(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157192
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】マルチ荷電粒子ビーム描画装置およびマルチ荷電粒子ビーム描画方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
H01L21/30 541W
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071375
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕史
【テーマコード(参考)】
5F056
【Fターム(参考)】
5F056AA07
5F056BA10
5F056BB10
5F056CB05
5F056EA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マルチビーム描画におけるブランキングアパーチャアレイ機構において、転送されたブランキング制御データを取り込む回路が不良であった場合でも不良ビームが試料に入射してしまうことを防止する。
【解決手段】マルチ荷電粒子ビーム描画装置は、ブランキング制御信号を入力するレジスタと、レジスタに入力されたブランキング制御信号に沿って、複数の制御電極のうち対応する制御電極にビームON電位若しくはビームOFF電位を印加するアンプと、を有する複数の制御回路41と、レジスタが正常レジスタか、不良レジスタあるかを識別するいずれかを含むフラグ信号を保持する偏向制御回路と、生成された各フラグ信号を、ブランキング制御信号とは時期を異にして、データパスを介して入力し、入力されたフラグ信号が不良フラグ信号である場合に、対応するレジスタが配置される制御回路の動作を制限する複数のレジスタ45と、を備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチ荷電粒子ビームを形成するマルチビーム形成機構と、
前記マルチ荷電粒子ビームが通過する位置に複数の開口部が形成されたブランキングアパーチャアレイ基板と、
前記ブランキングアパーチャアレイ基板上であって前記複数の開口部の近傍にそれぞれ配置された複数の制御電極と、
前記ブランキングアパーチャアレイ基板上であって前記複数の開口部のうち互いに異なる開口部を挟んで前記複数の制御電極の1つと対向して配置された複数の対向電極と、
前記ブランキングアパーチャアレイ基板に配置され、前記ブランキングアパーチャアレイ基板内のデータパスを介して伝送されるブランキング制御信号を入力するレジスタと、前記レジスタに入力された前記ブランキング制御信号に沿って、前記複数の制御電極のうち対応する制御電極にビームON電位若しくはビームOFF電位を印加するアンプと、を有する複数の制御回路と、
前記複数の制御回路毎に生成された、前記レジスタが正常レジスタであることを識別する正常フラグ信号と不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号とのいずれかを含むフラグ信号を保持する記憶部と、
生成された各前記フラグ信号を、前記ブランキング制御信号とは時期を異にして、前記ブランキング制御信号が伝送される同じデータパスを介して入力し、入力された前記フラグ信号が不良フラグ信号である場合に、前記不良フラグ信号に対応するレジスタが配置される制御回路の動作を制限する複数の動作制限回路と、
ビームOFF電位が制御電極に印加されたことによってブランキング偏向されたビームを遮蔽する制限アパーチャ基板と、
を備えることを特徴とするマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
前記レジスタを診断する診断部と、
前記レジスタの診断結果を用いて、前記正常フラグ信号又は前記不良フラグ信号を生成するフラグデータ生成部と、
さらに備えることを特徴とする、請求項1記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項3】
前記複数の動作制限回路の各動作制限回路は、前記不良フラグ信号を入力した場合には、前記不良フラグ信号に対応するレジスタを使用するビーム用のアンプの出力を常時ビームOFF電位に固定させることを特徴とする請求項1又は2記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項4】
前記複数の動作制限回路の各動作制限回路は、前記フラグ信号を前記ブランキング制御信号が伝送される同じデータパスを介すると共に前記複数の制御回路のうち対応する制御回路の前記レジスタを経由して入力することを特徴とする請求項1又は2記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項5】
前記レジスタとして、シフトレジスタが用いられ、
前記マルチ荷電粒子ビームは複数のビーム毎に複数のグループに分割され、
同じグループ内の前記複数のビーム用の複数のシフトレジスタは、直列に接続され、
直列に接続された前記複数のシフトレジスタのうち、自身の制御回路内のシフトレジスタとデータ転送方向に対して下流側に隣接する制御回路内のシフトレジスタとを接続すると共に、自身の制御回路内のシフトレジスタをスキップするように前記データ転送方向に対して上流側に隣接する制御回路内のシフトレジスタと前記下流側に隣接する制御回路内のシフトレジスタとに接続され、前記フラグ信号に応じて、自身の制御回路内のシフトレジスタをスキップしたデータ転送かスキップしないデータ転送かを選択する選択回路をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項6】
前記ブランキングアパーチャアレイ基板は、前記マルチ荷電粒子ビームが通過する中央部のマルチビーム通過領域と、外周部の外周領域とを有し、
前記複数の制御回路は、前記マルチビーム通過領域に配置され、
前記複数の動作制限回路は、前記外周領域に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項7】
マルチ荷電粒子ビームを形成するマルチビーム形成機構と、
前記マルチ荷電粒子ビームが通過する複数の開口部が形成されたブランキングアパーチャアレイ基板と、
前記ブランキングアパーチャアレイ基板上であって前記複数の開口部の近傍にそれぞれ配置された複数の制御電極と、
前記ブランキングアパーチャアレイ基板上であって前記複数の開口部のうち互いに異なる開口部を挟んで前記複数の制御電極の1つと対向して配置された複数の対向電極と、
前記ブランキングアパーチャアレイ基板中に配置され、前記ブランキングアパーチャアレイ基板内のデータパスを介して伝送されるブランキング制御信号を入力する並列に配置された第1のレジスタと第2のレジスタと、前記第1のレジスタと第2のレジスタのいずれか1つに入力された前記ブランキング制御信号に沿って、前記複数の制御電極のうち対応する制御電極にビームON電位若しくはビームOFF電位を印加するアンプと、を有する複数の制御回路と、
前記複数の制御回路毎に生成された、前記第1のレジスタが正常レジスタであることを識別する正常フラグ信号と不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号とのいずれかを含むフラグ信号を保持する記憶部と、
生成された前記フラグ信号を、前記ブランキング制御信号とは時期を異にして、前記ブランキング制御信号が伝送される同じデータパスを介すると共に前記複数の制御回路のうち対応する制御回路の前記第1のレジスタを経由して入力し、入力されたフラグ信号が不良フラグ信号である場合に、前記フラグ信号を入力した前記第1のレジスタから前記第2のレジスタに前記アンプ側への接続を切り替える複数の切り替え回路と、
ビームOFF電位が制御電極に印加されたことによってブランキング偏向されたビームを遮蔽する制限アパーチャ基板と、
を備えたことを特徴とするマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項8】
マルチ荷電粒子ビームをブランキング偏向するブランキングアパーチャアレイ基板内に配置された、マルチ荷電粒子ビームのうち個別ビームのブランキング制御信号を入力する複数のレジスタを診断し、不良レジスタを検出する工程と、
前記不良レジスタではないレジスタであることを識別する正常フラグ信号と前記不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号とのいずれかを含むフラグ信号を生成し、前記ブランキング制御信号とは時期を異にして、前記フラグ信号を前記ブランキング制御信号が伝送される同じデータパスを介して入力し、入力された前記フラグ信号が前記不良フラグ信号である場合に、前記不良フラグ信号に対応するレジスタを使用するビーム用のアンプの動作を制限する工程と、
前記ブランキングアパーチャアレイ基板内のデータパスを介して伝送されるビーム毎に、個別のレジスタに入力された前記ブランキング制御信号に沿って、ビーム毎に個別のアンプからビームON電位若しくはビームOFF電位を、前記ブランキングアパーチャアレイ基板に形成される当該ビームが通過する開口部の近傍に配置された制御電極に印加し、前記ビームOFF電位が前記制御電極に印加されたことによって前記制御電極と前記制御電極に対向する対向電極との間の電位差によりブランキング偏向されたビームを遮蔽すると共に、前記マルチ荷電粒子ビームのうち遮蔽されなかったビーム群を用いて、試料にパターンを描画する工程と、
を備えたことを特徴とするマルチ荷電粒子ビーム描画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置およびマルチ荷電粒子ビーム描画方法に係り、例えば、マルチビーム描画における不良ビームの照射回路方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、ウェハ等へ電子線を使って描画することが行われている。
【0003】
例えば、マルチビームを使った描画装置がある。1本の電子ビームで描画する場合に比べて、マルチビームを用いることで一度に多くのビームを照射できるのでスループットを大幅に向上させることができる。かかるマルチビーム方式の描画装置では、例えば、電子銃から放出された電子ビームを複数の穴を持ったマスクに通してマルチビームを形成し、各々、ブランキング制御され、遮蔽されなかった各ビームが光学系で縮小され、偏向器で偏向され試料上の所望の位置へと照射される。
【0004】
ここで、マルチビーム描画では、個々のビームの照射量を照射時間により個別に制御する。かかる各ビームの照射量を高精度に制御するためには、ビームのON/OFFを行うブランキング制御を高速で行う必要がある。マルチビーム方式の描画装置では、マルチビームの各ブランカーを配置したブランキングアパーチャアレイ機構に各ビーム用のブランキング制御回路を搭載する。
【0005】
ここで、ブランキングアパーチャアレイ機構では、ビーム通過孔間にLSI回路を配置するため、X線や散乱電子等による放射線起因のLSI回路の劣化が生じる。その他、製造不良起因の動作不良の回路が存在する場合もあり得る。ブランキングアパーチャアレイ機構の各ビーム用のLSI回路へのデータ転送手段として、例えば、マトリクススキャン方式、或いはビームアレイの例えば行毎に配置された複数のシフトレジスタを直列に繋げてデータ転送するシフトレジスタ方式が挙げられる。いずれの方式においても、転送されたビームのON/OFFデータを各ビーム用のLSI回路内にて取り込む回路としてレジスタが使用される。放射線起因の回路劣化について、典型的なモードとして、トランジスタのスイッチング閾値電圧の変化が挙げられる。かかる劣化が生じるとスイッチングの速度が遅くなり、トランジスタを用いて構成されるレジスタへのデータのセット及びデータの読み出しでエラーが生じることになる。ビームのON/OFF(ブランキング)の状態を指定するデータをLSI回路内にて取り込む回路が不良であった場合、ブランキング電位を印加する回路の動作が制御困難になってしまう。その結果、常時OFFになる不良ビーム、ブランキングが制御不能の不良ビーム、或いは、常時ONになる不良ビームが生じ、描画された試料にパターンエラーが生じることになる。これらの不良ビームのうち、ブランキングが制御不能の不良ビーム及び常時ONになる不良ビームが試料に入射してしまうと、その補正が難しい。
【0006】
ここで、ブランキングアパーチャアレイ機構の技術ではないが、故障レジスタを切り離すマイクロプロセッサについて開示されている。かかるマイクロプロセッサでは、内部で、n個のレジスタのうち故障したレジスタの情報を制御回路から入力して記憶装置で記憶し、記憶装置に記憶された値に従って、n個のレジスタの選択信号を冗長レジスタ選択信号に切り換えるといった技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様は、マルチビーム描画におけるブランキングアパーチャアレイ機構において、転送されたブランキング制御データを個別ビーム用の制御回路内にて取り込む回路が不良であった場合でもブランキング制御不能の不良ビーム及び常時ONになる不良ビームが試料に入射してしまうことを防止することが可能なマルチ荷電粒子ビーム描画装置およびマルチ荷電粒子ビーム描画方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様のマルチ荷電粒子ビーム描画装置は、
マルチ荷電粒子ビームを形成するマルチビーム形成機構と、
マルチ荷電粒子ビームが通過する位置に複数の開口部が形成されたブランキングアパーチャアレイ基板と、
ブランキングアパーチャアレイ基板上であって複数の開口部の近傍にそれぞれ配置された複数の制御電極と、
ブランキングアパーチャアレイ基板上であって複数の開口部のうち互いに異なる開口部を挟んで複数の制御電極の1つと対向して配置された複数の対向電極と、
ブランキングアパーチャアレイ基板に配置され、ブランキングアパーチャアレイ基板内のデータパスを介して伝送されるブランキング制御信号を入力するレジスタと、レジスタに入力されたブランキング制御信号に沿って、複数の制御電極のうち対応する制御電極にビームON電位若しくはビームOFF電位を印加するアンプと、を有する複数の制御回路と、
複数の制御回路毎に生成された、レジスタが正常レジスタであることを識別する正常フラグ信号と不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号とのいずれかを含むフラグ信号を保持する記憶部と、
生成された各前記フラグ信号を、ブランキング制御信号とは時期を異にして、ブランキング制御信号が伝送される同じデータパスを介して入力し、入力された前記フラグ信号が不良フラグ信号である場合に、前記不良フラグ信号に対応するレジスタが配置される制御回路の動作を制限する複数の動作制限回路と、
ビームOFF電位が制御電極に印加されたことによってブランキング偏向されたビームを遮蔽する制限アパーチャ基板と、
を備えることを特徴とするマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
【0010】
また、レジスタを診断する診断部と、
レジスタの診断結果を用いて、正常フラグ信号又は不良フラグ信号を生成するフラグデータ生成部と、
をさらに備えると好適である。
【0011】
また、複数の動作制限回路の各動作制限回路は、不良フラグ信号を入力した場合には、不良フラグ信号に対応するレジスタを使用するビーム用のアンプの出力を常時ビームOFF電位に固定させると好適である。
【0012】
また、複数の動作制限回路の各動作制限回路は、フラグ信号をブランキング制御信号が伝送される同じデータパスを介すると共に複数の制御回路のうち対応する制御回路のレジスタを経由して入力すると好適である。
【0013】
また、レジスタとして、シフトレジスタが用いられ、
マルチ荷電粒子ビームは複数のビーム毎に複数のグループに分割され、
