(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157086
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】基板処理装置、及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20241030BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
H01L21/306 B
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071194
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】丸本 洋
(72)【発明者】
【氏名】坂口 慶介
(72)【発明者】
【氏名】矢野 英嗣
【テーマコード(参考)】
5F043
5F057
【Fターム(参考)】
5F043AA02
5F043BB02
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE23
5F043EE24
5F043EE25
5F043EE27
5F043FF07
5F043GG10
5F057AA12
5F057BA11
5F057BB03
5F057CA14
5F057DA11
5F057DA29
5F057FA42
5F057FA43
(57)【要約】
【課題】フッ酸と硝酸を含む水溶液を用いた基板表面のエッチングプロファイルの形状を安定化する、技術を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、フッ酸と硝酸を含む水溶液を基板に供給することで前記基板をエッチングする処理部と、前記水溶液を調製する調液部と、前記調液部から前記処理部に前記水溶液を供給する供給部と、前記処理部から前記調液部に前記水溶液を戻す回収部と、を備える。前記回収部は、前記水溶液に含まれる亜硝酸(HNO
2)を分解する分解部を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ酸と硝酸を含む水溶液を基板に供給することで前記基板をエッチングする処理部と、
前記水溶液を調製する調液部と、
前記調液部から前記処理部に前記水溶液を供給する供給部と、
前記処理部から前記調液部に前記水溶液を戻す回収部と、
を備え、
前記回収部は、前記水溶液に含まれる亜硝酸(HNO2)を分解する分解部を有する、基板処理装置。
【請求項2】
前記分解部は、前記水溶液を加熱する加熱器を有する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記回収部は、前記水溶液に含まれる亜硝酸(HNO2)と窒素酸化物の少なくとも1つを酸素含有ガスによって酸化する酸化部を有する、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記回収部は、前記水溶液に溶存する窒素酸化物を脱気する脱気部を有する、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
フッ酸と硝酸を含む水溶液を基板に供給することで前記基板をエッチングする処理部と、
前記水溶液を調製する調液部と、
前記調液部から前記処理部に前記水溶液を供給する供給部と、
前記処理部から前記調液部に前記水溶液を戻す回収部と、
を備え、
前記回収部は、前記水溶液に含まれる亜硝酸(HNO2)と窒素酸化物の少なくとも1つを酸素含有ガスによって酸化する酸化部を有する、基板処理装置。
【請求項6】
フッ酸と硝酸を含む水溶液を基板に供給することで前記基板をエッチングする処理部と、
前記水溶液を調製する調液部と、
前記調液部から前記処理部に前記水溶液を供給する供給部と、
前記処理部から前記調液部に前記水溶液を戻す回収部と、
を備え、
前記回収部は、前記水溶液に溶存する窒素酸化物を脱気する脱気部を有する、基板処理装置。
【請求項7】
前記回収部は、前記水溶液を貯留する回収タンクと、前記処理部から前記回収タンクに前記水溶液を送る第1送液ラインと、前記回収タンクから前記調液部に前記水溶液を送る第2送液ラインと、前記第2送液ラインを開閉する開閉弁と、前記回収タンクから排出されるガスに占める窒素酸化物の濃度を検出する濃度検出器と、を有し、
前記基板処理装置は、前記濃度検出器の検出値が許容範囲である場合に前記開閉弁を開く制御を行なう制御部を備える、請求項1、5又は6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記回収部は、前記水溶液を貯留する回収タンクと、前記処理部から前記回収タンクに前記水溶液を送る第1送液ラインと、前記回収タンクから前記調液部に前記水溶液を送る第2送液ラインと、前記第2送液ラインを開閉する開閉弁と、前記回収タンクに貯留されている前記水溶液の色を検出する色検出器と、を有し、
