(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157027
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置および電源システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241029BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01L21/302 101C
H01L21/302 105A
H05H1/46 R
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024138389
(22)【出願日】2024-08-20
(62)【分割の表示】P 2021008470の分割
【原出願日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2020085140
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマス セドリック
(72)【発明者】
【氏名】李 士敬
(57)【要約】
【課題】プラズマエッチングの処理性能を向上させる。
【解決手段】プラズマ処理装置は、プラズマ処理チャンバと、基板支持部と、ソースRF生成部と、バイアスRF生成部と、を備える。基板支持部は、プラズマ処理チャンバ内に配置される。ソースRF生成部は、プラズマ処理チャンバに結合され、複数のソースサイクルを含むパルスソースRF信号を生成する。各ソースサイクルは、ソース稼働状態と、ソース未稼働状態とを有する。バイアスRF生成部は、基板支持部に結合され、パルスバイアスRF信号を生成する。パルスバイアスRF信号は、複数のソースサイクルと同じパルス周波数を有する複数のバイアスサイクルを有し、各バイアスサイクルは、バイアス稼働状態と、バイアス未稼働状態とを有する。各バイアスサイクルにおけるバイアス稼働状態への遷移タイミングは、対応するソースサイクルにおけるソース稼働状態への遷移タイミングに対して遅延する。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持部と、
前記プラズマ処理チャンバに結合され、前記プラズマ処理チャンバ内でプラズマを生成するためにソースRF信号を生成するよう構成されるソースRF生成部であり、前記ソースRF信号は、各サイクルの第1の期間にゼロ電力レベルを有し、各サイクルの前記第1の期間に続く第2の期間にゼロ電力レベルを有し、各サイクルの前記第2の期間に続く第3の期間にゼロ電力レベルより大きい第1のソース電力レベルを有し、各サイクルの前記第3の期間に続く第4の期間にゼロ電力レベルより大きく前記第1のソース電力レベルとは異なる第2のソース電力レベルを有し、各サイクルの前記第4の期間に続く第5の期間にゼロ電力レベルを有する、ソースRF生成部と、
前記基板支持部に結合され、バイアスRF信号を生成するよう構成されるバイアスRF生成部であり、前記バイアスRF信号は、前記第1の期間にゼロ電力レベルより大きい第1のバイアス電力レベルを有し、前記第2の期間及び前記第3の期間にゼロ電力レベルより大きく前記第1のバイアス電力レベルとは異なる第2のバイアス電力レベルを有し、前記第4の期間及び前記第5の期間にゼロ電力レベルを有する、バイアスRF生成部と
を備える、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第1のソース電力レベルは、前記第2のソース電力レベルより大きい、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記第1のバイアス電力レベルは、前記第2のバイアス電力レベルより小さい、請求項1又は請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第1のバイアス電力レベルは、前記第2のバイアス電力レベルより大きい、請求項1又は請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第1のソース電力レベルは、前記第2のソース電力レベルより小さい、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第1のバイアス電力レベルは、前記第2のバイアス電力レベルより小さい、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第1のバイアス電力レベルは、前記第2のバイアス電力レベルより大きい、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持部と、
前記プラズマ処理チャンバに結合され、前記プラズマ処理チャンバ内でプラズマを生成するためにソースRF信号を生成するよう構成されるソースRF生成部であり、前記ソースRF信号は、各サイクルの第1の期間にゼロ電力レベルを有し、各サイクルの前記第1の期間に続く第2の期間にゼロ電力レベルより大きい第1のソース電力レベルを有し、各サイクルの前記第2の期間に続く第3の期間にゼロ電力レベルを有する、ソースRF生成部と、
前記基板支持部に結合され、バイアスRF信号を生成するよう構成されるバイアスRF生成部であり、前記バイアスRF信号は、前記第1の期間及び前記第2の期間にゼロ電力レベルより大きい第1のバイアス電力レベルを有し、前記第3の期間にゼロ電力レベルを有する、バイアスRF生成部と
を備える、プラズマ処理装置。
【請求項9】
前記基板支持部は、前記バイアスRF生成部に電気的に接続される下部電極を含む、請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記プラズマ処理チャンバの上方に配置され、前記ソースRF生成部に電気的に接続されるアンテナをさらに備える、請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記基板支持部の上方に配置され、前記ソースRF生成部に電気的に接続される上部電極をさらに備える、請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
プラズマ処理装置で使用する電源システムであって、
ソースRF信号を生成するよう構成されるソースRF生成部であり、前記ソースRF信号は、各サイクルの第1の期間にゼロ電力レベルを有し、各サイクルの前記第1の期間に続く第2の期間にゼロ電力レベルを有し、各サイクルの前記第2の期間に続く第3の期間にゼロ電力レベルより大きい第1のソース電力レベルを有し、各サイクルの前記第3の期間に続く第4の期間にゼロ電力レベルより大きく前記第1のソース電力レベルとは異なる第2のソース電力レベルを有し、各サイクルの前記第4の期間に続く第5の期間にゼロ電力レベルを有する、ソースRF生成部と、
バイアスRF信号を生成するよう構成されるバイアスRF生成部であり、前記バイアスRF信号は、前記第1の期間にゼロ電力レベルより大きい第1のバイアス電力レベルを有し、前記第2の期間及び前記第3の期間にゼロ電力レベルより大きく前記第1のバイアス電力レベルとは異なる第2のバイアス電力レベルを有し、前記第4の期間及び前記第5の期間にゼロ電力レベルを有する、バイアスRF生成部と
を備える、電源システム。
【請求項13】
前記第1のソース電力レベルは、前記第2のソース電力レベルより大きい、請求項12に記載の電源システム。
【請求項14】
前記第1のバイアス電力レベルは、前記第2のバイアス電力レベルより小さい、請求項12又は請求項13に記載の電源システム。
【請求項15】
前記第1のバイアス電力レベルは、前記第2のバイアス電力レベルより大きい、請求項12又は請求項13に記載の電源システム。
【請求項16】
前記第1のソース電力レベルは、前記第2のソース電力レベルより小さい、請求項12に記載の電源システム。
【請求項17】
前記第1のバイアス電力レベルは、前記第2のバイアス電力レベルより小さい、請求項16に記載の電源システム。
【請求項18】
前記第1のバイアス電力レベルは、前記第2のバイアス電力レベルより大きい、請求項16に記載の電源システム。
【請求項19】
プラズマ処理装置で使用する電源システムであって、
ソースRF信号を生成するよう構成されるソースRF生成部であり、前記ソースRF信号は、各サイクルの第1の期間にゼロ電力レベルを有し、各サイクルの前記第1の期間に続く第2の期間にゼロ電力レベルより大きい第1のソース電力レベルを有し、各サイクルの前記第2の期間に続く第3の期間にゼロ電力レベルを有する、ソースRF生成部と、
バイアスRF信号を生成するよう構成されるバイアスRF生成部であり、前記バイアスRF信号は、前記第1の期間及び前記第2の期間にゼロ電力レベルより大きい第1のバイアス電力レベルを有し、前記第3の期間にゼロ電力レベルを有する、バイアスRF生成部と
