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特開2024-157226超音波診断装置及び送信波形選択方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157226
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】超音波診断装置及び送信波形選択方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071457
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 諭
(72)【発明者】
【氏名】寺田 崇秀
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DE08
4C601DE14
4C601EE04
4C601HH04
4C601HH14
(57)【要約】
【課題】超音波診断装置において、生体内の状況に応じて送信波形のタイプが自動的に選択されるようにする。
【解決手段】奇関数送信信号又は偶関数送信信号の選択を経て、高調波成分を含む受信情報が生成される。スペクトル分析器36は、受信情報に基づいて生成された受信スペクトルを分析する。関数選択器38は、受信スペクトルの分析結果に基づいて、正規送受信過程で用いる送信信号のタイプとして、奇関数又は偶関数を選択する。試験送受信過程で奇関数送信信号及び偶関数送信信号の両方が選択されてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に対して超音波を送信し、前記被検者からの反射波を受信する超音波振動子と、
奇関数送信信号及び偶関数送信信号を選択的に出力する送信回路であって、試験送受信過程において、前記奇関数送信信号及び前記偶関数送信信号の内で少なくとも一方を試験送信信号として前記超音波振動子へ出力する送信回路と、
前記試験送受信過程において、前記超音波振動子による反射波の受信を経て生成された試験受信情報に基づいて、前記送信回路から出力される正規送信信号のタイプとして奇関数又は偶関数を選択する制御部と、
を含み、
前記正規送信信号のタイプとして前記奇関数が選択された場合には、前記送信回路から前記正規送信信号として前記奇関数送信信号が出力され、
前記正規送信信号のタイプとして前記偶関数が選択された場合には、前記送信回路から前記正規送信信号として前記偶関数送信信号が出力される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、
前記試験受信情報に基づいて受信スペクトルを生成する生成器と、
前記受信スペクトルを分析する分析器と、
前記分析器の分析結果に基づいて前記奇関数又は前記偶関数を選択する選択器と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2記載の超音波診断装置において、
前記受信スペクトルは、高周波数側ピークと低周波数側ピークを含み、
前記分析器は、前記高周波数側ピークと前記低周波数側ピークの間に生じる谷部分のレベルを特定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3記載の超音波診断装置において、
前記分析器は、前記谷部分のレベルを閾値と比較し、
前記選択器は、前記谷部分のレベルが前記閾値よりも高い場合に、前記試験送受信過程において選択された関数を正規送受信過程においても維持する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項4記載の超音波診断装置において、
前記谷部分のレベルが前記閾値よりも低い場合に、1回目の試験送受信で選択された関数とは異なる関数が選択された上で、2回目の試験送受信が実行され、
前記分析器は、2回の試験送受信の実行により生成された2つの受信信号スペクトルに含まれる2つの谷部分を比較し、
前記選択器は、前記2つの谷部分の比較の結果に基づいて、前記正規送信信号のタイプとして前記奇関数又は前記偶関数を選択する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項2記載の超音波診断装置において、
前記試験送信信号は、前記奇関数送信信号及び前記偶関数送信信号の内の一方である第1試験送信信号と、前記奇関数送信信号及び前記偶関数送信信号の内の他方である第2試験送信信号と、を含み、
