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特開2024-157071プラズマ処理方法及びプラズマ処理システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157071
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法及びプラズマ処理システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20241030BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101B
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156681
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 光一
(74)【代理人】
【識別番号】100131598
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 和宗
(72)【発明者】
【氏名】朴 宰永
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 優一
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB11
2G084CC04
2G084CC05
2G084CC09
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC14
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD24
2G084DD37
2G084DD38
2G084DD55
5F004AA05
5F004BA04
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB26
5F004BB29
5F004CA03
5F004CA06
5F004CA08
5F004DA15
5F004DA24
5F004DB02
5F004DB03
5F004DB07
5F004EA03
5F004EA28
5F004EA37
(57)【要約】
【課題】エッチングで形成される凹部の形状を制御する技術を提供する。
【解決手段】
プラズマ処理方法が提供される。この方法は、(a)シリコン含有膜とシリコン含有膜上に形成されたマスク膜とを有する基板をチャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、(b)チャンバ内に処理ガスを供給する工程と、(c)RF信号を供給してチャンバ内に処理ガスのプラズマを生成するとともに基板支持部にバイアス信号を供給して、基板をエッチングする工程と、を含む。RF信号は、第1の電力レベルを有する第1の期間と、第1の電力レベルよりも低い第2の電力レベルを有する第2の期間とを交互に含むパルス波である。(c)の工程において、エッチングの進行に伴って第1の電力レベルに対する第2の電力レベルを減少させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シリコン含有膜と前記シリコン含有膜上に形成されたマスク膜とを有する基板をチャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、
(b)前記チャンバ内に処理ガスを供給する工程と、
(c)RF信号を供給して前記チャンバ内に前記処理ガスのプラズマを生成するとともに前記基板支持部にバイアス信号を供給して、前記基板をエッチングする工程と、を含み、
前記RF信号は、第1の電力レベルを有する第1の期間と、前記第1の電力レベルよりも低い第2の電力レベルを有する第2の期間とを交互に含むパルス波であり、
前記(c)の工程において、エッチングの進行に伴って前記第1の電力レベルに対する前記第2の電力レベルを減少させる、
プラズマ処理方法。
【請求項2】
前記バイアス信号は、電力レベルが異なる2つの期間又は電圧レベルが異なる2つの期間を交互に含むパルス波である、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記バイアス信号は、連続波である、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
(a)シリコン含有膜と前記シリコン含有膜上に形成されたマスク膜とを有する基板をチャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、
(b)前記チャンバ内に処理ガスを供給する工程と、
(c)RF信号を供給して前記チャンバ内に前記処理ガスのプラズマを生成するとともに、前記基板支持部にバイアス信号を供給して、前記基板をエッチングする工程と、を含み、
前記バイアス信号は、第3の電力又は電圧レベルを有する第3の期間と、前記第3の電力又は電圧レベルよりも低い第4の電力又は電圧レベルを有する第4の期間とを交互に含むパルス波であり、
前記(c)の工程において、前記第3の電力又は電圧レベルに対する前記第4の電力又は電圧レベルをエッチングの進行に伴って増加させる、
プラズマ処理方法。
【請求項5】
前記RF信号は、電力レベルが異なる2つの期間を交互に含むパルス波である、請求項4に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記RF信号は、連続波である、請求項4に記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】
