IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧

<>
  • 特開-ステージ装置 図1
  • 特開-ステージ装置 図2
  • 特開-ステージ装置 図3
  • 特開-ステージ装置 図4
  • 特開-ステージ装置 図5
  • 特開-ステージ装置 図6
  • 特開-ステージ装置 図7
  • 特開-ステージ装置 図8
  • 特開-ステージ装置 図9
  • 特開-ステージ装置 図10
  • 特開-ステージ装置 図11
  • 特開-ステージ装置 図12
  • 特開-ステージ装置 図13
  • 特開-ステージ装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157224
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ステージ装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20241030BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
H01J37/20 D
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071454
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宗大
(72)【発明者】
【氏名】水落 真樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 来布
(72)【発明者】
【氏名】細渕 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 孝宜
【テーマコード(参考)】
5C101
5H641
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101FF02
5C101FF56
5C101FF57
5H641BB06
5H641BB16
5H641BB18
5H641GG03
5H641GG04
5H641GG06
5H641HH02
5H641HH06
(57)【要約】
【課題】
磁気浮上型のステージ装置において、駆動に伴う振動を効果的に抑制しつつ、高速な位置決めが可能であり、かつ漏れ磁場が小さいステージ装置を提供する。
【解決手段】
位置決めを行う対象物を支持する支持ステージと、当該支持ステージを磁気により浮上させて位置決めする浮上機構を備えたステージ装置であって、前記浮上機構の第1の方向の推力を発生する第1のモータと、前記第1の方向と異なる第2の方向の推力を発生する第2のモータと、前記第1の方向と前記第2の方向と異なる第3の方向の推力を発生する第3のモータと、を有し、前記第1のモータと前記第2のモータと前記第3のモータは、前記各モータに対応する非浮上側の各ヨークが同じ部材を共有して一体で構成されており、前記同じ部材を共有して一体で構成された各ヨークを、テーブルの前記第2の方向の両端に配置し、前記テーブルに対して前記第1の方向の辺が固定されていることを特徴とする。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決めを行う対象物を支持する支持ステージと、当該支持ステージを磁気により浮上させて位置決めする浮上機構を備えたステージ装置であって、
前記浮上機構の第1の方向の推力を発生する第1のモータと、前記第1の方向と異なる第2の方向の推力を発生する第2のモータと、前記第1の方向と前記第2の方向と異なる第3の方向の推力を発生する第3のモータと、を有し、
前記第1のモータと前記第2のモータと前記第3のモータは、前記各モータに対応する非浮上側の各ヨークが同じ部材を共有して一体で構成されており、
前記同じ部材を共有して一体で構成された各ヨークを、テーブルの前記第2の方向の両端に配置し、前記テーブルに対して前記第1の方向の辺が固定されていることを特徴とするステージ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステージ装置であって、
前記第2の方向は、前記第1の方向に垂直な方向であり、
前記第3の方向は、前記第1の方向および前記第2の方向に垂直な方向であることを特徴とするステージ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のステージ装置であって、
前記第1のモータ、前記第2のモータ、前記第3のモータは、それぞれX軸モータ、Y軸モータ、Z軸モータであり、
前記浮上機構の前記X軸モータと前記Y軸モータと前記Z軸モータは、前記各モータに対応する非浮上側のXヨークとYヨークとZヨークが同じ部材を共有して一体で構成されており、
前記同じ部材を共有して一体で構成されたXヨークとYヨークとZヨークを、YテーブルのY方向の両端に配置し、前記Yテーブルに対してX方向の辺が固定されていることを特徴とするステージ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のステージ装置であって、
