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特開2024-156017含フッ素エーテル化合物、含フッ素エーテル組成物、コーティング液および物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156017
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】含フッ素エーテル化合物、含フッ素エーテル組成物、コーティング液および物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
C08G65/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146361
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2023086870の分割
【原出願日】2016-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2015171986
(32)【優先日】2015-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 泰輝
(72)【発明者】
【氏名】高尾 清貴
(72)【発明者】
【氏名】戸田 和江
(72)【発明者】
【氏名】石関 健二
(72)【発明者】
【氏名】磯部 輝
(57)【要約】
【課題】撥水撥油性、耐摩擦性、指紋汚れ除去性、潤滑性および外観に優れる表面層を形成できる含フッ素エーテル化合物、含フッ素エーテル組成物およびコーティング液、ならびに表面層を有する物品の提供。
【解決手段】A-O-(Rf1O)m1-Q-[C(O)N(R)]p1-R11-C[-R12-SiR13 n1 3-n1で表される含フッ素エーテル化合物。ただし、A:炭素数1~20のペルフルオロアルキル基、Rf1:分岐構造を有しないフルオロアルキレン基、m1:2~210の整数、Q:単結合または分岐構造を有しないフルオロアルキレン基、R:水素原子等、p1:0または1、R11:単結合、アルキレン基等、R12:アルキレン基等、R13:1価の炭化水素基等、X:加水分解性基、n1:0~2の整数。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(14)で表される化合物とHN-R11-C(CHCH=CHとを反応させて得られる下記式(17G)で表される化合物と、HSiR13 n1 3-n1とを反応させる、下記式(1G)で表される化合物の製造方法。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CF-C(O)OR10 ・・・(14)
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CF-C(O)NH-R11-C(CHCH=CH ・・・(17G)
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CF-C(O)NH-R11-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1G)
ただし、
は、炭素数1~20のペルフルオロアルキル基であり、
F1は、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基であり、
xは、1~198の整数であり、
10は、アルキル基であり、
11は、単結合、アルキレン基、アルキレン基のC(CHCH=CHと結合する側の末端にエーテル性酸素原子を有する基、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基、または、炭素数2以上のアルキレン基のC(CHCH=CHと結合する側の末端および炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり、
(RF1O)は、同一種または2種以上のRF1Oからなるものであり、
13は、水素原子または1価の炭化水素基であり、
は、加水分解性基であり、
n1は、0~2の整数である。
【請求項2】
下記式(14H)で表される化合物とHN-R11-C(CHCH=CHとを反応させて得られる下記式(17H)で表される化合物と、HSiR13 n1 3-n1とを反応させる、下記式(1H)で表される化合物の製造方法。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-C(O)OR10 ・・・(14H)
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-C(O)NH-R11-C(CHCH=CH ・・・(17H)
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-C(O)NH-R11-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1H)
ただし、
は、炭素数1~20のペルフルオロアルキル基であり、
F1は、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基であり、
xは、1~198の整数であり、
10は、アルキル基であり、
11は、単結合、アルキレン基、アルキレン基のC(CHCH=CHと結合する側の末端にエーテル性酸素原子を有する基、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基、または、炭素数2以上のアルキレン基のC(CHCH=CHと結合する側の末端および炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり、
(RF1O)は、同一種または2種以上のRF1Oからなるものであり、
13は、水素原子または1価の炭化水素基であり、
は、加水分解性基であり、
n1は、0~2の整数である。
【請求項3】
下記式(14I)で表される化合物とHN-R11-C(CHCH=CHとを反応させて得られる下記式(17I)で表される化合物と、HSiR13 n1 3-n1とを反応させる、下記式(1I)で表される化合物の製造方法。
-O-(RF1O)-Q12-C(O)OR10 ・・・(14I)
-O-(RF1O)-Q12-C(O)NH-R11-C(CHCH=CH ・・・(17I)
-O-(RF1O)-Q12-C(O)NH-R11-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1I)
ただし、
は、炭素数1~20のペルフルオロアルキル基であり、
F1は、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基であり、
xは、1~198の整数であり、
12は、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基であり、
10は、アルキル基であり、
11は、単結合、アルキレン基、アルキレン基のC(CHCH=CHと結合する側の末端にエーテル性酸素原子を有する基、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基、または、炭素数2以上のアルキレン基のC(CHCH=CHと結合する側の末端および炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり、
(RF1O)は、同一種または2種以上のRF1Oからなるものであり、
13は、水素原子または1価の炭化水素基であり、
は、加水分解性基であり、
n1は、0~2の整数である。
【請求項4】
下記式(15)で表される化合物と下記式(30)で表される化合物とを塩基性化合物の存在下で反応させて得られる下記式(17J)で表される化合物と、HSiR13 n1 3-n1とを反応させる、下記式(1J)で表される化合物の製造方法。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CF-CHOH ・・・(15)
CF=CFOCFCFCF-C(O)NH-R11-C(CHCH=CH ・・・(30)
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CFCHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-R11-C(CHCH=CH ・・・(17J)
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CFCHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-R11-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1J)
ただし、
は、炭素数1~20のペルフルオロアルキル基であり、
F1は、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基であり、
xは、1~198の整数であり、
11は、単結合、アルキレン基、アルキレン基のC(CHCH=CHと結合する側の末端にエーテル性酸素原子を有する基、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基、または、炭素数2以上のアルキレン基のC(CHCH=CHと結合する側の末端および炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり、
(RF1O)は、同一種または2種以上のRF1Oからなるものであり、
13は、水素原子または1価の炭化水素基であり、
は、加水分解性基であり、
n1は、0~2の整数である。
【請求項5】
下記式(11)で表される化合物と下記式(30)で表される化合物とを塩基性化合物の存在下で反応させて得られる下記式(17K)で表される化合物と、HSiR13 n1 3-n1とを反応させる、下記式(1K)で表される化合物の製造方法。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-CHOH ・・・(11)
CF=CFOCFCFCF-C(O)NH-R11-C(CHCH=CH ・・・(30)
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CFCHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-R11-C(CHCH=CH ・・・(17K)
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CFCHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-R11-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1K)
ただし、
は、炭素数1~20のペルフルオロアルキル基であり、
F1は、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基であり、
xは、1~198の整数であり、
11は、単結合、アルキレン基、アルキレン基のC(CHCH=CHと結合する側の末端にエーテル性酸素原子を有する基、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基、または、炭素数2以上のアルキレン基のC(CHCH=CHと結合する側の末端および炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり、
(RF1O)は、同一種または2種以上のRF1Oからなるものであり、
13は、水素原子または1価の炭化水素基であり、
は、加水分解性基であり、
n1は、0~2の整数である。
【請求項6】
下記式(15C)で表される化合物と下記式(30)で表される化合物とを塩基性化合物の存在下で反応させて得られる下記式(17L)で表される化合物と、HSiR13 n1 3-n1とを反応させる、下記式(1L)で表される化合物の製造方法。
-O-(RF1O)-RCHOH ・・・(15C)
CF=CFOCFCFCF-C(O)NH-R11-C(CHCH=CH ・・・(30)
-O-(RF1O)-RCHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-R11-C(CHCH=CH ・・・(17L)
-O-(RF1O)-RCHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-R11-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1L)
ただし、
は、炭素数1~20のペルフルオロアルキル基であり、
F1は、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基であり、
は、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基であり、
xは、1~198の整数であり、
11は、単結合、アルキレン基、アルキレン基のC(CHCH=CHと結合する側の末端にエーテル性酸素原子を有する基、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基、または、炭素数2以上のアルキレン基のC(CHCH=CHと結合する側の末端および炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり、
(RF1O)は、同一種または2種以上のRF1Oからなるものであり、
13は、水素原子または1価の炭化水素基であり、
は、加水分解性基であり、
n1は、0~2の整数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素エーテル化合物、含フッ素エーテル組成物、コーティング液および物品に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素化合物は、高い潤滑性、撥水撥油性等を示すため、表面処理剤に好適に用いられる。該表面処理剤によって基材の表面に撥水撥油性を付与すると、基材の表面の汚れを拭き取りやすくなり、汚れの除去性が向上する。該含フッ素化合物の中でも、ペルフルオロアルキル鎖の途中にエーテル結合(-O-)が存在するポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖を有する含フッ素エーテル化合物は、特に油脂等の汚れの除去性に優れる。
【0003】
該含フッ素エーテル化合物を含む表面処理剤は、指で繰り返し摩擦されても撥水撥油性が低下しにくい性能(耐摩擦性)および拭き取りによって表面に付着した指紋を容易に除去できる性能(指紋汚れ除去性)が長期間維持されることが求められる用途、たとえば、タッチパネルの、指で触れる面を構成する部材の表面処理剤として用いられる。
【0004】
基材の表面に形成される表面層に耐摩擦性を付与するためには、たとえば、含フッ素エーテル化合物の末端に加水分解性シリル基を導入し、含フッ素エーテル化合物と基材とを化学結合させればよい。耐摩擦性に優れる表面層を形成することを目的とした含フッ素エーテル化合物としては、含フッ素エーテル化合物の両末端のそれぞれに、ペンタエリスリトールによる分岐構造を介して3つの加水分解性シリル基を導入した含フッ素エーテル化合物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-070163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの知見によれば、特許文献1に記載の含フッ素エーテル化合物には、下記の問題がある。
・含フッ素エーテル化合物の両末端の加水分解性シリル基が基材と反応したり、分子間で反応したりすることによって、含フッ素エーテル化合物の両末端が固定化される。そのため、表面層の潤滑性(表面層を指で触った際の滑らかさ)および耐摩擦性が不充分となる。
・ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖が分岐構造を有しているため、表面層の指紋汚れ除去性および潤滑性が不充分となる。
・末端の非フッ素部分(ペンタエリスリトールによる分岐構造および3つの加水分解性シリル基)の含有量が多いため、表面層の外観が悪くなりやすい。その理由は、含フッ素エーテル化合物分子間で加水分解性シリル基同士が凝集しやすく、コーティング液中において、またはコーティング液を基材の表面に塗布した後、乾燥させる途中に、加水分解性シリル基同士が凝集し反応して不均一な層を形成するためと考えられる。
【0007】
本発明は、撥水撥油性、耐摩擦性、指紋汚れ除去性、潤滑性および外観に優れる表面層を形成できる含フッ素エーテル化合物、含フッ素エーテル組成物およびコーティング液、ならびに撥水撥油性、耐摩擦性、指紋汚れ除去性、潤滑性および外観に優れる表面層を有する物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記[1]~[14]の構成を有する含フッ素エーテル化合物、含フッ素エーテル組成物、コーティング液および物品を提供する。
[1]下式(1)で表される、含フッ素エーテル化合物。
-O-(Rf1O)m1-Q-[C(O)N(R)]p1-R11-C[-R12-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1)
ただし、
は、炭素数1~20のペルフルオロアルキル基であり、
f1は、分岐構造を有しないフルオロアルキレン基であり、
m1は、2~210の整数であり、
(Rf1O)m1は、2種以上のRf1Oからなるものであってもよく、
は、単結合または分岐構造を有しないフルオロアルキレン基であり、
は、水素原子またはアルキル基であり、
p1は、0または1であり、
11は、単結合、アルキレン基、アルキレン基の末端(ただし、C[-R12-SiR13 n1 3-n1と結合する側の末端。)にエーテル性酸素原子を有する基、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基、または炭素数2以上のアルキレン基の末端(ただし、C[-R12-SiR13 n1 3-n1と結合する側の末端。)および炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり、
12は、アルキレン基、アルキレン基の末端(ただし、Siと結合する側の末端を除く。)にエーテル性酸素原子を有する基、または炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり、
13は、水素原子または1価の炭化水素基であり、
は、加水分解性基であり、
n1は、0~2の整数であり、
3つの[-R12-SiR13 n1 3-n1]は、すべてが同一の基でなくてもよい。
【0009】
[2]前記式(1)で表される含フッ素エーテル化合物が、下式(1-1)で表される含フッ素エーテル化合物である、[1]の含フッ素エーテル化合物。
-O-(Rf5O)m5(RF1O)m10(Rf6O)m6-Q-[C(O)N(R)]p1-R11-C[-R12-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1-1)
ただし、
、Q、R、p1、R11、R12、R13、Xおよびn1は、前記式(1)と同じであり、
F1は、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基であり、m10は2以上の整数であり、(RF1O)m10は、2種以上のRF1Oからなるものであってもよく、
f5は、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基であり、m5は0~4の整数であり、m5が2~4の整数の場合(Rf5O)m5は2種以上のRf5Oからなるものであってもよく、
f6は、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基であり、m6は0~4の整数であり、m6が2~4の整数の場合(Rf6O)m6は2種以上のRf6Oからなるものであってもよく、
m10+m5+m6=m1である。
【0010】
[3]前記RF1が、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、Rf5、Rf6が、それぞれ独立に、炭素数2~6のフルオロアルキレン基である、[2]の含フッ素エーテル化合物。
[4]Rf5、Rf6が、それぞれ独立に、水素原子数が1または2のフルオロアルキレン基である、[2]または[3]の含フッ素エーテル化合物。
[5]前記p1が0の場合、m6は1または2でありかつQは単結合であって、R11に結合する(Rf6O)は(Rf7CHO)で表される基であり、
前記p1が1の場合、m6は0でありかつQはフルオロアルキレン基である、[2]~[4]のいずれかの含フッ素エーテル化合物。
[6]前記m10が5以上である、[2]~[5]のいずれかの含フッ素エーテル化合物。
【0011】
[7]前記Qがフルオロアルキレン基である場合、該フルオロアルキレン基が炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基である、[1]~[6]のいずれかの含フッ素エーテル化合物。
[8]前記p1が0の場合、前記R11は炭素数1~4のアルキレン基であり、前記p1が1の場合、前記R11は単結合または炭素数1~4のアルキレン基である、[1]~[7]のいずれかの含フッ素エーテル化合物。
[9]前記R12が、炭素数2~6のアルキレン基または炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数3~8のアルキレン基である、[1]~[8]のいずれかの含フッ素エーテル化合物。
[10]数平均分子量が500~20,000である、[1]~[9]のいずれかの含フッ素エーテル化合物。
【0012】
[11]前記[1]~[10]のいずれかの含フッ素エーテル化合物と、前記式(1)で表される含フッ素エーテル化合物以外の含フッ素エーテル化合物とを含む含フッ素エーテル組成物であり、
前記含フッ素エーテル組成物中の前記式(1)で表される含フッ素エーテル化合物および他の含フッ素エーテル化合物の合計の割合が、含フッ素エーテル組成物に対して80~100質量%であり、
前記式(1)で表される含フッ素エーテル化合物および他の含フッ素エーテル化合物の合計に対する前記他の含フッ素エーテル化合物の割合が、0質量%超40質量%未満であることを特徴とする含フッ素エーテル組成物。
[12]前記他の含フッ素エーテル化合物が、下記含フッ素エーテル化合物(2)、下記含フッ素エーテル化合物(3)および下記含フッ素エーテル化合物(4)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[11]の含フッ素エーテル組成物。
