(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156254
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】加熱装置、乾燥装置および液体を付与する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
B41J2/01 125
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070564
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】関 貴之
(72)【発明者】
【氏名】野沢 健二
(72)【発明者】
【氏名】浅田 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】川道 源一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄大
(72)【発明者】
【氏名】石原 広規
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056FA13
2C056FA14
2C056HA42
2C056HA46
(57)【要約】
【課題】加熱装置の信頼性の低下を低減する。
【解決手段】発熱手段と、前記発熱手段を囲うカバーとを有し、前記カバーは、前記発熱手段の第1の方向に沿って設けられる第1カバー部材と、前記第1の方向に沿って設けられ、前記第1カバー部材と隣り合う第2カバー部材と、を含み、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材との間に、前記第1カバー部材または前記第2カバー部材のどちらか一方のカバー部材の熱変形量、あるいは前記第1カバー部材および前記第2カバー部材の合計した熱変形量よりも大きい長さを有する第1の隙間を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱手段と、前記発熱手段を囲うカバーとを有し、
前記カバーは、
前記発熱手段の第1の方向に沿って設けられる第1カバー部材と、
前記第1の方向に沿って設けられ、前記第1カバー部材と隣り合う第2カバー部材と、を含み、
前記第1カバー部材と前記第2カバー部材との間に、前記第1カバー部材または前記第2カバー部材のどちらか一方のカバー部材の熱変形量、あるいは前記第1カバー部材および前記第2カバー部材の合計した熱変形量よりも大きい長さを有する第1の隙間を備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記第1の方向の両端部に、前記第1カバー部材および前記第2カバー部材を支持する支持部材を有し、
前記第1カバー部材および前記第2カバー部材の各両端と前記支持部材との間に、前記第1カバー部材または前記第2カバー部材の少なくとも一方のカバー部材の熱変形量よりも大きい長さを有する第2の隙間を備えることを特徴とする請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
前記カバーは、前記第1の隙間の上方に位置する蓋部材を備えることを特徴とする請求項1または2記載の加熱装置。
【請求項4】
空気を付与する空気付与手段を備え、
前記第1カバー部材の一部は、前記空気付与手段に固定されているとともに、
前記発熱手段は、前記空気付与手段の外側面、前記第1カバー部材および前記第2カバー部材によって形成される空間に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の加熱装置。
【請求項5】
空気を付与する空気付与手段を備え、
前記第1カバー部材の一部は、前記空気付与手段に固定されているとともに、
前記発熱手段は、前記空気付与手段の外側面、前記第1カバー部材および前記第2カバー部材によって形成される空間に設けられていることを特徴とする請求項3記載の加熱装置。
【請求項6】
液体が付与された対象物を乾燥させる乾燥装置であって、
請求項1または2記載の加熱装置を複数備えたことを特徴とする乾燥装置。
【請求項7】
対象物に液体を付与する液体付与手段と、
前記対象物を加熱する請求項1または2記載の加熱装置と、を備えることを特徴とする液体を付与する装置。
【請求項8】
対象物に液体を付与する液体付与手段と、
