(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156541
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ロボットハンド及びそれを備えるドローン
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20241029BHJP
B64U 10/14 20230101ALI20241029BHJP
B64U 101/26 20230101ALN20241029BHJP
B64U 101/64 20230101ALN20241029BHJP
【FI】
B25J5/00 Z
B64U10/14
B64U101:26
B64U101:64
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071093
(22)【出願日】2023-04-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】592158969
【氏名又は名称】西武建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(71)【出願人】
【識別番号】501267357
【氏名又は名称】国立研究開発法人建築研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】古藤 憲
(72)【発明者】
【氏名】宮内 博之
(72)【発明者】
【氏名】兼松 学
(72)【発明者】
【氏名】二村 憲太郎
(72)【発明者】
【氏名】川前 勝三郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 亮
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS29
3C707BS10
3C707BS26
3C707CS08
3C707DS01
3C707ES06
3C707ES07
3C707ES10
3C707ET02
3C707EU11
3C707EU13
3C707EV11
3C707HS27
3C707WA26
(57)【要約】
【課題】係留時に係留対象等を損傷させることがなく、利便性を向上させたロボットハンド装置及びそれを備えるドローンを提供する。
【解決手段】ドローンAに取付けられるロボットハンド装置Wであって、人の手を模したロボットハンド本体1と、ロボットハンド本体1の各指部f1~f5に開閉動作を実行させる指部開閉手段2と、を備え、ロボットハンド本体1は、少なくともその外周面が、柔軟性を有する素材により形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドローンに取付けられるロボットハンド装置であって、
人の手を模したロボットハンド本体と、前記ロボットハンド本体の各指部に開閉動作を実行させる指部開閉手段と、を備え、
前記ロボットハンド本体は、少なくともその外周面が、柔軟性を有する素材により形成されている、ロボットハンド装置。
【請求項2】
前記ロボットハンド本体は、全体がソフトマテリアルにより形成されている、請求項1に記載のロボットハンド装置。
【請求項3】
前記指部開閉手段は、前記各指部について独立して開閉動作を実行可能に構成されている、請求項1又は2に記載のロボットハンド装置。
【請求項4】
前記指部開閉手段は、その一端が前記各指部の先端側に固定され、その他端が前記各指部の基端側に延びる索部材と、前記各索部材を前記各指部の基端側に牽引する牽引手段と、を有し、
前記各指部は、ソフトマテリアルの弾性力でもって、開状態となる方向に付勢されており、前記各索部材が前記牽引手段により牽引されることで、閉状態に遷移するように構成されている、請求項3に記載のロボットハンド装置。
【請求項5】
前記牽引手段は、前記各索部材が巻回されるボビンと、前記ボビンを、前記各索部材を巻取る方向に回動させる回動手段と、を含み、
前記回動手段は、遠隔で駆動制御可能なモータである、請求項4に記載のロボットハンド装置。
【請求項6】
前記各指部の内部には、空洞が設けられ、
前記指部開閉手段は、前記空洞への空気の流入及び流出でもって、前記各指部を膨張及び収縮させることで、前記各指部に開閉動作を実行させる、請求項2に記載のロボットハンド装置。
【請求項7】
前記ロボットハンド本体の基端から延び、複数の関節が形成されたアーム部を備え、
前記アーム部は、その基端が前記ドローンの上面に取付けられている、請求項1に記載のロボットハンド装置。
【請求項8】