前記基板処理装置は、前記色検出器の検出値が許容範囲である場合に前記開閉弁を開く制御を行なう制御部を備える、請求項1、5又は6に記載の基板処理装置。
【請求項9】
フッ酸と硝酸を含む水溶液を調液部で調製することと、前記調液部から処理部に前記水溶液を供給することと、前記処理部によって前記水溶液を基板に対して供給することで前記基板をエッチングすることと、前記基板に対して供給した前記水溶液を前記処理部から回収部を経由して前記調液部に戻すことと、を有する、基板処理方法であって、
前記回収部において前記水溶液に含まれる亜硝酸(HNO2)を分解することを有する、基板処理方法。
【請求項10】
前記回収部において前記水溶液を加熱することで前記水溶液に含まれる亜硝酸(HNO2)を分解することを有する、請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記回収部において前記水溶液に含まれる亜硝酸(HNO2)と窒素酸化物の少なくとも1つを酸素含有ガスによって酸化することを有する、請求項9又は10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記回収部において前記水溶液に溶存する窒素酸化物を脱気することを有する、請求項9又は10に記載の基板処理方法。
【請求項13】
フッ酸と硝酸を含む水溶液を調液部で調製することと、前記調液部から処理部に前記水溶液を供給することと、前記処理部によって前記水溶液を基板に対して供給することで前記基板をエッチングすることと、前記基板に対して供給した前記水溶液を前記処理部から回収部を経由して前記調液部に戻すことと、を有する、基板処理方法であって、
前記回収部において前記水溶液に含まれる亜硝酸(HNO2)と窒素酸化物の少なくとも1つを酸素含有ガスによって酸化することを有する、基板処理方法。
【請求項14】
フッ酸と硝酸を含む水溶液を調液部で調製することと、前記調液部から処理部に前記水溶液を供給することと、前記処理部によって前記水溶液を基板に対して供給することで前記基板をエッチングすることと、前記基板に対して供給した前記水溶液を前記処理部から回収部を経由して前記調液部に戻すことと、を有する、基板処理方法であって、
前記回収部において前記水溶液に溶存する窒素酸化物を脱気することを有する、基板処理方法。
【請求項15】
前記回収部は、前記水溶液を貯留する回収タンクと、前記処理部から前記回収タンクに前記水溶液を送る第1送液ラインと、前記回収タンクから前記調液部に前記水溶液を送る第2送液ラインと、前記第2送液ラインを開閉する開閉弁と、前記回収タンクから排出されるガスに占める窒素酸化物の濃度を検出する濃度検出器と、を有し、
前記基板処理方法は、前記濃度検出器の検出値が許容範囲である場合に前記開閉弁を開くことを有する、請求項9、13又は14に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記回収部は、前記水溶液を貯留する回収タンクと、前記処理部から前記回収タンクに前記水溶液を送る第1送液ラインと、前記回収タンクから前記調液部に前記水溶液を送る第2送液ラインと、前記第2送液ラインを開閉する開閉弁と、前記回収タンクに貯留されている前記水溶液の色を検出する色検出器と、を有し、
前記基板処理方法は、前記色検出器の検出値が許容範囲である場合に前記開閉弁を開くことを有する、請求項9、13又は14に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の基板処理方法は、基板表面を研削する工程と、研削によって基板表面に形成されたダメージ層を除去する工程と、を有する。ダメージ層を除去する工程は、基板表面に処理液を供給する工程を含む。処理液は、例えばフッ酸と硝酸を含む水溶液である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、フッ酸と硝酸を含む水溶液を用いた基板表面のエッチングプロファイルの形状を安定化する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る基板処理装置は、フッ酸と硝酸を含む水溶液を基板に供給することで前記基板をエッチングする処理部と、前記水溶液を調製する調液部と、前記調液部から前記処理部に前記水溶液を供給する供給部と、前記処理部から前記調液部に前記水溶液を戻す回収部と、を備える。