存性や現像機内での撹拌等のストレスに対する耐久性が低下することを抑制することができる。分子量が上記上限値の10,000以下の場合、トナーの溶融時の粘弾性が高くなることを抑え、低温定着性が低下することを抑制することができる。
【0025】
前記非晶質ポリエステル樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。1mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~30mgKOH/gがより好ましい。前記酸価が、1mgKOH/g以上であることにより、トナーが負帯電性となりやすく、更には、紙への定着時に、紙とトナーの親和性が良くなり、低温定着性を向上させることができる。前記酸価が、50mgKOH/g以下であることにより、帯電安定性、特に環境変動に対する帯電安定性が低下することを抑制することができる。
【0026】
前記非晶質ポリエステル樹脂の水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mgKOH/g以上であることが好ましい。
【0027】
前記非晶質ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上70℃以下がより好ましい。前記ガラス転移温度が、40℃以上であることにより、トナーの耐熱保存性、及び現像機内での撹拌等のストレスに対する耐久性が十分なものとなり、また、耐フィルミング性も良好となる。前記ガラス転移温度が、80℃以下であることにより、トナーの定着時における加熱及び加圧による変形が十分なものとなり、低温定着性が良好となる。
【0028】
前記非晶質ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液又は固体による核磁気共鳴(NMR)測定の他、X線回折、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)、液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS)、赤外吸収(IR)測定などにより確認することができる。簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1及び990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有しないものを非晶質ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
【0029】
前記非晶質ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、50質量部~90質量部が好ましく、60質量部~80質量部がより好ましい。前記含有量が、50質量部以上であると、トナー中の顔料、離型剤の分散性が悪化することを抑制でき、画像のかぶりや乱れが生じることを抑制することができる。90質量部以下であると、低温定着性が低下することを抑制することができる。前記含有量が、前記のより好ましい範囲であると、高画質、及び低温定着性の全てに優れる点で有利である。
【0030】
<結晶性樹脂>
本実施形態に係るトナーには、低温定着性向上のために、結晶性樹脂を添加することが好ましい。結晶性樹脂としては、結晶性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ビニル樹脂、変性結晶性樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
[結晶性ポリエステル樹脂]
結晶性ポリエステル樹脂(以下、「結晶性ポリエステル樹脂C」と称することがある。)は、高い結晶性をもつために、定着開始温度付近において急激な粘度変化を示す熱溶融特性を示す。このような特性を有する前記結晶性ポリエステル樹脂Cを前記非晶質ポリエステル樹脂と共に用いることで、良好な耐熱保存性と低温定着性とを兼ね備えたトナーが得られる。
【0032】
例えば、前記結晶性ポリエステル樹脂Cと前記非晶質ポリエステル樹脂とを共に用いることにより、溶融開始温度直前までは結晶性による耐熱保存性がよく、溶融開始温度では結晶性ポリエステル樹脂Cの融解による急激な粘度低下を起こす(シャープメルト性)。それに伴い、前述する非晶質ポリエステル樹脂と相溶し、共に急激に粘度低下することで良好に定着させることができる。
【0033】
結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸又はその誘導体から得られる。なお、本発明において結晶性ポリエステル樹脂とは、上記のように、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えばプレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂には属さない。
【0034】
前記多価アルコールとしては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、及び3価以上のアルコールが挙げられる。
【0035】
前記ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。前記飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられるが、これらの中でも、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。前記飽和脂肪族ジオールが分岐型であると、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が低下してしまうことがある。また、前記飽和脂肪族ジオールの炭素数が12を超えると、実用上の材料の入手が困難となる。
【0036】
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましい。
【0037】
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記多価カルボン酸としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。
【0039】
前記2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;などが挙げられる。更に、これらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルも挙げられる。中でも、カーボンニュートラルの観点から、植物由来の炭素数が12以下の飽和脂肪族が好ましい。
【0040】
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4~12の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールとから構成されることが好ましい。これにより、結晶性が高く、シャープメルト性に優れた結晶性ポリエステル樹脂が得られるため、優れた低温定着性を発揮できる。
【0042】
