(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155738
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】加熱装置及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024033073
(22)【出願日】2024-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2023069421
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】武内 章悟
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB14
2C056EB30
2C056EC14
2C056EC29
2C056HA29
2C056HA46
(57)【要約】
【課題】ベルトの温度が精度良く得られるようにする
【解決手段】加熱装置30は、ベルト32と、熱源40を有し、ベルト32を加熱する加熱部材39と、ベルト32を介して加熱部材39と対向する位置においてベルト32の温度を検知する非接触式の第一温度センサ34と、ベルト32を介さずに加熱部材39と対向する位置において加熱部材39の温度を検知する非接触式の第二温度センサ35と、第二温度センサ35の検知温度に基づいて第一温度センサ34の検知温度を補正する温度補正部36と、温度補正部36により補正された温度に基づいて熱源40を制御する熱源制御部37とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトと、
熱源を有し、前記ベルトを加熱する加熱部材と、
前記ベルトを介して前記加熱部材と対向する位置において前記ベルトの温度を検知する非接触式の第一温度センサと、
前記ベルトを介さずに前記加熱部材と対向する位置において前記加熱部材の温度を検知する非接触式の第二温度センサと、
前記第二温度センサの検知温度に基づいて前記第一温度センサの検知温度を補正する温度補正部と、
前記温度補正部により補正された温度に基づいて前記熱源を制御する熱源制御部とを備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記温度補正部は、前記第二温度センサの検知温度に加え、前記ベルトの材質及び前記加熱部材の材質の少なくとも一方に応じた補正値に基づいて前記第一温度センサの検知温度を補正する請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記第一温度センサの検知温度をT1、前記第二温度センサの検知温度をT2、前記ベルトの材質又は前記加熱部材の材質に応じた補正値をαとすると、前記ベルトの温度は下記式により算出される請求項1に記載の加熱装置。
[ベルトの温度]
ベルトの温度=T1-T2×α
【請求項4】
前記ベルトは、搬送対象物を搬送する搬送ベルトであり、
前記加熱部材は、前記搬送ベルトに接触して前記搬送ベルトを加熱する加熱ローラである請求項1に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記第一温度センサ及び前記第二温度センサは、対象物から放射される放射赤外線を受光し、対象物の温度を検知する放射温度計である請求項1に記載の加熱装置。
【請求項6】
搬送対象物に液体を吐出する液体吐出部と、
前記液体吐出部によって液体が付与された前記搬送対象物を加熱する加熱装置を備える液体吐出装置であって、
前記加熱装置として、請求項1に記載の加熱装置を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を搬送する搬送ベルトなどのベルトを加熱する加熱装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2021-187678号)においては、搬送ベルトを周回移動させる従動ローラ内の発熱体によって搬送ベルトを加熱する構成が開示されている。