請求項1に記載のロボットハンド装置を備えたドローン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド及びそれを備えるドローンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやインターネットといったテクノロジーの発展を背景に、ドローンが世界的に普及している。ドローンとは、遠隔操作や自動制御によって無人で飛行できる航空機であり、マルチコプターとも呼ばれる。
【0003】
ドローンの利用用途としては、予め装着されたカメラや点検器具を用いて、特に高層ビルの外壁等、人力のみで実施困難な範囲の空撮や点検等を行う、荷物を運搬するといった用途が挙げられる。
【0004】
特に、荷物の運搬を実施するにあたって、特許文献1に示すように、ロボットハンドを備えたドローンが提案されている。
このロボットハンド(エンドエフェクタ)は、ロボットアームを構成するリンク機構の先端部に設けられており、ロボットアームを含め、剛性を有するパーツでもって機械的に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のようなロボットアームを備えたドローンについて、上記のような荷物の運搬のみならず、外壁の点検等に利用する場合、ドローンの飛行位置を安定させるために、ロボットハンドを手摺等の係留対象に係留させる利用態様が想定される。
【0007】
しかしながら、上記のようなロボットハンドの場合、係留時に係留対象等を損傷させてしまう恐れがあり、外壁の点検等への積極的な利用が困難となる、という問題があった。
【0008】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであって、係留時に係留対象等を損傷させることがなく、利便性を向上させたロボットハンド装置及びそれを備えるドローンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、ドローンに取付けられるロボットハンド装置であって、
人の手を模したロボットハンド本体と、前記ロボットハンド本体の各指部に開閉動作を実行させる指部開閉手段と、を備え、
前記ロボットハンド本体は、少なくともその外周面が、柔軟性を有する素材により形成されている。
【0010】
本発明によれば、ロボットハンド本体の外周面が、柔軟性を有する素材により形成されていることで、作業者は、ロボットハンド本体を係留対象に係留させる際、係留対象を損傷させることなく、ドローンの飛行位置を安定させることができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記ロボットハンド本体は、全体がソフトマテリアルにより形成されている。
【0012】
このような構成とすることで、ロボットハンド本体を係留対象に強力に係留させた場合でも、係留対象を損傷させる恐れがなくなり、ドローンの飛行位置をより安定させることができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記指部開閉手段は、前記各指部について独立して開閉動作を実行可能に構成されている。
【0014】
このような構成とすることで、作業者は、ロボットハンド本体を、係留対象に係留させるのみならず、所定の点検装置や荷物等をその形状に応じて安定的に保持させることができ、本ロボットハンド装置の利便性が向上する。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記指部開閉手段は、その一端が前記各指部の先端側に固定され、その他端が前記各指部の基端側に延びる索部材と、前記各索部材を前記各指部の基端側に牽引する牽引手段と、を有し、
前記各指部は、ソフトマテリアルの弾性力でもって、開状態となる方向に付勢されており、前記各索部材が前記牽引手段により牽引されることで、閉状態に遷移するように構成されている。
【0016】
このような構成とすることで、ロボットハンド本体に複雑な構成を導入することなく、簡素な構成でもって、各指部の開閉動作が可能となるため、軽量化や故障リスクの低減に資する。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記牽引手段は、前記各索部材が巻回されるボビンと、前記ボビンを、前記各索部材を巻取る方向に回動させる回動手段と、を含み、前記回動手段は、遠隔で駆動制御可能なモータである。
【0018】
このような構成とすることで、簡素な構成を維持しつつ、高層階の係留対象への係留や、所定の点検作業、高層階への荷物の運搬等を容易に実行することができ、本ロボットハンド装置の利便性が向上する。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記ロボットハンド本体の基端から延び、複数の関節が形成されたアーム部を備え、前記アーム部は、その基端が前記ドローンの上面に取付けられている。
【0020】
