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特開2024-155737排ガス処理装置および排ガス処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155737
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】排ガス処理装置および排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
   F23M 5/08 20060101AFI20241024BHJP
   F23G 7/06 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F23M5/08 A
F23G7/06 D ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024031883
(22)【出願日】2024-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2023068439
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 一知
(72)【発明者】
【氏名】細谷 和正
(72)【発明者】
【氏名】中条 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】京谷 敬史
【テーマコード(参考)】
3K078
【Fターム(参考)】
3K078AA05
3K078BA20
3K078BA26
3K078BA29
3K078CA12
3K078CA17
(57)【要約】
【課題】本発明は、筒体への副生成物の付着、および腐食性ガスと筒体との接触を防止し、かつ排ガスを効率的に処理することができる排ガス処理装置および排ガス処理方法を提供する。
【解決手段】排ガス処理装置1は、排ガスを処理するための排ガス処理装置1であって、熱を生成する熱生成装置5を備えた熱生成部2と、熱生成部2に接続され、熱により排ガスを熱処理する熱処理部3を備え、熱処理部3は、排ガスの流路Fを形成する筒体20と、筒体20内に水を供給して筒体の内面に水膜を形成する水供給構造体30を有し、筒体20は、直径が広がる径拡大部21を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスを処理するための排ガス処理装置であって、
熱を生成する熱生成装置を備えた熱生成部と、
前記熱生成部に接続され、前記熱により前記排ガスを熱処理する熱処理部を備え、
前記熱処理部は、
前記排ガスの流路を形成する筒体と、
前記筒体内に水を供給して前記筒体の内面に水膜を形成する水供給構造体を有し、
前記筒体は、直径が広がる径拡大部を有する、排ガス処理装置。
【請求項2】
前記径拡大部は、下方に向かって直径が徐々に広がる形状を有している、請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記筒体は、前記径拡大部の上端に接続された小径直管部をさらに有する、請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記径拡大部の内面は、粗面加工により形成された粗面であり、
前記径拡大部の内面は、前記水膜が前記径拡大部の内面の全体に形成される滑落角を有する、請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記筒体は、前記径拡大部の下端に接続された大径直管部をさらに有する、請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
前記筒体は、下方に向かって直径が徐々に縮小する径縮小部をさらに有し、前記径縮小部は前記大径直管部の下端に接続されている、請求項5に記載の排ガス処理装置。
【請求項7】
前記筒体は、下方に向かって直径が徐々に縮小する径縮小部をさらに有し、前記径縮小部は前記径拡大部の下端に接続されている、請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項8】
排ガスを処理する排ガス処理方法であって、
熱生成部により発生した熱を筒体内で前記排ガスと混合させることで、前記排ガスを処理し、
前記排ガスの処理中に、前記筒体内に水を供給して前記筒体の内面に水膜を形成し、
前記筒体は、直径が広がる径拡大部を有しており、前記排ガスの処理中に、前記径拡大部の内面の全体には前記水膜が形成されている、排ガス処理方法。
【請求項9】
前記径拡大部は、下方に向かって直径が徐々に広がる形状を有している、請求項8に記載の排ガス処理方法。
【請求項10】
前記筒体は、前記径拡大部の上端に接続された小径直管部をさらに有しており、前記排ガスの処理中に、前記小径直管部の内面の全体には前記水膜が形成されている、請求項8に記載の排ガス処理方法。
【請求項11】
前記径拡大部の内面は、粗面加工により形成された粗面であり、
前記径拡大部の内面は、前記水膜が前記径拡大部の内面の全体に形成される滑落角を有する、請求項8に記載の排ガス処理方法。
【請求項12】
