(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155893
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】EUVマイクロリソグラフィ用のフォトマスクを検査するための測定装置および方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/84 20120101AFI20241024BHJP
G03F 1/24 20120101ALI20241024BHJP
【FI】
G03F1/84
G03F1/24
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024068540
(22)【出願日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】10 2023 110 174.9
(32)【優先日】2023-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン レーデル
(72)【発明者】
【氏名】センティル ラクシュマナン
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ ブレーカーボーム
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ マテイカ
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA10
2H195BD04
2H195BD05
2H195BD14
2H195BD20
2H195CA11
2H195CA22
(57)【要約】
【課題】汚染のリスクが低減された、マスク検査のための測定装置および方法を提供すること。
【解決手段】フォトマスクを検査するための測定装置が、EUV放射源(14)と照射系(16)と投影レンズ(22)とEUV像センサー(24)とを含む。EUV放射源(14)によって放出されたEUV放射が、照射系(16)を介してフォトマスク(17)まで誘導される。フォトマスク(17)で反射されたEUV放射が、フォトマスク(17)がEUV像センサー(24)上に結像される(image)ように投影レンズ(22)を介してEUV像センサー(24)まで誘導される。EUV放射源(14)と照射系(16)との間にペリクル(30)が配置され、その結果、EUV放射がEUV放射源(14)と照射系(16)との間でペリクル(30)を通過する。本発明は、フォトマスクを検査する方法にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクの検査のための測定装置であって、EUV放射源(14)と照射系(16)と投影レンズ(22)とEUV像センサー(24)とを含み、前記EUV放射源(14)によって放出されたEUV放射が前記照射系(16)を介してフォトマスク(17)まで誘導され、前記フォトマスク(17)で反射されたEUV放射が前記投影レンズ(22)を介して前記EUV像センサー(24)まで誘導され、その結果として前記フォトマスク(17)が前記EUV像センサー(24)上に結像され(image)、前記EUV放射が前記EUV放射源(14)と前記照射系(16)との間でペリクル(30)を通過するように前記EUV放射源(14)と前記照射系(16)との間に前記ペリクル(30)が配置されている、測定装置。
【請求項2】
前記ペリクル(30)が前記EUV放射源(14)と前記照射系(16)の前記第1のミラー(17)との間に配置されている、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記投影レンズ(22)、前記照射系(16)および/または前記EUV放射源(14)がその中に配置されている真空チャンバ(40)を含む、請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記EUV放射源(14)が前記真空チャンバ(40)のサブチャンバ(33)内に配置されている、請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記サブチャンバ(33)が出射開口(31)を有し、前記出射開口(31)が前記ペリクル(30)によって被われている、請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記ペリクル(30)が前記出射開口(31)を囲むハウジング外周と密閉式に面一である、請求項6に記載の測定装置。
【請求項7】
