(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157185
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化物、隔壁付き基材及びその製造方法、並びに画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20241030BHJP
G03F 7/029 20060101ALI20241030BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20241030BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20241030BHJP
C08F 20/20 20060101ALI20241030BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/029
G03F7/038 501
G02B5/20
C08F20/20
H01L21/30 564Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071364
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 遼
(72)【発明者】
【氏名】山岸 恭子
(72)【発明者】
【氏名】古園 圭俊
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
4J100
5F146
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA09
2H148AA18
2H225AC00
2H225AC21
2H225AC35
2H225AC43
2H225AC44
2H225AC46
2H225AC49
2H225AC72
2H225AC79
2H225AD07
2H225AN10P
2H225AN39P
2H225AN50P
2H225AN72P
2H225BA16P
2H225BA32P
2H225BA35P
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
4J100AB02R
4J100AJ02Q
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100BA03H
4J100BA15H
4J100BA16H
4J100BC12Q
4J100BC43Q
4J100BC54Q
4J100CA31
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA28
4J100HA11
4J100HA57
4J100HC29
4J100HC39
4J100HC75
4J100HE05
4J100HE41
4J100JA38
5F146JA20
(57)【要約】
【課題】充分な撥インク性を有する隔壁を形成することができる感光性樹脂組成物等を提供すること。
【解決手段】本開示の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性バインダーポリマーと、エチレン性不飽和基を有する光重合性モノマーと、光重合開始剤と、撥液剤と、を含み、撥液剤が、光硬化性基を有し、重量平均分子量が2000以上の含フッ素化合物を含み、含フッ素化合物の含有量が、感光性樹脂組成物全量を基準として1質量%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性バインダーポリマーと、エチレン性不飽和基を有する光重合性モノマーと、光重合開始剤と、撥液剤と、を含む感光性樹脂組成物であって、
前記撥液剤が、光硬化性基を有し、重量平均分子量が2000以上の含フッ素化合物を含み、
前記含フッ素化合物の含有量が、感光性樹脂組成物全量を基準として1質量%以上である、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記含フッ素化合物が脂環式骨格を有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルカリ可溶性バインダーポリマーの固形分酸価が25~125mgKOH/gである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記光重合性モノマーが1分子中に3個以上の官能基を有し、前記3個以上の官能基が、エチレン性不飽和基及び水酸基を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記光重合開始剤が、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項7】
基材と、該基材上に設けられた隔壁と、を備え、
前記隔壁が請求項6に記載の硬化物からなる、隔壁付き基材。
【請求項8】
請求項7に記載の隔壁付き基材を含む、画像表示装置。
【請求項9】
基材上に、請求項1~5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、
前記基材上に設けられた前記感光性樹脂層を所定のパターンで露光する露光工程と、
露光後の前記感光性樹脂層をアルカリ現像することにより隔壁を形成する現像工程と、
を備える、隔壁付き基材の製造方法。
【請求項10】
隔壁で囲まれた色変換部を有する色変換デバイスの製造方法であって、
隔壁によって前記色変換部の形成領域となる凹部が設けられている請求項7に記載の隔壁付き基材を用意し、前記凹部に量子ドットインクをインクジェット方式によって塗布する塗布工程、を備える、色変換デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性樹脂組成物、硬化物、隔壁付き基材及びその製造方法、並びに画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ及びLEDディスプレイなどの表示装置は、通常、パターニングされた隔壁によって区画された領域毎に、赤色光、緑色光、又は青色光を発光させている(例えば、下記特許文献1を参照)。LEDディスプレイの場合、発光体として青色LED素子のみを用い、区画された所定の領域において青色光を赤色光又は緑色光に変換する色変換デバイスを設けた構成を有するものも知られている。
【0003】
近年、発光材料として量子ドット(Quantum Dot)が注目されている。量子ドットは、直径が数nmから数十nmの半導体ナノ結晶であり、特異的な光学的、電気的性質を示し、ディスプレイ用途としての利用も提案されている。例えば、下記特許文献2には、量子ドットインクをインクジェット方式により塗布して量子ドット発光素子を製造することが提案されている。
【0004】
一方、LEDの製造技術の進歩によってマイクロLED素子が開発されており、次世代ディスプレイへの適用が期待されている(例えば、下記特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/147626号
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/0174921号明細書
【特許文献3】特開2012-142489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者らはマイクロLED素子が配置されたマイクロLEDディスプレイの構成及びその生産性について検討を行った。
【0007】
マイクロLEDディスプレイに、マイクロLED素子の光を区画された所定の領域において色変換する色変換デバイスを搭載する場合、隔壁で囲まれた色変換部も微細化することになる。このような色変換部を生産性よく形成する方法として、基板上に感光性樹脂組成物を用いて露光及び現像を行うフォトリソグラフィー法により隔壁を形成し、色変換部の形成領域となる凹部に量子ドットインクをインクジェット方式により塗布するプロセスが考えられる。しかしながら、このようなプロセスにおいては、隔壁と量子ドットインクとの親和性が高いと量子ドットインクが隔壁を伝って凹部から溢れやすくなるという問題がある。
【0008】
基材表面に撥液性を付与する技術としてフッ素系の撥液剤などは知られている。しかし、感光性樹脂組成物に撥液剤を配合しても上記の方法で形成された隔壁において所望の撥インク性が発現しない場合のあることが本発明者らの検討により明らかとなった。
【0009】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、充分な撥インク性を有する隔壁を形成することができる感光性樹脂組成物、硬化物、隔壁付き基材及び画像表示装置、並びに、隔壁付き基材の製造方法及び色変換デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一側面は、下記[1]~[14]に関する。
[1] アルカリ可溶性バインダーポリマーと、エチレン性不飽和基を有する光重合性モノマーと、光重合開始剤と、撥液剤と、を含む感光性樹脂組成物であって、前記撥液剤が、光硬化性基を有し、重量平均分子量が2000以上の含フッ素化合物を含み、前記含フッ素化合物の含有量が、感光性樹脂組成物全量を基準として1質量%以上である、感光性樹脂組成物。
[2] 前記含フッ素化合物が脂環式骨格を有する、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3] 前記アルカリ可溶性バインダーポリマーの固形分酸価が25~125mgKOH/gである、[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4] 前記光重合性モノマーが1分子中に3個以上の官能基を有し、前記3個以上の官能基が、エチレン性不飽和基及び水酸基を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5] 前記光重合開始剤が、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含む、[1]~[4]のいずれかにに記載の感光性樹脂組成物。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