前記筒体は、前記径拡大部の下端に接続された大径直管部をさらに有しており、前記排ガスの処理中に、前記大径直管部の内面の全体には前記水膜が形成されている、請求項8に記載の排ガス処理方法。
【請求項13】
前記筒体は、下方に向かって直径が徐々に縮小する径縮小部をさらに有しており、前記径縮小部は前記大径直管部の下端に接続されており、前記排ガスの処理中に、前記径縮小部の内面の全体には前記水膜が形成されている、請求項12に記載の排ガス処理方法。
【請求項14】
前記筒体は、下方に向かって直径が徐々に縮小する径縮小部をさらに有しており、前記径縮小部は前記径拡大部の下端に接続されており、前記排ガスの処理中に、前記径縮小部の内面の全体には前記水膜が形成されている、請求項8に記載の排ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス、液晶、LED等を製造する製造装置等から排出される排ガスを無害化処理する排ガス処理装置および排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶パネル、LED等を製造する半導体製造プロセスにおいては、真空にされたプロセスチャンバ内にプロセスガスを導入してエッチング処理やCVD処理等の各種処理を行っている。プロセスチャンバ、およびプロセスチャンバに接続されている排気系機器は、クリーニングガスを流すことにより定期的に洗浄されている。これらプロセスガスやクリーニングガス等の排ガスは、シラン系ガス、ハロゲンガス、PFCガス等を含み、人体に悪影響を及ぼすことや、地球温暖化の原因になる等の地球環境に悪影響を及ぼすことがあり、大気にそのまま放出することができない。そこで、これらの排ガスは、半導体製造装置の下流側に設置された排ガス処理装置によって無害化処理された後に大気に放出されている。
【0003】
排ガス処理装置は、排ガスの流路を形成する筒体内で、熱・酸化分解処理により排ガスを無害化するように構成されている。このような排ガス処理装置では、排ガスを熱処理する際の副生成物として発生した多量の粉塵(主としてSiO)が筒体内に付着して、堆積することがある。また、フッ素系や塩素系の腐食性ガスが含まれる場合、腐食性ミストにより、筒体の内壁面が腐食されることがある。そこで、筒体の内壁面に水膜を形成することにより、筒体への副生成物の付着、および筒体の内面への腐食性ガスの接触を防止する排ガス処理装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-161861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の半導体ウェハの大型化、微細化に伴って、半導体製造装置から排出される排ガスの量が増加している。したがって、排ガスを効率的に処理するために、排ガス処理装置の筒体を大容量化すること、および筒体内で排ガスと熱(例えば、火炎、熱プラズマジェットなど)を十分に混合させて、排ガスの熱・酸化分解反応を促進することが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、筒体への副生成物の付着、および腐食性ガス、および腐食性ミストと筒体との接触を防止し、かつ排ガスを効率的に処理することができる排ガス処理装置および排ガス処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、排ガスを処理するための排ガス処理装置であって、熱を生成する熱生成装置を備えた熱生成部と、前記熱生成部に接続され、前記熱により前記排ガスを熱処理する熱処理部を備え、前記熱処理部は、前記排ガスの流路を形成する筒体と、前記筒体内に水を供給して前記筒体の内面に水膜を形成する水供給構造体を有し、前記筒体は、直径が広がる径拡大部を有する、排ガス処理装置が提供される。
一態様では、前記径拡大部は、下方に向かって直径が徐々に広がる形状を有している。
一態様では、前記筒体は、前記径拡大部の上端に接続された小径直管部をさらに有する。
一態様では、前記径拡大部の内面は、粗面加工により形成された粗面であり、前記径拡大部の内面は、前記水膜が前記径拡大部の内面の全体に形成される滑落角を有する。
【0008】
一態様では、前記筒体は、前記径拡大部の下端に接続された大径直管部をさらに有する。
一態様では、前記筒体は、下方に向かって直径が徐々に縮小する径縮小部をさらに有し、前記径縮小部は前記大径直管部の下端に接続されている。
一態様では、前記筒体は、下方に向かって直径が徐々に縮小する径縮小部をさらに有し、前記径縮小部は前記径拡大部の下端に接続されている。
【0009】
一態様では、排ガスを処理する排ガス処理方法であって、熱生成部により発生した熱を筒体内で前記排ガスと混合させることで、前記排ガスを処理し、前記排ガスの処理中に、前記筒体内に水を供給して前記筒体の内面に水膜を形成し、前記筒体は、直径が広がる径拡大部を有しており、前記排ガスの処理中に、前記径拡大部の内面の全体には前記水膜が形成されている、排ガス処理方法が提供される。
一態様では、前記径拡大部は、下方に向かって直径が徐々に広がる形状を有している。
一態様では、前記筒体は、前記径拡大部の上端に接続された小径直管部をさらに有しており、前記排ガスの処理中に、前記小径直管部の内面の全体には前記水膜が形成されている。
