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特開2024-155790バッテリー断熱シート、その製造方法、及びそれを含むバッテリーモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155790
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】バッテリー断熱シート、その製造方法、及びそれを含むバッテリーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20241024BHJP
   H01M 50/202 20210101ALI20241024BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20241024BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241024BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M50/202 401F
H01M10/651
H01M10/625
F16L59/02
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024065538
(22)【出願日】2024-04-15
(31)【優先権主張番号】10-2023-0052566
(32)【優先日】2023-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0106093
(32)【優先日】2023-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヘ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ミョン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ボ ギョン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,スン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジェ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ラ,ハ ナ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ヒョ
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ジョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ユン ソン
【テーマコード(参考)】
3H036
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB18
3H036AB24
3H036AC03
3H036AE01
5H031AA09
5H031CC01
5H031EE03
5H031EE04
5H031HH08
5H031HH09
5H031KK02
5H040AA37
5H040AS07
5H040AY06
5H040JJ03
5H040LL04
5H040LL06
(57)【要約】
【課題】優れた断熱性、耐熱性、低粉塵特性、及び柔軟性といった特性から選ばれる少なくとも一つ又は複数の特性を有するバッテリー断熱シート、その製造方法、及びそれを含むバッテリーモジュールを提供する。
【解決手段】エアロゲル層を含むバッテリー断熱シートであり、前記エアロゲル層は、繊維化されたポリマーマトリックスと、前記繊維化されたポリマーマトリックスに分布しているエアロゲル粒子と、を含み、前記繊維化されたポリマーマトリックスは、乾式バインダーを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゲル層を含むバッテリー断熱シートであって、
前記エアロゲル層は、繊維化されたポリマーマトリックスと、前記繊維化されたポリマーマトリックスに分布しているエアロゲル粒子と、を含み、
前記繊維化されたポリマーマトリックスは、乾式バインダーを含んでいる、バッテリー断熱シート。
【請求項2】
前記乾式バインダーは、フッ素系バインダーを含み、前記フッ素系バインダーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサプロピレン共重合体、及びポリフッ化ビニリデンからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のバッテリー断熱シート。
【請求項3】
前記エアロゲル層の総量に対して、前記繊維化されたポリマーマトリックスは10重量%以上90重量%以下で含まれ、前記エアロゲル粒子は10重量%以上90重量%以下で含まれている、請求項1に記載のバッテリー断熱シート。
【請求項4】
前記エアロゲル粒子は、BET比表面積が500m/g以上1,000m/g以下である、請求項1に記載のバッテリー断熱シート。
【請求項5】
前記エアロゲル粒子の平均粒径(D50)は、5μm以上100μm以下である、請求項1に記載のバッテリー断熱シート。
【請求項6】
前記エアロゲル粒子は、前記繊維化されたポリマーマトリックスの内部に分散されている、請求項1に記載のバッテリー断熱シート。
【請求項7】
前記エアロゲル層は下記の式(1)を満たす、請求項1に記載のバッテリー断熱シート。
0.1≦WFB/TPM≦18・・・(1)