また、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性および軟化点を制御する方法として、ポリエステル合成時にアルコール成分としてグリセリン等の3価以上の多価アルコールや、酸成分として無水トリメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸を追加して縮重合を行った非線状ポリエステル等を設計、使用するなどの方法が挙げられる。
【0043】
結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液や固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1もしくは990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを例としてあげることができる。
【0044】
結晶性ポリエステルの分子量については、分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が悪化する。鋭意検討した結果、o-ジクロロベンゼンの可溶分のGPCによる分子量分布で、横軸をlog(M)、縦軸を重量%で表した分子量分布図のピーク位置が3.5~4.0の範囲にあり、ピークの半値幅が1.5以下であり、重量平均分子量(Mw)で3,000~30,000、数平均分子量(Mn)で1,000~10,000、Mw/Mnが1~10であることが好ましい。更には、重量平均分子量(Mw)で5,000~15,000、数平均分子量(Mn)で2,000~10,000、Mw/Mnが1~5であることが好ましい。
【0045】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、紙と樹脂との親和性の観点から、目的とする低温定着性を達成するためにはその酸価が5mgKOH/g以上、転相乳化法による微粒子の作製のためには、7mgKOH/g以上であることがより好ましい。一方、耐ホットオフセット性を向上させるには45mgKOH/g以下のものであることが好ましい。
【0046】
結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は、所定の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには0~50mgKOH/g、より好ましくは5~50mgKOH/gのものが好ましい。
【0047】
<着色剤>
本発明における着色剤としては公知の染料及び顔料が使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。
【0048】
<有機溶媒>
有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、沸点が100℃未満の揮発性溶媒であることが、後の有機溶媒除去が容易になる点から好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。有機溶媒中に溶解あるいは分散させる樹脂がポリエステル骨格を有する樹脂である場合、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系の溶媒もしくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系の溶媒を用いた方が、溶解性が高く好ましい。これらの中では、溶媒除去性の高い酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトンが特に好ましい。
【0049】
<プレポリマー>
本発明として、プレポリマーを含んでいてもよい。反応性前駆体としては、活性水素基と反応可能な基を持つポリエステルが挙げられる。前記活性水素基と反応可能な基としては、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、酸クロリド基などが挙げられる。これらの中でも、前記非晶質ポリエステル樹脂にウレタン結合又はウレア結合を導入可能な点で、イソシアネート基が好ましい。
【0050】
前記反応性前駆体は、3価以上のアルコール及び3価以上のカルボン酸の少なくともいずれかによって付与される分岐構造を有していても良い。
【0051】
前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂としては、例えば、活性水素基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートとの反応生成物などが挙げられる。前記活性水素基を有するポリエステル樹脂は、例えば、ジオールと、ジカルボン酸と、3価以上のアルコール及び3価以上のカルボン酸の少なくともいずれかと重縮合することにより得られる。前記3価以上のアルコール及び前記3価以上のカルボン酸は、前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂に分岐構造を付与する。
【0052】
前記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の脂肪族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン基を有するジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂のガラス転移点を20℃以下に制御する観点から、例えば、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等の炭素数3以上10以下の脂肪族ジオールを使用することが好ましく、樹脂中のアルコール成分の50mol%以上使用することがより好ましい。これらのジオールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
前記ポリエステル樹脂は非晶質ポリエステル樹脂であることが望ましく、また、樹脂鎖に立体障害を持たせることで定着時の溶融粘度が低下し、低温定着性がより発現しやすくなる。このため、前記脂肪族ジオールの主鎖は下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
【化1】
[式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、nは3~9の奇数を表す。但し、n個の繰り返し単位において、R
1及びR
2はそれぞれ同じであっても異なっていても良い。]
【0054】
ここで、本発明における前記脂肪族ジオールの主鎖とは、前記脂肪族ジオールが有する二つのヒドロキシル基間を最短数で結ばれた炭素鎖のことである。前記主鎖の炭素数は奇数である場合、偶奇性により結晶性が低下するので好ましい。また、少なくとも1つ以上の炭素数1~3のアルキル基を側鎖に有する場合、立体性により主鎖分子間の相互作用エネルギーが低下するのでより好ましい。
【0055】