一態様では、前記径拡大部の内面は、粗面加工により形成された粗面であり、前記径拡大部の内面は、前記水膜が前記径拡大部の内面の全体に形成される滑落角を有する。
【0010】
一態様では、前記筒体は、前記径拡大部の下端に接続された大径直管部をさらに有しており、前記排ガスの処理中に、前記大径直管部の内面の全体には前記水膜が形成されている。
一態様では、前記筒体は、下方に向かって直径が徐々に縮小する径縮小部をさらに有しており、前記径縮小部は前記大径直管部の下端に接続されており、前記排ガスの処理中に、前記径縮小部の内面の全体には前記水膜が形成されている。
一態様では、前記筒体は、下方に向かって直径が徐々に縮小する径縮小部をさらに有しており、前記径縮小部は前記径拡大部の下端に接続されており、前記排ガスの処理中に、前記径縮小部の内面の全体には前記水膜が形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、筒体の内面に水膜を形成して、筒体への副生成物の付着、および腐食性ガスと筒体との接触を防止することができる。また、径拡大部を有する筒体は、半径方向に排ガスの流路を拡大することができるため、多くの排ガスを処理できる。また、排ガスが径拡大部を通過するときに乱流を形成し、同時に熱(火炎、プラズマなど)が径拡大部内で拡散することで、排ガスと熱が十分に混合される。したがって、径拡大部内で排ガスを効率的に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】排ガス処理装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のB-B線断面図である。
図4図1のC-C線断面図である。
図5図1のD-D線断面図である。
図6】排ガス処理装置の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図7】排ガス処理装置のさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図8】排ガス処理装置のさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図9】排ガス処理装置のさらに他の実施形態を模式的に示す拡大断面図である。
図10】排ガス処理装置のさらに他の実施形態を模式的に示す拡大断面図である。
図11】排ガス処理装置のさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図12】排ガス処理装置のさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図13】排ガス処理装置のさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図14】排ガス処理装置のさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、排ガス処理装置1の一実施形態を模式的に示す断面図である。本実施形態の排ガス処理装置1は、半導体デバイス、液晶、LED等を製造する製造装置等から排出される排ガスを熱により無害化処理するための装置である。排ガスの例としては、シランガス(SiH)、ハロゲン系のガス(NF,ClF,SF,CHF,C,CF)等の有害可燃ガスを含むガスが挙げられる。排ガス処理装置1の例としては、燃焼式排ガス処理装置、熱プラズマ式排ガス処理装置、およびヒータ式排ガス処理装置が挙げられる。
【0014】
排ガス処理装置1は、熱を生成する熱生成装置5を備えた熱生成部2と、熱により排ガスを熱処理する熱処理部(反応部)3を備えている。本実施形態では、排ガス処理装置1は燃焼式排ガス処理装置であり、熱生成装置5は火炎を生成する燃焼バーナーである。ただし、熱生成部2の構成は、排ガスを処理するための熱を生成することができる限りにおいて、以下に説明する本実施形態に限られない。例えば、熱生成装置5は、プラズマを発生するプラズマ発生器や、電気ヒータなどの他の熱源であってもよい。
【0015】
熱生成部2は、熱生成装置5の下方に位置する円筒形状の排ガス導入部6を有している。熱生成部2は、熱生成装置5が位置する上端で閉塞されており、排ガス導入部6の下端に開口部6aを有している。熱生成部2は、熱生成装置5に燃料を供給する燃料供給ノズル7と、空気を供給する空気供給ノズル8を備えている。熱生成装置(燃焼バーナー)5は、燃料供給ノズル7から供給された燃料と、空気供給ノズル8から供給された空気により点火され、火炎を生成するように構成されている。
【0016】
熱生成部2は、排ガス導入部6内に排ガス(被処理ガス)を吹き込む排ガス用ノズル10、燃料(燃料ガス)を吹き込む燃料用ノズル11、および支燃性ガス(酸素含有ガス)を吹き込む支燃性ガス用ノズル12を備えている。排ガス用ノズル10、燃料用ノズル11、および支燃性ガス用ノズル12は、排ガス導入部6に連結されている。図2は、図1のA-A線断面図である。図2に示すように、本実施形態の熱生成部2は、4つの排ガス用ノズル10を備えている。排ガス用ノズル10は、熱生成部2の内周面の接線方向に向けて排ガスが吹き込まれるように配置されている。
【0017】