含フッ素エーテル化合物(2):前記式(1)で表される含フッ素エーテル化合物において、前記-C[-R12-SiR13 n1 3-n1を有する基が前記(Rf1O)m1の両側に結合している、含フッ素エーテル化合物。
含フッ素エーテル化合物(3):前記式(1)で表される含フッ素エーテル化合物において、前記Aを有する基が前記(Rf1O)m1の両側に結合している、含フッ素エーテル化合物。
含フッ素エーテル化合物(4):前記式(1)で表される含フッ素エーテル化合物において、前記-C[-R12-SiR13 n1 3-n1が-C[-R12-SiR13 n1 3-n13―t[-R15に置換されている(ただし、R15は、HSiR13 n1 3-n1を付加すると-R12-SiR13 n1 3-n1となる不飽和結合含有基、または該不飽和結合含有基の異性体基、tは1~3の整数。)、含フッ素エーテル化合物。
【0013】
[13]前記[1]~[10]のいずれかの含フッ素エーテル化合物、または[11]もしくは[12]の含フッ素エーテル組成物と、液状媒体とを含むことを特徴とするコーティング液。
[14]前記[1]~[10]のいずれかの含フッ素エーテル化合物、または[11]もしくは[12]の含フッ素エーテル組成物から形成される表面層を有することを特徴とする物品。
【発明の効果】
【0014】
本発明の含フッ素エーテル化合物、含フッ素エーテル組成物およびコーティング液によれば、撥水撥油性、耐摩擦性、指紋汚れ除去性、潤滑性および外観に優れる表面層を形成できる。
本発明の物品は、撥水撥油性、耐摩擦性、指紋汚れ除去性、潤滑性および外観に優れる表面層を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
本明細書の以下の用語の意味は、以下の通りである。
「ペルフルオロアルキル基」とは、アルキル基の水素原子のすべてがフッ素原子に置換された基を意味する。
「フルオロアルキレン基」とは、アルキレン基の水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換された基を意味する。
「ペルフルオロアルキレン基」とは、アルキレン基の水素原子のすべてがフッ素原子に置換された基を意味する。
オキシペルフルオロアルキレン基の化学式は、その酸素原子をペルフルオロアルキレン基の右側に記載して表すものとする。
「エーテル性酸素原子」とは、炭素-炭素原子間においてエーテル結合(-O-)を形成する酸素原子を意味する。
「加水分解性シリル基」とは、加水分解反応することによってシラノール基(Si-OH)を形成し得る基を意味する。たとえば、式(1)中のSiR13 n1 3-n1である。
「表面層」とは、基材の表面に形成される層を意味する。
含フッ素エーテル化合物の「数平均分子量」は、NMR分析法を用い、下記の方法で算出される。
H-NMRおよび19F-NMRによって、末端基を基準にしてオキシペルフルオロアルキレン基の数(平均値)を求めることによって算出される。末端基は、たとえば式(1)中のAまたはSiR13 n1 3-n1である。
【0016】
[含フッ素エーテル化合物]
本発明の含フッ素エーテル化合物(以下、本化合物とも記す。)は、化合物(1)である。
-O-(Rf1O)m1-Q-[C(O)N(R)]p1-R11-C[-R12-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1)
ただし、Aは、炭素数1~20のペルフルオロアルキル基であり;Rf1は、分岐構造を有しないフルオロアルキレン基であり;m1は、2~210の整数であり;(Rf1O)m1は、2種以上のRf1Oからなるものであってもよく;Qは、単結合または分岐構造を有しないフルオロアルキレン基であり;Rは、水素原子またはアルキル基であり;p1は、0または1であり;R11は、単結合、アルキレン基、アルキレン基の末端(ただし、C[-R12-SiR13 n1 3-n1と結合する側の末端。)にエーテル性酸素原子を有する基、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基、または炭素数2以上のアルキレン基の末端(ただし、C[-R12-SiR13 n1 3-n1と結合する側の末端。)および炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり;R12は、アルキレン基、アルキレン基の末端(ただし、Siと結合する側の末端を除く。)にエーテル性酸素原子を有する基、または炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり;R13は、水素原子または1価の炭化水素基であり;Xは、加水分解性基であり;n1は、0~2の整数であり;3つの[-R12-SiR13 n1 3-n1]は、すべてが同一の基でなくてもよい。
【0017】
(A基)
としては、表面層の潤滑性および耐摩擦性にさらに優れる点から、炭素数1~10のペルフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1~6のペルフルオロアルキル基がより好ましく、炭素数1~3のペルフルオロアルキル基が特に好ましい。
【0018】
が末端にCF-を有するため、化合物(1)の一方の末端がCF-となり、他方の末端が加水分解性シリル基となる。該構造の化合物(1)によれば、低表面エネルギーの表面層が形成できるため、該表面層は潤滑性および耐摩擦性に優れる。一方、両末端に加水分解性シリル基を有する従来の含フッ素エーテル化合物では、表面層の潤滑性および耐摩擦性が不充分である。
【0019】
((Rf1O)m1
f1は、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基であってもよく、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基であってもよい。
f1としては、表面層の耐摩擦性および指紋汚れ除去性にさらに優れる点から、炭素数1~6の分岐構造を有しないフルオロアルキレン基が好ましく、炭素数1~4の分岐構造を有しないフルオロアルキレン基がより好ましく、表面層の潤滑性にさらに優れる点から、炭素数1~2の分岐構造を有しないフルオロアルキレン基が特に好ましい。
【0020】
化合物(1)は、(Rf1O)m1を有するため、フッ素原子の含有量が多い。そのため、撥水撥油性、耐摩擦性、指紋汚れ除去性に優れる表面層を形成できる。
また、Rf1が分岐構造を有しないフルオロアルキレン基であるため、(Rf1O)m1が直鎖構造となる。該構造の化合物(1)によれば、表面層の耐摩擦性および潤滑性に優れる。一方、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖が分岐構造を有する従来の含フッ素エーテル化合物では、表面層の耐摩擦性および潤滑性が不充分である。
【0021】
m1は、2~210の整数であり、5~160の整数が好ましく、10~110の整数が特に好ましい。m1が前記範囲の下限値以上であれば、表面層の撥水撥油性に優れる。m1が前記範囲の上限値以下であれば、表面層の耐摩擦性に優れる。すなわち、化合物(1)の数平均分子量が大きすぎると、単位分子量あたりに存在する加水分解性シリル基の数が減少し、耐摩擦性が低下する。
【0022】
(Rf1O)m1において、2種以上のRf1Oが存在する場合、各Rf1Oの結合順序は限定されない。たとえば、2種のRf1Oが存在する場合、2種のRf1Oがランダム、交互、ブロックに配置されてもよい。
2種以上のRf1Oが存在するとは、Rf1がペルフルオロアルキレン基の場合は炭素数の異なる2種以上のRf1Oが存在することをいう。Rf1が水素原子を有するフルオロアルキレン基の場合は、炭素数、水素原子の数および水素原子の結合位置のいずれか少なくとも1つが異なるまたは2種以上のRf1Oが存在することをいう。
2種以上のRf1Oの配置については、たとえば実施例の含フッ素エーテル化合物の場合、{(CFO)x1(CFCFO)x2}で表される構造は、x1個の(CFO)とx2個の(CFCFO)とがランダムに配置されていることを表す。また、(CFCFO-CFCFCFCFO)x3で表される構造は、x3個の(CFCFO)とx3個の(CFCFCFCFO)とが交互に配置されていることを表す。
【0023】
(Q基)
は、単結合であってもよく、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基であってもよく、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基であってもよい。Qが分岐構造を有しない化合物(1)によれば、耐摩擦性および潤滑性に優れる表面層を形成できる。
は、Rf1に由来するフルオロアルキレン基であったり、化合物(1)を製造する際に用いたアミド基および加水分解性シリル基を有する化合物(たとえば、後述する化合物(30))に由来するフルオロアルキルレン基であったりする。
が単結合でない場合、その炭素数は、1~10が好ましい。
【0024】
([C(O)N(R)]p1基)
p1が0と1の場合で、含フッ素エーテル化合物の特性はほとんど変わらない。pが1の場合にはアミド結合を有するが、Qの[C(O)N(R)]と結合する側の末端の炭素原子に少なくとも1つのフッ素原子が結合していることにより、アミド結合の極性は小さくなり、表面層の撥水撥油性が低下しにくい。p1が0か1かは、製造のしやすさの点から選択できる。
[C(O)N(R)]p1基中のRとしては、化合物(1)の製造のしやすさの点から、水素原子が好ましい。
がアルキル基の場合、アルキル基としては、炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
【0025】
(R11基)
11としては、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のアルキレン基の末端(ただし、C[-R12-SiR13 n1 3-n1と結合する側の末端。)にエーテル性酸素原子を有する基、炭素数2~10のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基、または炭素数2~10のアルキレン基の末端(ただし、C[-R12-SiR13 n1 3-n1と結合する側の末端。)および炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基が好ましい。
p1が0の場合、R11としては、化合物(1)の製造のしやすさの点から、単結合および炭素数4以下のアルキレン基が好ましく、単結合、メチレン基およびジメチレン基がより好ましい。エーテル性酸素原子を有する基としては、-CHCHO-、-CHCHOCH-等が挙げられる。
p1が1の場合、R11としては、化合物(1)の製造のしやすさの点から、単結合および炭素数4以下のアルキレン基が好ましく、単結合、メチレン基およびジメチレン基がより好ましい。
【0026】
(R12基)
12としては、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のアルキレン基の末端(ただし、Siと結合する側の末端を除く。)にエーテル性酸素原子を有する基、または炭素数2~10のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基が好ましい。化合物(1)の製造のしやすさの点からは、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHOCHCHCH-、-CHOCHCHCHCHCH-、-OCHCHCH-からなる群から選ばれる基(ただし、右側がSiに結合する。)が好ましい。
12としては、表面層の耐光性に優れる点から、エーテル性酸素原子を有しないものが特に好ましい。屋外使用のタッチパネル(自動販売機、案内板等のデジタルサイネージ)、車載タッチパネル等においては、表面層に耐光性が求められる。
化合物(1)中の3つのR12は、すべてが同一の基であってもよく、すべてが同一の基でなくてもよい。
【0027】
(SiR13 n1 3-n1基)
SiR13 n1 3-n1は、加水分解性シリル基である。
化合物(1)は、末端に加水分解性シリル基を3つ有する。該構造の化合物(1)は基材と強固に化学結合するため、表面層は耐摩擦性に優れる。
また、化合物(1)は、一方の末端のみに加水分解性シリル基を有する。該構造の化合物(1)は凝集しにくいため、表面層は外観に優れる。
【0028】
は、加水分解性基である。加水分解性基は、加水分解反応によって水酸基となる基である。すなわち、化合物(1)の末端のSi-Xは、加水分解反応によってシラノール基(Si-OH)となる。シラノール基は、さらに分子間で反応してSi-O-Si結合を形成する。また、シラノール基は、基材の表面の水酸基(基材-OH)と脱水縮合反応して、化学結合(基材-O-Si)を形成する。
【0029】
としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基、イソシアナート基(-NCO)等が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましい。
としては、化合物(1)の製造のしやすさの点から、炭素数1~4のアルコキシ基またはハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子が特に好ましい。Xとしては、塗布時のアウトガスが少なく、化合物(1)の保存安定性に優れる点から、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、化合物(1)の長期の保存安定性が必要な場合にはエトキシ基が特に好ましく、塗布後の反応時間を短時間とする場合にはメトキシ基が特に好ましい。
【0030】
13は、水素原子または1価の炭化水素基である。1価の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリル基等が挙げられる。
13としては、1価の炭化水素基が好ましく、1価の飽和炭化水素基が特に好ましい。1価の飽和炭化水素基の炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が特に好ましい。R13の炭素数がこの範囲であると、化合物(1)の製造がしやすい。
【0031】
n1は、0または1が好ましく、0が特に好ましい。1つの加水分解性シリル基にXが複数存在することによって、基材との密着性がより強固になる。
【0032】
SiR13 n1 3-n1としては、Si(OCH、SiCH(OCH、Si(OCHCH、SiCl、Si(OCOCH、Si(NCO)が好ましい。工業的な製造における取扱いやすさの点から、Si(OCHが特に好ましい。
化合物(1)中の3つのSiR13 n1 3-n1は、すべてが同一の基であってもよく、すべてが同一の基でなくてもよい。化合物(1)の製造のしやすさの点から、すべてが同一の基であることが好ましい。
【0033】
(化合物(1)の好ましい形態)
化合物(1)としては、表面層の耐摩擦性および指紋汚れ除去性にさらに優れる点から、化合物(1-1)が好ましい。
-O-(Rf5O)m5(RF1O)m10(Rf6O)m6-Q-[C(O)N(R)]p1-R11-C[-R12-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1-1)
ただし、
、Q、R、p1、R11、R12、R13、Xおよびn1は、前記式(1)と同じであり、
F1は、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基であり、m10は2以上の整数であり、(RF1O)m10は、2種以上のRF1Oからなるものであってもよく、
f5は、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基であり、m5は0~4の整数であり、m5が2~4の整数の場合(Rf5O)m5は2種以上のRf5Oからなるものであってもよく、
f6は、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基であり、m6は0~4の整数であり、m6が2~4の整数の場合(Rf6O)m6は2種以上のRf6Oからなるものであってもよく、
m10+m5+m6=m1である。
【0034】
((Rf5O)m5
f5は、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基であり、炭素数2~6のフルオロアルキレン基が好ましく、特に炭素数2のフルオロアルキレン基が好ましい。水素原子の数は、1~4が好ましく、特に1または2であることが好ましい。(Rf5O)としては、(CHFCFO)および(CHCFO)が好ましい。
m5は0~2の整数が好ましく、0であるか2であることがより好ましい。mが2の場合、(Rf5O)としては、(CHFCFO)-(CHCFO)であることが好ましい。
【0035】
((RF1O)m10
F1としては、表面層の耐摩擦性および指紋汚れ除去性にさらに優れる点から、炭素数1~6の分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基が好ましく、炭素数1~4の分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基がより好ましく、表面層の潤滑性にさらに優れる点から、炭素数1~2の分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基が特に好ましい。
【0036】
化合物(1-1)は、(RF1O)m10を有するため、フッ素原子の含有量がさらに多い。そのため、撥水撥油性、耐摩擦性、指紋汚れ除去性にさらに優れる表面層を形成できる。
また、RF1が分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基であるため、(RF1O)m10が直鎖構造となる。該構造の化合物(1-1)によれば、表面層の耐摩擦性および潤滑性に優れる。
【0037】
(RF1O)m10において、炭素数の異なる2種以上のRF1Oが存在する場合、各RF1Oの結合順序は限定されない。たとえば、CFOとCFCFOが存在する場合、CFOとCFCFOがランダム、交互、ブロックに配置されてもよい。
【0038】
(RF1O)m10としては、表面層の耐摩擦性、指紋汚れ除去性、潤滑性にさらに優れる点から、(CFO)m11(CFCFO)m12、(CFCFO)m13、(CFCFCFO)m14、(CFCFO-CFCFCFCFO)m15が好ましく、(CFO)m11(CFCFO)m12が特に好ましい。
ただし、m11は1以上の整数であり、m12は1以上の整数であり、m11個のCFOおよびm12個のCFCFOの結合順序は限定されない。好ましくは、{(CFO)m11(CFCFO)m12}で表されるランダムに配置した構造である。m13およびm14は、2~200の整数であり、m15は、1~100の整数である。
【0039】
((Rf6O)m6
f6は、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基であり、炭素数2~6のフルオロアルキレン基が好ましい。水素原子の数は、1~4が好ましく、特に1または2であることが好ましい。m6は0~2が好ましい。
p1が0の場合、Qが単結合であることが好ましい。この場合(すなわち、(Rf6O)m6とR11が直接結合している場合)、(Rf6O)m6の中のR11と結合する(Rf6O)は(Rf7CHO)で表される基であることが好ましい。Rf7は、Rf6よりも炭素数が1個少ない基であって、ペルフルオロアルキレン基または水素原子を有するフルオロアルキレン基である。Rf7はペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。具体的な(Rf7CHO)としては、(CFCHO)、(CFCFCHO)、(CFCFCFCHO)、(CFCFCFCFCHO)等が好ましい。この場合、m6は1が好ましい。
p1が1の場合、m6は0~2でありかつQはフルオロアルキレン基であることが好ましい。この場合、Qはペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。ペルフルオロアルキレン基であるQの炭素数は、1~6がより好ましい。
【0040】
m10+m5+m6は、2~200の整数であり、5~150の整数が好ましく、10~110の整数が特に好ましい。m10+m5+m6が前記範囲の下限値以上であれば、表面層の撥水撥油性に優れる。m10+m5+m6が前記範囲の上限値以下であれば、表面層の耐摩擦性に優れる。すなわち、化合物(1-1)の数平均分子量が大きすぎると、単位分子量あたりに存在する加水分解性シリル基の数が減少し、耐摩擦性が低下する。
m10は5以上の整数であることがより好ましく、10以上が特に好ましい。
【0041】
(化合物(1-1)の好ましい形態)
化合物(1-1)としては、たとえば、下式の化合物が挙げられる。該化合物は、工業的に製造しやすく、取扱いやすく、表面層の撥水撥油性、耐摩擦性、指紋汚れ除去性、潤滑性、外観にさらに優れる点から好ましい。
【0042】
・Qが単結合でかつp1=0である化合物(1-1)。
なお、下式における「PFPE-CHO-」およびそれ以外の「PFPE-」は、A-O-(Rf5O)m5(RF1O)m10(Rf6O)m6-を表す。
【化1】
【0043】
・Qがペルフルオロアルキレン基でかつp1=1である化合物(1-1)。
なお、化式における「PFPE-R-」は、A-O-(Rf5O)m5(RF1O)m10(Rf6O)m6-Q-を表す。
【化2】
【0044】
(化合物(1)の製造方法)
p1が0の場合、化合物(1)の製造方法としては、たとえば下記の方法(10)~(15)が挙げられる。
p1が1の場合、化合物(1)の製造方法としては、たとえば下記の方法(20)~(25)が挙げられる。
【0045】
<方法(10)>
出発物質として市販の化合物(10)を用いる。
HO-CH-(CFO)(RF1O)-CF-CH-OH ・・・(10)
【0046】
塩基性化合物の存在下、化合物(10)にA-O-CF=CFを反応させて、化合物(11)、化合物(3A)および未反応の化合物(10)の混合物を得る。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-CH-OH ・・・(11)
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-CHOCFCHF-O-A ・・・(3A)
【0047】
混合物から化合物(11)を単離し、化合物(11)とCFCFCFOCF(CF)C(O)Fとのエステル化反応によって、化合物(12)を得る。該エステル化反応は、化合物(11)と、他の酸フロリド、酸クロリド、酸ブロミド、酸無水物等との反応であってもよい。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-CH-OC(O)CF(CF)OCFCFCF ・・・(12)
【0048】