前記バイアス信号として、RF信号を用いる、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項8】
前記バイアス信号として、DC信号を用いる、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】
(a)シリコン含有膜と前記シリコン含有膜上に形成されたマスク膜とを有する基板をチャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、
(b)前記チャンバ内に処理ガスを供給する工程と、
(c)ソースRF信号を供給して前記チャンバ内に前記処理ガスのプラズマを生成するとともに、前記基板支持部にバイアスRF信号を供給して、前記基板をエッチングする工程と、を含み、
前記ソースRF信号は、第1の電力レベルを有する第1の期間と、前記第1の電力レベルよりも低い第2の電力レベルを有する第2の期間とを交互に含むパルス波であり、
前記バイアスRF信号は、第3の電力レベルを有する第3の期間と、前記第3の電力レベルよりも低い第4の電力レベルを有する第4の期間とを交互に含むパルス波であり、
前記(c)の工程は、(c1)エッチングの進行に伴って前記第1の電力レベルに対する前記第2の電力レベルを減少させる工程と、(c2)エッチングの進行に伴って前記第3の電力レベルに対する前記第4の電力レベルを増加させる工程と、を含む、
プラズマ処理方法。
【請求項10】
前記(c1)の工程において、前記第3の電力レベルに対する前記第4の電力レベルを一定にし、前記(c2)の工程において、前記第1の電力レベルに対する前記第2の電力レベルを一定にする、請求項9に記載のプラズマ処理方法。
【請求項11】
前記(c)の工程において、前記(c1)の工程を行った後、前記(c2)の工程を行う、請求項9又は請求項10のいずれかに記載のプラズマ処理方法。
【請求項12】
前記(c)の工程において、エッチング時間又はエッチングの深さが所与の時間又は深さを超えた後に、前記(c2)の工程を行う、請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項13】
前記(c)の工程において、エッチングの進行に伴って、前記チャンバ内の圧力を低下させる、請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項14】
前記処理ガスは、Cxyガス(x、yは正の整数)又はCstuガス(s、t,uは正の整数)を含む、請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項15】
前記(c)の工程により形成される凹部のアスペクト比が100以上である、請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項16】
前記ソースRF信号のパルス波のデューティ比、および/または、前記バイアスRF信号のパルス波のデューティ比は、20%以上80%以下である、請求項9乃至請求項12のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項17】
前記シリコン含有膜は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜との積層膜である、請求項1乃至請求項16のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項18】
前記積層膜は、3D-NAND構造に含まれる、請求項17に記載のプラズマ処理方法。
【請求項19】
前記マスク膜は、アモルファスカーボン膜である、請求項1乃至請求項18のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項20】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられ、シリコン含有膜と前記シリコン含有膜上に形成されたマスク膜とを有する基板を支持するように構成された基板支持部と、
前記チャンバ内に処理ガスを供給するように構成されたガス供給部と、
ソースRF信号及びバイアスRF信号を生成する電源であって、前記ソースRF信号は、第1の電力レベルを有する第1の期間と、前記第1の電力レベルよりも低い第2の電力レベルを有する第2の期間とを交互に含むパルス波であり、前記バイアスRF信号は、第3の電力レベルを有する第3の期間と、前記第3の電力レベルよりも低い第4の電力レベルを有する第4の期間とを交互に含むパルス波である、電源と、
前記電源から前記ソースRF信号を供給して前記チャンバ内に前記処理ガスのプラズマを生成するとともに、前記電源から前記バイアスRF信号を前記基板支持部に供給して、前記基板をエッチングする制御を実行するように構成された制御部と、を有し、
前記制御部は、エッチングの進行に伴って前記第1の電力レベルに対する前記第2の電力レベルを減少させる制御と、エッチングの進行に伴って前記第3の電力レベルに対する前記第4の電力レベルを増加させる制御と、を実行する、
プラズマ処理システム。
【請求項21】
容量結合型のプラズマ処理装置を含む、請求項20に記載のプラズマ処理システム。
【請求項22】