同じグループ内の複数のビーム用の複数のシフトレジスタは、直列に接続され、
直列に接続された複数のシフトレジスタのうち、自身の制御回路内のシフトレジスタとデータ転送方向に対して下流側に隣接する制御回路内のシフトレジスタとを接続すると共に、自身の制御回路内のシフトレジスタをスキップするようにデータ転送方向に対して上流側に隣接する制御回路内のシフトレジスタと下流側に隣接する制御回路内のシフトレジスタとに接続され、フラグ信号に応じて、自身の制御回路内のシフトレジスタをスキップしたデータ転送かスキップしないデータ転送かを選択する選択回路をさらに備えと好適である。
【0014】
また、ブランキングアパーチャアレイ基板は、マルチ荷電粒子ビームが通過する中央部のマルチビーム通過領域と、外周部の外周領域とを有し、
複数の制御回路は、マルチビーム通過領域に配置され、
複数の動作制限回路は、外周領域に配置されると好適である。
【0015】
本発明の他の態様のマルチ荷電粒子ビーム描画装置は、
マルチ荷電粒子ビームを形成するマルチビーム形成機構と、
マルチ荷電粒子ビームが通過する複数の開口部が形成されたブランキングアパーチャアレイ基板と、
ブランキングアパーチャアレイ基板上であって複数の開口部の近傍にそれぞれ配置された複数の制御電極と、
ブランキングアパーチャアレイ基板上であって複数の開口部のうち互いに異なる開口部を挟んで複数の制御電極の1つと対向して配置された複数の対向電極と、
ブランキングアパーチャアレイ基板中に配置され、ブランキングアパーチャアレイ基板内のデータパスを介して伝送されるブランキング制御信号を入力する並列に配置された第1のレジスタと第2のレジスタと、第1のレジスタと第2のレジスタのいずれか1つに入力されたブランキング制御信号に沿って、複数の制御電極のうち対応する制御電極にビームON電位若しくはビームOFF電位を印加するアンプと、を有する複数の制御回路と、
複数の制御回路毎に生成された、第1のレジスタが正常レジスタであることを識別する正常フラグ信号と不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号とのいずれかを含むフラグ信号を保持する記憶部と、
生成された前記フラグ信号を、ブランキング制御信号とは時期を異にして、ブランキング制御信号が伝送される同じデータパスを介すると共に複数の制御回路のうち対応する制御回路の前記第1のレジスタを経由して入力し、入力されたフラグ信号が不良フラグ信号である場合に、フラグ信号を入力した第1のレジスタから第2のレジスタにアンプ側への接続を切り替える複数の切り替え回路と、
ビームOFF電位が制御電極に印加されたことによってブランキング偏向されたビームを遮蔽する制限アパーチャ基板と、
を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様のマルチ荷電粒子ビーム描画方法は、
マルチ荷電粒子ビームをブランキング偏向するブランキングアパーチャアレイ基板内に配置された、マルチ荷電粒子ビームのうち個別ビームのブランキング制御信号を入力する複数のレジスタを診断し、不良レジスタを検出する工程と、
不良レジスタではないレジスタであることを識別する正常フラグ信号と不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号とのいずれかを含むフラグ信号を生成し、ブランキング制御信号とは時期を異にして、フラグ信号をブランキング制御信号が伝送される同じデータパスを介して入力し、入力されたフラグ信号が不良フラグ信号である場合に、不良フラグ信号に対応するレジスタを使用するビーム用のアンプの動作を制限する工程と、
ブランキングアパーチャアレイ基板内のデータパスを介して伝送されるビーム毎に、個別のレジスタに入力されたブランキング制御信号に沿って、ビーム毎に個別のアンプからビームON電位若しくはビームOFF電位を、ブランキングアパーチャアレイ基板に形成される当該ビームが通過する開口部の近傍に配置された制御電極に印加し、ビームOFF電位が制御電極に印加されたことによって制御電極と制御電極に対向する対向電極との間の電位差によりブランキング偏向されたビームを遮蔽すると共に、マルチ荷電粒子ビームのうち遮蔽されなかったビーム群を用いて、試料にパターンを描画する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、マルチビーム描画におけるブランキングアパーチャアレイ機構において、転送されたブランキング制御データを個別ビーム用の制御回路内にて取り込む回路が不良であった場合でもブランキング制御不能の不良ビーム及び常時ONになる不良ビームが試料に入射してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
【
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
【
図3】実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の構成を示す断面図である。
【
図4】実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構のメンブレン領域内の構成の一部を示す上面概念図である。
【
図5】実施の形態1の個別ブランキング機構の一例を示す図である。
【
図6】実施の形態1におけるシフトレジスタの接続構成の一例を示す図である。
【
図7】実施の形態1における描画動作の一例を説明するための概念図である。
【
図8】実施の形態1におけるマルチビームの照射領域と描画対象画素との一例を示す図である。
【
図9】実施の形態1におけるマルチビームの描画方法の一例を説明するための図である。
【
図10】実施の形態1におけるマルチビームの分割ショットの一例を示す図である。
【
図11】実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構内部に配置される個別ビーム用の制御回路の一例を示す図である。
【
図12】実施の形態1における各分割ショットについてのビーム1のビームON/OFF切り替え動作を示すタイミングチャート図の一例である。
【
図13】実施の形態1における描画方法の一例の要部工程を示すフローチャート図である。
【
図14】実施の形態1におけるフラグ信号転送についてのビーム1の制御回路の動作を示すタイミングチャート図の一例である。
【
図15】実施の形態1における自身の制御回路内のシフトレジスタをスキップしない場合のデータの流れを説明するための図である。
【
図16】実施の形態1における自身の制御回路内のシフトレジスタをスキップする場合のデータの流れを説明するための図である。
【
図17】実施の形態2におけるブランキングアパーチャアレイ機構内部に配置される個別ビーム用の制御回路の一例を示す図である。
【
図18】実施の形態2における各分割ショットについてのビーム1のビームON/OFF切り替え動作を示すタイミングチャート図の一例である。
【
図19】実施の形態2におけるフラグ信号転送についてのビーム1の制御回路の動作を示すタイミングチャート図の一例である。
【
図20】実施の形態3におけるブランキングアパーチャアレイ機構内部に配置される個別ビーム用の制御回路の一例と動作制限回路の一例とを示す図である。
【
図21】実施の形態3と比較例とにおける不良フラグ信号によりアンプ出力が制限される制御回路を説明するための図である。
【
図22】実施の形態4におけるブランキングアパーチャアレイ機構内部に配置される個別ビーム用の制御回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、実施の形態では、露光装置の一例として、描画装置を用いた構成について説明する。
【0020】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画機構150と制御系回路160を備えている。描画装置100は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の一例であると共に、マルチ荷電粒子ビーム露光装置の一例である。描画機構150は、電子鏡筒102(電子ビームカラム)と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、ブランキングアパーチャアレイ機構204、縮小レンズ205、制限アパーチャ基板206、対物レンズ207、主偏向器208、副偏向器209、及び共通ブランキング偏向器212が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時(露光時)には描画対象基板となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスク、或いは、半導体装置が製造される半導体基板(シリコンウェハ)等が含まれる。また、試料101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。XYステージ105上には、さらに、XYステージ105の位置測定用のミラー210が配置される。また、XYステージ105上には、さらに、ファラデイカップ106が配置される。
【0021】
制御系回路160は、制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路130、ロジック回路131、デジタル・アナログ変換(DAC)アンプ(ユニット)132,134、レンズ制御回路136、アンプ137、ステージ制御機構138、ステージ位置測定器139及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142を有している。制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路130、レンズ制御回路136、アンプ137、ステージ制御機構138、ステージ位置測定器139及び記憶装置140,142は、図示しないバスを介して互いに接続されている。偏向制御回路130には、ロジック回路131、DACアンプ(ユニット)132,134及びブランキングアパーチャアレイ機構204が接続されている。副偏向器209は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ132を介して偏向制御回路130により制御される。主偏向器208は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ134を介して偏向制御回路130により制御される。共通ブランキング偏向器212は、2極以上の電極により構成され、ロジック回路131に接続される。ステージ位置測定器139は、ミラー210からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でXYステージ105の位置を測長する。ファラデイカップ106はアンプ137に接続される。
【0022】
制御計算機110内には、不良レジスタ検出部60、照射時間算出部62、ブランキングデータ生成部64、フラグデータ生成部66、クロック制御部70、アンプ動作制御部72、検出部76、転送制御部79、及び描画制御部80が配置されている。不良レジスタ検出部60、照射時間算出部62、ブランキングデータ生成部64、フラグデータ生成部66、クロック制御部70、アンプ動作制御部72、検出部76、転送制御部79、及び描画制御部80といった各「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。不良レジスタ検出部60、照射時間算出部62、ブランキングデータ生成部64、フラグデータ生成部66、クロック制御部70、アンプ動作制御部72、検出部76、転送制御部79、及び描画制御部80に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
【0023】
また、描画装置100の外部から描画データが入力され、記憶装置140に格納される。
【0024】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0025】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、縦(y方向)p列×横(x方向)q列(p,q≧2)の穴(開口部)22が所定の配列ピッチでマトリクス状に形成されている。
図2では、例えば、縦横(x,y方向)に512×512列の穴22が形成される。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ直径の円形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチビーム20が形成されることになる。言い換えれば、成形アパーチャアレイ基板203は、マルチビーム形成機構の一例であり、マルチビームを形成する。ここでは、縦横(x,y方向)が共に2列以上の穴22が配置された例を示したが、これに限るものではない。例えば、縦横(x,y方向)どちらか一方が複数列で他方は1列だけであっても構わない。また、穴22の配列の仕方は、
図2のように、縦横が格子状に配置される場合に限るものではない。例えば、縦方向(y方向)k段目の列と、k+1段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法aだけずれて配置されてもよい。同様に、縦方向(y方向)k+1段目の列と、k+2段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法bだけずれて配置されてもよい。
【0026】
図3は、実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の構成を示す断面図である。
図4は、実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構のメンブレン領域内の構成の一部を示す上面概念図である。なお、
図3と
図4において、制御電極24と対向電極26と制御回路41とパッド343の位置関係は一致させて記載していない。ブランキングアパーチャアレイ機構204は、
図3に示すように、支持台333上にシリコン等からなる半導体基板を用いたブランキングアパーチャアレイ基板31が配置される。ブランキングアパーチャアレイ基板31の中央部は、例えば裏面側から薄く削られ、薄い膜厚hのメンブレン領域330(第1の領域)に加工されている。メンブレン領域330を取り囲む周囲は、厚い膜厚Hの外周領域332(第2の領域)となる。メンブレン領域330の上面と外周領域332の上面とは、同じ高さ位置、或いは、実質的に高さ位置になるように形成される。基板31は、外周領域332の裏面で支持台333上に保持される。支持台333の中央部は開口しており、メンブレン領域330の位置は、支持台333の開口した領域に位置している。
【0027】
ブランキングアパーチャアレイ基板31のメンブレン領域330には、マルチビームが通過する位置に複数の開口部が形成される。具体的には、ブランキングアパーチャアレイ基板31のメンブレン領域330には、
図2に示した成形アパーチャアレイ基板203の各穴22に対応する位置にマルチビームのそれぞれのビームの通過用の通過孔25(開口部)が開口される。言い換えれば、ブランキングアパーチャアレイ基板31のメンブレン領域330には、電子線を用いたマルチビームのそれぞれ対応するビームが通過する複数の通過孔25がアレイ状に形成される。そして、ブランキングアパーチャアレイ基板31のメンブレン領域330上であって、複数の通過孔25のうち対応する通過孔25を挟んで対向する位置に2つの電極を有する複数の電極対がそれぞれ配置される。2つの電極の一方となる複数の制御電極24が、ブランキングアパーチャアレイ基板31上であって複数の通過孔25のうち互いに異なる通過孔25の近傍にそれぞれ配置される。そして、2つの電極の他方となる複数の対向電極26が、ブランキングアパーチャアレイ基板31上であって複数の通過孔25のうち互いに異なる通過孔25を挟んで複数の制御電極24の1つと対向して配置される。具体的には、メンブレン領域330上に、
