(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155680
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】アルミナ顆粒
(51)【国際特許分類】
C01F 7/025 20220101AFI20241024BHJP
C04B 35/111 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C01F7/025
C04B35/111
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023160734
(22)【出願日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2023070415
(32)【優先日】2023-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100206140
【弁理士】
【氏名又は名称】大釜 典子
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 大智
(72)【発明者】
【氏名】黒川 富支久
(72)【発明者】
【氏名】岸田 寛
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AB02
4G076AB13
4G076BA14
4G076BA43
4G076BB04
4G076BD02
4G076CA02
4G076CA28
4G076DA30
(57)【要約】
【課題】低温焼結性に優れたアルミナ顆粒を提供する。
【解決手段】1次アルミナ粒子をバインダーで結合して構成されたアルミナ顆粒であって、顆粒内部の細孔において、対数微分細孔容積の最大値を示す細孔半径が0.055μm以下である、アルミナ顆粒。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次アルミナ粒子をバインダーで結合して構成されたアルミナ顆粒であって、
顆粒内部の細孔において、対数微分細孔容積の最大値を示す細孔半径が0.055μm以下である、アルミナ顆粒。
【請求項2】
前記1次アルミナ粒子の比表面積径が90nm以上200nm未満である、請求項1に記載のアルミナ顆粒。
【請求項3】
前記1次アルミナ粒子の平均円形度が0.74以上である、請求項1または2に記載のアルミナ顆粒。
【請求項4】
前記1次アルミナ粒子の平均アスペクト比が1.40以下である、請求項1または2に記載のアルミナ顆粒。
【請求項5】
前記アルミナ顆粒中に含まれるアルミナの含有量100質量%に対して、焼結助剤を、金属元素換算で10~3000ppm含む、請求項1または2に記載のアルミナ顆粒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルミナ顆粒に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス焼結体の製造方法として、セラミックス原料をプレス成形して成形体を形成し、その成形体を焼結する方法がある。プレス成形用のセラミックス原料として、セラミックス顆粒が知られている(例えば特許文献1~2)。
【0003】
特許文献1には、有機成分とセラミックス粉体を含むセラミックス顆粒であって、平均顆粒径Dpが10~90μm、圧縮破壊強度σpが0.1~5MPaであって、かつ平均顆粒径Dpと圧縮破壊強度σpとが下式を満たすセラミックス顆粒が開示されている。
10≦Dp×σp≦45 [μm・MPa]
【0004】
特許文献2には、有機成分とセラミックス粉末とを含有するプレス成形用セラミックス顆粒において、該プレス成形用セラミックス顆粒の平均顆粒径が40~100μmであり、かつ該プレス成形用セラミックス顆粒中の水分含有量が0.6~1.5重量%であることを特徴とするプレス成形用セラミックス顆粒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-27914号公報
【特許文献2】特開2007-197265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
焼結時のエネルギー消費を低減する観点から、低い焼結温度で緻密なアルミナ焼結体を製造できる(つまり、低温焼結性に優れた)アルミナ顆粒が望ましい。しかしながら、特許文献1~2には、アルミナ顆粒の低温焼結性を向上することについて検討されていない。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、低温焼結性に優れたアルミナ顆粒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様1は、
1次アルミナ粒子をバインダーで結合して構成されたアルミナ顆粒であって、
顆粒内部の細孔において、対数微分細孔容積の最大値を示す細孔半径が0.055μm以下である、アルミナ顆粒である。
【0009】
本発明の態様2は、
前記1次アルミナ粒子の比表面積径が90nm以上200nm未満である、態様1に記載のアルミナ顆粒である。
【0010】
本発明の態様3は、
前記1次アルミナ粒子の平均円形度が0.74以上である、態様1または2に記載のアルミナ顆粒である。
【0011】
本発明の態様4は、