前記ソースRF信号は、前記基板支持部に供給される、請求項20又は請求項21のいずれかに記載のプラズマ処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理方法及びプラズマ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリコン含有膜をエッチングする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-39309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、エッチングで形成される凹部の形状を制御する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの例示的実施形態において、(a)シリコン含有膜と前記シリコン含有膜上に形成されたマスク膜とを有する基板をチャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、(b)前記チャンバ内に処理ガスを供給する工程と、(c)RF信号を供給して前記チャンバ内に前記処理ガスのプラズマを生成するとともに前記基板支持部にバイアス信号を供給して、前記基板をエッチングする工程と、を含み、前記RF信号は、第1の電力レベルを有する第1の期間と、前記第1の電力レベルよりも低い第2の電力レベルを有する第2の期間とを交互に含むパルス波であり、前記(c)の工程において、エッチングの進行に伴って前記第1の電力レベルに対する前記第2の電力レベルを減少させる、プラズマ処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一つの例示的実施形態によれば、エッチングで形成される凹部の形状を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】プラズマ処理システム1を概略的に示す図である。
図2】本処理方法の一例を示すフローチャートである。
図3】工程ST1で提供される基板Wの断面構造の一例を模式的に示す図である。
図4A-4F】工程ST3A乃至ST3Fにおける処理後の基板Wの断面構造の
図5A-5F】工程ST3A乃至ST3FにおけるソースRF信号の一例を示すタイミングチャートである。
図6A-6F】工程ST3A乃至ST3FにおけるバイアスRF信号の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、(a)シリコン含有膜とシリコン含有膜上に形成されたマスク膜とを有する基板をチャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、(b)チャンバ内に処理ガスを供給する工程と、(c)RF信号を供給してチャンバ内に処理ガスのプラズマを生成するとともに基板支持部にバイアス信号を供給して、基板をエッチングする工程と、を含み、RF信号は、第1の電力レベルを有する第1の期間と、第1の電力レベルよりも低い第2の電力レベルを有する第2の期間とを交互に含むパルス波であり、(c)の工程において、エッチングの進行に伴って第1の電力レベルに対する第2の電力レベルを減少させるプラズマ処理方法が提供される。
【0010】
一つの例示的実施形態において、バイアス信号は、電力又は電圧レベルが異なる2つの期間を交互に含むパルス波である。
【0011】
一つの例示的実施形態において、バイアス信号は、連続波である。
【0012】
一つの例示的実施形態において、(a)シリコン含有膜とシリコン含有膜上に形成されたマスク膜とを有する基板をチャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、(b)チャンバ内に処理ガスを供給する工程と、(c)RF信号を供給してチャンバ内に処理ガスのプラズマを生成するとともに、基板支持部にバイアス信号を供給して、基板をエッチングする工程と、を含み、バイアス信号は、第3の電力又は電圧レベルを有する第3の期間と、第3の電力又は電圧レベルよりも低い第4の電力又は電圧レベルを有する第4の期間とを交互に含むパルス波であり、(c)の工程において、第3の電力又は電圧レベルに対する第4の電力又は電圧レベルをエッチングの進行に伴って増加させるプラズマ処理方法が提供される。
【0013】
一つの例示的実施形態において、RF信号は、電力レベルが異なる2つの期間を交互に含むパルス波である。
【0014】
一つの例示的実施形態において、RF信号は、連続波である。
【0015】
一つの例示的実施形態において、バイアス信号として、RF信号を用いる。
【0016】
一つの例示的実施形態において、バイアス信号として、DC信号を用いる。
【0017】
一つの例示的実施形態において、(a)シリコン含有膜とシリコン含有膜上に形成されたマスク膜とを有する基板をチャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、(b)チャンバ内に処理ガスを供給する工程と、(c)ソースRF信号を供給してチャンバ内に処理ガスのプラズマを生成するとともに、基板支持部にバイアスRF信号を供給して、基板をエッチングする工程と、を含み、ソースRF信号は、第1の電力レベルを有する第1の期間と、第1の電力レベルよりも低い第2の電力レベルを有する第2の期間とを交互に含むパルス波であり、バイアスRF信号は、第3の電力レベルを有する第3の期間と、第3の電力レベルよりも低い第4の電力レベルを有する第4の期間とを交互に含むパルス波であり、(c)の工程は、(c1)エッチングの進行に伴って第1の電力レベルに対する第2の電力レベルを減少させる工程と、(c2)エッチングの進行に伴って第3の電力レベルに対する第4の電力レベルを増加させる工程と、を含むプラズマ処理方法が提供される。
【0018】
一つの例示的実施形態において、(c1)の工程において、第3の電力レベルに対する第4の電力レベルを一定にし、(c2)の工程において、第1の電力レベルに対する第2の電力レベルを一定にする。
【0019】
一つの例示的実施形態において、(c)の工程において、(c1)の工程を行った後、(c2)の工程を行う。
【0020】
一つの例示的実施形態において、(c)の工程において、エッチング時間又はエッチングの深さが所与の時間又は深さを超えた後に、(c2)の工程を行う。
【0021】
一つの例示的実施形態において、(c)の工程において、エッチングの進行に伴って、チャンバ内の圧力を低下させる。