前記ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。また、これらの無水物や低級(炭素数1~3)アルキルエステル化物、ハロゲン化物を用いても良い。これらの中でも、ポリエステル樹脂のTgを20℃以下に制御する観点から、炭素数4以上12以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、樹脂中のカルボン酸成分の50質量%以上使用することがより好ましい。これらのジカルボン酸は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0056】
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の3価以上の脂肪族アルコール;トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の3価以上のポリフェノール類;3価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等の3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0057】
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、3価以上の芳香族カルボン酸などが挙げられ、特にはトリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数9以上20以下の3価以上の芳香族カルボン酸が好ましい。また、これらの無水物や、低級(炭素数1~3)アルキルエステル化物、ハロゲン化物を用いても良い。
【0058】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、ジイソシアネート、3価以上のイソシアネートなどが挙げられる。
【0059】
前記ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,3-及び/又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-及び/又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4'-及び/又は4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI[粗製ジアミノフェニルメタン〔ホルムアルデヒドと芳香族アミン(アニリン)又はその混合物との縮合生成物;ジアミノジフェニルメタンと少量(たとえば5~20質量%)の3官能以上のポリアミンとの混合物〕のホスゲン化物:ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)]、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4',4"-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-及びp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-及び2,6-ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;m-及びp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α',α'-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香脂肪族ジイソシアネート;リジントリイソシアネート、3価以上のアルコールのジイソシアネート変性物等の3価以上のポリイソシアネート;これらのイソシアネートの変性物が挙げられ、これらの2種以上の混合物であっても良い。前記イソシアネートの変性物としては、例えば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物などが挙げられる。
【0060】
本実施形態に係るトナーの製造において、帯電制御剤、離型剤等を添加してもよい。
【0061】
<帯電制御剤>
帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、四級アンモニウム塩(フッ素変性四級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。
【0062】
具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP-51、含金属アゾ染料のボントロンS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE-82、サリチル酸系金属錯体のE-84、フェノール系縮合物のE-89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
帯電制御剤は性能を発現し定着性などへの阻害がない範囲の量で用いられればよく、トナー中に0.5~5質量%、好ましくは0.8~3質量%含まれるのが良い。
【0064】
<離型剤>
離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、融点が50℃~120℃の低融点の離型剤が好ましい。低融点の離型剤は、前記樹脂と分散されることにより、効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これによりオイルレス(定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布しない)でも耐ホットオフセット性が良好となる。
【0065】
離型剤としては、例えば、ロウ類、ワックス類、等が好適に挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス;などの天然ワックスが挙げられる。また、これら天然ワックスのほか、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;などが挙げられる。更に、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ-n-ステアリルメタクリレート、ポリ-n-ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子、などを用いてもよい。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
ワックスの溶融粘度としては、該ワックスの融点より20℃高い温度での測定値として、5cps~1,000cpsが好ましく、10cps~100cpsがより好ましい。溶融粘度が、5cps以上であれば、離型性の低下を防止でき、1,000cps以下であれば、耐ホットオフセット性、低温定着性の効果が十分発揮できる。ワックスの前記トナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0質量%~40質量%が好ましく、3質量%~30質量%がより好ましい。
【0067】
<トナーの製造方法>