このような構成とすることで、アーム部がドローンのプロペラに干渉する事態を抑制しつつ、ロボットハンド本体の可動域が増大するため、種々の使用態様において、本ロボットハンド装置の利便性が向上する。
【0021】
また、本発明は、上記したロボットハンド装置を備えたドローンである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、係留時に係留対象等を損傷させることがなく、利便性を向上させたロボットハンド装置及びそれを備えるドローンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係るドローンを示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るロボットハンド装置の構成を部分的に示す拡大図であって、(a)平面図、(b)側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るアーム部の動作態様を示す側面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るアーム部の動作態様を示す側面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るロボットハンド本体及び指部開閉手段を示す底面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るロボットハンド本体の動作態様を示す底面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るドローンの使用態様を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るドローンの使用態様を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るドローンの使用態様を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るドローンの使用態様を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態に係るロボットハンド本体の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1~
図11を用いて、本発明の実施形態に係るロボットハンド装置及びそれを備えるドローンについて説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。
また、これらの図において、符号1は、本実施形態に係るロボットハンド装置W、符号Aは、ロボットハンド装置を備えるドローンを示す。
【0025】
<構成>
以下、
図1~
図6を用いて、ロボットハンド装置W及びドローンAの構成について説明する。
なお、以下、説明の便宜上、
図1に示す矢印方向を先端側或いは前方、これに対向する方向を基端側或いは後方と称することとする。
【0026】
図1に示すように、ロボットハンド装置Wは、ドローンAに取付けられるものであって、人の手を模した一対のロボットハンド本体1と、各ロボットハンド本体1の各指部f1~f5に開閉動作を実行させる指部開閉手段2と、ロボットハンド本体1の基端から延び、複数の関節(ジョイント部j1~j6、第一モータm1、第二モータm2)が形成されたアーム部3と、を備えている。
【0027】
ドローンAは、本実施形態においては、一般的に流通しているものと略同様の構成であり、バッテリー等が内蔵されたドローン本体A1と、ドローン本体A1から四方に延びるアームA2と、各アームA2に取付けられたプロペラA3と、ドローン本体A1から下方に突設された一対の脚部A4と、を有している。
【0028】
ドローン本体A1の上面には、プロペラA3の回動と共に、指部開閉手段2及びアーム部3の動作を制御する制御手段Pが設けられているが、これはドローンAの内部に組込まれていても良い。
【0029】
各ロボットハンド本体1は、全体がソフトマテリアルにより形成されており、各指部f1~f5は、ソフトマテリアルの弾性力でもって、開状態となる方向に付勢されている。
なお、各ロボットハンド本体1は、全体がシリコーンにより形成されているが、各指部f1~f5に開閉動作が可能なソフトマテリアルであれば、これに限られない。
また、各ロボットハンド本体1のより具体的な構成については、
図5及び
図6を用いて後述する。
【0030】
指部開閉手段2は、各ロボットハンド本体1に対応して一対設けられている。
また、各指部開閉手段2は、本実施形態においては、正面視で逆T字状の筐体21を有し、筐体21の上部に設けられた挿通孔に、後述する第一腕部31が挿通されている。これにより、各指部開閉手段2は、第一腕部31の先端側に吊下げられるように固定されている。
なお、各指部開閉手段2のより具体的な構成については、
図5を用いて後述する。