前記1次アルミナ粒子の平均アスペクト比が1.40以下である、態様1~3のいずれか1つに記載のアルミナ顆粒である。
【0012】
本発明の態様5は、
前記アルミナ顆粒中に含まれるアルミナの含有量100質量%に対して、焼結助剤を、金属元素換算で10~3000ppm含む、態様1~4のいずれか1つに記載のアルミナ顆粒である。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、低温焼結性に優れたアルミナ顆粒を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係るアルミナ顆粒の細孔について、細孔半径に対して、対数(Log)微分細孔容積をプロットしたグラフである。
【
図2】
図2は、実施例1および2のアルミナ顆粒のSEM画像である。
【
図3】
図3は、比較例1および2のアルミナ顆粒のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、低温焼結性に優れたアルミナ顆粒を実現すべく、鋭意研究を重ねた。その結果、1次アルミナ粒子から構成されたアルミナ顆粒の内部の細孔について、対数微分細孔容積の最大値を示す細孔半径が一定以下であればよいことを見出した。
以下、本実施形態に係るアルミナ顆粒について詳述する。
【0016】
[アルミナ顆粒]
(顆粒内部の細孔において、対数微分細孔容積の最大値を示す細孔半径が0.055μm以下)
アルミナ顆粒は、1次アルミナ粒子が、バインダーで結合されて構成されている。
アルミナ顆粒の内部には、複数の1次アルミナ粒子の間に形成された細孔が存在する。本実施形態のアルミナ顆粒は、その内部の細孔について、対数微分細孔容積の最大値を示す細孔半径(以下、単に「アルミナ顆粒の細孔半径」と称する)が0.055μm以下である。このようなアルミナ顆粒は、以下の理由から、低温焼結性に優れていると考えられる。
【0017】
アルミナ顆粒の細孔半径が小さいことは、アルミナ顆粒内における1次アルミナ粒子間の隙間が狭いことを意味する。そのようなアルミナ顆粒は、焼結時の緻密化が促進されると考えられる。本発明者らが鋭意研究を行った結果、アルミナ顆粒の細孔半径が0.055μm以下であると、焼結温度が低温(例えば1250℃~1350℃)であっても、十分に緻密化が進行して、密度の高いアルミナ焼結体を得ることができることを見出した。
アルミナ顆粒の細孔半径は、好ましくは0.050μm以下、より好ましくは0.043μm以下、さらに好ましくは0.040μm以下である。アルミナ顆粒の細孔半径は小さいほうが好ましく、例として、0.001μm以上である。
【0018】
アルミナ顆粒の細孔半径は、細孔径分析測定において得られた細孔半径に対して、対数(Log)微分細孔容積をプロットしたグラフから求める。
細孔径分析測定は、細孔径分布測定装置(例えば、Micromeritics社製の細孔径分布測定装置AutoPore V9600)を用いて、測定絶対圧範囲を1.07~59256psiaとする。細孔径分布測定装置により得られた細孔半径に対して、対数(Log)微分細孔容積をプロットしたグラフを作成する(
図1参照)。
図1のグラフには2つのピークがあり、細孔半径が小さい方のピーク(第1のピーク)が、アルミナ顆粒の内部の細孔に相当し、細孔半径が大きい方のピーク(第2のピーク)が、複数のアルミナ顆粒の間の隙間(細孔)に相当する。第1のピークの頂点の位置、つまり、対数微分細孔容積の最大値を示す細孔半径を求め、アルミナ顆粒の細孔半径とする。
【0019】
(1次アルミナ粒子の比表面積径が90nm以上200nm未満)
アルミナ顆粒構成する1次アルミナ粒子の比表面積径は、90nm以上200nm未満であることが好ましく、アルミナ顆粒の低温焼結性をさらに向上することができる。
1次アルミナ粒子の比表面積径は、好ましくは90nm、より好ましくは110nm以上、更に好ましくは130nm以上、特に好ましくは140nm以上であり、好ましくは200nm未満、より好ましくは190nm以下、更に好ましくは170nm以下、特に好ましくは145nm以下である。
【0020】
1次アルミナ粒子の比表面積径は、球状粒子の粒径と比表面積との関係を示す一般式である以下の式(1)から算出する。
A=6/(S×ρ) (1)
ここで、
A:1次アルミナ粒子の比表面積径(μm)、
S:1次アルミナ粒子の比表面積(m2/g)、および
ρ:1次アルミナ粒子の密度(g/cm3)であり、本明細書では3.99g/cm3とする。
【0021】
1次アルミナ粒子の比表面積(BET比表面積)は、JIS Z 8830:2013「ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定法」に規定された方法に従って、窒素吸着法一点法により求める。なお1次アルミナ粒子の比表面積は、アルミナ顆粒を600℃で仮焼してバインダーを除去した後に測定を行うか、顆粒にする前の1次アルミナ粒子をそのまま測定するか、のいずれかで行えばよい。いずれの状態で測定しても、ほぼ同様の測定結果が得られる。
具体的な測定方法としては、例えば、マウンテック社製の全自動比表面積測定装置Macsorbを用いて、サンプル(仮焼後のアルミナ顆粒、あるいは顆粒にする前の1次アルミナ粒子)0.1gをセルに入れ、前処理を200℃で20分間行った後、窒素吸着により測定する。
【0022】
(1次アルミナ粒子の平均円形度が0.74以上)