前記対象物を乾燥させる請求項6記載の乾燥装置と、を備えることを特徴とする液体を付与する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、乾燥装置および液体を付与する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヒータを備えた複数の熱照射手段をシート材の搬送方向に沿って配置した加熱装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような加熱装置において、複数の熱照射手段はハウジング内に配置され、さらに、ハウジング内において各熱照射手段は、ヒータを囲むように設けられたヒータカバーを備える。ヒータカバーが熱で膨張すると、隣り同士の熱照射手段間に設けられた気流の経路幅が狭くなり、ハウジング内からの十分な排気ができなくなる。その結果、所望の加熱性能が得られなくなり、加熱装置の信頼性が低下するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、発熱手段と、前記発熱手段を囲うカバーとを有し、前記カバーは、前記発熱手段の第1の方向に沿って設けられる第1カバー部材と、前記第1の方向に沿って設けられ、前記第1カバー部材と隣り合う第2カバー部材と、を含み、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材との間に、前記第1カバー部材または前記第2カバー部材のどちらか一方のカバー部材の熱変形量、あるいは前記第1カバー部材および前記第2カバー部材の合計した熱変形量よりも大きい長さを有する第1の隙間を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、加熱装置の信頼性の低下を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る液体を付与する装置の一例を示す概略構成図。
【
図4】比較例における乾燥装置内の空気の流れを示す説明図。
【
図5】比較例における乾燥装置内の空気の流れを示す説明図。
【
図6】第1の実施形態に係る加熱装置の一例を示す概略構成図。
【
図7】第1の実施形態に係る加熱装置の一例を示す概略構成図。
【
図8】第2の実施形態に係る加熱装置の一例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
<液体を付与する装置の概略>
はじめに、
図1および
図2を用いて液体を付与する装置の概略について説明する。
図1は実施形態に係る液体を付与する装置の一例を示す概略構成図である。液体を付与する装置として、ここでは印刷装置を例示している。
図2は同印刷装置の液体付与ユニットの一例を示す概略平面図である。
【0010】
印刷装置1は、搬入部10、前処理部20、印刷部30、乾燥部40、反転機構部50および搬出部60を備える。
【0011】
印刷装置1は、搬入部10から搬入(供給)されるシート材PをX方向へ搬送し、搬入部10から搬入されるシート材Pに対し、前処理部20で必要に応じて前処理液を付与(塗布)し、印刷部30でシート材Pに対して所要の液体を付与して所要の印刷を行う。
【0012】
印刷装置1は、シート材Pに付与した液体を乾燥部40で乾燥させた後、反転機構部50を介して、そのまま、または、シート材Pの両面に印刷を行った後、シート材Pを搬出部60に排出する。
【0013】
搬入部10は、複数のシート材Pを収容する搬入トレイ11(下段搬入トレイ11A、上段搬入トレイ11B)と、搬入トレイ11からシート材Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12(下段給送装置12A、上段給送装置12B)とを備える。搬入部10は、給送装置12から送り出されたシート材Pを前処理部20に供給する。
【0014】
前処理部20は、例えば、シート材Pの表面を改質するなどの目的でシート材Pの表面に処理液を塗布する塗布装置21などを備えている。
【0015】
印刷部30は、シート材Pを周面に担持して回転するドラム31と、ドラム31に担持されたシート材Pに液体を付与する液体付与部32を備える。また、印刷部30は、前処理部20から送り込まれたシート材Pを受け取り、ドラム31との間でシート材Pの受け渡しを行う搬入胴34と、ドラム31によって搬送されたシート材Pを受け取り、乾燥部40との受け渡しを行う搬出胴35を備える。
【0016】