【0031】
アーム部3は、各ロボットハンド本体1に対応して一対設けられている。
また、各アーム部3は、上下方向に延びる第一腕部31と、前後方向に延びる第二腕部32と、第一腕部31の基端をドローン本体A1の上面にて支持するための基台部33と、第二腕部32の先端に設けられた手首部34と、を有している。
さらに、各アーム部3は、第一腕部31の動作を制御する第一シリンダS1と、第二腕部32の動作を制御する第二シリンダS2と、を有している。
なお、各アーム部3のより具体的な構成については、
図3の模式図を用いて後述する。
【0032】
図2(a)は、第二腕部32の先端側周辺の側面図であり、指部開閉手段2における筐体21の側壁を除外して示している。
図2に示すように、索部材22は、第二腕部32の先端開口から内部に入り、貫通孔(図示せず)を介して外部に引出され、指部開閉手段2の内部に引込まれている。
また、導線Cは、指部開閉手段2における背面の貫通孔(図示せず)を介して外部に引出され、第二腕部32の貫通孔(図示せず)を介して第二腕部32の内部に引込まれている。
【0033】
なお、
図2(a)において、外部に引出されている、或いは指部開閉手段2の内部に引込まれている索部材22及び導線Cを、細実線及び一点鎖線で、それぞれ示している。
【0034】
手首部34は、特に
図2(b)に示すように、第二腕部32の先端に設けられた第一モータm1と、第一モータm1のモータ軸にブラケットbを介して連結された第二モータm2と、により構成されている。
第一モータm1の回動軸方向は、左右方向に沿った方向であり、第二モータm2の回動軸方向は、第一腕部31が延びる方向に沿った方向であることから、各ロボットハンド本体1に対して、手首の曲げ及び回転動作を実行可能となされている。
【0035】
なお、
図2(b)において、第二モータm2やロボットハンド本体1の基端を内包する筒状筐体hを点線で示し、ロボットハンド本体1の基端から引出されている索部材22を、細実線で示している。
また、第二モータm2のモータ軸は、各ロボットハンド本体1の基端側に内包されている。
【0036】
以下、
図3及び
図4を用いて、アーム部3の構成及び動作態様について説明する。
なお、
図3及び
図4においては、アーム部3を模式的に図示しており、第一腕部31、第二腕部32、ピストンロッドS11、S21は実線で、ジョイント部j1~j6及び第一モータm1を白丸で、シリンダチューブS12、S22は白抜きの長方形で、ブラケットtは斜線のハッチングを付した長方形で、それぞれ示している。
また、
図3及び
図4においては、指部開閉手段2の図示を省略している。
【0037】
図3(a)に示すように、第一腕部31及び第二腕部32は、その先端及び基端が、ジョイント部j1により連結されることで、ジョイント部j1を軸に相互に回動可能に構成されている。
また、第一腕部31及び第二腕部32は、共に中空状であり、後述する索部材22や導線Cが、その内部に挿通されている。
さらに、導線Cは、第一腕部31の内部からドローン本体A1の内部に引出され、制御手段Pに接続されている。
【0038】
基台部33は、第一腕部31の基端とジョイント部j2により連結されることで、第一腕部31がジョイント部j2を軸に回動可能に構成されている。
【0039】
第一シリンダS1について、ピストンロッドS11の先端が、第一腕部31に設けられたジョイント部j3に、シリンダチューブS12の基端が、ドローン本体A1の上面に設けられたジョイント部j4に、それぞれ連結されている。
【0040】
第二シリンダS2について、ピストンロッドS21の先端が、第二腕部32に設けられたジョイント部j5に、シリンダチューブS22の基端が、第一腕部31に設けられたジョイント部j6に、それぞれ連結されている。
【0041】
なお、ジョイント部j3、j5、j6は、第一腕部31又は第二腕部32に固定された円筒状のブラケットtの外周面から突設されている。
また、ジョイント部j1~j6は全て、その回動軸が左右方向に延びて、互いに略平行に構成されている。
【0042】
作業者は、第一シリンダS1におけるピストンロッドS11を摺動させることで、例えば、アーム部3を
図3(a)から
図3(b)に示す態様とすることができる。
即ち、作業者は、ドローン本体A1の上面と第一腕部31とのなす角を変化させることで、ロボットハンド本体1を主に前後方向に沿って移動させることができる。
【0043】
作業者は、第二シリンダS2におけるピストンロッドS21を摺動させることで、例えば、アーム部3を
図3(a)から
図3(c)に示す態様とすることができる。
即ち、作業者は、第一腕部31と第二腕部32とのなす角を変化させることで、ロボットハンド本体1を主に上下方向に沿って移動させることができる。
【0044】
アーム部3は、第一モータm1を駆動させることで、例えば、アーム部3を
図4(a)から
