(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155770
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】基板処理システム、基板処理装置、及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H01L21/30 568
H01L21/30 564
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062782
(22)【出願日】2024-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2023069315
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024008249
(32)【優先日】2024-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 慎介
(72)【発明者】
【氏名】只友 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】酒田 洋司
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 智也
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直樹
【テーマコード(参考)】
5F146
【Fターム(参考)】
5F146JA27
5F146LA17
5F146LA18
(57)【要約】
【課題】金属含有レジスト膜の形成、露光、及び現像等の処理によって基板に形成されるパターンについて、複数の基板の間でのばらつきを抑えること。
【解決手段】基板を収容する搬送容器が順番に搬送される複数の装置により構成され、前記基板にパターニングを行う基板処理システムにおいて、前記複数の装置のうちの一つをなし、前記基板に金属含有レジスト膜を形成する第1装置と、前記複数の装置のうちの他の一つをなし、露光された前記金属含有レジスト膜を現像する第2装置と、現像されるまでの前記金属含有レジスト膜が形成された前記基板を収容空間に複数収容し、当該各基板の金属含有レジスト膜の反応の進行度を調整するために、前記収容空間の雰囲気を調整する雰囲気調整部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容する搬送容器が順番に搬送される複数の装置により構成され、前記基板にパターニングを行う基板処理システムにおいて、
前記複数の装置のうちの一つをなし、前記基板に金属含有レジスト膜を形成する第1装置と、
前記複数の装置のうちの他の一つをなし、露光された前記金属含有レジスト膜を現像する第2装置と、
現像されるまでの前記金属含有レジスト膜が形成された前記基板を収容空間に複数収容し、当該各基板の金属含有レジスト膜の反応の進行度を調整するために、前記収容空間の雰囲気を調整する雰囲気調整部と、
を備える基板処理システム。
【請求項2】
前記雰囲気調整部は前記複数の装置のうちの少なくとも一つの装置に設けられ、前記搬送容器から搬出された前記基板を格納する格納部を含み、
前記格納部は、
前記収容空間を形成する格納容器本体と、
前記収容空間について、前記基板の搬送領域に対して開放される状態と、前記雰囲気の調整を行うために当該搬送領域に対して閉鎖される状態と、を切り替える開閉部と、
を備える請求項1記載の基板処理システム。
【請求項3】
前記装置は、
前記基板を当該装置に搬入出するためのロードポートを備える搬入出ブロックと、
前記パターニングを行うために前記基板を処理する処理ブロックと、を備え、
前記搬入出ブロックは前記ロードポートと前記処理ブロックとの間に形成される前記基板の搬送領域と、前記格納部と、を備え、
前記処理ブロックに対して搬入前の前記基板が、前記格納部に搬送される請求項2記載の基板処理システム。
【請求項4】
前記装置のうちの露光後、現像前の前記基板が搬送される装置における前記基板の搬送領域及び当該基板を処理する処理領域に、下方に向けてガスを供給して気流を形成する気流形成部と、
前記気流形成部に前記ガスを導入するガス流路に設けられて、前記ガス中の酸性ガス及び有機ガスのうちの少なくともいずれかを除去する成分除去部と、
を備える請求項1記載の基板処理システム。
【請求項5】
前記雰囲気調整部は、前記反応を促進させる雰囲気を前記収容空間に形成する請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板処理システム。
【請求項6】
前記パターニングの各工程の処理を各々行う処理モジュールでの前記基板の必要滞在時間よりも長い時間、前記収容空間にて当該基板が待機され、
前記収容空間は前記反応を促進させる雰囲気または大気雰囲気である請求項5記載の基板処理システム。
【請求項7】
前記雰囲気調整部は、前記反応を抑制する雰囲気を前記収容空間に形成する請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板処理システム。
【請求項8】
前記収容空間は、前記基板を搬入出するためのロードポートをなす載置部に載置された前記搬送容器の内部空間であり、
前記ロードポートを構成する前記搬送容器の蓋の着脱機構によって当該蓋が取り外された状態の当該搬送容器の開口部を開閉する開閉機構が設けられる請求項1記載の基板処理システム。
【請求項9】
前記複数の装置には、露光機に接続されると共に、露光後で現像前の前記基板の加熱を行う第3装置が含まれる請求項1記載の基板処理システム。
【請求項10】
前記第2装置は、前記基板に現像液を供給して現像を行う第1現像ブロックと、
前記基板に現像用のガスを供給して現像を行う第2現像ブロックと、を備え、
当該第1現像ブロック及び当該第2現像ブロックに共用の露光機と、当該第1現像ブロック及び当該第2現像ブロックの各々との間で前記基板を搬送する搬送ブロックと、
を備える請求項1記載の基板処理システム。
【請求項11】
複数の前記搬送容器を保管可能な保管部と、
前記複数の装置のうちの少なくとも一つの装置のロードポートと、前記保管部との間で前記搬送容器を移載する移載機構と、を備え、
前記雰囲気調整部は前記保管部に設けられ、前記収容空間は前記保管部における前記搬送容器の内部空間である請求項1記載の基板処理システム。
【請求項12】
前記第1装置は、露光機に接続され、
前記露光機による露光前に、前記金属含有レジスト膜が形成された前記基板を加熱する第1加熱モジュールと、
前記露光機による露光後に、前記基板を加熱する第2加熱モジュールと、
前記第2加熱モジュールで加熱された前記基板に現像液を供給して前記金属含有レジスト膜にパターンを形成する液処理用の現像モジュールと、
を備え、
前記第2装置は、前記基板に現像用のガスを供給するガス処理用の現像モジュールを備える請求項1記載の基板処理システム。
【請求項13】
基板を収容する搬送容器が順番に搬送される複数の装置により構成される基板処理システムの前記複数の装置のうちの一つをなす基板処理装置において、
前記複数の装置には、前記基板に金属含有レジスト膜を形成する第1装置及び露光された前記金属含有レジスト膜を現像する第2装置が含まれ、
現像されるまでの前記金属含有レジスト膜が形成された前記基板を収容空間に複数収容し、当該各基板の金属含有レジスト膜の反応の進行度を調整するために、前記収容空間の雰囲気を調整する雰囲気調整部を備える基板処理装置。
【請求項14】
基板を収容する搬送容器について複数の装置を順番に搬送して、前記基板にパターニングを行う基板処理方法であって、
前記複数の装置のうちの一つをなし、前記基板に金属含有レジスト膜を形成する第1装置と、
前記複数の装置のうちの他の一つをなし、露光された前記金属含有レジスト膜を現像する第2装置と、
現像されるまでの前記金属含有レジスト膜が形成された前記基板を収容空間に複数収容し、当該各基板の金属含有レジスト膜の反応の進行度を調整するために、前記収容空間の雰囲気を調整する雰囲気調整部と、
を用いて、
前記基板に前記金属含有レジスト膜を形成する塗布工程と、
前記露光後に前記金属含有レジスト膜を現像してパターニングを行う現像工程と、
前記塗布工程後、前記現像工程前において、前記金属含有レジスト膜の反応の進行度を調整する工程と、
を備える基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理システム、基板処理装置、及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを製造するにあたり、半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)に対してフォトリソグラフィが行われる。このフォトリソグラフィに用いられるレジストとしては金属を含有するレジストが用いられる場合が有り、特許文献1には当該レジストによるレジスト膜の形成、及び当該レジスト膜の露光後の現像を行う装置について示されている。この装置は、露光後の加熱処理時の各ウエハ間でレジスト膜に含まれる水分量の差を縮小させるために、レジスト膜形成後で露光前のウエハを内部に複数待機させることが可能であると共に、内部の湿度(水分量)が調整される基板収容ユニットを備えるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、金属含有レジスト膜の形成、露光、及び現像等の処理によって基板に形成されるパターンの形状について、複数の基板の間でのばらつきを抑えることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の基板処理システムは、基板を収容する搬送容器が順番に搬送される複数の装置により構成され、前記基板にパターニングを行うものであって、前記複数の装置のうちの一つをなし、前記基板に金属含有レジスト膜を形成する第1装置と、前記複数の装置のうちの他の一つをなし、露光された前記金属含有レジスト膜を現像する第2装置と、現像されるまでの前記金属含有レジスト膜が形成された前記基板を収容空間に複数収容し、当該各基板の金属含有レジスト膜の反応の進行度を調整するために、前記収容空間の雰囲気を調整する雰囲気調整部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、金属含有レジスト膜の形成、露光、及び現像等の処理によって基板に形成されるパターンについて、複数の基板の間でのばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る基板処理システムを示す概略平面図である。