前処理部20から印刷部30へ搬送されてきたシート材Pは、搬入胴34に設けられた把持機構(シートグリッパ)によって先端が把持され、搬入胴34の回転に伴って搬送される。搬入胴34により搬送されたシート材Pは、ドラム31との対向位置でドラム31へ受け渡される。シートグリッパはドラム31の表面にも設けられており、シート材Pの先端がシートグリッパによって把持される。
【0017】
また、ドラム31の表面には複数の吸引穴が分散して形成され、吸引機構によってドラム31の所要の吸引穴から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。そして、搬入胴34からドラム31へ受け渡されたシート材Pは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸引機構による吸い込み気流によってドラム31上に吸着担持され、ドラム31の回転に伴って搬送される。
【0018】
液体付与部32は、液体付与ユニット33(33A,33B,33C,33D)を備える。例えば、液体付与ユニット33Aはシアン色の液体を、液体付与ユニット33Bはマゼンタ色の液体を、液体付与ユニット33Cはイエロー色の液体を、液体付与ユニット33Dはブラック色の液体を、それぞれ付与する。また、液体付与部32は、その他、白色、金色、銀色など特殊色の液体の付与を行う液体付与ユニットを使用することもできる。ここで、液体付与部32は「液体付与手段」の一例である。
【0019】
液体付与ユニット33は、例えば、
図2に示されるようなヘッドモジュール100を備える。ヘッドモジュール100は、ベース部材103を有し、複数のヘッド101がベース部材103に取り付けられている。ヘッド101は、複数(本例では2つ)のノズル孔111によって形成されるノズル列を複数列(本例では5列)有し、このヘッド101がX方向と直交する方向であるY方向に複数個(本例では6個)並べられて、フルライン型ヘッドを構成している。なお、本例では、フルライン型ヘッドをX方向に2つ配置し、ヘッド101を千鳥状に配置した構成を示しているが、フルライン型ヘッドは1つでもよく、またはX方向に3つ以上配置した構成としてもよい。
【0020】
液体付与ユニット33(33A,33B,33C,33D)は、印刷情報に応じた駆動信号により、それぞれ液体付与動作が制御される。ドラム31に担持されたシート材Pが液体付与部32との対向領域を通過するときに、液体付与ユニット33から各色の液体がシート材Pに付与され、印刷情報に応じた画像が印刷される。
【0021】
乾燥部40は、搬送部41と、乾燥装置42を備える。搬送部41は、例えば、駆動ローラと従動ローラに掛け渡された搬送ベルトを備え、印刷部30から搬送されてくるシート材Pを搬送ベルトに乗せて搬送する。乾燥装置42は、搬送部41の上方に設けられ、搬送部41によって搬送される、液体が付与されたシート材Pを加熱し乾燥させる。ここで、シート材Pは「対象物」の一例である。
【0022】
乾燥装置42の構成については後述するが、概略として乾燥装置42は、発熱手段と、この発熱手段を囲うカバーを有する加熱装置43を一つ以上備える。加熱装置43が有するカバーは、発熱手段の第1の方向に沿って設けられる第1カバー部材と、発熱手段の第1の方向に沿って設けられ、第1カバー部材と隣り合う第2カバー部材と、を含む。そして、第1カバー部材と第2カバー部材との間には、第1カバー部材または第2カバー部材のどちらか一方のカバー部材の熱変形量、あるいは第1カバー部材および第2カバー部材の合計した熱変形量よりも大きい長さを有する第1の隙間を備える。なお、カバー(第1カバー部材、第2カバー部材)は、無機材料、金属が好ましく、アルミニウムなどが挙げられる。中でもSUSと呼ばれるステンレスが好適である。
【0023】
また、乾燥装置42は、発熱手段の第1の方向の両端部に、第1カバー部材および第2カバー部材を支持する支持部材を有する。そして、第1カバー部材および第2カバー部材の各両端と支持部材との間には、第1カバー部材または第2カバー部材の少なくとも一方のカバー部材の熱変形量よりも大きい長さを有する第2の隙間を備える。
【0024】
反転機構部50は、乾燥部40を通過して一面に液体が付与されて乾燥されたシート材Pに対して両面印刷を行うときに、スイッチバック方式でシート材Pを反転する反転部51を備える。また、反転機構部50は、反転部51で反転されたシート材Pを印刷部30の搬入胴34よりも上流側に逆送する両面搬送部52を備える。
【0025】
搬出部60は、複数のシート材Pが積載される搬出トレイ61を備える。反転機構部50から搬送されてくるシート材Pは、搬出トレイ61上に順次積み重ねられて保持される。