前記回収部は、前記水溶液に含まれる亜硝酸(HNO2)を分解する分解部を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、フッ酸と硝酸を含む水溶液を用いた基板表面のエッチングプロファイルの形状を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る基板処理装置を示す平面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る基板処理方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、エッチング装置の一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、エッチング液の液回路の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、基板表面のエッチングプロファイルの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、基板表面の中心におけるエッチング量の経時変化の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、亜硝酸濃度調整部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。本明細書において、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向及びY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向である。
【0009】
図1を参照して、一実施形態に係る基板処理装置1について説明する。基板処理装置1は、基板Wを処理する。基板Wは、例えばシリコンウェハなどの半導体ウェハを含む。基板Wは、半導体ウェハの上に形成される複数のデバイスを含んでもよい。デバイスは、例えば電子回路を含む。基板Wは、複数枚の半導体ウェハを積層した積層基板であってもよい。積層基板は、複数枚の半導体ウェハを接合することで得られる。
【0010】
基板処理装置1は、搬入出ステーション10と、処理ステーション20と、制御装置90と、を備える。搬入出ステーション10と、処理ステーション20とは、この順番で、X軸負方向側からX軸正方向側に並ぶ。
【0011】
搬入出ステーション10は、載置台11を備える。載置台11には、カセットC1~C2が載置される。カセットC1は、処理前の基板Wを収容する。カセットC2は、処理後の基板Wを収容する。カセットC1、C2の数は特に限定されない。不図示のカセットが、処理の途中で不具合の生じた基板Wを収容してもよい。
【0012】
搬入出ステーション10は、第1搬送領域12と、第1搬送装置13と、を備える。第1搬送領域12は、載置台11と後述するトランジション装置21に隣接する。第1搬送装置13は、第1搬送領域12に隣接する複数の装置間で基板Wを搬送する。第1搬送装置13は、基板Wを保持する搬送アームと、搬送アームを移動または回転させる駆動部と、を有する。搬送アームは、水平方向(X軸方向及びY軸方向の両方向)及び鉛直方向の移動と、鉛直軸を中心とする回転とが可能である。複数の搬送アームが設けられてもよい。
【0013】
処理ステーション20は、トランジション装置21と、第2搬送領域22と、第2搬送装置23と、研削装置24と、洗浄装置25と、エッチング装置26と、を備える。なお、処理ステーション20を構成する装置の配置および数は、
図1に示す配置および数には限定されない。
【0014】
トランジション装置21は、基板Wを一時的に保管する。トランジション装置21は、第1搬送領域12と第2搬送領域22との間に設けられ、第1搬送装置13と第2搬送装置23の間で基板Wを中継する。
【0015】
第2搬送領域22は、トランジション装置21と、研削装置24と、洗浄装置25と、エッチング装置26とに隣接している。第2搬送装置23は、第2搬送領域22に隣接する複数の装置間で基板Wを搬送する。第2搬送装置23は、基板Wを保持する搬送アームと、搬送アームを移動または回転させる駆動部と、を有する。搬送アームは、水平方向(X軸方向及びY軸方向の両方向)及び鉛直方向の移動と、鉛直軸を中心とする回転とが可能である。複数の搬送アームが設けられてもよい。
【0016】
研削装置24は、基板Wを研削する。基板Wを薄化できる。研削装置24は、基板Wの片面を研削してもよいし、基板Wの両面を研削してもよい。基板Wの両面を研削する場合、基板Wの片面と反対面とは別々の研削装置24で研削してもよい。研削装置24は、例えば砥石と基板Wを回転させながら、砥石を基板Wに押し当てることで、基板Wを研削する。
【0017】