X軸とY軸は、水平面内で互いに垂直であり、
Z軸は、前記水平面に対して鉛直であることを特徴とするステージ装置。
【請求項5】
請求項3に記載のステージ装置であって、
前記同じ部材を共有して一体で構成されたXヨークとYヨークとZヨークは、その断面形状がコの字形であることを特徴とするステージ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のステージ装置であって、
前記同じ部材を共有して一体で構成されたXヨークとYヨークとZヨークの下面は、前記Z軸モータの磁気吸引に使用されることを特徴とするステージ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のステージ装置であって、
前記X軸モータとY軸モータとZ軸モータの各コイルは、まとめてコイルモールドされることを特徴とするステージ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のステージ装置であって、
前記Y軸モータのコイルを前記X軸モータのコイルと同じ高さ、かつ、前記コの字形ヨークの奥側に配置されることを特徴とするステージ装置。
【請求項9】
請求項6に記載のステージ装置であって、
前記X軸モータと前記Y軸モータは、縦方向に重ねて配置され、かつ、XZ平面に対称に前記X軸モータと前記Y軸モータで上下関係が逆に配置されることを特徴とするステージ装置。
【請求項10】
請求項3に記載のステージ装置であって、
前記X軸モータと前記Y軸モータは、それぞれの高さが互い違いになるよう配置されることを特徴とするステージ装置。
【請求項11】
請求項1に記載のステージ装置であって、
荷電粒子線装置または真空装置に搭載されることを特徴とするステージ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ装置の構造に係り、特に、磁気浮上型のステージ装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体関連装置のためのデバイスステージおよびウエハを正確に位置決めして支持するための磁気浮上ステージに関する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、デバイスを移動させる磁気浮上ステージ機構が開示されている。この磁気浮上ステージ機構は、XYZの各軸に磁石可動式のモータを用いており、固定子のコイルがはり状となっている構造である。この特許文献1では、3軸方向のモータ推力をそれぞれ別々のモータで発生し非接触支持を実現している。
【0004】
また、特許文献2には、XY軸の各軸駆動用の磁界の相互干渉を抑制することができるステージ装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、磁場の漏れを抑制可能かつ高速な位置決めが可能なステージ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-198121号公報
【特許文献2】特開2012-85386号公報
【特許文献3】国際公開第2022/264287号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、半導体ウエハの製造、測定、検査などの工程では、半導体ウエハの正確な位置決めを行うために、上記特許文献1から特許文献3のようなステージ装置が用いられる。このようなステージ装置においては、半導体ウエハの高速かつ高精度な位置決め性能が求められている。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のような従来の磁気浮上ステージ装置では、長手方向のストロークが大きい場合に、固定子がはり状となり振動するため、ステージ機構の固有振動数が低く、制御帯域の向上に制約が生じて高速な位置決めが困難であるという課題がある。また、XYZの各軸のモータに磁性体であるヨークが必要となり、磁場変動や漏洩磁場の問題から、荷電粒子線装置への適用が困難である。
【0009】
上記特許文献2及び特許文献3のいずれにおいても、上記のような課題は十分に考慮されておらず、改善の余地がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、磁気浮上型のステージ装置において、駆動に伴う振動を効果的に抑制しつつ、高速な位置決めが可能であり、かつ漏れ磁場が小さいステージ装置、及びそれを用いた荷電粒子線装置、真空装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、位置決めを行う対象物を支持する支持ステージと、当該支持ステージを磁気により浮上させて位置決めする浮上機構を備えたステージ装置であって、前記浮上機構の第1の方向の推力を発生する第1のモータと、前記第1の方向と異なる第2の方向の推力を発生する第2のモータと、前記第1の方向と前記第2の方向と異なる第3の方向の推力を発生する第3のモータと、を有し、前記第1のモータと前記第2のモータと前記第3のモータは、前記各モータに対応する非浮上側の各ヨークが同じ部材を共有して一体で構成されており、前記同じ部材を共有して一体で構成された各ヨークを、テーブルの前記第2の方向の両端に配置し、前記テーブルに対して前記第1の方向の辺が固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、磁気浮上型のステージ装置において、駆動に伴う振動を効果的に抑制しつつ、高速な位置決めが可能であり、かつ漏れ磁場が小さいステージ装置、及びそれを用いた荷電粒子線装置、真空装置を実現することができる。