フッ素ガスを用いて化合物(12)の水素原子をフッ素原子に置換することによって、化合物(13)を得る。該フッ素化工程は、たとえば、国際公開第2000/56694号に記載の方法等にしたがって実施できる。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)(CFCFO)-C(O)CF(CF)OCFCFCF ・・・(13)
【0049】
化合物(13)にアルコール(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等。以下、R10OHと記す。R10はアルキル基である。)を作用させることによって、化合物(14)を得る。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CF-C(O)OR10 ・・・(14)
【0050】
化合物(14)を、還元剤(水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム等)を用いて水素還元することによって、化合物(15)を得る。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CF-CHOH ・・・(15)
【0051】
塩基性化合物の存在下、化合物(15)にCFSOClを反応させて、化合物(16)を得る。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CF-CHOSOCF ・・・(16)
【0052】
塩基性化合物の存在下、化合物(16)にHOCHC(CHOCHCH=CHを反応させて、化合物(17)を得る。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CF-CHOCH-C(CHOCHCH=CH ・・・(17)
【0053】
化合物(17)とHSiR13 n1 3-n1とをヒドロシリル化反応して、化合物(1A)を得る。ヒドロシリル化反応は、白金等の遷移金属触媒または有機過酸化物等のラジカル発生剤を用いて行うことが好ましい。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CF-CHOCH-C[CHOCHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1A)
なお、上記式をオキシフルオロアルキレン単位毎にまとめて表すと、化合物(1A)は下記で表される。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)(CFCHO)-CHC[CHOCHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1A)
【0054】
<方法(11)>
出発物質として方法(10)において得られた化合物(11)を用いる。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-CH-OH ・・・(11)
【0055】
塩基性化合物の存在下、化合物(11)にCFSOClを反応させて、化合物(16B)を得る。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-CHOSOCF ・・・(16B)
【0056】
塩基性化合物の存在下、化合物(16B)にHOCHC(CHOCHCH=CHを反応させて、化合物(17B)を得る。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-CHOCH-C(CHOCHCH=CH ・・・(17B)
【0057】
化合物(17B)とHSiR13 n1 3-n1とをヒドロシリル化反応して、化合物(1B)を得る。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-CHOCH-C[CHOCHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1B)
なお、上記式をオキシフルオロアルキレン単位毎にまとめて表すと、化合物(1B)は下記で表される。
-O-(CHFCFO)(CHCFO)(RF1O)(CFCHO)-CH-C[CHOCHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1B)
【0058】
<方法(12)>
出発物質として国際公開第2013/121984号に記載の方法で得られた化合物(15C)を用いる。
-O-(RF1O)-Q12-CHOH ・・・(15C)
ただし、Q12は、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基である。
【0059】
塩基性化合物の存在下、化合物(15C)にCFSOClを反応させて、化合物(16C)を得る。
-O-(RF1O)-Q12-CHOSOCF ・・・(16C)
【0060】
塩基性化合物の存在下、化合物(16C)にHOCHC(CHOCHCH=CHを反応させて、化合物(17C)を得る。
-O-(RF1O)-Q12-CHOCH-C(CHOCHCH=CH ・・・(17C)
【0061】
化合物(17C)とHSiR13 n1 3-n1とをヒドロシリル化反応して、化合物(1C)を得る。
-O-(RF1O)-Q12-CHOCH-C[CHOCHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1C)
なお、上記式をオキシフルオロアルキレン単位毎にまとめて表すと、化合物(1C)は下記で表される。
-O-(RF1O)(Q12CHO)-CH-C[CHOCHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1C)
【0062】
<方法(13)>
HOCHC(CHCH=CHと(CFSOOとを反応させて、化合物(20)を得る。
CFSOOCHC(CHCH=CH ・・・(20)
【0063】
出発物質として方法(10)において得られた化合物(15)を用いる。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CF-CHOH ・・・(15)
ただし、xは、1~198の整数である。
【0064】
塩基性化合物の存在下、化合物(15)に化合物(20)を反応させて、化合物(17D)を得る。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CF-CHOCH-C(CHCH=CH ・・・(17D)
【0065】
化合物(17D)とHSiR13 n1 3-n1とをヒドロシリル化反応して、化合物(1D)を得る。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CF-CHOCH-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1D)
なお、上記式をオキシフルオロアルキレン単位毎にまとめて表すと、化合物(1D)は下記で表される。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)(CFCHO)-CH-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1D)
【0066】
<方法(14)>
出発物質として方法(10)において得られた化合物(11)を用いる。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-CH-OH ・・・(11)
【0067】
塩基性化合物の存在下、化合物(11)に方法(13)において得られた化合物(20)を反応させて、化合物(17E)を得る。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-CHOCH-C(CHCH=CH ・・・(17E)
【0068】
化合物(17E)とHSiR13 n1 3-n1とをヒドロシリル化反応して、化合物(1E)を得る。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-CHOCH-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1E)
なお、上記式をオキシフルオロアルキレン単位毎にまとめて表すと、化合物(1E)は下記で表される。
-O-(CHFCFO)(CHCFO)(RF1O)(CFCHO)-CH-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1E)
【0069】
<方法(15)>
出発物質として国際公開第2013/121984号に記載の方法で得られた化合物(15C)を用いる。
-O-(RF1O)-Q12-CHOH ・・・(15C)
ただし、Q12は、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基である。
【0070】
塩基性化合物の存在下、化合物(15C)に方法(13)において得られた化合物(20)を反応させて、化合物(17F)を得る。
-O-(RF1O)-Q12-CHOCH-C(CHCH=CH ・・・(17F)
【0071】
化合物(17F)とHSiR13 n1 3-n1とをヒドロシリル化反応して、化合物(1F)を得る。
-O-(RF1O)-Q12-CHOCH-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1F)
なお、上記式をオキシフルオロアルキレン単位毎にまとめて表すと、化合物(1F)は下記で表される。
-O-(RF1O)(Q12CHO)-CH-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1F)
【0072】
<方法(20)>
出発物質として方法(10)において得られた化合物(14)を用いる。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CF-C(O)OR10 ・・・(14)
【0073】
化合物(14)にHN-R11-C(CHCH=CHを反応させて、化合物(17G)を得る。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CF-C(O)NH-R11-C(CHCH=CH ・・・(17G)
【0074】
化合物(17G)とHSiR13 n1 3-n1とをヒドロシリル化反応して、化合物(1G)を得る。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CF-C(O)NH-R11-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1G)
【0075】
<方法(21)>
出発物質として方法(10)において得られた化合物(11)を用いる。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-CH-OH ・・・(11)
【0076】
J.Org.Chem.,第64巻,1999年,p.2564-2566に記載の方法にしたがい、化合物(11)を酸化して、化合物(13H)を得る。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-C(O)OH ・・・(13H)
【0077】
化合物(13H)にR10OHを作用させることによって、化合物(14H)を得る。 A-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-C(O)OR10 ・・・(14H)
【0078】
化合物(14H)にHN-R11-C(CHCH=CHを反応させて、化合物(17H)を得る。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-C(O)NH-R11-C(CHCH=CH ・・・(17H)
【0079】
化合物(17H)とHSiR13 n1 3-n1とをヒドロシリル化反応して、化合物(1H)を得る。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-C(O)NH-R11-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1H)
なお、上記式をオキシフルオロアルキレン単位毎にまとめて表すと、化合物(1H)は下記で表される。
-O-(CHFCFO)(CHCFO)(RF1O)-CF-C(O)NH-R11-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1H)
【0080】
<方法(22)>
出発物質として国際公開第2013/121984号に記載の方法で得られた化合物(14I)を用いる。
-O-(RF1O)-Q12-C(O)OR10 ・・・(14I)
ただし、Q12は、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基である。
【0081】
化合物(14I)にHN-R11-C(CHCH=CHを反応させて、化合物(17I)を得る。
-O-(RF1O)-Q12-C(O)NH-R11-C(CHCH=CH ・・・(17I)
【0082】
化合物(17I)とHSiR13 n1 3-n1とをヒドロシリル化反応して、化合物(1I)を得る。
-O-(RF1O)-Q12-C(O)NH-R11-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1I)
【0083】
<方法(23)>
CF=CFOCFCFCF-C(O)OCHとHN-R11-C(CHCH=CHとを反応させて、化合物(30)を得る。
CF=CFOCFCFCF-C(O)NH-R11-C(CHCH=CH ・・・(30)
【0084】
出発物質として方法(10)において得られた化合物(15)を用いる。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CF-CHOH ・・・(15)
ただし、xは、1~198の整数である。
【0085】
塩基性化合物の存在下、化合物(15)に化合物(30)を反応させて、化合物(17J)を得る。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CFCHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-R11-C(CHCH=CH ・・・(17J)
【0086】
化合物(17J)とHSiR13 n1 3-n1とをヒドロシリル化反応して、化合物(1J)を得る。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)-CFCHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-R11-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1J)
なお、上記式をオキシフルオロアルキレン単位毎にまとめて表すと、化合物(1J)は下記で表される。
-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF1O)(CFCHO)(CFCHFO)-CFCFCF-C(O)NH-R11-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1J)
【0087】
<方法(24)>
出発物質として方法(10)において得られた化合物(11)を用いる。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CF-CHOH ・・・(11)
【0088】
塩基性化合物の存在下、化合物(11)に方法(23)において得られた化合物(30)を反応させて、化合物(17K)を得る。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CFCHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-R11-C(CHCH=CH ・・・(17K)
【0089】
化合物(17K)とHSiR13 n1 3-n1とをヒドロシリル化反応して、化合物(1K)を得る。
-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF1O)-CFCHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-R11-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1K)
なお、上記式をオキシフルオロアルキレン単位毎にまとめて表すと、化合物(1K)は下記で表される。
-O-(CHFCFO)(CHCFO)(RF1O)(CFCHO)(CFCHFO)-CFCFCF-C(O)NH-R11-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1K)
【0090】
<方法(25)>
出発物質として国際公開第2013/121984号に記載の方法で得られた化合物(15C)を用いる。
-O-(RF1O)-RCHOH ・・・(15C)
ただし、xは、1~200の整数であり、Rは分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基である。
【0091】
塩基性化合物の存在下、化合物(15C)に方法(23)において得られた化合物(30)を反応させて、化合物(17L)を得る。
-O-(RF1O)-RCHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-R11-C(CHCH=CH ・・・(17L)
【0092】
化合物(17L)とHSiR13 n1 3-n1とをヒドロシリル化反応して、化合物(1L)を得る。
-O-(RF1O)-RCHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-R11-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1L)
なお、上記式をオキシフルオロアルキレン単位毎にまとめて表すと、化合物(1L)は下記で表される。
-O-(RF1O)(RCHO)(CFCHFO)-CFCFCF-C(O)NH-R11-C[CHCHCH-SiR13 n1 3-n1 ・・・(1L)
【0093】
(本化合物)
本化合物は、1種の化合物(1)からなる単一化合物であってもよく、A、(Rf1O)m1、Q、R、p1、R11、R12、SiR13 n1 3-n1等が異なる2種類以上の化合物(1)からなる混合物であってもよい。
本発明において単一化合物である化合物(1)とは、m1の数に分布を有する以外は同一の化合物群を意味する。たとえば化合物(1-1)の場合、(RF1O)m10が{(CFO)m11(CFCFO)m12}の場合、m11とm12に分布を有する以外は同一の化合物群および{(CFO)m11/m10(CFCFO)m12/m10m10で表した場合にm10の数に分布を有する以外は同一の化合物群を意味する。市販の化合物(10)は通常上記の意味で単一化合物とみなし得る化合物であることによって、その(RF1O)部分に変化を生じていない誘導体は、他の部分(A、Q11、Q12、R、p1、R11、R12、SiR13 n1 3-n1等)が同一である限り、単一化合物とみなし得る。
【0094】
本化合物の数平均分子量は、500~20,000が好ましく、800~10,000がより好ましく、1,000~8,000が特に好ましい。数平均分子量が該範囲内であれば、耐摩擦性に優れる。
【0095】
[含フッ素エーテル組成物]
本発明の含フッ素エーテル組成物(以下、本組成物とも記す。)は、化合物(1)と、化合物(1)以外の含フッ素エーテル化合物とを含む組成物である。化合物(1)以外の含フッ素エーテル化合物(以下、他の含フッ素エーテル化合物とも記す。)としては、化合物(1)の製造過程で副生する含フッ素エーテル化合物、化合物(1)と同様の用途に用いられる公知の(特に市販の)含フッ素エーテル化合物等が挙げられる。他の含フッ素エーテル化合物は、化合物(1)の特性を低下させるおそれが少ない化合物であって、かつ本組成物中の化合物(1)に対する相対的な含有量が化合物(1)の特性を低下させるおそれが少ない量であることが好ましい。
他の含フッ素エーテル化合物が化合物(1)の製造過程で副生する含フッ素エーテル化合物の場合、化合物(1)製造における化合物(1)の精製が容易となり、また精製工程を簡略化することができる。他の含フッ素エーテル化合物が化合物(1)と同様の用途に用いられる公知の含フッ素エーテル化合物の場合、化合物(1)の特性を補う等の新たな作用効果が発揮される場合がある。
【0096】
前記他の含フッ素エーテル化合物としては、下記含フッ素エーテル化合物(2)、下記含フッ素エーテル化合物(3)および下記含フッ素エーテル化合物(4)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
含フッ素エーテル化合物(2):前記式(1)で表される含フッ素エーテル化合物において、前記-C[-R12-SiR13 n1 3-n1を有する基が前記(Rf1O)m1の両側に結合している、含フッ素エーテル化合物。
含フッ素エーテル化合物(3):前記式(1)で表される含フッ素エーテル化合物において、前記Aを有する基が前記(Rf1O)m1の両側に結合している、含フッ素エーテル化合物。
含フッ素エーテル化合物(4):前記式(1)で表される含フッ素エーテル化合物において、前記-C[-R12-SiR13 n1 3-n1が-C[-R12-SiR13 n1 3-n13―t[-R15に置換されている(ただし、R15は、HSiR13 n1 3-n1を付加すると-R12-SiR13 n1 3-n1となる不飽和結合含有基、または該不飽和結合含有基の異性体基、tは1~3の整数。)、含フッ素エーテル化合物。
化合物(1)の特性を低下させるおそれが少ない点から、含フッ素エーテル化合物(2)としては後述の化合物(2)が好ましく、含フッ素エーテル化合物(3)としては後述の化合物(3)が好ましく、含フッ素エーテル化合物(4)としては後述の化合物(4)が好ましい。
【0097】
(化合物(2))
化合物(2)は、下式(2)で表される含フッ素エーテル化合物である。
[X 3-n223 n2Si-R22-]C-R21-[N(R)C(O)]p2-(Rf2O)m2-Q-[C(O)N(R)]p2-R21-C[-R22-SiR23 n2 3-n2 ・・・(2)