洗浄装置25は、基板Wを洗浄する。基板Wに付着した研削屑を除去できる。研削装置24が基板Wの両面を研削する場合、洗浄装置25が基板Wの両面を洗浄する。基板Wの片面と反対面とは別々の洗浄装置25で洗浄してもよい。洗浄装置25は、例えばブラシまたはスポンジで基板Wをスクラブ洗浄する。
【0018】
エッチング装置26は、基板Wに対して処理液を供給することで基板Wをエッチングする。基板Wの研削によって生じたダメージ層を除去でき、基板Wの割れを抑制できる。研削装置24が基板Wの両面を研削する場合、エッチング装置26が基板Wの両面をエッチングする。基板Wの片面と反対面とは別々のエッチング装置26でエッチングしてもよい。エッチング装置26の詳細は、後述する。
【0019】
制御装置90は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)などの演算部91と、メモリなどの記憶部92と、を備える。記憶部92には、基板処理装置1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御装置90は、記憶部92に記憶されたプログラムを演算部91に実行させることにより、基板処理装置1の動作を制御する。基板処理装置1を構成するユニットごとにユニットの動作を制御するユニット制御部が設けられ、複数のユニット制御部を統括制御するシステム制御部が設けられてもよい。ユニット制御部とシステム制御部とで制御装置90が構成されてもよい。制御装置90は、制御部の一例である。
【0020】
次に、
図2を参照して、一実施形態に係る基板処理方法について説明する。基板処理方法は、例えばステップS101~S103を有する。ステップS101~S103は、制御装置90による制御下で実施される。
【0021】
先ず、第1搬送装置13が、基板WをカセットC1から取り出し、トランジション装置21に搬送する。次に、第2搬送装置23が、トランジション装置21から基板Wを取り出し、研削装置24に搬送する。
【0022】
次に、研削装置24が、基板Wを研削する(ステップS101)。基板Wを薄化できる。その後、第2搬送装置23が、基板Wを研削装置24から取り出し、洗浄装置25に搬送する。
【0023】
次に、洗浄装置25が、基板Wを洗浄する(ステップS102)。基板Wに付着した研削屑を除去できる。その後、第2搬送装置23が、基板Wを洗浄装置25から取り出し、エッチング装置26に搬送する。
【0024】
次に、エッチング装置26が、基板Wをエッチングする(ステップS103)。基板Wの研削によって生じたダメージ層を除去でき、基板Wの割れを抑制できる。その後、第2搬送装置23が、基板Wをエッチング装置26から取り出し、トランジション装置21に搬送する。
【0025】
最後に、第1搬送装置13が、基板Wをトランジション装置21から取り出し、カセットC2に収納する。
【0026】
なお、基板処理方法は、ステップS103を有していればよい。例えば、基板処理方法は、基板Wを研削すること(ステップS101)の代わりに、基板Wの内部にレーザー光線で改質層を形成し、改質層を起点に基板Wを分割することを含んでもよい。いずれにしろ、基板Wを薄化できる。
【0027】
次に、
図3を参照して、エッチング装置26の一例について説明する。エッチング装置26は、処理部の一例である。処理部は、基板Wに処理液を供給する。処理部は、本実施形態では基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式であるが、基板Wを複数枚ずつ同時に処理するバッチ式でもよい。以下、枚葉式の処理部について説明する。
【0028】
エッチング装置26は、例えば、処理容器31と、基板保持部34と、基板回転部35と、ノズル36と、ノズル移動部37と、カップ38と、排液管39と、排気管40と、を有する。
【0029】
処理容器31は、基板保持部34などを収容する。処理容器31の側壁部には、ゲート32と、ゲート32を開閉するゲートバルブ33と、が設けられる。基板Wは、第2搬送装置23(
図1参照)によってゲート32を介して処理容器31の内部に搬入される。次に、基板Wは、処理容器31の内部において処理液で処理される。その後、基板Wは、第2搬送装置23によってゲート32を介して処理容器31の外部に搬出される。
【0030】
基板保持部34は、処理容器31の内部に設けられ、基板Wを水平に保持する。基板保持部34は、例えば基板Wの外周部を保持する爪部34aを有する。爪部34aは、基板Wの周方向に等間隔で複数設けられる。なお、図示しないが、基板保持部34は、基板Wの下面を真空吸着してもよい。
【0031】
基板回転部35は、基板保持部34を回転させることで、基板保持部34と共に基板Wを回転させる。基板回転部35は、モータなどを含む。
