(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155493
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】治具及び加工装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/04 20060101AFI20241024BHJP
B23Q 3/06 20060101ALI20241024BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B23Q3/04
B23Q3/06 301K
B23Q17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070254
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】秋田 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】仁井 進
(72)【発明者】
【氏名】成田 亮治
(72)【発明者】
【氏名】清川 聡
【テーマコード(参考)】
3C016
3C029
【Fターム(参考)】
3C016CA08
3C016CB03
3C016CE01
3C029EE06
(57)【要約】
【課題】アーチ面にそれぞれの深さが概ね等しい複数の溝を形成するように被加工物を加工することを容易にする治具を提供する。
【解決手段】一端から他端まで所定の幅かつ所定の曲率で延在するアーチ面を有する被加工物を加工する際に利用される治具であって、被加工物の幅方向において被加工物を挟持するための挟持部と、挟持部と挟持部によって挟持された被加工物とを幅方向に沿った直線を回転軸として回転させるための回転部と、を有し、挟持部は、アーチ面に含まれ、かつ、幅方向と直交する平面に位置する複数の点のそれぞれと、回転軸と、の間隔が一定になるように被加工物を挟持する治具を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端から他端まで所定の幅かつ所定の曲率で延在するアーチ面を有する被加工物を加工する際に利用される治具であって、
該被加工物の幅方向において該被加工物を挟持するための挟持部と、
該挟持部と該挟持部によって挟持された該被加工物とを該幅方向に沿った直線を回転軸として回転させるための回転部と、を有し、
該挟持部は、該アーチ面に含まれ、かつ、該幅方向と直交する平面に位置する複数の点のそれぞれと、該回転軸と、の間隔が一定になるように該被加工物を挟持する治具。
【請求項2】
該挟持部によって該被加工物が挟持されているか否かを検知するための検知部をさらに有する請求項1に記載の治具。
【請求項3】
該挟持部は、該被加工物を挟持する際に該被加工物の一面に接触する一方側挟持片と該一面の裏側に位置する他面に接触する他方側挟持片とを含み、
該一方側挟持片には、その先端面に雌ねじが形成されている凸部が設けられ、
該他方側挟持片には、該雌ねじと螺合する雄ねじが挿入される貫通孔が形成され、
該挟持部は、該一方側挟持片と該他方側挟持片との間に該被加工物が位置付けられた状態で、該貫通孔に挿入された該雄ねじを該雌ねじに螺合させることによって該被加工物を挟持する請求項1又は2に記載の治具。
【請求項4】
該一方側挟持片には、該被加工物の該一面に設けられている嵌合部が嵌合する被嵌合部が設けられている請求項3に記載の治具。
【請求項5】
一端から他端まで所定の幅かつ所定の曲率で延在するアーチ面を有する被加工物を加工するための加工装置であって、
該被加工物を加工する際に利用される治具を支持するテーブルと、
該被加工物を加工するための加工ユニットと、
該テーブルと該加工ユニットとを相対的に移動させるための移動機構と、を備え、
該治具は、
該被加工物の幅方向において該被加工物を挟持するための挟持部と、
該挟持部と該挟持部によって挟持された該被加工物とを該幅方向に沿った直線を回転軸として回転させるための回転部と、を有し、
該挟持部は、該アーチ面に含まれ、かつ、該幅方向と直交する平面に位置する複数の点のそれぞれと、該回転軸と、の間隔が一定になるように該被加工物を挟持する加工装置。
【請求項6】
該テーブルと該治具とが一体化されている請求項5に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端から他端まで所定の幅かつ所定の曲率で延在するアーチ面を有する被加工物を加工する際に利用される治具と、この被加工物を加工するための加工装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物を加工するための加工装置としては、切削装置又はレーザー加工装置等が挙げられる(例えば、特許文献1及び2参照)。例えば、切削装置においては、円環状の切削ブレードを回転させながら、この切削ブレードを被加工物に接触させることによって被加工物が加工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-12360号公報
【特許文献1】特開2022-179057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような加工装置においては、一般的に、概ね平坦な被加工面を有する板状の被加工物を加工することが想定されている。そして、平坦ではない被加工面を有する被加工物を加工装置において加工することは困難であることが多い。
【0005】
例えば、このような加工装置においては、一端から他端まで所定の幅かつ所定の曲率で延在するアーチ面を被加工面として、このアーチ面を有する被加工物を加工することが想定されていないことが多い。そして、このアーチ面にそれぞれの深さが概ね等しい複数の溝を形成するように被加工物を加工装置において加工することは困難であることが多い。
