(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015612
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】研磨方法および研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/30 20120101AFI20240130BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B24B37/30 E
H01L21/304 622K
H01L21/304 622R
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117791
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 治
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB01
3C158DA12
3C158EA13
3C158EB01
3C158ED00
5F057AA01
5F057AA31
5F057BA11
5F057CA11
5F057DA03
5F057DA38
5F057FA13
5F057FA19
5F057FA20
5F057FA36
5F057GA27
(57)【要約】
【課題】本発明は、ウェーハの上面から流体を流出させ、研磨ヘッドが適切な力をウェーハに加えることを可能とする研磨方法を提供する。
【解決手段】弾性膜34によって形成された複数の圧力室を有する研磨ヘッド1を用いたウェーハWの研磨方法であって、第1圧力室内に正圧を形成し、かつ第1圧力室の外側に位置する第2圧力室内に負圧を形成して、ウェーハWの上面と第1圧力室との間に存在する流体Qを外側に移動させた後、第2圧力室内に正圧を形成し、かつ第2圧力室の外側に位置する第3圧力室内に負圧を形成して、ウェーハWの上面と第2圧力室との間に存在する流体Qを外側に移動させ、複数の圧力室のうち最も外側に位置する圧力室内に正圧を形成して、ウェーハWの上面から流体Qを流出させた後、弾性膜34でウェーハWの下面を研磨面2aに押し付けて、ウェーハWの下面を研磨する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性膜によって形成された複数の圧力室を有する研磨ヘッドを用いたウェーハの研磨方法であって、
前記複数の圧力室は、
第1圧力室と、
前記第1圧力室の外側に位置する第2圧力室と、
前記第2圧力室の外側に位置する第3圧力室を含み、
前記第1圧力室内に正圧を形成し、かつ前記第2圧力室内に負圧を形成して、前記ウェーハの上面と前記第1圧力室との間に存在する流体を外側に移動させ、
その後、前記第2圧力室内に正圧を形成し、かつ前記第3圧力室内に負圧を形成して、前記ウェーハの前記上面と前記第2圧力室との間に存在する前記流体を外側に移動させ、
前記複数の圧力室のうち最も外側に位置する圧力室内に正圧を形成して、前記ウェーハの前記上面と、前記最も外側に位置する圧力室との間に存在する前記流体を外側に移動させて、前記ウェーハの前記上面から前記流体を流出させ、
その後、前記弾性膜で前記ウェーハの下面を研磨面に押し付けて、前記ウェーハの前記下面を研磨する、研磨方法。
【請求項2】
前記第1圧力室内に前記正圧の形成を開始するタイミングと、前記第2圧力室内に前記負圧の形成を開始するタイミングは同じであり、
前記第2圧力室内に前記正圧の形成を開始するタイミングと、前記第3圧力室内に前記負圧の形成を開始するタイミングは同じである、請求項1に記載の研磨方法。
【請求項3】
前記第2圧力室内に前記負圧を形成することは、前記第2圧力室内の圧力を負圧設定値まで下げ、その後、前記第2圧力室を大気開放することを含み、
前記第3圧力室内に前記負圧を形成することは、前記第3圧力室内の圧力を負圧設定値まで下げ、その後、前記第3圧力室を大気開放することを含む、請求項2に記載の研磨方法。
【請求項4】
前記第2圧力室内に前記負圧の形成を開始するタイミングは、前記第1圧力室内に前記正圧の形成を開始するタイミングよりも前であり、
前記第3圧力室内に前記負圧の形成を開始するタイミングは、前記第2圧力室内に前記正圧の形成を開始するタイミングよりも前である、請求項1に記載の研磨方法。
【請求項5】
前記第2圧力室内に前記負圧を形成することは、前記第2圧力室の圧力を負圧設定値まで下げ、その後、前記第2圧力室内の前記負圧を解消することを含み、前記第1圧力室内に前記正圧を形成することは、前記第2圧力室内の前記負圧を解消している間に行い、
前記第3圧力室内に前記負圧を形成することは、前記第3圧力室の圧力を負圧設定値まで下げ、その後、前記第3圧力室内の前記負圧を解消することを含み、前記第2圧力室内に前記正圧を形成することは、前記第3圧力室内の前記負圧を解消している間に行う、請求項4に記載の研磨方法。
【請求項6】
前記第1圧力室は、前記弾性膜の中央部に位置している、請求項1に記載の研磨方法。
【請求項7】
前記第1圧力室内に前記正圧を形成することは、前記第1圧力室内の圧力を第1正圧設定値まで上げ、その後、前記第1圧力室内の圧力を前記第1正圧設定値に維持することを含み、
前記第2圧力室内に前記正圧を形成することは、前記第2圧力室内の圧力を第2正圧設定値まで上げ、その後、前記第2圧力室内の圧力を前記第2正圧設定値に維持することを含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の研磨方法。
【請求項8】
基板を研磨する研磨装置であって、
弾性膜によって形成された複数の圧力室を有し、前記複数の圧力室で前記基板を研磨面に押し付ける研磨ヘッドと、
前記研磨装置の動作を制御する動作制御部を備え、
前記複数の圧力室は、
第1圧力室と、
前記第1圧力室の外側に位置する第2圧力室と、
前記第2圧力室の外側に位置する第3圧力室を含み、
前記動作制御部は、
前記第1圧力室内に正圧を形成し、かつ前記第2圧力室内に負圧を形成して、前記ウェーハの上面と前記第1圧力室との間に存在する流体を外側に移動させ、
その後、前記第2圧力室内に正圧を形成し、かつ前記第3圧力室内に負圧を形成して、前記ウェーハの前記上面と前記第2圧力室との間に存在する前記流体を外側に移動させ、
前記複数の圧力室のうち最も外側に位置する圧力室内に正圧を形成して、前記ウェーハの前記上面と、前記最も外側に位置する圧力室との間に存在する前記流体を外側に移動させて、前記ウェーハの前記上面から前記流体を流出させ、
その後、前記弾性膜で前記ウェーハの下面を研磨面に押し付けて、前記ウェーハの前記下面を研磨するように前記研磨装置を動作させるように構成されている、研磨装置。
【請求項9】
前記動作制御部は、
前記第1圧力室内に前記正圧の形成を開始するタイミングと、前記動作制御部が前記第2圧力室内に前記負圧の形成を開始するタイミングが同じとなるように前記研磨装置を動作させ、
前記動作制御部が前記第2圧力室内に前記正圧の形成を開始するタイミングと、前記動作制御部が前記第3圧力室内に前記負圧の形成を開始するタイミングが同じとなるように前記研磨装置を動作させるように構成されている、請求項8に記載の研磨装置。
【請求項10】
前記動作制御部は、
前記第2圧力室内に前記負圧を形成することが、前記第2圧力室内の圧力を負圧設定値まで下げ、その後、前記第2圧力室を大気開放することを含むように前記研磨装置を動作させ、
前記第3圧力室内に前記負圧を形成することが、前記第3圧力室内の圧力を負圧設定値まで下げ、その後、前記第3圧力室を大気開放することを含むように前記研磨装置を動作させるように構成されている、請求項9に記載の研磨装置。
【請求項11】
前記動作制御部は、
前記第2圧力室内に前記負圧の形成を開始するタイミングが、前記第1圧力室内に前記正圧の形成を開始するタイミングよりも前となるように前記研磨装置を動作させ、
前記動作制御部が前記第3圧力室内に前記負圧の形成を開始するタイミングが、前記第2圧力室内に前記正圧の形成を開始するタイミングよりも前となるように前記研磨装置を動作させるように構成されている、請求項8に記載の研磨装置。
【請求項12】
前記動作制御部は、
前記第2圧力室内に前記負圧を形成することが、前記第2圧力室の圧力を負圧設定値まで下げ、その後、前記第2圧力室内の前記負圧を解消することを含み、前記第1圧力室内に前記正圧を形成することを、前記第2圧力室内の前記負圧を解消している間に行うように前記研磨装置を動作させ、
