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特開2024-156735誘電体スパッタリング中の加工物の欠陥を低減するためのプラズマチャンバターゲット
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  • 特開-誘電体スパッタリング中の加工物の欠陥を低減するためのプラズマチャンバターゲット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156735
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】誘電体スパッタリング中の加工物の欠陥を低減するためのプラズマチャンバターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
C23C14/34 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024118527
(22)【出願日】2024-07-24
(62)【分割の表示】P 2022542484の分割
【原出願日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】16/918,513
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ワン シャオドン
(72)【発明者】
【氏名】レイ ジアンシン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ロンジュン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】誘電体スパッタリング中の加工物の欠陥を低減するための、誘電体スパッタ堆積ターゲットを提供する。
【解決手段】誘電体スパッタ堆積ターゲットは、約65μm~500μmの範囲の所定の平均粒径を有する誘電体化合物を含むことができ、この誘電体化合物は、酸化マグネシウムまたは酸化アルミニウムの少なくとも一方である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約65μm~500μmの範囲の所定の平均粒径を有する誘電体化合物から本質的に成る誘電体スパッタ堆積ターゲットであって、
前記誘電体化合物は、酸化マグネシウムまたは酸化アルミニウムの少なくとも一方である、誘電体スパッタ堆積ターゲット。
【請求項2】
前記誘電体化合物の粒子の少なくとも80%が、前記所定の平均粒径の20%以内または前記所定の平均粒径の30%以内の一方の大きさである、請求項1に記載の誘電体スパッタ堆積ターゲット。
【請求項3】
前記誘電体化合物が単結晶である、請求項1に記載の誘電体スパッタ堆積ターゲット。
【請求項4】
前記誘電体化合物が、約400μmの所定の平均粒径を有する酸化マグネシウムである、請求項1~3のいずれかに記載の誘電体スパッタ堆積ターゲット。
【請求項5】
前記誘電体化合物は密度が少なくとも99.7%である、請求項1に記載の誘電体スパッタ堆積ターゲット。
【請求項6】
前記誘電体化合物は密度が少なくとも99.98%である、請求項1~3または5のいずれかに記載の誘電体スパッタ堆積ターゲット。
【請求項7】
内部容積部を画定するチャンバ本体と、
前記内部容積部内で基板を支持する基板支持体と、
少なくとも1つの誘電体ターゲットおよび少なくとも1つの金属ターゲットを含む、前記基板の上にスパッタリングされるべき複数のターゲットとを備える処理チャンバであって、前記誘電体ターゲットが、約65μm~500μmの範囲の所定の平均粒径を有する誘電体化合物を含む、処理チャンバ。
【請求項8】
前記誘電体化合物が単結晶である、請求項7に記載の処理チャンバ。
【請求項9】
前記誘電体化合物が、約400μmの所定の平均粒径を有する酸化マグネシウムである、請求項7に記載の処理チャンバ。
【請求項10】
前記チャンバ本体に結合されているとともに前記複数のターゲットに対応する複数のカソードをさらに備える、請求項7に記載の処理チャンバ。
【請求項11】
前記チャンバ本体に結合されているとともに、スパッタリングされるべき前記複数のターゲットのうちの少なくとも1つを露出させるための少なくとも1つの穴を有しているシールドをさらに備え、前記複数のターゲットが、前記シールドの縁部から少なくとも0.5インチ離して配置される、請求項7に記載の処理チャンバ。