【0006】
この点に鑑み、本発明の目的は、このようなアーチ面にそれぞれの深さが概ね等しい複数の溝を形成するように被加工物を加工することを容易にする治具と、このように被加工物を加工するための加工装置と、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、一端から他端まで所定の幅かつ所定の曲率で延在するアーチ面を有する被加工物を加工する際に利用される治具であって、該被加工物の幅方向において該被加工物を挟持するための挟持部と、該挟持部と該挟持部によって挟持された該被加工物とを該幅方向に沿った直線を回転軸として回転させるための回転部と、を有し、該挟持部は、該アーチ面に含まれ、かつ、該幅方向と直交する平面に位置する複数の点のそれぞれと、該回転軸と、の間隔が一定になるように該被加工物を挟持する治具が提供される。
【0008】
この治具は、該挟持部によって該被加工物が挟持されているか否かを検知するための検知部をさらに有することが好ましい。また、該挟持部は、該被加工物を挟持する際に該被加工物の一面に接触する一方側挟持片と該一面の裏側に位置する他面に接触する他方側挟持片とを含み、該一方側挟持片には、その先端面に雌ねじが形成されている凸部が設けられ、該他方側挟持片には、該雌ねじと螺合する雄ねじが挿入される貫通孔が形成され、該挟持部は、該一方側挟持片と該他方側挟持片との間に該被加工物が位置付けられた状態で、該貫通孔に挿入された該雄ねじを該雌ねじに螺合させることによって該被加工物を挟持することが好ましい。さらに、該一方側挟持片には、該被加工物の該一面に設けられている嵌合部が嵌合する被嵌合部が設けられていることが好ましい。
【0009】
本発明の別の側面によれば、一端から他端まで所定の幅かつ所定の曲率で延在するアーチ面を有する被加工物を加工するための加工装置であって、該被加工物を加工する際に利用される治具を支持するテーブルと、該被加工物を加工するための加工ユニットと、該テーブルと該加工ユニットとを相対的に移動させるための移動機構と、を備え、該治具は、該被加工物の幅方向において該被加工物を挟持するための挟持部と、該挟持部と該挟持部によって挟持された該被加工物とを該幅方向に沿った直線を回転軸として回転させるための回転部と、を有し、該挟持部は、該アーチ面に含まれ、かつ、該幅方向と直交する平面に位置する複数の点のそれぞれと、該回転軸と、の間隔が一定になるように該被加工物を挟持する加工装置が提供される。
【0010】
この加工装置においては、該テーブルと該治具とが一体化されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の治具は、一端から他端まで所定の幅かつ所定の曲率で延在するアーチ面を有する被加工物の幅方向において被加工物を挟持するための挟持部と、挟持部と挟持部によって挟持された被加工物とを当該幅方向に沿った直線を回転軸として回転させるための回転部と、を有する。
【0012】
そして、この挟持部は、アーチ面に含まれ、かつ、当該幅方向と直交する平面に位置する複数の点のそれぞれと、当該回転軸と、の間隔が一定になるように被加工物を挟持する。そのため、この治具を利用する場合には、挟持部によって挟持された被加工物を回転させることによって、被加工物の幅方向と直交する平面における特定の座標にアーチ面に含まれる複数の点のいずれかを位置付けることができる。
【0013】
これにより、アーチ面にそれぞれの深さが概ね等しい複数の溝を形成するように被加工物を加工することが容易になる。具体的には、この場合、当該特定の座標に加工点を設定した状態で当該複数の溝を形成することができる。すなわち、この場合には、被加工物の幅方向と直交する平面における加工点の座標を変更することなく当該複数の溝を形成することができる。その結果、当該複数の溝を形成するように被加工物を加工することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、被加工物の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、被加工物を加工する際に利用される治具の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、挟持部によって被加工物を挟持した状態の治具を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、被加工物を加工するための加工装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、切削ブレード等を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6(A)及び
図6(B)のそれぞれは、それぞれが被加工物の幅方向に沿い、かつ、それぞれの深さが概ね等しい複数の溝をアーチ面に形成するように被加工物を加工する様子を模式的に示す正面図である。
【
図7】
図7(A)及び
図7(B)のそれぞれは、それぞれが被加工物の幅方向に沿い、かつ、それぞれの深さが概ね等しい複数の溝をアーチ面に形成するように被加工物を加工する様子を模式的に示す正面図である。
【
図8】
図8(A)及び
図8(B)のそれぞれは、それぞれがアーチ面の前端から後端まで延在し、かつ、それぞれの深さが概ね等しい複数の溝をアーチ面に形成するように被加工物を加工する様子を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、被加工物の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示される被加工物1は、例えば、各種の光学機器に設けられているシリンドリカルレンズ、又は、人体の超音波(エコー)検査の際に利用される探触子(プローブ)の先端部に設けられている圧電セラミックス等の半円柱状の構造物である。
【0016】