[7] 基材と、該基材上に設けられた隔壁と、を備え、前記隔壁が[6]に記載の硬化物からなる、隔壁付き基材。
[8] [7]に記載の隔壁付き基材を含む、画像表示装置。
[9] 基材上に、[1]~[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、前記基材上に設けられた前記感光性樹脂層を所定のパターンで露光する露光工程と、露光後の前記感光性樹脂層をアルカリ現像することにより隔壁を形成する現像工程と、を備える、隔壁付き基材の製造方法。
[10] 隔壁で囲まれた色変換部を有する色変換デバイスの製造方法であって、隔壁によって前記色変換部の形成領域となる凹部が設けられている[7]に記載の隔壁付き基材を用意し、前記凹部に量子ドットインクをインクジェット方式によって塗布する塗布工程、を備える、色変換デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、充分な撥インク性を有する隔壁を形成することができる感光性樹脂組成物、硬化物、隔壁付き基材及び画像表示装置、並びに、隔壁付き基材の製造方法及び色変換デバイスの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示に係る隔壁付き基材の製造方法の実施形態の感光性樹脂層形成工程を示す部分断面図である。
【
図2】本開示に係る隔壁付き基材の製造方法の実施形態の露光工程を示す部分断面図である。
【
図3】
図2の露光工程で得られる第2積層体を示す部分断面図である。
【
図4】本開示に係る隔壁付き基材の製造方法の実施形態の現像工程を示す部分断面図である。
【
図5】本開示に係る隔壁付き基材を示す平面図である。
【
図6】本開示に係る色変換デバイスの製造方法の実施形態の塗布工程を示す部分断面図である。
【
図7】本開示に係る色変換デバイスを示す部分断面図である。
【
図8】本開示に係る色変換デバイスを示す平面図である。
【
図9】本開示に係る画像表示装置を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、場合により図面を参照しつつ、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。
【0014】
<感光性樹脂組成物及びその硬化物>
本開示の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性バインダーポリマー(以下、(A)成分ということもある)、(B)エチレン性不飽和基を有する光重合性モノマー(以下、(B)成分ということもある)、(C)光重合開始剤(以下、(C)成分ということもある)、及び(D)撥液剤(以下、(D)成分ということもある)とを含有する。ここで、撥液剤は、光硬化性基を有し、重量平均分子量が2000以上の含フッ素化合物(以下、(D-1)成分ということもある)を含み、当該含フッ素化合物の含有量は、感光性樹脂組成物全量を基準として1質量%以上である。また、本開示の硬化物は、上述した感光性樹脂組成物を硬化させてなるものである。
【0015】
本開示の感光性樹脂組成物によれば、充分な撥インク性を有する隔壁を形成することができる。このような効果が得られる理由については以下のとおりであると推測される。感光性樹脂組成物を用いて隔壁を形成する場合、基材上に感光性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成し、これを所定のパターンで露光した後、アルカリ現像液で現像することになる。上記フッ素化合物が光硬化性基を有し且つ上記特定の重量平均分子量を有していることにより、(i)感光性樹脂層の露光部において含フッ素化合物が硬化物に強固に組み込まれることで現像時の溶出を抑制できること、及び(ii)1分子内における含フッ素量を大きくすることができるとともに、表面に偏析させやすいことなどの作用によって、隔壁に充分な撥インク性を付与することができたと考えられる。
【0016】
(アルカリ可溶性バインダーポリマー)
アルカリ可溶性バインダーポリマーとしては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、アミドエポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応で得られるエポキシアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂と酸無水物の反応で得られる酸変性エポキシアクリレート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、エチレン性不飽和基を有していてもよい。
【0017】
アルカリ可溶性バインダーポリマーは、アルカリ現像性をより良好にする観点から、カルボキシ基を有していてもよい。
【0018】
本開示の硬化物において上記(D-1)成分による撥インク性が発現しやすくなる観点から、アルカリ可溶性バインダーポリマーは、下記式(1)で表される構成単位(a)、下記式(2)で表される構成単位(b)、下記式(3)で表される構成単位(c)、及び、下記式(4)で表される構成単位(d)を含むポリマー(以下、(A-1)成分ということもある)を含んでいてもよい。同様の観点から、アルカリ可溶性バインダーポリマーは、下記式(1)で表される構成単位(a)、下記式(2)で表される構成単位(b)、下記式(4)で表される構成単位(d)、及び下記式(5)で表される構成単位(e)を含むポリマー(以下、(A-2)成分ということもある)を含んでいてもよい。
【化1】
(上記式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、Xは、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基を表す。)
【化2】
(上記式(2)中、R
2は水素原子又はメチル基を表し、Yは、置換基を有してもよい芳香族基を表す。)
【化3】
(上記式(3)中、R
3は水素原子又はメチル基を表す。)
【化4】
(上記式(4)中、R
4及びR
5はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。)
【化5】
(上記式(5)中、R
6及びR
7はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。)
【0019】
構成単位(a)を表す式(1)におけるXは、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基を表す。脂環式炭化水素基の炭素原子数は、7~20であればよい。置換基としては、例えばフルオロ、クロロ、ブロモ等のハロゲン原子、ヒドロキシ基などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、アダマンチル基、トリシクロデシル基、イソボルニル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0020】
構成単位(a)は、共重合によりアルカリ可溶性バインダーポリマーを製造するときに用いる重合性モノマーとして、脂環式炭化水素基含有重合性モノマーを用いることにより導入することができる。脂環式炭化水素基含有重合性モノマーは、例えば、下記一般式(1A)で表される。
CH2=C(R1)-COOX…(1A)
【0021】
上記一般式(1A)で表される脂環式炭化水素基含有重合性モノマーとしては、例えば、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの脂環式炭化水素基含有重合性モノマーは、単独で用いてもよいし、又は2種以上を用いてもよい。
【0022】
構成単位(b)を表す式(2)におけるYは、置換基を有してもよい芳香族基を表す。芳香族基とは、芳香環を有していればよく、例えば-P-Qで表される。ここで、Pは単結合又は-COO-で表され、Qは、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を表す。芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基などのアラルキル基、スチリル基が挙げられる。
【0023】
構成単位(b)は、共重合によりアルカリ可溶性バインダーポリマーを製造するときに用いる重合性モノマーとして、芳香族炭化水素基含有重合性モノマーを用いることにより導入することができる。芳香族炭化水素基含有重合性モノマーは、下記一般式(2A)で表される。
CH2=C(R2)-Y …(2A)
【0024】
上記一般式(2A)で表される芳香族炭化水素基含有重合性モノマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)クリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート、スチレン等の芳香族ビニル化合物などが挙げられる。これらの芳香族炭化水素基含有重合性モノマーは、単独で用いてもよいし、又は2種以上を用いてもよい。
【0025】
構成単位(c)は、共重合によりアルカリ可溶性バインダーポリマーを製造するときに用いる重合性モノマーとして、(メタ)アクリル酸を用いることにより導入することができる。(メタ)アクリル酸は、反応性が高く、入手が容易である。
【0026】
構成単位(d)は、例えばアルカリ可溶性バインダーポリマーを製造するときに用いる重合性モノマーとして、下記式(4A)で表される重合性モノマーを用いることにより導入することができる。
【化6】
構成単位(d)は、構成単位(c)が有するカルボキシ基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートを付加させることにより導入することもできる。
