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特開2024-155506流量制御器の校正方法および基板処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155506
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】流量制御器の校正方法および基板処理システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070275
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】澤地 淳
(72)【発明者】
【氏名】庄司 慶太
(57)【要約】
【課題】基板処理システムにおいて流量制御器の校正を効率的に行う。
【解決手段】基板処理システムにおける流量制御器の校正方法であって、前記基板処理システムは、所望の処理ガス中で基板を処理するための複数のチャンバと、前記複数のチャンバのそれぞれに前記処理ガスを供給する複数のガスボックスと、前記複数のガスボックスから供給される前記処理ガスの流量を測定する流量測定装置と、制御部と、を備え、前記複数のガスボックスは、それぞれ複数の流量制御器を含み、前記流量制御器の校正は、(a)前記流量制御器における校正前の流量設定値と出力値との関係を導出し、その関係に係るグラフの傾き及び/又は接線の傾きを算出する工程と、(b)前記グラフの傾き及び/又は接線の傾きを用いた校正値の算出式から、前記流量制御器の各流量設定値に関する校正値を算出する工程と、を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理システムにおける流量制御器の校正方法であって、
前記基板処理システムは、
所望の処理ガス中で基板を処理するための複数のチャンバと、
前記複数のチャンバのそれぞれに前記処理ガスを供給する複数のガスボックスと、
前記複数のガスボックスから供給される前記処理ガスの流量を測定する流量測定装置と、
制御部と、を備え、
前記複数のガスボックスは、それぞれ複数の流量制御器を含み、
前記流量制御器の校正は、
(a)前記流量制御器における校正前の流量設定値と出力値との関係を導出し、その関係に係るグラフの傾き及び/又は接線の傾きを算出する工程と、
(b)前記グラフの傾き及び/又は接線の傾きを用いた校正値の算出式から、前記流量制御器の各流量設定値に関する校正値を算出する工程と、を含む流量制御器の校正方法。
【請求項2】
前記(b)の工程においては、以下の式(1)により前記流量制御器の各流量設定値に関する校正値Xの算出が行われる、請求項1に記載の流量制御器の校正方法。
Q1=α(X-Q1)+Q2 ・・・(1)
ここで、Q1:流量設定値、X:校正値、Q2:校正前の出力値、α:前記グラフの傾き及び/又は接線の傾き、である。
【請求項3】
基板処理システムであって、
所望の処理ガス中で基板を処理するための複数のチャンバと、
前記複数のチャンバのそれぞれに前記処理ガスを供給する複数のガスボックスと、
前記複数のガスボックスから供給される前記処理ガスの流量を測定する流量測定装置と、
制御部と、を備え、
前記複数のガスボックスは、それぞれ複数の流量制御器を含み、
前記制御部において、
(a)前記流量制御器における校正前の流量設定値と出力値との関係を導出し、その関係に係るグラフの傾き及び/又は接線の傾きを算出する工程と、
(b)前記グラフの傾き及び/又は接線の傾きを用いた校正値の算出式から、前記流量制御器の各流量設定値に関する校正値を算出する工程と、を含む処理を実行する、基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流量制御器の校正方法および基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流量制御器からガス流路に出力されたガスの流量を、ガス供給に伴うガス流路内の圧力の上昇速度と、ガス流路内の温度と、既知のガス流路容積と、に基づいてビルドアップ(Build