具体的には、被加工物1は、前端(一端)3aから後端(他端)まで所定の幅かつ所定の曲率で延在するアーチ面3を有する。換言すると、アーチ面3は、それぞれが被加工物1の幅方向に沿って延在し、かつ、互いの長さが等しい前端3a及び後端と、それぞれが被加工物1の幅方向と直交するように円弧状に延在し、かつ、互いの曲率が等しい左端3b及び右端3cと、を含む。
【0017】
また、被加工物1は、その幅方向にそれぞれが平行になり、かつ、アーチ面3の前端3a及び後端からそれぞれ垂下する長方形状の前面5及び後面と、その幅方向にそれぞれが垂直になり、かつ、アーチ面3の左端3b及び右端からそれぞれ垂下する左面(一面)7及び右面(他面)と、を有する。さらに、被加工物1は、その幅方向に平行になり、かつ、その前端、後端、左端及び右端が、前面5の下端、後面の下端、左面7の下端及び右面の下端とそれぞれ重なる底面を有する。
【0018】
加えて、被加工物1の左面7には、後述する治具との位置合わせに利用される嵌合部9が設けられている。具体的には、嵌合部9は、被加工物1の前後方向において離隔し、かつ、互いに概ね等しいサイズを有する一対の円柱状の突起9a,9bである。なお、各突起9a,9bは、例えば、被加工物1と一体化されていてもよい。あるいは、各突起9a,9bは、被加工物1から独立した別の構造物であってもよい。
【0019】
図2は、被加工物1を加工する際に利用される治具の一例を模式的に示す斜視図である。
図2に示される治具11は、例えば、金属材料からなる円盤状の基部13を有する。この基部13の側面には、例えば、レーザーマーキング等によって目印(不図示)が形成されている。そして、この目印は、後述する加工装置のテーブルと治具11との位置合わせに利用される。
【0020】
また、基部13の側面近傍の領域には、基部13の周方向に沿って概ね等しい間隔で複数の貫通孔(不図示)が形成されている。そして、複数の貫通孔のそれぞれには、後述する加工装置のテーブルに治具11を固定するために利用される雄ねじ(不図示)を挿入可能である。また、この基部13の上面には、後述する挟持部を回転させるための回転部15が設けられている。
【0021】
回転部15は、例えば、金属材料からなり、かつ、その一端側が開放されている角筒状のハウジング15aを有する。そして、ハウジング15aには、その先端部がハウジング15aの一端側から露出されているスピンドル15bの先端部以外の部分が回転可能な態様で収容されている。
【0022】
スピンドル15bは、例えば、金属材料からなり、その基端部にはハウジング15aに収容されているモータ(不図示)が接続されている。そして、このモータが動作すると、スピンドル15bが延在する方向に沿った直線を回転軸としてスピンドル15bが回転する。さらに、スピンドル15bの先端部は、平面視において、基部13の外側に位置し、また、この先端部には被加工物1の幅方向において被加工物1を挟持するための挟持部17が設けられている。
【0023】
挟持部17は、例えば、金属材料からなり、かつ、その裏側にスピンドル15bの先端部が接続されている平板状の一方側挟持片17aを含む。なお、一方側挟持片17aの厚さは、被加工物1の左面7に設けられている各突起9a,9bの高さよりも大きい。また、一方側挟持片17aの表面は、挟持部17によって被加工物1を挟持する際に被加工物1の左面7と接触する一方側挟持片17aの接触面となり、この接触面には嵌合部9と嵌合する被嵌合部19が設けられている。
【0024】
具体的には、被嵌合部19は、平面視においてスピンドル15bが延在する方向と直交する方向において離隔して設けられた一対の円柱状の溝19a,19bである。そして、被嵌合部19、すなわち、一対の溝19a,19bは、被加工物1の左面7に設けられている嵌合部9、すなわち、一対の突起9a,9bに対応するような形状を有する。
【0025】
具体的には、一対の溝19a,19bの間隔は、一対の突起9a,9bの間隔と概ね等しいかそれより僅かに小さい。また、各溝19a,19bの内径は、各突起9a,9bの直径と概ね等しいかそれより僅かに大きい。また、各溝19a,19bの深さは、各突起9a,9bの高さと概ね等しいかそれより僅かに大きい。
【0026】
また、被嵌合部19、すなわち、一対の溝19a,19bは、嵌合部9、すなわち、一対の突起9a,9bが嵌合した時に、被加工物1のアーチ面3が部分的に側面と重なる仮想の円柱の中心軸とスピンドル15bの回転軸とが重なるように設けられている。換言すると、被嵌合部19、すなわち、一対の溝19a,19bは、この時に、アーチ面3に含まれ、かつ、被加工物1の幅方向と直交する平面に位置する複数の点のそれぞれと、当該回転軸との間隔が一定になるように設けられている。
【0027】
さらに、一方側挟持片17aの接触面のうち下側両側端のそれぞれには、それぞれが、例えば、金属材料からなる一対の平板状の凸部21a,21bが設けられている。なお、各凸部21a,21bは、一方側挟持片17aと一体化されていてもよい。あるいは、各凸部21a,21bは、一方側挟持片17aから独立した別の構造物であってもよい。
【0028】
また、各凸部21a,21bは、例えば、一対の突起9a,9bを一対の溝19a,19bに嵌合させた時に被加工物1の底面に接触せず、また、その下面が一方側挟持片17aの下面と同一平面上に位置するように設けられている。そして、各凸部21a,21bの先端面には、雌ねじ23a,23bが形成されている。加えて、一方側挟持片17a及び一対の凸部21a,21bの平面視における外側には、一対の平板状の支持部材25a,25bがそれぞれ設けられている。
【0029】
各支持部材25a,25bは、その先端部が各凸部21a,21bの先端面よりも一方側挟持片17aの接触面から遠くに位置し、また、その下面が一方側挟持片17aの下面及び各凸部21a,21bの下面と同一平面上に位置するように設けられている。また、一対の支持部材25a,25bの先端部の間には、他方側挟持片17bが設けられている。
