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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156896
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】置局設計支援方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/18 20090101AFI20241029BHJP
【FI】
H04W16/18
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024129012
(22)【出願日】2024-08-05
(62)【分割の表示】P 2022567945の分割
【原出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪井 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】後藤 和人
(72)【発明者】
【氏名】俊長 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】北 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鬼沢 武
(57)【要約】
【課題】現実的な計算処理時間内でより効果的な置局設計を行えるようにする技術を提供すること。
【解決手段】置局設計支援方法は、少なくとも1つの第1無線局の位置を示す情報を取得するステップと、少なくとも1つの第1無線局と、前記第1無線局の位置から所定の距離以内に位置する少なくとも1つの第2無線局の設置候補位置との組合せパターンの数を算出するステップと、前記組合せパターンの数が所定数を超過している場合、前記所定の距離を段階的により短くするステップと、前記組合せパターンの数が所定数を超過しなくなった場合、前記組合せパターンの数を出力するステップとを有する。
【選択図】図23
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1無線局の位置を示す情報を取得するステップと、
少なくとも1つの第1無線局と、前記第1無線局の位置から所定の距離以内に位置する少なくとも1つの第2無線局の設置候補位置との組合せパターンの数を算出するステップと、
前記組合せパターンの数が所定数を超過している場合、前記所定の距離を段階的により短くするステップと、
前記組合せパターンの数が所定数を超過しなくなった場合、前記組合せパターンの数を出力するステップと、
を有する置局設計支援方法。
【請求項2】
少なくとも1つの第1無線局の位置を示す情報を取得するステップと、
少なくとも1つの第1無線局と、前記第1無線局の位置から所定の距離以内に位置する少なくとも1つの第2無線局の設置候補位置との組合せパターンの数を算出するステップと、
前記組合せパターンの数が所定数を超過していない場合、前記所定の距離を段階的により長くするステップと、
前記組合せパターンの数が所定数を超過した場合、直前の段階の前記所定の距離に基づく前記組合せパターンの数を出力するステップと、
を有する置局設計支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置局設計支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図26は、通信ネットワーク機器全般の仕様オープン化推進を図るコンソーシアムであるTIP(Telecom Infra Project)(主要メンバ:Facebook, Deutsche Telecom, Intel, NOKIAなど)において、mmWave Networksが提案するユースケース(例えば、非特許文献1~3参照)を参考に一部を修正して模式化した図である。mmWave Networksは、TIPのプロジェクトグループの1つであり、アンライセンス帯のミリ波無線を使用して、光ファイバの敷設より速く、かつ安価なネットワーク構築を目指している。
【0003】
図26に示すビル800、801、および住宅810、811、812などの建物において、建物のそれぞれの壁面に設置された端末局装置840~端末局装置(以下、「端末局」という。)844、および電柱821~電柱826に設置された基地局装置830~基地局装置(以下、「基地局」という。)834は、mmWave DN(Distribution Node)と呼ばれる装置である。
【0004】
基地局830~基地局834は、光ファイバ900、901により局舎(Fiber PoP(Point of Presence))850、局舎851に備えられた通信装置と接続されている。この通信装置は、プロバイダーの通信ネットワークに接続されている。端末局840~端末局844と基地局830~基地局834との間では、mmWave Link、すなわちミリ波無線が行われる。図26では、ミリ波無線のリンクを一点鎖線で示している。
【0005】
基地局830~基地局834を電柱821~電柱826に設置し、端末局840~端末局844を建物の壁面に設置し、両局間をミリ波無線によって通信する形態において、基地局830~基地局834および端末局840~端末局844を設置する候補になる位置を選定することを置局設計という。
【0006】
置局設計を行う手法として空間を撮像することによって得られる3次元の点群データを用いる手法がある。この手法では、例えば、最初に、MMS(Mobile Mapping System)を搭載した車両などの移動体を評価対象の住宅エリア周辺の道路に沿って走行させることにより3次元の点群データを取得する。次に、取得した点群データを活用して基地局830~基地局834と端末局840~端末局844との間の無線通信を評価する。評価手段として、両局間の3次元での見通し判定を行う手段や、遮蔽率を算出する手段がある。ここで、「遮蔽率」とは、基地局830~基地局834と、端末局840~端末局844との間に存在する物体がどの程度、無線通信に影響するかを示す指標であり、逆の視点からみれば「透過率」ということもできる。これらの評価手段を行うためには、基地局830~基地局834と端末局840~端末局844の候補位置を含む空間において、全ての評価対象について点群データがそろっている必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Sean Kinney, “Telecom Infra Project focuses on millimeter wave for dense networks, Millimeter Wave Networks Project Group eyes 60 GHz band”, Image courtesy of the Telecom Infra Project, RCR Wireless News, Intelligence on all things wireless, September 13 2017, [令和2年11月30日検索], インターネット(URL: https://www.rcrwireless.com/20170913/carriers/telecom-infra-project-millimeter-wave-tag17)
【非特許文献2】Frederic Lardinois, “Facebook-backed Telecom Infra Project adds a new focus on millimeter wave tech for 5G”, [令和2年11月30日検索], インターネット(URL: https://techcrunch.com/2017/09/12/facebook-backed-telecom-infra-project-adds-a-new-focus-on-millimeter-wave-tech-for-5g/?renderMode=ie11)
【非特許文献3】Jamie Davies, “DT and Facebook TIP the scales for mmWave”, GLOTEL AWARDS 2019, telecoms.com, September 12 2017, [令和2年11月30日検索], インターネット(URL: http://telecoms.com/484622/dt-and-facebook-tip-the-scales-for-mmwave/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
あるエリア(例えば都市)を上記のような通信ネットワークでカバーしようとする場合、無線通信事業者は、設備投資等の計画を行うため、必要となる基地局の個数を概算で把握しておく必要がある。例えば図26に示されるように、電柱に基地局を設置し、建物の壁面に端末局を設置するような置局設計を行う場合、数百メートル四方のエリアが評価対象エリアとされることがある。このような場合、評価対象エリア内に存在する、全ての基地局設置位置の候補(すなわち、電柱)と全ての端末局設置位置の候補(すなわち、建物の壁面)との全ての組合せパターンに対して見通し判定や遮蔽率の算出処理を行うならば、膨大な計算量となる。そのため、従来、組合せパターンの個数を現実的な計算処理時間内で処理可能な個数にまで削減するため、例えば、評価対象エリアを複数のより小さなエリア(以下、「小エリア」という。)に区切って、小エリアごとに置局設計が行われる。
【0009】
しかしながら、小エリアごとに置局設計が行われる場合、隣接する2つの小エリアの境界を跨って存在する基地局の設置候補位置と端末局の設置候補位置との組合せパターンは、例え両局間で見通しがあり遮蔽率が低い組合せパターンであったとしても、評価対象外となってしまう。このように、従来技術では、両局間で見通しがあり遮蔽率が低い組合せパターンが見落とされる場合があるため、効果的な置局設計が行われないことがあるという課題がある。
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は、現実的な計算処理時間内でより効果的な置局設計を行えるようにする技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、少なくとも1つの第1無線局の位置を示す情報を取得するステップと、少なくとも1つの第1無線局と、前記第1無線局の位置から所定の距離以内に位置する少なくとも1つの第2無線局の設置候補位置との組合せパターンの数を算出するステップと、前記組合せパターンの数が所定数を超過している場合、前記所定の距離を段階的により短くするステップと、前記組合せパターンの数が所定数を超過しなくなった場合、前記組合せパターンの数を出力するステップと、を有する置局設計支援方法である。
