(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156019
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】光伝送システムおよび光伝送システムの設計方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/25 20130101AFI20241024BHJP
H04B 10/079 20130101ALI20241024BHJP
【FI】
H04B10/25
H04B10/079
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146438
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2022532969の分割
【原出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 航平
(72)【発明者】
【氏名】関 剛志
(72)【発明者】
【氏名】須田 祥生
(72)【発明者】
【氏名】河原 光貴
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 健太
(72)【発明者】
【氏名】前田 英樹
(57)【要約】
【課題】トランスポンダにおける周波数の補正を最適に設計すること。
【解決手段】 送信機111と受信機112を有するトランスポンダを備える光伝送システム1Aであって、トランスポンダを備える送信側の局舎A100Aと、トランスポンダを備える受信側の局舎B100Bと、トランスポンダ以外の光伝送システム1Aの構成要素を通り、局舎A100Aと局舎B100Bとを接続する所定経路210と、所定経路210を用いて送信される信号をもとに、送信機111から送信される信号の周波数特性を補正する補正値を算出するサーバ150と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機と受信機を有するトランスポンダを備える光伝送システムであって、
前記トランスポンダを備える送信側の第1局舎と、
前記トランスポンダを備える受信側の第2局舎と、
前記トランスポンダ以外の光伝送システムの構成要素を通り、前記第1局舎と前記第2局舎とを接続する所定経路と、
前記所定経路を用いて送信される信号をもとに、前記送信機から送信される信号の周波数特性を補正する補正値を算出する算出部と、を備え、
前記算出部は、前記第2局舎の前記受信機に備えられるDSP(Digital Signal Processor)であり、前記送信機の側で確定した周波数補正の補正値を受信すると、その受信した補正値をもとに、前記送信機から送信される信号と前記受信機で受信される信号とをセットにして、周波数特性を最適化する
ことを特徴とする光伝送システム。
【請求項2】
送信機と受信機を有するトランスポンダを備える光伝送システムであって、
前記トランスポンダを備える送信側の第1局舎と、
前記トランスポンダおよびスペクトルアナライザを備える受信側の第2局舎と、
前記トランスポンダ以外の光伝送システムの構成要素を通り、前記第1局舎と前記第2局舎とを接続する所定経路と、
前記所定経路を用いて送信される信号をもとに、前記送信機から送信される信号の周波数特性を補正する補正値を算出する算出部と、を備え、
前記算出部は、さらに、前記所定経路を用いて送信される信号をもとに、前記スペクトルアナライザの測定結果に近づくように、前記受信機で受信される信号の周波数特性を補正する補正値を算出する
ことを特徴とする光伝送システム。
【請求項3】
前記第1局舎の前記トランスポンダの前記送信機の信号を、前記所定経路を介して前記第2局舎の前記トランスポンダの前記受信機が受信するともに、前記第2局舎の前記トランスポンダの前記送信機の信号を、前記所定経路を経由して前記第1局舎の前記トランスポンダの前記受信機が受信する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光伝送システム。
【請求項4】
基準トランスポンダを前記第2局舎に備え、
前記算出部は、前記基準トランスポンダの信号をもとに、前記送信機から送信される信号の周波数特性を補正する補正値を算出する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光伝送システム。
【請求項5】
前記算出部は、前記スペクトルアナライザの測定結果をもとに、前記送信機から送信される信号の周波数特性を補正する補正値を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の光伝送システム。
【請求項6】