図3及び
図4に示すように、各通過孔25の近傍位置に該当する通過孔25を挟んでブランキング偏向用の制御電極24と対向電極26の組(ブランカー:ブランキング偏向器)がそれぞれ配置される。また、ブランキングアパーチャアレイ基板31内部(ブランキングアパーチャアレイ基板中)であってメンブレン領域330上の各通過孔25の近傍には、各通過孔25用の制御電極24に偏向電圧を印加する制御回路41(ロジック回路;セル)が配置される。各ビーム用の対向電極26は、グランド接続される。
【0028】
また、
図4に示すように、各制御回路41は、制御信号用のnビット(例えば1ビット)のパラレル配線が接続される。各制御回路41は、ブランキング制御信号(データ)用のnビットのパラレル配線の他、クロック(シフトクロック)信号、ロード(プレロード、レグロード、及びフラグロード)信号、ショット信号および電源用の配線等が接続される。クロック(シフトクロック)信号、ロード(プレロード、レグロード、及びフラグロード)信号、ショット信号および電源用の配線等はパラレル配線の一部の配線を流用しても構わない。マルチビームを構成するそれぞれのビーム毎に、制御電極24と対向電極26と制御回路41とによる個別ブランキング機構47が構成される。また、
図3の例では、制御電極24と対向電極26と制御回路41とがブランキングアパーチャアレイ基板31の膜厚が薄いメンブレン領域330に配置される。但し、これに限るものではない。また、実施の形態1では、データ転送方式として、シフトレジスタ方式を用いる。シフトレジスタ方式では、マルチビームは複数のビーム毎に複数のグループに分割され、同じグループ内の複数のビーム用の複数のシフトレジスタは、直列に接続される。具体的には、メンブレン領域330にアレイ状に形成された複数の制御回路41は、例えば、同じ行或いは同じ列の中で所定のピッチでグループ化される。同じグループ内の制御回路41群は、
図4に示すように、直列に接続される。そして、グループ毎に配置されたパッド343からの信号がグループ内の制御回路41に伝達される。具体的には、各制御回路41内に、後述するシフトレジスタが配置され、例えば、p×q本のマルチビームのうち例えば同じ行のビームの制御回路41内のシフトレジスタが所定のピッチ毎に割り振られてグループ化され、直列に接続される。そして、例えば、p(縦)×q(横)本のマルチビームの同じ行のq本のビームの制御信号がシリーズで送信され、さらに、各行の制御信号がq’本のパラレル信号に分割される。そして、例えば、q/q’回のクロック信号によって各ビームの制御信号が対応する制御回路41に格納される。
【0029】
図5は、実施の形態1の個別ブランキング機構の一例を示す図である。
図5において、制御回路41内には、アンプ46(スイッチング回路の一例)が配置される。
図5の例では、アンプ46の一例として、CMOS(Complementary MOS)インバータ回路が配置される。そして、CMOSインバータ回路は正の電位(Vdd:ブランキング電位:第1の電位)(例えば、5V)(ビームOFF電位)とグランド電位(GND:第2の電位)(ビームON電位)に接続される。CMOSインバータ回路の出力線(OUT)は制御電極24に接続される。一方、対向電極26は、グランド電位が印加される。そして、ブランキング電位とグランド電位とが切り替え可能に印加される複数の制御電極24が、ブランキングアパーチャアレイ基板31上であって、複数の通過孔25のそれぞれ対応する通過孔25を挟んで複数の対向電極26のそれぞれ対応する対向電極26と対向する位置に配置される。
【0030】
CMOSインバータ回路の入力(IN)には、閾値電圧よりも低くなるL(low)電位(例えばグランド電位)と、閾値電圧以上となるH(high)電位(例えば、1.5V)とのいずれかが制御信号として印加される。実施の形態1では、CMOSインバータ回路の入力(IN)にL電位が印加される状態では、CMOSインバータ回路の出力(OUT)は正電位(Vdd)となり、対向電極26のグランド電位との電位差による電界により対応ビーム20を偏向し、制限アパーチャ基板206で遮蔽することでビームOFFになるように制御する。一方、CMOSインバータ回路の入力(IN)にH電位が印加される状態(アクティブ状態)では、CMOSインバータ回路の出力(OUT)はグランド電位となり、対向電極26のグランド電位との電位差が無くなり対応ビーム20を偏向しないので制限アパーチャ基板206を通過することでビームONになるように制御する。
【0031】
各通過孔を通過する電子ビーム20は、それぞれ独立に対となる2つの制御電極24と対向電極26に印加される電圧によって偏向される。かかる偏向によってブランキング制御される。具体的には、制御電極24と対向電極26の組は、それぞれ対応するスイッチング回路となるCMOSインバータ回路によって切り替えられる電位によってマルチビームの対応ビームをそれぞれ個別にブランキング偏向する。このように、複数のブランカーが、成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22(開口部)を通過したマルチビームのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う。
【0032】
図6は、実施の形態1におけるシフトレジスタの接続構成の一例を示す図である。各ビーム用の制御回路41は、メンブレン領域330にアレイ状に形成される。そして、例えば、同じ行に並ぶ複数の制御回路41(x方向)毎に、
図6に示すように、各行の制御回路41列が例えば8つのグループに順に振り分けられ、グループ化される。例えば、512列×512行のマルチビームで構成される場合、各行の1番目~512番目のビーム用の制御回路41が1,9,17,25,・・・番目と8ビーム間ピッチ毎に、データ列1(グループ)を構成する。同様に、2,10,18,26,・・・番目と8ビーム間ピッチ毎に、データ列2(グループ)を構成する。以下、同様に、データ列3(グループ)~データ列8(グループ)を構成する。そして、各グループ内の制御回路41群は、直列に接続される。そして、図示しないI/O回路から行毎の信号が分割されて、パラレルに各グループに伝達される。そして各グループの信号がグループ内の直列に接続された制御回路41に伝達される。具体的には、各制御回路41内に、シフトレジスタ11が配置され、同じグループの制御回路41内のシフトレジスタ11が直列に接続される。
図6の例では、データ列(グループ)毎に64個のシフトレジスタ11が直列に接続される。よって、64回のクロック信号によって、各ビーム用のブランキング制御信号(データ)が各ビーム用のシフトレジスタ11に伝送されることになる。
図6の例では、同じ行(x方向)毎に所定のピッチで複数のグループを構成する場合を示したが、これに限るものではない。例えば、同じ行を左半分と右半分に分け、同じ行の左半分のビーム用の制御回路41毎に、所定のピッチで複数のグループを構成し、同じ行の右半分のビーム用の制御回路41毎に、所定のピッチで別の複数のグループを構成するようにしても好適である。これにより、データ列(グループ)毎に32個のシフトレジスタ11が直列に接続されることになり、データシフト用のクロック回数を半分にできる。或いは、同じ列に並ぶ複数の制御回路41(y方向)毎に複数のグループを構成しても構わない。或いは、同じ行(或いは列)に並ぶ複数の制御回路41で1つのグループを構成しても構わない。その場合、例えば、512列×512行のマルチビームで構成される場合、1回のビームショットに必要なデータ転送にクロック回数が512回必要となるが、動作速度を犠牲にしても良いならば適用しても構わない。
【0033】
次に、描画機構150の動作の具体例について説明する。電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202によりほぼ垂直に成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、矩形の複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、例えば矩形形状のマルチビーム(複数の電子ビーム)20a~eが形成される。かかるマルチビーム20は、ブランキングアパーチャアレイ機構204のそれぞれ対応するブランカー(第1の偏向器:個別ブランキング機構47)内を通過する。かかるブランカーは、それぞれ、設定された描画時間(照射時間)の間、ビームがON状態になるように個別に通過するビームをブランキング制御する。
【0034】
ブランキングアパーチャアレイ機構204を通過したマルチビーム20は、縮小レンズ205によって、縮小され、制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、ブランキングアパーチャアレイ機構204のブランカーによって偏向された電子ビームは、制限アパーチャ基板206の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板206によって遮蔽される。一方、ブランキングアパーチャアレイ機構204のブランカーによって偏向されなかった電子ビームは、
図1に示すように制限アパーチャ基板206の中心の穴を通過する。このように、制限アパーチャ基板206は、個別ブランキング機構47によってビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板206を通過したビームにより、1回分のショットの各ビームが形成される。制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20は、対物レンズ207により焦点が合わされ、所望の縮小率のパターン像となり、主偏向器208及び副偏向器209によって、制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20全体が同方向にまとめて偏向され、各ビームの試料101上のそれぞれの照射位置に照射される。また、例えばXYステージ105が連続移動している時、ビームの照射位置がXYステージ105の移動に追従するように主偏向器208によってトラッキング制御が行われる。一度に照射されるマルチビーム20は、理想的には成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22の配列ピッチに上述した所望の縮小率を乗じたピッチで並ぶことになる。
【0035】
図7は、実施の形態1における描画動作の一例を説明するための概念図である。
図7に示すように、試料101の描画領域30は、例えば、y方向に向かって所定の幅で短冊状の複数のストライプ領域32に仮想分割される。まず、XYステージ105を移動させて、第1番目のストライプ領域32の左端、或いはさらに左側の位置に一回のマルチビーム20のショットで照射可能な照射領域34が位置するように調整し、描画が開始される。第1番目のストライプ領域32を描画する際には、XYステージ105を例えば-x方向に移動させることにより、相対的にx方向へと描画を進めていく。XYステージ105は例えば等速で連続移動させる。第1番目のストライプ領域32の描画終了後、ステージ位置を-y方向に移動させて、第2番目のストライプ領域32の右端、或いはさらに右側の位置に照射領域34が相対的にy方向に位置するように調整し、今度は、XYステージ105を例えばx方向に移動させることにより、-x方向に向かって同様に描画を行う。第3番目のストライプ領域32では、x方向に向かって描画し、第4番目のストライプ領域32では、-x方向に向かって描画するといったように、交互に向きを変えながら描画することで描画時間を短縮できる。但し、かかる交互に向きを変えながら描画する場合に限らず、各ストライプ領域32を描画する際、同じ方向に向かって描画を進めるようにしても構わない。1回のショットでは、成形アパーチャアレイ基板203の各穴22を通過することによって形成されたマルチビームによって、最大で各穴22と同数の複数のショットパターンが一度に形成される。
【0036】
図8は、実施の形態1におけるマルチビームの照射領域と描画対象画素との一例を示す図である。
図8において、ストライプ領域32は、例えば、マルチビームのビームサイズでメッシュ状の複数のメッシュ領域に分割される。かかる各メッシュ領域が、描画対象の画素36(単位照射領域、照射位置、或いは描画位置)となる。描画対象画素36のサイズは、ビームサイズに限定されるものではなく、ビームサイズとは関係なく任意の大きさで構成されるものでも構わない。例えば、ビームサイズの1/n(nは1以上の整数)のサイズで構成されても構わない。
図8の例では、試料101の描画領域が、例えばy方向に、1回のマルチビーム20の照射で照射可能な照射領域34(描画フィールド)のサイズと実質同じ幅サイズで複数のストライプ領域32に分割された場合を示している。矩形の照射領域34のx方向のサイズは、x方向のビーム数×x方向のビーム間ピッチで定義できる。矩形の照射領域34のy方向のサイズは、y方向のビーム数×y方向のビーム間ピッチで定義できる。なお、ストライプ領域32の幅は、これに限るものではない。照射領域34のn倍(nは1以上の整数)のサイズであると好適である。
図8の例では、例えば512×512列のマルチビームの図示を8×8列のマルチビームに省略して示している。そして、照射領域34内に、1回のマルチビーム20のショットで照射可能な複数の画素28(ビームの描画位置)が示されている。言い換えれば、隣り合う画素28間のピッチがマルチビームの各ビーム間のピッチとなる。
図7の例では、隣り合う4つの画素28で囲まれると共に、4つの画素28のうちの1つの画素28を含む正方形の領域で1つのサブ照射領域29を構成する。言い換えれば、画素28を含むビーム間ピッチサイズの矩形の領域で1つのサブ照射領域29を構成する。
図8の例では、各サブ照射領域29は、4×4画素で構成される場合を示している。
【0037】
図9は、実施の形態1におけるマルチビームの描画方法の一例を説明するための図である。
図9では、
図8で示したストライプ領域32を描画するマルチビームのうち、y方向3段目の座標(1,3),(2,3),(3,3),・・・,(512,3)の各ビームで描画するサブ照射領域29の一部を示している。
図9の例では、例えば、XYステージ105が8ビームピッチ分の距離を移動する間に副偏向器209によって順に照射位置(画素36)をシフトさせながら同じサブ照射領域29内の4つの画素を描画(露光)する場合を示している。かかる4つの画素を描画(露光)する間、照射領域34がXYステージ105の移動によって試料101との相対位置がずれないように、主偏向器208によってマルチビーム20全体を一括偏向することによって、照射領域34をXYステージ105の移動に追従させる。言い換えれば、トラッキング制御が行われる。
図9の例では、8ビームピッチ分の距離を移動する間に4つの画素を描画(露光)することで1回のトラッキングサイクルを実施する。なお、サブ照射領域29の残りの他の画素は他のビームによって描画される。1回のトラッキングサイクルが終了するとトラッキングリセットして、前回のトラッキング開始位置に戻る。なお、各サブ照射領域29の右から1番目の画素列の描画は終了しているので、トラッキングリセットした後に、次回のトラッキングサイクルにおいてまず副偏向器209は、各サブ照射領域29の右から2番目の画素列を描画するようにビームの描画位置を合わせる(シフトする)ように偏向する。
図9の例では、例えば、ビーム1によりサブ照射領域29の右から1列目の4画素を描画する。次に、8ビームピッチ離れたビーム9によりサブ照射領域29の右から2列目の4画素を描画する。次に、8ビームピッチ離れたビーム17(図示せず)によりサブ照射領域29の右から3列目の4画素を描画する。次に、8ビームピッチ離れたビーム25(図示せず)によりサブ照射領域29の右から4列目の4画素を描画する。これにより、サブ照射領域29内の4×4のすべての画素が描画対象になったことになる。他のサブ照射領域29でも複数のビームによって同様に描画される。ストライプ領域32の描画中、かかる動作を繰り返すことで、
