IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧 ▶ 独立行政法人産業技術総合研究所の特許一覧

特開2024-1571自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法
<>
  • 特開-自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法 図1
  • 特開-自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法 図2
  • 特開-自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法 図3
  • 特開-自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法 図4
  • 特開-自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法 図5
  • 特開-自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法 図6
  • 特開-自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法 図7
  • 特開-自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法 図8
  • 特開-自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法 図9
  • 特開-自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法 図10
  • 特開-自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法 図11
  • 特開-自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001571
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20231227BHJP
   B65G 1/04 20060101ALI20231227BHJP
   B65G 1/137 20060101ALI20231227BHJP
   G06Q 10/08 20240101ALI20231227BHJP
【FI】
G06Q10/04
B65G1/04 561
B65G1/137 A
G06Q10/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100308
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和也
(72)【発明者】
【氏名】野田 五十樹
(72)【発明者】
【氏名】小出 幸和
(72)【発明者】
【氏名】小原 生光
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 秀生
【テーマコード(参考)】
3F022
3F522
5L049
【Fターム(参考)】
3F022FF01
3F022JJ20
3F022MM01
3F022MM11
3F522BB01
3F522CC20
3F522LL31
5L049AA04
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】自動倉庫に求められる規模を速やかに演算することができる自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法を提供する。
【解決手段】入庫数演算部51は、確率分布を用いて容易に入庫数を演算することができる。また、出庫数演算部52は、所定の出庫条件下において、単位時間あたりに自動倉庫から出庫される物品150の出庫数を確率分布を用いて演算する。従って、単位時間あたりに出庫される出庫数が一定ではない垂直搬送機22を用いた場合であっても、出庫数演算部52は、確率分布を用いて容易に出庫数を演算することができる。また、保管数演算部53は、演算された入庫数及び出庫数に基づいて、保管棚110で保管される物品150の保管数の推移を演算する。この場合、保管数演算部53の演算結果から、保管棚110で保管される物品150の保管数が多いときには、どの程度の保管数が必要になるかを容易に把握することができる