【0026】
なお、本例においてシート材Pは、予め所定サイズに裁断されたカットシートの形態としたが、例えばロール紙などのように、長尺に連続した形態のシート材を使用する装置であってもよい。
【0027】
<比較例>
次に、
図3乃至
図5を用いて比較例について説明する。
図3は加熱装置の比較例を示す概略構成図、
図4および
図5は、比較例における乾燥装置内の空気の流れを示す説明図である。
【0028】
図3において、
図3(a)は加熱装置の概略正面図、
図3(b)は同加熱装置の概略側面図、
図3(c)はエアナイフにおける概略断面図である。
【0029】
加熱装置43は、ヒータ431、ヒータカバー432、エアナイフ433、側板434(前側板434f、後側板434r)および吸気モータ435を備える。
【0030】
ヒータ431は、赤外線ヒータ(IRランプ)であり、ヒータ431は、例えば前側板434fと後側板434rの間で支持される。赤外線ヒータは、例えばカーボンヒータ、タングステンヒータ、ハロゲンヒータ、セラミックヒータなどであるが、これらに限定されるものではない。ここで、ヒータ431は「発熱手段」の一例であり、ヒータ431の長手方向(前側板434f側から後側板434r側へ向かう方向)は「発熱手段の第1の方向」の一例である。
【0031】
加熱装置43は、ヒータ431を2本備え、2本のヒータ431間にエアナイフ433が設置される。エアナイフ433は、その長手方向両端が前側板434fと後側板434rとに固定され、支持されている。エアナイフ433は、エア流路433aおよびエア吹出口433bを備え、エア吹出口433bが2本のヒータ431間に位置するように設けられている。
【0032】
前側板434fおよび後側板434rの外側には、吸気モータ435が設けられており、吸気モータ435は、
図3(c)に矢印で示すように外部からエア流路433aに空気を取り込む。エア流路433aに取り込まれた空気は、エア吹出口433bへ送られ、エア吹出口433bから送り出される。
【0033】
ヒータカバー432は、例えば金属板を所望の形状に加工してなり、その一部はエアナイフ433の外側面に固定される。ヒータ431は、エアナイフ433の外側面の一部と、ヒータカバー432とが形成する空間内に納まり、ヒータ431は囲われる。
【0034】
図1に示された印刷装置1の乾燥部40において、乾燥装置42は、上述の加熱装置43をX方向に複数設置して構成することが可能である。以下、乾燥装置42の構成について説明する。
【0035】
図4において、
図4(a)は乾燥装置の概略平面図、
図4(b)は同乾燥装置の側面からの概略断面図である。
【0036】
図4においてX方向をシート材Pの搬送方向としたとき、複数の加熱装置43は、ヒータ431の長手方向が、X方向と直交する方向であるY方向と平行になるようにして、シート材Pの搬送方向に設けられる。
【0037】
乾燥装置42は、筐体421を有し、複数の加熱装置43は筐体421に取り付けられる。例えば、筐体421の上面には、排気口421aが形成されている。排気口421aには排気モータ等の排気装置が接続され、筐体421内の空気を排気口421aから排出する。なお、排気口421aの形状や数は、図示の構成に限らず、排気効率等に応じて適宜変更されてよい。
【0038】
上記構成の乾燥装置42において、筐体421内の温度が高くない状態では、
図4(b)に示すように、エアナイフ433から搬送ベルト411に向けて付与された空気は、搬送ベルト411に当たり、横方向(図中、左右方向)に向きが変わる。その後、空気は、加熱装置43同士のヒータカバー432間を通り、上方へ抜けて排気口421aから排出される。
【0039】
ところが、筐体421内の温度が高い状態になると、上記のような空気の流れではなくなる。筐体421内の温度が高い状態での空気の流れについて以下に説明する。
【0040】
図5において、
図5(a)は乾燥装置の概略平面図、
図5(b)は同乾燥装置の側面からの概略断面図である。
【0041】
筐体421内の温度が高い状態では、ヒータカバー432が熱膨張によって変形し、
図5(a)に破線部Eで示すように加熱装置43の長手方向中央部におけるヒータカバー432間の間隔が著しく減少する。その結果、
図5(b)において「×」が記された箇所での空気の流れが悪くなり、加熱装置43の長手方向中央部に熱い空気が滞留し易くなる。
【0042】