1次アルミナ粒子の平均円形度が0.74以上であることが好ましく、アルミナ顆粒の低温焼結性をさらに向上することができる。これは、1次アルミナ粒子の平均円形度が高いほど(つまり、1次アルミナ粒子が球状に近いほど)、複数の1次アルミナ粒子間の隙間が狭くなり、充填性が高まるためである。
1次アルミナ粒子の平均円形度は、好ましくは0.74以上、より好ましくは0.79以上である。1次アルミナ粒子の平均円形度の上限値は1.00以下である。
【0023】
(1次アルミナ粒子の平均アスペクト比が1.40以下)
1次アルミナ粒子の平均アスペクト比が1.40以下であることが好ましく、アルミナ顆粒の低温焼結性をさらに向上することができる。
本明細書におけるアスペクト比は、1次アルミナ粒子の最大直径と、最大直径の測定方向と直交する方向における粒径とをそれぞれ測定し、当該「直交する方向における粒径」に対する「最大直径」の比として求める。このように定義された1次アルミナ粒子の平均アスペクト比の最小値は1である。平均アスペクト比が1.40以下であることは、平均アスペクト比が1に近く、1次アルミナ粒子が球状に近い形状を有するものと推測される。球状に近い1次アルミナ粒子であると、複数の1次アルミナ粒子間の隙間が狭くなり、充填性が高まる。
【0024】
1次アルミナ粒子の平均アスペクト比は、好ましくは1.40以下、より好ましくは1.30以下である。1次アルミナ粒子の平均アスペクト比は、1.05以上であってよく、1.10以上であってよく、1.20以上であってもよい。
【0025】
1次アルミナ粒子の平均円形度および平均アスペクト比は、いずれも、アルミナ顆粒のSEM画像を画像解析することで求められる。
【0026】
測定方法の一例を以下に説明する。
走査型電子顕微鏡(例えば、日立ハイテクノロジーズ社製の走査型電子顕微鏡S-5500)を用い、加速電圧1keVでアルミナ顆粒のSEM画像を撮影する。アルミナ顆粒のSEM画像の取得の際は、アルミナ顆粒を構成する1次アルミナ粒子が、1画像当たり100~300個映るように倍率を調整する。例えば、倍率は1万倍~5万倍である。
図2に示した実施例1および2のアルミナ顆粒のSEM画像は4万倍、
図3に示した比較例1のアルミナ顆粒のSEM画像は2.5万倍、比較例2のアルミナ顆粒のSEM画像は2万倍で撮影した。
【0027】
SEM画像の画像解析は、商業的に利用可能な画像解析ソフト(例えば、Image J(National Institute of Health製))または画像解析サービス(例えば、DeepCle(堺化学工業社))を用いて行うことができる。実施例では、堺化学工業社のAI画像解析サービスDeepCle(AI model:3.3087_2f_r)を用い、AI自動解析した。画像解析により、100~300個の1次アルミナ粒子について円形度とアスペクト比を求める。得られた複数の円形度を算術平均して、平均円形度を求める。同様に、得られた複数のアスペクト比を算術平均して、平均アスペクト比を求める。
【0028】
(焼結助剤を10~3000ppm含む)
アルミナ顆粒は、必要に応じて焼結助剤を10~3000ppm含んでいてもよい。アルミナ顆粒を焼結する際に、アルミナ顆粒に含まれる焼結助剤が作用して、焼結を促進し得る。焼結助剤の含有量(ppm)は、アルミナ顆粒中のアルミナ含有量を100質量%としたときの、金属元素換算した焼結助剤の含有量として求める。焼結助剤の含有量は、好ましくは10ppm以上、より好ましくは100ppm以上、更に好ましくは200ppm以上、特に好ましくは300ppm以上であり、好ましくは3000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下、更に好ましくは1500ppm以下である。
【0029】
焼結助剤には、大気中での焼結時に焼結助剤として効果を発現するものを用いる。本実施形態に適した焼結助剤としては、大気中1200℃以下で酸化物になる化合物が挙げられ、これは、低温焼結(例えば1250℃~1350℃)の際に焼結助剤として機能し得る。化合物としては、例えば、酸化物、硝酸塩、酢酸塩、水酸化物、塩化物等が挙げられる。具体的には、マグネシウム、チタン、スカンジウム、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、ランタン、亜鉛、スズなどの化合物が適している。そのなかでも、マグネシウム化合物、特に酸化マグネシウムが好ましい。
【0030】
なお、本発明者らが検討を行った結果、焼結助剤として、マグネシウム化合物、亜鉛化合物、およびスズ化合物からなる群から選択される1種以上を適量(例えば、焼結助剤を合計で300ppm以上1200ppm以下)含むアルミナ顆粒は、透光性に優れたアルミナ焼結体を製造するのに好適であることが分かった。
近年、歯科用材料としてアルミナ焼結体が検討されているところ、低温焼結性に優れた本実施形態に係るアルミナ顆粒は、補綴用のアルミナ焼結体を簡易な加熱炉で焼結できる利点がある。さらに、上述するような焼結助剤を含むアルミナ顆粒は、透光性に優れたアルミナ焼結体を製造できるため、自然な透明感のある歯科用補綴材の原料として好適である。
【0031】
本発明者らは、焼結助剤として酸化マグネシウムを用いた場合の焼結温度についてさらに検討した結果、少なくとも焼結温度1350℃で透光性が発現すること、焼結温度1450℃では透光性がさらに向上することを見出した。
【0032】