【0032】
ノズル36は、基板Wに対して処理液を供給する。ノズル36は、例えば回転する基板Wに処理液を供給する。処理液は、例えばエッチング液とリンス液とを含む。エッチング液は、フッ酸(HF)と硝酸(HNO3)を含む水溶液である。その水溶液は、リン酸(H3PO4)をさらに含んでもよい。リンス液は、DIW(脱イオン水)などの純水である。ノズル36は、エッチング液とリンス液をこの順番で基板Wに対して供給する。エッチング液とリンス液は、別々のノズル36によって供給してもよい。ノズル36は、後述する供給部60に接続されている。
【0033】
ノズル移動部37は、ノズル36を水平方向に移動させる。ノズル移動部37は、例えばノズル36を基板Wの径方向に移動させる。ノズル移動部37は、例えば、ノズル36を保持するアーム37aと、アーム37aの旋回を行う駆動部37bと、を有する。
【0034】
カップ38は、基板保持部34に保持されている基板Wの外周を囲み、基板Wの外周から飛散する処理液を捕集する。
【0035】
排液管39と排気管40は、カップ38の底部に設けられる。排液管39は、カップ38の内部に溜まった処理液を排出する。排液管39は、後述する回収部70に接続されている。排気管40は、カップ38の内部に溜まった気体を排出する。
【0036】
次に、
図4を参照して、エッチング液Lの液回路の一例について説明する。
図4に示すように、基板処理装置1は、調液部50と、供給部60と、回収部70と、を備える。調液部50は、エッチング液Lを調製する。供給部60は、調液部50からエッチング装置26にエッチング液Lを供給する。回収部70は、エッチング装置26から調液部50にエッチング液Lを戻す。基板処理装置1は、エッチング液Lを再利用する。エッチング液Lの廃棄量を低減できる。
【0037】
調液部50は、調液タンク51を備える。調液タンク51は、エッチング液Lを貯留する。また、調液部50は、循環ライン52と、ポンプ53と、フィルター54と、流量計55と、を備える。循環ライン52は、エッチング液Lを調液タンク51から取り出し調液タンク51に戻す。エッチング液Lを循環させることで、成分濃度を均一化できる。
【0038】
ポンプ53とフィルター54と流量計55とは、循環ライン52の途中に設けられる。ポンプ53は、エッチング液Lを送り出す。フィルター54は、エッチング液L中の異物を捕集する。流量計55は、エッチング液Lの流量を検出する。流量計55の検出値が設定値になるように、制御装置90がポンプ53を制御する。
【0039】
循環ライン52の途中には、図示しない温度計とヒータが設けられてもよい。温度計はエッチング液Lの温度を検出する。ヒータは、エッチング液Lを加熱する。温度計の検出値が設定値になるように、制御装置90がヒータを制御する。
【0040】
調液部50は、フッ酸供給部56を備える。フッ酸供給部56は、調液タンク51にフッ酸を供給する。フッ酸供給部56は、フッ酸の供給源と調液タンク51を接続する供給ライン56aと、フッ酸の供給量を調整する調整部56bと、を有する。調整部56bは、例えば開閉バルブと計量タンクを有する。計量タンクは、1回分の供給量を計量する。計量タンクには、計量計が設けられる。なお、調整部56bは、計量タンクの代わりに、流量計と流量制御器を有してもよい。
【0041】
調液部50は、硝酸供給部57を備える。硝酸供給部57は、調液タンク51に硝酸を供給する。硝酸供給部57は、硝酸の供給源と調液タンク51を接続する供給ライン57aと、硝酸の供給量を調整する調整部57bと、を有する。調整部57bは、例えば開閉バルブと計量タンクを有する。計量タンクは、1回分の供給量を計量する。計量タンクには、計量計が設けられる。なお、調整部57bは、計量タンクの代わりに、流量計と流量制御器を有してもよい。
【0042】
調液部50は、リン酸供給部58を備える。リン酸供給部58は、調液タンク51にリン酸を供給する。リン酸供給部58は、リン酸の供給源と調液タンク51を接続する供給ライン58aと、リン酸の供給量を調整する調整部58bと、を有する。調整部58bは、例えば開閉バルブと計量タンクを有する。計量タンクは、1回分の供給量を計量する。計量タンクには、計量計が設けられる。なお、調整部58bは、計量タンクの代わりに、流量計と流量制御器を有してもよい。
【0043】
調液部50は、純水供給部59を備える。純水供給部59は、調液タンク51に純水を供給する。純水供給部59は、純水の供給源と調液タンク51を接続する供給ライン59aと、純水の供給量を調整する調整部59bと、を有する。調整部59bは、例えば開閉バルブと計量タンクを有する。計量タンクは、1回分の供給量を計量する。計量タンクには、計量計が設けられる。なお、調整部59bは、計量タンクの代わりに、流量計と流量制御器を有してもよい。