上記の式(1)において、WFBは、前記エアロゲル層の総量に対する前記乾式バインダーの含有量(重量%)を表し、TPMは、前記エアロゲル粒子の平均粒径(μm)を表す。
【請求項8】
前記バッテリー断熱シートは、前記エアロゲル層の上面、下面、又は上下面に備えられる基材をさらに含んでいる、請求項1に記載のバッテリー断熱シート。
【請求項9】
前記バッテリー断熱シートは、第1基材、前記エアロゲル層、及び第2基材が順次積層された構造である、請求項8に記載のバッテリー断熱シート。
【請求項10】
粉末状の乾式バインダー及び粉末状のエアロゲル粒子を含む原料混合物を製造する段階と、
前記原料混合物を押出機を用いて押し出してエアロゲル層を製造する段階と、を含み、
前記エアロゲル層は、エアロゲル粒子が分布している繊維化されたポリマーマトリックスを含み、
前記繊維化されたポリマーマトリックスは乾式バインダーを含む、バッテリー断熱シートの製造方法。
【請求項11】
前記原料混合物を製造する段階は、1次又は2次以上の乾式混合段階によって行われる、請求項10に記載のバッテリー断熱シートの製造方法。
【請求項12】
前記原料混合物を製造する段階は、1次乾式混合段階及び2次乾式混合段階を含み、前記2次乾式混合段階における撹拌速度は、前記1次乾式混合段階における撹拌速度の2倍以上である、請求項10に記載のバッテリー断熱シートの製造方法。
【請求項13】
前記1次乾式混合段階において、温度は20℃以上65℃以下であり、撹拌速度は2000rpm以下であり、撹拌時間は5分以上15分以下であり、
前記2次乾式混合段階において、温度は20℃以上65℃以下であり、撹拌速度は4000rpm以上10,000rpm以下であり、撹拌時間は10分以上60分以下である、請求項12に記載のバッテリー断熱シートの製造方法。
【請求項14】
前記エアロゲル層を製造する段階において前記原料混合物を前記押出機に投入し、シート状に押し出す、請求項10に記載のバッテリー断熱シートの製造方法。
【請求項15】
前記エアロゲル層を製造する段階は、25℃以上150℃以下の温度及び1MPa以上100MPa以下の圧力の条件で行われる、請求項10に記載のバッテリー断熱シートの製造方法。
【請求項16】
前記エアロゲル層の上面、下面、又は上下面に基材を積層する段階をさらに含む、請求項10に記載のバッテリー断熱シートの製造方法。
【請求項17】
前記エアロゲル層の上下面にそれぞれ第1基材及び第2基材を積層する、請求項10に記載のバッテリー断熱シートの製造方法。
【請求項18】
複数のセルと、
前記複数のセル間にそれぞれ備えられた請求項1~9のいずれか一項に記載のバッテリー断熱シートと、を含み、
前記バッテリー断熱シートの上下面はそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置されている、バッテリーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー断熱シート、その製造方法、及びそれを含むバッテリーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、電気エネルギーを化学エネルギーの形態に変えて貯蔵できる優れたエネルギー密度を提供する電力貯蔵システムである。再充電が不可能な一次電池に比べて二次電池は再充電が可能であり、スマートフォン、セルラーフォン、ノートパソコン、タブレットPCなどのIT機器に多く用いられている。近年、環境汚染の防止のために電気自動車への関心が高まっており、電気自動車には高容量の二次電池が採択されている。このような二次電池は、高密度、高出力、安定性などの特性が要求されている。
【0003】
一方、リチウム二次電池のような高容量のセルを多数含む場合に、いずれかの理由で一つのセルが過熱によって熱暴走し、隣接する他のセルに悪影響を及ぼすことがあるため、隣接し合うセル同士が熱的に断熱されることが要求される。
【0004】
そこで、従来は、セル同士の間に板材や絶縁性樹脂板などを配置し、隣接するセル間における絶縁と断熱を図った。
【0005】
このような発明の背景になる技術に開示された上述した情報は、本発明の背景に対する理解度を向上させるためのものに過ぎず、したがって、従来技術を構成しない情報を含み得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2016-0107572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一実施形態は、優れた断熱性、耐熱性、低粉塵特性、及び柔軟性といった特性から選ばれる少なくとも一つ又は複数の特性を有するバッテリー断熱シート、その製造方法、及びそれを含むバッテリーモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、エアロゲル層を含むバッテリー断熱シートであって、エアロゲル層は、繊維化されたポリマーマトリックスと、繊維化されたポリマーマトリックスに分布しているエアロゲル粒子と、を含み、繊維化されたポリマーマトリックスは、乾式バインダーを含んでいる、バッテリー断熱シートを提供する。
【0009】
乾式バインダーはフッ素系バインダーを含み、フッ素系バインダーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサプロピレン共重合体、及びポリフッ化ビニリデンからなる群から選ばれる1種以上であってよい。
【0010】
エアロゲル層の総量に対して、繊維化されたポリマーマトリックスは10重量%以上90重量%以下で含まれ、エアロゲル粒子は10重量%以上90重量%以下で含まれてよい。