【
図2】前記基板処理システムにおいて現像を行う装置を示す縦断側面図である。
【
図3】前記現像を行う装置を示す横断平面図である。
【
図4】ロード位置における収納容器及びロードポートを示す部分縦断側面図である。
【
図5】パターニングにおける前記収納容器での雰囲気調整を示す概要図である。
【
図6】パターニングにおける雰囲気調整を示すフローチャートである。
【
図7】パターニングにおける他の雰囲気調整を示す概要図である。
【
図8】第2実施形態に係る基板処理システムを示す概略平面図である。
【
図9】前記基板処理システムに設けられるバッファモジュールを示す斜視図である。
【
図10】前記基板処理システムに設けられるバッファモジュールを示す斜視図である。
【
図11】前記基板処理システムに設けられるバッファモジュールを示す斜視図である。
【
図12】シャッタの昇降パターンを例示する縦断側面図である。
【
図13】第3実施形態に係る基板処理システムを示す概略平面図である。
【
図14】第4実施形態に係る基板処理システムを示す概略平面図である。
【
図15】第5実施形態に係る基板処理システムを示す概略平面図である。
【
図16】第6実施形態に係る基板処理システムを示す概略平面図である。
【
図17】経過時間に対するレジストパターンのCDの変化を例示するグラフである。
【
図18A】前記基板処理システムに増設する装置を例示する概略平面図である。
【
図18B】前記基板処理システムに増設する装置を例示する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
本開示の基板処理システムの一実施形態である基板処理システム1について、
図1から
図3を参照しながら説明する。
図1は基板処理システム1の概略平面図である。基板処理システム1は、半導体ウエハである基板Wに対してフォトリソグラフィによるレジスト膜のパターニングを行うシステムであり、大気雰囲気下に設けられる装置D1~D3により構成されている。基板処理装置である装置D1~D3は、互いに独立している。ここでいう「独立している」とは、剥き出しの状態の基板Wが行き来せず、搬送容器Cに格納された状態で基板Wが搬送される構成となっていることである。搬送容器Cは、FOUP(Front Opening Unify Pod)と呼ばれる概ね直方体状の搬送容器であり、複数の基板Wを上下に並べて収容する。そして搬送容器Cが装置D1~D3を順番に搬送され、各装置において搬送容器Cから基板Wが取り出されて処理を受けることで、当該基板Wにレジストパターンが形成される。装置D1~D3間における搬送容器Cの搬送は、基板処理システム1が設けられる半導体装置製造工場の搬送機構であるOHT(Overhead Hoist Transport)71によって行われる。
【0009】
装置D1~D3には、レジストの塗布によるレジスト膜の形成、レジスト膜の露光後の基板Wの加熱(Post Exposure Bake、PEB)、レジスト膜の現像によるパターンの形成等を行う各種の処理モジュールが割り振られて設けられており、装置D2は露光機EXPに接続されている。そのように一連の処理を行う処理モジュールを複数の装置に割り振ることで、一部の処理モジュールがメンテナンス等により使用不可となって、当該処理モジュールを含む装置での処理が行えなくなった場合においても、他の装置では処理を継続することができる。そのため、半導体装置の生産性の低減が抑制される。なお、装置D1~D3は処理モジュールの他に、搬送容器Cと装置内の各処理モジュールや露光装置との間で搬送する搬送機構、及び基板Wの搬入出を行うためのロードポートLPを備える。
【0010】
基板処理システム1において基板Wに塗布されるレジストは金属含有レジストであり、より具体的には金属酸化物レジスト(Metal Oxide Resist、MOR)である。なお、上記の金属含有レジストは金属をレジストの構成成分として含むものであり、不純物としてのみ含むレジストを意味するものではない。このレジストの構成成分である金属としては、例えば錫(Sn)である。以降は特に記載しない限り、レジストはMORのことであるものとする。なおこのMORは、例えばネガ型レジストである。
【0011】
MORは、基板Wに塗布された後に大気に含まれる成分と反応することで変性し、レジスト膜に形成されるレジストパターンの線幅(Critical Dimension、CD)が変化する。なお、露光機による露光でレジスト膜の露光領域で金属原子からリガンドが外れることで、大気成分との反応は起こりやすくなる、即ち露光後はよりレジスト膜の変性が起こりやすいと考えられている。なお、後述する酸性ガスや有機ガスに曝された場合も、大気に曝された場合と同様に、これらのガスの成分とMORとの反応が進行してMORの変性が起こる。
【0012】
上記したように基板処理システム1では、OHT71によって独立した装置D1~D3間を跨いで基板Wの搬送が行われる。パターニングが完了するまでに、搬送容器C内の基板Wが大気に曝される時間がOHT71による装置間での搬送容器Cの搬送状況次第で、予定された時間からずれることが考えられる。基板処理システム1では、複数の基板Wを収容する空間において、不活性ガスであるN2(窒素)ガス雰囲気が形成される構成とされ、この空間に収容されてN2ガス雰囲気に曝される間、基板Wのレジスト膜の変性を抑えることができる。N2ガス雰囲気に曝される時間については適宜設定し、レジスト膜の変性の進行度を調整することで、各基板WのレジストパターンのCDの寸法を所望のものとする。このN2ガス雰囲気が形成される空間とは、具体的には搬送容器C内の容器内空間C1であり、装置における複数箇所でN2ガス雰囲気を形成することが可能である。なお、後述する他の基板処理システムでは、搬送容器C内の容器内空間C1の他に、複数の基板を収容するために装置に設けられるモジュールである、バッファモジュール内の格納空間42も該当する。
【0013】
同じロットに属する各基板Wは、共通の搬送容器C内に格納されている。その同じロットに属する基板Wについて、上記のN2ガス雰囲気が形成される空間に搬送することで、同じロット内でのパターンのCDの寸法の均一性の向上を図ることができる。異なるロット間において、N2ガス雰囲気に曝される時間を適宜調整することで、パターンのCDの寸法の均一性を高めることもできる。
【0014】
なお、この基板処理システム1ではPEB及び現像を1回のみ行うことでパターニングを行うが、後に他の基板処理システムとして例示するように、PEB、現像を複数回繰り返してパターニングを行うシステム構成とすることができる。初回のPEB、現像はパターンを形成するための処理で、二回目以降のPEB、現像はパターンを整形するための処理である。上記したパターニングとは、レジスト膜を形成してから現像を終了するまでの一連の処理であるが、PEB、現像を繰り返す場合には、最後に現像を行うまでである。なお、PEB、現像を繰り返すにあたり、整形が完了するまで、レジスト膜の下層における膜(下層膜)のエッチング処理は行われないものとする。つまり、レジスト膜の形成を行ってから最初に下層膜のエッチングを行う前の最後の現像を行うまでが、本明細書でいうパターニングに該当する。
【0015】
基板処理システム1を詳しく説明する前に、搬送容器Cについて
図2に基づいて説明しておくと、搬送容器Cは容器本体C2及び蓋体C3によって構成されている。容器本体C2の側方に形成される開口が蓋体C3によって閉じられた状態で、容器内空間C1は気密に保たれる。基板Wは、容器内空間C1に上下方向に沿って並べられる。容器本体C2の底壁部には、後述する中継コネクタ19b(
図3)に対応して取付孔19aが2つ設けられており、当該取付孔19aを介して容器内空間C1に対するガス供給及び排気が行われる。取付孔19aは、中継コネクタ19bの非接続時に不図示の弁により塞がれ、容器内空間C1の気密性が保たれる。
【0016】
基板処理システム1を構成する装置D1~D3は互いに類似した構成であり、代表して装置D3について説明する。装置D3は、基板Wを搬入出するための搬入出ブロックB1と、パターニングを行うための処理モジュールが配置される処理ブロックB2と、左右方向に接続して備えている。搬入出ブロックB1側を左方側とした手前側を前方とする。装置D3は、ブロック毎に筐体を有しており、外部の大気雰囲気から内部を気密に保つように構成されている。筐体内に基板Wの搬送領域や処理モジュールの配置領域が形成されている。
【0017】
搬入出ブロックB1について説明すると、当該搬入出ブロックB1の筐体DBの側壁に、前後に並んで複数のロードポートLPを備えている。ロードポートLPは、筐体DBの側壁に形成される貫通孔である基板搬入口L1、筐体DBの外側にて搬送容器Cを載置する載置部L2、及び開口部を筐体DB内から開閉するドアL3により構成されている。載置部L2は左右に移動可能であり、基板搬入口L1から比較的離れたアンロード位置と、基板搬入口L1に近接したロード位置との間で移動する。
図3においては、後側の2つの載置部L2はアンロード位置、前側の2つの載置部L2はロード位置に夫々位置する状態を示している。
【0018】
アンロード位置における載置部L2に対して搬送容器Cの受け渡しが行われる。
図4に示すように、ロード位置における搬送容器Cの容器本体C2の開口部は基板搬入口L1の開口縁に密着し、当該ロード位置での容器本体C2に対してドアL3は蓋体C3の着脱を行う。容器本体C2から外された蓋体C3はドアL3に保持され、ドアL3と共に基板搬入口L1の下方へと移動して基板搬入口L1を開放し、容器本体C2と搬入出ブロックB1との間で基板Wの受け渡しが可能となる。
【0019】
載置部L2には2つの中継コネクタ19bが設けられ、当該載置部L2に載置された搬送容器Cの各取付孔19aに接続される。一方の中継コネクタ19bはガス流路15を介してN2ガスの供給源13に接続され、他方の中継コネクタ19bは排気流路18を介して工場の排気路16に接続されている。ガス流路15に介設されたバルブ14の開閉により搬送容器C内へのN2ガスの給断がなされる。排気流路18に介設されたバルブ17の開閉により搬送容器C内に対して排気が行われる状態と、排気が停止した状態とを切り替えることができる。例えば搬送容器C内へのN2ガスの供給時には、排気も行われる。