また、特許文献1においては、搬送ベルトの温度を放射温度計によって検知し、検知された搬送ベルトの温度を発熱体の制御に使用することが記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の加熱装置においては、搬送ベルトの温度を精度良く得られない課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明においては、ベルトの温度が精度良く得られるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る加熱装置は、ベルトと、熱源を有し、前記ベルトを加熱する加熱部材と、前記ベルトを介して前記加熱部材と対向する位置において前記ベルトの温度を検知する非接触式の第一温度センサと、前記ベルトを介さずに前記加熱部材と対向する位置において前記加熱部材の温度を検知する非接触式の第二温度センサと、前記第二温度センサの検知温度に基づいて前記第一温度センサの検知温度を補正する温度補正部と、前記温度補正部により補正された温度に基づいて前記熱源を制御する熱源制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ベルトの温度が精度良く得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る液体吐出ユニットの構成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る加熱装置の構成を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る制御部のより具体的な構成を示すブロック図である。
【
図6】本発明の実施の一形態に係る加熱装置の熱源の制御方法を示すフローチャートである。
【
図7】下流側搬送ベルトの材質と、第一温度センサ及び第二温度センサの検知温度との関係を示す図である。
【
図8】入力部の表示画面に表示される補正値設定ボタンを示す図である。
【
図9】比較例に係る加熱装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付し、一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
<液体吐出装置の構成>
まず、
図1に基づき、本発明の一実施形態に係る液体吐出装置の構成について説明する。
【0011】
図1の液体吐出装置100は、シートSに液体を吐出して画像を形成するインクジェット式画像形成装置である。液体吐出装置100は、シート供給部1と、前処理部2と、画像形成部3と、乾燥部4と、反転機構部5と、シート排出部6とを備えている。
【0012】
シート供給部1は、画像が形成される記録媒体としてのシートを供給する部分である。シート供給部1は、複数のシートSを収容可能な供給トレイ11と、供給トレイ11からシートSを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12とを備えている。給送装置12によって送り出されたシートSは、前処理部2へ供給される。
【0013】
前処理部2は、シート供給部1から供給されたシートSに処理液を塗布する部分である。前処理部2は、処理液を塗布する処理液塗布装置13を備えている。処理液は、例えば、インクを凝集させる機能を有する液などであり、インクのにじみ防止や浸透補助などの画質向上を目的として、処理液塗布装置13によって画像形成前のシートSに塗布される。処理液が塗布されたシートSは、画像形成部3へ搬送される。
【0014】
画像形成部3は、シートSに対して画像を形成する部分である。画像形成部3は、液体吐出部15と、第一担持回転体14と、第二担持回転体16と、第三担持回転体17と、上流側搬送ベルト18とを備えている。第一担持回転体14、第二担持回転体16及び第三担持回転体17は、シートSを外周面に担持して回転することにより、シートSを搬送する回転体である。前処理部2から搬送されたシートSは、第一担持回転体14上に担持され、第二担持回転体16へ渡される。また、第二担持回転体16へ渡されたシートSは、第二担持回転体16から第三担持回転体17へ渡される。さらに、シートSは、第三担持回転体17から上流側搬送ベルト18へ渡される。液体吐出部15は、第二担持回転体16上に担持されるシートSに対して液体のインクを吐出する複数の液体吐出ユニット15C,15M,15Y,15Kを有している。本実施形態においては、第二担持回転体16の回転方向(シートSの搬送方向)の上流側から順に、シアンインク用の液体吐出ユニット15C、マゼンタインク用の液体吐出ユニット15M、イエローインク用の液体吐出ユニット15Y、ブラックインク用の液体吐出ユニット15Kが配置されている。なお、各液体吐出ユニット15C,15M,15Y,15Kの配置は、