【0011】
エアロゲル粒子は、BET比表面積が500m/g以上1,000m/g以下であってよい。
【0012】
エアロゲル粒子の平均粒径(D50)は、5μm以上100μm以下であってよい。
【0013】
エアロゲル粒子は、繊維化されたポリマーマトリックスの内部に分散されてよい。
【0014】
エアロゲル層は、下記の式(1)を満たすことができる。
0.1≦WFB/TPM≦18・・・(1)
上記の式(1)において、WFBは、エアロゲル層の総量に対する前記乾式バインダーの含有量(重量%)を表し、TPMは、エアロゲル粒子の平均粒径(μm)を表す。
【0015】
バッテリー断熱シートは、エアロゲル層の上面、下面、又は上下面に備えられる基材をさらに含んでよい。
【0016】
バッテリー断熱シートは、第1基材、エアロゲル層、及び第2基材が順次積層された構造であってよい。
【0017】
他の一実施形態は、粉末状の乾式バインダー及び粉末状のエアロゲル粒子を含む原料混合物を製造する段階と、原料混合物を押出機を用いて押し出してエアロゲル層を製造する段階と、を含み、エアロゲル層は、エアロゲル粒子が分布している繊維化されたポリマーマトリックスを含み、繊維化されたポリマーマトリックスは、繊維化された乾式バインダーを含む、バッテリー断熱シートの製造方法を提供する。
【0018】
原料混合物を製造する段階は、1次乾式混合段階及び2次乾式混合段階を含み、2次乾式混合段階における撹拌速度は、1次乾式混合段階における撹拌速度の2倍以上であってよい。
【0019】
1次乾式混合段階において、温度は20℃以上65℃以下であり、撹拌速度は2000rpm以下であり、撹拌時間は5分以上15分以下であり、2次乾式混合段階において、温度は20℃以上65℃以下であり、撹拌速度は4000rpm以上10,000rpm以下であり、撹拌時間は10分以上60分以下であってよい。
【0020】
エアロゲル層を製造する段階は、原料混合物を押出機に投入し、シート状に押し出すことができる。
【0021】
エアロゲル層を製造する段階は、25℃以上150℃以下の温度及び1MPa以上100MPa以下の圧力の条件で行われてよい。
【0022】
エアロゲル層の上面、下面、又は上下面に基材を積層する段階をさらに含んでよい。
【0023】
エアロゲル層の上下面にそれぞれ第1基材及び第2基材を積層することができる。
【0024】
さらに他の一実施形態は、複数のセルと、複数のセル間にそれぞれ備えられるバッテリー断熱シートと、を含み、バッテリー断熱シートの上下面はそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置されている、バッテリーモジュールを提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施形態によるバッテリー断熱シートは、耐熱性に富む乾式バインダー及びエアロゲルを用いて乾式工程により、エアロゲルが分布している繊維化されたポリマーマトリックスを含むので、断熱性、耐熱性、低粉塵特性、及び柔軟性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一実施形態によるバッテリー断熱シートの構造を示す模式図である。
図2】他の一実施形態によるバッテリー断熱シートの構造を示す模式図である。
図3】さらに他の一実施形態によるバッテリー断熱シートの構造を示す模式図である。
図4】複数のセル間に形成された一実施形態によるバッテリー断熱シートを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態について、技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。ただし、実施形態は様々な異なる形態で具現されてよく、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0028】
断熱材とは、熱が温度の高い所から低い所へ移動するその流れを防止するための材料であり、冷蔵庫、冷凍倉庫、及び建物の他、航空機、電子部品、自動車産業などを含む様々な産業分野にも使用されている。
【0029】
このような断熱材は、低い熱伝導度による優れた断熱性能が備えられるべきであり、このような断熱性を保持し続けるための機械的強度も要求される。
【0030】
一方、エアロゲルは、ナノ多孔構造の透明又は半透明の先端素材であり、密度が非常に低く、低い熱伝導度の特性を有するので、断熱材として高い潜在力があるだけでなく、様々な産業分野で使用可能な非常に効率的な超断熱材として評価されている。
【0031】
また、エアロゲルの最大の長所は、従来のスチロフォームなどの有機断熱材に比べて低い熱伝導率を示す点と、有機断熱材の致命的な弱点である火災脆弱性と火災時の有害ガス発生の問題を解決できるという点である。
【0032】
一実施形態によるバッテリー断熱シートは、エアロゲル層を含むバッテリー断熱シートであり、エアロゲル層は、繊維化されたポリマーマトリックスと、繊維化されたポリマーマトリックスに分布しているエアロゲル粒子と、を含み、繊維化されたポリマーマトリックスは乾式バインダーを含んでよい。
【0033】
構造で形成されたバッテリー断熱シートは、耐熱性を有する乾式バインダーを高含量で含むことができるので、断熱性の他に耐熱性も改善され、乾式バインダーが繊維化されたポリマーマトリックス構造で存在し、繊維化されたポリマーマトリックスの内部にエアロゲル粒子が分散されているので、柔軟性に富み、エアロゲル粒子の脱離を防止することによって低粉塵特性を有することができる。
【0034】
