(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155283
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】硫黄酸化物含有ガスの処理方法、および、亜硫酸カルシウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20241024BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20241024BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20241024BHJP
C01F 11/48 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/50 200
B01D53/78 ZAB
B01D53/14 220
C01F11/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069888
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 勝
(72)【発明者】
【氏名】張本 崇良
(72)【発明者】
【氏名】チャトロン ヨンシリ
(72)【発明者】
【氏名】青木 健治朗
(72)【発明者】
【氏名】境 徹浩
(72)【発明者】
【氏名】武永 計介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴康
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G076
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AC01
4D002AC03
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA01
4D002CA02
4D002CA04
4D002CA07
4D002DA05
4D002DA12
4D002DA16
4D002DA17
4D002DA18
4D002DA70
4D002EA13
4D002FA02
4D002GA01
4D002GB09
4D020AA06
4D020BA02
4D020BA07
4D020BA08
4D020BA09
4D020BA11
4D020BB03
4D020BC06
4D020CB08
4D020CB18
4D020CB25
4D020CB28
4D020DA03
4D020DB08
4G076AA14
4G076AB01
4G076BA28
4G076BE12
4G076DA29
(57)【要約】
【課題】硫黄酸化物含有ガスを、カルシウムを含有する吸収液と接触させて脱硫する方法であって、吸収液に吸収させた硫黄酸化物を亜硫酸カルシウムとして析出させて効果的に回収または除去することができる処理方法を提供する。
【解決手段】下部に吸収液24が保持された貯留部6を有し、上部に吸収液供給部5を有し、貯留部6の吸収液24を吸収液供給部5に返送する返送ライン7を備えた吸収塔2と、カルシウム含有液23が保持された薬液槽9とを有する脱硫装置1を用いた硫黄酸化物含有ガスの処理方法であって、硫黄酸化物含有ガス21を吸収塔2に導入して、吸収液供給部5から供給された吸収液24と接触させる工程と、硫黄酸化物が吸収された吸収液24を薬液槽9に移送してカルシウム含有液23に加え、薬液槽9に保持されたカルシウム含有液23を貯留部6に移送して吸収液24に加えることにより、亜硫酸カルシウムを析出させる工程とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に吸収液が保持された貯留部を有し、上部に吸収液供給部を有し、前記貯留部の吸収液を前記吸収液供給部に返送する返送ラインを備えた吸収塔と、
カルシウム化合物(ただし硫酸カルシウムと亜硫酸カルシウムを除く)の供給手段が接続され、カルシウム含有液が保持された薬液槽と、
前記薬液槽のカルシウム含有液を前記貯留部に移送する薬液供給ラインと、
前記貯留部の吸収液を前記薬液槽に移送する吸収液抜き出しラインと
を有する脱硫装置を用いた硫黄酸化物含有ガスの処理方法であって、
硫黄酸化物含有ガスを前記吸収塔に導入して、前記吸収液供給部から供給された吸収液と接触させ、前記硫黄酸化物含有ガスに含まれる硫黄酸化物の少なくとも一部を前記吸収液に吸収させる工程と、
前記貯留部に貯まった前記硫黄酸化物が吸収された吸収液を、前記吸収液抜き出しラインを通して前記薬液槽に移送して前記カルシウム含有液に加えるとともに、前記薬液槽に保持された前記カルシウム含有液を、前記薬液供給ラインを通して前記貯留部に移送して前記吸収液に加えることにより、亜硫酸カルシウムを析出させる工程と
を有することを特徴とする硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
【請求項2】