送信機と受信機を有するトランスポンダを備える光伝送システムの設計方法であって、
前記トランスポンダを備える送信側の第1局舎と、
前記トランスポンダを備える受信側の第2局舎と、
前記トランスポンダ以外の光伝送システムの構成要素を通り、前記第1局舎と前記第2局舎とを接続する所定経路と、
前記所定経路を用いて送信される信号をもとに、前記送信機から送信される信号の周波数特性を補正する補正値を算出する算出部と、を備え、
前記算出部は、前記第2局舎の前記受信機に備えられるDSP(Digital Signal Processor)であり、前記送信機の側で確定した周波数補正の補正値を受信すると、その受信した補正値をもとに、前記送信機から送信される信号と前記受信機で受信される信号とをセットにして、周波数特性を最適化する工程を有する
ことを特徴とする光伝送システムの設計方法。
【請求項7】
送信機と受信機を有するトランスポンダを備える光伝送システムの設計方法であって、
前記トランスポンダを備える送信側の第1局舎と、
前記トランスポンダおよびスペクトルアナライザを備える受信側の第2局舎と、
前記トランスポンダ以外の光伝送システムの構成要素を通り、前記第1局舎と前記第2局舎とを接続する所定経路と、
前記所定経路を用いて送信される信号をもとに、前記送信機から送信される信号の周波数特性を補正する補正値を算出する算出部と、を備え、
前記算出部は、さらに、前記所定経路を用いて送信される信号をもとに、前記スペクトルアナライザの測定結果に近づくように、前記受信機で受信される信号の周波数特性を補正する補正値を算出する工程を有する
ことを特徴とする光伝送システムの設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送システムおよび光伝送システムの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送システムは、複数のノードがリンクによって相互に接続された光伝送レイヤを備える。この光伝送レイヤでは、光物理特性、および、アナログ制御特性が複雑に相互作用し、故障(異常)位置特定や原因特定が困難な故障(異常)が発生する。
【0003】
光伝送システムでは、光信号の送受信に電気信号処理を含むディジタルコヒーレント方式が活用されている。電気信号処理を実施可能な特性を活かし、送信機と受信機に用いられる光モジュール(光変調器、ICR:Integrated Coherent Receiverなど)および電気モジュール(ドライバアンプ、TIA:Trans-Impedance Amplifier、高周波ケーブルなど)の特性を、電気信号処理部にて補償することで、光信号品質を向上させる方式が提案されている(非特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A. Matsushita, et. al., “64-GBd PDM-256QAM and 92-GBd PDM-64QAM Signal Generation using Precise-Digital-Calibration aided by Optical-Equalization“, Proc. OFC2019, W4B.2.
【非特許文献2】A. Matsushita, et. al., “High-Spectral-Efficiency 600-Gbps/Carrier Transmission Using PDM-256QAM Format”, IEEE JLT, vol.37, no.2, Jan. 15, 2019.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、送信側、受信側において、設定すべきパラメータ、補正方法のバリエーションが複数あり、最適な設計が困難という課題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、本発明は、トランスポンダにおける周波数の補正を最適に設計することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、本発明は、送信機と受信機を有するトランスポンダを備える光伝送システムであって、
前記トランスポンダを備える送信側の第1局舎と、
前記トランスポンダを備える受信側の第2局舎と、
前記トランスポンダ以外の光伝送システムの構成要素を通り、前記第1局舎と前記第2局舎とを接続する所定経路と、
前記所定経路を用いて送信される信号をもとに、前記送信機から送信される信号の周波数特性を補正する補正値を算出する算出部と、を備え、