図3は、図1のB-B線断面図である。図3に示すように、本実施形態の熱生成部2は、2つの燃料用ノズル11、および2つの支燃性ガス用ノズル12を備えている。燃料用ノズル11は、排ガス導入部6の内周面の接線方向に向けて燃料が吹き込まれるように配置されており、支燃性ガス用ノズル12は、排ガス導入部6の内周面の接線方向に向けて支燃性ガスが吹き込まれるように配置されている。本実施形態では、熱生成部2は、4つの排ガス用ノズル10、2つの燃料用ノズル11、および2つの支燃性ガス用ノズル12を備えているが、排ガス用ノズル10、燃料用ノズル11、および支燃性ガス用ノズル12の数は本実施形態に限定されない。例えば、熱生成部2は、単一の排ガス用ノズル10、単一の燃料用ノズル11、および単一の支燃性ガス用ノズル12を備えてもよい。
【0018】
本実施形態では、排ガス用ノズル10と、燃料用ノズル11および支燃性ガス用ノズル12が熱生成部2の軸方向においてずれて配置されているが、排ガス用ノズル10、燃料用ノズル11、および支燃性ガス用ノズル12の配置は本実施形態に限定されない。例えば、排ガス用ノズル10、燃料用ノズル11、および支燃性ガス用ノズル12は、熱生成部2の軸線に直交する同一平面上に配置されてもよい。
【0019】
一実施形態では、排ガス用ノズル10、燃料用ノズル11、および支燃性ガス用ノズル12から、熱生成部2の排ガス導入部6に吹き込まれる排ガス、燃料、および支燃性ガスの流速は、熱生成装置5で生成された火炎の燃焼速度以上である。排ガス導入部6の内周面の接線方向に向けて、火炎の燃焼速度以上の流速で排ガス、燃料、および支燃性ガスが吹き込まれると、排ガス導入部6の内周面から浮いた三種混合の円筒状混合火炎が形成される。円筒状混合火炎は熱生成部2の軸方向に沿って形成される。
【0020】
三種のガスを共に接線方向に吹き込むことで、旋回遠心力により円筒状混合火炎の外側は温度が低く重い未燃の三種混合ガス、内側は温度が高く軽い三種混合の燃焼後ガスの分布が形成される。したがって、円筒状混合火炎は、温度の低い未燃の三種混合ガスに覆われた自己断熱された状態となるため、放熱による温度低下がなく、燃焼効率の高いガス処理が行われる。また、排ガスは通常Nガス等により希釈されて排ガス導入部6へ流入するので、このNガスを含む排ガスを燃料と支燃性ガスと混焼することで、緩慢な燃焼となり、局所的な高温部が形成されないため、NOxの発生が抑制される。
【0021】
図1に示すように、熱処理部3は、その上端を閉塞する円環状の蓋プレート18と、排ガスの流路Fを形成する筒体20と、筒体20の内面に水膜を形成する水供給構造体30を備えている。熱処理部3は、熱生成部2に接続されている。より具体的には、熱処理部3の蓋プレート18は、熱生成部2の排ガス導入部6の外面に接続されている。排ガス導入部6の開口部6aは、筒体20内に位置しており、排ガス導入部6内で形成された排ガスを含む混合火炎は、排ガス導入部6の開口部6aから筒体20内に流れ込む。
【0022】
一実施形態では、排ガス用ノズル10、燃料用ノズル11、および支燃性ガス用ノズル12から、熱生成部2の排ガス導入部6に吹き込まれる排ガス、燃料、および支燃性ガスの流量は、排ガス導入部6内の空気比が約0.5となり、かつ筒体20内の空気比が1以上となるように設定される。排ガス導入部6内の空気比を約0.5(すなわち、酸欠状態)とすることで、排ガスの熱処理の副生成物として発生する粉塵(主としてSiO)が排ガス導入部6の内面に付着することを防止できる。また、筒体20内の空気比を1以上とすることで、筒体20内で排ガスの熱処理が十分に進行する。
【0023】
筒体20は、直径が広がる径拡大部21を有している。本実施形態の径拡大部21は、下方に向かって直径が徐々に広がる形状を有している。径拡大部21の下端の直径φ2は、上端の直径φ1よりも大きい。径拡大部21の内面は、円錐台形を有する。径拡大部21を有する筒体20は、半径方向に排ガスの流路Fを拡大することができるため、多くの排ガスを処理できる。また、熱生成部2の排ガス導入部6から筒体20内に流れ込んだ排ガスは、径拡大部21内で乱流を形成し、同時に火炎は径拡大部21の直径の広がりに沿って拡散火炎を形成する。排ガスと拡散火炎は径拡大部21内で十分に混合される。したがって、排ガスを効率的に処理することができる。
【0024】
水供給構造体30は、筒体20の上部に連結されている。水供給構造体30は、筒体20の内面に水膜を形成するための水を供給するスリットノズル33aを有する水溜め部33と、水溜め部33に水を供給する水供給ポート32を備えている。水供給ポート32は、水溜め部33の外周面に連結されており、水溜め部33内に水を供給するように構成されている。本実施形態の水溜め部33は、筒体20の上端よりも半径方向内側に位置している。
【0025】
図4は、図1のC-C線断面図である。水溜め部33は、矩形状の断面を有する円環状の中空構造を有している。本実施形態では、水供給構造体30は、4つの水供給ポート32を備えており、水溜め部33の内周面の接線方向に向けて水が供給されるように配置されている。水溜め部33の内部には、水供給ポート32から供給された水の流路が形成されている。水溜め部33は、その底部に環状のスリットノズル33aを有している。スリットノズル33aは、水溜め部33の底部の外周部に位置しており、筒体20の内面の上端に沿って延びている。