図1に示される順に限定されるものではなく、任意の順番でもよい。また、必要に応じて、白色、金色、銀色などの特色のインクを吐出する液体吐出ユニットを追加してもよい。シートSが各液体吐出ユニット15C,15M,15Y,15Kとの対向位置に搬送されると、各液体吐出ユニット15C,15M,15Y,15KからシートSへインクが吐出され、画像が形成される。
【0015】
乾燥部4は、加熱手段31と下流側搬送ベルト32とを含む加熱装置30を備えている。加熱手段31は、シートS上のインクを乾燥させるためにシートSを加熱する手段である。加熱手段31は、シートSに対して非接触に配置される温風発生装置、高周波誘導加熱装置などの非接触式の加熱手段のほか、シートSに対して接触するように配置される加熱ローラ又は加熱ドラムなど接触式の加熱手段であってもよい。下流側搬送ベルト32は、加熱手段31の下方に対向するように配置される。上流側搬送ベルト18から下流側搬送ベルト32へシートSが受け渡されると、下流側搬送ベルト32によってシートSが搬送される。そして、シートSが加熱手段31と対向する位置に搬送されると、加熱手段31によってシートSが加熱され、シートS上のインクの乾燥が促進される。
【0016】
反転機構部5は、両面印刷を行う場合にシートSを表裏反転させて再度画像形成部3へ搬送する機構を有している。具体的に、反転機構部5は、スイッチバック搬送部24と、戻し搬送部25とを有している。シートSの両面に画像を形成する場合は、画像形成部3においてシートSの表側の面に画像が形成された後、シートSが乾燥部4を通過して反転機構部5へ搬送される。そして、スイッチバック搬送部24によってシートSが前後逆向きに搬送された後、シートSは、戻し搬送部25を通って第一担持回転体14の上流側へ搬送される。これにより、シートSは、表裏反転された状態で画像形成部3へ搬送される。そして、画像形成部3において、シートSの裏側の面に画像が形成される。その後、シートSは、乾燥部4による乾燥処理を経て、反転機構部5からシート排出部6へ搬送される。
【0017】
シート排出部6は、画像形成後のシートSが排出される部分である。シート排出部6は、排出トレイ26を備えている。反転機構部5からシート排出部6へシートSが搬送されると、シートSは排出トレイ26上へ順次積み重ねられて載置される。
【0018】
<液体吐出ユニットの構成>
図2に、本発明の一実施形態に係る液体吐出ユニット15C,15M,15Y,15Kの構成を示す。
【0019】
図2に示されるように、各液体吐出ユニット15C,15M,15Y,15Kは、例えば、フルライン型ヘッドを含むヘッドモジュール20を有している。ヘッドモジュール20は、ベース部21と、ベース部21上に互い違いに設けられた複数の液体吐出ヘッド22を有している。複数の液体吐出ヘッド22は、シート搬送方向Aとは交差するシート幅方向(
図2における横方向)へ配列された複数のノズル23から成るノズル列を複数有している。画像情報に基づく駆動信号によって各液体吐出ユニット15C,15M,15Y,15Kの吐出駆動が制御されると、ノズル23からシートSへインクが吐出され、シートS上に画像情報に応じた画像が形成される。
【0020】
<比較例の構成>
ここで、本発明の実施形態とは異なる比較例に係る加熱装置の構成について説明する。
【0021】
図9において、比較例に係る加熱装置90の構成を示す。具体的に、加熱装置90は、加熱手段91と、搬送ベルト92と、温度センサ93と、熱源制御部94などを備えている。加熱手段91は、搬送ベルト92上でシートSを加熱する温風発生装置などの加熱手段である。搬送ベルト92は、回転可能な複数のローラ96,97に掛け渡されている。複数のローラ96,97が回転すると、これに伴って搬送ベルト92が周回移動(回転)し、搬送ベルト92上のシートSが搬送される。
【0022】
また、複数のローラ96,97のうち、シート搬送方向上流側に配置されるローラ97は、内部に熱源95を有する加熱ローラである。熱源95から発せられる熱によって加熱ローラ97が加熱されると、加熱ローラ97の熱が搬送ベルト92に伝わって搬送ベルト92が加熱される。搬送ベルト92が加熱されることにより、シートSが加熱手段91へ至るまでに、シートSをあらかじめ温めておくことができる。これにより、加熱手段91によってシートSが急激に加熱されることによるシートSの収縮を抑制できる。
【0023】
また、熱源95の出力(発熱量)は、熱源制御部94によって制御される。熱源制御部94は、温度センサ93によって検知された搬送ベルト92の温度に基づいて熱源95を制御する。これにより、搬送ベルト92が過剰に温度上昇しないように維持される。
【0024】