下部に吸収液が保持された貯留部を有し、上部に吸収液供給部を有し、前記貯留部の吸収液を前記吸収液供給部に返送する返送ラインを備えた吸収塔と、
カルシウム化合物(ただし硫酸カルシウムと亜硫酸カルシウムを除く)の供給手段が接続され、カルシウム含有液が保持された薬液槽と、
前記薬液槽のカルシウム含有液を前記貯留部に移送する薬液供給ラインと、
前記吸収液供給部から供給され前記貯留部に達する前の吸収液の一部を前記薬液槽に移送する吸収液抜き出しラインと
を有する脱硫装置を用いた硫黄酸化物含有ガスの処理方法であって、
硫黄酸化物含有ガスを前記吸収塔に導入して、前記吸収液供給部から供給された吸収液と接触させ、前記硫黄酸化物含有ガスに含まれる硫黄酸化物の少なくとも一部を前記吸収液に吸収させる工程と、
前記硫黄酸化物が吸収され前記貯留部に達する前の前記吸収液を、前記吸収液抜き出しラインを通して前記薬液槽に移送して前記カルシウム含有液に加えるとともに、前記薬液槽に保持された前記カルシウム含有液を、前記薬液供給ラインを通して前記貯留部に移送して前記吸収液に加えることにより、亜硫酸カルシウムを析出させる工程と
を有することを特徴とする硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
【請求項3】
前記薬液槽に保持されたカルシウム含有液のpHが6.6以上8.5以下であり、
前記貯留部に保持された吸収液のpHが5.5以上6.5以下である請求項1または2に記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
【請求項4】
前記カルシウム化合物は、炭酸カルシウムまたは塩化カルシウムである請求項1または2に記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
【請求項5】
前記貯留部には、前記貯留部に保持された吸収液の水面から下方に延びる仕切り板が設けられ、前記貯留槽に保持された吸収液は、前記仕切り板を挟んだ一方側と他方側とで流通可能となっており、
前記薬液槽に保持された前記カルシウム含有液は、前記薬液供給ラインを通して前記貯留部に保持された吸収液の前記仕切り板を挟んだ前記一方側に供給される請求項1または2に記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
【請求項6】
前記貯留部に保持された吸収液の水面は、前記仕切り板を挟んだ前記一方側の面積が前記他方側の面積よりも狭い請求項5に記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
【請求項7】
前記仕切り板は、前記貯留部に保持された吸収液の水面より上方に傾斜部を有し、前記仕切り板の上端が、前記仕切り板を挟んだ前記他方側にある前記吸収液の水面の上方に位置する請求項5に記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
【請求項8】
前記薬液槽に保持されたカルシウム含有液のpHが6.6以上8.5以下であり、
前記貯留部の前記仕切り板を挟んだ前記他方側にある吸収液のpHが5.5以上6.5以下である請求項5に記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
【請求項9】
前記吸収液抜き出しラインは、前記吸収液抜き出しラインを流通する吸収液を冷却する冷却手段を備える請求項1または2に記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
【請求項10】
前記脱硫装置は、前記貯留部の吸収液を排出する吸収液排出ラインを有し、
前記吸収液排出ラインを通して、前記貯留部から亜硫酸カルシウムを含む前記吸収液を排出する工程をさらに有する請求項1または2に記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
【請求項11】
前記吸収液排出ラインには液体サイクロンが接続され、
前記貯留部から排出された亜硫酸カルシウムを含む前記吸収液を前記液体サイクロンに導入し、亜硫酸カルシウムを粗粒物と微粒物とに分離する工程と、
前記微粒物を前記吸収塔または前記薬液槽に返送する工程とをさらに有する請求項10に記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
【請求項12】
前記脱硫装置には、亜硫酸カルシウムを含む吸収液を一時貯留する貯留槽が設けられ、
前記貯留部から排出された亜硫酸カルシウムを含む前記吸収液を前記貯留槽に導入し、前記貯留槽で一時貯留することにより亜硫酸カルシウムを結晶成長させる工程をさらに有する請求項1または2に記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
【請求項13】
前記脱硫装置は、亜硫酸カルシウムを硫酸カルシウムに酸化する酸化手段を備えない請求項1または2に記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
【請求項14】