【0026】
水供給ポート32から、水溜め部33の内周面の接線方向に向けて噴出された水は、水溜め部33の内周面に沿って流れて、旋回流を形成する。水溜め部33内の水は、旋回流が形成されたままスリットノズル33aから流出して、筒体20の内面に沿って斜め下方に流れ落ちていき、排ガスの処理中に筒体20の内面に水膜を形成する。旋回流が形成された水は、半径方向外側に向かって遠心力が働くため、直径が広がる径拡大部21においても水膜が途切れる(剥がれる)ことなく、筒体20の内面の全体に水膜を形成することができる。
【0027】
本実施形態では、4つの水供給ポート32が設けられているが、水溜め部33内に水の旋回流を形成することができる限りにおいて、水供給ポート32の数は本実施形態に限定されない。例えば、2つの水供給ポート32が設けられてもよいし、あるいは単一の水供給ポート32が設けられてもよい。
【0028】
発明者らの実験によれば、径拡大部21の内面に形成される水膜の途切れやすさは、図1に示す径拡大部21の内面の鉛直方向に対する角度θ、および水供給ポート32から供給される水の流量に依存することが分かった。具体的には、径拡大部21の角度θが大きくなるほど、水膜が途切れやすくなり、水供給ポート32から供給される水の流量が少なくなるほど水膜が途切れやすくなる。径拡大部21の角度θ、および水供給ポート32から供給される水の流量は、径拡大部21の内面の全体において水膜が途切れないように、適正に設定される。一実施形態では、径拡大部21の内面の角度θは、15度~105度である。一実施形態では、径拡大部21の内面の角度θは、30度~80度である。角度θが30度~80度では、径拡大部21の直径が急拡大することにより、径拡大部21の内面上を流れる水の流速が重力により加速して、径拡大部21の内面への水膜の形成を促進し、かつ径拡大部21内に流れ込んだ排ガスの乱流の形成を促進することができる。
【0029】
筒体20を構成する材料の例としては、金属(例えば、ステンレス鋼)、および樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC))が挙げられる。本実施形態の径拡大部21の内面は、粗面加工により形成された粗面である。粗面加工の例としては、ブラスト加工が挙げられる。この粗面加工により径拡大部21の内面への水の付着性が向上し、均一な水膜を径拡大部21の内面の全体に形成することができる。
【0030】
粗面加工された径拡大部21の内面は、水膜が径拡大部21の内面の全体に形成される滑落角を有する。滑落角とは、水平な試料の表面上に液滴を滴下して、試料を徐々に傾けたときに、液滴が滑り出すときの試料の傾斜角度であり、試料の表面における液滴の滑りやすさを示す指標である。径拡大部21の内面の滑落角が大きいほど、水膜は下方に流れにくくなり(径拡大部21の内面に保持されやすくなり)、水膜は破れにくい。結果として、均一な水膜を筒体20の内面の全体に形成することができる。一実施形態では、径拡大部21の内面は、その滑落角を最大化する粗面加工により形成された粗面であってもよい。
【0031】
一実施形態では、径拡大部21を構成する材料が、水膜が径拡大部21の内面の全体に形成される滑落角を有する場合、径拡大部21の内面に粗面加工が施されなくてもよい。
【0032】
図1に示すように、熱処理部3は、蓋プレート18と水供給構造体30の間に配置され、熱処理部3内にパージガスを供給するパージガス供給部40をさらに備えている。図5は、図1のD-D線断面図である。パージガス供給部40は、その内側に位置する環状溝41と、環状溝41にパージガスを供給するパージガス供給流路42を有している。環状溝41は、その下端において開口しており、熱処理部3内の排ガスの流路Fに連通している。環状溝41は、排ガス導入部6と水溜め部33との間に位置している。すなわち、環状溝41は、排ガス導入部6の半径方向外側に位置しており、かつ水溜め部33の半径方向内側に位置している。
【0033】
本実施形態では、パージガス供給部40は、2つのパージガス供給流路42を備えており、環状溝41の外周側の面の接線方向に向けてパージガスが供給されるように配置されている。パージガス供給流路42から環状溝41に供給されたパージガスは、環状溝41の全周に充満して、環状溝41の下端の全周から下方に円環状に噴出される。パージガスの例としては、空気、窒素ガス、および酸素ガスと空気の混合気体が挙げられる。
【0034】
本実施形態では、2つのパージガス供給流路42が設けられているが、環状溝41内にパージガスを充満させることができる限りにおいて、パージガス供給流路42の数は本実施形態に限定されない。例えば、単一のパージガス供給流路42が設けられてもよい。一実施形態では、パージガス供給部40は、蓋プレート18と一体に構成されてもよい。
【0035】
排ガスにジクロロシラン(SiHCl)のように、加水分解により固形物を生成する水反応性物質が含まれる場合、水溜め部33のスリットノズル33aから流出した水が、熱処理部3内の上部(本実施形態では、水溜め部33の外面)に付着すると、固形物が付着成長して排ガスの流路Fを閉塞させることがある。これは、熱処理部3内の上部では、熱・酸化分解処理が完了していないジクロロシランが多く存在するためである。
【0036】