前記試験受信情報は、前記第1試験送信信号に対応する第1試験受信情報と、前記第2試験送信信号に対応する第2試験受信情報と、を含み、
前記受信スペクトルは、前記第1試験受信情報に基づいて生成された第1受信スペクトルと、前記第2試験受信情報に基づいて生成された第2受信スペクトルと、を含み、
前記選択器は、前記第1受信スペクトルの分析結果及び前記第2受信スペクトルの分析結果に基づいて、前記正規送信信号のタイプとして前記奇関数又は前記偶関数を選択する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項6記載の超音波診断装置において、
前記選択器は、前記第1受信スペクトルに含まれる第1谷部分と前記第2受信スペクトルに含まれる第2谷部分との比較の結果に基づいて、前記正規送信信号のタイプとして前記奇関数又は前記偶関数を選択する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記試験送信信号及び前記正規送信信号は、それぞれ、位相反転関係を有する2つの送信信号により構成され、
当該超音波診断装置は、前記試験送受信過程において前記2つの送信信号に対応する2つの受信信号の加算により前記試験受信情報を生成し、正規送受信過程において前記2つの送信信号に対応する2つの受信信号の加算により超音波画像形成用の正規受信情報を生成する処理回路を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項9】
奇関数送信信号及び偶関数送信信号の内で少なくとも一方が試験送信信号として超音波振動子へ出力される工程と、
前記超音波振動子による反射波の受信を経て生成された試験受信情報に基づいて、正規送信信号のタイプとして奇関数又は偶関数が選択される工程と、
を含み、
前記正規送信信号のタイプとして前記奇関数が選択された場合には、前記奇関数送信信号が前記正規送信信号として前記超音波振動子へ出力され、
前記正規送信信号のタイプとして前記偶関数が選択された場合には、前記偶関数送信信号が前記正規送信信号として前記超音波振動子へ出力される、
ことを特徴とする送信波形選択方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波診断装置及び送信波形選択方法に関し、特に、ハーモニックイメージングのための送信波形の選択に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の超音波検査では超音波診断装置が用いられる。超音波診断装置は、一般に、受信信号中に含まれる高調波成分を画像化する機能を有している。そのための代表的な方法として、パルスインバージョン法(PI法)が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
PI法においては、最初に、第1送信信号が超音波振動子へ供給され、これにより生体内へ第1超音波パルスが送信される。それに続いて、生体内からの第1反射波が超音波振動子で受信され、これにより第1受信信号が生成される。次に、第1送信信号に対して位相反転関係にある第2送信信号が超音波振動子へ供給され、これにより生体内へ第2超音波パルスが送信される。それに続いて、生体内からの第2反射波が超音波振動子で受信され、これにより第2受信信号が生成される。第1受信信号と第2受信信号とを加算することにより、基本波成分が抑圧されつつ、高調波成分(特に二次高調波成分)が抽出される。加算により生成された受信情報(高調波成分を支配的に含む加算受信信号)に基づいて、超音波画像としてハーモニックイメージング画像が生成される。
【0004】
なお、生体組織に由来する高調波成分を画像化するティシューハーモニックイメージング、及び、生体内に注入された造影剤に由来する高調波成分を画像化するコントラストハーモニックイメージングが知られている。
【0005】