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を保管する保管棚を有し、垂直搬送機に対して設けられる自動倉庫の規模を演算する自動倉庫規模演算装置であって、
所定の入庫条件下において、単位時間あたりに前記自動倉庫へ入庫される前記物品の入庫数を確率分布を用いて演算する入庫数演算部と、
所定の出庫条件下において、単位時間あたりに前記自動倉庫から出庫される前記物品の出庫数を確率分布を用いて演算する出庫数演算部と、
演算された前記入庫数及び前記出庫数に基づいて、前記保管棚で保管される前記物品の保管数の推移を演算する保管数演算部と、を備える、自動倉庫規模演算装置。
【請求項2】
繰り返し実行された前記入庫数演算部、前記出庫数演算部、及び前記保管数演算部による演算結果に基づき、前記保管数の確率的な統計情報を演算する統計情報演算部を更に有する、請求項1に記載の自動倉庫規模演算装置。
【請求項3】
前記垂直搬送機は交互動作式であり、
前記入庫数演算部、及び出庫数演算部の少なくとも一方は、
前記保管棚の階数に基づく単位時間あたりの平均の物品数を前記確率分布としてポアソン分布を用いて演算する、請求項1又は2に記載の自動倉庫規模演算装置。
【請求項4】
物品を保管する保管棚を有し、垂直搬送機に対して設けられる自動倉庫の規模を演算する自動倉庫規模演算方法であって、
所定の入庫条件下において、単位時間あたりに前記自動倉庫へ入庫される前記物品の入庫数を確率分布を用いて演算する入庫数演算ステップと、
所定の出庫条件下において、単位時間あたりに前記自動倉庫から出庫される前記物品の出庫数を確率分布を用いて演算する出庫数演算ステップと、
演算された前記入庫数及び前記出庫数に基づいて、前記保管棚での前記物品の推移を演算する保管数演算ステップと、を備える、自動倉庫規模演算方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動倉庫規模を演算する技術として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この技術は、物流センター全体の構成の性能をモデル化した機械パラメータ等を用意し、シミュレーションから最適化設定を決定することで、自動倉庫に必要な規模等を演算している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-520526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、自動倉庫は垂直搬送機を用いて入庫及び出庫を行うが、垂直搬送機を有する自動倉庫のモデルを構築してシミュレーションを行った場合、物品数が多くなるほどシミュレーションに要する時間が増えるという問題がある。従って、自動倉庫に求められる規模を速やかに演算することが求められる。
【0005】
従って、本発明は、自動倉庫に求められる規模を速やかに演算することができる自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る自動倉庫規模演算装置は、物品を保管する保管棚を有し、垂直搬送機に対して設けられる自動倉庫の規模を演算する自動倉庫規模演算装置であって、所定の入庫条件下において、単位時間あたりに自動倉庫へ入庫される物品の入庫数を確率分布を用いて演算する入庫数演算部と、所定の出庫条件下において、単位時間あたりに自動倉庫から出庫される物品の出庫数を確率分布を用いて演算する出庫数演算部と、演算された入庫数及び出庫数に基づいて、保管棚で保管される物品の保管数の推移を演算する保管数演算部と、を備える。
【0007】
自動倉庫規模演算装置において、入庫数演算部は、所定の入庫条件下において、単位時間あたりに自動倉庫へ入庫される物品の入庫数を確率分布を用いて演算する。従って、単位時間あたりに入庫される入庫数が一定ではない垂直搬送機を用いた場合であっても、入庫数演算部は、確率分布を用いて容易に入庫数を演算することができる。また、出庫数演算部は、所定の出庫条件下において、単位時間あたりに自動倉庫から出庫される物品の出庫数を確率分布を用いて演算する。従って、単位時間あたりに出庫される出庫数が一定ではない垂直搬送機を用いた場合であっても、出庫数演算部は、確率分布を用いて容易に出庫数を演算することができる。また、保管数演算部は、演算された入庫数及び出庫数に基づいて、保管棚で保管される物品の保管数の推移を演算する。この場合、保管数演算部の演算結果から、保管棚で保管される物品の保管数が多いときには、どの程度の保管数が必要になるかを容易に把握することができる。以上より、自動倉庫規模演算装置は、自動倉庫に求められる規模を速やかに演算することができる。