を備える、電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、プラズマ処理装置および電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、誘導結合型プラズマ(Inductively Coupled Plasma: ICP、トランス結合型プラズマ(Transformer Coupled Plasma: TCP)とも呼ぶ。)を用いた装置においてRF(Radio Frequency)信号をパルス化する技術が開示されている。この特許文献1は、例えば、コイルに供給するソースRF信号とチャックに供給するバイアスRF信号とをパルスシーケンスが逆になるように同期させることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0040174号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマエッチングの処理性能を向上させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるプラズマ処理装置は、プラズマ処理チャンバと、基板支持部と、ソースRF生成部と、バイアスRF生成部と、を備える。基板支持部は、プラズマ処理チャンバ内に配置される。ソースRF生成部は、プラズマ処理チャンバに結合され、プラズマ処理チャンバ内でプラズマを生成するためにソースRF信号を生成するよう構成される。ソースRF信号は、各サイクルの第1の期間にゼロ電力レベルを有し、各サイクルの第1の期間に続く第2の期間にゼロ電力レベルを有し、各サイクルの第2の期間に続く第3の期間にゼロ電力レベルより大きい第1のソース電力レベルを有し、各サイクルの第3の期間に続く第4の期間にゼロ電力レベルより大きく第1のソース電力レベルとは異なる第2のソース電力レベルを有し、各サイクルの第4の期間に続く第5の期間にゼロ電力レベルを有する。バイアスRF生成部は、基板支持部に結合され、バイアスRF信号を生成するよう構成される。バイアスRF信号は、第1の期間にゼロ電力レベルより大きい第1のバイアス電力レベルを有し、第2の期間及び第3の期間にゼロ電力レベルより大きく第1のバイアス電力レベルとは異なる第2のバイアス電力レベルを有し、第4の期間及び第5の期間にゼロ電力レベルを有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、プラズマエッチングの処理性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係るプラズマ処理装置の構成の概念図である。
【
図2】
図2は、
図1のプラズマ処理装置の構成の一例を示す概略縦断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るプラズマ処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態に係るプラズマ処理により処理される基板の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るプラズマ処理において高周波(RF)電力供給に用いるRF信号の波形の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、RF信号の波形例1に応じたプラズマ処理チャンバ内の物理量の変化について説明するための図である。
【
図7】
図7は、RF信号の波形例2に応じたプラズマ処理チャンバ内の物理量の変化について説明するための図である。
【
図8】
図8は、RF信号の波形例3に応じたプラズマ処理チャンバ内の物理量の変化について説明するための図である。
【
図9】
図9は、RF信号の波形例4に応じたプラズマ処理チャンバ内の物理量の変化について説明するための図である。
【
図10】
図10は、変形例1に係るプラズマ処理においてRF電力供給に用いるRF信号の波形例を示す図である。
【
図11】
図11は、変形例2に係るプラズマ処理においてRF電力供給に用いるRF信号の波形例を示す図である。
【
図12】
図12は、変形例3に係るプラズマ処理においてRF電力供給に用いるRF信号の波形例を示す図である。
【
図13】
図13は、変形例4に係るプラズマ処理においてRF電力供給に用いるRF信号の波形例を示す図である。
【
図14】
図14は、変形例5に係るプラズマ処理においてRF電力供給に用いるRF信号の波形例を示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係るプラズマ処理のRF電力供給の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、実施形態に係るプラズマ処理のRF電力供給の流れの他の例を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、エッチングにおいて発生する形状異常の例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示によるプラズマ処理装置および電源システムを実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0009】
(エッチングにおいて発生する形状異常の例)
まず、実施形態について説明する前にシリコン膜のエッチングにおいて発生する形状異常の例について説明する。
図17は、シリコン膜のエッチングにおいて発生する形状異常の例について説明するための図である。
【0010】
近年、半導体製造技術において、アスペクト比が高い孔を加工する技術が注目されている。一例として高アスペクト比コンタクト(High Aspect Ratio Contact: HARC)がある。HARCは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)や3次元NANDに用いられる。DRAMに用いるHARCのアスペクト比は例えば45であり、3次元NANDに用いるHARCのアスペクト比は65を超える。
【0011】
形成する孔のアスペクト比が高くなるにつれ、垂直方向にまっすぐに孔を形成することが難しくなっている。たとえば、
図17の(A)に示すように、孔の底部付近に近づくにつれ先細りする現象が発生する。この現象の原因としてはたとえば、プラズマ中のイオンの入射方向が孔の深さ方向に対して斜めになり、イオンが孔の底部まで輸送されにくいことが考えられる。また、イオンが孔の中に滞留して、続くイオンの進路を阻害すること等が考えられる。
【0012】
また、
図17の(B)に示すように、基板にエッチングにより削られた物質や、プラズマによって生じた反応生成物が堆積する場合もある。孔の開口付近にかかる物質が堆積すると孔の開口が閉塞し、エッチングが進まなくなる。また、開口が完全に閉塞しない場合でもイオンが孔の内部に到達しにくくなり、孔の形状がゆがんだりエッチングが進まなくなったりする。
【0013】
また、エッチングによりマスクの開口の縁部分が削れる場合がある。この場合、
図17の(C)に示すように、イオンの孔に対する入射方向が歪み、孔の側壁にあたって孔の形が樽状に歪むボーイングと呼ばれる現象が発生することがある。
【0014】
このように、高アスペクト比のプラズマ処理は、プラズマ中で生成されるラジカルやイオン、プラズマ処理によって発生する反応生成物によって処理性能が左右される。このため、プラズマ処理の進行度合いに応じて、生成される反応種、ラジカル、副生成物等を個別に制御できる技術が望まれる。
【0015】
(実施形態)
以下に説明する実施形態においては、プラズマ生成時に用いるRF(高周波)電力をパルス状に印加することで、プラズマ処理のパラメータである各物理量を制御する。制御する物理量はたとえば、イオンエネルギー、イオン入射角、ラジカルフラックス、イオンフラックス、副生成物の量、等である。
【0016】
以下に説明する実施形態に係るプラズマ処理装置はICP装置である。実施形態のプラズマ処理装置の制御部は、コイル(アンテナ)に供給されるRF電力(ソースRF信号、ソース電力)を制御信号により制御する。一実施形態において、ソースRF信号の供給により、高密度のプラズマが生成される。なお、RF電力の供給は多様な態様で実現できる。たとえば、予め準備したプログラムに基づき、プラズマ処理装置の制御部が複数のソースRF生成部からの電力供給経路を切り替えて、異なるパワーレベルのソース電力を順次パルス状に供給してもよい。
【0017】
コイルにRF電力が供給される期間をオン(稼働)期間、コイルへのRF電力供給が停止される期間をオフ(未稼働)期間と呼ぶ。ソースRF信号は、オン期間に対応する第1状態たとえばオン状態(ソースオン状態)と、オフ期間に対応する第2状態たとえばオフ状態(ソースオフ状態)と、を有する。ソースRF信号は、第1状態のオン期間とそれに続く第2状態のオフ期間とで1周期(ソースサイクル)をなすパルス信号である。ソースRF信号の周波数はたとえば、約1kHz~約5kHzであってよい。
【0018】