【請求項12】
前記シールドが前記チャンバ本体の上部に回転可能に結合される、請求項7~11のいずれかに記載の処理チャンバ。
【請求項13】
前記シールドがさらに、
スパッタリングされるべきではない前記複数のターゲットのうちの少なくとも別の1つを収容および遮蔽するための、前記シールドの上面に配置された少なくとも1つのシャントを備える、請求項7に記載の処理チャンバ。
【請求項14】
前記シールドが、前記処理チャンバの中心軸のまわりに回転するように、かつ中心軸に沿って直線的に移動するように構成される、請求項7~11または13のいずれかに記載の処理チャンバ。
【請求項15】
処理チャンバ内で物理的気相堆積を実施する方法であって、
前記処理チャンバ内で第1のターゲットを選択し、前記第1のターゲットを介して加工物上に、約65μm~500μmの範囲の所定の平均粒径を有する誘電体化合物を堆積させるステップと、
前記処理チャンバ内で第2のターゲットを選択し、前記第2のターゲットを介して前記加工物上の前記誘電体化合物の上に金属を堆積するステップとを含む、方法。
【請求項16】
前記第1のターゲットが誘電体ターゲットであり、前記第2のターゲットが金属ターゲットである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記誘電体化合物が、約400μmの所定の平均粒径を有する単結晶酸化マグネシウムである、請求項15または16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記金属がタンタルである、請求項15のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記第1のターゲットが前記処理チャンバのシールドの縁部から約0.5インチ~2.0インチ離して配置される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のターゲットがミラー仕上げされている、請求項15、16、18、または19のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は一般に、半導体製造システムに使用される基板処理チャンバに関する。
【背景技術】
【0002】
物理的気相堆積(PVD)としても知られるスパッタリングとは、集積回路に特徴を形成する方法のことであり、一般には処理チャンバ内で実施される。スパッタリングでは、誘電体材料などの材料層を加工物(たとえば、基板/基板)上に堆積させる。ターゲットなどのソース材料に、電界によって強く加速されたイオンが打ち込まれる。イオン打ち込みによりターゲットから材料が放出され、その材料が基板(たとえば、加工物)上に集まる、すなわち堆積する。堆積中、放出された粒子はまた、処理チャンバのシールドまたは他の内面などの、他の面に堆積する可能性もある。
【0003】
シールドの不要なコーティングは、処理されている基板に欠陥を生じさせたり、後続の基板処理の際に欠陥の原因になったりするおそれがある。欠陥は、たとえば、不要な堆積がシールド上に起こり、その不要な堆積に電荷が蓄積してアーク放電が生じたり、シールドに集まっている誘電体材料が剥離したりする場合に、発生する可能性がある。
【0004】
したがって、本発明者らは、誘電体スパッタリング中の欠陥を低減するための改善されたターゲットの実施形態を提供した。
【発明の概要】
【0005】
誘電体スパッタリング中の加工物の欠陥を低減するための、プラズマチャンバターゲットに関する方法および装置が本明細書で提示される。たとえば、いくつかの実施形態において、装置が誘電体スパッタ堆積ターゲットを含むことができ、このターゲットは、約65μm~500μmの範囲の所定の平均粒径を有する誘電体化合物を含むことができ、この誘電体化合物は、酸化マグネシウムまたは酸化アルミニウムの少なくとも一方である。
【0006】
少なくともいくつかの実施形態において、処理チャンバは、内部容積部を画定するチャンバ本体と、内部容積部内で基板を支持する基板支持体と、少なくとも1つの誘電体ターゲットおよび少なくとも1つの金属ターゲットを含む、基板の上にスパッタリングされるべき複数のターゲットとを含み、誘電体ターゲットは、約65μm~500μmの範囲の所定の平均粒径を有する誘電体化合物を含む。
