(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156821
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】重合性液体からの固体材料またはフィルムの製造
(51)【国際特許分類】
B29C 64/314 20170101AFI20241029BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20241029BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20241029BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20241029BHJP
【FI】
B29C64/314
B29C64/112
B29C64/124
B33Y70/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024125054
(22)【出願日】2024-07-31
(62)【分割の表示】P 2023018838の分割
【原出願日】2018-04-10
(31)【優先権主張番号】15/698,059
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/484,644
(32)【優先日】2017-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/484,103
(32)【優先日】2017-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】トークン、 ニック
(72)【発明者】
【氏名】ワイアット レヴィ、 オースティン
(72)【発明者】
【氏名】キスナー、 ザック
(72)【発明者】
【氏名】キスナー、 ケン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可使時間における貯蔵安定性を改善し、未重合の材料の毒性を低減し、および/または熱による後硬化の時間を削減する単一重合機構とともに、良好な機械特性を有する3次元物体を積層造形によりインクジェットプリントする、または製造するための新たな材料や方法を提供する。
【解決手段】多官能メタクリレートオリゴマーおよび多官能アクリレートオリゴマー等の少なくとも1種である反応性オリゴマー、および反応性単官能モノマーを含む3次元物体形成用フリーラジカル重合性液体であって、反応性単官能種の反応性エチレン性不飽和基と反応性多官能種の反応性エチレン性不飽和基のモル結合比が少なくとも10:1であり、前記フリーラジカル重合性液体は、単一反応機構により硬化し、フォトプラスチック材料を形成するエネルギー重合性液体である、3次元物体形成用フリーラジカル重合性液体。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)多官能メタクリレートオリゴマーおよび(ii)多官能アクリレートオリゴマーの少なくとも1種である反応性オリゴマー、および
(i)単官能N-ビニルモノマー、(ii)単官能ビニルエーテルモノマー、(iii)単官能ビニルエステルモノマー、(iv)単官能ビニルアミドモノマー、(v)スチレンモノマー、(vi)単官能アクリルアミドモノマー、(vii)単官能(メタ)アクリレートモノマー、(viii)シアノアクリレートモノマー、(ix)単官能ビニルカーボネートモノマー、(x)単官能アクリロイルモノマー、および(xi)単官能ビニルカルバメートモノマーの少なくとも1種である反応性単官能モノマー
を含む3次元物体形成用フリーラジカル重合性液体であって、
反応性単官能種の反応性エチレン性不飽和基と反応性多官能種の反応性エチレン性不飽和基のモル結合比が少なくとも10:1であり、
前記フリーラジカル重合性液体は、単一反応機構により硬化し、フォトプラスチック材料を形成するエネルギー重合性液体である、3次元物体形成用フリーラジカル重合性液体。
【請求項2】
約0.01重量%~約15重量%の光開始剤をさらに含む、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項3】
式:1)引張強度(MPa)=-0.75×伸度+130(伸度約15%~約95%の場合)、2)引張強度(MPa)=4500/(伸度-25)-5(伸度約95%~約500%の場合)で定義される利用曲線以上の靭性を有する、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項4】
式:1)引張強度(MPa)=-1×伸度+120(伸度105%未満の場合)、2)引張強度(MPa)=2000/(伸度+10)-3(伸度約105%~約550%の場合)、3)引張強度(MPa)=0.5(伸度約550%超の場合)で定義される利用曲線以上の靭性を有する、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項5】
重合材料が、熱供給なしで所定の機械特性となる、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項6】
約0.001重量%~約10重量%の量の非反応性光吸収顔料、充填剤、重合禁止剤、および重合触媒の少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項7】
約0.001重量%~約10重量%の量の非反応性光吸収顔料、および充填剤をさらに含む、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項8】
前記オリゴマーおよび前記モノマーが同一の重合機構により反応し、異なる反応速度を有する、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項9】
前記モノマーおよび前記オリゴマーの溶解性が重合中に変化し、これによりモノマーまたはオリゴマー種の何れかの単独重合が助長される、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項10】
重合において複数のガラス転移温度を有する材料が生成される、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項11】
重合において少なくとも60℃異なる2つの異なるガラス転移温度を有する材料が生成される、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項12】
反応性単官能種の反応性エチレン性不飽和基と反応性多官能種の反応性エチレン性不飽和基のモル結合比が、少なくとも25:1である、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項13】
反応性単官能種の反応性エチレン性不飽和基と反応性多官能種の反応性エチレン性不飽和基のモル結合比が、少なくとも30:1である、請求項12に記載の重合性液体。
【請求項14】
基材にプリントを形成する、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項15】
ステレオリソグラフィー(SLA)、デジタルライトプロジェクション(DLP)、マテリアルジェッティング、またはインクジェットプリントにより硬化してフィルムまたは3次元物体を形成する、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項16】
インクジェットフィルムまたは3Dプリント層の厚みが約30μm超である、請求項15に記載の重合性液体。
【請求項17】
エネルギー重合条件を変化させることにより調製可能な機械特性を硬化時に有する、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項18】
毒性がない、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項19】
オリゴマーが約1500g/モル超の分子量を有する、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項20】
オリゴマーが約4000g/モル超の分子量を有する、請求項19に記載の重合性液体。
【請求項21】
モノマーが、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルホルムアミド、アクリロイルモルホリン、またはビニルシンナメートから成る群より選択される単官能N-ビニル、ビニルエステル、またはアクリロイルである、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項22】
(i)1以上の官能性のN-ビニルオリゴマー、(ii)1以上の官能性のビニルエーテルオリゴマー、(iii)1以上の官能性のビニルエステルオリゴマー、(iv)1以上の官能性のビニルアミドオリゴマー、(v)スチレンオリゴマー、(vi)1以上の官能性のアクリルアミドオリゴマー、(vii)1以上の官能性の(メタ)アクリレートモノマーとは異なる反応速度を有する1以上の官能性の(メタ)アクリレートオリゴマー、(viii)シアノアクリレートオリゴマー、(ix)1以上の官能性のビニルカーボネートオリゴマー、および(x)1以上の官能性のアクリロイルオリゴマー、(xi)1以上の官能性のビニルカルバメートオリゴマーの少なくとも1種である反応性オリゴマーと、
(i)1以上の官能性のN-ビニルモノマー、(ii)1以上の官能性のビニルエーテルモノマー、(iii)1以上の官能性のビニルエステルモノマー、(iv)1以上の官能性のビニルアミドモノマー、(v)スチレンモノマー、(vi)1以上の官能性のアクリルアミドモノマー、(vii)1以上の官能性の(メタ)アクリレートオリゴマーとは異なる反応速度を有する1以上の官能性の(メタ)アクリレートモノマー、(viii)シアノアクリレートモノマー、(ix)1以上の官能性のビニルカーボネートモノマー、(x)1以上の官能性のアクリロイルモノマー、および(xi)1以上の官能性のビニルカルバメートモノマーの少なくとも1種である反応性モノマーと、
を共に混合する工程を含む重合性液体の形成方法であって、
前記重合性液体が単一反応機構により硬化してフォトプラスチック材料を形成可能なエネルギー重合性液体である、重合性液体の形成方法。
【請求項23】
ステレオリソグラフィー(SLA)、デジタルライト/プロジェクション(DLP)、マテリアルジェッティング(3Dのインクジェットプリント)、またはインクジェットプリントにより、前記重合性液体を硬化してフィルムまたは3次元物体を製造する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記フィルムまたは3次元物体が、医療機器、または履物の一部、またはソフトロボティックスの一部である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記フィルムまたは3次元物体がヒドロゲルである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
ピクセルまたはボクセル重合を使用して、エネルギー重合条件を変更することにより異なる物理特性を得る、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記重合性液体をパターン照射で照射する工程をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
約0.01重量%~約15重量%の量の光開始剤を混合する工程をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
単一反応機構により硬化され、フォトプラスチック材料を形成するエネルギー重合性液体を含む物品であって、
前記エネルギー重合性液体が、
(i)1以上の官能性のN-ビニルオリゴマー、(ii)1以上の官能性のビニルエーテルオリゴマー、(iii)1以上の官能性のビニルエステルオリゴマー、(iv)1以上の官能性のビニルアミドオリゴマー、(v)スチレンオリゴマー、(vi)1以上の官能性のアクリルアミドオリゴマー、(vii)1以上の官能性の(メタ)アクリレートモノマーとは異なる反応速度を有する1以上の官能性の(メタ)アクリレートオリゴマー、(viii)シアノアクリレートオリゴマー、(ix)1以上の官能性のビニルカーボネートオリゴマー、および(x)1以上の官能性のアクリロイルオリゴマー、(xi)1以上の官能性のビニルカルバメートオリゴマーの少なくとも1種である反応性オリゴマーと、
(i)1以上の官能性のN-ビニルモノマー、(ii)1以上の官能性のビニルエーテルモノマー、(iii)1以上の官能性のビニルエステルモノマー、(iv)1以上の官能性のビニルアミドモノマー、(v)スチレンモノマー、(vi)1以上の官能性のアクリルアミドモノマー、(vii)1以上の官能性の(メタ)アクリレートオリゴマーとは異なる反応速度を有する1以上の官能性の(メタ)アクリレートモノマー、(viii)シアノアクリレートモノマー、(ix)1以上の官能性のビニルカーボネートモノマー、(x)1以上の官能性のアクリロイルモノマー、および(xi)1以上の官能性のビニルカルバメートモノマーの少なくとも1種である反応性モノマーと、
から作製される、物品。
【請求項30】
前記重合性液体が、エネルギー重合条件を変化させることにより調製可能な機械特性を硬化時に有する、請求項29に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年4月11日出願の米国仮特許出願第62/484,103号および2017年4月12日出願の米国仮特許出願62/484,644号の利益を主張する2017年9月7日出願の米国特許出願第15/698,059号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
上記の出願の全内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、液体材料から固体材料またはフィルムを製造するための材料および方法、ならびにその方法で製造された物に関する。より具体的には、本開示は、フォトプラスチックとして設計された単一反応機構のエネルギー重合性材料に関する。
【背景技術】
【0004】
単一反応機構のエネルギー重合性樹脂は、硬化すると、一般に、従来の熱可塑性樹脂と比較して機械特性に劣る。これが、製造環境で見られ、信頼されている多くの材料において熱可塑性材料が優勢となっている主な理由である。具体的には、衝撃強度、伸び、引張強度の何れもを含む熱可塑性材料の靭性は、単一反応機構のエネルギー重合材料よりも何倍も大きく、あるいはそれ以上である。エネルギー開始反応機構は、一般にはフリーラジカル重合であるが、カチオン重合の場合もある。ほとんどの場合、重合は周囲条件(25℃、1atm)で生じる。単一反応機構の重合には、機械特性を制限することで知られている4つの側面がある。
【0005】
1)直鎖ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、ポリカーボネート、ナイロンなど、非常に強靭であり、高強度、高伸度の熱可塑性樹脂の製造に重要である。これらの広く使用されている熱可塑性樹脂の主鎖構造には、ポリマー鎖同士および/または主鎖から外れた小さな側鎖または分岐鎖を、積層、整列、および弱く結合する能力を備える高強度構造を時おり含む繰り返し単位が多いが、これらは一般的にはポリマー鎖の絡み合いや鎖間運動性を著しく妨害することはない。エネルギー開始フリーラジカル重合により直鎖ポリマーを製造するための最も一般的な反応機構では、単官能モノマーを使用する。しかしながら、これらの反応は通常、周囲空気中で行われ、溶存酸素などの阻害による連鎖停止反応により、対照となる熱可塑性樹脂よりも鎖長が大きく短くなる。また、これらの直鎖ポリマーは、完全に炭素骨格鎖であり、絡み合いが小さく、側鎖が大きい。これらの特徴により、上述した熱可塑性樹脂で見られる小さな力での有益な相互作用の多くが損なわれ、材料の靭性が低くなる。
【0006】
2)フリーラジカル重合の速度により、上述した従来のポリマーと比較して非常に小さな分子量のポリマーが製造される。単一反応機構のエネルギー重合において、二官能性またはより大きな官能性のモノマーの使用は、高い架橋密度を有する非直鎖ポリマーをもたらす。分子量が非常に高く、あるいは莫大にもなるが、これらの高度に架橋された系は、一般に強度が非常に高い。一方で、架橋や高密度の共有結合によりポリマー鎖がネットワーク内を移動することができないため、伸度が非常に低い。このため、以前と同様に単官能モノマーを使用して直鎖ポリマーが製造されている。これらのモノマーの重合は、開始、生長、停止の3工程で行われる。重合中に系が受けるエネルギー、使用する開始剤の量、または禁止剤の全てまたは何れかにより、上記工程における生長が一般的に大幅に短くなる。生長が短くなる理由の1つとしては、連鎖停止を生じるO2やその他の化学禁止剤と反応可能な生成フリーラジカルの不安定性にある。他の理由としては、硬化中に生じるガラス化にあり、これにより分子の運動性が制限され、次いで転化率が制限される。このため、単一反応機構のエネルギー重合単官能系における繰り返し単位数は、熱可塑性材料よりも著しく少ない。このような低分子量の場合、直鎖同士の絡み合いが非常に少ないために著しく低い強度の材料となることが知られている。
【0007】
3)多くの上記問題を回避するために検討される方法の1つとして、高分子量で、一般に多官能であるエネルギー重合性オリゴマーの使用が挙げられる。これらのオリゴマーは、より高い分子量の開始剤となり、得られる最終的な材料は、架橋密度がより低く、ポリマー鎖全体の分子量がより高くなる。しかしながら、これらの高分子量オリゴマーは粘度が非常に高く、インクジェットプリントや積層造形などの粘度が限定される用途への使用が大きく制限される。
【0008】
4)最後に、エネルギー開始フリーラジカル重合において、種々のフリーラジカルを誘発する反応性官能基を有する化学種の重合機構および重合率を制御することが非常に難しいことが示されていた。望ましい迅速な重合率を達成するためには、高エネルギー硬化と高比率の光開始剤との間のトレードオフが存在する。これらの何れかが本質的に連鎖停止や低分子量をもたらす。このため、分子レベルで系を制御することは非常に挑戦的であり、分子量構築、架橋密度分布、ポリマーネットワークの構築、転化率、連鎖停止、個々の分子種の反応速度などが均質でなくなり、最終生成物において、広いガラス転移温度(Tg)分布や不安定な機械強度が確認されることとなる。
【0009】