【0012】
本発明の一態様は、少なくとも1つの第1無線局の位置を示す情報を取得するステップと、少なくとも1つの第1無線局と、前記第1無線局の位置から所定の距離以内に位置する少なくとも1つの第2無線局の設置候補位置との組合せパターンの数を算出するステップと、前記組合せパターンの数が所定数を超過していない場合、前記所定の距離を段階的により長くするステップと、前記組合せパターンの数が所定数を超過した場合、直前の段階の前記所定の距離に基づく前記組合せパターンの数を出力するステップと、を有する置局設計支援方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、現実的な計算処理時間内でより効果的な置局設計を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態の置局設計支援装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態の置局設計支援装置による処理の流れを示すフローチャートである。
図3】第1の実施形態の置局設計支援装置による処理を2段階に分けて説明するための図である。
図4】第1の実施形態における設計エリアを示す模式図である。
図5】制約条件を設けることによる組合せパターンの削減を説明するための模式図である。
図6】制約条件を設けない場合における組合せパターンを説明するための模式図である。
図7】設計エリアを小エリアに分けて置局設計を行う場合の一例を示す模式図である。
図8】設計エリアを小エリアに分けて置局設計を行う場合の一例を示す模式図である。
図9】設計エリアを小エリアに分けて置局設計を行う場合の一例を示す模式図である。
図10】第1の実施以形態における置局設計支援装置1の組合せパターンリスト作成の動作を示すフローチャートである。
図11】置局設計支援装置1が矩形の複数の小エリアを用いる場合を示す模式図である。
図12】置局設計支援装置1が六角形の複数の小エリアを用いる場合を示す模式図である。
図13】置局設計支援装置1が道路区間に基づく複数の小エリアを用いる場合を示す模式図である。
図14】第2の実施以形態における置局設計支援装置1の組合せパターンリスト作成の動作を示すフローチャートである。
図15】第3の実施形態における置局設計支援装置1の動作を示すフローチャートである。
図16】設備データ記憶部に記憶された設備データの一例を示す図である。
図17】指定された設計エリアの地図の一例を示す図である。
図18】指定された設計エリアの地図の一例を示す図である。
図19】指定された設計エリアの地図の一例を示す図である。
図20】第3の実施形態における置局設計支援装置1が提示するリストの一例を示す図である。
図21】第3の実施形態における置局設計支援装置1が提示するリストの一例を示す図である。
図22】設計エリア内の基地局の設置候補位置と端末局の設置位置との配置の一例を示す図である。
図23】小エリアの半径の調整を示す図である。
図24】第3の実施形態における置局設計支援装置1の動作を示すフローチャートである。
図25】小エリアの半径の調整を示す図である。
図26】TIPが提案するユースケースの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態の置局設計の支援を行う装置である置局設計支援装置1の構成を示すブロック図である。置局設計支援装置1は、設計エリア指定部2、基地局候補位置抽出部3、端末局候補位置抽出部4、2次元見通し判定処理部5、点群データ処理部6、局数算出部7、操作処理部10、地図データ記憶部11、設備データ記憶部12、点群データ記憶部13、2次元見通し判定結果記憶部15、パターン数制御部17、および組合せパターンリスト記憶部18を備える。
【0016】
点群データ処理部6は、3次元候補位置選定部20、3次元見通し判定処理部23、および遮蔽率算出部24を備える。
パターン数制御部17は、エリア分割部171、組合せパターン抽出部172、重複パターン削除部173、および推奨パターン特定部174を備える。
【0017】
置局設計支援装置1が備える地図データ記憶部11、設備データ記憶部12、および点群データ記憶部13が予め記憶するデータについて説明する。
【0018】
地図データ記憶部11は、2次元の地図データを予め記憶する。地図データには、例えば、端末局が設置される候補になる建物の位置と形状を示すデータ、建物の敷地の範囲を示すデータ、および道路を示すデータなどが含まれている。
設備データ記憶部12は、基地局が設置される候補になる電柱などの屋外設備である基地局設置建造物の位置を示す2次元の座標系における基地局候補位置データ(以下「2次元基地局候補位置データ」という。)を記憶する。
点群データ記憶部13は、例えば、MMSが取得した3次元の点群データを記憶する。
【0019】
以下、図2に示すフローチャートを参照しつつ、置局設計支援装置1の各機能部の構成および置局設計支援装置1による置局設計支援方法の処理の流れについて説明する。
【0020】
設計エリア指定部2は、地図データ記憶部11から2次元の地図データを読み出す(ステップS1-1)。設計エリア指定部2は、読み出した地図データを、例えば、ワーキングメモリに書き込んで記憶させる。設計エリア指定部2は、ワーキングメモリが記憶する地図データにおいて、例えば、操作処理部10が置局設計支援装置1の利用者の操作を受けて出力する設計エリアの範囲を指定する指示信号に基づいて、矩形形状のエリアを選択する。設計エリア指定部2は、選択したエリアを設計エリアとして指定する(ステップS1-2)。
【0021】
端末局候補位置抽出部4は、設計エリア内の地図データから建物の位置と形状を示す建物輪郭データを建物ごとに地図データから抽出する(ステップS2-1)。端末局候補位置抽出部4が抽出する建物輪郭データは、端末局が設置される可能性のある建物の壁面を示すデータであり、端末局が設置される候補になる位置とみなされる。
【0022】
端末局候補位置抽出部4は、抽出する建物ごとの建物輪郭データに対して、個々の建物を一意に識別可能な識別情報である建物識別データを生成して付与する。端末局候補位置抽出部4は、付与した建物識別データと、当該建物に対応する建物輪郭データとを関連付けて出力する。
【0023】
基地局候補位置抽出部3は、設計エリア指定部2が指定した設計エリア内に位置する基地局設置建造物に対応する2次元基地局候補位置データを設備データ記憶部12から読み出して出力する(ステップS3-1)。なお、地図データ記憶部11が記憶する地図データの座標と、設備データ記憶部12が記憶する2次元基地局候補位置データの座標とが一致していない場合、基地局候補位置抽出部3は、読み出した2次元基地局候補位置データの座標を、地図データの座標系に合わせる変換を行う。
【0024】
2次元見通し判定処理部5は、基地局候補位置抽出部3が出力する2次元基地局候補位置データの各々について、端末局候補位置抽出部4が出力する建物ごとの建物輪郭データを用いて、2次元基地局候補位置データの各々が示す位置からの水平方向における建物ごとの見通しの有無を判定する。2次元見通し判定処理部5は、見通しありと判定した建物において見通しのある範囲、すなわち建物の壁面を見通し範囲として検出する(ステップS4-1)。
【0025】
2次元見通し判定処理部5は、検出した見通し範囲に対応する建物の壁面の中で、更に優先して端末局を設置する建物の壁面の候補を選択する。2次元見通し判定処理部5は、ある建物の見通し範囲が、複数の壁面を含んでいる場合、例えば、基地局から近い方の壁面を優先して端末局を設置する壁面とし、当該壁面を最終的な水平方向における見通し範囲として選択する。
【0026】
なお、ある建物の見通し範囲が複数の壁面を含んでいる場合において、1つの壁面を選択する方法は上記の方法に限られるものではなく任意である。
【0027】
2次元見通し判定処理部5は、基地局候補位置ごとに、水平方向において検出した見通し範囲を有する建物の建物輪郭データと、当該建物の水平方向における見通し範囲を示すデータとを関連付けて2次元見通し判定結果記憶部15に書き込んで記憶させる(ステップS4-2)。これにより、2次元基地局候補位置データごとに、建物の建物識別データと、当該建物識別データに対応する建物の水平方向の見通し範囲を示すデータとが2次元見通し判定結果記憶部15に記憶されることになる。
【0028】
2次元見通し判定処理部5は、操作処理部10が置局設計支援装置1の利用者の操作を受けて出力する「基地局候補位置との間に他の建物が存在する建物を考慮する指示」を示す指示信号を、操作処理部10から受けているか否かを判定する(ステップS4-3)。なお、置局設計支援装置1の利用者は、図2の処理が開始される前に、基地局候補位置との間に他の建物が存在する建物を考慮するか否かを予め選択しており、考慮することを選択している場合、操作処理部10は、利用者の操作を受けて「基地局候補位置との間に他の建物が存在する建物を考慮する指示」を示す指示信号を出力する。
【0029】
2次元見通し判定処理部5は、当該指示信号を受けていないと判定した場合(ステップS4-3、No)、処理をステップS5-1に進める。一方、当該指示信号を受けていると判定した場合(ステップS4-3、Yes)、処理をステップS4-4に進める。
【0030】
2次元見通し判定処理部5は、2次元基地局候補位置データごとに、設計エリア内の建物のうち、当該建物と2次元基地局候補位置データが示す位置との間に他の建物が存在する建物を垂直方向の見通し検出対象建物として検出する。2次元見通し判定処理部5は、例えば、2次元見通し判定結果記憶部15を参照し、2次元基地局候補位置データごとに、水平方向の見通し範囲を検出していない建物を、当該建物と2次元基地局候補位置データが示す位置との間に他の建物が存在する建物とし、当該建物を垂直方向の見通し検出対象建物(以下、垂直方向の見通し検出対象建物を「見通し検出対象建物」ともいう)として検出する。
【0031】
2次元見通し判定処理部5は、例えば、置局設計支援装置1の利用者の操作を受けて、当該利用者が指定する基地局候補位置ごとの設置高度を示すデータと、建物の高さを示すデータとを外部から取り込む。