パージガス供給流路42からパージガスを適正な流量で吹き込むことで、熱処理部3内の上部(本実施形態では、水溜め部33の外面)を覆うパージガスの下向きの流れが形成される。パージガスが放出される環状溝41の直径は、径拡大部21の上端の直径φ1よりも小さく、環状溝41の開口面積を小さくできるので、環状溝41から下方に放出されるパージガスの流速を大きくすることができる。このようなパージガスの下向きの流れは、熱処理部3内の上部(本実施形態では、水溜め部33の外面)が濡れることを防止し、固形物の付着を防止できるため、排ガスの流路Fの閉塞を防ぐことができる。一実施形態では、排ガスに水反応性物質が含まれない場合、排ガス処理装置1は、パージガス供給部40を備えなくてもよい。
【0037】
図6は、排ガス処理装置1の他の実施形態を模式的に示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の筒体20は、径拡大部21の下端に接続された大径直管部22をさらに有している。大径直管部22は、円筒形状を有しており、径拡大部21の下端の直径φ2に等しい直径を有する。大径直管部22の「大径」は、ある具体的な数値よりも大きい直径を大径直管部22が有することを意味せず、大径直管部22が径拡大部21の上端の直径φ1よりも相対的に大きい直径を有することを意味する。本実施形態では、上述した水膜は、排ガスの処理中に、径拡大部21および大径直管部22の内面の全体に形成される。一実施形態では、大径直管部22の内面は、粗面加工により形成された粗面であってもよい。
【0038】
本実施形態では、熱生成部2の排ガス導入部6から筒体20内に流れ込んだ排ガスは、径拡大部21内で乱流を形成しながら、火炎は径拡大部21の直径の広がりに沿って拡散火炎を形成し、大径直管部22まで延びる。本実施形態の筒体20は、大径直管部22において排ガスの流路Fが軸方向にさらに延びているため、多くの排ガスを処理できる。したがって、多くの排ガスを効率的に処理することができる。
【0039】
図7は、排ガス処理装置1のさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図6を参照して説明した実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の筒体20は、大径直管部22の下端に接続された径縮小部23をさらに有している。径縮小部23は、下方に向かって直径が徐々に縮小しており、径縮小部23の下端の直径φ3は、上端の直径φ2よりも小さい。一実施形態では、径縮小部23の下端の直径φ3は、径拡大部21の上端の直径φ1と同じである。径縮小部23の内面は、逆円錐台形を有する。本実施形態では、上述した水膜は、排ガスの処理中、径拡大部21、大径直管部22、および径縮小部23の内面の全体に形成される。一実施形態では、大径直管部22および径縮小部23の内面は、粗面加工により形成された粗面であってもよい。
【0040】
本実施形態の筒体20は、径縮小部23において排ガスの流路Fが軸方向にさらに延びているため、多くの排ガスを処理できる。また、図7に示すように、熱生成部2の排ガス導入部6から筒体20内に流れ込んだ排ガスは、径拡大部21内で乱流を形成しながら、火炎は径拡大部21の直径の広がりに沿って拡散火炎を形成する。排ガスは、径縮小部23の内面上の水膜に衝突して上昇流を形成するため、排ガスと火炎が十分に混合される。したがって、多くの排ガスを効率的に処理することができる。
【0041】
図示しないが、径縮小部23の下端に、径拡大部21と大径直管部22と径縮小部23の組み合わせがさらに連結されてもよい。
【0042】
一実施形態では、図8に示すように、筒体20は、大径直管部22を有することなく、径縮小部23が径拡大部21の下端に接続されてもよい。本実施形態では、上述した水膜は、排ガスの処理中に、径拡大部21および径縮小部23の内面の全体に形成される。図示しないが、径縮小部23の下端に、径拡大部21と径縮小部23の組み合わせがさらに連結されてもよい。
【0043】
図9は、排ガス処理装置1のさらに他の実施形態を模式的に示す拡大断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図6を参照して説明した実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、径拡大部21の内面の鉛直方向に対する角度θは、90度である。径拡大部21の一端は、水供給構造体30の水溜め部33に接続されており、他端は、大径直管部22の上端に接続されている。径拡大部21は、水溜め部33から鉛直方向に対して垂直に延びており、水溜め部33から大径直管部22に向かって直径が広がっている。一実施形態では、筒体20は、大径直管部22の下端に接続された径縮小部23をさらに有してもよい。
【0044】
水溜め部33内の水は、旋回流が形成されたままスリットノズル33aから流出して、径拡大部21の内面に沿って半径方向外側に広がり、大径直管部22の内面に沿って流れ落ちる。旋回流が形成された水は、半径方向外側に向かって遠心力が働くため、直径が広がる径拡大部21においても水膜が途切れる(剥がれる)ことなく、筒体20の内面の全体に水膜を形成することができる。
【0045】