【0008】
自動倉庫規模演算装置は、繰り返し実行された入庫数演算部、出庫数演算部、及び保管数演算部による演算結果に基づき、保管数の確率的な統計情報を演算する統計情報演算部を更に有してよい。この場合、統計情報演算部は、繰り返しのシミュレーション結果に基づいて、自動倉庫に求められる規模を統計的に把握可能な統計情報を演算することができる。
【0009】
垂直搬送機は交互動作式であり、入庫数演算部、及び出庫数演算部の少なくとも一方は、保管棚の階数に基づく単位時間あたりの平均の物品数を確率分布としてポアソン分布を用いて演算してよい。交互動作式の垂直搬送機が入庫または出庫する単位時間あたりの物品数の上限は保管棚の階数によって決まる。また、ポアソン分布は、小さい数にてピークが出やすい確率分布であるため、垂直搬送機による物品数を演算するのに適した確率分布である。
【0010】
本発明の一形態に係る自動倉庫規模演算方法は、物品を保管する保管棚を有し、垂直搬送機に対して設けられる自動倉庫の規模を演算する自動倉庫規模演算方法であって、所定の入庫条件下において、単位時間あたりに自動倉庫へ入庫される物品の入庫数を確率分布を用いて演算する入庫数演算ステップと、所定の出庫条件下において、単位時間あたりに自動倉庫から出庫される物品の出庫数を確率分布を用いて演算する出庫数演算ステップと、 演算された入庫数及び出庫数に基づいて、保管棚での物品の推移を演算する保管数演算ステップと、を備える。
【0011】
この自動倉庫規模演算方法によれば、上述の自動倉庫規模演算装置と同様な作用・効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自動倉庫に求められる規模を速やかに演算することができる自動倉庫規模演算装置、及び自動倉庫規模演算方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る自動倉庫規模演算装置による演算の対象となる物流倉庫を示す概略側面図である。
図2】物流倉庫の構成を示す概略構成図である。
図3】制御装置のブロック構成図である。
図4】本実施形態に係る自動倉庫規模演算装置のブロック構成図である。
図5】自動倉庫に対して入庫及び出庫される物品の流れの一例を示す模式図である。
図6】物品の入庫と出庫の様子を示す模式図である。
図7】(a)は入庫数演算部の処理の一例を示す模式図であり、(b)は出庫数演算部の処理の一例を示す模式図である。
図8】(a)は自動倉庫に保管される保管数の推移を示すグラフであり、(b)は保管数の最大値の確率分布を示すグラフである。
図9】入力情報及び出力情報の一例である。
図10】入力情報及び出力情報の一例である。
図11】入力条件及び出力条件の一例である。
図12】自動倉庫規模演算装置の処理内容の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置を備える物流倉庫1を示す概略側面図である。図1に示すように、物流倉庫1は、複数の物品150を入庫して保管し、保管された各物品150のうち、出庫すべきものを出庫可能なシステムである。物流倉庫1は、自動倉庫100と、出庫エレベータ104(垂直搬送機)と、入庫エレベータ105(垂直搬送機)と、出庫レーン121(搬送レーン)と、入庫レーン21(搬送レーン)と、を備える。自動倉庫100は、物品150を保管する倉庫である。自動倉庫100は、倉庫本体部101と、出庫渡り通路102と、入庫渡り通路103と、を備える。倉庫本体部101は、複数段の保管棚110を有している。保管棚110は、倉庫本体部101の一方側の端部から他方側の端部へ延在している。保管棚110では、移載装置111にて、入庫経路から出庫経路への物品の移載動作が行われる。入庫渡り通路103は、倉庫本体部101の一方側の端部に設けられ、各段の保管棚110に対して物品150を入庫する機構である。出庫渡り通路102は、倉庫本体部101の他方側の端部に設けられ、各段の保管棚110から物品150を出庫する機構である。入庫エレベータ105は、入庫レーン21から入庫される物品150を上下させて、所望の保管棚110に対応する段の入庫渡り通路103へ物品150を供給する。出庫エレベータ104は、出庫対象となる物品150を保管棚110及び出庫渡り通路102から受け取り、図示しない出庫口へ昇降させる。出庫エレベータ104から出庫された物品150は、出庫レーン121へ搬出される。