請求項1または2に記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法により亜硫酸カルシウムを得ることを特徴とする亜硫酸カルシウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄酸化物含有ガスを吸収塔に導入して、カルシウムを含有する吸収液と接触させて脱硫を行う硫黄酸化物含有ガスの処理方法に関する。本発明はまた、本発明の硫黄酸化物含有ガスの処理方法により亜硫酸カルシウムを得る亜硫酸カルシウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硫黄酸化物含有ガスの処理方法として、カルシウムやマグネシウムを含有する吸収液と接触させて脱硫する方法が知られている(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭51-2319号公報
【特許文献2】特開昭52-81068号公報
【特許文献3】特表平10-504238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
硫黄酸化物含有ガスの処理方法として、特許文献1に開示されるように、硫黄酸化物含有ガスを、カルシウムを含有する吸収液と接触させて、硫黄酸化物を亜硫酸カルシウムとして回収する方法が知られている。このように硫黄酸化物を亜硫酸カルシウムとして回収する場合、吸収液中で亜硫酸カルシウムをできるだけ大きな結晶として析出させ、固形物として回収することが容易になることが望ましい。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、硫黄酸化物含有ガスを、カルシウムを含有する吸収液と接触させて脱硫する方法であって、吸収液に吸収させた硫黄酸化物を亜硫酸カルシウムとして析出させて効果的に回収または除去することができる硫黄酸化物含有ガスの処理方法を提供することにある。本発明はまた、亜硫酸カルシウムの製造方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決することができた本発明の硫黄酸化物含有ガスの処理方法と亜硫酸カルシウムの製造方法は下記の通りである。
[1] 下部に吸収液が保持された貯留部を有し、上部に吸収液供給部を有し、前記貯留部の吸収液を前記吸収液供給部に返送する返送ラインを備えた吸収塔と、
カルシウム化合物(ただし硫酸カルシウムと亜硫酸カルシウムを除く)の供給手段が接続され、カルシウム含有液が保持された薬液槽と、
前記薬液槽のカルシウム含有液を前記貯留部に移送する薬液供給ラインと、
前記貯留部の吸収液を前記薬液槽に移送する吸収液抜き出しラインと
を有する脱硫装置を用いた硫黄酸化物含有ガスの処理方法であって、
硫黄酸化物含有ガスを前記吸収塔に導入して、前記吸収液供給部から供給された吸収液と接触させ、前記硫黄酸化物含有ガスに含まれる硫黄酸化物の少なくとも一部を前記吸収液に吸収させる工程と、
前記貯留部に貯まった前記硫黄酸化物が吸収された吸収液を、前記吸収液抜き出しラインを通して前記薬液槽に移送して前記カルシウム含有液に加えるとともに、前記薬液槽に保持された前記カルシウム含有液を、前記薬液供給ラインを通して前記貯留部に移送して前記吸収液に加えることにより、亜硫酸カルシウムを析出させる工程と
を有することを特徴とする硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
[2] 下部に吸収液が保持された貯留部を有し、上部に吸収液供給部を有し、前記貯留部の吸収液を前記吸収液供給部に返送する返送ラインを備えた吸収塔と、
カルシウム化合物(ただし硫酸カルシウムと亜硫酸カルシウムを除く)の供給手段が接続され、カルシウム含有液が保持された薬液槽と、
前記薬液槽のカルシウム含有液を前記貯留部に移送する薬液供給ラインと、
前記吸収液供給部から供給され前記貯留部に達する前の吸収液の一部を前記薬液槽に移送する吸収液抜き出しラインと
を有する脱硫装置を用いた硫黄酸化物含有ガスの処理方法であって、
硫黄酸化物含有ガスを前記吸収塔に導入して、前記吸収液供給部から供給された吸収液と接触させ、前記硫黄酸化物含有ガスに含まれる硫黄酸化物の少なくとも一部を前記吸収液に吸収させる工程と、
前記硫黄酸化物が吸収され前記貯留部に達する前の前記吸収液を、前記吸収液抜き出しラインを通して前記薬液槽に移送して前記カルシウム含有液に加えるとともに、前記薬液槽に保持された前記カルシウム含有液を、前記薬液供給ラインを通して前記貯留部に移送して前記吸収液に加えることにより、亜硫酸カルシウムを析出させる工程と
を有することを特徴とする硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
[3] 前記薬液槽に保持されたカルシウム含有液のpHが6.6以上8.5以下であり、前記貯留部に保持された吸収液のpHが5.5以上6.5以下である[1]または[2]に記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