前記算出部は、前記第2局舎の前記受信機に備えられるDSP(Digital Signal Processor)であり、前記送信機の側で確定した周波数補正の補正値を受信すると、その受信した補正値をもとに、前記送信機から送信される信号と前記受信機で受信される信号とをセットにして、周波数特性を最適化する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トランスポンダにおける周波数の補正を最適に設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光伝送システムを示す構成図である。
【
図2】第1の実施形態に係る光伝送システムのサーバの機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【
図3】第1の実施形態に係る光伝送システムの電気モジュールの周波数特性例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る光伝送システムの電気信号の周波数特性例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る光伝送システムの補正した信号の周波数特性例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る光伝送システムの設計処理を示すフローチャートである。
【
図7】第1の実施形態に係る光伝送システムの設計処理の最適化サブルーチンである。
【
図8】第1の実施形態に係る光伝送システムのBERと基準値との関係を説明する図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る光伝送システムを示す構成図である。
【
図10】第2の実施形態に係る光伝送システムの設計処理を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の第3の実施形態に係る光伝送システムを示す構成図である。
【
図12】第3の実施形態に係る光伝送システムの設計処理を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の第4の実施形態に係る光伝送システムを示す構成図である。
【
図14】本発明の第5の実施形態に係る光伝送システムを示す構成図である。
【
図15】第5の実施形態に係る光伝送システムの光信号スペクトルを示す図である。
【
図16】第6の実施形態に係る光伝送システムを示す構成図である。
【
図17】第6の実施形態に係る光伝送システムの光信号スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)における光伝送システム等について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光伝送システムを示す構成図である。
図1に示すように、光伝送システム1は、局舎100A(第1局舎)と、局舎100B(第2局舎)とがトランスポンダ以外の光伝送システムの構成要素10を経由して繋がれている。
光伝送システムの構成要素10は、光合分波部、光クロスコネクト部、光増幅中継部、光ファイバ伝送路などである。
局舎100Aおよび局舎100Bは、トランスポンダ110と、サーバ150(算出部)と、を備える。
トランスポンダ110は、送信機(Tx)111と、受信機(Rx)112と、を備える。また、局舎100Aのトランスポンダ110は、さらに、クロスコネクト機能部113を備える。ただし、局舎100Bのトランスポンダ110が、クロスコネクト機能部113を備える構成でもよい。
【0011】
送信機(Tx)111は、電気信号生成部1111と、電気信号送信部1112と、備える。
受信機(Rx)112は、電気信号受信部1121と、電気信号生成部1122と、備える。
クロスコネクト機能部113は、受信機(Rx)112の信号を送信機(Tx)111に直結させるループバック経路200(第1経路)を形成する。
【0012】
本実施形態に係る光伝送システム1のサーバ150は、例えば
図2に示すような構成の物理装置であるコンピュータ900によって実現される。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る光伝送システム1のサーバ150の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ900は、CPU(Central Processing Unit)901、ROM(Read Only Memory)902、RAM903、HDD(Hard Disk Drive)904、入出力I/F(Interface)905、通信I/F906およびメディアI/F907を有する。
【0013】
CPU901は、ROM902またはHDD904に記憶されたプログラムに基づき作動し、