【0020】
筐体DB内は基板搬送領域R1として構成されており、搬送容器Cから基板Wを基板搬送領域R1に搬入出するための基板搬送機構81が配置されている。基板搬送機構81は、基板搬送領域R1において前後及び上下に移動する基体81aと、基体81a上を進退して基板Wを支持する支持部81bとを備え、搬送容器Cと処理ブロックB2に設けられたタワーT1との間で基板Wを受け渡すことができる。筐体DB内の天井はガス供給部34として構成され、基板搬送領域R1の下方に向けてガスを供給する。このガス供給部34については、処理ブロックB2におけるガス供給部35、36と共に詳しく説明する。
【0021】
また基板搬送領域R1においては、ドアL3とは別に基板搬入口L1を開閉するシャッタ(開閉機構)L4が設けられている。筐体DBの内側に配置される駆動機構L41によって、シャッタL4は筐体DBの内側面に沿うように上下に移動する。より詳しくは、シャッタL4は、基板搬入口L1を覆うように配置される閉鎖位置と、基板搬入口L1の上方であって基板搬入口L1から外れた開放位置との間を移動する。ドアL3による基板搬入口L1の閉鎖は、基板搬入口L1の口縁にドアL3が密着するように行われるが、このシャッタL4による基板搬入口L1の閉鎖は基板搬入口L1の口縁にドアL3との間に若干の隙間が形成されるように行われ、シャッタL4の閉鎖位置と開放位置との間の移動は速やかに行われる。
【0022】
ドアL3が開かれる(基板搬入口L1から離れる)状態で、シャッタL4による基板搬入口L1の開閉が行われる。基板搬送機構81の支持部81bが搬送容器Cの容器本体C2に進入する場合を除いて、シャッタL4は基板搬入口L1を閉鎖する。それにより、搬送容器Cの容器内空間C1におけるN2ガスの濃度の低下が抑えられ、上記したMORの反応の進行が、より確実に抑制される。筐体DB内の天井はガス供給部34として構成され、基板搬送領域R3の下方に向けてガスを供給する。このガスに関しては後に補足して説明する。
【0023】
搬入出ブロックB1における筐体DBの外側で、ロードポートLPの上方には搬入出用の棚51が設けられており、棚51にOHT71が搬送容器Cを受け渡す。そして、搬入出ブロックB1の左方には、上下に複数段の待機用の棚52が設けられ、各棚51、52に搬送容器Cを載置することができる。移載機構72は昇降可能、前後左右に移動可能な搬送容器Cの保持部を備えており、搬入出用の棚51と、待機用の棚52と、ロードポートLPの載置部L2と、の間で搬送容器Cを移載する。移載機構72、搬入出用の棚51及び待機用の棚52については、搬入出ブロックB1に付帯して設けられる移載ユニット50とする。
【0024】
棚52は、前後方向に沿って複数の載置台54を備えており、各載置台54上に搬送容器Cが載置される。載置台54にはロードポートLPの載置部L2と同様に、中継コネクタ19bが2つずつ設けられており、その2つの中継コネクタ19bは、ガス流路15、排気流路18を介してN2ガスの供給源13、工場排気路16に接続されている。そしてガス流路15、排気流路18に介設されるバルブ14、17の開閉によって載置部L2上の搬送容器C内と同様、載置台54上の搬送容器C内に対しても、N2ガスの供給と排気とを行うことができ、収容される基板Wの周囲をN2ガス雰囲気とすることができる。なお、各載置台54上の搬送容器C、各載置部L2上の搬送容器Cに対して、N2ガスの供給と排気とを独立して行えるようにガス流路15、排気流路18は構成されている。ガス流路15、排気流路18、バルブ14、17、N2ガスの供給源13については、基板Wが収容される空間の雰囲気を調整する雰囲気調整部として構成される。
【0025】
搬送容器Cは、OHT71→移載機構72→搬入出用の棚51→移載機構72→待機用の棚52の載置台54→移載機構72→ロードポートLPの載置部L2の順で搬送され、基板Wが装置に払い出される。続いて、搬送容器Cは、移載機構72→載置台54→移載機構72→載置部L2の順で搬送されて装置から搬送された基板Wが格納された後、移載機構72→載置台54→移載機構72→搬入出用の棚51→OHT71の順で搬送される。載置台54は、ロードポートLPが基板Wの搬入出が行われていない搬送容器Cによって占有されてしまうことを防ぐために、当該搬送容器Cを退避させて保管するための保管部をなす。
【0026】
続いて、処理ブロックB2について説明する。処理ブロックB2は、互いに区画された階層E1~E6を備え、左方側に階層E1~E6に跨がるタワーT1が設けられる。タワーT1の後方には、階層E1~E6間を移動可能であって、タワーT1の各モジュール間で基板Wを受け渡す基板搬送機構82が設けられている。基板搬送機構82によって基板が搬送される領域(即ち、タワーT1の周辺及びタワーT1の後方に至る領域)を基板搬送領域R2とする。当該基板搬送領域R2の天井は、ガス供給部35として構成され、基板搬送領域R2の下方に向けてガスを供給する。
【0027】
階層E1~E6は互いに同様に構成されており、いずれかの階層に搬送されて基板Wは処理を受ける。代表して階層E3について説明すると、前後の中央部には、左右に延びる基板搬送領域R3が設けられており、タワーT1の右側は、当該基板搬送領域R3に臨む。基板搬送領域R3には、基板搬送機構83が設けられており、基板搬送領域R3の周囲のモジュールに対して基板Wを受け渡すことができる。
【0028】
基板搬送領域R3の前方には、基板Wに現像液を供給することによってレジスト膜の現像を行う現像モジュールDEVが設けられている。処理ブロックB2内で例えば「現像モジュールDEV」が設けられた領域を、特許請求の範囲において「現像ブロック」といい、当該領域をDEVなどと図示している。現像モジュールDEVは筐体と、筐体内に設けられる基板Wの処理部と、を備えており、筐体内を基板搬送領域R4として示している。当該筐体内の天井はガス供給部36として構成され、基板搬送領域R4の下方に向けてガスを供給する。
【0029】
基板搬送領域R3の後方には、加熱モジュールHMLが複数左右に並んで設けられた加熱ブロックが配置されている。この加熱モジュールHMLは現像後の基板Wを加熱するモジュールである。加熱モジュールHMLは、基板Wを収容する筐体を備えており、筐体内は排気されることで基板搬送領域R3の雰囲気が引き込まれる。つまり、基板搬送領域R3と同じ雰囲気とされる。
【0030】
基板搬送領域R3を形成する天井は、ガス供給部37として構成されており、基板搬送領域R3の下方に向けてガスを供給する。これまでに述べたガス供給部34~37については、ガス流路と、当該ガス流路から供給されたガスを下方の基板搬送領域R1~R4の各々に供給する供給口と、を備えた構成とされている。そして、ガス供給部34~37にはダクト32の下流端が接続されており、ダクト32の上流端にはファン31が設けられており、基板処理システム1が設けられる部屋の大気雰囲気をダクト32内に引き込み、各ガス供給部34~37に向けて供給する。ダクト32には、除去フィルタ(成分除去部)33が介在している。
【0031】
除去フィルタ33は、微細粒子(パーティクル)の他に、大気中に含まれる所定のガス成分を除去することが可能なケミカルフィルタであり、アンモニア(NH3)、アミン、酸性ガス及び有機ガスを除去して、清浄化された大気がガス供給部34~37に供給されて、下方へ向けて供給されて気流を形成する。なお、ガス供給部34~37に設けられる供給口としては、濾紙の目であったり、多孔質体の表面の孔であったり、ごく微細なものであってもよい。また、酸性ガスとしては二酸化炭素、硫化水素、塩化水素、塩素、硝酸、二酸化窒素、二酸化硫黄が含まれる。有機ガスとしては、アルコールやアセトンなどの揮発性有機化合物により構成されるガスである。ガス供給部34~37、ダクト32、ファン31及び除去フィルタ33は、気流発生部3をなす。
【0032】
上記したタワーT1には、基板Wが仮置きされる受け渡しモジュールTRSが多数、積層されて設けられている。階層E1~E6に対応する各高さに設けられる受け渡しモジュールTRSを階層E1~E6と同じ数字を付して示している。また、TRS0は一方がタワーT1への搬入用、他方がタワーT1からの搬出用である。またタワーT1から搬入出ブロックB1への搬出に用いるものについては、数字の後に「′」を付けて示し、搬入に用いるものと区別している。つまり、階層E1で処理を受ける基板Wは、搬送容器C→TRS0→TRS1→階層E1→TRS1′→TRS0′→搬送容器Cの順で搬送される。
【0033】
装置D3は制御部100を備えている。制御部100は、CPUと記憶部とを備えたコンピュータにより構成され、装置D3の各部を制御するものである。記憶部には各種の処理モジュール、搬送機構の動作や搬送容器Cに対するN2ガスの供給及び排気を制御するためのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリカード、不揮発メモリなどの記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0034】
装置D1、D2について、装置D3との差異点を中心に説明する。装置D1について説明すると、処理ブロックB2には、現像モジュールDEVの代わりに、レジストを塗布してレジスト膜を形成する塗布モジュールCOTが設けられている。そして加熱モジュールHMLの代わりに、露光前の基板の加熱処理(Post Apply Bake、PAB)を行う第1加熱モジュールPABが設けられている。さらに気流発生部3において、除去フィルタ33とは異なるフィルタが設けられている。このフィルタはパーティクルの除去用のフィルタであって、NH3、アミン、酸性ガス及び有機ガスの除去性能は、除去フィルタ33より低く、これらの除去性能が無くてもよい。これは、上記したようにレジストの変性には露光後の大気の作用の影響が比較的大きいためである。ただし、除去フィルタ33を設けるようにしてもよい。
【0035】
装置D2について説明すると、処理ブロックB2には、加熱モジュールHMLの代わりに、露光後で現像前の基板の加熱処理(Post Exposure Bake、PEB)を行う第2加熱モジュールPEBが設けられている。そして処理ブロックB2の右側には、露光機EXPが接続され、装置D2は、処理ブロックB2と、露光機EXPとの間に介在するインターフェイスブロックIFBを備えている。インターフェイスブロックIFBに設けられる基板搬送機構により、装置D2と露光機EXPとの間で基板Wの搬送が行われる。インターフェイスブロックIFBの構成例は第2の実施形態で示す。また装置D2には、移載ユニット50が設けられておらず、OHT71はロードポートLPに対して直接、搬送容器Cを受け渡す。