【0027】
構成単位(e)は、例えばアルカリ可溶性バインダーポリマーを製造するときに用いる重合性モノマーとして、(メタ)アクリル酸を用いて構成単位(c)を導入した後、構成単位(c)が有するカルボキシ基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートを付加させ、さらに無水コハク酸無水物を反応させることにより導入してもよく、或いは、アルカリ可溶性バインダーポリマーを製造するときに用いる重合性モノマーとして、上記式(4A)で表される重合性モノマーを用いて構成単位(d)を導入した後、無水コハク酸無水物を反応させることにより導入してもよい。
【0028】
(A-1)成分においては、上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)及び構成単位(d)の合計を基準(100モル%)とした場合に、構成単位(a)の割合は、0モル%より大きければ特に制限されるものではないが、0.1モル%以上、0.5モル%以上、又は、1モル%以上であってよく、構成単位(a)の割合は30モル%以下、29モル%以下、又は28モル%以下であってよく、構成単位(a)の割合は10~25モル%であってもよく、15~20モル%であってもよい。
【0029】
(A-1)成分においては、上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)及び構成単位(d)の合計を基準(100モル%)とした場合に、構成単位(b)の割合は、0モル%より大きければ特に制限されるものではないが、0.1モル%以上、0.5モル%以上、又は、1.0モル%以上であってよく、構成単位(b)の割合は20モル%未満、19モル%以下、又は18モル%以下であってよく、構成単位(b)の割合は0.5~10モル%であってもよく、1~5モル%であってもよい。
【0030】
(A-1)成分においては、上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)及び構成単位(d)の合計を基準(100モル%)とした場合に、構成単位(c)の割合は、0モル%より大きければ特に制限されるものではないが、1モル%以上、2モル%以上、又は、3モル%以上であってよく、構成単位(c)の割合は35モル%以下、34モル%以下、又は33モル%以下であってよく、構成単位(c)の割合は10~25モル%であってもよく、15~20モル%であってもよい。
【0031】
(A-1)成分においては、上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)及び構成単位(d)の合計を基準(100モル%)とした場合に、構成単位(d)の割合は、45モル%以上、47モル%以上、又は、49モル%以上であってよく、構成単位(d)の割合は85モル%以下、83モル%以下、又は81モル%以下であってよく、構成単位(d)の割合は50~70モル%であってもよく、60~65モル%であってもよい。
【0032】
(A-2)成分においては、上記構成単位(b)のYがフェニル基であってもよく、上記構成単位(d)のR5が水素原子であってもよい。
【0033】
(A-2)成分においては、上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(d)及び構造単位(e)の合計を基準(100モル%)とした場合に、構成単位(a)の割合は、0モル%より大きければ特に制限されるものではないが、1モル%以上、2モル%以上、又は、3モル%以上であってよく、構成単位(a)の割合は50モル%以下、45モル%以下、又は40モル%以下であってよく、構成単位(a)の割合は20~40モル%であってもよく、25~35モル%であってもよい。
【0034】
(A-2)成分においては、上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(d)及び構造単位(e)の合計を基準(100モル%)とした場合に、構成単位(b)の割合は、0モル%より大きければ特に制限されるものではないが、1モル%以上、3モル%以上、又は、5モル%以上であってよく、構成単位(b)の割合は35モル%以下、30モル%以下、又は25モル%以下であってよく、構成単位(b)の割合は5~20モル%であってもよく、5~15モル%であってもよい。
【0035】
(A-2)成分においては、上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(d)及び構造単位(e)の合計を基準(100モル%)とした場合に、構成単位(d)の割合は、0モル%より大きければ特に制限されるものではないが、1モル%以上、5モル%以上、又は、10モル%以上であってよく、構成単位(d)の割合は55モル%以下、50モル%以下、又は45モル%以下であってよく、構成単位(d)の割合は20~40モル%であってもよく、25~35モル%であってもよい。
【0036】
(A-2)成分においては、上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(d)及び構造単位(e)の合計を基準(100モル%)とした場合に、構成単位(e)の割合は、0モル%より大きければ特に制限されるものではないが、1モル%以上、10モル%以上、又は、15モル%以上であってよく、構成単位(e)の割合は75モル%以下、70モル%以下、又は65モル%以下であってよく、構成単位(e)の割合は25~45モル%であってもよく、30~40モル%であってもよい。
【0037】
アルカリ可溶性バインダーポリマーがエチレン性不飽和基等の二重結合を有している場合、二重結合当量は、光硬化性の観点から、250g/モル以上であってよく、260g/モル以上であってもよく、270g/モル以上であってよく、280g/モル以上であってよく、光硬化性の観点から、440g/モル以下であってよく、400g/モル以下であってもよく、380g/モル以下であってよい。アルカリ可溶性バインダーポリマーの二重結合当量は、重合性不飽和結合のモル数当たりの重合体の質量であり、モノマーの使用量に基づいて算出される。
【0038】
アルカリ可溶性バインダーポリマーの固形分酸価は、特に制限されるものではないが、25mgKOH/g以上であってよく、30mgKOH/g以上であってもよい。アルカリ可溶性バインダーポリマーの固形分酸価が25mgKOH/g以上であると、現像時の現像液に対する溶解性を向上させることができる。アルカリ可溶性バインダーポリマーの固形分酸価は、125mgKOH/g以下であってよく、120mgKOH/g以下であってもよい。アルカリ可溶性バインダーポリマーの固形分酸価が125mgKOH/g以下であることで、現像時の現像液に対して過度の溶解性を示しにくくなる。固形分酸価は、アルカリ可溶性バインダーポリマー1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を意味する。
【0039】
アルカリ可溶性バインダーポリマーの重量平均分子量は、機械強度及びアルカリ現像性のバランスを図る観点から、3,000~30,000であってよく、3,500~25,000であってもよく、4,000~20,000であってもよい。露光後の耐現像液性に優れる点では、重量平均分子量が、4,000以上であってよい。また、現像時間の観点からは、重量平均分子量は、20,000以下であってよい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定され、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算された値である。
【0040】
アルカリ可溶性バインダーポリマーは、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
(光重合性モノマー)
光重合性モノマーは、エチレン性不飽和基を有するものを用いることができる。
【0042】
エチレン性不飽和基を有する光重合性モノマーとしては、例えば、多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を反応させで得られる化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、β-ヒドロキシエチル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。
【0043】
多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2~14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2~14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2~14であり、プロピレン基の数が2~14であるポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2~14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアククリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0044】
上記ウレタンモノマーとしては、例えば、β位にヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス[(メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート]ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、「EO」はエチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有する。また、「PO」はプロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有する。
【0045】