前記ペリクル(30)がフレーム(27、45)上に懸架され、前記フレーム(27、45)が前記測定装置の担持構造体(29)に取り外し可能に接続されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項8】
複数のペリクル(30)を担持する保持デバイス(43)を含み、前記保持デバイス(43)の第1の状態において前記EUV放射が第1のペリクル(30)を通過し、前記保持デバイス(43)の第2の状態において前記EUV放射が第2のペリクル(30)を通過する、請求項1~7のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記真空チャンバ(40)から前記ペリクル(30)を取り外す装填機構(44)を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項10】
前記EUV放射源(14)と前記フォトマスク(17)との間に配置されたスペクトルフィルタ(47)を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項11】
前記スペクトルフィルタ(47)が前記ペリクル(30)と前記フォトマスク(17)との間に配置されている、請求項10に記載の測定装置。
【請求項12】
前記スペクトルフィルタ(47)が前記照射系(16)のミラー(17)と前記フォトマスク(17)との間に配置されている、請求項10または11に記載の測定装置。
【請求項13】
前記スペクトルフィルタ(47)が前記ペリクル(30)にコーティングとして付けられている、請求項10に記載の測定装置。
【請求項14】
フォトマスクを検査する方法であって、EUV放射源(14)によって放出されたEUV放射が照射系(16)を介してフォトマスク(17)まで誘導され、前記フォトマスク(17)で反射されたEUV放射が、前記フォトマスク(17)が像センサー(24)上に結像される(image)ように投影レンズ(22)を介して前記EUV像センサー(24)まで誘導され、前記EUV放射が前記EUV放射源(14)と前記照射系(16)との間に配置されたペリクル(30)を通過する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EUVマイクロリソグラフィ用のフォトマスクを検査するための測定装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に微小な構造体を有する集積回路を製造するために使用されるマイクロリソグラフィ投影露光装置では、フォトマスクが使用される。マスク構造をリソグラフィ対象物に転写するために、極短波極紫外線放射(extreme ultraviolet radiation(EUV))が照射されたフォトマスクがリソグラフィ対象物上に結像される(image)。
【0003】
リソグラフィ対象物上に形成される像の高い質を確実にするためには、フォトマスクがサイズ通りである必要があり、汚染物質によって悪影響を受けない必要がある。マイクロリソグラフィ投影露光装置における操作の前、または操作の中断中に、フォトマスクを検査にかけることは知られている慣行である。この目的のために、フォトマスクまたはフォトマスクの一部のいわゆる空中像が生成され、その過程におけるフォトマスクがリソグラフィ対象物上ではなくEUV像センサー上に結像される(image)。EUV像センサー上への結像を基礎として使用して、フォトマスクに欠陥および汚染物質がないか評価を行うことが可能である。
【0004】
このマスク検査は、測定結果が汚染によって改変されないように行われる必要がある。具体的には、フォトマスクは、マスク検査手順の結果として汚染を受けるのを防止される必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、マスク検査のための測定装置および方法を提供し、その際に汚染のリスクが低減されるという目的に基づいている。この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。有利な実施形態が従属請求項に明記されている。
【0006】
フォトマスクの検査のための本発明による測定装置は、EUV放射源(EUV radiation source)と照射系と投影レンズとEUV像センサーとを含む。EUV放射源によって放出されたEUV放射が、照射系を介してフォトマスクまで誘導される(guided)。フォトマスクで反射されたEUV放射が、フォトマスクがEUV像センサー上に結像される(image)ように投影レンズを介してEUV像センサーまで誘導される。EUV放射がEUV放射源と照射系との間のペリクルを通過するように、EUV放射源と照射系との間にペリクルが配置される。
【0007】