基材上のフィルムへのプリント、または積層造形でマテリアルジェッティングに使用されるインクジェットインクは、噴射温度において非常に低い粘度、典型的には約20cPs未満を必要とする。ホットメルトインクが使用されてきたが、液体インクは一般に大容量の産業用プリントにより適している。単一反応機構のエネルギー重合性インクには、所望の粘度を得るために低粘度の反応性材料が使用される。反応性材料は、プリント後にUV照射や電子ビームなどの照射により重合する反応性基を有する。単一反応機構のエネルギー重合性インクにおける低粘度の反応性材料は、一般的には低粘度モノマーおよび場合により低比率で低粘度のオリゴマーを含む。単一反応機構のエネルギー重合性インクは、低比率で高粘度の反応性または非反応性オリゴマーおよびポリマーを含んでもよい。単官能モノマーは特に粘度が低いため、インクジェットインクはこれまでは多量の単官能モノマーを含んでいた。上述した通り、これらの単官能モノマーは、重合時に、最終的生成物における低性能の機械特性をもたらす。
【0010】
従来の積層または三次元製造技術において、立体物の構築は、多段またはlayer-by-layer法で行われる。特に、層形成は、一般的に可視またはUV光照射の実施下における光重合性樹脂の硬化により行われる。2つの技術が知られている。その1つでは、新たな層が成長体の上面に形成され、他方では、新たな層が成長体の下面に形成される。
【0011】
新たな層が成長体の上面に形成される場合、それぞれの照射工程後に構築中の物体は樹脂の「槽」へと落とされ、樹脂の新たな層が上に被覆され、そして新たな照射工程が行われる。このような「トップダウン」技術のデメリットは、成長体を液体樹脂の(場合によっては深い)槽に沈め、精密な液体樹脂の上層を再構成する必要があることである。
【0012】
新たな層が成長体の下に形成される場合、それぞれの照射工程後に構築中の物体は、製造中にボトムプレートから十分に離される。このような「ボトムアップ」技術は、代わりに物体を比較的浅い穴や槽から持ち上げることにより、物体が沈められる深い槽の必要性を排除し得る。これらの両方の積層技術の制約も粘度であり、上界面または下界面において均質な層とするには、一般的に2000cPs未満の粘度の流体が必要である。加えて、ボトムアップ技術法では、最終部分の均質な層配置と表面仕上げを得るためにより剛性の高い材料が好ましい。最後に、エネルギー開始が無くても起こり得る重合は部分的に欠陥をもたらし、またはさらに悪ければ槽全体を固めてしまうため、何れの技術においても可使時間の安定性が重要である。このような反応は、例えば、Carbon 3Dにより提供される多くの二重反応機構材料、例えば、CE220、CE221、EPU40、EPX81、FPU50、RPU60、RPU61、RPU70などを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、可使時間における貯蔵安定性を改善し、未重合の材料の毒性を低減し、および/または熱による後硬化の時間を削減する単一重合機構とともに、良好な機械特性を有する3次元物体を積層造形によりインクジェットプリントする、または製造するための新たな材料や方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
いくつかの態様によれば、
(i)多官能メタクリレートオリゴマーおよび(ii)多官能アクリレートオリゴマーの少なくとも1種である反応性オリゴマー;
(i)単官能N-ビニルモノマー、(ii)単官能ビニルエーテルモノマー、(iii)単官能ビニルエステルモノマー、(iv)単官能ビニルアミドモノマー、(v)スチレンモノマー、(vi)単官能アクリルアミドモノマー、(vii)単官能(メタ)アクリレートモノマー、(viii)シアノアクリレートモノマー、(ix)単官能ビニルカーボネートモノマー、(x)単官能アクリロイルモノマー、および(xi)単官能ビニルカルバメートモノマーの少なくとも1種である反応性単官能モノマー
を含む3次元物体形成用フリーラジカル重合性液体。
反応性単官能種の反応性エチレン性不飽和基と反応性多官能種の反応性エチレン性不飽和基のモル結合比は、少なくとも10:1である。フリーラジカル重合性液体は、単一反応機構により硬化して、フォトプラスチック材料を形成するエネルギー重合性液体である。
【0015】
本開示の追加の実施形態において、重合性液体は、約0.01重量%~約15重量%の光開始剤を含む。
【0016】
本開示の他の実施形態において、重合性液体は、式:1)引張強度(MPa)=-0.75×伸度+130(伸度約15%~約95%の場合)、2)引張強度(MPa)=4500/(伸度-25)-5(伸度約95%~約500%の場合)で定義される利用曲線以上の靭性を有する。
【0017】
本開示の他の実施形態において、重合性液体は、式:1)引張強度(MPa)=-1×伸度+120(伸度105%未満の場合)、2)引張強度(MPa)=2000/(伸度+10)-3(伸度約105%~約550%の場合)、3)引張強度(MPa)=0.5(伸度約550%超の場合)で定義される利用曲線以上の靭性を有する。
【0018】
本開示の他の実施形態において、重合材料は、熱供給なしで所定の機械特性を達する。
【0019】
本開示の他の実施形態において、重合性液体は、約0.001重量%~約10重量%の量の非反応性光吸収顔料、充填剤、重合禁止剤、および重合触媒の少なくとも1種を含む。
【0020】
本開示の他の実施形態において、重合性液体は、約0.001重量%~約10重量%の量の非反応性光吸収顔料、および充填剤を含む。
【0021】
本開示の他の実施形態において、オリゴマーおよびモノマーは同一の反応機構により反応し、異なる反応速度を有する。
【0022】
本開示の他の実施形態において、モノマーおよびオリゴマーの溶解性は重合中に変化し、これによりモノマー種またはオリゴマー種の何れかの単独重合が助長される。
【0023】
本開示の他の実施形態において、重合において複数のガラス転移温度を有する材料が生成される。
【0024】
本開示の他の実施形態において、重合において、Tgが少なくとも60℃異なる2つの異なるガラス転移温度を有する材料が生成される。
【0025】
本開示の他の実施形態において、反応性単官能種の反応性エチレン性不飽和基と反応性多官能種の反応性エチレン性不飽和基のモル結合比は、少なくとも25:1である。
【0026】
本開示の他の実施形態において、反応性単官能種の反応性エチレン性不飽和基と反応性多官能種の反応性エチレン性不飽和基のモル結合比は、少なくとも30:1である。
【0027】
本開示の他の実施形態において、重合性液体は、基板上にプリントを形成する。
【0028】
本開示の他の実施形態において、重合性液体は、ステレオリソグラフィー(SLA)、デジタルライトプロジェクション(DLP)、マテリアルジェッティング、またはインクジェットプリントにより硬化してフィルムまたは3次元物体を形成する。
【0029】
本開示の他の実施形態において、インクジェットフィルムまたは3Dプリントされた層の厚みは約30μm超である。
【0030】
本開示の他の実施形態において、エネルギー重合条件を変化させることにより、重合性液体は硬化時に調整可能な機械特性を有する。
【0031】
本開示の他の実施形態において、重合性液体は毒性がない。
【0032】
本開示の他の実施形態において、オリゴマーは、約1500g/モル超の分子量を有する。
【0033】
本開示の他の実施形態において、オリゴマーは、約4000g/モル超の分子量を有する。
【0034】
本開示の他の実施形態において、モノマーは、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルホルムアミド、アクリロイルモルホリン、またはビニルシンナメートから成る群より選択される単官能N-ビニル、ビニルエステル、またはアクリロイルである。
【0035】
いくつかの態様によれば、
(i)1以上の官能性のN-ビニルオリゴマー、(ii)1以上の官能性のビニルエーテルオリゴマー、(iii)1以上の官能性のビニルエステルオリゴマー、(iv)1以上の官能性のビニルアミドオリゴマー、(v)スチレンオリゴマー、(vi)1以上の官能性のアクリルアミドオリゴマー、(vii)1以上の官能性の(メタ)アクリレートモノマーとは異なる反応速度を有する1以上の官能性の(メタ)アクリレートオリゴマー、(viii)シアノアクリレートオリゴマー、(ix)1以上の官能性のビニルカーボネートオリゴマー、および(x)1以上の官能性のアクリロイルオリゴマー、(xi)1以上の官能性のビニルカルバメートオリゴマーの少なくとも1種である反応性オリゴマーと、
(i)1以上の官能性のN-ビニルモノマー、(ii)1以上の官能性のビニルエーテルモノマー、(iii)1以上の官能性のビニルエステルモノマー、(iv)1以上の官能性のビニルアミドモノマー、(v)スチレンモノマー、(vi)1以上の官能性のアクリルアミドモノマー、(vii)1以上の官能性の(メタ)アクリレートオリゴマーとは異なる反応速度を有する1以上の官能性の(メタ)アクリレートモノマー、(viii)シアノアクリレートモノマー、(ix)1以上の官能性のビニルカーボネートモノマー、(x)1以上の官能性のアクリロイルモノマー、および(xi)1以上の官能性のビニルカルバメートモノマーの少なくとも1種である反応性モノマーと、
を共に混合する工程を含む重合性液体の形成方法。
重合性液体は、単一反応機構により硬化してフォトプラスチック材料を形成するエネルギー重合性液体である。
【0036】
本開示の追加の実施形態において、重合性液体は、ステレオリソグラフィー(SLA)、デジタルライトプロジェクション(DLP)、マテリアルジェッティング(3Dのインクジェットプリント)、またはインクジェットプリントにより硬化してフィルムまたは3次元物体を形成する。
【0037】
本開示の他の実施形態において、フィルムまたは3次元物体は、医療機器、または履物の一部、またはソフトロボティックスの一部である。
【0038】
本開示の他の実施形態において、フィルムまたは3次元物体は、ヒドロゲルである。
【0039】
本開示の他の実施形態において、ピクセルまたはボクセル重合を使用して、エネルギー重合条件を変更することにより、種々の物理特性を得る。
【0040】
本開示の他の実施形態において、この方法は、重合性液体をパターン照射で照射する工程をさらに含む。
【0041】
本開示の他の実施形態において、この方法は、約0.01重量%~約15重量%の量の光開始剤を混合する工程をさらに含む。
【0042】
いくつかの態様によれば、物品は単一反応機構により硬化して、フォトプラスチック材料を形成するエネルギー重合性液体を含む。エネルギー重合性液体は、(i)1以上の官能性のN-ビニルオリゴマー、(ii)1以上の官能性のビニルエーテルオリゴマー、(iii)1以上の官能性のビニルエステルオリゴマー、(iv)1以上の官能性のビニルアミドオリゴマー、(v)スチレンオリゴマー、(vi)1以上の官能性のアクリルアミドオリゴマー、(vii)1以上の官能性の(メタ)アクリレートモノマーとは異なる反応速度を有する1以上の官能性の(メタ)アクリレートオリゴマー、(viii)シアノアクリレートオリゴマー、(ix)1以上の官能性のビニルカーボネートオリゴマー、および(x)1以上の官能性のアクリロイルオリゴマー、(xi)1以上の官能性のビニルカルバメートオリゴマーの少なくとも1種である反応性オリゴマー、および(i)1以上の官能性のN-ビニルモノマー、(ii)1以上の官能性のビニルエーテルモノマー、(iii)1以上の官能性のビニルエステルモノマー、(iv)1以上の官能性のビニルアミドモノマー、(v)スチレンモノマー、(vi)1以上の官能性のアクリルアミドモノマー、(vii)1以上の官能性の(メタ)アクリレートオリゴマーとは異なる反応速度を有する1以上の官能性の(メタ)アクリレートモノマー、(viii)シアノアクリレートモノマー、(ix)1以上の官能性のビニルカーボネートモノマー。(x)1以上の官能性のアクリロイルモノマー、および(xi)1以上の官能性のビニルカルバメートモノマーの少なくとも1種である反応性モノマーから調製される。
【0043】
本開示の追加の実施形態において、エネルギー重合条件を変化させることにより、重合性液体は硬化時に調整可能な機械特性を有する。
【0044】
さらに、本開示は、(i)第1成分のエネルギー重合性液体、および(ii)第1成分とは異なる第2成分のエネルギー重合性液体を含む固体フォトプラスチック材料を単一反応機構により形成する方法を提供し、この方法において、これらの成分は混合され、エネルギーを照射して重合され、固体フォトプラスチック材料が形成される。
【0045】
いくつかの実施形態において、反応性希釈剤は、アクリレート、メタクリレート、スチレン、アクリル酸、ビニルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル(誘導体を含む)、これら何れか1つ以上を含むポリマー、これら2種以上の組合せ(例えば、上述されるようなアクリロニトリル、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、アミン(メタ)アクリレート、およびこれら2種以上の混合物)を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、非反応性ポリマーは、バルク材料の重合に関与する官能基を持たないポリマーまたはポリマーブレンドを含む。限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、PET、およびこれらの2つ以上の混合物を含む多くのポリマーを使用できる。
【0047】
いくつかの実施形態において、第1成分は、アクリレート官能性を有する反応性モノマーまたはオリゴマーを含む。この実施形態において、第1成分は、好ましくはまたは必ず、互いに反応し、単一ポリマーネットワークを形成する。
【0048】
いくつかの実施形態において、第2成分は、(メタ)アクリレート官能性を有する反応性モノマーまたはオリゴマーを含む。この実施形態において、第1成分は、好ましくはまたは必ず、互いに反応し、単一ポリマーネットワークを形成する。
【0049】
いくつかの実施形態において、第2成分は、N-ビニル、ビニルエーテル、アクリロイル、ビニルカーボネート、ビニルカルバメート、ビニルエステル、および/またはビニルアミド官能性を有する反応性モノマーまたはオリゴマーを含む。この実施形態において、第2成分は、好ましくはまたは必ず、互いに反応し、単一ポリマーネットワークを形成する。
【0050】
いくつかの実施形態において、第1成分は、アクリレートおよび/またはメタアクリレート官能性を有する反応性モノマーまたはオリゴマーを含み、第2成分は、N-ビニル、ビニルエーテル、ビニルカーボネート、ビニルカルバメート、アクリロイル、ビニルエステル、および/またはビニルアミド官能性を有する反応性モノマーまたはオリゴマーを含む。この実施形態において、成分は、互いに反応し、ランダムコポリマーを形成する。
【0051】
いくつかの実施形態において、第1成分は、アクリレートおよび/またはメタクリレート官能性を有する反応性モノマーまたはオリゴマーを含み、第2成分は、N-ビニル、ビニルエーテル、ビニルカーボネート、ビニルカルバメート、アクリロイル、ビニルエステル、および/またはビニルアミド官能性を有する反応性モノマーまたはオリゴマーを含む。この実施形態において、成分は互いに反応し、フルIPN、セミIPN、疑似IPNまたはデュアルネットワークを形成する。いくつかの実施形態において、3次元物体は、第1成分と第2成分から形成されるポリマーブレンド(例えば、IPN、セミIPN、疑似IPN、連続IPN、同時IPN、デュアルネットワーク)を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、単一反応機構のエネルギー重合性液体は、1、2、または5重量%~20、30、40、90、または99重量%の第1成分;および1、10、60、70、または80重量%~95、98、または99重量%の第2成分を含む(場合により1種以上の追加の成分を含む)。他の実施形態において、単一反応機構のエネルギー重合性液体は、1、2、または5重量%~20、30、40、90、または99重量%の第2成分;および1、10、60、70、または80重量%~95、98、または99重量%の第1成分を含む(場合により1種以上の追加の成分を含む)。
【0053】
いくつかの実施形態において、第2成分は、同一の照射工程において第1成分と同一の光で同時に硬化する。
【0054】
いくつかの実施形態において、第2成分は、照射工程の光とは異なる波長の光で、後で硬化される。
【0055】
いくつかの実施形態において、第2成分は、照射工程の光と同一の波長の光で、後で硬化される。
【0056】
いくつかの実施形態において、第2成分は、電子ビームで、後で硬化される。
【0057】
ここに開示される発明の1つの特定の実施形態は、単一反応機構のエネルギー重合性液体を含む3次元物体の形成方法である。この方法は、キャリアおよび構築面を有する光透過性部材を提供する工程(キャリアと構築面はその間に構築領域を定める。);(メタ)アクリレートオリゴマー、シアノアクリレートモノマー、アクリルアミドモノマー、ビニルエーテルモノマー、ビニルエステルモノマー、N-ビニルモノマー、ビニルカーボネートモノマー、ビニルカルバメートモノマー、アクリロイルモノマー、ビニルアミドモノマーの少なくとも2種を含む重合性液体で構築領域を満たす工程;光透過部材を介して構築領域に光を照射し、固体ポリマー骨格を形成する工程;キャリアを構築表面から離し3次元物体と同じ形状または3次元物体に組み込まれる形状を有する3次元中間体を形成する工程;およびその後に3次元中間体を十分にエネルギー照射し、三次元中間体から3次元物体を形成する工程を含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、この方法中に硬化性または単一反応機構のエネルギー重合性液体を少なくとも1回、次の硬化性または単一反応機構のエネルギー重合性液体と変える。場合により、次の硬化性または単一反応機構のエネルギー重合性液体が次の重合において前の硬化性または単一反応機構のエネルギー重合性液体と交差反応性であり、共有結合で互いに結合した複数のそれぞれ異なる機械特性(例えば張力)を有する構造セグメントを有する物体を形成する。
【0059】
ここに記載される開示のさらなる態様は、積層造形またはインクジェットプリントによる(メタ)アクリレートおよびそのビニル官能性樹脂を含むフィルムまたは3次元物体の製造に有用な単一反応機構のエネルギー重合性液体である。単一反応機構のエネルギー重合性液体は、
a)(i)1以上の官能性のアクリレートオリゴマー、(ii)1以上の官能性の(メタ)アクリレートオリゴマー、(iii)1以上の官能性のビニルオリゴマーから成るオリゴマー群より選択される少なくとも1種の構成成分、
b)(i)1以上の官能性のN-ビニルモノマー、(ii)1以上の官能性のビニルエーテルモノマー、(iii)1以上の官能性のビニルエステルモノマー、(iv)1以上の官能性のビニルアミドモノマー、(v)スチレンモノマー、(vi)アクリルアミドモノマー、(vii)(メタ)アクリレートモノマー、(viii)シアノアクリレートモノマー、(ix)1以上の官能性のビニルカーボネートモノマー、(x)1以上の官能性のアクリロイルモノマー、(xi)1以上の官能性のビニルカルバメートモノマーから成るビニル群より選択される(a)とは異なる反応速度を有する少なくとも1種の構成成分、
c)1種以上の光開始剤
d)任意成分として反応性希釈剤、
e)任意成分として非反応性ポリマー、