【0030】
他方側挟持片17bは、支持部材25aの先端部から支持部材25bの先端部に向かう方向に沿って延在する直線を回転軸として回転可能な態様で一対の支持部材25a,25bに接続されている。そして、この他方側挟持片17bを回転させることで、他方側挟持片17bの一面を、各凸部21a,21bの先端面に接触させ、かつ、それから離隔させることができる。
【0031】
また、他方側挟持片17bの一対の領域のそれぞれには、凸部21a,21bの先端面に形成されている雌ねじ23a,23bと螺合する雄ねじ(
図2においては不図示)を挿入可能な貫通孔27a,27bが形成されている。なお、当該一対の領域は、他方側挟持片17bの一面を各凸部21a,21bの先端面に接触させた時に他方側挟持片17bのうち一対の雌ねじ23a,23bと対向する領域である。
【0032】
さらに、他方側挟持片17bのうち支持部材25a,25bの先端部から最も離隔した部分は、他方側挟持片17bの一面を凸部21a,21bの先端面に接触させた時に一方側挟持片17aに向かって突出するような凸部になっている。そして、他方側挟持片17bの凸部の先端面は、挟持部17によって被加工物1を挟持する際に被加工物1の右面に接触する他方側挟持片17bの接触面となる。
【0033】
なお、挟持部17においては、一方側挟持片17aの接触面と他方側挟持片17bの接触面とを対向させた時に両接触面の間隔が被加工物1の幅と概ね等しいかそれより僅かに小さくなるように、他方側挟持片17bの凸部の高さ及び/又は各支持部材25a,25bの長さ等が設定されている。
【0034】
加えて、治具11は、挟持部17によって被加工物1が挟持されているか否かを検知するための検知部(不図示)を有する。この検知部は、例えば、他方側挟持片17bの接触面において開口する連通路29と連通するエジェクタ等の吸引源と、この連通路29の圧力を測定する圧力計と、を含む。
【0035】
そして、挟持部17によって被加工物1が挟持された状態で吸引源が動作すると、他方側挟持片17bの接触面におけるリークが抑制されるため連通路29の圧力が低下する。他方、挟持部17によって被加工物1が挟持されていない状態で吸引源が動作すると、他方側挟持片17bの接触面におけるリークが生じるため連通路29の圧力がほとんど低下しない。
【0036】
そのため、この検知部においては、圧力計で測定される連通路29の圧力に基づいて挟持部17によって被加工物1が挟持されているか否かを検知することができる。なお、他方側挟持片17bの内部に形成されている連通路29は、支持部材25a,25b、一方側挟持片17a、スピンドル15b及び基部13のそれぞれの内部に形成されている連通路を介して吸引源と連通してもよい。
【0037】
図3は、挟持部17によって被加工物1を挟持した状態の治具11を模式的に示す斜視図である。挟持部17によって被加工物1を挟持する際には、まず、被加工物1の嵌合部9を挟持部17の一方側挟持片17aの被嵌合部19に嵌合させる。これにより、被加工物1の左面7と一方側挟持片17aの接触面とが接触する。
【0038】
次いで、挟持部17の他方側挟持片17bの一面を各凸部21a,21bの先端面に接触させる。これにより、被加工物1の右面と他方側挟持片17bの接触面とが接触する。次いで、他方側挟持片17bに形成されている一対の貫通孔27a,27bに挿入された一対の雄ねじ31a,31bを一対の雌ねじ23a,23bにそれぞれ螺合させる。その結果、被加工物1の幅方向において被加工物1が挟持部17によって挟持される。
【0039】
図4は、被加工物1を加工するための加工装置、具体的には、切削装置の一例を模式的に示す斜視図である。なお、
図4に示されるX軸方向及びY軸方向は、水平面上において互いに直交する方向であり、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(鉛直方向)である。
【0040】
図4に示される切削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備える。この基台4の上面には、X軸方向に沿って延在する窪み4aが形成されている。そして、窪み4aの内側には、平板状のテーブルカバー6と、テーブルカバー6の移動に伴って伸縮する蛇腹状の防塵防滴カバー8と、が設けられている。
【0041】
また、テーブルカバー6の上方には、挟持部17によって被加工物1を挟持した状態の治具11を支持する円盤状のテーブル10が設けられている。このテーブル10の側面には、例えば、レーザーマーキング等によって目印(不図示)が形成されている。また、テーブル10の側面近傍の領域には、治具11の基部13の側面近傍の領域に形成されている複数の貫通孔と同数の雌ねじ(不図示)がテーブル10の周方向に沿って概ね等しい間隔で形成されている。
【0042】
そして、治具11は、例えば、その基部13の側面に形成されている目印とテーブル10の側面に形成されている目印とがZ軸方向において重なるようにテーブル10に置かれている。さらに、治具11の基部13の側面近傍の領域に形成されている複数の貫通孔には複数の雄ねじ(不図示)がそれぞれ挿入され、複数の雄ねじはテーブル10の側面近傍の領域に形成されている複数の雌ねじにそれぞれ螺合している。
【0043】
また、テーブル10の内部には、吸引源に連通する連通路が形成されている。そして、この連通路は、支持部材25a,25b、一方側挟持片17a、スピンドル15b及び基部13のそれぞれの内部に形成されている連通路を介して、治具11の挟持部17の他方側挟持片17bの内部に形成されている連通路29と連通する。すなわち、連通路29は、テーブル10の内部に形成されている連通路等を介して吸引源に連通する。
【0044】