【0007】
少なくともいくつかの実施形態において、処理チャンバ内で物理的気相堆積を実施する方法は、処理チャンバ内で第1のターゲットを選択し、この第1のターゲットを介して加工物上に、約65μm~500μmの範囲の所定の平均粒径を有する誘電体化合物を堆積するステップと、処理チャンバ内で第2のターゲットを選択し、第2のターゲットを介して加工物上の誘電体化合物の上に金属を堆積するステップとを含むことができる。
【0008】
本開示の他の、さらなる実施形態については以下で説明する。
【0009】
上に簡潔に要約され、以下でより詳細に論じられる本開示の諸実施形態は、添付の図面に描かれた本開示の説明的な実施形態を参照することによって理解することができる。しかし、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示すものであり、したがって、本開示の範囲を限定するものとは、本開示が他の同様に効果的な諸実施形態を認め得るので、考えられるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本明細書に記載の例示的な実施形態による複数カソード処理チャンバの概略図である。
図2】本明細書に記載の例示的な実施形態による図1のチャンバの空間構成を示す図である。
図3】特定の粒径を有するターゲットの拡大画像である。
図4】本明細書に記載の例示的な実施形態による粒径を有するターゲットの拡大画像である。
図5】本明細書に記載の例示的な実施形態による、加工物上の欠陥を低減する方法のフロー図である。
【0011】
理解しやすいように、可能な場合には、各図に共通の同じ要素を指定するのに同じ参照番号を使用している。図は原寸に比例していなく、分かりやすくするために簡略化されていることがある。1つの実施形態の要素および特徴は、別に詳述されていなくても他の実施形態に有利に組み込むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)には、メモリデバイスの一部としてバリア層が構築される必要がある。バリア層は、適正に動作するには純度が高く、かつ欠陥の数が少なくなければならない。酸化マグネシウム(MgO)および/または酸化アルミニウム(Al23)の一方が、バリア層として利用できる誘電体材料である。しかし、MgOを基板表面に堆積させるためにRF電力を使用すると、欠陥性能が本質的に悪くなる。
【0013】
MRAMを製造するときの加工物(たとえば、基板)の欠陥を低減するための、所定の平均粒径を有する誘電体化合物を含むスパッタ堆積ターゲットの実施形態が本明細書で提示される。本明細書では、粒径とは化合物のターゲット全体での平均粒径のことであり、粒径自体は分布範囲が広い。いくつかの実施形態では、各粒子は所定の粒径の20%以内にあるが、他の実施形態では、各粒子は平均粒径(たとえば、所定の粒径)の30%以内にある。いくつかの実施形態によれば、ターゲット中の粒子の少なくとも80%、または他の実施形態では少なくとも90%が、好ましい粒径の20%または30%以内の粒径を有する。好ましい粒径は、純粋な単結晶でも範囲が、約20μm、40μm、および50μm~500μmにまで及ぶ。別の実施形態では、ターゲット中の少なくとも80%の粒が少なくとも20μmの粒径を有する。
【0014】
処理チャンバ内で基板(たとえば、基板)上に誘電体膜の物理的気相堆積を行う間、シールドが加工物よりもターゲットに近いために、処理チャンバ内のシールド上にも誘電体粉末が生じる可能性がある。その後、処理チャンバにRF電力が印加されると、シールド上の高濃度の正イオン、たとえばシース電圧に起因して、アーク放電がシールドと基板の間で発生する可能性がある。言い換えると、誘電体膜がシールド上に積もり、この誘電体膜は導電性ではないために、電荷がシールド上に蓄積する。このシールド上の電荷は容易には消散せず、アーク放電の原因になる。さらに、後続の複数の基板が処理チャンバ内で処理された後では、より多くの誘電体膜がシールド上に蓄積する可能性があり、膜とシールドの付着性が悪いことにより、膜が剥がれ落ちたり剥離したりして基板上に堆積するおそれがある。本発明者らは、ターゲット粒径、およびターゲットとシールドの構成を修正すると、加工物の欠陥が、アーク放電を防止することによって、およびシールドからの誘電体膜の剥離を防止することによって低減したことを発見した。
