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特開2024-156258マスクの形成方法、基板の加工方法、及び基板の検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156258
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】マスクの形成方法、基板の加工方法、及び基板の検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
H01L21/78 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070570
(22)【出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】田畑 晋
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンジン
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA21
5F063BA32
5F063BA33
5F063BA43
5F063BA44
5F063BA45
5F063BA47
5F063BA48
5F063CB03
5F063CB08
5F063DD42
5F063DD46
5F063DE03
5F063DE34
5F063DF04
5F063DF06
(57)【要約】
【課題】高品質なマスクを形成する。
【解決手段】表面側にパターンが設けられた基板の裏面側に該パターンに対応した開口を有するマスクを形成するマスクの形成方法であって、該基板の該裏面側を保護膜で被覆する被覆ステップと、該パターンの位置を検出するアライメントステップと、該パターンに対応する位置で該保護膜を除去することにより該開口を有する該マスクを形成するマスク形成ステップと、を含み、該マスク形成ステップでは、テストパターンを該保護膜に形成し、該テストパターンの位置を検出し、該パターンの位置を検出し、検出された該テストパターンの位置と、検出された該パターンの位置と、のずれ量をテストずれ量として算出し、該テストずれ量に基づいて補正量を算出し、該補正量に基づいて該保護膜の除去を実施する位置を補正して該保護膜を除去し、該保護膜に該開口を形成して該マスクを形成する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側にパターンが設けられた基板の裏面側に該パターンに対応した開口を有するマスクを形成するマスクの形成方法であって、
該基板の該裏面側を保護膜で被覆する被覆ステップと、
該基板の該表面側に設けられた該パターンを撮像して該パターンの位置を検出するアライメントステップと、
該パターンに対応する位置で該保護膜を除去することにより該開口を有する該マスクを形成するマスク形成ステップと、を含み、
該マスク形成ステップは、
該基板の該表面側の該パターンに対応する領域において該保護膜の除去を行いテストパターンを該保護膜に形成するテスト加工ステップと、
該テスト加工ステップにおいて該保護膜に形成された該テストパターンを撮像して、該テストパターンの位置を検出するテストパターン位置検出ステップと、
該基板の該表面側に設けられた該パターンを撮像して、該パターンの位置を検出するパターン位置検出ステップと、
該テストパターン位置検出ステップにおいて検出された該テストパターンの位置と、該パターン位置検出ステップにおいて検出された該パターンの位置と、のずれ量をテストずれ量として算出し、該テストずれ量に基づいて補正量を算出する補正量算出ステップと、
該補正量算出ステップで算出された該補正量に基づいて該保護膜の除去を実施する位置を補正して該保護膜を除去し、該保護膜に該開口を形成して該マスクを形成する本加工ステップと、を備えることを特徴とするマスクの形成方法。
【請求項2】
該アライメントステップ及び該パターン位置検出ステップでは、
該基板を透過する波長の光を照明光として用いて、該基板の該表面側に設けられた該パターンを該裏面側から撮像することを特徴とする請求項1に記載のマスクの形成方法。
【請求項3】
該テスト加工ステップでは、該基板の該表面側の該パターンに対応する該領域の一部でのみ該保護膜を除去して該テストパターンを該保護膜に形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマスクの形成方法。
【請求項4】
該テスト加工ステップ及び該本加工ステップでは、
レーザビームを出射するレーザ発振器と、該レーザビームを集光するfθレンズと、該レーザ発振器が出射し該fθレンズが集光する該レーザビームを走査する走査ユニットと、を備えるレーザ照射ユニットを用いて該保護膜に該レーザビームを照射して該保護膜の除去を実施し、
該本加工ステップでは、該補正量を参照して該走査ユニットを制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマスクの形成方法。
【請求項5】
表面側にパターンが設けられた基板の裏面側に該パターンに沿った穴を形成する基板の加工方法であって、
該基板の該裏面側を保護膜で被覆する被覆ステップと、
該基板の該表面側に設けられた該パターンを撮像して該パターンの位置を検出するアライメントステップと、
該パターンに対応する位置で該保護膜を除去して該保護膜に開口を形成することによりマスクを形成するマスク形成ステップと、
該マスクを介して該基板をエッチングし、該基板の該裏面側に該パターンに沿った穴を形成するエッチングステップと、を含み、
該マスク形成ステップは、
該基板の該表面側の該パターンに対応する領域において該保護膜の除去を行い、テストパターンを該保護膜に形成するテスト加工ステップと、
該テスト加工ステップにおいて該保護膜に形成された該テストパターンを撮像して、該テストパターンの位置を検出するテストパターン位置検出ステップと、
該基板の該表面側に設けられた該パターンを撮像して、該パターンの位置を検出するパターン位置検出ステップと、
該テストパターン位置検出ステップにおいて検出された該テストパターンの位置と、該パターン位置検出ステップにおいて検出された該パターンの位置と、のずれ量をテストずれ量として算出し、該テストずれ量に基づいて補正量を算出する補正量算出ステップと、
該補正量算出ステップで算出された該補正量に基づいて該保護膜の除去を実施する位置を補正して該保護膜を除去し、該保護膜に該開口を形成して該マスクを形成する本加工ステップと、を備えることを特徴とする基板の加工方法。
【請求項6】
該エッチングステップの後、該基板の該裏面に形成された該穴を撮像して、該穴の位置を検出する穴形成位置検出ステップと、
該パターン位置検出ステップにおいて検出された該パターンの位置と、該穴形成位置検出ステップにおいて検出された該穴の位置と、のずれ量を加工ずれ量として算出する加工ずれ量算出ステップと、
該加工ずれ量算出ステップにおいて算出した該加工ずれ量が許容範囲に該当するか否かを判定する合否判定ステップと、を含むことを特徴とする請求項5に記載の基板の加工方法。
【請求項7】
表面側にパターンが設けられ裏面側に該パターンに沿った穴が形成された基板の検査方法であって、
該基板の該表面側に形成された該パターンを撮像して、該パターンの位置を検出するパターン位置検出ステップと、
該基板の該裏面側に形成された該穴を撮像して、該穴の位置を検出する穴形成位置検出ステップと、
該パターン位置検出ステップにおいて検出された該パターンの位置と、該穴形成位置検出ステップにおいて検出された該穴の位置と、のずれ量を加工ずれ量として算出する加工ずれ量算出ステップと、
該加工ずれ量算出ステップにおいて算出した該加工ずれ量が許容範囲に該当するか否かを判定する合否判定ステップと、を含むことを特徴とする基板の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を加工するためのマスクを形成するマスクの形成方法、基板の加工方法、及び基板の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造プロセスでは、格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)によって区画された複数の領域にそれぞれデバイスが形成されたウェーハが用いられる。このウェーハをストリートに沿って分割することにより、デバイスを備えるチップ(デバイスチップ)が得られる。デバイスチップは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の様々な電子機器に組み込まれる。
【0003】
ウェーハ等の基板の分割には、環状の切削ブレードで基板を切削する切削装置や、基板にレーザ加工を施すレーザ加工装置等が用いられる。また、近年では、基板にプラズマエッチングを施すことによって基板を分割する、プラズマダイシングと称されるプロセスの開発も進められている。
【0004】
プラズマダイシングでは、まず、基板の表面または裏面に保護膜(レジスト膜)を形成し、ストリート等のパターンが露出されるように保護膜をパターニングすることで開口を有するマスクが基板に形成される。その後、マスクを介してウェーハにプラズマ状態のエッチングガスが供給される。これにより、ウェーハに対してプラズマエッチングがパターン(ストリート)に沿って施され、ウェーハが複数のデバイスチップに分割される。
【0005】
また、MEMSデバイスを含むデバイスチップの製造工程では、基板の表面側に複数の構造体等のパターンが形成される。この基板の裏面側を保護膜で被覆し、パターンに対応する基板の裏面側の領域の保護膜を除去して開口を形成しエッチング用のマスクを形成し、形成したマスクを介してエッチングを行うことでパターン(構造体)に沿った穴を形成する加工方法が知られている(特許文献1参照)。
【0006】
プラズマエッチング等の為に形成されるマスクは、例えばフォトレジストをストリートまたは構造物等のパターンに沿ってパターニングすることによって形成される。しかしながら、フォトレジストによってマスクを形成する場合には、フォトレジストの塗布、露光、現像等の処理に手間がかかる上、露光装置等の高価な設備が必要となる。
【0007】
そこで、マスク形成の工程の簡略化及びコスト低減を図るため、レーザ加工装置を用いてマスクを形成する手法が提案されている。例えば、ウェーハに保護膜を形成した後、レーザビームの照射によって保護膜をパターンに沿って部分的に除去し、加工対象となる領域を露出させるマスクを形成する手法が知られている(特許文献2参照)。この手法を用いると、フォトレジストを用いる場合と比較して簡易且つ低コストでマスクを形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-18869号公報
【特許文献2】特開2016-207737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の加工方法においては、保護膜を所定の位置で部分的に除去してエッチング用のマスクを形成する際に、レーザビームを高い精度で保護膜に照射する必要がある。しかしながら、保護膜へのレーザビームの照射を実施する間に光学系の状態が変化して、レーザビームの被照射領域の位置や大きさにずれが生じてレーザビームの照射精度が低下することがある。