特に、通常、乾式バインダーは耐熱性には優れているが、水分散が比較的容易でないという制限点がある。しかしながら、本発明の一実施形態に係るバッテリー断熱シートは、乾式工程により、乾式バインダーをその分散性に影響を受けずに高含量で含むことができ、断熱シート中に容易に含まれるようにすることにより、より優れた耐熱性を発揮し、その結果、相対的に薄い厚さの断熱シートによって目的の耐熱性に到達でき、エアロゲル粒子が脱離する現象を減少させることができる。
【0035】
一実施形態において、繊維化されたポリマーマトリックスは、水系バインダーを含まなくてよい。ここで、水系バインダーは、通常の水溶性のバインダーを意味でき、例えば、無機バインダー、水性高分子、陰イオン水溶性高分子、陽イオン水溶性高分子、及び水分散性高分子などを含んでよい。
【0036】
具体的には、繊維化されたポリマーマトリックスは、乾式工程によって製造されるものであり、水系バインダーを含まなくてよい。このように水系バインダーを含まないことにより、乾式工程で押出により、繊維化されたポリマーマトリックスに、エアロゲルが分散された構造のエアロゲル層の形成が可能である。
【0037】
ちなみに、無機バインダーは、可溶性ケイ酸塩などを含んでよく、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、及びケイ酸リチウムなどの通常の水性高分子を意味するものと解することができる。
【0038】
水性高分子は、例えば、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)、及びポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)などの通常の水性高分子を意味できる。
【0039】
陰イオン水溶性高分子は、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル、リン酸エステル及びこれらの塩類の官能基を有する高分子など、通常の陰イオン水溶性高分子を意味できる。
【0040】
陽イオン水溶性高分子は、アミン、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム及びこれらの塩類の官能基を有する高分子からなる群から選ばれる1種以上を含んでよい。例えば、陽イオン水溶性高分子はアミン基を有する高分子であってよく、具体的な例として、ポリエチレンアミン(polyethylene amine)及びポリアミン(polyamine)などの通常の陽イオン水溶性高分子を意味するものと解することができる。
【0041】
水分散性高分子は、水分散性ポリウレタン(polyurethane)及び水分散性ポリエステル(polyester)などの通常の水分散性高分子を意味するものと解することができる。
【0042】
乾式バインダーは、例えば、繊維化(fibrillized)バインダーであってよい。具体的には、乾式バインダーは、繊維化が可能なバインダーであるか、繊維化されてマトリックスを形成できるバインダーを意味するものと解することができる。
【0043】
乾式バインダーは、溶媒に含浸、溶解、及び分散されないバインダーを意味できる。乾式バインダーは繊維化バインダーであり、エアロゲルを支持し結着させるマトリックスの役割を担うことができる。乾式バインダーの縦横比(aspect ratio)は、10以上、20以上、50以上、又は100以上であってよい。
【0044】
乾式バインダーは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサプロピレン(PVDF-HFP)共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、及びフッ素ゴムからなる群から選ばれる1種以上を含むか、2種以上の共重合体を含むことができるよいが、これに限定されるものではない。
【0045】
具体的な例として、乾式バインダーは、フッ素系バインダーを含むことができる。フッ素系バインダーは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサプロピレン(PVDF-HFP)共重合体、及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。乾式バインダーを含むことにより、乾式工程によって繊維化が可能である。具体的には、乾式工程は、押出機を用いて原料混合物を押し出してエアロゲル層を製造するが、ここで、水系バインダーを含む場合、バインダーの繊維化が難しいことがある。
【0046】
一実施形態において、エアロゲル粒子は、BET比表面積が500m/g以上1,000m/g以下であってよい。例えば、エアロゲル粒子は、BET比表面積が500m/g以上950m/g以下、550m/g以上950m/g以下、又は600m/g以上900m/g以下であってよい。範囲内のBET比表面積値を有するエアロゲル粒子を含むことにより、複数のセル間の熱伝達及び熱伝搬を効果的に防止でき、バッテリー断熱シートの断熱性を改善することができる。
【0047】
エアロゲルの平均粒径(D50)は、5μm以上100μm以下、10μm以上100μm以下、又は50μm以上100μm以下であってよい。範囲内の粒径を有するエアロゲル粒子を含むことにより、エアロゲル同士の凝集、及び断熱シートの厚さが厚すぎになることを防止しながら断熱性を改善し、複数のセル間において熱伝達を遅延させることができる。
【0048】
平均粒径(D50)は、例えば、レーザー回折法(laser diffraction method)又は走査電子顕微鏡(SEM)を用いて測定でき、粒子の平均粒径(D50)は、粒径分布の50%基準における粒径(粒度分布の体積累積50%に相当する粒径)と定義できる。