ただし、Rf2は、分岐構造を有しないフルオロアルキレン基であり;m2は、2~210の整数であり;(Rf2O)m2は、炭素数の異なる2種以上のRf2Oからなるものであってもよく;Qは、分岐構造を有しないフルオロアルキレン基であり;Rは、水素原子またはアルキル基であり;p2は、0または1であり、2つのp2は、同一の数でなくてもよく;R21は、単結合、アルキレン基、アルキレン基の末端(ただし、[X 3-n223 n2Si-R22-]Cと結合する側の末端。)にエーテル性酸素原子を有する基、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基、または炭素数2以上のアルキレン基の末端(ただし、[X 3-n223 n2Si-R22-]Cと結合する側の末端。)および炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり、2つのR21は、同一の基でなくてもよく;R22は、アルキレン基、アルキレン基の末端(ただし、Siと結合する側の末端を除く。)にエーテル性酸素原子を有する基、または炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり;R23は、水素原子または1価の炭化水素基であり;Xは、加水分解性基であり;n2は、0~2の整数であり;6つの[-R22-SiR23 n2 3-n2]は、すべてが同一の基でなくてもよい。
【0098】
(Rf2O)m2、Q、R、p2、R21、R22、SiR23 n2 3-n2としては、それぞれ化合物(1)における(Rf1O)m1、Q、R、p1、R11、R12、SiR13 n1 3-n1と同様のものが挙げられ、好ましい形態も同様である。
p2が0の場合で、かつRf2が2つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基である場合で、かつR21のRf2と結合する側の末端にエーテル性酸素原子が存在しない場合は、Rf2のR21と結合する側の末端の炭素原子には少なくとも1つのフッ素原子が結合する。
p2が0の場合で、かつQが2つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基である場合で、かつR21のQと結合する側の末端にエーテル性酸素原子が存在しない場合は、QのR21と結合する側の末端の炭素原子には少なくとも1つのフッ素原子が結合する。
【0099】
(化合物(2)の好ましい形態)
化合物(2)としては、表面層の耐摩擦性および指紋汚れ除去性にさらに優れる点から、化合物(2-1)が好ましい。
[X 3-n223 n2Si-R22-]C-R21-[N(R)C(O)]p2-Q21-(RF2O)m20-Q22-[C(O)N(R)]p2-R21-C[-R22-SiR23 n2 3-n2 ・・・(2-1)
ただし、R、p2、R21、R22、R23、Xおよびn2は、前記式(2)と同じであり;Q21は、単結合、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基の末端(ただし、C(O)と結合する側の末端を除く。)にエーテル性酸素原子を有する基、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しない炭素数2以上のフルオロアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基、または1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しない炭素数2以上のフルオロアルキレン基の末端(ただし、C(O)と結合する側の末端を除く。)および炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり(ただし、酸素数は10以下である。);RF2は、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基であり;m20は、2~200の整数であり;(RF2O)m20は、炭素数の異なる2種以上のRF2Oからなるものであってもよく;Q22は、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基、または1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しない炭素数2以上のフルオロアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である。
【0100】
21、(RF2O)m20、Q22としては、それぞれ化合物(1-1)におけるQ11、(RF1O)m10、Q12と同様のものが挙げられ、好ましい形態も同様である。
21が、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基、または1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しない炭素数2以上のフルオロアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である場合で、かつQ21の(RF2O)m20と結合する側の末端にエーテル性酸素原子が存在しない場合は、Q21の(RF2O)m20と結合する側の末端の炭素原子には少なくとも1つの水素原子が結合する。
【0101】
(化合物(2)の製造方法)
p2が0の場合、化合物(2)の製造方法としては、たとえば下記の方法(30)と(31)が挙げられる。
p2が1の場合、化合物(2)の製造方法としては、たとえば下記の方法(40)と(41)が挙げられる。
【0102】
<方法(30)>
出発物質として市販の化合物(10)を用いる。
HO-CH-CFO(RF2O)-CF-CH-OH ・・・(10)
ただし、xは、1~199の整数である。
【0103】
塩基性化合物の存在下、化合物(10)にCFSOClを反応させて、化合物(18)を得る。
CFSOOCH-(CFO)(RF2O)-CF-CHOSOCF ・・・(18)
【0104】
塩基性化合物の存在下、化合物(18)にHOCHC(CHOCHCH=CHを反応させて、化合物(19)を得る。
(CH=CHCHOCHC-CHOCH-(CFO)(RF2O)-CF-CHOCH-C(CHOCHCH=CH ・・・(19)
【0105】
化合物(19)とHSiR23 n2 3-n2とをヒドロシリル化反応して、化合物(2A)を得る。
[X 3-n223 n2Si-CHCHCHOCHC-CHOCH-(CFO)(RF2O)-CF-CHOCH-C[CHOCHCHCH-SiR23 n2 3-n2 ・・・(2A)
【0106】
<方法(31)>
出発物質として市販の化合物(10)を用いる。
HO-CH-(CFO)(RF2O)-CF-CH-OH ・・・(10)
ただし、xは、1~199の整数である。
【0107】
塩基性化合物の存在下、化合物(10)に方法(13)において得られた化合物(20)を反応させて、化合物(19B)を得る。
(CH=CHCHC-CHOCH-(CFO)(RF2O)-CF-CHOCH-C(CHCH=CH ・・・(19B)
【0108】
化合物(19B)とHSiR23 n2 3-n2とをヒドロシリル化反応して、化合物(2B)を得る。
[X 3-n223 n2Si-CHCHCHC-CHOCH-(CFO)(RF2O)-CF-CHOCH-C[CHCHCH-SiR23 n2 3-n2 ・・・(2B)
【0109】
<方法(40)>
出発物質として市販の化合物(10)を用いる。
HO-CH-CFO(RF2O)-CF-CH-OH ・・・(10)
ただし、xは、1~199の整数である。
【0110】
J.Org.Chem.,第64巻,1999年,p.2564-2566に記載の方法にしたがい、化合物(10)を酸化して、化合物(25)を得る。
HOC(O)-(CFO)(RF2O)-CF-C(O)OH ・・・(25)
【0111】
化合物(25)にR10OHを作用させることによって、化合物(26)を得る。
10OC(O)-(CFO)(RF2O)-CF-C(O)OR10 ・・・(26)
【0112】
化合物(26)にHN-R21-C(CHCH=CHを反応させて、化合物(27)を得る。
(CH=CHCHC-R21-NHC(O)-(CFO)(RF2O)-CF-C(O)NH-R21-C(CHCH=CH ・・・(27)
【0113】
化合物(27)とHSiR23 n2 3-n2とをヒドロシリル化反応して、化合物(2C)を得る。
[X 3-n223 n2Si-CHCHCHC-R21-NHC(O)-(CFO)(RF2O)-CF-C(O)NH-R21-C[CHCHCH-SiR23 n2 3-n2 ・・・(2C)
【0114】
<方法(41)>
出発物質として市販の化合物(10)を用いる。
HOCH-(CFO)(RF2O)-CFCHOH ・・・(10)
ただし、xは、1~199の整数である。
【0115】
塩基性化合物の存在下、化合物(10)に方法(23)において得られた化合物(30)を反応させて、化合物(27D)を得る。
(CH=CHCHC-R21-NHC(O)-CFCFCFOCHFCFOCH-(CFO)(RF2O)-CFCHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-R21-C(CHCH=CH ・・・(27D)
【0116】
化合物(27D)とHSiR23 n2 3-n2とをヒドロシリル化反応して、化合物(2D)を得る。
[X 3-n223 n2Si-CHCHCHC-R21-NHC(O)-CFCFCFOCHFCFOCH-(CFO)(RF2O)-CFCHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-R21-C[CHCHCH-SiR23 n2 3-n2 ・・・(2D)
【0117】
(化合物(3))
化合物(3)は、下式(3)で表される含フッ素エーテル化合物である。
31-O-(Rf3O)m3-A32 ・・・(3)
ただし、A31およびA32は、それぞれ独立に炭素数1~20のペルフルオロアルキル基であり;Rf3は、分岐構造を有しないフルオロアルキレン基であり;m3は、2~210の整数であり;(Rf3O)m3は、炭素数の異なる2種以上のRf3Oからなるものであってもよい。
【0118】
31、(Rf3O)m3、A32としては、それぞれ化合物(1)におけるA、(Rf1O)m1、Aと同様なものが挙げられ、好ましい形態も同様である。化合物(1)の製造時に副生する化合物を有効に利用できる点から、それぞれ化合物(1)におけるA、(Rf1O)m1、Aと同一であることが好ましい。
【0119】
(化合物(3)の好ましい形態)
化合物(3)としては、表面層の耐摩擦性および指紋汚れ除去性にさらに優れる点から、化合物(3-1)が好ましい。
31-O-Q31-(RF3O)m30-[Q32-O]p3-A32 ・・・(3-1)
ただし、A31およびA32は、それぞれ独立に炭素数1~20のペルフルオロアルキル基であり;Q31は、単結合、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基の末端(ただし、A31-Oと結合する側の末端を除く。)にエーテル性酸素原子を有する基、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しない炭素数2以上のフルオロアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基、または1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しない炭素数2以上のフルオロアルキレン基の末端(ただし、A31-Oと結合する側の末端を除く。)および炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり(ただし、酸素数は10以下である。);Q32は、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基、または1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しない炭素数2以上のフルオロアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり(ただし、酸素数は10以下である。);RF3は、分岐構造を有しないペルフルオロアルキレン基であり;m30は、2~200の整数であり;(RF3O)m30は、炭素数の異なる2種以上のRF3Oからなるものであってもよく;p3は、Q31が単結合の場合は0であり、Q31が単結合以外の場合は1である。
【0120】
31、Q31、(RF3O)m30、Q32、A32としては、それぞれ化合物(1-1)におけるA、Q11、(RF1O)m10、Q11(ただし、単結合を除く。)、Aと同様なものが挙げられ、好ましい形態も同様である。化合物(1-1)の製造時に副生する化合物を有効に利用できる点から、それぞれ化合物(1-1)におけるA、Q11、(RF1O)m10、Q11(ただし、単結合を除く。)、Aと同一であることが好ましい。
31が、1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しないフルオロアルキレン基、または1つ以上の水素原子を含む分岐構造を有しない炭素数2以上のフルオロアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である場合で、かつQ31の(RF3O)m30と結合する側の末端にエーテル性酸素原子が存在しない場合は、Q31の(RF3O)m30と結合する側の末端の炭素原子には少なくとも1つの水素原子が結合する。
【0121】
(化合物(3)の製造方法)
化合物(3)の製造方法としては、たとえば下記の方法(50)と(51)が挙げられる。
【0122】
<方法(50)>
方法(10)において得られた化合物(11)、化合物(3A)および未反応の化合物(10)の混合物から、化合物(3A)を単離する。
31-O-CHFCFOCH-(CFO)(RF3O)-CF-CHOCFCHF-O-A32 ・・・(3A)
【0123】
<方法(51)>
化合物(3A)をフッ素ガスでフッ素化して化合物(3B)を得る。
31-O-(CFCFO)(CFCFO)(RF3O)(CFCFO)(CFCFO)-A32 ・・・(3B)
【0124】
31が単結合であり、p3が0である化合物(3)としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、FOMBLIN(登録商標)M、FOMBLIN(登録商標)Y、FOMBLIN(登録商標)Z(以上、ソルベイソレクシス社製)、Krytox(登録商標)(デュポン社製)、デムナム(登録商標)(ダイキン工業社製)等が挙げられる。
【0125】
化合物(4)としては、化合物(1)における-C[-R12-SiR13 n1 3-n1が-C[-R12-SiR13 n1 3-n13―t[-R15に置換されている化合物であり、-C[-R12-SiR13 n1 3-n13―t[-R15以外の部分は化合物(1)と同一の化合物である。R15はハイドロシリル化反応により[-R12-SiR13 n1 3-n1]となる基またはその異性体基であり、tは1~3の整数である。
前記のように、末端に不飽和基を有するアルケニル基部分にHSiR13 n1 3-n1を付加させるハイドロシリル化反応により[-R12-SiR13 n1 3-n1]が生成する。たとえば、-C(CHCH=CHにHSiR13 n1 3-n1を付加させることにより-C[-CHCHCH-SiR13 n1 3-n1となる。この場合の(CHCH=CH)がR15である。ハイドロシリル化反応においては、R15の末端不飽和基が非末端位置に異性化した、インナーオレフィンと呼ばれるアルケニル基が生成する副反応が生じる場合がある。たとえば、-CHCH=CHが-CH=CHCHに異性化する。非末端位置に不飽和基を有するアルケニル基部分はHSiR13 n1 3-n1と反応せずに残存する。
化合物(1)の製造におけるハイドロシリル化反応において、R15が未反応で残存した場合やR15が異性化した場合には、末端が-C[-R12-SiR13 n1 3-n13―t[-R15である化合物が副生し、この化合物が化合物(4)である。
【0126】
(本組成物の組成)
本組成物中の本化合物および他の含フッ素エーテル化合物の合計の割合は、80~100質量%が好ましく、85~100質量%が特に好ましい。すなわち不純物の割合は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下が特に好ましい。本化合物および他の含フッ素エーテル化合物の割合が前記範囲内であれば、表面層の撥水撥油性、耐摩擦性、指紋汚れ除去性、潤滑性、外観に優れる。
【0127】
本化合物および他の含フッ素エーテル化合物の合計に対する他の含フッ素エーテル化合物の割合は、0質量%超40質量%未満が好ましく、0質量%超30質量%以下がより好ましく、0質量%超20質量%以下が特に好ましい。すなわち本化合物の割合は、60質量%超100質量%未満が好ましく、70質量%以上100質量%未満がより好ましく、80質量%以上100質量%未満が特に好ましい。本化合物および他の含フッ素エーテル化合物の割合が前記範囲内であれば、表面層の撥水撥油性、耐摩擦性、指紋汚れ除去性、潤滑性、外観に優れる。
【0128】
なお、他の含フッ素エーテル化合物として化合物(2)、化合物(3)および化合物(4)の少なくとも1種を含む場合、本組成物の組成は以下のようになる。
本エーテル組成物中の本化合物、化合物(2)、化合物(3)および化合物(4)の合計の割合は、60質量%超100質量%以下が好ましく、70~100質量%がより好ましく、80~100質量%が特に好ましい。すなわち本化合物、化合物(2)、化合物(3)および化合物(4)以外の含フッ素エーテル化合物と不純物との合計の割合は、40質量%未満が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましい。
本化合物、化合物(2)、化合物(3)および化合物(4)の合計に対する、化合物(2)の割合は、0質量%以上40質量%未満が好ましく、0~30質量%がより好ましく、0~20質量%が特に好ましい。化合物(3)および化合物(4)の割合も、化合物(2)の割合と同様である。
ただし、本化合物、化合物(2)、化合物(3)および化合物(4)の合計に対する、化合物(2)、化合物(3)および化合物(4)の合計の割合は、0質量%超40質量%未満が好ましく、0質量%超30質量%以下が特に好ましい。
他の含フッ素エーテル化合物として化合物(2)、化合物(3)および化合物(4)の少なくとも1種を含む場合、本組成物の組成が前記範囲内であれば、表面層の撥水撥油性、耐摩擦性、指紋汚れ除去性、潤滑性、外観に優れる。
【0129】
本組成物は、本化合物および他の含フッ素エーテル化合物以外の不純物を含んでいてもよい。本化合物および他の含フッ素エーテル化合物以外の不純物としては、本化合物および他の含フッ素エーテル化合物の製造上不可避の化合物等が挙げられる。本組成物は、後述する液状の液状媒体を含まない。
【0130】
[コーティング液]
本発明のコーティング液(以下、本コーティング液とも記す。)は、本化合物または本組成物と液状媒体とを含む。本コーティング液は、液状であればよく、溶液であってもよく、分散液であってもよい。
本コーティング液は、本化合物または本組成物を含んでいればよく、本化合物の製造工程で生成した副生成物等の不純物を含んでもよい。
本化合物または本組成物の濃度は、本コーティング液中、0.001~10質量%が好ましく、0.1~1質量%が特に好ましい。
【0131】
液状媒体としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒は、フッ素系有機溶媒であってもよく、非フッ素系有機溶媒であってもよく、両溶媒を含んでもよい。
【0132】
フッ素系有機溶媒としては、フッ素化アルカン、フッ素化芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フッ素化アルキルアミン、フルオロアルコール等が挙げられる。
フッ素化アルカンとしては、炭素数4~8の化合物が好ましい。市販品としては、たとえばC13H(旭硝子社製、アサヒクリン(登録商標)AC-2000)、C13(旭硝子社製、アサヒクリン(登録商標)AC-6000)、CCHFCHFCF(ケマーズ社製、バートレル(登録商標)XF)等が挙げられる。
フッ素化芳香族化合物としては、たとえばヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロトルエン、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等が挙げられる。
フルオロアルキルエーテルとしては、炭素数4~12の化合物が好ましい。市販品としては、たとえばCFCHOCFCFH(旭硝子社製、アサヒクリン(登録商標)AE-3000)、COCH(3M社製、ノベック(登録商標)7100)、COC(3M社製、ノベック(登録商標)7200)、CCF(OCH)C(3M社製、ノベック(登録商標)7300)等が挙げられる。
フッ素化アルキルアミンとしては、たとえばペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミン等が挙げられる。
フルオロアルコールとしては、たとえば2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール等が挙げられる。
非フッ素系有機溶媒としては、水素原子および炭素原子のみからなる化合物と、水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる化合物が好ましく、炭化水素系有機溶媒、アルコール系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、エステル系有機溶媒が挙げられる。
本コーティング液は、液状媒体を90~99.999質量%含むことが好ましく、99~99.9質量%含むことが特に好ましい。
【0133】
本コーティング液は、本化合物および液状媒体の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、たとえば、加水分解性シリル基の加水分解と縮合反応を促進する酸触媒や塩基性触媒等の公知の添加剤が挙げられる。
本コーティング液における、他の成分の割合は、10質量%以下が好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
【0134】
本コーティング液の固形分濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%が特に好ましい。コーティング液の固形分濃度は、加熱前のコーティング液の質量と、120℃の対流式乾燥機にて4時間加熱した後の質量とから算出する値である。また、本組成物の濃度は、固形分濃度と、本組成物および溶媒等の仕込み量とから算出可能である。
【0135】
[物品]
本発明の物品は、本化合物または本組成物から形成される表面層を基材の表面に有する。
【0136】
(表面層)
本化合物または本組成物においては、本化合物中の加水分解性シリル基(SiR13 n1 3-n1)が加水分解反応することによってシラノール基(Si-OH)が形成され、該シラノール基は分子間で反応してSi-O-Si結合が形成され、または該シラノール基が基材の表面の水酸基(基材-OH)と脱水縮合反応して化学結合(基材-O-Si)が形成される。すなわち、本発明における表面層は、本化合物を、本化合物の加水分解性シリル基の一部または全部が加水分解反応した状態で含む。
