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特開2024-155945情報処理システム及び自動運転支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155945
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】情報処理システム及び自動運転支援方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20241024BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20241024BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20241024BHJP
   G16Y 40/60 20200101ALI20241024BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G08G1/09 V
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/60
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024134842
(22)【出願日】2024-08-13
(62)【分割の表示】P 2022578468の分割
【原出願日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2021012890
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 高伸
(72)【発明者】
【氏名】園田 龍太
(72)【発明者】
【氏名】岡 賢太郎
(57)【要約】
【課題】運転支援の低遅延性を、車両に搭載された処理装置の処理負荷が低減された状態で実現する。
【解決手段】路側に設けられる情報処理装置と、路側に設けられる通信アンテナと、を備え、情報処理装置は、通信アンテナがカバーする通信エリア内に位置する1台以上の支援対象車両に関する車両情報を取得する車両情報取得部と、車両情報取得部により取得した車両情報に基づいて、送信データを生成する送信データ生成部と、送信データ生成部により生成された送信データを、通信アンテナを介して支援対象車両に送信するデータ送信処理部と、を備え、送信データは、支援対象車両の位置を表す車両位置情報、及び、走行制御情報、のうちの少なくともいずれか一方の情報を含む、情報処理システムが開示される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転機能を備える支援対象車両の走行を支援するための情報処理システムであって、
路側に設けられる情報処理装置と、
路側に設けられる通信アンテナと、を備え、
前記情報処理装置は、
前記通信アンテナがカバーする通信エリア内に位置する1台以上の支援対象車両に関する車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記車両情報取得部により取得した前記車両情報に基づいて、送信データを生成する送信データ生成部と、
前記送信データ生成部により生成された前記送信データを、前記通信アンテナを介して前記支援対象車両に送信するデータ送信処理部と、を備え、
前記送信データは、前記支援対象車両の位置を表す車両位置情報、及び、走行制御情報、のうちの少なくともいずれか一方の情報を含み、
路側に設けられ、前記支援対象車両を撮像する画像センサを更に備え、
前記車両情報は、前記画像センサにより生成されるセンサ情報を含み、
前記車両情報取得部は、前記画像センサから前記センサ情報を取得し、
前記送信データ生成部は、前記センサ情報に基づいて、前記送信データを生成し、
前記画像センサは、前記情報処理装置及び前記通信アンテナとともに、同一の建物に設けられる、情報処理システム。
【請求項2】
前記画像センサは、前記情報処理装置及び前記通信アンテナとともに、地上からの高さが3mから15mの範囲内で設けられる、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記情報処理装置及び前記通信アンテナは、建物の屋内に設けられる、請求項1または2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記画像センサは、建物の屋内に設けられる、請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記通信アンテナは、建物の窓ガラスに設けられる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記画像センサは、建物の窓ガラスに設けられる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記通信アンテナは、建物の窓ガラスに設けられ、
前記画像センサは、前記通信アンテナと同一の窓ガラス又は前記同一の窓ガラスが取り付けられるサッシに設けられる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記通信アンテナは、複数設けられ、
前記車両情報は、前記支援対象車両に搭載される車載アンテナから送信される電波に基づく情報を含み、
前記車両情報取得部は、前記支援対象車両から複数の前記通信アンテナを介して前記電波に基づく情報を取得し、
前記送信データ生成部は、前記支援対象車両から複数の前記通信アンテナを介して取得した前記電波に基づく情報と、複数の前記通信アンテナに関する既知の位置情報とに基づいて、前記支援対象車両の位置を算出する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記送信データ生成部は、前記支援対象車両の位置を誤差2m以下の精度で算出する、請求項8に記載の情報処理システム。
【請求項10】
前記送信データ生成部は、前記センサ情報に基づいて、前記走行制御情報を生成し、
前記走行制御情報は、前記支援対象車両の速度、加速度、減速度及び舵角のうちの少なくともいずれか1つに関する目標値を含む、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項11】
前記走行制御情報は、前記支援対象車両の周辺における道路環境に関する情報、及び、前記支援対象車両の周辺における歩行者情報のうちの少なくともいずれか1つを含む、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項12】
前記画像センサは、前記通信アンテナに取り付けられる、請求項1、請求項3乃至11のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項13】
前記送信データ生成部は、前記センサ情報と、道路上の所定位置に関する既知の位置情報とに基づいて、前記支援対象車両の位置を算出する、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項14】
前記送信データは、前記所定位置に関する既知の位置情報を前記車両位置情報として含み、