図1に示すサーバ150の制御部による制御を行う。ROM902は、コンピュータ900の起動時にCPU901により実行されるブートプログラムや、コンピュータ900のハードウェアに係るプログラム等を記憶する。
【0014】
CPU901は、入出力I/F905を介して、マウスやキーボード等の入力装置910、および、ディスプレイ等の出力装置911を制御する。CPU901は、入出力I/F905を介して、入力装置910からデータを取得するともに、生成したデータを出力装置911へ出力する。なお、プロセッサとしてCPU901とともに、GPU(Graphics Processing Unit)等を用いてもよい。
【0015】
HDD904は、CPU901により実行されるプログラムおよび当該プログラムによって使用されるデータ等を記憶する。通信I/F906は、通信網(例えば、NW(Network)920)を介して他の装置からデータを受信してCPU901へ出力し、また、CPU901が生成したデータを、通信網を介して他の装置へ送信する。
【0016】
メディアI/F907は、記録媒体912に格納されたプログラムまたはデータを読み取り、RAM903を介してCPU901へ出力する。CPU901は、目的の処理に係るプログラムを、メディアI/F907を介して記録媒体912からRAM903上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体912は、DVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto Optical disk)等の光磁気記録媒体、磁気記録媒体、導体メモリテープ媒体又は半導体メモリ等である。
【0017】
例えば、コンピュータ900が本実施形態に係る光伝送システム1のサーバ150として機能する場合、コンピュータ900のCPU901は、RAM903上にロードされたプログラムを実行することによりサーバ150の機能を実現する。また、HDD904には、RAM903内のデータが記憶される。CPU901は、目的の処理に係るプログラムを記録媒体912から読み取って実行する。この他、CPU901は、他の装置から通信網(NW920)を介して目的の処理に係るプログラムを読み込んでもよい。
【0018】
以下、上述のように構成された光伝送システム1の設計方法について説明する。
光通信システムに光伝送システム1を適用したことには、下記の技術的な背景がある。
光通信システムでは、光信号の送受信に電気信号処理を含むディジタルコヒーレント方式が活用されている。DSP(Digital Signal Processor)では高速な電気信号処理を実行可能であるため、送信機と受信機に用いられる光モジュール(光変調器、ICRなど)および電気モジュール(ドライバアンプ、TIA、高周波ケーブルなど)の特性を、電気信号処理部にて補償することで、光信号の品質を向上させることができる。
【0019】
図3は、光伝送システムの電気モジュールの周波数特性例を示す図である。横軸に周波(Frequency [GHz])、縦軸に増幅率(Amplitude[dB])をとる。
図3に示すように、電気モジュールの周波数特性は、高周波ほど減衰しやすいことが分かる。
【0020】
図4は、光伝送システムの電気信号の周波数特性例を示す図である。横軸に周波(Frequency [GHz])、縦軸に増幅率(Amplitude[dB])をとる。
図3に示す電気モジュールの周波数特性が分かっている場合、電気信号として、
図4に示す逆特性を持つ信号を与えることで、高周波成分を持ち上げることができる。
【0021】
図5は、補正した信号の周波数特性例を示す図である。横軸に周波(Frequency [GHz])、縦軸に増幅率(Amplitude[dB])をとる。
図3に示す電気モジュールの周波数特性を、
図4に示す逆特性を持つ信号を与えることで補正する。
図5に示すように、電気モジュールが、低周波から高周波にわたってフラットな周波数特性を有することで、信号品質を向上させることができる。
上記技術的な背景を踏まえ、光伝送システム1の周波数補正についてフローチャートにより説明する。
【0022】
図6は、光伝送システム1の設計処理を示すフローチャートである。本フローは、サーバ150の制御部がトランスポンダ(Transponder)110(
図1参照)の各部を制御する。
ステップS11で送信機(以下、Txという)111側を最適化するか否かを判別する。
Tx111側の最適化を行わない場合は、本フローの処理を終了する。ここで、Tx111側を最適化する場合は、受信機(以下、Rxという)112側の周波数補正は固定することになる。逆に、Rx112側を最適化する場合は、Tx111側の周波数補正は固定することになる。
【0023】