【0036】
装置D1、D2にも制御部100が設けられており、制御部100によって各部の動作が制御される。各制御部100は、工場のホストコンピュータ(不図示)に接続されており、ホストコンピュータによりOHT71の動作が制御される。OHT71による搬送容器Cの搬送状況に合わせて、各装置D1~D3で基板Wの処理が行われる。
【0037】
上記の基板処理システム1にて行われる、1つの搬送容器Cに収容される各基板Wへのパターニングの例について、
図5の概要図、
図6のフローチャートを参照して説明する。概要図に示すとおり、基板処理システム1ではレジストの塗布から現像に至るまで、大気に含まれる各成分との反応が抑制されることによって、レジストの変性の進行が抑制されるようにパターニングが行われる。
【0038】
先ず、レジスト膜が形成されていない複数の基板Wを収容する搬送容器Cが、OHT71によって装置D1に搬送されて、搬送容器C内の基板Wが順次、装置D1内へ搬送されると、搬送容器Cは待機用棚52に退避される。そして各基板Wは、塗布モジュールCOT→第1加熱モジュールPABの順で搬送されて、レジスト膜の形成と熱処理とが順次行われる(ステップS1)。搬送容器CがロードポートLPに搬送され、N2ガスの供給及び排気が行われることで、内部にN2ガスが充填される。そして、PABが行われた各基板Wが順次、この搬送容器Cに戻される。この際に、既述したようにシャッタL4の開閉が行われ、搬送容器C内のN2ガス濃度の低下が抑制される(ステップS2)。各基板Wの収容後、搬送容器Cは待機用棚52に搬送され、待機中にN2ガスの供給及び排気が行われることで、内部のN2ガス濃度が上昇する(ステップS3)。
【0039】
その後、OHT71により搬送容器Cは装置D2のロードポートLPに搬送され、N2ガスの供給及び排気が行われることで、内部のN2ガス濃度が上昇する。そして各基板Wが、この搬送容器Cから順次搬出される。この搬出中、既述したようにシャッタL4の開閉が行われ、搬送容器C内のN2ガス濃度の低下が防止される(ステップS4)。基板Wは処理ブロックB2を介して露光機EXPに搬送され、パターンに沿って露光される。その後、基板Wは処理ブロックB2に戻されてPEBが行われる(ステップS5)。ロードポートLPにおける搬送容器CにN2ガスの供給及び排気が行われることで、内部にN2ガスが充填される。そして、各基板Wが順次搬送容器Cに戻される。この際に、装置D1における基板Wの回収時と同様にシャッタL4の開閉が行われ、搬送容器C内のN2ガス濃度の低下が抑制される(ステップS6)。
【0040】
その後、OHT71により搬送容器Cは装置D3に搬送され、待機用棚52に移載される。この待機用棚52での待機中にN2ガスの供給及び排気が行われることで、内部のN2ガス濃度が上昇する(ステップS7)。続いて、搬送容器Cは装置D3のロードポートLPに搬送され、N2ガスの供給及び排気が行われることで、内部のN2ガス濃度が上昇する。そして各基板Wが、この搬送容器Cから順次搬出される。この搬出中、既述したようにシャッタL4の開閉が行われ、搬送容器C内のN2ガス濃度の低下が防止される(ステップS8)。現像液によりレジスト膜は、回路パターンに沿って除去されて基板Wにレジストパターンが形成される。その後、各基板Wは加熱モジュールHMLにて加熱処理を受ける(ステップS9)。そして基板Wが回収された搬送容器Cは、OHT71によって次工程を行う装置に搬送される(ステップS10)。
【0041】
以上のように基板処理システム1によれば、レジスト膜形成から現像までの各処理の間においてロードポートLPや待機用棚52で、N2ガス雰囲気となるように雰囲気が調整された容器内空間C1に基板Wを収容してレジスト膜の大気との反応の進行を抑制する。このため基板Wのレジストパターンの線幅の不要な拡張を抑え、所望の線幅となるように調整することができる。
【0042】
また、基板処理システム1によれば、露光後の基板Wを処理する装置D2、D3について、除去フィルタ33を備えた気流発生部3が設けられており、基板Wの搬送または処理が行われる基板搬送領域R1~R4に清浄化された大気の下方気流を放出して、搬送過程や処理過程において基板Wのレジスト膜の反応を抑制する。このため搬送過程や処理過程における基板Wのレジストパターンの線幅の拡張が、より確実に抑制される。
【0043】
上記したN2ガスの代わりに、アルゴンガスなどのN2ガス以外の不活性ガスを搬送容器C内に供給することで、レジスト膜の反応が抑制されるようにしてもよい。また、大気中の各種の成分がMORと反応すると考えられており、大気中の水分と反応することでMORが変性すると考えられている。従って、不活性ガスの代わりに低湿度の空気(大気)を搬送容器C内に供給するようにしてもよい。この低湿度の空気は、具体的には例えば基板処理システム1が設置される部屋の湿度よりも低い湿度の空気であり、例えば基板処理システム1の稼働中において無作為に互いに異なるタイミングで10回以上湿度を測定し、その湿度の平均よりも搬送容器C内に供給する空気の湿度が低いのであれば、当該空気は低湿度の空気に該当する。なお本明細書での湿度は、特に説明が無い限り相対湿度である。
【0044】
上記のようにロードポートLPにて搬送容器Cの容器内空間C1にN2ガスを供給するにあたって、N2ガス濃度が、容器内空間C1の基板Wのレジストの大気に対する反応が抑制されるように比較的高くなればよく、N2ガスを供給する期間としては任意である。従って、搬送容器Cの容器本体C2から蓋体C3を取り外すまでの間のみ、N2ガスを供給してもよいし、容器本体C2からの蓋体C3の取り外し後、各基板Wの容器本体C2に対する搬入または搬出が完了するまでの間、N2ガスの供給を行ってもよい。また、容器本体C2への基板Wの格納が終了し、蓋体C3が容器本体C2へ取り付けられた後もN2ガスの供給を行うようにしてもよい。
【0045】
上記の例では搬送容器Cの搬送経路中、N2ガスの供給が可能なすべての場所でN2ガスの供給を行っているが、一部の場所のみでN2ガスの供給を行ってもよい。また、特定の場所において、条件次第でN2ガスの供給を行うようにしてもよい。例えば装置D2でも装置D1、D3と同様に移載ユニット50が設けられ、ロードポートLPに搬送される前に搬送容器Cが待機用棚52に搬送されるものとする。この搬送容器Cが待機用棚52に載置された時点における当該搬送容器Cの基板Wについての見込みの露光機EXPへ搬送されるまでの時間(露光機搬送時間)が、予め設定された許容時間より長ければ当該時点でN2ガスの供給を行い、許容時間以下の時間であればN2ガスの供給を行わないようにしてもよい。
【0046】
具体的には例えば基板Wが一定の時間間隔Tで装置D2へ搬入されるものとみなす。そして、露光機搬送時間=待機用棚52に載置時点の搬送容器Cの最初の基板Wを搬送するまでに搬入される基板Wの枚数×時間間隔T+ロードポートLPから露光機EXPまでに要する基板Wの搬送時間として、制御部100が算出すればよい。この基板Wの枚数とは、即ち他の搬送容器Cから装置D2に未搬入となっている基板の枚数である。また、時間間隔T及び露光機EXPまでの搬送時間は、例えば定数として制御部100のメモリに記憶されていればよい。露光機EXPへ搬送されるまでの時間に基づいて、N2ガスの供給の有無を決定することに限られず、例えば加熱モジュールPEBのように特定のモジュールへ搬送されるまでの時間に基づいて、N2ガスの供給の有無を決定してもよい。
【0047】
基板処理システム1では、容器内空間C1内の雰囲気をレジスト膜の反応が抑制されるように調整していたがこれに限らず、レジスト膜の反応が促進されるように調整してもよい。反応を促進させ、各基板Wについて現像が行われるまでにレジスト膜で起こり得る各種の反応を飽和させることによって、パターンの線幅は基板W間で揃う。
【0048】
具体的には
図7に示すように、露光機EXPによる露光から加熱モジュールPEB(熱処理)を行うまでの間、及び加熱モジュールPEBから現像モジュールDEVで現像を行うまでの間で、N
2ガスを供給するとして述べた場所において、N
2ガスの代わりにレジスト膜の変性が起きるように反応を促進するガスを供給する。そのようなガス(反応促進ガス)としては、例えば飽和水蒸気圧に近づけるように加湿された高湿度の空気や、二酸化炭素や酸素の濃度を高くした空気や、二酸化炭素ガス、酸素ガスなどを用いることができる。この高湿度の空気については、例えば基板処理システム1が設置される部屋の湿度よりも高い湿度の空気であり、例えば基板処理システム1の稼働中において無作為に互いに異なるタイミングで10回以上湿度を測定し、その湿度の平均よりも搬送容器C内に供給する空気の湿度が高いのであれば、当該エアは高湿度の空気に該当する。なお、二酸化炭素、酸素の濃度を高くした空気とは、基板処理システム1が設置される部屋の空気(大気)よりも二酸化炭素、酸素の濃度が高い空気である。例えば基板処理システム1の稼働中において無作為に互いに異なるタイミングで10回以上部屋の二酸化炭素、酸素の濃度を測定し、その濃度の平均よりも高い濃度の空気が該当する。
【0049】
酸性ガス、有機物、アミンガス、ラジカルガスといったガスも、レジスト膜の反応を引き起こす可能性がある。それを考慮して、基板Wの周囲の雰囲気を、上記の大気よりも、これらの物質の濃度を低くすることで、レジスト膜の反応の抑制を図ることができる。あるいは、基板Wの周囲の雰囲気を、これらの物質の添加により、上記の大気よりもこれらの物質の濃度を高くすることで、レジスト膜の反応を促進あるいは充足させ、複数の基板Wそれぞれについて安定した処理結果を得てもよい。基板Wの周囲の雰囲気について、これらの物質の濃度を低くする場合、N2ガスを供給するとして上述した場所において、N2ガスの代わりにガスフィルタ等でこれらの物質の濃度を大気よりも低くしたガスを供給してもよい。基板Wの周囲の雰囲気について、これらの物質の濃度を高くする場合は、例えばこれらの物質の濃度が大気よりも高いガスを予め準備しておき、そのガスをN2ガスの代わりに供給してもよい。なお、以降にN2ガスを供給するとして述べる場所についても、同じ事は適用可能である。酸化ガス、有機ガス、アミンガス、ラジカルガスなどを構成する分子に含まれる元素としては、様々のものが考えられるが、元素記号での例を挙げると、H、F、O、N、C、B、Cl、S、P、Si、Brなどのうちいずれか、あるいは複数であってよい。