f)任意成分として1種以上の重合禁止剤、
g)任意成分として1種以上の非反応性光吸収顔料または染料(存在する場合、0.001~10重量%の量で含まれる)、および
h)任意成分として充填剤(例えば、シリカ、カーボンファイバー、アルミニウム、コアシェルゴムなどの強化剤、これらの組み合わせなど)
の混合物を含む。
【0060】
ここに記載の開示のさらなる態様は、積層造形またはインクジェットプリントによるアクリレートおよびそのメタクリレート官能性樹脂を含むフィルムまたは3次元物体の製造に有用な単一反応機構のエネルギー重合性液体である。単一反応機構のエネルギー重合性液体は、
a)1以上の官能性のアクリレートオリゴマーから成るオリゴマー群から選択される少なくとも1種の構成成分、
b)1以上の官能性のメタクリレートモノマーから成るメタクリレート群から選択される少なくとも1種の構成成分、
c)1種以上の光開始剤、
d)任意成分として反応性希釈剤、
e)任意成分として非反応性ポリマー、
f)任意成分として1種以上の重合禁止剤、
g)任意成分として1種以上の非反応性光吸収顔料または染料(存在する場合、0.001~10重量%の量で含まれる)、および
h)任意成分として充填剤(例えば、シリカ、カーボンファイバー、アルミニウム、コアシェルゴムなどの強化剤、これらの組み合わせなど)
の混合物を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、本発明で使用される単一反応機構のエネルギー重合性液体は、非反応性顔料または染料を含む。限定されるものではないが、例えば、(i)二酸化チタン(例えば、0.05または0.1~1または5重量%の量)、(ii)カーボンブラック(例えば、0.05または0.1~1または5重量%の量)、および/または(iii)有機紫外線吸収剤、例えばヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、オキサニリド、ベンゾフェノン、チオキサントン、ヒドロキシフェニルトリアジン、および/またはベンゾトリアゾール紫外線吸収剤(例えば、0.001または0.005~1、2または4重量%の量)が挙げられる。
【0062】
いくつかの実施形態において、ヒンダードアミン光安定剤、またはルイス酸、または被酸化性スズ塩が、製造中に3次元中間体の形成を促進するのに有効な量(例えば、0.01または0.1~1または2重量%またはそれ以上)で単一反応機構のエネルギー重合性液体に含まれる。
【0063】
いくつかの実施形態において、ヒンダードアミン光安定剤、またはルイス酸、または被酸化性スズ塩が、重合性樹脂の第1成分および/または第2成分の重合を選択的に促進するのに有効な量(例えば、0.01または0.1~1または2重量%またはそれ以上)で単一反応機構のエネルギー重合性液体に含まれる。
【0064】
ここに記載の開示のさらなる態様は、エネルギー重合性の第1成分と、第1成分とは反応速度により異なり、第1成分と同じ反応機構で重合されるエネルギー重合性の成分と、を含む3次元物体であり、および/または3次元物体は、積層造形プロセスにより製造される。
【0065】
ここに記載の開示のさらなる態様は、エネルギー重合性の第1成分と、第1成分とは重合前の溶解性により異なり、第1成分と同じ反応機構で重合されるエネルギー重合性の成分と、を含む3次元物体であり、および/または3次元物体は、積層造形プロセスにより製造される。
【0066】
ここに記載の発明のさらなる態様は、エネルギー重合性の第1成分と、第1成分とは第1成分の重合後の溶解性により異なるエネルギー重合性の成分と、を含む3次元物体である。両方の成分は同じ反応機構で重合され、および/または3次元物体は、積層造形プロセスにより製造される。互いに対しての成分の溶解性が重合中に変化する場合、相分離が何れかの成分の単独重合を誘発し、材料の屈折率を変化させることがある。
【0067】
ここに記載の開示のさらなる態様は、エネルギー重合性の第1成分と、第1成分とは500%のモル結合比(第2成分:第1成分が5:1以上のモル結合比)で異なり、第1成分と同じ反応機構で重合されるエネルギー重合性の成分と、を含む3次元物体であり、および/または3次元物体は、積層造形プロセスにより製造される。
【0068】
ここに記載の開示のさらなる態様は、エネルギー重合性の第1成分と、第1成分とは700%のモル結合比(第2成分:第1成分が7:1以上のモル結合比)で異なり、第1成分と同じ反応機構で重合されるエネルギー重合性の成分と、を含む3次元物体であり、および/または3次元物体は、積層造形プロセスにより製造される。
【0069】
いくつかの実施形態において、物体は、第1成分、第2成分とは異なる硬化性の(またはさらに反応、重合または鎖伸長する)第3成分を含み、この場合に物体は、互いに共有結合で結合した第1構造セグメントおよび第2構造セグメントを少なくとも有し、第1構造セグメントは硬化性の第2成分を含み、第2構造セグメントは硬化性の第3成分を含み、第1構造セグメントと第2構造セグメントは両方共に同一または異なる光重合した第1成分を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、物体は、第1成分および第2成分から形成されるポリマーブレンドを含む。
【0071】
物体は、インジェクション成形またはキャスティングでは形成できない形状を有するものであってよい。
【0072】
さらなる領域への適用性がここに提供される記載から明らかである。記載および具体例は例示するだけの目的であり、本開示の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0073】
図面は例示するだけの目的であり、いかなる方法においても本開示の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1A】
図1Aは、本発明による単一反応機構のエネルギー重合性ポリマーのプロットである。
【
図1B】
図1Bは、本発明による単一反応機構のエネルギー重合性ポリマーの別のプロットである。
【
図1C】
図1Cは、本発明による単一反応機構のエネルギー重合性ポリマーのさらに別のプロットである。
【
図2】
図2は、本発明による強靭重合性材料の毒性表示のプロットである。
【
図4】
図4は、本発明による(a)フルIPNおよび(b)セミIPNをそれぞれ示す(実線=第1のポリマーネットワーク、破線=第2のポリマーネットワーク)。
【
図5】
図5は、本発明による(a)2種以上の構成重合性樹脂が重合した後の疑似IPN(即ち、ネットワーク間に弱い結合の可能性がある2つの絡み合ったネットワーク)、およびb)2種以上の構成重合性樹脂が重合した後の疑似IPA(即ち、ネットワーク間に共有結合性の化学架橋を有する2つの絡み合ったネットワーク)を示す。
【
図6】
図6は、2種以上の構成重合性樹脂が重合した後の対照的な構造を有するデュアルネットワークを示し、2つのネットワークはネットワーク間の化学的な結合を持たず、PAMPSおよびPAAmの化学構造は本発明によりそのような構造を形成することを示す例である。
【
図7】
図7は、本発明による2種以上の構成重合性樹脂が重合した後の連続IPNの形成を示すフロー図である(実線=第1のポリマーネットワーク、破線=第2のポリマーネットワーク)。
【
図8】
図8は、本発明による2種以上の構成重合性樹脂が重合した後の同時IPNの形成を示すフロー図である(実線=第1のポリマーネットワーク、破線=本第2のポリマーネットワーク、塗りつぶし無の正方形と黒丸=異なるモノマー)。
【
図9A】
図9Aは、本発明による(a)長いネットワーク、および(b)短いネットワークの場合におけるIPNネットワークの異なる分子量制御を示す(実線=架橋ポリマーネットワーク、破線=第2のモノマーポリマーネットワーク)。
【
図9B】
図9Bは、本発明による(a)長いネットワーク、および(b)短いネットワークの場合におけるランダムコポリマーのモノマーセグメントの異なる分子量制御を示す(実線=架橋ポリマーネットワーク、破線=第2のモノマーポリマーネットワーク)。
【
図9C】
図9Cは、本発明によるモノマーを用いた鎖伸長骨格IPNネットワークを示す(実線=架橋ネットワーク1、長い破線=モノマーにより伸長したポリマー鎖、短い破線=第2のモノマーネットワークであり、鎖伸長モノマーと同一であっても、なくてもよい)。
【
図9D】
図9Dは、本発明によるモノマーにより鎖伸長した第2のネットワークを示す(実線=架橋ネットワーク1、長い破線=鎖伸長したモノマーネットワーク、短い破線=第2のモノマーネットワークであり、鎖伸長モノマーとは異なるモノマーである)。
【
図10A】
図10Aは、本発明による異なる単一反応機構のエネルギー重合性官能基を有する2種の成分:I.多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、II.単官能ビニルモノマーを用いたセミIPN重合系を示す(実線=部分Iのポリマーネットワーク、破線=部分IIのポリマーネットワーク)。
【
図10B】
図10Bは、本発明による異なる単一反応機構のエネルギー重合性官能基を有する2種の成分:I.多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、II.多官能ビニルモノマーを用いたフルIPN重合系を示す(実線=部分Iのポリマーネットワーク、破線=部分IIのポリマーネットワーク)。
【
図10C】
図10Cは、本発明による異なる単一反応機構のエネルギー重合性官能基を有する2種の成分:I.多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、II.多官能ビニルオリゴマーを用いたフルIPN重合系を示す(実線=部分Iのポリマーネットワーク、破線=部分IIのポリマーネットワーク)。
【
図10D】
図10Dは、本発明による異なる単一反応機構のエネルギー重合性官能基を有する2種の成分:I.単官能(メタ)アクリレートモノマー、II.多官能ビニルモオリゴマーを用いたセミIPN重合系を示す(破線=部分Iのポリマーネットワーク、実線=部分IIのポリマーネットワーク)。
【
図10E】
図10Eは、本発明による異なる単一反応機構のエネルギー重合性官能基を有する2種の成分:I.多官能(メタ)アクリレートモノマー、II.多官能ビニルオリゴマーを用いたフルIPN重合系を示す(実線=部分Iのポリマーネットワーク、破線=部分IIのポリマーネットワーク)。
【
図10F】
図10Fは、本発明による異なる単一反応機構のエネルギー重合性官能基を有する2種の成分:I.単官能(メタ)アクリレートモノマー、II.単官能ビニルモノマーを用いた疑似IPN重合系を示す(実線=部分Iのポリマーネットワーク、破線=部分IIのポリマーネットワーク)。
【
図11】
図11は、本発明の試験体の引張特性のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下の説明は本質的に単なる例示であり、本開示、用途、または使用を限定することを意図するものではない。
【0076】
ここで、添付図面を参照して本発明をより完全に説明する。同じ番号は、全体を通して同じ要素を指す。図では、明確にするために、特定の線、層、成分、要素、または特徴を太くしている場合がある。使用される場合、特に断りのない限り、破線は任意の機能または操作を示す。
【0077】
要素が「の上にある」、「に取り付けられる」、「に接続される」、「と結合される」、「と接している」などと記載される場合、直接他の要素の上にある、に取り付けられる、に接続される、と結合される、および/またはと接していると理解されても、介在している要素が存在してもよいと理解されてもよい。一方、要素が、例えば、「直接に他の要素の上にある」、「他の要素に直接取り付けられる」、「他の要素に直接接続される」、「他の要素と直接結合される」、「他の要素と直接接している」と記載される場合、介在している要素は存在しない。他の特徴に隣接して置かれる構造または特徴についての記載は、隣接する特徴と重なる、または隣接する特徴の基礎になる部分を有してよいことが当業者には理解される。
【0078】
図に示される場合に要素や特徴と他の要素や特徴との関係を記載する説明を簡略化するために、空間に関連する用語「下」、「上」などを本明細書で用いる場合がある。空間に関連する用語は、図に示される方向に加えて、使用中の装置または操作の異なる方向を包含することが理解される。例えば、図の装置を逆さまにする場合、他の要素や特徴の「下」と記載される要素は、他の要素や特徴の「上」に置かれることとなる。従って、例えば、用語「下」は上と下の両方の方向を包含できる。装置を異なる方向(90℃回転または他の方向)に向けてよく、このため本明細書で使用される空間に関連する用語は適宜解釈される。同様に、「上向きに」、「下向きに」、「垂直に」、「水平に」などの用語は、特に明記しない限りは説明のみの目的で、本明細書において使用される。
【0079】
「与えられる形状」は、典型的には収縮(例えば、~1、2、または4体積%)、膨張(例えば、~1、2、または4体積%)、支持構造の除去、または形成工程の導入(例えば、中間製造物の形成後、その後の3次元製造物の形成前に、意図的な曲げ、引き伸ばし、穴あけ、研削、切断、研磨、またはその他の意図的な成形)により、中間物体の形状がその形成とその後の3次元製造物の形成の間に若干変化する場合を言う。上述した通り、所望に応じてさらなる重合前、および/または介在する成形工程の前、間、または後に、3次元中間体を洗浄してもよい。
【0080】
重合材料は、熱供給なしで所定の機械特性となる場合がある。また、重合材料を加熱してもよい。加熱は、能動加熱(例えば、電気オーブン、ガスオーブン、ソーラーオーブンなどのオーブン内)であっても、受動加熱(周囲温度など)であってもよい。能動加熱は一般に受動加熱よりも急速であり、いくつかの実施形態では好ましいが、さらなる重合を行うのに十分な時間だけ中間体を単に周囲温度に維持するといった、受動加熱がいくつかの実施形態で好ましい。
【0081】
ボクセルは、三次元空間の構造格子(regular grid)についての値を表す。ビットマップのピクセルと同様に、ボクセル自体は通常、その位置(座標)が値とともに明白にコード化されていない。代わりに、ボクセルの位置は、他のボクセルに対する相対的な位置(つまり、単一のボリュメトリックイメージを構成するデータ構造内の位置)に基づいて推測される。ピクセルやボクセルとは対照的に、ポイントやポリゴンは多くの場合、頂点の座標によって明示的に表される。この違いの直接の結果は、ポリゴンは有意な空の空間または均一に満たされた空間を持つ単純な3D構造を効率的に表現できる一方で、ボクセルは不均一に満たされ、定期的に抽出される空間の表現に優れていることにある。
【0082】
原則としてモノマーの数が制限されていないポリマーとは対照的に、オリゴマーは少数のモノマー単位からなる分子複合体である。二量体、三量体、および四量体は、例えば、それぞれ2つ、3つ、および4つのモノマーで構成されるオリゴマーである。
【0083】
単一反応機構のエネルギー重合、単一反応機構のエネルギー重合性、単一反応機構のエネルギー重合された、単一反応機構のエネルギー重合をする、単一反応機構のエネルギー照射、単一反応機構のエネルギー照射をされたとは、化学線、UV光、可視光、または電子の何れかにより重合を誘発することを言う。このような例としては、UV光(100nm~405nm)、可視光(405nm~700nm)または電子ビームが挙げられる。本発明を実施するための包括的ではないが例示的な光源のリストには、LED、レーザーダイオード、レーザービーム、ランプ(ハロゲンランプ、Xe、Xe-Hgランプなど)、LEDレーザーまたは積層造形で使用されるLEDプロジェクター、可視光を照射するLCD、LEDまたはプラズマスクリーン、モバイルまたはタブレットデバイスが含まれる。この重合は、フリーラジカル、カチオン、マイケル付加、逐次、クリックケミストリーなどの単一反応機構により実施される。
【0084】
フォトプラスチックは、単一反応機構の液体材料のエネルギー重合法によって形成される材料である。既存のフォトポリマーと比較して、フォトプラスチックは、例えば
図1A、
図1B、
図1C、および
図2に示されるように、熱可塑性樹脂として知られる材料に匹敵する機械特性を有する。フォトプラスチックは、ナイロン6、ポリカーボネート、PET、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの高性能熱可塑性樹脂、および広範囲の熱可塑性コポリマーよりも優れた、または同等の物理および機械特性を示すことができる。さらに、フォトプラスチックは、シリコーンや加硫天然ゴムなどの他の高性能ゴムよりも優れた、または同等の物理および機械特性を示すことができる。フォトプラスチックは、限定されるものではないが、相互侵入ネットワークおよびランダムコポリマーネットワークなどの様々なポリマーネットワークの形態をとり得る。
【0085】
相互侵入ネットワーク。相互侵入ネットワーク、または相互侵入ポリマーネットワーク、またはIPNは、ポリマースケールで少なくとも部分的に絡み合っている(但し、必ずしも互いに共有結合しているわけではない)2以上のネットワークを含むポリマーを言う。これらのIPNは、これらの実施形態:フル、セミ、または疑似において多様な形態をとり得る。いくつかの実施形態において、これらのネットワークは、デュアルネットワーク(DN)とも言われる。最後に、いくつかの実施形態では、これらのネットワークを構築するために連続または同時プロセスの何れかまたは両方を使用してもよい。IPNの種々の分類の例を
図3に示す。
【0086】
相互侵入ポリマーネットワーク(IPN)は、不混和性または混和性の2つの原料から複合材料を調製するときにポリマー科学で利用される方法である。最終製品は、化学結合または物理結合によって独立に架橋された2つのネットワークで構成される。このような系では、2つの相はそれぞれ空間において連続しており、それぞれがサンプルの空間の全部分と接している。
【0087】
図4に示される通り、フルおよびセミIPNは、架橋がそれぞれの成分の一方または両方にあるかにより異なる。ここでは、1%未満の架橋をフルIPNネットワークと定義し、1%~99%の部分的な架橋をセミIPNネットワークと定義する。セミIPNは、分離可能な直鎖および/または分岐鎖ネットワークを含む。擬似IPNは、既存の構造またはネットワークの内部空隙が埋められた、あるいは成長したポリマー鎖を有する。
【0088】
図5に見られる疑似IPNは、ロタキサンの特別なカテゴリーとなり、直鎖が架橋成分と熱力学的に相溶せず、通常、自発的に相分離するのに十分な分子運動性を有するために、通常は部分的または完全に相分離する。
【0089】