アルミナ顆粒は、アルミナ焼結体の色味を制御するために、着色添加物を含んでもよい。着色添加物としては、例えば、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄などの化合物から1種または2種以上を組み合わせて添加する。化合物としては、例えば、酸化物、硝酸塩、酢酸塩、水酸化物、塩化物等が挙げられる。
アルミナ焼結体に発現する色は、着色添加物の種類によって決まる。例えば、クロムやマンガンを含む化合物を用いた場合は赤色、コバルトを含む化合物を用いた場合は青色、ニッケルを含む化合物を用いた場合は緑色、鉄を含む化合物を用いた場合は黄色のアルミナ焼結体を得ることができる。着色添加物の種類を適切に選択することにより、所望の色(例えば、鮮やかな赤色)を有するアルミナ焼結体を得ることができる。
【0033】
着色添加物の添加量としては、アルミナ顆粒中に含まれるアルミナ含有量を100質量%としたときに、金属元素換算した着色添加物量で10~3000ppm含むことが好ましい。
【0034】
焼結助剤(例えば、酸化マグネシウム)および着色添加物(例えば、酸化クロム)の含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)による元素の定量分析(例えば、MgおよびCrの定量分析)から求めることができる。
【0035】
アルミナ顆粒は、体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積50%の粒径D50が30μm以上150μm以下であり得る。
アルミナ顆粒のD50は、レーザ回折・散乱法で測定する。
測定方法の一例を説明する。0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液にアルミナ顆粒を添加し、攪拌棒で30秒間かき混ぜて分散させる。分散液を測定セルに入れ、脱泡処理したのちに、マイクロトラック・ベル社製のマイクロトラック粒度分布測定装置MT-3300を用い、測定時間:10s、測定回数:2回、粒子屈折率:1.77、溶媒屈折率:1.333として測定し、D50を求める。
なお、攪拌棒で短時間攪拌する程度であれば、アルミナ顆粒は1次アルミナ粒子に分離することは殆どない。
【0036】
(バインダーを0.1~5.0質量%含む)
アルミナ顆粒に含まれるバインダーの含有量は、1次アルミナ粒子同士を結合するのに十分な量でありつつ、アルミナ顆粒内の細孔半径に影響を及ぼしにくい量とすることが望ましい。
そのような観点から、アルミナ顆粒は、アルミナ顆粒全体(バインダーを含む)を100質量%としたときに、バインダーを0.1~5.0質量%含むことが好ましい。アルミナ顆粒に含まれるバインダーの含有量は、アルミナ顆粒全体を100質量%としたとき、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは0.8質量%以上であり、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、特に好ましくは1.8質量%以下である。
バインダーの含有量は、熱分析の重量減少分から特定することが可能である。
【0037】
[アルミナ顆粒の製造方法]
実施形態のアルミナ顆粒を製造する方法は特に限定されないが、上記物性を有するアルミナ顆粒を再現性良く製造することができることから、以下の製造方法を採用することが好適である。なお、本願の開示に接した当業者であれば、それらの記載に基づいて、本実施形態のアルミナ顆粒を製造可能な異なる方法に到達することもあり得る。
【0038】
アルミナ顆粒の製造方法は、1次アルミナ粒子を準備する工程と、1次アルミナ粒子を含むアルミナスラリーを作製する工程と、アルミナスラリーからアルミナ顆粒を造粒する工程とを含む。
【0039】
(1次アルミナ粒子を準備する工程)
1次アルミナ粒子を準備する工程は、
種晶が分散した種晶スラリーを調製する工程と、
前記種晶スラリーとアルミニウムアルコキシドとを混合して水酸化アルミニウムスラリーを得る工程と、
前記水酸化アルミニウムスラリーを乾燥および焼成してアルミナ粒子(1次アルミナ粒子)を得る工程と、
得られたアルミナ粒子を粉砕する工程と、を含む。
【0040】
(1.種晶スラリーを調製する工程)
アルミナ粒子(種晶の原料)を水に分散させた後、ボールミルで湿式粉砕を行う。その後、冷却遠心分離機(例えば、himac製:CR7N)で遠心処理を行い、沈殿物を除去する。これにより、種晶が分散された種晶スラリーを得る。種晶は、αアルミナであることが好ましい。αアルミナの種晶を用いることにより、後述する焼結工程において、低温焼結でアルミナのα化を進行させることができる。
種晶の粒子径は小さいことが好ましく、通常は0.01μm~0.2μmのものが用いられる。
【0041】
種晶のBET比表面積は、最終的に得られる1次アルミナ粒子の物性に影響を及ぼし得る。アルミナ粉末の分布RSDを実施形態に係る範囲(0.25~0.80)にするために、および/または結晶子径を好ましい範囲(650~1400Å)にするために、種晶のBET比表面積は、好ましくは30m2/g以上、より好ましくは40m2/g以上、さらに好ましくは50m2/g以上、特に好ましくは70m2/g以上にする。
BET比表面積は、1次アルミナ粒子のBET比表面積の測定方法と同じ方法で測定する。
【0042】
(2.前記種晶スラリーと前記アルミニウムアルコキシドとを混合して水酸化アルミニウムスラリーを得る工程)