EUVフォトマスクの検査のための測定装置の使用は、検査手順の結果として被検フォトマスクが汚染される有意なリスクを伴うことがわかっている。EUV放射源の動作中に粒子が発生するため、汚染の1つの原因はEUV放射源である。これらの粒子が測定装置内に自由に拡散した場合、粒子はフォトマスク上に定着する。汚染されたフォトマスクととも露光された半導体コンポーネント部品のパッチ全体が使用不能になる可能性があるため、これは特に有害となる。
【0008】
本発明は、EUV放射源と照射系との間に配置されたペリクルを提案する。ペリクルは、EUV放射源から照射系内に粒子が拡散するのを防止する。測定装置内の汚染のリスク、および特にフォトマスクの汚染のリスクが低減される。
【0009】
ペリクルとは、EUV放射を通過させるが、粒子の通過を抑止するように設計された膜を指す。物質は一般に、EUV放射に関して吸収性が高いため、マスク検査のための測定装置において使用されることを考慮してペリクルの材料と構造を慎重に適応化する必要がある。たとえば、可視光の場合とは異なり、汚染に対する保護としてガラス板を使用すること不可能である。EUV放射は、ガラス板に吸収されることになり、像センサーに十分な強度で達しないことになる。
【0010】
一実施形態では、ペリクルはCNT(カーボンナノチューブ)ペリクル、すなわちカーボンナノチューブ製の膜である。カーボンナノチューブの密度および束状構造は、第1には、膜がEUV放射を透過させ、第2には、粒子が膜で止められ、膜を通過することができないように、選定することができる。膜にラジカルイオンおよび分子に対する十分な耐性を与えるために、膜はコーティングを備えることができる。代替実施形態では、ペリクルは、シリコン製、窒化シリコン製、または任意のその他のシリコン含有材料製の膜を含む。十分に薄い場合、そのようなシリコン材料製の膜は、EUV放射の十分な透過性も示す。
【0011】
ペリクルは、EUV放射源から出てくるEUV放射が照射系に入射する前にペリクルを通過するように配置することができる。照射系は、EUV放射源とフォトマスクとの間の経路上でEUV放射が反射される1つまたは複数のEUVミラーを含むことができる。ペリクルは、EUV放射が照射系の別のEUVミラーにおいてその前に反射されないように、EUV放射源と照射系の第1のEUVミラーとの間に配置することができる。照射系は、フォトマスクの箇所部分が照射されるように構成することができる。照射系は、EUV放射の強度がその照射される箇所部分内で実質的に均一であるように構成することができる。
【0012】
EUVミラーの光学領域は、高反射性のコーティングで形成可能である。コーティングは、多層コーティング、特にモリブデンとシリコンの交互になった層を有する多層コーティングとすることができる。そのようなコーティングを使用することにより、入射EUV放射の約70%を反射することが可能である。EUV放射という用語は、5nmと100nmとの間の波長、特に5nmと30nmとの間の波長を有する極紫外線スペクトル領域における電磁放射を指すために使用される。
【0013】
測定装置の投影レンズは、EUV放射がフォトマスクと像センサーとの間で反射される複数のEUVミラーを含むことができる。投影レンズは、フォトマスクによって反射されたEUV放射を捕捉する第1のミラーM1を含むことができる。第1のミラーM1で反射されたEUV放射は、投影レンズの1つまたは複数のさらなるミラーを介してEUV像センサーまで誘導することができる。具体的には、EUV放射は、フォトマスク、具体的にはフォトマスクの一部の像が像センサー上で形成されるように、像センサーまで誘導することができる。像センサー上に結像される(image)フォトマスクの部分は、フォトマスクの小さい箇所部分に対応することができる。
【0014】
測定装置は、測定中に真空が存在する真空チャンバを含むことができる。真空チャンバ内に、投影レンズ、照射系および/またはEUV放射源を配置することができる。真空チャンバ内に、中間ハウジングによって真空チャンバの他の領域から分離されたサブチャンバを形成することができる。EUV放射源はサブチャンバ内に配置することができる。
【0015】
中間ハウジングは、それによってサブチャンバと真空チャンバの残りの部分との間で圧力が等化される均圧チャネルを備えることができる。サブチャンバと、真空チャンバの残りの部分との間には必ずしも完全な均圧はない。たとえば、EUV放射源によって生じた汚染を除去するためにサブチャンバ内にパージガスを導入することができる。これによって、サブチャンバ内の全圧または分圧および/またはガス組成を、真空チャンバの残りの部分と異ならせることができる。
【0016】