なお、実施形態のソースRF信号は、第1状態中、2レベル以上(たとえば、第1ソースパワーレベルと第2ソースパワーレベル)に遷移してもよい。たとえば、ソースRF信号の第1状態は、予め定められた値のRF電力がコイルに供給される第1レベルと、第1レベルよりも低い値のRF電力がコイルに供給される第2レベルと、を有してもよい。たとえば、ソースRF信号は、コイルに約1000ワットのRF電力が供給される第1レベルと、コイルに約250ワットのRF電力が供給される第2レベルと、を有してもよい。第2レベルで供給されるRF電力は、約100ワットまたは約150ワットであってもよい。第1レベルと第2レベルはそれぞれハイレベルとローレベルであってよい。
【0019】
制御部はまた、プラズマ処理装置の下部電極に供給するRF電力(バイアスRF信号、バイアス電力)を制御信号により制御する。一実施形態において、バイアスRF信号の供給により、下部電極上方に載置される基板においてイオン結合が生じ、反応種およびラジカルが生成される。なお、RF電力の供給は多様な態様で実現できる。たとえば、予め準備したプログラムに基づき、プラズマ処理装置の制御部が複数のバイアスRF生成部からの電力供給経路を切り替えて、異なるパワーレベルのバイアス電力を順次パルス状に供給してもよい。
【0020】
下部電極にRF電力が供給される期間をオン期間、下部電極へのRF電力供給が停止する期間をオフ期間と呼ぶ。バイアスRF信号は、オン期間に対応する第1状態たとえばオン状態(バイアスオン状態)と、オフ期間に対応する第2状態たとえばオフ状態(バイアスオフ状態)と、を有する。バイアスRF信号は、第1状態のオン期間とそれに続く第2状態のオフ期間とで1周期(バイアスサイクル)をなす連続パルス信号である。バイアスRF信号の周波数はたとえば、約1kHz~約5kHzであってよい。
【0021】
なお、実施形態のバイアスRF信号は、第1状態中、2レベル以上(たとえば、第1バイアスパワーレベルと第2バイアスパワーレベル)に遷移してもよい。たとえば、バイアスRF信号の第1状態は、予め定められた値のRF電力が下部電極に供給される第1レベルと、第1レベルよりも低い値のRF電力が下部電極に供給される第2レベルと、を有してもよい。たとえば、バイアスRF信号は、下部電極に約250ワットのRF電力が供給される第1レベルと、下部電極に約92.5ワットのRF電力が供給される第2レベルと、を有してもよい。第1レベルと第2レベルはそれぞれハイレベルとローレベルであってよい。
【0022】
以下にまず、プラズマ処理を実行するプラズマ処理装置の構成例について説明する。
【0023】
(実施形態に係るプラズマ処理装置の構成例)
図1は、実施形態に係るプラズマ処理装置の構成の概念図である。
図2は、
図1のプラズマ処理装置の構成の一例を示す概略縦断面図である。
図1および
図2を参照し、実施形態に係るプラズマ処理装置1について説明する。なお、
図2に示すプラズマ処理装置1は、いわゆる誘導結合型プラズマ(Inductively-coupled plasma:ICP)装置であり、誘導結合型プラズマを生成する。
【0024】
プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電力供給部30及び排気システム40を含む。プラズマ処理チャンバ10は、誘電体窓10a及び側壁10bを含む。誘電体窓10a及び側壁10bは、プラズマ処理チャンバ10内のプラズマ処理空間10sを規定する。また、プラズマ処理装置1は、プラズマ処理空間10s内に配置された支持部11、エッジリング12、ガス導入部13及びアンテナ14を含む。支持部11は、基板支持部11a及びエッジリング支持部11bを含む。エッジリング支持部11bは、基板支持部11aの外周面を囲むように配置される。アンテナ14は、プラズマ処理チャンバ10(誘電体窓10a)の上部又は上方に配置される。
【0025】
基板支持部11aは、基板支持領域を有し、基板支持領域上で基板を支持するように構成される。一実施形態において、基板支持部11aは、静電チャック及び下部電極を含む。下部電極は、静電チャックの下に配置される。静電チャックは、基板支持領域として機能する。また、図示は省略するが、一実施形態において、基板支持部11aは、静電チャック及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、冷媒、伝熱ガスのような温調流体が流れる。
【0026】
エッジリング12は、下部電極の周縁部上面において基板Wを囲むように配置される。 エッジリング支持部11bは、エッジリング支持領域を有し、エッジリング支持領域上でエッジリング12を支持するように構成される。
【0027】
ガス導入部13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するように構成される。一実施形態において、ガス導入部13は、中央ガス注入部13a及び/又は側壁ガス注入部13bを含む。中央ガス注入部13aは、基板支持部11aの上方に配置され、誘電体窓10cに形成された中央開口部に取り付けられる。側壁ガス注入部13bは、プラズマ処理チャンバ10の側壁に形成された複数の側壁開口部に取り付けられる。
【0028】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、1又はそれ以上の処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してガス導入部に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、1又はそれ以上の処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0029】
電力供給部30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電力供給部31を含む。RF電力供給部31は、RF信号(RF電力、たとえばソースRF信号およびバイアスRF信号)を、下部電極及びアンテナ14に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが生成される。一実施形態において、RF信号は、パルス化される。パルスRF信号、パルスRF電力、パルスソースRF信号、及びパルスバイアスRF信号は、パルス化されたRF信号の一例である。
【0030】
一実施形態において、RF電力供給部31は、ソースRF生成部31a及びバイアスRF生成部31bを含む。ソースRF生成部31a及びバイアスRF生成部31bは、プラズマ処理チャンバ10に結合される。一実施形態において、ソースRF生成部31aは、アンテナ14に結合され、バイアスRF生成部31bは、基板支持部11a内の下部電極に結合される。ソースRF生成部31aは、少なくとも1つのソースRF信号を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、27MHz~100MHzの範囲内の周波数を有する。生成されたソースRF信号は、アンテナ14に供給される。バイアスRF生成部31bは、少なくとも1つのバイアスRF信号を生成するように構成される。バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。生成されたバイアスRF信号は、下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つのRF信号の振幅がパルス化又は変調されてもよい。振幅変調は、オン状態とオフ状態との間、あるいは、2又はそれ以上の異なるオン状態の間でRF信号振幅をパルス化することを含んでもよい。
【0031】
また、電力供給部30は、DC電力供給部32を含んでもよい。 一実施形態において、DC電力供給部32は、少なくとも1つのDC電圧を下部電極に印加するように構成される。一実施形態において、少なくとも1つのDC電圧が、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、DC信号は、パルス化されてもよい。また、DC電力供給部32は、RF電力供給部31に加えて設けられてもよく、バイアスRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0032】
アンテナ14は、1又は複数のコイル(ICPコイル)を含む。一実施形態において、アンテナ14は、同軸上に配置された外側コイルおよび内側コイルを含んでもよい。この場合、RF電力供給部31は、外側コイルおよび内側コイルの双方に接続されてもよく、外側コイルおよび内側コイルのうちいずれか一方に接続されてもよい。前者の場合、同一のRF生成部が外側コイルおよび内側コイルの双方に接続されてもよく、別個のRF生成部が外側コイルおよび内側コイルに別々に接続されてもよい。