前記データ送信処理部は、前記所定位置に前記支援対象車両が位置すると推定されるタイミングに合わせて、前記送信データを送信する、請求項13に記載の情報処理システム。
【請求項15】
前記車両情報は、前記支援対象車両に搭載される車載センサの検出結果に基づく前記支援対象車両の周辺環境情報を含み、
前記車両情報取得部は、前記周辺環境情報を、前記通信アンテナを介して前記支援対象車両から受信し、
前記送信データ生成部は、前記周辺環境情報に基づいて、前記送信データを生成する、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項16】
前記車載センサは、画像センサ及びレーダセンサの少なくともいずれか一方を含む、請求項15に記載の情報処理システム。
【請求項17】
前記データ送信処理部は、第5世代移動通信システムに基づく通信を前記支援対象車両との間で実現する、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項18】
路側に、支援対象車両を撮像する画像センサ、情報処理装置及び通信アンテナを設置し、
前記情報処理装置が、前記通信アンテナがカバーする通信エリア内に位置する1台以上の前記支援対象車両に関する前記画像センサにより生成されるセンサ情報を含む車両情報を取得し、
前記情報処理装置が、取得した前記車両情報に基づいて、前記支援対象車両の位置を表す車両位置情報又は走行制御情報を含む送信データを生成し、
前記情報処理装置が、前記送信データを前記通信アンテナを介して前記支援対象車両に送信し、
前記画像センサは、前記情報処理装置及び前記通信アンテナとともに、同一の建物に設けられる、自動運転支援方法。
【請求項19】
前記通信アンテナは、前記通信エリアが交差点又は所定基準よりも交通量が多い道路をカバーするように、建物に設置される、請求項18に記載の自動運転支援方法。
【請求項20】
前記通信アンテナは、第3世代又は第4世代移動通信システムに基づく通信領域と第5世代移動通信システムに基づく通信領域の双方をカバーするように、建物に設置される、請求項18又は19に記載の自動運転支援方法。
【請求項21】
前記走行制御情報を、前記画像センサからのセンサ情報に基づいて生成する、請求項18乃至20のいずれか1項に記載の自動運転支援方法。
【請求項22】
更に、前記車両情報により地図情報を更新し、前記支援対象車両に前記地図情報及び前記支援対象車両の位置情報を表示させる、請求項18乃至21のいずれか1項に記載の自動運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理システム及び自動運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ波を受信する受信部と、受信部で受信されたレーダ波を増幅する増幅器と、増幅器で増幅されたレーダ波を送信する送信部とを備えた通信装置を複数配置した車両が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-082487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術は、移動体に搭載された処理装置で自動運転に必要な制御情報を計算するので、移動体に搭載された処理装置の計算処理負荷が比較的高くなりやすい。
【0005】
そこで、本開示は、運転支援の低遅延性を、車両に搭載された処理装置の処理負荷が低減された状態で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの側面では、自動運転機能を備える支援対象車両の走行を支援するための情報処理システムであって、
路側に設けられる情報処理装置と、
路側に設けられる通信アンテナと、を備え、
前記情報処理装置は、
前記通信アンテナがカバーする通信エリア内に位置する1台以上の支援対象車両に関する車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記車両情報取得部により取得した前記車両情報に基づいて、送信データを生成する送信データ生成部と、
前記送信データ生成部により生成された前記送信データを、前記通信アンテナを介して前記支援対象車両に送信するデータ送信処理部と、を備え、
前記送信データは、前記支援対象車両の位置を表す車両位置情報、及び、走行制御情報のうちの少なくともいずれか一方の情報を含む、情報処理システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、運転支援の低遅延性を、車両に搭載された処理装置の処理負荷が低減された状態で実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】基本的実施形態による情報処理システムの概要の説明図である。
図2図1の通信エリアの一部分を抜き出して概略的に示す図である。
図3】実施形態1による情報処理システムの構成を示す概略図である。
図4】実施形態1による情報処理システムの機能を示す概略図である。
図5】実施形態2による情報処理システムの構成を示す概略図である。
図6】実施形態2による情報処理システムの機能を示す概略図である。
図7】建物における情報処理システムの配置例を概略的に示す断面図である。
図8】実施形態3による情報処理システムの構成を示す概略図である。
図9】実施形態3による情報処理システムの機能を示す概略図である。
図10】実施形態4による情報処理システムの構成を示す概略図である。
図11】実施形態4による情報処理システムの機能を示す概略図である。
図12】実施形態5による情報処理システムの構成を示す概略図である。
図13】実施形態5による情報処理システムの機能を示す概略図である。
図14】所定位置の説明図である。
図15】実施形態6による情報処理システムの構成を示す概略図である。
図16】実施形態6による情報処理システムの機能を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、各実施形態について詳細に説明する。
【0010】
以下では、まず、基本的実施形態による情報処理システム1を説明してから、ついで、基本的実施形態をさらに具体化する各実施形態による自動運転支援方法について説明する。
【0011】
図1は、基本的実施形態による情報処理システム1の概要の説明図であり、道路90周辺に建物80が配置されている走行環境を示す図である。図2は、図1の通信エリアA1の一部分を抜き出して概略的に示す図である。図1には、通信に係る電波がハッチング範囲R1、R2により模式的に示されている。
【0012】
情報処理システム1は、自動運転機能を備える支援対象車両70の走行を支援するための情報処理システムである。自動運転機能は、例えば、レベル3以上の自動運転機能であってよい。
【0013】
情報処理システム1は、路側に、処理装置10(情報処理装置の一例)及び通信アンテナ12を備える。
【0014】
処理装置10は、コンピュータにより形成され、例えば、支援対象車両70に搭載されうる車載コンピュータ(例えば、ECU(Electronic Control Unit))よりも処理能力が高くてよい。処理装置10は、複数のコンピュータやCPU(Central Processing Unit)により実現されてもよい。また、複数のコンピュータは、サーバコンピュータを含んでもよい。