加熱装置43の長手方向中央部に熱い空気が滞留すると、乾燥装置42内の温度も不安定となる。そのため、乾燥装置42を温度制御する場合にも、中央部の温度が端部よりも高くなり過ぎてしまい、温度を誤検知してしまうなど、正しい制御ができなくなる。
【0043】
<第1の実施形態>
図6は、第1の実施形態に係る加熱装置の一例を示す概略構成図であり、
図6(a)は加熱装置の概略正面図、
図6(b)は同加熱装置の概略側面図である。なお、上述の比較例の構成に対して同等の機能を有する部材には同一符号を付し、説明は省略する。
【0044】
第1の実施形態は、ヒータカバーを第1ヒータカバー436と第2ヒータカバー437とに分けて構成している点が、比較例と相違する。
【0045】
第1ヒータカバー436は、
図6(b)に示すように、ヒータ431の長手方向に沿って設けられる。また、第2ヒータカバー437も、ヒータ431の長手方向に沿って設けられ、第2ヒータカバー437は第1ヒータカバー436に隣り合わせにして配置される。ここで、第1ヒータカバー436は「第1カバー部材」の一例であり、第2ヒータカバー437は「第2カバー部材」の一例である。
【0046】
第1ヒータカバー436と第2ヒータカバー437とが隣り合う部位には、
図6(a)に示すように、隙間G1が設けられる。隙間G1は、加熱装置43の熱によって第1ヒータカバー436および第2ヒータカバー437が熱膨張により変形した場合においても、互いが接触しないよう、熱変形量よりも大きい長さに設定されている。隙間G1は、各ヒータカバーの材質、形状、加熱温度等の仕様に基づき適切な値に設定される。
【0047】
また、ヒータ431の長手方向においても、第1ヒータカバー436の一方の端部と前側板434fとの間、および第1ヒータカバー436のもう一方の端部と後側板434rとの間には、
図6(b)に示すように、隙間G2が設けられる。同様に、第2ヒータカバー437の一方の端部と前側板434fとの間、および第2ヒータカバー437のもう一方の端部と後側板434rとの間にも、隙間G2が設けられる。隙間G2は、加熱装置43の熱によって第1ヒータカバー436および第2ヒータカバー437が熱膨張により変形した場合においても、各ヒータカバーの端部が側板434に接触しないよう、熱変形量よりも大きい長さに設定されている。隙間G2についても、各ヒータカバーの材質、形状、加熱温度等の仕様に基づき適切な値に設定される。
【0048】
本例において、前側板434fおよび後側板434rは、熱変形が小さい材質、例えば亜鉛めっき鋼板(例えばSECC-NC E16/E16)によって形成されている。このように、前側板434fおよび後側板434rに熱変形が殆ど生じない構成である場合、隙間G2は、第1ヒータカバー436または第2ヒータカバー437の少なくとも一方のヒータカバーの熱変形量よりも大きい長さで設定すればよい。なお、前側板434fおよび後側板434rとして、熱変形を無視できない材質が用いられる場合は、これら側板434f,434rの熱変形量も考慮して隙間G2を設定する必要がある。つまりこの場合の隙間G2は、第1ヒータカバー436または第2ヒータカバー437の少なくとも一方のヒータカバーと、側板434f,434rとの合計した熱変形量よりも大きい長さに設定することが望ましい。
【0049】
隙間G2は、側板434にヒータカバー436,437を取り付ける際、側板434とヒータカバー436,437の間に、隙間G2に相当する厚さのスペーサ部材を介してネジ留めしたり、段付きネジを用いて固定することで形成することが可能である。ここで、隙間G1は「第1の隙間」の一例であり、隙間G2は「第2の隙間」の一例である。また、前側板434fおよび後側板434rは「支持部材」の一例である。
【0050】
加熱装置43は、ヒータ431を2本備え、2本のヒータ431間にエアナイフ433が設置される。エアナイフ433は、その長手方向両端が前側板434fと後側板434rとに固定され、支持されている。エアナイフ433は、エア流路433aおよびエア吹出口433bを備え、エア吹出口433bが2本のヒータ431間に位置するように設けられている。
【0051】
前側板434fおよび後側板434rの外側には、吸気モータ435が設けられており、吸気モータ435は、外部からエア流路433aに空気を取り込む。エア流路433aに取り込まれた空気は、エア吹出口433bへ送られ、エア吹出口433bから送り出される。ここで、エアナイフ433は「空気付与手段」の一例である。
【0052】
第1ヒータカバー436の一部は、エアナイフ433の外側面に固定される。ヒータ431は、エアナイフ433の外側面の一部と、第1ヒータカバー436と、第2ヒータカバー437とによって形成される空間内に納まり、ヒータ431は囲われる。