また、テーブル10は、窪み4aの内側に設けられているX軸方向移動機構(不図示)に接続されている。このX軸方向移動機構は、例えば、ボールねじと、このボールねじに接続されているモータと、を含む。そして、このX軸方向移動機構を動作させると、テーブル10がX軸方向に沿って移動する。さらに、この移動に伴って、テーブルカバー6がX軸方向に沿って移動するとともに防塵防滴カバー8が伸縮する。
【0045】
また、テーブル10は、窪み4aの内側に設けられている回転駆動源(不図示)に接続されている。この回転駆動源は、例えば、プーリと、このプーリに連結されているモータと、を含む。そして、この回転駆動源を動作させると、テーブル10の上面の中心を通り、かつ、Z軸方向に沿った直線を回転軸としてテーブル10が回転する。
【0046】
基台4の上面のうち窪み4a近傍の領域には、支持構造16が設けられている。この支持構造16は、基台4の上面から立設する立設部16aと、窪み4aを渡るように立設部16aの上端部からY軸方向に沿って延在する腕部16bと、を有する。そして、腕部16bの前面側には、Y軸方向移動機構18が設けられている。
【0047】
このY軸方向移動機構18は、腕部16bの前面に固定され、かつ、Y軸方向に沿って延在する一対のY軸ガイドレール20を有する。そして、一対のY軸ガイドレール20の前面側には、一対のY軸ガイドレール20に沿ってスライド可能な態様でY軸移動プレート22が設けられている。
【0048】
また、一対のY軸ガイドレール20の間には、Y軸方向に沿って延在するねじ軸24が配置されている。このねじ軸24の一端部には、ねじ軸24を回転させるためのモータ(不図示)が接続されている。そして、ねじ軸24の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸24の表面を転がる多数のボールを収容するナット(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0049】
すなわち、ねじ軸24が回転すると、多数のボールがナット内を循環して、ナットがY軸方向に沿って移動する。また、このナットは、Y軸移動プレート22の後面側に固定されている。そのため、ねじ軸24の一端部に連結されているモータでねじ軸24を回転させれば、ナットとともにY軸移動プレート22がY軸方向に沿って移動する。
【0050】
Y軸移動プレート22の前面側には、Z軸方向移動機構26が設けられている。このZ軸方向移動機構26は、Y軸移動プレート22の前面に固定され、かつ、Z軸方向に沿って延在する一対のZ軸ガイドレール28を有する。そして、一対のZ軸ガイドレール28の前面側には、一対のZ軸ガイドレール28に沿ってスライド可能な態様でZ軸移動プレート30が接続されている。
【0051】
また、一対のZ軸ガイドレール28の間には、Z軸方向に沿って延在するねじ軸32が配置されている。このねじ軸32の一端部(上端部)には、ねじ軸32を回転させるためのモータ34が接続されている。そして、ねじ軸32の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸32の表面を転がる多数のボールを収容するナット(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0052】
すなわち、ねじ軸32が回転すると、多数のボールがナット内を循環して、ナットがZ軸方向に沿って移動する。また、このナットは、Z軸移動プレート30の後面側に固定されている。そのため、モータ34でねじ軸32を回転させれば、ナットとともにZ軸移動プレート30がZ軸方向に沿って移動する。
【0053】
Z軸移動プレート30の下部には、切削ユニット(加工ユニット)36が固定されている。この切削ユニット36は、Y軸方向に沿って延在する筒状のスピンドルハウジング38と、スピンドルハウジング38から露出した切削ブレード40と、を有する。
図5は、切削ブレード40等を模式的に示す斜視図である。
【0054】
切削ユニット36のスピンドルハウジング38には、Y軸方向に沿って延在する円柱状のスピンドル42が収容されている。このスピンドル42は、回転可能な態様でスピンドルハウジング38によって支持される。そして、スピンドル42の先端部はスピンドルハウジング38の外に突出し、この先端部には環状の切削ブレード40が装着されている。
【0055】
なお、この切削ブレード40は、例えば、ダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素(cBN:cubic Boron Nitride)等でなる砥粒がニッケル等の結合材によって固定された電鋳砥石によって構成される切刃を含む。さらに、スピンドル42の基端部は、スピンドルハウジング38に内蔵されるモータに接続されている。
【0056】
そして、このモータを動作させると、Y軸方向に沿った直線を回転軸としてスピンドル42とともに切削ブレード40が回転する。なお、切削ブレード40は、スピンドル42の回転軸が切削ブレード40の中心を通るようにスピンドル42に装着されている。
【0057】
また、ねじ軸24の一端部に接続されているモータを動作させると、切削ユニット36がY軸方向に沿って移動する。また、ねじ軸32の一端部に接続されているモータ34を動作させると、切削ユニット36がZ軸方向に沿って移動する。
【0058】
また、
図4に示されるように、切削ユニット36の側方には撮像ユニット44が設けられている。この撮像ユニット44は、例えば、対物レンズと、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子と、を含み、その下方に存在する構造物を撮像する。
【0059】
上述した切削装置2においては、例えば、それぞれが被加工物1の幅方向に沿い、かつ、それぞれの深さが概ね等しい複数(例えば、3つ)の溝をアーチ面3に形成するように被加工物1が加工される。
【0060】
図6(A)及び
図6(B)並びに
図7(A)及び
図7(B)のそれぞれは、このように被加工物1を加工する様子を模式的に示す正面図である。なお、