図4(b)に示す態様とすることができる。
即ち、作業者は、ロボットハンド本体1について、手首の曲げ動作を実行することができる。
【0045】
アーム部3は、第二モータm2を駆動させることで、例えば、アーム部3を
図4(a)から
図4(c)に示す態様とすることができる。
即ち、作業者は、ロボットハンド本体1について、手首の回転動作を実行することができる。
【0046】
なお、ピストンロッドS11、S21の摺動動作や、第一モータm1、第二モータm2の駆動については、制御手段Pを介して、遠隔操作用のリモコン(図示せず)にて、制御することができる。
また、
図4(c)では、手の平が見えるように90度回転させた例を示しているが、当然に手の甲が見えるように90度回転させることも可能である。
【0047】
作業者は、上記した各動作の組合せでもって、アーム部3及びロボットハンド本体1を所望の形態とすることができる。
【0048】
以下、
図5及び
図6を用いて、ロボットハンド本体1及び指部開閉手段2の構成について詳述する。
なお、
図5において、指部開閉手段2は、筐体21の底面を除外した状態とし、その内部構成を示している。
【0049】
図5に示すように、ロボットハンド本体1の手の平側には、複数の切込みnが形成され、ロボットハンド本体1の内部には、後述する各索部材22に対応する主通路部p1及び副通路部p2が形成されている。
【0050】
詳述すれば、切込みnは、各指部f1~f5の関節に相当する関節切込みn1と、母指球に相当する箇所と他の箇所との境界に形成された母指球切込みn2と、各指部f1~f5の付け根に亘って形成された付け根切込みn3と、により構成されている。
【0051】
主通路部p1は、略円筒チューブ状体であり、手の平の内部に、左右方向に隣接して設けられている。
また、親指部f1を牽引する索部材22が挿通される主通路部p1の開口端は、母指球切込みn2から露出し、他の指部f2~f5を牽引する索部材22が挿通される主通路部p1の開口端は、付け根切込みn3から露出している。
【0052】
副通路部p2は、主通路部p1よりも小径かつ短く構成された略円筒チューブ状体であり、各指部f1~f5の内部に複数設けられ、その開口端が、関節切込みn1や母指球切込みn2、付け根切込みn3から露出している。
【0053】
図5に示すように、指部開閉手段2は、筐体21の内部構成として、その一端が各指部f1~f5の先端側に固定され、その他端が各指部f1~f5の基端側に延びる索部材22と、各索部材22を各指部f1~f5の基端側に牽引する複数の牽引手段23と、基板24と、を有している。
【0054】
詳述すれば、索部材22は糸であり、各指部f1~f5の先端から副通路部p2や主通路部p1に挿通され、筒状筐体hの内部に引出され、筐体21の内部に引込まれている。
また、各索部材22は、切込みnにおいて、外部に露出している。
さらに、筐体21には、各牽引手段23に対応する一対の小型ローラrが設けられており、各索部材22は、各小型ローラrに挟持される態様で、筐体21の内部に引込まれている。
【0055】
牽引手段23は、各索部材22が巻回される複数のボビン23aと、各ボビン23aを、各索部材22を巻取る方向に回動させる回動手段23bと、を含む。
即ち、一のボビン23aと一の回動手段23bとで、一の索部材22を巻取るユニットが構成されており、これが、左右方向に5つ配置されている。
また、各回動手段23bは、遠隔で駆動制御可能なモータである。
【0056】
基板24は、筐体21の内周面に設けられており、各回動手段23bから延びる導線cが電気的に接続されている。
また、基板24から延びる導線Cは、第二腕部32及び第一腕部31の内部を通り、ドローン本体A1の内部にて、制御手段Pに電気的に接続されている。
【0057】
上記構成のロボットハンド本体1は、上記構成の指部開閉手段2により、例えば、
図6に示すように動作する。
即ち、例えば、親指部f1、薬指部f4及び小指部f5に対応する各索部材22を、これらの索部材22に対応する回動手段23bを駆動させて巻取ることで、各指部f1、f4、f5が、各関節切込みn1により、実際の人の手と略同様に折曲がり(閉状態となり)、ロボットハンド本体1が、
図6(a)に示す所謂チョキのような態様となる。
また、例えば、各指部f1~f5を、上記と同様に指部開閉手段2により折曲げることで、ロボットハンド本体1が、
図6(b)に示す所謂グーのような態様となる。
なお、各指部f1~f5は、独立して開閉させることができるため、閉状態とする指部と開状態とする指部を、作業者が任意に選択できる。
【0058】
<使用態様>
以下、
図7~
図10を用いて、ロボットハンド装置Wを備えるドローンAの使用態様について説明する。
【0059】
作業者は、
図7に示すように、ロボットハンド装置Wにより、ドローンAを、係留対象Kであるベランダの手摺k1に係留させることができる。