Up)手法を用いて算出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-120617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板処理システムにおいて流量制御器から出力されるガスの流量を適切に測定する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板処理システムにおける流量制御器の校正方法であって、前記基板処理システムは、所望の処理ガス中で基板を処理するための複数のチャンバと、前記複数のチャンバのそれぞれに前記処理ガスを供給する複数のガスボックスと、前記複数のガスボックスから供給される前記処理ガスの流量を測定する流量測定装置と、制御部と、を備え、前記複数のガスボックスは、それぞれ複数の流量制御器を含み、前記流量制御器の校正は、(a)前記流量制御器における校正前の流量設定値と出力値との関係を導出し、その関係に係るグラフの傾き及び/又は接線の傾きを算出する工程と、(b)前記グラフの傾き及び/又は接線の傾きを用いた校正値の算出式から、前記流量制御器の各流量設定値に関する校正値を算出する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板処理システムにおいて流量制御器の校正を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態にかかるウェハ処理システムの構成例を示す平面図である。
図2】実施の形態にかかるガス供給機構の構成例を示す系統図である。
図3】実施の形態にかかる流量制御器の構成例を示す模式図である。
図4】従来実行されていた校正方法の説明図である。
図5】本実施形態に係る構成方法の説明図である。
図6】本実施形態に係る校正方法の作用効果を示す概略説明図である。
図7】本実施形態に係る校正方法の作用効果を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、チャンバの内部空間に配置された半導体基板(以下、「ウェハ」という。)に対して、所望のガス雰囲気下でエッチング処理、成膜処理、クリーニング処理等の各種ガス処理が行われる。これらガス処理においては、処理対象のウェハに対して所望のガス処理結果を得るため、チャンバの内部空間に供給されるガスの流量を精密に測定することが重要になる。
【0009】
特許文献1には、チャンバ本体の内部空間に供給されるガスの流量を測定する流量測定システムを備えた基板処理システムが開示されている。特許文献1に記載の流量測定方法によれば、ガス流量の測定手法の一つとしてビルドアップ手法が用いられる。当該手法では、一のガスボックスの一の流量制御器から、容積が既知のガス流路に対して任意の設定流量でガスを供給し所望の封入圧までガス流路内の圧力を上昇させ、当該ガス供給に伴うガス流路内の圧力上昇速度、ガス流路内の温度、及び当該ガス流路の容積に基づいて、ガス流量を測定する。その後、設定流量と測定結果の流量(測定流量)とを比較してずれがないか確認し、ずれがある場合は測定流量に基づき流量制御器を校正することができる。
【0010】
ところで、チャンバの内部空間に供給されるガスの流量を制御する流量制御器においては、各流量制御器の出荷時の個体差ばらつき等に起因し、流量制御器ごとに流量特性にずれが生じている場合がある。このような流量特性のずれを抑え、流量精度の向上のため、流量制御器においては種々の校正が必要とされる。流量制御器の校正は例えば流量制御器製品の出荷時や、装置運用時に実施されるのが一般的である。
【0011】
半導体デバイスの製造装置においては、各種ガス処理ごとにガス流量測定の信頼性の確認のため、装置側にて校正が実施されるが、その他に、流量制御器の出荷時や、製造装置起ち上げ時において流量制御器の校正が必要な場合がある。校正時間や手間の削減のため出荷時に校正を行わず、装置起ち上げ時に流量制御器の校正を行う場合、制御値と測定値のずれ量が非常に大きくなる恐れがあり、そのような場合に対応した校正手法を行う必要がある。
【0012】
本開示にかかる技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基板処理システムにおいて流量制御器の校正を効率的に行う。以下、一実施形態にかかる基板処理システムとしてのウェハ処理システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<ウェハ処理システムの構成>
図1は、本実施形態にかかるウェハ処理システム1の構成の概略を示す平面図である。ウェハ処理システム1では、基板としてのウェハWに対して、例えばエッチング処理、成膜処理、クリーニング処理等の所望のガス処理を行う。
【0014】