【0032】
2次元見通し判定処理部5は、検出した基地局候補位置ごとの見通し検出対象建物ごとに、取り込んだ建物の高さを示すデータを用いて、当該基地局候補位置における設置高度の高さからの垂直方向の見通し範囲を検出する。2次元見通し判定処理部5は、垂直方向の見通し範囲を検出した建物の建物識別データと、当該建物において検出した垂直方向における見通し範囲を示すデータとを関連付けて2次元見通し判定結果記憶部15に書き込んで記憶させる(ステップS4-4)。これにより、2次元基地局候補位置データごとに、建物の建物識別データと、当該建物識別データに対応する建物の水平および垂直方向の見通し範囲を示すデータとが2次元見通し判定結果記憶部15に記憶されることになる。
【0033】
点群データ処理部6において、3次元候補位置選定部20は、3次元空間における基地局を設置する候補になる位置を示す基地局候補位置と、3次元空間における端末局を設置する候補になる位置を示す端末局候補位置とを選定する。
【0034】
例えば、置局設計支援装置1の利用者が、操作処理部10を操作して、2次元見通し判定結果記憶部15からいずれか1つの2次元基地局候補位置データを選択する。操作処理部10は、選択した2次元基地局候補位置データを3次元候補位置選定部20に出力する。3次元候補位置選定部20は、操作処理部10が出力する2次元基地局候補位置データを取り込む。3次元候補位置選定部20は、取り込んだ2次元基地局候補位置データが示す位置の付近の点群データを点群データ記憶部13から取得し、取得した点群データを画面に表示する。利用者は操作処理部10を操作して、画面に表示された点群データの中から基地局を設置する候補になる3次元の位置を選択して3次元候補位置選定部20に出力する。3次元候補位置選定部20は、操作処理部10が出力する3次元の位置を取り込み、取り込んだ3次元の位置を、3次元の基地局候補位置データとする。
【0035】
次に、3次元候補位置選定部20は、取り込んだ2次元基地局候補位置データに関連付けられている建物の見通し範囲を示すデータを2次元見通し判定結果記憶部15から読み出す。3次元候補位置選定部20は、読み出した建物の見通し範囲を示すデータが示す範囲の点群データを点群データ記憶部13から読み出し、読み出した点群データを画面に表示する。利用者は操作処理部10を操作して、画面に表示された点群データの中から端末局を設置する候補になる3次元の位置を選択して3次元候補位置選定部20に出力する。3次元候補位置選定部20は、操作処理部10が出力する3次元の位置を取り込み、取り込んだ3次元の位置を、3次元の端末局候補位置データとする。以下、3次元の基地局候補位置データを、単に「基地局候補位置データ」といい、3次元の端末局候補位置データを、単に「端末局候補位置データ」という。
【0036】
3次元見通し判定処理部23は、3次元候補位置選定部20が選定した基地局候補位置データおよび端末局候補位置データの各々が示す、基地局候補位置および端末局候補位置の間の空間の点群データを点群データ記憶部13から読み出す(ステップS5-1)。3次元見通し判定処理部23は、読み出した点群データに基づいて、基地局候補位置と、端末局候補位置との間における3次元の見通し判定処理を行い、判定処理の結果に基づいて通信の可否を推定する(ステップS5-2)。
【0037】
これに対して、点群データ処理部6において、遮蔽率の算出を行う場合、遮蔽率算出部24は、3次元候補位置選定部20が選定した基地局候補位置データおよび端末局候補位置データの各々が示す、基地局候補位置および端末局候補位置の間の空間の点群データを点群データ記憶部13から読み出す(ステップS5-1)。遮蔽率算出部24は、読み出した点群データに基づいて、基地局候補位置と、端末局候補位置との間の遮蔽率を算出し、算出処理の結果に基づいて通信の可否を推定する(ステップS5-2)。
3次元見通し処理判定部23及び遮蔽率算出部24を含む点群データ処理部6は、ステップS5-1~ステップS5-2の処理を全ての基地局候補位置データと端末局候補位置データの組合せについて行う。
【0038】
局数算出部7は、3次元見通し処理判定部23あるいは遮蔽率算出部24どちらも有する点群データ処理部6が3次元の点群データを用いて行った通信の可否の推定の結果に基づいて、基地局候補位置や端末局候補位置を集計して、所要基地局数と、基地局候補位置ごとの収容端末局数とを算出する(ステップS6-1)。
【0039】
置局設計支援装置1における処理の構成は、図3に示すように2次元データである地図データを用いて行う処理と、当該処理の結果を受けて、3次元データである点群データを用いて行う処理という、2段階の処理として捉えることもできる。
【0040】
図3に示すように、1段階目の2次元データである地図データを用いて行う処理は、(1)設計エリアの指定、(2)端末局候補位置の抽出、(3)基地局候補位置の抽出、および(4)2次元の地図データを用いた見通し判定、の4つの処理を含んでいる。
【0041】
(1)設計エリアの指定の処理は、設計エリア指定部2が行うステップS1-1およびステップS1-2の処理に相当する。(2)端末局候補位置の抽出の処理は、端末局候補位置抽出部4が行うステップS2-1の処理に相当する。(3)基地局候補位置の抽出の処理は、基地局候補位置抽出部3が行うステップS3-1の処理に相当する。(4)2次元の地図データを用いた見通し判定の処理は、2次元見通し判定処理部5が行うステップS4-1~ステップS4-4の処理に相当する。
【0042】
2段階目の3次元データである点群データを用いて行う処理は、(5)3次元点群データを用いた通信可否判定、および(6)設計エリアにおける所要基地局数および収容端末局数の算出、の2つの処理を含んでいる。
【0043】
(5)3次元点群データを用いた通信可否判定の処理は、3次元見通し処理判定部23及び遮蔽率算出部24を持つ点群データ処理部6が行うステップS5-1~ステップS5-2の処理に相当する。(6)設計エリアにおける所要基地局数および収容端末局数の算出の処理は、局数算出部7が行うステップS6-1の処理に相当する。
【0044】
例えば、ミリ波などの無線通信において、電柱など屋外設備に設置する基地局、および建物の壁面に設置する端末局について、3次元の点群データを利用して基地局候補位置と端末局候補位置との間の3次元の見通し判定を行い置局設計の支援を行うことができる。3次元の点群データを取り扱うためには、膨大な量のデータと多大な計算リソースが必要になる。そのため、置局設計支援装置1では、3次元の点群データを利用する前に、2次元見通し判定処理部5が、基地局候補位置と端末局候補位置との間の2次元での見通しを判定し、この判定結果を用いて、点群データ処理部6が、利用する点群データを絞り込んだ上で3次元の見通し判定処理を行う構成である。そのため、計算リソースを削減した効率的な3次元の見通し判定処理を行うことが可能となる。
【0045】
また、無線通信において、単純な線状の見通し判定だけでなく、電波が空間を伝搬する際に関係する送信と受信間の回転楕円体形状の領域、いわゆるフレネルゾーンにおける「遮蔽率」を算出することも重要である。置局設計支援装置1の点群データ処理部6は、遮蔽率算出部24を備えることにより、遮蔽率の算出を行う。遮蔽率の算出には、3次元の見通し判定処理より多くの計算リソースが必要になるが、置局設計支援装置1では、2次元見通し判定処理部5が行う2次元の見通し判定の処理において、利用する点群データを十分に絞り込むことができているため、計算リソースを削減した効率的な遮蔽率の算出の処理を行うことが可能となる。
【0046】
本実施形態の置局設計支援装置1が置局設計の対象とする無線通信システムは、基地局を屋外の通信設備(本実施形態では、電柱)に配備し、端末局を建物の壁面に設置して、ミリ波帯無線を用いて無線通信を行う通信システムである。置局設計支援装置1は、基地局の設置候補位置と端末局の設置候補位置との組合せパターンのリスト(以下、「組合せパターンリスト」という。)を作成する。
【0047】
置局設計支援装置1は、両局の組合せパターンに対して見通し判定及び遮蔽率算出を行うことによって、両局間の通信の可否を判定する処理を行う。置局設計支援装置1は、設計エリア(例えば、評価対象の住宅エリア等)に対応する地図情報、及び予め収集された設計エリアの点群データを用いて両局間の通信の可否を判定する。
【0048】
しかしながら、設計エリアが広くなるほど、基地局の設置候補位置と端末局の設置候補位置との組合せパターンはより多くなり、通信可否を判定するために必要となる計算リソースも増大する。例えば、点群データを用いて基地局と端末局との間の遮蔽率を算出する場合、現在(2020年時点)に市販されている高性能なPCを用いたとしても、両局の組合せパターン1組当たりの遮蔽率の算出に数秒程度の時間を要する。
【0049】
両局の設置候補位置の組合せパターンがもし数百億通り~数十兆通りになるならば、通信可否の判定処理を現実的な処理時間で完了させることは困難になる。したがって、通信可否の判定処理を現実的な処理時間で完了させることが可能な程度に、両局の設置候補位置の組合せパターン数の絞り込みを行う必要がある。通信可否の判定処理を現実的な処理時間で完了させることが可能な組合せパターン数とは、例えば50万通り未満である。
【0050】
本実施形態における置局設計支援装置1は、設計エリア内における基地局の設置候補位置と端末局の設置候補位置との間の通信可否を判定する前に、ユーザに対して、通信可否の判定処理を現実的な処理時間で完了させることが可能な組合せパターンに関する情報を提示する。
【0051】
本実施形態では、一例として、設計エリアに含まれる電柱の本数を数十本程度(最大本数:100本)であるもの仮定し、建物の棟数を百数十棟程度(最大棟数:200棟)であるものと仮定して説明する。
【0052】
また、本実施形態では、基地局は電柱に設置されるものとし、端末局は建物の壁面に設置されるものとする。一般的に、建物の壁面において、端末局を設置可能な位置は複数存在するが、本実施形態では説明を簡単にするため、建物の(基地局方向側に向く)壁面の中央の位置(重心地点)の1か所であるものと仮定する。これにより、設計エリア内に存在する基地局の設置候補位置の個数は電柱の本数(すなわち、数十本)に相当し、設計エリア内に存在する端末局の設置候補位置の個数は建物の棟数(すなわち、百数十棟)となる。
【0053】