【0016】
図2は、物流倉庫1の構成を示す概略構成図である。以降の説明においては、入庫エレベータ105、及び出庫エレベータ104を単に「垂直搬送機22」と称する場合がある。図2は、物流倉庫1のうち、入庫側の構成を示す。なお、物流倉庫1の出庫側は、物品150の流れが自動倉庫100、垂直搬送機22(出庫エレベータ104)、出庫レーン121で流れていく点以外は入庫側と同様な構成を有するため、説明を省略する。図2に示すように、物流倉庫1は、物品150を搬送する搬送系2と、搬送系2を制御する制御装置10と、を備える。搬送系2は、入庫レーン21と、垂直搬送機22と、自動倉庫100のコンベア23と、を備える。このうち、垂直搬送機22は、前述の入庫エレベータ105を構成する機器である。入庫レーン21は、物品150を水平に搬送して垂直搬送機22へ受け渡す装置である。入庫レーン21は、垂直搬送機22の所定の段に対して設けられている。コンベア23は、自動倉庫100の各階において、垂直搬送機22から物品を受け取って水平に搬送する装置である。コンベア23は、入庫渡り通路103の各階(ここでは四階)に設けられる。
【0017】
垂直搬送機22は、水平方向移動手段(例えばコンベア)と、上下移動手段と、を備え、物品150を上下方向及び水平方向に移動させる装置である。入庫される物品150のそれぞれには、搬送先である目的階が紐づけされている。これにより、垂直搬送機22は、各物品150を入庫渡り通路103における目的階へ移動させる。なお、図では、「m階」を目的地とした物品150に対して、「m」の数字が付されている。以降の図においても同様である。また、以降の説明では、m階を目的地とした物品150を「m階への物品」と称する場合がある。
【0018】
垂直搬送機22は、隣り合う複数の搬送箱22aを交互に昇降しつつ、物品150を水平方向(横方向)に移動させることで垂直搬送を行う垂直搬送機である。垂直搬送機22は、交互動作式の昇降装置であり、入庫レーン21側の搬送棚22Aと、コンベア23側の搬送棚22Bと、を有している。搬送棚22A、22Bは、それぞれ「自動倉庫の階数+一階」分の段数の収容可能エリアCEを有している。そして、「自動倉庫の階数」分の段数(ここでは四段)で連続した搬送箱22aを有している。連続した搬送箱22aは、同時に上下移動する。連続した搬送箱22aが下側へ移動すると、下から順に一段目から四段目の収容可能エリアCEに各搬送箱22aが配置される。連続した搬送箱22aが上側へ移動すると、下から順に二段目から五段目の収容可能エリアCEに各搬送箱22aが配置される。なお、以降の説明において、単に段数について述べた場合、特に注意が無い限り、下からカウントした段数を示すものとする。また、搬送棚22Aの搬送箱22aと搬送棚22Bの搬送箱22aは、交互に上下移動する。すなわち、搬送棚22Aの搬送箱22aが上側へ移動すると、搬送棚22Bの搬送箱22aが下側へ移動する。これにより、搬送棚22A中の物品150を一段上昇させることができる(動作M1参照)。また、搬送棚22Aの搬送箱22aが下側へ移動すると、搬送棚22Bの搬送箱22aが上側へ移動する。これにより、搬送棚22B中の物品150を一段上昇させることができる。また、同じ段数において、搬送棚22Aの搬送箱22aと搬送棚22Bの搬送箱22aとの間にて、物品150を水平方向に移動させることができ、相互に物品150の受け渡しと受け取りを行うことができる(動作M2参照)。また、搬送棚22Bの搬送箱22aから目的の階数のコンベア23へ物品150を受け渡すことができる(動作M3参照)。
【0019】
本実施形態では、下から二段目の収容可能エリアCEに対して入庫レーン21が設けられ、下から一段目~四段目の収容可能エリアCEに対して四つのコンベア23が設けられる。なお、図2において収容可能エリアCEの中で「S1」「S2」と示された箇所は、搬送棚22A,22Bが昇降動作をするために設けられたスペースである。ただし、収容可能エリアCE、入庫レーン21、及びコンベア23との位置関係は特に限定されるものではなく、物流倉庫1の構成に応じて、適宜設定されてよい。
【0020】