図6に見られるデュアルネットワーク(DN)は、フル、セミ、または疑似IPNとはコンセプトが異なるものとして知られている。IPNは、元の単一ネットワーク構造と比較して機械強度の顕著な改善はないが、細胞への接着、吸水性、生体適合性、生分解性など、様々な物理および化学特性を組み合わせることができる。機械的に強靭な「乾燥」成分(疎水性プラスチック)と機械的に弱い「湿潤」成分(親水性ゲル)から成る繊維強化ヒドロゲルとは、強靭な乾燥成分により複合体の機械特性が基本的には決定され、親水性成分は吸水剤として機能するが、機械強度の向上には実用的に機能しないという点において、DNゲルは異なる。DNゲルの高い強度は、一般的なIPNや繊維強化ヒドロゲルのような2つの成分ネットワークの線形結合によるものではなく、バイナリ構造の非線形効果によるものである。2つの各ネットワークは両方とも機械的に弱い、即ち、第1のネットワークは堅くて脆く、第2のネットワークは柔らかくて延性であるが、それらが複合されたDNゲルは硬いが脆くなく、延性があるが柔らかくはない。
【0090】
全ての化学物質を共に混合し、同時に反応させる
図8に示す同時法、または
図7に示す連続法によりこれらの相互侵入ポリマーネットワークを得ることができる。連続重合は段階的に行ってよく、この場合、事前に混合された樹脂は、最初の工程で重合される成分を、次の工程で重合される未重合の材料により膨潤している骨格ネットワークとともに、有する。また、連続ネットワーク重合は、架橋される第2のポリマーを含む溶液中の事前に合成されたネットワークの膨潤に依拠し得る。後者の場合に、第1のネットワークの高い空隙率が、製造する複合体において第2のポリマーの十分な含有比率を得るのに有用となり得る。このため、ヒドロゲルのような水系では、凍結乾燥が、保持されている水分を効果的に除去し、マクロポーラススポンジを形成するのに適した方法となり得る。
【0091】
図9に示されるように、IPNにおける各ネットワークの分子量を調整することができる。系内の各成分の相対比率、成分と開始剤の相対比率、および成分と禁止剤の相対比率など、種々の要素を各ネットワークの分子量の調整に用いることができる。加えて、UVエネルギーが重合に使用される場合、消費電力と光エネルギーを分子量の調整に使用できる。
【0092】
IPN、セミIPN、疑似IPN、およびデュアルネットワークは、DMAまたはDSCによって測定された2つの異なるガラス転移温度によって検出できる。
【0093】
いくつかの実施形態において、材料は毒性が低い。毒性材料は、デュアル重合材料において熱可塑性のような特性を得るためによく用いられ、
図2にも示されている。毒性物質は、有毒であるか、あるいは健康に影響を与える可能性がある物質である。毒性物質を人間が摂取または吸入した場合、通常は生理学的損傷を引き起こす可能性がある。低分子量アミン、例えば、トリメチロールプロパンポリ(オキシプロピレン)トリアミンまたは4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)などの化学物質について種々の懸念がある。また、イソシアネート官能性を持つ化学物質にについても種々の懸念がある。
【0094】
限定されるものではないが、本発明の実施において有用なヒンダードアミン光安定剤としては、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン誘導体、1,6-ヘキサンジアミン、N、N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンを有するポリマー、N-ブチル-1-ブタンアミンとN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンとの反応生成物、ブタン二酸1,4-ジメチルエステル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールを有するポリマー、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート+メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニルステアレート(脂肪酸混合物)、1,6-ヘキサンジアミン、N、N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンを有するポリマー、2,4,4-トリメチル-2-ペンタンアミンとの反応生成物が挙げられる。
【0095】
限定されるものではないが、本発明の実施において有用な被酸化性スズ塩としては、ブタン酸第一スズ、オクタン酸第一スズ、ヘキサン酸第一スズ、ヘプタン酸第一スズ、リノール酸第一スズ、フェニル酪酸第一スズ、フェニルステアリン酸第一スズ、フェニルオレイン酸第一スズ、ノナン酸第一スズ、デカン酸第一スズ、ウンデセン酸第一スズ、ドデカン酸第一スズ、ステアリン酸第一スズ、オレイン酸第一スズ、オクタン酸第一スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジオレイン酸ジブチルスズ、ジステアリン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジプロピルスズ、ジオレイン酸ジプロピルスズ、ジステアリン酸ジプロピルスズ、ジヘキサン酸ジブチルスズ、およびそれらの組み合わせが挙げられる。その記載が引用により本明細書に組み込まれる米国特許第5,298,532号、4,421,822号、および4,389,514号を参照されたい。上述の被酸化性スズ塩に加えて、Chu et al.,Macromolecular Symposia,95巻,1号,233-242頁(1995年6月)に記載されるものなどのルイス酸が、フリーラジカル重合の重合速度を高めることで知られており、これは引用により本明細書に組み込まれる。
【0096】
製造される部分や物体に望まれる性質に応じて、本明細書に記載される様々な実施形態において任意の適切な充填剤を利用できる。従って、充填剤は固体であっても液体であってもよく、有機物であっても無機物であってもよく、反応性ゴムおよび非反応性ゴム:シロキサン、アクリロニトリ-ルブタジエンゴム;反応性および非反応性の熱可塑性樹脂(限定されるものはないが、ポリ(エーテルイミド)、マレイミド-スチレンターポリマー、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど);ケイ酸塩などの無機充填剤(タルク、粘土、シリカ、マイカなど)、ガラス、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭素繊維、金属、セルロースナノクリスタルなど、および上記すべての組み合わせが挙げられる。適切な充填剤には、以下で説明するように、コアシェルゴムなどの強化剤が含まれる。
【0097】
強化剤。例えば引用により全体内容が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20150215430号に記載されるような、1種以上のポリマーおよび/または無機強化剤を本発明において充填剤として使用できる。強化剤は、重合生成物中に粒子状で均一に分散していてよい。粒子は、直径5ミクロン(μm)未満であってよい。限定されるものではないが、このような強化剤としては、エラストマー、ブランチポリマー、ハイパーブランチポリマー、デンドリマー、ゴム状ポリマー、ゴム状コポリマー、ブロックコポリマー、コアシェル粒子、酸化物または無機材料、例えば、粘土、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)、炭素質材料(例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレン)、セラミックおよび炭化ケイ素などが挙げられ、表面が改質または機能化されていても、されていなくてもよい。ブロックコポリマーとしては、例えば、引用により全体内容が本明細書に組み込まれる米国特許第6,894,113号に記載されるコポリマーが挙げられ、また、「NANOSTRENGTH(登録商標)」SBM(ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリメタクリレート)およびAMA(ポリメタクリレート-ポリブチルアクリレート-ポリメタクリレート)が挙げられ、両方共にArkemaにて製造されている。その他の適切なブロックコポリマーとしては、FORTEGRA(登録商標)や引用により全体内容が本明細書に組み込まれる米国特許第7,820,760号に記載される両親媒性ブロックコポリマーが挙げられる。公知のコアシェル粒子としては、例えば、不飽和炭素-炭素結合を含む重合性モノマーが重合したコアポリマーにシェルがグラフトされているアミンブランチポリマーに関する米国特許出願公開第20100280151号(Nguyen et al.,Toray Industries, Inc.,2010)に記載の組成を有するコアシェル(デンドリマー)粒子;例えば引用により全体内容が本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第1632533号および欧州特許出願公開第2123711号に記載されるコアシェルゴム粒子;ブタジエン、スチレン、その他の不飽和炭素-炭素結合モノマー、またはこれらの組み合わせなどの重合性モノマーが重合したポリマーコア、およびエポキシ、典型的にはポリメチルメタクリレート、ポリグリシジルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、または以下でさらに説明する類似のポリマーと混合可能なポリマーシェルを有する粒子を有する粒子/エポキシブレンドである「KaneAce MX」製品系列が挙げられる。また、本発明においてブロックコポリマーとして適するものは、JSR株式会社より製造されているカルボキシル化ポリスチレン/ポリビニルベンゼンである「JSR SX」シリーズ;ブタジエンアルキルメタクリレートスチレンコポリマーである「Kureha Paraloid」EXL-2655(株式会社クレハにより製造);それぞれアクリレートメタクリレートコポリマーである「Stafiloid」AC-3355およびTR-2122(両方とも武田薬品工業株式会社によって製造);およびそれぞれブチルアクリレートメチルメタクリレートコポリマーである「PARALOID」EXL-2611およびEXL-3387(両方ともRohm&Haasによって製造)が挙げられる。適切な酸化物粒子としては、例えば、nanoresins AGによって製造されているNANOPDX(登録商標)が挙げられる。これは、官能化ナノシリカ粒子とエポキシとのマスターブレンドである。
【0098】
コアシェルゴム。コアシェルゴムは、ゴム状コアを有する粒子材料(粒子)である。そのような材料は公知であり、引用により全体内容が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20150184039号および米国特許出願公開第20150240113号、ならびに米国特許第6,861,475号、7,625,977号、7,642,316号、8,088,245号などに記載されている。
【0099】
いくつかの実施形態において、コアシェルゴム粒子は、ナノ粒子(即ち、1000ナノメートル(nm)未満の平均粒径を有するもの)である。一般的に、コアシェルゴムナノ粒子の平均粒径は500nm未満であり、例えば300nm未満、200nm未満、100nm未満であり、または50nm未満であってもよい。典型的には、このような粒子は球状であるため、粒径は直径となる。しかしながら、粒子が球形でない場合、粒径は粒子の最長寸法と定義される。
【0100】
いくつかの実施形態において、ゴム状コアは、-25℃未満、より好ましくは-50℃未満、さらにより好ましくは-70℃未満のTgを有してよい。ゴム状コアのTgは-100℃よりも大きく低い場合もある。また、コアシェルゴムは50℃以上のTgを有する少なくとも1つのシェル部も有する。「コア」はコアシェルゴムの内部を意味する。コアはコアシェル粒子の中心、またはコアシェルゴムの内部シェルまたは領域を形成してよい。シェルはゴム状コアの外側にあるコアシェルゴムの一部である。シェル部分(複数あってもよい)は典型的にはコアシェルゴム粒子の最も外側の部分を形成する。シェル材料はコアにグラフトされてよく、架橋されてもよい。ゴムコアはコアシェルゴム粒子の50~95重量%または60~90重量%を構成してよい。
【0101】
コアシェルゴムのコアは、ブタジエンなどの共役ジエンのポリマーまたはコポリマー、またはn-ブチル-、エチル-、イソブチル-または2-エチルヘキシルアクリレートなどの低級アルキルアクリレートであってよい。コアポリマーは、さらにスチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、メタクリル酸メチルなどのその他の共重合されたモノ不飽和モノマーを最大で20重量%含んでもよい。コアポリマーは架橋されていてもよい。コアポリマーは、ジアリルマレエート、モノアリルフマレート、アリルメタクリレートなどの、不均質な2つ以上の反応性不飽和部位(但し、少なくとも1つの反応部位は非共役である)を有する共重合したグラフト結合モノマーを最大5%含んでよい。
【0102】
コアポリマーは、シリコーンゴムであってもよい。この材料は-100℃未満のガラス転移点を有することが多い。シリコーンゴムコアを有するコアシェルゴムとしては、ドイツ、ミュンヘンのWacker Chemieから商品名Genioperlで市販されているものが挙げられる。
【0103】
ゴム状コアに化学的にグラフトまたは架橋され得るシェルポリマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートまたはt-ブチルメタクリレートなどの少なくとも1つの低級アルキルメタクリレートから重合できる。このようなメタクリレートモノマーのホモポリマーを使用してよい。さらに最大でシェルポリマーの40重量%をスチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのその他のモノビニリデンモノマーから形成してよい。グラフトされるシェルポリマーの分子量は20,000~500,000であってよい。
【0104】
1つの適切なタイプのコアシェルゴムは、エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂硬化剤と反応できる反応性基をシェルポリマーに有するものである。グリシジル基が適する。グリシジル基はグリシジルメタクリレートなどのモノマーにより与えられる。
【0105】
適切なコアシェルゴムの1例として、引用により全体内容が本明細書に組み込まれる帝国特許出願公開第2007/0027233号(欧州特許出願公開第1632533号)に記載されるタイプのものがある。ここに記載した通りコアシェルゴム粒子は、ほとんどの場合、架橋したブタジエンのコポリマーである架橋ゴムコアと、好ましくはスチレン、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、および場合によりアクリロニトリルのコポリマーであるシェルを含む。コアシェルゴムは、文献に記載されているように、好ましくはポリマーまたはエポキシ樹脂に分散されている。限定されるものではないが、適切なコアシェルゴムとしては、株式会社カネカによるKaneka Kane Aceという名称で販売されているもの、例えばKaneka Kane Ace15および120シリーズの製品、例えばKaneka Kane Ace MX120、Kaneka Kane Ace MX153、Kaneka Kane Ace MX154、Kaneka Kane Ace MX156、Kaneka Kane Ace MX170、およびKaneka Kane Ace MX257、およびKaneka Kane Ace MX120コアシェルゴム分散体、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0106】
I.2以上の部分を液体状態で事前混合または組み合わせることができるため、単一反応機構のエネルギー重合性液体は従来のIPN系よりも有益である。しかしながら、ここでは、各成分を部分Aおよび部分Bと呼ぶ。:部分A
【0107】
本明細書に記載される通り、重合系は、エネルギー線、一般的には光、場合により紫外線(UV)により重合する第1の重合系(本明細書では「部分A」と記載する場合もある)を含む。任意の適切な重合性液体を第1成分として使用してよい。液体(本明細書では「液体樹脂」、「インク」または単に「樹脂」と記載する場合もある)は、モノマーまたは優先的にはオリゴマー、特に光重合性および/またはフリーラジカル重合性モノマーまたはオリゴマー、フリーラジカル開始剤などの適切な開始剤、およびこれらの組み合わせを含んでよい。限定されるものではないが、例えば、アクリル、メタクリル、ビニル、アクリルアミド、スチレン、オレフィン、ハロゲン化オレフィン、環状アルケン、無水マレイン酸、アルケン、アルキン、カーボンモノオキサイド、官能化オリゴマー、多官能キュートサイトモノマー、官能化PEG、それらの組み合わせが挙げられる。限定されるものではないが、液体樹脂、モノマーおよび開始剤としては、例えば、引用により本明細書に全内容が組み込まれる米国特許第8,232,043号、8,119,214号、7,935,476号、7,767,728号、7,649,029号、国際公開第2012129968号、中国特許第102715751号、日本特許出願公開第2012210408号に記載のものが挙げられる。
【0108】
ヒドロゲル。いくつかの実施形態において、適切な樹脂としては、ポリ(エチレングリコール)(PEG)やゼラチンのような光重合性ヒドロゲルが挙げられる。PEGヒドロゲルは、成長因子などの様々な生物製剤の伝達に使用されている。しかしながら、連鎖成長重合によって架橋されているPEGヒドロゲルが直面する大きな課題は、不可逆的なタンパク質損傷の可能性にある。持続的な伝達を可能にする光重合より前に、親和性結合ペプチド配列をモノマー樹脂溶液に含めることで、光重合したPEGジアクリレートヒドロゲルからの生物製剤の放出を最大化する条件が改善される。ゼラチンは、食品、化粧品、医薬品、写真産業で頻繁に使用される生体高分子である。ゼラチンは、コラーゲンの熱変性または化学的および物理的分解によって得られる。動物、魚、人間に確認されるものなど、3種類のゼラチンがある。冷水魚の皮膚から得られるゼラチンは、医薬品用途において安全に使用できると考えられている。UVまたは可視光を使用して、適切に修飾されたゼラチンを架橋できる。ゼラチンの架橋方法には、ローズベンガルなどの染料から得られるポリマー誘導体が含まれる。
【0109】