従来の超音波診断装置において、PI法の下で生成される送信信号(第1送信信号及び第2送信信号)は、通常、奇関数型送信信号及び偶関数型送信信号のいずれか一方である。生体内の状況に応じて、送信波形のタイプ(奇関数又は偶関数)を適応的に選択することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-217944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、生体内の状況に応じて送信波形のタイプを選択できる超音波診断装置を提供することにある。あるいは、本開示の目的は、送信波形のタイプの選択により超音波画像の画質を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る超音波診断装置は、被検者に対して超音波を送信し、前記被検者からの反射波を受信する超音波振動子と、奇関数送信信号及び偶関数送信信号を選択的に出力する送信回路であって、試験送受信過程において、前記奇関数送信信号及び前記偶関数送信信号の内で少なくとも一方を試験送信信号として前記超音波振動子へ出力する送信回路と、前記試験送受信過程において、前記超音波振動子による反射波の受信を経て生成された試験受信情報に基づいて、前記送信回路から出力される正規送信信号のタイプとして奇関数又は偶関数を選択する制御部と、を含み、前記正規送信信号のタイプとして前記奇関数が選択された場合には、前記送信回路から前記正規送信信号として前記奇関数送信信号が出力され、前記正規送信信号のタイプとして前記偶関数が選択された場合には、前記送信回路から前記正規送信信号として前記偶関数送信信号が出力される、ことを特徴とする。
【0009】
本開示に係る送信波形選択方法は、奇関数送信信号及び偶関数送信信号の内で少なくとも一方が試験送信信号として超音波振動子へ出力される工程と、前記超音波振動子による反射波の受信を経て生成された試験受信情報に基づいて、正規送信信号のタイプとして奇関数又は偶関数が選択される工程と、を含み、前記正規送信信号のタイプとして前記奇関数が選択された場合には、前記奇関数送信信号が前記正規送信信号として前記超音波振動子へ出力され、前記正規送信信号のタイプとして前記偶関数が選択された場合には、前記偶関数送信信号が前記正規送信信号として前記超音波振動子へ出力される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、生体内の状況に応じて送信波形のタイプを選択できる。あるいは、本開示によれば、送信波形のタイプの選択により超音波画像の画質を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
図2】送信回路の構成例を示す図である。
図3】偶関数送信信号を含む第1波形セットを示す図である。
図4】奇関数送信信号を含む第2波形セットを示す図である。
図5】偶関数送信スペクトルを含む第1スペクトルセットを示す図である。
図6】奇関数送信スペクトルを含む第2スペクトルセットを示す図である。
図7】試験受信情報を抽出するための幾つかの参照領域を示す図である。
図8】第1動作例を示すフローチャートである。
図9】第2動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る超音波診断装置は、超音波振動子、送信回路、及び、制御部を有する。超音波振動子は、被検者に対して超音波を送信し、被検者からの反射波を受信する。送信回路は、奇関数送信信号及び偶関数送信信号を選択的に出力する回路である。より詳しくは、送信回路は、試験送受信過程において、奇関数送信信号及び偶関数送信信号の内で少なくとも一方を試験送信信号として超音波振動子へ出力する。制御部は、試験送受信過程において、超音波振動子による反射波の受信を経て生成された試験受信情報に基づいて、送信回路から出力される正規送信信号のタイプとして奇関数又は偶関数を選択する。正規送信信号のタイプとして奇関数が選択された場合には、送信回路から正規送信信号として奇関数送信信号が出力される。正規送信信号のタイプとして偶関数が選択された場合には、送信回路から正規送信信号として偶関数送信信号が出力される。
【0014】
後に説明するように、生体内において顕著な位相シフト(受信スペクトルに無視し得ない影響を与える位相回り)が生じないならば、偶関数送信信号を使用した方が有利である。一方、生体内において顕著な位相シフトが生じるならば、奇関数送信信号を使用した方が有利である。すなわち、生体内の状況に適合する送信信号タイプは生体内の状況に応じて変化する。生体内において位相シフトが生じるのか否か、位相シフトがどの程度生じるのかは、生体内における組織の性状や構造、生体内における音響的状況、等によって変化すると考えられる。そこで、上記構成は、被検者内の状況が反映された試験受信情報に基づいて正規送信信号のタイプを選択するものである。よって、上記構成によれば、超音波画像の画質を高められる。
【0015】