【0013】
これにより、ステージ装置を搭載する荷電粒子線装置や真空装置の性能向上及び信頼性向上が図れる。
【0014】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来の転がりガイドを用いたステージ装置を示す図である。
図2】従来の磁気浮上型ステージ装置を示す図である。
図3図2の磁気浮上型ステージ装置のX軸モータの構成例を示す図である。
図4図2の磁気浮上型ステージ装置のY軸モータの構成例を示す図である。
図5図2の磁気浮上型ステージ装置のZ軸モータの構成例を示す図である。
図6図2の磁気浮上型ステージ装置のZ軸モータの別の構成例を示す図である。
図7図2の磁気浮上型ステージ装置の断面図である。
図8】Y軸モータのヨークが曲がる振動モードを模式的に示す図である。
図9】本発明の実施例1に係る磁気浮上型ステージ装置を示す図である。
図10図9の磁気浮上型ステージ装置の断面図である。
図11図9の磁気浮上型ステージ装置の3D複合モータの断面図である。
図12図9の磁気浮上型ステージ装置の3D複合モータのXYコイル部の配線例を示す図である。
図13】本発明の実施例2に係る磁気浮上型ステージ装置の3D複合モータの断面図である。
図14】本発明の実施例3に係る半導体計測装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0017】
本発明を分かり易くするため、先ず、図1から図8を参照して、従来のステージ装置の構造とその課題について説明する。
【0018】
図1は、従来の転がりガイドを用いたステージ装置の構成を示す図である。X軸およびY軸の両方に転がりガイドを用いたスタック型のステージの構成例である。
【0019】
Yテーブル109がY軸ガイド110により案内され、Xテーブル111がX軸ガイド114により案内される。Xテーブル111上に試料104とバーミラー102を固定したトップテーブル101が搭載される。
【0020】
バーミラー102は、レーザー干渉計等での試料104の位置計測に用いられる。X軸のリニアモータのヨーク506がYテーブル109上に固定され、X軸のリニアモータのコイル(図示せず)がXテーブル111に固定される。これにより、X軸方向の推力がX軸のリニアモータのコイルに与えられ、Xテーブル111にX方向の推力が与えられる。また、ヨーク506には上記のX軸方向の推力とは逆方向の反力が発生する。
【0021】
しかし、ヨーク506は、長手方向であるX方向全体に渡ってYテーブル109に固定されているため、ヨーク506の曲げ振動の固有振動数は高く、位置決めにおいて問題となることはない。
【0022】
図2に、従来の磁気浮上型ステージ装置の構成例を示す。図1の転がりガイドを用いたステージ装置に対して、X軸ガイド114を磁気浮上案内化した構成である。
【0023】
従来の磁気浮上型ステージ装置では、上軸でXYZ方向の変位およびXYZ軸回りの回転の6自由度の位置および姿勢の制御が必要となる。そのため、上軸が磁気浮上ではない図1のステージ装置では、上軸であるX軸のモータが1個で良いのに対して、駆動要素であるモータの軸数が6軸に増大する。具体的には、図1のX軸ガイド114は、Y方向およびZ方向の変位を拘束しているが、従来の磁気浮上型ステージ装置では、この機能をY軸モータとZ軸モータで代替している。
【0024】
また、X軸、Y軸、Z軸のリニアモータのヨークははり状となるため振動し易い。
【0025】
このように、ストロークが一方向に長い磁気浮上型ステージ装置では、はり状構造物であるリニアモータのヨークが多数必要となり、固有振動数が低下して制御帯域が制限され、高速化が困難となる。その他にも、組立性やメンテナンス性の低下も課題となる。
【0026】
図3から図6に、図2の従来の磁気浮上型ステージ装置のXYZ各軸のモータの構成例を示す。
【0027】
図3は、X軸モータの構成例を示している。永久磁石105とコの字形のヨーク106により、磁束108が形成される。コイル107に流す電流の向き113により、ローレンツ力によってX方向の推力112が得られる。
【0028】
図4は、Y軸モータの構成例を示している。永久磁石105とコの字形のヨーク106により、磁束108が形成される。コイル107に流す電流の向き113により、ローレンツ力によってY方向の推力112が得られる。
【0029】