図4は、本発明の第1の実施形態における設計エリアを示す模式図である。図4に示されるように、本実施形態では、設計エリアは、半径D=200[m]の円内のエリアであるものとする。この200[m]という距離は、一般的なミリ波の通信距離に相当する。
【0054】
図4に示される設計エリアでは、基地局の設置候補位置(電柱)が「○」の印で示され、端末局の設置候補位置(建物の壁面)が「×」の印で示されている。図4においては一部のみしか示されていないが、実際には前述の通り、基地局の設置候補位置は100箇所存在し、端末局の設置候補位置は200箇所存在するものとする。半径D=200[m]のエリアにおいて100本の電柱を設置する場合、およそ40~50[m]おきに電柱を設置できることになり、一般的な電柱の設置間隔とすることができる。
【0055】
この場合、設計エリア内のある1つの基地局の設置候補位置と、全ての端末局の設置候補位置との組合せパターン数は、二項定理を用いることにより、以下の(1)式によって表すことができる。
【0056】
+・・・++・・・+n-1=2 ・・・(1)
【0057】
したがって、設計エリア内の全ての基地局の設置候補位置と、全ての端末局の設置候補位置との組合せパターン数は、上記の(1)式で求められた値に対して基地局の総数を乗算することにより、以下の(2)式によって表すことができる。
【0058】
(組合せパターン数)=m×2 ・・・(2)
【0059】
(2)式のm及びnの値をそれぞれ、前述の基地局の設置候補位置の個数(電柱の本数)100とし、端末局の設置候補位置の個数(建物の棟数)200とした場合、組合せパターン数は膨大な数となってしまう。仮に、基地局の設置候補位置の個数と端末局の設置候補位置の個数とがそれぞれ上記の5分の1の個数であったとしても(すなわち、m=20,n=40であったとしても)、組合せパターン数は以下の(3)式で示されるように約22兆通りとなる。
【0060】
(組合せパターン数)=20×240
=21,990,232,555,520 ・・・(3)
【0061】
したがって、これでもまだ、両局間の見通し判定や遮蔽率の算出をするためには、汎用的なPC等の計算リソースでは、現実的な処理時間で完了させることが困難である。
【0062】
ただし、上記の(1)式は、ある基地局に対して無線通信接続する端末局の個数には特に制約条件が設けられていない場合を表わしている。しかしながら、一般的には、通信可能となる基地局から見た端末局の方向に基づいて、あるいは、ある1つの基地局で使用される周波数チャネルの最大数等に基づいて、ある基地局に対して無線通信接続する端末局の個数には制約条件が設けられている。すなわち、一般的に、ある1つの基地局と無線通信することができる端末局の最大数には上限がある。
【0063】
そのため、上記の(1)式において、kの値をその最大数(例えば、周波数チャネル数)以下とする制約条件を設けるようにしてもよい。これにより、基地局の設置候補位置と端末局の設置候補位置との組合せパターン数を削減することができる。
【0064】
上記の(1)式において、ある1つの基地局から端末局の接続数をk以下とした場合、設計エリア内のある1つの基地局の設置候補位置と、全ての端末局の設置候補位置との組合せパターン数は、以下の(4)式によって表すことができる。
【0065】
(組合せパターン数)=+・・・+
=2-(k+1+・・・+n-1) ・・・(4)
【0066】
したがって、設計エリア内の全ての基地局の設置候補位置と、全ての端末局の設置候補位置との組合せパターン数は、上記の(4)式で求められた値に対して基地局の総数を乗算することにより、以下の(5)式によって表すことができる。
【0067】
(組合せパターン数)=m×(+・・・+
=m×2-m×(k+1+・・・+n-1) ・・・(5)
【0068】
このように、前述の(2)式によって求められる組合せパターン数と比べ、制約条件が課されることにより組合せパターン数がさらに削減される。
【0069】
図5は、制約条件を設けることによる組合せパターンの削減を説明するための模式図である。図5は、一例として、1つの基地局が通信接続することができる端末局の最大数が3である場合を表している。これに対し、図6は、制約条件を設けない場合における組合せパターンを説明するための模式図である。図5及び図6に示される地図データ(住宅地図)では、基地局の設置候補位置となる電柱の位置が「●」又は「○」の印で示され、端末局の設置候補位置となる建物の中央の位置が「×」の印で示されている。また、図5においては、「●」の印は、基地局として選択された電柱の位置を表す。また、「○」の印は、基地局として選択されなかった電柱の位置を表す。そして、「●」印の電柱に設置された基地局と「×」印の電柱に設置された基地局とが無線通信接続する様子が、実線又は破線で示されている。実線は、後述される図6と同じ基地局及び端末局での無線通信接続を示す。
【0070】
図5の基地局数(49ヵ所)に比べると、図6では、制約条件がないため、より少ない基地局数(18ヵ所)で端末局を収容できている。しかしながら図6では、基地局が配備されない電柱が多く残されている。なお、制約条件がない場合には、図6に示される基地局の選択パターンとは異なる、様々な基地局の選択パターンでの端末局の収容が考えられる。このように、ある1つの基地局と接続可能な端末局の個数に制約条件が課されることにより、端末局を収容するために必要となる基地局の個数がより多くなる。しかしながら、この場合、基地局の選択パターンは削減される。そのため、結果的に、基地局の設置候補位置と端末局の設置候補位置との組合せのパターン数は、(2)式の値から(5)式の値へと削減される。
【0071】
以下、設計エリアをより小さな複数のエリア(以下、「小エリア」という。)に分けて置局設計を行う場合について説明する。
図7は、設計エリアを小エリアに分けて置局設計を行う場合の一例を示す模式図である。図7に示される破線の円(半径D=200[m])は、先の図4に示される設計エリアに相当する。ここでは、図7に示される設計エリアを、半径d=50[m]の円である複数の小エリアに分けて置局設計を行う場合について説明する。
【0072】
なお、図4と同様、図7に示される設計エリアでは、基地局の設置候補位置(電柱)が「○」の印で示され、端末局の設置候補位置(建物の壁面)が「×」の印で示されている。図7においては一部のみしか示されていないが、実際には前述の通り、基地局の設置候補位置は100箇所存在し、端末局の設置候補位置は200箇所存在するものとする。
【0073】
図7に示されるように、半径d=50[m]の円を小エリアとし、小エリアを隙間なく並べて半径D=200[m]の設計エリア全てを覆うようにする。隙間なく並べるためには、隣り合う小エリア同士を重ねて並べる必要がある。そのため、図7に示されるように、半径d=50[m]の小エリアが81個(=9×9)必要となる。
【0074】
また、小エリアの半径は設計エリアの半径の4分の1であるため、小エリアの面積は設計エリアの面積の16分の1である。そのため、仮に、設計エリア内の基地局の設置候補位置(電柱)と端末局の設置候補位置(建物)とが均一に分布しているとするならば、1つの小エリア内に存在する基地局の設置候補位置(電柱)及び端末局の設置候補位置(建物)の個数は、それぞれm’=6.25(≒100÷16)及びn’=12.5(≒200÷16)となる。
【0075】
このように、小エリアの個数:81ヵ所に対し、上記のm’=6.25及びn’=13(≒12.5)を前述の(2)式に当てはめると、全ての小エリア内における、全ての基地局の設置候補位置と全ての端末局の設置候補位置との組合せパターン数は、以下の(6)式によって表すことができる。
【0076】
(組合せパターン数)=81×6.25×213
=506.25×8,192
=4,147,200 ・・・(6)
【0077】
このように(6)式によって示される、設計エリアを小エリアに分けて置局設計を行う場合における組合せパターン数である約415万通りは、先の式(3)によって示される、設計エリアを小エリアに分けずに置局設計を行う場合における組合せパターン数である約22兆通りに対して、凡そ530万分の1未満である。このように、設計エリアを小エリアに分けて置局設計を行うことにより、組合せパターン数を大幅に削減することができる。
【0078】
但し、約415万通りの組合せパターン数は、上記において一例として挙げた、通信可否の判定処理を現実的な処理時間で完了させることが可能な組合せパターン数である50万通り未満を満たしていない。よってさらに半径の短い小エリアを用いて置局設計を行うことが考えられる。
【0079】
図8及び図9は、設計エリアを小エリアに分けて置局設計を行う場合の一例を示す模式図である。なお、図4と同様、図8及び図9に示される設計エリアでは、基地局の設置候補位置(電柱)が「○」の印で示され、端末局の設置候補位置(建物の壁面)が「×」の印で示されている。図7においては一部のみしか示されていないが、実際には前述の通り、基地局の設置候補位置は100箇所存在し、端末局の設置候補位置は200箇所存在するものとする。
【0080】
図8に示される破線の円(半径D=200[m])は、先の図4に示される設計エリアに相当する。図8は、設計エリアを半径d=40[m]の円である複数の小エリアに分けて置局設計を行う場合を示すものである。図8に示されるように、半径d=40[m]の円を小エリアとし、小エリアを隙間なく並べて半径D=200[m]の設計エリア全てを覆うようにする。隙間なく並べるためには、隣り合う小エリア同士を重ねて並べる必要がある。そのため、図8に示されるように、半径d=40[m]の小エリアが121個(=11×11)必要となる。
【0081】
また、小エリアの半径は設計エリアの半径の5分の1であるため、小エリアの面積は設計エリアの面積の25分の1である。そのため、仮に、設計エリア内の基地局の設置候補位置(電柱)と端末局の設置候補位置(建物)とが均一に分布しているとするならば、1つの小エリア内に存在する基地局の設置候補位置(電柱)及び端末局の設置候補位置(建物)の個数は、それぞれm”=4(=100÷25)及びn”=8(=200÷25)となる。
【0082】
このように、小エリアの個数:121ヵ所に対し、上記のm”=4及びn”=8を前述の(2)式に当てはめると、全ての小エリア内における、全ての基地局の設置候補位置と全ての端末局の設置候補位置との組合せパターン数は、以下の(7)式によって表すことができる。
【0083】
(組合せパターン数)=121×4×2
=484×256
=123,904 ・・・(7)
【0084】