【0010】
照射精度が低下したレーザビームが保護膜に照射された場合、基板のマスクから露出された領域の位置や大きさがエッチングの予定された領域と一致しなくなり、マスクが低品質となる。そのため、予定された通りにエッチングが実施されず、最終的に形成されるデバイスの特性不良に繋がる。
【0011】
なお、保護膜を加工してマスクを形成する方法は、レーザビーム以外の手段により実施される場合がある。例えば、円環状の切削ブレードで保護膜の所定の領域を切削して保護膜を部分的に除去することによりマスクが形成される。この場合においても、基板のマスクから露出された領域の位置や大きさがエッチングの予定された領域と一致しなくなり、マスクが低品質となることがある。
【0012】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、高品質なマスクを形成するマスクの形成方法、高品質なマスクを利用して加工する基板の加工方法、及び穴が形成された基板等の基板を検査する検査方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、表面側にパターンが設けられた基板の裏面側に該パターンに対応した開口を有するマスクを形成するマスクの形成方法であって、該基板の該裏面側を保護膜で被覆する被覆ステップと、該基板の該表面側に設けられた該パターンを撮像して該パターンの位置を検出するアライメントステップと、該パターンに対応する位置で該保護膜を除去することにより該開口を有する該マスクを形成するマスク形成ステップと、を含み、該マスク形成ステップは、該基板の該表面側の該パターンに対応する領域において該保護膜の除去を行いテストパターンを該保護膜に形成するテスト加工ステップと、該テスト加工ステップにおいて該保護膜に形成された該テストパターンを撮像して、該テストパターンの位置を検出するテストパターン位置検出ステップと、該基板の該表面側に設けられた該パターンを撮像して、該パターンの位置を検出するパターン位置検出ステップと、該テストパターン位置検出ステップにおいて検出された該テストパターンの位置と、該パターン位置検出ステップにおいて検出された該パターンの位置と、のずれ量をテストずれ量として算出し、該テストずれ量に基づいて補正量を算出する補正量算出ステップと、該補正量算出ステップで算出された該補正量に基づいて該保護膜の除去を実施する位置を補正して該保護膜を除去し、該保護膜に該開口を形成して該マスクを形成する本加工ステップと、を備えることを特徴とするマスクの形成方法が提供される。
【0014】
なお、好ましくは、該アライメントステップ及び該パターン位置検出ステップでは、該基板を透過する波長の光を照明光として用いて、該基板の該表面側に設けられた該パターンを該裏面側から撮像する。
【0015】
また、好ましくは、該テスト加工ステップでは、該基板の該表面側の該パターンに対応する該領域の一部でのみ該保護膜を除去して該テストパターンを該保護膜に形成する。
【0016】
さらに好ましくは、該テスト加工ステップ及び該本加工ステップでは、レーザビームを出射するレーザ発振器と、該レーザビームを集光するfθレンズと、該レーザ発振器が出射し該fθレンズが集光する該レーザビームを走査する走査ユニットと、を備えるレーザ照射ユニットを用いて該保護膜に該レーザビームを照射して該保護膜の除去を実施し、該本加工ステップでは、該補正量を参照して該走査ユニットを制御する。
【0017】
また、本発明の他の一態様によれば、表面側にパターンが設けられた基板の裏面側に該パターンに沿った穴を形成する基板の加工方法であって、該基板の該裏面側を保護膜で被覆する被覆ステップと、該基板の該表面側に設けられた該パターンを撮像して該パターンの位置を検出するアライメントステップと、該パターンに対応する位置で該保護膜を除去して該保護膜に開口を形成することによりマスクを形成するマスク形成ステップと、該マスクを介して該基板をエッチングし、該基板の該裏面側に該パターンに沿った穴を形成するエッチングステップと、を含み、該マスク形成ステップは、該基板の該表面側の該パターンに対応する領域において該保護膜の除去を行い、テストパターンを該保護膜に形成するテスト加工ステップと、該テスト加工ステップにおいて該保護膜に形成された該テストパターンを撮像して、該テストパターンの位置を検出するテストパターン位置検出ステップと、該基板の該表面側に設けられた該パターンを撮像して、該パターンの位置を検出するパターン位置検出ステップと、該テストパターン位置検出ステップにおいて検出された該テストパターンの位置と、該パターン位置検出ステップにおいて検出された該パターンの位置と、のずれ量をテストずれ量として算出し、該テストずれ量に基づいて補正量を算出する補正量算出ステップと、該補正量算出ステップで算出された該補正量に基づいて該保護膜の除去を実施する位置を補正して該保護膜を除去し、該保護膜に該開口を形成して該マスクを形成する本加工ステップと、を備えることを特徴とする基板の加工方法が提供される。
【0018】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、該エッチングステップの後、該基板の該裏面に形成された該穴を撮像して、該穴の位置を検出する穴形成位置検出ステップと、該パターン位置検出ステップにおいて検出された該パターンの位置と、該穴形成位置検出ステップにおいて検出された該穴の位置と、のずれ量を加工ずれ量として算出する加工ずれ量算出ステップと、該加工ずれ量算出ステップにおいて算出した該加工ずれ量が許容範囲に該当するか否かを判定する合否判定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様に係るマスクの形成方法、基板の加工方法では、パターンに対応する領域において保護膜を除去してテストパターンを形成し、テストパターンとパターンの位置のずれ量に基づいて補正量を算出する。算出された補正量は、保護膜の所定の位置に開口を形成する際に利用できる。これにより、所定の位置に高い精度で開口が形成された高品質なマスクが基板に形成される。
【0020】
高品質なマスクを利用して基板を加工すると、高い精度で基板に穴を形成できる。そのため、パターンにより構成されるデバイスも特性が良好となる。また、基板に形成された穴と、基板の表面側に設けられたパターンと、の位置のずれを加工ずれ量として評価したとき、加工ずれ量が極めて小さくなる。
【0021】
したがって、本発明の一態様により、高品質なマスクを形成するマスクの形成方法、高品質なマスクを利用して加工する基板の加工方法、及び穴が形成された基板等の基板を検査する検査方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1(A)は、基板を模式的に示す斜視図であり、図2(B)は、基板の表面の一部を拡大して模式的に示す斜視図である。
図2図2(A)は、基板を模式的に示す断面図であり、図2(B)は、保護膜が形成された基板を模式的に示す断面図である。
図3】成膜装置を模式的に示す一部断面正面図である。
図4】レーザ加工装置を模式的に示す斜視図である。
図5】保護膜がレーザ加工される様子を模式的に示す断面図である。
図6図6(A)は、保護膜がレーザ加工されて開口を有するマスクが形成された基板を模式的に示す断面図であり、図6(B)は、エッチングされて穴が形成された基板を模式的に示す断面図である。
図7図7(A)は、裏面側に保護膜が形成された基板の裏面側を模式的に示す平面図であり、図7(B)は、保護膜のテスト加工が実施される前の基板を模式的に示す断面図である。
図8図8(A)は、保護膜にテストパターンが形成されたにおける基板の裏面側を模式的に示す平面図であり、図8(B)は、基板及びテストパターンが形成された保護膜を模式的に示す断面図である。
図9】チャックテーブルに載せられた基板を模式的に示す断面図である。
図10】撮像される基板を模式的に示す断面図である。
図11図11(A)は、保護膜にテストパターンが形成された状態における基板の裏面側を撮像して得られる撮像画像の一例を模式的に示す平面図であり、図11(B)は、基板の表面側を撮像して得られる撮像画像の一例を模式的に示す平面図であり、図11(C)は、保護膜に形成されたテストパターンと、基板に設けられているパターンと、の位置関係を模式的に示す平面図である。
図12】プラズマ処理装置を模式的に示す一部断面正面図である。
図13】プラズマエッチングされる基板を模式的に示す断面図である。
図14図14(A)は、基板に設けられているパターンと、基板に形成された穴と、の位置関係を模式的に示す平面図であり、図14(B)は、基板に形成された穴を模式的に示す断面図である。
図15図15(A)は、基板の加工方法で実施される各ステップの流れを示すフローチャートであり、図15(B)は、マスク形成ステップで実施される各ステップの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、実施形態に係るマスクの形成方法でマスクが形成される基板や、実施形態に係る基板の加工方法でマスクが利用されて加工される基板の構成例について説明する。図1(A)は、基板1を模式的に示す斜視図である。
【0024】
基板1は、一対の面を備える板状の部材である。例えば基板1は、単結晶シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハであり、互いに概ね平行な表面(第1面)1a及び裏面(第2面)1bを含む。基板1は、互いに交差するように格子状に配列、設定された複数のストリート(分割予定ライン)3によって、複数の矩形状の領域に区画されている。
【0025】
ただし、基板1の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば基板1は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、サファイア、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等でなるウェーハ(基板)であってもよい。
【0026】
ストリート3によって区画された複数の領域の表面1a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等のデバイス5が形成されている。基板1をストリート3に沿って分割することにより、デバイス5をそれぞれ備える複数のチップ(デバイスチップ)が製造される。なお、デバイス5の種類、数、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
【0027】
基板1はストリート3に沿って加工され、表面1aから裏面1bに至る分割溝が基板1に形成される。基板1が分割される際には、例えば、基板1の表面1a又は裏面1bに開口を有するマスク(パターニングされた保護膜)が形成される。マスクの開口はストリート3と重なり、マスクから露出された領域で基板1がエッチング等されて加工されることにより基板1に分割溝が形成される。