[4] 前記カルシウム化合物は、炭酸カルシウムまたは塩化カルシウムである[1]~[3]のいずれかに記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
[5] 前記貯留部には、前記貯留部に保持された吸収液の水面から下方に延びる仕切り板が設けられ、前記貯留槽に保持された吸収液は、前記仕切り板を挟んだ一方側と他方側とで流通可能となっており、前記薬液槽に保持された前記カルシウム含有液は、前記薬液供給ラインを通して前記貯留部に保持された吸収液の前記仕切り板を挟んだ前記一方側に供給される[1]~[4]のいずれかに記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
[6] 前記貯留部に保持された吸収液の水面は、前記仕切り板を挟んだ前記一方側の面積が前記他方側の面積よりも狭い[5]に記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
[7] 前記仕切り板は、前記貯留部に保持された吸収液の水面より上方に傾斜部を有し、前記仕切り板の上端が、前記仕切り板を挟んだ前記他方側にある前記吸収液の水面の上方に位置する[5]または[6]に記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
[8] 前記薬液槽に保持されたカルシウム含有液のpHが6.6以上8.5以下であり、前記貯留部の前記仕切り板を挟んだ前記他方側にある吸収液のpHが5.5以上6.5以下である[5]~[7]のいずれかに記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
[9] 前記吸収液抜き出しラインは、前記吸収液抜き出しラインを流通する吸収液を冷却する冷却手段を備える[1]~[8]のいずれかに記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
[10] 前記脱硫装置は、前記貯留部の吸収液を排出する吸収液排出ラインを有し、前記吸収液排出ラインを通して、前記貯留部から亜硫酸カルシウムを含む前記吸収液を排出する工程をさらに有する[1]~[9]のいずれかに記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
[11] 前記吸収液排出ラインには液体サイクロンが接続され、
前記貯留部から排出された亜硫酸カルシウムを含む前記吸収液を前記液体サイクロンに導入し、亜硫酸カルシウムを粗粒物と微粒物とに分離する工程と、
前記微粒物を前記吸収塔または前記薬液槽に返送する工程とをさらに有する[10]に記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
[12] 前記脱硫装置には、亜硫酸カルシウムを含む吸収液を一時貯留する貯留槽が設けられ、
前記貯留部から排出された亜硫酸カルシウムを含む前記吸収液を前記貯留槽に導入し、前記貯留槽で一時貯留することにより亜硫酸カルシウムを結晶成長させる工程をさらに有する[1]~[11]のいずれかに記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
[13] 前記脱硫装置は、亜硫酸カルシウムを硫酸カルシウムに酸化する酸化手段を備えない[1]~[12]のいずれかに記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法。
[14] [1]~[13]のいずれかに記載の硫黄酸化物含有ガスの処理方法により亜硫酸カルシウムを得ることを特徴とする亜硫酸カルシウムの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の硫黄酸化物含有ガスの処理方法によれば、硫黄酸化物含有ガスを、カルシウムを含有する吸収液と接触させ、吸収液に吸収させた硫黄酸化物を亜硫酸カルシウムとして析出させて効果的に回収または除去することができる。また、本発明の亜硫酸カルシウムの製造方法によれば、硫黄酸化物含有ガスから亜硫酸カルシウムを効果的に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明で用いられる脱硫装置の構成例を表す。
【
図2】本発明で用いられる脱硫装置の他の構成例を表す。
【
図3】本発明で用いられる脱硫装置の他の構成例を表す。
【
図4】本発明で用いられる脱硫装置の他の構成例を表す。
【
図5】脱硫装置の吸収塔の貯留部以降の構成例を表す。
【
図6】脱硫装置の吸収塔の貯留部以降の他の構成例を表す。
【
図7】脱硫装置の吸収塔の貯留部以降の他の構成例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、硫黄酸化物含有ガスを吸収塔に導入してカルシウムを含有する吸収液と接触させて脱硫を行う硫黄酸化物含有ガスの処理方法であって、吸収液に吸収させた硫黄酸化物を亜硫酸カルシウムとして析出させて回収または除去する方法に関するものである。
【0010】
本発明の硫黄酸化物含有ガスの処理方法について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1および