本実施形態に係るトナーの製造方法について詳細に説明する。本実施形態に係るトナーの製造方法は、油相作製工程、水相作製工程、転相乳化工程、脱溶媒工程、凝集工程及び融着工程を含み、更に必要に応じて、シェル化工程、洗浄工程、乾燥工程、アニーリング工程及び外添工程等のその他の工程を含む。
【0068】
[油相作製工程]
油相作製工程では、まず有機溶媒中に、前記トナーの原料である、結着樹脂(非晶質ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂等)、更に必要に応じて、着色剤、プレポリマー、帯電制御剤、離型剤等の材料等を溶解又は分散させて、油相を調製する。なお、前記材料の一部は後述する凝集工程で添加してもよい。
【0069】
油相の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶媒中に、撹拌しながら、樹脂等の原料を徐々に添加し、溶解又は分散させる方法等が挙げられる。分散に際しては、公知のものが使用でき、例えば、ビーズミル及びディスクミル等の分散機を用いることができる。
【0070】
有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、沸点が100℃未満の揮発性溶媒であることが、後の有機溶媒除去が容易になる点から好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコールが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。有機溶媒中に溶解又は分散させる樹脂がポリエステル骨格を有する樹脂である場合、有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、又はメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒が、溶解性が高い点で好ましい。これらの中でも、有機溶媒としては、溶媒除去性が高い、酢酸メチル、酢酸エチル又はメチルエチルケトンが好ましい。
【0071】
有機溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂粒子の原料100質量部に対し、40質量部以上300質量部以下が好ましく、60質量部以上140質量部以下がより好ましく、80質量部以上120質量部以下が更に好ましい。
【0072】
[水相調製工程]
水相調製工程では、水相(水系媒体)を調製する。
【0073】
水系媒体としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶剤、又はこれらの混合物が挙げられる。有機溶剤濃度は、造粒性の点からイオン交換水に対する飽和濃度以下であることが好ましい。
【0074】
水と混和可能な溶剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類又はエステル類等が挙げられる。
【0075】
アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、又はエチレングリコール等が挙げられる。
【0076】
低級ケトン類としては、例えば、アセトン、又はメチルエチルケトンが挙げられる。
【0077】
エステル類としては、例えば、酢酸エチルが挙げられる。
【0078】
これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
[転相乳化工程]
転相乳化工程では、油相作製工程で得られた油相を微粒子化する。
【0080】
油相を中和した後、中和した油相にイオン交換水を添加していき、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる転相乳化によって着色微粒子分散液を得る。
【0081】
転相乳化は、通常の撹拌機や、分散装置を用いて均一に混合、分散させながら行う。
【0082】
撹拌翼としては、特に制限はなく、溶液の粘度に応じて適宜選択ができる。例として、パドルやプロペラ等の低粘度撹拌翼、アンカーやマックスブレンド等の中粘度撹拌翼、ヘリカルリボン等の高粘度撹拌翼があげられる。これらの中でも、分散体(油滴)の体積平均粒径を前記好ましい範囲に制御することができる点で、パドルやアンカーが好ましい。
【0083】
分散装置としては、特に限定は無く、超音波分散機、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ホモミキサー、ウルトラミキサー、ディスパーミキサー、貫通型高圧分散装置、衝突型高圧分散装置、多孔型高圧分散装置、超高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーなどが挙げられる。通常の撹拌機と分散装置は併用しても良い。
【0084】
前記油相を中和するための塩基としては、塩基性無機化合物、塩基性有機化合物のいずれを用いても良い。塩基性無機化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、アンモニアなどが挙げられる。塩基性有機化合物としては、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、イソプロピルアミン、モノメタノールアミン、モルホリン、メトキシプロピルアミン、ピリジン、ビニルピリジン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
【0085】
撹拌翼を用いた場合の、回転数、撹拌時間、及び撹拌温度等の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0086】
回転数としては、特に制限はなく、100rpm~1,000rpmが好ましく、200rpm~600rpmがより好ましい。
【0087】
撹拌時間及び撹拌温度は、特に制限されず、目的に応じて適宜任意に選択してよい。
【0088】
また、必要に応じて分散剤を使用してもかまわない。分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
【0089】
界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。
【0090】
陰イオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、フルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0091】
[脱溶媒工程]
脱溶媒工程では、得られた着色微粒子分散液から有機溶媒を除去する。
【0092】
得られた着色微粒子分散液から有機溶媒を除去するためには、系全体を撹拌しながら徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。
【0093】
または、得られた着色微粒子分散液を撹拌しながら乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の有機溶媒を完全に除去することも可能である。もしくは、着色微粒子分散液を撹拌しながら減圧し、有機溶媒を蒸発除去しても良い。
【0094】