Tx111側の最適化を行う場合、ステップS12で受信機(以下、Rxという)112の電気信号受信部1121の機能をオンにする(この際、補正値は初期値のままとなる)。
ステップS13でトランスポンダ110のクロスコネクト機能部113(
図1参照)は、経路を切り替えてループバック経路200(
図1参照)を形成する。ループバック経路200は、Rx112の受信信号をTx111側に帰還させるループバック経路200を形成する。
【0024】
ステップS14では、Tx111の電気信号生成部1111が、周波数補正の補正値を確定する(
図7の最適化サブルーチン参照)。確定した補正値は、主にTx111の周波数特性を補正していることになる。
これにより、周波数特性が逆特性を持つ信号(
図4参照)を、周波数補正の補正値として設定することができる。
【0025】
ステップS15では、Tx111の電気信号送信部1112が、ループバック経路200を経由してRx112側に確定した周波数補正の補正値を送信する。
【0026】
ステップS16では、Rx112の電気信号受信部1121が、Tx111側で確定した周波数補正の補正値を受信する。
【0027】
ステップS17では、Rx112の電気信号生成部1122が、周波数補正の補正値を確定して(
図7の最適化サブルーチン参照)本フローの処理を終了する。確定した補正値は、主にRx112の周波数特性を補正していることになる。
【0028】
図7は、光伝送システム1の設計処理の最適化サブルーチンである。
図6のステップS14またはステップS17で呼び出され実行される。
まず、個別モジュール自体の周波数特性をオフラインの手段により入手することで、これを初期値とする(ステップS101)。
ステップS102で、信号のビットエラーレート(BER:Bit Error Rate)を取得する。
【0029】
ステップS103で、BERが所定の基準値(
図8参照)を達成しているか否かを判別する。
BERが所定の基準値を達成している場合(S103:Yes)、本ルーチンを終了して
図6のステップS14またはステップS17に戻る。
BERが所定の基準値を達成していない場合(S103:No)、ステップS104で周波数特性の補正値を変更してステップS102に戻る。
【0030】
図8は、BERと基準値との関係を説明する図である。横軸に周波数特性の補正値を取り、縦軸にBERをとる。
図8の符号a1は、初期値を示し、符号a2は、初期値から周波数特性を変更した次の状態を示し、符号a3は、BERの最小値(BERの基準値)を示す。
図8に示すように、サーバ150(
図1参照)は、いくつかの周波数特性を変更した状態におけるBERを記録する。最もBERが最小となる状態を、最適に近いBERの基準値とする。
【0031】
以上のように、本実施形態によれば、TxおよびRxを個別にそれぞれ最適化するために、ループバックを用いてトランスポンダ110単体で完結して補正している。ただし、実用の際には別局舎に存在するトランスポンダとペアになるため、Tx/Rxトータルで最適化されるとは限らない。
【0032】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態に係る光伝送システムを示す構成図である。
図1と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図9に示すように、光伝送システム1Aは、局舎100Aと、トランスポンダ以外の光伝送システムの構成要素10を通る経路210(第2経路)と、経路210を介して局舎100Aに接続される局舎100Bと、局舎100Bから局舎100AにBER情報をフィードバックするフィードバック経路220と、を備える。
【0033】
以下、上述のように構成された光伝送システム1Aの設計方法について説明する。
図10は、光伝送システム1Aの設計処理を示すフローチャートである。
ステップS21でTx111側を最適化するか否かを判別する。Tx111側の最適化を行わない場合は、本フローの処理を終了する。
Tx111側の最適化を行う場合、ステップS22でRx112の電気信号受信部1121(
図9参照)の機能をオンにする(この際、補正値は初期値のままとなる)。
ステップS23では、局舎100AのRx112の電気信号受信部1121は、フィードバック経路220で局舎100Bから局舎100AにフィードバックされたBER情報を受信する。
【0034】
ステップS24では、局舎100AのTx111の電気信号生成部1111が、周波数補正の補正値を確定する(
図7の最適化サブルーチン参照)。確定した補正値は、主にTx111の周波数特性を補正していることになる。
これにより、周波数特性が逆特性を持つ信号(
図4参照)を、周波数補正の補正値として設定することができる。