サブチャンバは、EUV放射源によって放出されたEUV放射がそれを通って照射系の方向に通過する出射開口(exit opening)を有することができる。出射開口はペリクルによって被われることができ、その結果、出射開口を通ってサブチャンバから出るすべてのEUV放射が、ペリクルを通って進み、すなわちペリクルを通過する。ペリクルは、開口を囲むハウジング外周と密閉式に面一とすることができ、その結果、ペリクルとハウジングとの間またはペリクルのフレームとハウジングとの間の遷移部における、サブチャンバと真空チャンバの残りの部分との間の粒子の移動が防止される。ペリクルは、測定装置の動作中にペリクルの上方に存在する可能性がある圧力差に耐えるように設計することができる。
【0017】
ペリクルは、フレームに取り付けることができる。ペリクルはフレームが架けわたされる開口がペリクルによって被われるようにフレームに固定することができる。真空チャンバの部分ハウジングへの接続は、フレームを介して行うことができる。フレームと測定装置の担持構造体との間の接続、具体的にはフレームと真空チャンバの部分ハウジングとの間の接続は、ペリクルの交換を可能にするように解除可能接続とすることができる。ペリクルは、ペリクルが一定時間使用された後に汚染した場合、交換する必要がある場合がある。ペリクルは、整備基準の範囲内で定期的に交換されるように設計された消耗品とすることができる。ペリクルの交換は手動で行うことができる。ペリクルの交換のためのモーター駆動機構も可能である。
【0018】
測定装置は、複数のペリクルを担持する保持デバイスを備えることができる。ペリクルの各々をフレーム上に懸架することができる。保持デバイスは、複数のペリクルを有する同型のフレームコンポーネント部を有するか、または複数のフレームコンポーネント部を含むことができる。測定装置は、保持デバイスの第1の状態ではEUV放射が第1のペリクルを通過し、保持デバイスの第2の状態ではEUV放射が第2のペリクルを通過するように構成することができる。保持デバイスは、2つより多くのペリクルと、2つより多くの関連付けられた状態とを有してもよい。保持デバイスは、たとえば、ペリクル間の交換が回転運動によってもたらされる、タレットユニットを含むことができる。測定装置は、保持デバイスの状態を切り換えるための電動式駆動部を含むことができる。測定装置は、保持デバイスを制御する制御ユニットを含むことができる。
【0019】
EUV放射源の前に配置可能な複数のペリクルを備えることによって、メンテナンスの複雑さを軽減することができる。EUV放射源の前に単一のペリクルを有する測定装置では、メンテナンス間隔は、個々のペリクルが消耗するのにどれだけ時間がかかるかに依存する。複数のペリクルがあれば、メンテナンス間隔がペリクルの数に応じて延長される。ペリクルが消耗した後は、次のペリクルをEUVビーム路に挿入するように保持デバイスを作動させるだけである。
【0020】
測定装置は、測定装置の真空チャンバからペリクルを取り外し、それを新しいペリクルと交換することを目的とした装填機構を含むことができる。ペリクルは、フレームとともに交換することができる。装填機構は、1回の交換動作で複数のペリクルを交換するように設計することができる。交換操作は、手動介入のない自動プロセスとして行うことができる。
【0021】
ペリクルを交換するために、真空チャンバ内に大気圧が存在するように真空チャンバ内の真空を解消することができる。次に、ペリクルを取り外し、交換するために、真空チャンバにそこを通してアクセスすることができる真空チャンバのハウジングの開口を開けることができる。
【0022】
測定装置が、そこを通してペリクルの交換が行われるエアロックを含む実施形態も可能である。エアロックの第1の状態ではエアロックチャンバと真空チャンバの両方に同じ圧力が存在することができ、その結果、エアロックチャンバと真空チャンバとの圧力差なしにフォトマスクを搬送することができる。エアロックの第2の状態では、真空圧よりも高く、エアロックの周囲の圧力に対応する圧力が、エアロックチャンバ内に存在することができる。エアロックの第2の状態における圧力は、一実施形態では大気圧に対応する。エアロックの第2の状態では、エアロックチャンバとエアロックの周囲との圧力差なしにフォトマスクを搬送することができる。
【0023】
本明細書による測定装置は、EUVビーム路の1つまたは複数の他の区分に配置されたさらなるペリクルを含み、その結果としてEUV放射が複数のペリクルを連続して通過することが可能である。これは、EUV放射が厳密に1回通過するさらなるペリクルを含むことができる。これに加えて、またはこれに代えて、これは、EUV放射がそのペリクルを2回通過するように配置されたペリクルを含んでもよい。
【0024】