【0137】
表面層の厚さは、1~100nmが好ましく、1~50nmが特に好ましい。表面層の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、表面処理による効果が充分に得られやすい。表面層の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、利用効率が高い。表面層の厚さは、薄膜解析用X線回折計(RIGAKU社製、ATX-G)を用いて、X線反射率法によって反射X線の干渉パターンを得て、該干渉パターンの振動周期から算出できる。
【0138】
(基材)
本発明における基材は、撥水撥油性の付与が求められている基材であれば特に限定されない。基材の材料としては、金属、樹脂、ガラス、サファイア、セラミック、石、これらの複合材料が挙げられる。ガラスは化学強化されていてもよい。基材は、SiO等で表面処理されていてもよい。
基材としては、タッチパネル用基材、ディスプレイ用基材が好適であり、タッチパネル用基材が特に好適である。タッチパネル用基材は、透光性を有する。「透光性を有する」とは、JIS R 3106:1998(ISO 9050:1990)に準じた垂直入射型可視光透過率が25%以上であることを意味する。タッチパネル用基材の材料としては、ガラスまたは透明樹脂が好ましい。
【0139】
(物品の製造方法)
本発明の物品は、たとえば、下記の方法で製造できる。
・本化合物または本組成物を用いたドライコーティング法によって基材の表面を処理して、本発明の物品を得る方法。
・ウェットコーティング法によって本コーティング液を基材の表面に塗布し、乾燥させて、本発明の物品を得る方法。
【0140】
<ドライコーティング法>
本化合物および本組成物は、ドライコーティング法にそのまま用いることができる。本化合物および本組成物は、ドライコーティング法によって密着性に優れた表面層を形成するのに好適である。ドライコーティング法としては、真空蒸着、CVD、スパッタリング等の手法が挙げられる。本化合物の分解を抑える点、および装置の簡便さの点から、真空蒸着法が好適に利用できる。
【0141】
<ウェットコーティング法>
ウェットコーティング法としては、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法、フローコート法、ロールコート法、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0142】
<後処理>
表面層の耐摩擦性を向上させるために、必要に応じて、本化合物と基材との反応を促進するための操作を行ってもよい。該操作としては、加熱、加湿、光照射等が挙げられる。たとえば、水分を有する大気中で表面層が形成された基材を加熱して、加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、基材の表面の水酸基等とシラノール基との反応、シラノール基の縮合反応によるシロキサン結合の生成、等の反応を促進できる。
表面処理後、表面層中の化合物であって他の化合物や基材と化学結合していない化合物は、必要に応じて除去してもよい。具体的な方法としては、たとえば、表面層に溶媒をかけ流す方法、溶媒をしみ込ませた布でふき取る方法等が挙げられる。
【実施例0143】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下、「%」は特に断りのない限り「質量%」である。また、2種以上の化合物(1)からなる混合物を「化合物」、化合物(1)と他の含フッ素エーテル化合物とからなるものを「組成物」と記す。
例1~6、11~16、17~22、27~36、38~41、43~45および48~53は実施例、例7~10、23~26、37、42、46および47は比較例である。
【0144】
[例1:化合物(1A-1)、化合物(3A-1)の製造]
(例1-1)
300mLの3つ口フラスコに、24%KOH水溶液の24.4g、tert-ブチルアルコールの33g、化合物(10-1)(ソルベイソレクシス社製、FLUOROLINK(登録商標)D4000)の220gを入れ、CFCFCF-O-CF=CF(東京化成工業社製)の19.4gを加えた。窒素雰囲気下、60℃で8時間撹拌した。希塩酸水溶液で1回洗浄し、有機相を回収し、エバポレータで濃縮することによって、粗生成物(a)の233gを得た。粗生成物(a)をシリカゲルカラムクロマトグラフィに展開して分取した。展開溶媒としては、C13CHCH(旭硝子社製、AC-6000)、AC-6000/CFCHOCFCFH(旭硝子社製、AE-3000)=1/2(質量比)、AE-3000/酢酸エチル=9/1(質量比)を順に用いた。各フラクションについて、末端基の構造および構成単位の単位数(x1、x2)の平均値をH-NMRおよび19F-NMRの積分値から求めた。粗生成物(a)中には化合物(11-1)、化合物(3A-1)および化合物(10-1)がそれぞれ、42モル%、49モル%および9モル%含まれていたことがわかった。化合物(11-1)の98.6g(収率:44.8%)および化合物(3A-1)の51.9g(収率:23.6%)が得られた。
HO-CH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CH-OH ・・・(10-1)
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CH-OH ・・・(11-1)
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCFCHF-O-CFCFCF ・・・(3A-1)
【0145】
化合物(11-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):3.9(2H)、4.2(2H)、5.8~6.0(1H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.8(42F)、-78.8(1F)、-80.8(1F)、-81.4(1F)、-82.2(3F)、-83.5(1F)、-85.3~-88.2(2F)、-89.4~-91.1(82F)、-130.5(2F)、-145.1(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(11-1)の数平均分子量:4,150。
【0146】
化合物(3A-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):4.2(4H)、5.8~6.0(2H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.8(42F)、-78.8(2F)、-80.7(2F)、-82.2(6F)、-85.3~-88.2(4F)、-89.4~-91.1(84F)、-130.5(4F)、-145.1(2F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(3A-1)の数平均分子量:4,420。
【0147】
(例1-2)
100mLのナスフラスコに、化合物(11-1)の30.0g、フッ化ナトリウム粉末の0.9g、ジクロロペンタフルオロプロパン(旭硝子社製、AK-225)の30gを入れ、CFCFCFOCF(CF)C(O)Fの3.5gを加えた。窒素雰囲気下、50℃で24時間撹拌した。加圧ろ過器でフッ化ナトリウム粉末を除去した後、過剰のCFCFCFOCF(CF)C(O)FおよびAK-225を減圧留去した。得られた粗生成物をC13H(旭硝子社製、AC-2000)で希釈し、シリカゲルカラムに通し、回収した溶液をエバポレータで濃縮し、化合物(12-1)の31.8g(収率98.8%)を得た。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CH-OC(O)CF(CF)OCFCFCF ・・・(12-1)
【0148】
化合物(12-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):4.2(2H)、4.7(2H)、5.8~6.0(1H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.8(42F)、-78.8~-88.2(17F)、-89.4~-91.1(82F)、-130.3(2F)、-130.5(2F)、-132.5(1F)、-145.1(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(12-1)の数平均分子量:4,460。
【0149】
(例1-3)
1Lのニッケル製オートクレーブのガス出口に、20℃に保持した冷却器、NaFペレット充填層および0℃に保持した冷却器を直列に設置した。0℃に保持した冷却器から凝集した液をオートクレーブに戻す液体返送ラインを設置した。
オートクレーブにClCFCFClCFOCFCFCl(以下、CFE-419とも記す。)の750gを入れ、25℃に保持しながら撹拌した。オートクレーブに窒素ガスを25℃で1時間吹き込んだ後、20%フッ素ガスを、25℃、流速2.0L/時間で1時間吹き込んだ。20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、オートクレーブに、化合物(12-1)の31.0gをCFE-419の124gに溶解した溶液を、4.3時間かけて注入した。20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、オートクレーブの内圧を0.15MPa(ゲージ圧)まで加圧した。オートクレーブ内に、CFE-419中に0.05g/mLのベンゼンを含むベンゼン溶液の4mLを、25℃から40℃にまで加熱しながら注入し、オートクレーブのベンゼン溶液注入口を閉めた。15分間撹拌した後、再びベンゼン溶液の4mLを、40℃を保持しながら注入し、注入口を閉めた。同様の操作をさらに3回繰り返した。ベンゼンの注入総量は0.17gであった。20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、1時間撹拌を続けた。オートクレーブ内の圧力を大気圧にして、窒素ガスを1時間吹き込んだ。オートクレーブの内容物をエバポレータで濃縮し、化合物(13-1)の31.1g(収率98.5%)を得た。
CFCFCF-O-(CFCFO)(CFCFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}(CFCFO)-C(O)CF(CF)OCFCFCF ・・・(13-1)
【0150】
化合物(13-1)のNMRスペクトル;
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.7(42F)、-78.8~-88.1(11F)、-89.4~-91.1(92F)、-91.5(2F)、-130.3(2F)、-130.5(2F)、-132.5(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(13-1)の数平均分子量:4,550。
【0151】
(例1-4)
テトラフルオロエチレン-ペルフルオロ(アルコキシビニルエーテル)共重合体(以下、PFAとも記す。)製丸底フラスコに、化合物(13-1)の30.0gおよびAK-225の60gを入れた。氷浴で冷却しながら撹拌し、窒素雰囲気下、メタノールの2.0gを滴下漏斗からゆっくり滴下した。窒素でバブリングしながら12時間撹拌した。反応混合物をエバポレータで濃縮し、化合物(14-1)の27.6g(収率98.8%)を得た。
CFCFCF-O-(CFCFO)(CFCFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-C(O)OCH ・・・(14-1)
【0152】
化合物(14-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):3.9(3H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.8(42F)、-82.2(3F)、-89.4~-91.1(92F)、-130.5(2F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(14-1)の数平均分子量:4,230。
【0153】
(例1-5)
100mLの3つ口ナスフラスコ内にて、塩化リチウムの0.18gをエタノールの18.3gに溶解させた。これに化合物(14-1)の25.0gを加えて氷浴で冷却しながら、水素化ホウ素ナトリウムの0.75gをエタノールの22.5gに溶解した溶液をゆっくり滴下した。氷浴を取り外し、室温までゆっくり昇温しながら撹拌を続けた。室温で12時間撹拌後、液性が酸性になるまで塩酸水溶液を滴下した。AC-2000の20mLを添加し、水で1回、飽和食塩水で1回洗浄し、有機相を回収した。回収した有機相をエバポレータで濃縮し、化合物(15-1)の24.6g(収率99.0%)を得た。 CFCFCF-O-(CFCFO)(CFCFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOH ・・・(15-1)。
【0154】
化合物(15-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):3.9(2H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.7(42F)、-81.4(1F)、-82.2(3F)、-83.4(1F)、-89.4~-91.1(90F)、-130.5(2F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(15-1)の数平均分子量:4,200。
【0155】
(例1-6)
100mLの2つ口ナスフラスコに、化合物(15-1)の20.0g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(東京化成工業社製)の20.0g、CFSOCl(和光純薬工業社製)の1.01gおよびトリエチルアミンの1.00gを入れ、窒素雰囲気下、室温で4時間撹拌した。反応終了後、AK-225の15gを加え、水および飽和食塩水で各1回洗浄し、有機相を回収した。回収した有機相をエバポレータで濃縮し、化合物(16-1)の20.3g(収率99%)を得た。
CFCFCF-O-(CFCFO)(CFCFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOSOCF ・・・(16-1)
【0156】
化合物(16-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):4.6(2H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.7(42F)、-74.1(3F)、-76.1(1F)、-79.5(1F)、-82.2(3F)、-89.4~-91.1(90F)、-130.5(2F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(16-1)の数平均分子量:4,340。
【0157】
(例1-7)
50mLのナスフラスコ内にて、水素化ナトリウム(55%/パラフィン)の0.13gを1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(東京化成工業社製)の5.0gに懸濁させ、室温で化合物(16-1)の10.0gを滴下した。これにHOCHC(CHOCHCH=CH(ダイソー社製、ネオアリル(登録商標)P-30Mの精製物)の0.91gを加え、70℃に昇温して12時間撹拌した。反応終了後、AK-225の15gを加え、水洗して有機相を回収し、エバポレータで濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:AE-3000/酢酸エチル=99/1(質量比))で精製して化合物(17-1)の2.6g(収率26%)を得た。
CFCFCF-O-(CFCFO)(CFCFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCH-C(CHOCHCH=CH ・・・(17-1)
【0158】
化合物(17-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):3.6(6H)、3.7~3.9(10H)、5.1(6H)、5.8(3H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.7(42F)、-77.2(1F)、-79.4(1F)、-82.2(3F)、-89.4~-91.1(90F)、-130.5(2F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(17-1)の数平均分子量:4,450。
【0159】
(例1-8)
10mLのPFA製容器に、化合物(17-1)の2.0g、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量:2%)の0.002g、HSi(OCHの0.24g、ジメチルスルホキシドの0.003gおよび1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(東京化成工業社製)の0.15gを入れ、40℃で4時間撹拌した。反応終了後、溶媒等を減圧留去し、孔径0.2μmのメンブランフィルタでろ過し、化合物(17-1)の3つのアリル基がヒドロシリル化された化合物(1A-1)および化合物(17-1)の3つのアリル基の一部または全部がインナーオレフィン(-CH=CHCH)に異性化した副生物からなる組成物(1)の1.9g(収率92%)を得た。ヒドロシリル化の転化率は100%であり、化合物(17-1)は残存していなかった。ヒドロシリル化の選択率は85%であった。
CFCFCF-O-(CFCFO)(CFCFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCH-C[CHOCHCHCH-Si(OCH ・・・(1A-1)
【0160】
化合物(1A-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.7(6H)、1.7(6H)、3.4-3.8(44H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.7(42F)、-77.2(1F)、-79.4(1F)、-82.2(3F)、-89.4~-91.1(90F)、-130.5(2F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(1A-1)の数平均分子量:4,810。
【0161】
[例2:化合物(1B-1)の製造]
(例2-1)
化合物(15-1)を例1-1で得た化合物(11-1)の30.0gに、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(東京化成工業社製)の量を30.0gに、CFSOCl(和光純薬工業社製)の量を1.44gに、トリエチルアミンの量を1.45gに変更した以外は例1-6と同様にして、化合物(16B-1)の30.6g(収率99%)を得た。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOSOCF ・・・(16B-1)
【0162】
化合物(16B-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):4.2(2H)、4.6(2H)、5.8~6.0(1H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-51.2~-54.6(42F)、-74.1(3F)、-77.6(1F)、-77.6(2F)、-79.0(1F)、-79.5(1F)、-81.2(3F)、-84.3~-87.2(2F)、-87.9~-91.0(82F)、-129.4(2F)、-144.1(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(16B-1)の数平均分子量:4,280。
【0163】
(例2-2)
化合物(16-1)を化合物(16B-1)に、HOCHC(CHOCHCH=CHの量を0.92gに変更した以外は例1-7と同様にして、化合物(17B-1)の2.4g(収率24%)を得た。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCH-C(CHOCHCH=CH ・・・(17B-1)
【0164】
化合物(17B-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):3.6(6H)、3.7~3.9(10H)、4.2(2H)、5.1(6H)、5.7~6.0(4H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-51.2~-54.6(42F)、-77.2(1F)、-77.7(1F)、-79.3(1F)、-79.7(1F)、-81.2(3F)、-84.3~-87.2(2F)、-87.9~-91.0(82F)、-129.4(2F)、-144.1(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(17B-1)の数平均分子量:4,390。
【0165】
(例2-3)
化合物(17-1)を例2-2で得た化合物(17B-1)の1.8gに、HSi(OCHの量を0.22gに変更した以外は例1-8と同様にして、化合物(17B-1)の3つのアリル基がヒドロシリル化された化合物(1B-1)および化合物(17B-1)の3つのアリル基の一部または全部がインナーオレフィン(-CH=CHCH)に異性化した副生物からなる組成物(2)の1.7g(収率87%)を得た。ヒドロシリル化の転化率は100%であり、化合物(17B-1)は残存していなかった。ヒドロシリル化の選択率は87%であった。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCH-C[CHOCHCHCH-Si(OCH ・・・(1B-1)
【0166】
化合物(1B-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.7(6H)、1.7(6H)、3.4-3.8(44H)、4.2(2H)、5.8~6.0(1H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-51.2~-54.6(42F)、-77.2(1F)、-77.7(1F)、-79.3(1F)、-79.7(1F)、-81.2(3F)、-84.3~-87.2(2F)、-87.9~-91.0(82F)、-129.4(2F)、-144.1(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(1B-1)の数平均分子量:4,760。