【0033】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられた排気口(ガス出口)に接続され得る。排気システム40は、圧力弁及び真空ポンプを含んでもよい。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、粗引きポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0034】
一実施形態において、制御部(
図2の制御装置50に対応)は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部は、例えばコンピュータを含んでもよい。コンピュータは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)、記憶部、及び通信インターフェースを含んでもよい。処理部は、記憶部に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェースは、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0035】
(実施形態に係るプラズマ処理の流れ)
図3は、実施形態に係るプラズマ処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図3に示すプラズマ処理は、
図1,2のプラズマ処理装置1において実施することができる。
図4は、実施形態に係るプラズマ処理により処理される基板の一例を示す図である。
【0036】
まず、プラズマ処理チャンバ10内に基板Wを提供する(ステップS31)。基板Wはたとえば
図4に示すように、シリコンの基板上に順番に形成された下地層L1、エッチング対象層(Si層)L2、マスクMKを含む。基板Wには予め凹部OPが形成されている(
図4(A)参照)。なお、プラズマ処理装置1内で凹部OPの形成を行ってもよい。次に、制御部によりプラズマ処理装置1を制御して、ガス供給部20からエッチングのためのガスをプラズマ処理チャンバ10内に供給する。また、制御部によりプラズマ処理装置1を制御して、RF電力供給部31(ソースRF生成部31aおよびバイアスRF生成部31b)から下部電極およびアンテナ14(コイル)にRF電力を供給する。このとき、RF電力供給部31は、RF信号の波形に応じたレベルのRF電力を下部電極およびアンテナ14に供給する。RF信号の波形については後述する。RF電力が供給されることにより、プラズマ処理チャンバ10内に供給されたガスのプラズマが生成され、プラズマエッチングが実行される(ステップS32)。プラズマエッチングにより、基板WのマスクMKに形成された凹部OPの底部が削られ、凹部OPが徐々に深くなる(
図4の(B)参照。)。そして、プラズマ処理装置1の制御部は、予め定められた処理時間が経過したか否かを判定する(ステップS33)。予め定められた処理時間が経過すると、凹部OPの底部が下地層L1に到達し、
図4(C)に示す形状となる。処理時間が経過していないと判定した場合(ステップS33、No)、制御部はステップS32に戻りプラズマエッチングを継続する。他方、処理時間が経過したと判定した場合(ステップS33、Yes)、制御部は処理を終了する。
【0037】
本実施形態に係るプラズマ処理装置1は、ステップS32のプラズマエッチングにおいて、ソースRF信号とバイアスRF信号を供給する。プラズマ処理装置1は、ソースRF信号とバイアスRF信号の波形に応じてプラズマ中のイオンおよびラジカル、プラズマエッチングにより発生する副生成物の量等を制御する。次に、ソースRF信号とバイアスRF信号の波形について説明する。
【0038】
(RF信号の波形例)
図5は、実施形態に係るプラズマ処理においてRF電力供給に用いるRF信号の波形の一例を示す図である。
【0039】
図5に示すタイミング
図100は、ソース電力(ソースRF信号)P
Sとバイアス電力(バイアスRF信号)P
Bとを示す。ソース電力P
Sとは、ソースRF生成部31aからアンテナ(コイル)14に供給されるRF電力である。また、バイアス電力P
Bとは、バイアスRF生成部31bから基板支持部11a中の下部電極に供給されるRF電力である。ソースRF生成部31aは、たとえば、制御部から供給される制御信号に応じてソース電力P
Sを生成する。生成されたソース電力P
Sは、コイルに供給される。バイアスRF生成部31bは、たとえば、制御部から供給される制御信号に応じてバイアス電力P
Bを生成する。生成されたバイアス電力P
Sは、下部電極に供給される。
【0040】
図5中、周期150は、ソースRF信号の1周期を示す。周期160は、バイアスRF信号の1周期を示す。なお、以下の説明中特に区別する必要がないときは、周期150
1,150
2、…をまとめて周期150と呼び、周期160
1,160
2、…をまとめて周期160と呼ぶ。1周期はパルス信号の立ち上がりから次の立ち上がりまでの期間、すなわち、オン期間とオフ期間とを合計した期間を指す。ソースRF信号およびバイアスRF信号は、同一周波数のパルス信号である。
【0041】
ソースRF信号は、コイルにRF電力が供給される状態であるオン状態(第1状態)と、コイルにRF電力が供給されない状態であるオフ状態(第2状態)とを繰り返す。ソースRF信号がオン状態のとき、ソース電力PSがコイルに供給される。ソースRF信号がオフ状態のとき、コイルには電力は供給されない、すなわち、コイルへのRF電力の供給は停止される。
【0042】
バイアスRF信号は、下部電極にRF電力が供給される状態であるオン状態(第1状態)と、下部電極にRF電力が供給されない状態であるオフ状態(第2状態)とを繰り返す。
図5の例では、バイアスRF信号がオン状態のとき、バイアス電力P
Bが下部電極に供給される。バイアスRF信号がオフ状態のとき、下部電極には電力は供給されない、すなわち、下部電極へのRF電力の供給は停止される。
【0043】
図5において、バイアスRF信号の立ち上がりは、ソースRF信号の立ち上がりに対して期間D
1だけ遅延している。バイアスRF信号は、ソースRF信号がオン状態からオフ状態に遷移した後、ソースRF信号がオフ状態の間に立ち上がる。このように、ソースRF信号の周期が始まるタイミングと、バイアスRF信号の周期が始まるタイミングとは期間D
1だけずれている。
図5の例では、前のバイアスサイクルにおけるバイアスオフ状態(t
3)から第1バイアスサイクル160
1におけるバイアスオン状態P
BL(t
4)への遷移タイミングは、第1バイアスサイクル160
1に対応する第1ソースサイクル150
1におけるソースオン状態P
SH(0からt
1)への遷移タイミングに対して遅延している。また、
図5のt
3に示すように、ソースオフ期間は、バイアスオフ期間と部分的に重複している。さらに、
図5のt
6に示すように、第1バイアスサイクル160
1におけるバイアスオン期間は、第2ソースサイクル150
2におけるソースオン期間と部分的に重複している。
【0044】
また、ソースRF信号のオン期間およびオフ期間それぞれの長さは、バイアスRF信号のオン期間およびオフ期間それぞれの長さと異なる。
図5の例では、ソースRF信号のデューティ比(1周期に対するオン期間の長さの割合)は、約40%である。また、バイアスRF信号のデューティ比は約60%である。ただし、ソースRF信号およびバイアスRF信号のデューティ比は上記の値に限定されない。また、ソースRF信号およびバイアスRF信号は同一のデューティ比を有してもよい。
【0045】
このように、ソースRF信号とバイアスRF信号とは、別個に状態遷移する。ソースRF信号の状態遷移のタイミングと遷移元および遷移先のパワーレベルと、バイアスRF信号の状態遷移のタイミングと遷移元および遷移先のパワーレベルとは、異なってよい。
【0046】
また、ソースRF信号およびバイアスRF信号のいずれも供給されない期間TOFFと、ソースRF信号およびバイアスRF信号の双方が供給される期間TONとが存在する。ソース電力PSとバイアス電力PBの供給態様は、以下の5つのフェーズを推移する。
【0047】
(1)第1フェーズ(
図5中ST
1):
第1フェーズは、パラメータセット{P
S1,P
B1,t
1}により定義される。ここで、P
S1は、第1フェーズ中に供給されるソース電力P
Sの値である。P
B1は、第1フェーズ中に供給されるバイアス電力P
Bの値である。t
1は、第1フェーズの期間の長さを示す。ここで、以下の関係が成立する。
P
S1>0
P
B1>0
t
1>0
【0048】
第1フェーズでは、HighパワーレベルPSH(第1ソースパワーレベル)を有するソース電力PSがコイルに供給され、かつ、HighパワーレベルPBH(第2バイアスパワーレベル)を有するバイアス電力PBが下部電極に供給される。第1フェーズの期間t1中は、プラズマ処理装置1の上部下部それぞれにRF電力が供給されてプラズマが生成され、プラズマ中にイオンおよびラジカルが生成される。エッチング処理時には、期間t1中にエッチングが進む。
【0049】
(2)第2フェーズ(
図5中ST
2):
第2フェーズは、パラメータセット{P
S2,P
B2,t
2}により定義される。ここで、P
S2は、第2フェーズ中に供給されるソース電力P