【0015】
本発明者らは、誘電体化合物(たとえば、MgO、Al23)を含むターゲットが処理チャンバ内で使用された場合に、加工物上の欠陥の大部分は誘電体粒子欠陥であることを観察している。たとえば、本発明者らは、金属ターゲット(たとえば、タンタル)をシールド付き処理チャンバ内に露出した場合に、Ta欠陥の数はわずかであることを観察している。しかし、誘電体ターゲットをチャンバ内で露出したときには、かなりの数の欠陥が誘電体粒子の形で加工物の上で見つかった。欠陥の原因は、エネルギー分散X線分光法(EDX)などの実験によって検証されたが、他の方法を用いることもできる。シールドは不変のままであり、したがって、欠陥は誘電体ターゲットに由来すると確認された。
【0016】
いくつかの実施形態において、複数カソードPVDチャンバ(たとえば、処理チャンバ100)は、対応する複数のターゲット(少なくとも1つの誘電体ターゲット110および少なくとも1つの金属ターゲット112)、(たとえば、3RF×3DCの交互構成の形の6つのカソード)が、内部容積部を画定するチャンバ本体140に(たとえば、上部アダプタアセンブリ142を介して)取り付けられている、複数のカソード106を含む。他の、1:1、2:2、4:4、5:5などのRF/DCカソード構成もまた使用することができる。数字は、RF給電カソードとDC給電カソードの比率を示す。いくつかの実施形態では、RFカソードとDCカソードは、上部アダプタアセンブリ142において交互になっている。他の実施形態では、RFカソードが他のRFカソードに隣接することができ、DCカソードについても同様である。さらに他の実施形態では、RFカソードとDCカソードの比率は、1:2、2:1、1:3、3:1、2:3などの不等比率とすることができる。複数のRFカソードが使用される場合、堆積プロセス中のいかなる干渉も低減するように動作周波数をオフセットすることができる。たとえば、3RFカソード実施形態では、第1のRFカソードは13.56MHzの周波数で動作することができ、第2のRFカソードは13.66MHz(+100kHz)の周波数で動作し、第3のRFカソードは13.46MHz(-100kHz)の周波数で動作する。オフセットは、所与の数のカソードについてのクロストーク防止に基づいて選ぶことができる。
【0017】
RFカソードが通常、基板に誘電体膜を堆積するための誘電体ターゲット110と共に使用される。DCカソードが通常、基板に誘電体膜を堆積した後の貼り付けのための金属ターゲット112と共に使用される。この貼り付けにより、堆積膜中の粒子形成および欠陥の可能性が低減する。RFカソードおよびDCカソードが付いている処理チャンバがあると、貼り付けと誘電体堆積を1つのチャンバ内で行うことができるので、基板を速く生産することが可能になる。加えて、同じタイプの複数のカソードがあると、貼り付け速度および堆積速度を大きくすることが可能になる。堆積速度が大きいことは、ある特定の膜厚を得るために基板がチャンバ内にとどまる時間が短くなることを意味する。チャンバ内の時間の短縮すなわち滞留時間短縮により、基板の欠陥が少なくなる。
【0018】
いくつかの実施形態において、金属ターゲット112は、たとえば、タンタル、アルミニウム、チタン、モリブデン、タングステン、および/またはマグネシウムなどの金属で形成することができる。誘電体ターゲット110は、たとえば、酸化チタン、酸化チタンマグネシウム、および/または酸化タンタルマグネシウムなどの金属酸化物から形成することができる。しかし、他の金属および/または金属酸化物を代わりに使用することもできる。
【0019】
誘電体ターゲット110は、所定の粒径を有する誘電体化合物を含み、粒子は、誘電体ターゲット110全体で概して均一であり、大きさのばらつきが、たとえば20~30%と少ない。所定の粒径は、様々な実施形態で異なる。いくつかの実施形態では、粒径は、約20μm~500μmの範囲から選択される。いくつかの実施形態では、ターゲット中の粒子の少なくとも80%が、またはいくつかの実施形態では少なくとも90%が、好ましい粒径(たとえば、20μm、40μm、50μm、および最大約500μm、さらにはそれ以上)と等しい粒径を有する。