【0167】
[例3:化合物(1C-1)の製造]
(例3-1)
国際公開第2013/121984号の実施例7に記載の方法にしたがい、化合物(15C-1)を得た。
CF-O-(CFCFO-CFCFCFCFO)x3(CFCFO)-CFCFCF-CHOH ・・・(15C-1)。
【0168】
化合物(15C-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):2.0(1H)、4.0(2H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-56.2(3F)、-84.1(54F)、-89.3(54F)、-91.4(2F)、-123.7(2F)、-126.6(52F)、-128.7(2F)。
単位数x3の平均値:13、化合物(15C-1)の数平均分子量:4,700。
【0169】
(例3-2)
化合物(15-1)を例3-1で得た化合物(15C-1)に、CFSOCl(和光純薬工業社製)の量を0.86gに、トリエチルアミンの量を1.02gに変更した以外は例1-6と同様にして、化合物(16C-1)の30.6g(収率99%)を得た。 CF-O-(CFCFO-CFCFCFCFO)x3(CFCFO)-CFCFCF-CHOSOCF ・・・(16C-1)
【0170】
化合物(16C-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):4.7(2H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-56.3(3F)、-74.0(3F)、-84.0(54F)、-89.2(54F)、-91.4(2F)-122.7(2F)、-123.6(2F)、-126.6(52F)。
単位数x3の平均値:13、化合物(16C-1)の数平均分子量:4,830。
【0171】
(例3-3)
水素化ナトリウム(55%/パラフィン)の量を0.14gに、化合物(16-1)を例3-2で得た化合物(16C-1)に、HOCHC(CHOCHCH=CHの量を0.95gに変更し、反応終了後にAK-225で希釈しない以外は例1-7と同様にして、化合物(17C-1)の3.9g(収率38%)を得た。
CF-O-(CFCFO-CFCFCFCFO)x3(CFCFO)-CFCFCF-CHOCH-C(CHOCHCH=CH ・・・(17C-1)
【0172】
化合物(17C-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm): 3.6(6H)、3.7~3.9(8H)、4.0(2H)、5.1(6H)、5.7~6.0(3H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-56.3(3F)、-84.0(54F)、-89.2(54F)、-91.4(2F)、-120.5(2F)、-126.6(52F)、-128.6(2F)。
単位数x3の平均値:13、化合物(17C-1)の数平均分子量:4,940。
【0173】
(例3-4)
化合物(17-1)を例3-3で得た化合物(17C-1)の3.0gに、白金錯体溶液の量を0.004gに、HSi(OCHの量を0.40gに、ジメチルスルホキシドの量を0.006gに、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(東京化成工業社製)の量を0.30gに変更した以外は例1-8と同様にして、化合物(17C-1)の3つのアリル基がヒドロシリル化された化合物(1C-1)および化合物(17C-1)の3つのアリル基の一部または全部がインナーオレフィン(-CH=CHCH)に異性化した副生物からなる組成物(3)の3.0g(収率93%)を得た。ヒドロシリル化の転化率は100%であり、化合物(17C-1)は残存していなかった。ヒドロシリル化の選択率は85%であった。
CF-O-(CFCFO-CFCFCFCFO)x3(CFCFO)-CFCFCF-CHOCH-C[CHOCHCHCH-Si(OCH ・・・(1C-1)
【0174】
化合物(1C-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.7(6H)、1.7(6H)、3.4-3.8(44H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-56.3(3F)、-84.0(54F)、-89.2(54F)、-91.4(2F)、-120.5(2F)、-126.6(52F)、-128.6(2F)。
単位数x3の平均値:13、化合物(1C-1)の数平均分子量:5,300。
【0175】
[例4:化合物(1D-1)の製造]
(例4-1)
200mLのナスフラスコ内に、HOCHC(CHCH=CHの10g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(東京化成工業社製)の20.0gおよび(CFSOOの25.5gを入れ、窒素雰囲気下、0℃で2,6-ルチジンの19.3gを滴下した。室温まで昇温し1時間撹拌した。反応終了後、水洗して有機相を回収し、エバポレータで濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=85/15(質量比))で精製して化合物(20)の15.1g(収率85%)を得た。
CFSOOCHC(CHCH=CH ・・・(20)
【0176】
化合物(20)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):2.1(6H)、4.3(2H)、5.0~5.2(6H)、5.6~5.8(3H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-74.0(3F)。
【0177】
(例4-2)
化合物(16-1)を例4-1で得た化合物(20)の0.70gに、HOCHC(CHOCHCH=CHを例1-5で得た化合物(15-1)の10.0gに変更した以外は例1-7と同様にして、化合物(17D-1)の5.1g(収率51%)を得た。
CFCFCF-O-(CFCFO)(CFCFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCH-C(CHCH=CH ・・・(17D-1)
【0178】
化合物(17D-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):2.1(6H)、3.7(4H)、5.0~5.2(6H)、5.8(3H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.7(42F)、-77.2(1F)、-79.4(1F)、-82.2(3F)、-89.4~-91.1(90F)、-130.5(2F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(17D-1)の数平均分子量:4,350。
【0179】
(例4-3)
化合物(17-1)を例4-2で得た化合物(17D-1)に、HSi(OCHの量を0.25gに変更した以外は例1-8と同様にして、化合物(17D-1)の3つのアリル基がヒドロシリル化された化合物(1D-1)の1.9g(収率90%)を得た。ヒドロシリル化の転化率は100%であり、化合物(17D-1)は残存していなかった。ヒドロシリル化の選択率は100%であり、化合物(17D-1)の3つのアリル基の一部または全部がインナーオレフィン(-CH=CHCH)に異性化した副生物は副生しなかった。
CFCFCF-O-(CFCFO)(CFCFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCH-C[CHCHCHSi(OCH ・・・(1D-1)
【0180】
化合物(1D-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.7(6H)、1.7(6H)、3.4-3.8(37H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.7(42F)、-77.2(1F)、-79.4(1F)、-82.2(3F)、-89.4~-91.1(90F)、-130.5(2F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(1D-1)の数平均分子量:4,710。
【0181】
[例5:化合物(1E-1)の製造]
(例5-1)
化合物(16-1)を例4-1で得た化合物(20)の0.72gに、HOCHC(CHOCHCH=CHを例1-1で得た化合物(11-1)の10.0gに変更し、反応終了後にAK-225で希釈しない以外は例1-7と同様にして、化合物(17E-1)の5.0g(収率50%)を得た。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCH-C(CHCH=CH ・・・(17E-1)
【0182】
化合物(17E-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):2.1(6H)、3.7~3.9(4H)、4.2(2H)、5.0~5.2(6H)、5.7~6.0(4H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-51.2~-54.6(42F)、-77.2(1F)、-77.7(1F)、-79.3(1F)、-79.7(1F)、-81.2(3F)、-84.3~-87.2(2F)、-87.9~-91.0(82F)、-129.4(2F)、-144.1(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(17E-1)の数平均分子量:4,300。
【0183】
(例5-2)
化合物(17-1)を例5-1で得た化合物(17E-1)の1.8gに、HSi(OCHの量を0.23gに変更した以外は例1-8と同様にして、化合物(17E-1)の3つのアリル基がヒドロシリル化された化合物(1E-1)の1.7g(収率87%)を得た。ヒドロシリル化の転化率は100%であり、化合物(17E-1)は残存していなかった。ヒドロシリル化の選択率は100%であり、化合物(17E-1)の3つのアリル基の一部または全部がインナーオレフィン(-CH=CHCH)に異性化した副生物は副生しなかった。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCH-C[CHCHCH-Si(OCH ・・・(1E-1)
【0184】
化合物(1E-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.7(6H)、1.7(6H)、3.4-3.8(37H)、4.2(2H)、5.8~6.0(1H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-51.2~-54.6(42F)、-77.2(1F)、-77.7(1F)、-79.3(1F)、-79.7(1F)、-81.2(3F)、-84.3~-87.2(2F)、-87.9~-91.0(82F)、-129.4(2F)、-144.1(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(1E-1)の数平均分子量:4,660。
【0185】
[例6:化合物(1F-1)の製造]
(例6-1)
化合物(16-1)を例4-1で得た化合物(20)の0.64gに、HOCHC(CHOCHCH=CHを例3-1で得た化合物(15C-1)の10.0gに変更し、反応終了後にAK-225で希釈しない以外は例1-7と同様にして、化合物(17F-1)の4.9g(収率48%)を得た。
CF-O-(CFCFO-CFCFCFCFO)x3(CFCFO)-CFCFCF-CHOCH-C(CHCH=CH ・・・(17F-1)
【0186】
化合物(17F-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):2.1(6H)、3.7~3.9(4H)、5.0~5.2(6H)、5.7~6.0(3H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-56.3(3F)、-84.0(54F)、-89.2(54F)、-91.4(2F)、-120.5(2F)、-126.6(52F)、-128.6(2F)。
単位数x3の平均値:13、化合物(17F-1)の数平均分子量:4,850。
【0187】
(例6-2)
化合物(17-1)を例6-1で得た化合物(17F-1)に、HSi(OCHの量を0.23gに変更した以外は例1-8と同様にして、化合物(17F-1)の3つのアリル基がヒドロシリル化された化合物(1F-1)の1.9g(収率90%)を得た。ヒドロシリル化の転化率は100%であり、化合物(17F-1)は残存していなかった。ヒドロシリル化の選択率は100%であり、化合物(17F-1)の3つのアリル基の一部または全部がインナーオレフィン(-CH=CHCH)に異性化した副生物は副生しなかった。
CF-O-(CFCFO-CFCFCFCFO)x3(CFCFO)-CFCFCF-CHOCH-C[CHCHCH-Si(OCH ・・・(1F-1)
【0188】
化合物(1F-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.7(6H)、1.7(6H)、3.4-3.8(37H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-56.3(3F)、-84.0(54F)、-89.2(54F)、-91.4(2F)、-120.5(2F)、-126.6(52F)、-128.6(2F)。
単位数x3の平均値:13、化合物(1F-1)の数平均分子量:5210。
【0189】
[例7:化合物(2A-1)の製造]
(例7-1)
化合物(15-1)を化合物(10-1)の30.0gに、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(東京化成工業社製)の量を30.0gに、CFSOCl(和光純薬工業社製)の量を2.9gに、トリエチルアミンの量を3.0gに変更した以外は例1-6と同様にして、化合物(18-1)の31.0g(収率97%)を得た。
CFSOOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOSOCF ・・・(18-1)
【0190】
化合物(18-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):4.6(2H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-51.2~-54.6(42F)、-74.1(6F)、-77.0(2F)、-79.0(2F)、-87.5~-91.0(80F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(18-1)の数平均分子量:4,150。
【0191】
(例7-2)
水素化ナトリウム(55%/パラフィン)の量を0.25gに、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(東京化成工業社製)の量を10.0gに、化合物(16-1)を例7-1で得た化合物(18-1)に、HOCHC(CHOCHCH=CHの量を1.6gに変更し、反応終了後にAK-225で希釈しない以外は例1-7と同様にして、化合物(19-1)の1.5g(収率14%)を得た。
(CH=CHCHOCHC-CHOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCH-C(CHOCHCH=CH ・・・(19-1)
【0192】
化合物(19-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):3.6(12H)、3.7~3.9(20H)、5.1(12H)、5.8(6H)。 19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-51.2~-54.6(42F)、-74.1(6F)、-77.3(2F)、-79.2(2F)、-87.5~-91.0(80F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(19-1)の数平均分子量:4,360。
【0193】
(例7-3)
化合物(17-1)を例7-2で得た化合物(19-1)の1.0gに、HSi(OCHの量を0.40gに変更した以外は例1-8と同様にして、化合物(19-1)の6つのアリル基がヒドロシリル化された化合物(2A-1)および化合物(19-1)の6つのアリル基の一部または全部がインナーオレフィン(-CH=CHCH)に異性化した副生物からなる組成物(7)の1.1g(収率96%)を得た。ヒドロシリル化の転化率は100%であり、化合物(19-1)は残存していなかった。ヒドロシリル化の選択率は84%であった。
[(CHO)Si-CHCHCHOCHC-CHOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCH-C[CHOCHCHCH-Si(OCH ・・・(2A-1)
【0194】
化合物(2A-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.7(12H)、1.7(12H)、3.4-3.8(86H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-51.2~-54.6(42F)、-77.7(2F)、-79.7(2F)、-87.5~-91.0(80F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(2A-1)の数平均分子量:5,010。
【0195】
[例8:化合物(4-1)の製造]
(例8-1)
化合物(15-1)を化合物(21-1)(シンクエストラボラトリーズ製)に、CFSOCl(和光純薬工業社製)の量を4.0gに、トリエチルアミンの量を4.5gに変更した以外は例1-6と同様にして、化合物(22-1)の21.5g(収率98%)を得た。
CFCFCF-O-(CF(CF)CFO)x4-CF(CF)-CHOH ・・・(21-1)
CFCFCF-O-(CF(CF)CFO)x4-CF(CF)-CHOSOCF ・・・(22-1)
【0196】
化合物(22-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):4.9(2H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-74.2(3F)、-78.4~-82.2(38F)、-129.4(2F)、-135.0(1F)、-144.2(6F)。
単位数x4の平均値:6、化合物(22-1)の数平均分子量:1,440。
【0197】
(例8-2)
水素化ナトリウム(55%/パラフィン)の量を0.05gに、化合物(16-1)を例8-1で得た化合物(22-1)に、HOCHC(CHOCHCH=CHの量を0.31gに変更し、反応終了後にAK-225で希釈しない以外は例1-7と同様にして、化合物(23-1)の2.1g(収率20%)を得た。
CFCFCF-O-(CF(CF)CFO)x4-CF(CF)-CHOCH-C(CHOCHCH=CH ・・・(23-1)
【0198】
化合物(23-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):3.6(6H)、3.7~3.9(8H)、4.0(2H)、5.1(6H)、5.8(3H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-78.4~-82.2(38F)、-129.4(2F)、-132.0(1F)、-144.2(6F)。
単位数x4の平均値:6、化合物(23-1)の数平均分子量:1,550。
【0199】
(例8-3)
化合物(17-1)を例8-2で得た化合物(23-1)に、白金錯体溶液の量を0.006gに、HSi(OCHの量を0.66gに、ジメチルスルホキシドの量を0.01gに変更した以外は例1-8と同様にして、化合物(23-1)の3つのアリル基がヒドロシリル化された化合物(4-1)および化合物(23-1)の3つのアリル基の一部または全部がインナーオレフィン(-CH=CHCH)に異性化した副生物からなる組成物(8)の2.1g(収率85%)を得た。ヒドロシリル化の転化率は100%であり、化合物(23-1)は残存していなかった。ヒドロシリル化の選択率は85%であった。
CFCFCF-O-(CF(CF)CFO)x4-CF(CF)-CHOCH-C[CHOCHCHCH-Si(OCH ・・・(4-1)
【0200】
化合物(4-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.7(6H)、1.7(6H)、3.4-3.8(41H)、4.0(2H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-78.4~-82.2(38F)、-129.4(2F)、-132.0(1F)、-144.2(6F)。
単位数x4の平均値:6、化合物(4-1)の数平均分子量:1,920。
【0201】
[例9:化合物(5-1)の製造]
(例9-1)
100mLの2つ口ナスフラスコに、例1-5で得た化合物(15-1)の20.0g、硫酸水素テトラブチルアンモニウムの0.21g、BrCHCH=CHの1.76gおよび30%水酸化ナトリウム水溶液の2.6gを加え、60℃で8時間撹拌した。反応終了後、AC-2000の20gを加え、希塩酸水溶液で1回洗浄し、有機相を回収した。回収した有機相をシリカゲルカラムに通し、回収した溶液をエバポレータで濃縮し、化合物(24-1)の19.8g(収率98.2%)を得た。
CFCFCF-O-(CFCFO)(CFCFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCHCH=CH ・・・(24-1)。
【0202】
化合物(24-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):3.7(2H)、4.1(2H)、5.2~5.3(2H)、5.9(1H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.3~-55.7(42F)、-78.1(1F)、-80.1(1F)、-82.1(3F)、-89.4~-91.1(90F)、-130.5(2F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(24-1)の数平均分子量:4,250。
【0203】
(例9-2)