【0028】
また、図1(B)は、基板1の表面1a側を拡大して模式的に示す斜視図であり、図2(A)は、基板1を模式的に示す断面図である。基板1の表面1a側には、デバイス5に含まれる特定の形状の素子、配線、回路、電極等の各種のパターン7が無数に形成される。換言すると、デバイス5は各種のパターン7により構成される。各図には、パターン7の代表例が模式的に示されているが、パターン7の形状、厚み、大きさ、機能等は特に限定されず、各パターン7の数、配置、種別、種別数にも限定はない。
【0029】
基板1の表面1a側には、特定のパターン7以外にも様々な構造物が形成される。図2(A)等では、それらの構造物をまとめて一つの層9として表現するが、層9は単一の部材で形成された単一の層ではなく、特定の平面形状を有する複数の層の組み合わせにより形成された層である。層9は、機能層と呼ぶこともできる。
【0030】
デバイス5では、特定のパターン7に到達する穴が基板1の裏面1b側から形成される。基板1に穴が形成される際には、開口を有するマスクが基板1の裏面1bに形成される。マスクの開口は、例えば、パターン7と重なる領域に形成される。そして、マスクから露出された領域で基板1がエッチング等される加工されることにより、基板1に穴が形成される。
【0031】
以下、基板1にパターン7と重なる穴が形成される場合を例に、本実施形態に係る基板の加工方法について説明する。図15(A)は、本実施形態に係る基板の加工方法で実施される各ステップの流れを示すフローチャートである。
【0032】
この基板の加工方法では、まず、基板1の裏面1b側がマスクの材料となる保護膜で被覆される(被覆ステップS10)。その後、保護膜が加工され所定の領域に開口を有するマスクが基板1に形成され(マスク形成ステップS30)、マスクが利用されて基板1が加工される(エッチングステップS40)。下記に説明する基板の加工方法には、加工に利用されるマスクの形成方法が含まれる。まず、本実施形態に係る基板の加工方法で使用される各種の装置について説明する。
【0033】
まず、被覆ステップS10が実施される成膜装置について説明する。図3は、基板1にマスクの材料となる保護膜(レジスト膜)を形成する成膜装置2を模式的に示す一部断面正面図である。成膜装置2は、基板1に保護膜の材料となる液状樹脂を供給することにより、基板1の表面を被覆する保護膜11を形成する。
【0034】
成膜装置2は、成膜装置2の各構成要素を収容するカバー4を備える。カバー4は中空の円柱状に形成されており、カバー4の内側は保護膜11の形成が行われる処理空間6に相当する。
【0035】
カバー4には、基板1を保持するスピンナテーブル8が収容されている。スピンナテーブル8の上面は、水平面と概ね平行な平坦面であり、基板1を保持する保持面8aを構成している。保持面8aは、スピンナテーブル8の内部に形成された流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。保持面8a上に基板1を配置した状態で、保持面8aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、基板1がスピンナテーブル8によって吸引保持される。
【0036】
スピンナテーブル8には、円柱状の回転軸10が連結されている。回転軸10は、カバー4の底壁に設けられた開口4aに挿入されている。回転軸10の上端側は処理空間6においてスピンナテーブル8の下面側の中央部に固定されており、回転軸10の下端側はカバー4の外部に配置されている。
【0037】
回転軸10の下端側は、ロータリージョイント12を介してモータ14に連結されている。モータ14を駆動させると、モータ14の動力がロータリージョイント12及び回転軸10を介してスピンナテーブル8に伝達され、スピンナテーブル8が鉛直方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。
【0038】
また、カバー4には、保護膜11の原料である保護膜材18を供給する保護膜材供給ユニット20が収容されている。例えば保護膜材18は、溶媒に溶質を溶解させることによって生成される液状樹脂である。具体的には、溶媒として水が用いられ、溶質として水溶性の樹脂が用いられる。
【0039】
水溶性の樹脂の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリスチレンスルホン酸、特殊ナイロン、フェノール樹脂、メチロールメラミン樹脂、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0040】
保護膜材供給ユニット20は、L字型のアーム22を備える。アーム22の先端部(一端部)には、スピンナテーブル8の保持面8aに向かって保護膜材18を供給する供給ノズル24が装着されている。また、アーム22は、カバー4の底壁に設けられた開口4bに挿入されており、アーム22の基端部(他端部)はカバー4の外部に配置されている。
【0041】
アーム22の基端部には、モータ26が連結されている。モータ26を駆動させると、アーム22が鉛直方向と概ね平行な回転軸の周りを回転し、供給ノズル24がアーム22の回転軸を中心に旋回する。これにより、供給ノズル24を、保持面8aに重なる位置(供給位置)と、保持面8aに重ならない位置(退避位置)とに位置付けることができる。
【0042】
アーム22には、アーム22に保護膜材18を供給する保護膜材供給源28が接続されている。保護膜材供給源28からアーム22に供給された保護膜材18は、アーム22の内部に設けられている流路(不図示)を介して供給ノズル24に供給され、供給ノズル24からスピンナテーブル8で保持されている基板1に向かって滴下される。
【0043】
表面1a側を保持面8aに向けて基板1をスピンナテーブル8に載せ、スピンナテーブル8で基板1を吸引保持し、スピンナテーブル8を回転させながら基板1の裏面1bに保護膜材18を滴下すると、基板1の裏面1bが保護膜材18でコーティングされる。すなわち、スピンコーティングが実施される。
【0044】
基板1の裏面1bに供給された保護膜材18の余剰分は、基板1の外縁から外側に進み、処理空間6を落下してカバー4の底壁に達する。カバー4の底壁には開口4cが設けられており、開口4cに排液管30が接続されている。カバー4の底壁に到達した保護膜材18は、排液管30から処理空間6の外に排出される。そして、供給ノズル24からの保護膜材18の滴下を停止し、基板1の裏面1b上で保護膜材18を乾燥させると、基板1の裏面1bが保護膜11により被覆される。
【0045】
次に、マスク形成ステップS30等が実施されるレーザ加工装置について説明する。図4は、レーザ加工装置32を模式的に示す斜視図である。レーザ加工装置32は、各構成要素を支持する基台34を備える。
【0046】
基台34の上方には、X軸方向移動テーブル46が設けられている。X軸方向移動テーブル46の底板の下方側は、一対のX軸ガイドレール48にスライド可能に取り付けられている。X軸ガイドレール48の近傍には、X軸リニアスケール48aが設けられている。
【0047】
X軸方向移動テーブル46の下面側には、読み取りヘッド(不図示)が設けられている。X軸リニアスケール48aの目盛りを読み取りヘッドを利用して検出することにより、X軸方向移動テーブル46のX軸方向の位置(座標)や、X軸方向の移動量が算出される。
【0048】
X軸方向移動テーブル46の底板の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸方向に略平行に配置されたねじ軸50が、ボール(不図示)を介して回転可能に連結されている。ねじ軸50の一端部には、モータ52が連結されている。
【0049】
モータ52を動作させると、ねじ軸50が回転し、X軸方向移動テーブル46は、X軸方向に沿って移動する。一対のX軸ガイドレール48、ねじ軸50、モータ52等は、X軸方向移動機構54を構成する。
【0050】
1対のX軸ガイドレール48は、Y軸移動テーブル36上に固定されている。Y軸移動テーブル36は、基台34の上面に固定された一対のY軸ガイドレール38上に、スライド可能に取り付けられている。
【0051】
Y軸ガイドレール38の近傍には、Y軸移動テーブル36のY軸方向の位置を検出する際に利用されるY軸リニアスケール38aが設けられている。Y軸移動テーブル36の下面側には、ナット部(不図示)が設けられている。
【0052】
ナット部には、Y軸ガイドレール38に略平行に配置されたねじ軸40がボール(不図示)を介して回転可能な態様で連結されている。ねじ軸40の一端部には、モータ42が連結されている。Y軸ガイドレール38、ねじ軸40、モータ42等は、Y軸方向移動機構44を構成する。
【0053】
X軸方向移動テーブル46には、チャックテーブル56が支持されている。X軸方向移動機構54を作動させると、チャックテーブル56をX軸方向に沿って移動できる。Y軸方向移動機構44を作動させると、チャックテーブル56をY軸方向に沿って移動できる。
【0054】
次に、図9を参照して、X軸方向移動テーブル46及びチャックテーブル56について詳述する。図9には、X軸方向移動テーブル46を模式的に示す側面図と、チャックテーブル56を模式的に示す一部断面側面図と、が含まれている。ただし、図9では、断面に付されるべきハッチングを説明の便宜のために省略している。
【0055】
チャックテーブル56は、円板状の保持部材56aを有する。保持部材56aの上面及び下面は、それぞれ平坦であり、互いに平行である。保持部材56aは、可視光、赤外光(例えば、近赤外光)が透過する透明な材料で形成されている。保持部材56aは、例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、又は、ソーダガラスで形成されるが、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、又は、フッ化マグネシウムで形成されてもよい。
【0056】
保持部材56aの内部には縦横に張り巡らされた吸引路(不図示)が形成されており、吸引路は保持部材56aの上面に形成された複数の吸引口(不図示)に接続されている。また、吸引路には、エジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。保持部材56aの上に基板1を載せて吸引源を作動させると、吸引路及び吸引口を通じて基板1に負圧が作用し、基板1がチャックテーブル56に吸引保持される。それゆえ、保持部材56aの上面は、保持面として機能する。
【0057】
保持部材56aに形成された吸引路及び開口等では、保持部材56aに入射した光の一部が散乱又は反射される。それゆえ、保持部材56aは、上面または下面から見た場合に完全に透明ではなく、遮光性を有する部分、または、不透明な部分を有する場合がある。しかし、これらの吸引路等を除く保持部材56aの所定の領域は、上面から下面まで透明である。
【0058】
X軸方向移動テーブル46は、長方形の底板46aを含む。底板46aの下方(-Z方向)側は、一対のX軸ガイドレール48にスライド可能に取り付けられている。また、底板46aの前方(+X方向)の端部には、長方形の側板46bの下端部が接続されている。