前記第3圧力室内に前記負圧を形成することが、前記第3圧力室の圧力を負圧設定値まで下げ、その後、前記第3圧力室内の前記負圧を解消することを含み、前記第2圧力室内に前記正圧を形成することを、前記第3圧力室内の前記負圧を解消している間に行うように前記研磨装置を動作させるように構成されている、請求項11に記載の研磨装置。
【請求項13】
前記第1圧力室は、前記弾性膜の中央部に位置している、請求項8に記載の研磨装置。
【請求項14】
前記動作制御部は、
前記第1圧力室内に前記正圧を形成することが、前記第1圧力室内の圧力を第1正圧設定値まで上げ、その後、前記第1圧力室内の圧力を前記第1正圧設定値に維持することを含むように前記研磨装置を動作させ、
前記第2圧力室内に前記正圧を形成することが、前記第2圧力室内の圧力を第2正圧設定値まで上げ、その後、前記第2圧力室内の圧力を前記第2正圧設定値に維持することを含むように前記研磨装置を動作させるように構成されている、請求項8乃至13のいずれか一項に記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの上面から流体を流出させて、ウェーハを研磨する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
化学機械研磨(CMP)は、研磨面上に研磨液を供給しながら、ウェーハを研磨面に押し付け、研磨液の存在下でウェーハを研磨面に摺接させることで、ウェーハの表面を研磨する技術である。ウェーハの研磨中、ウェーハは研磨ヘッドによって研磨面に押し付けられる。ウェーハの表面は、研磨液の化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒および/または研磨パッドの機械的作用により平坦化される。
【0003】
図12は、研磨ヘッド100を模式的に示す断面図である。研磨ヘッド100は、ウェーハW1の上面に接触する弾性膜110を有する。この弾性膜110は、複数の圧力室101~104を形成する形状を有しており、それぞれの圧力室101~104内の圧力は独立に調節することが可能である。したがって、研磨ヘッド100は、これら圧力室101~104に対応するウェーハW1の複数の領域を異なる力で押し付けることができ、ウェーハW1の所望の膜厚プロファイルを達成することができる。
【0004】
ウェーハW1の研磨が終了すると、研磨されたウェーハW1は搬送装置によって次工程に搬送される。
図13に示すように、次のウェーハW2は、搬送装置によって研磨ヘッド100の下方の受け渡し位置に運ばれる。同時に、研磨ヘッド100は、洗浄ノズル115から供給される液体(例えば純水)で洗浄され、研磨ヘッド100から研磨液や研磨屑が除去される。そして、次のウェーハW2は、研磨ヘッド100に保持され、研磨ヘッド100により研磨面の上方位置に搬送される。ウェーハW2は、研磨ヘッド100により研磨面に押し付けられ、研磨液の存在下で研磨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
図14に示すように、ウェーハW2の上面と研磨ヘッド100の弾性膜110との間には、研磨ヘッド100の洗浄に使用された液体、あるいは空気などの流体Qが存在していることがある。ウェーハW2の上面と研磨ヘッド100との間に流体Qが存在していると、研磨ヘッド100は、圧力室101~104に対応するウェーハW2の複数の領域に対して、力を適切に加えることができない。例えば、流体Qが複数の圧力室にまたがって広がっていると、隣の圧力室内の圧力が流体Qに伝わり、意図しない力がウェーハW2に加わってしまう。
図14に示す例では、ウェーハW2の中央部の研磨レートを下げるために、中央の圧力室101内の圧力を下げたにもかかわらず、隣の圧力室102の圧力が流体Qを介してウェーハW2の中央部に加わる。結果として、ウェーハWの中央部の研磨レートを下げることができない。このように、ウェーハW2と研磨ヘッド100との間に存在する流体Qは、研磨ヘッド100が適切な力をウェーハW2に加えることを妨げてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、ウェーハの上面から流体を流出させ、研磨ヘッドが適切な力をウェーハに加えることを可能とする研磨方法および研磨装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、弾性膜によって形成された複数の圧力室を有する研磨ヘッドを用いたウェーハの研磨方法であって、前記複数の圧力室は、第1圧力室と、前記第1圧力室の外側に位置する第2圧力室と、前記第2圧力室の外側に位置する第3圧力室を含み、前記第1圧力室内に正圧を形成し、かつ前記第2圧力室内に負圧を形成して、前記ウェーハの上面と前記第1圧力室との間に存在する流体を外側に移動させ、その後、前記第2圧力室内に正圧を形成し、かつ前記第3圧力室内に負圧を形成して、前記ウェーハの前記上面と前記第2圧力室との間に存在する前記流体を外側に移動させ、前記複数の圧力室のうち最も外側に位置する圧力室内に正圧を形成して、前記ウェーハの前記上面と、前記最も外側に位置する圧力室との間に存在する前記流体を外側に移動させて、前記ウェーハの前記上面から前記流体を流出させ、その後、前記弾性膜で前記ウェーハの下面を研磨面に押し付けて、前記ウェーハの前記下面を研磨する、研磨方法が提供される。
【0009】
一態様では、前記第1圧力室内に前記正圧の形成を開始するタイミングと、前記第2圧力室内に前記負圧の形成を開始するタイミングは同じであり、前記第2圧力室内に前記正圧の形成を開始するタイミングと、前記第3圧力室内に前記負圧の形成を開始するタイミングは同じである。
一態様では、前記第2圧力室内に前記負圧を形成することは、前記第2圧力室内の圧力を負圧設定値まで下げ、その後、前記第2圧力室を大気開放することを含み、前記第3圧力室内に前記負圧を形成することは、前記第3圧力室内の圧力を負圧設定値まで下げ、その後、前記第3圧力室を大気開放することを含む。
【0010】
一態様では、前記第2圧力室内に前記負圧の形成を開始するタイミングは、前記第1圧力室内に前記正圧の形成を開始するタイミングよりも前であり、前記第3圧力室内に前記負圧の形成を開始するタイミングは、前記第2圧力室内に前記正圧の形成を開始するタイミングよりも前である。
一態様では、前記第2圧力室内に前記負圧を形成することは、前記第2圧力室の圧力を負圧設定値まで下げ、その後、前記第2圧力室内の前記負圧を解消することを含み、前記第1圧力室内に前記正圧を形成することは、前記第2圧力室内の前記負圧を解消している間に行い、前記第3圧力室内に前記負圧を形成することは、前記第3圧力室の圧力を負圧設定値まで下げ、その後、前記第3圧力室内の前記負圧を解消することを含み、前記第2圧力室内に前記正圧を形成することは、前記第3圧力室内の前記負圧を解消している間に行う。
【0011】
一態様では、前記第1圧力室は、前記弾性膜の中央部に位置している。
一態様では、前記第1圧力室内に前記正圧を形成することは、前記第1圧力室内の圧力を第1正圧設定値まで上げ、その後、前記第1圧力室内の圧力を前記第1正圧設定値に維持することを含み、前記第2圧力室内に前記正圧を形成することは、前記第2圧力室内の圧力を第2正圧設定値まで上げ、その後、前記第2圧力室内の圧力を前記第2正圧設定値に維持することを含む。
【0012】
一態様では、基板を研磨する研磨装置であって、弾性膜によって形成された複数の圧力室を有し、前記複数の圧力室で前記基板を研磨面に押し付ける研磨ヘッドと、前記研磨装置の動作を制御する動作制御部を備え、前記複数の圧力室は、第1圧力室と、前記第1圧力室の外側に位置する第2圧力室と、前記第2圧力室の外側に位置する第3圧力室を含み、前記動作制御部は、前記第1圧力室内に正圧を形成し、かつ前記第2圧力室内に負圧を形成して、前記ウェーハの上面と前記第1圧力室との間に存在する流体を外側に移動させ、その後、前記第2圧力室内に正圧を形成し、かつ前記第3圧力室内に負圧を形成して、前記ウェーハの前記上面と前記第2圧力室との間に存在する前記流体を外側に移動させ、前記複数の圧力室のうち最も外側に位置する圧力室内に正圧を形成して、前記ウェーハの前記上面と、前記最も外側に位置する圧力室との間に存在する前記流体を外側に移動させて、前記ウェーハの前記上面から前記流体を流出させ、その後、前記弾性膜で前記ウェーハの下面を研磨面に押し付けて、前記ウェーハの前記下面を研磨するように前記研磨装置を動作させるように構成されている、研磨装置が提供される。
【0013】