【0015】
通信アンテナ12は、処理装置10に電気的に接続される。通信アンテナ12は、支援対象車両70が通過する道路区間をカバーする通信エリアを有するように配置される。カバーする道路区間が比較的長い場合は、通信アンテナ12は、より短い道路区間ごとに設けられてもよい。なお、図1に示す例では、2つの通信エリアA1、A2が模式的に示される。
【0016】
通信アンテナ12は、一つの道路区間ごとに、複数設けられてもよい。また、通信アンテナ12は、分散MIMO(Distributed MIMO)システムを実現してもよい。また、第5世代移動通信システム(以下、単に「5G」とも称する)において、通信アンテナ12をアレイアンテナの形態で実現してもよい。この場合、アレイアンテナの位相を変化させることにより、任意の方向にビームを制御可能となる。すなわち、5Gのビームフォーミング機能により、各支援対象車両70との間で、電波干渉の少ない安定的な通信を実現できる。
【0017】
通信アンテナ12は、好ましくは、建物80の屋内に設けられる。これにより、処理装置10が建物80内の天井等の屋内に配置されたときに、通信アンテナ12と処理装置10とを配線を介して電気的に接続しやすい。
【0018】
通信アンテナ12は、好ましくは、建物80の窓ガラス60に設けられる。これにより、通信アンテナ12を、特別な専用施設を設けることなく、既存のインフラを利用して路側に設置できる。また、建物80の窓ガラス60を利用することで、通信アンテナ12を適切な高さに設置しやすくなる。例えば、通信アンテナ12は、地上からの高さが3mから15mの範囲内で設けられてもよい。これにより、地上に位置する支援対象車両70との間で効率的な通信を実現できる。また、建物80の窓ガラス60を利用することで、通信アンテナ12を複数設ける場合に、複数の通信アンテナ12の地上からの高さの差を例えば1m以内に揃えることができる。これにより、地上に位置する支援対象車両70との間でより効率的な通信を実現できる。
【0019】
また、通信アンテナ12は、建物80の窓ガラス60の屋内側に設けられることが好ましいが、建物80の窓ガラス60の屋外側に設けられてもよい。これにより、窓ガラス60による通信への影響を受けにくく、地上に位置する支援対象車両70との間でより効率的な通信を実現できる。
【0020】
また、通信アンテナ12は、建物80の窓ガラス60が取り付けられるサッシに設けられてもよい。
【0021】
なお、建物80とは、地上から高さを有する人工的な建造物を意味し、オフィスや住居、ホテル等の居住空間を有してもよいし、鉄塔や電柱、信号機等でもよい。通信アンテナ12が設けられる建物は、通信専用の設備でないので、既存のインフラを利用して情報処理システム1を実現できる。
【0022】
窓ガラス60は、一般的に透明であるが、半透明や不透明であってもよい。また、窓ガラス60の素材は、任意であり、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、アルミノシリケートガラス、リチウムシリケートガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等の無機ガラスや、ポリカーボネート、アクリル等の有機ガラス等であってもよい。
【0023】
情報処理システム1は、通信アンテナ12を介して支援対象車両70との間で双方向の通信状態(図2の矢印R4参照)を確立することで、支援対象車両70の走行を支援する。具体的には、情報処理システム1は、支援対象車両70の位置を表す車両位置情報や、走行制御情報を送信する。これにより、車両位置情報や走行制御情報を受信した支援対象車両70は、車両位置情報や走行制御情報に基づいて自動運転機能により、自動運転を行うことができる。
【0024】
基本的実施形態では、車両位置情報や走行制御情報は、情報処理システム1の処理装置10により生成される。これにより、支援対象車両70に搭載された処理装置で車両位置を算出する必要がなくなり、支援対象車両70に搭載された処理装置での処理負荷を低減できる。すなわち、処理装置10を実現するコンピュータ(サーバコンピュータを含む)が、支援対象車両70に搭載されたコンピュータとは別に、走行制御に係る処理を行うことで、エッジコンピューティング技術を利用して、車両に搭載された処理装置の負担軽減に貢献できる。特に、5Gではエッジコンピューティングにより4G(第4世代移動通信システム)の1/10である1msのような低遅延性を実現できる。低遅延性は、支援対象車両70のリアルタイム制御も可能とするため、自立型自動運転から、一部の機能の分散型自動運転のようなサポートシステムの実現も可能となる。
【0025】
このようにして、基本的実施形態による情報処理システム1によれば、運転支援の低遅延性を、車両に搭載された処理装置の処理負荷が低減された状態で実現することが可能となる。
【0026】
ここで、基本的実施形態による情報処理システム1は、上述したように、運転支援の低遅延性を、車両に搭載された処理装置の処理負荷が低減された状態で実現できるので、比較的交通量の多い箇所に、通信アンテナ12がカバーする通信エリアを設定するのが好適である。すなわち、通信アンテナ12は、通信エリアが交差点又は所定基準よりも交通量が多い道路区間をカバーするように、設置される。これにより、監視対象等が多く処理負荷が高まりやすい場所や、交通環境が動的に変化しやすい場所において、情報処理システム1による運転支援の低遅延性を実現できる。
【0027】
また、基本的実施形態による情報処理システム1は、多数の通信アンテナ12を設置することによって、通信アンテナ12がカバーする通信エリアを拡大していくことで、運転支援の低遅延性を実現できる領域を拡大できる。この場合、3G(第3世代移動通信システム)や4Gに基づく通信領域と5Gに基づく通信領域の双方をカバーするように、通信アンテナ12がカバーする通信エリアが拡大されてよい。そして、究極的には、支援対象車両70に搭載された処理装置におけるGNSS(Global Navigation Satellite System)による衛星電波の受信機能や、それに基づく自車位置算出機能、各種周辺監視センサ(例えば車載カメラやレーダセンサ等)を無くすことも可能であり、この場合、車両重量を低減できる。ただし、基本的実施形態による情報処理システム1は、支援対象車両70に搭載された処理装置における自車位置算出機能と相補関係で利用されてもよいし、支援対象車両70に搭載された処理装置における自車位置算出機能に対する冗長系として利用されてもよい。
【0028】
次に、図3以降を参照して、情報処理システム1の更なる詳細を、複数の実施形態に分けて説明する。なお、以下では、同一であってよい構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
【0029】
[実施形態1]
図3は、実施形態1による情報処理システム1Aの構成を示す概略図である。図4は、情報処理システム1Aの機能を示す概略図である。
【0030】