一実施形態では、図9に示すように、径拡大部21の水溜め部33との接続部である第1接続部21a、および径拡大部21の大径直管部22との接続部である第2接続部21bは、湾曲してもよい。第1接続部21aおよび第2接続部21bが湾曲していることにより、第1接続部21aおよび第2接続部21bにおいて水の流れが乱れて、水はねが生じることを防止することができる。第1接続部21aおよび第2接続部21bの湾曲形状の曲率は、水はねが生じないように、適正に設定される。第1接続部21aの湾曲形状の曲率と第2接続部21bの湾曲形状の曲率は、異なっていてもよい。
【0046】
図10は、排ガス処理装置1のさらに他の実施形態を模式的に示す拡大断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図9を参照して説明した実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、径拡大部21は、上方に向かって直径が徐々に広がる形状を有している。径拡大部21の内面の鉛直方向に対する角度θは、105度である。
【0047】
水溜め部33内の水は、旋回流が形成されたままスリットノズル33aから流出して、径拡大部21の内面に沿って半径方向外側に広がり、大径直管部22の内面に沿って流れ落ちる。旋回流が形成された水は、半径方向外側に向かって遠心力が働くため、上方に向かって直径が徐々に広がる径拡大部21においても水膜が途切れる(剥がれる)ことなく、筒体20の内面の全体に水膜を形成することができる。
【0048】
水供給ポート32から供給される水の流量は、径拡大部21の半径方向の幅W、径拡大部21の内面の表面粗さなどに応じて、径拡大部21の内面の全体において水膜が途切れないように、適正に設定される。例えば、径拡大部21の半径方向の幅Wが45mmであり、かつ径拡大部21の内面の算術平均粗さ(Ra)が16μmの場合、水供給ポート32から供給される水の流量は、10L/min以上に設定される。
【0049】
一実施形態では、図10に示すように、径拡大部21の水溜め部33との接続部である第1接続部21a、および径拡大部21の大径直管部22との接続部である第2接続部21bは、湾曲してもよい。第1接続部21aおよび第2接続部21bが湾曲していることにより、第1接続部21aおよび第2接続部21bにおいて水の流れが乱れて、水はねが生じることを防止することができる。第1接続部21aおよび第2接続部21bの湾曲形状の曲率は、水はねが生じないように、適正に設定される。第1接続部21aの湾曲形状の曲率と第2接続部21bの湾曲形状の曲率は、異なっていてもよい。
【0050】
図11は、排ガス処理装置1のさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図1乃至図5を参照して説明した実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の筒体20は、径拡大部21の上端に接続された小径直管部24を有している。小径直管部24は、円筒形状を有しており、径拡大部21の上端の直径φ1に等しい直径を有する。小径直管部24の「小径」は、ある具体的な数値よりも小さい直径を小径直管部24が有することを意味せず、小径直管部24が径拡大部21の下端の直径φ2よりも相対的に小さい直径を有することを意味する。
【0051】
本実施形態では、熱生成部2の排ガス導入部6から筒体20内に流れ込んだ排ガスは、小径直管部24から径拡大部21に流れ、径拡大部21内で乱流を形成する。火炎は径拡大部21の直径の広がりに沿って拡散火炎を形成する。本実施形態の筒体20は、径拡大部21において排ガスの流路Fが半径方向外側に広がっているため、多くの排ガスを処理できる。したがって、多くの排ガスを効率的に処理することができる。
【0052】
本実施形態では、水供給構造体30の水溜め部33は、筒体20の上端の半径方向外側に位置している。本実施形態の水溜め部33は、上述した環状のスリットノズル33aを有していない。代わりに、水溜め部33は、その内周壁を構成する環状の堰33bを有している。堰33bの上端と水溜め部33の上面との間には、水溜め部33の全周に亘って隙間33cが形成されている。堰33bの下端は、小径直管部24の上端に接続されている。一実施形態では、図11に示すように、堰33bは、小径直管部24の上部と一体に構成されてもよい。
【0053】
水供給ポート32から水溜め部33に供給された水は、水溜め部33内を満たし、堰33bの上端よりも液面が上昇すると、堰33bを超えて隙間33cから流出する。隙間33cから流出した水は、小径直管部24の内面の全周に沿って下方に流れ落ちていき、小径直管部24の内面に水膜を形成する。小径直管部24の内面上を下方に流れる水は、重力により加速するため、直径が広がる径拡大部21においても水膜が途切れる(剥がれる)ことなく、排ガスの処理中に筒体20の内面の全体に水膜を形成することができる。
【0054】
本実施形態においても、径拡大部21の角度θ、および水供給ポート32から供給される水の流量は、径拡大部21の内面の全体において水膜が途切れないように、適正に設定される。
【0055】