これらの手段は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0095】
着色微粒子分散液が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレードライヤー、ベルトドライヤー、ロータリーキルンなどを用いた短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
【0096】
以上の方法で、有機溶媒が除去された着色微粒子分散液を得ることができる。
【0097】
[凝集工程]
得られた着色微粒子分散液を撹拌しながら任意の粒径になるまで凝集させて、凝集粒子を得る。
【0098】
凝集させるためには、凝集剤を添加、pH調整等、既存の方法が使用できる。凝集剤を添加する場合、そのまま添加してもよいが、凝集剤の水溶液にしたほうが局所的な高濃度化を避けることができるため好ましい。また、凝集塩は着色粒子の粒径を見ながら、徐々に添加することが好ましい。
【0099】
凝集時の分散液の温度は、使用する樹脂のガラス転移温度Tg付近であることが好ましい。着色微粒子分散液の液温が低すぎると凝集があまり進まないため効率が悪い。着色微粒子分散液の液温が高すぎると、凝集速度が速くなり、粗大粒子が発生する等、粒径分布が悪化する。
【0100】
狙いの粒径に達したら、凝集を停止させる。凝集を停止させる方法としては、イオン価数の低い塩やキレート剤を添加する方法や、pHを調整する方法、分散液の温度を下げる方法、水系媒体を多量に添加して濃度を薄める方法等が使用できる。
【0101】
以上の方法により、着色凝集粒子の分散液を得ることができる。
【0102】
凝集工程においては、離型剤や結晶性ポリエステル樹脂を添加してもよい。その場合、添加する材料を水系媒体に分散させた分散液や、前記着色微粒子分散液と混合した上で凝集させていくことで、均一に離型剤や結晶性樹脂が分散した凝集粒子を得ることができる。
【0103】
凝集剤としては、公知ものが使用できる。例えば、ナトリウム、カリウム等の1価の金属の金属塩や、カルシウム、マグネシウム等の2価の金属の金属塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の金属塩などが使用できる。
【0104】
[融着工程]
次に、得られた前記凝集粒子を熱処理によって融着させて凹凸を減らし、球形化を行う。融着は、着色凝集粒子の分散液を撹拌しながら加熱すればよい。液の温度は、使用している樹脂のガラス転移温度Tgを超えた温度付近が好ましい。
【0105】
[シェル化工程]
必要に応じて、シェル化を行ってもよい。シェル化工程では、融着工程で得られた球形化粒子にシェル層を形成する。
【0106】
シェル層を形成する方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。シェル層を形成する方法としては、例えば、融着工程で目的とする粒径の球形化した粒子を作製した後、非晶性樹脂を添加し、凝集工程及び融着工程を繰り返すことで、シェル層を形成する方法等が挙げられる。
【0107】
以上の方法により、トナーの分散液を得ることができる。
【0108】
[洗浄・乾燥工程]
上記の方法で得られたトナーの分散液には、トナーのほかに凝集塩などの副材料が含まれているため、分散液からトナーのみを取り出すために洗浄を行う。
【0109】
トナーの洗浄方法としては、遠心分離法、減圧濾過法、フィルタープレス法などの方法があるが、本発明においては特に限定されるものではない。いずれの方法によってもトナーのケーキ体が得られるが、一度の操作で十分に洗浄できない場合は、得られたケーキを再度水系溶媒に分散させてスラリーにして上記のいずれかの方法でトナーを取り出す工程を繰り返しても良い。また、減圧濾過法やフィルタープレス法によって洗浄を行うのであれば、水系溶媒をケーキに貫通させてトナーが抱き込んだ副材料を洗い流す方法を採っても良い。
【0110】
洗浄に用いる水系溶媒は水あるいは水にメタノール、エタノールなどのアルコールを混合した混合溶媒を用いるが、コストや排水処理などによる環境負荷を考えると、水を用いるのが好ましい。
【0111】
洗浄されたトナーは水系媒体を多く抱き込んでいるため、乾燥して水系媒体を除去することでトナーのみを得ることができる。
【0112】
乾燥方法としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動槽乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などの乾燥機を使用することができる。
【0113】
乾燥されたトナーは最終的に水分が1%未満になるまで乾燥を行うのが好ましい。また、乾燥後のトナーは軟凝集をしており使用に際して不都合が生じる場合には、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、コーヒーミル、オースターブレンダー、フードプロセッサーなどの装置を利用して解砕を行い、軟凝集をほぐしても良い。
【0114】
[アニーリング工程]
結晶性樹脂を添加した場合、乾燥後にアニーリング処理を行うことで、非結晶性樹脂と結晶性樹脂とが相分離し、定着性が向上する。具体的には、Tg付近の温度で10時間以上保管すればよい。
【0115】
[外添工程]
本実施形態で得られたトナーには、流動性、帯電性、クリーニング性などを持たせるために、無期微粒子や高分子系微粒子、クリーニング助剤などを添加、混合してもよい。
【0116】
具体的な混合手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。
【0117】
装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
【0118】
(外添剤)
無機微粒子の一次粒子径は、5nm~2μmであることが好ましく、特に5nm~500nmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20~500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01~5質量%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
【0119】
高分子系微粒子としては、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0120】
このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコンオイル、変性シリコンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
【0121】
本実施形態に係るトナーは、現像剤、トナーセット、トナー収容ユニット及び画像形成装置等の画像形成用の材料として有効に用いることができる。
【0122】
本実施形態に係るトナーを用いることで、環境負荷が抑えられ、植物由来樹脂を用いても、低温定着性及び帯電性に優れ、優れた画像品質を有する画像を提供することができる。
【0123】
<現像剤>