【0059】
側板46bの上端部には、底板46aと同様の長方形の天板46cの前方の端部が接続されている。底板46a及び天板46cは、Z軸方向で重なる様に配置されており、底板46a、側板46b及び天板46cにより、後方(-X方向)側及びY軸方向の両側が開放された空間46dが形成されている。
【0060】
天板46cの上面側には、チャックテーブル56の枠体56bが、Z軸方向に略平行な回転軸の周りに回転可能に支持されている。天板46cよりも上方に位置する枠体56bの側面は、プーリー部として機能する。
【0061】
側板46bの外側側面には、モータ等の回転駆動源58が設けられている。回転駆動源58の回転軸には、プーリー58aが設けられている。プーリー58a及び枠体56bには、ベルト60がかけられている。
【0062】
回転駆動源58を動作させると、枠体56bは、Z軸方向に略平行な回転軸の周りに回転する。プーリー58aの回転を制御することで、回転軸の周りで任意の角度だけチャックテーブル56は回転する。
【0063】
基台34の上面には、長手部がX軸方向に沿って配置された支持アーム63(図4参照)を介して、下側撮像ユニット64が固定されている。支持アーム63の基端側には支持アーム63を昇降させるボールねじ式の昇降ユニット62が接続されており、下側撮像ユニット64は支持アーム63の先端に固定されている。昇降ユニット62を作動させると、下側撮像ユニット64を昇降できる。
【0064】
下側撮像ユニット64は、所謂、顕微鏡カメラユニットである。例えば、下側撮像ユニット64は、低倍率カメラ及び高倍率カメラの2つのカメラにより構成される。ただし、下側撮像ユニット64は、1つのカメラにより構成されてもよい。下側撮像ユニット64を構成するカメラは、集光レンズ等の所定の光学系と、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子と、を有する(いずれも不図示)。
【0065】
X軸方向移動機構54を作動させてX軸方向移動テーブル46を移動させると、下側撮像ユニット64がX軸方向移動テーブル46の空間46dに差し入れられる。下側撮像ユニット64は、チャックテーブル56よりも下方に設けられている。また、各集光レンズの光軸は、保持部材56aの下面に略垂直に配置されている。
【0066】
下側撮像ユニット64で基板1を撮像する場合には、X軸方向移動テーブル46を移動させて、空間46dに下側撮像ユニット64を配置する。そして、基板1をチャックテーブル56に吸引保持させ保持部材56aを介して基板1を下方から撮像すれば、基板1の下側の撮像画像を取得できる。X軸方向移動機構54及びY軸方向移動機構44を作動させると、基板1の撮像領域を変更できる。
【0067】
昇降ユニット62に対して-Y方向に隣接する位置には、基台34の上面から上方に突出する態様でコラム66が設けられている。コラム66には、X軸方向に略平行な長手部を有するケーシング68が設けられている。
【0068】
ケーシング68には、レーザ照射ユニット(加工ユニット)70の少なくとも一部が設けられている。レーザ照射ユニット70は、ケーシング68の先端に設けられたヘッド部72を有し、基板1に吸収される波長(例えば、355nm)を有するパルス状のレーザビームLをヘッド部72から照射可能である。
【0069】
図5には、レーザ照射ユニット70の光学系の最も単純な構成例が模式的に示されている。レーザ照射ユニット70は、レーザビームを出射するレーザ発振器84と、レーザビームを集光するfθレンズ(集光レンズ)88と、ミラー86と、を有する。レーザ発振器84から出射されたレーザビームは、ミラー86により反射され、fθレンズ88により集光され、ヘッド部72から下方に照射される。図4では、ヘッド部72から下方に照射されるレーザビームLを破線矢印で示す。
【0070】
ミラー86は、向きを変更する駆動源(不図示)に接続されており、向きが制御される。ミラー86の向きを変更すると、レーザ発振器84から出射されミラー86で反射されるレーザビームの進行方向が変わる。そして、fθレンズ88を経てチャックテーブル56に吸引保持された基板1に照射されるレーザビームの集光点の位置が変わる。方向可変なミラー86は、レーザ発振器84が出射しfθレンズ88が集光するレーザビームを走査する走査ユニット(ガルバノスキャナ)として機能できる。
【0071】
ケーシング68の先端部においてヘッド部72に隣接する位置には、上側撮像ユニット74が設けられている。上側撮像ユニット74は、チャックテーブル56に吸引保持された基板1の上面側を撮像する。上側撮像ユニット74が備えるカメラは、下側撮像ユニット64のカメラと同様に構成される。
【0072】
基台34上には、筐体(不図示)が設けられており、筐体の前方(+X方向)の側面には、作業者が指示を入力するための入力部(即ち、入力インターフェース)と、作業者に情報を表示するための表示部とを兼ねるタッチパネル付きディスプレイ76が設けられている。
【0073】
タッチパネル付きディスプレイ76には、例えば、上側撮像ユニット74及び下側撮像ユニット64で撮像した撮像画像が表示される。また、タッチパネル付きディスプレイ76には、撮像画像に対して画像処理が実施されて作成された処理画像が表示されてもよい。
【0074】
レーザ加工装置32は、各構成要素を制御するコントローラ(制御部)80を備える。コントローラ80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、HDD、SSD、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、コントローラの機能が実現される。
【0075】
さらに、コントローラ80の補助記憶装置(記憶装置82)には、各種の被加工物を加工するための加工条件等の情報、下側撮像ユニット64や上側撮像ユニット74が基板1を撮像した撮像画像等、各種の情報が登録される。
【0076】
次に、基板1に穴を形成するエッチングステップS40で使用されるプラズマ処理装置について説明する。図12は、プラズマ処理装置92を示す一部断面正面図である。プラズマ処理装置92は、基板1が収容されるチャンバー94を備える。チャンバー94は、金属等の導電性材料でなり、接地されている。チャンバー94の内部は、基板1に対するプラズマ処理が実施される処理空間96に相当する。
【0077】
チャンバー94の側壁には、基板1の搬送のための開口94aが設けられている。開口94aの外側には、開口94aを開閉するゲート(開閉扉)98が設けられている。ゲート98にはエアシリンダ等の移動機構(不図示)が連結されており、移動機構はゲート98をチャンバー94の側壁に沿って昇降させる。
【0078】
ゲート98を下降させて開口94aを露出させることにより、開口94aを介して基板1を処理空間96に搬入し、又は開口94aを介して基板1を処理空間96から搬出することが可能となる。また、ゲート98を上昇させて開口94aを閉塞することにより、処理空間96が密閉される。
【0079】
チャンバー94の底壁には、チャンバー94の内部と外部とを接続する開口94bが設けられている。開口94bは、配管100を介して真空ポンプ等の排気装置102に接続されている。処理空間96が密閉された状態で排気装置102を作動させると、処理空間96が排気、減圧される。
【0080】
処理空間96には、基板1を保持するチャックテーブル104が設けられている。チャックテーブル104の上面は、水平面と概ね平行な平坦面であり、基板1を保持する保持面104aを構成している。
【0081】
チャックテーブル104としては、基板1を電気的な力で保持する静電チャックを用いることができる。例えば、チャックテーブル104はセラミックス等の誘電体でなり、チャックテーブル104の内部には円盤状の電極106が設けられている。電極106は、保持面104aと概ね平行に配置され、整合器108を介して高周波電源110に接続されている。
【0082】
なお、チャックテーブル104の内部には、水等の冷却液が流れる冷却路(不図示)が設けられていてもよい。冷却液を冷却路に流してチャックテーブル104の内部で循環させることにより、チャックテーブル104が冷却される。
【0083】
チャックテーブル104の上方には、ガス噴出ヘッド112が設けられている。ガス噴出ヘッド112は、金属等の導電性材料でなり、チャンバー94の上壁に設けられた開口94cに挿入されている。なお、チャンバー94とガス噴出ヘッド112との間には、絶縁性材料でなる環状の軸受け114が設けられている。軸受け114は、ガス噴出ヘッド112を囲むように設けられ、チャンバー94とガス噴出ヘッド112とを絶縁している。
【0084】
ガス噴出ヘッド112は、整合器116を介して高周波電源118に接続されている。また、ガス噴出ヘッド112には、ガス噴出ヘッド112を鉛直方向に沿って昇降させる昇降機構(不図示)が連結されている。昇降機構でガス噴出ヘッド112を昇降させることにより、チャックテーブル104とガス噴出ヘッド112との間隔が調節される。
【0085】
ガス噴出ヘッド112の内部には、プラズマ処理用のガスが供給されるガス拡散空間112aが設けられている。また、ガス噴出ヘッド112の下面側には、処理空間96とガス拡散空間112aとを連結させる複数のガス供給路112bが設けられている。さらに、ガス噴出ヘッド112の上面側には、一対のガス供給路112c,112dが設けられている。ガス供給路112cは配管120aを介してガス供給源122aに接続され、ガス供給路112dは配管120bを介してガス供給源122bに接続されている。
【0086】
ガス供給源122aは、配管120a及びガス供給路22cを介してガス拡散空間112aにプラズマ処理用のガスを供給する。同様に、ガス供給源122bは、配管120b及びガス供給路112dを介してガス拡散空間112aにプラズマ処理用のガスを供給する。そして、2種類のガスがガス拡散空間112aにおいて混合される。なお、図12には2つのガス供給源122a,122bからガス噴出ヘッド112にガスが供給される形態を図示しているが、ガス噴出ヘッド112に接続されるガス供給源の数は1又は3以上であってもよい。
【0087】
プラズマ処理装置92を用いて基板1にプラズマ処理(プラズマエッチング)を施す際には、まず、ゲート98が下降し、開口94aが露出する。そして、搬送機構(不図示)によって基板1が開口94aを介して処理空間96に搬入され、チャックテーブル104の保持面104a上に配置される。なお、基板1の搬入時には、ガス噴出ヘッド112を上昇させ、チャックテーブル104とガス噴出ヘッド112との間隔を広げておくことが好ましい。
【0088】
次に、ゲート98が上昇して開口94aが閉塞され、処理空間96が密閉される。そして、高周波電源110によって電極106に所定の電圧が印加される。これにより、チャックテーブル104の保持面104a側で誘電分極が生じ、保持面104aと基板1との間に静電吸着力が作用する。その結果、基板1が保持面104aで吸着保持される。
【0089】
