(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157090
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】送風機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/056 20060101AFI20241030BHJP
F04D 29/58 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
F04D29/056 A
F04D29/58 M
F04D29/58 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071201
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】黛 克憲
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB60
3H130AC30
3H130BA56E
3H130BA56J
3H130BA97A
3H130BA97J
3H130BA98J
3H130CA02
3H130DB01X
3H130DD01Z
3H130DG02X
3H130DH06X
3H130EA07J
3H130EB01J
(57)【要約】
【課題】油を冷却するための冷却水系統が不要な送風機であって、油配管の施工が容易であり、かつ、油漏れのリスクが少ない送風機を提供する。
【解決手段】送風機は、吸込口と吐出口を有するケーシングと、ケーシング内に配置される羽根車と、羽根車の回転軸を支持する軸受に油を供給する給油手段と、を備える。ケーシングの吸込口に接続される吸込管の壁は二重であり、給油手段は、軸受に供給される前の油を、吸込管の内側の壁と外側の壁との間を通過させ、内側の壁の内側を流れる吸込空気との熱交換により冷却された油が、軸受に供給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口と吐出口を有するケーシングと、
前記ケーシング内に配置される羽根車と、
前記羽根車の回転軸を支持する軸受に油を供給する給油手段と、
を備え、
前記ケーシングの前記吸込口に接続される吸込管の壁は二重であり、
前記給油手段は、前記軸受に供給される前の油を、前記吸込管の内側の壁と外側の壁との間を通過させ、内側の壁の内側を流れる吸込空気との熱交換により冷却された油が、前記軸受に供給される、
ことを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記内側の壁の内側の面には吸込空気の流れ方向に延びる溝が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記内側の壁の外側の面には凹凸が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の送風機。
【請求項4】
吸込口と吐出口を有するケーシングと、
前記ケーシング内に配置される羽根車と、
前記羽根車の回転軸を支持する軸受に油を供給する給油手段と、
を備え、
前記ケーシングの前記吸込口側の壁は二重であり、
前記給油手段は、前記軸受に供給される前の油を、前記ケーシングの内側の壁と外側の壁との間を通過させ、内側の壁の内側を流れる空気との熱交換により冷却された油が、前記軸受に供給される、
ことを特徴とする送風機。
【請求項5】
前記内側の壁の内側の面には吸込空気の流れ方向に延びる溝が形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の送風機。
【請求項6】
前記内側の壁の外側の面には凹凸が設けられている
ことを特徴とする請求項4または5に記載の送風機。
【請求項7】
前記給油手段は、前記吸込空気との熱交換により冷却された油を、前記羽根車の回転軸に回転動力を与える電動機の軸受にも供給する、
ことを特徴とする請求項1、2、4、5のいずれかに記載の送風機。
【請求項8】
請求項1、2、4、5のいずれかに記載の送風機を備えた下水処理場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場には、生物反応槽に空気を送るための送風機が設けられている。この送風機の軸受は、すべり軸受の強制給油方式とされている。下水処理場には水が豊富にあるため、潤滑油の冷却方式としては、水による冷却方式が採用されている。この冷却方式では、油冷却器内に冷却水用配管が配設されており、油冷却器内を通される潤滑油が、冷却水用配管を流れる下水処理場の処理水との熱交換により冷却される。
【0003】
しかしながら、下水処理場の処理水は真水ではないため、油冷却器を腐食させる可能性がある。油冷却器が腐食すると、軸受の潤滑油系統に水が混入し、その結果、軸受が焼損し、送風機自体が損傷してしまう危険がある。
【0004】