【0020】
図3は、粒径が8μmの例示的なターゲットを示し、基板は、粒径が40nmを超える218個の欠陥を含む。しかし、図4に示すように、ターゲットの粒径を約30μmまで大きくすると、粒子(欠陥)の数は、たとえば96個に減少する。いくつかの実施形態においては、粒径は約40μmに増大され、この場合、欠陥は粒子数で約50~60個と推定され、218個の欠陥からは大幅な削減である。他の実施形態では、粒径が約80μm、120μm、400μm、500μm、さらにはそれ以上のターゲットがある。これらの実施形態で企図される粒径のすべてについての個々の結果は示されていないが、図3および図4は、たとえば誘電体ターゲット110のターゲット粒径を小さくすることによって得られる、基板上の粒子欠陥の低減を例示している。本明細書に記載のいくつかの実施形態は、上に示された粒径を対象としているが、約20μm以上の他の粒径もまた、基板上の欠陥の数を減らすために用いることができる。
【0021】
粒子欠陥の数は、粒径が8μm~少なくとも20μmまで増加すると著しく減少する。その理由は、粒径が大きいと体積に対する表面積の比率が著しく増加し、小さい粒では体積に対する表面積の比率がより大きいからである。粒径が大きくなると、図4から分かるように、粒子境界領域が減少する。粒径が大きいので、粒子境界領域が小さくなり、生じる欠陥が少なくなる。他の実施形態では、誘電体ターゲット110の仕上げが修正される。たとえば、ターゲットは、表面粗さが、約6μmの表面粗さから、ミラー仕上げ(表面粗さがほとんどない)の研磨面までの範囲にある、スパッタリング面を有することができる。本発明者らは、達成されるのがミラー仕上げに近いほど、加工物上で検出される粒子が少なくなることを発見した。いくつかの実施形態では、誘電体ターゲット110は、加工物の欠陥を減らすために、密度が、純粋な単結晶MgOの少なくとも99.7%であり、またはいくつかの例では、純粋な単結晶MgOの少なくとも99.98%である。本明細書では、ターゲット密度とは、理論的に得ることができる理論上の純粋な単結晶密度に占めるターゲットの比率を指す。
【0022】
処理チャンバ100はまた、基板132を支持するための基板支持体130を含む。処理チャンバ100は、開口(図示せず)(たとえば、スリットバルブ)を含み、この開口を貫通してエンドエフェクタ(図示せず)が延びて、基板支持体130の支持面131上に基板132を下ろすためのリフトピン(図示せず)の上に、基板132を配置することができる。図1に示す実施形態では、誘電体ターゲット110および金属ターゲット112は、支持面131に対して実質的に平行に配置されている。基板支持体130は、基板支持体130に配置されたバイアス電極138に整合ネットワーク134を介して結合されている、バイアス源136を含む。上部アダプタアセンブリ142は、処理チャンバ100のチャンバ本体140の上部に結合され、接地される。各カソード106は、DC電源108またはRF電源102、および連結されたマグネトロンを有することができる。RF電源102の場合、RF電源102は、RF整合ネットワーク104を介してカソード106に結合される。
【0023】
シールド121は、上部アダプタアセンブリ142に回転可能に結合され、各カソード106に共有される。いくつかの実施形態において、シールド121は、シールド本体122およびシールド上部120を含む。他の実施形態では、シールド121は、シールド本体122とシールド上部120の両方が単一部品に一体化されている態様を有する。さらに他の実施形態では、シールド121は、2つより多い部品とすることができる。同時にスパッタリングする必要があるターゲットの数に応じて、シールド121は、対応する1つまたは複数のターゲットを露出するための1つまたは複数の孔を有することができる。シールド121は、有利には、誘電体ターゲット110および金属ターゲット112を含む複数のターゲット間の相互汚染を制限または除去する。シールド121は、シャフト123を介して上部アダプタアセンブリ142に回転可能に結合される。シャフト123は、カプラ119を介してシールド121に取り付けられる。加えて、シールド121は回転可能であるため、通常は貼り付けを受けないシールド121の領域が、その領域が貼り付けできるように移動し、それにより積層堆積の剥がれおよび粒子形成が大幅に低減する。処理チャンバ100はまた、スパッタリングされるべきではない複数のターゲットのうちの少なくとも別の1つを収容および遮蔽するための、シールド121の上面に配置された少なくとも1つのシャントを含むこともできる。