図7に示すように、照射領域34a~34oといった具合に順次照射領域34の位置が移動していき、当該ストライプ領域32の描画を行っていく。
【0038】
図10は、実施の形態1におけるマルチビームの分割ショットの一例を示す図である。
図10では、各画素36への1回分のショットの最大照射時間Ttrを例えば照射時間が異なるn個のサブ照射時間に分割する。そして、例えば異なるサブ照射時間のn回の分割ショットの中から、各回のショットの任意の照射時間に合わせて、複数の分割ショットの組合せを選択する。まず、最大照射時間Ttrを量子化単位Δ(階調値分解能)で割った階調値Ntrを定める。例えば、n=10とした場合、10回の分割ショットに分割する。階調値Ntrを桁数nの2進数の値で定義する場合、階調値Ntr=1023になるように量子化単位Δを予め設定すると好適である。これにより、最大照射時間Ttr=1023Δとなる。そして、
図10に示すように、n回の分割ショットは、桁数k’=0~9までの2
k’Δのいずれかの照射時間を持つ。言い換えれば、512Δ(=2
9Δ),256Δ(=2
8Δ),128Δ(=2
7Δ),64Δ(=2
6Δ),32Δ(=2
5Δ),16Δ(=2
4Δ),8Δ(=2
3Δ),4Δ(=2
2Δ),2Δ(=2
1Δ),Δ(=2
0Δ)のいずれかの照射時間を持つ。すなわち、1回分のマルチビームのショットは、512Δの照射時間tk’をもつ分割ショットと、256Δの照射時間tk’をもつ分割ショットと、128Δの照射時間tk’をもつ分割ショットと、64Δの照射時間tk’をもつ分割ショットと、32Δの照射時間tk’をもつ分割ショットと、16Δの照射時間tk’をもつ分割ショットと、8Δの照射時間tk’をもつ分割ショットと、4Δの照射時間tk’をもつ分割ショットと、2Δの照射時間tk’をもつ分割ショットと、Δの照射時間tk’をもつ分割ショットと、に分割される。
【0039】
よって、各画素36への任意の照射時間t(=NΔ)の1回分のショットは、代わりに、かかる512Δ(=29Δ),256Δ(=28Δ),128Δ(=27Δ),64Δ(=26Δ),32Δ(=25Δ),16Δ(=24Δ),8Δ(=23Δ),4Δ(=22Δ),2Δ(=21Δ),及びΔ(=20Δ)で定義されるサブ照射時間を持った1組の分割ショット群の中から選択される、照射時間がゼロでなければ少なくとも1つの分割ショットの組み合わせを実施することにより充足できる。
【0040】
ここで、ブランキングアパーチャアレイ機構204では、上述したように、X線や散乱電子等による放射線起因のLSI回路の劣化が生じる。
図3のように制御回路41をメンブレン領域330に設置する場合、放射線によるLSI回路の劣化が生じやすいが、制御回路を外周領域332に設置する場合でも放射線によるLSI回路の劣化の可能性は残る。その他、製造不良起因あるいはLSIの製造上の寿命による動作不良の回路が存在する場合もあり得る。ブランキングアパーチャアレイ機構204の各ビーム用の制御回路41へのデータ転送手段として、
図6に示したシフトレジスタ方式では、データを取り込むシフトレジスタ11が劣化する。シフトレジスタ11が不良であった場合、ビームON電位(GND)若しくはビームOFF電位(Vdd)といったブランキング電位を印加するアンプ46の動作が制御困難になってしまう。その結果、常時OFFになる不良ビーム、ブランキング制御不能の不良ビーム、或いは、常時ONになる不良ビームが生じ、描画された試料101にパターンエラーが生じることになる。これらの不良ビームのうち、ブランキング制御不能の不良ビーム及び常時ONになる不良ビームが試料に入射してしまうと、その補正が難しい。そこで、実施の形態1では、不良のシフトレジスタ11を検出して、不良のシフトレジスタ11が配置される制御回路41では、シフトレジスタ11に取り込まれたブランキング制御信号の内容に関わらず、アンプ46が常時ビームOFF電位を制御電極24に印加するように回路を構成する。
【0041】
図11は、実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構内部に配置される個別ビーム用の制御回路の一例を示す図である。
図11において、各制御回路41内には、シフトレジスタ11、バッファとなる2段のレジスタ42,43、実行用のレジスタ44、レジスタ45、アンプ46、選択回路48、及びアンド回路49が配置される。
図11において、シフトレジスタ11の出力は、レジスタ42の入力とレジスタ45の入力とに接続される。レジスタ42の出力は、レジスタ43の入力に接続される。レジスタ43の出力は、レジスタ44の入力に接続される。レジスタ44の出力は、アンド回路49の入力に接続される。また、レジスタ45の出力は、アンド回路49の入力に接続される。アンド回路49の入力には、さらに、偏向制御回路130から送信されるショット信号が接続される。アンド回路49の出力は、アンプ46の入力に接続される。アンプ46の出力は、
図5に示したように、制御電極24に接続される。
【0042】
図11において、シフトレジスタ11は、偏向制御回路130から送信されるシフトクロック信号に同期してデータを読み込み、記憶する。また、シフトクロック信号に同期して記憶されたデータを同じデータ列の次の制御回路41中のシフトレジスタ11に転送する。レジスタ42は、偏向制御回路130から送信されるプレロード1信号に同期してデータを読み込み、記憶する。レジスタ43は、偏向制御回路130から送信されるプレロード2信号に同期してデータを読み込み、記憶する。レジスタ44は、偏向制御回路130から送信されるレグロード信号に同期してデータを読み込み、記憶する。レジスタ45は、偏向制御回路130から送信されるフラグロード信号に同期してデータを読み込み、記憶する。
【0043】
なお、
図11の例において、選択回路48については、配置する方が望ましいが、省略しても構わない。選択回路48を配置する場合において、
図11の例では、シフトレジスタ11の出力は、さらに、選択回路48の2つの入力の一方に接続される。選択回路48の2つの入力の他方には、シフトレジスタ11の上流側のデータ線が接続される。選択回路48の出力には、直列に接続された次のシフトレジスタ11の入力に接続される。また、選択回路48は、レジスタ45に記憶された信号に応じて2つの入力から1つを選択する。また、選択回路48が省略される場合、シフトレジスタ11の出力は、直列に接続された次のシフトレジスタ11の入力に接続されることは言うまでもない。
【0044】
上述したように、複数の制御回路41の各制御回路41は、シフトレジスタ11とアンプ46とを有する。シフトレジスタ11は、ブランキングアパーチャアレイ基板31に配置され、ブランキングアパーチャアレイ基板31内のデータパスを介して伝送されるブランキング制御信号を入力する。そして、アンプ46は、シフトレジスタ11に入力されたブランキング制御信号に沿って、複数の制御電極24のうち対応する制御電極24にビームON電位若しくはビームOFF電位を印加する。以下、具体的に説明する。
【0045】
図12は、実施の形態1における各分割ショットについてのビーム1のビームON/OFF切り替え動作を示すタイミングチャート図の一例である。
図12の例では、最大照射時間Ttrの1ショットが、例えば、32Δ(=2
5Δ),16Δ(=2
4Δ),8Δ(=2
3Δ),4Δ(=2
2Δ),2Δ(=2
1Δ),及びΔ(=2
0Δ)で定義されるサブ照射時間を持った6つの分割ショット群に分割される場合(n=6)を示している。また、
図12の例では、分割ショット群のショット順として、例えば、32Δ(=2
5Δ)の分割ショット、Δ(=2
0Δ)の分割ショット、16Δ(=2
4Δ)の分割ショット、2Δ(=2
1Δ)の分割ショット、8Δ(=2
3Δ)の分割ショット、及び4Δ(=2
2Δ)の分割ショットの順に実施する場合を示している。ブランキングアパーチャアレイ基板31内のデータパスを介して伝送される各ビームのブランキング制御信号(データ)は、同じグループ内で直列に接続された複数のシフトレジスタ11の数だけ偏向制御回路130から送信されるシフトクロック信号に同期して転送されることにより、所望のシフトレジスタ11に格納される。ブランキング制御信号(データ)は、2進数制御なのでH信号若しくはL信号となる。シフトレジスタ11に格納されたブランキング制御信号(データ)は、偏向制御回路130から送信されるプレロード1信号に同期してレジスタ42に読み込まれ、記憶される。レジスタ42に格納されたブランキング制御信号(データ)は、偏向制御回路130から送信されるプレロード2信号に同期してレジスタ43に読み込まれ、記憶される。また、直列に接続された複数のシフトレジスタ11の数だけ送信されるシフトクロック信号に同期してシフトレジスタ11に次の分割ショットのデータが格納された後、シフトレジスタ11に格納されたブランキング制御信号(データ)は、偏向制御回路130から送信されるプレロード1信号に同期してレジスタ42に読み込まれ、記憶される。よって、1回目の分割ショットのブランキング制御信号(データ)がレジスタ43に保存された状態で、2回目の分割ショットのブランキング制御信号(データ)がレジスタ42に保存される。レジスタ43に格納されたブランキング制御信号(データ)は、偏向制御回路130から送信されるレグロード信号に同期してレジスタ44に読み込まれ、記憶される。その結果、アンド回路49の入力にはレジスタ44に記憶されたブランキング制御信号(データ)が入力されることになる。アンド回路49には、レジスタ44から、例えば、ビームON信号であればH信号、ビームOFF信号であればL信号が入力される。一方、アンド回路49には、レジスタ45から、例えば、正常ビームであることを識別する正常フラグ信号(enable)であればH信号、不良ビームであることを識別する不良フラグ(disable)信号であればL信号が入力される。そして、アンド回路49は、偏向制御回路130から送信されるショット信号(enable;H信号)を入力している期間だけ、レジスタ44とレジスタ45とからの信号が共にH信号であれば、アンプ46にビームON信号(H)を出力する。それ以外は、アンプ46にビームOFF信号(L)を出力する。アンプ46は、アンド回路49からビームON信号(H)が出力されている期間だけ、制御電極24にビームON電位(GND)を印加する。それ以外は、アンプ46は、制御電極24にビームOFF電位(Vdd)を印加する。これにより、1回目の分割ショットが実施される。各レジスタには、順次、次の分割ショットのデータが送られ、1回目の分割ショットが終了後、アンド回路49が次のショット信号(enable;H信号)を入力することで2回目の分割ショットが実施される。以降、順に、各分割ショットが実施される。
【0046】
ここで、アンド回路49がビームON信号(H)を出力するのは、レジスタ44とレジスタ45とから共にH信号を入力し、かつショット信号(enable;H信号)を入力した期間だけとなる。言い換えれば、3つの信号が共にH信号の期間だけビームON信号(H)を出力する。そこで、対象となる制御回路41のシフトレジスタ11が不良の場合、アンド回路49がレジスタ45からL信号を入力することで、レジスタ44からの信号およびショット信号に関わらず、制御電極24にアンプ46から常時ビームOFF電位(Vdd)を印加させることができる。かかる制御を行うためには、例えばビーム毎の個別のレジスタ45に正常フラグ信号(enable)或いは不良フラグ信号(disable)信号といったビーム毎の個別フラグ信号を偏向制御回路130から転送する必要がある。ビーム毎の個別フラグ信号の転送のために、ブランキングアパーチャアレイ機構204内に、別途、各制御回路41へとつながるデータパスを配置するのは限られるスペースの中で難しい。一方、不良となったシフトレジスタ11については、ブランキング制御信号(データ)を転送する場合に使用するシフトクロックの速度を遅くすることで、データを正確に読み込むおよび転送させることができる。或いは、制御回路41の駆動電圧を通常運用時よりも一時的に高くすることでデータを正確に読み込むおよび転送させることができる。但し、駆動電圧を大きくすると回路劣化の進行速度が速くなり得るので、シフトクロックの速度を遅くする手法がより好適である。
【0047】
そこで、実施の形態1では、使用するシフトレジスタ11が正常レジスタであることを識別する正常フラグ信号と不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号とのいずれかのフラグ信号を、ブランキング制御信号(データ)とは時期を異にして、ブランキングアパーチャアレイ機構204内でブランキング制御信号(データ)が各制御回路41へと伝送される同じデータパスを介して入力する。具体的には、以下のように動作する。
【0048】
ブランキングアパーチャアレイ基板31内のブランキング制御信号(データ)と同じデータパスを介して伝送される各ビームのフラグ信号は、同じグループ内で直列に接続された複数のシフトレジスタ11の数だけ偏向制御回路130から送信される遅いシフトクロック信号に同期して転送された後、所望のシフトレジスタ11に格納される。或いは、上述したように、制御回路41の駆動電圧を通常運用時よりも一時的に高くした状態で、フラグ信号は、ブランキング制御信号(データ)を転送する場合に使用するシフトクロックと同じ速度のシフトクロック信号に同期して転送しても良い。駆動電圧を大きくして転送された後、所望のシフトレジスタ11に格納される。シフトレジスタ11に格納されたフラグ信号は、偏向制御回路130から送信されるフラグロード信号に同期してレジスタ45に読み込まれ、記憶される。これにより、ビーム毎の個別フラグ信号の転送のために、ブランキングアパーチャアレイ機構204内に、別途、データパスを配置する必要を無くすことができる。
【0049】
図13は、実施の形態1における描画方法の一例の要部工程を示すフローチャート図である。
図13において、実施の形態1における描画方法は、不良レジスタ検出工程(S102)と、フラグデータ生成工程(S104)と、クロック切替工程(S106)と、フラグ転送工程(S108)と、アンプ無効化工程(S110)と、ビーム無効化確認工程(S112)と、レジスタ選択工程(S114)と、ブランキングデータ生成工程(S116)と、クロック切替工程(S118)と、描画工程(S120)と、いう一連の工程を実施する。なお、
図11における選択回路48の配置が省略される場合、レジスタ選択工程(S114)についても省略される。
【0050】
不良レジスタ検出工程(S102)として、不良レジスタ検出部60(診断部)は、シフトレジスタ11を診断する。言い換えれば、不良レジスタ検出部60は、マルチビーム20をブランキング偏向するブランキングアパーチャアレイ基板31内に配置された、マルチビーム20のうち個別ビームのブランキング制御信号を入力する複数のシフトレジスタ11を診断し、不良レジスタを検出する。具体的には以下のように動作する。不良レジスタ検出部60は、マルチビーム20をブランキング偏向するブランキングアパーチャアレイ基板31内に配置された、マルチビーム20のうち個別ビームのブランキング制御信号を入力する複数のシフトレジスタ11の中から不良レジスタを検出する。言い換えれば、不良レジスタ検出部60は、マルチビーム20の各ビーム用のシフトレジスタ11の中から不良となったシフトレジスタ11を検出する。具体的には、描画制御部80は、各ビーム用の1ショット(1分割ショット)分の評価用のブランキング制御信号(データ)を並べたデータ列を偏向制御回路130に転送する。各ビーム用の評価用のブランキング制御信号(データ)を並べたデータ列は、予め記憶装置140に格納しておけばよい。偏向制御回路130は、ブランキングアパーチャアレイ機構204に評価用のブランキング制御信号(データ)を並べたデータ列を出力し、通常の描画処理時のシフトクロック信号を用いて、各ビーム用のシフトレジスタ11に転送する。次に、通常の描画処理時のシフトクロック信号よりも十分に遅くしたシフトクロック信号を用いて、直列に接続された複数のシフトレジスタ11のチェーン毎に、接続順が最後のシフトレジスタ11から格納されているデータ列を順に読み出す。読み出されたデータ列は、不良レジスタ検出部60に出力される。不良レジスタ検出部60は、直列に接続された複数のシフトレジスタ11のチェーン毎に、読み出されたデータ列のうち、間違ったデータの有無および位置を検出する。不良レジスタ検出部60は、間違ったデータが格納されているシフトレジスタ11を不良と判定する。