光重合性モノマーにおいて1分子中の官能基の数は2個以上又は3個以上であってよい。なお、官能基数が2個以上の光重合性モノマーと、官能基数が3個以上の光重合性モノマーの2種以上の光重合性モノマーを併用しても良い。
【0046】
光重合性モノマーにおいて1分子中の官能基の数が3個以上である場合、3個以上の官能基がすべてエチレン性不飽和基であってもよいが、3個以上の官能基がエチレン性不飽和基のほかにさらに水酸基を含んでよい。この場合、感光性樹脂層の露光後に得られる部分硬化層に対する現像性がより向上する。また、現像時における部分硬化層の露光による硬化部の現像液による膨潤を抑制することができ、感光性樹脂組成物の解像性をより向上させることもできる。
【0047】
なお、1分子中の官能基の数は、26個以下又は5個以下であってよい。
【0048】
光重合性モノマーは、上述した化合物を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
感光性樹脂組成物中における光重合性モノマーの含有割合は、アルカリ可溶性バインダーポリマー及び光重合性モノマーの総量100質量部に対して、5~50質量部、又は、5~30質量部であってよい。光重合性モノマーの含有割合が5質量部以上であると、感光性樹脂層の光硬化性が良好になる傾向にあり、50質量部以下であると、感光性樹脂組成物を用いて基材上に感光性樹脂層を形成した際に、感光性樹脂層が露光前の形状保持性に優れる傾向にある。
【0050】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、アルカリ可溶性バインダーポリマーと光重合性モノマーとの反応、及び、光重合性モノマー同士の反応を開始させる化合物であり、光重合開始剤としては、使用する露光機の光波長等に応じて適宜選択することが可能であり、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤等の公知のものを利用することができる。光重合開始剤は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’-テトラアルキル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパノン-1、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、及び4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、アルキルアントラキノン、及びフェナントレンキノン等のキノン類、ベンゾイン、及びアルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンゾインアルキルエーテル、及びベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体、及び2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体、及び9-フェニルアクリジン等のアクリジン誘導体、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン 2-(O-ベンゾイルオキシム)等のオキシムエステル、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン等のクマリン系化合物、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物、並びに、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物が挙げられる。
【0052】
中でも、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、フォトブリーチング機能を有するため、露光により分解した後、光を吸収しにくくなる。したがって、露光時に、時間の経過とともに、光を感光性樹脂層の表面から十分に深い位置まで到達させることができるため、露光部の硬化不足を抑制できる。このため、現像時の露光による硬化部の溶解又は膨潤を抑制でき、隔壁(特には遮光性を有する隔壁)の解像性をより向上させることができる。
【0053】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、アシルホスフィンオキサイド基(>P(=O)-C(=O)-基)を有するものであり、例えば、(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,6-ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(製品名:IRGACURE-TPO、BASF社製)、エチル-2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネイト、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(製品名:IRGACURE-819、BASF社製)、(2,5-ジヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキサイド、(p-ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(p-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキサイド、トリス(p-ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0054】
光カチオン重合開始剤としては、活性エネルギー線を照射したときにルイス酸を放出するオニウム塩が用いられてよい。このようなオニウム塩の例としては、第VIIa族元素の芳香族スルホニウム塩、第VIa族元素の芳香族オニウム塩、第Va族元素の芳香族オニウム塩等を挙げることができる。具体的には、例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、テトラフルオロホウ酸トリフェニルフェナシルホスホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸トリフェニルスルホニウム、ビス-[4-(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロアンチモネート、ビス-[4-(ジ4’-ヒドロキシエトキシフェニルスルフォニォ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロアンチモネート、ビス-[4-(ジフェニルスルフォニォ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロフォスフェート、及びテトラフルオロホウ酸ジフェニルヨードニウムが挙げられる。
【0055】
感光性樹脂組成物における光重合開始剤の含有割合は、光感度と内部の光硬化性とを両立させる観点から、アルカリ可溶性バインダーポリマー及び光重合性モノマーの総量100質量部に対して、2.0~15.0質量部、3.0~12.0質量部、又は4.0~10.0質量部であってよい。
【0056】
(撥液剤)
本開示の感光性樹脂組成物は、撥液剤として、(D-1)光硬化性基を有し、重量平均分子量が2000以上の含フッ素化合物を含む。(D-1)成分はオリゴマーであってもよい。なお、(D-1)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、標準ポリスチレンの検量線に基づく換算値を意味する。具体的には下記の測定条件で測定し、下記の検量線によって重量平均分子量を求めることができる。
[測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製の「HLC-8320GPC」
カラム:株式会社レゾナック製の「Gelpack GL-A150-S/GL-A160-S」
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
[検量線]
標準ポリスチレンの5サンプルセット(東ソー株式会社製のPStQuick MP-H、PStQuick B)を用い、JIS K 7252-2(2016)に従いユニバーサルキャリブレーション曲線の3次式で近似する。
【0057】
(D-1)成分の重量平均分子量は、2000以上であるが、3000以上であってもよい。特に、(D-1)成分がオリゴマーである場合、重量平均分子量が上記の範囲であると、1分子内におけるフッ素含有量が大きくなり、高い撥液性を発現することができる。また、(D-1)成分の重量平均分子量は、添加時の粘度の観点から、6000以下であってもよく、5000以下であってもよい。
【0058】
(D-1)成分が有する光硬化性基としては、例えば、アクリロイル基、メタアクリロイル基、及びビニル基などの紫外線硬化性基が挙げられる。(D-1)成分は、1分子中に光硬化性基を2個以上含んでよく、3個以上含んでもよく、4個以上含んでもよい。1分子中の光硬化性基の数は、5個以下又は6個以下であってよい。この場合、隔壁の残膜性とパターン幅を制御しやすくなる。
【0059】
(D-1)成分は、パーフルオロアルキル基、又はパーフルオロエーテル基などを有していてもよい。(D-1)成分がオリゴマーである場合、繰り返し単位が上記の基を有していてもよい。
【0060】
(D-1)成分は、脂環式骨格を有していてもよい。脂環式骨格の環員数は、光硬化性という観点から、5~20、5~18、6~18、6~14、又は6~12であってよい。同様の観点から、撥液剤に含まれる脂環式骨格の環の数は、2個以上であってよく、3個以上であってもよい。この場合、感光性樹脂組成物を硬化させて得られる隔壁の、インクに対する撥液性をより向上させることができる。撥液剤に含まれる脂環式骨格の環の数は、4個以下であってもよい。環の数が1個である脂環式骨格としては、例えば、シクロヘキサン骨格、及びシクロヘキセン骨格が挙げられ、環の数が2個以上の脂環式骨格としては、例えば、ノルボルナン骨格、デカリン骨格、ビシクロウンデカン骨格、及び飽和ジシクロペンタジエン骨格が挙げられる。