【0049】
エアロゲル粒子は、繊維化されたポリマーマトリックスの内部に分散されたものであってよい。具体的には、後述する製造方法によってエアロゲル層を形成する場合に、エアロゲル層は、繊維化されたポリマーマトリックスの内部にエアロゲル粒子が均一に分散された構造で形成されてよい。
【0050】
一実施形態において、エアロゲル層の総量に対して、繊維化されたポリマーマトリックスは、10重量%以上90重量%以下で含まれ、エアロゲル粒子は10重量%以上90重量%以下で含まれてよい。
【0051】
具体的には、繊維化されたポリマーマトリックスは、エアロゲル層の総量に対して20重量%以上90重量%以下、20重量%以上75重量%以下、又は20重量%以上65重量%以下で含まれてよく、エアロゲル粒子は、10重量%以上80重量%以下、25重量%以上80重量%以下、又は35重量%以上80重量%以下で含まれてよい。エアロゲル層の繊維化されたポリマーマトリックスとエアロゲル粒子の含有量を範囲内に制御することにより、断熱性、耐熱性、柔軟性、及び低粉塵特性に優れたバッテリー断熱シートを提供することができる。
【0052】
一実施形態において、乾式バインダーの含有量は、エアロゲル粒子のサイズにしたがって調節されてよい。具体的には、エアロゲル層は、下記の式(1)を満たすことができる。
0.1≦WFB/TPM≦18・・・(1)
上記の式(1)において、WFBは、エアロゲル層の総量に対する乾式バインダーの含有量(重量%)を表し、TPMは、エアロゲル粒子の平均粒径(μm)を表す。
【0053】
具体的には、WFB/TPM値は、0.1以上18以下、0.1以上10以下、0.1以上5以下、又は0.2以上1.3以下であってよい。WFB/TPM値は、エアロゲル粒子の平均粒径とエアロゲル層に含み得る乾式バインダーの含有量との関係を示すことができる。例えば、エアロゲル粒子のサイズが大きくなるほど、繊維化されたマトリックス内に乾式バインダーをパッキングし難く、エアロゲル粒子のサイズが小さくなるほど、比表面積が広くなって過量のバインダーが必要となるため、断熱シートの断熱特性が低下することがある。したがって、エアロゲル粒子サイズは、含み得る乾式バインダーの含有量に影響を及ぼす。そこで、WFB/TPM値を上記の範囲に調節することにより、薄い厚さで断熱性、耐熱性、柔軟性、及び低粉塵特性に優れたバッテリー断熱シートを提供することができる。
【0054】
エアロゲル層は、後述する製造方法によって繊維化されたポリマーマトリックスの内部にエアロゲル粒子が均一に分布した構造であり、エアロゲル層は、内部に空いた空間が多くないため、薄い厚さで形成しても、断熱性に富み、耐熱性を有する乾式バインダーを高含量で含むことができ、優れた耐熱性を有し得る。また、エアロゲル粒子が、繊維化されたポリマーマトリックスの内部に均一に分布し、エアロゲル粒子の脱離による粉塵発生を防止することができる。また、エアロゲル層の内部の空いた空間が振動や衝撃を吸収する働きをする一方で、断熱シートの厚さ増加の原因になるが、一実施形態によるバッテリー断熱シートは、エアロゲル層は内部の空いた空間が多くなくとも、繊維化されたポリマーマトリックスによって優れた柔軟性を具現できるので、様々な形態のバッテリーの断熱シートとして使用可能であり、特に、バッテリーが駆動中に固定されずに動く環境、例えば電気自動車に適用される場合にも、エアロゲル粒子の脱離を防止することができる。
【0055】
エアロゲル層の厚さは、1mm以上10mm以下、1mm以上5mm以下、又は1mm以上3mm以下であってよい。範囲内の厚さを有する基材上にエアロゲル層を形成することにより、薄い厚さで優れた断熱性、耐熱性、柔軟性、及び低粉塵特性を有する断熱シートを製造することができる。
【0056】
一実施形態において、バッテリー断熱シートは、エアロゲル層の上面、下面、又は上下面に備えられる基材をさらに含んでよい。
【0057】
一例として、図1は、一実施形態によるバッテリー断熱シートの構造を示す模式図である。
【0058】
図1を参照すると、バッテリー断熱シート100はエアロゲル層110を含み、ここで、エアロゲル層110の上面と下面はそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置されてよい。
【0059】
他の例として、図2は、一実施形態によるバッテリー断熱シートの構造を示す模式図である。
【0060】
図2を参照すると、バッテリー断熱シート100は、基材120と、基材120上に形成されたエアロゲル層110とを含み、ここで、バッテリー断熱シートの上面、例えばエアロゲル層110の上面と基材120の下面はそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置されてよい。
【0061】
さらに他の例として、図3は、一実施形態によるバッテリー断熱シートの構造を示す模式図である。
【0062】
図3を参照すると、一実施形態において、バッテリー断熱シート100は、第1基材130、第1基材130上に形成されたエアロゲル層110、及びエアロゲル層110上に形成された第2基材140を含む構造を有してよい。具体的には、バッテリー断熱シートは、第1基材130、エアロゲル層110、及び第2基材140が順次積層された構造であってよい。ここで、第1基材130と第2基材140はそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置されてよい。第1基材130と第2基材140は、互いに同一の又は互いに異なる物質で形成されてよい。