【0053】
上述のように本実施形態は、ヒータ431と、ヒータ431を囲うカバーとを有し、カバーは、ヒータ431の長手方向に沿って設けられる第1ヒータカバー436と、ヒータ431の長手方向に沿って設けられ、第1ヒータカバー436と隣り合う第2ヒータカバー437と、を含み、第1ヒータカバー436と第2ヒータカバー437との間に、前記第1カバー部材または前記第2カバー部材のどちらか一方のカバー部材の熱変形量、あるいは前記第1カバー部材および前記第2カバー部材の合計した熱変形量よりも大きい長さを有する隙間G1を備える。
【0054】
これにより、第1ヒータカバー436および第2ヒータカバー437の熱変形による撓みが隙間G1によって吸収され、第1ヒータカバー436および第2ヒータカバー437間の干渉を防ぐことができる。例えば、両者の干渉によって第2ヒータカバー437が加熱装置43の外側に膨らむ(押し出される)ことがなくなる。
【0055】
また、上述のように、ヒータ431の長手方向の両端部に、第1ヒータカバー436および第2ヒータカバー437を支持する側板434(前側板434f、後側板434r)を有し、第1ヒータカバー436および第2ヒータカバー437の各両端と側板434との間に、前記第1カバー部材または前記第2カバー部材の少なくとも一方のカバー部材の熱変形量よりも大きい長さを有する隙間G2を備える。
【0056】
これにより、第1ヒータカバー436および第2ヒータカバー437の熱変形による撓みが隙間G2によって吸収され、第1ヒータカバー436および第2ヒータカバー437と側板434との間の干渉を防ぐことができる。例えば、ヒータカバー436,437の長手方向両端と側板434との干渉によってヒータカバー436,437が加熱装置43の外側に膨らむ(押し出される)ことがなくなる。
【0057】
また、加熱装置43は、空気を付与するエアナイフ433を備え、第1ヒータカバー436の一部は、エアナイフ433に固定されているとともに、ヒータ431は、エアナイフ433の外側面、第1ヒータカバー436および第2ヒータカバー437によって形成される空間に設けられている。
【0058】
これにより、エアナイフ433を搭載した加熱装置43の小型化と、熱変形による部材間の干渉防止とを両立することができる。
【0059】
また、本実施形態の加熱装置43は、
図4に示したような、液体が付与された対象物(例えばシート材P)を乾燥させる乾燥装置42に適用することが可能である。
【0060】
これにより、筐体421内における空気の流れが安定し、所望の加熱性能を維持することが可能な乾燥装置を提供することができる。
【0061】
さらに、本実施形態の加熱装置43は、
図1に示したような、シート材Pに液体を付与する液体付与部32と、シート材Pを乾燥させる乾燥装置42とを備える液体を吐出する装置(例えば印刷装置1)に適用することが可能である。
【0062】
これにより、乾燥装置42における乾燥性能が安定し、所望の液体付与品質を維持することが可能な液体を付与する装置を提供することができる。
【0063】
ところで、第1の実施形態の場合、
図7に破線矢印で示されるように、第1ヒータカバー436と第2ヒータカバー437との間に設けた隙間G1から空気(暖気)が逃げやすくなる。このような空気の逃げを低減させる場合の構成例について、以下に説明する。
【0064】
<第2の実施形態>
図8は、第2の実施形態に係る加熱装置の一例を示す概略構成図であり、
図8(a)は加熱装置の概略正面図、
図8(b)は同加熱装置の概略側面図である。なお、上述の比較例および第1の実施形態の構成に対して同等の機能を有する部材には同一符号を付し、説明は省略する。
【0065】
第2の実施形態は、隙間G1の上方にフラップ438を備えている点が、第1の実施形態と相違する。
【0066】
フラップ438は、ヒータ431からの輻射熱が直接当たらないよう、ヒータ431側から見て第1ヒータカバー436の背後に設けられる。これにより、フラップ438は熱されにくくなり、フラップ438の熱膨張を少なくすることが可能になる。ここで、フラップ438は「蓋部材」の一例である。
【0067】
フラップ438は、例えば矩形状の板部材であり、短手方向の一方の端部が第1ヒータカバー436に支持されている。フラップ438の短手方向のもう一方の端部は、第2ヒータカバー437に接触させるだけで、第2ヒータカバー437に固定はされていない。フラップ438と第2ヒータカバー437とを固定してしまうと、フラップ438が熱変形した際に、その影響が第2ヒータカバー437に及ぶことが懸念されるためである。