【0050】
なお、露光からPEBを行うまでの間は、N2ガスを供給して反応を抑制し、PEBを行ってから現像を行うまでの間のみ反応促進ガスを供給するようにしてもよい。なお、レジストの塗布を行ってから露光を行うまでの間についても、N2ガスの代わりに反応促進ガスを供給してもよい。ただし、塗布モジュールCOTについて、複数種のMORの中から一つを選択して塗布する構成とし、基板Wのロットに対応して塗布するMORの種類が選択されるものとする。MORの種類によっては、露光前においては反応促進ガスに対する反応性が低い懸念が有るため、ロット間で現像を行うまでの反応の進行度の差が大きくなることで、ロット間でのパターンのCDの差が大きくなることが考えられる。従って、ロット間でパターンのCDを揃える観点から、レジストの塗布を行ってから露光を行うまでの間は、N2ガスを供給して反応を抑制することが好ましい。
【0051】
また、MORについては反応促進ガスに曝される他に、減圧雰囲気において脱水反応が進行し、それによって現像時のパターンの寸法が変化すると考えられている。そのため反応促進ガスを供給する代わりに、ガス供給機構11によってガスを供給せず、排気機構12による排気のみを行い、容器内空間C1を減圧して反応を促進してもよい。
【0052】
(第2実施形態)
図8に基づいて、本開示の第2実施形態における基板処理システム1Aについて説明する。尚、以降の各実施形態の説明では、第1実施形態との差異点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
図8は、現像装置D2Aを示す平面図であり、処理ブロックB2については階層E3を示している。
【0053】
本実施形態の基板処理システム1Aは、互いに独立した装置D1と現像装置D2Aとによって構成されている。現像装置D2Aは、第1実施形態で説明した装置D3と同様に現像液による現像を行う現像モジュールDEVの他に、ガスによる現像を行う現像モジュールを備えている。これらの現像モジュール同士を互いに区別するために、現像液を用いる現像モジュール、ガスを用いる現像モジュールを、現像液モジュールWDEV、現像ガスモジュールGDEVと夫々表記する場合が有る。本例では基板Wは、現像液モジュールWDEVによる現像後に、現像ガスモジュールGDEVによる現像がなされるように搬送される。
【0054】
現像装置D2Aは、現像液モジュールWDEVを含む構造体F1と、現像ガスモジュールGDEVを含む構造体F2と、を夫々備えている。構造体F1は第1の実施形態で説明した装置D3と概ね同様の構成を備えているが差異点として、処理ブロックB2の右側端にインターフェイスブロックIFBを介して露光機EXPが接続されている。構造体F2についても装置D3と概ね同様の構成を備えているが、設置される処理モジュールの種類及び配置、ロードポートLPの数、処理ブロックをなす層の数が1つであることなどが異なっている。
【0055】
構造体F2の搬入出ブロック、処理ブロックを夫々B1A、B2Aとして、構造体F1の搬入出ブロックB1、処理ブロックB2と区別する。また、処理ブロックB2Aにおいて、処理ブロックB2の基板搬送機構83に相当する基板搬送機構を83Aとする。搬入出ブロックB1、B1Aは互いに離れて前後に並び、処理ブロックB2、B2Aは互いに離れて前後に並ぶ。処理ブロックB2、B2A間を接続する基板搬送ブロックB3が設けられ、当該基板搬送ブロックB3に設けられる搬送機構によって、構造体F1、F2間で基板Wの搬送を行うことができる。搬入出ブロックB1のロードポートLPで搬送容器Cからの現像装置D2Aへの基板Wの搬出が行われ、基板Wの搬出後の搬送容器CはOHT71を介して搬入出ブロックB1AのロードポートLPに移載され、処理済みの基板Wが回収される。
【0056】
構造体F1についてさらに説明すると、加熱モジュールHMLの代わりに加熱モジュールPEBが設けられている。階層E3において、装置D3では一つの加熱モジュールHMLの配置領域であった位置に基板搬送ブロックB3の前端部が設けられている。基板搬送ブロックB3には、載置された基板Wを後方に移動させるステージ86が設けられ、このステージ86の後方に基板搬送機構87が設けられている。基板搬送機構87の側方に受け渡しモジュールTRS10が設けられている。なお、ステージ86、基板搬送機構87及び受け渡しモジュールTRS10は、基板搬送ブロックB3を構成する筐体内に配置され、現像装置D2Aの周囲の大気雰囲気とは区画された領域に設けられているものとする。また、後述するように階層E1は露光機EXPへの搬入のために基板Wを素通りさせるため、処理モジュールが設けられていない。
【0057】
露光機EXPによる露光後で、処理ブロックB2内のPEB及び現像液モジュールWDEVで処理後の基板Wは、階層E3の基板搬送機構83→基板搬送ブロックB3→ステージ86→TRS10→構造体F2の処理ブロックB2Aの基板搬送機構83Aの順で搬送される。そして、現像ガスモジュールGDEVに搬送された後、タワーT1を介してロードポートLPの搬送容器Cに回収される。以上のように処理ブロックB2Aは、基板搬送ブロックB3及びインターフェイスブロックIFBを介して露光機EXPと接続されており、露光機EXPが処理ブロックB2、B2Aで共用される構成となっている。
【0058】
構造体F1のインターフェイスブロックIFBについて述べると、当該インターフェイスブロックIFBは、タワーT1と同様に多数の積層されたTRSを含むタワーT2を備え、このTRSを介してインターフェイスブロックIFBと処理ブロックB2の各階層との基板の受け渡しが可能である。また、インターフェイスブロックIFBは、搬送機構88、89を備えている。搬送機構88は、タワーT2の受け渡しモジュールTRSと、露光機EXPとの基板Wの受け渡しに用いられ、搬送機構89はタワーT2の各受け渡しモジュールTRS間での基板Wの受け渡しに用いられる。
【0059】
構造体F2について補足して述べると、処理ブロックB2Aが1つの層であるため、構造体F1で設けられる層間での受け渡し用の搬送機構82は設けられていない。また、現像ガスモジュールGDEVは構造体F1の基板搬送領域R3に相当する基板搬送領域R3Aに対する後方側に設けられている。この構造体F2について、基板搬送領域R3Aには除去フィルタ33により清浄化された気流が供給される。現像ガスモジュールGDEVには、搬送領域R3Aで形成される気流が流れ込む。なお、インターフェイスブロックIFB、基板搬送ブロックB3についても搬入出ブロックB1と同様、天井部から除去フィルタ33によって清浄化された大気が供給されて、下降気流が形成される。当該下降気流が形成される領域を領域R5、領域R6として夫々示している。なお本例では、パターンの形成が完了する基板Wが通過する搬入出ブロックB1Aについては、除去フィルタ33とは異なるフィルタにより清浄化された大気による下降気流が形成されるものとしている。
【0060】
また本開示の基板処理システム1Aは、例えば現像装置D2Aの搬入出ブロックB1に配置されたバッファモジュール(格納部)4を備えている。当該バッファモジュール4の構成について
図9~
図11の斜視図を参照して説明する。バッファモジュール4は、基板搬送領域R1の後方側に隣接して設けられ、搬送容器Cと同様に上下に基板Wを並べて格納するモジュールであり、当該基板Wを格納する方形の筐体41を備えている。この筐体41は、四方に向かう側壁のうちの一方に向かう側壁が除去された構成になっている。そのように側壁が除去されて開放される側を、筐体41の手前側として説明する。
【0061】
筐体41内は、基板Wの格納空間42として構成されている。
図10、
図11に示すように、筐体41の側壁には、基板Wを支持する支持部43が多段に設けられており、この支持部43は平面視で矩形をなす格納空間42の4つの各角部から、格納空間42の中央部に向けて突出する。同じ高さに位置する4つの支持部43が1つの組となって1枚の基板Wの裏面の周縁部を支持し、基板Wを水平な姿勢で待機させることができる。そのように同じ組の支持部43によって形成される基板Wの待機領域をスロットと呼称すると、このスロットは多数、例えば18個設けられ、下から上に向けてスロット1、スロット2、スロット3・・・として、各スロットに番号を付して呼称する場合が有る。筐体41内の奥側には載置部L2と同様に雰囲気調整部に接続されたガス供給部44が設けられ(
図12)、筐体41内の手前に向けてN
2ガスが供給され、スロット1~18の各基板Wが、このN
2ガスの気流に曝される。
【0062】
筐体41の手前側に4枚のシャッタ(開閉部)45が設けられている。この4枚のシャッタ45の手前側から奥側に向けた各位置は、互いに異なっている。シャッタ45は各々昇降可能であって、一部のスロットが筐体41の外部の基板搬送領域R1に開放される状態(
図9、
図10の状態)と、全てのスロットが当該筐体41の外部から区画される状態(
図11の状態)とを切り替えることができる。なお、外部に開放されるスロットについては変更可能である。シャッタ45の構成について詳しく述べると、4つのシャッタ45は互いに同様に構成されており、上下に並ぶ横長の4つの貫通口46を各々備えている。そのように4つの貫通口46を備えることで、手前から奥に向けて見ると、シャッタ45については左端部、右端部を左右に接続する橋部47が、上下に5つ設けられると見ることもできる。
図12は、各シャッタ45の昇降による橋部47の高さを模式的に示しており、
図12(a)、
図12(b)、
図12(c)は、夫々
図9、
図10、
図11の状態における橋部47の位置を夫々示している。なお、
図12(a)~
図12(c)の矢印は、上記したN
2ガスの気流を示している。
【0063】
説明の便宜上、4つのシャッタ45をシャッタ45A~45Dとする。筐体41の手前側に昇降機構61~64が設けられている。手前から奥に見て昇降機構61、62が筐体41の左方に、昇降機構63、64が筐体41の右方に設けられている。昇降機構61はシャッタ45A及び昇降機構62に接続され、これらを昇降させることができ、昇降機構62はシャッタ45Bに接続され、当該シャッタ45Bを昇降させることができる。なお、昇降機構62を介して昇降機構61に接続されることで、シャッタ45Bは昇降機構61によっても昇降される。昇降機構63はシャッタ45C及び昇降機構64に接続され、これらを昇降させることができ、昇降機構64はシャッタ45Dに接続されている。従って、昇降機構63によってシャッタ45C、45Dが昇降する。なお、昇降機構64を介して昇降機構63に接続されることで、シャッタ45Dは昇降機構63によっても昇降される。以上の構成であるため、シャッタ45A~45Dについては、互いの相対的な昇降が可能である。