【0063】
基材は、樹脂、金属、金属以外の無機材料、又はこれらの複合体を含んでよく、その種類を限定しない。また、基材の形態としてはフィルム、薄膜、シートなど、特に限定しない。ここで、基材は、図2の基材120、図2の第1基材130、及び第2基材140を意味できる。
【0064】
樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、及びポリアミドからなる群から選ばれる1種以上を含んでよい。
【0065】
金属は、例えば、銅、ニッケル、コバルト、鉄、クロミウム、バナジウム、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、モリブデニウム、タングステン、イリジウム、銀、金、及び白金からなる群から選ばれる1種以上を含んでよい。金属材質の基材を使用する場合に、基材は、必要によって腐食防止処理、絶縁処理などが行われてよい。
【0066】
無機材料は、炭酸カルシウム(CaCO)、タルク(talc)、及びマイカ(mica)からなる群から選ばれる1種以上を含んでよい。
【0067】
具体的な例として、基材は無機材料を含んでよく、より具体的な例としてマイカを含んでよい。この場合、断熱シートの断熱性と耐久性などを改善することができる。
【0068】
基材の厚さは、0.01mm以上5mm以下、0.05mm以上3mm以下、又は0.1mm以上1mm以下であってよい。範囲内の厚さを有する基材を含むことにより、バッテリー断熱シートの耐久性を改善することができる。
【0069】
一実施形態によるバッテリー断熱シートの製造方法は、粉末状の乾式バインダー及び粉末状のエアロゲル粒子を含む原料混合物を製造する段階と、原料混合物を押出機を用いて押し出してエアロゲル層を製造する段階と、を含み、エアロゲル層は、エアロゲル粒子が分布している繊維化されたポリマーマトリックスを含み、繊維化されたポリマーマトリックスは乾式バインダーを含んでよい。
【0070】
バッテリー断熱シートの製造方法は、全工程が乾式工程によって行われてよく、エアロゲル層の構成要素に関する具体的な説明は、上述した通りでよい。
【0071】
粉末状の乾式バインダー及び粉末状のエアロゲル粒子を含む原料混合物を製造する段階において乾式バインダー及びエアロゲル粒子に関する具体的な説明は、上述した通りでよい。
【0072】
原料混合物を製造する段階において、乾式バインダーとエアロゲル粒子は溶媒を含有せず、粉末状に混合されてよい。
【0073】
原料混合物を製造する段階は、1次又は2次以上の混合段階によって行われてよい。具体的には、原料混合物を製造する段階は、1次乾式混合段階及び2次乾式混合段階を含み、2次乾式混合段階における撹拌速度は、1次乾式混合段階における撹拌速度の2倍以上、2倍以上8倍以下、又は4倍以上6倍以下であってよい。
【0074】
1次乾式混合段階において、温度は20℃以上65℃以下、25℃以上50℃以下、又は25℃以上35℃以下であり、撹拌速度は2000rpm以下、500rpm以上1800rpm以下、又は800rpm以上1300rpm以下であり、撹拌時間は5分以上15分以下であってよい。
【0075】
2次乾式混合段階において、温度は20℃以上65℃以下、25℃以上50℃以下、又は25℃以上35℃以下であり、撹拌速度は4000rpm以上10,000rpm以下、4000rpm以上8000rpm以下、又は4000rpm以上6000rpm以下であり、撹拌時間は10分以上60分以下、10分以上40分以下、又は20分以上30分以下であってよい。
【0076】
上記の条件で1次及び2次乾式混合段階を経た原料混合物を押し出すことにより、繊維化されたポリマーマトリックスの内部にエアロゲル粒子が分布したエアロゲル層を形成することができる。
【0077】
原料混合物を製造する段階において、撹拌時に撹拌機を用いることができる。撹拌機は、例えばニーダー(kneader)を含んでよい。撹拌機は、例えば、チャンバーと、チャンバーの内部に配置されて回転する1つ以上の回転軸と、回転軸に回転可能に結合され、回転軸の長手方向に配置されるブレードと、を含む構造を有してよい。ブレードは、例えば、リボンブレード、シグマブレード、ジェット(Z)ブレード、分散ブレード、及びスクリューブレードから選ばれる1つ以上を含んでよい。ブレードを含むことにより、溶媒なしにもエアロゲルと乾式バインダーとを効果的に混合し、生地形態(dough-like)の原料混合物を製造できる。
【0078】
原料混合物を製造するとき、原料混合物の総量に対して、乾式バインダーは20重量%以上70重量%以下、30重量%以上60重量%以下、又は40重量%以上60重量%以下で含まれてよく、エアロゲル粒子は30重量%以上80重量%以下、40重量%以上70重量%以下、又は40重量%以上60重量%以下で含まれてよい。範囲内に原料混合物を製造する場合に、断熱性、耐熱性、柔軟性、及び低粉塵特性に優れたエアロゲル層を製造することができる。
【0079】
一実施形態において、エアロゲル層を製造する段階は、原料混合物を押出機に投入し、シート状に押し出すことであってよい。
【0080】
エアロゲル層を製造する段階は、25℃以上150℃以下、30℃以上100℃以下、又は30℃以上70℃以下の温度で行うことができる。また、エアロゲル層を製造する段階において、押出時の圧力は、1MPa以上100MPa以下、20MPa以上80MPa以下、又は30MPa以上70MPa以下であってよい。条件で原料混合物を押し出すことにより、乾式バインダー内にエアロゲルが均一に分布した構造のエアロゲル層を形成することができる。
【0081】