酸触媒重合性液体。いくつかの実施形態において、上で記載される通り、単一反応機構のエネルギー重合性液体としては、フリーラジカル重合性液体(この場合、下に記載されるように禁止剤が酸素であってよい)が挙げられ、一方でその他の実施形態において、単一反応機構の重合性液体としては酸触媒またはカチオンにより重合される重合性液体が挙げられる。このような実施形態において、重合性液体には、エポキシド基、ビニルエーテル基などの酸触媒に適した基を含むモノマーが含まれる。従って、適切なモノマーとしては、メトキシエテン、4-メトキシスチレン、スチレン、2-メチルプロプ-1-エン、1,3-ブタジエンなどのオレフィン;オキシラン、チエタン、テトラヒドロフラン、オキサゾリン、1,3-ジオキセパン、オキセタン-2-オンなどの複素環式モノマー(ラクトン、ラクタム、および環状アミンを含む)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。適切な(一般にはイオン性または非イオン性)光酸発生剤(PAG)が酸触媒の重合性液体に含まれ、限定されるものではないが、その例としては、オニウム塩、スルホニウムおよびヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨージドヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨージドヘキサフルオロアルセナート、ジフェニルヨージドヘキサフルオロアンチモナート、ジフェニルp-メトキシフェニルトリフレート、ジフェニルp-トルエニルトリフレート、ジフェニルp-イソブチルフェニルトリフレート、ジフェニルp-tert-ブチルフェニルトリフレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート、トリフェニルスルホニウムトリフレート、ジブチルナフチルスルホニウムトリフレートなど、およびそれらの混合物が挙げられる。例えば、引用により全体内容が本明細書に組み込まれる米国特許第7,824,839号、7,550,246号、7,534,844号、6,692,891号、5,374,500号、および5,017,461号を参照されたく、また、引用により全体内容が本明細書に組み込まれるPhotoacid Generator Selection Guide for the electronics industry and energy curable coatings (BASF 2010)も参照されたい。
【0110】
光重合性シリコーン。適切な樹脂としては、光重合性シリコーンが挙げられる。Siliopren(登録商標)UV重合性シリコーンゴムなどのUV重合性シリコーンゴムは、LOCTITE(登録商標)重合性シリコーン接着剤シーラントと同様に使用できる。用途としては、光学機器、医療および外科用機器、外部照明およびエンクロージャ、電気コネクタ/センサー、光ファイバー、ガスケット、および金型が挙げられる。
【0111】
生分解性樹脂。生分解性樹脂は、生分解性スクリューおよびステントのような薬物を伝達するための埋め込み型デバイスまたは一時的機能の用途にとって特に重要である(引用により全体内容が本明細書に組み込まれる米国特許第7,919,162号および6,932,930号)。乳酸とグリコール酸の生分解性コポリマー(PLGA)をPEGジ(メタ)アクリレートに溶解して、使用に適した透明樹脂が得られる。ポリカプロラクトンとPLGAオリゴマーをアクリル基またはメタクリル基で官能化して、使用において効果的な樹脂とすることができる。
【0112】
光重合性ポリウレタン。特に有用な材料は光重合性ポリウレタン(ポリ尿素、およびポリウレタンとポリ尿素のコポリマー(例、ポリ(ウレタン-尿素))など)である。(1)脂肪族ジイソシアネート、ポリ(ヘキサメチレンイソフタレートグリコール)および任意に1,4-ブタンジオールに基づくポリウレタンと、(2)多官能性アクリル酸エステルと、(3)光開始剤と、(4)酸化防止剤を含む光重合性ポリウレタン/ポリ尿素組成物を、硬質、耐摩耗性、耐汚染性の材料となるよう調製できる(引用により全体内容が本明細書に組み込まれる米国特許第4,337,130号)。光重合性熱可塑性ポリウレタンエラストマーには、連鎖延長剤として光反応性ジアセチレンジオールが組み込まれる。
【0113】
高性能樹脂。いくつかの実施形態において、高性能樹脂を使用する。このような高性能樹脂は、上記のように、また以下でさらに説明するように、溶融させる、および/または粘度を低下させるために、加熱を必要とする場合がある。限定されるものではないが、そのような樹脂としては、例えば、引用により全体内容が本明細書に組み込まれる米国特許第7,507,784号および6,939,940号に記載されているような、エステル、エステルイミド、およびエステルアミドオリゴマーの液晶ポリマーと呼ばれることがある材料用の樹脂が挙げられる。そのような樹脂は、高温熱硬化性樹脂として時々使用されるため、本発明では、以下でさらに説明するように、照射時に架橋を開始するように、ベンゾフェノン、アントラキノン、およびフルオロエノン開始剤(その誘導体を含む)などの適切な光開始剤をさらに含む。
【0114】
追加の樹脂の例。歯科用途に特に有用な樹脂としては、EnvisionTECのClear Guide、EnvisionTECのE-Denstone Materialが挙げられる。補聴用途に特に有用な樹脂としては、EnvisionTECのe-Shell 300シリーズの樹脂が挙げられる。特に有用な樹脂としては、成形/鋳造用途で加硫ゴムと直接使用するためのEnvisionTECのHTM140IV高温成形材料が挙げられる。丈夫で硬い部分を作るのに特に有用な材料としては、EnvisionTECのRC31樹脂が挙げられる。インベストメント鋳造用途に特に有用な樹脂としては、EnvisionTECのEasy Cast EC500樹脂およびMadeSolid FireCast樹脂が挙げられる。
【0115】
フォトプラスチック材料は、歯科産業での使用に特に有用な品質を示すことができる。従来の(メタ)アクリレートおよびビニルエーテル系の材料に比べてフォトプラスチックの靭性が向上していることは、一部の歯科用途で良好に機能することを示唆している。従来のSLA材料と比較して生体適合性が改善されるように、フォトプラスチックを配合および処理できる。
【0116】
追加の樹脂成分。液体樹脂または重合性材料は、その中に懸濁または分散している固体粒子を有してよい。製造される最終製品に応じて、任意の適切な固体粒子を使用できる。粒子は、金属、有機物/ポリマー、無機物、またはそれらの複合物または混合物であってよい。粒子は、非導電性、半導電性、または導電性(金属および非金属またはポリマー導体など)であってよく、粒子は、磁性、強磁性、常磁性、または非磁性であってよい。粒子は、球形、楕円形、円筒形などの任意の適切な形状であってよい。粒子は、任意の適切なサイズ(例えば、1nm~20μmの平均直径の範囲)であってよい。
【0117】
粒子は、以下で説明するように活性剤または造影化合物を含んでよいが、これらもまた以下で説明するように液体樹脂に溶解可溶化して提供され得る。例えば、磁性または常磁性の粒子またはナノ粒子を使用できる。
【0118】
液体樹脂は、製造される製品の特定の目的に応じて、顔料、染料、活性化合物または医薬化合物、造影化合物(例えば、蛍光、リン光、放射性)などの可溶化される追加成分を有してよい。特に限定されるものではないが、そのような追加成分としては、例えば、タンパク質、ペプチド、siRNAなどの核酸(DNA、RNA)、糖、小有機化合物(薬剤および薬剤様化合物)、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0119】
光吸収剤。いくつかの実施形態において、本発明を実施するための単一反応機構のエネルギー重合性液体は、光、特にはUV光を吸収する顔料または染料を含む。特に限定されるものではないが、そのような光吸収材の適切な例としては、(i)二酸化チタン(例えば、0.05または0.1~1または5重%の量で含まれる)、(ii)カーボンブラック(例えば、0.05または0.1~1または5重量%の量で含まれる)、および/または(iii)ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、オキサニリド、ベンゾフェノン、チオキサントン、ヒドロキシフェニルトリアジン、および/またはベンゾトリアゾール紫外線吸収剤(例えば、Mayzo BLS1326)などの有機紫外線吸収剤(例えば、0.001または0.005~1、2、または4重量%の量で含まれる)が挙げられる。特に限定されるものではないが、適切な有機紫外線吸収剤としては、例えば、引用により記載が本明細書に組み込まれる米国特許第3,213,058号、6,916,867号、7,157,586号および7,695,643号に記載されるものが挙げられる。
【0120】
重合禁止剤。本発明で使用するための禁止剤または重合禁止剤は、液体または気体の状態であってよい。いくつかの実施形態において、気体禁止剤が好ましい。いくつかの実施形態において、オイルや潤滑油などの液体禁止剤(例えば、パーフルオロポリエーテルなどのフッ素化オイル)を禁止剤(または液体界面を維持する剥離層として)として使用してもよい。具体的な禁止剤は、重合されるモノマーおよび重合反応に応じて異なる。フリーラジカル重合モノマーの場合、禁止剤としては酸素が便利であり、空気、酸素に富む気体(場合によっては一部の実施形態では、可燃性を低下させるために追加の不活性ガスを含むことが好ましい)またはいくつかの実施形態では純酸素ガスなどのように、気体の状態で提供される。また、MEHQ(モノメチルエーテルヒドロキノン)やPTZ(フェノチアジン)などのフリーラジカルスカベンジャーや禁止剤を使用して、重合を阻害してもよい。加えて、フリーラジカルを捕捉可能な安定ラジカル化合物を使用して、ラジカル重合を阻害してもよい。モノマーが光酸発生開始剤により重合されるような代替実施形態では、禁止剤は、アンモニア、微量アミン(例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジおよびトリアルキルアミン、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン)などなどの塩基、二酸化炭素、またはそれらの混合物または組み合わせであってよい。
【0121】
生細胞を運ぶ重合性液体。いくつかの実施形態において、単一反応機構のエネルギー重合性液体は、生細胞を粒子として運搬する。そのような重合性液体は一般に水性であり、過酸化水素であってもよく、生細胞が分散相である「エマルジョン」と考えてよい。適切な生細胞は、植物細胞(例えば、単子葉植物、双子葉植物)、動物細胞(例えば、哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類細胞)、微生物細胞(例えば、原核生物、真核生物、原生動物など)であってよい。細胞は、任意のタイプの組織(例えば、血液、軟骨、骨、筋肉、内分泌腺、外分泌腺、上皮、内皮など)から分化した細胞またはそれに対応するものであってよく、または幹細胞や前駆細胞などの未分化細胞であってもよい。このような実施形態において、重合性液体は、ヒドロゲルを形成するものであってよく、限定されるものではないが、引用により全体内容が本明細書に組み込まれる米国特許第7,651,683号、7,651,682号、7,556,490号、6,602,975号、5,836,313号に記載されるものが挙げられる。
【0122】
II.単一反応機構のエネルギー重合性液体:部分B
【0123】
上述した通り、本発明のいくつかの実施形態において、単一反応機構のエネルギー重合性液体は、第1のエネルギー重合性成分(本明細書で「部分A」と記載する場合もある)、および典型的にはさらなる反応、重合、または鎖伸長により、第1成分と同じ反応機構でエネルギー重合により硬化する第2成分(本明細書で「部分B」と記載する場合もある)を含む。多数のこれらの実施形態を実施できる。以下では、メタクリレートなどの特定のアクリレートが記載されている場合、他のアクリレートも使用できることに留意されたい。以下では、N-ビニルなどの特定のビニルが記載されている場合、他のビニルも使用できることに留意されたい。
図10は、アクリレート官能性材料とビニル官能性材料との間で起こり得る種々のIPNの形成を示す。これらには、単官能モノマーが多官能モノマーまたはオリゴマーと共に使用される場合のセミIPN(
図10A、10D)、多官能モノマーまたはオリゴマーがオリゴマーの多官能モノマーと共に使用される場合のフルIPN(
図10B、10C、10E)、および単官能モノマーが単官能モノマーとともに使用される場合の擬似IPN(
図10F)が含まれる。
【0124】
部分Aの化学。上述のように、本発明のいくつかの実施形態では、樹脂は「部分A」と呼ばれる第1成分を有する。部分Aは、化学線または光への曝露により重合可能なモノマーおよび/またはオリゴマーおよび/またはプレポリマーの混合物を含む。この樹脂は、1以上の官能性を有してよい。部分Aの目的は、形成される材料または物体の形状を「ロック」するか、1種以上の追加成分(例えば、部分B)の骨格を形成することにある。重要なのは、最初の硬化後に形成される材料または物体の形状を維持するために必要な最小量以上の部分Aが存在することである。いくつかの実施形態において、この量は、樹脂(重合性液体)組成物全体の10、20、または30重量%未満に相当する。
【0125】
いくつかの実施形態において、部分Aは反応により架橋ポリマーネットワークまたは固体ホモポリマーを形成できる。
【0126】
限定されるものではないが、部分Aの構成成分、オリゴマー、またはプレポリマーに適する反応性末端基としては、例えば、アクリレート、メタクリレート、α-オレフィン、N-ビニル、ビニルアミド、シアノアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロイル、スチレン、エポキシド、チオール、1,3-ジエン、ハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、ビニルエステル、マレイミド、およびビニルエーテル、ビニルカーボネート、ビニルカルバメートが挙げられる。
【0127】
部分Aの硬化の態様は、「部分B」と呼ばれる第2の反応性樹脂成分が第2のステップ中に硬化できる骨格を提供することである(部分Aの硬化と同時にまたはその後に起こり得る)。この第2の反応は、好ましくは、部分Aの硬化中に画定された最初の形状を大きく歪めることなく生じる。他の方法では、所望とする最初の形状が歪むこととなる。
【0128】
特定の実施形態において、部分Aの硬化は、酸素またはアミンまたは他の反応種により、特定の領域内でプリント中に連続的に抑制され、硬化部分と禁止剤透過性フィルムまたはウインドウの間に液体界面を形成する(例えば、連続液相間印刷(continuous liquid interphase/interface printing)により実施される)。
【0129】
部分Bの化学。部分Bは、部分Aの硬化反応中またはその後に、第2の硬化反応に関与する反応性末端基を有するモノマーおよび/またはプレポリマーの混合物を含んでよい。いくつかの実施形態において、部分Aおよび部分Bを事前に混合してよく、エネルギー照射への曝露中に存在するように部分Bを同時に部分Aに添加してよく、あるいは部分Bを部分Aの重合後の次の工程で材料または物体に注入してもよい。限定されるものではないが、部分Bの硬化に用いられる方法は、例えば、部分Aを重合したものとは異なる波長の光、または部分Aを重合したものと同一の波長の光、または電子ビーム重合の場合には電子に(あるいはこれらの組み合わせに)材料または物体を接触させる工程を含む。
【0130】
限定されるものではないが、部分Bの構成成分、モノマー、またはプレポリマーに適する反応性末端基としては、例えば、アクリレート、メタクリレート、α-オレフィン、N-ビニル、ビニルアミド、シアノアクリレート、ビニルカーボネート、ビニルカルバメート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、エポキシド、チオール、1,3-ジエン、ハロゲン化ビニル、アクリロイル、アクリロニトリル、ビニルエステル、マレイミド、およびビニルエーテルが挙げられる。
【0131】
部分Bに適するその他の反応性化学種は当業者に認識されている。ポリマーを形成するのに有益な部分Bの構成成分は、引用により全体内容が本明細書に組み込まれる「Concise Polymeric Materials Encyclopedia」や「Encyclopedia of Polymer Science and Technology」に記載されている。
【0132】
有機過酸化物。いくつかの実施形態において、例えば、熱および/またはマイクロ波照射重合中に未反応となり得る二重結合の反応を促進するために、有機過酸化物を単一反応機構のエネルギー重合性液体または樹脂に含めることができる。このような有機過酸化物を、0.001または0.01または0.1重量%~1、2または3重量%など、任意の適切な量で樹脂または重合性液体中に含めることができる。限定されるものではないが、適切な有機過酸化物としては、例えば、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン(例えば、LUPEROX 101(登録商標))、過酸化ジラウロイル(例えば、LUPEROX LP(登録商標))、過酸化ベンゾイル(例えば、LUPEROX A98(登録商標))、ビス(tert-ブチルジオキシイソプロピル)ベンゼン(例えば、VulCUP R(登録商標))、およびこれらの組み合わせが挙げられる。そのような有機過酸化物は、限定されるものではないがArkema(420 rued’Estienned’Orves,92705 Colombes Cedex,フランス)などの様々な供給業者から入手可能である。
【0133】
触媒。他の部分AまたはBの重合速度に影響し得る、当業者に知られているその他の触媒を使用して、部分Aおよび部分Bの何れか、または両方の単一反応機構のエネルギー重合速度を調整してよい(例えば、過酸化物、スズ触媒、および/またはアミン触媒などの金属触媒;シリコーン樹脂用の白金またはスズ触媒;開環メタセシス重合樹脂用のルテニウム触媒;クリックケミストリー樹脂用の銅触媒など(これらの触媒は、浸漬などによって液体エアロゾルとして物品と接する)、またはN-(アルコキシメチル)アクリルアミド、ヒドロキシル基、ブロック化酸触媒を含むものなどのアミノプラスト含有樹脂)。
【0134】
禁止剤。いくつかの実施形態において、部分Aまたは部分Bの重合の速度または開始に影響し得る当業者に公知の他の禁止剤を使用して、開始または部分Aおよび部分Bの何れかまたは両方の単一反応機構のエネルギー重合速度を調整してよい。
【0135】
いくつかの実施形態では、一方の成分の反応速度が他の成分と比べて顕著に遅い。これは、反応性が大幅に異なる原料を選択するか、一方の成分を優先的に阻害する禁止剤を使用することで実現できる。反応速度を遅くすることにより、一方の成分が完全に重合する前に、他方の成分をより完全に重合できる。いくつかの実施形態において、これにより連続IPNを形成できる。
【0136】
いくつかの実施形態において、第1成分中の第2成分の溶解性が、第1成分の重合中に変化する。一般的に、全ての成分は液体状態において溶解する。いくつかの実施形態において、第1成分が重合して固形物を形成する間に、他の液体成分の溶解性が変化し、ナノ、マイクロ、マクロレベルで固液相分離となる。この相分離は、材料の屈折率の変化によって確認できる。この相分離により、成分の反応選択性が変化し、単独重合を促進できる。この相分離により、エラストマーの弾性や反発など、材料の機械特性が変化する場合がある。
【0137】