特許文献1には、送風機の吸込口に一端が連結された吸込配管の他端(上流側開口端)に、潤滑油が流れる冷却管とこれに連設された冷却フィンとからなる冷却装置を配設し、送風機の運転により吸込配管に吸い込まれる気体流が冷却装置を通過することで冷却管内を流れる潤滑油を冷却することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、吸込配管の上流側開口端の位置で潤滑油の冷却が行われるが、吸込配管の上流側開口端は送風機の軸受の位置から離れているため、油配管を長く延ばす必要がある。そのため、施工が容易でなく、油漏れのリスクもある。特に、下水処理場では、送風機がブロワ室に設置されるのに対し、吸込配管の上流側開口端はブロワ室の外側の風道に配置されるため、油配管をブロワ室と風道との間の壁を貫通するように施工する必要があり、容易でない。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたものでる。本発明の目的は、油を冷却するための冷却水系統が不要な送風機であって、油配管の施工が容易であり、かつ、油漏れのリスクが少ない送風機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る送風機は、
吸込口と吐出口を有するケーシングと、
前記ケーシング内に配置される羽根車と、
前記羽根車の回転軸を支持する軸受に油を供給する給油手段と、
を備え、
前記ケーシングの前記吸込口に接続される吸込管の壁は二重であり、
前記給油手段は、前記軸受に供給される前の油を、前記吸込管の内側の壁と外側の壁との間を通過させ、内側の壁の内側を流れる吸込空気との熱交換により冷却された油が、前記軸受に供給される。
【0009】
このような態様によれば、軸受に供給される油が吸込空気により冷却されるため、油を冷却するための冷却水系統が不要となり、送風機の信頼性が向上する。また、ケーシングの吸込口に接続される吸込管の位置で油が冷却されるため、油の冷却を軸受の位置の近くで行うことができ、油配管の長さを短くすることができる。これにより、油配管の施工が容易となり、かつ、油漏れのリスクが減少する。
【0010】
本発明の第2の態様に係る送風機は、第1の態様に係る送風機であって、
前記内側の壁の内側の面には吸込空気の流れ方向に延びる溝が形成されている。
【0011】
このような態様によれば、吸込管の内側の壁とその内側を流れる吸込空気との接触面積が増えるため、内側の壁の内側を流れる吸込空気との熱交換による油の冷却効果を高めることができる。また、溝が吸込空気の流れ方向に延びるように形成されているため、溝の存在により吸込空気の流れが邪魔されることもない。
【0012】
本発明の第3の態様に係る送風機は、第1または2の態様に係る送風機であって、
前記内側の壁の外側の面には凹凸が設けられている。
【0013】
このような態様によれば、吸込管の内側の壁とその外側を流れる油との接触面積が増えるため、内側の壁の内側を流れる吸込空気との熱交換による油の冷却効果を高めることができる。また、凹凸が内側の壁の外側の面に設けられているため、凹凸の存在により吸込空気の流れが邪魔されることもない。
【0014】
本発明の第4の態様に係る送風機は、
吸込口と吐出口を有するケーシングと、
前記ケーシング内に配置される羽根車と、
前記羽根車の回転軸を支持する軸受に油を供給する給油手段と、
を備え、
前記ケーシングの前記吸込口側の壁は二重であり、
前記給油手段は、前記軸受に供給される前の油を、前記ケーシングの内側の壁と外側の壁との間を通過させ、内側の壁の内側を流れる空気との熱交換により冷却された油が、前記軸受に供給される。
【0015】
このような態様によれば、軸受に供給される油が吸込空気により冷却されるため、油を冷却するための冷却水系統が不要となり、送風機の信頼性が向上する。また、ケーシングの吸込口側の壁の位置で油が冷却されるため、油の冷却を軸受の近くで行うことができ、油配管の長さを短くすることができる。これにより、油配管の施工が容易となり、かつ、油漏れのリスクが減少する。さらに、ケーシングの吸込口側の壁が二重で肉厚となり、内側の壁と外側の壁との間に油が充填されることで、ケーシング内で発生する騒音が低減されるとともに、羽根車の回転よる振動を抑制することができる。
【0016】
本発明の第5の態様に係る送風機は、第4の態様に係る送風機であって、
前記内側の壁の内側の面には吸込空気の流れ方向に延びる溝が形成されている。
【0017】
このような態様によれば、ケーシングの内側の壁とその内側を流れる吸込空気との接触面積が増えるため、内側の壁の内側を流れる吸込空気との熱交換による油の冷却効果を高めることができる。また、溝が吸込空気の流れ方向に延びるように形成されているため、溝の存在により吸込空気の流れが邪魔されることもない。
【0018】
本発明の第6の態様に係る送風機は、第4または5の態様に係る送風機であって、
前記内側の壁の外側の面には凹凸が設けられている。
【0019】