Sの値である。P
B2は、第2フェーズ中に供給されるバイアス電力P
Bの値である。t
2は、第2フェーズの期間の長さを示す。ここで、以下の関係が成立する。
P
S1>P
S2>0
P
B1=0
t
2>0
【0050】
第2フェーズにおいては、LowパワーレベルP
SL(第2ソースパワーレベル)を有するソース電力P
Sがコイルに供給され、バイアス電力P
Bの供給は停止する。第2フェーズはたとえば、
図5の期間t
2である。期間t
2中は、プラズマ処理装置1の上部のみにRF電力が供給される。下部電極側にはRF電力が供給されないため、下部電極側にイオンを引き込む力が生成されない。また、イオンおよびラジカルの生成量も減少する。
【0051】
(3)第3フェーズ(
図5中ST
3):
第3フェーズは、パラメータセット{P
S3,P
B3,t
3}により定義される。ここで、P
S3は、第3フェーズ中に供給されるソース電力P
Sの値である。P
B3は、第3フェーズ中に供給されるバイアス電力P
Bの値である。t
3は、第3フェーズの期間の長さを示す。ここで以下の関係が成立する。
P
S3=P
B3=0
t
3>0
【0052】
第3フェーズにおいては、ソース電力P
Sおよびバイアス電力P
Bともに供給が停止する。第3フェーズはたとえば、
図5の期間t
3である。期間t
3中は、プラズマ処理装置1内でのプラズマ生成が停止すると同時に排気システム40の機能によりプラズマ処理空間10sが排気される。このとき、エッチングにより生成されて凹部(
図4、OP)の底部に滞留する副生成物(バイプロダクト)が排気される。プラズマ処理空間10s内のイオンおよびラジカルの量も減少する。
【0053】
(4)第4フェーズ(
図5中ST
4):
第4フェーズは、パラメータセット{P
S4,P
B4,t
4}により定義される。ここで、P
S4は、第4フェーズ中に供給されるソース電力P
Sの値である。P
B4は、第4フェーズ中に供給されるバイアス電力P
Bの値である。t
4は、第4フェーズの期間の長さを示す。ここで以下の関係が成立する。
P
S4=0
P
B1>P
B4>0
t
4>0
【0054】
第4フェーズでは、ソース電力P
Sの供給は停止したまま、LowパワーレベルP
BL(第1バイアスパワーレベル)を有するバイアス電力P
Bの供給が開始する。第4フェーズの期間t
4中は、ソース電力P
Sが供給されないため、プラズマ生成は行われていないが、第1~第2フェーズで生成されたイオンがプラズマ処理空間10s内に残留している。このため、バイアス電力P
Bの供給によってイオンが凹部(
図4、OP)の底部に引き込まれる。また、イオンの入射角がより垂直に近くなり、凹部OP側壁の垂直なエッチングが促進される。
【0055】
(5)第5フェーズ(
図5中ST
5):
第5フェーズは、パラメータセット{P
S5,P
B5,t
5}により定義される。ここで、P
S5は、第5フェーズ中に供給されるソース電力P
Sの値である。P
B5は、第5フェーズ中に供給されるバイアス電力P
Bの値である。t
5は、第5フェーズの期間の長さを示す。ここで以下の関係が成立する。
P
S5=0
P
B1=P
B5>P
B4>0
t
5>0
【0056】
第5フェーズでは、ソース電力PSの供給は停止したままバイアス電力PBのパワーレベルがLowパワーレベルPBLからHighパワーレベルPBHに上昇(遷移)する。このため、第1フェーズの準備段階として、第5フェーズでは、プラズマ処理空間10s内のイオンエネルギーが増加する。ラジカルや副生成物の量は、第3フェーズで減少した状態が持続する。
【0057】
第5フェーズの後、再び第1フェーズに戻り、Highパワーレベルを有するソース電力PSとHighパワーレベルを有するバイアス電力PBとが重畳して印加される。かかる周期を繰り返し、第5フェーズにおいて予めバイアス電力PBの印加によりイオンエネルギーを生じさせた状態で第1フェーズを開始しソース電力PSを印加してイオンおよびラジカルを生成する。このため、第1フェーズのエッチングを促進することができ、イオンを効率的に凹部OP底部に引き込むことができる。また、第3フェーズにおいて副生成物を排気していることでエッチングをさらに促進できる。
【0058】
このように、
図5のパルス波形を有するソースRF信号およびバイアスRF信号を用いることで、プラズマ処理空間10s内のイオン、ラジカルおよび副生成物の状態を制御しつつ垂直方向のエッチングを実現できる。このため、エッチングにより発生する形状異常を抑制してプラズマエッチングの処理性能を向上させることができる。
【0059】
ところで、
図5の例では、ソース電力P
Sは期間t
1のオン状態のとき、値P
SHをとり、続く期間t
2のオン状態のとき、値P
SLをとる。また、バイアス電力P
Bは期間t
4の間は値P
BLをとり、その後の期間t
5で値P
BHに遷移する。このように、実施形態に係るプラズマ処理方法では、プラズマの各物理量を制御するため、ソースRF信号のオン状態を2レベル(オフ状態を含めると3レベル)で制御してもよい。また、実施形態に係るプラズマ処理方法では、バイアスRF信号のオン状態を2レベル(オフ状態を含めると3レベル)で制御してもよい。このように、コイルおよび下部電極のそれぞれに印加されるRF電力値を段階的に変動させることで、さらに微細なプラズマ処理のパラメータ調整が可能である。
【0060】
図5の例においては、以下の関係が成立する。
0<P
SL<P
SH
0<P
BL<P
BH
ソースRF信号およびバイアスRF信号の周波数:0.1kHz~5kHz
ソースRF信号のデューティ比:約40%
バイアスRF信号のデューティ比:約60%
P
SHの期間の長さ:P
SLの期間の長さ=1:3
P
BHの期間の長さ:P
BLの期間の長さ=1:2
t
1:t
2:t
3:t
4:t
5=1:3:1:4:1
ただし、本実施形態は上記の関係が成立する場合だけでなく、他の関係においても適用できる。他の関係については変形例として後述する。
【0061】
図6~
図9は、RF信号の波形例に応じたプラズマ処理チャンバ10内の物理量の変化について説明するための図である。
図6~
図9を参照し、RF信号の波形に応じた物理量の変化について説明する。
【0062】
図6の波形例1は、ソース電力とバイアス電力が同時に供給される「第1フェーズ」、ソース電力のみが供給される「第2フェーズ」、バイアス電力のみが供給される「第4フェーズ」を有する。波形例1は上記実施形態の波形例と比較すると、RF電力が供給されない「第3フェーズ」を有しない点、および、ソースRF信号の立ち上がり前にバイアス電力のパワーレベルが変動する「第5フェーズ」を有しない点が異なる。波形例1の場合、第1フェーズでイオンフラックス、ラジカルフラックス、イオンエネルギーがいずれも増加し、同時に副生成物の量が増加する。その後、第2フェーズではいずれの量も徐々に減少していく。バイアス電力の供給が停止することでイオンエネルギーがほぼゼロになる。第4フェーズでは、バイアス電力の供給によりイオンエネルギーが第1フェーズよりも多くなる。他方、イオンフラックス、ラジカルフラックス及び副生成物の量は、第2フェーズから大きく変化していない。
【0063】
図7の波形例2は、概ね
図6の波形例1と同様である。しかし、第4フェーズのバイアス電力の値(P
BM)は波形例1のバイアス電力の値(P
BL)よりも増加している。
図7の例では、イオンフラックス、ラジカルフラックス、副生成物の量は、
図6の波形例1の場合と概ね同じである。ただし、第4フェーズにおけるイオンエネルギーが波形例1と比べて増加している(
図7中、C1)。なお、
図7の(C)では、
図6の(C)と同じ破線上に、
図7(A)の場合のイオンエネルギーの変化を、
図6の(C)と異なる部分のみ太い破線C1で表示している。
【0064】
図8の波形例3は、
図6の波形例1と比較して第1フェーズを長くし、その分だけ第2フェーズを短くしている。
図8の例では、イオンフラックスとラジカルフラックスの量が、第1~第2フェーズを通じて
図6の例と比べて増加している(
図8中、C2,C3)。他方、イオンエネルギーと副生成物の量には大きな変化はない。なお、太破線C2、C3は上記C1と同様、
図6と異なる部分のみ表示している。
【0065】
図9の波形例4は、
図6の波形例1と比較して、第5フェーズを設けた点が異なる。第5フェーズのパワーレベルは、第4フェーズのパワーレベルP
BLからP
BHに遷移する。
図9の例では、イオンフラックス、ラジカルフラックス、副生成物の量は
図6の波形例1と概ね同様である。イオンエネルギーについては、第5フェーズでバイアス電力P
Bを切り替えたことに対応して第5フェーズで増加している(
図9中、C4)。
図9中の太破線C4は、
図6の(D)と異なる部分のみ表示している。
【0066】
なお、
図6から