いくつかの実施形態において、その他の成分中の第2成分の溶解性が第2成分の重合中に変化する。一般的に、全ての成分は液体状態において溶解する。いくつかの実施形態において、一方の成分が重合して固形物を形成する間に、他の液体成分の溶解性は大きくは変化しない。第2成分が重合して固体となる際に、第2成分における溶解性が変化し、ナノ、マイクロ、マクロレベルで固相分離となる。この相分離は、材料の屈折率の変化によって確認できる。この相分離により、エラストマーの弾性や反発など、材料の機械特性が変化する場合がある。
【0138】
本発明のいくつかの実施形態において、防音または消音用途にフォトプラスチックを使用することが有用となる場合がある。IPN材料は、興味深く独特な吸音、音、振動特性を広い温度範囲で示すことで知られている。
【0139】
本発明のいくつかの実施形態において、部分Aは、高伸度のウレタンベースの(メタ)アクリレートオリゴマーから成る。UV重合性である部分Aは、主には単官能n-ビニルモノマーから成る部分Bとブレンドされ、本明細書に記載された通り高い反応速度や選択的な反応経路により3Dプリントを用いて物体を所望の形状に固めるために用いられ、単一反応機構のエネルギー重合性液体における部分Bの骨格となる。この骨格は一般に非常に弾性が高いが、弱い。物体は、プリント後、単一反応機構のエネルギー重合によってさらに重合され、それにより、第2成分が重合され、骨格を通じて強い線形、半架橋または完全に架橋されたIPNを形成し、エラストマーを含む物体が得られる。
【0140】
形成された物体の接着。いくつかの実施形態において、部分Aの硬化により多数の物体の形状を画定し、これらの物体を特定の配置に配列し、物体間にハーメチックシールがあるようにし、次いで部分Bの二次硬化を重合することが有用となる場合がある。このようにして、製造中に部分間に強力な接着を与えることができる。特に有用な例としては、スニーカー構成要素の形成や接着にある。
【0141】
部分Bとしての粒子の融合。いくつかの実施形態では、「部分B」は、事前に形成されたポリマーの小さな粒子を単に含んでよい。部分Aの硬化後、封入されているポリマー粒子を重合させるために、物体を部分Bのガラス転移温度以上に加熱してよい。
【0142】
光開裂性末端基。いくつかの実施形態において、部分Aの反応化学種は、エネルギー照射されて開裂し、部分Aの硬化後に新たな反応種を生じる。新たに形成された反応種は、さらに二次固化において部分Bと反応できる。
【0143】
成分の混合方法。いくつかの実施形態において、プリンタの構築プレートに導入する前に、成分を連続的に混合してよい。これは、マルチバレルシリンジと混合ノズルを使用して実施できる。例えば、部分AはUV重合性ジ(メタ)アクリレート樹脂を含んでよく、部分Bは、ビニルモノマーを含んでよく、またはから構成されてよい。全ての成分が混合した場合においても貯蔵安定性が高いため、部分Aおよび部分Bの両方ともに塗布前に十分に事前混合することが通常は可能である。貯蔵安定性は、1、2、3、または4年間周囲条件で事前混合されたボトルにおいて当初の粘度の10%以内の粘度を有すると定義できる。これは、60℃で1、2、3、4週間の高温安定性によりシミュレート可能である。しかしながら、必要あれば、第2のシリンジバレルが、部分Bの材料を含むこととなるであろう。さらに、この方法で樹脂がプリンタに導入される場合に、全成分の混合から部分Aまたは部分Bの硬化までに、一定時間が定められる。
【0144】
その他の積層造形技術。本発明に記載される材料が、熱溶解積層(FDM)、粉末焼結積層造形(SLS)、およびインクジェット法などの他の積層造形技術において有用であることは当業者には明らかである。
【0145】
いくつかの実施形態において、部分Aは、アクリレート、メタクリレート、スチレン、アクリル酸、N-ビニル、アクリロイル、ビニルアミド、ビニルエーテル、ビニルカーボネート、ビニルカルバメート、ビニルエステル(これらの誘導体を含む)、前述の何れか1つ以上を含むポリマー、および前述の2つ以上の組み合わせ(例えば、上述されるようなアクリロニトリル、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、アミン(メタ)アクリレート、およびこれらの任意の2種以上の混合物)を含む(例えば、引用により全体内容が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20140072806号を参照されたい)。
【0146】
いくつかの実施形態において、部分Bは、アクリレート、メタクリレート、スチレン、アクリル酸、N-ビニル、ビニルアミド、アクリロイル、ビニルエーテル、ビニルカーボネート、ビニルカルバメート、ビニルエステル(これらの誘導体を含む)、前述のいずれか1つ以含むポリマー、および前述の2つ以上の組み合わせ(例えば、上述されるようなアクリロニトリル、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、アミン(メタ)アクリレート、およびこれらの任意の2種以上の混合物)を含む(例えば、引用により全体内容が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20140072806号を参照されたい)。
【0147】
エラストマー。本発明の実施において特に有用な実施形態は、エラストマーの形成を目的とする。従来の液体UV重合性前駆体を使用して、強靭で、高伸度、高強度のエラストマーを実現することは困難である。しかしながら、IPNネットワークの形成を通じて、公知のポリウレタン、シリコーン、天然ゴムなどと同等またはそれ以上の特性を有するエラストマーを単一反応機構のエネルギー重合下で形成できる。これらの単一反応機構でエネルギー重合したエラストマーは、>750%の伸度、および/または>20MPaの引張強度を有することができる。
【0148】
いくつかの実施形態において、上でより詳細に記載した通り、単一反応機構のエネルギー重合性液体は、a)5または20または40重量%~60または80または90重量%の部分A;b)10または20重量%~30または40または50または60または70重量%の部分B;c)0.1または0.2重量%~1、2または4または8重量%の光開始剤;d)任意成分として追加の材料、例えば、染料、充填剤(例えば、シリカ)、界面活性剤などを含む。これらの単一反応機構のエネルギー重合性液体は混合時に重合しないので、本発明のいくつかの実施形態の利点は、事前に配合でき、単一の供給源(例えば、事前に混合された形態の重合性液体を含む単一のリザーバー)から重合性液体を構築領域に注ぐ、または供給することによって充填工程を実施できることにあり、このために、別個のリザーバーや混合性能を付与するために装置を改造する必要性がなくなる。
【0149】
いくつかの実施形態において、この工程により製造される3次元物体は折りたたみ可能または圧縮可能である(即ち、弾性(例えば、約0.001、0.01、または0.1GPa~約1、2、または4GPaの室温におけるヤング率、および/または約0.01、0.1、または1~約50、100、または500MPaの室温における最大荷重の引張強度、および/または約10、20、50、または100%~1000、2000、または5000%またはそれ以上の室温における破断伸度を有する)。
【0150】
いくつかの実施形態において、単一反応機構のエネルギー重合により、ポリウレタンオリゴマーを骨格として有する中間体成形物を形成した後において、第2成分のIPNが重合する際には材料全体が他のエネルギー重合にかけられる。このエネルギー重合に必要な時間は、エネルギー源、温度、製造物の大きさ、形状、及び密度により異なるが、典型的には、1秒~数時間であり、使用される特定の単一反応機構のエネルギーや製造物の大きさに応じて異なる。
【0151】
一般的に、上記方法の単一反応機構により製造されるフィルムまたは3次元製造物は、例えば、IPN、セミIPN、同時IPN、連続IPN、デュアルネットワークまたはそれらの組み合わせとして、(i)線形またはセミ架橋またはフル架橋のエネルギー重合したネットワーク、(ii)エネルギー重合性官能基を有するモノマーまたはオリゴマーから構築された、フルまたはセミ架橋のエネルギー重合したポリマー、または(iii)これらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、フィルムまたは3次元製造物は、フィルムまたは3次元形成物体に残留する未反応の光開始剤を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態において、0.1または0.2重量%~1、2または4重量%の光開始剤がフィルムまたは3次元形成物体に残留してよく、光開始剤はさらに少ない量またはトレース量のみで存在してもよい。いくつかの実施形態において、フィルムまたは3次元製造物は、反応した光開始剤のフラグメントを含んてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、反応した光開始剤のフラグメントは、中間製造物を形成する第1の重合の残部であってよい。例えば、0.1または0.2重量%~1、2または4重量%の反応した光開始剤のフラグメントがフィルムまたは3次元形成物体に残留してよく、反応した光開始剤のフラグメントはさらに少ない量またはトレース量のみで存在してもよい。例示的な実施形態において、単一反応機構により製造されるフィルムまたは3次元製造物は、架橋または直鎖のエネルギー重合ネットワーク、異なる架橋エネルギー重合ネットワーク、未反応の光開始剤、および反応した光開始剤物質を、全てまたは任意の組み合わせで含んでよい。
【0152】
これらの材料は、本明細書に記載される連続液相間印刷(continuous liquid interface printing)技術などのボトムアップ積層造形技術や上および下に記載される他の積層造形技術で使用できる。
【0153】
これらの材料は、本明細書に記載の圧電プリント技術などのインクジェットプリント製造技術や上および下に記載される他のインクジェットプリント技術で使用できる。
【0154】
単一反応機構のエネルギー重合性液体から形成される相互侵入ポリマーネットワーク(IPN)から構成される物品。
【0155】
いくつかの実施形態において、上記のものなどの単一反応機構系を含む単一反応機構のエネルギー重合性液体は、同様にIPNを含むフィルムや3次元物品の形成に有用である。
【0156】
非限定例では、単一反応機構のエネルギー重合性液体および方法ステップは、フィルムまたは3次元物体が以下のものを含むように選択される。
【0157】
ゾルゲル組成物。これは、アミン(アンモニア)透過性ウインドウまたは半透過性部材を使用して実施できる。ここで説明する系では、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、エポキシ(ビスフェノールAのジグリシジルエーテル)、および4-アミノプロピルトリエトキシシランをフリーラジカル架橋剤に添加する。工程中にフリーラジカル架橋剤は、重合し、後の別の工程や段階で反応する上記の反応物を含む。反応は水と酸の存在が必要である。上記の混合物に光酸発生剤(PAG)を添加してよく、シリカベースのネットワークの反応を促進できる。TEOSのみが含まれている場合、最終的にはシリカ(ガラス)ネットワークになることに留意されたい。次に、温度を上げて有機層を除去し、従来の方法では調製が困難なシリカ構造が残留する。この工程により、ウレタン、官能化ポリオール、シリコーンゴムなどのエポキシに加えて、多くの変種(異なるポリマー構造)を調製できる。
【0158】
疎水性-親水性IPN。例えば、生物医学部品の組織適合性および血液適合性を改善するための疎水性-親水性ネットワークが挙げられる。ポリ(N-ビニルピロリドン)は、親水性成分の一例である。ポリブタジエンは疎水性成分の一例である。
【0159】
導電ポリマー。導電部分を製造するために、単一反応機構エネルギーの重合性液体へアニリンと過硫酸アンモニウムが組み込まれる。反応系が重合し、酸(HCl蒸気など)で後処理した後にポリアニリンへの重合を開始できる。
【0160】
天然物ベースのIPN。ヒマシ油などのトリグリセリド油、またはゼラチン、またはポリビニルアルコールに基づいた多くの天然物ベースのIPNが知られている。これらを単一反応機構のエネルギー重合性液体に組み込むことができる。部分の完成時に、これらは追加のIPNを形成することができる。グリセロールももちろん使用できる。
【0161】
連続IPN。いくつかの実施形態において、骨格架橋ネットワークは、モノマーおよびフリーラジカル光開始剤および任意成分の架橋剤で膨潤し、その後に重合する。
【0162】
同時IPN。いくつかの実施形態において、両方のネットワークは第1の重合工程で形成される。
【0163】
III.製作品
【0164】
A.3次元(3D)物体
【0165】
本発明の方法および工程により製造される3次元物体は、最終製品、完成品または実質的な完成品であってよく、また表面処理、レーザー切断、放電加工などのさらなる製造工程にかけられる中間製造物であってもよい。中間製造物には、同じ装置または異なる装置でさらに積層造形を行うことができる製品が含まれる。例えば、最終製品の1つの領域を停止するために、または単に最終製品の特定の領域または「構造(build)」が他よりも脆弱であるために、重合域の傾斜を乱し、回復させることによって、進行中の「構造(build)」に意図的に断層線または割線を導入することができる。
【0166】
ラージスケールモデルまたはプロトタイプ、小さなカスタム製品、ミニチュアまたはマイクロミニチュア製品またはデバイスなどの多数の種々の製品を本発明の方法および装置により製造できる。限定されるものではないが、例えば、補聴器、ステント、薬物送達デポー剤、機能構造物、マイクロニードルアレイ、導波管などのファイバーおよびロッド、マイクロメカニカルデバイス、マイクロ流体デバイスなどの医療機器や埋め込み型医療機器が挙げられる。
【0167】
従って、いくつかの実施形態において、製造物は0.1または1mm~10または100mmまたはそれ以上の高さ、および/または0.1または1mm~10または100mmまたはそれ以上の最大幅を有してよい。他の実施形態では、製造物は10または100nm~10または100μmまたはそれ以上の高さ、および/または10または100nm~10または100μmまたはそれ以上の最大幅を有してよい。これらは単に例である。最大径および最大幅は、特定の機器の構成や光源の解像度により変化し、実施形態または製造される物品の特定の目的に応じて調整してよい。
【0168】
いくつかの実施形態において、製造物の高さと幅の比率は、少なくとも2:1、10:1、50:1、または100:1、またはそれ以上であり、また、幅と高さの比率は1:1、10:1、50:1、または100:1、またはそれ以上である。
【0169】
下にさらに記載するように、いくつかの実施形態において、製造物は、そこに形成される少なくとも1つ、または複数の孔または溝を有する。
【0170】
本明細書に記載のプロセスにより様々な種々の特性を有する製造物を製造できる。いくつかの実施形態において製造物は剛性があり、他のいくつかの実施形態において製造物は柔軟で弾力性がある。いくつかの実施形態において、製造物は固体である。他の実施形態において、製造物はヒドロゲルなどのゲルである。いくつかの実施形態において、製造物は形状記憶を有する(即ち、構造破損点まで変形されない限りは変形後に前の形状に概ね戻る)。いくつかの実施形態において、製造物は単体である(すなわち、1つの単一の反応機構エネルギー重合性液体から形成される)。いくつかの実施形態において、製造物は複合体である(即ち、2つ以上の異なる単一反応機構のエネルギー重合性液体から形成される)。特定の特性は、使用される単一反応機構のエネルギー重合性液体の選定などの要素によって決定される。
【0171】
いくつかの実施形態において、作製される製造物または物品は、2つの支持体間の架橋要素、または1つの実質的に垂直な支持体から突出する片持ち梁要素など、少なくとも1つの突出部(または「突出」)を有する。各層が重合して実質的に完成し、次のパターンが曝露される前に実質的な時間間隔が生じる場合に断層線または開裂線が層間に形成されるという問題が、本プロセスのいくつかの実施形態の一方向性で連続的な特性により大幅に低減する。従って、いくつかの実施形態において、この方法は、物品と同時に製造されるそのような突出部の支持構造の数を減らす、または無くすのに特に有利である。
【0172】
B.3D物体の構造および形状例
【0173】
例示的な実施形態では、形成中に三次元物体に数千または数百万の形状変化を与えて三次元(3D)物体を形成できる。例示的な実施形態では、パターンジェネレーターは、重合傾斜から物体を得る際に、異なる光のパターン照射を生成し、重合傾斜領域の光開始剤を活性化し、異なる形状を付与する。例示的な実施形態では、パターンジェネレーターは、付与される形状を変更するために変更可能な数百万のピクセル要素を備えた高解像度を有してよい。例えば、パターンジェネレーターは、形状を変化させるために使用可能な、1,000個、2,000個、または3,000個超またはそれ以上の行、および/または1,000個、2,000個、または3,000個超またはそれ以上の列のマイクロミラー、またはLCDパネルのピクセルを有するDLPであってよい。その結果、物体の長さに沿って非常に細かい変化またはグラデーションを物体に与えることができる。例示的な実施形態では、これにより、開裂線または継ぎ目のない実質的に連続面の複雑な3次元物体を、高速で形成することが可能になる。いくつかの例では、1mm、1cm、10cm超、またはそれ以上の形成される物体の長さにわたって、または成形された物体の全長にわたって、開裂線または継ぎ目がなく、形成される3次元物体に100、1000、10000、100000、または1000000を超える形状変化が与えられてもよい。例示的な実施形態では、毎秒1、10、100、1000、10000ミクロン超またはそれ以上の速度で、重合傾斜から物体を連続的に形成できる。
【0174】
例示的な実施形態では、これにより、複雑な三次元(3D)物体を形成することが可能になる。いくつかの例示的な実施形態では、3D形成物体は、複雑な非射出成形性の形状を有する。この形状は、射出成形または鋳造では容易に形成できない場合がある。例えば、この形状は、従来の2パート成形のように、充填材料を注入し重合するキャビティを形成するよう合わせられる金型では形成できない場合がある。例えば、いくつかの実施形態では、3D形成物体は、密閉キャビティまたは部分的に開いたキャビティ、繰り返しユニットセル、または射出成形に適さないオープンセルまたはクローズドセルの発泡構造を含むことが可能であり、数百、数千または数百万のこれらの構造またはこれらの構造の相互接続ネットワークを含むことが可能である。しかしながら、例示的な実施形態において、これらの形状は、本出願に記載の方法を使用して、これらの構造を形成するデュアル重合材料および/またはIPNの使用による広範なエラストマー特性、引張強度、および破断伸度などの広範な特性を利用して3D形成されてもよい。例示的な実施形態では、3D物体は、射出成形または他の従来技術で存在し得る開裂線、分割線、継ぎ目、スプルー、ゲートマークまたはエジェクタピンマークを付けずに形成され得る。いくつかの実施形態では、3D形成物体は、成形物またはその他のプリント物(開裂線、分割線、継ぎ目、スプルー、ゲートマーク、またはエジェクタピンマークなど)のない連続面のテクスチャ(滑らかさ、パターン、または粗さ)を1mm、1cm、10cm超またはそれ以上にわたって、または成形された物体の全長にわたって有することが可能である。例示的な実施形態では、複雑な3D物体は、1mm、1cm、10cm超またはそれ以上の長さにわたって、または形成された物体の全長にわたって、完成した3D物体において目視可能または印刷プロセスから容易に検出可能な不連続層がないように形成可能である。例えば、重合領域(パターンジェネレーターから投影される様々なパターンに曝露されると、ここから3D物体が生成する)の傾斜によりプリントが生成するため、3D物体が完成した場合に、印刷中にパターンジェネレーターにより付与された様々な形状を異なる層として目視または検出できない場合がある。このプロセスから生じる3D物体は3Dプリント物体と呼ぶこともできるが、この3D物体は、連続液相間印刷(continuous liquid interphase printing)によって、一部の3Dプリントプロセスに関連する不連続層や開裂線が存在せずに形成され得る。