図5は、Z軸モータの構成例を示している。2つの永久磁石105とガイドヨーク402の間の磁気吸引力401を浮上部の重力補償に利用する。磁束108はガイドヨーク402とバックヨーク403の内部でループ状に形成される。コイル107内に電流113を流すことで磁束108が増減されて磁気吸引力401が増減する。これにより、Z方向の力を制御することが可能である。
【0030】
図6は、図5とは別のZ軸モータの構成例を示している。永久磁石105を1つにして、磁気吸引力401をコイル107内の電流113で制御する。
【0031】
図7に、図2の従来の磁気浮上型ステージ装置の断面図を示す。X軸モータには、図3の構成のモータが搭載され、ヨーク506が図3のヨーク106に相当する。Y軸モータには、図4の構成のモータが搭載され、ヨーク504が図4のヨーク106に相当する。Z軸モータには、図5または図6の構成のモータが搭載されている。
【0032】
水冷ジャケット508には水冷配管507が埋め込まれている。スケールヘッド801により、スケールプレート802の位置と姿勢が計測される。浮上部は、主に水冷ジャケット508とトップテーブル101から構成される。
【0033】
X方向およびY方向に駆動する際に、浮上部の重心回りに回転するピッチングモーメントの発生を抑制するために、駆動中心および浮上部の重心の高さを示す直線701上に、X軸モータとY軸モータの高さを揃えることが望ましい。しかし、その場合、X軸モータまたはY軸モータのどちからかしかYテーブル109にヨーク長手方向全体を固定できないため、図2のY軸モータのヨーク504のように両端支持はり状となる。
【0034】
図8に、Y軸モータのヨーク504がY方向に曲がる振動モードを模式的に示す。X軸モータのヨーク506はYテーブル109に長手方向全体を固定できるため振動しないが、Y軸モータのヨーク504は両端支持はり状となり、図8のようにY方向に弓なりのモード形状にて振動しやすい。特に、Y軸モータにはY方向の推力が掛かるため、この振動モードが励振され易く、周波数応答特性におけるピークが大きくなり易い。そのため、Y方向の制御帯域が制限され、高速化が困難となる。
【0035】
なお、上記では、図8に示すY軸モータのヨーク504のY方向曲げについて述べたが、Z方向に高速に移動させる場合は、ZガイドヨークのZ方向曲げも同様に問題となる。
【0036】
図7の従来の磁気浮上型ステージ装置の構成のその他の課題として、浮上部とY軸モータのヨーク504が入り組んでおり、組立性とメンテナンス性が悪化するという点も挙げられる。
【0037】
次に、図9から図12を参照して、本発明の実施例1に係る磁気浮上型ステージ装置について説明する。
【0038】
図9は、上記のような課題を解決するための、本発明の3D複合モータを搭載した磁気浮上型ステージ装置を示す図である。
【0039】
図9に示すように、本発明では、XYZの三軸のモータにおいて、ヨークを1つの部材(ヨーク)803に複合したモータ構造となっており、ヨーク803をYテーブル109に長手方向(Y方向)全体で固定できるため固有振動数が高い。すなわち、図8のようなY軸モータのヨーク504がY方向に曲がる振動や、Z軸モータのヨークがZ方向に曲がる振動の固有振動数が大幅に向上する。
【0040】
そのため、図2のような従来の磁気浮上型ステージ装置ではヨークの固有振動数により律速されていた制御帯域の向上が可能である。また、磁気浮上型ステージ装置を構成する部品点数も少なくなり、組立工程やメンテナンスにおけるリードタイムも短縮可能である。
【0041】
図10に、図9の磁気浮上型ステージ装置の断面図を示す。
【0042】
浮上部の重心高さ701と、水平方向の推力を得る3D複合モータのXYコイル804および3D複合モータのヨーク803との高さを一致させることが可能であり、X方向およびY方向移動におけるピッチングモーメントが小さく、姿勢の変動や姿勢制御のためのZ軸モータの推力が小さくて済み、低発熱化が可能である。
【0043】
また、浮上部の重力補償のためのZ軸モータの永久磁石502の上側に3D複合モータのヨーク803が存在することにより、Z軸モータの永久磁石502からの上方向の漏洩磁場が遮蔽される。
【0044】
図7の従来の磁気浮上型ステージ装置の構成に対して、3D複合モータのヨーク803のY方向の幅が広がっており遮蔽効果が高い。そのため、荷電粒子線装置などの、低磁場が求められる装置への適用が可能となる。
【0045】
また、図7のように、試料104の下方にY軸モータのヨーク504などの磁性体を配置する必要がなくなるため、荷電粒子線装置などで問題となる電子光学系の磁場偏向レンズが形成する磁場との干渉が低減する。そのため、電子ビームの歪みが減って良好な像が得られる。
【0046】
図11に、3D複合モータの断面図を示す。図10における3D複合モータの範囲805を拡大した断面図である。
【0047】