情報処理システム1Aは、上述した処理装置10の一例としての処理装置10Aと、上述した通信アンテナ12の一例としての通信アンテナ12Aとを含む。通信アンテナ12Aは、アレイアンテナの形態で、複数設けられる。アレイアンテナは、空間情報を利用できる点で、後述する車両位置情報の生成(支援対象車両70の位置の算出)に有利である。通信アンテナ12Aは、複数の窓ガラス60にわたって配置されてもよいし、単一の窓ガラス60においてアレイアンテナを実現してもよい。なお、通信アンテナ12Aを構成する導電体としては、例えば酸化スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化スズなどの酸化物からなる導電体やLow-Eのような多層からなる導電体を使用できる。Low-Eとは、Low Emissivityの略であり、導電性の透明酸化膜や、膜厚約10nmの銀膜を誘電体層で挟み、可視域で低反射率、赤外域で高反射率とした銀多層膜をコートしたものが知られている。また、通信アンテナ12Aを構成する導電体は、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Cr(クロム)、Pd(鉛)、Zn(亜鉛)、Ni(ニッケル)、またはPt(白金)などの金属であってもよい。通信アンテナ12Aを構成する導電体に金属を用いる場合に、導電体は光透過性を有するようにメッシュ状に形成してもよい。ここで、メッシュとは、導電体の平面に網目状の透孔が空いた状態をいう。また、通信アンテナ12Aを構成する導電体は、ガラス板に設けられてもよい。導電体を設けたガラス板を、樹脂製又は金属製のスペーサを介して窓ガラス60に貼着してもよい。
【0031】
処理装置10Aは、図4に示すように、通信制御部150と、車両情報取得部151と、送信データ生成部152と、データ送信処理部154とを含む。
【0032】
通信制御部150は、通信アンテナ12Aがカバーする通信エリア内に位置する複数の支援対象車両70との間で通信を確立し、通信エリア内に位置する複数の支援対象車両70との間で、所定周期ごとの通信を継続させる。
【0033】
車両情報取得部151は、通信制御部150により確立された通信(各支援対象車両70との間での通信)を介して、通信アンテナ12Aがカバーする通信エリア内に位置する複数の支援対象車両に関する車両情報を取得する。
【0034】
実施形態1では、車両情報は、支援対象車両70に搭載される車載アンテナ212(図2参照)から送信される電波に基づく情報である。支援対象車両70からの電波に基づく情報は、支援対象車両70の車両位置を算出するための情報であり、支援対象車両70の車両位置を表す情報とは異なる。車載アンテナ212(図2参照)から送信される電波に基づく情報は、支援対象車両70を特定するための識別子や、時刻情報等を含んでよい。
【0035】
送信データ生成部152は、車両情報取得部151により取得した車両情報に基づいて、支援対象車両70ごとの送信データを生成する。
【0036】
実施形態1では、送信データ生成部152は、車両位置算出部1521を含み、送信データ生成部152により生成される送信データは、各支援対象車両70の車両位置情報を含む。
【0037】
車両位置算出部1521は、支援対象車両70ごとに、車両情報取得部151により取得した車両情報と、通信アンテナ12Aに関する既知の位置情報とに基づいて、支援対象車両70の車両位置を算出する。位置算出対象である支援対象車両70から送信される電波に基づく支援対象車両70の位置の算出方法は、任意であり、支援対象車両70からの電波のAoA(Angle Of Arrival)、RSS(Received Signal Strength)、TOA(Time of Arrival)、TDOA (Time Difference of Arrival)、位置指紋法(fingerprint-based localization algorithm)、又はこれらの任意の組み合わせに基づく方法であってよい。これらの各種方式に基づく位置算出方法によれば、GNSS(Global Navigation Satellite System)による衛星電波を用いずに、支援対象車両70に搭載される車載アンテナ212から送信される電波に基づいて、支援対象車両70の位置を精度良く算出できる。例えば、車両位置算出部1521は、支援対象車両の位置を誤差2m以下の精度、好ましくは50cm以下の精度、より好ましくは5cm以下の精度で算出する。
【0038】
データ送信処理部154は、通信制御部150により確立された通信(各支援対象車両70との間での通信)を介して、支援対象車両70ごとに、送信データ生成部152により生成された送信データを支援対象車両70に送信する。
【0039】
このようにして、実施形態1では、情報処理システム1Aは、所定周期ごとに、各支援対象車両70から送信される車両情報(電波に基づく情報)に基づいて、各支援対象車両70の位置(例えば、グローバル座標系での位置)を算出し、各支援対象車両70の車両位置情報を含む送信データを生成し、生成した送信データを各支援対象車両70に送信する。
【0040】
この場合、通信アンテナ12Aがカバーする通信エリア内に位置する各支援対象車両70は、所定周期ごとに、情報処理システム1Aから送信される車両位置情報(自車の位置情報)を得ることができる。そして、各支援対象車両70は、それぞれ、情報処理システム1Aから送信される車両位置情報に基づいて自動運転機能を維持できる。
【0041】
[実施形態2]
図5は、実施形態2による情報処理システム1Bの構成を示す概略図である。図6は、情報処理システム1Bの機能を示す概略図である。図7は、建物80における情報処理システム1Bの配置例を概略的に示す断面図である。
【0042】
情報処理システム1Bは、上述した処理装置10の一例としての処理装置10Bと、上述した通信アンテナ12の一例としての通信アンテナ12Bと、画像センサ14を含む。
【0043】
通信アンテナ12Bは、上述した通信アンテナ12Aと同様、アレイアンテナの形態であってもよい。
【0044】
画像センサ14は、通信アンテナ12Bと同様、好ましくは、建物80に配置される。画像センサ14は、通信アンテナ12Bがカバーする通信エリアを撮像領域に含むように設けられる。画像センサ14は、ステレオカメラのように、複数の画像センサ14により実現されてもよい。画像センサ14は、好ましくは、通信アンテナ12Bを設けた建物80に、地上からの高さが3mから15mの範囲内で設けられる。この場合、画像センサ14は、好ましくは、図7に示すように、通信アンテナ12Bに取り付けられることにより窓ガラス60に設けられてよい。例えば、画像センサ14のレンズ及び/又は撮像素子が、通信アンテナ12Bに取り付けられてよい。図7に示す例では、処理装置10Bが天井の空間81に配置され、画像センサ14及び通信アンテナ12Bと配線16を介して電気的に接続されている。なお、図7では、配線16は概略的に1本の配線として示されているが、配線16は、画像センサ14用と通信アンテナ12B用とで別々に設定される。また、画像センサ14は、通信アンテナ12Bとは異なる場所に設けられてもよい。画像センサ14は、窓ガラス60の通信アンテナ12Bが設けられている位置と異なる位置に設けられてもよく、窓ガラス60が取り付けられるサッシに設けられてもよい。画像センサ14が通信アンテナ12Bとは異なる場所に設けられる場合、センサ情報を無線通信により送信してもよい。画像センサ14と通信アンテナ12Bとは、同じ建物に設けられてもよいし、異なる建物に設けられてもよい。