【0175】
いくつかの実施形態において、3D形成物体は、3D物体を形成するための1つ以上の繰り返し構造要素を含んでよく、例えば、密閉キャビティ、部分的に閉じたキャビティ、繰り返しユニットセルまたはユニットセルのネットワーク、フォームセル、ケルビンフォームセルまたはその他のオープンセルまたはクローズドセルフォーム構造、十字構造、オーバーハング構造、カンチレバー、マイクロニードル、ファイバー、パドル、突起、ピン、ディンプル、リング、トンネル、チューブ、シェル、パネル、ビーム(Iビーム、Uビーム、Wビーム、円筒ビームを含む)、ストラット、タイ、チャンネル(開いた、閉じた、または部分的に閉じた)、導波管、三角形の構造、四面体または他の角錐形状、立方体、八面体、八角柱、二十面体、菱形三十面体または他の多面体形状またはモジュール(ケルビン最小表面の四面体、プリズムまたは他の多面体形状を含む)、五角形、六角形、八角形およびその他の多角形構造またはプリズム、多角形メッシュまたはその他の三次元構造が挙げられる。いくつかの実施形態において、3D形成物体は、これらの構造の何れかの組み合わせ、またはこれらの構造の相互ネットワークを含んでよい。例示的な実施形態において、3D形成物体の全てまたは一部の構造は、立方体(単純、体心または面心を含む)、正方晶系(単純または体心を含む)、単斜晶系(単純または底心を含む)、直方晶系(単純、体心、面心または底心を含む)、菱面体、六角形、三斜晶構造などの1つ以上のブラベ格子またはユニットセル構造に対応する(または実質的に対応する)。例示的な実施形態では、3D形成物体は、カテノイド、ヘリコイド、ジャイロイドまたはリジノイド、他の三十周期的最小表面(TPMS)、または関連するファミリー(またはボンネットファミリー)からの他の形状、またはSchwarz P(「Primitive」(初期))またはSchwarz D(「Diamond」(ダイヤモンド))、Schwarz H(「Hexagonal」(六角形))またはSchwarz CLP(「Crossed layers of parallels」(平行な交差層))表面、アーガイルまたはダイヤモンドパターン、格子または他のパターンまたは構造などの、1つ以上のブラべ格子またはユニットセル構造に対応する(または実質的に対応する)。
【0176】
例示的な実施形態において、パターンジェネレーターは、プリント中に急速に変化して、異なる形状を高解像度で重合傾斜に与えるようにプログラムすることができる。この結果、任意の上記構造要素を幅広い寸法や特性とともに形成でき、上記構造要素を繰り返し、または他の構造要素と組み合わせて3D物体を形成できる。例示的な実施形態において、3D形成物体は、単一の三次元構造を含んでよく、または1、10、100、1000、10000、100000、1000000超、またはそれ以上のこれらの構造要素を含んでよい。構造要素は類似の形状の繰り返しの構造要素であってよく、異なる構造要素の組み合わせであってもよく、上記の何れかまたはその他の規則形状または不規則形状であってよい。例示的な実施形態において、これらの各構造要素は、少なくとも10nm、100nm、10μm、100μm、1mm、1cm、10cm、50cm、またはそれ以上の構造寸法を有してよく、50cm、10cm、1cm、1mm、100μm、10μm、100nm、10nm未満、またはそれ以下の構造寸法を有してよい。例示的な実施形態において、構造の高さ、幅、またはその他の寸法は、約10nm~約50cmまたはそれ以上の範囲、またはこれに包含される任意の範囲にあってよい。ここで使用されるように、「これに包含される任意の範囲」は、記載された範囲内の任意の範囲を意味する。例えば、以下の範囲:10nm~1μm、1μm~1mm、1mm~1cm、1cm~50cm、または上記範囲内の任意のその他の範囲および範囲群は、何れも約10nm~約50cmの範囲内に包含され、本明細書に記載されることとなる。例示的な実施形態において、それぞれの構造要素は、約10nm3~約50cm3またはそれ以上の範囲、またはこれに包含される任意の範囲の体積の3D物体を形成してよい。例示的な実施形態において、それぞれの構造要素は、約10nm~約50cmまたはそれ以上の範囲、またはこれに包含される任意の範囲の寸法を有するキャビティ、または空洞領域またはギャップを構造要素の面間に形成してよく、または約10nm3~約50cm3、またはそれ以上の範囲、またはこれに包含される任意の範囲の3D形成物体の領域内の体積を定めてよい。
【0177】
構造要素は同程度のサイズであってよく、また、サイズは3D形成物体の体積全体にわたり変化してよい。サイズは3D形成物体の片側から片側にかけて(徐々にまたは段階的に)増減してよく、様々な形状の要素が規則的または不規則なパターンで混在してよい(例えば、フォーム中に混在する様々なサイズのオープンセルおよび/またはクローズセルキャビティを有する3Dエラストマーフォーム)。
【0178】
いくつかの実施形態では、3D形成物体は、突出部、架橋要素または非対称性を備えた不規則な形状を有してもよく、または形成される方向にオフセット重心を有してもよい。例えば、3D形成物体は非対称であってよい。例示的な実施形態では、3D形成物体は、どの軸にも回転対称性を有さなくてよく、単一の軸にのみ回転対称性を有してもよい。例示的な実施形態では、3D形成物体は、3D形成物体を介するどの平面にも面対称を有さなくてよく、単一の平面にのみ面対称を有してもよい。例示的な実施形態では、3D物体はオフセット重心を有してもよい。例えば、3D形成物体の重心は、物体の位置中心になくてもよい。いくつかの例では、重心は物体の中心軸に沿って配置されていなくてもよい。例えば、3D形成物体は、一般に足の輪郭に準ずる靴のソールまたは中敷きであってよい。靴のソールまたは中敷きは、右または左に傾いて、かかととつま先の幅が異なってよい。この結果、この例の3D形成物体は、左右および前後に面対称ではなくなる。しかしながら、均一に平らな靴のソールまたは中敷きの場合、上下に面対称となり得る。他の例では、靴のソールまたは中敷きが片側で平らであり、反対側で足のアーチを受け入れるように輪郭付けられ、その結果、上下にも面対称ではなくなる。ウェアラブル、義肢または体の構造についての形状またはデバイス用の他の3D形成物体は、同様の非対称性および/またはオフセット重心を有してよい。例えば、歯型または歯科インプラント用の3D形成物体は、歯の形状に実質的に一致する場合があり、どの面についても面対称でなくてよい。別の例では、拾い上げ、持ち上げ、または移動するために物体と接触する可能性のあるグリップ、ハンドル、または内部加圧材料などのソフトロボッティックス用の3D成形構成要素である。本例で記載のエラストマー材料はソフトロボッティックス用途に特に有用となり得る。他の例では、左右の曲線状のすね当て、硬いすね当てまたはヘルメットまたはその他のウェアラブル構成要素と身体との間に使用するフォームパッドやインサートなどのアスレチックウェアなどのウェアラブルデバイス用の3D成形構成要素は、身体の形状にほぼ一致し、対応する非対称性を有してよい。これらは単なる例であり、多くの3D形成物体は非対称であるか、オフセット重心を有してよい。例示的な実施形態では、著しい非対称性または突出要素(アーム、ブリッジ要素、カンチレバー、ブラシ繊維など)がある場合や、所望の構造要素がエラストマーである場合、3Dプリントまたはその後の重合中に変形する可能性がある。例えば、多量の非UV重合性エラストマー樹脂材料が含まれる場合、重力により最終の重合前に変形が生じる場合がある。(デュアル重合工程における最初の重合から)3Dプリント中にUV重合性材料より形成される骨格が形状の固定を補助する間に、高度に非対称または突出した形状の一部のエラストマー組成物が変形しやすい場合がある。いくつかの実施形態において、変形を避けるために組成物中のUV重合性材料を調整してより強固な骨格を形成してよい。他の例示的な実施形態において、特に3D形成物体または突出要素が比較的に長い場合、後で除去されるコネクタを用いて、2つ1組(または他の組み合わせ)で、非対称形状および/またはオフセット重心を有する物体を形成してよい。一例では、エラストマー3D物体を長さに沿って形成してよく、非対称性、オフセット重心を有し、および/または長さに対して横向きであり、長さの10%、20%、30%、40%、50%超、またはそれ以上の突出要素を有してよい。例えば、3D形成物体は約1cm~50cm、またはそれ以上、またはこれに包含される任意の範囲の長さを有してよく、約1cm~50cm、またはそれ以上、またはこれに包含される任意の範囲の横方向または側面の非対称要素または突出要素を有してよい。例示的な実施形態において、エラストマー材料を重合して物体を切り離すまで、横方向要素または突出要素の支持を与えるように2つ以上のこれらの物体を共に形成してよい。例えば、(長さ方向に形成する場合に)靴のソールが形成中に互いに支持をしているように、2つの靴のソール(例えば、間に小さく除去可能なコネクタを使用して共に形成される回転および反転された靴のソール)を2つ1組で形成してよい。他の実施形態において、他の支持体を形成し、エラストマー材料の重合後に除去してよい。
【0179】
C.3D物体の材料および組成物例
【0180】
例示的な実施形態において、単一反応機構で製造された3D形成物体は、上記形状や構造の何れかを有してよく、例えば、IPN、セミIPN、同時IPN、または連続IPN、またはこれらの組み合わせとして、(i)線形、セミ、またはフル架橋のエネルギー重合ネットワーク、(ii)エネルギー重合性官能基を含むモノマーまたはオリゴマーから構築されたフルまたはセミ架橋のエネルギー重合ポリマー、または(iii)これらの組み合わせ、および/または(iv)未反応光開始剤および/または反応光開始剤フラグメントなどの光開始剤を含んでよく、またはから構成されてよく、またはから本質的に構成されてよい。
【0181】
いくつかの例示的な実施形態では、3D形成物体は、上述の通りゾルゲル組成物、疎水性または親水性組成物、フェノールレゾール、シアン酸エステル、ポリイミド、導電性ポリマー、天然物ベースのIPN、連続IPN、同時IPNおよびポリオレフィンを含み得る。
【0182】
例示的な実施形態において、3D形成物体は、上記の何れかの形状または構造を有してよく、3D形成物体の異なる領域に異なる引張り強度またはその他の異なる特性を有する異なる複数の材料を含んでよく、またはから構成されてよく、または本質的にから構成されてよい。例示的な実施形態において、異なる材料として、上記のものの何れかから選択してよい。いくつかの例示的な実施形態において、製造物の製造プロセスは、単一反応機構のエネルギー重合性液体を変えるために、1回以上停止または中断されてもよい。例示的な実施形態において、3D形成物体は、さらに下に記載される通り、異なる引張り強度を有する多数の材料(例えば、熱可塑性または熱硬化性ポリウレタン、ポリ尿素、またはこれらのコポリマー、またはシリコーンゴム、またはエポキシ、またはこれらの組み合わせ)を含んでよい。中断により中間体に断層線または断層面が形成される場合があるが、後の単一反応機構のエネルギー重合性液体が、その第2の重合性材料において最初のものと反応性がある場合、中間体の2つの異なるセグメントが、(例えば、加熱またはマイクロ波照射により)2回目の重合中に交差反応し、互いに共有結合する。従って、例えば、本明細書に記載した何れかの材料を連続して変更して、異なる引張強度特性を有する多数の異なるセグメントを有する製造物を形成することができるが、この製造物は互いに共有結合している異なるセグメントを有する単一の製造物である。
【0183】
例示的な実施形態において、上述のフォトプラスチック材料またはその組み合わせは、3D形成物体の重量の大部分を占めてよく、3D形成物体の50重量%、60重量%、70重量%、80重量%または90重量%超を構成してもよい。
【0184】
例示的な実施形態において、単一反応機構で製造された3D形成物体は、上記形状や構造の何れかを有してよく、例えば、IPN、セミIPN、同時IPN、または連続IPN、またはこれらの組み合わせとして、(i)線形、セミ架橋、またはフル架橋のエネルギー重合ネットワーク、(ii)エネルギー重合性官能基を含むモノマーまたはオリゴマーから構築されたフルまたはセミ架橋のエネルギー重合ポリマー、または(iii)これらの組み合わせを含んでよく、またはから構成されてよく、またはから本質的に構成されてよく、3D形成物体の大部分を構成してよく、3D形成物体の50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、または90重量%超を構成してよい。
【0185】
いくつかの実施形態において、3D形成物体は、上述の通りゾルゲル組成物、疎水性または親水性組成物、フェノールレゾール、シアン酸エステル、ポリイミド、導電性ポリマー、天然物ベースのIPN、連続IPN、およびポリオレフィンを含み得る。
【0186】
D.フィルム材料の例
【0187】
フレキソグラフィー、リソグラフィー、グラビア、オフセット、スプレーコーティング、ロールコーティング、カーティンコーティング、インクジェットデポジション、スタンピング、ブラシにより、基材に塗布される任意の材料。
【0188】
これらのフィルムは、種々の大きさであってよい。米国試験材料協会(ASTM)は、フィルムを厚さ0.25mm以下のプラスチックシートと定義付けている。厚さ0.25mm超のシート材料はシートとみなされる。シート押出により、ほとんどの熱成形業務で使用するための材料が生産される。しかしながら、基材に永久的に張り付けられる限り、0.25mm超でもフィルムと考えてよい。
【0189】
光開始剤および光開始剤フラグメントの例。いくつかの実施形態において、フィルムまたは3D形成物体は、フィルムまたは3D形成物体に残留する未反応の光開始剤を含んでよい。例えば、いくつかの実施形態において、0.1または0.2重量%~1、2、または4重量%の光開始剤が、フィルムまたは3D形成物体に残留してよく、または光開始剤が、より少ない量またはトレース量のみで存在してもよい。いくつかの実施形態において、フィルムまたは3D形成物体は、反応した光開始剤フラグメントを含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態において、反応した光開始剤フラグメントは、中間製造物を形成する第1の重合の残留物であってよい。例えば、0.1または0.2重量%~1、2、または4重量%の反応した光開始剤フラグメントが、フィルムまたは3D形成物体に残留してよく、または反応した光開始剤フラグメントが、より少ない量またはトレース量のみで存在してもよい。
【0190】
例示的な実施形態において、系が一部においてUV光への曝露により重合可能なモノマーおよびオリゴマーから成るので、最終製造物は残余の光開始剤分子および光開始剤フラグメントを含んでよい。
【0191】
いくつかの実施形態において、光重合では、以下に説明される化学変化がある。第1工程である開始において、UV光が開始剤を活性ラジカルフラグメントに開裂させる。次いで、これらの活性ラジカルフラグメントはモノマーの基「M」と反応とする。生長段階において、活性モノマーは、成長ポリマー鎖に付加する追加のモノマーと反応する。最後に、再結合または不均化の何れかにより停止となる。
【0192】
開始
【0193】
開始剤+hv→R’
【0194】
R’+M→RM’
【0195】
生長
【0196】
RM’+Mn→RM’n+1
【0197】
停止
【0198】
結合
【0199】
RM’n+’MmR→RMnMmR
【0200】
不均化
【0201】
RM’n+’MmR→RMn+MmR
【0202】
例示的な実施形態において、本明細書に説明されるプロセスにより生成する3D形成物体は、物体が形成後において以下の化学物質を含んでよい。
【0203】
潜在的な未反応の光開始剤。光開始剤は、光重合において100%消費されることは少ない。このため、製造物は、典型的には固体物体全体にわたり組み込まれる未反応の光開始剤を含む。
【0204】
ポリマーネットワークに共有結合で付加されている副生成物である光開始剤。例示的な実施形態において、光開始剤としては以下のものを挙げることができる。
【0205】
ベンゾイル発色団ベース:これらの系は以下の形態をとる。
【0206】
【0207】
式中、「R」はH、O、C、N、Sなどの任意の数の元素である。これらの開始剤は開裂して以下を形成する。
【0208】
【0209】
式中、「.」はフリーラジカルを表す。これらの成分の何れかはが重合を開始し、このためにポリマーネットワークに共有結合している。
【0210】
【0211】
このような開始剤の例を以下に示す。
【0212】
【0213】
モルフォリノおよびアミノケトン。これらの系は以下の形態をとる。
【0214】
【0215】
式中、「R」はH、O、C、N、Sなどの任意の数の元素である。これらの開始剤は開裂して以下を形成する。
【0216】
【0217】
式中、「.」はフリーラジカルを表す。これらの成分の何れかはが重合を開始し、このためにポリマーネットワークに共有結合している。
【0218】
【0219】
【0220】
ベンゾイルホスフィンオキシド。これらの系は以下の形態をとる。
【0221】
【0222】
式中、「R」はH、O、C、N、Sなどの任意の数の元素である。これらの開始剤は開裂して以下を形成する。
【0223】
【0224】
式中、「.」はフリーラジカルを表す。これらの成分の何れかはが重合を開始し、このためにポリマーネットワークに共有結合している。
【0225】
【0226】
このような開始剤の例を以下に示す。
【0227】
【0228】
アミン。多くの光開始剤は、アミンと組み合わせて使用できる。ここでは、励起状態にある光開始剤をアミンから水素原子を引き抜くために供し、これにより活性ラジカルを生成させる。このラジカルはその後に重合を開始でき、このため形成されるポリマーネットワークに組み込まれる。このプロセスを以下に示す。
【0229】
【0230】