【0051】
ここで、直列に接続された複数のシフトレジスタ11のうち、途中のシフトレジスタ11が不良であった場合、それ以降の正常なシフトレジスタ11に転送されるデータも間違ったデータになってしまう場合があり得る。言い換えれば、信用できないデータになっている。そのため、選択回路48の配置が省略される場合、不良レジスタ検出部60は、不良のシフトレジスタ11と、それ以降の正常なシフトレジスタ11とを、不良レジスタとして検出する。一方、選択回路48が配置される場合、不良レジスタ検出部60は、間違ったデータが格納されている直列に接続された複数のシフトレジスタ11が検出された場合、最上流のシフトレジスタ11を不良レジスタとしてまず検出する。次に、かかる最上流のシフトレジスタ11を、選択回路48を使ってデータ転送順から外し、スキップさせた状態で、同様に、各ビーム用の評価用のブランキング制御信号(データ)を並べたデータ列を、通常の描画処理時のシフトクロック信号を用いて、各ビーム用のシフトレジスタ11に転送する。その際、スキップさせたシフトレジスタ11分のデータを省略したデータ列を転送すると好適である。そして、通常の描画処理時のシフトクロック信号よりも十分に遅くしたシフトクロック信号を用いて、直列に接続された複数のシフトレジスタ11のチェーン毎に、接続順が最後のシフトレジスタ11から格納されているデータ列を順に読み出す。不良レジスタ検出部60は、直列に接続された複数のシフトレジスタ11のチェーン毎に、読み出されたデータ列のうち、間違ったデータが格納された最上流のシフトレジスタ11を不良レジスタとして検出する。間違ったデータが格納されている直列に接続された複数のシフトレジスタ11が検出されなくなるまで、同様の動作を繰り返す。これにより、直列に接続された複数のシフトレジスタ11のうち、途中の不良シフトレジスタ11と、それ以降の正常なシフトレジスタ11とを識別できる。
【0052】
フラグデータ生成工程(S104)として、フラグデータ生成部66は、シフトレジスタ11の診断結果(不良レジスタの検出結果)を用いて、シフトレジスタ11毎に、シフトレジスタ11が正常レジスタであることを識別する正常フラグ信号と不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号とのいずれかのフラグ信号を生成する。そして、各ビーム用の1ショット(1分割ショット)分のフラグ信号を並べたデータ列を生成する。例えば、正常フラグ信号として「H」信号、不良フラグ信号として「L」信号を生成する。なお、フラグデータ生成部66が、上述した不良レジスタ検出部60の機能を兼ねても構わない。
【0053】
複数の制御回路41毎に生成された、シフトレジスタ11が正常レジスタであることを識別する正常フラグ信号と不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号とのいずれかを含む、生成されたフラグ信号は、メモリ112に一時的に保持されると共に、偏向制御回路130に転送され、偏向制御回路130に保持される。具体的には、フラグ信号は、偏向制御回路130内の図示しない記憶装置に保持される。
【0054】
クロック切替工程(S106)として、クロック制御部70は、通常の描画処理時のシフトクロック信号から当該描画処理時のシフトクロック信号よりも十分に遅くしたフラグ転送用のシフトクロック信号に切り替える。クロック切替工程(S106)の代わりに、駆動電圧を高くするように切り替える駆動電圧切替工程であっても良い。
【0055】
フラグ転送工程(S108)として、転送制御部79は、各ビーム用の1ショット(1分割ショット)分のフラグ信号を並べたデータ列を偏向制御回路130に転送する。
【0056】
図14は、実施の形態1におけるフラグ信号転送についてのビーム1の制御回路の動作を示すタイミングチャート図の一例である。偏向制御回路130は、ブランキングアパーチャアレイ機構204にフラグ信号を並べたデータ列を出力する。ブランキングアパーチャアレイ機構204では、通常の描画処理時のブランキング制御信号とは時期を異にして、ブランキング制御信号が伝送される同じデータパスを介して各ビーム用のシフトレジスタ11に転送する。ブランキングアパーチャアレイ基板31内のデータパスを介して伝送される各ビームのフラグ信号は、
図14に示すように、同じグループ内で直列に接続された複数のシフトレジスタ11の数だけ偏向制御回路130から送信されるシフトクロック信号に同期して転送されることにより、所望のシフトレジスタ11に格納される。ここで、偏向制御回路130から送信されるシフトクロック信号は、十分に遅くしたシフトクロック信号が用いられる。若しくは高い駆動電圧が用いられる。シフトクロック信号を十分に遅くしているので、正常なシフトレジスタ11はもちろんのこと、不良シフトレジスタ11でもフラグ信号を正確に読み込むおよび転送させることができる。
【0057】
アンプ無効化工程(S110)として、アンプ動作制御部72の制御のもと、偏向制御回路130は、フラグロード信号を各制御回路41に向けて出力する。複数のレジスタ45(動作制限回路)の各レジスタ45は、複数の制御回路41毎に生成された、シフトレジスタ11が正常レジスタ(不良レジスタではないレジスタ)であることを識別する正常フラグ信号と不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号とのいずれかを含むフラグ信号を、ブランキング制御信号とは時期を異にして、ブランキング制御信号が伝送される同じデータパスを介して入力し、保持する。特に、実施の形態1では、複数のレジスタ45(動作制限回路)の各レジスタ45は、フラグ信号をブランキング制御信号が伝送される同じデータパスを介すると共に複数の制御回路41のうち対応する制御回路41のシフトレジスタ11を経由して入力する。具体的には、シフトレジスタ11に格納されたフラグ信号は、
図14に示すように、偏向制御回路130から送信されるフラグロード信号に同期してレジスタ45に読み込まれ、記憶される。これにより、各制御回路41内のレジスタ45に、当該制御回路41内のシフトレジスタ11が正常レジスタであることを識別する正常フラグ信号と不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号とのいずれかのフラグ信号が入力される。実施の形態1では、既存のシフトレジスタ11を経由してフラグ信号を各制御回路41へ転送することで、データパスを追加することなく、シフトレジスタ方式を使ってフラグ信号を転送できる。また、シフトレジスタ11を経由することで、シフトレジスタ方式といった転送方式をクロック速度等以外に変えずに利用できる。
【0058】
そして、レジスタ45は、入力されたフラグ信号が不良フラグ信号である場合に、不良フラグ信号に対応するシフトレジスタ11が配置される制御回路41の動作を制限する。ここでは、入力されたフラグ信号が不良フラグ信号である場合に、不良フラグ信号に対応するシフトレジスタ11を使用するビーム用のアンプ46の動作を制限する。具体的には、以下のように動作する。各レジスタ45にフラグ信号が格納されると、アンド回路49には、レジスタ45から、例えば、正常ビームであることを識別する正常フラグ信号(enable)であればH信号、不良ビームであることを識別する不良フラグ(disable)信号であればL信号が入力される。アンド回路49がビームON信号(H)を出力するのは、レジスタ44とレジスタ45とから共にH信号を入力し、かつショット信号(enable;H信号)を入力した期間だけとなる。言い換えれば、3つの信号が共にH信号の期間だけビームON信号(H)を出力する。そこで、複数のレジスタ45(動作制限回路)の各レジスタ45は、不良フラグ信号を入力した場合には、不良フラグ信号に対応するシフトレジスタ11を使用するビーム用のアンプ46の出力を常時ビームOFF電位に固定させる。具体的には、不良のシフトレジスタ11が配置される制御回路41内のレジスタ45に不良フラグ(disable)信号が格納されることで、アンド回路49からアンプ46にビームOFF信号(L)を出力させることができる。その結果、
図14に示すようにアンプ46が常時ビームOFF電位(Vdd)を出力するようにアンプ46の動作を制限できる。一方、正常のシフトレジスタ11が配置される制御回路41内のレジスタ45には、正常フラグ信号(enable)が格納されるので、アンド回路49は、レジスタ45からH信号を入力する。よって、アンド回路49の出力は、レジスタ44からの信号とショット信号(enable;H信号)によって制御されることになり、レジスタ45からの制限を受けないようにできる。
【0059】
なお、上述した例では、フラグ信号を保持する記憶装置の機能と制御回路41の動作を制限する動作制限回路の機能とをレジスタ45が兼ねる場合を説明したが、これに限るものではない。記憶装置の機能と動作制限回路の機能とを別々に設けても好適である。言い換えれば、例えば、レジスタ45(動作制限回路)とは別に、制御回路41内にレジスタ等の記憶装置(記憶部)を配置しても良い。その場合、レジスタ45とは別の記憶装置は、複数の制御回路41毎に生成された、シフトレジスタ11が正常レジスタであることを識別する正常フラグ信号と不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号とのいずれかを含むフラグ信号を保持する。そして、複数のレジスタ45の各レジスタ45は、生成された各フラグ信号を、ブランキング制御信号とは時期を異にして、ブランキング制御信号が伝送される同じデータパスを介して入力し、入力されたフラグ信号が不良フラグ信号である場合に、不良フラグ信号に対応するシフトレジスタ11が配置される制御回路41の動作を制限する。
【0060】
以上により、不良シフトレジスタ11が配置される制御回路41によって制御されるビームを無効化できる。
【0061】
ビーム無効化確認工程(S112)として、描画機構150は、不良シフトレジスタ11が配置される制御回路41によって制御されるビームがビームOFFになっているかどうかを確認する。具体的には、ブランキングアパーチャアレイ機構204により、対象ビームをビームONに制御し、それ以外のビームをすべてビームOFFに制御する。その上で、対象ビームをXYステージ105上のファラデイカップ106に照射する。例えば、最大照射時間のビームを繰り返しショットする。ファラデイカップ106の出力は、アンプ137で増幅され、デジタル信号として、検出部76に出力される。検出部76は、ファラデイカップ106で測定された電流量を検出する。検出される電流量がゼロ、または全ビームをOFFに制御したときと同じ電流量であれば、ビームが無効化されたことが確認できる。
【0062】
レジスタ選択工程(S114)として、選択回路48が配置されている場合、選択回路48は、直列に接続された複数のシフトレジスタ11のうち、自身の制御回路41内のシフトレジスタ11とデータ転送方向に対して下流側に隣接する制御回路41内のシフトレジスタ11とを接続する。さらに、選択回路48は、自身の制御回路41内のシフトレジスタ11をスキップするようにデータ転送方向に対して上流側に隣接する制御回路41内のシフトレジスタ11と下流側に隣接する制御回路41内のシフトレジスタとに接続される。このように、選択回路48の入力は、自身の制御回路41内のシフトレジスタ11に接続される1系統目と、データ転送方向に対して上流側に隣接する制御回路41内のシフトレジスタ11に接続される2系統目との2系統になっている。選択回路48の出力は、データ転送方向に対して下流側に隣接する制御回路41内のシフトレジスタ11に接続される。そして、選択回路48は、フラグ信号に応じて、自身の制御回路41内のシフトレジスタ11をスキップしたデータ転送かスキップしないデータ転送かを選択する。
【0063】
図15は、実施の形態1における自身の制御回路内のシフトレジスタをスキップしない場合のデータの流れを説明するための図である。
図16は、実施の形態1における自身の制御回路内のシフトレジスタをスキップする場合のデータの流れを説明するための図である。選択回路48は、レジスタ45からフラグ信号を読み出す。選択回路48には、レジスタ45から、例えば、正常ビームであることを識別する正常フラグ信号(enable)であればH信号、不良ビームであることを識別する不良フラグ(disable)信号であればL信号が入力される。選択回路48が正常フラグ信号を入力した場合、
図15に示すように、選択回路48の2系統の入力のうち、1系統目の自身の制御回路41内のシフトレジスタ11を選択する。よって通常動作を行うことになる。一方、選択回路48が不良フラグ信号を入力した場合、
図16に示すように、2系統目のデータ転送方向に対して上流側に隣接する制御回路41内のシフトレジスタ11を選択する。その結果、同じグループ内で直列に接続された複数のシフトレジスタ11のうち、自身の制御回路41内のシフトレジスタ11がシリーズ接続から外されるため、転送されるデータが自身の制御回路41内のシフトレジスタ11をスキップして次のシフトレジスタ11に転送される。
【0064】
ブランキングデータ生成工程(S116)として、ブランキングデータ生成部64は、画素36毎に、当該画素36に照射するための照射量Dを演算する。照射量Dは、例えば、予め設定された基準照射量Dbaseに近接効果補正照射係数Dpとパターン面積密度ρとを乗じた値として演算すればよい。このように、照射量Dは、画素36毎に算出されたパターンの面積密度に比例して求めると好適である。近接効果補正照射係数Dpについては、描画領域(ここでは、例えばストライプ領域32)を所定のサイズでメッシュ状に複数の近接メッシュ領域(近接効果補正計算用メッシュ領域)に仮想分割する。近接メッシュ領域のサイズは、近接効果の影響範囲の1/10程度、例えば、1μm程度に設定すると好適である。そして、記憶装置140から描画データを読み出し、近接メッシュ領域毎に、当該近接メッシュ領域内に配置されるパターンのパターン面積密度ρ’を演算する。
【0065】
次に、近接メッシュ領域毎に、近接効果を補正するための近接効果補正照射係数Dpを演算する。ここで、近接効果補正照射係数Dpを演算するメッシュ領域のサイズは、パターン面積密度ρ’を演算するメッシュ領域のサイズと同じである必要は無い。また、近接効果補正照射係数Dpの補正モデル及びその計算手法は従来のシングルビーム描画方式で使用されている手法と同様で構わない。
【0066】
そして、照射時間算出部62は、画素36毎に、当該画素36に演算された照射量Dを入射させるための電子ビームの照射時間tを演算する。照射時間tは、照射量Dを電流密度Jで割ることで演算できる。
【0067】
次に、ブランキングデータ生成部64は、画素36毎に、
図10に示した予め設定された複数の露光時間に対応する1組の分割ショット群(ショット群)の中から、当該画素36用の照射時間tに合う組み合わせの分割ショットを選択する。当該画素36への照射時間がゼロでなければ、少なくとも1つの分割ショットを選択することになる。分割ショットを選択する場合には、できるだけ露光時間(照射時間)が長い分割ショット側から選択すると好適である。ブランキングデータ生成部64は、選択された分割ショットが識別できるように、例えば、2進数でON/OFF信号(ブランキングデータ)を生成する。