【0044】
供給部60は、例えば、供給ライン61と、流量計62と、流量制御器63と、開閉バルブ64と、を有する。供給ライン61は、調液部50とエッチング装置26とを接続する。例えば、供給ライン61は、調液部50の循環ライン52とエッチング装置26のノズル36(
図3参照)とを接続する。
【0045】
流量計62と流量制御器63と開閉バルブ64とは、供給ライン61の途中に設けられる。流量計62は、エッチング液Lの流量を検出する。流量制御器63は、エッチング液Lの流量を制御する。流量計62の検出値が設定値になるように、制御装置90が流量制御器63を制御する。開閉バルブ64は、供給ライン61の流路を開閉する。
【0046】
供給部60は、エッチング装置26ごとに設けられる。従って、供給ライン61は、エッチング装置26ごとに設けられる。図示しないが、複数の供給ライン61が、複数のエッチング装置26と1つの調液部50とを接続してもよい。調液部50は、複数のエッチング装置26で使用されるエッチング液Lをまとめて調製してもよい。
【0047】
回収部70は、回収ライン71を有する。回収ライン71は、エッチング装置26と調液部50を接続する。例えば、回収ライン71は、エッチング装置26の排液管39(
図3参照)と調液部50の調液タンク51を接続する。回収ライン71の途中には、フィルター72が設けられてもよい。フィルター72は、エッチング液L中の異物を捕集する。
【0048】
廃棄部75は、調液タンク51に溜めたエッチング液Lを廃棄する。エッチング液Lの廃棄は、定期的に行われ、例えばエッチング液Lの交換からの経過時間または基板Wの処理枚数に応じて適宜行われる。廃棄部75は、調液タンク51に接続される排出ライン75aと、排出ライン75aの流路を開閉する開閉バルブ75bと、を有する。
【0049】
エッチング装置26は、基板Wのエッチングを繰り返し行う。エッチング液Lは、上記の通り、フッ酸(HF)と硝酸(HNO3)を含む水溶液である。水溶液は、硝酸(HNO3)と共存する亜硝酸(HNO2)を含む。HNO2が基板Wを酸化することで酸化物が生じ、HFが酸化物をエッチングする。基板Wがシリコンウェハである場合、例えば下記の化学反応式(1)および(2)に従ってシリコンウェハのエッチングが進むと考えられる。
(1)Si+4HNO2→SiO2+4NO+2H2O
(2)SiO2+6HF→H2SiF6+2H2O。
【0050】
なお、エッチング液Lは、リン酸(H3PO4)をさらに含んでもよい。H3PO4は、エッチング液Lの粘度を調節する成分である。
【0051】
基板Wの処理枚数が増えるにつれ、エッチング液Lが無色から赤褐色に変色することがある。エッチング液Lが変色するのは、化学反応式(1)の生成物であるNOが例えば下記の化学反応式(3)に従って酸化され、NO2が生成されるためと推定される。NO2は、赤褐色である。
(3)2NO+O2→2NO2。
【0052】
次に、
図5を参照して、基板表面のエッチングプロファイルの一例について説明する。基板表面のエッチングプロファイルは、基板表面の中心からの距離に応じたエッチング量の変動のことである。
図5において、横軸は基板表面の中心からの距離を示し、縦軸はエッチング量を示し、実線L1がエッチングプロファイルを示す。実線L1は、亜硝酸濃度分布に由来する一点鎖線L2と、流速分布に由来する二点鎖線L3とに分解することが可能である。
【0053】
図5に実線L1で示すように、基板表面の中心から一定の範囲では、基板表面の中心からの距離が大きいほど、エッチング量が大きい。これは、エッチング液Lが基板表面の中心に供給された後、遠心力によって基板表面の径方向外側に濡れ広がる過程で、上記の化学反応式(1)に加えて、例えば下記の化学反応式(4)が進み、亜硝酸濃度が大きくなるためと考えられる。
(4)2NO+HNO
3+H
2O→3HNO
2。
【0054】
化学反応式(1)から明らかなように例えば4モルのHNO2が消費されることで4モルのNOが生成され、化学反応式(4)から明らかなように4モルのNOが消費されることで6モルのHNO2が生成される。従って、基板表面の中心からの距離が大きいほど、亜硝酸濃度が大きい。亜硝酸濃度が大きいほど、化学反応式(1)が進みやすく、エッチング速度が速く、エッチング量が大きい。
【0055】
但し、亜硝酸濃度が十分に大きくなると、亜硝酸濃度の上昇に伴うエッチング速度の上昇が鈍くなる。それゆえ、基板表面の中心からの距離がある程度以上になると、エッチング量は流速分布に支配されるようになる。流速は、基板表面の中心からの距離に応じて変化する。基本的に、基板表面の中心からの距離が大きいほど、遠心力が大きく、流速が速い。流速が速いほど、液膜の厚さが薄く、エッチング量が小さい。液膜は、エッチング液Lで構成される。