一態様では、前記動作制御部は、前記第1圧力室内に前記正圧の形成を開始するタイミングと、前記動作制御部が前記第2圧力室内に前記負圧の形成を開始するタイミングが同じとなるように前記研磨装置を動作させ、前記動作制御部が前記第2圧力室内に前記正圧の形成を開始するタイミングと、前記動作制御部が前記第3圧力室内に前記負圧の形成を開始するタイミングが同じとなるように前記研磨装置を動作させるように構成されている。
一態様では、前記動作制御部は、前記第2圧力室内に前記負圧を形成することが、前記第2圧力室内の圧力を負圧設定値まで下げ、その後、前記第2圧力室を大気開放することを含むように前記研磨装置を動作させ、前記第3圧力室内に前記負圧を形成することが、前記第3圧力室内の圧力を負圧設定値まで下げ、その後、前記第3圧力室を大気開放することを含むように前記研磨装置を動作させるように構成されている。
【0014】
一態様では、前記動作制御部は、前記第2圧力室内に前記負圧の形成を開始するタイミングが、前記第1圧力室内に前記正圧の形成を開始するタイミングよりも前となるように前記研磨装置を動作させ、前記動作制御部が前記第3圧力室内に前記負圧の形成を開始するタイミングが、前記第2圧力室内に前記正圧の形成を開始するタイミングよりも前となるように前記研磨装置を動作させるように構成されている。
一態様では、前記動作制御部は、前記第2圧力室内に前記負圧を形成することが、前記第2圧力室の圧力を負圧設定値まで下げ、その後、前記第2圧力室内の前記負圧を解消することを含み、前記第1圧力室内に前記正圧を形成することを、前記第2圧力室内の前記負圧を解消している間に行うように前記研磨装置を動作させ、前記第3圧力室内に前記負圧を形成することが、前記第3圧力室の圧力を負圧設定値まで下げ、その後、前記第3圧力室内の前記負圧を解消することを含み、前記第2圧力室内に前記正圧を形成することを、前記第3圧力室内の前記負圧を解消している間に行うように前記研磨装置を動作させるように構成されている。
【0015】
一態様では、前記第1圧力室は、前記弾性膜の中央部に位置している。
一態様では、前記動作制御部は、前記第1圧力室内に前記正圧を形成することが、前記第1圧力室内の圧力を第1正圧設定値まで上げ、その後、前記第1圧力室内の圧力を前記第1正圧設定値に維持することを含むように前記研磨装置を動作させ、前記第2圧力室内に前記正圧を形成することが、前記第2圧力室内の圧力を第2正圧設定値まで上げ、その後、前記第2圧力室内の圧力を前記第2正圧設定値に維持することを含むように前記研磨装置を動作させるように構成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の圧力室が形成された研磨ヘッドにおいて、隣接する圧力室のうちの内側の圧力室内に正圧を形成し、かつ外側の圧力室内に負圧を形成することで、ウェーハの上面に存在する流体を外側に移動させる。この動作をさらに外側で隣接する圧力室において順次行うことで、ウェーハの上面に存在する流体を外側に移動させる。さらに、最も外側に位置する圧力室内に正圧を形成することで、ウェーハの上面から流体を流出させることができる。その結果、圧力室を形成する弾性膜は、ウェーハに対して意図した力を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】研磨ヘッドの一実施形態を示す断面図である。
【
図3】
図1に示す研磨ヘッドにウェーハを搬送する搬送装置の上面図である。
【
図4】ウェーハの上面に流体が存在している様子を示す模式図である。
【
図5】研磨ヘッドの弾性膜がウェーハの上面に存在している流体を外側に移動させる様子を示す模式図である。
【
図6】研磨ヘッドの弾性膜がウェーハの上面に存在している流体をさらに外側に移動させる様子を示す模式図である。
【
図7】研磨ヘッドの弾性膜がウェーハの上面に存在している流体をさらに外側に移動させる様子を示す模式図である。
【
図8】研磨ヘッドの弾性膜がウェーハの上面に存在している流体を流出させる様子を示す模式図である。
【
図9】複数の圧力室内の圧力と時間の関係を示すグラフである。
【
図10】ウェーハの上面から流体を流出させる方法の他の実施形態に係る複数の圧力室内の圧力と時間の関係を示すグラフである。
【
図11】ウェーハの上面から流体を流出させる方法のさらに他の実施形態に係る複数の圧力室内の圧力と時間の関係を示すグラフである。
【
図13】研磨ヘッドが洗浄されている様子を説明する図である。
【
図14】ウェーハの上面と研磨ヘッドの弾性膜との間に存在する流体に起因する問題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド2を支持する研磨テーブル3と、ワークピースの一例であるウェーハWを研磨パッド2に押し付ける研磨ヘッド1と、研磨テーブル3を回転させるテーブルモータ6と、研磨パッド2上に研磨液(例えば、砥粒を含むスラリー)を供給するための研磨液供給ノズル5とを備えている。研磨パッド2の表面は、ウェーハWを研磨する研磨面2aを構成する。
【0019】
研磨テーブル3はテーブルモータ6に連結されており、研磨テーブル3および研磨パッド2を一体に回転させるように構成されている。研磨ヘッド1は、研磨ヘッドシャフト11の端部に固定されており、研磨ヘッドシャフト11は、ヘッドアーム15に回転可能に支持されている。ヘッドアーム15は、支軸16に回転可能に支持されている。研磨ヘッドシャフト11は、ヘッドアーム15内に配置された上下動機構18に連結されている。上下動機構18は、研磨ヘッドシャフト11をその軸方向に上下動させるように構成されている。上下動機構18による研磨ヘッドシャフト11の上下動により、研磨ヘッド1に保持されたウェーハWを研磨テーブル3上の研磨パッド2に対して近接および離間させることができる。
【0020】
研磨装置は、研磨装置の各構成要素の動作を制御する動作制御部9をさらに備えている。動作制御部9は、研磨ヘッド1、研磨テーブル3、研磨液供給ノズル5、および上下動機構18に電気的に接続されており、研磨ヘッド1、研磨テーブル3、研磨液供給ノズル5、および上下動機構18の動作を制御する。動作制御部9は、プログラムが格納された記憶装置9aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置9bを備えている。動作制御部9は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。記憶装置9aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置9bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、動作制御部9の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0021】
ウェーハWは次のようにして研磨される。動作制御部9は、研磨テーブル3、研磨ヘッド1、および研磨液供給ノズル5に指令を発して、研磨テーブル3および研磨ヘッド1を
図1の矢印で示す方向に回転させながら、研磨液供給ノズル5から研磨液が研磨テーブル3上の研磨パッド2の研磨面2aに供給させる。ウェーハWは研磨ヘッド1によって回転されながら、研磨パッド2とウェーハWとの間に研磨液が存在した状態で研磨ヘッド1によって研磨パッド2の研磨面2aに押し付けられる。ウェーハWの表面は、研磨液の化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒および/または研磨パッドの機械的作用により研磨される。
【0022】
次に、研磨ヘッド1について説明する。
図2は、研磨ヘッド1の一実施形態を示す断面図である。研磨ヘッド1は、研磨ヘッドシャフト11の端部に固定されたキャリア31と、キャリア31の下部に取り付けられた弾性膜34と、キャリア31の下方に配置されたリテーナリング32とを備えている。リテーナリング32は、弾性膜34の周囲に配置されている。このリテーナリング32は、ウェーハWの研磨中にウェーハWが研磨ヘッド1から飛び出さないようにするためにウェーハWを保持する環状の構造体である。
【0023】
弾性膜34は、ウェーハWの上面に接触可能な接触面35aを有する接触部35と、接触部35に接続された内壁部36a,36b,36cおよび外壁部36dを備えている。接触部35は、ウェーハWの上面と実質的に同じ大きさおよび同じ形状を有している。内壁部36a,36b,36cおよび外壁部36dは、同心状に配列された無端状の壁である。外壁部36dは内壁部36a,36b,36cの外側に位置しており、内壁部36a,36b,36cを囲むように配置されている。本実施形態では、3つの内壁部36a,36b,36cが設けられているが、本発明は本実施形態に限定されない。一実施形態では、2つの内壁部が設けられてもよく、あるいは4つ以上の内壁部が設けられてもよい。