このような態様によれば、ケーシングの内側の壁とその外側を流れる油との接触面積が増えるため、内側の壁の内側を流れる吸込空気との熱交換による油の冷却効果を高めることができる。また、凹凸が内側の壁の外側の面に設けられているため、凹凸の存在により吸込空気の流れが邪魔されることもない。
【0020】
本発明の第7の態様に係る送風機は、第1~6のいずれかの態様に係る送風機であって、
前記給油手段は、前記吸込空気との熱交換により冷却された油を、前記羽根車の回転軸に回転動力を与える電動機の軸受にも供給する。
【0021】
本発明の第8の態様に係る下水処理場は、第1~7のいずれかの態様に係る送風機を備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、油を冷却するための冷却水系統が不要な送風機であって、油配管の施工が容易であり、かつ、油漏れのリスクが少ない送風機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る送風機の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1に示す送風機の吸込管の横断面図であり、
図2(b)は、同縦断面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の第1の変形例に係る吸込管の横断面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の第1の変形例に係る吸込管の内側の壁の内側の面を撮影した写真である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の第2の変形例に係る吸込管の横断面図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係る送風機の概略構成を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す送風機のケーシングのA-A線で切断した断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、添付の図面を参照して、実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明および以下の説明で用いる図面では、同一に構成され得る部分について、同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る送風機10の概略構成を示す図である。本実施の形態に係る送風機10は、たとえば、下水処理場のブロワ室に設置され、生物反応槽に空気を送るために利用されるものである。
【0026】
図1に示すように、送風機10は、吸込口11aと吐出口11bを有するケーシング11と、ケーシング11内に配置される羽根車12と、羽根車12の回転軸13に回転動を与える電動機16と、給油手段20とを有している。
【0027】
電動機16からの回転動力により羽根車12がケーシング11内で回転されると、ケーシング11内の空気が吸込口11a側から吐出口11b側に向けて押し流されて圧縮され、圧縮された空気が吐出口11bから吐き出されるとともに、吸込口11aに接続された吸込管15を介して外部の空気がケーシング11内に吸い込まれるようになっている。
【0028】
給油手段20は、油タンク21と油ポンプ22とを有している。油ポンプ22が動作することにより、油タンク21内の油が、羽根車12の回転軸13を回転可能に支持する軸受(すべり軸受)14a、14bに供給されるとともに、軸受14a、14bから排出される高温の油が、油タンク21内に回収される。
図1に示すように、油タンク21内の油は、電動機16の軸受(すべり軸受)17a、17bにも供給されるとともに、電動機16の軸受17a、17bから排出される高温の油も、油タンク21内に回収されるようになっていてもよい。
【0029】
図2(a)は、吸込管15の横断面図(中心軸線に対して垂直な面で切断した断面を示す図)であり、
図2(b)は、吸込管15の縦断面図(中心軸線と平行な面で切断した断面を示す図)である。
【0030】
図2(a)および
図2(b)に示すように、吸込管15の壁は二重であり、内側の壁15aと外側の壁15bとを有している。羽根車12の回転時に、外部の空気は、吸込管15の内側の壁15aの内側を通ってケーシング11内に吸い込まれるようになっている。
【0031】
図1および
図2(b)に示すように、給油手段20の油ポンプ22は、油タンク21内の油を、まず、吸込管15の内側の壁15aと外側の壁15bとの間に流し入れるようになっている。吸込管15の内部では、吸込管15の内側の壁15aと外側の壁15bとの間に流し入れられて充填される高温の油が、吸込管15の内側の壁15aと外側の壁15bとの間を通過するあいだに、内側の壁15aの内側を流れる常温の吸込空気との熱交換により冷却される。そして、吸込管15の内側の壁15aと外側の壁15bとの間を通過した後の冷却された油が、各軸受14a、14b、17a、17bに供給されるようになっている。