図6(A)及び
図6(B)並びに
図7(A)及び
図7(B)においては、便宜上、
図3に示される一対の雄ねじ31a,31bが省略されている。
【0061】
このように被加工物1を加工する際には、まず、被加工物1が挟持部17によって正常に挟持されているか否かを上述した検知部を利用して判定する。具体的には、テーブル10の内部に形成されている連通路等を介して他方側挟持片17bの内部に形成されている連通路29と連通する吸引源を動作させる。
【0062】
そして、圧力計によって測定される連通路29の圧力が所定のしきい値以下であれば被加工物1が挟持部17によって正常に挟持されていると判定する。このように判定されれば、治具11の回転部15のスピンドル15bが延在する方向、すなわち、挟持部17によって挟持されている被加工物1の幅方向がX軸方向と平行になるようにテーブル10を回転させる。
【0063】
次いで、被加工物1のアーチ面3に含まれる特定の点、例えば、その後端近傍の点(第1点)が挟持部17の回転軸Aの直上に位置付けられるように、例えば、時計回りにスピンドル15bを回転させる(
図6(A)参照)。これにより、Y軸方向及びZ軸方向に平行な平面(YZ平面)における特定の座標(Y
0,Z
0)にアーチ面3の第1点が位置付けられる。
【0064】
次いで、切削ブレード40の下端がYZ平面において座標(Y0,Z0+α)(αは正数)に位置付けられるように切削ユニット36のY軸方向における位置を調整する。次いで、平面視において、この下端から見てX軸方向に被加工物1が位置付けられるようにテーブル10のX軸方向における位置を調整する。
【0065】
次いで、この下端がYZ平面において座標(Y0,Z0-β)(βは、アーチ面3に形成される予定の溝の深さに対応する距離)に位置付けられるように切削ユニット36を下降させる。次いで、切削ブレード40とともにスピンドル42を回転させる。
【0066】
次いで、切削ブレード40を回転させたまま、切削ブレード40の下端が被加工物1のアーチ面3の左端3bから右端3cまで横断するように、テーブル10をX軸方向に沿って移動させる(
図6(B)参照)。これにより、アーチ面3の第1点を通り、かつ、所望の深さを有する直線状の溝がアーチ面3に形成される。
【0067】
次いで、切削ブレード40の回転を停止させるとともに、切削ブレード40の下端がYZ平面において座標(Y0,Z0+α)に位置付けられるように切削ユニット36を上昇させる。
【0068】
次いで、被加工物1のアーチ面3に含まれる第1点とは別の点、例えば、その前端3aと後端との中間に位置する点(第2点)が挟持部17の回転軸Aの直上に位置付けられるように、例えば、反時計回りにスピンドル15bを回転させる。これにより、YZ平面における座標(Y0,Z0)にアーチ面3の第2点が位置付けられる。
【0069】
次いで、平面視において、切削ブレード40の下端から見てX軸方向に被加工物1が位置付けられるようにテーブル10のX軸方向における位置を調整する。次いで、この下端がYZ平面において座標(Y0,Z0-β)に位置付けられるように切削ユニット36を下降させる。
【0070】
なお、アーチ面3の第1点を通る溝の形成に伴って切削ブレード40が摩耗していると考えられる場合には、この下端がYZ平面において座標(Y0,Z0-β-γ)(γは、アーチ面3の第1点を通る溝の形成に伴う切削ブレード40の外径の減少量の半分の値)に位置付けられるように切削ユニット36を下降させてもよい。
【0071】
次いで、切削ブレード40とともにスピンドル42を回転させる。次いで、切削ブレード40を回転させたまま、切削ブレード40の下端が被加工物1のアーチ面3の左端3bから右端3cまで横断するように、テーブル10をX軸方向に沿って移動させる(
図7(A)参照)。これにより、アーチ面3の第2点を通り、かつ、アーチ面3に形成された第1点を通る溝33aの深さと概ね同じ深さを有する直線状の溝がアーチ面3に形成される。
【0072】
次いで、切削ブレード40の回転を停止させるとともに、切削ブレード40の下端がYZ平面において座標(Y0,Z0+α)に位置付けられるように切削ユニット36を上昇させる。
【0073】
次いで、被加工物1のアーチ面3に含まれる第1点及び第2点とは別の点、例えば、その前端3a近傍の点(第3点)が挟持部17の回転軸Aの直上に位置付けられるように、例えば、反時計回りにスピンドル15bを回転させる。これにより、YZ平面における座標(Y0,Z0)にアーチ面3の第3点が位置付けられる。
【0074】
次いで、平面視において、切削ブレード40の下端から見てX軸方向に被加工物1が位置付けられるようにテーブル10のX軸方向における位置を調整する。次いで、この下端がYZ平面において座標(Y0,Z0-β)に位置付けられるように切削ユニット36を下降させる。
【0075】
なお、アーチ面3の第1点を通る溝及び第2点を通る溝の形成に伴って切削ブレード40が摩耗していると考えられる場合には、この下端がYZ平面において座標(Y0,Z0-β-δ)(δは、アーチ面3の第1点を通る溝及び第2点を通る溝の形成に伴う切削ブレード40の外径の減少量の半分の値)に位置付けられるように切削ユニット36を下降させてもよい。
【0076】
次いで、切削ブレード40とともにスピンドル42を回転させる。次いで、切削ブレード40を回転させたまま、切削ブレード40の下端が被加工物1のアーチ面3の左端3bから右端3cまで横断するように、テーブル10をX軸方向に沿って移動させる(
図7(B)参照)。これにより、アーチ面3の第3点を通り、かつ、アーチ面3に形成された第1点を通る溝33a及び第2点を通る溝33bの深さと概ね同じ深さを有する直線状の溝がアーチ面3に形成される。
【0077】