【0024】
弾性膜34とキャリア31との間には、複数の(本実施形態では、4つの)圧力室25A,25B,25C,25Dが設けられている。圧力室25A,25B,25C,25Dは、弾性膜34の接触部35、内壁部36a,36b,36c、および外壁部36dによって形成されている。すなわち、圧力室25Aは内壁部36a内に位置し、圧力室25Bは内壁部36aと内壁部36bとの間に位置し、圧力室25Cは内壁部36bと内壁部36cとの間に位置し、圧力室25Dは内壁部36cと外壁部36dとの間に位置している。圧力室25A,25B,25C,25Dの大きさ、すなわち、弾性膜34の中心から内壁部36a,36b,36c、および外壁部36dまでの距離は、特に限定されない。例えば、弾性膜34の中心から内壁部36a,36b,36c、および外壁部36dが等間隔で配置されてもよいし、異なる間隔で配置されてもよい。
【0025】
弾性膜34の中央に位置する圧力室25Aは円形であり、他の圧力室25B,25C,25Dは環状である。これらの圧力室25A,25B,25C,25Dは、同心状に配列されている。圧力室25Bは圧力室25Aの外側に位置し、圧力室25Cは圧力室25Bの外側に位置し、圧力室25Dは圧力室25Cの外側に位置している。本実施形態では、弾性膜34は、4つの圧力室25A~25Dを形成するが、一実施形態では、弾性膜34は3つの圧力室を形成してもよく、あるいは5つ以上の圧力室を形成してもよい。
【0026】
キャリア31とリテーナリング32との間には、環状のメンブレン(ローリングダイヤフラム)37が配置されており、このメンブレン37の内部には圧力室25Eが形成されている。圧力室25A,25B,25C,25D,25Eにはそれぞれ気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5が連結されている。気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5は、研磨ヘッドシャフト11に取り付けられたロータリージョイント40を経由して延びている。
【0027】
気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5は、ロータリージョイント40の上流側において、気体供給ラインLa1,La2,La3,La4,La5にそれぞれ連結されている。気体供給ラインLa1,La2,La3,La4,La5は、研磨装置が設置されている工場に設けられたユーティリティ供給源としての圧縮気体供給源(図示せず)に連結されている。圧縮空気等の圧縮気体は、気体供給ラインLa1,La2,La3,La4,La5から気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5を通じて圧力室25A,25B,25C,25D,25Eにそれぞれ供給されるように構成されている。
【0028】
気体供給ラインLa1,La2,La3,La4,La5には、気体供給弁Va1,Va2,Va3,Va4,Va5および圧力レギュレータRa1,Ra2,Ra3,Ra4,Ra5がそれぞれ取り付けられている。気体供給弁Va1,Va2,Va3,Va4,Va5は、例えば、電磁弁、電動弁、またはエアオペレート弁などのアクチュエータ駆動型弁である。一実施形態では、気体供給弁Va1~Va5は手動であってもよい。気体供給弁Va1~Va5が開かれると、圧縮気体供給源からの圧縮気体は、圧力レギュレータRa1~Ra5を通って圧力室25A~25E内にそれぞれ独立に供給される。圧力レギュレータRa1~Ra5は、圧力室25A~25E内の圧縮気体の圧力を調節するように構成されている。
【0029】
気体供給弁Va1~Va5および圧力レギュレータRa1~Ra5は、動作制御部9に接続されている。気体供給弁Va1~Va5および圧力レギュレータRa1~Ra5の動作は、動作制御部9によって制御される。動作制御部9は、圧力室25A~25Eのそれぞれの目標圧力値を圧力レギュレータRa1~Ra5に送り、圧力レギュレータRa1~Ra5は、圧力室25A~25E内の圧力が対応する目標圧力値に維持されるように動作する。
【0030】
圧力レギュレータRa1~Ra5は、圧力室25A~25Eの内部圧力を互いに独立して変化させることが可能である。したがって、研磨ヘッド1は、ウェーハWの対応する4つの領域、すなわち、中央部、内側中間部、外側中間部、およびエッジ部に対する研磨圧力、およびリテーナリング32の研磨パッド2の研磨面2aに対する押圧力を独立に調節することができる。例えば、研磨ヘッド1は、ウェーハWの表面の異なる領域を異なる研磨圧力で研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付けることができる。したがって、研磨ヘッド1は、ウェーハWの膜厚プロファイルを制御して、目標とする膜厚プロファイルを達成することができる。
【0031】
さらに、気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5は、ロータリージョイント40の上流側において、真空ラインLb1,Lb2,Lb3,Lb4,Lb5にそれぞれ連結されている。圧縮空気等の圧縮気体は、気体供給ラインLa1,La2,La3,La4,La5から気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5を通じて圧力室25A,25B,25C,25D,25Eにそれぞれ供給される。真空ラインLb1,Lb2,Lb3,Lb4,Lb5には、真空弁Vb1,Vb2,Vb3,Vb4,Vb5および真空レギュレータRb1,Rb2,Rb3,Rb4,Rb5がそれぞれ取り付けられている。真空弁Vb1,Vb2,Vb3,Vb4,Vb5は、電磁弁、電動弁、またはエアオペレート弁などのアクチュエータ駆動型弁である。一実施形態では、真空弁Vb1~Vb5は手動であってもよい。
【0032】
真空弁Vb1~Vb5が開かれると、圧力室25A~25E内の圧縮気体は、圧力室25A~25E内から、気体移送ラインF1~F5および真空ラインLb1~Lb5を通じてそれぞれ独立に外部へ排出され、圧力室25A~25E内に負圧が形成される。真空レギュレータRb1~Rb5は、圧力室25A~25E内の真空圧力を調節するように構成されている。
【0033】
真空弁Vb1~Vb5および真空レギュレータRb1~Rb5は、動作制御部9に接続されている。真空弁Vb1~Vb5および真空レギュレータRb1~Rb5の動作は、動作制御部9によって制御される。研磨ヘッド1がウェーハWを保持するときは、弾性膜34の接触部35がウェーハWに接触した状態で、真空弁Vb1,Vb2,Vb3を開き、圧力室25A,25B,25C内に真空を形成する。これら圧力室25A,25B,25Cを形成する接触部35の部位は上方に窪み、研磨ヘッド1は弾性膜34の吸盤効果によりウェーハWを吸着することができる。また、この圧力室25A,25B,25Cに圧縮気体を供給して吸盤効果を解除すると、研磨ヘッド1はウェーハWをリリースすることができる。
【0034】
さらに、気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5は、ロータリージョイント40の上流側において、大気開放ラインLc1,Lc2,Lc3,Lc4,Lc5にそれぞれ連結されている。大気開放ラインLc1,Lc2,Lc3,Lc4,Lc5には、大気開放弁Vc1,Vc2,Vc3,Vc4,Vc5がそれぞれ取り付けられている。大気開放弁Vc1,Vc2,Vc3,Vc4,Vc5は、電磁弁、電動弁、またはエアオペレート弁などのアクチュエータ駆動型弁である。一実施形態では、大気開放弁Vc1~Vc5は手動であってもよい。大気開放弁Vc1~Vc5が開かれると、圧力室25A~25Eがそれぞれ独立に大気開放される。大気開放弁Vc1~Vc5は、動作制御部9に接続されている。大気開放弁Vc1~Vc5の動作は、動作制御部9によって制御される。一実施形態では、大気開放ラインLc1~Lc5および大気開放弁Vc1~Vc5は、設けられていなくてもよい。
【0035】