種晶スラリーと、アルミニウムアルコキシドとを攪拌機に連続的に供給して混合する。この混合物を攪拌機で高速回転剪断攪拌することにより、種晶スラリー中の水と、アルミニウムアルコキシドとが加水分解反応して、加水分解物である水酸化アルミニウム粒子を含有するスラリー(水酸化アルミニウムスラリー)が得られる。
【0043】
本明細書において「高速回転剪断攪拌」とは、タービン(ローター)とステーター(スクリーン)との間のクリアランスが小さく(例えば2mm以下)、かつタービン(ローター)が高速回転(例えば周速約1m/秒~約40m/秒)するときに、タービン(ローター)とステーター(スクリーン)との間で生じる剪断力、圧力変動、キャビテーション、衝突力、ポテンシャルコア等の機械的エネルギーによって行う攪拌である。
高速回転剪断攪拌では、タービン(ローター)の回転数は3000rpm~21500rpm、好ましくは、8000rpm~15000rpm、例えば10000rpmとする。
【0044】
(3.前記水酸化アルミニウムスラリーを乾燥および焼成してアルミナ粒子(1次アルミナ粒子)を得る工程)
水酸化アルミニウムスラリーを公知の方法で乾燥し、得られた水酸化アルミニウムを焼成炉で焼成することにより、アルミナ粒子(1次アルミナ粒子)を得る。
焼成は、通常800℃以上、好ましくは900℃以上、通常は1000℃以下、好ましくは980℃以下、更に好ましくは960℃以下で行なわれる。
焼成は、大気中で行われてもよいし、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で行われてもよく、雰囲気中の水蒸気分圧を高く維持(例えば露点30℃以上)しながら焼成することが効果的である。
【0045】
(1次アルミナ粒子を含むアルミナスラリーを作製する工程)
得られた1次アルミナ粒子、バインダー、分散剤、および溶媒を配合し、任意で、可塑剤、焼結助剤、着色添加物を適量配合し、機械的な攪拌混合を行う。攪拌混合には、外部から超音波を照射しながら攪拌羽根または攪拌子等により攪拌混合をおこなう方法の他、ボールミル、ダイノーミル等の各種粉砕メディアを用いる方法、アトライター、ピンミル等の各種アジテーターを用いる方法など、慣用の方法を用いることができる。
【0046】
バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、各種アクリル系ポリマー、メチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール系、各種ワックス、各種多糖類などの有機バインダーを用いることができる。
【0047】
溶媒は、共に使用するバインダーの種類、アルミナ顆粒の造粒方法によって、好適な溶媒を選択することが好ましい。スプレードライヤーによりアルミナ顆粒の造粒する場合、アクリル系バインダーが好適である。その場合、溶媒としては、主に水が用いられる。使用するバインダーの種類および造粒方法によっては、各種有機溶媒(アセトン、エタノール、トルエンなど)を用いることができる。
【0048】
分散剤は、任意で添加することができ、共に使用する溶媒の種類によって好適な分散剤を選択することが好ましい。溶媒が水の場合には、分散剤として、主にポリカルボン酸アンモニウム塩[例えば商品名;SN-D5468、サンノプコ製]が用いられる。有機溶媒の場合には、分散剤として、オレイン酸エチル、ソルビタンモノオレート、ソルビンタントリオレート、ポリカルボン酸系等が用いられる。また、ポリエステル系[商品名;テキサホール3012、サンノプコ製]も好適である。ただし、これに限定されず、様々な分散剤を用いることができる。
【0049】
なお、併用する有機バインダーによっては、分散剤を用いない方が粘度の低いスラリーが作製でき、したがってスラリー中のアルミナ顆粒の濃度を高めることができる。そのような場合は、分散剤を添加しなくてもよい。
【0050】
可塑剤は、任意で添加することができ、共に使用するバインダーおよび有機溶媒の種類によって、好適な可塑剤を選択することが好ましい。有機バインダーと共に使用する可塑剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチエレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、各種エステル系等が用いられる。特に有機溶媒を用いる場合には、ジブチルフタレート、フタル酸ジエチルヘキシル等が用いられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
焼結助剤は、任意で添加することができる。焼結助剤は、アルミナ顆粒中に含まれるアルミナ含有量を100質量%としたときに、金属元素換算した焼結助剤量で10~3000ppm含むように添加することが好ましい。
【0052】
着色添加物は、任意で添加することができる。着色添加物は、アルミナ顆粒中に含まれるアルミナ含有量を100質量%としたときに、金属元素換算した着色添加物量で10~3000ppm含むように添加することが好ましい。
【0053】
得られたアルミナスラリーは、減圧下において脱泡してもよい。また、各種消泡剤を用いてもよい。またその後の成形方法によって、各種pH調整剤や凝集剤の添加により粘度を10~500センチポイズとしてもよい。たとえばスプレードライヤーによる造粒では球形の顆粒を作製するために、アルミナスラリーの粘度は塩酸水溶液やアンモニア水等によるpH調整で、30~300センチポイズに調整することが好ましい。さらには静置沈降や遠心分離やロータリーエバポレーター等による減圧濃縮等により、スラリー中のアルミナ濃度を高めることもできる。