上述した治具11は、前端3aから後端まで所定の幅かつ所定の曲率で延在するアーチ面3を有する被加工物1の幅方向(ここでは、X軸方向)において被加工物1を挟持するための挟持部17と、挟持部17と挟持部17によって挟持された被加工物1とを当該幅方向に沿った直線を回転軸Aとして回転させるための回転部15と、を有する。
【0078】
そして、この挟持部17は、アーチ面3に含まれ、かつ、被加工物1の幅方向と直交する平面(ここでは、YZ平面)に位置する複数の点と、回転軸Aと、の間隔が一定になるように被加工物1を挟持する。そのため、この治具11を利用する場合には、挟持部17によって挟持された被加工物1を回転させることによって、YZ平面における特定の座標(ここでは、(Y0,Z0))にアーチ面3に含まれる複数の点のいずれかを位置付けることができる。
【0079】
これにより、アーチ面3にそれぞれの深さが概ね等しい複数の溝33a,33bを形成するように被加工物1を加工することが容易になる。具体的には、この場合、座標(Y0,Z0)に加工点を設定した状態で複数の溝33a,33bを形成することができる。すなわち、この場合には、YZ平面における加工点の座標を変更することなく複数の溝33a,33bを形成することができる。その結果、複数の溝33a,33bを形成するように被加工物1を加工することが容易になる。
【0080】
なお、上述した内容は本発明の一態様であって、本発明の内容は上述した内容に限定されない。例えば、治具11においては、一対の雄ねじ31a,31bを利用することなく、挟持部17の他方側挟持片17bの一面と各凸部21a,21bの先端面とが接触した状態が維持されてもよい。
【0081】
この場合、各凸部21a,21の内部には、その先端面において開口するとともに挟持部17の他方側挟持片17bの一面と各凸部21a,21bの先端面とを接触させることによって密閉され、かつ、吸引源と連通する連通路が形成されてもよい。そして、このような連通路が形成される場合、挟持部17の他方側挟持片17bの一面と各凸部21a,21bの先端面とを接触させた状態で吸引源を動作させることによって、この状態が維持されてもよい。
【0082】
また、治具11においては、一対の溝19a,19bと異なる構造を有する被嵌合部19が一方側挟持片17aの接触面に設けられてもよい。例えば、一対の突起9a,9bに換えて溝19a,19bと同様の一対の溝が嵌合部9として被加工物1の左面7に形成される場合には、一対の突起9a,9bと同様の一対の突起が被嵌合部19として一方側挟持片17aの接触面に設けられてもよい。
【0083】
また、治具11においては、挟持部17によって被加工物1を挟持する際に被加工物1の底面に接触するように各凸部21a,21bが設けられていてもよい。この場合、治具において、被加工物1をより安定して保持することが可能になる。
【0084】
また、治具11においては、挟持部17が回転部15から取り外し可能に設けられてもよい。そして、治具11においては、挟持部17に換えて、被加工物1のアーチ面3の曲率と異なる曲率のアーチ面を有する別の被加工物を挟持するための別の挟持部が回転部15に取り付け可能であってもよい。
【0085】
なお、当該別の挟持部は、当該別の被加工物のアーチ面に含まれる任意の点と回転軸Aとの間隔が一定になるように被加工物を挟持するための構造物である。この場合、それぞれのアーチ面の曲率が異なる複数の被加工物を上述したように加工することが容易になる。
【0086】
また、治具11を利用して被加工物1を加工する加工装置は、切削装置2ではなく、レーザー加工装置であってもよい。また、切削装置2においては、複数の雄ねじを利用して治具11をテーブル10に取り付けるのではなく、テーブル10と治具11とが一体化されていてもよい。
【0087】
また、切削装置2においては、それぞれがアーチ面3の前端3aから後端まで延在し、かつ、それぞれの深さが概ね等しい複数(例えば、3つ)の溝をアーチ面3に形成するように被加工物1が加工されてもよい。
【0088】
図8(A)及び
図8(B)のそれぞれは、このように被加工物1を加工する様子を模式的に示す側面図である。なお、
図8(A)及び
図8(B)においては、便宜上、
図3に示される一対の雄ねじ31a,31bが省略されている。
【0089】
このように被加工物1を加工する際には、まず、上述したように被加工物1が挟持部17によって正常に挟持されているか否かを判定する。そして、挟持部17によって正常に挟持されていると判定されれば、治具11の回転部15のスピンドル15bが延在する方向、すなわち、挟持部17によって挟持されている被加工物1の幅方向がY軸方向と平行になるようにテーブル10を回転させる。
【0090】
次いで、切削ブレード40の下端が挟持部17の回転軸Aの直上に位置付けられるようにテーブル10のX軸方向における位置を調整する。これにより、X軸方向及びZ軸方向に平行な平面(XZ平面)における特定の座標(X0,Z0)にアーチ面3に含まれる点が位置付けられる。また、この時、切削ブレード40の下端は、XZ平面において座標(X0,Z0+α)に位置付けられている。
【0091】
次いで、被加工物1のアーチ面3に含まれる特定の点、例えば、その左端3b近傍の点(第4点)と切削ブレード40の下端とがY軸方向において同じ位置に位置付けられるように、切削ユニット36のY軸方向における位置を調整する。
【0092】
次いで、挟持部17の回転軸Aから見て被加工物1が前方に位置付けられるように、例えば、時計回りにスピンドル15bを回転させる。次いで、切削ブレード40の下端がXZ平面における座標(X0,Z0-ε)(εは、アーチ面3に形成される予定の溝の深さに対応する距離)に位置付けられるように切削ユニット36を下降させる。
【0093】
次いで、切削ブレード40とともにスピンドル42を回転させる(
図8(A)参照)。次いで、切削ブレード40を回転させたまま、切削ブレード40の下端が被加工物1のアーチ面3の後端から前端3aまで縦断するように、例えば、反時計回りにスピンドル15bを回転させる(