図1に示すようにウェハ処理システム1は、大気部10と減圧部11がロードロックモジュール20、21を介して一体に接続された構成を有している。大気部10は、大気圧雰囲気下においてウェハWに所望の処理を行う大気モジュールを備える。減圧部11は、減圧雰囲気下においてウェハWに所望の処理を行う減圧モジュールを備える。
【0015】
ロードロックモジュール20、21は、それぞれゲートバルブ20a、21aを介して、大気部10の後述するローダモジュール30と接続されている。またロードロックモジュール20、21は、それぞれゲートバルブ20b、21bを介して、減圧部11の後述するトランスファモジュール50と接続されている。ロードロックモジュール20、21は、ウェハWを一時的に保持するように構成されている。また、ロードロックモジュール20、21は、内部を大気圧雰囲気と減圧雰囲気(真空状態)とに切り替えられるように構成されている。
【0016】
大気部10は、大気圧雰囲気下でウェハWを搬送するローダモジュール30を有している。ローダモジュール30には、複数のウェハWを保管可能なフープ31を載置する複数、例えば5つのロードポート32と、前述のロードロックモジュール20、21が設けられている。なお、ローダモジュール30には、ウェハWの水平方向の向きを調節するオリエンタモジュール(図示せず)や複数のウェハWを格納する格納モジュール(図示せず)などが設けられていてもよい。
【0017】
ローダモジュール30の内部には、当該ローダモジュール30の内部に延伸するガイドレール41上を移動自在に構成されたウェハ搬送機構40が設けられている。ウェハ搬送機構40は、ウェハWを保持して移動する搬送アーム42を有している。搬送アーム42は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸回りに移動自在に構成されている。そしてウェハ搬送機構40は、ロードポート32のフープ31、及びロードロックモジュール20、21に対してウェハWを搬送可能に構成されている。
【0018】
減圧部11は、減圧雰囲気下でウェハWを搬送するトランスファモジュール50を有している。トランスファモジュール50には、目的に応じてウェハWにエッチング処理、成膜処理、クリーニング処理等の所望のガス処理を行う複数、例えば6つのチャンバ60と、前述のロードロックモジュール20、21が設けられている。チャンバ60は、ゲートバルブ61を介してトランスファモジュール50に接続されている。なお、トランスファモジュール50に接続されるチャンバ60の数は図示の例に限定されるものではなく、任意に決定できる。
【0019】
トランスファモジュール50の内部には、当該トランスファモジュール50の内部に延伸するガイドレール71上を移動自在に構成されたウェハ搬送機構70が設けられている。ウェハ搬送機構70は、ウェハWを保持して移動する搬送アーム72を有している。搬送アーム72は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸回りに移動自在に構成されている。そしてウェハ搬送機構70は、任意のチャンバ60、及びロードロックモジュール20、21に対してウェハWを搬送可能に構成されている。
【0020】
そしてトランスファモジュール50では、ロードロックモジュール20に保持されたウェハWを搬送アーム72で受け取り、任意のチャンバ60に搬送する。また、チャンバ60で所望の処理が施されたウェハWを搬送アーム72が保持し、ロードロックモジュール21に搬出する。
【0021】
また減圧部11には、チャンバ60のそれぞれに対してガスを供給するためのガス供給機構100が設けられている。ガス供給機構100は、チャンバ60に対するガスの供給を制御するガス制御ユニットを収容した、複数、例えば各チャンバ60に対応した6つのガスボックス110と、ガスボックス110(チャンバ60)の一次側(上流側)に設けられた少なくとも1つのガスソースを備えるガス供給部としてのメインガスユニット120と、チャンバ60に供給されるガスの流量を測定する流量測定ユニット130および測定配管131と、を備えている。
【0022】
以上のウェハ処理システム1には制御部200が設けられている。制御部200は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理システム1におけるウェハWのガス処理を制御するプログラムが格納されている。またプログラム格納部には、後述の流量制御器111の校正を行うプログラムが更に格納されてもよい。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御部200にインストールされたものであってもよい。また、当該記憶媒体Hは一時的なものであってもよいし、非一時的なものであってもよい。