XYZの各軸の推力発生原理としては、図3から図6に示した各モータと同様である。例えば、X軸方向の推力112は、X軸推力用コイル902内の電流113とX軸推力用永久磁石905による磁束108によって発生する。同様に、Y軸方向の推力112は、Y軸推力用コイル903内の電流113とY軸推力用永久磁石906による磁束108によって発生する。また、Z方向の磁気吸引力401を浮上部の重力補償に利用し、Z軸推力用コイル904内の電流113によって磁気吸引力401を増減し、Z方向の推力制御を行う。X方向の推力112を得るX軸推力用コイル902と、Y方向の推力112を得るY軸推力用コイル903はコイルモールド901内に収められる。
【0048】
このように、本実施例の磁気浮上型ステージ装置では、XYZ軸の各モータに対してヨーク部材803を共有(一体化)しつつ、三軸の推力を独立に発生可能に構成されている。
【0049】
図12を用いて、3D複合モータの水平方向推力を得るコイル(XYコイル)の内部配線構造の例について説明する。
【0050】
X軸推力用コイル902とY軸推力用コイル903の配置については、Y軸推力用コイル903を3D複合モータのヨーク803の奥側(図12ではX軸推力用コイル902よりも右側)に配置することが望ましい。X軸モータは3相交流式であるため、UVWの三相のコイルにおいて、U相同士を接続する配線907と、V相同士を接続する配線908と、W相同士を接続する配線909が必要である。これらは、コイルモールド901内部に収める必要がある。
【0051】
コイルモールド901がZ方向に振動すると浮上部の振動となり、試料104やバーミラー102の振動となり望ましくない。そのため、コイルモールド901のコイルの突き出し長さ911を極力小さくすることが望ましい。
【0052】
そこで、Y軸推力用コイル903を先端部(3D複合モータのヨーク803の奥側)に配置して、三相の配線スペースが必要なX軸推力用コイル902を根本側に配置することで、コイル突き出し長さ911を最小化することができる。すなわち、コイル配線とコイル突き出し長さ911の関係から、Y軸推力用コイル903をコイルモールド901の奥側に配置することに必然性ある。
【0053】
本実施例のステージ装置は以上のように構成されており、位置決めを行う対象物(試料104)を支持する支持ステージ(トップテーブル101)と、支持ステージ(トップテーブル101)を磁気により浮上させて位置決めする浮上機構を備えており、浮上機構の第1の方向の推力を発生する第1のモータ(X軸モータ)と、第1の方向と異なる第2の方向の推力を発生する第2のモータ(Y軸モータ)と、第1の方向と第2の方向と異なる第3の方向の推力を発生する第3のモータ(Z軸モータ)とを有しており、第1のモータ(X軸モータ)と第2のモータ(Y軸モータ)と第3のモータ(Z軸モータ)は、各モータに対応する非浮上側の各ヨーク(XヨークとYヨークとZヨーク)が同じ部材803を共有して一体で構成されており、同じ部材803を共有して一体で構成された各ヨーク(XヨークとYヨークとZヨーク)を、テーブル(Yテーブル109)の第2の方向(Y方向)の両端に配置し、テーブル(Yテーブル109)に対して第1の方向(X方向)の辺が固定されている。
【0054】
例えば、第2の方向は、第1の方向に垂直な方向であり、第3の方向は、第1の方向および第2の方向に垂直な方向である。すなわち、X軸とY軸は、水平面内で互いに垂直であり、Z軸は、この水平面に対して鉛直である。
【0055】
また、同じ部材803を共有して一体で構成されたXヨークとYヨークとZヨークは、その断面形状がコの字形である。
【0056】
また、同じ部材803を共有して一体で構成されたXヨークとYヨークとZヨークの下面は、Z軸モータの磁気吸引に使用される。
【0057】
また、X軸モータとY軸モータとZ軸モータの各コイルは、まとめてコイルモールド(901)されている。
【0058】
また、Y軸モータのコイルは、X軸モータのコイルと同じ高さ、かつ、上記のコの字形ヨークの奥側に配置されている。
【0059】
これにより、磁気浮上型のステージ装置において、駆動に伴う振動を効果的に抑制しつつ、高速な位置決めが可能であり、かつ漏れ磁場が小さいステージ装置を実現することができる。
【実施例0060】
図13を参照して、本発明の実施例2に係る磁気浮上型ステージ装置について説明する。
【0061】
図13は、本実施例の磁気浮上型ステージ装置の3D複合モータの断面図である。実施例1(図10)では、X軸とY軸の推力発生部を横に並べた構成であるのに対し、本実施例(図13)では、X軸とY軸の推力発生部を縦に並べた構成である点において、実施例1(図10)と異なっている。その他の構成は、実施例1(図10)と同様である。
【0062】
X軸の推力発生部は、X軸モータのヨーク506とX軸モータのコイル505で構成され、Y軸の推力発生部は、Y軸モータのヨーク504とY軸モータのコイル503で構成される。
【0063】
図13において、右側では、X軸の推力発生部(505,506)がY軸の推力発生部(503,504)の上側に配置され、左側では、Y軸の推力発生部(503,504)がX軸の推力発生部(505,506)の上側に配置される。
【0064】