また、チャックテーブル104とガス噴出ヘッド112とがプラズマ処理に適した間隔で配置されるように、ガス噴出ヘッド112の高さが調節される。さらに、排気装置102が作動し、処理空間96が排気、減圧される。
【0090】
次に、ガス供給源122a及び/又はガス供給源122bからガス拡散空間112aに、プラズマ処理用のガスが供給される。また、高周波電源118によってガス噴出ヘッド112に高周波電力が付与される。その結果、ガス拡散空間112a内のガスがプラズマ化し、プラズマ状態のガスが複数のガス供給路112bを介して処理空間96に供給、分散される。そして、プラズマ状態のガスがチャックテーブル104上の基板1に供給され、基板1に所定のプラズマ処理が施される。
【0091】
次に、これまでに説明した装置を使用して実施される本実施形態に係る基板の加工方法について説明する。本実施形態に係る基板の加工方法では、表面1a側にパターン7が設けられた基板1の裏面1b側にパターン7に沿った穴を形成する。特に、基板1の裏面1b側にパターン7に沿った開口が形成されたマスクを配設し、マスクの開口を通して基板1を裏面1b側からエッチングして、基板1の所定の位置に穴を形成する。以下、各ステップについて詳述する。
【0092】
まず、基板1の裏面1b側をマスクの材料となる保護膜11(図2(B)参照)で被覆する被覆ステップS10を実施する。図3には、被覆ステップS10が実施される際の基板1を模式的に示す断面図が含まれている。
【0093】
被覆ステップS10では、上記の成膜装置2を用いて基板1に保護膜11を形成してもよい。具体的には、まず、基板1が、裏面1b側が上方に露出して表面1a側が保持面8aに対向するようにスピンナテーブル8上に配置される。この状態で、保持面8aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、基板1がスピンナテーブル8によって吸引保持される。
【0094】
次に、供給ノズル24を旋回させ、基板1の中心部の直上に位置付ける。そして、スピンナテーブル8をモータ14によって回転させつつ、供給ノズル24から液状の保護膜材18を滴下して基板1の裏面1b側に供給する。その結果、基板1の中心部に供給された保護膜材18が遠心力によって基板1の外周縁側に向かって放射状に広がり、基板1の裏面1bの全体を被覆する。なお、基板1を被覆する保護膜材18の厚さは、スピンナテーブル8の回転数や保護膜材18の供給量を調節することによって制御できる。
【0095】
その後、供給ノズル24から基板1への保護膜材18の供給を停止し、スピンナテーブル8の回転を一定時間維持する。これにより、保護膜材18が乾燥し、基板1の裏面1bを被覆する保護膜11が形成される。なお、保護膜材18の乾燥後、必要に応じて保護膜材18を硬化させるためのベーキング処理等を実施してもよい。
【0096】
上記のように、被覆ステップS10では、基板1に保護膜11が形成され、基板1の裏面1bが保護膜11によって被覆される。図2(B)は、裏面1b側が保護膜11で被覆された基板1を模式的に示す断面図である。ただし、保護膜11の材質や形成方法は適宜変更することができる。
【0097】
次に、パターン7に対応する位置で保護膜11に開口を形成してマスクを形成するために、基板1の表面1a側に設けられたパターン7を撮像してパターン7の位置を検出するアライメントステップS20を実施する。その後、パターン7に対応する位置で保護膜11を除去して保護膜11に開口を形成することによりマスクを形成するマスク形成ステップS30を実施する。アライメントステップS20と、マスク形成ステップS30と、は図4等に示すレーザ加工装置32で実施される。
【0098】
まず、基板1が、裏面1b側が上方に露出して表面1a側が保持部材56aの上面に対向するようにチャックテーブル56上に配置される。この状態で、保持部材56aの上面に吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、基板1がチャックテーブル56によって吸引保持される。
【0099】
次に、X軸方向移動機構54及びY軸方向移動機構44を作動させてチャックテーブル56を下側撮像ユニット64の上方に位置付ける。そして、保持部材56aを通して下側撮像ユニット64で基板1の下面(表面1a)側を撮像し、撮像画像を得る。そして、撮像画像に写るパターン7を検出し、パターン7の位置を特定する。このパターン7と重なる領域等が基板1の加工されるべき位置であり、パターン7の位置が特定されることで基板1の加工されるべき位置が特定される。
【0100】
なお、撮像画像に基づくパターン7の位置の特定は、主にコントローラ80の機能により実現されるとよい。例えば、コントローラ80は、撮像画像に所定の画像処理を実施し、パターン7の外縁の位置、パターン7の中心位置(重心位置)等を特定することでパターン7の位置を特定する。
【0101】
また、下側撮像ユニット64を利用して基板1の表面1aの全域を撮像し、すべてのパターン7の位置を特定してもよい。または、基板1の表面1aの一部のパターン7の位置と、基板1の表面1aにおけるパターン7の配置に関する情報と、により基板1の加工されるべき位置が特定されてもよい。
【0102】
また、パターン7の位置の特定には、上側撮像ユニット74が利用されてもよい。この場合、基板1を吸引保持するチャックテーブル56は、上側撮像ユニット74の下方に位置付けられる。そして、上側撮像ユニット74により裏面1b側から基板1を通して表面1a側が撮像され、撮像画像が取得される。そして、得られた撮像画像に写るパターン7の位置に基づいて、加工されるべき位置が特定される。
【0103】
なお、上側撮像ユニット74により基板1を通して表面1a側を撮像する場合、上側撮像ユニット74には、基板1等を透過する光(例えば赤外光)を検出できるセンサ(撮像素子)を備えるカメラが使用される。そして、アライメントステップS20では、基板1を透過する波長の光を照明光として用いて、基板1の表面1a側に設けられたパターン7を裏面1b側から撮像するとよい。
【0104】
ここで、保護膜11の開口を形成する位置は、アライメントステップS20により特定される。例えば、パターン7と重なる領域において基板1をエッチングして穴を形成することが予定される場合、パターン7の位置に基づいて保護膜11のパターン7と重なる領域において開口が形成されるように後述の通り保護膜11にレーザビームLが照射される。
【0105】
ただし、基板1の穴が形成される位置、及び、保護膜11の開口が形成される位置は、これに限定されない。例えば、基板1の穴の形成が予定された位置はパターン7と完全に重ならなくてもよく、平面視においてパターン7よりも大きな穴、または、パターン7よりも小さな穴の形成が予定されてもよく、パターン7からずれた位置で穴の形成が予定されてもよい。パターン7の平面形状と、保護膜11に形成される開口の平面形状と、も必ずしも一致しない。
【0106】
いずれの場合においても、アライメントステップS20では、保護膜11の開口が形成される位置、すなわち、保護膜11のレーザ加工が実施される位置は、パターン7の位置に基づいて特定される。このように、パターン7に対応する位置で基板1に穴を形成するために、そして、パターン7に対応する位置で保護膜11に開口を形成するために、アライメントステップS20ではパターン7の位置が特定される。これにより、パターン7に沿った穴を基板1に形成できるようになる。
【0107】
レーザ加工装置32では、次に、マスク形成ステップS30を実施する。マスク形成ステップS30では、レーザ照射ユニット70のヘッド部72の下方に基板1を移動させる。そして、ミラー86の向きを変更してレーザビームLの集光位置を切り替えながら、レーザビームLを保護膜11の所定の位置に集光し、保護膜11をレーザ加工する。換言すると、走査ユニットで保護膜11の各加工所定箇所にレーザビームLを走査させる。
【0108】
図5は、マスク形成ステップS30の開始時における基板1を模式的に示す断面図である。マスク形成ステップS30では、パターン7に対応する位置で保護膜11を除去して保護膜11に開口を形成することによりマスクを形成する。特に、レーザ照射ユニット70を利用して、保護膜11の開口を形成する位置にレーザビームLを集光し、当該位置の保護膜11を除去する。なお、レーザ加工を実施する加工条件の一例を下記に示す。
【0109】
レーザビームの波長 :365nm
平均出力 :0.7W
パルスの繰り返し周波数:200kHz
集光点の走査速度 :200mm/s
【0110】
図6(A)は、マスク形成ステップS30の完了時における基板1を模式的に示す断面図である。保護膜11がパターン7に対応する位置で除去されて開口15が形成されると、基板1の裏面1b側にマスク13が形成される。ここで、マスク13は、後述の通り基板1にエッチングが実施される際にエッチングの対象とならない領域をエッチャントから保護する機能を有する。すなわち、マスク13とは、パターニングされたレジスト膜である。
【0111】
本実施形態に係る基板の加工方法では、次に、マスク13を介して基板1をエッチングし、基板1の裏面1b側にパターン7に沿った穴を形成するエッチングステップS40を実施する。ここで、パターン7に沿った穴とは、パターン7の位置及び形状等に基づいて位置及び形状が規定された穴のことである。エッチングステップS40は、図12に示すプラズマ処理装置92が使用されて実施される。
【0112】
図13は、エッチングステップS40における基板1を模式的に示す一部断面正面図である。図13では、基板1のパターン7と、マスク13の開口15と、が省略されている。エッチングステップS40では、プラズマ処理装置92によって基板1の裏面1b側にエッチャントが供給され、基板1が裏面1b側から加工され、基板1に穴が形成される。
【0113】
具体的には、まず、基板1のマスク13が形成された裏面1b側が上方に露出し、反対の表面1a側が保持面104aに対面するように、基板1がチャックテーブル104で保持される。また、ガス噴出ヘッド112のガス拡散空間112a(図12参照)にエッチング用のガスが供給されるとともに、ガス噴出ヘッド112に高周波電力が付与される。
【0114】
これにより、ガス拡散空間112a内のガスがプラズマ化し、イオンやラジカルを含むプラズマ状態のガス124(エッチャントガス)が生成される。そして、プラズマ状態のガス124が基板1の裏面1b側に供給されることにより、マスク13の開口15で露出した基板1がエッチングされる。
【0115】
例えば、基板1がシリコンウェーハである場合には、ガス供給源122aからフッ素系ガス(CF、SF等)が供給され、ガス供給源122bから不活性ガス(He、Ar等)が供給される。そして、これらのガスがガス拡散空間112aにおいて混合される。
【0116】
そして、ガス噴出ヘッド112に高周波電力が付与される。これにより、ガス拡散空間112aに供給されたガスがプラズマ化し、プラズマ状態のガス124が基板1の表面1a側に供給される。その結果、ガス124がマスク13の開口15に入り込み、開口15の内側で露出している基板1の裏面1b側に作用する。これにより、基板1のパターン7に対応する領域にプラズマエッチングが施され穴が形成される。図6(B)は、パターン7に沿った穴17が形成された基板1を模式的に示す断面図である。