図2には、本発明で用いられる脱硫装置の構成例が示されている。なお、本発明は図面に示された実施態様に限定されるものではない。
【0011】
本発明の硫黄酸化物含有ガスの処理方法は、硫黄酸化物含有ガス21を吸収液24と接触させて脱硫を行う吸収塔2と、脱硫剤であるカルシウム含有液23が保持された薬液槽9とを有する脱硫装置1を用いるものである。薬液槽9に保持されたカルシウム含有液23を吸収液24に加え、硫黄酸化物含有ガス21を吸収塔2に導入して吸収液24と接触させることにより、硫黄酸化物含有ガス21に含まれる硫黄酸化物の少なくとも一部を吸収液24に吸収させ、脱硫することができる。
【0012】
吸収塔2に導入する硫黄酸化物含有ガス21は、硫黄酸化物を含有するものであれば特に限定されない。硫黄酸化物としては一酸化硫黄、二酸化硫黄、三酸化硫黄等が挙げられるが、少なくとも二酸化硫黄(亜硫酸ガス)が含まれることが好ましい。硫黄酸化物が高濃度に含まれるガスとしては、例えば、石炭火力発電所や重油ボイラ等の燃焼装置から発生した燃焼排ガスが挙げられる。また、コークス炉や製鉄炉(例えば、高炉や転炉)等から発生した燃焼排ガスを用いてもよい。
【0013】
吸収塔2は、硫黄酸化物含有ガス21を導入するガス導入口3と、吸収塔2に導入され吸収液24と接触させた硫黄酸化物含有ガス22を排出するガス排出口4と、吸収塔2内に吸収液24を供給する吸収液供給部5とを有する。吸収塔2は、ガス排出口4がガス導入口3よりも上方に設けられ、吸収液供給部5が吸収塔2の上部に設けられる。吸収塔2において、吸収液供給部5はガス導入口3よりも上方に設けられ、またガス排出口4よりも下方に設けられることが好ましい。吸収塔2にはさらに、吸収塔2の下部に吸収液24の貯留部6が設けられるとともに、貯留部6に保持された吸収液24を吸収液供給部5に返送する返送ライン7が設けられる。吸収液供給部5は貯留部6よりも上方に設けられる。これにより、吸収塔2内において吸収液24を循環供給することができる。
【0014】
吸収塔2における硫黄酸化物含有ガス21の脱硫は、硫黄酸化物含有ガス21を吸収塔2に導入し、吸収液供給部5から供給された吸収液24と接触させ、硫黄酸化物含有ガス21に含まれる硫黄酸化物の少なくとも一部を吸収液24に吸収させることにより行われる。硫黄酸化物含有ガス21が吸収塔2に導入され、吸収塔2内を上昇する間に吸収液24と向流接触し、これにより、硫黄酸化物含有ガス21中に含まれる硫黄酸化物(特に亜硫酸ガス)が吸収液24に溶け込み、硫黄酸化物含有ガス21中の硫黄酸化物量を低減することができる。
【0015】
吸収塔2としては、例えば、塔内に棚板(シーブトレイ)が設けられた棚段塔、塔内に充填物が充填された充填塔、塔内壁表面に吸収液が供給される濡れ壁塔、塔内空間に吸収液がスプレーされるスプレー塔等を採用することができる。
図1および
図2では、吸収塔2として充填塔が用いられた例が示されている。
【0016】
薬液槽9には、カルシウム化合物の供給手段8が接続され、供給手段8から供給されたカルシウム化合物がカルシウム含有液23として保持される。供給手段8から供給されるカルシウム化合物は、粉体や粒体等の固体であってもよく、溶液やスラリー等の液体であってもよい。前者の場合、供給手段8としては、粉体フィーダー(例えばスクリューフィーダー)や計量ホッパ等を用いることができ、後者の場合、供給手段8としては、送液ポンプ等を用いることができる。
【0017】
供給手段8から供給されるカルシウム化合物には、硫酸カルシウムと亜硫酸カルシウム以外のカルシウム化合物が用いられ、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム等のカルシウム塩が好ましく用いられる。カルシウム化合物には、不可避的に混入する硫酸カルシウムと亜硫酸カルシウムが含まれていてもよいが、その含有量は、硫酸カルシウムと亜硫酸カルシウムの合計で10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。カルシウム化合物としては、なかでも炭酸カルシウムまたは塩化カルシウムが好ましい。これらのカルシウム塩は比較的溶解度が高いため、カルシウム含有液23中のカルシウムイオン濃度を高めることが容易になる。これにより、後述するように、硫黄酸化物含有ガス21から吸収液24に吸収された硫黄酸化物(具体的には亜硫酸イオン)がカルシウム含有液23に含まれるカルシウムイオンと反応することにより、硫黄酸化物を亜硫酸カルシウムとして析出させることが容易になる。カルシウム化合物としては、炭酸カルシウムを用いることが特に好ましい。
【0018】
薬液槽9には撹拌手段10が設けられることが好ましい。撹拌手段10としては、撹拌羽根等の機械的撹拌手段を用いることが好ましく、このような機械的な撹拌手段により緩速撹拌することが好ましい。これにより、後述するように薬液槽9のカルシウム含有液23に吸収液24を加えた際に、薬液槽9内で亜硫酸カルシウムの結晶を生成および成長させることが容易になる。
【0019】