次に、図3を参照して、制御装置10のブロック構成について説明する。図3は、本実施形態に係る制御装置10のブロック構成図である。制御装置10は、搬送系2を制御するユニットである。制御装置10は、物流倉庫1を統括的に管理するECU[ElectronicControl Unit]を備えている。ECUは、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]のほか、CAN[Controller Area Network]などの通信回路等を有する電子制御ユニットである。ECUでは、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。制御装置10は、動作制御部11、物品情報取得部12と、経路演算部13と、を備える。制御装置10は、記憶部3から各種情報を取得し、搬送系2へ制御信号を送信する。
【0021】
動作制御部11は、経路演算部13で演算した搬送経路に基づいて、各物品150が搬送されるように、物流倉庫1の搬送動作を制御するユニットである。動作制御部11は、搬送系2に制御信号を送信することによって搬送動作を制御する。動作制御部11は、搬送系2の入庫レーン21、垂直搬送機22、及びコンベア23の各駆動部へ制御信号を送信することで、各駆動部を動作させる。
【0022】
物品情報取得部12は、物品150が入庫レーン21、垂直搬送機22、及び自動倉庫100の順で移動するとき、または自動倉庫100、垂直搬送機22、及び出庫レーン121の順で移動するとき、物品150の移動初期状態及び移動完了状態を示す物品情報を取得する。移動初期状態とは、搬送対象となる物品150が入庫レーン21に存在している状態である。また、移動完了状態とは、搬送対象となる物品150が自動倉庫100から全て搬送された状態である。物品情報は、入庫時における、入庫レーン21に存在する物品150の目的地の階数、各階数に対する物品150の個数、及び入庫順序などの情報を含む。また、物品情報は、自動倉庫100からどの階数から何個の物品150を出庫するかなどの情報、及びそれらの出庫順序などの情報を含む。
【0023】
経路演算部13は、物品情報から、搬送経路情報を演算するユニットである。経路演算部13は、搬送系2における、各物品150の搬送経路を探索する。経路演算部13は、各物品150が搬送系2内にてどのような経路を通って、目的地まで到達するかを演算する。経路演算部13は、所定個数の物品150を搬送系2の各部位を探索ノードとして、最短経路探索手法などを用いて各物品150の経路を探索する。
【0024】
次に、本実施形態に係る自動倉庫規模演算装置50について説明する。図4は、本発明の実施形態に係る自動倉庫規模演算装置50を示すブロック構成図である。自動倉庫規模演算装置50は、自動倉庫100の規模を演算する装置である。自動倉庫規模演算装置50は、前述のような自動倉庫100を設計する段階にて、自動倉庫100の規模を見積もるために用いられる装置である。自動倉庫100の規模とは、自動倉庫100がどの程度の個数の物品150を保管することができるかを示す情報である。すなわち、各階の保管棚110で保管することができる物品150の保管数の合計である。保管数は、自動倉庫100に対して入庫された物品150の入庫数から、自動倉庫100から出庫された物品150の出庫数を引いた数である。自動倉庫規模演算装置50は、入庫数演算部51と、出庫数演算部52と、保管数演算部53と、統計情報演算部54と、を備える。
【0025】
自動倉庫規模演算装置50の説明を行う前に、自動倉庫100に対して入庫及び出庫される物品150の流れの一例について説明する。図5に示すように、自動倉庫100には、X社、Y社、及びZ社の各社から届いた物品150が入庫される。そして、自動倉庫100は、顧客A、顧客B、及び顧客Cごとに物品150を並び替えて、並び替えた物品150を出庫する。自動倉庫規模演算装置50は、このような状況のときに自動倉庫100に要求される保管規模の見積もりを行う。図6に示すように、顧客Aに対するものを「1」の物品150とし、顧客Bに対するものを「2」の物品150とし、顧客Cに対するものを「3」の物品とする。このとき、「1」「2」「3」の物品150は、ランダムな順序で自動倉庫100に入庫される。自動倉庫100は、顧客ごとに「1」「2」「3」の順で物品150を並び替えた状態で出庫する。
【0026】