本実施形態に係る現像剤は、一実施形態に係るトナーを含み、必要に応じてキャリア等の適宜選択されるその他の成分を含むことができる。これにより、転写性、帯電性等に優れ、高画質な画像を安定して形成することができる。
【0124】
現像剤は、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上の点から、二成分現像剤であることが好ましい。
【0125】
本実施形態に係るトナーを一成分現像剤に用いる場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミング及びトナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着が少なく抑えられ、現像装置において高画質な画像が得られる。
【0126】
本実施形態に係る現像剤を二成分現像剤に用いる場合には、キャリアと混合して現像剤として用いることができる。一実施形態に係るトナーを二成分現像剤として用いる場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0127】
二成分現像剤中のキャリアの含有量は、目的に応じて適宜選択することができるが、二成分現像剤100質量部に対して、90質量部~98質量部が好ましく、93質量部~97質量部がより好ましい。
【0128】
本実施形態に係る現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。
【0129】
[キャリア]
キャリアは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層(被覆層)とを有するものであることが好ましい。
【0130】
(芯材)
芯材の材料は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50emu/g~90emu/gのマンガン-ストロンチウム系材料、50emu/g~90emu/gのマンガン-マグネシウム系材料等が挙げられる。また、画像濃度を確保するためには、100emu/g以上の鉄粉、75emu/g~120emu/gのマグネタイト等の高磁化材料を用いることが好ましい。また、穂立ち状態となっている現像剤の感光体に対する衝撃を緩和でき、高画質化に有利であることから、30emu/g~80emu/gの銅-亜鉛系等の低磁化材料を用いることが好ましい。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0131】
芯材の体積平均粒径は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm~150μmが好ましく、40μm~100μmがより好ましい。体積平均粒径が10μm以上であれば、キャリア中に微粉が多くなり、一粒子当たりの磁化が低下してキャリアの飛散が生じることがあるという問題を有効に防止できる。一方、150μm以下であれば、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがあるという問題を有効に防止することができる。
【0132】
(樹脂層)
樹脂層は、樹脂及び必要に応じてその他の成分を含有することができる。樹脂層に用いられる樹脂としては、必要な帯電性を付与できる公知の材料を使用できる。具体的にはシリコーン樹脂、アクリル樹脂、又はこれらを併用して使用することが好ましい。また樹脂層を形成するための組成物は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
【0133】
樹脂層の平均膜厚は、0.05~0.50μmであることが好ましい。
【0134】
<測定方法>
[離型剤の偏在]
作製したトナーをエポキシ系樹脂に包埋して硬化させる。ウルトラミクロトーム(Leica社製 ULTRACUT UCT 、ダイヤナイフ使用)でトナーの超薄切片(100nm厚さ前後)を作製する。
【0135】
四酸化ルテニウム、あるいは四酸化オスミウム、あるいは別の染色剤で試料をガス暴露し、離型剤とそれ以外の部分に識別染色する。暴露時間は観察時のコントラストにより適宜調整する。結晶性ポリエステル樹脂相はラメラ構造が観察される場合が多い。その後透過型電子顕微鏡(JEM-2100 JEOL社製)により加速電圧100kVで観察する。なお離型剤と非晶性ポリエステル樹脂の組成により、未染色で識別可能な場合もあり、その場合は未染色で評価する。また選択エッチング等別の手段で組成コントラストを付与することも可能で、そのような前処理後に透過型顕微鏡で観察してもよい。
【0136】
離型剤と非晶性ポリエステル樹脂の識別が可能であればTEM以外の装置での観察も可能である。例えば、走査型電子顕微鏡(SU-8230 日立社製)でも可能である。
【0137】
[離型剤の分散径]
観察した断面像は市販の画像処理ソフト(例えばImage-Pro Plus、ImageJ等)を利用して2値化処理等により、離型剤の最大長および投影面積を算出する。トナー断面はトナーの粒径がDv±20%であるトナー20個以上のトナー断面を観察し、各離型剤粒子の最大長の平均を求める。各離型剤粒子の平均は離型剤粒子の最大長の上限10%および下限10%を除き、算出する。離型剤の分散径は、3μm未満が好ましく、2μm未満がより好ましく、1μm未満が更に好ましい。
【0138】
<画像形成装置>
次に、本発明の画像形成装置により画像を形成する方法を実施する一の態様について、
図1を参照しながら説明する。本実施形態の画像形成装置としては、プリンタが例として示されているが、画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、複合機等のトナーを用いて画像を形成することが可能であれば、特に限定されない。
【0139】
画像形成装置は、給紙部210と、搬送部220と、作像部230と、転写部240と、定着器250とを備えている。
【0140】
給紙部210は、給紙される紙Pが積載された給紙カセット211と、給紙カセット211に積載された紙Pを一枚ずつ給紙する給紙ローラ212を備えている。
【0141】
搬送部220は、給紙ローラ212により給紙された紙Pを転写部240の方向へ搬送するローラ221と、ローラ221により搬送された紙Pの先端部を挟み込んで待機し、紙を所定のタイミングで転写部240に送り出す一対のタイミングローラ222と、カラートナー像が定着した紙Pを排紙トレイ224に排出する排紙ローラ223を備えている。
【0142】
作像部230は、所定の間隔をおいて、図中、左方から右方に向かって順に、イエロートナーを有した現像剤を用いて画像を形成する画像形成ユニットYと、シアントナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニットCと、マゼンタトナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニットMと、ブラックトナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニットKと、露光器233を備えている。
【0143】