本実施形態では、パージガス供給流路42からパージガスを適正な流量で吹き込むことで、熱処理部3内の上部(本実施形態では、水溜め部33の隙間33cの周辺)を覆うパージガスの下向きの流れが形成される。パージガスが放出される環状溝41の直径は、小径直管部24の直径よりも小さく、環状溝41の開口面積を小さくできるので、環状溝41から下方に放出されるパージガスの流速を大きくすることができる。このようなパージガスの下向きの流れは、熱処理部3内の上部(本実施形態では、水溜め部33の隙間33cの周辺)が濡れることを防止し、固形物の付着を防止できるため、排ガスの流路Fの閉塞を防ぐことができる。一実施形態では、排ガスに水反応性物質が含まれない場合、排ガス処理装置1は、パージガス供給部40を備えなくてもよい。
【0056】
図12は、排ガス処理装置1のさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図11を参照して説明した実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の筒体20は、径拡大部21の下端に接続された大径直管部22をさらに有している。大径直管部22は、円筒形状を有しており、径拡大部21の下端の直径φ2に等しい直径を有する。本実施形態では、上述した水膜は、排ガスの処理中に、小径直管部24、径拡大部21、および大径直管部22の内面の全体に形成される。一実施形態では、大径直管部22の内面は、粗面加工により形成された粗面であってもよい。
【0057】
本実施形態では、熱生成部2の排ガス導入部6から筒体20内に流れ込んだ排ガスは、小径直管部24から径拡大部21に流れ、径拡大部21内で乱流を形成する。火炎は径拡大部21の直径の広がりに沿って拡散火炎を形成し、大径直管部22まで延びる。本実施形態の筒体20は、大径直管部22において排ガスの流路Fが軸方向にさらに延びているため、多くの排ガスを処理できる。したがって、多くの排ガスを効率的に処理することができる。
【0058】
図13は、排ガス処理装置1のさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図12を参照して説明した実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0059】
本実施形態の筒体20は、大径直管部22の下端に接続された径縮小部23をさらに有している。径縮小部23は、下方に向かって直径が徐々に縮小しており、径縮小部23の下端の直径φ3は、上端の直径φ2よりも小さい。一実施形態では、径縮小部23の下端の直径φ3は、径拡大部21の上端の直径φ1と同じである。径縮小部23の内面は、逆円錐台形を有する。本実施形態では、上述した水膜は、排ガスの処理中に、小径直管部24、径拡大部21、大径直管部22、および径縮小部23の内面の全体に形成される。一実施形態では、大径直管部22および径縮小部23の内面は、粗面加工により形成された粗面であってもよい。
【0060】
本実施形態の筒体20は、大径直管部22および径縮小部23において排ガスの流路Fが軸方向にさらに延びているため、多くの排ガスを処理できる。また、図13に示すように、熱生成部2の排ガス導入部6から筒体20内に流れ込んだ排ガスは、小径直管部24から径拡大部21に流れ、径拡大部21内で乱流を形成する。火炎は径拡大部21の直径の広がりに沿って拡散火炎を形成する。排ガスは、径縮小部23の内面上の水膜に衝突して上昇流を形成するため、排ガスと火炎が十分に混合される。したがって、多くの排ガスを効率的に処理することができる。
【0061】
図示しないが、径縮小部23の下端に、小径直管部24、径拡大部21、大径直管部22、および径縮小部23の組み合わせがさらに連結されてもよい。
【0062】
一実施形態では、図14に示すように、筒体20は、大径直管部22を有することなく、径縮小部23が径拡大部21の下端に接続されてもよい。本実施形態では、上述した水膜は、小径直管部24、径拡大部21、および径縮小部23の内面の全体に形成される。図示しないが、径縮小部23の下端に、小径直管部24、径拡大部21、および径縮小部23の組み合わせがさらに連結されてもよい。
【0063】
一実施形態では、図11乃至図14に示す排ガス処理装置1に図1乃至図10を参照して説明した実施形態の水供給構造30を適用してもよい。この場合、水供給構造30の水溜め部33内の水は、スリットノズル33aから流出して小径直管部24の内面に沿って流れ落ち、筒体20の内面の全体に水膜が形成される。
【0064】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0065】
1 排ガス処理装置
2 熱生成部
3 熱処理部(反応部)
5 熱生成装置
6 排ガス導入部
6a 開口部
7 燃料供給ノズル
8 空気供給ノズル
10 排ガス用ノズル
11 燃料用ノズル
12 支燃性ガス用ノズル
18 蓋プレート
20 筒体
21 径拡大部
22 大径直管部
23 径縮小部
24 小径直管部
30 水供給構造体
32 水供給ポート
33 水溜め部
33a スリットノズル
33b 堰
33c 隙間
40 パージガス供給部
41 環状溝
42 パージガス供給流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14