【0064】
昇降機構61~64は例えばシリンダにより構成され、接続されるシャッタ45を上昇位置と下降位置との間で移動させることができる。上記したように昇降機構61、63については、シャッタ45と共に昇降機構62、64も移動させるが、シャッタ45の移動距離と、昇降機構62、64の移動距離と、は同じである。また、昇降機構61~64間で、接続されるシャッタ45の上昇位置と下降位置との間の距離は同じである。昇降機構61~64について、接続されるシャッタ45を上昇位置に位置させる状態をUP状態、下降位置に位置させる状態をDOWN状態とすると、
図9、
図12(a)に示すバッファモジュール4については、昇降機構61~64のすべてがDOWN状態となっている。この状態では、シャッタ45A~45Dの4つの貫通口46が互いに重なっており、スロット1、2、5、6、9、10、13、14、17、18が筐体41外部の基板搬送領域R1に開放され、これらのスロットに対して基板Wの搬送が可能になる。
【0065】
また、
図10、
図12(b)に示すバッファモジュール4については、昇降機構61、63がUP状態、昇降機構62、64がDOWN状態となっている。この状態では、スロット3、4、7、8、11、12、15、16が筐体41外部の基板搬送領域R1に開放され、これらのスロットに対して基板Wの搬送が可能になる。従ってスロット1~18の各々に対して、
図9、
図10のうちのいずれかの状態とされることで、基板Wの搬送が可能である。なお、この
図10、
図12(b)の状態は、
図9、
図12(a)の状態と同じくシャッタ45A~45Dの4つの貫通口46が互いに重なるが、筐体41に対するシャッタ45A~45Dの高さが異なっている。そして、
図11、
図12(c)に示すバッファモジュール4については、昇降機構61がDOWN状態、昇降機構62~64がUP状態となっている。この状態では、各シャッタ45の橋部47の高さが互いにずれることで、格納空間42が筐体41の外部に対して区画される。つまり、スロット1~18が、筐体41の外部に対して閉じられる。
【0066】
このようにバッファモジュール4については、基板Wの搬送を行うにあたり限られたスロットのみが筐体41外部の基板搬送領域R1に開放されるように各シャッタ45が昇降する。そのため筐体41内におけるN2ガスの濃度が比較的高いものとなり、レジスト膜の変性の進行がより確実に抑えられる。なお、所望の枚数の基板Wを格納するために、その枚数に応じた数のバッファモジュール4を設けるようにする。
【0067】
ロードポートLPの搬送容器Cから現像装置D2Aに基板Wを払い出すにあたり、処理ブロックB2に搬送される前に、搬送容器C内のすべての基板Wが一旦、バッファモジュール4に搬送され、N2雰囲気下に置かれる。その後、バッファモジュール4から基板Wが順次、後段のモジュールへと搬送され、露光、PEB、現像が行われる。バッファモジュール4の下流側のモジュールの基板Wの搬送状況に応じて、基板Wがバッファモジュール4から取り出されるタイミングが制御される。つまり、下流側のモジュールで処理が滞り、基板Wの搬送の滞留が懸念される場合には、そのような状況が解消された後、基板Wがバッファモジュール4から取り出される。
【0068】
上記の基板処理システム1Aにおける基板Wの搬送及び基板処理の動作について、基板処理システム1との差異点を中心に説明する。先ず、搬送容器CがOHT71によって装置D1のロードポートLPに搬送され、搬送容器C内の各基板Wにレジスト膜の形成、PABが行われる。OHTにより搬送容器Cが、現像装置D2Aの構造体F1に搬送され、待機用の棚52を介してロードポートLPに載置される。搬送容器Cから払い出された各基板Wは、バッファモジュール4に格納され、すべての基板Wが払い出された搬送容器Cは構造体F2のロードポートLPに搬送される。
【0069】
そして、バッファモジュール4から順次搬送された基板Wは、処理ブロックB2の階層E1及びインターフェイスブロックIFBを介して露光機EXPに搬送されて露光される。露光後の基板Wは、処理ブロックB2の階層E2~E6で1回目のPEB、現像液モジュールWDEVによる現像、2回目のPEBが順次なされる。その後、基板Wは既述したように、階層E3及び基板搬送ブロックB3を介して、構造体F2の処理ブロックB2Aに搬送され、現像ガスモジュールGDEVにより2回目の現像がなされた後、搬入出ブロックB1Aの搬送容器Cに搬入され、OHT71により基板処理システム1Aから搬出される。
【0070】
現像装置D2Aにおいても第1実施形態の装置D3と同様に、待機用の棚52及び各ロードポートLPにおいて、搬送容器CにN2ガスの供給が行われる。また、現像装置D2Aでは装置D3で設けられていたシャッタL4を設けていないが、設けてもよい。なお、上記の装置構成においては、現像液による現像、ガスによる現像のいずれかのみが選択して行われるようにしてもよい。現像液による現像のみを行うとしたら、基板Wは構造体F2には搬送せず、構造体F1のロードポートLPの搬送容器Cに戻せばよい。また、第1実施形態の現像後の加熱モジュールHMLによる加熱を設けない構成としているが、構造体F1、F2の搬送領域R3、R3Aに隣接するように設けて当該加熱を行うようにしてもよい。
【0071】
バッファモジュール4について搬入出ブロックB1に設けることに限られず、処理ブロックB2に設けてもよいし、インターフェイスブロックIFB(即ち処理ブロックB2と露光機EXPとの間に介在するブロック)に設けてもよい。具体的には例えば処理ブロックB2の階層E1において、階層E2~E6で現像液モジュールWDEVが設けられる位置や、インターフェイスブロックIFBのタワーT2にバッファモジュール4を設けてもよい。また、露光後でPEBを行う前の一つのロットの基板Wをまとめて格納してもよいし、PEB後、現像を行う前の一つのロットの基板Wをまとめて格納してもよい。このPEB、現像は1回目及び2回目のPEB、現像、いずれも該当する。
【0072】
このバッファモジュール4についてもN2ガスのようなレジストの反応を抑制するガスの雰囲気を形成する代わりに、既述した反応促進ガスによる雰囲気を形成したり、減圧雰囲気を形成したりすることで、収納された基板Wにおけるレジストの反応を促進してもよい。また装置D1の搬入出ブロックB1に、現像装置D2Aと同様にバッファモジュール4を設けて、装置D1で処理を終えて搬送容器Cに向う基板Wを一旦格納し、反応の抑制あるいは反応の促進を行ってもよい。
【0073】
(第3実施形態)
図13に基づいて、本開示の第3実施形態における基板処理システム1Bについて説明する。
図13は、基板処理システム1Bの概略を示す平面図であり、処理ブロックB2の基板搬送領域R2は省略し、階層E1~E6については代表して階層E3を示している。
図14以降の図も同様に図示する。
【0074】
第3実施形態における基板処理システム1Bは、装置D1B、装置D3B、装置D2Bと前後方向に沿って順に並んでいる。装置D2Bの左方には、待機用の棚52と移載機構72とが配置されている。装置D1B~D3Bの搬入出ブロックB1に、バッファモジュール4が設けられている。第2実施形態と異なり、基板搬送領域R1に対する後方側の他に、基板搬送領域R1に対する前方側にも設けられている。なお、図示の便宜上、そのように基板搬送領域R1に隣接する位置ではなく、基板搬送領域R1内に示している。以降の図についても同様に示す。
【0075】
基板処理システム1の装置D1と異なり、装置D1BについてはインターフェイスブロックIFBを介して露光機EXPが接続されている。装置D2Bは、装置D2と異なり露光機EXPが接続されておらず、現像液モジュールWDEVを備えている。また、装置D3Bは、現像液による現像モジュールDEVの代わりに現像ガスモジュールGDEVを備え、且つ加熱モジュールPEBを備えている点で、基板処理システム1の装置D3と異なる。なお、装置D1B~D3Bのうち、装置D2Bのみに移載ユニット50が設けられている。
【0076】
OHT71は、装置D1Bから、装置D2B、D3Bの一方へ搬送容器Cを搬送して、基板Wに処理が行われる。従って、現像液あるいは現像ガスの一方が基板Wに供給されて処理が行われる。その処理を受ける過程で、装置D1B~D3Bのバッファモジュール4に基板Wは格納されて、MORの反応の抑制または促進がなされる。
【0077】
(第4実施形態)
図14に基づいて、本開示の第4実施形態における基板処理システム1Cについて説明する。第4実施形態における基板処理システム1Cは、4つの装置D1C~D4Cで構成されている。尚、
図14は、OHT71を省略している。
図15においても同様である。
【0078】
装置D1Cは、インターフェイスブロックIFBを介して露光機EXPが接続されていないことを除いて第3実施形態の装置D1Bと同様の構成である。そして、ロードポートLP及びバッファモジュール4ではN2ガスが供給され、反応の抑制が行われる。
【0079】
装置D2Cについては、装置D2Bとの差異点として、現像後に基板Wを加熱する加熱モジュールPEBの他に加熱モジュールPABが設けられること、及び現像モジュールDEV(WDEV)が設けられないこと、が挙げられる。また、複数のロードポートLPのうちの一部はN2ガスが供給され、他の一部は反応促進ガスが供給される。そして、複数のバッファモジュール4のうちの一部はN2ガスが供給され、他の一部は反応促進ガスが供給される。
【0080】
装置D3Cについては、搬入出ブロックB1にインターフェイスブロックIFBを介して露光機EXPが接続された構成とされており、ロードポートLPではN2ガスが供給される。装置D4Cについては、移載ユニット50及び第2加熱モジュールPEBが設けられないことを除いて、装置D3Bと同様の構成であり、バッファモジュール4では反応促進ガスが供給される。
【0081】