一実施形態によるバッテリー断熱シートの製造方法は乾式工程によって行われ、工程溶媒を含まないので、残留溶媒を除去するための追加工程が不要であるとの利点がある。
【0082】
一実施形態において、エアロゲル層を製造する段階において原料混合物を押出機で放射するとき、温度は20℃以上90℃以下、30℃以上60℃以下、又は35℃以上55℃以下であってよい。また、放射時の圧力は、30MPa以上70MPa以下、40MPa以上65MPa以下、又は40MPa以上60MPa以下であってよい。範囲内の条件で原料混合物を放射することにより、エアロゲルが分散された繊維化されたポリマーマトリックスを含むエアロゲル層を製造することができる。
【0083】
押出機は、通常の押出機を使用することができ、特に限定されず、例えば、単軸押出機及び二軸押出機などを使用することができる。
【0084】
一実施形態において、エアロゲル層の上面、下面、又は上下面に基材を積層する段階をさらに含んでよい。一例として、エアロゲル層を基材上に積層してバッテリー断熱シートを製造でき、他の例として、エアロゲル層の上下面にそれぞれ第1基材及び第2基材を積層し、バッテリー断熱シートを製造することができる。ここで、基材、第1基材及び第2基材に関する具体的な説明は、上述した通りでよい。
【0085】
基材を積層する段階は、エアロゲル層の上面、下面、又は上下面に接着剤を用いて基材を積層することができる。具体的には、基材を積層する段階は、通常の接着剤を用いてエアロゲル層の上面、下面、又は上下面に接着層をコートし、接着層に基材を積層する方法で行うことができる。
【0086】
一実施形態によるバッテリーモジュールは、複数のセルと、複数のセル間にそれぞれ備えられるバッテリー断熱シートと、を含み、バッテリー断熱シートの上下面はそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置されてよい。
【0087】
図4は、複数のセル間に形成された一実施形態によるバッテリー断熱シートを示す模式図である。
【0088】
図4を参照すると、一実施形態によるバッテリー断熱シート100は、複数個のセル200を含むバッテリーモジュール内でそれぞれのセル200の間に形成されてよい。ここで、バッテリー断熱シート100は、上面、下面、及び上面と下面との間の縁側面を含んでよいが、バッテリー断熱シート100の上下面、すなわち、上面と下面は、隣接するそれぞれのセル200と対面するように配置されてよい。例えば、上述の図1のエアロゲル層110の上下面はそれぞれ、図4において左右に形成されたそれぞれのセル200と対面するように配置されてよい。他の例として、上述の図2のエアロゲル層110の上面と基材120の下面はそれぞれ、図4において左右に形成されたそれぞれのセル200と対面するように配置されてよい。さらに他の例として、上述の図3の第1基材130の下面と第2基材140の上面はそれぞれ、図4において左右に形成されたそれぞれのセル200と対面するように配置されてよい。上記の一実施形態によるバッテリー断熱シート100を複数のセル200の間にそれぞれ形成することにより、セル内部で先立って火炎を遮断して他のセルに火炎が伝播されることを極力抑制し、安全性をより高めたバッテリーモジュール及びこれを含むバッテリーパックを提供することができる。
【実施例0089】
以下では本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、以下に記載する実施例は、本発明を具体的に例示又は説明するためのものに過ぎず、これらに本発明が限定されてはならない。また、ここに記載されていない内容は、この技術の分野における熟練した者であれば技術的に十分に類推できるので、その説明を省略する。
【0090】
(バッテリー断熱シート製造)
実施例1
1.原料混合物製造
乾式バインダーとして粉末状のポリテトラフルオロエチレンとエアロゲル粒子(D50 50μm)を混合し、原料混合物を製造した。原料混合物を25℃で1000rpmの撹拌速度で10分間1次乾式混合し、第1混合物を製造した。次いで、第1混合物を25℃で5000rpmの撹拌速度で20分間さらに混合し、第2混合物を製造した。
【0091】
ここで、原料混合物の総量に対して、ポリテトラフルオロエチレンの含有量は50重量%であり、エアロゲル粒子の含有量は50重量%である。
【0092】
2.エアロゲル層製造
準備した第2混合物を押出機に投入し、45℃の温度条件で50MPaの圧力条件で押し出し、繊維化されたポリテトラフルオロエチレンマトリックスの内部にエアロゲル粒子が分布しているエアロゲル層を形成した。ここで、エアロゲル層の厚さは2mmと確認された。
【0093】
3.バッテリー断熱シート製造
エアロゲル層の上下面にそれぞれ、0.1mm厚のマイカシート(Famica,Muscovite)を接着剤によるコーティング方法で積層し、バッテリー断熱シートを製造した。
【0094】
実施例2
実施例1において原料混合物をポリテトラフルオロエチレン20重量%及びエアロゲル粒子80重量%の組成にした以外は、実施例1と同じ方法で行った。
【0095】
実施例3
実施例1において原料混合物をポリテトラフルオロエチレン35重量%及びエアロゲル粒子65重量%の組成にした以外は、実施例1と同じ方法で行った。
【0096】
実施例4
実施例1において原料混合物をポリテトラフルオロエチレン65重量%及びエアロゲル粒子35重量%の組成にした以外は、実施例1と同じ方法で行った。
【0097】
実施例5
実施例1において平均粒径(D50)5μmのエアロゲル粒子を使用し、原料混合物をポリテトラフルオロエチレン80重量%及びエアロゲル粒子20重量%の組成にした以外は、前記実施例1と同じ方法で行った。