このように(7)式によって示される、設計エリアを小エリアに分けて置局設計を行う場合における組合せパターン数である約12万通りは、上記において一例として挙げた、通信可否の判定処理を現実的な処理時間で完了させることが可能な組合せパターン数である50万通り未満を満たしている。
【0085】
しかしながら、小エリアをより小さく設定するほど、基地局の設置候補位置と端末局の設置候補位置がより近い位置に存在し、見通し判定や遮蔽率の算出の結果が良好な組合せパターンであるにも関わらず、見落とされるケースが増加することが想定される。したがって、上記において一例として挙げた、通信可否の判定処理を現実的な処理時間で完了させることが可能な組合せパターン数である50万通りにより近い組合せパターン数となるように、小エリアの半径を調整することが考えられる。
【0086】
図9に示される破線の円(半径D=200[m])は、先の図4に示される設計エリアに相当する。図9は、設計エリアを半径d=44.4[m]の円である複数の小エリアに分けて置局設計を行う場合を示すものである。図9に示されるように、半径d=44.4[m]の円を小エリアとし、小エリアを隙間なく並べて半径D=200[m]の設計エリア全てを覆うようにする。隙間なく並べるためには、隣り合う小エリア同士を重ねて並べる必要がある。そのため、図8に示されるように、半径d=44.4[m]の小エリアが100個(=10×10)必要となる。
【0087】
また、小エリアの半径は設計エリアの半径の約9分の2であるため、小エリアの面積は設計エリアの面積の約81分の4である。そのため、仮に、設計エリア内の基地局の設置候補位置(電柱)と端末局の設置候補位置(建物)とが均一に分布しているとするならば、1つの小エリア内に存在する基地局の設置候補位置(電柱)及び端末局の設置候補位置(建物)の個数は、それぞれm”’=4.94(≒100÷81×4)及びn”’=10(≒200÷81×4)となる。
【0088】
このように、小エリアの個数:100ヵ所に対し、上記のm”’=4.94及びn”’=10を前述の(2)式に当てはめると、全ての小エリア内における、全ての基地局の設置候補位置と全ての端末局の設置候補位置との組合せパターン数は、以下の(8)式によって表すことができる。
【0089】
(組合せパターン数)=100×4.94×210
=494×1024
=505,856 ・・・(8)
【0090】
このように(8)式によって示される、設計エリアを小エリアに分けて置局設計を行う場合における組合せパターン数である約50万通りは、上記において一例として挙げた、通信可否の判定処理を現実的な処理時間で完了させることが可能な組合せパターン数の上限である50万通りに相当する。このように、小エリアの半径を調整することで、現実的な計算処理時間内でより効果的な置局設計を行えるようにすることができる。
【0091】
ここで、図7図9に示されるように複数の小エリアが重畳するように並べられることから、(6)式、(7)式、及び(8)式によって算出された組合せパターンには、同一の組合せパターンが重複してカウントされていることがある。この重複したカウントを適切に削除することによって、組合せパターンはさらに削減される。
【0092】
以下、置局設計支援装置1の組合せパターンリスト作成における動作の一例について説明する。
図10は、本発明の第1の実施以形態における置局設計支援装置1の組合せパターンリスト作成の動作を示すフローチャートである。
【0093】
エリア分割部171は、設計エリア(例えば、半径200[m]の円)よりも狭いエリアとなる小エリアの大きさ(例えば半径50[m]の円)を設定する(ステップS101)。エリア分割部171は、設計エリアを複数の小エリアで埋め尽くすように小エリアの位置を設定する(ステップS102)。ここで注意点は、隣り合う小エリアが互いに重なり合い十分な重複を持つように設定される。組合せパターン抽出部172は、小エリアごとに、基地局の設置候補位置(電柱)と端末局の設置候補位置(建物)との組合せパターンのリストである組合せパターンリストを生成する(ステップS103)。組合せパターン抽出部172は、生成された組合せパターンリストを組合せパターンリスト記憶部18に記録する。
【0094】
組合せパターン抽出部172は、全ての小エリアについて組合せパターンリストの生成が完了したか否かを判定する(ステップS104)。組合せパターンリストの生成していない小エリアが存在する場合(ステップS104・NO)、重複パターン削除部173は、小エリアごとに生成された組合せパターンリストの間で重複している組合せパターンを検出する。重複パターン削除部173は、重複している組合せパターンについては、1つだけ残して、その他を削除する(ステップS105)。その後、ステップS103に戻る。
【0095】
一方、全ての小エリアについて組合せパターンリストの生成が完了した場合(ステップS104・YES)、既に生成された組合せパターンリスト内に重複する組合せパターンが存在するか否かを判定する(ステップS106)。既に生成された組合せパターンリスト内に重複する組合せパターンが存在する場合(ステップS106・YES)、重複パターン削除部173は、重複している組合せパターンについては、1つだけ残して、その他を削除する(ステップS107)。その後、ステップS106に戻る。
【0096】
既に生成された組合せパターンリスト内に重複する組合せパターンが存在しない場合(ステップS106・NO)、置局設計支援装置1は、生成された組合せパターンリストを出力する。例えば、置局設計支援装置1は、生成された組合せパターンリストを表示部(不図示)に表示させることにより、ユーザに対して提示する。
以上で、図10のフローチャートが示す置局設計支援装置1の動作が終了する。
【0097】
以上説明したように、第1の実施形態における置局設計支援装置1によれば、設計エリア内に、例えば、百箇所程度の基地局の設置候補位置と、百数十箇所程度の端末局の設置候補位置とが存在する場合において、適切な組合せパターンの提示を行うことができる。仮に、このような設計エリア内の、全ての基地局の設置候補位置と全ての端末局の設置候補位置との全ての組合せパターンを評価対象とするならば、先述の通り、組合せパターン数は数十兆規模の数になる。そのため、この場合、各組合せパターンについて見通し判定や遮蔽率の算出を現実的な計算時間で行うことが困難となる。
【0098】
第1の実施形態における置局設計支援装置1によれば、設計エリアを複数の小エリアに分けて、小エリアごとに組合せパターンリスト作成するため、組合せパターン数を大幅に削減することができる。これにより、置局設計支援装置1は、見通し判定や遮蔽率の算出を現実的な計算時間で行うことが可能な程度(例えば、50万通り未満)に組合せパターン数を削減することができる。
【0099】
さらに、第1の実施形態における置局設計支援装置1は、複数の小エリアを、重畳を許しつつ、設計エリア全体を埋め尽くすように配置させる。これにより、置局設計支援装置1は、隣り合う小エリアの境界を跨った位置関係となる組合せパターンであって、見通し判定や遮蔽率の算出の結果が良好な組合せパターンが見落とされることを削減することができる。
以上のことから、本実施形態における置局設計支援装置1は、現実的な計算処理時間内でより効果的な置局設計を行えるようにすることができる。
【0100】
(第1の実施形態の変形例)
上述した第1の実施形態では、置局設計支援装置1は、円形の複数の小エリアによって、重畳を許しつつ、設計エリアを埋め尽くすように小エリアを設定する構成であった。しかしながら、このような構成に限られるものではなく、小エリアの形状は円形でなくても構わない。
【0101】
例えば図11は、置局設計支援装置1が矩形(正方形)の複数の小エリアを用いる場合を示す模式図である。例えば、図11に示されるように、正方形の一辺の長さの半分(図11では、50[m])を単位として縦と横とにずらしながら小エリアを並べるようにして、重畳を許しつつ、複数の小エリアで設計エリアを埋め尽くすようにすればよい。
【0102】
また、例えば図12は、置局設計支援装置1が六角形(正六角形)の複数の小エリアを用いる場合を示す模式図である。例えば、図12に示されるように、正六角形の一辺の長さ(図12では、50[m])を単位として縦と横とにずらしながら小エリアを並べるようにして、重畳を許しつつ、複数の小エリアで設計エリアを埋め尽くすようにすればよい。
【0103】
(第2の実施形態)
前述の第1の実施形態では、置局設計支援装置1が、設計エリアに対して、同一形状の複数の小エリアを等間隔で整列させるにように配置する場合について説明した。しかしながら、
一般的に、基地局の設置候補位置となる電柱は道路の脇に沿って建てられていることが多く、端末の設置候補位置となる建物の壁面は道路に面していることが多い。
【0104】
そのため、電柱が建てられている道路区間と同一の道路区間に面する建物の壁面とは、見通しがあり、遮蔽率も低いことが多いと考えられる。一方、電柱が建てられている道路区間と異なる道路区間に面する建物の壁面とは、見通しがなく、遮蔽率も高いことが多いと考えられる。
なお、ここでいう道路区間とは、ある道路において(曲がったりせずに)見通しがある区間のことをいう。
【0105】
以下に説明する第2の実施形態における置局設計支援装置1は、異なる道路区間に存在するため見通しがなく遮蔽率も高いと想定される、基地局の設置候補位置(電柱)と端末局の設置候補位置(建物)との組合せパターンを、予め除外することができる。置局設計支援装置1は、このよう制約条件を設けることで組合せのパターン数を削減することができる。
【0106】
本実施形態における置局設計支援装置1は、地図データに含まれる道路等の情報を用いて、設計エリアを埋め尽くす複数の小エリアを設定する。
図13は、置局設計支援装置1が道路区間に基づく複数の小エリアを用いる場合を示す模式図である。
【0107】
前述の第1の実施形態で説明したように、設計エリア内に存在する、全ての基地局設置位置の候補(すなわち、電柱)と全ての端末局設置位置の候補(すなわち、建物の壁面)との全ての組合せパターンに対して見通し判定や遮蔽率の算出処理を行うならば、膨大な計算量となる。そのため、組合せパターンの個数を現実的な計算処理時間内で処理可能な個数にまで削減する必要がある。
【0108】
前述の第1の実施形態で示した図7図9等と同様に、第2の実施形態においても、一例として400[m]四方のエリアを設計エリアとして考える。第1の実施形態と同様に、図13では、基地局の設置候補位置(電柱)が「○」の印で示され、端末局の設置候補位置(建物の壁面)が「×」の印で示されている。