このように、検知された搬送ベルト92の温度に基づいて熱源95を制御する構成において、熱源95の制御を適正に行うには、搬送ベルト92の温度を精度良く検知することが好ましい。しかしながら、比較例に係る加熱装置90においては、搬送ベルト92の温度を精度良く検知できない課題がある。詳しくは、温度センサ93が、加熱ローラ97に対し、搬送ベルト92を介して対向するように配置されているため、温度センサ93へ入力される放射赤外線には、搬送ベルト92の放射赤外線だけではなく、加熱ローラ97の放射赤外線も含まれる。すなわち、温度センサ93の検知温度は、加熱ローラ97の放射赤外線の影響を受けるため、搬送ベルト92の温度を精度良く得ることができない課題がある。また、温度センサ93の検知温度が加熱ローラ97の放射赤外線から受ける影響は、搬送ベルト92及び加熱ローラ97の材質によって変化するため、比較例に係る加熱装置90においては、検知された搬送ベルト92の温度に基づいて熱源95を適正に制御できない課題がある。
【0025】
そこで、本発明の一実施形態に係る液体吐出装置においては、ベルトの温度が精度良く得られるようにするため、次のような構成を採用している。以下、本発明の一実施形態に係る加熱装置30の構成について説明する。
【0026】
<本発明の一実施形態に係る加熱装置の構成>
図3は、本発明の一実施形態に係る加熱装置30の構成を示す図である。
【0027】
図3に示されるように、加熱装置30は、加熱手段31と、下流側搬送ベルト32のほか、吸引手段33と、第一温度センサ34と、第二温度センサ35と、温度補正部36と、熱源制御部37とを備えている。
【0028】
吸引手段33は、無端状の下流側搬送ベルト32の内側に配置される吸引チャンバなどである。吸引手段33が駆動すると、下流側搬送ベルト32に設けられる複数の吸引孔から空気が吸引されることにより、シートSが下流側搬送ベルト32の上面に吸着されて担持される。下流側搬送ベルト32としては、例えば、メッシュ状のベルトなどが用いられる。
【0029】
下流側搬送ベルト32は、支持ローラ38と加熱ローラ39に巻き掛けられて、周回移動(回転)可能に支持されている。支持ローラ38及び加熱ローラ39が回転することにより、下流側搬送ベルト32が
図3中の矢印方向に周回移動し、シートSが搬送される。
【0030】
加熱ローラ39は、内部に熱源40を有し、下流側搬送ベルト32を加熱する加熱部材である。熱源40としては、例えば、ハロゲンヒータ、カーボンヒータなどの赤外線を放出する輻射熱式のヒータが用いられる。加熱ローラ39内に配置される熱源40の数は、1つでもよいし、複数でもよい。また、加熱部材は、下流側搬送ベルト32を支持する支持ローラとは別に設けられる部材であってもよい。また、加熱部材は、下流側搬送ベルト32に接触して加熱する加熱ローラなどの接触式の加熱部材のほか、下流側搬送ベルト32に対して非接触に配置される非接触式の加熱部材であってもよい。
【0031】
熱源40が発熱し、加熱ローラ39が加熱されると、加熱ローラ39の熱が下流側搬送ベルト32に伝わって下流側搬送ベルト32が加熱される。下流側搬送ベルト32は、下流側搬送ベルト32のシート搬送方向上流端に配置される加熱ローラ39によって加熱された後、加熱手段31によりさらに加熱されるが、その後、下流側搬送ベルト32の表面が加熱手段31を通過すると、下流側搬送ベルト32の温度は低下する。しかしながら、下流側搬送ベルト32が再び加熱ローラ39の位置に到達することにより、加熱ローラ39によって加熱されるので、下流側搬送ベルト32の上流端においてシートSを温めることができる。これにより、シートSが加熱手段31によって急激に加熱されることによるシートSの収縮が抑制される。
【0032】
第一温度センサ34は、下流側搬送ベルト32に対して非接触に配置されて、下流側搬送ベルト32の温度を検知する非接触式の温度センサである。一方、第二温度センサ35は、加熱ローラ39に対して非接触に配置されて、加熱ローラ39の温度を検知する非接触式の温度センサである。第一温度センサ34及び第二温度センサ35としては、例えば、対象物から放射される放射赤外線を受光し、対象物の温度を検知する放射温度計などが用いられる。
【0033】
具体的に、第一温度センサ34は、下流側搬送ベルト32のうち、加熱ローラ39に巻き掛けられている部分の外周面に対向するように配置される。言い換えれば、第一温度センサ34は、下流側搬送ベルト32を介して加熱ローラ39と対向する位置に配置される。一方、第二温度センサ35は、下流側搬送ベルト32の内側において加熱ローラ39と直接対向するように配置される。言い換えれば、第二温度センサ35は、下流側搬送ベルト32を介さずに加熱ローラ39と対向する位置に配置される。なお、ここでいう「対向する」とは、各温度センサ34,35の温度を検知する検知素子、又は、検知領域が、下流側搬送ベルト32又は加熱ローラ39と対向することを意味する。