【0060】
即ち、作業者は、各指部f1~f5を開状態としつつ、ドローンAを飛行させ、各ロボットハンド本体1の手の平を手摺k1に当接させる。
そして、作業者は、指部開閉手段2により、各指部f1~f5を閉状態とし、各ロボットハンド本体1に手摺k1を把持させる。
【0061】
ここで、ドローンAには、例えば、
図7(a)の点線丸枠部に示された領域に、赤外線カメラ等の所定の点検装置(図示せず)を設けることができ、
図7の状態において、作業者は、この点検装置で外壁の点検を行うことができる。
また、この際、作業者は、アーム部3を動作させることで、ドローンA及び点検装置の位置(外壁に対する角度や距離)を調整することができる。
【0062】
なお、
図7(a)は、ドローンAを手摺k1に係留させた際の側面図、
図7(b)は、
図7(a)において、ドローンAを省略し、ロボットハンド装置Wについて各ロボットハンド本体1のみを示した斜視図である。
【0063】
作業者は、
図8に示すように、ロボットハンド装置Wにより、ドローンAを、係留対象Kであるベランダの手摺子k2に係留させることができる。
【0064】
即ち、作業者は、各指部f1~f5を開状態としつつ、ドローンAを飛行させ、各ロボットハンド本体1の手の平を手摺子k2に当接させる。
そして、作業者は、指部開閉手段2により、各指部f1~f5を閉状態とし、各ロボットハンド本体1に手摺子k2を把持させる。
なお、この場合、各ロボットハンド本体1は、
図1に示す状態から、手首部34を動作せることで、互いの手の平が向かい合う状態としておく。
【0065】
この場合においても、所定の点検装置を設けること、アーム部3によりドローンA及び点検装置の位置を調整できることについて、
図7に示す場合と同様である。
なお、
図8(a)は、ドローンAを手摺子k2に係留させた際の側面図、
図8(b)は、
図8(a)において、ドローンAを省略し、ロボットハンド装置Wについて各ロボットハンド本体1のみを示した斜視図である。
【0066】
作業者は、
図9に示すように、一方のロボットハンド本体1に、所定の作業器具Z1(本実施形態においては電動ドリル)を把持させることができる。
この場合、作業器具Z1の持ち手にトリガーが設けられていれば、作業者は、例えば、人差し指部f2や中指部f3について、さらに各索部材22を牽引することで、各指部f2、f3を手の平に向かって強く折曲げ、トリガーの押圧操作を実行することができる。
【0067】
作業者は、
図10に示すように、各ロボットハンド本体1に、所定の形状の梱包材で梱包された荷物Z2を保持させることができる。
この場合、作業者は、荷物Z2の形状に合わせて、安定的な保持態様となるように、各ロボットハンド本体1の角度や相対位置、各指部f1~f5の折曲がり具合を調整する。
【0068】
<効果>
本実施形態によれば、ロボットハンド本体1全体がソフトマテリアルにより形成されていることで、ロボットハンド本体1を係留対象Kに強力に係留させた場合でも、係留対象Kを損傷させる恐れがなくなり、ドローンAの飛行位置をより安定させることができる。
【0069】
また、指部開閉手段2により、作業者は、ロボットハンド本体1を、係留対象Kに係留させるのみならず、所定の作業器具Z1や荷物Z2等をその形状に応じて安定的に保持させることができ、ロボットハンド装置Wの利便性が向上する。
【0070】
また、ソフトマテリアルの弾性力でもって、開状態となる方向に付勢された各指部f1~f5を、索部材22を牽引手段23により牽引することで閉状態に遷移する構成により、ロボットハンド本体1に複雑な構成を導入することなく、簡素な構成でもって、各指部f1~f5の開閉動作が可能となるため、軽量化や故障リスクの低減に資する。
【0071】
また、牽引手段23が、ボビン23aと、遠隔で駆動制御可能なモータである回動手段23bと、を含むことで、簡素な構成を維持しつつ、高層階の係留対象Kへの係留や、所定の点検作業、高層階への荷物Z2の運搬等を容易に実行することができ、ロボットハンド装置Wの利便性が向上する。
【0072】
また、アーム部3により、これがプロペラA3に干渉する事態を抑制しつつ、ロボットハンド本体1の可動域が増大するため、種々の使用態様において、ロボットハンド装置Wの利便性が向上する。
<変更例>
【0073】
なお、上記の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0074】
例えば、各指部f1~f5について、
図11に示す構成としても良い。
図11は、各指部f1~f5の何れか一つの断面図である。
即ち、
図11においては、各指部f1~f5の内部が空洞であり、主通路部p1が各指部f1~f5の基端まで延びていることで、空洞部分と主通路部p1とが連通している。