【0032】
一変形例として、
図3および
図4に示すように、吸込管15の内側の壁15aの内側の面には、吸込空気の流れ方向に延びる溝15cが形成されていてもよい。この場合、吸込管15の内側の壁15aとその内側を流れる吸込空気との接触面積が増えるため、内側の壁15aの内側を流れる吸込空気との熱交換による油の冷却効果を高めることができる。また、溝15cが吸込空気の流れ方向に延びるように形成されているため、溝15cの存在により吸込空気の流れが邪魔されることもない。
【0033】
別の変形例として、
図5に示すように、吸込管15の内側の壁15aの外側の面には凹凸15dが設けられていてもよい。この場合、吸込管15の内側の壁15aとその外側を流れる油との接触面積が増えるため、内側の壁15aの内側を流れる吸込空気との熱交換による油の冷却効果を高めることができる。また、凹凸15dが内側の壁15aの外側の面に設けられているため、凹凸15dの存在により吸込空気の流れが邪魔されることもない。なお、凹凸15dは、線状に延びる突条または溝であってもよいし、点状に設けられた突起または窪みであってもよい。
【0034】
次に、このような構成からなる送風機10の動作について説明する。
【0035】
まず、電動機16の運転により羽根車12がケーシング11内で回転されると、ケーシング11内の空気が吸込口11a側から吐出口11b側に向けて押し流されて圧縮され、圧縮された空気が吐出口11bから吐き出されるとともに、吸込口11aに接続された吸込管15を介して外部の空気がケーシング11内に吸い込まれる。
【0036】
このとき、給油手段20の油ポンプ22の動作により、油タンク21内の油が、羽根車12の回転軸13を支持する軸受14a、14bと電動機16の軸受17a、17bに供給されるとともに、各軸受14a、14b、17a、17bから排出される高温の油が、油タンク21内に回収される。
【0037】
ここで、本実施の形態では、給油手段20の油ポンプ22は、油タンク21内に回収された高温の油を、各軸受14a、14b、17a、17bに供給される前に、まず、吸込管15の内側の壁15aと外側の壁15bとの間を通過させ、内側の壁15aの内側を流れる常温の吸込空気との熱交換により冷却させる。そして、吸込管15の内側の壁15aと外側の壁15bとの間を通過した後の冷却された油が、各軸受14a、14b、17a、17bに供給される。
【0038】
以上のような本実施の形態によれば、各軸受14a、14b、17a、17bに供給される油が(水ではなく)吸込空気により冷却されるため、油を冷却するための冷却水系統が不要となる。これにより、油に水が混入することで軸受14a、14b、17a、17bが焼損するといったような問題は起こらず、送風機10の信頼性が向上する。また、ケーシング11の吸込口11aに接続される吸込管15の位置で油が冷却されるため、油の冷却を軸受14a、14b、17a、17bの近くで行うことができ、油配管の長さを短くすることができる。これにより、油配管の施工が容易となり、かつ、油漏れのリスクが減少する。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図6は、第2の実施形態に係る送風機10の概略構成を示す図である。
図7は、
図6に示す送風機10のケーシング11のA-A線で切断した断面を示す図である。
【0040】
図6に示すように、送風機10は、吸込口11aと吐出口11bを有するケーシング11と、ケーシング11内に配置される羽根車12と、羽根車12の回転軸13に回転動を与える電動機16と、給油手段20とを有している。
【0041】
このうち羽根車12と電動機16の構成は、第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0042】
本実施の形態では、
図6および
図7に示すように、ケーシング11は、吸込口11a側の壁が二重であり、内側の壁18aと外側の壁18とを有している。羽根車12の回転時に、吸込口11aから吸い込まれる空気は、内側の壁18aの内側を通って吐出口11b側へと押し流されるようになっている。
【0043】
図6および
図7に示すように、給油手段20の油ポンプ22は、油タンク21内の油を、まず、ケーシング11の内側の壁18aと外側の壁18bとの間に流し入れるようになっている。ケーシング11の内部では、ケーシング11の内側の壁18aと外側の壁18bとの間に流し入れられて充填される高温の油が、ケーシング11の内側の壁18aと外側の壁18bとの間を通過するあいだに、内側の壁18aの内側を流れる常温の吸込空気との熱交換により冷却される。そして、ケーシング11の内側の壁18aと外側の壁18bとの間を通過した後の冷却された油が、各軸受14a、14b、17a、17bに供給されるようになっている。
【0044】