図9に示す波形例のRF電力を用いてエッチングを実行した場合、波形例1および波形例3では、凹部頂部から底部にかけての寸法(クリティカルディメンションの変動が、波形例2に比べて大きくなった。すなわち、波形例2の第4フェーズのように、ややハイレベルのバイアス電力を供給すると、深穴エッチングの際に縦方向により均一な大きさの孔を形成できた。他方、波形例3のように第1フェーズの長さと第2フェーズの長さの割合を変えた場合、マスクの消耗が減少し、選択的にエッチング対象膜のエッチングを実現することができた。このことから、RF電力の波形に応じて、プラズマ処理空間10s内、特に、処理対象である基板付近のイオンやラジカルの状態が変化しプラズマ処理の性能に影響していることが分かる。このため、RF信号の波形を調整することで、プラズマ処理の性能、つまりプラズマ処理によって形成されるパターンの形状を制御できる。
【0067】
なお、
図6~
図9の波形例1~4は、本実施形態の第3フェーズすなわち、コイルおよび下部電極のいずれにもRF電力を供給しないフェーズを含んでいない。RF電力を供給しない第3フェーズを導入することで、さらにプラズマ処理空間10s内の副生成物の量を減じ、垂直方向のエッチング精度を向上させることができる。
【0068】
ところで、本実施形態は上記
図5の波形に限定されず、変形例によっても同様の効果を得ることができる。以下に
図10~
図14を参照しつつ変形例1~変形例5を説明する。
【0069】
(変形例1)
図10は、変形例1に係るプラズマ処理においてRF電力供給に用いるRF信号の波形例を示す図である。
図10に示すタイミング
図200は、ソース電力P
Sとバイアス電力P
Bとを示す。まず、期間t
1が開始すると、ソース電力P
SHとバイアス電力P
BHとが印加される。期間t
1を通じて、ソース電力P
SHとバイアス電力P
BHとは一定レベルで重畳して印加されている。次に期間t
3になると、ソース電力P
Sおよびバイアス電力P
Bの両方とも供給が停止する(期間T
OFF)。次に期間t
4になるとバイアス電力P
BHの供給が開始する。そして、次の周期150
2のタイミングになるとソース電力P
SHの供給が開始し、ソース電力P
SHおよびバイアス電力P
BHが重畳して印加される(期間T
ON)。
【0070】
図5の波形例とは異なり、
図10のタイミング
図200は、第2フェーズすなわち、ソース電力P
Sのコイルへの供給は継続し、バイアス電力P
Bの供給を停止するフェーズが存在しない。また、
図10のタイミング
図200は、第5フェーズすなわち、ソース電力P
S供給前にバイアス電力P
Bのレベルが変化するフェーズを有しない。このため、イオンやラジカルの量を調整せずに副生成物の排気(第3フェーズ)を開始することに適したパターン形成の場合には変形例1の適用が可能である。また、プラズマ生成前にイオンエネルギーを生成しなくてもよい場合も変形例1が適用可能である。
【0071】
(変形例2)
図11は、変形例2に係るプラズマ処理においてRF電力供給に用いるRF信号の波形例を示す図である。
図11に示すタイミング
図210においては、まず、期間t
1において、ソース電力P
SHとバイアス電力P
BHとが印加される。次の期間t
2では、ソース電力P
SのレベルがP
SHからP
SMに変化する。また、期間t
2が開始するときにバイアス電力P
BHの供給が停止する。次に、期間t
3になるとソース電力P
SMの供給が停止する。このため、期間t
3中は、ソース電力P
Sおよびバイアス電力P
Bのいずれも供給されない(期間T
OFF)。そして、期間t
4になると、バイアス電力P
BMの供給が開始する。期間t
4の間はレベルP
BMのバイアス電力P
Bが供給される。そして、期間t
5になると、バイアス電力P
BのレベルはP
BMからP
BHに変化する。そして、バイアス電力P
BHの供給は継続したまま、次の周期150
2になるとソース電力P
SHが供給され、ソース電力P
SHとバイアス電力P
BHとが重畳して供給される(期間T
ON)。
【0072】
図5の波形例と比較すると、変形例2はソース電力P
SのレベルがP
SHとP
SMとに設定されている点が異なる。なお、ソース電力P
Sのレベルは、レベルP
SH、P
SM、P
SLの順にハイレベルからローレベルとなるよう設定されている。また、変形例2は、バイアス電力P
BのレベルがP
BHとP
BMに設定されている点が
図5の波形例と異なる。なお、バイアス電力P
Bのレベルは、レベルP
BH、P
BM、P
BLの順にハイレベルからローレベルとなるよう設定されている。変形例2の場合、ソース電力P
Sおよびバイアス電力P
Bのオン状態を2レベルに設定している。ただし、2つのレベルのうち低い方のレベルが、
図5の例の場合よりもハイレベルになるように設定している。
【0073】
たとえば、副生成物を排気する第3フェーズの前後において電子密度Ne、ラジカル密度Nr、電子温度Te、イオンエネルギーεi等を高レベルに維持したい場合には、変形例2のようにソース電力PSおよびバイアス電力PBの複数のオン状態のレベルを高く設定するとよい。
【0074】
変形例2においても、
図5の波形例と同様、バイアスRF信号の立ち上がりはソースRF信号の立ち上がりから期間D
1だけ遅延する。また、ソース電力P
Sおよびバイアス電力P
Bのいずれも供給されない期間T
OFFが存在する。また、ソース電力P
Sおよびバイアス電力P
Bの双方が供給される期間T
ONが存在する。期間T
ONは、ソースRF信号が立ち上がるタイミングからバイアスRF信号が立下るタイミングまでの期間である。
【0075】
(変形例3)
図12は、変形例3に係るプラズマ処理においてRF電力供給に用いるRF信号の波形例を示す図である。
図12に示すタイミング
図220においては、まず、期間t
1において、ソース電力P
SHとバイアス電力P
BMとが供給される。次に、期間t
2において、ソース電力P
SのレベルがP
SHからP
SMに変化する。また、期間t
2になると、バイアス電力P
BMの供給が停止する。次に、期間t
3になるとソース電力P
SMの供給が停止する。期間t
3の間は、ソース電力P
Sおよびバイアス電力P
Bのいずれも供給されない(T
OFF)。そして、期間t
4において、バイアス電力P
BHの供給が開始する。期間t
4の間は、レベルP
BHのバイアス電力P
Bが供給される。そして、期間t
5になると、バイアス電力P
BのレベルはP
BHからP
BMに変化する。そして、バイアス電力P
BMの供給は継続したまま、周期150
2が開始するとソース電力P
SHが供給され、ソース電力P
SHとバイアス電力P
BMとが重畳して供給される(期間T
ON)。
【0076】
変形例3は、
図11の変形例2と概ね同様である。ただし、変形例3は、バイアス電力P
Bのレベルの遷移順序が変形例2と異なる。変形例2では、期間t
1の間バイアス電力P
BのレベルはP
BHであり、期間t
4の間はP
BMであり、期間t
5の間はP
BHである。これに対して、変形例3では、期間t
1の間バイアス電力P
BのレベルはP
BMであり、期間t
4の間はP
BHであり、期間t
5の間はP
BMである。変形例2では、バイアス電力P
Bのレベルは第1フェーズから第5フェーズにかけて、ハイレベル、オフ状態、ローレベル、ハイレベルの順に変化する。これに対して変形例3では、バイアス電力P
Bのレベルは第1フェーズから第5フェーズにかけて、ローレベル、オフ状態、ハイレベル、ローレベルの順に変化する。
【0077】
たとえば、第3フェーズにおいてイオンエネルギーを高くして凹部OP底部にイオンを多く引き込むことに適したプラズマ処理の場合等は、変形例3の波形が適している。
【0078】
(変形例4)
図13は、変形例4に係るプラズマ処理においてRF電力供給に用いるRF信号の波形例を示す図である。
図13に示すタイミング
図230においては、まず、期間t
1において、ソース電力P
SMとバイアス電力P
BHとが印加される。次に、期間t
2において、ソース電力P
SのレベルがP
SMからP
SHに変化する。また、期間t
2になると、バイアス電力P
BHの供給が停止する。次に、期間t
3においてソース電力P
SHの供給が停止する。期間t
3の間は、ソース電力P
Sおよびバイアス電力P
Bのいずれも供給されない(T
OFF)。そして、期間t
4において、バイアス電力P
BMの供給が開始する。期間t
4の間は、レベルP
BMのバイアス電力P
Bが供給される。そして、期間t
5になると、バイアス電力P
BのレベルはP
BMからP
BHに変化する。そして、バイアス電力P
BHの供給は継続したまま、周期150
2になるとソース電力P
SMが供給され、ソース電力P
SMとバイアス電力P
BHが重畳して供給される(期間T
ON)。
【0079】
変形例4は、
図11の変形例2と概ね同様である。ただし、変形例4は、ソース電力P
Sのレベルの遷移順序が変形例2と異なる。変形例2では、期間t
1の間ソース電力P
SのレベルはP
SHであり、期間t
2ではP
SMである。これに対して、変形例3では、期間t
1の間バイアス電力P
BのレベルはP
SMであり、期間t
2ではP
SHである。変形例2では、ソース電力P