なお、画像形成ユニット(Y,C,M,K)のうち、任意の画像形成ユニットを示す場合には、画像形成ユニットという。
【0144】
また、現像剤は、トナーとキャリアを有する。4つの画像形成ユニット(Y,C,M,
K)は、それぞれに用いられる現像剤が異なるのみで、機械的な構成は実質的に同一である。
【0145】
転写部240は、駆動ローラ241及び従動ローラ242と、駆動ローラ241の駆動に伴い、図中、反時計回りに回転することが可能な中間転写ベルト243と、中間転写ベルト243を挟んで、感光体ドラム231に対向して設けられた一次転写ローラ(244Y,244C,244M,244K)と、トナー像の紙への転写位置において中間転写ベルト243を挟んで対向して設けられた二次対向ローラ245及び二次転写ローラ246を備えている。
【0146】
定着器250は、ヒータが内部に設けられており、紙Pを加熱する定着ベルト251と、該定着ベルト251に対して回転可能に加圧することによりニップを形成する加圧ローラ252とを備えている。これにより、紙P上のカラートナー像に熱と圧力が印加されて、カラートナー像が定着する。カラートナー像が定着した紙Pは、排紙ローラ223により排紙トレイ224に排紙され、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0147】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【実施例0148】
以下に実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記実施例に何ら限定されるものではない。また、以下の記載においては特に明記しない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。
【0149】
<非晶質ポリエステル樹脂1の作製>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、ジオール成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド2mol付加物/ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3mol付加物(モル比50/50)、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸/アジピン酸(モル比80/20)、全モノマー量に対して3.5mol%のトリメチロールプロパンを、水酸基とカルボン酸のモル比(OH/COOH)が1.1となるように投入した。更に、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmを入れ、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、全モノマー量に対して1.0mol%の無水トリメリット酸と、全モノマー量に対して200ppmのオルトチタン酸テトラブチルを入れ、常圧にて180℃で1時間反応させた。その後、5mmHg~20mmHgの減圧下にて3時間反応させ、DSCによる昇温1回目のDSC曲線から求められるガラス転移点が55℃、重量平均分子量が10,000の非晶質ポリエステル樹脂1を得た。
【0150】
<結晶性ポリエステル樹脂C-1の合成>
冷却管、撹拌機、脱水管、熱電対及び窒素導入管を装備した反応槽中に、1、12-ドデカン二酸、及び1,6-ヘキサンジオールを、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.1、さらに無水トリメリット酸を0.047モル比となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に、180℃で10時間反応させた後、200℃に昇温して3時間反応させ、更に8.3kPaの圧力にて2時間反応させて結晶性ポリエステル樹脂C-1を得た。
【0151】
<スチレンアクリル樹脂の作製>
温度計および撹拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン620部、低分子量ポリプロピレン(三洋化成工業(株)製ビスコール660P)100部入れ充分溶解し、窒素置換後、スチレン755部、アクリロニトリル100部、アクリル酸ブチル45部、アクリル酸21部、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート36部およびキシレン100部の混合溶液を170℃で3時間かけて滴下して重合し、さらにこの温度で0.5時間保持した。 次いで、脱溶剤を行い、数平均分子量:3,300、重量平均分子量:18,000、ガラス転移点:65.0℃、ビニル系樹脂のSP値11.0(cal/cm3)1/2のスチレンアクリル樹脂を得た。
【0152】
<離型剤分散液W-1の作製>
撹拌棒、及び温度計をセットした容器にHNP-9(日本精蝋製)300部、及び酢酸エチル1,200部で仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、30℃まで冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散した。ここで、冷却時の離型剤が析出し始めるまでの降温速度(以下、降温速度A)は1.8℃/min、離型剤が完全に析出し終わるまでの降温速度(以下、降温速度B)は1.0℃/minに制御した。
その後、酢酸エチルを脱溶剤して得られた離型剤180部、イオン交換水720部に界面活性剤としてアニオン系界面活性剤17部(第一工業製薬製、ネオゲンSC、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を添加した。これを90℃に加熱しながらホモジナイザーで分散処理し、離型剤分散液W-1を得た。得られたワックス分散液の固形分濃度は20%に調整した。
【0153】
<離型剤分散液W-2の作製>
撹拌棒、及び温度計をセットした容器にHNP-9(日本精蝋製)300部、非晶質ポリエステル樹脂1(300部)、及び酢酸エチル900部で仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、30℃まで冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散を行い、離型剤分散液W-2を得た。ここで、冷却時の降温速度Aは1.8℃/min、降温速度Bは1.0℃/minに制御した。
【0154】
<離型剤分散液W-3の作製>
撹拌棒、及び温度計をセットした容器にHNP-9(日本精蝋製)400部、スチレンアクリル樹脂200部、及び酢酸エチル900部で仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、30℃まで冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散を行い、離型剤分散液W-3を得た。ここで、冷却時の降温速度Aは1.8℃/min、降温速度Bは1.0℃/minに制御した。
【0155】
<離型剤分散液W-4の作製>