【0056】
なお、
図5に示すエッチングプロファイルは一例である。エッチングプロファイルは、最終的に得られる基板表面が平らになるように調整されればよく、研削後の基板表面の高さ分布に応じて調整されればよい。エッチングプロファイルは、基板Wの回転速度などで調整可能である。基板Wの回転速度が大きいほど、流速が速い。従って、基板Wの回転速度で流速分布を変更でき、エッチングプロファイルを変更できる。
【0057】
次に、
図6を参照して、基板表面の中心のエッチング量の経時変化の一例について説明する。
図6において、横軸は基板Wの処理枚数、換言すると時間を示し、縦軸はエッチング量を示し、実線L4が実施例のエッチング量の経時変化を示し、破線L5が従来例のエッチング量の経時変化を示す。
【0058】
従来、
図6に破線L5で示すように、基板Wの処理枚数が増えるにつれ、基板表面の中心のエッチング量が大きくなることがあった。これは、基板Wの処理枚数が増え、エッチング液Lがリサイクルされる過程で、調液タンク51においてエッチング液Lの亜硝酸濃度が大きくなるためと考えられる。
【0059】
エッチング液Lは、調液タンク51からノズル36を経由して基板表面の中心に供給され、遠心力によって基板表面の径方向外側に濡れ広がる。エッチング液Lが濡れ広がる前から、エッチング液Lの亜硝酸濃度が大きければ、基板表面の中心においてエッチング量が大きい。
【0060】
そこで、本実施形態の回収部70は、
図4に示すように、亜硝酸濃度調整部80を有する。亜硝酸濃度調整部80は、リサイクルされるエッチング液Lの亜硝酸濃度を、エッチング液Lの交換直後と同程度の値(以下、「初期の濃度」とも記載する。)に維持する。これにより、
図6に実線L4で示すように、基板表面の中心のエッチング量を一定に維持でき、基板表面のエッチングプロファイルを安定化できる。
【0061】
次に、
図7を参照して、亜硝酸濃度調整部80の一例について説明する。亜硝酸濃度調整部80は、分解部81を有してもよい。分解部81は、エッチング液Lに含まれる亜硝酸(HNO
2)を分解することで、亜硝酸濃度を初期の濃度に維持する。亜硝酸は、例えば下記の化学反応式(5)に従って分解する。
(5)3HNO
2→HNO
3+H
2O+2NO。
【0062】
化学反応式(5)は、化学反応式(4)の逆反応である。2つの化学反応式(4)、(5)のどちらが支配的であるかは、例えばエッチング液が基板Wと接触しているか否かに依存する。エッチング液が基板Wと接触している場合、Siの存在によって化学反応式(1)が進み、化学反応式(4)の反応物であるNOが生成されるので、化学反応式(4)が進む。一方、エッチング液が基板Wと接触していない場合、Siが存在しないので、化学反応式(1)が進まず、化学反応式(4)の代わりに化学反応式(5)が進む。
【0063】
分解部81は、例えば加熱器81a、81bを有する。加熱器81a、81bは、エッチング液Lを加熱することで、エッチング液Lに含まれる亜硝酸を分解する。化学反応式(5)は加熱によって進み、亜硝酸(HNO2)が硝酸(HNO3)と水(H2O)と一酸化窒素(NO)に分解される。
【0064】
亜硝酸濃度調整部80は、酸化部82を有してもよい。酸化部82は、エッチング液Lに含まれる亜硝酸(HNO2)と窒素酸化物(NOX)の少なくとも1つを酸素含有ガスによって酸化する。酸素含有ガスは、少なくとも酸素ガス(O2ガス)を含有すればよく、例えば空気、酸素ガス及びこれらの混合ガスのいずれであってもよい。
【0065】
亜硝酸(HNO2)の酸化によって硝酸(HNO3)を生成でき、亜硝酸濃度を初期の濃度に維持できる。また、窒素酸化物(NOX)の酸化によって硝酸を生成してもよい。例えば下記の化学反応式(6)に示すように、一酸化窒素(NO)と酸素(O2)と水(H2O)が反応することで、硝酸(HNO3)が生成される。亜硝酸の原料である一酸化窒素の濃度を低減でき、亜硝酸濃度を初期の濃度に維持できる。
(6)2NO+3O2+2H2O→4HNO3。
【0066】
酸化部82は、例えばガス供給器82a、82bを有する。ガス供給器82a、82bは、酸素含有ガスの気泡をエッチング液Lの内部に形成する。なお、酸化部82は、酸素含有ガスの気泡を形成しなくてもよい。エッチング液Lと酸素ガス含有ガスを接触させることができればよく、例えば酸化部82は撹拌機又は循環器を含んでもよい。
【0067】
酸化部82は、上記の通り、エッチング液Lと酸素ガス含有ガスを接触させる。これにより、エッチング液Lに接する気体の窒素酸化物(NOX)の分圧を低下でき、エッチング液Lに溶存する窒素酸化物の濃度を低下できる。従って、酸化部82は、後述する脱気部を兼ねることが可能である。