Sのレベルは第1フェーズから第3フェーズにかけて、ハイ、ロー、オフの順に変化し、第3フェーズから第4フェーズにかけては変化しない。これに対して変形例4では、ソース電力P
Sのレベルは第1フェーズから第3フェーズにかけて、ロー、ハイ、オフの順に変化し、第3フェーズから第4フェーズにかけては変化しない。
【0080】
変形例4は、たとえば、第1フェーズにおいてイオンおよびラジカルの量を急激に増加させるよりも漸進的に増加させることが好ましい処理等に適している。
【0081】
(変形例5)
図14は、変形例5に係るプラズマ処理においてRF電力供給に用いるRF信号の波形例を示す図である。
図14に示すタイミング
図240においては、まず、期間t
1において、ソース電力P
SMとバイアス電力P
BMとが印加される。次に、期間t
2になると、ソース電力P
SのレベルがP
SMからP
SHに変化する。また、期間t
2になると、バイアス電力P
BMの供給が停止する。次に、期間t
3になるとソース電力P
SHの供給が停止する。期間t
3の間は、ソース電力P
Sおよびバイアス電力P
Bのいずれも供給されない(T
OFF)。そして、期間t
4になると、バイアス電力P
BHの供給が開始する。期間t
4の間は、レベルP
BHのバイアス電力P
Bが供給される。そして、期間t
5になると、バイアス電力P
BのレベルはP
BHからP
BMに変化する。そして、バイアス電力P
BMの供給は継続したまま、周期150
2になるとソース電力P
SMが供給され、ソース電力P
SMとバイアス電力P
BMが重畳して供給される(T
ON)。
【0082】
変形例5は、
図12の変形例3のバイアス電力P
Bと、
図13の変形例4のソース電力P
Sと、を組み合わせた波形である。変形例3のバイアス電力P
Bは、第1フェーズから第5フェーズにかけて、ローレベル(第1フェーズ)、オフ状態(第2,3フェーズ)、ハイレベル(第4フェーズ)、ローレベル(第5フェーズ)の順に変化する。また、変形例4のソース電力P
Sは、第1フェーズから第5フェーズにかけて、ローレベル(第1フェーズ)、ハイレベル(第2フェーズ)、オフ状態(第3~第5フェーズ)の順に変化する。このため、変形例5の波形は、第1フェーズから第5フェーズにかけて、{P
S,P
B}が、{P
SM,P
BM}{P
SH,P
BOFF}、{P
SOFF,P
BOFF}、{P
SOFF,P
BH}{P
SOFF,P
BM}の順に変化する。なお、ここでは、1つの波形中、オン状態が2つのレベルのみを含む場合は、便宜上、一方をハイレベル、他方をローレベルと呼び、ミドルレベルとは称しない。また、ソース電力P
Sのオフ状態をP
SOFF、バイアス電力P
Bのオフ状態をP
BOFFと表示する。
【0083】
変形例5は、たとえば、第4フェーズにおいてイオンエネルギーをいったん高くした後に下げてからエッチングすることが好ましい処理等に適している。
【0084】
(RF電力供給の流れ)
図15は、実施形態に係るプラズマ処理のRF電力供給の流れの一例を示すフローチャートである。
図15に示すフロー1500はたとえば、
図3のステップS32において実行される。
【0085】
まず、制御部の制御下で、RF電力供給部31は第1フェーズのRF電力供給を実行する(ステップS1510)。第1フェーズのRF電力供給は、第1セットの処理パラメータ{PS1,PB1,t1}により規定される。ここで、PS1>0かつPB1>0、t1>0である。
【0086】
次に、制御部の制御下で、RF電力供給部31は第2フェーズのRF電力供給を実行する(ステップS1520)。第2フェーズのRF電力供給は、第2セットの処理パラメータ{PS2,PB2,t2}により規定される。ここで、PS2>0かつPB2=0、t2≧0である。
【0087】
次に、制御部の制御下で、RF電力供給部31は第3フェーズのRF電力供給を実行する(ステップS1530)。第3フェーズのRF電力供給は、第3セットの処理パラメータ{PS3,PB3,t3}により規定される。ここで、PS3=0かつPB3=0、t3>0である。
【0088】
次に、制御部の制御下で、RF電力供給部31は第4フェーズのRF電力供給を実行する(ステップS1540)。第4フェーズのRF電力供給は、第4セットの処理パラメータ{PS4,PB4,t4}により規定される。ここで、PS4=0かつPB4>0,t4>0である。
【0089】
次に、制御部の制御下で、RF電力供給部31は第5フェーズのRF電力供給を実行する(ステップS1550)。第5フェーズのRF電力供給は、第5セットの処理パラメータ{PS5,PB5,t5}により規定される。ここで、PS5=0かつPB5>0、t5≧0である。
【0090】
ステップS1510~S1540は1サイクルとして実行される。ステップS1540の後に続けてステップS1510に戻ってサイクルが再度実行されてもよい。
【0091】
図16は、実施形態に係るプラズマ処理のRF電力供給の流れの他の例を示すフローチャートである。
図16に示すフロー1600はたとえば、
図3のステップS32において実行される。
【0092】
まず、制御部の制御下で、RF電力供給部31は、アンテナ(コイル)14にソース電力PSを供給し、同時に下部電極にバイアス電力PBを供給する。これによりプラズマ処理空間10s内にプラズマが生成される。また、プラズマ中にはイオンおよびラジカルが含まれる(ステップS1610)。
【0093】
次に、制御部の制御下で、RF電力供給部31は、下部電極へのバイアス電力PBの供給を停止する。また、RF電力供給部31は、アンテナ(コイル)14へ供給するソース電力PSの値を変化させる。RF電力供給部31はたとえば、ソース電力PSを減少または増加させる。これによって、RF電力供給部31は、プラズマ処理空間10s内のプラズマに含まれるイオンおよびラジカルの量を調整する(ステップS1620)。
【0094】
次に、制御部の制御下で、RF電力供給部31は、下部電極へのバイアス電力PBの供給が停止されたままの状態で、コイルへのソース電力PSの供給を停止する。そして、排気システム40によるプラズマ処理空間10sの排気処理によりプラズマ処理空間10s内の副生成物の量が減らされる(ステップS1630)。
【0095】
次に、制御部の制御下で、RF電力供給部31は、下部電極へバイアス電力PBを供給する。ソース電力PSの供給は停止したままである。バイアス電力PBによる下部電極への引き込み力が生成される(ステップS1640)。
【0096】
ステップS1610~S1640は1サイクルとして実行される。ステップS1640の後に続けてステップS1610に戻ってサイクルが再度実行されてもよい。
【0097】
なお、上記の実施形態および変形例の一部は適宜変更してもよい。以下に考えられる変形態様を記載する。
【0098】
(他の実施形態)
ソース電力PSは、交流(AC)電力であってもよい。また、ソース電力PSは、高周波(Radio Frequency: RF)電力であっても、VHF(Very High Frequency)電力であってもよい。ソース電力PSはたとえば、約60MHzから約200MHzの範囲内のRF電力であってもよい。また、ソース電力PSはたとえば、約25MHzから約60MHzの範囲内のRF電力であってもよい。ソース電力PSはたとえば、27MHzであってもよい。本実施形態において、ソース電力PSは、誘導結合型プラズマ(ICP)を生成する。ソース電力PSはたとえば、ヘリカルアンテナと結合してプラズマを生成する。
【0099】
バイアス電力PBは、交流(AC)電力であってもよい。また、バイアス電力PBは、直流(DC)パルス電力であってもよい。バイアス電力PBは、RF(Radio Frequency)電力、HF(High Frequency)電力、MF(Medium Frequency)電力のいずれかであってもよい。バイアス電力PBはたとえば、約200kHzから約600kHzの範囲内の周波数の電力であってよい。バイアス電力PBはたとえば400kHzであってもよい。また、バイアス電力PBはたとえば、約600kHzから約13MHzの範囲内の電力であってもよい。
【0100】
ソース電力PSおよびバイアス電力PBは各々、各周期において、単一パルスとして、または連続パルスとして印加されてよい。たとえば、第1フェーズにおいて、期間t1に印加されるソース電力PS1は単一パルスであってもよく、連続パルスであってもよい。同様に、期間t2に印加されるバイアス電力PB2は単一パルスであってもよく、連続パルスであってもよい。
【0101】
ソースRF信号とバイアスRF信号のデューティ比は、約3%から約90%の範囲内でそれぞれ別個に設定可能である。
【0102】
たとえば3レベル波形の場合、ソースRF信号のハイレベルでのオン状態のデューティ比は、約5%から約50%の範囲内で設定可能である。また、ソースRF信号のローレベルでのオン状態のデューティ比は、0%から約45%の範囲内で設定可能である。また、ソースRF信号のオフ状態のデューティ比は、約5%から約90%の範囲内で設定可能である。
【0103】