通信アンテナ12Bを構成する導電体がガラス板に設けられる場合、地上からの高さが15mを超えるビルであっても地上からの高さが3mから15mの範囲に通信アンテナ12Bおよび画像センサ14を設けることができ、15m超の位置に設ける場合よりも通信エリアと検出エリアを細かく設定でき、トラフィックを分散することにより処理装置10Bの負担を軽減できる。
【0045】
画像センサ14は、所定のフレームレートで、通信アンテナ12Bがカバーする通信エリアの画像データを生成し、処理装置10Bに供給する。
【0046】
処理装置10Bは、図6に示すように、通信制御部150と、車両情報取得部151Bと、送信データ生成部152Bと、データ送信処理部154とを含む。
【0047】
車両情報取得部151Bは、通信アンテナ12Bがカバーする通信エリア内に位置する複数の支援対象車両に関する車両情報を取得する。
【0048】
実施形態2では、車両情報は、画像センサ14により生成されるセンサ情報(画像データ)である。
【0049】
送信データ生成部152Bは、車両情報取得部151Bにより取得した車両情報に基づいて、支援対象車両ごとの送信データを生成する。
【0050】
実施形態2では、送信データ生成部152Bは、車両位置算出部1521Bを含み、送信データ生成部152Bにより生成される送信データは、各支援対象車両70の車両位置情報を含む。
【0051】
車両位置算出部1521Bは、支援対象車両70ごとに、車両情報取得部151Bにより取得した車両情報(画像センサ14により生成されるセンサ情報)に基づいて、支援対象車両70の車両位置を算出する。位置算出対象である支援対象車両70を撮像した画像データに基づく支援対象車両70の位置の算出方法は、任意であり、例えば、ステレオカメラによる視差を利用した測距方法が利用されてもよい。この場合、各画像センサ14から支援対象車両70までの各距離が算出され、各距離の算出結果と各画像センサ14の位置情報とに基づいて、三角測量の原理等により支援対象車両70の位置(例えば、グローバル座標系での位置)が算出されてもよい。例えば、車両位置算出部1521Bは、支援対象車両の位置を誤差2m以下の精度、好ましくは50cm以下の精度、より好ましくは5cm以下の精度で算出する。
【0052】
このようにして、実施形態2では、情報処理システム1Bは、画像センサ14のフレームレートに対応した所定周期ごとに、画像センサ14から取得される車両情報(支援対象車両70を捕捉した画像データ)に基づいて、各支援対象車両70の位置を算出し、各支援対象車両70の車両位置情報を含む送信データを生成し、生成した送信データを各支援対象車両70に送信する。
【0053】
この場合、通信アンテナ12Bがカバーする通信エリア内に位置する各支援対象車両70は、所定周期ごとに、情報処理システム1Bから送信される車両位置情報(自車の位置情報)を得ることができる。そして、各支援対象車両70は、それぞれ、情報処理システム1Bから送信される車両位置情報に基づいて自動運転機能を維持できる。
【0054】
なお、実施形態2においても、上述した実施形態1で説明した車両位置算出部1521が設けられてもよい。この場合、最終的な車両位置情報は、上述した実施形態1で説明した車両位置算出部1521による算出結果と、車両位置算出部1521Bによる算出結果とに基づいて、導出されてもよい。あるいは、上述した実施形態1で説明した車両位置算出部1521による算出結果と、車両位置算出部1521Bによる算出結果は、いずれか一方が、冗長系として利用されてもよい。
【0055】
ところで、実施形態2では、画像センサ14からのセンサ情報は、各支援対象車両70の車両位置情報を生成するために利用されるが、画像センサ14からのセンサ情報は、他の用途にも好適に利用できる。例えば、画像センサ14からのセンサ情報は、地図データの更新に利用できる。これは、道路が新設・廃止・変更(拡幅等を含む変更)された場合、このような道路の変化を、画像センサ14からのセンサ情報に基づいて検出できるためである。この場合、道路の変化を反映した道路情報を含む送信データが、送信データ生成部152Bにより生成され、データ送信処理部154により各支援対象車両70に送信されてもよい。この場合、支援対象車両70に搭載された処理装置において、表示する地図情報を最新に更新でき、最新の地図情報に基づいて自動運転機能を実現できる。また、画像センサ14からのセンサ情報は、デジタルツインコンピューティングに必要な情報として用いることができる。デジタルツインコンピューティングとは、現実の機器や設備をデジタルデータに変換し、仮想空間上に生成したデジタルツインを分析、予測することにより、現実の世界にフィードバックする技術である。例えば、データ処理部10では、仮想空間上での地図情報や車両位置情報を利用して車両のシミュレーションを行うことができる。画像センサ14からのセンサ情報を用いることにより、仮想空間上の地図情報を常に最新の状態に更新することができる。また、地図情報の他にも、天候や路面の状況をデジタルデータ化し、仮想空間上でデジタルツインを生成することにより、より精度の良いシミュレーションが可能となる。このデジタルツインコンピューティングによるシミュレーション情報に基づいた車両制御用送信データを生成し、支援対象車両70に送信することで、仮想空間上でのシミュレーションと連動して、実空間上の車両を制御することができる。ここで、センサ情報は、データ処理部10に低遅延で伝達されることが好ましい。低遅延性を向上させる手段としては、データ処理部10との有線による接続、無線による接続があり、無線による接続の場合は5Gを利用することで、低遅延性を実現できる。
また、センサ情報は、画像センサ14に加えて、例えば温度センサ、雨滴センサ、圧力センサ、ミリ波レーダ、レーダセンサ、照度センサから得てもよい。温度センサは、路面の温度を感知する。雨滴センサは、雨量および路面の濡れ性を感知する。圧力センサは、風速、風向を感知する。レーダセンサは、障害物を感知する。照度センサは、建物外の照度を感知する。これらのセンサ情報を用いてデジタルツインを生成することにより、自動運転に必要な制御情報が得られる。
【0056】
[実施形態3]
図8は、実施形態3による情報処理システム1Cの構成を示す概略図である。図9は、情報処理システム1Cの機能を示す概略図である。
【0057】
情報処理システム1Cは、上述した処理装置10の一例としての処理装置10Cと、上述した通信アンテナ12の一例としての通信アンテナ12Cとを含む。
【0058】
通信アンテナ12Cは、後述する画像データを支援対象車両70から受信するためのアンテナと、送信データを支援対象車両70に送信するためのアンテナとを別々に備えてもよいし、これらの統合型のアンテナであってもよい。また、通信アンテナ12Cは、上述した通信アンテナ12Aと同様、アレイアンテナの形態であってもよい。
【0059】
処理装置10Cは、図9に示すように、通信制御部150と、車両情報取得部151Cと、送信データ生成部152Cと、データ送信処理部154とを含む。
【0060】