【0054】
(アルミナスラリーからアルミナ顆粒を造粒する工程)
得られたアルミナスラリーを用いて、アルミナ顆粒を造粒する。
アルミナスラリーからアルミナ顆粒を造粒する方法は、公知の噴霧乾燥造粒法またはオシレーティング押出し造粒法により行うことができる。具体的には、得られたアルミナスラリーを噴霧乾燥装置(スプレードライヤー)等で噴霧乾燥することによって、アルミナ顆粒を造粒することができる。
【0055】
(変形例:1次アルミナ粒子からアルミナ顆粒を直接造粒する方法)
上述したアルミナ顆粒の製造方法では、1次アルミナ粒子をアルミナスラリーにしてからアルミナ顆粒を造粒したが、1次アルミナ粒子を、アルミナスラリーとせずに、直接アルミナ顆粒に造粒してもよい。
例えば、1次アルミナ粒子、バインダーおよび所望に応じて各種添加剤を攪拌造粒機にて混合造粒して造粒粉を作製し、この造粒粉をオシレーティング造粒機により押出し造粒と乾燥を繰り返して適用することで、アルミナ顆粒を作製してもよい。
【0056】
これらのアルミナ顆粒の造粒方法は、セラミックス成形用顆粒の造粒量、目的とするセラミックス成形体の性状等に依存して適宜選択することが可能である。なお、オシレーティング押出し造粒法とは、例えば数mm程度の粒径に造粒された粒子を網上で押し潰して細かくした粒子を落下させる作業を、編み目を順次細かくした数段の工程を行うことにより、所定の粒径以下の粒子を得る方法である。
【0057】
[アルミナ焼結体の製造方法]
実施形態に係るアルミナ顆粒を用いた、アルミナ焼結体の好適な製造方法の一例を以下に説明する。
アルミナ顆粒を、一軸プレス成形、冷間静水圧プレス成形等を行って、成形体を作製する。冷間静水圧プレス成形の場合、アルミナ顆粒を20~40MPa、好ましくは25~35MPaの圧力で一軸プレス成形した後、冷間静水圧プレス成形機にて98MPa以上、好ましくは150~200MPaで等方的に加圧し、得られた成形体を所定の形状に加工する。
【0058】
アルミナ焼結体を製造するための焼成条件の例を2つ挙げる。
(条件1)
・焼結工程
成形体を、大気中あるいは酸素雰囲気中で、1250~1350℃の範囲で2時間以上焼成して、アルミナ焼結体を得る。室温から焼結温度までの平均昇温速度は、例えば200℃/hrとする。
【0059】
実施形態に係るアルミナ顆粒は、内部細孔の半径が小さいことにより、優れた低温焼結性を備えており、例えば、条件1のように1250~1350℃の低温で焼結しても、緻密なアルミナ焼結体を製造することができる。
【0060】
(条件2)
・脱脂工程
成形体を、500~1200℃の範囲で1時間以上、好ましくは600~800℃の範囲で2時間以上焼成して、脱脂する。室温から焼成温度までの平均昇温速度は、例えば100℃/hrとする。
・焼結工程
脱脂工程の後、引き続き高温で焼成して、アルミナ焼結体を得る。条件2では、焼成雰囲気は限定されない
大気雰囲気中での焼成であれば、1200~1700℃、好ましくは1250~1450℃の範囲で2時間以上焼成して、アルミナ焼結体を得る。焼結工程での焼結温度は、脱脂工程での焼結温度以上とする。脱脂工程での焼成温度から、焼結工程の焼結温度までの平均昇温速度は、例えば200℃/hrとする。
【0061】
条件2は、低温焼結によるアルミナ焼結体を得る場合の他に、焼結助剤を含むアルミナ顆粒を用いて透光性のアルミナ焼結体を得る場合に好適である。透光性のアルミナ焼結体を得る場合、焼結工程の条件としては、大気中あるいは真空雰囲気において、1350℃~1700℃の範囲で焼成することが好ましく、特に1400℃~1450℃で焼成することで、アルミナ焼結体の透光性をより向上することができる。
【実施例0062】
(実施例1)
(1次アルミナ粒子の作製)
アルミナ粒子(種晶の原料)を水に分散させた後、ボールミルで湿式粉砕を行った。その後、冷却遠心分離機(himac製:CR7N)で回転数4000rpmにて30分間遠心処理を行い、沈殿物を除去した。これにより、種晶が分散された種晶スラリーを作製した。
【0063】
アルミニウムイソプロポキシドと、種晶スラリーとを、精密乳化分散機クレアミックスCLM-2.2S(エム・テクニック社製)を用いて、回転数10000rpmで混合して加水分解した。これにより、水酸化アルミニウムスラリーを作製した。
アルミニウムイソプロポキシドと種晶スラリーとの配合比は、(種晶スラリー中に含まれる水)/(アルミニウムイソプロポキシド)の比率は、金属成分の酸化物換算で、アルミニウムイソプロポキシドおよび種晶に含まれるアルミニウム成分の合計量100質量部あたり、種晶に含まれるアルミニウム成分(以下、単に「種晶のアルミニウム質量部」と称する)が10質量部含まれるように調整した。なお、各々のアルミニウム成分の含有量(質量部)は、使用したアルミニウムイソプロポキシドが全てアルミナになると仮定して計算で求めた。
【0064】
得られた水酸化アルミニウムスラリーを150℃で乾燥して水酸化アルミニウム粒子を得、それをアルミナ製坩堝に入れてガス炉で焼成した。焼成条件は、200℃/時間の昇温速度で焼成温度965℃に昇温し、その焼成温度で4時間保持して、1次アルミナ粒子を作製した。
アルミナ顆粒にする前の1次アルミナ粒子の比表面積(BET比表面積)測定を行った。この結果は、アルミナ顆粒にした後の1次アルミナ粒子の比表面積に相当するものとみなすことができる。