OHT71によって、装置D1C→装置D2C→装置D3C→装置D2C→装置D4Cの順で搬送容器Cが搬送される。1回目に装置D2Cに搬送された際、ロードポートLPでは搬送容器CにN2ガスが供給され、基板WはN2ガス雰囲気のバッファモジュール4に格納される。つまり、露光前の基板Wに対しては、MORの反応が抑制される。そして、2回目に装置D2Cに搬送された際、ロードポートLPでは搬送容器Cに反応促進ガスが供給され、基板Wは反応促進ガス雰囲気のバッファモジュール4に格納される。つまり、露光後の基板Wに対してはMORの反応が促進される。このように一つの装置で、基板Wの処理段階に応じて、反応の抑制及び促進の両方を行うようにしてもよい。なお、反応の促進、抑制を互いに異なるロードポートLP、互いに異なるバッファモジュール4で行うように示したが、同じロードポートLP及び/またはバッファモジュール4で反応の抑制、促進が切り替えられるようにしてもよい。つまり、供給するガスを切り替えたり、反応抑制ガスの供給と排気とを行う場合と、排気のみを行う場合とを切り替えたりしてもよい。
【0082】
(第5実施形態)
図15に基づいて、本開示の第5実施形態における基板処理システム1Eについて説明する。第5実施形態における基板処理システム1Eは、2つの装置D1E、D2Eで構成されており、第2実施形態で示した基板処理システム1Bと同様、PEB、現像が2回行われる。
【0083】
装置D1Eについて第1実施形態の装置D1との差異点を挙げると、処理ブロックB2には、第2加熱モジュールPEB、現像液モジュールWDEVが設けられること、処理ブロックB2がインターフェイスブロックIFBを介して露光機EXPに接続されることが挙げられる。装置D1Eの処理ブロックB2は、階層E1~E3と、階層E4~E6とで配置される処理モジュールが異なるため、
図15は、階層E4~E6についての階層E1~E3と異なる図示を括弧で示している。
【0084】
階層E1~E3においては、塗布モジュールCOT及び第1加熱モジュールPABが設けられ、階層E4~E6においては、現像液モジュールWDEV及び第2加熱モジュールPEBが設けられている。これらのモジュールについてはこれまでの例と同様、基板搬送領域R3の基板搬送機構83がアクセス可能な位置に配置される。
【0085】
そして装置D2Eについて第1実施形態の装置D3との差異点を挙げると、現像液モジュールWDEV及び/または現像ガスモジュールGDEVと、第2加熱モジュールPEBと、が設けられている。これらのモジュールについてはこれまでの例と同様、基板搬送領域R3の基板搬送機構83がアクセス可能な位置に配置される。
【0086】
装置D1Eで、レジストの塗布~1回目のPEB、現像に至るまでの処理がなされた基板Wが搬送容器Cに格納されて装置D2Eに搬送されて、2回目のPEB、現像が行われる。このシステムにおいては、例えば装置D1EのロードポートLP、不図示のバッファモジュールでMORの反応の抑制を行い、装置D2EのロードポートLP、不図示のバッファモジュールでMORの反応の促進を行うようにしてもよい。
【0087】
[さらなる変形例]
以上のように独立した複数の装置により基板処理システムを構成するにあたり、処理モジュールの各装置への割り振りは任意である。上記した以外のシステム構成の例を示しておく。例えば、
図14に示す装置D1C、装置D3C、装置D4Cに第2加熱モジュールPEBを加えた装置によって、基板処理システム(1Fとする)を構成してもよい。その他に、例えば
図15に示す基板処理システム1Eの変形例の基板処理システム(1Gとする)として、
図14に示す装置D1C、
図15に示す装置D2EにインターフェイスブロックIFBを介して露光機EXPを接続した装置(D3Eとする)、装置D2Eにより構成してもよい。装置D3Eは1回目のPEB、現像用の装置であり、装置D2Eは2回目のPEB、現像用の装置である。また、第1実施形態の変形例の基板処理システム(1H)として、装置D2に設けられていた第2加熱モジュールPEBを、装置D3に設ける。つまり装置D3に加熱モジュールとしてPEB、現像後の加熱を行うモジュールが設けられ、装置D2は処理ブロックB2が設けられない構成(
図14の装置D3Cの構成)としてもよい。
【0088】
そして、基板Wの周囲の雰囲気を調整可能な各所(ロードポートLP及びバッファモジュール4)において、反応抑制を行うか反応促進を行うかを適宜設定することができる。上記した基板処理システム1F、1Gについても、反応抑制、促進の例を示しておく。基板処理システム1Fでは、装置D1C→装置D3C→装置D4Cの順で搬送容器Cが搬送される。露光前の基板Wが通過する装置D1Cの各所(ロードポートLP及びバッファモジュール4)では反応抑制のためにN2ガスを供給し、露光後の基板Wが通過する装置D3C、D4Cの各所では反応促進のために反応促進ガスを供給してもよいし、装置D3Cの各所ではN2ガスの代わりに反応促進ガスを供給してもよい。基板処理システム1Gでは、装置D1C→装置D3E→装置D2Eの順で搬送容器Cが搬送される。露光前の基板Wが通過する装置D1C、装置D3Eの各所では反応抑制のためにN2ガスを供給し、露光後の基板Wが通過する装置D2では反応促進ガスを供給する。
【0089】
また、露光後の大気の各成分に接触することで起きる反応の影響は、PEBを行うまでが特に大きいと考えられている。そのため、上記した除去フィルタ33を通過させた大気による気流の形成は、この露光後、PEBまでを行う基板Wが通過する装置で行われ、他の装置では除去フィルタ33以外のULPA(Ultra Low Penetration Air Filter)フィルタなどのフィルタを通過した大気による気流を形成してもよい。従って第1実施形態で現像を行う装置D3について除去フィルタ33を設けた例を示したが、装置D3には除去フィルタ33が設けられず、露光してからPEBを行う装置D2についてのみ除去フィルタ33が設けられる構成としてもよい。つまり、露光後、現像するまでに基板が通過するすべての装置に除去フィルタ33が設けられることには限られない。
【0090】
また、既述した各システムの装置で、移載ユニット50を設けた例と設けていない例とを示しているが、搬送容器Cの装置への搬入出状況に応じて、設けるか否かを適宜選択すればよい。そして移載ユニット50を設けて、待機用の棚52にてN2ガスの供給を行うにあたって、このN2ガス供給を行うか否かを、搬送容器C内のN2ガス濃度に応じて行うようにしてもよい。具体的に排気流路18に濃度検出器を設けて、待機用棚52への搬送容器Cへの載置中、任意のタイミングでバルブ17を開き、排気流路18からの排気を行う。濃度検出器は、検出信号を制御部100に送信し、制御部100が検出した濃度が基準値以下であれば、制御部100はバルブ14、17を開き、N2ガスを搬送容器C内に供給し、N2濃度を上昇させる。
【0091】
ところで同じロット内の基板Wがすべてバッファモジュール4に搬送されるように述べたが、そのように搬送がなされることに限られない。既述したようにバッファモジュール4は、装置中の任意の場所に設置することができる。装置内での搬送状況などを考慮し、バッファモジュール4へ基板Wを搬送するか否かを適宜選択することができる。
【0092】
なお、バッファモジュール4について、処理ブロックB2に設ける場合は液処理を行うモジュールが設けられるとして示した場所の他に、加熱モジュールが置かれるとして説明した場所に設けてもよい。インターフェイスブロックIFBに設ける場合はタワーT2の他に、タワーT2以外の各搬送機構がアクセス可能な位置に設ければよい。搬送機構の数や配置レイアウトとしては、第2実施形態で示した例に限られず、適宜設定すればよい。なお、基板Wとしてはウエハに限られず、フラットパネルディスプレイ製造用の基板等の他の基板であってもよい。
【0093】
(第6実施形態)
図16に基づいて、本開示の第6実施形態における基板処理システム1Jについて説明する。
図16は、本実施形態における基板処理システム1Jを示す概略平面図である。本実施形態の説明では、第1実施形態との差異点を中心に説明する。第1、第2実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。第6実施形態の基板処理システム1Jは、2つの装置D1J、D2Jで構成されている。
【0094】
装置D2Jの処理ブロックB2には、インターフェイスブロックIFBを介して露光機EXPが接続されている。そして、この処理ブロックB2には、第2加熱モジュールPEB、現像モジュールDEVが設けられている。装置D2JのロードポートLPでは、第1実施形態で既述したような反応を抑制するガスが供給される。
【0095】
装置D1Jの搬入出ブロックB1には、第2実施形態で詳述したバッファモジュール4が基板搬送領域R1の前方及び後方に設けられている。装置D1Jの処理ブロックB2には、塗布モジュールCOT、第1加熱モジュールPABが設けられ、インターフェイスブロックIFBを介して露光機EXPが接続されていない。装置D1J、D2Jにおいては、除去フィルタ33を備えた気流発生部3が設けられている。装置D1JのロードポートLP及びバッファモジュール4では、反応を抑制するガスが供給される。
【0096】
基板処理システム1Jにおいて基板Wは、OHT71で搬送された搬送容器Cによって、先ず装置D1Jに搬送され、装置D2JのロードポートLPにおいて搬送容器Cから順次搬出されて塗布モジュールCOT→第1加熱モジュールPABに搬送される。この過程で基板WにMORであるレジストの塗布、PABが行われる。第1加熱モジュールPABに搬送する前後で、基板Wをバッファモジュール4に収容してもよい。そして基板Wは、搬送容器Cに格納されてOHT71によって装置D2Jに搬送され、基板Wは順次、露光機EXP→第2加熱モジュールPEB→現像モジュールDEVに搬送されて、露光、PEB、現像が行われる。
【0097】
なお、第1加熱モジュールPABについては装置D2Jに設けてもよく、装置D1Jでレジストの塗布が行われた後、装置D2JでPABから現像までの各処理を行ってもよい。このように基板処理システムとしては、レジスト膜の形成を行う装置と、現像を行い且つ露光機EXPが接続される装置と、によって構成されるようにすることもできる。
【0098】
このような基板処理システム1Jにおける基板Wの搬送過程において、これまでに述べたシステムと同様に、ロードポートLPに載置された搬送容器C、バッファモジュール4の格納空間42や基板搬送領域R1~R3で適宜、基板Wのレジスト膜を反応抑制ガスによる雰囲気に晒すようにしてもよい。これにより、基板Wのレジスト膜の反応を抑制して調整し、CDを所望の寸法に調整できる。そして、基板W間のCDを揃えることも可能である。
【0099】