また、バイアスRF信号のハイレベルでのオン状態のデューティ比は、約5%から約50%の範囲内で設定可能である。また、バイアスRF信号のローレベルでのオン状態のデューティ比は、0%から約45%の範囲内で設定可能である。また、バイアスRF信号のオフ状態のデューティ比は、約5%から約90%の範囲内で設定可能である。
【0104】
また、ソースRF信号とバイアスRF信号とが同時にオフ状態となる期間の長さは、デューティ比約5%から約90%の範囲で設定可能である。この期間はたとえば、約0マイクロ秒から約500マイクロ秒の範囲内、さらに好ましくは、約10マイクロ秒から約50ミリ秒の範囲内で設定可能である。また、この期間は、ソースRF信号およびバイアスRF信号のデューティ比で約10%から約50%の範囲内に設定してもよい。
【0105】
プラズマ処理チャンバ10には、予め定められたプラズマ処理に応じて選択される流量で、ガスが供給される。第1フェーズ、第2フェーズ、第3フェーズ、第4フェーズおよび第5フェーズを含む1サイクル中、実質的に同一の流量でガスがプラズマ処理チャンバ10に供給される。供給されるガスはたとえば、臭化水素(HBr)を含む。また、供給されるガスはたとえば、ヘリウム(He)やアルゴン(Ar)等の希ガスを含む。また、供給されるガスはたとえば、酸素(O2)、テトラフルオロメタン(CF4)、三フッ化窒素(NF3)、六フッ化硫黄(SF6)、塩素(Cl2)、テトラクロロメタン(CCl4)等を含んでもよい。
【0106】
実施形態に係るプラズマ処理中に生成される副生成物は、プラズマ処理チャンバ10内のガスおよび基板の組成物に含まれる1以上の種の元素を含む化合物であってよい。たとえば、シリコン基板とHBrガスを用いる場合は、SiBrxを含有する副生成物が形成されうる。他にフッ化シリコン(SiFx)、塩化シリコン(SiClx)等のシリコン含有残渣や、(フォトレジスト、有機膜、プリカーサを用いた処理の場合には)フルオロカーボン(CFx)、ハイロドフルオロカーボン(CHxFy)等の炭素含有残渣なども副生成物として形成されうる。
【0107】
(実施形態の効果)
上記のように実施形態に係るプラズマ処理装置は、プラズマ処理チャンバと、基板支持部と、ソースRF生成部と、バイアスRF生成部と、を備える。基板支持部は、プラズマ処理チャンバ内に配置される。ソースRF生成部は、プラズマ処理チャンバに結合され、複数のソースサイクルを含むパルスソースRF信号を生成するよう構成される。各ソースサイクルは、ソース稼働期間の間のソース稼働状態と、ソース稼働期間後のソース未稼働期間の間のソース未稼働状態とを有する。バイアスRF生成部は、基板支持部に結合され、パルスバイアスRF信号を生成するよう構成される。パルスバイアスRF信号は、複数のソースサイクルと同じパルス周波数を有する複数のバイアスサイクルを有する。各バイアスサイクルは、バイアス稼働期間の間のバイアス稼働状態と、バイアス稼働期間後のバイアス未稼働期間の間のバイアス未稼働状態とを有する。各バイアスサイクルにおけるバイアス稼働状態への遷移タイミングは、対応するソースサイクルにおけるソース稼働状態への遷移タイミングに対して遅延する。ソースオフ期間は、バイアス未稼働期間と重複する。各バイアスサイクルにおけるバイアス稼働期間は、その次のソースサイクルにおけるソース稼働期間と重複する。このように、プラズマ処理装置は、パルスソースRF信号とパルスバイアス信号の周期がずれるようにRF信号を供給する。また、プラズマ処理装置は、バイアス稼働期間が、パルスソースRF信号の周期2つをまたいで持続するようにRF信号を供給する。このため、プラズマ処理装置は、プラズマエッチング中に生成するイオンエネルギー等を細かく制御してプラズマエッチングの性能を向上させることができる。また、ソース稼働期間とバイアス稼働期間とをずらすことで、プラズマ処理装置は、パルスソースRF信号の立ち上がり時(周期開始時)に供給される電力レベルを高く設定できる。このため、プラズマ処理装置は、効率的なプラズマエッチングを実現できる。
【0108】
上記のように、実施形態に係るプラズマ処理装置において、ソース稼働状態は、少なくとも二つのソースパワーレベルを有してもよい。また、バイアス稼働状態は、少なくとも二つのバイアスパワーレベルを有してもよい。
【0109】
上記のように、実施形態に係るプラズマ処理装置において、ソース稼働状態は、第1ソースパワーレベルと、第1ソースパワーレベル後の第2ソースパワーレベルとを有してもよい。バイアス稼働状態は、第1バイアスパワーレベルと、第1バイアスパワーレベル後の第2バイアスパワーレベルとを有してもよい。パルスバイアスRF信号は、各ソースサイクルにおけるソース未稼働期間中に、バイアス稼働状態に遷移してもよい。
【0110】
上記のように、実施形態に係るプラズマ処理装置において、バイアスRF信号は、各ソースサイクルにおけるソース未稼働期間中、第1バイアスパワーレベルから第2バイアスパワーレベルに遷移してもよい。
【0111】
上記のように、実施形態に係るプラズマ処理装置において、各ソースサイクルにおける第1ソースパワーレベルから第2ソースパワーレベルへの遷移は、各バイアスサイクルにおけるバイアス稼働状態からバイアス未稼働状態への遷移と実質的に同期してもよい。
【0112】
上記のように、実施形態に係るプラズマ処理装置において、第1ソースパワーレベルは、第2ソースパワーレベルよりも大きくてもよい。
【0113】
上記のように、実施形態に係るプラズマ処理装置において、第1ソースパワーレベルは、第2ソースパワーレベルよりも小さくてもよい。
【0114】
上記のように、実施形態に係るプラズマ処理装置において、第2バイアスパワーレベルは、第1バイアスパワーレベルよりも大きくてもよい。
【0115】
上記のように、実施形態に係るプラズマ処理装置において、第2バイアスパワーレベルは、第1バイアスパワーレベルよりも小さくてもよい。
【0116】
また、上記実施形態に係るプラズマ処理方法は、プラズマ処理装置で使用するプラズマ処理方法であってもよい。プラズマ処理装置は、プラズマ処理チャンバと、アンテナと、第1RF生成部と、基板支持部と、第2RF生成部と、を備えてもよい。アンテナは、プラズマ処理チャンバの上方に配置されてもよい。第1RF生成部は、アンテナに結合され、第1RF電力を生成してもよい。基板支持部は、プラズマ処理チャンバ内に配置されてもよい。第2RF生成部は、基板支持部に結合され、第2RF電力を生成してもよい。プラズマ処理方法は、第1期間において、第1RF電力をアンテナに供給し、第2RF電力を基板支持部に供給する工程を含んでもよい。また、プラズマ処理方法は、第1期間の後の第2期間において、第1RF電力をアンテナに供給し、基板支持部への第2RF電力の供給を停止する工程を含んでもよい。また、プラズマ処理方法は、第2期間の後の第3期間において、アンテナへの第1RF電力の供給を停止し、基板支持部への第2RF電力の供給を停止する工程を含んでもよい。また、プラズマ処理方法は、第3期間の後の第4期間において、アンテナにRF電力を供給することなく第2RF電力を基板支持部に供給する工程を含んでもよい。そして、プラズマ処理方法は、各工程を繰り返し実行してもよい。
【0117】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。例えば、上記実施形態では、誘導結合型プラズマ装置を用いて実施されるプラズマ処理方法を例に説明したが、開示の技術はこれに限定されるものではなく、他のプラズマ装置を用いたプラズマ処理方法にも開示の技術を適用できる。例えば、誘導結合型プラズマ装置に代えて、容量結合型プラズマ(Capacitively-coupled plasma:CCP)装置が用いられてもよい。この場合、容量結合型プラズマ装置は、プラズマ処理チャンバ内に配置される2つの対向する電極を含む。一実施形態において、一方の電極は、基板支持部内に配置され、他方の電極は、基板支持部の上方に配置される。この場合、一方の電極は下部電極として機能し、他方の電極は上部電極として機能する。そして、ソースRF生成部31a及びバイアスRF生成部31bは、2つの対向する電極のうち少なくとも1つに結合される。一実施形態において、ソースRF生成部31aは、上部電極に結合され、バイアスRF生成部31bは、下部電極に結合される。なお、ソースRF生成部31a及びバイアスRF生成部31bが下部電極に結合されてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 プラズマ処理装置
10 プラズマ処理チャンバ
10a 誘電体窓
10b 側壁
10s プラズマ処理空間
11 支持部
11a 基板支持部
11b エッジリング支持部
12 エッジリング
13 ガス導入部
13a 中央ガス注入部
13b 側壁ガス注入部
14 アンテナ
20 ガス供給部
21 ガスソース
22 流量制御器
30 電力供給部
31 RF電力供給部
31a ソースRF生成部
31b バイアスRF生成部
32 DC電力供給部
40 排気システム
W 基板