【0061】
(D-1)成分は、市販品を用いてもよく、市販品としては「メガファックRS-72-A」、「メガファックRS-78」、「メガファックRS-90」(以上、DIC(株)製、商品名)、「DAC-100」、「DAC-HP」(以上、ダイキン工業(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0062】
(D-1)成分の含有量は、感光性樹脂組成物全量を基準として、1質量%以上であり、撥液性をより発現させる観点から、1.2質量%以上であってもよく、1.5質量%以上であってもよい。また、(D-1)成分の含有量は、他の成分との相溶性の観点から、感光性樹脂組成物全量を基準として、10質量%以下であってもよく、8質量%以下であってもよい。
【0063】
アルカリ可溶性バインダーポリマー及び光重合性モノマーの総量100質量部に対する撥液剤の含有割合は、0.05~10.0質量部、0.1~8.0質量部、又は0.2~6.0質量部であってよい。撥液剤の含有割合が0.05~10.0質量部であると、光感度と内部の光硬化性とを両立させやすくなる。
【0064】
光重合性モノマー及び撥液剤の総量100質量部に対する撥液剤の含有割合は、1.0質量部以上、3.0質量部以上、又は5.0質量部以上であってよい。この場合、露光時における露光量が低くても隔壁の解像性を効果的に向上させることができる。光重合性モノマー及び撥液剤の総量100質量部に対する撥液剤の含有割合は、60.0質量部以下、50.0質量部以下、30.0質量部以下であってよい。この場合、隔壁の解像性をより向上させることができ、パターン幅の広がりを抑制することもできる。
【0065】
(多官能チオール化合物)
感光性樹脂組成物は、多官能チオール化合物をさらに含んでいてもよい。
【0066】
多官能チオール化合物は、感光性樹脂組成物を露光して得られる感光性樹脂層を加熱すると、多官能チオール化合物がラジカル連鎖反応を起こすことで、露光後でも、光重合性モノマー同士、光重合性モノマーと多官能チオール化合物のメルカプト基との反応を適度に進行させて感光性樹脂層を硬化しやすくするものである。多官能チオール化合物は、1分子中にメルカプト基を2個以上含んでよく、3個以上含んでもよく、4個以上含んでもよい。多官能チオール化合物が、1分子中にメルカプト基を3個以上含む場合、露光時における露光量が低くても隔壁における解像性をより向上させることができる。1分子中のメルカプト基の数は、6個以下であってよい。
【0067】
多官能チオール化合物としては、1級多官能チオール及び2級多官能チオールが挙げられる。中でも、2級多官能チオールは、高い貯蔵安定性を有し、臭気を抑制することができる。
【0068】
2級多官能チオールとしては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス[2-(3-メルカプトブタノイルオキシ)エチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンが挙げられる。
【0069】
1級多官能チオールとしては、例えばトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
【0070】
多官能チオール化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
多官能チオール化合物の含有割合は、アルカリ可溶性バインダーポリマー及び光重合性モノマーの総量100質量部に対して、0.05~10.0質量部、0.1~8.0質量部、又は0.2~6.0質量部であってよい。多官能チオール化合物の含有割合が0.05~10.0質量部であると、光感度と内部の光硬化性とを両立させやすくなる。
【0072】
また、多官能チオール化合物の含有割合は、光重合性モノマー及び多官能チオール化合物の総量100質量部に対して、1.0質量部以上、3.0質量部以上、又は5.0質量部以上であってよい。この場合、露光時における露光量が低くても隔壁の解像性を効果的に向上させることができる。多官能チオール化合物の含有割合は、光重合性モノマー及び多官能チオール化合物の総量100質量部に対して、60.0質量部以下、50.0質量部以下、30.0質量部以下であってよい。この場合、隔壁の解像性をより向上させることができ、パターン幅の広がりを抑制することもできる。
【0073】
(着色剤)
感光性樹脂組成物は、着色剤をさらに含んでいてもよい。この場合、形成される隔壁を遮光パターンとして機能させることができる。
【0074】
着色剤としては、顔料及び染料が挙げられる。顔料は、有機顔料でも無機顔料でもよいが、有機顔料であってよい。顔料が有機顔料である場合、有機顔料は紫外線を透過させることが可能となるため、無機顔料を用いる場合に比べて、露光時に、光を感光性樹脂層の表面から十分に深い位置まで到達させることができ、露光部の硬化不足をより抑制できる。このため、現像時の露光による硬化部の溶解又は膨潤をより抑制でき、隔壁の解像性をより向上させることができる。着色剤は、2種以上を含有してもよい。
【0075】
有機顔料としては、ラクタムブラック、ペリレンブラック、アニリンブラックなどが挙げられる。
【0076】
無機顔料としては、カーボンブラック、チタンブラックなどが挙げられる。
【0077】
染料としては、ロイコ染料などが挙げられる。
【0078】
全固形分中の着色剤の含有率は、形成する隔壁の遮光性を向上させる観点からは、4質量%以上、又は、6質量%以上であってよい。但し、全固形分中の着色剤の含有率は15質量%以下、12質量%以下又は4質量%以下であってよい。全固形分中の着色剤の含有率は15質量%以下であると、感光性樹脂組成物を用いて形成される感光性樹脂層の露光時において、表面からの光の到達深さをより大きくすることができ、露光部の硬化不足を抑制できる。このため、現像液による現像時に露光による硬化部が溶解したり膨潤したりすることが十分に抑制される。
【0079】
(その他の成分)
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等の溶剤をさらに含んでよい。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。溶媒の量は、例えば感光性樹脂組成物中の全固形分濃度が10~60質量%程度になるように適宜決定すればよい。
【0080】
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、可塑剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、熱架橋剤等の添加剤をさらに含んでよい。これらはそれぞれ、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの添加剤の添加量は、アルカリ可溶性バインダーポリマー及び光重合性モノマーの合計100質量部に対して各々0.01~20質量部であってよい。
【0081】
<隔壁付き基材及びその製造方法>
本開示の隔壁付き基材の製造方法は、基材上に、本開示の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、基材上に設けられた感光性樹脂層を所定のパターンで露光する露光工程と、露光後の感光性樹脂層をアルカリ現像することにより隔壁を形成する現像工程と、を備える。また、本開示の隔壁付き基材は、基材と、該基材上に設けられた隔壁と、を備え、隔壁が本開示の感光性樹脂組成物の硬化物からなる。
【0082】
以下、本開示の一側面に係る隔壁付き基材の製造方法の実施形態について
図1~
図5を参照しながら説明する。
図1、
図2,及び
図4は、隔壁付き基材の製造方法の一連の工程を示す模式断面図、
図3は、
図2の露光工程で得られる第2積層体を示す部分断面図、
図5は、
図4の隔壁付き基材を示す平面図である。
【0083】
本実施形態の隔壁付き基材の製造方法は、基材10上に、上述した感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂層20を形成して第1積層体100を得る感光性樹脂層形成工程(
図1参照)と、基材10上に設けられた感光性樹脂層20を、所定のパターンで露光(感光性樹脂層2に部分的に光Lを照射)して部分硬化層30を形成し、第2積層体110を得る露光工程(
図2及び
図3参照)と、第2積層体110の部分硬化層30をアルカリ現像し(非硬化部22を除去し)、必要に応じて後硬化工程を行うことにより隔壁21を形成して隔壁付き基材120を得る現像工程(
図4参照)とを備える。
【0084】
(感光性樹脂層形成工程)
感光性樹脂層形成工程における基材10としては、例えば、ガラス基板、サファイア基板、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマ等のプラスチック基板、及び、TFT又はCMOSなどの回路基板などが挙げられる。
【0085】
感光性樹脂層20の基材10からの高さは、用途により異なるが、塗工性及び光硬化性を両立する観点から、乾燥後の厚さで1~200μm、又は、10~100μmであってよい。
【0086】
感光性樹脂層20は、基材10上に、上述した感光性樹脂組成物の溶液(感光性樹脂層形成用塗布液)を塗布し、乾燥することにより形成できる。但し、この場合、感光性樹脂層20中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止するため、2質量%以下であってよい。
【0087】
塗工は、例えば、ロールコート法、コンマコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法等の公知の方法で行うことができる。塗工後、有機溶剤等を除去するための乾燥は、70~150℃で1~30分間程度、熱風対流式乾燥機等で行うことができる。
【0088】
(露光工程)