【0023】
<ガス供給機構の構成>
次に、上述したガス供給機構100の詳細な構成の一例について説明する。図2はガス供給機構100のガス流路を構成する配管系を示す模式図である。なお、以下の説明においては、上述したようにガスの通流方向におけるメインガスユニット120側を一次側(上流側)、通流方向における後述の排気ユニット150側を二次側(下流側)、とそれぞれ言う場合がある。また図2においては、図示が煩雑になることを抑制するため、ウェハ処理システム1に配置された6つのチャンバ60、及びガスボックス110のうち、一部の図示を省略する。
【0024】
メインガスユニット120には、1又はそれ以上のガスをそれぞれのガスボックス110に供給するためのガスソース121及び流量制御器122が設けられている。一実施形態において、メインガスユニット120は、1又はそれ以上のガスを、それぞれに対応のガスソース121からそれぞれに対応の流量制御器122を介してガスボックス110に供給するように構成される。各流量制御器122は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。メインガスユニット120から供給されるガスとしては、例えばチャンバ60でのウェハ処理に用いられる処理ガスや、例えば後述のバルブの開閉動作等に用いられるドライガス等が含まれる。
【0025】
メインガスユニット120の下流側には、接続配管123を介して複数、本実施形態においては上述したように各チャンバ60に対応して6つのガスボックス110が接続されている。また、接続配管123にはそれぞれのガスボックス110に対応してバルブ123aが配置され、かかるバルブ123aの開閉により、メインガスユニット120からそれぞれのガスボックス110へのガス供給を任意に切り替え可能に構成されている。
【0026】
ガスボックス110には、対応するそれぞれのチャンバ60に対する処理ガスの流量を制御するための流量制御器111が設けられている。流量制御器111は、例えばメインガスユニット120から供給されるガスの種類に応じて複数設けられていてもよい。また流量制御器111の一次側には流量制御器一次バルブ111aが配置され、かかる流量制御器一次バルブ111aの開閉によりメインガスユニット120からそれぞれの流量制御器111へのガス供給を任意に切り替え可能に構成されている。また、流量制御器111の二次側には流量制御器二次バルブ111bが配置され、流量制御器111から二次側へのガスの供給を任意に切り替え可能に構成されている。流量制御器111の構成の詳細については、後述する。
【0027】
ガスボックス110の下流側には、接続配管112を介して対応するチャンバ60が接続されている。接続配管112には第1出力バルブ112aが配置され、かかる第1出力バルブ112aの開閉により、ガスボックス110からチャンバ60へのガス供給を任意に切り替え可能に構成されている。
【0028】
また、ガスボックス110の下流側には、接続配管112とは分岐して、測定配管131を介して流量測定ユニット130が接続されている。測定配管131には第2出力バルブ131aが配置され、かかる第2出力バルブ131aの開閉により、ガスボックス110から流量測定ユニット130へのガス供給を任意に切り替え可能に構成されている。
【0029】
本実施形態にかかるガスボックス110においては、一つの流量制御器111からガスを供給する場合に、例えばウェハ処理を目的としてチャンバ60に処理ガスを供給する場合は、第1出力バルブ112aを開放するとともに第2出力バルブ131aを閉止することで、処理ガスが接続配管112を通ってチャンバ60に供給される。一方、例えばガス流量の測定を目的として流量測定ユニット130にガスを供給する場合は、第2出力バルブ131aを開放するとともに第1出力バルブ112aを閉止することで、ガスが測定配管131を通って流量測定ユニット130に供給される。
【0030】
チャンバ60の内部には、上述したように接続配管112を介してウェハ処理の目的に応じた所望の処理ガスが供給される。そしてチャンバ60においては、供給された処理ガスを用いて、ウェハWに対してエッチング処理、成膜処理、クリーニング処理等の所望のガス処理が行われる。チャンバ60の内部に供給された処理ガスは、排気配管62を介して、後述の排気ユニット150に排出される。また、排気配管62には排気バルブ62aが配置され、かかる排気バルブ62aの開閉により、チャンバ60からの処理ガスの排気動作を制御可能に構成されている。