本実施形態では、気体移送ラインF1~F5を介して圧力室25A~25Eと連通する気体供給ラインLa1~La5、真空ラインLb1~Lb5、および大気開放ラインLc1~Lc5に、それぞれ気体供給弁Va1~Va5、真空弁Vb1~Vb5、および大気開放弁Vc1~Vc5が取り付けられている。一実施形態では、これら気体供給弁Va1~Va5、真空弁Vb1~Vb5、および大気開放弁Vc1~Vc5に代えて、三方弁が気体移送ラインF1~F5にそれぞれ取り付けられてもよい。この場合、三方弁を操作することで、気体移送ラインF1~F5を介して圧力室25A~25Eと連通するラインを、気体供給ラインLa1~La5、真空ラインLb1~Lb5、または大気開放ラインLc1~Lc5のいずれかに切り替えてもよい。
【0036】
図3は、
図1に示す研磨ヘッド1にウェーハWを搬送する搬送装置44の上面図である。
図3に示すように、ウェーハWは、搬送装置44によって研磨ヘッド1に搬送される。研磨ヘッド1は、
図3の実線で示す研磨位置P1と点線で示す受け渡し位置P2との間を移動可能とされている。より具体的には、ヘッドアーム15が支軸16を中心に回転することで、研磨ヘッド1は研磨位置P1と受け渡し位置P2との間を移動することができる。研磨位置P1は、研磨パッド2の研磨面2aの上方にあり、受け渡し位置P2は、研磨面2aの外側に位置している。
【0037】
搬送装置44は、ウェーハWが載置される搬送ステージ45と、搬送ステージ45を上下動させる昇降装置47と、搬送ステージ45および昇降装置47を一体に水平方向に移動させる水平移動装置49を備えている。研磨されるウェーハWは、搬送ステージ45上に置かれ、搬送ステージ45と共に水平移動装置49によって受け渡し位置P2に移動される。研磨ヘッド1が受け渡し位置P2にあるとき、昇降装置47は搬送ステージ45を上昇させる。研磨ヘッド1は搬送ステージ45上のウェーハWを保持し、ウェーハWと共に研磨位置P1に移動する。
【0038】
研磨液供給ノズル5は、回転する研磨パッド2の研磨面2aに研磨液を供給し、その一方で研磨ヘッド1は、ウェーハWを回転させながら、ウェーハWを研磨パッド2の研磨面2aに押し付け、ウェーハWを研磨面2aに摺接させる。ウェーハWの下面は、研磨液の化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒および/または研磨パッドの機械的作用により研磨される。
【0039】
ウェーハWの研磨後、研磨ヘッド1はウェーハWとともに受け渡し位置P2に移動する。そして、研磨ヘッド1は、研磨されたウェーハWを搬送ステージ45に渡す。搬送ステージ45は、ウェーハWを次工程に移動させる。受け渡し位置P2には、研磨ヘッド1に液体(例えば純水などのリンス液)を供給して研磨ヘッド1を洗浄する洗浄ノズル53が配置されている。洗浄ノズル53は、研磨ヘッド1を向いている。ウェーハWをリリースした研磨ヘッド1は、洗浄ノズル53から供給される液体によって洗浄される。
【0040】
研磨ヘッド1の洗浄中、次に研磨されるウェーハは、搬送ステージ45によって研磨ヘッド1の下方の受け取り位置P2に移動される。研磨ヘッド1の洗浄が終わると、昇降装置47は、次のウェーハが載置された搬送ステージ45を上昇させる。そして、洗浄された研磨ヘッド1は、次のウェーハを保持し、研磨位置P1に移動する。このようにして、複数のウェーハが連続的に研磨される。
【0041】
しかしながら、研磨ヘッド1の洗浄中、次に研磨されるウェーハは研磨ヘッド1の下方の受け取り位置P2に移動されるため、ウェーハの上面に液体が落下する。ウェーハの上面に存在する液体は、
図14を参照して説明したように、研磨ヘッド1が適切な力をウェーハに加えることを妨げてしまう。1つの解決策は、研磨ヘッド1の洗浄が終了した後に、次のウェーハを受け取り位置P2に移動させることである。しかしながら、このような動作は研磨装置のスループットを低下させてしまう。
【0042】
さらに、研磨ヘッド1が次のウェーハを保持するために、前述した弾性膜34の吸盤効果によってウェーハを吸着するときに、ウェーハの上面と研磨ヘッド1の弾性膜34との間に、空気などの気体が存在することがある。ウェーハの上面に存在する気体も、
図14を参照して説明したように、研磨ヘッド1が適切な力をウェーハに加えることを妨げてしまう。
【0043】
そこで、本実施形態では、次のようにしてウェーハの上面から流体を流出させる。
図4は、ウェーハWの上面に流体Qが存在している様子を示す模式図である。
図4では、研磨ヘッド1の詳細な構成の図示は省略されている。研磨すべきウェーハWを保持した研磨ヘッド1は、上下動機構18により、研磨パッド2の研磨面2a上にタッチダウンされる。研磨ヘッド1は、研磨面2a上にタッチダウンされると、ウェーハWを吸着するために圧力室25A,25B,25C内に形成されていた負圧を解消する。
図4は、研磨ヘッド1の圧力室25A,25B,25C内に形成されていた負圧が解消され、ウェーハWの上面、すなわちウェーハWと弾性膜34との間に流体Qが存在している様子を示している。
【0044】
本実施形態では、ウェーハWの研磨前に、研磨ヘッド1の弾性膜34により形成された複数の圧力室25A~25D内の圧力を順次変化させて、ウェーハWの上面に存在している流体Qを外側に移動させ、ウェーハWの上面から流体Qを流出させる。
図5乃至
図8は、研磨ヘッド1の弾性膜34がウェーハWの上面に存在している流体Qを外側に移動させて、ウェーハWの上面に存在している流体Qを流出させる様子を示す模式図である。
図9は、本実施形態における複数の圧力室25A~25D内の圧力と時間の関係を示すグラフである。
図9において、実線は、圧力室25A内の圧力の経時変化を示し、太線は、圧力室25B内の圧力の経時変化を示し、破線は、圧力室25C内の圧力の経時変化を示し、一点鎖線は、圧力室25D内の圧力の経時変化を示している。
【0045】
まず、
図5に示すように、研磨ヘッド1の中央に位置する圧力室25A内に正圧を形成し、かつ圧力室25Aの外側に位置する圧力室25B内に負圧を形成する。圧力室25Bは、圧力室25Aに隣接している。この圧力室25A内に正圧を形成し、かつ圧力室25B内に負圧を形成することは、
図9に示す時間T1の間に行われる。
図9に示すように、圧力室25A内に正圧の形成を開始するタイミングと、圧力室25B内に負圧の形成を開始するタイミングは同じである。時間T1の間に、圧力室25A内の圧力を正圧設定値PS1まで上げ、その後、圧力室25A内の圧力を正圧設定値PS1に維持する。時間T1の間に、圧力室25B内の圧力を負圧設定値NS1まで下げ、その後、圧力室25B内の負圧を解消する。
【0046】
より具体的には、時間T1の間に、動作制御部9は、気体供給弁Va1(
図2参照)に指令を発して、気体供給弁Va1を開き、気体移送ラインF1を介して気体供給ラインLa1と圧力室25Aを連通させ、圧力レギュレータRa1(
図2参照)に指令を発して、圧力室25A内に圧縮気体を供給し、圧力室25A内の圧力を正圧設定値PS1まで上げる。その後、圧力室25A内の圧力を正圧設定値PS1に維持する。時間T1の間に、動作制御部9は、真空弁Vb2(
図2参照)に指令を発して、真空弁Vb2を開き、気体移送ラインF2を介して真空ラインLb2と圧力室25Bを連通させ、真空レギュレータRb2(
図2参照)に指令を発して、圧力室25B内の圧力を負圧設定値NS1まで下げる。その後、動作制御部9は、真空弁Vb2に指令を発して、真空弁Vb2を閉じる。さらに、動作制御部9は、気体供給弁Va2(
図2参照)に指令を発して、気体供給弁Va2を開き、気体移送ラインF2を介して気体供給ラインLa2と圧力室25Bを連通させ、圧力レギュレータRa2(
図2参照)に指令を発して、圧力室25B内に圧縮気体を供給し、圧力室25B内の圧力を大気圧まで上げて負圧を解消する。
【0047】
図5に示すように、圧力室25A内に正圧を形成することにより、圧力室25Aを形成する弾性膜34の中央部は、ウェーハWの上面の中央部に接触する。圧力室25B内に負圧を形成することにより、弾性膜34のうち圧力室25Bを形成する部分は、上方に引き上げられ、ウェーハWの上面と圧力室25Bとの間に隙間が形成される。特に、圧力室25B内に負圧が形成されるに伴い、圧力室25Aと圧力室25Bとの間の内壁部36aが上方に持ち上がり、ウェーハWの上面と圧力室25Aとの間に存在する流体Qは外側に流れることができる。このように、時間T1の間に、圧力室25A内に正圧を形成し、かつ圧力室25B内に負圧を形成することにより、弾性膜34の中央部が、ウェーハWの上面と圧力室25Aとの間に存在する流体Qを外側に押し出して、ウェーハWの上面と圧力室25Bとの間の隙間に移動させる。圧力室25A内の正圧は維持されるので、外側に移動した流体Qは、圧力室25Aに向かって戻ることなく、ウェーハWの上面と圧力室25Bとの間に留まる。流体Qは、さらに外側に移動してもよく、ウェーハWの上面から流出してもよい。