露光工程における露光方法としては、感光性樹脂層20の所定部分に光(活性光線)を照射するために、複数の開口を有するマスクMを通して光(活性光線)を画像状に照射する方法(マスク露光法)が挙げられる(
図2参照)。活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものが用いられる。また、Arイオンレーザ、半導体レーザ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものも用いることができる。更に、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いることができる。また、レーザ露光法等を用いた直接描画法により活性光線を画像状に照射する方法を採用してもよい。この場合、マスクMは不要となる。
【0089】
露光工程における露光量は、使用する装置及び感光性樹脂層20の組成によって異なるが、光硬化性に優れる点では、30mJ/cm2以上、又は50mJ/cm2以上であってよい。露光工程における露光量は、解像性の点では500mJ/cm2以下、又は400mJ/cm2以下であってよい。
【0090】
露光は、空気中、真空中等で行うことができ、露光の雰囲気は特に制限されない。
【0091】
露光後は、感光性樹脂層20は部分硬化層30となる。具体的には、感光性樹脂層20のうち露光された部分は、隔壁21としての硬化部となり、感光性樹脂層20のうち露光されなかった部分は、非硬化部22となる(
図3参照)。
【0092】
(現像工程)
現像工程におけるアルカリ現像は、例えば、アルカリ性水溶液等の現像液を用いて、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッビング等の公知の方法により行われる。
【0093】
現像液は、アルカリ可溶性バインダーポリマーを溶解可能な溶液であればよく、例えばアルカリ性水溶液等の安全かつ安定であり、操作性が良好なものが用いられる。上記アルカリ性水溶液の塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムの水酸化物等の水酸化アルカリ、リチウム、ナトリウム、カリウム若しくはアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩などが用いられる。
【0094】
また、現像に用いるアルカリ性水溶液としては、0.1~5質量%水酸化テトラアンモニウム水溶液、0.1~5質量%炭酸ナトリウム水溶液、0.1~5質量%炭酸カリウム水溶液、0.1~5質量%水酸化ナトリウム水溶液、0.1~5質量%四ホウ酸ナトリウム水溶液等が用いられてよい。また、現像に用いるアルカリ性水溶液のpHは9~11の範囲であってよく、その温度は、感光性樹脂層20の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
【0095】
また、アルカリ水溶液と一種以上の有機溶剤とからなる水系現像液を用いることができる。ここで、アルカリ水溶液に含まれる塩基としては、上述の塩基以外に、例えば、ホウ砂、メタケイ酸ナトリウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1、3-プロパンジオール、1、3-ジアミノプロパノール-2、及びモルホリンが挙げられる。有機溶剤としては、例えば、ジアセトンアルコール、アセトン、酢酸エチル、炭素数1~4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0096】
上述した現像液は、必要に応じて、2種以上を併用してもよい。
【0097】
現像の方式としては、例えば、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング、スクラッビング等が挙げられる。これらのうち、高圧スプレー方式を用いると、隔壁の解像性が向上する。
【0098】
現像時間は、特に制限されるものではなく、例えば3秒以上であってよく、5秒以上であってもよい。現像時間が5秒以上であると、過現像が起こりにくくなり、隔壁のライン幅及び厚さの製造バラつきが小さくなる。現像時間は、300秒以下であってよく、200秒以下であってもよい。
【0099】
なお、
図5は、現像工程により得られた隔壁付き基材120を示す平面図である。
図5に示すように、隔壁21は、複数の開口(貫通孔)を有している。
図5に示すSが、開口の幅、すなわちスペース幅を表し、Lは、隔壁21のライン幅を表す。
【0100】
(後硬化工程)
後硬化工程は、現像後に、硬化部を硬化させる工程である。後硬化工程における露光方法としては、硬化部に光(活性光線)を照射する方法が挙げられる。活性光線の光源としては、露光工程で用いられる光源と同様の光源を使用することができる。
【0101】
後硬化工程における露光量は、使用する装置及び硬化部の組成によって異なるが、光硬化性に優れる点では、100mJ/cm2以上、又は300mJ/cm2以上であってよい。後硬化工程における露光量は、10000mJ/cm2以下、又は5000mJ/cm2以下であってよい。
【0102】
後硬化工程は、空気中、真空中等で行うことができ、後硬化工程の雰囲気は特に制限されない。
【0103】
後硬化工程が行われる場合には、後硬化工程により、さらに硬化された硬化部が最終的に隔壁21となる。
【0104】
本実施形態の隔壁付き基材の製造方法において、感光性樹脂組成物が多官能チオール化合物を含む場合、露光工程と現像工程との間に、第2積層体110の部分硬化層30を加熱する加熱工程をさらに設けてもよい。
【0105】
加熱工程は、部分硬化層30を加熱することにより、隔壁21のうち基材10側の部分を特に光重合性モノマー同士又は光重合性モノマーと多官能チオール化合物のメルカプト基との硬化反応を適度に進行させることができる。部分硬化層30を加熱することにより多官能チオール化合物がラジカル連鎖反応を起こすことで、露光後でも、光重合性モノマー同士、光重合性モノマーと多官能チオール化合物のメルカプト基との反応が適度に進行して硬化しやすくなる。
【0106】
加熱工程において、部分硬化層30を加熱する場合、加熱手段としては、ホットプレート、箱型乾燥機、リフロー炉、クリーンオーブンなどを用いることができる。
【0107】
加熱工程において、温度は、70~150℃、又は85~130℃であってよい。加熱時間は1~30分、又は、2~20分であってよい。
【0108】
本開示に係る隔壁付き基材は、色変換デバイスを形成するための色変換デバイス形成用基板として用いることができる。色変換デバイス形成用基板は、マイクロLED素子用であってもよい。上述した隔壁付き基材の製造方法によれば、マイクロLED素子の光を区画する隔壁を精度よく形成することができるとともに、優れた撥インク性を有する隔壁付き基材を得ることができる。これにより、色変換部の形成領域となる凹部に量子ドットインクをインクジェット方式により塗布したときに、インクと隔壁との間の接触角を大きくすることができ、インクが隔壁を伝って溢れることを抑制することができる。
【0109】
<色変換デバイスの製造方法>
本開示の色変換デバイスの製造方法は、隔壁で囲まれた色変換部を有する色変換デバイスの製造方法であって、隔壁によって色変換部の形成領域となる凹部が設けられている本開示の隔壁付き基材を用意し、凹部に量子ドットインクをインクジェット方式によって塗布する塗布工程、を備える。
【0110】
隔壁は、色変換部の形成領域となる凹部が複数配置されるように設けられていてもよく、マトリックス状に配置されるように設けられていてもよい。
【0111】
隔壁の高さは、液滴の入りやすさ及び良好なパターン形状の観点から、1~100μm、10~50μm、又は15~25μmであってもよい。隔壁の幅は、液滴の入りやすさ及び良好なパターン形状の観点から、10~500μm、50~250μm、又は75~150μmであってもよい。
【0112】
凹部の開口面積は、液滴の入りやすさ及び良好なパターン形状の観点から、100~100,000μm2、800~10,000μm2、又は1000~3000μm2であってもよい。
【0113】
凹部の開口面積A(μm2)と隔壁の高さH(μm)との関係(A/H)は、1~100,000、10~10,000、又は100~1,000であってもよい。
【0114】
色変換デバイス形成用基板がマイクロLED素子用の色変換デバイスの作製に用いられる場合、隔壁の高さは、0.1~100μmであってもよく、凹部の開口面積は、0.5~50μm2であってもよい。
【0115】
隔壁は、光透過性を有していてもよく、遮光性を有していてもよい。遮光性を有する隔壁は、例えば、上述した着色剤を含有することができ、ブラックマトリックスとして機能することができる。
【0116】
光透過性を有する隔壁は、例えば、発光体からの光をそのまま透過させて表示光とすることができる。光透過性を有する隔壁は、ASTM D1003-21に準拠して測定される全光線透過率(Tt)が、85%以上、90%以上、又は91%以上であってもよい。また、ASTM D1003-21に準拠して測定されるヘーズ値が、1%以下、0.5%以下、又は0.3%以下であってもよい。
【0117】
また、光透過性を有する隔壁は、ASTM E313-05(D65)に準拠して測定される黄色度(YI)が、3以下、0.2~2、又は0.5~1.5であってもよい。
【0118】
図6は、本開示に係る色変換デバイスの製造方法の実施形態の塗布工程を示す部分断面図である。
図6には、隔壁21によって形成されている凹部に、量子ドットインク31a,32aをインクジェット方式によって塗布する塗布工程が示されている。本実施形態においては、凹部内の量子ドットインクの塗布膜を硬化して量子ドット含有層を形成する硬化工程を備えていてもよい。量子ドット含有層は、波長変換により色変換層として機能することができる。
【0119】
量子ドットインクは、量子ドットと、バインダー樹脂と、溶剤とを含有するものを用いることができる。
【0120】