【0034】
温度補正部36は、第二温度センサ35の検知温度に基づいて第一温度センサ34の検知温度を補正する部分である。すなわち、温度補正部36は、第二温度センサ35によって検知される加熱ローラ39の温度情報に基づいて、第一温度センサ34によって検知される下流側搬送ベルト32の温度を補正する。
【0035】
熱源制御部37は、温度補正部36により補正された温度に基づいて熱源40を制御する部分である。
【0036】
<制御部の構成>
以下、
図4に基づき、本発明の一実施形態に係る制御部の構成について説明する。
【0037】
本実施形態に係る液体吐出装置100は、液体吐出装置100の各種機能を制御する制御部200を備えている。具体的に、制御部200は、温度補正部36及び熱源制御部37のほか、主制御部201と、画像入力部202と、滴付着量算出部203と、速度設定部204と、坪量設定部205と、液体吐出制御部207と、搬送制御部208と、乾燥制御部209とを備えている。
【0038】
主制御部201は、液体吐出装置100全体の制御を司る部分である。主制御部201は、画像入力部202、滴付着量算出部203、速度設定部204、坪量設定部205、温度補正部36から送られる各種情報に基づいて、液体吐出制御部207、搬送制御部208、乾燥制御部209、熱源制御部37を制御する。
【0039】
画像入力部202は、外部からの印刷画像に関する画像情報が入力される部分である。画像入力部202に入力された画像情報は、主制御部201及び滴付着量算出部203へ送られる。
【0040】
滴付着量算出部203は、画像入力部202から送られた画像情報に基づき、画像形成に必要な液体の滴付着量を算出する部分である。滴付着量算出部203によって算出された滴付着量は、主制御部201へ送られる。
【0041】
速度設定部204は、シートの搬送速度を設定する部分である。速度設定部204によって設定された速度情報は、主制御部201へ送られる。
【0042】
坪量設定部205は、シートの種類ごとにシートの坪量を設定する部分である。坪量設定部205によって設定された坪量は、主制御部201へ送られる。
【0043】
液体吐出制御部207は、液体吐出部15の駆動を制御する部分である。液体吐出制御部207は、液体吐出部15が有する液体吐出ユニット15C,15M,15Y,15Kの吐出動作などを制御する。
【0044】
搬送制御部208は、シートを搬送する搬送ローラなどを含む搬送部400の駆動を制御する部分である。搬送制御部208は、搬送ローラの搬送速度(回転速度)などを制御する。
【0045】
乾燥制御部209は、加熱手段31の駆動を制御する部分である。乾燥制御部209は、例えば、シートSに吹き付けられる温風の風量及び温度、あるいは、シートSを加熱する加熱ローラの温度などを制御する。
【0046】
また、本実施形態に係る液体吐出装置100は、入力部300を備えている。入力部300は、例えば、タッチパネル式の入力部である。入力部300には、作業者又は使用者によってシートの種類、シートの搬送速度などの情報が入力される。入力部300に入力された情報は、速度設定部204、坪量設定部205へそれぞれ送られる。
【0047】
主制御部201は、速度設定部204から送られる速度情報に基づいて搬送制御部208を制御する。これにより、搬送制御部208が搬送部400の駆動を制御し、シートが設定された速度で搬送される。
【0048】
また、主制御部201は、画像入力部202から送られる画像情報基づいて液体吐出制御部207を制御する。これにより、液体吐出制御部207が液体吐出部15を制御して液体を吐出させ、シートに画像が形成される。
【0049】
また、主制御部201は、滴付着量算出部203から送られる滴付着量と、坪量設定部205から送られる坪量に基づいて、乾燥制御部209を制御する。シートに吐出される液体の滴付着量が多い場合、あるいは、シートの坪量が大きい場合は、シートを乾燥させるための熱エネルギーも多く必要になる。このため、主制御部201が、滴付着量と坪量と温度情報に基づいて乾燥制御部209を制御し、加熱手段31の駆動を制御することにより、シートの乾燥が良好に行われる。
【0050】
また、主制御部201は、温度補正部36から送られる温度に基づいて熱源制御部37を制御する。これにより、熱源制御部37が熱源40を制御し、下流側搬送ベルト32が所定の温度で加熱される。