ステップS25では、局舎100BのTx111の電気信号送信部1112が、ループバック経路200を経由してRx112側に確定した周波数補正の補正値を送信する。
【0035】
ステップS26では、局舎100AのRx112の電気信号受信部1121が、Tx111側で確定した周波数補正の補正値を受信する。
ステップS27では、局舎100BのRx112の電気信号生成部1122が、周波数補正の補正値を確定する(
図7の最適化サブルーチン参照)。主にRx112の周波数特性を補正していることになる。
ステップS28で、局舎100AのRx112は、局舎100AのTx111にBER情報をフィードバックして本フローの処理を終了する。
【0036】
以上のように、第2の実施形態によれば、TxおよびRxを個別にそれぞれ最適化するために、トランスポンダ110以外の光伝送システムの構成要素10を介して、別局舎間のトランスポンダ110を接続し補正している。
【0037】
第2の実施形態は、トランスポンダ110以外の光伝送システムの構成要素10に内在する周波数特性も一緒に補正されることになる。このため、第1の実施形態と比べて、実際に主信号をやり取りするトランスポンダ110をペアで補正した場合は、Tx/Rxトータルで最適化されることになる効果がある。
【0038】
(第3の実施形態)
図11は、本発明の第3の実施形態に係る光伝送システムを示す構成図である。
図9と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図11に示すように、光伝送システム1Bは、局舎100Aと、トランスポンダ以外の光伝送システムの構成要素10を通る経路210と、経路210を介して局舎100Aに接続される局舎100Bと、を備える。
局舎100Bのトランスポンダ110のRx112は、
図9の電気信号受信部1121に代えて、DSPを有する電気信号受信部1121Aに変更している。
電気信号受信部1121Aは、Rx側DSPを用いて、TxおよびRxセットでの周波数特性を最適化する。
【0039】
以下、上述のように構成された光伝送システム1Bの設計方法について説明する。
図12は、光伝送システム1Bの設計処理を示すフローチャートである。
ステップS31でTx111側を最適化するか否かを判別する。Tx111側の最適化を行わない場合は、本フローの処理を終了する。
【0040】
ステップS32では、局舎100AのTx111の電気信号生成部1111が、周波数補正の補正値を確定する(
図7の最適化サブルーチン参照)。確定した補正値は、主にTx111の周波数特性を補正していることになる。
【0041】
これにより、周波数特性が逆特性を持つ信号(
図4参照)を、周波数補正の補正値として設定することができる。
【0042】
ステップS33では、局舎100BのTx111の電気信号送信部1112が、ループバック経路200を経由してRx112側に確定した周波数補正の補正値を送信する。
ステップS34では、局舎100AのRx112のDSPを有する電気信号受信部1121Aが、Tx111側で確定した周波数補正の補正値を受信する。
ステップS35では、局舎100BのRx112の電気信号生成部1122が、周波数補正の補正値を確定して本フローの処理を終了する(
図7の最適化サブルーチン参照)。主にRx112の周波数特性を補正していることになる。
【0043】
以上のように、第3の実施形態によれば、TxおよびRxセットでの周波数特性を、電気信号受信部1121AのRx側DSPにより最適化している。
第3の実施形態は、第1および第2の実施形態と比べて、どちらかを固定する処理フロー(例えば、
図10のステップS22の処理)がなくなるので、処理時間を約半減させることができる。
また、周波数特性の最適化フローの中で、送信側へのBERのフィードバックは不要(例えば、
図10のステップS28の処理)となる効果がある。
【0044】
(第4の実施形態)
図13は、本発明の第4の実施形態に係る光伝送システムを示す構成図である。
図9と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図13に示すように、光伝送システム1Cは、局舎100Aと、トランスポンダ以外の光伝送システムの構成要素10を通る経路210,230と、経路210,230(第2経路)を介して局舎100Aに接続される局舎100Bと、を備える。
【0045】
局舎100Aおよび局舎100Bは、トランスポンダ110およびサーバ150に加えて、さらに基準トランスポンダ120を備える。
基準トランスポンダ120は、周波数補正済の基準となる周波数信号を出力する。
【0046】
局舎100Aのトランスポンダ110のTx111は、経路210を経由して基準トランスポンダ120のRx122に接続される。また、局舎100Aのトランスポンダ110のRx112は、経路230を経由して基準トランスポンダ120のTx121に接続される。