【0022】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、Cxyガス(x、yは正の整数)又はCstuガス(s、t,uは正の整数)を含む。
【0023】
一つの例示的実施形態において、(c)の工程により形成される凹部のアスペクト比が100以上である。
【0024】
一つの例示的実施形態において、ソースRF信号のパルス波のデューティ比、および/または、バイアスRF信号のパルス波のデューティ比は、20%以上80%以下である。
【0025】
一つの例示的実施形態において、シリコン含有膜は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜との積層膜である。
【0026】
一つの例示的実施形態において、積層膜は、3D-NAND構造に含まれる。
【0027】
一つの例示的実施形態において、マスク膜は、アモルファスカーボン膜である。
【0028】
一つの例示的実施形態において、チャンバと、チャンバ内に設けられ、シリコン含有膜とシリコン含有膜上に形成されたマスク膜とを有する基板を支持するように構成された基板支持部と、チャンバ内に処理ガスを供給するように構成されたガス供給部と、ソースRF信号及びバイアスRF信号を生成する電源であって、ソースRF信号は、第1の電力レベルを有する第1の期間と、第1の電力レベルよりも低い第2の電力レベルを有する第2の期間とを交互に含むパルス波であり、バイアスRF信号は、第3の電力レベルを有する第3の期間と、第3の電力レベルよりも低い第4の電力レベルを有する第4の期間とを交互に含むパルス波である、電源と、電源からソースRF信号を供給してチャンバ内に処理ガスのプラズマを生成するとともに、電源からバイアスRF信号を基板支持部に供給して、基板をエッチングする制御を実行するように構成された制御部と、を有し、制御部は、エッチングの進行に伴って第1の電力レベルに対する第2の電力レベルを減少させる制御と、エッチングの進行に伴って第3の電力レベルに対する第4の電力レベルを増加させる制御と、を実行するプラズマ処理システムを提供する。
【0029】
一つの例示的実施形態において、容量結合型のプラズマ処理装置を含む。
【0030】
一つの例示的実施形態において、ソースRF信号は、基板支持部に供給される。
【0031】
以下、図面を参照して、本開示の各実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明する。図面の寸法比率は実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は図示の比率に限られるものではない。
【0032】
<プラズマ処理システムの構成例>
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。図1は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0033】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0034】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、エッジリングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0035】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、RF又はDC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよく、この場合、RF又はDC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号又はDC信号がRF又はDC電極に接続される場合、RF又はDC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材とRF又はDC電極との両方が2つの下部電極として機能してもよい。
【0036】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0037】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110 内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0038】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0039】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0040】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0041】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0042】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0043】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0044】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、DCに基づく電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0045】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0046】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0047】