入庫数演算部51は、所定の入庫条件下において、単位時間あたりに垂直搬送機22(入庫エレベータ105)から自動倉庫100へ入庫される物品150の入庫数nを確率分布を用いて演算する。入庫数演算部51は、保管棚110の階数に基づく単位時間あたりの平均の物品数(入庫数n)を確率分布としてポアソン分布を用いて演算する。本実施形態では保管棚110は4階である。従って、垂直搬送機22が保管棚110に対して同時に入庫できる入庫数nは、4個より少ない(n<4)。単位時間(1サイクル)あたりの入庫数nは、0個、1個、2個、または3個となる。ポアソン分布の式は、以下の式(1)となる。式(1)のポアソン分布P(k)は、単位時間あたり平均λ個の物品150が入庫するとして、単位時間にk個入庫する確率を示す。「λ=3」のとき、入庫数が2個または3個の確率はそれぞれ22%、0個の確率は5%、1個の確率は15%となる。入庫数演算部51は、あるサイクルの入庫数nを当該確率分布に従って設定する。ここでは、入庫数nが1個または2個となる確率が最も高いため、あるサイクルにおける入庫数nは1又は2個に設定されることが多く、3個に設定されることが次に多く、0個に設定されることが最も少ない。
【数1】
【0027】
入庫数演算部51は、単位時間ごとに(サイクルごとに)求めた入庫数nに基づき、入庫対象の物品150の中から、ランダムにn個選択する。例えば、図7(a)に示す例では、入庫数演算部51が、あるサイクルの入庫数nを2としたら、「1」「2」「3」の物品150の物品群の中から、ランダムに2個の物品150を選択する。入庫数演算部51は、選択した物品150を入庫完了状態にする。入庫完了状態とされた物品150は、入庫対象となる物品群の中から引かれる。ここでは「1」の物品150と「3」の物品150が選択されたため、入庫数演算部51は、物品群の中から「1」の物品150を1個引き、「3」の物品150を1個引いた状態にて、次のサイクルにおける物品150の選択を行う。入庫数演算部51は、全ての入庫対象の物品150が入庫完了状態となるまで、上記処理を繰り返す。
【0028】
なお、図7(a)の左側の物品群では、図6の入庫側の物品150の順序に縛られない状態で物品150が並べられている。図6のような順序で入庫されても垂直搬送機22で順序が入れ替わるため、「1」「2」「3」のどの物品150が入庫されるかはランダムになる。
【0029】
出庫数演算部52は、所定の出庫条件下において、単位時間あたりに自動倉庫100から垂直搬送機22(出庫エレベータ104)へ出庫される物品150の出庫数nを確率分布を用いて演算する。出庫数演算部52は、保管棚110の階数に基づく単位時間あたりの平均の物品数(出庫数n)を確率分布としてポアソン分布を用いて演算する。本実施形態では保管棚110は4階である。従って、垂直搬送機22が保管棚110に対して同時に出庫できる出庫数nは、4個より少ない(n<4)。単位時間(1サイクル)あたりの出庫数nは、0個、1個、2個、または3個となる。ポアソン分布の式は、上述の式(1)と同じである。式(1)のポアソン分布P(k)は、単位時間あたり平均λ個の物品150が出庫するとして、単位時間にk個出庫する確率を示す。「λ=3」のとき、出庫数が2個または3個の確率はそれぞれ22%、0個の確率は5%、1個の確率は15%となる。出庫数演算部52は、あるサイクルの出庫数nを当該確率分布に従って設定する。
【0030】
出庫数演算部52は、単位時間ごとに(サイクルごとに)求めた出庫数nに基づき、自動倉庫100に入庫済みの物品150の中から、出庫対象となる顧客の物品150をn個選択する。例えば、図7(b)に示す例では、出庫数演算部52が、顧客Aの物品150を出庫すべきあるサイクルの出庫数nを2としたら、自動倉庫100に入庫された「1」の物品150の物品群の中から、2個の「1」の物品150を選択する。出庫数演算部52は、選択した物品150を出庫完了状態にする。出庫完了状態とされた物品150は、自動倉庫100の物品群の中から引かれる。ここでは2個の「1」の物品150が選択されたため、出庫数演算部52は、自動倉庫100の物品群の中から「1」の物品150を2個引いた状態にて、次のサイクルにおける物品150の選択を行う。出庫数演算部52は、全ての物品150が出庫完了状態となるまで、上記処理を繰り返す。
【0031】
保管数演算部53は、演算された入庫数及び出庫数に基づいて、保管棚110で保管される物品150の保管数の推移を演算する。保管数は、自動倉庫100内の物品数であり、入庫完了状態の物品数と出庫完了状態の物品数の差で定義される。保管数演算部53は、自動倉庫100への入庫開始から全物品150の出庫完了に至るまでをシミュレーションすることで、保管数の推移を演算する。例えば、保管数演算部53は、例えば図8(a)に示すような保管数推移を取得する。入庫開始直後のサイクルでは、自動倉庫100内の物品150の数が少ない状態であるため、あまり出庫することができない。そのため、保管数の増加率が大きくなる(サイクル1~50付近)。自動倉庫100に入庫された物品150が所定量になると顧客ごとの物品150の出庫がなされる。そのため、保管数は増加したり減少したりする(サイクル50~150付近)。入庫対象となる物品150の入庫が全て完了すると、自動倉庫100からの出庫だけがなされる。そのため、保管数の減少率が大きくなる(サイクル150~210付近)。保管数演算部53は、上記推移における保管数の最大値を自動倉庫100に要求される保管数として取得する。