撹拌棒、及び温度計をセットした容器にHNP-9(日本精蝋製)240部、非晶質ポリエステル樹脂1(240部)、スチレンアクリル樹脂120部、及び酢酸エチル900部で仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、30℃まで冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散を行い、離型剤分散液W-4を得た。ここで、冷却時の降温速度Aは1.8℃/min、降温速度Bは1.0℃/minに制御した。
【0156】
<離型剤分散液W-5の作製>
撹拌棒、及び温度計をセットした容器にHNP-9(日本精蝋製)300部、及び酢酸エチル1,200部で仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、30℃まで冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散を行い、離型剤分散液W-5を得た。ここで、冷却時の降温速度Aは1.8℃/min、降温速度Bは1.0℃/minに制御した。
【0157】
<離型剤分散液W-6の作製>
<離型剤分散液W-1の作製>において、冷却時の降温速度Bを0.8℃/minに変更した以外は同様にして、離型剤分散液W-6を作製した。
【0158】
<離型剤分散液W-7の作製>
<離型剤分散液W-5の作製>において、冷却時の降温速度Bを0.8℃/minに変更した以外は同様にして、離型剤分散液W-7を作製した。
【0159】
<着色剤マスターバッチMB-1の作製>
非晶質ポリエステル樹脂1とカーボンブラック(Printex35、デクサ社製)〔DBP吸油量=42mL/100mg、pH=9.5〕を1対1の割合で、へンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製、FM20B)を用いて予備混合した後、二軸混練機(株式会社池貝製、PCM-30)を用いて150℃の温度で溶融、混練した。 得られた混練物はローラにて2.7mmの厚さに圧延した後にベルトクーラーにて室温まで冷却し、ハンマーミルにて200μm~300μmに粗粉砕し、着色剤マスターバッチMB-1を得た。
【0160】
以下に説明する実施例における、各原料の使用量及び離型剤分散液の作製方法を表1に示す。なお、投入工程:「凝集」は、離型剤分散液を凝集工程で投入することを示し、投入工程:「油相」は、離型剤分散液を油相作製工程で投入することを示す。また、添加部数(部)は固形分を示す。
【0161】
【0162】
[実施例1]
<油相作製工程>
非晶質ポリエステル樹脂1(650部)、着色剤マスターバッチMB-1(200部)、結晶性ポリエステル樹脂C-1(50部)を容器に入れ、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)で5,000rpmで60分間混合し、油相1を得た。なお、上記配合量は、各原材料における固形分の配合量を示す。
【0163】
<水相作製工程>
水990部、ドデシル硫酸ナトリウム20部、及び酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを水相1とした。
【0164】
<乳化工程>
油相1(700部)をTKホモミキサーで、回転数8,000rpmで撹拌しながら28%アンモニア水20部を加え、10分間混合した後、水相1(1,200部)を徐々に滴下していき、乳化スラリー1を得た。
【0165】
<脱溶剤工程>
撹拌機及び温度計をセットした容器に、乳化スラリー1を投入し、30℃、180分間、脱溶剤した後、脱溶剤スラリー1を得た。
【0166】
<凝集工程>
脱溶剤スラリー1と離型剤分散液W-1(100部)を混合し、3%塩化マグネシウム溶液100部を滴下して更に5分撹拌した後、60℃に昇温し、粒径が5.0μmになったところで硫酸ナトリウム水溶液を50部添加して凝集工程を終了し、凝集スラリー1を得た。
【0167】
<融着工程>
凝集スラリー1を撹拌しながら70℃に加熱して、所望の平均円形度である0.96になったところで冷却し、分散スラリー1を得た。
【0168】
<洗浄・乾燥工程>
分散スラリー1(100部)を減圧濾過した後、
(1)濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2)(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3)(2)の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(4)(3)の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過する、
という前記(1)~(4)の操作を2回行い、濾過ケーキ1を得た。
濾過ケーキ1を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmのメッシュで篩い、樹脂粒子母体1を得た。
【0169】
<外添剤処理工程>
樹脂粒子母体1(100部)に対して、外添剤として疎水性シリカ(HDK-2000、クラリアント株式会社製)2.0部をヘンシェルミキサーにて混合し、目開き500メッシュの篩を通過させ、樹脂粒子1を得た。
【0170】
[実施例2~5、比較例2]
実施例1で、離型剤分散液を凝集工程ではなく、油相作製工程で追加し、表1に記載の各材料および添加部数(固形分)で追加した以外は樹脂粒子1と同様に作製し、樹脂粒子2~5、7を得た。
【0171】
[比較例1]
実施例1で、離型剤分散液W-1を離型剤分散液W-6に変更した以外は樹脂粒子1と同様に作製し、樹脂粒子6を得た。
【0172】
これらの樹脂粒子の離型剤の偏在状態、離型剤分散径、定着上限の評価を行った結果を表2に示す。
【0173】
【0174】
(評価方法)
<離型剤の偏在>
樹脂粒子中に離型剤の偏在があるかどうかを評価する。
〔評価基準〕
◎: 全体が均一
〇: 一部に偏在あり
△: 1~3割偏在している
×: 5割以上偏在している、もしくは製造中に離型剤の離脱がみられる
【0175】
<樹脂粒子中の離型剤分散径>
樹脂粒子中の離型剤の分散径を評価する。
〔評価基準〕
◎:1μm未満
〇:1μm以上2μm未満
△:2μm以上3μm未満
×:3μm以上
【0176】
<定着ホットオフセット>
imageo MP C5503(株式会社リコー製)に使用されているキャリアと上記で得られた樹脂粒子とを、樹脂粒子の濃度が5質量%となるように混合し、現像剤を得た。
imageo MP C5503(株式会社リコー製)のユニットに現像剤を投入した後、PPC用紙タイプ6000<70W>A4 T目(株式会社リコー製)に2cm×15cmの長方形のベタ画像を樹脂粒子の付着量が0.40mg/cm2となるように形成した。このとき、定着ローラの表面温度を変化させ、ベタ画像の現像残画像が所望の場所以外の場所に定着されるホットオフセットが発生するかどうかを観察し、定着上限を評価した。
〔評価基準〕
◎:160℃以上でホットオフセットが発生
〇:150℃以上160℃未満でホットオフセットが発生
△:140℃以上150℃未満でホットオフセットが発生
×:140℃未満でホットオフセットが発生