<プラズマ処理方法の一例>
図2は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理方法(以下「本処理方法」ともいう。)を示すフローチャートである。図2に示すように、本処理方法は、基板を提供する工程ST1と、処理ガスを供給する工程ST2と、基板をエッチングする工程ST3とを含む。基板をエッチングする工程ST3は、第1領域をエッチングする工程ST3A第2領域をエッチングする工程ST3B、第3領域をエッチングする工程ST3C、第4領域をエッチングする工程ST3D、第5流域をエッチングする工程ST3E、第6領域をエッチングする工程ST6Fを含む。
【0048】
各工程における処理は、図1に示すプラズマ処理システムで実行されてよい。以下では、制御部2がプラズマ処理装置1の各部を制御して、基板Wに対して本処理方法を実行する場合を例に説明する。
【0049】
(工程ST1:基板の提供)
工程ST1において、基板Wは、プラズマ処理装置1のプラズマ処理空間10s内に提供される。基板Wは、基板支持部11の上面に配置される。
【0050】
図3は、工程ST1で提供される基板Wの断面構造の一例を示す図である。基板Wは、下地膜UF上に、シリコン含有膜SF及びマスク膜MFがこの順で形成されている。基板Wは、例えば、DRAM、3D-NANDフラッシュメモリ等の半導体メモリデバイスを含む半導体デバイスの製造に用いられてよい。
【0051】
下地膜UFは、例えば、シリコンウェハやシリコンウェハ上に形成された有機膜、誘電体膜、金属膜、半導体膜等でよい。下地膜UFは、複数の膜が積層されて構成されてよい。
【0052】
シリコン含有膜SFは、本処理方法におけるエッチング対象膜である。シリコン含有膜SFは、一例では、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜でよい。シリコン含有膜SFは、複数の膜が積層されて構成されてよい。例えば、シリコン含有膜SFは、シリコン酸化膜と多結晶シリコン膜とが交互に積層されて構成されてよい。また例えば、シリコン含有膜SFは、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが交互に積層されて構成されてよい。
【0053】
マスク膜MFは、例えば、アモルファスカーボン膜、スピンオンカーボン膜、フォトレジスト膜等の炭素含有膜でよい。マスク膜MFは、1つの層からなる単層マスクでも、2つ以上の層からなる多層マスクであってもよい。マスク膜MFは、少なくとも一つの開口OPを有する。開口OPは、基板Wの平面視、すなわち、基板Wを図3の上から下に向かう方向に見た場合において、任意の形状を有してよい。当該形状は、例えば、円、楕円、矩形、線やこれらの1種類以上を組み合わせた形状であってよい。マスク膜MFは、複数の開口OPを有してよい。
【0054】
(工程ST2:処理ガスの供給)
工程ST2において、処理ガスがプラズマ処理空間10s内に供給される。処理ガスは、基板Wに形成されたシリコン含有膜SFをエッチングするために用いられるガスである。処理ガスの種類は、シリコン含有膜SFの材料、マスク膜MFの材料、下地膜UFの材料、マスク膜MFが有するパターン、エッチングの深さ等に基づいて適宜選択されてよい。
【0055】
処理ガスは、例えば、Cxyガス及びCstuガスのいずれか一方又は双方を含んでよい。ここで、x、y、s、t,uは正の整数である。Cxyガスは、C46ガス、C48ガス、C36ガス及びC78ガスからなる群から選択される少なくとも1種でよい。Cstuガスは、CH22ガス又はCH3Fガスでよい。処理ガスは、H2ガスやCH4ガス等の水素含有ガスを含んでよい。
【0056】
(工程ST3:エッチング)
工程ST3において、第1のRF生成部31aからソースRF信号(RF電力)が下部電極及び/又は上部電極に供給される。また第2のRF生成部31bから、バイアスRF信号が下部電極に供給される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された処理ガスからプラズマが生成されるとともに基板Wにバイアス電位が発生する。生成されたプラズマ中のイオン、ラジカルといった活性種が基板Wに引きよせられ、シリコン含有膜SFがエッチングされる。なお、ソースRF信号の供給を開始するタイミングとバイアスRF信号の供給を開始するタイミングとは、同時でよく、また異なってもよい。
【0057】
工程ST3の工程ST3A~工程ST3Fにおいては、シリコン含有膜SFのエッチングの進行に伴って、ソースRF信号及びバイアスRF信号の電力レベルを変化させる。この点を図4A図4F図5A図5F、及び、図6A図6Fを用いて説明する。なお、エッチングの進行は、エッチング深さの伸長やエッチング時間の経過に基づいて判断してよい。
【0058】
図4A図4Fは、それぞれ工程ST3A~工程ST3Fにおける処理後の基板Wの断面構造の一例を示す図である。
【0059】
図5A図5Fは、それぞれ、工程ST3A~工程ST3FにおけるソースRF信号の一例を示すタイミングチャートである。図5A図5Fにおいて、横軸は時間を示す。また縦軸は、ソースRF信号の電力レベルの実効値を示す。「L11」「L12」「L13」「L14」は、「H1」で示す電力レベルよりも低いことを示す。またL11、L12、L13、L14には、L11>L12>L13>L14の関係が成り立つ(すなわち、L11、L12、L13、L14の中では、L11の電力レベルが最も高く、L14の電力レベルが最も低い)。「L14」は、電力レベルが0Wである場合、すなわち信号が供給されていない場合を含む。図5A図5Fに示すとおり、すなわち、ソースRF信号は、H1の電力レベル(第1の電力)を有するH1期間(第1の期間)とH1よりも低いL11、L12、L13又はL14の電力レベル(第2の電力)を有するL1期間(第2の期間)とを交互に繰り返すパルス波である。