【0048】
次に、
図6に示すように、研磨ヘッド1の圧力室25A内に正圧を形成したまま、圧力室25B内に正圧を形成し、圧力室25Bの外側に位置する圧力室25C内に負圧を形成する。圧力室25Cは、圧力室25Bに隣接している。この圧力室25B内に正圧を形成し、かつ圧力室25C内に負圧を形成することは、
図9に示す時間T2の間に行われる。
図9に示すように、圧力室25B内に正圧の形成を開始するタイミングと、圧力室25C内に負圧の形成を開始するタイミングは同じである。時間T2の間に、圧力室25B内の圧力を正圧設定値PS2まで上げ、その後、圧力室25B内の圧力を正圧設定値PS2に維持する。時間T2の間に、圧力室25C内の圧力を負圧設定値NS2まで下げ、その後、圧力室25C内の負圧を解消する。
【0049】
より具体的には、時間T2の間に、動作制御部9は、圧力レギュレータRa2に指令を発して、圧力室25B内に圧縮気体を供給し、圧力室25B内の圧力を正圧設定値PS2まで上げる。その後、圧力室25B内の圧力を正圧設定値PS2に維持する。時間T2の間に、動作制御部9は、真空弁Vb3(
図2参照)に指令を発して、真空弁Vb3を開き、気体移送ラインF3を介して真空ラインLb3と圧力室25Cを連通させ、真空レギュレータRb3(
図2参照)に指令を発して、圧力室25C内の圧力を負圧設定値NS2まで下げる。その後、動作制御部9は、真空弁Vb3に指令を発して、真空弁Vb3を閉じる。さらに、動作制御部9は、気体供給弁Va3(
図2参照)に指令を発して、気体供給弁Va3を開き、気体移送ラインF3を介して気体供給ラインLa3と圧力室25Cを連通させ、圧力レギュレータRa3(
図2参照)に指令を発して、圧力室25C内に圧縮気体を供給し、圧力室25C内の圧力を大気圧まで上げて負圧を解消する。
【0050】
図6に示すように、圧力室25B内に正圧を形成することにより、弾性膜34のうち圧力室25Bを形成する部分は、ウェーハWの上面に接触する。圧力室25C内に負圧を形成することにより、弾性膜34のうち圧力室25Cを形成する部分は、上方に引き上げられ、ウェーハWの上面と圧力室25Cとの間に隙間が形成される。特に、圧力室25C内に負圧が形成されるに伴い、圧力室25Bと圧力室25Cとの間の内壁部36bが上方に持ち上がり、ウェーハWの上面と圧力室25Bとの間に存在する流体Qは外側に流れることができる。このように、時間T2の間に、圧力室25B内に正圧を形成し、かつ圧力室25C内に負圧を形成することにより、弾性膜34のうち圧力室25Bを形成する部分が、ウェーハWの上面と圧力室25Bとの間に存在する流体Qを外側に押し出して、ウェーハWの上面と圧力室25Cとの間の隙間に移動させる。圧力室25B内の正圧は維持されるので、外側に移動した流体Qは、圧力室25Bに向かって戻ることなく、ウェーハWの上面と圧力室25Cとの間に留まる。流体Qは、さらに外側に移動してもよく、ウェーハWの上面から流出してもよい。
【0051】
次に、
図7に示すように、研磨ヘッド1の圧力室25A,25B内に正圧を形成したまま、圧力室25C内に正圧を形成し、圧力室25Cの外側に位置する圧力室25D内に負圧を形成する。圧力室25Dは、圧力室25Cに隣接している。この圧力室25C内に正圧を形成し、かつ圧力室25D内に負圧を形成することは、
図9に示す時間T3の間に行われる。
図9に示すように、圧力室25C内に正圧の形成を開始するタイミングと、圧力室25D内に負圧の形成を開始するタイミングは同じである。時間T3の間に、圧力室25C内の圧力を正圧設定値PS3まで上げ、その後、圧力室25C内の圧力を正圧設定値PS3に維持する。時間T3の間に、圧力室25D内の圧力を負圧設定値NS3まで下げ、その後、圧力室25D内の負圧を解消する。
【0052】
より具体的には、時間T3の間に、動作制御部9は、圧力レギュレータRa3に指令を発して、圧力室25C内に圧縮気体を供給し、圧力室25C内の圧力を正圧設定値PS3まで上げる。その後、圧力室25C内の圧力を正圧設定値PS3に維持する。時間T3の間に、動作制御部9は、真空弁Vb4(
図2参照)に指令を発して、真空弁Vb4を開き、気体移送ラインF4を介して真空ラインLb4と圧力室25Dを連通させ、真空レギュレータRb4(
図2参照)に指令を発して、圧力室25D内の圧力を負圧設定値NS3まで下げる。その後、動作制御部9は、真空弁Vb4に指令を発して、真空弁Vb4を閉じる。さらに、動作制御部9は、気体供給弁Va4(
図2参照)に指令を発して、気体供給弁Va4を開き、気体移送ラインF4を介して気体供給ラインLa4と圧力室25Dを連通させ、圧力レギュレータRa4(
図2参照)に指令を発して、圧力室25D内に圧縮気体を供給し、圧力室25D内の圧力を大気圧まで上げて負圧を解消する。
【0053】
図7に示すように、圧力室25C内に正圧を形成することにより、弾性膜34のうち圧力室25Cを形成する部分は、ウェーハWの上面に接触する。圧力室25D内に負圧を形成することにより、弾性膜34のうち圧力室25Dを形成する部分は、上方に引き上げられ、ウェーハWの上面と圧力室25Dとの間に隙間が形成される。特に、圧力室25D内に負圧が形成されるに伴い、圧力室25Cと圧力室25Dとの間の内壁部36cが上方に持ち上がり、ウェーハWの上面と圧力室25Cとの間に存在する流体Qは外側に流れることができる。このように、時間T3の間に、圧力室25C内に正圧を形成し、かつ圧力室25D内に負圧を形成することにより、弾性膜34のうち圧力室25Cを形成する部分が、ウェーハWの上面と圧力室25Cとの間に存在する流体Qを外側に押し出して、ウェーハWの上面と圧力室25Dとの間に移動させる。圧力室25C内の正圧は維持されるので、外側に移動した流体Qは、圧力室25Cに向かって戻ることなく、ウェーハWの上面と圧力室25Dとの間に留まる。流体Qは、さらに外側に移動してもよく、ウェーハWの上面から流出してもよい。
【0054】
次に、
図8に示すように、研磨ヘッド1の圧力室25A,25B,25C内に正圧を形成したまま、圧力室25D内に正圧を形成する。この圧力室25D内に正圧を形成することは、
図9に示す時間T4の間に行われる。
図9に示すように、時間T4の間に、圧力室25D内の圧力を正圧設定値PS4まで上げ、その後、圧力室25D内の圧力を正圧設定値PS4に維持する。より具体的には、時間T4の間に、動作制御部9は、圧力レギュレータRa4に指令を発して、圧力室25D内に圧縮気体を供給し、圧力室25D内の圧力を正圧設定値PS4まで上げる。その後、圧力室25D内の圧力を正圧設定値PS4に維持する。
【0055】
図8に示すように、最も外側の圧力室である圧力室25D内に正圧を形成することにより、弾性膜34のうち圧力室25Dを形成する部分は、ウェーハWの上面に接触する。したがって、時間T4の間に、弾性膜34のうち圧力室25Dを形成する部分が、ウェーハWの上面と圧力室25Dとの間に存在する流体Qを外側に押し出して、ウェーハWの上面から流体Qを流出させる。
【0056】
本実施形態では、隣接する圧力室25A,25Bのうちの内側の圧力室25A内に正圧を形成し、かつ外側の圧力室25B内に負圧を形成することで、ウェーハWの上面に存在する流体Qを外側に移動させることができる。この動作をさらに外側で隣接する圧力室25B,25C、およびさらに外側で隣接する圧力室25C,25Dにおいて順次行うことで、ウェーハWの上面に存在する流体Qをさらに外側に移動させる。さらに、最も外側に位置する圧力室25D内に正圧を形成することで、ウェーハWの上面から流体を流出させることができる。
【0057】
本実施形態によれば、研磨ヘッド1は、弾性膜34とウェーハWの上面との間に流体Qが実質的に存在しない状態で、ウェーハWを保持することができる。その後、ウェーハWの研磨条件に応じて、圧力室25A~25D内の圧力を制御しつつ、研磨ヘッド1の弾性膜34でウェーハWの下面を研磨面2aに押し付けて、ウェーハWの下面を研磨する。弾性膜34とウェーハWの上面との間に流体Qが実質的に存在しない状態で、弾性膜34でウェーハWの下面を研磨面2aに押し付けることにより、意図する力をウェーハWに加えることができる。結果的に、研磨ヘッド1はウェーハWの所望の膜厚プロファイルを達成することができる。弾性膜34とウェーハWの上面との間に流体Qが実質的に存在しない状態とは、流体Qが全く存在しない状態のみならず、研磨ヘッド1の圧力室25A~25Dが、対応するウェーハWの複数の領域に対して、適切な力を加えることができる程度に流体Qが流出した状態を含む。
【0058】