測定装置は、EUV放射の分光組成に作用するための、EUV放射源とフォトマスクとの間に配置されたスペクトルフィルタを含むことができる。フォトマスクの検査のために、EUV放射が13.5nm前後の狭い波長範囲の電磁放射のみを含んでいれば有利である。EUV放射源によって、たとえばEUV波長範囲、可視波長範囲、または赤外線波長範囲の、より長波の電磁放射も放出される場合、これらの成分は測定を妨害する。フィルタは、バンドパスフィルタとして設計することができる。バンドフィルタの通過帯域は、10nmと20nmとの間、好ましくは11nmと15nmとの間とすることができる。通過帯域外のスペクトル成分、具体的にはより長波のスペクトル成分が有意に減衰される。
【0025】
一実施形態では、スペクトルフィルタは、EUV放射がジルコニウムの薄層を通過するZrフィルタである。Zrフィルタは、ジルコニウムフォイルが上にクランプ締めされるフレームを含むことができる。ジルコニウムはこの目的に適した透過特性と吸収特性を有する。しかし、薄いジルコニウム層はあまり機械抵抗がない。したがって、Zrフィルタは、その上でジルコニウム層が支持される、より機械抵抗のある材料でできたグリッドを含むことができる。グリッドは、たとえば金属線でできた金網とすることができる。
【0026】
Zrフィルタのそのような強化構造体は、EUV放射に対してZrフィルタの透過率が低下するような追加の吸収作用を及ぼす。一実施形態では、Zrフィルタには強化構造体がない。そのようなZrフィルタは、ジルコニウム層が大きな負荷に曝されない測定装置の領域に配置されることが好ましい。
【0027】
スペクトルフィルタは、ペリクルとフォトマスクとの間に配置することができる。ペリクルがEUV放射源とスペクトルフィルタとの間にある場合、粒子がスペクトルフィルタに向かって移動するのをペリクルによって妨げられるため、スペクトルフィルタがEUV放射源によって放出される粒子によって損傷されないように保証される。スペクトルフィルタがペリクルからある距離を隔てて配置されれば有利である。たとえば、照射系の少なくとも1つのEUVミラーが、スペクトルフィルタとペリクルとの間に配置されてもよい。
【0028】
一実施形態では、スペクトルフィルタは、ペリクルを有する構造ユニットを形成するように設計される。たとえば、ペリクルを保持するフレームが同時にスペクトルフィルタを保持することができ、その結果、EUV放射がペリクルとスペクトルフィルタを通過する。スペクトルフィルタは、ペリクルに対して平行に延びるフォイルとして形成することができる。
【0029】
スペクトルフィルタは、ペリクルに直接2次元接続されることも可能である。たとえば、変更ペリクルが機械的フィルタ効果とスペクトルフィルタ効果を兼ね備えるように、スペクトルフィルタをジルコニウムの薄層としてペリクルに直接付けることができる。ジルコニウムの層は、ペリクルのEUV放射源に対向する側に付けるか、ペリクルのEUV放射源とは反対側を向く側に付けるか、またはペリクルの両側に付けることができる。ペリクルとスペクトルフィルタのこのような同型の設計により、スペクトルフィルタはペリクルと同じメンテナンス間隔に従う消耗品とすることができる。この消耗品の交換は、変更されていないペリクルの文脈で説明したのと同じように行うことができる。ペリクルとは別個の構造ユニットとして実現されたスペクトルフィルタは、通常、ペリクルより長い動作寿命を有する。
【0030】
本発明は、EUV放射源によって放出されたEUV放射が照射系を介してフォトマスクまで誘導される、フォトマスクの検査方法にも関する。フォトマスクが像センサー上に結像される(image)ように、フォトマスクで反射されたEUV放射が投影レンズを介してEUV像センサーまで誘導される。EUV放射は、EUV放射源と照射系との間に配置されたペリクルを通過する。
【0031】
本開示は、本発明による測定装置の文脈で説明されている特徴を有する方法の開発を包含する。本開示は、本発明による方法の文脈で説明されている特徴を有する測定装置の開発を包含する。
【0032】
以下、本発明について、添付図面を参照して、有利な実施形態に基づいて例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明による測定装置の概略図を示す図である。
【
図2】
図1の測定装置のペリクルユニットを示す図である。
【
図4】本発明の代替実施形態の場合における
図1の詳細を示す図である。
【
図5】
図4の測定装置のコンポーネントを示す図である。
【
図6】本発明の代替実施形態における
図5による観点から見た図である。
【
図7】本発明の代替実施形態の場合における
図4による観点から見た図である。
【
図8】本発明の代替実施形態の場合における
図4による観点から見た図である。
【
図9】本発明の代替実施形態の場合における
図2による観点から見た図である。
【
図10】本発明の代替実施形態の場合における