車両情報取得部151Cは、通信制御部150により確立された通信(各支援対象車両70との間での通信)を介して、通信アンテナ12Cがカバーする通信エリア内に位置する複数の支援対象車両に関する車両情報を取得する。
【0061】
実施形態3では、車両情報は、支援対象車両70に搭載される画像センサ214(図2参照)により生成されるセンサ情報(画像データ)である。画像センサ214は、例えば、支援対象車両70の周辺環境を撮像するカメラの形態である。画像センサ214は、支援対象車両70の前方のみならず、側方や後方といった複数の方向における周辺環境を撮像可能であってよい(例えば、複数の画像センサ214が利用されてもよい)。
【0062】
このようにして、車両情報取得部151Cは、各支援対象車両70に搭載される画像センサ214から、画像センサ214により捕捉された周辺環境情報(画像データ)を取得できる。このような周辺環境情報は、周辺環境として、各支援対象車両70の相対的な位置関係や、障害物や歩行者などに関する情報を含むことができる。これにより、通信アンテナ12Cがカバーする通信エリアに比較的多くの支援対象車両70等が存在するような状況下においても、通信アンテナ12Cがカバーする通信エリアの全体にわたって、詳細な情報を得ることができる。換言すると、通信アンテナ12Cがカバーする通信エリアに支援対象車両70が多く存在するほど、通信アンテナ12Cがカバーする通信エリアの全体にわたって、精度の高い周辺環境情報を得ることができる。この結果、後述する各支援対象車両70の走行制御情報の信頼性を効果的に高めることができる。
【0063】
送信データ生成部152Cは、車両情報取得部151Cにより取得した周辺環境情報に基づいて、支援対象車両ごとの送信データを生成する。
【0064】
実施形態3では、送信データ生成部152Cは、目標車両位置算出部1521Cと、走行制御情報生成部1522Cと、を含み、送信データ生成部152Cにより生成される送信データは、各支援対象車両70の走行制御情報を含む。
【0065】
目標車両位置算出部1521Cは、支援対象車両70ごとに、車両情報取得部151Cにより取得した周辺環境情報(画像センサ214により生成される周辺環境情報)に基づいて、支援対象車両70の目標車両位置を算出する。各支援対象車両70の目標車両位置は、各支援対象車両70同士の近接や、他の障害物や歩行者との近接が生じない態様で、算出される。例えば、各支援対象車両70が適切な車間距離を保ちながら、最短時間で、通信アンテナ12Cがカバーする通信エリアを通過できるような目標車両位置が、各支援対象車両70に対して算出される。このようにして、目標車両位置算出部1521Cは、例えば、画像センサ214から取得する画像データの更新周期に対応する所定周期ごとに、次の処理周期で実現されるべき各支援対象車両70の目標車両位置を算出する。
【0066】
走行制御情報生成部1522Cは、支援対象車両70ごとに、目標車両位置算出部1521Cにより算出される目標車両位置に支援対象車両70が到達するような、走行制御情報を生成する。走行制御情報は、支援対象車両の速度、加速度、減速度及び舵角(進行方向)のうちの少なくともいずれか1つの走行パラメータに関する目標値を含んでよい。例えば、走行制御情報は、支援対象車両70の目標加速度と目標進行方向とを指示する指示値を含んでよい。
【0067】
このようにして、実施形態3では、情報処理システム1Cは、支援対象車両70に搭載される画像センサ214のフレームレートに対応した所定周期ごとに、画像センサ214から取得される車両情報(支援対象車両70の周辺環境を捕捉した画像データ)に基づいて、各支援対象車両70の走行制御情報を生成し、各支援対象車両70の走行制御情報を含む送信データを生成し、生成した送信データを各支援対象車両70に送信する。
【0068】
この場合、通信アンテナ12Cがカバーする通信エリア内に位置する各支援対象車両70は、所定周期ごとに、情報処理システム1Cから送信される走行制御情報を得ることができる。そして、各支援対象車両70は、それぞれ、情報処理システム1Cから送信される走行制御情報に基づいて自動運転機能を維持できる。
【0069】
なお、実施形態3では、車両情報取得部151Cは、各支援対象車両70に搭載される画像センサ214から、画像センサ214により捕捉された周辺環境情報(画像データ)を、車両情報として取得するが、取得する情報は、画像センサ214により捕捉された周辺環境情報(画像データ)に限られない。例えば、車両情報取得部151Cは、各支援対象車両70に搭載されうる他の周辺環境監視センサから、周辺環境情報(画像データ)を、車両情報として取得してもよい。他の周辺環境監視センサは、超音波センサ、ミリ波レーダセンサやLiDAR(Light Detection And Ranging)のようなレーダセンサを含んでよい。
【0070】
なお、実施形態3においても、上述した実施形態1又は実施形態2と同様、送信データ生成部152Cは、車両位置算出部1521又は1521Bを更に備えてもよい。この場合、目標車両位置算出部1521Cは、支援対象車両70ごとに、車両位置算出部1521又は1521Bにより算出された車両位置情報と、車両情報取得部151Bにより取得した周辺環境情報(画像センサ14により生成される周辺環境情報)とに基づいて、支援対象車両70の目標車両位置を算出してもよい。
【0071】
また、実施形態3において、走行制御情報は、上述した走行パラメータに関する目標値に加えて、支援対象車両70の周辺(例えば、前方や側方、後方)における道路環境に関する情報、及び、支援対象車両の周辺(例えば、前方や側方、後方)における歩行者情報のうちの少なくともいずれか1つを含んでもよい。この場合、道路環境に関する情報は、通信エリアに位置する道路90上の、駐車車両、落下物、工事等のような障害物の位置情報を含んでよい。この場合、各支援対象車両70は、それぞれ、情報処理システム1Cから送信される走行制御情報に基づいて、障害物や歩行者との近接を回避する態様の自動運転機能を維持できる。
【0072】
[実施形態4]
図10は、実施形態4による情報処理システム1Dの構成を示す概略図である。図11は、情報処理システム1Dの機能を示す概略図である。
【0073】
情報処理システム1Dは、上述した処理装置10の一例としての処理装置10Dと、上述した通信アンテナ12の一例としての通信アンテナ12Dと、画像センサ14を含む。
【0074】
通信アンテナ12Dは、上述した通信アンテナ12Aと同様、アレイアンテナの形態であってもよい。
【0075】
処理装置10Dは、図11に示すように、通信制御部150と、車両情報取得部151Dと、送信データ生成部152Dと、データ送信処理部154とを含む。
【0076】
車両情報取得部151Dは、通信アンテナ12Dがカバーする通信エリア内に位置する複数の支援対象車両に関する車両情報を取得する。
【0077】
実施形態4では、車両情報は、上述した画像センサ14により生成されるセンサ情報(画像データ)である。画像センサ14は、例えば、支援対象車両70の周辺環境を撮像するように設けられる。なお、画像センサ14は、上述したように、一の通信エリアに対して複数設けられてもよい。
【0078】
送信データ生成部152Dは、車両情報取得部151Dにより取得した車両情報に基づいて、支援対象車両ごとの送信データを生成する。
【0079】