図10の例において、例えば、照射時間が1023Δの画素36については、当該画素のブランキングデータは、すべての分割ショットを選択することになるので、“1111111111”となる。次に、ブランキングデータ生成部64は、描画シーケンスに沿ってショット順にブランキングデータを並び替えると共に、各分割ショットについて、各グループのシフトレジスタ11の並び順を考慮したデータ転送順に並び替える。
【0068】
ここで、描画制御部80は、無効化されたビームは、使用しないものとして、描画シーケンスを設定する。また、選択回路48が配置される場合、選択回路48によってスキップされるシフトレジスタ11の分のデータがあるとシフトクロックの数と直列接続されるシフトレジスタ11の数とが不一致になり、所望するシフトレジスタ11にデータが格納されなくなる。そのため、ブランキングデータ生成部64は、選択回路48が配置される場合、選択回路48によってスキップされるシフトレジスタ11があるチェーンについては、スキップされるシフトレジスタ11の分、データ列を短くする。
【0069】
クロック切替工程(S118)として、クロック制御部70は、遅くしたフラグ転送用のシフトクロック信号から通常の描画処理時のシフトクロック信号に切り替える。なお、クロック切替工程(S106)の代わりに、駆動電圧切替工程が実施された場合には、クロック切替工程(S118)の代わりに、低い駆動電圧に切り替える駆動電圧切替工程が実施される。
【0070】
描画工程(S120)として、描画機構150は、ブランキングデータに沿ってマルチビーム20を試料101に照射することにより、試料101に所望のパターンを描画する。ここでは、同じ画素36に連続して照射される複数の分割ショットの組合せにより、各画素36にそれぞれ必要なドーズ量を入射する。その際、例えばブランキングアパーチャアレイ基板31中に配置された複数の制御回路41の各制御回路41内では、マルチビーム20のブランキングを制御すべく、シフトレジスタ11がブランキングアパーチャアレイ基板31内のデータパスを介して伝送されるブランキングデータ(ブランキング制御信号)を入力する。そして、ブランキングアパーチャアレイ基板31内のデータパスを介して伝送されるビーム毎に、個別のシフトレジスタ11に入力されたブランキングデータに沿って、ビーム毎に個別のアンプ46からビームON電位若しくはビームOFF電位を、ブランキングアパーチャアレイ基板31に形成される当該ビームが通過する通過孔25の近傍に配置された制御電極24に印加する。言い換えれば、アンプ46がシフトレジスタ11に入力されたブランキングデータに沿って、複数の制御電極24のうち対応する制御電極24にビームON電位若しくはビームOFF電位を印加する。
【0071】
描画機構150は、ビームOFF電位が制御電極24に印加されたことによって制御電極24と制御電極24に対向する対向電極26との間の電位差によりブランキング偏向されたビームを遮蔽すると共に、マルチビーム20のうち遮蔽されなかったビーム群を用いて、試料101にパターンを描画する。具体的には、以下のように動作する。ブランキングアパーチャアレイ機構204を通過したマルチビーム20は、縮小レンズ205によって、縮小され、制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、ビームOFF電位が制御電極24に印加されたことによってブランキング偏向されたビームは、制限アパーチャ基板206の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板206によって遮蔽される。無効化されたビームについてもブランキング偏向されるので制限アパーチャ基板206によって遮蔽される。一方、ブランキングアパーチャアレイ機構204のブランカー及び共通ブランキング偏向器212によって偏向されなかった電子ビームは、
図1に示すように制限アパーチャ基板206の中心の穴を通過する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板206を通過したビームにより、1回分のショットの各ビームが形成される。制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20は、対物レンズ207により焦点が合わされ、所望の縮小率のパターン像となり、試料101面上に結像される。その際、主偏向器208及び副偏向器209によって、制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20全体が同方向にまとめて偏向され、各ビームの試料101上のそれぞれの照射位置に照射される。
【0072】
実施の形態1では、個別ブランキング制御用の各制御回路41によるビームON/OFF制御と、マルチビーム全体を一括してブランキング制御する共通ブランキング制御用のロジック回路131によるビームON/OFF制御との両方を用いて、各ビームのブランキング制御を行う例を示している。
【0073】
ブランキングアパーチャアレイ機構204に個別ブランキング制御用の各制御回路41を配置する場合、配置スペースが狭い。そのため、制御信号の情報量を少なくすることで制御回路の設置面積を小さくできる。例えば1ビットの制御信号が入出力される。しかし、各制御回路41では、設置スペースの観点から高速に応答させるための回路を配置するのが難しい。一方、共通ブランキング用のロジック回路131では、同時に複数の異なる制御を行うわけではなく、ON/OFF制御を行う1回路で済むため、高速に応答させるための回路を配置できる。
【0074】
ロジック回路131では、個別ブランキング機構のON/OFF切り替えに対して、アンプ46の電圧安定時間(セトリング時間)を経過した後にON/OFF切り替えを行う。これにより、個別アンプ46の立ち上がり時の不安定な電圧でのビーム照射を排除できる。そして、ロジック回路131は対象となるkショット目の照射時間の経過時にOFFとなる。その結果、実際のビームは、個別アンプ46とロジック回路131内のアンプとが共にONであった場合に、ビームONとなり、試料101に照射される。よって、ロジック回路131内のアンプのON時間が実際のビームの照射時間になるように制御される。但し、ロジック回路131が個別ブランキング制御用各制御回路41を制御することで、共通ブランキング偏向器212を用いなくても制御することは可能である。
【0075】
以上のように、実施の形態1によれば、マルチビーム描画におけるブランキングアパーチャアレイ機構204において、転送されたブランキングデータを個別ビーム用の制御回路41内にて取り込む回路が不良であった場合でもブランキングが制御不能の不良ビーム及び常時ONになる不良ビームが試料101に入射してしまうことを防止できる。
【0076】
実施の形態2.
実施の形態1では、ブランキングアパーチャアレイ機構204の各ビーム用の制御回路41へのデータ転送手段として、ビームアレイの例えば行毎に配置された複数のシフトレジスタ11をグループ毎に直列に繋げてデータ転送するシフトレジスタ方式を用いた構成について説明した。実施の形態2では、ブランキングアパーチャアレイ機構204の各ビーム用の制御回路41へのデータ転送手段として、例えば、マトリクススキャン方式を用いた構成について説明する。実施の形態2における描画装置100の構成は
図1と同様である。また、実施の形態2における描画方法のフローチャート図は
図13と同様である。但し、実施の形態2では、レジスタ選択工程(S114)は除かれる。以下、特に説明しない点については、実施の形態1と同様で構わない。
【0077】
図17は、実施の形態2におけるブランキングアパーチャアレイ機構内部に配置される個別ビーム用の制御回路の一例を示す図である。
図17において、各制御回路41内には、バッファとなる2段のレジスタ42,43、実行用のレジスタ44、レジスタ45、アンプ46、及びアンド回路49が配置される。
図17において、レジスタ42の出力は、レジスタ43の入力とレジスタ45の入力とに接続される。レジスタ43の出力は、レジスタ44の入力に接続される。レジスタ44の出力は、アンド回路49の入力に接続される。また、レジスタ45の出力は、アンド回路49の入力に接続される。アンド回路49の入力には、さらに、偏向制御回路130から送信されるショット信号が接続される。アンド回路49の出力は、アンプ46の入力に接続される。アンプ46の出力は、
図5に示したように、制御電極24に接続される。
図17の例では、各制御回路41は、マルチビーム20の配列と同様、マトリクス状に配置される。そして、各行の奇数番目のレジスタ42の入力は、2つのデータ線のうち、データk-1に接続され、偶数番目のレジスタ42の入力は、2つのデータ線のうち、データk-2に接続される。kは行の番号を示す。
図17の例では、上の行の奇数番目のレジスタ42の入力は、データ1-1に接続され、偶数番目のレジスタ42の入力は、2つのデータ線のうち、データ1-2に接続される。下の行の奇数番目のレジスタ42の入力は、データ2-1に接続され、偶数番目のレジスタ42の入力は、2つのデータ線のうち、データ2-2に接続される。また、各列のレジスタ42群毎に、それぞれプレロード1信号が接続される。また、各行のレジスタ45群毎に、それぞれフラグロード信号が接続される。また、各行のアンド回路49群毎に、それぞれショット信号が接続される。
【0078】
図18は、実施の形態2における各分割ショットについてのビーム1のビームON/OFF切り替え動作を示すタイミングチャート図の一例である。
図18の例では、最大照射時間Ttrの1ショットが、例えば、32Δ(=2
5Δ),16Δ(=2
4Δ),8Δ(=2
3Δ),4Δ(=2
2Δ),2Δ(=2
1Δ),及びΔ(=2
0Δ)で定義されるサブ照射時間を持った6つの分割ショット群に分割される場合(n=6)を示している。また、
図18の例では、分割ショット群のショット順として、例えば、32Δ(=2
5Δ)の分割ショット、Δ(=2
0Δ)の分割ショット、16Δ(=2
4Δ)の分割ショット、2Δ(=2
1Δ)の分割ショット、8Δ(=2
3Δ)の分割ショット、及び4Δ(=2
2Δ)の分割ショットの順に実施する場合を示している。
【0079】
図18において、偏向制御回路130から各行のデータ線に、繋がるレジスタ42の数だけクロックに同期して直列にデータが送られる。言い換えれば、繋がるレジスタ42の数だけクロックに同期してデータ線へのデータ出力が切り替わる。また、各レジスタ42は、偏向制御回路130から各列に送信される、クロックに同期したプレロード1信号に同期してデータを読み込み、記憶する。例えば、各行のデータ線のデータ転送方向に上流側から1番目のレジスタ42列には、当該データ線に繋がるレジスタ42の数だけプレロード1信号が送られる。その結果、最終的にデータ列の最後のデータが格納される。上流側から2番目のレジスタ42列には、当該データ線に繋がるレジスタ42の数から1を引いた数だけプレロード1信号が送られる。その結果、最終的にデータ列の最後から2番目のデータが格納される。以降、同様の動作をよって、各レジスタ42にデータが格納される。行毎に2本のデータ線を配置することで、データ転送時間を半分にできる。照射時間制御信号(データ)は、2進数制御なのでH若しくはLとなる。レジスタ43は、偏向制御回路130から送信されるプレロード2信号に同期してデータを読み込み、記憶する。1回目の分割ショットの照射時間制御信号(データ)がレジスタ43に保存された状態で、2回目の分割ショットの照射時間制御信号(データ)がレジスタ42に保存される。レジスタ44は、偏向制御回路130から送信されるレグロード信号に同期してデータを読み込み、記憶する。
【0080】
その結果、アンド回路49の入力にはレジスタ44に記憶されたブランキング制御信号(データ)が入力されることになる。アンド回路49には、レジスタ44から、例えば、ビームON信号であればH信号、ビームOFF信号であればL信号が入力される。一方、アンド回路49には、レジスタ45から、例えば、レジスタ42が、正常レジスタであることを識別する正常フラグ信号(enable)であればH信号、不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号(disable)であればL信号が入力される。そして、アンド回路49は、偏向制御回路130から送信されるショット信号(enable;H信号)を入力している期間だけ、レジスタ44とレジスタ45とからの信号が共にH信号であれば、アンプ46にビームON信号(H)を出力する。それ以外は、アンプ46にビームOFF信号(L)を出力する。アンプ46は、アンド回路49からビームON信号(H)が出力されている期間だけ、制御電極24にビームON電位(GND)を印加する。それ以外は、アンプ46は、制御電極24にビームOFF電位(Vdd)を印加する。これにより、1回目の分割ショットが実施される。各レジスタには、順次、次の分割ショットのデータが送られ、1回目の分割ショットが終了後、アンド回路49が次のショット信号(enable;H信号)を入力することで2回目の分割ショットが実施される。以降、順に、各分割ショットが実施される。なお、レジスタ45は、偏向制御回路130から送信されるフラグロード信号に同期してデータを読み込み、記憶する。
【0081】
上述したように、アンド回路49がビームON信号(H)を出力するのは、レジスタ44とレジスタ45とから共にH信号を入力し、かつショット信号(enable;H信号)を入力した期間だけとなる。言い換えれば、3つの信号が共にH信号の期間だけビームON信号(H)を出力する。そこで、対象となる制御回路41のレジスタ42が不良の場合、レジスタ45からL信号を入力することで、レジスタ44からの信号およびショット信号に関わらず、制御電極24にアンプ46から常時ビームOFF電位(Vdd)を印加させる。
【0082】
マトリクススキャン方式において、レジスタ42が不良となった場合、レジスタ42のデータホールド時間を長くすることで、データを正確に読み込むおよび転送させることができる。データホールド時間を長くするには、プレロード1信号の間隔を長くする、しいてはクロックの速度を遅くすることで対応できる。或いは、制御回路41の駆動電圧を通常運用時よりも一時的に高くすることでデータを正確に読み込むおよび転送させることができる。但し、駆動電圧を大きくすると回路劣化の進行速度が速くなり得るので、クロックの速度を遅くする手法がより好適である。
【0083】
そこで、実施の形態2では、実施の形態1と同様、ビーム毎の個別のレジスタ45に使用するレジスタ42が正常レジスタであることを識別する正常フラグ信号と不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号とのいずれかのフラグ信号を、ブランキング制御信号(データ)とは時期を異にして、ブランキングアパーチャアレイ機構204内でブランキング制御信号(データ)が各制御回路41へと伝送される同じデータパスを介して入力する。実施の形態2では、既存のレジスタ42を経由してフラグ信号を各制御回路41へ転送することで、データパスを追加することなく、マトリクススキャン方式を使ってフラグ信号を転送できる。
【0084】
不良レジスタ検出工程(S102)として、不良レジスタ検出部60は、マルチビーム20をブランキング偏向するブランキングアパーチャアレイ基板31内に配置された、マルチビーム20のうち個別ビームのブランキング制御信号を入力する複数のレジスタ42の中から不良レジスタを検出する。言い換えれば、不良レジスタ検出部60は、マルチビーム20の各ビーム用のレジスタ42の中から不良となったレジスタ42を検出する。マトリクススキャン方式では、シフトレジスタ方式と異なり、複数のレジスタ42が直列に接続されていないので、チェーン毎に、接続順が最後のレジスタ42から格納されているデータ列を順に読み出すことは困難である。そこで、例えば、例えば、ビーム1本しか通過できない通過孔が形成された図示しない遮蔽板を配置して、マルチビーム20を1本ずつ選択する。そして、描画機構150は、マルチビーム20を1本ずつXYステージ105上のファラデイカップ106に照射する。そこで、ビームOFF制御の時に電流量が検出されれば、常時ビームON或いはブランキング制御が困難な不良ビームと判断できる。そして、かかる不良ビームの原因として、レジスタ42が不良と推定することで、不良レジスタを検出する。