化合物(17-1)を例9-1で得た化合物(24-1)の5.0gに、白金錯体溶液の量を0.005gに、HSi(OCHの量を0.25gに、ジメチルスルホキシドの量を0.005gに、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(東京化成工業社製)の量を0.20gに、反応時間を4時間に変更した以外は例1-8と同様にして、化合物(24-1)の1つのアリル基がヒドロシリル化された化合物(5-1)および化合物(24-1)の1つのアリル基がインナーオレフィン(-CH=CHCH)に異性化した副生物からなる組成物(9)の4.9g(収率95%)を得た。ヒドロシリル化の転化率は100%であり、化合物(24-1)は残存していなかった。ヒドロシリル化の選択率は87%であった。
CFCFCF-O-(CFCFO)(CFCFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCHCHCH-Si(OCH ・・・(5-1)
【0204】
化合物(5-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.7(6H)、1.7(6H)、3.6(11H)、3.8(2H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-52.4~-55.8(42F)、-78.2(1F)、-80.2(1F)、-82.2(3F)、-89.4~-91.1(90F)、-130.5(2F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(5-1)の数平均分子量:4,370。
【0205】
[例10:化合物(5-2)の製造]
(例10-1)
化合物(15-1)を例1-1で得た化合物(11-1)の52.0gに、硫酸水素テトラブチルアンモニウムの量を0.52gに、BrCHCH=CHの量を4.4gに、30%水酸化ナトリウム水溶液の量を6.5gに、AC-2000の量を50gに変更した以外は例9-1と同様にして、化合物(24-2)の52.4g(収率99.9%)を得た。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCH-CH=CH ・・・(24-2)
【0206】
化合物(24-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):3.7(2H)、4.1(2H)、4.2(2H)、5.2~5.3(2H)、5.8~6.0(2H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.3~-55.7(42F)、-78.1(1F)、-78.7(1F)、-80.2(1F)、-80.7(1F)、-82.2(3F)、-85.4~-88.2(2F)、-89.4~-91.1(86F)、-130.5(2F)、-145.1(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(24-2)の数平均分子量:4,190。
【0207】
(例10-2)
化合物(24-1)を例10-1で得た化合物(24-2)に変更した以外は例9-2と同様にして、化合物(24-2)の1つのアリル基がヒドロシリル化された化合物(5-2)および化合物(24-2)の1つのアリル基がインナーオレフィン(-CH=CHCH)に異性化した副生物からなる組成物(10)の4.8g(収率93%)を得た。ヒドロシリル化の転化率は100%であり、化合物(24-2)は残存していなかった。ヒドロシリル化の選択率は85%であった。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCHCHCH-Si(OCH ・・・(5-2)
【0208】
化合物(5-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.7(6H)、1.7(6H)、3.6(11H)、3.8(2H)、4.2(2H)、5.8~6.0(1H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-52.3~-55.7(42F)、-78.2(1F)、-78.7(1F)、-80.3(1F)、-80.7(1F)、-82.2(3F)、-85.4~-88.2(2F)、-89.4~-91.1(82F)、-130.5(2F)、-145.1(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(5-2)の数平均分子量:4,310。
【0209】
[例11:化合物(1I-1)の製造]
(例11-1)
国際公開第2013/121984号の実施例6に記載の方法にしたがい、化合物(14I-1)を得た。
CF-O-(CFCFO-CFCFCFCFO)x3(CFCFO)-CFCFCF-C(O)OCH ・・・(14I-1)
【0210】
化合物(14I-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):3.9(3H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-55.2(3F)、-82.1(54F)、-88.1(54F)、-90.2(2F)、-118.2(2F)、-125.4(52F)、-126.2(2F)。
単位数x3の平均値:13、化合物(14I-1)の数平均分子量:4,700。
【0211】
(例11-2)
50mLのナスフラスコに、例11-1で得た化合物(14I-1)の9.0gおよびHN-CH-C(CHCH=CHの0.45gを入れ、12時間撹拌した。NMRから、化合物(14I-1)がすべて化合物(17I-1)に変換していることを確認した。また、副生物であるメタノールが生成していた。得られた溶液をAE-3000の9.0gで希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:AE-3000)で精製し、化合物(17I-1)の7.6g(収率84%)を得た。
CF-O-(CFCFO-CFCFCFCFO)x3(CFCFO)-CFCFCF-C(O)NH-CH-C(CHCH=CH ・・・(17I-1)
【0212】
化合物(17I-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):2.1(6H)、3.4(2H)、5.2(6H)、6.2~5.9(3H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-55.2(3F)、-82.1(54F)、-88.1(54F)、-90.2(2F)、-119.6(2F)、-125.4(52F)、-126.2(2F)。
単位数x3の平均値:13、化合物(17I-1)の数平均分子量:4,800。
【0213】
(例11-3)
10mLのPFA製サンプル管に、例11-2で得た化合物(17I-1)の6.0g、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量:2%)の0.07g、HSi(OCHの0.78g、ジメチルスルホキシドの0.02g、1,3―ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(東京化成工業社製)の0.49gを入れ、40℃で10時間撹拌した。反応終了後、溶媒等を減圧留去し、1.0μm孔径のメンブランフィルタでろ過し、化合物(1I-1)の6.7g(収率100%)を得た。
CF-O-(CFCFO-CFCFCFCFO)x3(CFCFO)-CFCFCF-C(O)NH-CH-C[CHCHCH-Si(OCH ・・・(1I-1)
【0214】
化合物(1I-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.75(6H)、1.3~1.6(12H)、3.4(2H)、3.7(27H)。 19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-55.2(3F)、-82.1(54F)、-88.1(54F)、-90.2(2F)、-119.6(2F)、-125.4(52F)、-126.2(2F)。
単位数x3の平均値:13、化合物(1I-1)の数平均分子量:5,400。
【0215】
[例12:化合物(1I-2)の製造]
(例12-1)
N-CH-C(CHCH=CHの0.45gの代わりに、HN-C(CHCH=CHの0.41gを用いた以外は例11-2と同様にして、化合物(17I-2)の7.5g(収率84%)を得た。
CF-O-(CFCFO-CFCFCFCFO)x3(CFCFO)-CFCFCF-C(O)NH-C(CHCH=CH ・・・(17I-2)
【0216】
化合物(17I-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):2.3(6H)、5.2(6H)、5.9~6.2(3H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-55.2(3F)、-82.1(54F)、-88.1(54F)、-90.2(2F)、-119.4(2F)、-125.4(52F)、-126.2(2F)。
単位数x3の平均値:13、化合物(17I-2)の数平均分子量:4,800。
【0217】
(例12-2)
化合物(17I-1)の代わりに、例12-1で得た化合物(17I-2)を用いた以外は例11-3と同様にして、化合物(1I-2)の6.7g(収率100%)を得た。 CF-O-(CFCFO-CFCFCFCFO)x3(CFCFO)-CFCFCF-C(O)NH-C[CHCHCH-Si(OCH ・・・(1I-2)
【0218】
化合物(1I-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.75(6H)、1.3~1.6(12H)、3.7(27H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-55.2(3F)、-82.1(54F)、-88.1(54F)、-90.2(2F)、-119.4(2F)、-125.4(52F)、-126.2(2F)。
単位数x3の平均値:13、化合物(1I-2)の数平均分子量:5,400。
【0219】
[例13:化合物(1H-1)の製造]
(例13-1)
J.Org.Chem.,第64巻,1999年,p.2564-2566に記載の方法にしたがい、例1-1で得た化合物(11-1)を酸化して、化合物(13H-1)を得た。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-C(O)OH ・・・(13H-1)
【0220】
化合物(13H-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):4.2(2H)、5.8~6.0(1H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.8(42F)、-78.8(2F)、-80.5(1F)、-80.8(1F)、-82.2(3F)、-85.3~-88.2(2F)、-89.4~-91.1(82F)、-130.5(2F)、-145.1(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(13H-1)の数平均分子量:4,150。
【0221】
(例13-2)
50mLナスフラスコに、例13-1で得た化合物(13H-1)の6.2gとメタノールの20mLを入れ、室温で12時間撹拌した。NMRから、化合物(13H-1)がすべて化合物(14H-1)に変換していることを確認した。溶媒を減圧留去することにより、化合物(14H-1)の6.2g(収率100%)を得た。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-C(O)OCH ・・・(14H-1)
【0222】
化合物(14H-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):3.9(3H)、4.2(2H)、5.8~6.0(1H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.8(42F)、-77.8(1F)、-78.8(1F)、-79.5(1F)、-80.8(1F)、-82.2(3F)、-85.3~-88.2(2F)、-89.4~-91.1(82F)、-130.5(2F)、-145.1(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(14H-1)の数平均分子量:4,150。
【0223】
(例13-3)
化合物(14I-1)を例13-2で得た化合物(14H-1)の5.7gに、HN-CH-C(CHCH=CHの量を0.26gに変更した以外は例11-2と同様にして、化合物(17H-1)の4.8g(収率76%)を得た。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-C(O)NH-CH-C(CHCH=CH ・・・(17H-1)
【0224】
化合物(17H-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):2.2(6H)、3.3(2H)、3.5(1H)、4.2(2H)、5.2(6H)、5.8~6.0(4H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.8(42F)、-78.8(2F)、-79.6(1F)、-80.8(1F)、-82.2(3F)、-85.3~-88.2(2F)、-89.4~-91.1(82F)、-130.5(2F)、-145.1(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(17H-1)の数平均分子量:4,250。
【0225】
(例13-4)
化合物(17I-1)を例13-3で得た化合物(17H-1)の3.5gに、白金錯体溶液の量を0.03gに、HSi(OCHの量を0.5gに、ジメチルスルホキシドの量を0.01gに、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(東京化成工業社製)の量を0.35gに変更した以外は例11-3と同様にして、化合物(1H-1)の3.8g(収率100%)を得た。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-C(O)NH-CH-C[CHCHCH-Si(OCH ・・・(1H-1)
【0226】
化合物(1H-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.75(6H)、1.3~1.6(12H)、3.4(2H)、3.7(27H)、5.8~6.0(1H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.8(42F)、-78.8(2F)、-79.6(1F)、-80.8(1F)、-82.2(3F)、-85.3~-88.2(2F)、-89.4~-91.1(82F)、-130.5(2F)、-145.1(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(1H-1)の数平均分子量:4,600。
【0227】
[例14:化合物(1H-2)の製造]
(例14-1)
N-CH-C(CHCH=CHの0.26gの代わりに、HN-C(CHCH=CHの0.24gを用いた以外は例13-3と同様にして、化合物(17H-2)の4.7g(収率80%)を得た。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-C(O)NH-C(CHCH=CH ・・・(17H-2)
【0228】
化合物(17H-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):2.4(6H)、3.5(1H)、5.2(6H)、5.8~6.0(4H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.8(42F)、-78.8(2F)、-79.6(1F)、-80.8(1F)、-82.2(3F)、-85.3~-88.2(2F)、-89.4~-91.1(82F)、-130.5(2F)、-145.1(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(17H-2)の数平均分子量:4,250。
【0229】
(例14-2)
化合物(17H-1)を例14-1で得た化合物(17H-2)に変更した以外は例13-4と同様にして、化合物(1H-2)の3.8g(収率100%)を得た。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-C(O)NH-C[CHCHCH-Si(OCH ・・・(1H-2)
【0230】
化合物(1H-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.75(6H)、1.3~1.7(12H)、3.4(2H)、3.7(27H)、5.8~6.0(1H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.8(42F)、-78.8(2F)、-79.6(1F)、-80.8(1F)、-82.2(3F)、-85.3~-88.2(2F)、-89.4~-91.1(82F)、-130.5(2F)、-145.1(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(1H-2)の数平均分子量:4,600。
【0231】
[例15:化合物(1K-1)の製造]
(例15-1)
50mLのナスフラスコに、CF=CFOCFCFCF-C(O)OCHの1.0gおよびHN-CH-C(CHCH=CHの0.55gを入れ、12時間撹拌した。NMRから、CF=CFOCFCFCF-C(O)OCHがすべて化合物(30-1)に変換していることを確認した。また、副生物であるメタノールが生成していた。得られた溶液をAE-3000の6.0gで希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:AE-3000)で精製し、化合物(30-1)の1.3g(収率84%)を得た。
CF=CFOCFCFCF-C(O)NH-CH-C(CHCH=CH ・・・(30-1)
【0232】
化合物(30-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):2.1(6H)、3.4(2H)、5.2(6H)、5.9~6.2(3H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-84.2(2F)、-113.4~114.2(1F)、-119.5(2F)、-121.1~-121.9(1F)、-125.3(2F)、-134.5~-135.3(1F)。
【0233】
(例15-2)
50mLのナスフラスコに、例15-1で得た化合物(30-1)の1.0g、例1-1で得た化合物(11-1)の10g、48質量%水酸化カリウム水溶液の2g、(CHCOHの0.1gを加え、60℃で5時間撹拌した。NMRで化合物(11-1)がすべて化合物(17K-1)に変換していることを確認した。得られた溶液に1N塩酸の20gを加え、水層が酸性になっていることを確認した後、有機層を分離し、溶媒を留去することで、化合物(17K-1)の11g(収率100%)を得た。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CFCHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-CH-C(CHCH=CH ・・・(17K-1)
【0234】
化合物(17K-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):2.2(6H)、3.3(2H)、3.5(1H)、4.2(4H)、5.2(6H)、5.8~6.0(5H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.8(42F)、-78.8(2F)、-79.6(1F)、-80.8(1F)、-82.2(3F)、-84.2(2F)、-85.3~-88.2(2F)、-89.4~-91.1(82F)、-119.5(2F)、-125.3(2F)、-130.5(4F)、-145.1(2F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(17K-1)の数平均分子量:4,520。
【0235】
(例15-3)
化合物(17I-1)を例15-2で得た化合物(17K-1)の5gに、白金錯体溶液の量を0.5mgに、HSi(OCHの量を0.5gに、ジメチルスルホキシドの量を0.01gに、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(東京化成工業社製)の量を0.2gに変更した以外は例11-3と同様にして、化合物(1K-1)の5.4g(収率100%)を得た。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CFCHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-CH-C[CHCHCH-Si(OCH ・・・(1K-1)
【0236】
化合物(1K-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.75(6H)、1.3~1.6(12H)、3.3(2H)、3.5(27H)、4.2(4H)、5.8~6.0(2H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.8(42F)、-78.8(2F)、-79.6(1F)、-80.8(1F)、-82.2(3F)、-84.2(2F)、-85.3~-88.2(2F)、-89.4~-91.1(82F)、-119.5(2F)、-125.3(2F)、-130.5(4F)、-145.1(2F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(1K-1)の数平均分子量:4,950。
【0237】
[例16:化合物(1G-1)の製造]
(例16-1)
国際公開第2014/163004号の実施例4に記載の方法にしたがい、化合物(14-1)を得た。
CFCFCF-O-(CFCFO)(CFCFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-C(O)OCH ・・・(14-1)
【0238】
化合物(14-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):3.9(3H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.8(42F)、-82.2(3F)、-89.4~-91.1(92F)、-130.5(2F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(14-1)の数平均分子量:4,230。