実施形態4では、送信データ生成部152Dは、目標車両位置算出部1521Dと、走行制御情報生成部1522Dと、を含み、送信データ生成部152Dにより生成される送信データは、各支援対象車両70の走行制御情報を含む。
【0080】
目標車両位置算出部1521Dは、支援対象車両70ごとに、車両情報取得部151Dにより取得したセンサ情報(画像センサ14により生成される画像データ)に基づいて、支援対象車両70の目標車両位置を算出する。各支援対象車両70の目標車両位置の算出方法は、上述した実施形態3と同様であってよい。実施形態4では、画像センサ14により通信エリアを俯瞰した画像データが得られるので、各支援対象車両70の目標車両位置を、より適切に算出することが可能である。
【0081】
走行制御情報生成部1522Dは、支援対象車両70ごとに、目標車両位置算出部1521Dにより算出される目標車両位置に支援対象車両70が到達するような、走行制御情報を生成する。走行制御情報は、支援対象車両の速度、加速度、減速度及び舵角(進行方向)のうちの少なくともいずれか1つの走行パラメータに関する目標値を含んでよい。このようにして、実施形態4では、情報処理システム1Dは、路側の画像センサ14のフレームレートに対応した所定周期ごとに、画像センサ14から取得される車両情報(支援対象車両70の周辺環境を捕捉した画像データ)に基づいて、各支援対象車両70の走行制御情報を生成し、各支援対象車両70の走行制御情報を含む送信データを生成し、生成した送信データを各支援対象車両70に送信する。
【0082】
この場合、通信アンテナ12Dがカバーする通信エリア内に位置する各支援対象車両70は、所定周期ごとに、情報処理システム1Dから送信される走行制御情報を得ることができる。そして、各支援対象車両70は、それぞれ、情報処理システム1Dから送信される走行制御情報に基づいて自動運転機能を維持できる。
【0083】
なお、実施形態4においても、上述した実施形態1又は実施形態2と同様、送信データ生成部152Dは、車両位置算出部1521又は1521Bを更に備えてもよい。この場合、目標車両位置算出部1521Dは、支援対象車両70ごとに、車両位置算出部1521又は1521Bにより算出された車両位置情報と、車両情報取得部151Bにより取得したセンサ情報(画像センサ14により生成される画像データ)とに基づいて、支援対象車両70の目標車両位置を算出してもよい。
【0084】
なお、実施形態4では、路側の画像センサ14からのセンサ情報が利用されるが、これに加えて、上述した実施形態3のように、画像センサ214により捕捉された周辺環境情報(画像データ)が同様に利用されてもよい。すなわち、実施形態4においても、処理装置10Dは、上述した実施形態3に係る車両情報取得部151C及び送信データ生成部152Cを更に備えてもよい。この場合、目標車両位置算出部1521Dにより算出された支援対象車両70の目標車両位置と、送信データ生成部152Cの目標車両位置算出部1521Cにより算出された支援対象車両70の目標車両位置とに基づいて、最終的な目標車両位置が決定されてもよい。あるいは、目標車両位置算出部1521Dにより算出された支援対象車両70の目標車両位置と、送信データ生成部152Cの目標車両位置算出部1521Cにより算出された支援対象車両70の目標車両位置は、いずれか一方が冗長系として利用されてもよい。
【0085】
なお、実施形態4において、走行制御情報は、上述した走行パラメータに関する目標値に加えて、支援対象車両70の周辺(例えば、前方や側方、後方)における道路環境に関する情報、及び、支援対象車両の周辺(例えば、前方や側方、後方)における歩行者情報のうちの少なくともいずれか1つを含んでもよい。この場合、道路環境に関する情報は、通信エリアに位置する道路90上の、駐車車両、落下物、工事等のような障害物の位置情報を含んでよい。この場合、各支援対象車両70は、それぞれ、情報処理システム1Dから送信される走行制御情報に基づいて、障害物や歩行者との近接を回避する態様の自動運転機能を維持できる。
【0086】
[実施形態5]
図12は、実施形態5による情報処理システム1Eの構成を示す概略図である。図13は、情報処理システム1Eの機能を示す概略図である。図14は、所定位置の説明図である。
【0087】
情報処理システム1Eは、上述した処理装置10の一例としての処理装置10Eと、上述した通信アンテナ12の一例としての通信アンテナ12Eと、画像センサ14を含む。
【0088】
通信アンテナ12Eは、上述した通信アンテナ12Aと同様、アレイアンテナの形態であってもよい。
【0089】
処理装置10Eは、図13に示すように、通信制御部150と、車両情報取得部151Eと、送信データ生成部152Eと、データ送信処理部154とを含む。
【0090】
車両情報取得部151Eは、通信アンテナ12Eがカバーする通信エリア内に位置する複数の支援対象車両に関する車両情報を取得する。
【0091】
実施形態5では、車両情報は、上述した画像センサ14により生成されるセンサ情報(画像データ)である。
【0092】
送信データ生成部152Eは、車両情報取得部151Eにより取得した車両情報に基づいて、支援対象車両ごとの送信データを生成する。
【0093】
実施形態5では、送信データ生成部152Eは、車両位置算出部1521Eを含み、送信データ生成部152Eにより生成される送信データは、各支援対象車両70の車両位置情報を含む。
【0094】
車両位置算出部1521Eは、画像センサ14により生成されるセンサ情報と、道路90上の所定位置に関する既知の位置情報とに基づいて、各支援対象車両70の位置を算出する。所定位置は、通信アンテナ12Eがカバーする通信エリア内の道路90上に設定されてよい。所定位置は、好ましくは、各支援対象車両70が通過しうる位置であり、複数設定されてもよい。図14には、例示的に2箇所の所定位置P1が示されている。所定位置P1は、道路90上の、画像認識可能な特定の位置であってもよい。例えば、所定位置P1は、道路90上の交通標識板の角位置や中心位置等であってもよい。あるいは、所定位置P1は、画像センサ14の画像の所定画素領域(例えば、中心位置)に対応する位置であってもよい。この場合、所定位置P1は、道路90の任意の位置でありうる。
【0095】
車両位置算出部1521Eは、支援対象車両70ごとに、画像センサ14からの撮像画像上における支援対象車両70と所定位置との位置関係に基づいて、支援対象車両70の位置を算出する。具体的には、車両位置算出部1521Eは、画像センサ14からの撮像画像上における支援対象車両70と所定位置との位置関係に基づいて、所定位置に対する支援対象車両70の相対位置を算出する。そして、車両位置算出部1521Eは、所定位置に対する支援対象車両70の相対位置と、所定位置に関する既知の位置情報とに基づいて、支援対象車両70の位置(例えば、グローバル座標系での位置)を算出する。例えば、車両位置算出部1521Eは、支援対象車両の位置を誤差2m以下の精度、好ましくは50cm以下の精度、より好ましくは5cm以下の精度で算出する。
【0096】
このようにして、実施形態5では、情報処理システム1Eは、画像センサ14のフレームレートに対応した所定周期ごとに、画像センサ14から取得される車両情報(支援対象車両70を捕捉した画像データ)に基づいて、各支援対象車両70の位置を算出し、各支援対象車両70の車両位置情報を含む送信データを生成し、生成した送信データを各支援対象車両70に送信する。