【0068】
また、第2ヒータカバー437の熱変形に追従してフラップ438が動けるようにするため、フラップ438の剛性は第2ヒータカバー437の剛性よりも低くなるようにしている。本例においては、フラップ438の板厚を第2ヒータカバー437の板厚よりも薄くしており、例えば、第2ヒータカバー437には厚さ1mmのステンレス材が用いられ、フラップ438には厚さ0.5mmのステンレス材が用いられる。
【0069】
なお、上記構成では、フラップ438の一方の端部を第1ヒータカバー436に支持させたが、例えば、エアナイフ433の外側面に支持させてもよい。
【0070】
上述のように、本実施形態においてヒータカバーは、隙間G1の上方に位置するフラップ438を備える。
【0071】
これにより、熱変形によるヒータカバー436,437間の干渉防止と、隙間G1からの空気の逃げ低減とを両立することができる。
【0072】
<変形例>
図9は、乾燥部の変形例を示す説明図である。
【0073】
図1に示された印刷装置1において、乾燥部40は、搬送部41によってシート材Pを水平(X方向)に搬送しながら、乾燥装置42によってシート材Pの表面を乾燥させる構成としたが、乾燥部40におけるシート材Pの搬送経路はこれに限るものではない。
【0074】
例えば、
図9(a)に示すように、液体が付与されたシート材Pを乾燥用ドラムに巻き付けて搬送しながら、乾燥装置42によってシート材Pを乾燥させる構成としてもよい。
【0075】
乾燥装置42には、第1の実施形態または第2の実施形態に係る加熱装置43が、乾燥用ドラムの周囲に複数設けられている。
【0076】
また、例えば、
図9(b)に示すように、液体が付与されたシート材Pを上下方向に蛇行搬送しながら、途中に設置した乾燥装置42によってシート材Pを乾燥させる構成としてもよい。
【0077】
乾燥装置42には、第1の実施形態または第2の実施形態に係る加熱装置43が、シート材Pの搬送経路に沿って複数設けられている。
【0078】
上記変形例によれば、乾燥部40のX方向の長さを極端に大きくせずとも、乾燥距離を長くすることができる。
【0079】
<補足>
本発明において、「液体を付与する装置」は、液体を付与するヘッドを備え、ヘッドを駆動させて、液体を付与する装置である。液体を付与する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を付与することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて付与する装置も含まれる。
【0080】
この「液体を付与する装置」は、液体が付着可能なものの供給、搬送、排出に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。例えば、「液体を付与する装置」として、インクを付与して用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を付与する立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0081】
また、「液体を付与する装置」は、付与した液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0082】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0083】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、アルミニウム箔や銅箔といった集電体、または集電体上に活物質層が形成された電極など、液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0084】
また、「液体」は、ヘッドから付与可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、電極材料として用いられる活物質や固体電解質、導電性材料や絶縁性材料を含むインクなどを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどが挙げられる。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液、電極、電気化学素子等の用途で用いることができる。