【0051】
図5は、本発明の一実施形態に係る制御部200のより具体的な構成を示すブロック図である。
【0052】
図5に示されるように、制御部200は、主制御部201と、液体吐出制御部207と、搬送制御部208のほか、外部機器接続I/F505と、ネットワークI/F506と、バスライン507とを備えている。
【0053】
主制御部201は、CPU(Central Processing Unit)501と、ROM(Read Only Memory)502と、RAM(Random Access Memory)503と、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)504とを有している。CPU501は、液体吐出装置100全体の動作を制御する。ROM502は、IPLなどのCPU501の駆動に用いられるプログラムなどを記憶する。RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用される。NVRAM504は、プログラムなどの各種データを記憶し、液体吐出装置100の電源が遮断されている間も各種データを保持する。
【0054】
外部機器接続I/F505は、USB(Universal Serial Bus)ケーブルなどにより、PC(Personal Computer)に接続され、PCとの間で制御信号及び印刷される画像のデータの通信を行う。ネットワークI/F506は、インターネットなどの通信ネットワークを利用してデータ通信するためのインターフェースである。バスライン507は、CPU501などの各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバス及びデータバスなどである。
【0055】
液体吐出制御部207は、主走査ドライバ508と、液体吐出ドライバ509とを有している。主走査ドライバ508は、キャリッジ600の主走査方向(シートの幅方向)への移動を制御する。液体吐出ドライバ509は、液体吐出部15の駆動を制御するためのドライバである。
【0056】
キャリッジ600には、液体吐出部15と、液体吐出ドライバ509が搭載されている。キャリッジ600が主走査方向へ移動すると、液体吐出部15がシートの幅方向へ移動し、間欠的に搬送されるシートに対して液体吐出部15から液体が吐出される。これにより、シートに画像が形成される。
【0057】
搬送制御部208は、副走査ドライバ510を有している。副走査ドライバ510は、搬送部400によるシートの搬送を制御する。
【0058】
液体吐出部15は、シートの幅方向に移動しながらシートに液体を吐出するシリアル型の液体吐出ヘッドのほか、移動せずにシートに液体を吐出するライン型の液体吐出ヘッドであってもよい。また、液体吐出ドライバ509は、キャリッジ600に搭載されず、キャリッジ600外で、バスラインに接続されてもよい。また、主走査ドライバ508、液体吐出ドライバ509及び副走査ドライバ510は、それぞれプログラムに従ったCPU501の命令によって実現する機能であってもよい。
【0059】
<熱源の制御方法>
続いて、
図6のフローチャートを参照しつつ、本発明の一実施形態に係る加熱装置30の熱源40の制御方法について説明する。
【0060】
画像形成動作が開始され、下流側搬送ベルト32の周回移動が開始されると、加熱ローラ39内の熱源40が発熱を開始し(
図6のStep1)、下流側搬送ベルト32が加熱される。また、第一温度センサ34によって下流側搬送ベルト32の温度が検知されると共に(
図6のStep2)、第二温度センサ35によって加熱ローラ39の温度が検知される(
図6のStep3)。なお、第一温度センサ34による温度検知と、第二温度センサ35による温度検知は、同じタイミングで行われてもよいし、異なるタイミングで行われてもよい。そして、各温度センサ34,35によって検知された温度情報は、温度補正部36へ入力される。そして、温度補正部36が、第二温度センサ35の検知温度に基づいて第一温度センサ34の検知温度を補正する(
図6のStep4)。そして、温度補正部36によって補正された温度情報は熱源制御部37へ送られ、熱源制御部37が補正された温度に基づいて熱源40を制御する(
図6のStep5)。
【0061】