【0065】
(アルミナスラリーの作製)
得られた1次アルミナ粒子(1700g)、純水(1054g)および分散剤(7.95g、サンノプコ製SND-5468)と、アルミナビーズ(3540g、ニッカトー製、φ2-SSA999W)を、内面がアルミナライニングされたポット(容積3L)に充填し、65rpm、6時間の条件で均一に分散させて、アルミナスラリーを作製した。
【0066】
(アルミナ顆粒の作製)
得られたアルミナスラリー(705g)、純水(69.6g)、バインダー(17.4g、中央理化工業製、SA-261P)、可塑剤(4.35g、富士フィルム和光純薬製、PEG-400)を混合し、10分間攪拌した。得られたスラリーを流量79g/min、アトマイザー回転数18000rpm、入口温度180℃、出口温度90℃、熱風差圧1.1kPaの条件でスプレードライヤー(大川原化工機、Li-8型)を用いて噴霧乾燥し、アルミナ顆粒を作製した。
【0067】
得られたアルミナ顆粒について、細孔径分析測定、SEM観察を行った。細孔径分析測定から、アルミナ顆粒の細孔半径を求めた。SEM画像を解析して、1次アルミナ粒子の平均円形度および平均アスペクト比を求めた。各測定は、実施形態において例示した測定機器および測定条件で行った。なお、アルミナ顆粒の作製の際に、焼結助剤(MgO)を添加しなかった。
【0068】
(アルミナ焼結体の作製)
得られたアルミナ顆粒(5g)をφ20mmの円筒形成形型に充填し、圧力30MPa、30秒間の一軸成形を行い、次いで圧力98MPa、3分間の等方静水圧(CIP)成形を行うことでアルミナ成形体を得た。成形体を大気中、昇温速度200℃/hrで1250℃、または1350℃まで昇温し、それぞれの温度で2時間保持することでアルミナ焼結体を得た。得られたアルミナ焼結体の密度を、22℃の水中でアルキメデス法により測定した。
【0069】
(透光性測定用焼結体の作製)
得られたアルミナ顆粒(1g)をφ20mmの円筒形成形型に充填し、圧力30MPa、30秒間の一軸成形を行い、次いで圧力200MPa、3分間の等方静水圧(CIP)成形を5回行うことでアルミナ成形体を得た。成形体を大気中、昇温速度100℃/hrで600℃まで昇温し、その温度で2時間保持すること仮焼した。このアルミナ仮焼体を大気中、昇温速度200℃/hrで1350℃または1450℃まで昇温し、それぞれの温度で2時間保持することで透光性測定用のアルミナ焼結体(本明細書では「透光性測定用焼結体」と称する)を得た。この透光性測定用焼結体の表面を研磨した後、透光性を評価した。
【0070】
透光性評価は、日本電色工業のヘーズメーターNDH8000を用い、装置設定は、JIS K7361-1:1997の全光線透過率(T.T)と平行線透過率(P.T)の測定方法に準拠した。小径アタッチメントを取り付け、測定径は小径とした。装置起動後30分間暖気してから測定した。透光性測定用焼結体の表面研磨後の厚みを0.9~1.1mmとし、全光線透過率T.T、および平行線透過率P.Tを測定した。
図4は、実施例および比較例で作製した透光性測定用焼結体の写真である。
【0071】
(実施例2)
種晶のアルミニウム質量部が5.6質量部となるような配合比で水酸化アルミニウムスラリーを調製した以外は、実施例1と同様の手順で1次アルミナ粒子を作製し、アルミナスラリーを調製し、アルミナ顆粒を作製し、アルミナ焼結体と、透光性測定用焼結体とを作製した。
【0072】
(実施例3)
1次アルミナ粒子として、αアルミナ粉末AKP-50(住友化学製)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で、アルミナスラリーを調製し、アルミナ顆粒を作製し、アルミナ焼結体を作製した。
【0073】
(実施例4、6、8)
実施例1と同様の手順で、1次アルミナ粒子を作製し、アルミナスラリーを作製した。
また、高純度マグネシア粉末(150g、宇部マテリアルズ製、気相法マグネシア500A)と純水(2850g)を10分間ディスパー攪拌した後、湿式分散機(シンマルエンタープライズ製、ダイノーミル)で周速8m/s、流量500mL/min、アルミナビーズφ0.5mm(2690g)の条件で1循環させた後、30分間循環運転して均一に分散させ、マグネシアスラリーを作製した。
【0074】
アルミナスラリー(1250g)、マグネシアスラリー(12.79g)、純水(111.25g)、バインダー(30.85g、中央理化工業製、SA-261P)、可塑剤(7.71g、富士フィルム和光純薬製、PEG-400)を混合し、10分間攪拌した。得られたスラリーを流量79g/min、アトマイザー回転数18000rpm、入口温度180℃、出口温度90℃、熱風差圧1.1kPaの条件でスプレードライヤー(大川原化工機、Li-8型)を用いて噴霧乾燥し、アルミナ顆粒を作製した。なお、アルミナ顆粒に含まれるMgOの含有量は、金属元素換算値として表2に記載した。
【0075】
得られたアルミナ顆粒から、実施例1と同様の手順で、透光性測定用焼結体を作製した。
【0076】
(実施例5、7、9)
実施例2と同様の手順で、1次アルミナ粒子を作製し、アルミナスラリーを調製した。
実施例4と同様の手順で、マグネシアスラリーを調製し、アルミナ顆粒を作製し、実施例1と同様の手順で、透光性測定用焼結体を作製した。
【0077】
(実施例10)