図2による観点から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明による測定装置を使用して、マイクロリソグラフィフォトマスク17を検査することができる。
【0035】
一般に、マイクロリソグラフィ投影露光装置(図示せず)における使用のためにマイクロリソグラフィフォトマスク17が提供される。マイクロリソグラフィ投影露光装置において、フォトマスク17上に形成された構造体をウエハの形態のリソグラフィ対象物の表面上に結像させる(image)ために、フォトマスク17にたとえば13.5nmの波長における極紫外線放射(EUV放射)が照射される。ウエハには、EUV放射に反応するフォトレジストがコーティングされている。測定装置は、測定装置が仕様を満たしており、汚染がないか否かを検査するために使用される。
【0036】
図1によると、フォトマスク17は、EUV放射源14から出るEUVビーム路15が、照射系16を介してフォトマスク17まで誘導されるように測定装置内に配置されている。照射系16は、そこでEUVビーム路16が反射され、フォトマスク17の表面上の検査視野20が均一な輝度で照射されるビームに成形される、第1の照射ミラー17と第2の照射ミラー18と第3の照射ミラー19とを含む。フォトマスク17の面積と比較して小さい検査視野20が、縮尺通りではない図で
図3に示されている。たとえば、照射領域20は、0.5mm×0.8mmの寸法を有してもよい。フォトマスク17のエッジ長は、たとえば100mmと200mmとの間とすることができる。第1の照射ミラー17と第2の照射ミラー18との間に、照射領域をフォトマスク17の表面の検査視野20に区切るために使用される視野絞り21が配置されている。異なる検査視野20をEUVビーム路の領域に持ってくるために、XY位置決め機構37を使用してXY面内でフォトマスクを移動することができる。
【0037】
フォトマスク17で反射されたEUVビーム路15は投影レンズ22を通って像センサー24を備えたEUVカメラ23まで進み続ける。投影レンズ22は、EUV放射が反射され、それを介してフォトマスク17の検査視野20がEUVカメラ23の像センサー24上に結像される(image)、1つまたは複数のミラーを含むことができる。開口が第1のミラーM1に対応する開口絞り25が、フォトマスク17と第1のミラーM1との間に配置されている。EUV放射源14と照射系15とフォトマスク17と投影レンズ22とEUVカメラ23は、測定装置の動作中に陰圧が広がっている真空ハウジング40内に配置されている。
【0038】
EUV放射源14は、EUV放射がプラズマから13nmの波長で放出されるプラズマ放射源である。スズは、このようなEUV放射を放出するのに適したプラズマを発生するために使用可能な媒質である。プラズマを発生する目的で、レーザービームを媒質の液滴に当たるように形成することができる。
【0039】
照射系16内のミラーと投影レンズ22内のミラーは、EUV放射に対して特に高い反射率を有するEUVミラーとして設計されている。EUVミラーの光学領域は、高反射率コーティングによって形成可能である。このコーティングは、多層コーティング、具体的には、モリブデンとシリコンの交互になった層を有する多層コーティングとすることができる。このようなコーティングを使用して、入射EUV放射の約70%を反射することが可能である。
【0040】
投影レンズ22は、100を超える倍率を有する。フォトマスク17の検査視野20による生成映像の全体を記録することができるように、像センサー24の面積は倍率に従って検査視野20の面積より大きい。たとえば、像センサー24は100mm~200mmのオーダーの寸法を有することができる。
【0041】
真空ハウジング40内に、中間ハウジング29によって真空ハウジング40の内部の他の領域から分離されたサブチャンバ33が形成されている。中間ハウジング29には、それを介してサブチャンバ33と真空ハウジング40の内部の他の領域との間の均圧が生じる均圧チャネル28が形成されている。サブチャンバ33は、汚染物質を除去するためにパージガスで処理され、その結果、サブチャンバ33内のガスの組成と圧力が他の領域における条件と必ずしも一致しない。
【0042】
EUV放射源14はサブチャンバ33に配置されている。中間ハウジング29には、EUV放射源14によって放出されたEUV放射がそこを通ってサブチャンバ33から照射系16の方向に出射する出射開口31が形成されている。出射開口31を中間ハウジングのハウジング外周が環状に囲んでいる。ハウジング外周にペリクルユニット26が接続されている。
図2によると、ペリクルユニット26は、ペリクル30がクランプ締めされるフレームコンポーネント部27を含む。ペリクルユニット26のフレームコンポーネント部27は、ねじ接続を用いて測定装置の中間ハウジング29に取り付けられている。