【0047】
以上のように、第4の実施形態によれば、TxおよびRxを個別にそれぞれ最適化するために、基準トランスポンダ120を接続して補正している。局舎100Aのトランスポンダ110をTx/Rx同時に補正することが可能になる。
【0048】
(第5の実施形態)
図14は、本発明の第5の実施形態に係る光伝送システムを示す構成図である。
図13と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
<Tx側の補正>
図14に示すように、光伝送システム1Dは、局舎100Aと、トランスポンダ以外の光伝送システムの構成要素10を通る経路210と、経路210を介して局舎100Aに接続される局舎100Bと、を備える。
【0049】
局舎100Bは、トランスポンダ110およびサーバ150に加えて、さらにスペクトルアナライザ130を備える。
スペクトルアナライザ130は、受信信号の周波数スペクトルを測定する。
【0050】
図15は、光信号スペクトルを示す図である。横軸に周波(Frequency [GHz])、縦軸に周波数補正量をとる。
図15に示すように、理想的なTx信号形状に対して、トランスポンダ以外の光伝送システムの構成要素10を通って伝送された信号は、高周波数ほど成分が減衰したTx信号形状となっている。
図15の符号aに示すように、DSPによりTx高周波成分を補正する。
【0051】
以上のように、第5の実施形態によれば、<Tx側の補正>において、Tx側の周波数特性の補正手段として、BERではなく、スペクトルアナライザ130の周波数スペクトル測定結果を活用する。
近年、光伝送システムに組み込むための小型の光スペクトル測定モジュールが実現している。高周波ほど信号帯域が減衰するということは、光信号の光スペクトルが平坦ではなくなる。どれ位平坦ではないかをスペクトルアナライザ130で測定し、スペクトルアナライザ130の測定結果が平坦になることを目標に、Tx側の周波数特性を補正する。この際、送信側の光信号のデータ系列を、実データではなく、光スペクトルが平坦となるようなデータ列に変更してもよい。
【0052】
<Rx側の補正>
図16は、本発明の第6の実施形態に係る光伝送システムを示す構成図である。
図16に示すように、光伝送システム1Eは、局舎100Aと、トランスポンダ以外の光伝送システムの構成要素10を通る経路210と、経路210を介して局舎100Aに接続される局舎100Bと、を備える。
同じ光パワーを分岐するスペクトルアナライザ130は、受信信号の周波数スペクトルを測定する。
【0053】
図17は、光信号スペクトルを示す図である。横軸に周波(Frequency [GHz])、縦軸に周波数補正量をとる。
図17に示すように、理想的なRx信号形状に対して、トランスポンダ以外の光伝送システムの構成要素10を通って伝送された信号を受信すると、受信した信号は、高周波数ほど成分が減衰したRx信号形状となっている。
図17の符号bに示すように、DSPによりTx高周波成分を補正する。
【0054】
以上のように、第6の実施形態によれば、<Rx側の補正>において、Rx側の周波数特性の補正手段として、BERではなく、スペクトルアナライザ130の周波数スペクトル測定結果を活用する。
近年、光伝送システムに組み込むための小型の光スペクトル測定モジュールが実現している。スペクトルアナライザ130の周波数依存性は、Rx側周波数特性よりも一般的に十分に小さい。スペクトルアナライザ130の測定結果に近づくように、Rx側の周波数特性を補正する。この際、送信側のTx信号の出力を止めて、光増幅中継部で発生するASEノイズを利用してもよい(一般的に光増幅中継部に用いられるEDFAの周波数平坦性は、送受信機の電気モジュールを含む周波数特性よりも平坦である)。
【0055】
[効果]
以下、本発明に係る光伝送システム等の効果について説明する。
本実施形態の伝送システム1は、送信機111と受信機112を有するトランスポンダ110を備える光伝送システム1であって、受信機112の信号を送信機111に直結させる第1経路(ループバック経路200)と、第1経路を用いて送信される信号をもとに、送信機から送信される信号の周波数特性を補正する補正値を算出する算出部(サーバ900)と、を備えることを特徴とする。
【0056】
このようにすることで、TxおよびRxを個別にそれぞれ最適化するために、ループバックを用いてトランスポンダ110単体で完結して補正している。これにより、トランスポンダにおける周波数の補正を最適に設計することができる。
【0057】