【0109】
仮に、図13に示される住宅エリアを設計エリアとした場合、この設計エリア内に存在する全ての基地局の設置候補位置(電柱)と全ての端末局の設置候補位置(建物)との組合せパターン数は、以下の(9)式によって求められる値(約1兆通り)となる。このように、組合せパターン数は、通信可否の判定処理を現実的な処理時間で完了させることが可能な組合せパターン数(例えば、50万通り)を超過する。
【0110】
(組合せパターン数)=16×236
=16×68,719,476,736
=1,099,511,627,776 ・・・(9)
【0111】
なお、上記の(9)式は、前述の(2)式に対し、図13に示される基地局の設置候補位置(電柱)の個数と端末局の設置候補位置(建物)の個数である、m=16及びn=36をそれぞれ当てはめたものである。
【0112】
本実施形態における置局設計支援装置1は、地図データを用いて道路区間ごとに小エリアを設定する。置局設計支援装置1は、設定された小エリアごとに、基地局の設置候補位置(例えば、電柱)と端末局の設置候補位置(例えば、建物の壁面)との組合せパターンリストを生成する。
【0113】
なお、置局設計支援装置1は、例えば曲がった道路においては、見通しがある区間を1つの道路区間とするように道路を区切ることによって道路区間を設定する。また、例えば長い直線の道路など、遠くまで見通しがある道路である場合には、例えば、200[m])の区間を1つの道路区間とするように道路を区切ることによって道路区間を設定する。この200[m]という距離は、ミリ波の電波を用いて十分に無線通信を行うことが可能となる上限の距離である。
【0114】
図13に示されるように、例えば置局設計支援装置1は、設計エリア内の道路を、道路区間A、道路区間B、道路区間C、…、道路区間G、道路区間Hの8つの道路区間に切り分ける。置局設計支援装置1は、これら8つの道路区間ごとに小エリアを設定する。図13においては、小エリアは実線の楕円形で示されている。置局設計支援装置1は、設計エリア全体が埋め尽くされるように、重畳を許しつつ、8つの小エリアを配置する。
【0115】
例えば、図13に示される住宅エリア(設計エリア)において、道路区間Aを含む小エリアには、基地局の設置候補位置である電柱が3本建てられており、端末局の設置候補位置である建物が8棟建てられている。これらの数字(m=3,n=8)を前述の(2)式に当てはめることで、道路区間Aを含む小エリアにおける組合せパターン数は、以下の(10)式により768通りとなる。
【0116】
(組合せパターン数)=3×2
=3×256
=768 ・・・(10)
【0117】
このように(10)式によって示される、道路区間Aを含む小エリアの組合せパターン数である768通りは、先の式(9)によって示される、設計エリアを小エリアに分けずに置局設計を行う場合における組合せパターン数である約1兆通りに対して、凡そ14億分の1未満である。
【0118】
同様に、例えば、図13に示される住宅エリア(設計エリア)において、道路区間Bを含む小エリアには、基地局の設置候補位置である電柱が4本建てられており、端末局の設置候補位置である建物が7棟建てられている。これらの数字(m=4,n=7)を前述の(2)式に当てはめることで、道路区間Bを含む小エリアにおける組合せパターン数は、以下の(11)式により512通りとなる。
【0119】
(組合せパターン数)=4×2
=4×128
=512 ・・・(11)
【0120】
このように(11)式によって示される、道路区間Bを含む小エリアの組合せパターン数である512通りは、先の式(9)によって示される、設計エリアを小エリアに分けずに置局設計を行う場合における組合せパターン数である約1兆通りに対して、凡そ21億分の1未満である。
【0121】
同様に、例えば、図13に示される住宅エリア(設計エリア)において、道路区間Hを含む小エリアには、基地局の設置候補位置である電柱が3本建てられており、端末局の設置候補位置である建物が7棟建てられている。これらの数字(m=3,n=7)を前述の(2)式に当てはめることで、道路区間Hを含む小エリアにおける組合せパターン数は、以下の(12)式により192通りとなる。
【0122】
(組合せパターン数)=3×2
=3×128
=384 ・・・(12)
【0123】
このように(12)式によって示される、道路区間Hを含む小エリアの組合せパターン数である384通りは、先の式(9)によって示される、設計エリアを小エリアに分けずに置局設計を行う場合における組合せパターン数である約1兆通りに対して、凡そ29億分の1未満である。
【0124】
このように、道路区間Aを含む小エリアから道路区間Hを含む小エリアまでの8つの小エリアにおける組合せパターン数は、上記のようにそれぞれ算出することができる。これら8つの小エリアの組合せパターン数を合計した数は、先の式(9)によって示される、設計エリアを小エリアに分けずに置局設計を行う場合における組合せパターン数である約1兆通りに対して、少なくとも約10億分の1未満となる。このように、設計エリアを道路区間に基づく小エリアに分けて置局設計を行うことにより、組合せパターン数を大幅に削減することができる。
【0125】
以下、置局設計支援装置1の組合せパターンリスト作成における動作の一例について説明する。
図14は、本発明の第2の実施以形態における置局設計支援装置1の組合せパターンリスト作成の動作を示すフローチャートである。
【0126】
エリア分割部171は、地図データに基づいて、設計エリアに含まれる道路を複数の道路区間に区分けする(ステップS201)。例えば、エリア分割部171は、道路を、直線毎に、通信可能な距離内で区分けする。なお、例えば、エリア分割部171は、カーブの区間については見通し毎に区分けする。但し、注意点として、道路区間の区分けは、隣接する道路区間の境界が相互に入り込むようにして、隣接する道路区間どうしが重なり合うことを許容する。
【0127】
エリア分割部171は、地図データ及び設備データに基づいて、各道路区間を含む小エリアごとに電柱と建物とをグループ分けする(ステップS202)。なお、以下の説明において、ある道路区間を含む小エリアのことを単に「道路区間」ということがある。
エリア分割部171は、設計エリア内の全ての道路区間についてグループ分けを行ったか否かを判定する(ステップS203)。
【0128】
設計エリア内にグループ分けを行っていない道路区間がある場合(ステップS203・NO)、組合せパターン抽出部172は、グループごとに、電柱(基地局の設置候補位置)と建物(端末局の設置候補位置)との組合せパターンを抽出する(ステップS204)。組合せパターン抽出部172は、抽出された組合せパターンのリストである組合せパターンリストを生成する(ステップS205)。組合せパターン抽出部172は、生成された組合せパターンリストを組合せパターンリスト記憶部18に記録する。
【0129】
重複パターン削除部173は、異なる小エリアの組合せパターンリストの間で同一の(重複した)組合せパターンがあるか否かを判定する(ステップS206)。すなわち、この判定では、異なるグループにおいて同一の電柱と同一の建物とにそれぞれ基地局と端末局とを設置するような重複した組合せパターンの有無を確認している。
【0130】
異なる小エリアの組合せパターンリストの間で同一の(重複した)組合せパターンがある場合(ステップS206・YES)、重複パターン削除部173は、重複している組合せパターンについては、1つだけ残して、その他を削除する(ステップS207)。その後、ステップS206へ戻る。
【0131】
一方、異なる小エリアの組合せパターンリストの間で同一の(重複した)組合せパターンがない場合(ステップS206・NO)、ステップS203へ戻り、エリア分割部171は、設計エリア内の全ての道路区間についてグループ分けを行ったか否かを判定する。設計エリア内の全ての道路区間についてグループ分けを行った場合(ステップS203・YES)、置局設計支援装置1は、生成された組合せパターンリストを出力する。例えば、置局設計支援装置1は、生成された組合せパターンリストを表示部(不図示)に表示させることにより、ユーザに対して提示する(ステップS208)。
以上で、図14のフローチャートが示す置局設計支援装置1の動作が終了する。
【0132】
以上説明したように、第2の実施形態における置局設計支援装置1によれば、設計エリア内に、複数の基地局の設置候補位置と、複数の端末局の設置候補位置とが存在する場合において、適切な組合せパターンの提示を行うことができる。仮に、このような設計エリア内の、全ての基地局の設置候補位置と全ての端末局の設置候補位置との全ての組合せパターンを評価対象とするならば、先述の通り、組合せパターン数は例えば1兆を超える規模の数になる。そのため、この場合、各組合せパターンについて見通し判定や遮蔽率の算出を現実的な計算時間で行うことが困難となる。
【0133】
第2の実施形態における置局設計支援装置1は、地図データに基づいて、設計エリアに含まれる道路を複数の道路区間に区分けし、道路区間ごとに小エリアを設定する。置局設計支援装置1は、小エリアごとに組合せパターンリスト作成するため、組合せパターン数を大幅に削減することができる。これにより、置局設計支援装置1は、見通し判定や遮蔽率の算出を現実的な計算時間で行うことが可能な程度(例えば、50万通り未満)に組合せパターン数を削減することができる。
【0134】
また、第2の実施形態における置局設計支援装置1は、道路区間ごとに小エリアを設定することから、基地局の設置候補位置と端末設置候補位置との間における見通し判定および遮蔽率算出の結果が良好となり難い組合せパターンを除外するように組合せパターンリストを生成することができる。なぜならば、前述の通り、電柱が建てられている道路区間と異なる道路区間に面する建物の壁面とは、見通しがなく、遮蔽率も高いことが多いと考えられるからである。
【0135】
さらに、第2の実施形態における置局設計支援装置1は、複数の小エリアを、重畳を許しつつ、設計エリア全体を埋め尽くすように配置させる。これにより、置局設計支援装置1は、隣り合う小エリアの境界を跨った位置関係となる組合せパターンであって、見通し判定や遮蔽率の算出の結果が良好な組合せパターンが見落とされることを削減することができる。