【0117】
そして、ガス124の供給を継続すると、プラズマエッチングが進行して穴が深くなり、穴が基板1の表面1a側のパターン7に到達する。なお、エッチングステップS40では、Boschプロセスにより穴が形成されてもよい。この場合には、保護膜形成ステップ、異方性エッチングステップ、等方性エッチングステップを順に実施して基板1をエッチングする工程を繰り返すことにより、穴17を基板1の表面1aに到達させる。
【0118】
保護膜形成ステップでは、基板1の裏面1b側(マスク13側)にプラズマ化したガスを供給することにより、穴の内面を保護膜で被覆する。具体的には、ガス噴出ヘッド112のガス拡散空間112a(図12参照)に保護膜形成用のガスが供給されるとともに、ガス噴出ヘッド112に高周波電力が付与される。これにより、プラズマ状態のガスが基板1の裏面1b側に供給される。
【0119】
基板1にガスを供給すると、ガスに含まれるイオンやラジカルが穴に入り込んで穴の内壁にも堆積される。その結果、穴の内壁に保護膜が形成され、穴が保護膜によって被覆される。
【0120】
例えば、ガス拡散空間112a(図12参照)において、ガス供給源122aから供給されたCを含むガスと、ガス供給源122bから供給されたArガスとが混合され、プラズマ化される。そして、ガスに含まれるCFラジカルが穴の内壁に堆積し、穴の内壁にフッ化炭素を含む絶縁性の保護膜が形成される。例えば、ガスの供給時間は6秒以上8秒以下に設定され、厚さが10nm以下の保護膜が形成される。
【0121】
次に、異方性エッチングステップを実施する。異方性エッチングステップでは、基板1の裏面1b側(マスク13側)にプラズマ化したガスを供給することにより、保護膜を異方的にプラズマエッチングして、穴の底を被覆している保護膜を除去する。具体的には、ガス噴出ヘッド112のガス拡散空間112a(図12参照)にエッチング用のガスが供給される。例えば、ガス供給源122aから供給されたフッ素系ガス(CF、SF等)と、ガス供給源122bから供給された不活性ガス(He、Ar等)とが、ガス拡散空間112aで混合される。
【0122】
そして、電極106及びガス噴出ヘッド112(図12参照)にそれぞれ高周波電力が付与される。これにより、ガス拡散空間112a内のガスがプラズマ化されるとともにチャックテーブル104に向かって加速され、保護膜に異方性のプラズマエッチングが施される。異方性のプラズマエッチングを一定時間(例えば3秒程度)継続すると、保護膜のうち穴の底を覆う部分が除去され、穴の底が露出する。
【0123】
次に、等方性エッチングステップを実施する。等方性エッチングステップでは、基板1の裏面1b側(マスク13側)にプラズマ化したガスを供給することにより、穴の底を等方的にプラズマエッチングする。具体的には、ガス噴出ヘッド112のガス拡散空間112a(図12参照)にエッチング用のガスが供給される。例えば、ガス供給源122aから供給されたフッ素系ガス(CF、SF等)と、ガス供給源122bから供給された不活性ガス(He、Ar等)とが、ガス拡散空間112aで混合される。
【0124】
そして、ガス噴出ヘッド112(図12参照)に高周波電力が付与される。これにより、ガス拡散空間112aに供給されたガスがプラズマ化され、プラズマ状態のガスが基板1の裏面1b側に一定時間(例えば5秒以上7秒以下)供給される。なお、等方性エッチングステップでは、電極106(図12参照)に高周波電力が付与されない。そのため、基板1には等方性のプラズマエッチングが施される。その結果、穴の底及びその近傍が除去され、穴が深くなる。
【0125】
その後、穴が基板1の表面1a側のパターン7に到達するまで、上記の保護膜形成ステップ、異方性エッチングステップ、等方性エッチングステップが繰り返される。そして、穴が基板1の表面1a側のパターン7に到達すると、エッチングステップS40が完了する。
【0126】
エッチングステップS40が完了すると、マスク13が除去される。例えば、マスク13に対してアッシング処理を施すことにより、基板1からマスクが除去される。なお、マスク13が水溶性の樹脂でなる場合には、マスク13に純水等を供給することにより、マスク13を容易に除去できる。
【0127】
なお、ここまで説明した基板の加工方法においては、保護膜11を所定の位置で部分的に除去してエッチング用のマスク13を形成する際に、レーザビームLを高い精度で保護膜11に照射する必要がある。しかしながら、保護膜11へのレーザビームLの照射を実施する間に環境の温度が上昇する等して光学系の状態が変化して、レーザビームの被照射領域の位置や大きさにずれが生じてレーザビームLの照射精度が低下することがある。
【0128】
照射精度が低下したレーザビームLが保護膜11に照射された場合、基板1のマスク13から露出された領域の位置や大きさがエッチングの予定された領域と一致しなくなり、マスク13が低品質となる。そのため、予定された通りにエッチングが実施されず、最終的に形成されるデバイス5の特性不良に繋がる。
【0129】
そこで、本実施形態に係る基板の加工方法では、保護膜11に開口15を形成してマスク13を形成する際に保護膜11をテスト加工し、テスト加工の結果を評価して補正量を決定し、補正量に基づいて保護膜11の加工位置を補正して開口15を形成する。すなわち、マスク形成ステップS30では、テスト加工を実施して、テスト加工の結果を利用して保護膜11を本加工してマスク13を形成する。
【0130】
以下、本実施形態に係る基板の加工方法におけるマスク形成ステップS30の各ステップについて詳述する。図7(A)には、マスク形成ステップS30の開始時における基板1の裏面1b側を模式的に示す平面図が含まれている。図7(B)には、マスク形成ステップS30の開始時における基板1を模式的に示す断面図が含まれている。
【0131】
図7(B)には、基板1の表面1a側に形成された一つのパターン7とその周囲の領域が示されている。図7(B)では、基板1の表面1a側のパターン7以外の構造物である層9を省略している。図7(B)に示す通り、この時点において基板1の裏面1b側を被覆する保護膜11には開口15等が形成されていない。
【0132】
図15(B)は、マスク形成ステップS30の各ステップの流れを示すフローチャートである。マスク形成ステップS30の各ステップについて、順番に説明する。まず、マスク形成ステップS30では、基板1の表面1a側のパターン7に対応する領域において保護膜11の除去を行い、テストパターンを保護膜11に形成するテスト加工ステップS31を実施する。
【0133】
アライメントステップS20が実施されたことでパターン7の位置が特定されており、この時点でマスク形成ステップS30において開口15が形成される領域、すなわち、保護膜11の除去される位置が特定されている。以下、パターン7と過不足なく重なる領域において保護膜11が除去されてマスク13の開口15が形成される場合を例に説明する。
【0134】
図7(A)は、基板1の裏面1b側を模式的に示す平面図であり、図7(A)には、開口15が形成されることが予定された領域19が示されている。ただし、領域19はパターン7と過不足なく重なる場合に限定されない。図7(A)では、領域19が破線により表現されている。図7(A)の位置Aは図7(B)の位置Aに相当し、図7(A)の位置A´は図7(B)の位置A´に相当する。
【0135】
テスト加工ステップS31では、例えば、保護膜11の除去が予定された領域19において、または、領域19の内側の領域において保護膜11が除去され、テストパターン21が保護膜11に形成される。テストパターン21の形成は、レーザビームLの照射位置が異なること以外、上述の通り保護膜11に開口15を形成する条件と同様の条件でレーザ加工装置32により実施されるとよい。すなわち、テスト加工ステップS31では、レーザ照射ユニット70を用いて保護膜11にレーザビームLを照射して保護膜11の除去を実施する。
【0136】
図8(A)は、領域19の内側の領域において保護膜11にテストパターン21が形成された基板1の裏面1b側を模式的に示す平面図であり、図8(B)は、テストパターン21が形成された基板1を模式的に示す断面図である。
【0137】
特に、テスト加工ステップS31では、基板1の表面1a側のパターン7に対応する領域19の一部または全域でのみ保護膜11を除去してテストパターン21を保護膜11に形成することが好ましい。この場合、後述の通り本加工ステップS35を実施したときにテストパターン21が保護膜11から除去されるため、テストパターン21の形成がマスク13の品質に影響を与えない。
【0138】
別の観点から再び説明すると、保護膜11の領域19よりも内側にテストパターン21が形成される場合、後述の通り最終的にマスク13が形成される際に開口15として失われる保護膜11を利用してテストパターン21を形成できる。そのため、マスク13として必要となる領域の保護膜11がテストパターン21の形成で失われることがない。下記に説明する通り、形成されたテストパターン21は、レーザビームLの照射精度の評価に利用できる。
【0139】
テスト加工ステップS31の後、テスト加工ステップS31において保護膜11に形成されたテストパターン21を撮像して、テストパターン21の位置を検出するテストパターン位置検出ステップS32が実施される。
【0140】
保護膜11に形成されたテストパターン21の撮像は、レーザ加工装置32の下側撮像ユニット64により実施される。下側撮像ユニット64で基板1を下面(表面1a)側から撮像する場合、図9に示される通り、チャックテーブル56を下側撮像ユニット64の上方に移動させる。そして、表面1a側から基板1を通して裏面1b側を撮像し、テストパターン21が写る撮像画像を取得する。この場合、下側撮像ユニット64が備える撮像カメラには、基板1を透過する波長の光を受光できる撮像素子が使用される。
【0141】
ただし、下側撮像ユニット64で撮像を実施すると、テストパターン21がパターン7に隠れて撮像画像に写らない場合がある。そこで、保護膜11に形成されたテストパターン21の撮像は、レーザ加工装置32の上側撮像ユニット74により実施されてもよい。図10は、上側撮像ユニット74で上面(裏面1b)側から撮像される基板1を模式的に示す断面図である。上側撮像ユニット74で基板1を撮像すると、保護膜11に形成されたテストパターン21が撮像される。
【0142】
図11(A)は、基板1の裏面1b側が写る撮像画像の一例を模式的に示す平面図である。図11(A)に示す撮像画像は、例えば、上側撮像ユニット74で基板1を撮像した際に得られる撮像画像である。図11(A)には、保護膜11に形成されたテストパターン21aが写る。そして、テストパターン位置検出ステップS32では、テストパターン21aが写る撮像画像からテストパターン21aの位置を特定する。
【0143】
例えば、レーザ加工装置32のコントローラ80は、この撮像画像からテストパターン21aを検出して位置を特定する。より詳細には、撮像画像を構成する画素のうち、テストパターン21aに属する画素の領域を検出し、当該領域と形及び大きさが同一の平面図形の重心の位置をテストパターン21aの位置として特定する。ただし、テストパターン21aの位置の特定方法はこれに限定されない。特定されたテストパターン21aの位置は、記憶装置82に記録されるとよい。