また、光伝送システムにおいて、トランスポンダ110を備える送信側の第1局舎(局舎100A)と、トランスポンダ110を備える受信側の第2局舎(局舎100B)とを備え、第1経路に代えて、トランスポンダ以外の光伝送システムの構成要素を通る第2経路(経路210)を介して第1局舎と第2局舎とを接続することを特徴とする。
【0058】
このようにすることで、トランスポンダ110以外の光伝送システムの構成要素10を介して、別局舎間のトランスポンダ110を接続し補正している。トランスポンダ110以外の光伝送システムの構成要素10に内在する周波数特性も一緒に補正されることになる。このため、実際に主信号をやり取りするトランスポンダ110ペアで補正した場合は、Tx/Rxトータルで最適化されることになる効果がある。
【0059】
また、光伝送システムにおいて、第1局舎のトランスポンダの送信機の信号を、第2経路(経路210)を介して第2局舎のトランスポンダの受信機が受信するともに、第2局舎のトランスポンダの送信機の信号を、第2経路(経路230)を経由して第1局舎のトランスポンダの受信機が受信することを特徴とする。
【0060】
このようにすることで、トランスポンダ110以外の光伝送システムの構成要素10に内在する周波数特性も一緒に補正されることになる。このため、実際に主信号をやり取りするトランスポンダ110をペアで補正した場合は、Tx/Rxトータルで最適化されることになる効果がある。これにより、周波数の補正をより最適に設計することができる。
【0061】
また、光伝送システムにおいて、第2局舎から第1局舎にBER情報をフィードバックするフィードバック経路220を備えることを特徴とする。
【0062】
このようにすることで、周波数特性の最適化フローの中で、送信側へのBERのフィードバックは不要となる効果がある。
【0063】
また、光伝送システムにおいて、基準トランスポンダ120を第2局舎に備え、算出部は、基準トランスポンダ120の信号をもとに、送信機から送信される信号の周波数特性を補正する補正値を算出することを特徴とする。
【0064】
このようにすることで、基準トランスポンダ120を接続して補正することで、周波数の補正をより最適に設計することができる。また、局舎100Aのトランスポンダ110をTx/Rx同時に補正することが可能になる。
【0065】
また、光伝送システムにおいて、スペクトルアナライザ130を第2局舎に備え、算出部は、スペクトルアナライザ130の測定結果をもとに、送信機から送信される信号の周波数特性を補正する補正値を算出することを特徴とする。
【0066】
このようにすることで、BERではなく、スペクトルアナライザ130の周波数スペクトル測定結果を活用することができる。例えば、スペクトルアナライザ130の測定結果に近づくように、Rx側の周波数特性を補正する。
【0067】
なお、上記各実施形態では、光TDM技術を用いたネットワークとして、例えばPONに代表される通信用のデバイスおよび装置を活用した光伝送装置、光伝送システムに適用した場合を例に採り説明したが、外部装置との間で送受信される信号を終端し、制御主体となる光回線終端装置としてのOLTを有する第1光伝送装置と、前記制御主体に対して客体となる光回線終端装置としてのONUを有する複数の第2光伝送装置とが、少なくとも2本の光伝送路でリング状に接続され、2本の光伝送路を同一の2つのデータが互いに反対方向に経由するネットワークシステム、または光伝送装置であればどのような装置にも適用できる。
【0068】
また、上記各実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上述文書中や図面中に示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0069】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行するためのソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SD(Secure Digital)カード、光ディスク等の記録媒体に保持することができる。
【符号の説明】
【0070】
1A,1B,1C,1D,1E 光伝送システム
10 トランスポンダ以外の光伝送システムの構成要素
100A 局舎A(第1局舎)
100B 局舎B(第2局舎)
110 トランスポンダ
111 送信機(Tx)
112 受信機(Rx)
113 クロスコネクト機能部
120 基準トランスポンダ
130 スペクトルアナライザ
150 サーバ(算出部)
200 ループバック経路(第1経路)
210,230 トランスポンダ以外の光伝送システムの構成要素を通る経路(第2経路)
220 フィードバック経路
1111 電気信号生成部
1112 電気信号送信部
1121,1121A 電気信号受信部
1122 電気信号生成部