【0032】
統計情報演算部54は、繰り返し実行された入庫数演算部51、出庫数演算部52、及び保管数演算部53による演算結果に基づき、保管数の確率的な統計情報を演算する。入庫数演算部51、出庫数演算部52、及び保管数演算部53は、1回のシミュレーションを行うことで、当該シミュレーションにおける保管数の最大値を取得する。入庫数演算部51、出庫数演算部52、及び保管数演算部53は、このようなシミュレーションを指定された回数、繰り返し行う。統計情報演算部54は、図8(b)に示すように、複数の保管数の最大値をプロットすることで確率的な統計情報を演算する。図8(b)に示す例では、統計情報演算部54は、ある最大値が得られたら、当該最大値の度数を1増加する。これにより、最大値が110あたりをピークとする確率分布が得られる。統計情報演算部54は、演算した統計情報を自動倉庫100の保管規模として出力する。例えば、ピークとなる最大値を保管規模として採用してもよいし、所定の度数以上の最大値を保管規模として採用してもよい。
【0033】
次に、自動倉庫規模演算装置50の演算において、どのような入力情報が入力され、どのような情報が出力されるかの一例について説明する。例えば、自動倉庫規模演算装置50に対する入力情報として、図9(a)に示すような顧客ごとの物品数を指定した情報が入力される。また、入力情報として、図9(b)に示すような入庫数演算部51が用いる確率分布と、出庫数演算部52が用いる確率分布を指定した情報が入力される。また、入力情報として、図9(c)に示すように、保管規模を出力するためのシミュレーション回数を指定した情報が入力される。
【0034】
自動倉庫規模演算装置50が出力する出力情報として、図10(a)に示すようなサイクルごとの保管数推移データが出力される。図10(a)の表は、各サイクルにおける自動倉庫内の保管数を示したものであり、図8(a)に示すグラフを表の形式に書き出したものである。出力情報として、図10(b)に示すように、各シミュレーションにおける保管数の最大値のデータが出力される。図10(b)に示す表に基づいて、図8(b)に示すような確率分布のグラフを作成することが可能となる。
【0035】
出庫数演算部52が用いる出庫条件として、例えば、図11(a)に示すように、顧客間の出庫時間のインターバル時間を指定する情報が入力されてよい。例えば、顧客A向けの「1」の物品150の出庫が完了し、次に顧客B向けの「2」の物品150を出庫するときに、所定回数分のサイクルだけ、インターバル時間として待機する。また、出庫条件として、トラックの出荷時刻に合わせた出庫開始サイクルの指定がなされてよい。例えば、1台のトラックに対する積み込みが完了したら、次のトラックへの積み込み準備が完了するまでの間のサイクル分、出庫を待機してよい。
【0036】
入庫数演算部51が用いる入庫条件として、入庫する物品150の順番を指定してよい。例えば、図7(a)に示す例では、入庫数演算部51は、顧客の物品150をランダムに選択して入庫した。これに代えて、入庫数演算部51は、顧客の物品150を確率分布で選択して入庫してよい。あるいは、入庫数演算部51は、図11(b)に示すような顧客データに基づいて物品を選択して入庫してよい。図11(b)では、サイクル1において、顧客Aの物品150が2個選択され、顧客Bの物品150が1個選択されている。
【0037】
出庫数演算部52が用いる出庫条件として、図11(c)に示すように、指定した顧客の順序で出庫がなされてよい。図11(c)では、まず顧客Aの物品150が40個出庫され、次に顧客Bの物品150が12個出庫され、次に顧客Cの物品150が16個出庫されている。あるいは、指定の物品数が揃った顧客から出庫することを出庫条件としてもよい。
【0038】