【0031】
流量測定ユニット130は、当該流量測定ユニット130の内部圧力を測定する複数、例えば本実施形態においては2つの圧力センサ132、133と、当該流量測定ユニット130の内部温度を測定する温度センサ134と、を含む。圧力センサ132、133による圧力測定レンジは任意に決定できるが、例えば流量測定ユニット130における圧力測定レンジを広くとるため、一方を高圧レンジ、他方を低圧レンジで測定可能なセンサとすることが好ましい。
【0032】
流量測定ユニット130の一次側は流量測定ユニット一次バルブ130aを介して測定配管131に接続され、かかる流量測定ユニット一次バルブ130aを開放することにより、ガスボックス110からのガスを流量測定ユニット130に導入可能に構成されている。また、流量測定ユニット130の二次側は流量測定ユニット二次バルブ130bを介して後述の校正システム140に接続されている。
【0033】
本実施形態において流量測定ユニット130は、内部に流路を形成しガスボックス110からのガスを通流しうるように構成されている。したがって、上記圧力センサ132、133および温度センサ134が設けられる流量測定ユニット130の内部とは、流量測定ユニット一次バルブ130aと流量測定ユニット二次バルブ130bとの間の領域であって、ガス流路を形成する流量測定ユニット130自身の内部空間を指す。
【0034】
また、本実施形態において測定配管131は、内部に流路を形成しガスボックス110からのガスを通流しうるように構成されている。そして、本実施形態にかかる後述のガス流量の測定方法においては、ガスボックス110からのガスを、測定配管131を介して流量測定ユニット130に封入することで、当該測定配管131及び流量測定ユニット130の内部圧力の上昇速度を計測し、かかる上昇速度を用いてガス流量を測定する。
【0035】
校正システム140は、流量測定ユニット130の容積を確認し、および/または、流量測定ユニット130内に設けられた圧力センサ132、133または温度センサの校正を行う。校正システム140は、基準器配管141及び基準器142を含む。また基準器配管141には基準器バルブ141aが配置され、当該基準器バルブ141aの開閉により、基準器142に対するガスの供給を任意に制御可能に構成されている。
【0036】
基準器配管141の上流側は、上述したように流量測定ユニット二次バルブ130bを介して流量測定ユニット130に接続されている。また、基準器配管141の下流側は、校正バルブ140a及び排気配管143を介して、前述の排気配管62、すなわち後述の排気ユニット150に接続されている。また、排気配管143には排気バルブ143aが配置され、かかる排気バルブ143aの開閉により、排気配管143と排気配管62の連通を任意に切り替え可能に構成されている。
【0037】
排気ユニット150は、排気配管62の下流においてガスを排気するよう構成されている。排気ユニット150は、ウェハ処理システム1に配置された複数のチャンバ60のそれぞれに対応して設けられる複数の排気機構151と、排気機構151の下流側において、排気ガスの除害処理を行うための少なくとも1つの除害装置152と、を含む。排気機構151としては、例えばターボ分子ポンプやドライポンプ等の真空ポンプ、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0038】
<流量制御器の構成>
ここで、図3を用いて本実施形態にかかる流量制御器111の構成について説明する。流量制御器111は、流路160、オリフィス162、コントロールバルブ164、圧力センサ166、温度センサ168、圧力センサ170、を有している。流路160の一端は流量制御器一次バルブ111aに接続される。流路160の他端は流量制御器二次バルブ111bに接続される。オリフィス162は、流路160の上記一端と上記他端との間において、流路160の断面積を部分的に縮小させている。オリフィス162より上流側の流路160をオリフィス一次側流路160a、下流側の流路160をオリフィス二次側流路160bと称する。
【0039】