これにより、磁気浮上型ステージ装置全体で、X方向移動時およびY方向移動時の推力の作用点を重心702の高さ701に合わせることが可能となり、ピッチングモーメントの発生を抑制できる。
【0065】
また、X軸モータのヨーク506とY軸モータのヨーク504を共にYテーブル109に長手方向全体で固定できるため、低振動化にも寄与する。
【0066】
本実施例のステージ装置は以上のように構成されており、X軸モータとY軸モータは、縦方向に重ねて配置され、かつ、XZ平面に対称にX軸モータとY軸モータで上下関係が逆に配置されている。
【0067】
また、X軸モータとY軸モータは、それぞれの高さが互い違いになるよう配置されている。
【0068】
本実施例においても、実施例1と同様に、駆動に伴う振動を効果的に抑制しつつ、高速な位置決めが可能であり、かつ漏れ磁場が小さいステージ装置を実現することができる。
【実施例0069】
図14を参照して、本発明の実施例3に係る荷電粒子線装置および真空装置について説明する。
【0070】
図14は、本発明の3D複合モータ構造を有する磁気浮上型ステージ装置を搭載した、荷電粒子線装置や真空装置等の半導体計測装置の模式的な断面図である。
【0071】
図14に示すように、本実施例の半導体計測装置は、対象物(試料104)の位置決めを行うステージ装置と、そのステージ装置を収容する真空チャンバ951を備えている。本実施例の半導体計測装置は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)の応用装置としての測長SEMである。
【0072】
半導体計測装置は、例えば、ステージ装置と、真空チャンバ951と、電子光学系鏡筒952と、制振マウント953と、レーザー干渉計954と、スケールヘッド801と、スケールプレート802と、コントローラ955とを備えている。
【0073】
真空チャンバ951は、ステージ装置を収容し、真空ポンプ(図示せず)によって内部が減圧されて大気圧よりも低圧の真空状態になる。真空チャンバ951は、制振マウント953によって支持されている。
【0074】
半導体計測装置は、ステージ装置によって半導体ウエハなどの対象物(試料104)の位置決めを行い、電子光学系鏡筒952から電子ビームを対象物(試料104)上に照射し、対象物(試料104)上のパターンを撮像し、パターンの線幅の計測や形状精度の評価を行う。
【0075】
ステージ装置は、レーザー干渉計954により、バーミラー102の位置が計測され、スケールヘッド801により、スケールプレート802の位置が計測され、コントローラ955により、支持ステージの試料台103上に保持された半導体ウエハなどの対象物(試料104)が位置決め制御される。
【0076】
本実施例の半導体計測装置は、3D複合モータ構造の低振動なステージ装置を備えることで、半導体ウエハ等の対象物の位置決め時の振動低減および位置決め時間短縮が可能であり、かつ磁場の漏れを抑制することができる。
【0077】
したがって、例えば、荷電粒子線装置の測定精度を向上させることができる。また、ステージ装置は、浮上機構が磁気浮上式であるので、真空装置である半導体計測装置への適用が容易であり、コンタミ低減や発熱の抑制等、優れた効果を発揮することができる。
【0078】
なお、本実施例の荷電粒子線装置および真空装置は、半導体用途の計測装置に限定されるものではなく、他の分野で利用される計測装置にも適用することができる。
【0079】
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0080】
101…トップテーブル、102…バーミラー、103…試料台、104…試料、105…永久磁石、106…ヨーク、107…コイル、108…磁束、109…Yテーブル、110…Y軸ガイド、111…Xテーブル、112…推力、113…電流の向き、114…X軸ガイド、302…可動方向、401…磁気吸引力、402…ガイドヨーク、403…バックヨーク、501…Z軸モータのコイル、502…Z軸モータの永久磁石、503…Y軸モータのコイル、504…Y軸モータのヨーク、505…X軸モータのコイル、506…X軸モータのヨーク、507…水冷配管、508…水冷ジャケット、509…トップテーブル支持柱、514…Z軸モータのガイドヨーク、701…駆動中心および浮上部の重心高さ、702…重心、801…スケールヘッド、802…スケールプレート、803…3D複合モータのヨーク、804…3D複合モータのXYコイル、805…拡大範囲、901…コイルモールド、902…X軸推力用コイル、903…Y軸推力用コイル、904…Z軸推力用コイル、905…X軸推力用永久磁石、906…Y軸推力用永久磁石、907…X軸推力用コイルのU相用の配線、908…X軸推力用コイルのV相用の配線、909…X軸推力用コイルのW相用の配線、910…Y軸推力用コイルの配線、911…コイル突き出し長さ、951…真空チャンバ、952…電子光学系鏡筒、953…制振マウント、954…レーザー干渉計、955…コントローラ、965…レーザー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14