【0136】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、置局設計支援装置1は、ユーザによって指定される設計エリアと端末局の設置位置とに基づいて、推奨される基地局の設置位置(以下、「推奨設置位置」という。)をユーザに対して提示する構成を有する。複数の端末局が指定される場合、端末局が指定された位置によっては、見通し判定や遮蔽率の算出処理を行う組合せパターンが膨大に(例えば、数百億通りに)なることがある。本実施形態における置局設計支援装置1は、このような組合せパターンを削減することができる。
【0137】
以下、第3の実施形態における置局設計支援装置1の動作の一例について説明する。
図15は、本発明の第3の実施形態における置局設計支援装置1の動作を示すフローチャートである。
【0138】
まず、設計エリア指定部2は、ユーザによる指定入力に基づいて設計エリアを指定する(ステップS301)。指定される設計エリアは、例えば、図16左側に示されるような地図データ記憶部11に記憶された地図データにおける特定のエリアである。
【0139】
次に、基地局候補位置抽出部3は、設備データ記憶部12から設備データを取得し、設計エリア内の、電柱などを含む屋外の通信設備に関する情報を抽出する(ステップS302)。ここで抽出される情報とは、例えば、図16右側に示されるような情報である。図16右側に示されるように、当該情報には、例えば、指定された設計エリア内の、電柱を識別する電柱番号、電柱の位置及び種類等を示す情報が含まれる。
【0140】
点群データ処理部6は、電柱などを含む屋外の通信設備に関する情報に基づいて、例えば図17に示されるように、指定された設計エリアの地図上に、ステップS302において抽出された情報に基づく基地局の設置候補位置(電柱)を例えば表示部(不図示)に表示させる。なお、図17に示される地図において、電柱の本数は94本で、建物の棟数は230棟である。電柱は、「〇」印で表されている。
【0141】
点群データ処理部6は、ユーザによる指定入力に基づいて端末局の設置位置を指定する(ステップS303)。例えば、図18に示される地図において、端末局の設置位置は「×」印で表されている。点群データ処理部6は、指定された端末局の設置位置に基づいて、指定した端末局を中心にして、見通しありと判定される、あるいは所定の遮蔽率未満となる、基地局の設置候補位置(電柱)を抽出する(ステップS304)。図19に示される地図において、抽出された5つの基地局の設置候補位置(電柱)が「○」印で示されている。また、各々の基地局の設置候補位置を識別する符号(「A」、「B」、「C」、「D」、・・・)が示されている。
【0142】
推奨パターン特定部174は、基地局の推奨設置位置をユーザに対して提示する(ステップS305)。
以上で、図15のフローチャートが示す置局設計支援装置1の動作が終了する。
【0143】
以下に、基地局の推奨設置位置の2つの提示方法について説明する。
1つ目の提示方法は、最小の基地局数で端末局を収容するための基地局の推奨設置位置を導出するものである。この1つ目の提示方法では、置局設計支援装置1のユーザが、複数の端末局の設置位置を指定する場合が想定される。
【0144】
図20は、本発明の第3の実施形態における置局設計支援装置1が提示するリストの一例を示す図である。図20に示されるように、1つ目の提示方法では、設計エリアにおいて、基地局のいずれの設置候補位置に対しても見通しがないと判定される端末局の個数を最小にした上で、設計エリア内の端末局を収容するために必要とされる基地局数が最小となるような、基地局の推奨設置位置が提示される。
【0145】
図20に示されるリストにおいては、基地局のいずれの設置候補位置に対しても見通しがないと判定される端末局の個数の最小値は、16である。このうち、設計エリア内の端末局を収容するために必要とされる基地局数の最小値は、2である。この場合の、設計エリア内の端末局を収容するために必要とされる2つの基地局の組合せは、「A」と「D」、又は、「B」と「D」の2通り存在する。よって、この2通りの基地局の組合せに対して、1位の評価順位が付けられている。
【0146】
2つ目の提示方法は、複数の基地局には接続することができない端末局の個数を最小になるように、基地局の推奨設置位置を導出するものである。言い換えれば、この2つ目の提示方法は、ユーザによって指定された複数の端末局の各々がなるべく幾つもの基地局と接続することができるような、基地局の推奨設置位置を提示するものである。
【0147】
図21は、本発明の第3の実施形態における置局設計支援装置1が提示するリストの一例を示す図である。図21に示されるように、2つ目の提示方法では、設計エリアにおいて、基地局のいずれの設置候補位置に対しても見通しがないと判定される端末局の個数を最小にした上で、さらに、複数の基地局には接続することができない端末局の個数を最小にした上で、設計エリア内の端末局を収容するために必要とされる基地局数が最小となるような、基地局の推奨設置位置が提示される。
【0148】
図21に示されるリストにおいては、基地局のいずれの設置候補位置に対しても見通しがないと判定される端末局の個数の最小値は、16である。このうち、複数の基地局には接続することができない端末局の最小値は、1である。さらに、このうち、設計エリア内の端末局を収容するために必要とされる基地局数の最小値は、4である。この場合の、設計エリア内の端末局を収容するために必要とされる4つの基地局の組合せは、「A」と「B」と「C」と「D」の1通りのみ存在する。よって、この1通りの基地局の組合せに対して、1位の評価順位が付けられている。
【0149】
基地局の推奨設置位置を導出するためには、設計エリアに基地局の設置候補位置となる電柱の個数、および(ユーザによって指定される)端末局の個数が重要になる。これらの個数が多すぎると、基地局の設置候補位置と端末局の設置位置との組合せパターン数が、見通しの判定や遮蔽率の算出を現実的な時間内に行うことができなくなるほどの膨大な数になる。
【0150】
以下、図22を参照しながら説明する。
以下、設計エリア内の基地局の設置候補位置(電柱)の個数m=100とし、ユーザによって指定された端末局の設置位置の個数n=5とする。これら5ヵ所に設置された端末局は、例えば33ヵ所の基地局に通信接続する可能性がある。なお、この33ヵ所という値は、設計エリア内に100ヵ所の基地局の設置候補位置が存在することから、少な目に見積もったとしてもこれらの3分の1程度の基地局に端末局が通信接続可能であるという想定に基づく予想値である。
【0151】
なお、実際には、5ヵ所の端末局が指定された場合、各端末局それぞれの位置、及び、これらの端末局ごとの周辺に存在する複数の基地局の位置による違いから、必ずしも各端末局に対し同数の基地局が選択される(すなわち、同数の組合せパターンが生成される)とは限らない。しかしながら、ここでは説明を簡単にするため、組合せのパターン数を大まかに見積もることとし、各端末局に対し同数の基地局が選択されるもの想定する。
【0152】
基地局の個数m=33、及び端末局の個数n=5は、両局間の無線通信距離が200[m]程度であるならば、前述の通り十分に想定できる数値である。これらの数字(m=33,n=5)を用いて、前述の(2)式に倣って組合せパターン数を算出すると、以下の(13)式により約430億通りとなる。なお、以下の(13)式では、基地局の個数mと端末局の個数nの位置が、(2)式とは逆となる。
【0153】
(組合せパターン数)=n×2
=5×233
=5×8,589,934,592
=42,949,672,960 ・・・(13)
【0154】
このように、端末局に対する基地局の設置候補位置が、設計エリア内の電柱の本数100本の3分の1として少なめに見積もり、33ヵ所であると想定したとしても、基地局と端末局との組合せパターン数は、約430億通りになる。この組合せパターン数は、例えば組合せパターン1組当たりの遮蔽率の算出時間に3秒を要すると仮定した場合、全ての組合せパターンを処理するためは、3583.3万時間(=1290億秒)が必要となる。これは、149.3万日に相当し、すなわち4000年を超える期間となる。
【0155】
なお、前述の第1の実施形態では、例えば、設計エリア(400[m]四方のエリアにある半径200[m]の円形のエリア)に対して、小エリア(半径44.4[m]の円形のエリア)を設定した。これにより、前述の計算では、組合せパターン数を約22兆通りから約50万通りへ削減することができた。
【0156】
しかしながら、実際には、用意できる計算リソースで、常に50万通りの組合せパターン数の見通し判定や遮蔽率の算出の処理を実施できるとは限らない(場合によっては、より少ない計算リソースしか用意ができないことも想定されるからである)。
そこで、以下、用意できる計算リソースに応じて組合せパターン数をより削減するため、小エリアの半径をより短くするように調整する方法について説明する。
【0157】
図23は、小エリアの半径の調整を示す図である。
図23は、上記の式(13)によって算定された組合せパターン数(約430億通り)を削減する方法を説明するための図である。ここでは、前述の図22に示される、端末局と基地局と間の無線通信距離が200[m]程度であるとの想定の下で設定された円形の検討範囲を調整する。具体的には、例えば図23に示される、ユーザによって指定された端末局の位置を中心とした円形の直径Dを、以下の(14)式で表す。
【0158】
=200-50×i ・・・(14)
【0159】
ここでi=0の場合には、図22に示される円形のエリアに相当し(図23に示される二点鎖線の円形エリアと同じ)、半径Dz=200[m]である。このエリアでは、前述の通り、約430億通りの組合せパターン数となる。そこで、組合せパターン数を、現実的な時間で処理可能な50万通り以下とするように調整する。
【0160】
置局設計支援装置1は、段階的にiの値を増加させる。これにより、段階的に、小エリアの半径が短くなり、組合せパターン数が減少する。
上記の(14)式において、第1段階としてi=1とするならば、円の半径Dz=150[m]となる。すなわち、図23において、二点鎖線の円形のエリアから、一点鎖線の円形のエリアへと縮小する。この第1段階では、端末局に対して無線通信可能な基地局の設置候補位置が、m=25ヵ所になると想定する。また、指定される端末局の個数については変わらず、n=5ヵ所であるものとする。これら、n=5、m=25との条件に基づき、組合せパターン数は、次の(15)式によって表される。
【0161】
(組合せパターン数)=n×2
=5×225
=5×33,554,432