実施例1と同様の手順で、1次アルミナ粒子を作製し、アルミナスラリーを調製した。
実施例4と同様の手順で、マグネシアスラリーを調製した。
また、酸化クロム粉末(15g、富士フィルム和光純薬製)と純水(285g)を1時間ボールミル分散させ、酸化クロムスラリーを作製した。
【0078】
アルミナスラリー(1250g)、マグネシアスラリー(12.79g)、純水(111.25g)、バインダー(30.85g、中央理化工業製、SA-261P)、可塑剤(7.71g、富士フィルム和光純薬製、PEG-400)、酸化クロムスラリー(22.5g)を混合し、10分間攪拌した。得られたスラリーを流量79g/min、アトマイザー回転数18000rpm、入口温度180℃、出口温度90℃、熱風差圧1.1kPaの条件でスプレードライヤー(大川原化工機、Li-8型)を用いて噴霧乾燥し、アルミナ顆粒を作製した。なお、アルミナ顆粒に含まれるMgO、およびCr2O3の含有量は、金属元素換算値として表4に記載した。
【0079】
(着色アルミナ焼結体の作製)
実施例10で得られたアルミナ顆粒(1g)をφ20mmの円筒形成形型に充填し、圧力30MPa、30秒間の一軸成形を行い、次いで圧力200MPa、3分間の等方静水圧(CIP)成形を5回行うことでアルミナ成形体を得た。成形体を大気中、昇温速度100℃/hrで600℃まで昇温し、その温度で2時間保持すること仮焼した。このアルミナ仮焼体を大気中、昇温速度200℃/hrで1450℃まで昇温し、その温度で2時間保持することで、着色したアルミナ焼結体(着色アルミナ焼結体)を得た。着色アルミナ焼結体の外観(色味)を肉眼で観察した。外観観察の結果を表4に示す。
図5は、実施例および比較例で作製した着色アルミナ焼結体の写真である。
【0080】
(実施例11)
実施例2と同様の手順で1次アルミナ粒子を作製した以外は、実施例10と同様に、アルミナスラリーを調製し、マグネシアスラリーを調製し、酸化クロムスラリーを調製し、アルミナ顆粒を作製し、そして着色アルミナ焼結体を作製した。なお、アルミナ顆粒に含まれるMgO、およびCr2O3の含有量は、金属元素換算値として表4に記載した。
【0081】
(比較例1)
1次アルミナ粒子として、αアルミナ粉末AKP-30(住友化学製)を使ったこと以外は、実施例1と同様の手順でアルミナスラリーを調製した。
また、実施例1と同様の手順でアルミナ顆粒を作製し、アルミナ焼結体を作製した。
【0082】
(比較例2)
1次アルミナ粒子として、αアルミナ粉末AKP-20(住友化学製)を使ったこと以外は、実施例1と同様の手順でアルミナスラリーを調製した。
また、実施例1と同様の手順でアルミナ顆粒を作製し、アルミナ焼結体を作製した。
【0083】
(比較例3)
比較例1と同じ1次アルミナ粒子を準備し、比較例1と同様の手順で、アルミナスラリーを調製した。
実施例4と同様の手順で、マグネシアスラリーを調製した。
実施例6と同様の手順で、アルミナ顆粒を作製した。
実施例1と同様の手順で、透光性測定用焼結体を作製した。
なお、アルミナ顆粒に含まれるMgOの含有量は、金属元素換算値として表2に記載した。
【0084】
(比較例4)
比較例2と同じ1次アルミナ粒子を準備し、比較例2と同様の手順で、アルミナスラリーを調製した。
実施例4と同様の手順で、マグネシアスラリーを調製した。
実施例6と同様の手順で、アルミナ顆粒を作製した。
実施例1と同様の手順で、透光性測定用焼結体を作製した。
なお、アルミナ顆粒に含まれるMgOの含有量は、金属元素換算値として表2に記載した。
【0085】
(比較例5)
比較例1と同じ1次アルミナを準備したこと以外は、実施例10と同様に、アルミナスラリーを調製し、マグネシアスラリーを調製し、酸化クロムスラリーを調製し、アルミナ顆粒を作製し、そして着色アルミナ焼結体を作製した。なお、アルミナ顆粒に含まれるMgO、およびCr2O3の含有量は、金属元素換算値として表4に記載した。
【0086】
実施例および比較例に係るアルミナ顆粒およびアルミナ焼結体の各種測定結果を表1~表4に示す。
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
表1~表4の測定結果について検討する。
表1の結果から、低温(1250℃、1350℃)での焼結試験において、本実施形態に規定した要件を満たす実施例に係るアルミナ顆粒は、比較例のアルミナ顆粒に比べて、より高密度のアルミナ焼結体を製造することができることが分かった。このことから、本実施形態に係るアルミナ顆粒は、低温焼結性に優れていることが確認された。
【0092】
表2~表3の結果から、本実施形態に規定した要件を満たす実施例に係るアルミナ顆粒は、比較例のアルミナ顆粒に比べて、透光性に優れたアルミナ焼結体を製造することができることが分かった。また、MgOの添加量のみが異なる実施例のグループ(実施例1、4、6および8からなるグループ、および実施例2、5、7および9からなるグループ)の中で比較すると、MgOの添加量が500~1000ppmのアルミナ顆粒を用いると、透過率が特に優れたアルミナ焼結体を製造できることが分かった。
【0093】
表4の結果から、本実施形態に規定した要件を満たす実施例に係るアルミナ顆粒は、比較例のアルミナ顆粒に比べて、より鮮やかな赤色のアルミナ焼結体を製造することができることが分かった(
図5参照)。このことから、本実施形態に係るアルミナ顆粒は、鮮やかな発色を有する着色アルミナ焼結体を提供できることが確認された。