オリフィス一次側流路160aにはコントロールバルブ164が設けられている。また、圧力センサ166および温度センサ168はそれぞれ、コントロールバルブ164とオリフィス162との間のオリフィス一次側流路162aの圧力および温度を測定するように構成されている。また、圧力センサ170は、オリフィス162と流量制御器二次バルブ111bとの間で、オリフィス二次側流路160bの圧力を測定するように構成されている。
【0040】
流量制御器111では、オリフィス一次側流路160aにおける圧力がオリフィス二次側流路160bにおける圧力の2倍以上である場合には、圧力センサ166によって取得された圧力の測定値から求められる流量と設定流量との差を減少させるよう、図示しない制御部によってコントロールバルブ164の開度が制御される。一方、オリフィス一次側流路162aにおける圧力がオリフィス二次側流路160bにおける圧力の2倍よりも小さい場合には、圧力センサ166によって取得された圧力の測定値と圧力センサ170によって取得された圧力の測定値との差から求められる流量と設定流量との差を減少させるよう、図示しない制御部によってコントロールバルブ164の開度が制御される。
【0041】
流量制御器111において、処理ガスの流量を制御する際には上述したようなコントロールバルブ164の開度により制御が実施される。一方、各種ガス処理の切り替え時や、装置起ち上げ時等においては、Nなどの校正用ガスを用い流量制御器111の精度を確認し、その校正が行われる場合がある。また、流量制御器111のような流量制御器を複数用いる場合には、それぞれの個体差を把握し管理するための校正が行われる場合もある。以下、従来の校正方法や本実施形態に係る構成方法について説明する。
【0042】
<流量制御器における従来の校正方法>
図4は、従来実行されていた校正方法の説明図であり、流量設定値(SET%)と出力値(OUT%)との関係をグラフで示したものである。グラフ中の破線は理論値、実線は校正前の実測値である。なお、図4では、一例として流量設定値が50%である場合について説明するため、グラフ中の一部を拡大して図示している。
【0043】
図4に示すように、例えば、流量設定値を50%とした場合に、構成前の実測値での出力値は43.07%であることが計測される。そこで、流量設定値が実測値の1.16倍(=50/43.07)であることが算出されるため、実際の流量値を設定値通りの50%にするためには、58.05%(=50×1.16)が校正値とされる。このような差分比率計算を用いた校正を多点校正で行うことで従来の校正方法は行われていた。
【0044】
本開示者らの検討によれば、この校正方法は、流量設定値と校正前のガス流量の実測値(図4中の実線)との関係が線形であり、その関係式のグラフの傾きが一定であり、理論値の傾きと同じであることを前提としている。例えば、流量制御器111において、流量設定値と実測値のずれが小さい場合には、上記の校正方法でも十分な精度が得られる場合がある。また、1点校正でも校正を行うことが可能なため、校正時間や手間が抑えられるといった利点がある。
【0045】
しかしながら、流量設定値と校正前のガス流量の実測値との関係は厳密には線形ではなく、また、グラフの傾きは理論値の傾きと同じではない。そのため、流量設定値と実測値のずれが大きい場合や、流量設定値(SET%)が例えば10%以下のような小さい範囲においては、校正の精度が十分でない場合がある。
【0046】
そこで、本開示者らは、より高精度でもって校正を行うべく鋭意検討を行い、以下に説明するような校正方法を創案した。
【0047】
<流量制御器における本実施形態に係る校正方法>
図5は、本実施形態に係る校正方法の説明図であり、流量設定値(SET%)と出力値(OUT%)との関係をグラフで示したものである。グラフ中の破線は理論値、実線は校正前の実測値である。なお、図5では、一例として流量設定値が50%である場合について説明するため、グラフ中の一部を拡大して図示している。
【0048】
本実施形態に係る校正方法では、先ず、(a)流量制御器111における校正前の流量設定値と出力値との関係を導出し、その関係に係るグラフの傾き及び/又は接線の傾きを算出する工程が行われる。即ち、図5に示す実測値での校正前の流量設定値と出力値の関係において、その関係を示すグラフ(図5中の実線)上の所定の区間におけるグラフの傾き及び/又は接線の傾きを算出する。ここでの所定の区間は任意に設定でき、例えば多点校正に用いる複数の流量設定値での隣り合う2点の間の区間としても良い。例えば、流量設定値が50%であり、校正前の流量の出力値が50%を下回る場合には、流量設定値が50%~80%の間の区間としても良い。また、例えば、流量設定値が50%であり、校正前の流量の出力値が50%を上回る場合には、流量設定値が20%~50%の間の区間としても良い。