脱硫装置1には、薬液槽9のカルシウム含有液23を貯留部6に移送する薬液供給ライン11が設けられている。薬液槽9に保持されたカルシウム含有液23は、薬液供給ライン11を通して貯留部6に移送され、吸収液24に加えられる。これにより、吸収液24がカルシウムイオンを含有するものとなり、硫黄酸化物含有ガス21が吸収液24と接触することにより、硫黄酸化物含有ガス21に含まれる硫黄酸化物が効率的に吸収液24に吸収されるようになる。
【0020】
脱硫装置1には、吸収液抜き出しライン12が設けられている。吸収液抜き出しライン12は、
図1に示すように、貯留部6の吸収液24を薬液槽9に移送するものであってもよく、この場合、吸収液抜き出しライン12は貯留部6と薬液槽9とを繋ぐように設けられる。
図1では、貯留部6に貯まった硫黄酸化物が吸収された吸収液24が、吸収液抜き出しライン12を通して薬液槽9に移送され、カルシウム含有液23に加えられる。
【0021】
脱硫装置1は、
図2に示すように、吸収液供給部5から供給され貯留部6に達する前の吸収液24の一部を薬液槽9に移送するものであってもよく、この場合、吸収液抜き出しライン12は、吸収塔2内の貯留部6よりも上方かつ吸収液供給部5よりも下方の空間と薬液槽9とを繋ぐように設けられる。例えば
図2に示すように、吸収塔2内において、貯留部6よりも上方かつ吸収液供給部5よりも下方の空間に受け部13(例えば、樋や受け皿)を設け、受け部13に吸収液抜き出しライン12を接続すればよい。吸収塔2が充填塔である場合は、受け部13は、充填層よりも下方に設けられることが好ましい。吸収塔2が棚段塔である場合は、受け部13は、最も下方に設けられた棚段(シーブトレイ)であってもよい。
図2では、硫黄酸化物が吸収され貯留部6に達する前の吸収液24が、吸収液抜き出しライン12を通して薬液槽9に移送され、カルシウム含有液23に加えられる。
【0022】
上記のように吸収液24が薬液槽9のカルシウム含有液23に加えられることにより、薬液槽9において、吸収液24に含まれる亜硫酸イオンがカルシウム含有液23のカルシウムイオンと反応し、亜硫酸カルシムが析出する。薬液槽9のカルシウム含有液23には、貯留部6の吸収液24と比べてカルシウムイオンが高濃度で含まれるため、硫黄酸化物が吸収された吸収液24を薬液槽9のカルシウム含有液23に加えることにより、薬液槽9において亜硫酸カルシウムの大きな結晶を形成することが容易になる。その後、析出した亜硫酸カルシウムが含まれるカルシウム含有液23を貯留部6の吸収液24に加えることにより、貯留部6において亜硫酸カルシウムの結晶成長が促進され、亜硫酸カルシウムの沈降分離や比重分離が容易になり、亜硫酸カルシウムを固形物として回収または除去することが容易になる。
【0023】
脱硫装置1には、貯留部6の吸収液24を排出する吸収液排出ライン15が設けられることが好ましい。これにより、吸収液排出ライン15を通して、貯留部6から、亜硫酸カルシウムを含む吸収液25が排出される。吸収液排出ライン15は、返送ライン7が分岐したものであってもよく、返送ライン7から独立して貯留部6に接続したものであってもよい。後者の場合、貯留部6において、吸収液排出ライン15は、返送ライン7よりも下方の位置で貯留部6に接続することが好ましい。これにより、貯留部6で大きく結晶成長して貯留部6の下部に沈降した亜硫酸カルシウムを優先的に、吸収液排出ライン15を通して貯留部6から排出することができる。
【0024】
薬液槽9に保持されたカルシウム含有液23のpHは、6.6以上8.5以下であることが好ましい。これにより、薬液槽9で析出する亜硫酸カルシウムの結晶が柱状結晶集合体の形態をとりやすくなる。当該形態の亜硫酸カルシウムは、比較的密な結晶を形成し、沈降性や脱水性に優れるものとなる。そのため、その後、貯留部6において亜硫酸カルシウムを結晶成長させて、亜硫酸カルシウムを固形物として回収することが容易になる。薬液槽9のカルシウム含有液23のpHは6.8以上がより好ましく、7.0以上がさらに好ましく、また8.3以下がより好ましく、8.0以下がさらに好ましい。
【0025】
貯留部6に保持された吸収液24のpHは、5.5以上6.5以下であることが好ましい。吸収液24のpHは、脱硫性能を高める点からはアルカリ性とすることが望ましいが、貯留部6の吸収液24のpHを5.5以上6.5以下とすることで、カルシウム化合物の反応割合を高めたり、水酸化カルシウムの生成を抑えたりすることができ、貯留部6で回収する亜硫酸カルシウムの純度を高めることができる。その結果、貯留部6での亜硫酸カルシウムの結晶成長を促進することができる。また、このようなpHであれば、薬液槽9で析出した亜硫酸カルシウムの柱状結晶集合体の形態が貯留部6においても維持されやすくなり、貯留部6において、当該形態の亜硫酸カルシウムの結晶成長を促進することができる。貯留部6に保持された吸収液24のpHは5.7以上がより好ましく、また6.3以下がより好ましく、6.1以下がさらに好ましい。
【0026】