【0043】
ペリクル30は、EUV放射をよく通すが、粒子の通過を妨げる、カーボンナノチューブ材料からなるきわめて薄い膜である。照射系16はペリクル30によって粒子汚染物質から保護される。照射系16の方向に移動するEUV放射源14において発生する粒子は、ペリクル30に入射し、その上に堆積する。
【0044】
ペリクルユニット26のフレームコンポーネント部27は、消耗ペリクル30を新しいペリクルと交換するために、メンテナンス操作時に中間ハウジング29から取り外すことができる。このために、真空ハウジング40の内部に大気圧が存在するように、真空ハウジング40内の真空が解消される。真空ハウジング40の内部への手動アクセスが可能になるように、ハウジング開口34が開けられる。ペリクルユニット26を真空ハウジング40から取り外すことができるように、フレームコンポーネント部27と中間ハウジング29との間のねじ接続が取り外される。新しいペリクル30を新しいフレームコンポーネント部27で測定装置に挿入し、中間ハウジング29に接続することができる。
【0045】
図4および
図5による実施形態では、測定装置は、複数のペリクル30が保持されるフレームコンポーネント部45を含む保持デバイス43を備える。フレームコンポーネント部45は、フレームコンポーネント部45が中心軸を中心に回転することができるように、回転駆動部41上に取り付けられている。フレームコンポーネント部45の回転位置に応じて、中間ハウジング29の出射開口31の前に他のペリクル30が配置される。示される例示の実施形態では、フレームコンポーネント部45は6個のペリクル30を担持し、すなわち、測定装置はペリクル30をメンテナンス操作の一環として交換する必要が生じるまで、6倍の長さで動作し続けることができることを意味する。
【0046】
図4および
図5において、ハウジング開口34を開け、フレームコンポーネント部45を9個のペリクルを備えた新しいフレームコンポーネント部45と交換することによって、ペリクル30を備えたフレームコンポーネント部45の交換が手動で行われる。
図6による代替実施形態では、フレームコンポーネント部45が旋回機構44上に懸架されている。旋回機構44により、フレームコンポーネント部45をエアロックチャンバ内に移送することができ、その結果、真空ハウジング40内の真空を解消する必要なしに、ペリクル30を備えたフレームコンポーネント部45を交換することができる。
【0047】
図7による代替実施形態では、ジルコニウム材料のフォイルがクランプ締めされたさらなるフレーム部46が、ペリクルユニット26のフレームコンポーネント部27に接続されている。ジルコニウム材料のフォイルは、13.5nmにおける高透過率を有し、電磁線の他の波長、特に、赤外領域までのより長波のスペクトル領域を強力に減衰させるスペクトルフィルタ47を形成する。スペクトルフィルタ47は、ペリクル30によって入射粒子から保護され、したがってより長い耐用年数を有する。ジルコニウム材料のフォイルは、スペクトルフィルタ47がEUV放射源14の近傍に広がる周囲条件に対して十分な耐性を有するように、フォイルに一体に接続された金属グリッドによって支持されている。
【0048】
図8に、スペクトルフィルタ47がEUV放射源14からより離れた距離、正確には視野絞り21の近くに配置された変形を示す。この場合、動作条件がより好適であり、したがって支持グリッドのない純粋なジルコニウムフォイルをフレーム部46にクランプ締めすることができる。スペクトルフィルタ47によって生じるEUV放射の強度の損失は、
図7におけるよりも少ない。
【0049】
図9に、ペリクル30自体がジルコニウム材料のコーティングを備えた実施形態を示す。ジルコニウム層は、EUV放射のためのスペクトルフィルタ47を形成する。
図9において、ジルコニウム層はペリクルの外側、すなわち、照射系16に対向する側およびEUV放射源14とは反対側を向くペリクル30の側に付けられている。
図10では、ペリクル30がその外側と内側の両方にジルコニウム層を備えている。このようにしてスペクトルフィルタリング効果が大きくされるが、内側のジルコニウム層がEUV放射源14によって放出された粒子に曝されるためより速く劣化する。
図9および
図10の実施形態において、スペクトルフィルタ47はペリクル30とともに交換される消耗材である。
【符号の説明】
【0050】
14 EUV放射源
15 EUVビーム路
16 照射系
17 フォトマスク、第1の照射ミラー
18 第2の照射ミラー
19 第3の照射ミラー
20 検査視野、照射領域
21 視野絞り
22 投影レンズ
23 EUVカメラ
24 像センサー