【0060】
図6A図6Fは、それぞれ工程ST3A~工程ST3FにおけるバイアスRF信号の一例を示すタイミングチャートである。図6A図6Fにおいて、横軸は時間を示す。また縦軸は、バイアスRF信号の電力レベルの実効値を示す。「L21」「L22」「L23」は、「H2」で示す電力レベルよりも低いことを示す。またL21、L22、L23には、L21<L22<L23の関係が成り立つ(すなわち、L21、L22、L23の中では、L21の電力レベルが最も低く、L23の電力レベルが最も高い)。「L21」は、電力レベルが0Wである場合、すなわち信号が供給されていない場合を含む。バイアスRF信号は、H2の電力レベル(第3の電力)を有するH2期間(第3の期間)とH2よりも低いL21、L22又はL23の電力レベル(第4の電力)を有するL2期間(第4の期間)とを交互に含むパルス波である。
【0061】
(工程ST3A:第1領域のエッチング)
工程ST3Aは、エッチングの開始から、エッチングにより形成される凹部RCのエッチング深さがd1になるまでの第1領域で実行される(図4A参照)。凹部RCは、シリコン含有膜SFのうちマスク膜MFの開口OPに対応する部分である。工程ST3Aでは、ソースRF信号として、H1の電力レベルを有するH1期間とH1よりも低い電力レベルL11を有するL1期間とを交互に含むパルス波を用いる(図5A参照)。またバイアスRF信号として、H2の電力レベルを有するH2期間とH2よりも低い電力レベルL21を有するL2期間とを交互に含むパルス波を用いる(図6A参照)。
【0062】
(工程ST3B:第2領域のエッチング)
工程ST3Bは、凹部RCのエッチング深さがd2になるまでの第2領域で実行される(図4B参照)。エッチング深さd2は、エッチング深さd1より深く、d2>d1の関係が成り立つ。工程ST3Bでは、ソースRF信号として、H1の電力レベルを有するH1期間とH1よりも低い電力レベルL12を有するL1期間とを交互に含むパルス波を用いる(図5B参照)。工程ST3BのソースRF信号の電力レベルL12は、工程ST3AソースRF信号の電力レベルL11よりも低い。バイアスRF信号としては、工程ST3Aと同一のパルス波を用いる(図6B参照)。
【0063】
(工程ST3C:第3領域のエッチング)
工程ST3Cは、凹部RCのエッチング深さがd3になるまでの第3領域で実行される(図4C参照)。エッチング深さd3は、エッチングd2より深く、d3>d2の関係が成り立つ。エッチング深さd3は、例えば、工程ST3でエッチングするべき深さの半分でよい。エッチング深さd3は、一例ではシリコン含有膜SFの膜厚の半分の大きさでよい。工程ST3Cでは、ソースRF信号として、H1の電力レベルを有するH1期間とH1よりも低い電力レベルL13を有するL1期間とを交互に含むパルス波を用いる(図5C参照)。工程ST3CのソースRF信号の電力レベルL13は、工程ST3BのソースRF信号の電力レベルL12よりも低い。バイアスRF信号としては、工程ST3Aや工程ST3Bと同一のパルス波を用いる(図6C参照)。
【0064】
(工程ST3D:第4領域のエッチング)
工程ST3Dは、凹部RCのエッチング深さがd4になるまでの第4領域で実行される(図4D参照)。エッチング深さd4は、エッチング深さd3より深く、d4>d3の関係が成り立つ。工程ST3Dでは、ソースRF信号として、H1の電力レベルを有するH1期間とH1よりも低い電力レベルL14を有するL1期間とを交互に含むパルス波を用いる(図5D参照)。工程ST3DのソースRF信号の電力レベルL14は、工程ST3CのソースRF信号の電力レベルL13よりも低い。バイアスRF信号としては、工程ST3A~工程ST3Cと同一のパルス波を用いる(図6D参照)。
【0065】
(工程ST3E:第5領域のエッチング)
工程ST3Eは、凹部RCのエッチング深さがd5になるまでの第5領域で実行される(図4E参照)。エッチング深さd5は、エッチング深さd4より深く、d2>d1の関係が成り立つ。工程ST3Eでは、ソースRF信号として、工程ST3Dと同一のパルス波を用いる(図5E参照)。バイアスRF信号としては、H2の電力レベルを有するH2期間とH2よりも低い電力レベルL22を有するL2期間とを交互に含むパルス波を用いる(図6E参照)。工程ST3EのバイアスRF信号の電力レベルL22は、工程ST3A~工程ST3DのバイアスRF信号の電力レベルL21よりも高い。
【0066】
(工程ST3F:第6領域のエッチング)
工程ST3Fは、凹部RCのエッチング深さがd6になるまでの第6領域で実行される(図4F参照)。エッチング深さd6は、エッチング深さd5より深く、d6>d5の関係が成り立つ。エッチング深さd6は、一例では、シリコン含有膜SFの膜厚であり、この場合、工程ST3Fは、凹部RCの底部が下地膜UFに到達するまで実行される。この状態における凹部RCのアスペクト比は、例えば、20以上であってよく、30以上、40以上、50以上、又は100以上であってもよい。工程ST3Fでは、ソースRF信号として、工程ST3Dや工程ST3Eと同一のパルス波を用いる(図5F参照)。バイアスRF信号としては、H2の電力レベルを有するH2期間とH2よりも低い電力レベルL23を有するL2期間とを交互に含むパルス波を用いる(図6E参照)。工程ST3FのバイアスRF信号の電力レベルL23は、工程ST3EのバイアスRF信号の電力レベルL22よりも高い。
【0067】