【0024】
アクチュエータ116が、シールド121に対向して軸123に結合される。アクチュエータ116は、矢印144で示す通り、シールド121を回転させるように、また、矢印145で示す通り、シールド121を処理チャンバ100の中心軸146に沿って垂直方向に上下に動かすように構成される。処理中、シールド121は、上方位置まで引き上げられる。シールド121の引き上げ位置では、処理中に使用されるターゲットが露出され、また、処理中に使用されないターゲットが遮蔽される。引き上げ位置ではまた、RF処理のためのシールドが接地される。
【0025】
いくつかの実施形態において、処理チャンバ100は、処理チャンバ100の内部容積部125にプロセスガスを供給するためのプロセスガス供給部128をさらに含む。処理チャンバ100はまた、プロセスガスを処理チャンバ100から排気するために、内部容積部125に流体結合された排気ポンプ124を含むこともできる。いくつかの実施形態において、たとえばプロセスガス供給部128は、金属ターゲット112がスパッタリングされた後に、酸素を内部容積部125に供給することができる。
【0026】
図2は、本明細書に記載の例示的な実施形態による図1の処理チャンバ100の空間構成の図である。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、誘電体ターゲット110および金属ターゲット112は(他の任意のターゲットと共に)、シールド121の縁部から離して、通常ではシールド121の縁部から約0.5インチ~2.0インチ離して配置される。ターゲットがシールドの縁部に配置されると、そこで堆積される膜は、他の領域よりも応力がかかる傾向があり、粒子が剥がれ落ち加工物上に堆積する原因になる。ターゲットがシールド121の中心の方に配置されると、狭い領域に膜が集中することが少ないので、膜にかかる応力が大幅に減少して、加工物上の剥落および粒子欠陥堆積が減少することになる。
【0028】
図5は、本明細書に記載の例示的な実施形態による、基板上に膜を堆積する方法500のフロー図を示す。
【0029】
方法500は、502で開始し504へ進む。504で、第1のターゲットを処理チャンバ100内で選択し、第1の誘電体ターゲットを介して誘電体化合物(たとえば、MgO、Al23)を加工物(たとえば、半導体基板)上に堆積させる。たとえば、少なくともいくつかの実施形態において、誘電体化合物は、約2インチ~約6インチの直径を有する単結晶ターゲットとすることができる。所定の粒径は、様々な実施形態で異なる。たとえば、いくつかの実施形態では、所定の粒径は、約20μm~500μmの範囲から選択される。いくつかの実施形態では、所定の粒径は、約65μm~約500μmとすることができる。いくつかの実施形態では、ターゲット中の粒子の少なくとも80%が、またはいくつかの実施形態では少なくとも90%が、好ましい粒径(たとえば、20μm、40μm、50μm、400μm、500μm、さらにはそれ以上)に等しい粒径を有する。
【0030】
次に506で、第2のターゲットを処理チャンバ100内で選択し、第2のターゲットを介して第2の金属を加工物上の誘電体材料の上に堆積させる。第2のターゲットは一般に金属ターゲットであり、その金属は、たとえばタンタルとすることができる。
【0031】
その後、処理チャンバ100は、次の、または後続の加工物の準備をし、方法500は508で終了する。
【0032】
上記は本開示の諸実施形態を対象とするが、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく、本開示の他のさらなる実施形態を考案することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約65μm~500μmの範囲の所定の平均粒径を有する誘電体化合物から本質的に成る誘電体スパッタ堆積ターゲットであって、
前記誘電体化合物は、酸化マグネシウムまたは酸化アルミニウムの少なくとも一方である、誘電体スパッタ堆積ターゲット。
【外国語明細書】