本実施形態では、正圧設定値PS1,PS2,PS3,PS4は同じ圧力値であるが、正圧設定値PS1,PS2,PS3,PS4は、異なる正の圧力値であってもよい。本実施形態では、負圧設定値NS1,NS2,NS3は同じ圧力値であるが、負圧設定値NS1,NS2,NS3は、異なる負の圧力値であってもよい。
【0059】
本実施形態では、時間T1~T4の長さは同じであるが、時間T1,T2,T3,T4の長さは、ウェーハWの上面に存在する流体Qを外側に移動させ、ウェーハWの上面から流体を流出させることができる限り、本実施形態に限らない。時間T1,T2,T3,T4の長さは、圧力室25A~25D内の体積、気体供給ラインLa1~La4から供給される圧縮気体の流量、真空ラインLb1~Lb4に排出される圧縮気体の流量などに基づいて、調整されてもよい。
【0060】
本実施形態では、初めに、隣接する圧力室25A,25Bのうちの内側の圧力室25A内に正圧を形成し、かつ外側の圧力室25B内に負圧を形成することで、ウェーハWの上面に存在する流体Qを外側に移動させたが、この動作を開始する隣接する2つの圧力室は、圧力室25A,25Bに限定されない。一実施形態では、ウェーハWの上面と圧力室25Aとの間に流体Qが存在せず、ウェーハWの上面と圧力室25Bとの間に流体Qが存在している場合、初めに、隣接する圧力室25B,25Cのうちの内側の圧力室25B内に正圧を形成し、かつ外側の圧力室25C内に負圧を形成することで、ウェーハWの上面と圧力室25Bとの間に存在する流体Qを外側に移動させてもよい。この場合、圧力室25A内には予め正圧が形成されている。この動作をさらに外側で隣接する圧力室25C,25Dにおいて順次行うことで、ウェーハWの上面に存在する流体Qをさらに外側に移動させる。さらに、最も外側に位置する圧力室25D内に正圧を形成することで、ウェーハWの上面から流体を流出させることができる。このように、動作を開始する隣接する2つの圧力室は、ウェーハWの上面に存在する流体Qの位置に応じて、適宜変更されてもよい。
【0061】
一実施形態では、弾性膜34は3つの圧力室25A,25B,25Cを形成しており、最も外側に位置する圧力室が圧力室25Cであってもよい。この場合、隣接する圧力室25A,25Bのうちの内側の圧力室25A内に正圧を形成し、かつ外側の圧力室25B内に負圧を形成することで、ウェーハWの上面に存在する流体Qを外側に移動させ、その後、さらに外側で隣接する圧力室25B,25Cのうちの内側の圧力室25B内に正圧を形成し、かつ外側の圧力室25C内に負圧を形成することで、ウェーハWの上面に存在する流体Qをさらに外側に移動させ、さらに、最も外側に位置する圧力室25C内に正圧を形成することで、ウェーハWの上面から流体を流出させてもよい。
【0062】
図10は、ウェーハWの上面から流体Qを流出させる方法の他の実施形態に係る複数の圧力室25A~25D内の圧力と時間の関係を示すグラフである。特に説明しない本実施形態の詳細は、上述した実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、圧力室25B,25C,25D内の圧力を負圧設定値NS1,NS2,NS3まで下げた後、圧力室25B,25C,25Dを大気開放することにより、圧力室25B,25C,25D内の負圧を解消する。
【0063】
時間T1の間に、圧力室25A内に正圧を形成し、かつ圧力室25B内の圧力を負圧設定値NS1まで下げ、その後、圧力室25Bを大気開放する。圧力室25A内に正圧を形成する動作は、
図5乃至
図9を参照して説明した実施形態と同様である。より具体的には、時間T1の間に、動作制御部9は、真空弁Vb2に指令を発して、真空弁Vb2を開き、気体移送ラインF2を介して真空ラインLb2と圧力室25Bを連通させ、真空レギュレータRb2に指令を発して、圧力室25B内の圧力を負圧設定値NS1まで下げる。その後、動作制御部9は、真空弁Vb2に指令を発して、真空弁Vb2を閉じる。さらに、大気開放弁Vc2(
図2参照)に指令を発して、大気開放弁Vc2を開いて圧力室25Bを大気開放する。
【0064】
さらに、時間T2の間に、圧力室25B内に正圧を形成し、かつ圧力室25C内の圧力を負圧設定値NS2まで下げ、その後、圧力室25Cを大気開放する。圧力室25B内に正圧を形成する動作は、
図5乃至
図9を参照して説明した実施形態と同様である。より具体的には、時間T2の間に、動作制御部9は、真空弁Vb3に指令を発して、真空弁Vb3を開き、気体移送ラインF3を介して真空ラインLb3と圧力室25Cを連通させ、真空レギュレータRb3に指令を発して、圧力室25C内の圧力を負圧設定値NS2まで下げる。その後、動作制御部9は、真空弁Vb3に指令を発して、真空弁Vb3を閉じる。さらに、大気開放弁Vc3(
図2参照)に指令を発して、大気開放弁Vc3を開いて圧力室25Cを大気開放する。
【0065】
さらに、時間T3の間に、圧力室25C内に正圧を形成し、かつ圧力室25D内の圧力を負圧設定値NS3まで下げ、その後、圧力室25Dを大気開放する。圧力室25C内に正圧を形成する動作は、
図5乃至
図9を参照して説明した実施形態と同様である。より具体的には、時間T3の間に、動作制御部9は、真空弁Vb4に指令を発して、真空弁Vb4を開き、気体移送ラインF4を介して真空ラインLb4と圧力室25Dを連通させ、真空レギュレータRb4に指令を発して、圧力室25D内の圧力を負圧設定値NS3まで下げる。その後、動作制御部9は、真空弁Vb4に指令を発して、真空弁Vb4を閉じる。さらに、大気開放弁Vc4(
図2参照)に指令を発して、大気開放弁Vc4を開いて圧力室25Dを大気開放する。
【0066】
さらに、時間T4の間に、圧力室25D内に正圧を形成する。圧力室25D内に正圧を形成する動作は、
図5乃至
図9を参照して説明した実施形態と同様である。
【0067】
大気開放による圧力室25B,25C,25D内の負圧の解消は、圧縮気体を供給することによる圧力室25B,25C,25D内の負圧の解消よりも、短時間で行うことができる。上述した実施形態では、
図9に示すように、圧力室25B内に圧縮気体を供給して、圧力室25B内の負圧を解消する場合、時間A1を要する。これに対して、本実施形態では、
図10に示すように、圧力室25Bを大気開放して、圧力室25B内の負圧を解消する場合、時間A1よりも短い時間B1で行うことができる。
【0068】
圧力室25Cにおいても同様に、圧力室25Cを大気開放して、圧力室25C内の負圧を解消するのに要する時間B2(
図10参照)は、圧力室25C内に圧縮気体を供給して、圧力室25C内の負圧を解消するのに要する時間A2(
図9参照)よりも短い。圧力室25Dにおいても同様に、圧力室25Dを大気開放して、圧力室25D内の負圧を解消するのに要する時間B3(
図10参照)は、圧力室25D内に圧縮気体を供給して、圧力室25D内の負圧を解消するのに要する時間A3(
図9参照)よりも短い。
【0069】
本実施形態によれば、圧力室25C内の負圧を解消するのに要する時間A1,A2,A3を時間B1,B2,B3に短縮することができるため、ウェーハWの上面から流体Qを流出させるのに要する全体の時間を短縮することができる。
【0070】
図11は、ウェーハWの上面から流体Qを流出させる方法のさらに他の実施形態に係る複数の圧力室25A~25D内の圧力と時間の関係を示すグラフである。特に説明しない本実施形態の詳細は、
図5乃至
図9を参照して説明した実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、隣接する圧力室のうちの外側の圧力室内に負圧の形成を開始するタイミングは、内側の圧力室内に正圧の形成を開始するタイミングよりも前である。
【0071】
図11に示すように、本実施形態では、圧力室25B内に負圧の形成を開始するタイミングは、圧力室25A内に正圧の形成を開始するタイミングよりも前である。具体的には、時間T0の間に、圧力室25B内の圧力を負圧設定値NS1まで下げる。その後、時間T1の間に、圧力室25B内の負圧を解消するとともに、圧力室25A内の圧力を正圧設定値PS1まで上げる。その後、圧力室25A内の圧力を正圧設定値PS1に維持する。したがって、時間T1の間に、研磨ヘッド1の中央に位置する圧力室25A内に正圧が形成され、かつ圧力室25Aの外側に位置する圧力室25B内に負圧が形成される。
【0072】