これらの活性種の何れかはその後に活性ポリマー鎖を形成でき、以下の構造となる。
【0231】
【0232】
その他の系。このような材料の生成に用いることができ、形成されるポリマーネットワークに共有結合により付加されるフラグメントを生成する他の種類の光開始剤としては、トリアジン、ケトン、パーオキサイド、ジケトン、アジド、アゾ誘導体、ジスルフィド誘導体、ジシラン誘導体、チオール誘導体、ジセレニド誘導体、ジフェニルジテルリド誘導体、ジゲルマン誘導体、ジスタンナン誘導体、炭素-ゲルマニウム化合物、炭素-ケイ素誘導体、硫黄-炭素誘導体、硫黄-ケイ素誘導体、パーエステル、バートンエステル誘導体、ヒドロキサム酸およびチオヒドロキサム酸およびエステル、有機ホウ酸塩、有機金属化合物、チタノセン、クロム錯体、アルメート錯体、炭素-硫黄または硫黄-硫黄イニファータ化合物、オキシアミン、アルデヒド、アセタール、シラン、リン含有化合物、ボラン錯体、チオキサントン誘導体、クマリン、アントラキノン、フルオレノン、フェロセニウム塩が挙げられる。これらの光開始剤も、開始剤種の移動性や危険性などを低減するようにより大きな分子に付加される場合において、オリゴマーまたはポリマーであってよい。
【0233】
検出。重合したポリマー物体中の光開始剤フラグメント特有の化学的特徴の検出は、多くの分光技術によって達成できる。単独または併用により有用な特定の技術としては、UV-Vis分光法、蛍光分光法、赤外線分光法、核磁気共鳴分光法、質量分析法、原子吸光分光法、ラマン分光法、X線光電子分光法が挙げられる。
【0234】
E.3D物体の特性例
【0235】
3D物体を形成し、3D物体の幅広い特性を提供する材料の特性とともに、3D形成物体の構造的な特性を選択できる。本出願にて上述した材料および方法を使用して所望の材料特性を有する複雑な形状を形成し、広範囲の3D物体を形成できる。
【0236】
いくつかの実施形態において、3D形成物体は剛性であってよく、例えば、約800~4500の範囲またはこれに包含される任意の範囲のヤング率(MPa)、約30~150の範囲またはこれに包含される任意の範囲の引張強度(MPa)、約1~100の範囲またはこれに包含される任意の範囲の破断伸度(%)、および/または10~200J/mまたはこれに包含される任意の範囲のノッチ形状によるIZOD衝撃強さを有してよい。このような剛性な3D形成物体の非限定例としては、ファスナー;電子機器ハウジング;歯車、プロペラ、およびインペラー;車輪、機械装置ハウジング;ツール、およびその他の剛性3D物体を挙げることができる。
【0237】
いくつかの実施形態において、3D形成物体は半剛性であってよく、例えば、約300~3500の範囲またはこれに包含される任意の範囲のヤング率(MPa)、約20~90の範囲ままたはこれに包含される任意の範囲の引張強度(MPa)、約20~300または600の範囲またはこれに包含される任意の範囲の破断伸度(%)、および/または約30~400J/mまたはこれに包含される任意の範囲のノッチ形状によるIZOD衝撃強さを有してよい。このような半剛性な3D形成物体の非限定例としては、構造要素;リビングヒンジなどのヒンジ;ボートと船舶の船体とデッキ;車輪;ボトル、瓶、その他の容器;パイプ、液体管およびコネクタ、およびその他の半剛性3D物体を挙げることができる。
【0238】
いくつかの実施形態において、3D形成物体は、エラストマーであってよく、例えば、約0.25~300の範囲またはこれに包含される任意の範囲のヤング率(MPa)、約0.5~30の範囲またはこれに包含される任意の範囲の引張強度(MPa)、約50~1500の範囲またはこれに包含される任意の範囲の破断伸度(%)、および/または約10~200kN/mまたはこれに包含される任意の範囲の引裂強度を有してよい。このようなエラストマーの3D形成物体の非限定例としては、履物のソール、ヒール、インナーソール、ミッドソール;ブッシングとガスケット;ソフトロボティクスの構成部品;クッション;電子機器ハウジング、およびその他のエラストマーの3D物体を挙げることができる。
【実施例0239】
以下に示される例1~3では、上記のようなエラストマーから半剛性、フレキシブルの範囲にわたる種々の異なる引張特性を有する製造物の形成のための比較用の例示物質を与え、全ての張力データは、ASTM D638、タイプ4試験体に従って測定される。これらの例を、全て公知の市販の単一反応機構のエネルギー重合性材料とともに
図1Aおよび1Bに示す。
【0240】
【0241】
【0242】
【0243】
単一反応機構のエネルギー重合性液体を使用してフォトプラスチックを生成するさらなる例。
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
【0248】
【0249】
1-ビニル-2-ピロリドンおよびN-ビニルカプロラクタムが上で例にて示されているが、多くの他のモノマーを使用し、望ましい結果を得ることができる。限定されるものではないが、これらには、N-ビニルホルムアミド、アクリロイルモルホリンまたはケイ皮酸ビニルが含まれる。
【0250】
<例♯5 モル結合比の計算>
【0251】
【0252】
まず、所定の質量または体積の材料における各原料のモル数を決定する。
【0253】
【0254】
各成分のモル数をその官能性で掛け合わせることで、組成物中の各結合種のモル数が与えられる。
【0255】
【0256】
単官能分子種が寄与する結合の合計モル数を多官能分子種が寄与する結合の合計モル数で割ることにより、モル結合比が与えられる。
【0257】
【0258】
モル結合数の計算。例#4~#8におけるモル結合比の例示的な計算を以下に示す。
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
【0263】
【0264】
例#8において、単官能種と多官能種とのモル結合比は少なくとも1000%である(モル結合比が、単官能種:多官能種=10:1以上)。
【0265】
例#7において、単官能種と多官能種とのモル結合比は少なくとも3000%である(モル結合比が、単官能種:多官能種=30:1以上)。
【0266】
モル結合比。モル結合比は、閉鎖系における、異なる分子種が寄与する官能基(反応/重合が可能な部位)の数に対する単一の異なる分子種が寄与する官能基の数の比率である。これは、異なる分子間の相対比であり、組成物中の相対重量%、分子量、および官能性(分子あたりの官能基の数)を考慮する。
【0267】
モル結合比。フォトプラスチック材料を特徴付けるために用いられるモル結合比の1つの特に有用な定義により、組成物に寄与する官能基の数:単官能反応種の合計と多官能反応種の合計とを比較する。モル結合比は、閉鎖系における、多官能種が寄与する官能基(反応/重合が可能な部位)の数に対する単官能種が寄与する官能基の数の比率である。これは、異なる単官能種と多官能種との相対比であり、組成物中の相対重量%、分子量、および官能性(分子あたりの官能基の数)を考慮する。単官能種は、完全に重合した材料において共有結合を形成する官能基を1つ含む分子と定義される。多官能種は、完全に重合した材料において共有結合を形成する官能基を1超含む分子と定義される。与えられた系の場合、モル結合比は、材料が重合する場合に共有結合となる官能基についてのみ計算される。例えば、100%のフリーラジカル重合反応において、モノマーが1つのアクリレート基および1つのエポキシド基を含む場合において、アクリレート基のみが反応するならば、そのモノマーは、単官能性と考えられる。同じ分子を考慮しても、フリーラジカル重合法とカチオン重合法の両方を用いて材料を重合するのであれば、アクリレート基とエポキシド基が両方共に最終ポリマー構造中で共有結合を形成するので、そのモノマーは2つの官能基を有すると考えられ、このため、その系においては多官能性と考えられる。モル結合比は、ポリマー材料の架橋密度を検討するための1つの方法でもある。
【0268】
ポリマー材料の架橋密度は、ポリマー材料の最終的な物理および機械特性に大きく影響する。一般に、高度に架橋されたポリマーは、より低い架橋密度のポリマーよりも脆弱な機械的挙動を示す。架橋密度は、フォトプラスチックとしての材料を特徴付けるための代替法として使用可能な有用な物理特性である。
【0269】
単一反応機構のエネルギー重合性液体を変更するために製造物の製造を1回以上停止または中断してよい。例示的な実施形態において、3D形成物体は異なる引張強度を有する多数の材料を含む。中断により断層線や断層面が中間体に形成される場合があるが、次の単一反応機構のエネルギー重合性液体が、その第2の重合性材料において、最初のものと反応性であれば、その後、中間体の2つの異なるセグメントが、第2の重合中に(例えば、熱やマイクロ波照射により)交差反応し、互いに共有結合する。従って、例えば、本明細書に記載の任意の材料を順次変更し、互いに共有結合している異なるセグメントを有する単一の製造物であるが、異なる引張強度を有する多数の異なるセグメントを有する製造物を形成できる。いくつかの実施形態において、3D物体は、異なる材料および特性を有する複数の領域から形成できる。例えば、3D形成物体は、約30~100の範囲またはここに包含される任意の範囲の引張強度(MPa)を有する第1の材料または1つ以上の材料の第1の群から形成される1つ以上の領域、および/または約20~70の範囲またはここに包含される任意の範囲の引張強度(MPa)を有する第2の材料または1つ以上の材料の第2の群から形成される1つ以上の領域、および/または約0.5~30の範囲またはここに包含される任意の範囲の引張強度(MPa)を有する第3の材料または1つ以上の材料の第3の群から形成される1つ以上の領域、またはこれらの何れかの組み合わせを有してよい。例えば、3D物体は、上記の材料および引張強度の何れかから選択される種々の引張強度を有する1~10またはそれ以上(またはこれに包含される任意の範囲)の異なる領域を有してよい。例えば、ヒンジを形成してよく、3D中間体の形成中に単一反応機構のエネルギー重合性液体を順次変更することにより、ヒンジは、剛性セグメント、これに結合された第2の弾性セグメント、これに結合された第3の剛性セグメントを含んでよい。緩衝器または振動減衰器を、同様の方法で形成してよく、第2のセグメントは弾性または半剛性のいずれかあってよい。単一の剛性漏斗と柔軟なホースアセンブリを同様の方法で形成することができる。
【0270】
いくつかの実施形態において、単一反応機構のエネルギー重合性樹脂を使用して、同一のフォトプラスチック材料/物体の範囲内でも機械特性を調整可能とすることができる(
図11を参照されたい)。これはフォトプラスチック材料のエネルギー重合を変更し、系の反応活性または反応機構を変更することにより達成できる。例えば、光照射、光エネルギー、光波長を変更することや電子ビームを使用することにより、重合反応機構および重合反応速度を変更できる。これは、樹脂に含まれる異なる重合性官能基およびこれらの同一の官能基または異なる官能基との反応性または非反応性にある程度は起因し、これらにより最終のポリマーの分子量やネットワークを変更できる。また、これは、フォトプラスチック材料における全ての官能基を重合可能な同種の開始にもある程度は起因する。これらのプロセスパラメータを制御することにより、1つの樹脂を使用して、それぞれ順番に異なる機械特性を有する異なる化学構造:フルIPN、セミIPN、疑似IPN、デュアルネットワーク、およびランダムコポリマーを構築することで、異なる機械特性を達成できる。加えて、特定の化学量比の構成成分を選択することにより、異なる機械特性を達成する能力を最適化できる。層あたりに4mJ/cm
2、395nmLEDを用いて試験体1、2、4、5を100μm層厚に3Dプリントする。層あたりに25mJ/cm
2、395nmLEDを用いて試験体6および7を100μm層厚に3Dプリントする。全ての試験体を5J/cm
2の広いスペクトルの水銀電球で後硬化する。機械特性における差が見られ、異なるプリント条件においてヤング率は10MPa~70MPaである。これは、ヤング率において7倍の違いを表す。さらに、伸度は約10~20%異なるようである。最後に、第1群の試料のショアDは~15であるが、第2群の試料のショアDは~40である。全ての試験体は上の例8と同じ組成を有する。
【0271】
さらに、上記構造の種々のポリマーネットワーク、分子量、液体-固体、固体-固体溶解性または相分離は、上記のプロセスパラメータにより調整可能であり制御可能である。このため、フィルムにおけるピクセル単位または物体におけるボクセル単位の何れにおいても、1つの樹脂の機械特性を大きく変えることが可能である。具体的には、積層造形において、プロジェクターまたはスクリーン光源のレーザーによりVAT重合が一般的に生じる。これらおよび次世代の各光源は、ピクセル単位でより低いワット数またはより低いエネルギーを放出するように制御できる。このため、ボクセル重合の3次元制御が可能であり、3次元空間で種々の機械特性を持つ物体を作製できる。これにより、全ての積層造形機の3D物体の性能が大幅に拡張される。
【0272】
SLAおよびDLP3Dプリント法の要部は、ボトムアッププリント技術を使用する。3Dプリントに使用される同様に有用な方法はトップダウン液槽プリントである。ボトムアップおよびトップダウンプリントはそれぞれ特徴的な長所と短所を有する。ボトムアップ3Dプリントによる部分の構築の質および成功率は、プリントされる部分のグリーン強度に大きく影響され、制限される。グリーン強度は、反応成分を高い転化率とするあらゆる追加の後硬化法の前の3Dプリンタにおけるグリーン状態の3Dプリントされた部分の強度、剛性、および寸法安定性を含む。3Dプリントされた物体のグリーン強度または機械的な完全性が、重力、樹脂槽ボトムへの望まれない接着、およびボトムアップ3Dプリントシステムにおけるその他の蓄積による潜在的な変形効果を克服する場合、3Dプリントされた物体は高い品質および安定性でプリントされる傾向にある。ボトムアップシステムにおけるプリント品質へのグリーン強度の効果は、3Dプリントされる部分の形状およびプリント条件に大きく影響され得る。トップダウン液槽プリント技術は、プリント工程の成功に対するグリーン強度などいくつかの性質の影響を低減する。トップダウン液槽プリント技術は、プリント中はプリントされる部分を構成液体材料の槽に置いたままにし、これがプリントされた部分への重力に対するバッファーとして作用する。このため、プリントされる部分は、プリントされる部分と周囲の流体の同等の密度により「浮動」動作を示し得る。樹脂層におけるプリントされる部分の浮動性能により、プリント中、特にグリーン強度が低い場合および/または中間層の接着がグリーン状態で低い場合に、重力から部分へ印加される合力が低減される。また、トップダウン液槽樹脂の粘度がプリント中にグリーン部分へ望ましくない力を与え、変形や欠陥の導入を生じる場合がある。固液相互作用による変形リスクを低減するために、750cP以下の低粘度の樹脂が望ましい。トップダウンプリント技術でのフォトプラスチックの1つの潜在的な利点は、低粘度にそれらを配合可能なことである。フォトプラスチック材料は低グリーン強度を有することができ、このためトップダウン液槽プリントがボトムアッププリントよりも適切な方法であることが示唆される。
【0273】
F.3D物体の追加例
【0274】
上記方法、構造、材料、組成物、特性を使用して、実質的に無限の数の製造物を3Dプリントできる。限定されるものではないが、例えば、ステント、ドラッグデリバリー徐放性製剤、カテーテル、ブラダー、乳房インプラント、睾丸インプラント、胸部インプラント、眼のインプラント、コンタクトレンズ、デンタルアライナー、マイクロ流体、シール、シュラウドなどの医療機器および埋め込み型医療機器、およびその他の生態適合性を必要とする用途、機能的構造、マイクロニードルアレイ、ファイバー、ロッド、導波管、マイクロ機械デバイス、微小流体デバイス、ファスナー、電子デバイスハウジング、ギア、プロペラ、インペラー、ホイール、機械デバイスハウジング、ツール、構造部材、リビングヒンジを含むヒンジ、ボート、船舶の船体および甲板、ホイール、ボトル、瓶、およびその他の容器、パイプ、液体管およびコネクタ、履物のソール、ヒール、インナーソール、およびミッドソール、ブッシング、O-リングおよびガスケット、ショックアブソーバー、漏斗/ホースアセンブリ、クッション、電子デバイスハウジング、すね当て、アスレチックカップ、ひざ当て、ひじ当て、フォームライナー、パディングまたはインサート、ヘルメット、ヘルメット紐、ヘッドギア、靴用滑り止め具、手袋、その他のウェアラブルまたは運動用器材、ブラシ、櫛、リング、ジュエリー、ボタン、スナップ、ファスナー、時計バンドまたは時計ハウジング、携帯電話またはタブレットのケーシングまたはハウジング、コンピューターのキーボードまたはキーボードボタンまたは構成部品、リモコンボタンまたは構成部品、自動車ダッシュボード構成部品、ボタン、ダイアル、車体部品、パネル、他の自動車、航空機または船体部品、調理器具、耐熱皿、厨房器具、スチーマー、およびその他多数の3D物体が挙げられる。追加のエネルギー重合によるプリントにより弾性または所望の特性を与えることが可能でありながらも形状を固定できる単一反応機構のエネルギー重合の使用により、様々な形状および特性(例えば弾性)を付与する性能を有するために、形成可能な有用な3D製造物の世界を、大きく広げることができる。上述の構造、材料および特性は何れも、上記3D形成物体などの3D物体を形成するために組み合わせることが可能である。これらは単に例示であり、その他多数の3D物体を本明細書に記載の方法および材料により形成可能である。
【0275】
IV.別の方法と装置
【0276】
本発明は、上で詳細に、および下でさらに詳細に記載される通り、ステレオリソグラフィー、マテリアルジェッティング、またはインクジェットプリントにより好ましく実施されるが、いくつかの実施形態において、layer-by-layer製造など、ボトムアップまたはトップダウン3D製造用の別の方法および装置を使用してよい。限定されるものではないが、このような方法および装置としては、例えば、引用により全体内容が本明細書に組み込まれる米国特許第5,236,637号、米国特許第5,391,072号、5,529,473号、米国特許第7,438,846号、米国特許第7,892,474号、米国特許第8,110,135号、米国特許出願公開第2013/0292862号および2013/029521号、国際公開第WO2015/164234号に記載されているものが挙げられる。
【0277】
フォトプラスチック材料の利点は多いが、以下の通りに集約される。エネルギー重合性材料により熱可塑性樹脂特性および性能の設計を達成する能力。熱可塑性樹脂を溶解し、所望の形状に堆積/成形する必要性があることにより熱可塑性樹脂の使用が厳しく制限される場合における製造技術。エネルギー重合性材料を使用する製造技術は、重合に利用可能なエネルギー源がある限りはほとんど制約がない。これらの技術は、インクジェットプリント、3Dプリント、モールディング、ラミネートなどを包含する。
【0278】
本開示の説明は本質的に単なる例示であり、本開示の趣旨から逸脱しない変形は本開示の範囲内にあることを意図している。そのような変形は、本開示の精神および範囲からの逸脱と見なされるべきではない。