【0085】
或いは、ブランキングアパーチャアレイ機構204の各制御回路41を診断する、図示しない診断回路を配置して、レジスタ42を個別に診断して、不良レジスタを検出しても好適である。
【0086】
フラグデータ生成工程(S104)の内容は実施の形態1と同様である。クロック切替工程(S106)では、プレロード1信号及びデータ出力の切り替えのクロックを通常の描画処理の場合よりも十分に遅くするクロックに切り替える。
【0087】
フラグ転送工程(S108)として、転送制御部79は、各ビーム用の1ショット(1分割ショット)分のフラグ信号を並べたデータ列を偏向制御回路130に転送する。
【0088】
図19は、実施の形態2におけるフラグ信号転送についてのビーム1の制御回路の動作を示すタイミングチャート図の一例である。偏向制御回路130は、ブランキングアパーチャアレイ機構204にフラグ信号を並べたデータ列を出力する。ブランキングアパーチャアレイ機構204では、通常の描画処理の場合よりも十分に遅くしたクロックで切り替わるフラグ信号のデータ列をデータ線に出力すると共に、通常の描画処理の場合よりも十分に遅くしたクロックで送信されるプレロード1信号を使って、ブランキングデータと同じデータパスを介してマトリクススキャン方式でフラグ信号を各レジスタ42に転送する。ここで、偏向制御回路130から送信されるプレロード1信号及びデータ出力の切り替えのクロックを十分に遅くしているので、正常なレジスタ42はもちろんのこと、不良レジスタ42でもフラグ信号を正確に読み込むおよび転送させることができる。
【0089】
アンプ無効化工程(S110)として、複数のレジスタ45(動作制限回路)の各レジスタ45は、レジスタ42が正常レジスタ(不良レジスタではないレジスタ)であることを識別する正常フラグ信号と不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号とのいずれかのフラグ信号を、ブランキング制御信号とは時期を異にして、ブランキング制御信号が伝送される同じデータパスを介して入力する。特に、実施の形態2では、複数のレジスタ45(動作制限回路)の各レジスタ45は、フラグ信号をブランキング制御信号が伝送される同じデータパスを介すると共に複数の制御回路41のうち対応する制御回路41のレジスタ42を経由して入力する。具体的には、レジスタ42に格納されたフラグ信号は、
図19に示すように、偏向制御回路130から送信されるフラグロード信号に同期してレジスタ45に読み込まれ、記憶される。フラグ信号が全列転送された後、全列同時にフラグ信号がレジスタ45に格納される。これにより、各制御回路41内のレジスタ45に、当該制御回路41内のレジスタ42が正常レジスタであることを識別する正常フラグ信号と不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号とのいずれかのフラグ信号が入力される。実施の形態2では、既存のレジスタ42を経由してフラグ信号を各制御回路41へ転送することで、データパスを追加することなく、マトリクススキャン方式を使ってフラグ信号を転送できる。
【0090】
そして、レジスタ45は、入力されたフラグ信号が不良フラグ信号である場合に、不良フラグ信号に対応するレジスタ42が配置される制御回路41の動作を制限する。ここでは、入力されたフラグ信号が不良フラグ信号である場合に、不良フラグ信号に対応するレジスタ42を使用するビーム用のアンプ46の動作を制限する。制限の仕方は、実施の形態1と同様である。これにより、不良レジスタが配置される制御回路41に制御されるビームを常時OFFにでき、無効化できる。
【0091】
ビーム無効化確認工程(S112)と、ブランキングデータ生成工程(S116)の内容は実施の形態1と同様である。
【0092】
クロック切替工程(S118)では、プレロード1信号及びデータ出力の切り替えのクロックを遅くしたクロックから通常の描画処理の場合の速度のクロックに切り替える。描画工程(S120)の内容は実施の形態1と同様である。その際、シフトレジスタ11をレジスタ42に読み替える。
【0093】
以上のように、実施の形態2によれば、マトリクススキャン方式において、転送されたブランキングデータを個別ビーム用の制御回路41内にて取り込む回路が不良であった場合でもブランキング制御不能の不良ビーム及び常時ONになる不良ビームが試料101に入射してしまうことを防止できる。
【0094】
実施の形態3.
上述した各実施の形態では、アンプ46の動作を制限する動作制限回路となるレジスタ45を各制御回路41内に配置する場合について説明したが、これに限るものではない。実施の形態3では、制御回路41外に配置する場合について説明する。実施の形態3における描画装置100の構成は
図1と同様である。また、実施の形態3における描画方法のフローチャート図は
図13と同様である。実施の形態3は、クロック切替工程(S106)及びクロック切替工程(S118)は省略しても構わない。以下、特に説明しない点については、実施の形態1と同様で構わない。
【0095】
図20は、実施の形態3におけるブランキングアパーチャアレイ機構内部に配置される個別ビーム用の制御回路の一例と動作制限回路の一例とを示す図である。
図20において、各制御回路41内には、シフトレジスタ11、バッファとなる2段のレジスタ42,43、実行用のレジスタ44、アンプ46、選択回路48、及びアンド回路49が配置される。
図20において、シフトレジスタ11の出力は、レジスタ42の入力に接続される。レジスタ42の出力は、レジスタ43の入力に接続される。レジスタ43の出力は、レジスタ44の入力に接続される。レジスタ44の出力は、アンド回路49の入力に接続される。アンド回路49の入力には、制御回路41外に配置されるレジスタ45の出力と、偏向制御回路130から送信されるショット信号とが接続される。アンド回路49の出力は、アンプ46の入力に接続される。アンプ46の出力は、
図5に示したように、制御電極24に接続される。
【0096】
図20において、シフトレジスタ11は、偏向制御回路130から送信されるシフトクロック信号に同期してデータを読み込み、記憶する。また、シフトクロック信号に同期して記憶されたデータを転送する。レジスタ42は、偏向制御回路130から送信されるプレロード1信号に同期してデータを読み込み、記憶する。レジスタ43は、偏向制御回路130から送信されるプレロード2信号に同期してデータを読み込み、記憶する。レジスタ44は、偏向制御回路130から送信されるレグロード信号に同期してデータを読み込み、記憶する。
【0097】
図3に示したように、ブランキングアパーチャアレイ基板31は、マルチビーム20が通過する中央部のマルチビーム通過領域となる薄い膜厚hのメンブレン領域330と、メンブレン領域330を取り囲む周囲の外周部の外周領域332とを有している。
図20に示すように、複数の制御回路41は、マルチビーム通過領域となるメンブレン領域330にアレイ状に配置される。一方、複数のレジスタ45(動作制限回路)は、外周領域332に配置される。
図6に示したように、例えば、512列×512行のマルチビームで構成される場合、各行の1番目~512番目のビーム用の制御回路41がビーム1,9,17,25,・・・と8ビーム間ピッチ毎に、データ列1(グループ)を構成する。同様に、2,10,18,26,・・・と8ビーム間ピッチ毎に、データ列2(グループ)を構成する。以下、同様に、データ列3(グループ)~データ列8(グループ)を構成する。そして、各グループ内の制御回路41群は、直列に接続される。そして、同じ行の各グループのデータ列1~8は、シリーズに並ぶ。例えば、ビーム列k行目の行データとして、ビーム列k行目のデータ列1~8がシリーズに並ぶ。そして、各行データがパラレルに偏向制御回路130からブランキングアパーチャアレイ機構204に転送されると、ブランキングアパーチャアレイ基板31の外周領域332に配置されるデータパスを介してメンブレン領域330にパラレルに伝達される。そして、メンブレン領域330の外周付近に配置されるI/O回路で行毎に、行データがデータ列1~8に分割され、パラレルに各グループに伝達される。
【0098】
実施の形態3では、行毎の例えば8つのグループについて、グループ毎に1つのレジスタ45(動作制限回路)を配置する。また、行毎の例えば8つのレジスタ45(a~h)は、直列に接続される。そして、各グループのレジスタ45の出力は、同じグループの例えば8つのアンド回路49の入力に接続される。行毎の直列に接続された最初のレジスタ45の入力は、ブランキングアパーチャアレイ基板31の外周領域332に配置されるブランキングデータ用のデータパスに接続される。よって、レジスタ45へのデータ入力用に、データパスを追加することなく、ブランキングデータ用のデータパスを介してフラグ信号をレジスタ45に転送できる。
【0099】
各レジスタ45は、偏向制御回路130から送信されるフラグロード信号に同期してデータを読み込み、記憶する。
図20の例では、行毎の複数のレジスタ45が直列に接続されるので、シフトレジスタ方式でフラグ信号を転送する必要がある。よって、例えば、8回のフラグロード信号によって、各レジスタ45に所望のフラグ信号を転送できる。
【0100】
なお、
図20の例において、選択回路48については、配置する方が望ましいが、省略しても構わない。選択回路48を配置する場合において、
図20の例では、シフトレジスタ11の出力は、さらに、選択回路48の2つの入力の一方に接続される。選択回路48の2つの入力の他方には、シフトレジスタ11の上流側のデータ線が接続される。選択回路48の出力には、直列に接続された次のシフトレジスタ11の入力に接続される。また、選択回路48は、レジスタ45に記憶された信号に応じて2つの入力から1つを選択する。また、選択回路48が省略される場合、シフトレジスタ11の出力は、直列に接続された次のシフトレジスタ11の入力に接続されることは言うまでもない。
【0101】
上述したように、アンド回路49がビームON信号(H)を出力するのは、レジスタ44とレジスタ45とから共にH信号を入力し、かつショット信号(enable;H信号)を入力した期間だけとなる。言い換えれば、3つの信号が共にH信号の期間だけビームON信号(H)を出力する。そこで、対象となる制御回路41のシフトレジスタ11が不良の場合、レジスタ45からL信号を入力することで、レジスタ44からの信号およびショット信号に関わらず、制御電極24にアンプ46から常時ビームOFF電位(Vdd)を印加させる。
【0102】
なお、
図20の例では、行毎の例えば8つのグループについて、グループ毎に1つのレジスタ45(動作制限回路)を配置するので、同じグループ内の例えば8つのアンプ46の動作を同時に制限することになる。
【0103】
図21は、実施の形態3と比較例とにおける不良フラグ信号によりアンプ出力が制限される制御回路を説明するための図である。
図21(a)及び
図21(b)の例では、例えば、16列(x方向)×8行(y方向)のビームアレイのうち、各行の4ビームピッチ毎に制御回路41(セル)がグループ化される場合を示している。実施の形態3では、グループ毎に1つのレジスタ45(動作制限回路)を配置するので、行毎にグループ数のフラグ信号があれば足りる。そのため、
図21(a)に示すように、4×8のフラグ信号を生成すればよい。不良フラグ信号のグループを塗りつぶしたマス目で示している。
図21(a)の例では、例えば、上から2行目かつ左から2列目のグループに不良フラグ信号が適用される場合を示している。この不良フラグ信号の適用により、上から2行目かつ左から2列目のセルと左側に4ピッチ毎に並ぶ3つのセルの合計4つのセルが制御するビームが無効化されることになる。一方、
図21(b)の例では、セル毎にフラグ信号を生成する比較例を示している。比較例(例えば、実施の形態1,2)では、グループ毎ではなく、個別に不良フラグ信号が適用されるセルが制御するビームが無効化されることになる。
【0104】
フラグデータ生成工程(S104)として、フラグデータ生成部66は、
図21(a)に示すように、4×8のフラグ信号を生成すればよい。例えば、グループ内の複数のシフトレジスタ11のうち、1つでも不良レジスタがあれば、そのグループについては不良フラグ信号を生成する。不良レジスタが全く無いグループについては正常フラグ信号を生成する。そして、行毎にシリーズに並べた、各ビーム用の1ショット(1分割ショット)分のフラグ信号のデータ列を生成する。例えば、正常フラグ信号として「H」信号、不良フラグ信号として「L」信号を生成する。
【0105】
なお、実施の形態3では、不良シフトレジスタ11を経由してフラグ信号を転送しないので、クロックを遅くする必要は無く、クロック切替工程(S106)は省略しても構わない。
【0106】
フラグ転送工程(S108)として、転送制御部79は、各ビーム用の1ショット(1分割ショット)分のフラグ信号を並べたデータ列を偏向制御回路130に転送する。フラグロード信号に同期して、各レジスタ45は、フラグ信号を順に読み込み及び転送する。1つの行あたりのグループ数のフラグロード信号を偏向制御回路130から送信することで、各レジスタ45に所望のフラグ信号が格納される。
【0107】
アンプ無効化工程(S110)として、各フラグ信号がレジスタ45に読み込まれ、記憶されることにより、各レジスタ45は、入力されたフラグ信号が不良フラグ信号である場合に、不良フラグ信号に対応するグループ内のシフトレジスタ11が配置される制御回路41の動作を制限する。ここでは、入力されたフラグ信号が不良フラグ信号である場合に、不良フラグ信号に対応するグループ内のシフトレジスタ11を使用するすべてのアンプ46の動作を制限する。具体的には、以下のように動作する。各レジスタ45は、不良フラグ信号を入力した場合には、不良フラグ信号に対応するグループ内のシフトレジスタ11を使用するすべてのアンプ46の出力を常時ビームOFF電位に固定させる。具体的には、レジスタ45に不良フラグ(disable)信号が格納されることで、アンド回路49からアンプ46にビームOFF信号(L)を出力させることができる。その結果、
図20に示すようにアンプ46が常時ビームOFF電位(Vdd)を出力するようにアンプ46の動作を制限できる。一方、不良シフトレジスタ11が無いグループ用のレジスタ45には、正常フラグ信号(enable)が格納されるので、アンド回路49は、レジスタ45からH信号を入力する。よって、アンド回路49の出力は、レジスタ44からの信号とショット信号(enable;H信号)によって制御されることになり、レジスタ45からの制限を受けないようにできる。
【0108】
以上により、不良シフトレジスタ11が配置される制御回路41を含むグループによって制御されるビームを無効化できる。
【0109】
なお、
図20の例では、グループ毎に1つずつレジスタ45を配置する場合を示したがこれに限るものではない。1つのグループを複数のサブグループに分けてサブグループ毎に1つずつレジスタ45を配置しても良い。また、
図20の例では、1行ごとに、グループ数の複数のレジスタ45が直列に接続される場合を示したがこれに限るものではない。1つのグループを複数のサブグループに分けてサブグループ毎にレジスタ45を直列に接続してもよい。これにより、各レジスタ45にフラグ信号を転送するためのフラグロード信号のクロック回数を低減できる。
【0110】
ビーム無効化確認工程(S112)以降の各工程の内容は、実施の形態1と同様で構わない。
【0111】
実施の形態3によれば、メンブレン領域330に比べて配置スペースを広く確保できる外周領域332に動作制限回路を配置できる。
【0112】
実施の形態4.