25 開口絞り
26 ペリクルユニット
27 フレームコンポーネント部
28 均圧チャネル
29 中間ハウジング
30 ペリクル
31 出射開口
33 サブチャンバ
34 ハウジング開口
37 XY位置決め機構
41 回転駆動部
43 保持デバイス
44 旋回機構
45 フレームコンポーネント部
46 フレーム部
47 スペクトルフィルタ
【手続補正書】
【提出日】2024-08-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクの検査のための測定装置であって、EUV放射源(14)と照射系(16)と投影レンズ(22)とEUV像センサー(24)とを含み、前記EUV放射源(14)によって放出されたEUV放射が前記照射系(16)を介してフォトマスク(17)まで誘導され、前記フォトマスク(17)で反射されたEUV放射が前記投影レンズ(22)を介して前記EUV像センサー(24)まで誘導され、その結果として前記フォトマスク(17)が前記EUV像センサー(24)上に結像され(image)、前記EUV放射が前記EUV放射源(14)と前記照射系(16)との間でペリクル(30)を通過するように前記EUV放射源(14)と前記照射系(16)との間に前記ペリクル(30)が配置されている、測定装置。
【請求項2】
前記ペリクル(30)が前記EUV放射源(14)と前記照射系(16)の前記第1のミラー(17)との間に配置されている、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記投影レンズ(22)、前記照射系(16)および/または前記EUV放射源(14)がその中に配置されている真空チャンバ(40)を含む、請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記EUV放射源(14)が前記真空チャンバ(40)のサブチャンバ(33)内に配置されている、請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記サブチャンバ(33)が出射開口(31)を有し、前記出射開口(31)が前記ペリクル(30)によって被われている、請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記ペリクル(30)が前記出射開口(31)を囲むハウジング外周と密閉式に面一である、請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記ペリクル(30)がフレーム(27、45)上に懸架され、前記フレーム(27、45)が前記測定装置の担持構造体(29)に取り外し可能に接続されている、請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項8】
複数のペリクル(30)を担持する保持デバイス(43)を含み、前記保持デバイス(43)の第1の状態において前記EUV放射が第1のペリクル(30)を通過し、前記保持デバイス(43)の第2の状態において前記EUV放射が第2のペリクル(30)を通過する、請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項9】
前記真空チャンバ(40)から前記ペリクル(30)を取り外す装填機構(44)を含む、請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項10】
前記EUV放射源(14)と前記フォトマスク(17)との間に配置されたスペクトルフィルタ(47)を含む、請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項11】
前記スペクトルフィルタ(47)が前記ペリクル(30)と前記フォトマスク(17)との間に配置されている、請求項10に記載の測定装置。
【請求項12】
前記スペクトルフィルタ(47)が前記照射系(16)のミラー(17)と前記フォトマスク(17)との間に配置されている、請求項10に記載の測定装置。
【請求項13】
前記スペクトルフィルタ(47)が前記ペリクル(30)にコーティングとして付けられている、請求項10に記載の測定装置。
【請求項14】
フォトマスクを検査する方法であって、EUV放射源(14)によって放出されたEUV放射が照射系(16)を介してフォトマスク(17)まで誘導され、前記フォトマスク(17)で反射されたEUV放射が、前記フォトマスク(17)が像センサー(24)上に結像される(image)ように投影レンズ(22)を介して前記EUV像センサー(24)まで誘導され、前記EUV放射が前記EUV放射源(14)と前記照射系(16)との間に配置されたペリクル(30)を通過する、方法。
【外国語明細書】