図8(B)参照)。これにより、アーチ面3の第4点を通り、かつ、所望の深さを有する円弧状の溝がアーチ面3に形成される。
【0094】
次いで、切削ブレード40の回転を停止させるとともに、切削ブレード40の下端がXZ平面において座標(X0,Z0+α)に位置付けられるように切削ユニット36を上昇させる。
【0095】
次いで、被加工物1のアーチ面3に含まれる第4点とは別の点、例えば、その左端3bと右端3cとの中間に位置する点(第5点)と切削ブレード40の下端とがY軸方向において同じ位置に位置付けられるように、切削ユニット36のY軸方向における位置を調整する。
【0096】
次いで、挟持部17の回転軸Aから見て被加工物1が前方に位置付けられるように、例えば、時計回りにスピンドル15bを回転させる。次いで、切削ブレード40の下端がXZ平面における座標(X0,Z0-ε)に位置付けられるように切削ユニット36を下降させる。
【0097】
なお、アーチ面3の第4点を通る溝の形成に伴って切削ブレード40が摩耗していると考えられる場合には、この下端がXZ平面において座標(X0,Z0-ε-ζ)(ζは、アーチ面3の第4点を通る溝の形成に伴う切削ブレード40の外径の減少量の半分の値)に位置付けられるように切削ユニット36を下降させてもよい。
【0098】
次いで、切削ブレード40とともにスピンドル42を回転させる(
図8(A)参照)。次いで、切削ブレード40を回転させたまま、切削ブレード40の下端が被加工物1のアーチ面3の後端から前端3aまで縦断するように、例えば、反時計回りにスピンドル15bを回転させる(
図8(B)参照)。これにより、アーチ面3の第5点を通り、かつ、アーチ面3に形成された第4点を通る溝の深さと概ね同じ深さを有する円弧状の溝がアーチ面3に形成される。
【0099】
次いで、切削ブレード40の回転を停止させるとともに、切削ブレード40の下端がXZ平面において座標(X0,Z0+α)に位置付けられるように切削ユニット36を上昇させる。
【0100】
次いで、被加工物1のアーチ面3に含まれる第4点及び第5点とは別の点、例えば、その右端3c近傍の点(第6点)と切削ブレード40の下端とがY軸方向において同じ位置に位置付けられるように、切削ユニット36のY軸方向における位置を調整する。
【0101】
次いで、挟持部17の回転軸Aから見て被加工物1が前方に位置付けられるように、例えば、時計回りにスピンドル15bを回転させる。次いで、切削ブレード40の下端がXZ平面における座標(X0,Z0-ε)に位置付けられるように切削ユニット36を下降させる。
【0102】
なお、アーチ面3の第4点を通る溝及び第5点を通る溝の形成に伴って切削ブレード40が摩耗していると考えられる場合には、この下端がXZ平面において座標(X0,Z0-ε-η)(ηは、アーチ面3の第4点を通る溝及び第5点を通る溝の形成に伴う切削ブレード40の外径の減少量の半分の値)に位置付けられるように切削ユニット36を下降させてもよい。
【0103】
次いで、切削ブレード40とともにスピンドル42を回転させる(
図8(A)参照)。次いで、切削ブレード40を回転させたまま、切削ブレード40の下端が被加工物1のアーチ面3の後端から前端3aまで縦断するように、例えば、反時計回りにスピンドル15bを回転させる(
図8(B)参照)。これにより、アーチ面3の第6点を通り、かつ、アーチ面3に形成された第4点を通る溝及び第5点を通る溝の深さと概ね同じ深さを有する円弧状の溝がアーチ面3に形成される。
【0104】
上述した治具11は、前端3aから後端まで所定の幅かつ所定の曲率で延在するアーチ面3を有する被加工物1の幅方向(ここでは、Y軸方向)において被加工物1を挟持するための挟持部17と、挟持部17と挟持部17によって挟持された被加工物1とを当該幅方向に沿った直線を回転軸Aとして回転させるための回転部15と、を有する。
【0105】
そして、この挟持部17は、アーチ面3に含まれ、かつ、被加工物1の幅方向と直交する平面(ここでは、XZ平面)に位置する複数の点と、回転軸Aと、の間隔が一定になるように被加工物1を挟持する。そのため、この治具11を利用する場合には、挟持部17によって挟持された被加工物1を回転させることによって、XZ平面における特定の座標(ここでは、(X0,Z0))にアーチ面3に含まれる複数の点のいずれかを位置付けることができる。
【0106】
これにより、アーチ面3にそれぞれの深さが概ね等しい複数の溝を形成するように被加工物1を加工することが容易になる。具体的には、この場合、座標(X0,Z0)に加工点を設定した状態で当該複数の溝を形成することができる。すなわち、この場合には、XZ平面における加工点の座標を変更することなく当該複数の溝を形成することができる。その結果、当該複数の溝を形成するように被加工物1を加工することが容易になる。
【0107】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0108】
1 :被加工物
2 :切削装置
3 :アーチ面(3a:前端、3b:左端、3c:右端)
4 :基台(4a:窪み)
5 :前面
6 :テーブルカバー
7 :左面(一面)
8 :防塵防滴カバー
9 :嵌合部(9a,9b:突起)
10:テーブル
11:治具
13:基部
15:回転部(15a:ハウジング、15b:スピンドル)
16:支持構造(16a:立設部、16b:腕部)
17:挟持部(17a:一方側挟持片、17b:他方側挟持片)
18:Y軸方向移動機構
19:被嵌合部(19a,19b:溝)
20:Y軸ガイドレール
21a,21b:凸部
22:Y軸移動プレート
23a,23b:雌ねじ
24:ねじ軸
25a,25b:支持部材
26:Z軸方向移動機構
27a,27b:貫通孔
28:Z軸ガイドレール
29:連通路
30:Z軸移動プレート
31a,31b:雄ねじ
32:ねじ軸
34:モータ
36:切削ユニット(加工ユニット)
38:スピンドルハウジング
40:切削ブレード
42:スピンドル
44:撮像ユニット