工程ST3において、ソースRF信号のパルス波のデューティ比、すなわち、H1期間及びL1期間に占めるH1期間の割合は、20%以上80%以下でよい。またバイアスRF信号のパルス波のデューティ比、すなわちH2期間及びL2期間に占めるH2期間の割合は、20%以上80%以下でよい。ソースRF信号のH1期間は、バイアスRF信号のH2期間と同期してよく、また同期しなくてもよい。ソースRF信号のH1期間の時間長は、バイアスRF信号のH2期間の時間長と同一でよく、また異なってもよい。ソースRF信号のH1期間の一部又は全部は、バイアスRF信号のH2期間と重複してよい。
【0068】
工程ST3においては、ソースRF信号のH1期間の電力レベルH1に対するL1期間の電力レベルは、工程ST3A~工程ST3Dにかけて段階的に減少し、工程ST3D~工程3Fにおいて最も低くなってよい(図5A図5F参照)。これにより、工程ST3A~工程ST3C、すなわち凹部RCの深さがより浅い領域のエッチングでは、この順で高密度のプラズマが生成される。また工程ST3D~工程3F、すなわち、凹部RCの深さがより深い領域のエッチングでは、工程ST3A~工程ST3Cに比べて低密度のプラズマが生成される。
【0069】
工程ST3においては、バイアスRF信号のH2期間の電力レベルH2に対するL2期間の電力レベルは、工程ST3A~工程ST3Dにおいて最も低くなり、工程ST3D~工程ST3Fにかけて段階的に増加してよい(図6A図6F参照)。これにより、工程ST3A~工程ST3D、すなわち凹部RCの深さがより浅い領域のエッチングでは工程ST3E~工程ST3F、すなわち凹部RCの深さがより深い領域のエッチングに比べて低いバイアス電位が基板Wに生じる。また工程ST3Fは、工程ST3Eに比べてより高いバイアス電位が基板Wに生じる。
【0070】
なお、工程ST3において、ソースRF信号のL1期間の電力レベルを段階的に減少させている間、すなわち、工程ST3A~工程ST3Dでは、バイアスRF信号のL2期間の電力レベルは一定にしてよい。また、バイアスRF信号のL2期間の電力レベルを段階的に増加させている間、すなわち工程ST3D~工程ST3Fでは、ソースRF信号のL1期間の電力レベルは一定にしてよい。
【0071】
以上によれば、工程ST3においては、凹部RCの深さがより浅い箇所では、より高密度のプラズマかつより低いバイアス電位でのエッチングがされ得る。高密度のプラズマでは処理ガス中のCxyガス及び/又はCstuガス解離が促進され、より吸着係数の高い分子が生成されやすくなる。そのためマスク膜MFや凹部RCの側壁に付着する反応生成物の量が増加し得る。他方、高密度のプラズマでは基板Wに向かうイオンの流れが減少し、また低いバイアス電位により、マスク膜MFや凹部RCの側壁に対するスパッタリングが低減される。以上により、凹部RCの深さが浅い領域では、マスク膜MFや凹部RCの側壁に保護膜を形成することが容易になる。この保護膜は、工程ST3の以降のエッチング(凹部RCの深さがより深い領域でのエッチングも含む)において、凹部RCの側壁を保護し得る。よって、凹部RCの開口幅が一部で広くなるボーイングが抑制され得る。
【0072】
また工程ST3においては、凹部RCの深さが深い領域では、より低密度のプラズマかつより高いバイアス電位でのエッチングがされ得る。低密度のプラズマでは処理ガス中のCxyガス及び/又はCstuガス解離が促進されにくく、吸着係数の高い分子が生成されにくい。そのためマスク膜MFや凹部RCの側壁に付着する反応生成物の量が減少し得る。これにより、マスク膜MFや凹部RCの開口が狭まることが抑制され、凹部RCに入射したイオンの入射角が変化することが抑制され得る。また、高密度のプラズマにより凹部RCの底部に向かうイオンの流れが増加し得る。さらに、高いバイアス電位でエッチングを行うため、凹部RCに入射するイオンの入射角がより垂直に近くなり得る。以上より、凹部RCの深さが深い箇所において、凹部RCの底部幅(ボトムCD)が狭くなることが抑制され得る。
【0073】
上述のとおり、工程ST3においては、ソースRF信号のL1期間の電力レベルを段階的に減少させ、その後、バイアスRF信号のL2期間の電力レベルを段階的に増加させてよい。一例では、工程ST3において、ソースRF信号のL1期間の電力レベルを一定に保ち、バイアスRF信号のL2期間の電力レベルのみを段階的に増加させてよい。また、ソースRF信号のL1期間の電力レベルのみを段階的に減少させ、バイアスRF信号のL2期間の電力レベルを一定に保ってもよい。
【0074】
上述のとおり、工程ST3においては、ソースRF信号のパルス波及びバイアスRF信号のパルス波を用いてよい。一例では、ソースRF信号及びバイアスRF信号のいずれかは、H1期間やL1期間等を有しない連続波としてよい。例えば、ソースRF信号の連続波とバイアスRF信号のパルス波を用いてよい。この場合、工程ST3A~工程ST3Dにおいて、ソースRF信号の連続波の電力レベルを段階的に減少させ、工程ST3D~工程ST3Fにおいて、バイアスRF信号のL2期間の電力レベルを段階的に増加させてよい。また例えば、ソースRF信号のパルス波とバイアスRF信号の連続波を用いてよい。この場合、工程ST3A~工程ST3Dにおいて、ソースRF信号のL1期間の電力レベルを段階的に減少させ、工程ST3E~工程ST3Fにおいて、バイアスRF信号の連続波の電力レベルを段階的に増加させてよい。
【0075】
上述のとおり、工程ST3においては、下部電極に供給するバイアス信号(電力)として、バイアスRF信号を用いてよい。一例では、第1のDC生成部32aからバイアスDC信号として負極性の直流電圧を下部電極に供給してよい。この場合、バイアスDC信号の電圧レベルは、負極性の直流電圧の絶対値の実効値である。バイアスDC信号は、パルス波でよく、また連続波でもよい。
【0076】
上述のとおり、工程ST3においては、ソースRF信号やバイアスRF信号の電力レベルを変化させてエッチングを行う領域は、凹部RCの深さに応じて6つ設けてよい。一例では、当該領域は2以上でよい。例えば、シリコン含有膜SFの厚みの上半分をエッチングする上部領域と、下半分をエッチングする下部領域の2つに分けて、上部領域と下部領域においてソースRF信号やバイアスRF信号の電力レベルを変化させてよい。また当該領域は、エッチングの深さ(凹部RCの深さ)ではなく、エッチング時間に応じて設定してよい。