【0098】
実施例6
実施例1において平均粒径(D50)100μmのエアロゲル粒子を使用した以外は、実施例1と同じ方法で行った。
【0099】
比較例1
1.エアロゲル組成物製造
超純水溶媒に、水系バインダーとしてポリビニルアルコール(Sigma Aldrich,Poly(vinyl alcohol))、乾式バインダーとしてポリテトラフルオロエチレン及びエアロゲル粒子を投入し、混合してエアロゲル組成物を製造した。
【0100】
エアロゲル組成物の固形分含量は、エアロゲル85重量%、ポリビニルアルコール10重量%、及びポリテトラフルオロエチレン5重量%と確認された。
【0101】
2.バッテリー断熱シート製造
0.1mm厚を有するマイカシート(Famica,Muscovite)上に製造されたエアロゲル組成物をスラリー塗布した後、サンドウィッチタイプで0.1mm厚のマイカシートを積層した後、ロール圧延方法でコートした。その後、乾燥させてエアロゲル層を形成し、バッテリー断熱シートを製造した。
【0102】
比較例2
比較例1においてエアロゲル組成物の製造時に原料の投入量を調節し、固形分含量がエアロゲル50重量%、ポリテトラフルオロエチレン50重量%であるエアロゲル組成物を製造した以外は、比較例1と同じ方法で製造した。この場合、ポリテトラフルオロエチレンの分散が困難であるため、バッテリー断熱シートを製造することができなかった。
【0103】
比較例3
比較例1においてエアロゲル組成物製造時に原料の投入量を調節し、固形分含量がエアロゲル85重量%、ポリビニルアルコール5重量%、ポリテトラフルオロエチレン10重量%であるエアロゲル組成物を製造した以外は、比較例1と同じ方法で製造した。この場合にもポリテトラフルオロエチレンの分散が困難であり、バッテリー断熱シートを製造することができなかった。
【0104】
(実験例)
実験例1:断熱性評価
実施例1~6及び比較例1~3で製造されたバッテリー断熱シートを用いて断熱性を次のような方法で評価し、その結果は下記の表1に示した。
【0105】
常温(23±5℃)熱伝導度(mW/mK):断熱シートを幅125mm~150mm、幅125mm~150mmに裁断して試験片を製造し、NETZSCH社製のHFM436 Lambda装備を用いて常温(23±5℃)熱伝導度を測定した。常温熱伝導度が低いほど断熱シートの断熱性に優れていることを意味する。
【0106】
実験例2:粉塵性評価
実施例1~6及び比較例1~3で製造されたバッテリー断熱シートを用いて粉塵性を次のような方法で評価し、その結果は下記の表1に示した。
【0107】
粉塵性テスト:振動試験機(ASTMC592-04)を用いて、振動条件を24Hz/3mm、6hrにして振動による重さ減少率を測定した。
- サンプル準備:12×12インチ断熱シート準備
- 重さ減少率[%]=[(評価前の断熱シート重さ)-(評価後の断熱シート重さ)]/(評価前の断熱シート重さ)×100
【0108】
実験例3:柔軟性評価
実施例1~6及び比較例1~3で製造されたバッテリー断熱シートを用いて屈曲弾性率を評価し、その結果は下記の表1に示した。
【0109】
屈曲弾性率(Mpa):それぞれの断熱シートをASTM D790規格に基づく試験片として製造し、MTDI社製UTM(UT-005E)を用いて測定した。具体的には、3点曲げ分析法により、製造された試験片を支持台上に載せ、1mm/min~10mm/minの速度で試験片の中心に力を加え、荷重(load)を記録し、これを15%歪み度(strain)で割った初期勾配値を測定し、15%歪み度における屈曲弾性率を測定した。屈曲弾性率が低いほど断熱シートの柔軟性に優れていることを意味する。
【0110】
【表1】
【0111】
上記の表1から、実施例において断熱性、粉塵性及び柔軟性がいずれも優れていることが確認できた。また、耐熱性に富むバインダーを高含量で含み、耐熱性に優れていると予想できる。
【0112】
ここで、実施例1~6から、エアロゲル粒子とポリテトラフルオロエチレンの含有量による断熱性、粉塵性及び柔軟性の変化が確認できた。具体的には、エアロゲル粒子の平均粒径が50μm以上100μm以下であり、ポリテトラフルオロエチレンの含有量が20重量%以上65重量%以下である場合に、より優れた物性測定結果を示すことが確認できた。
【0113】
一方、比較例1から、溶媒を使用する湿式工程でエアロゲル層を形成した場合に、実施例2に比べてエアロゲル粒子の含有量が高いにもかかわらず、断熱性が類似のレベルであり、柔軟性及び粉塵性も低下していることが確認できた。また、比較例1~3から確認できるように、湿式工程でエアロゲル層を製造する場合に、ポリテトラフルオロエチレンを最大で5重量%しか含むことができず、これを超える場合には、分散性問題によってエアロゲル層の形成が困難であるということが分かる。また、湿式工程によってエアロゲル層を形成する場合に、実施例のようにバッテリー断熱シートを薄い厚さで製造することは困難であることが確認できた。
【0114】
したがって、一実施形態によるエアロゲル組成物を使用する場合に断熱性、耐熱性、柔軟性、及び低粉塵特性に優れていることが確認できた。
【0115】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、及び添付する図面の範囲内で様々に変形して実施することが可能であり、それらも本発明の範囲に属することは当然である。
【符号の説明】
【0116】
100 バッテリー断熱シート
110 エアロゲル層
120 基材
130 第1基材
140 第2基材
200 セル
図1
図2
図3
図4