量子ドットしては、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe及びHgTe等のII-VI族半導体化合物、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaAs、GaP、GaN、GaSb、InN、InAs、InP、InSb、TiN、TiP、TiAs及びTiSb等のIIIV族半導体化合物、Si、Ge及びPb等のIV族半導体、InGaP等の3元素以上を含む半導体化合物などを含有する半導体結晶が挙げられる。また、量子ドットは、上記の半導体化合物に、Eu3+、Tb3+、Ag+、Cu+等の希土類金属のカチオン又は遷移金属のカチオンをドープしてなる半導体結晶であってもよい。
【0121】
量子ドットは、1種の半導体化合物からなるものであっても、2種以上の半導体化合物からなるものであってもよい。
【0122】
量子ドットのサイズは、所望の波長の光が得られるように、量子ドットを構成する材料によって適宜調節することができる。例えば、赤色光を発光するための、600nm~680nmの範囲の波長帯域に発光中心波長を有する量子ドット、緑色光を発光するための。500nm~600nmの範囲の波長帯域に発光中心波長を有する量子ドット、青色光を発光するための、400nm~500nmの波長帯域に発光中心波長を有する量子ドット等の公知の量子ドットを用いることができる。
【0123】
バインダー樹脂としては、量子ドットが分散された量子ドット含有層を形成できるものであればよく、公知の熱及び/又は光硬化性樹脂を用いることができる。バインダー樹脂は、重合性化合物と重合開始剤との組み合わせであってもよい。重合性化合物は、(メタ)アクリルモノマー、ビニルモノマー、マレイミド等を用いることができる。(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリロイル基を2以上有していてもよく、(メタ)アクリロイル基と、グリシジル基、ベンジル基、フェニル基、水酸基、カルボキシル基等の官能基とを有していてもよい。
【0124】
溶剤としては、公知の有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、トルエンなどが挙げられる。これらは、量子ドットの分散性及びインクジェット方式における吐出安定性を考慮して、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0125】
量子ドットインクは、必要に応じて、酸化防止剤、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0126】
量子ドットインクは、米国特許出願公開第2017/0174921号明細書、米国特許出願公開第2015/0021531号明細書、及び米国特許出願公開第2015/0075397号明細書に開示されているインクを用いてもよい。
【0127】
塗布工程では、インクジェットプリンタを用いて量子ドットインクを吐出することにより、色変換デバイス形成用基板の凹部に量子ドットインクを塗布することができる。
【0128】
図6では、2つのインクジェットノズル41,42から2種類の量子ドットインク31a,32aを吐出しているが、形成する色変換部の種類や配列パターン等に応じて、ノズルの数、量子ドットインクの種類などを適宜変更することができる。
【0129】
硬化工程では、量子ドットインクの組成に応じて、加熱、光照射、乾燥、又はこれらの組み合わせ等の手段により、凹部内の量子ドットインクの塗布膜を硬化して量子ドット含有層を形成することができる。
【0130】
塗布工程及び硬化工程を経て、
図7に示されるように、基材10と、隔壁21と、凹部内に形成された量子ドット含有層が含まれる色変換部31b,32bとを備える色変換デバイス130を得ることができる。
図8は、
図7の色変換デバイスを示す平面図である。
【0131】
なお、色変換デバイス130においては、青色LEDの光を赤色に変換する色変換部31bと、青色LEDの光を緑色に変換する色変換部32bと、青色LEDの光を透過させる領域と、が設けられているが、用途に応じて色変換部の構成は適宜変更してもよい。
【0132】
また、
図7には、色変換部として量子ドット含有層のみが形成される態様を示しているが、色変換部は複数の層によって構成されていてもよい。色変換部は、例えば、量子ドット含有層及びカラーフィルタ層の2層構成であってもよい。この場合、凹部内に、量子ドット含有層及びカラーフィルタ層をこの順に又は逆の順に形成することができる。
【0133】
<画像表示装置>
本開示の画像表示装置は、本開示の隔壁付き基材を含む。
【0134】
画像表示装置は、マイクロLED素子を有する発光デバイスと、該発光デバイスに対向して配置された、本開示の色変換デバイスと、を備えるものであってもよい。
【0135】
図9は、本開示に係る画像表示装置を示す部分断面図である。
図9に示される画像表示装置200は、LED搭載用基板50と、LED搭載用基板50上に設けられた複数のマイクロLED素子51と、を有する発光デバイス60、及び、発光デバイス60のマイクロLED素子51の配列に色変換部31b,32bが対応するように配置された色変換デバイス130を備える。画像表示装置200では、色変換デバイス130の基材10側と、発光デバイス60のマイクロLED素子51側とを対向させて、色変換デバイス130の基材10とは反対側に第2の基板40が設けられているが、色変換デバイス130の基材10とは反対側と、発光デバイス60のマイクロLED素子51側とを対向させてもよい。
【0136】
マイクロLED素子とは、微小な大きさのLED(半導体発光ダイオード)素子を指し、例えば、窒化ガリウム、窒化ガリウムインジウム、ケイ素等を用いたLED素子が挙げられる。
【0137】
マイクロLED素子の形状としては、特に限定されないが、例えば、主面の形状が正方形、長方形、菱形、台形、多角形、及び、円、楕円、弧等の曲面を有する形状を挙げることができる。また、マイクロLED素子は、厚さ方向に凹凸した形状を有していてもよい。マイクロLED素子の大きさとしては、例えば、主面の形状が正方形である場合、一辺の長さが0.1~2000μmであるものが挙げられ、主面の形状が長方形である場合、長辺の長さが0.2μm~2000μm、及び短辺の長さが0.1~1500μmであるものが挙げられる。マイクロLED素子の厚さは、例えば、0.1~20μmである。
【0138】
画像表示装置200においては、マイクロLED素子51として、青色光を発光するマイクロLED素子を用い、色変換部31b及び色変換部32bを、青色光を赤色光に変換する色変換部及び青色光を緑色光に変換する色変換部とし、隔壁21によって発光領域が区画されていてもよい。このような画像表示装置200は、
図9に示されるように、表示光として、赤色光L1、緑色光L2、及び青色光L3をそれぞれ所定の領域で発光させることができる。
【0139】
本実施形態の色変換デバイス及び表示装置は、上述したものに限定されず、種々の変更が可能である。
【実施例0140】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本開示をさらに具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0141】
<アルカリ可溶性バインダーポリマー溶液の調製>
以下のようにしてアルカリ可溶性バインダーポリマー溶液(以下、単に「ポリマー溶液」ということがある)1~2を調製した。なお、アルカリ可溶性バインダーポリマー(以下、単に「ポリマー」ということがある)の構成単位1~7はそれぞれ以下のとおりである。ここで、構成単位1は、構成単位(a)に含まれ、構成単位2、5は構成単位(b)に含まれ、構成単位3は構成単位(c)に含まれ、構成単位4、6は、構成単位(d)に含まれ、構成単位7は、構成単位(e)に含まれる。
【化7】
【化8】
【0142】
(バインダーポリマー溶液1
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)180.1gを加え、フラスコ内のガスを窒素ガスで置換しながら攪拌し、120℃に昇温させた。
次いで、トリシクロデカニルメタクリレート39.6g(0.18モル)、ベンジルメタクリレート3.52g(0.02モル)及びメタクリル酸68.8g(0.80モル)からなるモノマー混合物に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)5.93gを添加したものを別途用意した。このモノマー及び重合開始剤の混合物を、滴下ロートから1時間にわたってフラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で更にフラスコ内の液体を2時間攪拌して共重合反応を行い、ポリマー1の前駆体溶液を合成した。その後、フラスコ内のガスを空気に置換して、グリシジルメタクリレート88.1g(0.62モル)、トリフェニルホスフィン(触媒)0.6g及びメチルハイドロキノン(重合禁止剤)0.6gを、上記のポリマー1の前駆体溶液中に投入した。その後、110℃で10時間にわたり反応を続けて樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるポリマー1の重量平均分子量は13100、二重結合当量は340g/モル、ガラス転移温度(Tg)は59℃であった。また、ポリマー1における各構成単位1~7の割合は、全構成単位1~7の合計を基準(100モル%)とした場合に、表1に示すとおりであった。
この樹脂溶液にPGMEを更に添加して、ポリマー溶液1(固形分濃度49.1質量%)を調製した。このとき、ポリマー溶液1は、ポリマー1とPGMEとが78.4:81.3の質量割合で混合されるように調製した。
なお、固形分とは、ポリマー溶液を130℃で2時間加熱したときの加熱残分を意味し、固形分においてはポリマー1が主成分となる。このポリマー溶液1の樹脂酸価は28.9KOHmg/g、ポリマー溶液1中に含まれる固形分の固形分酸価は58.9KOHmg/gであった。
【0143】
(バインダーポリマー溶液2)