温度補正部36による温度の補正は、第一温度センサ34の検知温度から第二温度センサ35の検知温度を減算することにより行う。すなわち、第一温度センサ34によって検知された搬送ベルト32の温度から、第二温度センサ35によって検知された加熱ローラ39の温度を減算し、第一温度センサ34の検知温度に含まれる加熱ローラ39の放射赤外線の影響を取り除く。その後、画像形成動作が終了するまで(
図6のStep6で「NO」の場合)、第一温度センサ34による温度検知と、第二温度センサ35による温度検知と、これらの温度センサ34,35の検知温度を用いて補正された温度に基づく熱源40の制御が、繰り返し行われる。また、画像形成動作が終了した場合(
図6のStep6で「YES」の場合)は、熱源40の発熱を停止し(
図6のStep7)、熱源40の制御も終了する。
【0062】
このように、本発明の実施形態においては、第一温度センサ34の検知温度から加熱ローラ39の放射赤外線の影響を取り除くことにより、検知結果から得られる下流側搬送ベルト32の温度の精度が向上し、熱源40を適正に制御できるようになる。
【0063】
<検知温度の温度差について>
ところで、第一温度センサ34の検知温度から第二温度センサ35の検知温度を減算した値、すなわち、両検知温度の温度差は、下流側搬送ベルト32及び加熱ローラ39の材質に応じて変化する。
【0064】
図7に、下流側搬送ベルト32の材質と、第一温度センサ34及び第二温度センサ35の検知温度との関係を示す。
【0065】
図7において、横軸は、第二温度センサ35によって検知された加熱ローラ39の温度を示し、縦軸は、第一温度センサ34によって検知された下流側搬送ベルト32の温度から第二温度センサ35によって検知された加熱ローラ39の温度を減算した温度差を示す。また、
図7中の○、●、◎でプロットされた値は、下流側搬送ベルト32が金属材料(黒色塗装無し)により構成されている場合の値であり、△、▲、□、■でプロットされた値は、下流側搬送ベルト32が金属材料の表面に黒色塗装を施した場合の値である。
【0066】
図7に示されるように、第一温度センサ34の検知温度と第二温度センサ35の検知温度との温度差は、下流側搬送ベルト32が黒色塗装されていない場合よりも、下流側搬送ベルト32が黒色塗装されている場合の方が大きくなっている。このことから、下流側搬送ベルト32が黒色塗装されている場合は、第一温度センサ34の検知温度が加熱ローラ39の放射赤外線の影響を大きく受け、下流側搬送ベルト32の温度が実際の温度よりもより大きい値として検知されていることが分かる。
【0067】
従って、下流側搬送ベルト32の温度を精度良く得られるようにするには、温度補正部36が、第二温度センサ35の検知温度に加え、下流側搬送ベルト32の材質に応じた補正値に基づいて第一温度センサ34の検知温度を補正することが好ましい。
【0068】
具体的に、下流側搬送ベルト32の温度は、下流側搬送ベルト32の材質に応じた補正値を用いて下記式(1)により算出されることが好ましい。
【0069】
下流側搬送ベルトの温度=T1-T2×α・・・・・式(1)
【0070】
式(1)において、T1は第一温度センサ34の検知温度、T2は第二温度センサ35の検知温度、αは下流側搬送ベルト32の材質に応じた補正値をαである。
【0071】
このように、温度補正部36が、第二温度センサ35の検知温度T2に加え、下流側搬送ベルト32の材質に応じた補正値αに基づいて第一温度センサ34の検知温度T1を補正することにより、下流側搬送ベルト32の温度がより高精度に得られるようになる。
【0072】
図7に示される材質と検知温度との関係を例にすると、下流側搬送ベルト32が黒色塗装の無い金属材料から成る場合、第一温度センサ34が受ける加熱ローラ39の放射赤外線の影響が小さいので、式(1)中の補正値αを例えば0.12に設定する。これに対して、下流側搬送ベルト32が黒色塗装される金属材料から成る場合は、第一温度センサ34が受ける加熱ローラ39の放射赤外線の影響が大きくなるので、式(1)中の補正値αを例えば0.37に設定すればよい。
【0073】
補正値αの設定は、例えば
図8に示される入力部300の表示画面を操作して設定される。材質に応じた補正値αをあらかじめ取得しておき、表示画面に表示される補正値設定ボタン301を押下して、材料に応じた補正値αを入力すればよい。
【0074】