ところで、ケーシング11内の空気は、吸込口11a側から吐出口11b側に向けて押し流されるにつれて、圧縮されて温度が上昇する。そのため、ケーシング11の壁のうち内側の壁18aと外側の壁18とで二重になっている部分は、吸込口11a側でありさえすれば、その位置や範囲は特に限定されるものではなく、たとえば実験やシミュレーションにより求められるケーシング11内の空気の温度分布に応じて、その位置や範囲が適宜決定されてもよい。
【0045】
一変形例として、ケーシング11の内側の壁18aの内側の面には、吸込空気の流れ方向に延びる溝(不図示)が形成されていてもよい。この場合、ケーシング11の内側の壁18aとその内側を流れる吸込空気との接触面積が増えるため、内側の壁18aの内側を流れる吸込空気との熱交換による油の冷却効果を高めることができる。また、溝が吸込空気の流れ方向に延びるように形成されているため、溝の存在により吸込空気の流れが邪魔されることもない。
【0046】
別の変形例として、ケーシング11の内側の壁18aの外側の面には凹凸(不図示)が設けられていてもよい。この場合、ケーシング11の内側の壁18aとその外側を流れる油との接触面積が増えるため、内側の壁18aの内側を流れる吸込空気との熱交換による油の冷却効果を高めることができる。また、凹凸が内側の壁18aの外側の面に設けられているため、凹凸の存在により吸込空気の流れが邪魔されることもない。なお、凹凸は、線状に延びる突条または溝であってもよいし、点状に設けられた突起または窪みであってもよい。
【0047】
図6に示すように、給油手段20の油ポンプ22は、油タンク21内の油を、ケーシング11の下側から、ケーシング11の内側の壁18aと外側の壁18bとの間に流し入れるようになっており、ケーシング11の内側の壁18aと外側の壁18bとの間を通過した後の冷却された油は、ケーシング11の上側から取り出されて、各軸受14a、14b、17a、17bに供給されるようになっていてもよい。この場合、ケーシング11の内側の壁18aと外側の壁18bとの間に油を効率的に充填させることができるため、油の冷却効果を高めることができる。
【0048】
次に、このような構成からなる送風機10の動作について説明する。
【0049】
まず、電動機16の運転により羽根車12がケーシング11内で回転されると、ケーシング11内の空気が吸込口11a側から吐出口11b側に向けて押し流されて圧縮され、圧縮された空気が吐出口11bから吐き出されるとともに、吸込口11aに接続された吸込管15を介して外部の空気がケーシング11内に吸い込まれる。
【0050】
このとき、給油手段20の油ポンプ22の動作により、油タンク21内の油が、羽根車12の回転軸13を支持する軸受14a、14bと電動機16の軸受17a、17bに供給されるとともに、各軸受14a、14b、17a、17bから排出される高温の油が、油タンク21内に回収される。
【0051】
ここで、本実施の形態では、給油手段20の油ポンプ22は、油タンク21内に回収された高温の油を、各軸受14a、14b、17a、17bに供給される前に、まず、ケーシング11の内側の壁18aと外側の壁18bとの間を通過させ、内側の壁18aの内側を流れる常温の吸込空気との熱交換により冷却させる。そして、ケーシング11の内側の壁18aと外側の壁18bとの間を通過した後の冷却された油が、各軸受14a、14b、17a、17bに供給される。
【0052】
以上のような本実施の形態によれば、各軸受14a、14b、17a、17bに供給される油が(水ではなく)吸込空気により冷却されるため、油を冷却するための冷却水系統が不要となる。これにより、油に水が混入することで軸受14a、14b、17a、17bが焼損するといったような問題は起こらず、送風機10の信頼性が向上する。また、ケーシング11の吸込口11a側の壁の位置で油が冷却されるため、油の冷却を軸受14a、14b、17a、17bの近くで行うことができ、油配管の長さを短くすることができる。これにより、油配管の施工が容易となり、かつ、油漏れのリスクが減少する。
【0053】
さらに、本実施の形態によれば、ケーシング11の吸込口11a側の壁が二重で肉厚となり、内側の壁18aと外側の壁18bとの間に油が充填されることで、ケーシング11内において羽根車12の回転に伴って発生する騒音が低減されるとともに、羽根車12の回転に伴って発生する振動も抑制することができる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態および変形例を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。また、各実施の形態および変形例は、内容が矛盾しない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 送風機
11 ケーシング
11a 吸込口
11b 吐出口
12 羽根車
13 回転軸
14a、14b 軸受
15 吸込管
15a 内側の壁
15b 外側の壁
15c 溝
15d 凹凸
16 電動機
17a、17b 軸受
18a 内側の壁
18b 外側の壁
20 給油手段
21 油タンク
22 油ポンプ