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、溶媒としてPGMEA167.1gを加え、フラスコ内のガスを窒素ガスで置換しながら攪拌し、120℃に昇温させた。
次いで、トリシクロデカニルメタクリレート66.0g(0.30モル)、スチレン10.4g(0.10モル)及びグリシジルメタクリレート85.2g(0.60モル)からなるモノマー混合物に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)10.3gを添加したものを別途用意した。このモノマー及び重合開始剤の混合物を、滴下ロートから1時間にわたってフラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で更にフラスコ内の液体を2時間攪拌して共重合反応を行い、バインダーポリマーの前駆体を生成させた。その後、フラスコ内のガスを空気に置換して、アクリル酸43.2g(0.60モル)、トリフェニルホスフィン(触媒)0.61g、メチルハイドロキノン(重合禁止剤)0.31gを、上記のバインダーポリマーの前駆体溶液中に投入した。その後、110℃で10時間にわたり反応を続けた。次いで、フラスコ内に無水コハク酸無水物33.0g(0.33モル)を添加し、110℃で3時間にわたり反応を続けて、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるバインダーポリマーの重量平均分子量は8700、二重結合当量は440g/モル、バインダーポリマーのガラス転移温度(Tg)は48℃であった。また、ポリマー2における各構成単位1~7の割合は、全構成単位1~7の合計を基準(100モル%)とした場合に、表1に示すとおりであった。
この樹脂溶液にPGMEAを更に添加して、ポリマー溶液2(固形分濃度57.6質量%)を調製した。このとき、ポリマー溶液2は、ポリマー2とPGMEAとが78.4:57.7の質量割合で混合されるように調製した。また、このポリマー溶液2の樹脂酸価は44.4KOHmg/g、ポリマー溶液2中に含まれる固形分の固形分酸価は77.1KOHmg/gであった。
【0144】
<物性値の測定法>
上記樹脂酸価、固形分酸価、二重結合当量、重量平均分子量及びガラス転移温度は、以下に記載する方法によって得られた値である。
(1)樹脂酸価
樹脂酸価は、JIS K6901 5.3.2に従ってブロモチモールブルーとフェノールレットの混合指示薬を用いて測定されたポリマー溶液の酸価である。樹脂酸価は、ポリマー溶液1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を意味する。
(2)固形分酸価
固形分酸価は、下記式で算出される値である。
固形分酸価=100×樹脂酸価/(ポリマー溶液の固形分濃度(質量%))
(3)二重結合当量
二重結合当量は、重合性不飽和結合のモル数当たりの重合体の質量であり、モノマーの使用量に基づいて算出した計算値である。
(4)重量平均分子量(Mw)
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記条件にて測定した標準ポリスチレン換算した重量平均分子量を意味する。
カラム:ショウデックス(登録商標) LF-804+LF-804(昭和電工株式会社製)
カラム温度:40℃
試料:共重合体の0.2%テトラヒドロフラン溶液
展開溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:示差屈折計(ショウデックス(登録商標) RI-71S)(昭和電工株式会社製)
流速: 1mL/min
(5)ガラス転移温度(Tg)
ポリマーのTgは、示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス社製、DSC7000X)を用いて測定した。
具体的には、ポリマー溶液からそれぞれ1gを採取し、130℃で120分間乾燥させて、溶媒を揮発させ、得られたそれぞれの固形分から10mgずつ試料を採取した。そして、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度で-0℃から200℃まで試料の温度を変化させて示差走査熱量測定を行い、観察されたガラス転移による吸熱開始温度をガラス転移温度(Tg)とした。なお、Tgが2つ観察された場合には、2つのTgの平均値をポリマーのTgとした。
【0145】
【0146】
<撥液剤の準備>
以下の撥液剤を準備した。
撥水剤1:メガファックRS-72-A(DIC(株)製、商品名)、重量平均分子量:5,405
撥水剤2:DAC-100(ダイキン工業(株)製、商品名)、重量平均分子量:3,812
撥水剤3:ビスコート13F(大阪有機工業(株)製、商品名)、分子量:418
撥水剤4:メタクリル酸ペンタフルオロベンジル(東京化成工業(株)製)分子量:266
撥水剤5:ジアクリル酸オクタフルオロヘキサンジオール(富士フイルム和光純薬(株)製)分子量:370
撥水剤6:ペンタフルオロトルエン(東京化成工業(株)製)分子量:182
撥水剤7:ヘプタフルオロシクロペンテン(東京化成工業(株)製)分子量:264
【0147】
<物性値の測定法>
上記重量平均分子量は、以下に記載する方法によって得られた値である。
(6)重量平均分子量
撥液剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記の条件で測定される、標準ポリスチレンの検量線に基づく換算値を意味する。
[測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製の「HLC-8320GPC」
カラム:株式会社レゾナック製の「Gelpack GL-A150-S/GL-A160-S」
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
[検量線]
標準ポリスチレンの5サンプルセット(東ソー株式会社製のPStQuick MP-H、PStQuick B)を用い、JIS K 7252-2(2016)に従いユニバーサルキャリブレーション曲線の3次式で近似した。
【0148】
<実施例1~4及び比較例1~10>
[感光性樹脂組成物の作製]
表2又は表3に示す(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及びその他の成分を、同表に示す含有率(単位:質量%)となるように配合し、攪拌機を用いて15分間混合して感光性樹脂組成物としての感光性樹脂層形成用塗布液を作製した。
【0149】
【0150】
【0151】
表2又は表3において、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、およびその他の成分の詳細は以下のとおりである。
(A)成分
溶液1~2:上述した方法で作製したポリマー溶液1~2
【0152】
(B)成分
光重合性モノマー:ペンタエリスリトールトリおよびテトラアクリレート(新中村化学工業株式会社製、製品名「A-TMM-3」)
【0153】
(C)成分
光重合開始剤:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(製品名「Lunacure TPO」、DKSHジャパン株式会社製)
【0154】
(D)成分
撥液剤1~7:上記準備した撥液剤1~7
【0155】
その他の成分
多官能チオール化合物:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(KarenzMT(登録商標) PE1(SH基数=4)、株式会社レゾナック製)
着色剤:顔料としての下記構造式で表されるラクタムブラック(固形分)と、分散剤としての非アミン系分散剤(固形分)と、PGMEAとを15.0:4.5:80.5(質量比)で混合してなる混合液(ラクタムブラック系有機顔料分散液(製品名「SF BLACK BJ4379」、山陽色素株式会社製、固形分:19.5質量%、ラクタムブラック系有機顔料:15質量%))
密着助剤:Siカップリング剤(製品名「KBM-803」、信越化学工業株式会社製)
【0156】
[評価用サンプルの作製]
上記のようにして得られた感光性樹脂層形成用塗布液を、3.0mmの厚さを有するガラス板の上に滴下し、スピンコート法により塗膜を形成してガラス板上に塗膜を有する積層体を得た。その後、この積層体をホットプレートの上に配置し、120℃で2分間加熱して溶媒を除去し、感光性樹脂層を有する第1積層体を作製した。上記第1積層体を得る際には、スピンコート法における回転数を調整することにより塗膜の厚さを調整し、感光性樹脂層の厚さが20±1μmとなるようにした。
次に、第1積層体に対し、紫外線露光機(製品名「MA-20」、ミカサ株式会社製)を用いて紫外線による全面露光を行い、硬化層を有する第2積層体を得た。このとき、露光量は、355mJ/cm2とした。次に、第2積層体をホットプレート上に配置し、100℃で1分間の加熱(ポストベーク)を行った。次に、第2積層体に対して、紫外線露光機(製品名「MA-20」、ミカサ株式会社製)を用いて紫外線による全面露光を行った。このとき、露光量は、1000mJ/cm2とした。
以上のようにして、評価用サンプルを作製した。
【0157】
<性能評価>
以下のようにして、評価用サンプルの下記の液体に対する接触角を測定し、撥インク性の評価を行った。
液体1:量子ドットインク((メタ)アクリルモノマー系)
液体2:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)
【0158】
<接触角の測定>
ASTM D7334-08(2013)に準拠して、静的接触角を測定した。なお、測定には「SA-301」(協和界面科学株式会社製、製品名)を用い、測定温度は25℃とした。また、測定は、評価用サンプルの硬化層上に液滴2μlを載せ、5秒後に行った。
10…基材、20…感光性樹脂層、21…隔壁、30…部分硬化層、51…マイクロLED素子、60…発光デバイス、120…隔壁付き基材、130…色変換デバイス、200…画像表示装置。