【0097】
この場合、通信アンテナ12Eがカバーする通信エリア内に位置する各支援対象車両70は、所定周期ごとに、情報処理システム1Eから送信される車両位置情報(自車の位置情報)を得ることができる。そして、各支援対象車両70は、それぞれ、情報処理システム1Eから送信される車両位置情報に基づいて自動運転機能を維持できる。
【0098】
なお、実施形態5では、路側の画像センサ14からのセンサ情報が利用されるが、これに代えて又はこれに加えて、上述した実施形態3のように、画像センサ214により捕捉された周辺環境情報(画像データ)が同様に利用されてもよい。
【0099】
なお、実施形態5においても、上述した実施形態1で説明した車両位置算出部1521が設けられてもよい。この場合、最終的な車両位置情報は、上述した実施形態1で説明した車両位置算出部1521による算出結果と、車両位置算出部1521Eによる算出結果とに基づいて、導出されてもよい。
【0100】
[実施形態6]
図15は、実施形態6による情報処理システム1Fの構成を示す概略図である。図16は、情報処理システム1Fの機能を示す概略図である。
【0101】
情報処理システム1Fは、上述した処理装置10の一例としての処理装置10Fと、上述した通信アンテナ12の一例としての通信アンテナ12Fと、画像センサ14を含む。
【0102】
通信アンテナ12Fは、上述した通信アンテナ12Aと同様、アレイアンテナの形態であってもよい。
【0103】
処理装置10Fは、図16に示すように、通信制御部150と、車両情報取得部151Fと、送信データ生成部152Fと、データ送信処理部154Fとを含む。
【0104】
車両情報取得部151Fは、通信アンテナ12Fがカバーする通信エリア内に位置する複数の支援対象車両に関する車両情報を取得する。
【0105】
実施形態6では、車両情報は、上述した画像センサ14により生成されるセンサ情報(画像データ)である。
【0106】
送信データ生成部152Fは、車両情報取得部151Fにより取得した車両情報に基づいて、支援対象車両ごとの送信データを生成する。
【0107】
実施形態6では、送信データ生成部152Fは、送信タイミング設定部1526Fを含み、送信データ生成部152Fにより生成される送信データは、各支援対象車両70の車両位置情報を含む。そして、実施形態6では、各支援対象車両70の車両位置情報は、道路90上の所定位置に関する既知の位置情報(例えば、グローバル座標系の位置情報)である。所定位置は、上述した実施形態5で説明した所定位置と同じであってよい(図14の所定位置P1参照)。
【0108】
送信タイミング設定部1526Fは、支援対象車両70ごとに、所定位置に支援対象車両が位置するタイミングを、送信データの送信タイミングとして設定する。例えば、送信タイミング設定部1526Fは、画像センサ14からの撮像画像上における支援対象車両70と所定位置との位置関係に基づいて、所定位置に対する支援対象車両70の相対距離を算出する。そして、送信タイミング設定部1526Fは、処理周期ごとの相対距離の変化速度に基づいて、相対距離が0になるタイミングを予測し、当該タイミングを、送信データの送信タイミングとして設定してよい。あるいは、送信タイミング設定部1526Fは、処理周期ごとの相対距離の変化速度に基づいて、相対距離が0になるタイミングに対して所定時間ΔT前のタイミングを予測し、当該タイミングを、送信データの送信タイミングとして設定してよい。この場合、所定時間ΔTは、送信データが生成されてから支援対象車両70に向けて送信され支援対象車両70に受信され処理されるまでの時間を考慮した微小な時間に対応してよい。
【0109】
データ送信処理部154Fは、通信制御部150により確立された通信(各支援対象車両70との間での通信)を介して、支援対象車両70ごとに、送信タイミング設定部1526Fにより設定された送信タイミングで、送信データ生成部152により生成された送信データを支援対象車両70に送信する。
【0110】
このようにして、実施形態6では、情報処理システム1Fは、画像センサ14により生成されるセンサ情報(画像データ)に基づいて、支援対象車両70ごとに、所定位置に支援対象車両が位置するタイミングを算出し、当該タイミングに合わせた送信タイミングで、所定位置に関する既知の位置情報を含む送信データを各支援対象車両70に送信する。
【0111】
この場合、通信アンテナ12Aがカバーする通信エリア内に位置する各支援対象車両70は、所定位置を通過するごとに、情報処理システム1Fから送信される車両位置情報(自車の位置情報)を得ることができる。そして、各支援対象車両70は、それぞれ、情報処理システム1Fから送信される車両位置情報に基づいて自動運転機能を維持できる。この場合、所定位置の数(間隔)を適切に設定することで、各支援対象車両70に車両位置情報を継続的に供給でき、自動運転機能を安定的に維持できる。
【0112】
なお、実施形態6においても、上述した実施形態1で説明した車両位置算出部1521が設けられてもよい。この場合、支援対象車両70が所定位置に位置しない間は、車両位置算出部1521による算出結果に基づく車両位置情報が、各支援対象車両70に送信されてもよい。
【0113】
また、実施形態6では、路側の画像センサ14からのセンサ情報が利用されるが、これに代えて又はこれに加えて、上述した実施形態3のように、画像センサ214により捕捉された周辺環境情報(画像データ)が同様に利用されてもよい。すなわち、送信タイミング設定部1526Fは、路側の画像センサ14からのセンサ情報及び/又は画像センサ214により捕捉された周辺環境情報に基づいて、所定位置に支援対象車両が位置するタイミングを算出してもよい。なお、送信タイミングは、圧力センサ、温度センサ等により得られる各種センサ情報に基づき、適切に設定される。
【0114】
以上、各実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施形態の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
なお、2021年1月29日に出願された日本国特願2021-012890号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0115】
1(1A~1F) 情報処理システム
10(10A~10F) 処理装置
12(12A~12F) 通信アンテナ
14 画像センサ
16 配線
60 窓ガラス
70 支援対象車両
80 建物
90 道路
150 通信制御部
151、151B、151C、151D、151E、151F 車両情報取得部
152、152B、152C、152D、152E、152F 送信データ生成部
1521、1521B、1521E 車両位置算出部
1521C、1521D 目標車両位置算出部
1522C、1522D 走行制御情報生成部
1526F 送信タイミング設定部
154、154F データ送信処理部
212 車載アンテナ
214 画像センサ
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