上述した各実施の形態では、アンプ46の動作を制限する場合について説明したが、これに限るものではない。実施の形態4では、不良レジスタ自体を切り離し、正常レジスタに切り替える構成について説明する。実施の形態4における描画装置100の構成は
図1と同様である。また、実施の形態4における描画方法のフローチャート図は、アンプ無効化工程(S110)とビーム確認工程(S112)とを削除した点以外は、
図13と同様である。以下、特に説明しない点については、実施の形態1と同様で構わない。
【0113】
図22は、実施の形態4におけるブランキングアパーチャアレイ機構内部に配置される個別ビーム用の制御回路の一例を示す図である。
図22において、ブランキングアパーチャアレイ基板31中に配置された各制御回路41内には、2つのシフトレジスタ11a,11b、バッファとなる2段のレジスタ42,43、実行用のレジスタ44、レジスタ45、アンプ46、選択回路48、及びアンド回路49が配置される。
図22において、2つのシフトレジスタ11a(通常使用)(第1のレジスタ)とシフトレジスタ11b(予備使用)(第2のレジスタ)とが並列に配置される。2つのシフトレジスタ11a,11bのうち例えばシフトレジスタ11aを通常使用する。シフトレジスタ11bは、シフトレジスタ11aが不良になった場合の予備とする。実施の形態4では、同じグループの複数のシフトレジスタが直列に接続される場合に、制御回路41毎に並列の2つのシフトレジスタ11a,11bが配置される。シフトレジスタ11aの出力は、選択回路48の2つの入力の一方に接続される。シフトレジスタ11bの出力は、選択回路48の2つの入力の他方に接続される。また、シフトレジスタ11aの出力は、さらに、レジスタ45の入力に接続される。選択回路48の出力は、次の制御回路41の2つのシフトレジスタ11a,11bの入力に接続されると共に、レジスタ42の入力に接続される。レジスタ42の出力は、レジスタ43の入力に接続される。レジスタ43の出力は、レジスタ44の入力に接続される。レジスタ44の出力は、アンド回路49の入力に接続される。アンド回路49の入力には、さらに、偏向制御回路130から送信されるショット信号が接続される。アンド回路49の出力は、アンプ46の入力に接続される。アンプ46の出力は、
図5に示したように、制御電極24に接続される。
【0114】
以上のように、複数の制御回路41の各制御回路41は、シフトレジスタ11aとシフトレジスタ11bとアンプ46とを有する。シフトレジスタ11aとシフトレジスタ11bは、並列に配置され、ブランキングアパーチャアレイ基板31中に配置され、ブランキングアパーチャアレイ基板31内のデータパスを介して伝送されるブランキング制御信号を入力する。アンプ46は、シフトレジスタ11aとシフトレジスタ11bのいずれか1つに入力されたブランキング制御信号に沿って、複数の制御電極24のうち対応する制御電極24にビームON電位若しくはビームOFF電位を印加する。以下、具体的に説明する。
【0115】
図22において、並列に配置された2つのシフトレジスタ11a,11bは、偏向制御回路130から送信されるシフトクロック信号に同期して、ブランキングアパーチャアレイ基板内のデータパスを介して伝送されるブランキング制御信号(データ)を読み込み(入力し)、記憶する。また、シフトクロック信号に同期して記憶されたデータを転送する。アンプ46は、2つのシフトレジスタ11a,11bのいずれか1つに入力されたブランキング制御信号に沿って、複数の制御電極24のうち対応する制御電極24にビームON電位若しくはビームOFF電位を印加する。以下、具体的に説明する。レジスタ42は、偏向制御回路130から送信されるプレロード1信号に同期してデータを読み込み、記憶する。レジスタ42は、選択回路48によって接続が選択された2つのシフトレジスタ11a,11bのうちの1つからデータを読み込むことになる。レジスタ43は、偏向制御回路130から送信されるプレロード2信号に同期してデータを読み込み、記憶する。レジスタ44は、偏向制御回路130から送信されるレグロード信号に同期してデータを読み込み、記憶する。その結果、アンド回路49の入力にはレジスタ44に記憶されたブランキング制御信号(データ)が入力されることになる。アンド回路49には、レジスタ44から、例えば、ビームON信号であればH信号、ビームOFF信号であればL信号が入力される。そして、アンド回路49は、偏向制御回路130から送信されるショット信号(enable;H信号)を入力している期間だけ、レジスタ44とレジスタ45とからの信号が共にH信号であれば、アンプ46にビームON信号(H)を出力する。それ以外は、アンプ46にビームOFF信号(L)を出力する。アンプ46は、アンド回路49からビームON信号(H)が出力されている期間だけ、制御電極24にビームON電位(GND)を印加する。それ以外は、アンプ46は、制御電極24にビームOFF電位(Vdd)を印加する。
【0116】
不良レジスタ検出工程(S102)と、フラグデータ生成工程(S104)と、クロック切替工程(S106)と、の各工程の内容は実施の形態1と同様である。
【0117】
フラグ転送工程(S108)として、レジスタ45(記憶部)は、複数の制御回路41毎に生成された、例えばシフトレジスタ11aが正常レジスタであることを識別する正常フラグ信号と不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号とのいずれかを含むフラグ信号を保持する。具体的には、以下のように動作する。レジスタ45は、シフトレジスタ11aが正常レジスタであることを識別する正常フラグ信号と不良レジスタであることを識別する不良フラグ信号とのいずれかのフラグ信号を、ブランキングデータとは時期を異にして、ブランキングデータが伝送される同じデータパスを介すると共に複数の制御回路41のうち対応する制御回路41のシフトレジスタ11aを経由して入力する。不良となったシフトレジスタ11aについては、ブランキング制御信号(データ)を転送する場合に使用するシフトクロックの速度を遅くすることで、データを正確に読み込むおよび転送させることができる。或いは、制御回路41の駆動電圧を通常運用時よりも一時的に高くすることでデータを正確に読み込むおよび転送させることができる。但し、駆動電圧を大きくすると回路劣化の進行速度が速くなり得るので、シフトクロックの速度を遅くする手法がより好適である。その際、レジスタ45は、偏向制御回路130から送信されるフラグロード信号に同期してデータを読み込み、記憶する。その結果、選択回路48には、レジスタ45に記憶されたフラグ信号が入力されることになる。
【0118】
レジスタ選択工程(S114)として、複数の選択回路48(切り替え回路の一例)の各選択回路48は、生成されたフラグ信号を、ブランキング制御信号とは時期を異にして、ブランキング制御信号が伝送される同じデータパスを介すると共に複数の制御回路41のうち対応する制御回路41の例えばシフトレジスタ11aを経由して入力し、入力されたフラグ信号が不良フラグ信号である場合に、フラグ信号を入力したシフトレジスタ11aからシフトレジスタ11bにアンプ46側への接続を切り替える。具体的には、以下のように動作する。選択回路48は、レジスタ45の出力に応じて、2つの入力の1つを選択する。言い換えれば、選択回路48は、レジスタ45の出力に応じて、2つの入力の一方から他方へと接続を切り替える。選択回路48には、レジスタ45から、例えば、正常フラグ信号であればH信号、不良フラグ信号であればL信号が入力される。通常、シフトレジスタ11aが正常なので、選択回路48は、シフトレジスタ11aをアンプ46側へ接続する。しかし、選択回路48は、入力されたフラグ信号が不良フラグ信号(L)である場合に、フラグ信号を入力したシフトレジスタ11aから予備のシフトレジスタ11bにアンプ46側への接続を切り替える。以上により、不良シフトレジスタ11aを切り離し、正常シフトレジスタ11bに切り替えることができる。
【0119】
ブランキングデータ生成工程(S116)以降の各工程の内容は、実施の形態1と同様で構わない。また、レジスタ選択工程(S114)の後に、ビーム確認を行う工程を実施しても構わないことは言うまでもない。
【0120】
以上のように、実施の形態4によれば、マルチビーム描画におけるブランキングアパーチャアレイ機構204において、転送されたブランキングデータを個別ビーム用の制御回路41内にて取り込む回路が不良であった場合でも、アンプ46を無効化することなく、ブランキング制御不能の不良ビーム及び常時ONになる不良ビームが試料101に入射してしまうことを防止できる。
【0121】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0122】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0123】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチ荷電粒子ビーム描画装置およびマルチ荷電粒子ビーム描画方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0124】
11 シフトレジスタ
20 マルチビーム
22 穴
24 制御電極
25 通過孔
26 対向電極
28,36 画素
29 サブ照射領域
30 描画領域
31 ブランキングアパーチャアレイ基板
32 ストライプ領域
34 照射領域
41 制御回路
42,43,44,45 レジスタ
46 アンプ
47 個別ブランキング機構
48 選択回路
49 アンド回路
60 不良レジスタ検出部
62 照射時間算出部
64 ブランキングデータ生成部
66 フラグデータ生成部
70 クロック制御部
72 アンプ動作制御部
76 検出部
79 転送制御部
80 描画制御部
100 描画装置
101 試料
102 電子鏡筒
103 描画室
105 XYステージ
106 ファラデイカップ
110 制御計算機
112 メモリ
130 偏向制御回路
131 ロジック回路
132,134 DACアンプユニット
136 レンズ制御回路
137 アンプ
138 ステージ制御機構
139 ステージ位置測定器
140,142 記憶装置
150 描画機構
160 制御系回路
200 電子ビーム
201 電子銃
202 照明レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
204 ブランキングアパーチャアレイ機構
205 縮小レンズ
206 制限アパーチャ基板
207 対物レンズ
208 主偏向器
209 副偏向器
210 ミラー
212 共通ブランキング偏向器
330 メンブレン領域
332 外周領域
343 パッド