【0144】
マスク形成ステップS30では、基板1の表面1a側に設けられたパターンを撮像して、パターンの位置を検出するパターン位置検出ステップS33が実施される。パターン位置検出ステップS33は、テストパターン位置検出ステップS32と同様に実施される。すなわち、パターン位置検出ステップS33は、例えば、レーザ加工装置32の上側撮像ユニット74、または、下側撮像ユニット64により実施される。そして、基板1のパターン7aが写る撮像画像が取得される。
【0145】
下側撮像ユニット64で基板1を下面(表面1a)側から撮像する場合、図9に示される通り、チャックテーブル56を下側撮像ユニット64の上方に移動させる。そして、基板1の表面1a側を撮像し、パターン7aが写る撮像画像を取得する。
【0146】
また、上側撮像ユニット74で基板1を上面(裏面1b)側から撮像する場合、図10に示される通り、チャックテーブル56を上側撮像ユニット74の下方に移動させる。そして、裏面1b側から基板1を通して表面1a側を撮像し、パターン7aが写る撮像画像を取得する。この場合、上側撮像ユニット74が備える撮像カメラには、基板1を透過する波長の光を受光できる撮像素子が使用される。そして、パターン位置検出ステップS33では、基板1を透過する波長の光を照明光として用いて、基板1の表面1a側に設けられたパターン7aを裏面1b側から撮像するとよい。
【0147】
図11(B)は、基板1の表面1a側が写る撮像画像の一例を模式的に示す平面図である。図11(B)に示す撮像画像は、例えば、下側撮像ユニット64で基板1を撮像した際に得られる撮像画像である。図11(B)に示される撮像画像には、パターン7aが写る。そして、パターン位置検出ステップS33では、パターン7aが写る撮像画像からパターン7aの位置を特定する。
【0148】
例えば、レーザ加工装置32のコントローラ80は、この撮像画像からパターン7aを検出して位置を特定する。パターン7aの位置の特定は、上述のテストパターン21aの位置の特定方法と同様の方法で実施される。特定されたパターン7aの位置は、記憶装置82に記録されるとよい。
【0149】
ここで、テストパターン位置検出ステップS32で位置が検出されるテストパターン21aは、パターン位置検出ステップS33で位置が検出されるパターン7aに対応する位置で保護膜11に形成されたものとするよい。換言すると、テストパターン21aは、パターン位置検出ステップS33で位置が検出されるパターン7aに沿った穴17を基板1に形成するために使用されるマスク13の開口15が形成される領域19で保護膜11に形成される。
【0150】
また、テストパターン21aは、保護膜11のマスク13の開口15が形成されるすべての領域19に形成される必要はない。保護膜11にはレーザビームLの照射精度の評価を十分に実施できる数、及び位置でテストパターン21aが形成されればよい。また、テストパターン位置検出ステップS32では、保護膜11に形成されたすべてのテストパターン21aの位置が検出されなくてもよい。レーザビームLの照射精度の評価を十分に実施できる数でテストパターン21aの位置が検出されるとよい。
【0151】
さらに、テストパターン位置検出ステップS32と、パターン位置検出ステップS33と、はいずれが先に実施されてもよく、同時に実施されてもよい。例えば、上側撮像ユニット74または下側撮像ユニット64を使用してパターン7aが写る撮像画像を取得した直後に、チャックテーブル56を移動させることなくこのパターン7aに重なったテストパターン21aが写る撮像画像を取得する。
【0152】
この場合、1度目の撮像を実施した後に、上側撮像ユニット74または下側撮像ユニット64をZ軸方向に沿って昇降させてピントを調整する等するだけで2度目の撮像の実施が可能となる。そのため、取得される2枚の撮像画像では写る領域が変わらないため、両者を直接的に比較してレーザビームLの照射精度の評価を直感的かつ容易に実施できる。
【0153】
また、このようにテストパターン位置検出ステップS32と、パターン位置検出ステップS33と、が同時に実施される場合、チャックテーブル56の移動が最小量で済むため、マスク形成ステップS30の所要時間が比較的短くなる場合がある。
【0154】
なお、アライメントステップS20においてパターン7が写る撮像画像が取得されていた場合、パターン位置検出ステップS33では、アライメントステップS20で取得された撮像画像が使用されてパターン7の位置が検出されてもよい。この場合さらに、パターン7の位置の検出は、アライメントステップS20においてパターン7が写る撮像画像が取得された直後に実施されてもよい。
【0155】
換言すると、アライメントステップS20と同時にパターン位置検出ステップS33が実施されてもよい。さらに換言すると、アライメントステップS20と同時にマスク形成ステップS30の一部のステップが実施されてもよい。
【0156】
テストパターン位置検出ステップS32と、パターン位置検出ステップS33と、を実施した後、補正量算出ステップS34が実施される。補正量算出ステップS34では、テストパターン位置検出ステップS32において検出されたテストパターン21の位置と、パターン位置検出ステップS33において検出されたパターン7の位置と、のずれ量をテストずれ量として算出する。そして、テストずれ量に基づいて補正量を算出する。
【0157】
図11(C)は、保護膜11に形成されたテストパターン21aと、基板1に設けられているパターン7aと、の位置関係を模式的に示す平面図である。特に図11(C)に示す平面図27aでは、テストパターン21aの外縁が破線で表現され、パターン7aの外縁が実線で表現されている。また、平面図27aでは、テストパターン21aの中心(重心)21bと、パターン7aの中心(重心)7bと、がそれぞれ点で表現されている。
【0158】
例えば、テストパターン位置検出ステップS32では、テストパターン21aの中心21bの位置が検出され、パターン位置検出ステップS33では、パターン7aの中心7bの位置が検出される。そして、テストパターン21aの中心21bと、パターン7aの中心7bと、の相対位置からテストずれ量が算出される。例えば、XY平面における中心21bと、中心7bと、の座標の差からテストずれ量とずれの方向が算出される。図11(C)には、両者のずれ23が矢印で表現されている。
【0159】
次に、テストずれ量に基づいて補正量が算出される。この補正量は、後述の本加工ステップS35においてレーザビームLを保護膜11に照射する際のレーザビームLの照射条件の補正に使用される。例えば、テストパターン21aの中心21bがパターン7aの中心7bと重なることが予定されてテストパターン21aが保護膜11に形成されていた場合、図11(C)に示されたずれ23の量(テストずれ量)がそのまま補正量となる。
【0160】
ただし、算出される補正量はこれに限定されない。例えば、テスト加工ステップS31において、テストパターン21aの中心21bがパターン7aの中心7bと重なることが予定されてテストパターン21aが保護膜11に形成されなくてもよい。すなわち、両者の中心21b,7bがずれるように計画されてテストパターン21aが保護膜11に形成されてもよい。
【0161】
この場合、テストパターン21aの形成が計画された位置と、実際にテストパターン21aが形成された位置と、のずれを評価することで補正量を決定できる。そして、この場合、テストパターン21aの形成が計画された位置と、実際にテストパターン21aが形成された位置と、をパターン7aとの位置関係で規定することにより、両者のずれを評価できる。
【0162】
例えば、テストパターン21aの形成が計画された位置、及び、パターン7aの位置の計画上の位置関係と、実際にテストパターン21aが形成された位置、及び、パターン7aの位置の実際の位置関係と、を比較する。そして、これら2つの位置関係が一致している場合、すなわち、テストずれ量が予定された量となる場合、レーザビームLの照射条件に補正の必要がないことが判明し、補正量をゼロとして算出できる。また、これら2つの位置関係が一致していない場合、これらのずれから補正量を算出できる。
【0163】
いずれにせよ、補正量算出ステップS34では、テストパターン21aの位置と、パターン7aの位置と、のずれ量をテストずれ量として算出し、テストずれ量に基づいて補正量を算出する。補正量の算出は、例えば、レーザ加工装置32のコントローラ(制御部)80の機能により実施されるとよい。また、算出された補正量等は、コントローラ80の記憶装置(記憶部)82に登録されるとよい。
【0164】
ここで、補正量とは、レーザビームLの照射条件のうち照射位置に関する補正の量である。ただし、補正量はこれに限定されず、照射位置ではない照射条件に関する補正量でもよい。また、算出される補正量が照射位置に関する補正の量である場合、補正する方向が併せて算出されてもよい。
【0165】
マスク形成ステップS30では、次に、補正量算出ステップS34で算出された補正量に基づいて保護膜11の除去を実施する位置を補正して保護膜11を除去し、保護膜11に開口15を形成してマスク13を形成する本加工ステップS35を実施する。図6(B)は、マスク形成ステップS30の本加工ステップS35を模式的に示す断面図である。
【0166】
本加工ステップS35では、開口15が形成されることが予定された領域19(図7(A)及び図7(B)参照)の全域に開口15が形成されるようにレーザ加工装置32のレーザ照射ユニット70で保護膜11にレーザビームLを照射する。このとき、テスト加工ステップS31で実施したレーザビームLの照射時の照射条件を算出された補正量で補正して新たに照射条件を導出し、導出された新たな照射条件でレーザビームLを保護膜11に照射する。例えば、本加工ステップS35では、算出された補正量を参照して走査ユニット(ガルバノスキャナ)を制御する。
【0167】
照射条件のうちレーザビームLの照射位置を算出された補正量で補正し、補正された照射条件でレーザビームLを保護膜11に照射すると、開口15が形成されることが予定された領域19に高い精度で開口15が形成される。すなわち、高品質なマスク13が形成される。特に、本実施形態に係る基板の加工方法によると、マスクの形成対象となる保護膜11そのものを利用してマスク形成の直前に条件補正のためのテスト加工を実施できるため、極めて高い実効性で条件補正を実施できる。
【0168】
そして、開口15が形成されることが予定された領域19にテストパターン21が収まる場合、このときにテストパターン21のまわりで保護膜11が除去され、テストパターン21が開口15に取り込まれて消失する。そのため、テストパターン21がマスク13に残らず、エッチングステップS40においてテストパターン21が基板1の加工に影響を与えることもない。
【0169】