より具体的には、時間T0の間に、動作制御部9は、真空弁Vb2に指令を発して、真空弁Vb2を開き、気体移送ラインF2を介して真空ラインLb2と圧力室25Bを連通させ、真空レギュレータRb2に指令を発して、圧力室25B内の圧力を負圧設定値NS1まで下げる。その後、時間T1の間に、動作制御部9は、真空弁Vb2に指令を発して、真空弁Vb2を閉じる。さらに、動作制御部9は、気体供給弁Va2に指令を発して、気体供給弁Va2を開き、気体移送ラインF2を介して気体供給ラインLa2と圧力室25Bを連通させ、圧力レギュレータRa2に指令を発して、圧力室25B内に圧縮気体を供給し、圧力室25B内の圧力を大気圧まで上げて負圧を解消する。時間T1の間に、動作制御部9は、気体供給弁Va1に指令を発して、気体供給弁Va1を開き、気体移送ラインF1を介して気体供給ラインLa1と圧力室25Aを連通させ、圧力レギュレータRa1に指令を発して、圧力室25A内に圧縮気体を供給し、圧力室25A内の圧力を正圧設定値PS1まで上げる。その後、圧力室25A内の圧力を正圧設定値PS1に維持する。
【0073】
本実施形態では、時間T1において、圧力室25B内の負圧を解消している間に、圧力室25A内に正圧を形成する。圧力室25B内の負圧を解消している間も、圧力室25B内は負圧であるので、時間T1の間に、ウェーハWの上面と圧力室25Aとの間に存在する流体Qを外側に押し出して、ウェーハWの上面と圧力室25Bとの間の隙間に移動させることができる(
図5参照)。
【0074】
さらに、本実施形態では、圧力室25C内に負圧の形成を開始するタイミングは、圧力室25B内に正圧の形成を開始するタイミングよりも前である。具体的には、時間T1の間に、圧力室25C内の圧力を負圧設定値NS2まで下げる。その後、時間T2の間に、圧力室25C内の負圧を解消するとともに、圧力室25B内の圧力を正圧設定値PS2まで上げる。その後、圧力室25B内の圧力を正圧設定値PS2に維持する。したがって、時間T2の間に、圧力室25B内に正圧が形成され、かつ圧力室25Bの外側に位置する圧力室25C内に負圧が形成される。
【0075】
より具体的には、時間T1の間に、動作制御部9は、真空弁Vb3に指令を発して、真空弁Vb3を開き、気体移送ラインF3を介して真空ラインLb3と圧力室25Cを連通させ、真空レギュレータRb3に指令を発して、圧力室25C内の圧力を負圧設定値NS2まで下げる。その後、時間T2の間に、動作制御部9は、真空弁Vb3に指令を発して、真空弁Vb3を閉じる。さらに、動作制御部9は、気体供給弁Va3に指令を発して、気体供給弁Va3を開き、気体移送ラインF3を介して気体供給ラインLa3と圧力室25Cを連通させ、圧力レギュレータRa3に指令を発して、圧力室25C内に圧縮気体を供給し、圧力室25C内の圧力を大気圧まで上げて負圧を解消する。時間T2の間に、動作制御部9は、気体供給弁Va2に指令を発して、気体供給弁Va2を開き、気体移送ラインF2を介して気体供給ラインLa2と圧力室25Bを連通させ、圧力レギュレータRa2に指令を発して、圧力室25B内に圧縮気体を供給し、圧力室25B内の圧力を正圧設定値PS2まで上げる。その後、圧力室25B内の圧力を正圧設定値PS2に維持する。
【0076】
本実施形態では、時間T2において、圧力室25C内の負圧を解消している間に、圧力室25B内に正圧を形成する。圧力室25C内の負圧を解消している間も、圧力室25C内は負圧であるので、時間T2の間に、ウェーハWの上面と圧力室25Bとの間に存在する流体Qを外側に押し出して、ウェーハWの上面と圧力室25Cとの間の隙間に移動させることができる(
図6参照)。
【0077】
さらに、本実施形態では、圧力室25D内に負圧の形成を開始するタイミングは、圧力室25C内に正圧の形成を開始するタイミングよりも前である。具体的には、時間T2の間に、圧力室25D内の圧力を負圧設定値NS3まで下げる。その後、時間T3の間に、圧力室25D内の負圧を解消するとともに、圧力室25C内の圧力を正圧設定値PS3まで上げる。その後、圧力室25C内の圧力を正圧設定値PS3に維持する。したがって、時間T3の間に、圧力室25C内に正圧が形成され、かつ圧力室25Cの外側に位置する圧力室25D内に負圧が形成される。
【0078】
より具体的には、時間T2の間に、動作制御部9は、真空弁Vb4に指令を発して、真空弁Vb4を開き、気体移送ラインF4を介して真空ラインLb4と圧力室25Dを連通させ、真空レギュレータRb4に指令を発して、圧力室25D内の圧力を負圧設定値NS3まで下げる。その後、時間T3の間に、動作制御部9は、真空弁Vb4に指令を発して、真空弁Vb4を閉じる。さらに、動作制御部9は、気体供給弁Va4に指令を発して、気体供給弁Va4を開き、気体移送ラインF4を介して気体供給ラインLa4と圧力室25Dを連通させ、圧力レギュレータRa4に指令を発して、圧力室25D内に圧縮気体を供給し、圧力室25D内の圧力を大気圧まで上げて負圧を解消する。時間T3の間に、動作制御部9は、気体供給弁Va3に指令を発して、気体供給弁Va3を開き、気体移送ラインF3を介して気体供給ラインLa3と圧力室25Cを連通させ、圧力レギュレータRa3に指令を発して、圧力室25C内に圧縮気体を供給し、圧力室25C内の圧力を正圧設定値PS3まで上げる。その後、圧力室25C内の圧力を正圧設定値PS3に維持する。
【0079】
本実施形態では、時間T3において、圧力室25D内の負圧を解消している間に、圧力室25C内に正圧を形成する。圧力室25D内の負圧を解消している間も、圧力室25D内は負圧であるので、時間T3の間に、ウェーハWの上面と圧力室25Cとの間に存在する流体Qを外側に押し出して、ウェーハWの上面と圧力室25Dとの間の隙間に移動させることができる(
図7参照)。
【0080】
さらに、本実施形態では、時間T4の間に、圧力室25D内の圧力を正圧設定値PS4まで上げる。その後、圧力室25D内の圧力を正圧設定値PS4に維持する。時間T4の間に、動作制御部9は、気体供給弁Va4に指令を発して、気体供給弁Va4を開き、気体移送ラインF4を介して気体供給ラインLa4と圧力室25Dを連通させ、圧力レギュレータRa4に指令を発して、圧力室25D内に圧縮気体を供給し、圧力室25D内の圧力を正圧設定値PS4まで上げる。その後、圧力室25D内の圧力を正圧設定値PS4に維持する。
【0081】
本実施形態では、時間T4において、圧力室25D内に正圧を形成することにより、ウェーハWの上面と圧力室25Dとの間に存在する流体Qを外側に押し出して、ウェーハWの上面から流体Qを流出させることができる(
図8参照)。
【0082】
本実施形態によれば、隣接する圧力室のうちの外側の圧力室内に負圧の形成を開始するタイミングを、内側の圧力室内に正圧の形成を開始するタイミングよりも前にすることで、
図5乃至
図9を参照して説明した実施形態よりも、ウェーハWの上面から流体Qを流出させるのに要する全体の時間を短縮することができる。
【0083】
一実施形態では、時間T0において、圧力室25B内の圧力を負圧設定値NS1まで下げることは、研磨ヘッド1が研磨パッド2の研磨面2a上にタッチダウンする前に、ウェーハWを吸着保持するために圧力室25B内に負圧を形成することであってもよい。この場合、研磨ヘッド1が研磨面2a上にタッチダウンした後に、
図11の時間T1に示すように、圧力室25A内に正圧の形成を開始し、圧力室25B内の負圧の解消を開始してもよい。これにより、ウェーハWの上面から流体Qを流出させるのに要する全体の時間をさらに短縮することができる。
【0084】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0085】
1 研磨ヘッド
2 研磨パッド
2a 研磨面
3 研磨テーブル
5 研磨液供給ノズル
6 テーブルモータ
9 動作制御部
9a 記憶装置
9b 演算装置
11 研磨ヘッドシャフト
15 ヘッドアーム
16 支軸
18 上下動機構
25A,25B,25C,25D,25E 圧力室
31 キャリア
32 リテーナリング
34 弾性膜
35 接触部
35a 接触面
36a,36b,36c 内壁部
36d 外壁部
37 メンブレン(ローリングダイヤフラム)
40 ロータリージョイント
44 搬送装置
45 搬送ステージ
47 昇降装置
49 水平移動装置
53 洗浄ノズル
F1,F2,F3,F4,F5 気体移送ライン
La1,La2,La3,La4,La5 気体供給ライン
Va1,Va2,Va3,Va4,Va5 気体供給弁
Ra1,Ra2,Ra3,Ra4,Ra5 圧力レギュレータ
Lb1,Lb2,Lb3,Lb4,Lb5 真空ライン
Vb1,Vb2,Vb3,Vb4,Vb5 真空弁
Rb1,Rb2,Rb3,Rb4,Rb5 真空レギュレータ
Lc1,Lc2,Lc3,Lc4,Lc5 大気開放ライン
Vc1,Vc2,Vc3,Vc4,Vc5 大気開放弁