また、第一温度センサ34の検知温度が受ける影響は、下流側搬送ベルト32の材質のほか、加熱ローラ39の材質によっても変化する。このため、第一温度センサ34の検知温度T1は、加熱ローラ39の材質に応じた補正値に基づいて温度補正部36により補正されてもよい。加熱ローラ39の材質が金属であるか樹脂であるか、また、金属でもアルミニウムであるか銅であるかのほか、加熱ローラ39の種別又は型番、加熱ローラ39の熱伝導率の違いなどに応じて、補正値及び補正方法の変更を行ってもよい。例えば、熱伝導率が比較的低い加熱ローラ39の場合には補正値を低く、熱伝導率が比較的高い加熱ローラ39の場合には補正値を高く設定してもよい。さらに、第一温度センサ34の検知温度T1は、加熱ローラ39の材質と下流側搬送ベルト32の材質との両方に応じた補正値に基づいて補正されてもよい。
【0075】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0076】
例えば、上記実施形態において用いられるシートは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、液体が付着して固着するもの、又は、液体が付着して浸透するものなどであればよい。具体的に、シートには、用紙のほか、樹脂フィルム、壁紙、電子基板なども含まれる。また、シートの材質としては、紙、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなどが挙げられる。また、シートは、長尺に形成された連続紙(ロール紙)のほか、あらかじめ所定のサイズにカットされたカット紙であってもよい。
【0077】
また、上記実施形態においては、シートを搬送する搬送ベルト(下流側搬送ベルト32)の温度を検知して熱源40を制御する例について説明したが、本発明は、シート以外の搬送対象物を搬送するベルトのほか、搬送以外の目的で使用されるベルトを加熱する装置にも適用可能である。
【0078】
また、本発明は、シートにインクを吐出して画像を形成するインクジェット式画像形成装置に限らず、インク以外の液体を吐出する液体吐出装置にも適用可能である。例えば、本発明に係る液体吐出装置は、画像形成装置のほか、画像形成前のシートに対してその表面を改質するために処理液を吐出する装置など、画像を形成しない液体吐出装置であってもよい。
【0079】
以上説明した本発明の態様をまとめると、本発明には、少なくとも下記の態様が含まれる。
【0080】
[第1の態様]
第1の態様は、ベルトと、熱源を有し、前記ベルトを加熱する加熱部材と、前記ベルトを介して前記加熱部材と対向する位置において前記ベルトの温度を検知する非接触式の第一温度センサと、前記ベルトを介さずに前記加熱部材と対向する位置において前記加熱部材の温度を検知する非接触式の第二温度センサと、前記第二温度センサの検知温度に基づいて前記第一温度センサの検知温度を補正する温度補正部と、前記温度補正部により補正された温度に基づいて前記熱源を制御する熱源制御部とを備える加熱装置である。
【0081】
[第2の態様]
第2の態様は、前記第1の態様において、前記温度補正部は、前記第二温度センサの検知温度に加え、前記ベルトの材質及び前記加熱部材の材質の少なくとも一方に応じた補正値に基づいて前記第一温度センサの検知温度を補正する加熱装置である。
【0082】
[第3の態様]
第3の態様は、前記第1の態様において、前記第一温度センサの検知温度をT1、前記第二温度センサの検知温度をT2、前記ベルトの材質又は前記加熱部材の材質に応じた補正値をαとすると、前記ベルトの温度は下記式により算出される加熱装置である。
[ベルトの温度]
ベルトの温度=T1-T2×α
【0083】
[第4の態様]
第4の態様は、前記第1から第3のいずれか1つの態様において、前記ベルトは、搬送対象物を搬送する搬送ベルトであり、前記加熱部材は、前記搬送ベルトに接触して前記搬送ベルトを加熱する加熱ローラである加熱装置である。
【0084】
[第5の態様]
第5の態様は、前記第1から第4のいずれか1つの態様において、前記第一温度センサ及び前記第二温度センサは、対象物から放射される放射赤外線を受光し、対象物の温度を検知する放射温度計である加熱装置である。
【0085】
[第6の態様]
第6の態様は、搬送対象物に液体を吐出する液体吐出部と、前記液体吐出部によって液体が付与された前記搬送対象物を加熱する加熱装置を備える液体吐出装置であって、前記加熱装置として、前記第1から第5のいずれか1つの態様の加熱装置を備える液体吐出装置である。
【符号の説明】
【0086】
15 液体吐出部
30 加熱装置
32 下流側搬送ベルト(ベルト)
34 第一温度センサ
35 第二温度センサ
36 温度補正部
37 熱源制御部
39 加熱ローラ(加熱部材)
40 熱源
100 液体吐出装置
S シート(搬送対象物)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】