また、本実施形態に係る基板の加工方法では、エッチングステップS40が実施された後、基板1に形成された穴17(図6(B)参照)を観察して加工の精度を評価してもよい。そして、基板1における穴17の形成が予定された位置と、エッチングステップS40で穴17が実際に形成された位置と、のずれを評価して加工の良否が判定されてもよい。以下、加工の良否の判定に係る構成を中心に、本実施形態に係る基板の加工方法の説明を続ける。
【0170】
エッチングステップS40の後、基板1の裏面1bに形成された穴17を撮像して、穴17の位置を検出する穴形成位置検出ステップS50を実施する。穴形成位置検出ステップS50は、例えば、アライメントステップS20、テストパターン位置検出ステップS32、及び、パターン位置検出ステップS33と同様に、上側撮像ユニット74または下側撮像ユニット64が利用されて実施される。この場合、エッチングステップS40が終了した後、基板1がレーザ加工装置32に戻される。
【0171】
ただし、本実施形態に係る基板の加工方法はこれに限定されず、撮像ユニットを備え、レーザ加工装置32とは異なる装置で穴形成位置検出ステップS50が実施されてもよい。以下、レーザ加工装置32で以後の各ステップが実施される場合を例に説明する。
【0172】
穴形成位置検出ステップS50では、チャックテーブル56で基板1を吸引保持させる。そして、チャックテーブル56を上側撮像ユニット74の下方、または、下側撮像ユニット64の上方に位置付けて、基板1の撮像を実施する。そして、得られた撮像画像に基づいて、穴17の位置が特定される。
【0173】
例えば、レーザ加工装置32のコントローラ80は、この撮像画像から穴17を検出して位置を特定する。より詳細には、撮像画像を構成する画素の内、穴17に属する画素の領域を検出し、当該領域と形及び大きさが同一の平面図形の重心の位置を穴17の位置として特定する。ただし、穴17の位置の特定方法はこれに限定されない。特定された穴17の位置は、記憶装置82に記録されるとよい。
【0174】
特に、穴形成位置検出ステップS50では、パターン位置検出ステップS33において位置が検出されたパターン7の近傍において撮像が実施されることが好ましい。これは、穴形成位置検出ステップS50で得られた撮像画像から特定された穴17の位置と、その近傍のパターン7の位置と、を比較することで穴17の形成位置(加工ずれ)の良否を判定するためである。
【0175】
ただし、本実施形態に係る基板の加工方法はこれに限定されず、穴形成位置検出ステップS50では、パターン位置検出ステップS33において位置が検出されたパターン7の近傍において撮像が実施されなくてもよい。この場合、撮像画像から特定された穴17の位置の良否を判定するために、穴17の近傍で基板1に形成されているパターン7が撮像され、位置が特定される追加のパターン位置検出ステップS33が実施されてもよい。
【0176】
換言すると、マスク形成ステップS30におけるパターン位置検出ステップS33とは別に、加工ずれ量算出ステップS60の前に別のパターン位置検出ステップS33が実施されてもよい。例えば、穴形成位置検出ステップS50と同時、直前、または、直後にもパターン位置検出ステップS33が実施されてもよい。
【0177】
この場合、穴形成位置検出ステップS50では、マスク形成ステップS30において位置が検出されたパターン7とは無関係に位置検出の対象となる穴17を選択できるため、特定のパターン7(穴17)を探索する動作が不要であり工程が簡略化される。換言すると、位置検出の対象となる穴17及びパターン7が互いに最も近接した組でさえあれば、位置検出の対象となる穴17及びパターン7を任意に選択可能である。
【0178】
次に、パターン位置検出ステップS33において検出されたパターン7の位置と、穴形成位置検出ステップS50において検出された穴17の位置と、のずれ量を加工ずれ量として算出する加工ずれ量算出ステップS60を実施する。
【0179】
図14(A)は、基板1に形成された穴17aと、基板1に設けられているパターン7cと、の位置関係を模式的に示す平面図である。また、図14(B)は、穴17aが形成された基板1を模式的に示す断面図である。特に図14(A)に示す平面図27bでは、穴17aの外縁と、パターン7cの外縁と、が実線で表現されている。また、平面図27bでは、穴17aの中心(重心)17bと、パターン7cの中心(重心)7dと、がそれぞれ点で表現されている。
【0180】
例えば、加工ずれ量算出ステップS60では、穴17aの中心17bの位置が検出され、パターン位置検出ステップS33では、パターン7cの中心7dの位置が検出される。そして、穴17aの中心17bと、パターン7cの中心7dと、の相対位置から加工ずれ量が算出される。例えば、XY平面における中心21bと、中心7bと、の座標の差からテストずれ量とずれの方向が算出される。図14(A)には、両者のずれ25が矢印で表現されている。
【0181】
本実施形態に係る基板の加工方法では、次に、加工ずれ量算出ステップS60において算出した加工ずれ量が許容範囲に該当するか否かを判定する合否判定ステップS70を実施する。合否判定ステップS70は、例えば、レーザ加工装置32のコントローラ(制御部)80の機能により実現されるとよい。そして、コントローラ80の記憶装置82には、判定の基準となる加工ずれ量の許容範囲が予め登録されるとよい。
【0182】
合否判定ステップS70では、コントローラ80は、加工ずれ量算出ステップS60において算出された加工ずれ量と、記憶装置82に記憶された許容範囲と、を比較する。そして、算出された加工ずれ量が許容範囲に収まる場合、加工が適切に実施されたと判定する。その一方で、算出された加工ずれ量が許容範囲に収まらない場合、何らかの加工異常が生じていると判定する。
【0183】
加工異常の原因としては、基板1の取り違え、マスク13の異常、不適切なエッチングステップS40の実施等が考えられる。ただし、本実施形態に係る基板の加工方法では、予めマスク13が高品質に作成されるようにテスト加工が実施され加工条件が補正されてマスク13が作成されるため、マスク13の異常の可能性は比較的低い。
【0184】
いずれにせよ、基板1の加工方法の管理者等による工程の確認が必要となるため、加工異常が生じていると判定される場合、コントローラ80は警告動作を実施する。例えば、レーザ加工装置32のタッチパネル付きディスプレイ76に、発生した加工異常の内容を表示させ、管理者等に警告を報知する。ただし、警告の報知方法はこれに限定されない。
【0185】
以上に説明する通り、本実施形態に係る基板の加工方法(マスクの形成方法)では、パターンに対応する領域において保護膜を除去してテストパターンを形成し、テストパターンとパターンの位置のずれ量に基づいて補正量を算出する。算出された補正量は、保護膜の所定の位置に開口を形成する際に利用できる。これにより、所定の位置に高い精度で開口が形成された高品質なマスクが基板に形成される。
【0186】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、図15(A)及び図15(B)に示す通り、基板1の加工方法として被覆ステップS10から合否判定ステップS70までが実施される場合について説明した。しかしながら、本発明の一態様はこれに限定されない。
【0187】
本発明の一態様に係る基板1の加工方法のうち、被覆ステップS10からエッチングステップS40までの工程は、基板1へのマスクの形成方法として実施可能である。このマスクの形成方法によると、テスト加工の結果を参照して開口15を保護膜11に形成してマスク13を形成できるため、高品質なマスク13を形成できる。
【0188】
また、本発明の一態様に基板1の加工方法のうち、パターン位置検出ステップS33と、穴形成位置検出ステップS50と、加工ずれ量算出ステップS60と、合否判定ステップS70と、の工程は、加工後の基板の検査方法として実施可能である。この基板の検査方法によると、基板1に形成された穴17と、基板1の表面1a側に形成されたパターン7と、の位置関係から基板1に実施された加工の良否、すなわち、加工ずれ量が許容範囲に該当するか否かを容易に判定できる。
【0189】
さらに、例えば、上記実施形態では、マスク形成ステップS30においてレーザ加工装置32を使用する場合を例に説明したが、本発明の一態様に係る基板の加工方法(マスクの形成方法)はこれに限定されない。
【0190】
例えば、マスク形成ステップS30では、環状の砥石部を備える切削ブレードが装着された切削装置(不図示)により保護膜11が部分的に除去されて開口15が形成されてもよい。また、テストパターン21も、保護膜11が部分的に切削されること保護膜11に形成されてもよい。
【0191】
この場合においても、切削ブレードで保護膜11にテストパターン21を形成して、テストパターン21の形成位置に基づいて補正量を算出し、補正量を参照して本加工を実施すると、開口15が高精度に形成された高品質なマスク13が得られる。そして、高品質なマスク13を利用することで、基板1を高品質に加工(エッチング)できる。
【0192】
なお、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0193】
1 基板
1a 表面
1b 裏面
3 ストリート
5 デバイス
7,7a,7c パターン
7b,7d 中心
9 層
11 保護膜
13 マスク
15 開口
17,17a 穴
17b 中心
19 領域
21,21a テストパターン
21b 中心
23,25 ずれ
27a,27b 平面図
2 成膜装置
4 カバー
4a,4b 開口
6 処理空間
8 スピンナテーブル
8a 保持面
10 回転軸
12 ロータリージョイント
14 モータ
18 保護膜材
20 保護膜材供給ユニット
22 アーム
22c ガス供給路
24 供給ノズル
26 モータ
28 保護膜材供給源
30 排液管
32 レーザ加工装置
34 基台
36 Y軸移動テーブル
38 Y軸ガイドレール
38a Y軸リニアスケール
40 ねじ軸
42 モータ
44 Y軸方向移動機構
46 X軸方向移動テーブル
46a 底板
46b 側板
46c 天板
46d 空間
48 X軸ガイドレール
48a X軸リニアスケール
50 ねじ軸
52 モータ
54 X軸方向移動機構
56 チャックテーブル
56a 保持部材
56b 枠体
58 回転駆動源
58a プーリー
60 ベルト
62 昇降ユニット
63 支持アーム
64 下側撮像ユニット
66 コラム
68 ケーシング
70 レーザ照射ユニット
72 ヘッド部
74 上側撮像ユニット
76 タッチパネル付きディスプレイ
80 コントローラ
82 記憶装置
84 レーザ発振器
86 ミラー
88 fθレンズ
92 プラズマ処理装置
94 チャンバー
94a,94b,94c 開口
96 処理空間
98 ゲート
100 配管
102 排気装置
104 チャックテーブル
104a 保持面
106 電極
108 整合器
110 高周波電源
112 ガス噴出ヘッド
112a ガス拡散空間
112b,112c,112d ガス供給路
114 軸受け
116 整合器
118 高周波電源
120a,120b 配管
122a,122b ガス供給源
124 ガス
図1
図2
図3
図4
図5
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