次に、図12を参照して、自動倉庫規模演算装置50の処理内容の流れについて説明する。まず、入庫数演算部51は、所定の入庫条件下において、単位時間あたりに自動倉庫100へ入庫される物品150の入庫数を確率分布を用いて演算する入庫数演算ステップを実行する(ステップS10)。次に、出庫数演算部52は、所定の出庫条件下において、単位時間あたりに自動倉庫100から出庫される物品150の出庫数を確率分布を用いて演算する出庫数演算ステップを実行する(ステップS20)。次に、保管数演算部53は、演算された入庫数及び出庫数に基づいて、保管棚110での物品150の推移を演算する保管数演算ステップを実行する(ステップS30)。次に、統計情報演算部54は、指定回数のシミュレーションが完了したか否かを判定する(ステップS40)。ステップS40において完了していないと判定された場合、再び入庫数演算ステップS10から処理が繰り返される。ステップS40において完了したと判定されたら、統計情報演算部54は、繰り返し実行された入庫数演算部51、出庫数演算部52、及び保管数演算部53による演算結果に基づき、保管数の確率的な統計情報を演算する統計情報演算ステップを実行して統計情報を出力する(ステップS50)。以上により、図12に示す処理が完了する。
【0039】
本実施形態に係る自動倉庫規模演算装置50、及び自動倉庫規模演算方法の作用・効果について説明する。
【0040】
自動倉庫規模演算装置50において、入庫数演算部51は、所定の入庫条件下において、単位時間あたりに自動倉庫100へ入庫される物品150の入庫数を確率分布を用いて演算する。従って、単位時間あたりに入庫される入庫数が一定ではない垂直搬送機22を用いた場合であっても、入庫数演算部51は、確率分布を用いて容易に入庫数を演算することができる。また、出庫数演算部52は、所定の出庫条件下において、単位時間あたりに自動倉庫から出庫される物品150の出庫数を確率分布を用いて演算する。従って、単位時間あたりに出庫される出庫数が一定ではない垂直搬送機22を用いた場合であっても、出庫数演算部52は、確率分布を用いて容易に出庫数を演算することができる。また、保管数演算部53は、演算された入庫数及び出庫数に基づいて、保管棚110で保管される物品150の保管数の推移を演算する。この場合、保管数演算部53の演算結果から、保管棚110で保管される物品150の保管数が多いときには、どの程度の保管数が必要になるかを容易に把握することができる。以上より、自動倉庫規模演算装置50は、自動倉庫100に求められる規模を速やかに演算することができる。
【0041】
自動倉庫規模演算装置50は、繰り返し実行された入庫数演算部51、出庫数演算部52、及び保管数演算部53による演算結果に基づき、保管数の確率的な統計情報を演算する統計情報演算部54を更に有してよい。この場合、統計情報演算部54は、繰り返しのシミュレーション結果に基づいて、自動倉庫100に求められる規模を統計的に把握可能な統計情報を演算することができる。
【0042】
垂直搬送機22は交互動作式であり、入庫数演算部51、及び出庫数演算部52の少なくとも一方は、保管棚110の階数に基づく単位時間あたりの平均の物品数を確率分布としてポアソン分布を用いて演算してよい。交互動作式の垂直搬送機22が入庫または出庫する単位時間あたりの物品数の上限は保管棚110の階数によって決まる。また、ポアソン分布は、小さい数にてピークが出やすい確率分布であるため、垂直搬送機22による物品数を演算するのに適した確率分布である。
【0043】
本実施形態に係る自動倉庫規模演算方法は、物品150を保管する保管棚110を有し、垂直搬送機22に対して設けられる自動倉庫100の規模を演算する自動倉庫規模演算方法であって、所定の入庫条件下において、単位時間あたりに自動倉庫100へ入庫される物品150の入庫数を確率分布を用いて演算する入庫数演算ステップS10と、所定の出庫条件下において、単位時間あたりに自動倉庫100から出庫される物品150の出庫数を確率分布を用いて演算する出庫数演算ステップS20と、演算された入庫数及び出庫数に基づいて、保管棚110での物品の推移を演算する保管数演算ステップS30と、を備える。
【0044】
この自動倉庫規模演算方法によれば、上述の自動倉庫規模演算装置50と同様な作用・効果を得ることができる。
【0045】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。
【0046】
入庫数演算部51及び出庫数演算部52は、確率分布としてポアソン分布を用いたが、他の確率分布を用いてもよく、対象とする搬送機に応じて適したものを用いてよい。
【符号の説明】
【0047】
1…物流倉庫、22…垂直搬送機、50…自動倉庫規模演算装置、51…入庫数演算部、52…出庫数演算部、53…保管数演算部、54…統計情報演算部、100…自動倉庫、150…物品。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12