【0049】
次いで、(b)上記(a)で算出されたグラフの傾き及び/又は接線の傾きを用いた校正値の算出式から、流量制御器111の各流量設定値に関する校正値を算出する工程が行われる。具体的には、以下の式(1)により流量制御器111の各流量設定値に関する校正値Xの算出が行われる。
Q1=α(X-Q1)+Q2 ・・・(1)
ここで、Q1:流量設定値、X:校正値、Q2:校正前の出力値、α:(a)で算出されたグラフの傾き及び/又は接線の傾き、である。
【0050】
図5に示すように、例えば、流量設定値を50%(=Q1)とした場合に、構成前の実測値での出力値は43.07%(=Q2)であることが計測される。そして、流量設定値50%と80%の間の区間での流量設定値と出力値との関係を示すグラフからは、そのグラフの傾き(あるいは接線の傾き)が0.93(=α)であると算出される。これらの値を上記式(1)に入れると以下の式(1a)となる。
50=0.93(X-50)+43.07 ・・・(1a)
この式(1a)から、校正値Xは57.48%と算出される。
【0051】
ここで、本実施形態に係る校正方法においては、多点校正として流量設定値を1%、2%、3%、5%、8%、10%、20%、50%、80%、100%とした場合のそれぞれに対し校正値を算出しても良い。多点校正で用いる流量設定値やその点数は任意であり、点数が多い程、流量校正の精度は向上するが、一方で計算の手間や時間の増加が懸念される。本実施形態にかかるウェハ処理システム1においてウェハWに対して行われるガス処理のガス種、処理条件、校正精度等に応じて定めれば良い。
【0052】
<本開示の技術の作用効果>
以上説明した本実施形態に係る校正方法を流量制御器111に適用することで、基板処理システムにおいて流量制御器111の校正が効率的に行われ、流量精度の向上が図られる。例えば、流量制御器111の出荷時の個体差ばらつき等に起因し、流量制御器111ごとに流量特性にずれが生じている場合に、出荷時の校正を行うことなく、基板処理システムでの流量制御器の校正を行うだけで十分な流量精度が担保される。
【0053】
流量制御器製品の出荷時の校正には多点校正が用いられ、その点数は例えば20点~30点となり、校正には時間や手間がかかることが懸念される。本実施形態に係る校正方法によれば、校正時間の短縮や校正の手間を削減することができ、流量制御器111の校正を効率的に行うことが可能となる。
【0054】
図6及び図7は本実施形態に係る校正方法の作用効果を示す概略説明図であり、N2ガスを流す際の流量制御器111の特性を計測した概略図である。図6は校正前、図7は校正後を示し、図中の破線は流量制御器111の理論値上の性能を示し、各プロットが流量ごとの精度を示す。なお、縦軸において中央に近い程、校正の精度が高いことを示す。図6図7を比較して分かるように、流量制御器111の特性が理論上の性能に比べ大きくずれている場合に、本実施形態に係る校正方法を適用することで、流量の校正が高精度で行われる。このような校正方法は、流量制御器製品の出荷時の校正が行われず、装置起ち上げ時において流量制御器111の校正が必要な場合に特に有用である。
【0055】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。例えば、上記実施形態の構成要件は任意に組み合わせることができる。当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【0056】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0057】
例えば、上記実施形態においては、図4を参照して従来の校正方法について説明し、図5を参照して実施形態に係る校正方法について説明したが、これらの手法は必ずしもいずれか一方のみを用いなくても良い。即ち、ウェハ処理システム1においてウェハWに対して行われるガス処理のガス種、処理条件や、流量制御器111における流量設定値に応じて各手法を使い分けても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 ウェハ処理システム
60 チャンバ
110 ガスボックス
111 流量制御器
200 制御部
W ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7