【0085】
また、「液体を付与する装置」は、ヘッドと、液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、ヘッドを移動させるシリアル型装置、ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0086】
また、「液体を付与する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0087】
以上説明したものは一例であり、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到し得る範囲内で変更することができ、次のいずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0088】
[態様1]
態様1は、発熱手段(例えばヒータ431)と、前記発熱手段を囲うカバーとを有し、前記カバーは、前記発熱手段の第1の方向(例えばヒータ431の長手方向)に沿って設けられる第1カバー部材(例えば第1ヒータカバー436)と、前記第1の方向に沿って設けられ、前記第1カバー部材と隣り合う第2カバー部材(例えば第2ヒータカバー437)と、を含み、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材との間に、前記第1カバー部材または前記第2カバー部材のどちらか一方のカバー部材の熱変形量、あるいは前記第1カバー部材および前記第2カバー部材の合計した熱変形量よりも大きい長さを有する第1の隙間(例えば隙間G1)を備えることを特徴とするものである。
【0089】
[態様2]
態様2は、態様1において、前記第1の方向の両端部に、前記第1カバー部材および前記第2カバー部材を支持する支持部材(例えば前側板434f、後側板434r)を有し、前記第1カバー部材および前記第2カバー部材の各両端と前記支持部材との間に、前記第1カバー部材または前記第2カバー部材の少なくとも一方のカバー部材の熱変形量よりも大きい長さを有する第2の隙間(例えば隙間G2)を備えることを特徴とするものである。
【0090】
[態様3]
態様3は、態様1または態様2において、前記カバーは、前記第1の隙間の上方に位置する蓋部材(例えばフラップ438)を備えることを特徴とするものである。
【0091】
[態様4]
態様4は、態様1または態様2において、空気を付与する空気付与手段(例えばエアナイフ433)を備え、前記第1カバー部材の一部は、前記空気付与手段に固定されているとともに、前記発熱手段は、前記空気付与手段の外側面、前記第1カバー部材および前記第2カバー部材によって形成される空間に設けられていることを特徴とするものである。
【0092】
[態様5]
態様5は、態様3において、空気を付与する空気付与手段(例えばエアナイフ433)を備え、前記第1カバー部材の一部は、前記空気付与手段に固定されているとともに、前記発熱手段は、前記空気付与手段の外側面、前記第1カバー部材および前記第2カバー部材によって形成される空間に設けられていることを特徴とするものである。
【0093】
[態様6]
態様6は、液体が付与された対象物(例えばシート材P)を乾燥させる乾燥装置(例えば乾燥装置42)であって、態様1または態様2の加熱装置を複数備えたことを特徴とする乾燥装置である。
【0094】
[態様7]
態様7は、対象物(例えばシート材P)に液体を付与する液体付与手段(例えば液体付与部32)と、前記対象物を加熱する態様1または態様2の加熱装置と、を備えることを特徴とする液体を付与する装置(例えば印刷装置1)である。
【0095】
[態様8]
態様8は、対象物(例えばシート材P)に液体を付与する液体付与手段(例えば液体付与部32)と、前記対象物を乾燥させる態様6の乾燥装置と、を備えることを特徴とする液体を付与する装置(例えば印刷装置1)である。
【符号の説明】
【0096】
1 印刷装置
10 搬入部
20 前処理部
30 印刷部
31 ドラム
32 液体付与部
34 搬入胴
35 搬出胴
40 乾燥部
41 搬送部
411 搬送ベルト
42 乾燥装置
421 筐体
421a 排気口
43 加熱装置
431 ヒータ
432 ヒータカバー
433 エアナイフ
434f 前側板
434r 後側板
435 吸気モータ
436 第1ヒータカバー
437 第2ヒータカバー
438 フラップ
50 反転機構部
51 反転部
52 両面搬送部
60 搬出部
61 搬出トレイ
G1 隙間
G2 隙間
P シート材