【0077】
一例では、工程ST3において、エッチングの進行に伴って、プラズマ処理チャンバ10内の圧力を減少させてよい。これにより、凹部RCの深さがより浅い箇所でより高密度のプラズマが生成され、凹部RCの深さがより深い箇所でより低密度のプラズマが生成され得る。エッチングの進行は、エッチング深さの伸長又はエッチング時間の経過に基づいて判断してよい。
【0078】
<実施例>
次に、本処理方法の実施例について説明する。本開示は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0079】
実施例1~実施例3において、図3に示す基板Wに対して、本処理方法を適用し、C48ガスを含む処理ガスでシリコン含有膜SFをエッチングした。各実施例において、基板Wのシリコン含有膜SFは、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜との積層膜であり、マスク膜MFは、アモルファスカーボン膜である。マスク膜MFの開口パターンは、ホールパターンである。各実施例において、シリコン含有膜SFを6つの領域(上から順に「第1領域」、「第2領域」等という)に分けて、それぞれの領域で、ソースRF信号のパルス波やバイアスRF信号のパルス波の電力レベルを変化させてエッチングを行った。各領域のエッチング時間は、いずれも300秒であった。
【0080】
実施例1では、ソースRF信号のL1期間の電力レベルを段階的に減少させ、その後、バイアスRF信号のL2期間の電力レベルを段階的に増加させた。ソースRF信号のH1期間の電力レベルH1は、第1領域~第6領域においていずれも7500[W]であった。ソースRF信号のL1期間の電力レベルは、第1領域で400[W]、第2領域で200[W]、第3領域~第6領域で0[W]であった。バイアスRF信号のH2期間の電力レベルは、第1領域~第6領域でいずれも12000[W]であった。バイアスRF信号のL2期間の電力レベルは、第1領域~第4領域で0[W]、第5領域で200[W]、第6領域で700[W]であった。
【0081】
実施例2では、ソースRF信号のL1期間の電力レベルのみを段階的に減少させ、バイアスRF信号のL2期間の電力レベルを一定に保った。ソースRF信号のH1期間の電力レベルH1は、第1領域~第6領域においていずれも7500[W]であった。ソースRF信号のL1期間の電力レベルは、第1領域で500[W]、第2領域で300[W]、第3領域で100[W]、第4領域~第6領域において0[W]であった。バイアスRF信号のH2期間の電力レベルは、第1領域~第6領域においていずれも12000[W]であった。バイアスRF信号のL2期間の電力レベルは、第1領域~第6領域においていずれも0[W]であった。
【0082】
実施例3では、ソースRF信号のL1期間の電力レベルを一定に保ち、バイアスRF信号のL2期間の電力レベルのみを段階的に増加させた。具体的には、ソースRF信号のH1期間の電力レベルH1は、第1領域~第6領域においていずれも7500[W]であった。ソースRF信号のL1期間の電力レベルは、第1領域~第6領域においていずれも0[W]であった。バイアスRF信号のH2期間の電力レベルは、第1領域~第6領域でいずれも12000[W]であった。バイアスRF信号のL2期間の電力レベルは、第1領域~第4領域で0[W]、第5領域で200[W]、第6領域で700[W]であった。
【0083】
参考例では、実施例における基板Wと同一の構成及びホールパターンを有する基板Wについて、C48ガスを含む処理ガスで、シリコン含有膜SFをエッチングした。参考例では、ソースRF信号のパルス波やバイアスRF信号のパルス波の電力レベルを変化させず、連続して1800秒のエッチングを行った。ソースRF信号のH1期間の電力レベルは、7500[W]であった。ソースRF信号のL1期間の電力レベルは、0[W]であった。バイアスRF信号のH2期間の電力レベルは、12000[W]であった。バイアスRF信号のL2期間の電力レベルは、0[W]であった。
【0084】
表1は、各実施例及び参考例にかかる各種測定結果を示す。表1において、「D」は、処理後のシリコン含有膜SFのエッチング深さである。「BW」は、凹部RCの最大開口幅(ボーイングCD)である。「Bt」は、凹部RCの底部の幅(ボトムCD)である。「BW-Bt」は、ボーイングCDとボトムCDとの差である。
【0085】
【表1】
【0086】
表1に示すとおり、実施例におけるボーイングCDとボトムCDとの差は、いずれも参考例に比べて改善した。すなわち、実施例では、エッチングによるボーイングを抑制しつつ、凹部RCの底部幅を拡大することができた。
【0087】
本処理方法は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変形をなし得る。例えば、本処理方法は、容量結合型のプラズマ処理装置1以外にも、誘導結合型プラズマやマイクロ波プラズマ等、任意のプラズマ源を用いたプラズマ処理装置を用いて実行してよい。
【符号の説明】
【0088】
1……プラズマ処理装置、2……制御部、10……プラズマ処理チャンバ、10s……プラズマ処理空間、11……基板支持部、13……シャワーヘッド、20……ガス供給部、31a……第1のRF生成部、31b……第2のRF生成部、32a……第1のDC生成部、MF…マスク膜、OP…開口、SF…シリコン含有膜、RC……凹部、UF…下地膜、W…基板
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F