【0239】
(例16-2)
化合物(14I-1)を例16-1で得た化合物(14-1)の5.0gに、HN-CH-C(CHCH=CHの量を0.2gに変更した以外は例11-2と同様にして、化合物(17G-1)の4.4g(収率85%)を得た。
CFCFCF-O-(CFCFO)(CFCFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-C(O)NH-CH-C(CHCH=CH ・・・(17G-1)
【0240】
化合物(17G-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):2.2(6H)、3.3(2H)、3.5(1H)、5.2(6H)、5.8~6.0(3H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.8(42F)、-82.2(3F)、-89.4~-91.1(92F)、-130.8(2F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(17G-1)の数平均分子量:4,360。
【0241】
(例16-3)
化合物(17I-1)を例16-2で得た化合物(17G-1)の4gに、白金錯体溶液の量を0.4mgに、HSi(OCHの量を0.33gに、ジメチルスルホキシドの量を0.01gに、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(東京化成工業社製)の量を0.2gに変更した以外は例11-3と同様にして、化合物(1G-1)の4.3g(収率100%)を得た。
CFCFCF-O-(CFCFO)(CFCFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-C(O)NH-CH-C[CHCHCH-Si(OCH ・・・(1G-1)
【0242】
化合物(1G-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.75(6H)、1.3~1.6(12H)、3.4(2H)、3.7(27H)。 19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.8(42F)、-82.2(3F)、-89.4~-91.1(92F)、-130.8(2F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(1G-1)の数平均分子量:4,720。
【0243】
[例48:化合物(1D-2)の製造]
(例48-1)
50mLの3つ口フラスコ内に、ペンタエリスリトール(関東化学社製)の3.0g、48%NaOH水溶液の7.4g、ジメチルスルホキシドの10.8gを入れた。60℃に加熱し、5-ブロモ-1-ペンテン(東京化成工業社製)の11.5gを加え、4時間撹拌した。希塩酸水溶液で1回洗浄し、シクロペンチルメチルエーテル(関東化学社製)の16gを加え、有機相を回収した。回収した溶液をエバポレータで濃縮し、粗生成物の6.1gを得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=90/10(質量比))に展開して、HOCHC(CHOCHCHCHCH=CHの3.7g(収率49%)を分取した。
【0244】
(例48-2)
50mLのナスフラスコ内に、例48-1で得たHOCHC(CHOCHCHCHCH=CHの3.0g、AE-3000の9.0gおよび2,6-ルチジンの1.4gを入れ、窒素雰囲気下、0℃で(CFSOOの3.8gを滴下した。室温まで昇温し1時間撹拌した。反応終了後、水洗して有機相を回収し、エバポレータで濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:AE-3000)で精製して化合物(20-2)の4.2g(収率99%)を得た。
CFSOOCHC(CHOCHCHCHCH=CH ・・・(20-2)
【0245】
化合物(20-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):1.6(6H)、2.0(6H)、3.4(12H)、4.5(2H)、5.0(6H)、5.8(3H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-75.0(3F)。
【0246】
(例48-3)
25mLのナスフラスコ内に、例1-5で得た化合物(15-1)の8.9g、例48-2で得た化合物(20-2)の1.0g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの11gおよび炭酸セシウムの1.4gを入れ、窒素雰囲気下、80℃で8時間撹拌した。反応終了後、水洗して有機相を回収し、エバポレータで濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:AE-3000、次いでAE-3000/酢酸エチル=9/1(質量比))で精製して化合物(17D-2)の8.2g(収率85%)を得た。
CFCFCF-O-(CFCFO)(CFCFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCH-C(CHOCHCHCHCH=CH ・・・(17D-2)
【0247】
化合物(17D-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):1.6(6H)、2.1(6H)、3.4(6H)、3.5(6H)、3.7(2H)、3.9(2H)、4.8~5.0(6H)、5.8(3H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.4~-55.7(42F)、-77.2(1F)、-79.4(1F)、-82.2(3F)、-89.4~-91.1(90F)、-130.5(2F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(17D-2)の数平均分子量:4,540。
【0248】
(例48-4)
化合物(17-1)を例48-3で得た化合物(17D-2)に変更した以外は例1-8と同様にして、化合物(17D-2)の3つのビニル基がヒドロシリル化された化合物(1D-2)の2.1g(収率97%)を得た。ヒドロシリル化の転化率は100%であり、化合物(17D-2)は残存していなかった。ヒドロシリル化の選択率は100%であり、化合物(17D-2)の3つのビニル基の一部または全部がインナーオレフィン(-CH=CHCH)に異性化した副生物は副生しなかった。
CFCFCF-O-(CFCFO)(CFCFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCH-C[CHOCHCHCHCHCHSi(OCH ・・・(1D-2)
【0249】
化合物(1D-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.7(6H)、1.4-1.6(18H)、3.4(6H)、3.5(6H)、3.6(27H)、3.7(2H)、3.9(2H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-52.3~-55.6(42F)、-77.2(1F)、-79.4(1F)、-82.2(3F)、-89.4~-91.0(90F)、-130.5(2F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(1D-2)の数平均分子量:4,900。
【0250】
[例49:化合物(1E-2)の製造]
(例49-1)
化合物(15-1)を例1-1で得た化合物(11-1)の8.8gに変更した以外は例48-3と同様にして、化合物(17E-2)の7.9g(収率83%)を得た。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCH-C(CHOCHCHCHCH=CH ・・・(17E-2)
【0251】
化合物(17E-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):1.6(6H)、2.1(6H)、3.4(6H)、3.5(6H)、3.7(2H)、3.9(2H)、4.2(2H)、4.8~5.0(6H)、5.8~6.0(4H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-51.2~-54.6(42F)、-77.2(1F)、-77.7(1F)、-79.3(1F)、-79.7(1F)、-81.2(3F)、-84.3~-87.2(2F)、-87.9~-91.0(82F)、-129.4(2F)、-144.1(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(17E-1)の数平均分子量:4,490。
【0252】
(例49-2)
化合物(17D-2)を例49-1で得た化合物(17E-2)に変更した以外は例1-8と同様にして、化合物(17E-2)の3つのビニル基がヒドロシリル化された化合物(1E-2)の2.0g(収率92%)を得た。ヒドロシリル化の転化率は100%であり、化合物(17E-2)は残存していなかった。ヒドロシリル化の選択率は100%であり、化合物(17E-2)の3つのビニル基の一部または全部がインナーオレフィン(-CH=CHCH)に異性化した副生物は副生しなかった。
CFCFCF-O-CHFCFOCH-(CFO){(CFO)x1(CFCFO)x2}-CF-CHOCH-C[CHOCHCHCHCHCH-Si(OCH ・・・(1E-2)
【0253】
化合物(1E-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.7(6H)、1.4-1.6(18H)、3.4(6H)、3.5(6H)、3.6(27H)、3.7(2H)、3.9(2H)、4.2(2H)、5.8~6.0(1H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-51.2~-54.6(42F)、-77.2(1F)、-77.7(1F)、-79.3(1F)、-79.7(1F)、-81.2(3F)、-84.3~-87.2(2F)、-87.9~-91.0(82F)、-129.4(2F)、-144.1(1F)。
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、化合物(1E-2)の数平均分子量:4,850。
【0254】
[例50:化合物(1F-2)の製造]
(例50-1)
化合物(15-1)を例3-1で得た化合物(15C-1)の9.9gに変更した以外は例48-3と同様にして、化合物(17F-2)の8.8g(収率83%)を得た。
CF-O-(CFCFO-CFCFCFCFO)x3(CFCFO)-CFCFCF-CHOCH-C(CHOCHCHCHCH=CH ・・・(17F-2)
【0255】
化合物(17F-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):1.6(6H)、2.1(6H)、3.4(6H)、3.5(6H)、3.7(2H)、3.9(2H)、4.8~5.0(6H)、5.8(3H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-56.3(3F)、-84.0(54F)、-89.2(54F)、-91.4(2F)、-120.5(2F)、-126.6(52F)、-128.6(2F)。
単位数x3の平均値:13、化合物(17F-2)の数平均分子量:5,040。
【0256】
(例50-2)
化合物(17D-2)を例50-1で得た化合物(17F-2)に変更した以外は例1-8と同様にして、化合物(17F-2)の3つのビニル基がヒドロシリル化された化合物(1F-2)の2.1(収率98%)を得た。ヒドロシリル化の転化率は100%であり、化合物(17F-2)は残存していなかった。ヒドロシリル化の選択率は100%であり、化合物(17F-2)の3つのビニル基の一部または全部がインナーオレフィン(-CH=CHCH)に異性化した副生物は副生しなかった。
CF-O-(CFCFO-CFCFCFCFO)x3(CFCFO)-CFCFCF-CHOCH-C[CHOCHCHCHCHCH-Si(OCH ・・・(1F-2)
【0257】
化合物(1F-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.7(6H)、1.4-1.6(18H)、3.4(6H)、3.5(6H)、3.6(27H)、3.7(2H)、3.9(2H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:C) δ(ppm):-56.3(3F)、-84.0(54F)、-89.2(54F)、-91.4(2F)、-120.5(2F)、-126.6(52F)、-128.6(2F)。
単位数x3の平均値:13、化合物(1F-1)の数平均分子量:5,400。
【0258】
[例17~32および51~53:物品の製造および評価]
例1~16および48~50で得た各化合物または組成物を用いて基材の表面処理を行い、例17~32および51~53の物品を得た。表面処理方法として、各例について下記のドライコーティング法およびウェットコーティング法をそれぞれ用いた。基材としては化学強化ガラスを用いた。得られた物品について、下記の方法で評価した。結果を表1~4に示す。
【0259】
(ドライコーティング法)
ドライコーティングは、真空蒸着装置(ULVAC社製、VTR-350M)を用いて行った(真空蒸着法)。例1~16および48~50で得た各化合物または組成物の0.5gを真空蒸着装置内のモリブデン製ボートに充填し、真空蒸着装置内を1×10-3Pa以下に排気した。組成物を配置したボートを昇温速度10℃/分以下の速度で加熱し、水晶発振式膜厚計による蒸着速度が1nm/秒を超えた時点でシャッターを開けて基材の表面への成膜を開始させた。膜厚が約50nmとなった時点でシャッターを閉じて基材の表面への成膜を終了させた。組成物が堆積された基材を、200℃で30分間加熱処理し、AK-225にて洗浄することによって、基材の表面に表面処理層を有する物品を得た。
【0260】
(ウェットコーティング法)
例1~16および48~50で得た各化合物または組成物と、液状媒体としてのCOC(3M社製、ノベック(登録商標)7200)とを混合して、固形分濃度0.05%のコーティング液を調製した。コーティング液に基材をディッピングし、30分間放置後、基材を引き上げた(ディップコート法)。塗膜を200℃で30分間乾燥させ、AK-225にて洗浄することによって、基材の表面に表面処理層を有する物品を得た。
【0261】
(評価方法)
<接触角の測定方法>
表面層の表面に置いた、約2μLの蒸留水またはn-ヘキサデカンの接触角を、接触角測定装置(協和界面科学社製、DM-500)を用いて測定した。表面層の表面における異なる5箇所で測定を行い、その平均値を算出した。接触角の算出には2θ法を用いた。
【0262】
<初期接触角>
表面層について、初期水接触角および初期n-ヘキサデカン接触角を前記測定方法で測定した。評価基準は下記のとおりである。
初期水接触角:
◎(優) :115度以上。
○(良) :110度以上115度未満。
△(可) :100度以上110度未満。
×(不可):100度未満。
初期n-ヘキサデカン接触角:
◎(優) :66度以上。
○(良) :65度以上66度未満。
△(可) :63度以上65度未満。
×(不可):63度未満。
【0263】
<耐摩擦性>
表面層について、JIS L0849:2013(ISO 105-X12:2001)に準拠して往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)を用い、スチールウールボンスター(♯0000)を圧力:98.07kPa、速度:320cm/分で1万回往復させた後、水接触角を測定した。摩擦後の撥水性(水接触角)の低下が小さいほど摩擦による性能の低下が小さく、耐摩擦性に優れる。評価基準は下記のとおりである。
◎(優) :1万回往復後の水接触角の変化が5度以下。
○(良) :1万回往復後の水接触角の変化が5度超10度以下。
△(可) :1万回往復後の水接触角の変化が10度超20度以下。
×(不可):1万回往復後の水接触角の変化が20度超。
【0264】
<外観>
物品のヘーズをヘーズメータ(東洋精機社製)にて測定した。ヘーズが小さいほど含フッ素エーテル化合物が均一に塗布できており、外観に優れる。評価基準は下記のとおりである。
◎(優) :ヘーズが0.1%以下。
○(良) :ヘーズが0.1%超0.2%以下。
△(可) :ヘーズが0.2%超0.3%以下。
×(不可):ヘーズが0.3%超。
【0265】
<指紋汚れ除去性>
人工指紋液(オレイン酸とスクアレンとからなる液)を、シリコンゴム栓の平坦面に付着させた後、余分な油分を不織布(旭化成社製、ベンコット(登録商標)M-3)にて拭き取ることによって、指紋のスタンプを準備した。該指紋スタンプを表面層上に乗せ、荷重:9.8Nにて10秒間押しつけた。指紋が付着した箇所のヘーズをヘーズメータにて測定し、初期値とした。指紋が付着した箇所について、ティッシュペーパーを取り付けた往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)を用い、荷重:4.9Nにて拭き取りを行った。拭き取り一往復毎にヘーズの値を測定し、ヘーズが初期値から10%以下になる拭き取り回数を測定した。拭き取り回数が少ないほど指紋汚れを容易に除去でき、指紋汚れ拭き取り性に優れる。評価基準は下記のとおりである。
◎(優) :拭き取り回数が3回以下。
○(良) :拭き取り回数が4~5回。
△(可) :拭き取り回数が6~8回。
×(不可):拭き取り回数が9回以上。
【0266】
<耐光性>
表面層に対し、卓上型キセノンアークランプ式促進耐光性試験機(東洋精機社製、SUNTEST XLS+)を用いて、ブラックパネル温度:63℃にて、光線(650W/m、300~700nm)を500時間照射した後、水接触角を測定した。促進耐光試験後の水接触角の低下が小さいほど光による性能の低下が小さく、耐光性に優れる。評価基準は下記のとおりである。
◎(優) :促進耐光試験後の水接触角の変化が5度以下。
○(良) :促進耐光試験後の水接触角の変化が5度超10度以下。
△(可) :促進耐光試験後の水接触角の変化が10度超20度以下。
×(不可):促進耐光試験後の水接触角の変化が20度超。
【0267】
<潤滑性>
人工皮膚(出光テクノファイン社製、PBZ13001)に対する表面層の動摩擦係数を、荷重変動型摩擦摩耗試験システム(新東科学社製、HHS2000)を用い、接触面積:3cm×3cm、荷重:0.98Nの条件で測定した。動摩擦係数が小さいほど潤滑性に優れる。評価基準は下記のとおりである。
◎(優) :動摩擦係数が0.3以下。
○(良) :動摩擦係数が0.3超0.4以下。
△(可) :動摩擦係数が0.4超0.5以下。
×(不可):動摩擦係数が0.5超。
【0268】
【表1】
【0269】
【表2】
【0270】
【表3】
【0271】
【表4】
【0272】
一方の末端に加水分解性シリル基を3つ有する本化合物または本化合物を含む組成物を用いた例17~22、27~32および51~53は、撥水撥油性、耐摩擦性、外観、指紋汚れ除去性、耐光性および潤滑性に優れていた。
両末端に加水分解性シリル基を3つ有する化合物(2A-1)を含む組成物を用いた例23では、耐摩擦性、外観、指紋汚れ除去性および耐光性に劣った。指紋拭き取り性が劣る理由は、未反応の末端基が表面物性を低下させているためと考えられる。外観および耐摩擦性が劣る理由は、末端の非フッ素部分の凝集による均一性の低下によると考えられる。耐摩擦性が劣る理由は、両末端が基材に固定化されるためと考えられる。
ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖が分岐構造を有する化合物(4-1)を含む組成物を用いた例24では、分岐構造を有することによる分子運動性の低下によって潤滑性が大幅に低下し、それが一因で耐摩擦性も大きく低下したと考えられる。
一方の末端に加水分解性シリル基を1つしか有しない化合物(5-1)または化合物(5-2)を含む組成物を用いた例25、26では、耐摩擦性および耐光性に劣った。
【0273】
[例33~47:物品の製造および評価]
例1-1で単離された化合物(3A-1)を用意した。
例2-3で得た化合物(1B-1)を含む組成物を精製し、化合物(1B-1)を得た。
例7-3で得た化合物(2A-1)を含む組成物を精製し、化合物(2A-1)を得た。
【0274】
表5に示す割合にて化合物(1B-1)、化合物(2A-1)、化合物(3A-1)を混合して、組成物を調製した。各組成物を用い、上述したウェットコーティング法によって物品を製造した。物品について、接触角の測定、ならびに耐摩擦性および潤滑性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0275】
【表5】
【0276】
例33~37から、一方の末端に加水分解性シリル基を3つ有する本化合物に、両末端に加水分解性シリル基を3つ有する化合物(2A-1)を加えた場合、化合物(2A-1)の割合が40質量%未満であれば、表面層は実用的な性能を有することがわかった。化合物(2A-1)の割合が増えるにしたがって、耐摩擦性および潤滑性が低下する傾向が見られた。
例38~42から、一方の末端に加水分解性シリル基を3つ有する本化合物に、両末端に加水分解性シリル基を有しない化合物(3A-1)を加えた場合、化合物(3A-1)の割合が40質量%未満であれば、表面層は実用的な性能を有することがわかった。化合物(3A-1)の割合が増えるにしたがって、耐摩擦性が低下する傾向が見られた。
例43~47から、一方の末端に加水分解性シリル基を3つ有する本化合物に、両末端に加水分解性シリル基を3つ有する化合物(2A-1)および両末端に加水分解性シリル基を有しない化合物(3A-1)を同時に加えた場合、化合物(2A-1)および化合物(3A-1)の合計の割合が40質量%未満であれば、表面層は実用的な性能を有することがわかった。化合物(2A-1)および化合物(3A-1)の合計割合が増えるにしたがって、耐摩擦性が低下する傾向が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0277】
本発明の含フッ素エーテル化合物は、タッチパネルの、指で触れる面を構成する部材等の基材の表面に撥水撥油性を付与する表面処理に好適に用いることができる。
なお、2015年9月1日に出願された日本特許出願2015-171986号の明細書、特許請求の範囲および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。