また、各指部f1~f5には、その長さ方向の略全長に亘って、手の平側に可撓性の薄板状体v(例えば、プラスチック製の下敷きを細長形状としたもの)が包含されている。
【0075】
これにより、各指部f1~f5は、
図11(a)に示す収縮状態から、主通路部p1を介して空洞部分に空気が注入されることで、
図11(b)に示す状態となる。
即ち、薄板状体vが設けられていない側が、設けられている側に比して、空気圧により膨張しやすく、また、各指部f1~f5の先端面も膨張していくことから、各指部f1~f5は、薄板状体vが設けられていない側に山なりに湾曲する。
そして、各指部f1~f5は、
図11(b)に示す状態からさらに空洞部分に空気が流入することで、さらに山なりに湾曲し、
図11(c)に示す略L字形状を経て、
図11(d)に示す略鉤形状に湾曲する(閉状態となる)。
【0076】
なお、この変更例において、空洞部分に空気を注入するために主通路部p1に接続される、エアコンプレッサー等の空気注入手段が、指部開閉手段2となる。
また、空気注入手段は、例えば、ドローンAに小型のものを積載する、或いは地上に載置する、といった構成とすることができる。
これにより、各指部f1~f5について独立した空気の注入作業を、自動(遠隔)或いは手動で制御することができる。
【0077】
この他、ロボットハンド本体1は、必ずしも全体がシリコーン等の柔軟性を有する素材により形成されている必要はなく、例えば、リンク機構等を用いて構成された機械的なロボットハンドの外周面を、布等の柔軟性を有する素材により形成された部材で覆うことで、係留対象Kの損傷を防止しても良い。
【0078】
また、アーム部3について、例えば、ドローン本体A1の上面を360度回転可能な台として構成する、第一腕部31と第二腕部32との連結部分に、第二腕部32が360度回転可能な構成を設ける、といった手法により、アーム部3全体の可動域をさらに拡張しても良い。
【符号の説明】
【0079】
A ドローン
W ロボットハンド装置
1 ロボットハンド本体
2 指部開閉手段
3 アーム部
K 係留対象
Z1 作業器具
Z2 荷物
【手続補正書】
【提出日】2024-05-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドローンに取付けられるロボットハンド装置であって、
人の手を模したロボットハンド本体と、前記ロボットハンド本体の各指部に開閉動作を実行させる指部開閉手段と、を備え、
前記ロボットハンド本体は、全体がソフトマテリアルにより形成されている、ロボットハンド装置。
【請求項2】
前記指部開閉手段は、前記各指部について独立して開閉動作を実行可能に構成されている、請求項1に記載のロボットハンド装置。
【請求項3】
前記指部開閉手段は、その一端が前記各指部の先端側に固定され、その他端が前記各指部の基端側に延びる索部材と、前記各索部材を前記各指部の基端側に牽引する牽引手段と、を有し、
前記各指部は、ソフトマテリアルの弾性力でもって、開状態となる方向に付勢されており、前記各索部材が前記牽引手段により牽引されることで、閉状態に遷移するように構成されている、請求項2に記載のロボットハンド装置。
【請求項4】
前記牽引手段は、前記各索部材が巻回されるボビンと、前記ボビンを、前記各索部材を巻取る方向に回動させる回動手段と、を含み、
前記回動手段は、遠隔で駆動制御可能なモータである、請求項3に記載のロボットハンド装置。
【請求項5】
前記各指部の内部には、空洞が設けられ、
前記指部開閉手段は、前記空洞への空気の流入及び流出でもって、前記各指部を膨張及び収縮させることで、前記各指部に開閉動作を実行させる、請求項1に記載のロボットハンド装置。
【請求項6】
前記ロボットハンド本体の基端から延び、複数の関節が形成されたアーム部を備え、
前記アーム部は、その基端が前記ドローンの上面に取付けられている、請求項1に記載のロボットハンド装置。
【請求項7】
前記アーム部は、上下方向に延びる第一腕部と、前後方向に延びる第二腕部と、前記第二腕部の先端に設けられ、前記ロボットハンド本体と連結する手首部と、を有し、
前記ロボットハンド本体は、前記第二腕部及び前記手首部により、前記ドローンの前方側に配置される、請求項6に記載のロボットハンド装置。
【請求項8】
前記ロボットハンド本体は、前記第二腕部が延びる方向を軸に、前記手首部を介して手の平を回動可能に構成されている、請求項7に記載のロボットハンド装置。
【請求項9】
請求項1に記載のロボットハンド装置を備えたドローン。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
ドローンに取付けられるロボットハンド装置であって、
人の手を模したロボットハンド本体と、前記ロボットハンド本体の各指部に開閉動作を実行させる指部開閉手段と、を備え、
前記ロボットハンド本体は、全体が弾性力を有するソフトマテリアルにより形成されている、ロボットハンド装置。