吸収液抜き出しライン12は、吸収液抜き出しライン12を流通する吸収液24を冷却する冷却手段14を備えていてもよい。冷却手段14としては、熱交換器等が挙げられる。吸収液抜き出しライン12に導入される吸収液24は、硫黄酸化物含有ガスと接触して温められたものとなることから、これを冷却手段14で冷却して薬液槽9に移送することにより、薬液槽9に保持されたカルシウム含有液23の温度が過度に高くなることを抑えることができる。これにより、薬液槽9において、亜硫酸カルシウムの結晶の生成および成長を促進することができる。
【0027】
図3および
図4に示すように、貯留部6には仕切り板16が設けられてもよい。
図3には、
図1に示した脱硫装置1の貯留部6に仕切り板16が設けられた構成例が示され、
図4には、
図2に示した脱硫装置1の貯留部6に仕切り板16が設けられた構成例が示されている。
【0028】
仕切り板16は、貯留部6に保持された吸収液24の水面から下方に延びるように設けられ、貯留槽19に保持された吸収液24は、仕切り板16を挟んだ一方側16aと他方側16bとで流通可能となっている。薬液槽9に保持されたカルシウム含有液23は、薬液供給ライン11を通して貯留部6に保持された吸収液24の仕切り板16を挟んだ一方側16aに供給され、他方側16bには供給されない。このように貯留部6を構成することにより、貯留部6において、仕切り板16を挟んだ一方側16aにある吸収液24のカルシウムイオン濃度が、仕切り板16を挟んだ他方側16bにある吸収液24のカルシウムイオン濃度よりも高く維持されやすくなる。そのため、貯留槽6において亜硫酸カルシウムの結晶を成長させることが容易になる。
【0029】
貯留部6に保持された吸収液24の水面は、仕切り板16を挟んだ一方側16aの面積が他方側16bの面積よりも狭いことが好ましい。このように仕切り板16を設けることにより、仕切り板16を挟んだ一方側16aにある吸収液24のカルシウムイオン濃度を高くすることが容易になる。
【0030】
仕切り板16は、貯留部6に保持された吸収液24の水面を完全に区分するように設けられることが好ましいが、仕切り板16は吸収液24の水面において断続部を有し、断続部において仕切り板16を挟んだ一方側16aと他方側16bとで流通可能となっていてもよい。この場合、断続部の長さは10cm以下であることが好ましく、5cm以下がより好ましい。なお、断続部の長さとは、断続部を挟んだ一方側と他方側の仕切り板16の最短距離、または、断続部を挟んだ仕切り板16と貯留部6の内壁の最短距離を意味する。
【0031】
仕切り板16の下端は、貯留部6に保持された吸収液24の高さ方向の相対位置として貯留部6の底面を0%とし吸収液24の水面を100%としたときに、0%~50%の範囲にあることが好ましく、0%~35%の範囲にあることがより好ましい。なお、仕切り板16の下端が貯留部6の底面に位置する(すなわち高さ方向に0%の位置にある)ときは、仕切り板16に開口が設けられ、当該開口を介して、貯留槽19に保持された吸収液24が仕切り板16を挟んだ一方側16aと他方側16bとで流通可能となっていることが好ましい
【0032】
仕切り板16は、貯留部6に保持された吸収液24の水面より上方に傾斜部17を有し、仕切り板16の上端が、仕切り板16を挟んだ他方側16bにある吸収液24の水面の上方に位置することが好ましい。このように仕切り板16を設けることにより、仕切り板16を挟んだ一方側16aにある吸収液24の硫黄酸化物濃度(特に亜硫酸イオン濃度)を高めやすくなる。これにより、貯留槽6の仕切り板16を挟んだ一方側16aにおいて亜硫酸カルシウムの結晶を成長させることが容易になる。
【0033】
貯留部6に仕切り板16が設けられる場合、薬液槽9に保持されたカルシウム含有液23のpHが6.6以上8.5以下であり、貯留部6の仕切り板16を挟んだ他方側16bにある吸収液24のpHが5.5以上6.5以下であることが好ましい。薬液槽9のカルシウム含有液23のpHは6.8以上がより好ましく、7.0以上がさらに好ましく、また8.3以下がより好ましく、8.0以下がさらに好ましい。貯留部6の仕切り板16を挟んだ他方側16bにある吸収液24のpHは5.7以上がより好ましく、また6.3以下がより好ましく、6.1以下がさらに好ましい。貯留部6の仕切り板16を挟んだ一方側16aにある吸収液24のpHは、薬液槽9に保持されたカルシウム含有液23のpHよりも低く、貯留部6の仕切り板16を挟んだ他方側16bにある吸収液24のpHよりも高いことが好ましい。
【0034】
貯留槽6に仕切り板16が設けられる場合、返送ライン7は、貯留部6の仕切り板16を挟んだ他方側16bと吸収液供給部5とを繋ぐように設けられることが好ましい。これにより、貯留槽6の仕切り板16を挟んだ一方側16aにおいて亜硫酸カルシウムの結晶を成長させることが容易になる。
【0035】
吸収液排出ライン15は、貯留部6の仕切り板16を挟んだ一方側16aに接続していてもよく他方側16bに接続していてもよいが、他方側16bに接続していることが好ましい。吸収液排出ライン15が貯留部6の仕切り板16を挟んだ他方側16bに接続していれば、薬液供給ライン11を通して貯留部6に移送されたカルシウム含有液23ないし吸収液24の貯留部6での滞留時間を延ばすことができ、亜硫酸カルシウムの結晶成長を促進することが容易になる。