【0068】
脱気部は、エッチング液Lに溶存する窒素酸化物(NOX)を脱気する。亜硝酸の原料である窒素酸化物(NOX)を減らすことで、亜硝酸濃度を初期の濃度に維持できる。窒素酸化物(NOX)は、一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)のどちらでもよく、両方でもよい。
【0069】
脱気部は、酸化部82とは異なり、酸素含有ガス以外のガス、例えば不活性ガスでエッチング液Lをバブリングしてもよい。不活性ガスは、例えばN2ガス又は希ガスである。不活性ガスも、酸素含有ガスと同様に、エッチング液Lに接する気体の窒素酸化物(NOX)の分圧を低下でき、エッチング液Lに溶存する窒素酸化物の濃度を低下できる。
【0070】
なお、脱気部は、エッチング液Lに溶存する窒素酸化物(NOX)を脱気できればよく、ガスバブリング法には限定されない。脱気法としては、ガスバブリング法の他に、減圧法、超音波法、撹拌法、加熱法などが挙げられる。分解部81が加熱器81a、81bを有する場合、分解部81が脱気部を兼ねることが可能である。
【0071】
亜硝酸濃度調整部80は、例えば、回収タンク83と、第1送液ライン84と、第2送液ライン85と、開閉弁86と、を有する。回収タンク83は、エッチング液Lを貯留する。第1送液ライン84は、エッチング装置26から回収タンク83にエッチング液Lを送る。第2送液ライン85は、回収タンク83から調液部50にエッチング液Lを送る。第1送液ライン84と第2送液ライン85は、回収ライン71を構成する。開閉弁86は、第2送液ライン85を開閉する。なお、回収ライン71には、複数の回収タンク83が設けられてもよい。
【0072】
加熱器81aは、第1送液ライン84においてエッチング液Lを加熱する。加熱器81bは、回収タンク83においてエッチング液Lを加熱する。なお、図示しないが、第2送液ライン85に加熱器が設けられてもよい。ガス供給器82aは、第1送液ライン84において、酸素含有ガスの気泡をエッチング液Lの内部に形成する。ガス供給器82bは、回収タンク83において酸素含有ガスの気泡をエッチング液Lの内部に形成する。なお、図示しないが、第2送液ライン85にガス供給器が設けられてもよい。
【0073】
亜硝酸濃度調整部80は、濃度検出器87を有してもよい。濃度検出器87は、回収タンク83から排出されるガスに占める窒素酸化物(NOX)の濃度を検出する。制御装置90は、濃度検出器87の検出値が許容範囲である場合に開閉弁86を開く制御を行なう。制御装置90は、濃度検出器87の検出値が許容範囲ではない場合に開閉弁86を閉じる制御を行なう。許容範囲は、例えばエッチング液Lの交換直後における濃度検出器87の検出値を基準に設定される。
【0074】
亜硝酸濃度調整部80は、色検出器88を有してもよい。色検出器88は、例えばカメラを含む。色検出器88は、回収タンク83に貯留されているエッチング液Lの色を検出する。色は、色空間における座標で表される。色空間は、一般的なものであればよいが、例えばRGB色空間である。制御装置90は、色検出器88の検出値が許容範囲である場合に開閉弁86を開く制御を行なう。制御装置90は、色検出器88の検出値が許容範囲ではない場合に開閉弁86を閉じる制御を行なう。許容範囲は、例えばエッチング液Lの交換直後における色検出器88の検出値を基準に設定される。交換直後のエッチング液Lの色は、無色透明である。
【0075】
制御装置90は、濃度検出器87及び色検出器88の少なくとも1つの検出値が許容範囲である場合にのみ、開閉弁86を開く制御を行なう。エッチング液Lの亜硝酸濃度が初期の濃度であることを間接的に確認したうえで、エッチング液Lを調液部50に戻すことができる。なお、濃度検出器87及び色検出器88は、無くてもよい。制御装置90は、定期的に開閉弁86を開く制御を行なってもよい。
【0076】
制御装置90は、エッチング装置26の作動中に、分解部81と酸化部82と脱気部の少なくとも1つを常に作動させる制御を行なう。但し、制御装置90は、濃度検出器87及び色検出器88の少なくとも1つの検出値が許容範囲ではない場合にのみ、分解部81と酸化部82と脱気部の少なくとも1つを作動させる制御を行なってもよい。なお、制御装置90は、定期的に分解部81と酸化部82と脱気部の少なくとも1つを作動させる制御を行なってもよい。
【0077】
以上、本開示に係る基板処理装置、及び基板処理方法の実施形態等について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0078】
1 基板処理装置
26 エッチング装置(処理部)
50 調液部
60 供給部
70 回収部
81 分解部