そして基板処理システム1Jについては、このようにMORの反応の抑制を行うことに限らず、これまでに記載した様々なタイミングや手法でMORの反応を促進させて、レジストパターンの線幅を調整してもよい。この反応の促進としては、第1実施形態で述べた反応を促進するガスを供給して行ってもよいし、基板Wの収容空間を減圧し、減圧雰囲気においてレジスト膜を脱水して縮合反応を促進することによって行ってもよい。なお、反応を促進するガスとしては、酢酸ガスを用いてもよい。パターニング中の各工程における処理でMORの化学的性質が変化することにより、MORに対する酢酸の作用効果は変化するが、PEBを行う前に供給する酢酸ガスは反応促進ガスとして作用する。
【0100】
ところでMORの変性を促進させるために反応促進ガスを用いるとして説明したが、上記したようにこの変性は水や二酸化炭素によって引き起こされるので、大気をMORに供給してもMORの変性は進行し、この変性の進行度の違いが現像後に形成されるレジスト膜のパターンのCDを変化させる。
【0101】
図17のグラフは実験により取得された、レジスト膜の形成後現像までに基板Wをガス雰囲気に曝した時間(レジスト膜形成から現像までの経過時間)と、現像によって形成されたレジストパターンのCDとの関係を示したグラフである。ガスとして大気に曝した場合を実線で、ガスとして反応促進ガスに曝した場合を破線で夫々示している。いずれの場合も経過時間が長くなるにつれてCDが大きくなるが、次第に経過時間の変化に対してCDの変化は見られなくなる。つまりレジスト膜の反応は飽和し、飽和した状態ではCDのばらつきが抑えられる。なお、反応が飽和するまでの経過時間については、大気を用いた場合の経過時間をt1、反応促進ガスを用いた場合の経過時間をt2として図中に夫々示しており、時間t2よりも時間t1の方が長い。
【0102】
以上のことから基板処理システム1Jにおいて、装置D1Jでレジスト膜が形成された基板Wを搬送容器C内に格納した後、長時間待機させる。この待機中、搬送容器C内については大気雰囲気あるいは既述した反応が促進される雰囲気(反応促進ガス雰囲気あるいは減圧雰囲気)とされる。このように待機させた後、装置D2Jに搬送容器Cが搬送されて基板Wが処理されるようにする。同じロットの基板Wについて、レジスト膜の形成後、MORの変性が進行し得る現像が行われるまでの間、このように長時間の待機がなされることによって、当該同じロットの基板W間で現像後に形成されるレジストパターンのCDの均一性が高まるようにする。
【0103】
この各基板Wの待機時間は、上記グラフに示した搬送容器C内の各雰囲気についての経過時間t1、t2よりも長くなるように、パターニングにおける各工程の処理を行う処理モジュールでの必要滞在時間(後に詳述する)よりも長く設定される。この処理モジュールは、上記したように現像ガスモジュールGDEV、現像液モジュールWDEV、各加熱モジュール、塗布モジュールCOTなどが挙げられる。これらの処理モジュールの各必要滞在時間よりも長い待機時間、内部が大気雰囲気あるいは反応が促進される雰囲気とされた搬送容器Cにて、同じロットの各基板Wが待機されるようにする。
【0104】
より具体的には、当該待機時間については10分以上とすることが好ましく、半日以上であってもよい。このように基板Wを待機させるにあたっては、
図16では示していないが例えば
図1等で説明した移載ユニット50や待機用の棚52を設けて、載置台54に退避させた搬送容器C内で待機させればよい。
【0105】
処理モジュールの必要滞在時間は、基板搬送機構によって処理モジュールに基板Wが搬入されてから、基板搬送機構によって当該処理モジュールから当該基板Wが搬出可能になるまでの時間であって、処理に要する時間と、処理に必要な予備動作の時間と、を含む。この予備動作とは、具体的には、基板搬送機構からモジュールに受け渡された基板Wについての受け渡された位置と処理を受ける位置との間での移動であったり、処理液を供給するノズルなどの処理を行うために必要な部材についての処理開始前及び処理開始後における移動であったりする。
【0106】
ところで、搬送容器Cを大気雰囲気とする場合にはロードポートLPや棚52などの搬送容器C内へ反応抑制ガスあるいは反応促進ガスを供給すると述べた箇所において、これらのガスの代わりにガス供給源及びバルブからなるガス供給機構から大気が供給されるようにすればよい。また、基板処理システム1Jはクリーンルームに設置されることから、搬送容器Cの周囲は大気雰囲気であるため、大気が搬送容器C内に進入し得る。従って搬送容器Cを大気雰囲気とする場合には、ガス供給機構によるガス供給が行われなくてもよい。
【0107】
上記した基板Wの待機時間とは、レジスト膜の変性が進行する雰囲気(大気雰囲気、反応が促進される雰囲気)が搬送容器Cの内部に形成され、搬送容器Cの蓋が閉じられ、且つ搬送容器Cが静止した状態でカウントされる時間とする。従って、処理済みの基板Wが、蓋が開かれた搬送容器C内へ搬入されるにあたって、その搬入中の時間は待機時間としてカウントされない。また、これまでに述べたように装置D1Jにおいて基板Wが戻される搬送容器C内は大気雰囲気としてもよい。この搬送容器C内が大気雰囲気とされたまま当該搬送容器Cは装置D2Jへと搬送されることになり、装置D1Jでの基板Wの待機時間が短い場合には、この搬送容器Cの搬送中にもレジスト膜の変性が進行するが、上記のように搬送容器Cは静止していないので、搬送容器Cが搬送中の時間は待機時間に含まれないものとする。
【0108】
搬送容器C内で大気雰囲気あるいは反応が促進される雰囲気にて基板Wを待機させるとして説明してきたが、バッファモジュール4内にこれらのいずれかの雰囲気を形成して基板Wを待機させてもよい。この場合、上記の基板Wの待機時間については、大気雰囲気あるいは反応が促進される雰囲気がバッファモジュール4内に形成された状態で、且つ基板Wがスロットに載置された状態での時間であるものとする。つまり、これらの雰囲気が既にバッファモジュール4に形成された状態で基板搬送機構によって基板Wが当該バッファモジュール4に受け渡される場合、基板Wが支持部43に載置されてから支持部43から離れるまでの時間が、待機時間としてカウントされるものとする。
【0109】
なお、バッファモジュール4、搬送容器Cの両方で基板Wを待機させて、搬送容器Cでの基板Wの待機時間とバッファモジュール4での基板Wの待機時間との合計時間が、上記した各処理モジュールの必要滞在時間より長くなるようにすればよい。その他に複数のバッファモジュール4で各々待機させたり、装置D1J、装置D2Jの各々で搬送容器Cを待機させたりしてもよい。つまり、待機時間が必要滞在時間よりも長くなるように、複数の場所で基板Wが待機されるようにしてもよい。これまでに述べた基板処理システム1J以外のシステムでも同様に、このような基板Wの待機を行い、基板W間のCDを揃えることができる。
【0110】
なお、これまで述べたように基板Wが格納された搬送容器Cを大気雰囲気に長時間置くことによって、レジスト膜の反応を飽和させることができる。この場合は、パターニングにおいて上記した反応抑制ガス及び反応促進ガスの供給はなされなくてよく、雰囲気調整部としては待機時間が経過するように大気雰囲気で搬送容器Cを載置する載置部L2や棚51が該当する。既述したように搬送容器Cを棚52にて載置する場合には、当該棚52が雰囲気調整部に該当する。
【0111】
(変形例)
本実施形態における基板処理システム1Jは、例えば他の装置を含んでいてもよい。
図18A、
図18Bは、本実施形態の基板処理システム1Jに増設する装置D3J、D3Kを示す概略平面図である。
図18A、
図18Bにおいては、OHT71、基板搬送領域R2の図示を省略している。
【0112】
図18Aに示す装置D3Jを基板処理システム1Jに増設する場合、装置D3Jは、例えば装置D2JのロードポートLPの左側の対向位置に配置される。装置D3Jの処理ブロックB2には、熱処理装置のみが搭載され、第2加熱モジュールPEBが設けられ、併せて第1加熱モジュールPABが設けられてもよい。
【0113】
基板Wの処理経路については、装置D1J、D2Jにおいてレジストの塗布~1回目のPEB、現像までの処理がされた後、装置D3Jにおいて2回目のPEB、装置D2Jにおいて2回目の現像が行われる。基板処理システム1Jにおいては、このようにPEB及び現像が2回行われることに限定されず1回または3回以上でもよく、装置D3Jにおいては、2回目のPEBに限らず、1回目や3回目以降のPEBを行ってもよく、装置D2Jにおいては、2回目以降のPEBを行ってもよい。そして装置D1JでPABを行わず、装置D3JでPABを行ってもよい。
【0114】
図18Bに示す装置D3Kを基板処理システム1Jに増設する場合、装置D3Kは、例えば装置D2Jの前側の対向位置に配置される。装置D3Kの処理ブロックB2には、例えば現像モジュールDEVが設けられ、併せて第2加熱モジュールPEBが設けられてもよい。装置D3J及び上述の装置D2Jに配置された現像モジュールDEVは、現像液モジュール及び現像ガスモジュールのいずれでもよく、両方とも混在していてもよい。
【0115】
基板Wの処理経路については、装置D1J、D2Jにおいてレジストの塗布~1回目のPEB、現像までの処理がされた後、装置D3Kにおいて2回目のPEB、2回目の現像が行われる。基板処理システム1Jにおいては、このようにPEB、現像が2回行われず、1回または3回以上でもよく、装置D3Kにおいては2回目のPEBに限らず、1回目や3回目以降のPEBを行ってもよい。そして装置D2Jにおいては、2回目以降のPEB、現像を行ってもよい。
【0116】
更に基板処理システム1Jにおいては、装置D3J、D3Kを共に増設してもよい。そして装置D2J、D3J、D3Kにおいても、装置D1Jと同様にバッファモジュール4が設けられてもよい。増設した装置D3J、D3Kにおいては、上記に既述した装置D1J、D2Jと同様な手法で、適宜レジスト膜の反応を抑制、促進、又は飽和させて基板W間のCDを揃えることができる。
【0117】
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更及び組み合わせがなされてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 基板処理システム
13 供給源
14、17 バルブ
15 ガス流路
18 排気流路
C 搬送容器
C1 容器内空間
D1 装置
D3 装置
W 基板