【0036】
図3において、吸収液抜き出しライン12は、貯留部6の仕切り板16を挟んだ一方側16aに接続してもよく他方側16bに接続してもよい。なお、吸収液抜き出しライン12は、貯留部6の仕切り板16を挟んだ一方側16aに接続していることが好ましく、これにより、薬液槽9と、貯留槽6の仕切り板16を挟んだ一方側16aにおいて、亜硫酸カルシウムの結晶を成長させることが容易になる。
【0037】
吸収液排出ライン15を通して貯留部6から排出された吸収液25は、亜硫酸カルシウムの粗粒物が優先的に回収されるようにすることが好ましい。そのために、例えば
図5に示されるように、吸収液排出ライン15に液体サイクロン18が接続され、貯留部6から排出された亜硫酸カルシウムを含む吸収液25を液体サイクロン18に導入し、亜硫酸カルシウムを粗粒物26と微粒物27とに分離することが好ましい。微粒物27は、吸収塔2(特に貯留部6)または薬液槽9に返送することが好ましい。このように貯留部6から排出された吸収液25を処理することにより、より大きな亜硫酸カルシウムの結晶を回収することができる。また、微粒物27を前段に戻すことにより亜硫酸カルシウムの回収率を高めることができる。
【0038】
図6に示すように、脱硫装置1には、貯留部6から排出した亜硫酸カルシウムを含む吸収液25を一時貯留する貯留槽19が設けられてもよい。貯留部6から排出した亜硫酸カルシウムを含む吸収液25を貯留槽19に導入し、貯留槽19で一時貯留することにより、亜硫酸カルシウムを結晶成長させることができる。貯留槽19には撹拌手段20が設けられることが好ましく、これにより、亜硫酸カルシウムの結晶成長を促進させることができる。撹拌手段20としては、撹拌羽根等の機械的撹拌手段を用いることが好ましく、このような機械的な撹拌手段により緩速撹拌することが好ましい。貯留槽19には、貯留槽19に貯留された吸収液25を冷却する冷却手段が設けられてもよい。
【0039】
貯留槽19で亜硫酸カルシウムの結晶を成長させた後、貯留槽19の下部から沈降物28を引き抜くことが好ましく、これにより、結晶成長させた亜硫酸カルシウムの粗粒物を回収することができる。貯留槽19の上部からは上澄み29を引き抜くことが好ましい。上澄み29は脱硫装置1の外に排出してもよく、吸収塔2(特に貯留部6)または薬液槽9に返送してもよい。
【0040】
図7に示すように、吸収液排出ライン15を通して貯留部6から排出された吸収液25は、液体サイクロン18と貯留槽19を組み合わせて処理してもよい。
図7では、液体サイクロン18で分離回収した粗粒物26を貯留槽19に導入して一時貯留し、亜硫酸カルシウムを結晶成長させている。なお、図面には示されていないが、吸収液排出ライン15を通して貯留部6から排出された吸収液25を貯留槽19に導入して一時貯留し亜硫酸カルシウムを結晶成長させ、その後沈降物28を液体サイクロン18に導入して、粗粒物26を回収してもよい。
【0041】
以上説明したように、本発明の硫黄酸化物含有ガスの処理方法によれば、硫黄酸化物含有ガスを、カルシウム化合物を含有する吸収液と接触させることにより、吸収液に吸収させた硫黄酸化物を亜硫酸カルシウムとして析出させて回収することができる。従って、脱硫装置には、亜硫酸カルシウムを硫酸カルシウムに酸化する酸化手段を備えないことが好ましい。酸化手段として、簡便なものとしては、空気等の酸素含有ガスの供給手段が挙げられ、従って、脱硫装置の脱硫部には散気装置が設けられないことが好ましい。また、オゾン、過酸化水素、塩素、臭素、ヨウ素、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、過マンガン酸塩等の酸化剤の供給手段が設けられないことが好ましい。
【0042】
本発明の硫黄酸化物含有ガスの処理方法によれば、硫黄酸化物含有ガスから亜硫酸カルシウムを回収できることから、本発明は、上記の硫黄酸化物含有ガスの処理方法により亜硫酸カルシウムを得る亜硫酸カルシウムの製造方法も提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、石炭火力発電所、重油ボイラ等の硫黄酸化物含有ガスの脱硫処理に用いることができる。また、硫黄酸化物含有ガスから亜硫酸カルシウムの製造に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1: 脱硫装置
2: 吸収塔
3: ガス導入口
4: ガス排出口
5: 吸収液供給部
6: 貯留部
7: 返送ライン
8: カルシウム化合物の供給手段
9: 薬液槽
11: 薬液供給ライン
12: 吸収液抜き出しライン
13: 受け部
14: 冷却手段
15: 吸収液排出ライン
16: 仕切り板
17: 傾斜部
18: 液体サイクロン
19: 貯留槽
21: 硫黄酸化物含有ガス
22: 吸収液と接触させた硫黄酸化物含有ガス
23: カルシウム含有液
24: 吸収液
25: (貯留部から排出された)吸収液
26: 粗粒物
27: 微粒物
28: 沈降物
29: 上澄み