=167,772,160 ・・・(15)
【0162】
このように、i=1の場合における組合せパターン数は、約1.7憶通りであり、現実的に処理可能な組合せパターン数となっていない。仮に、1組の組合せパターンに対する処理に要する時間が3[秒]であるならば、全ての(1.7億通りの)組合せパターンに対する処理に要する時間は5.0331億[秒]となり、すなわち、約16年の期間を要する。これは、上記の(13)式によって算出された約430億通り組合せパターン数を、256分の1に削減させるに留まるものである。
【0163】
上記の(14)式において、第2段階としてi=2とするならば、円の半径Dz=100[m]となる。すなわち、図23において、一点鎖線の円形のエリアから、実線の円形のエリアへと縮小する。この第2段階では、端末局に対して無線通信可能な基地局の設置候補位置が、m=16ヵ所になると想定する。また、指定される端末局の個数については変わらず、n=5ヵ所であるものとする。これら、n=5、m=16との条件に基づき、組合せパターン数は、次の(16)式によって表される。
【0164】
(組合せパターン数)=n×2
=5×216
=5×65,536
=327,680 ・・・(15)
【0165】
このように、i=2の場合における組合せパターン数は、約33万通りであり、現実的に処理可能な組合せパターン数となっている。これは、上記の(13)式によって算出された約430億通り組合せパターン数を、13万分の1に削減させるものである。このように、本実施形態によれば、組合せパターン数を、段階的に削減させて、所定の(現実的な計算時間内に処理可能な組合せパターン数である50万通り未満を満たすように調整することができる。
【0166】
図24は、本発明の第3の実施形態における置局設計支援装置1の動作を示すフローチャートである。
まず、設計エリア指定部2は、ユーザによる指定入力に基づいて設計エリアを指定する(ステップS401)。次に、点群データ処理部6は、ユーザによる指定入力に基づいて端末局の位置を指定する(ステップS402)。ここでは、なお、複数の端末局の指定も可能である。
【0167】
次に、点群データ処理部6は、端末局から無線通信可能な距離に位置する基地局を選択する(ステップS403)。組合せパターン抽出部172は、(複数の)端末局と、ステップS403において選択された基地局とから、組合せパターン数を算出する(ステップS404)。組合せパターン抽出部172は、算出された組合せパターン数が所定の値(例えば、50万通り)以下であるか否かを判定する(ステップS405)。
【0168】
組合せパターン数が所定の値を超える場合(ステップS405・NO)、組合せパターン抽出部172は、基地局を選ぶ端末局からの距離をより短くできるか否かを判定する(ステップS406)。基地局を選ぶ端末局からの距離をより短くできる場合(ステップS406・YES)、組合せパターン抽出部172は、端末局からより短くした距離にある基地局を選択する(ステップS407)。その後、ステップS404へ戻る。
【0169】
一方、基地局を選ぶ端末局からの距離をより短くできない場合(ステップS406・NO)、組合せパターン抽出部172は、指定された複数の端末局の一部の指定を削除する(ステップS408)。その後、ステップS403へ戻る。
【0170】
なお、図24のフローチャートには図示していないが、ステップS408において、指定された複数の端末局の一部削除では結果的に済まなくなる場合も想定される。すなわち、1つの端末局で、かつ距離を最も短くしたにもかかわらず、所定の組合せパターン数を超える場合がある。そのような場合は、置局設計支援装置1が、別途ユーザに対して提示するようにすることが考えられる。
【0171】
一方、上記のステップS405において、組合せパターン数が所定の値以下である場合(ステップS405・YES)、点群データ処理部6は、生成された組合せパターンリストに含まれる各組合せパターンについて、点群データを活用した見通しの判定処理、あるいは、遮蔽率の算出処理をそれぞれ実施する(ステップS409)。
以上で、図24のフローチャートが示す置局設計支援装置1の動作が終了する。
【0172】
以上説明したように、第3の実施形態における置局設計支援装置1によれば、設計エリア内に基地局の設置候補位置となる電柱が複数存在し、少なくとも1つの端末局の位置を任意の建物の壁面などに指定する場合において、適切な組合せパターンの提示を行うことができる。仮に、このような設計エリア内の、端末局から無線通信可能な距離に位置する全ての基地局の設置候補位置を選ぶならば、組合せパターン数は数百億の規模の数になる。そのため、この場合、各組合せパターンについて見通し判定や遮蔽率の算出を現実的な計算時間で行うことが困難となる。
【0173】
第3の実施形態における置局設計支援装置1は、端末局の設置位置から、選択対象となる基地局の設置候補位置までの距離を示す円形のエリアの半径を段階的に短くする。これにより、置局設計支援装置1は、組合せパターン数を段階的に削減していくことができる。これにより、置局設計支援装置1は、見通し判定や遮蔽率の算出を現実的な計算時間で行うことが可能な程度(例えば、50万通り未満)に組合せパターン数を削減するように、段階的に調整することができる。
【0174】
(第3の実施形態の変形例)
前述の第3の実施形態においては、置局設計支援装置1は、選択対象となる基地局の設置候補位置までの距離を示す円形のエリアの半径を段階的に短くすることにより、組合せパターン数を削減する構成であった。一方、第3の実施形態の変形例においては、置局設計支援装置1は、選択対象となる基地局の設置候補位置までの距離を示す円形のエリアの半径を段階的に長くしていくことにより、組合せパターン数が所望の値に近づくように調整する。
【0175】
図25は、小エリアの半径の調整を示す図である。
具体的には、例えば、置局設計支援装置1は、段階的にエリアの半径を長くしていく。これにより、組合せパターン数が段階的に増加していく。ある段階に置いて、現実的な計算時間で処理が可能である上限の組合せパターン数を超過した場合、置局設計支援装置1は、1つ前の段階において算出された組合せパターン数を最適なパターン数として決定する。そして、置局設計支援装置1は、1つ前の段階において生成された組合せパターンリストに含まれる各組合せパターンに対して、見通し判定や遮蔽率の算出の処理を行う。
【0176】
このように、第3の実施形態の変形例における置局設計支援装置1は、前述の第3の実施形態における置局設計支援装置1のように通信距離を段階的に短くして組合せパターン数を削減していくのとは逆に、最短の通信距離から順に長くして最適な組合パターン数を得られるように調整する。このように、最短の通信距離から段階的に対象とするエリアを拡張する構成とすることで、な構成を有することで、第3の実施形態の変形例における置局設計支援装置1は、前述の第3の実施形態と比べて、より少ない計算リソースで置局設計を行うことができる。
【0177】
この理由としては、対象とするエリアがより狭いほど組合せパターン数がより少ないためである。第3の実施形態の変形例における置局設計支援装置1は、組合せパターン数がより少ない場合から始めて、必要に応じて組合せパターン数を段階的に増加させていき、最適な組合せパターン数を得る。そのため、第3の実施形態の変形例における置局設計支援装置1は、最初の段階では多数である組合せパターン数から、必要に応じて組合せパターン数を段階的に減少させて最適なパターン数を得る前述の第3の実施形態よりも、大幅に計算リソースを少なくすることができる。
【0178】
上述した実施形態における置局設計支援装置1は、指定された設計エリアを、前記指定されたエリアより小さいエリアを示す小エリアであって、少なくとも一部の範囲が重畳する複数の前記小エリアに区分けするエリア分割部171と、前記小エリアごとに、前記小エリアに含まれる、基地局(第1無線局)の設置候補位置と端末局(第2無線局)の設置候補位置との組合せパターンを抽出し、組合せパターンリストを生成する組合せパターン抽出部172と、前記小エリアごとの前記組合せパターンリストの間で、重複する組合せパターンを削除する重複パターン削除部173と、前記重複する組合せパターンが削除された組合せパターンリストを出力する出力部とを備える。
【0179】
上記の構成を備えることにより、置局設計支援装置1は、組合せパターンを大幅に削減しつつ、隣接する2つの小エリアの境界を跨って存在する基地局の設置候補位置と端末局の設置候補位置との組合せパターンであっても評価対象外になり難くすることができる。これにより、置局設計支援装置1は、現実的な計算処理時間内でより効果的な置局設計を行うように支援することができる。
【0180】
なお、上記の第1から第3の実施形態において、基地局と端末局とが行う無線通信として、ミリ波無線を一例として示していたが、ミリ波無線通信以外の地上波デジタル通信、衛星電波による通信、UHF(Ultra High Frequency)を用いた通信であってもよい。
【0181】
上述した各実施形態における置局設計支援装置1をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0182】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0183】
点群データを活用し、無線の基地局と端末局を設置する場所を決める置局設計において、電柱など屋外設備に置く基地局から建物の壁面に設置する端末局までの見通し判定や遮蔽率の算出に適用できる。
【符号の説明】
【0184】
1…置局設計支援装置、2…設計エリア指定部、3…基地局候補位置抽出部、4…端末局候補位置抽出部、5…2次元見通し判定処理部、6…点群データ処理部、7…局数算出部、10…操作処理部、11…地図データ記憶部、12…設備データ記憶部、13…点群データ記憶部、15…2次元見通し判定結果記憶部、17…パターン数制御部、18…組合せパターンリスト記憶部、20…3次元候補位置選定部、23…3次元見通し判定処理部、24…遮蔽率算出部、171…エリア分割部、172…パターン抽出部、173…重複パターン削除部、174…推奨パターン特定部、800、801…ビル、810、811、812…住宅、821、826…電柱、830、834…基地局、840、844…端末局、850、851…局舎、900、901…光ファイバ
図1
図2
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