水平軸としての時間軸と時間軸上の原点を通過する垂直軸(振幅軸に平行な軸)とで定義される座標系において、奇関数は、原点に対して対称な関数であり、その代表例としてサイン関数が挙げられる。偶関数は、原点を通過する垂直軸に対して対称な関数であり、その代表例としてコサイン関数が挙げられる。奇関数送信信号は、奇関数に相当する又は奇関数の性質を帯びた波形を有する送信信号であり、偶関数送信信号は、偶関数に相当する又は偶関数の性質を帯びた波形を有する送信信号である。
【0016】
試験送受信は、正規送受信に先立って実施される送受信である。試験送受信により得られた試験受信情報に基づいて超音波画像が形成されてもよい。試験受信情報は、後述する実施形態において、上記PI法に基づいて取得された2つの受信信号の加算により生成される。PI法以外の高調波成分抽出方法により試験受信情報が生成されてもよい。基本波成分を画像化する場合において、生体内における位相シフトが整相加算後の受信信号に現れる限りにおいて、整相加算後の受信信号が試験受信情報として利用されてもよい。
【0017】
実施形態において、制御部は、試験受信情報に基づいて受信スペクトルを生成する生成器と、受信スペクトルを分析する分析器と、分析器の分析結果に基づいて奇関数又は偶関数を選択する選択器と、を含む。受信スペクトルには、送信信号のタイプが反映され且つ被検体内での位相シフトの有無又は程度が反映される。受信スペクトルを参照することにより、現在選択されている送信信号のタイプが適切なものであるか否かを判断することが可能となる。
【0018】
実施形態において、受信スペクトルは、高周波数側ピークと低周波数側ピークを含む。分析器は、高周波数側ピークと低周波数側ピークの間に生じる谷部分のレベルを特定する。生体内の状況に応じて、2つのピークに間に生じる谷部分の位置は変化し、且つ、谷部分のレベル(底レベル)も変化する。よって、最初に、受信スペクトルに含まれる2つのピークを特定し、次に、それらを基準として、谷部分を特定するのが望ましい。例えば、2つのピークの間にある最小レベルが谷部分のレベルとして特定される。なお、受信スペクトルが1つのピークしか有しておらず、その受信スペクトルが生体内の状況に応じて変化する部分を有する場合、当該部分を参照することにより、送信信号のタイプを選択し得る。
【0019】
後述するように、生体内において顕著な位相シフトが生じない場合、偶関数送信信号の選択を経て生成された受信スペクトルに含まれる谷部分のレベルは、通常、奇関数送信信号の選択を経て生成された受信スペクトルに含まれる谷部分のレベルよりも高い。よって、その場合には、送信信号のタイプとして偶関数を選択することが望まれる。
【0020】
一方、生体内において顕著な位相シフトが生じる場合、偶関数送信信号の選択を経て生成された受信スペクトルに含まれる谷部分のレベルは、通常、奇関数送信信号の選択を経て生成された受信スペクトルに含まれる谷部分のレベルよりも低い。よって、その場合には、送信信号のタイプとして奇関数を選択することが望まれる。
【0021】
実施形態において、分析器は、谷部分のレベルを閾値と比較する。選択器は、谷部分のレベルが閾値よりも高い場合に、試験送受信時に選択された関数を正規送受信過程においても維持する。受信スペクトルに含まれる2つのピークの内で、一方のピークのレベルに基づいて閾値(又は関数維持条件)が決定されてもよいし、両方のピークのレベルに基づいて閾値(又は関数維持条件)が決定されてもよい。閾値として第1閾値及び第2閾値が定められてもよい。
【0022】
実施形態において、谷部分のレベルが閾値よりも低い場合に、1回目の試験送受信で選択された関数とは異なる関数が選択された上で、2回目の試験送受信が実行される。分析器は、2回の試験送受信の実行により生成された2つの受信信号スペクトルに含まれる2つの谷部分を比較する。選択器は、2つの谷部分の比較の結果に基づいて、正規送信信号のタイプとして奇関数又は偶関数を選択する。
【0023】
実施形態において、試験送信信号は、奇関数送信信号及び偶関数送信信号の内の一方である第1試験送信信号と、奇関数送信信号及び偶関数送信信号の内の他方である第2試験送信信号と、を含む。試験受信情報は、第1試験送信信号に対応する第1試験受信情報と、第2試験送信信号に対応する第2試験受信情報と、を含む。受信スペクトルは、第1試験受信情報に基づいて生成された第1受信スペクトルと、第2試験受信情報に基づいて生成された第2受信スペクトルと、を含む。選択器は、第1受信スペクトルの分析結果及び第2受信スペクトルの分析結果に基づいて、正規送信信号のタイプとして奇関数又は偶関数を選択する。
【0024】
上記構成は、試験送受信過程において、2回の試験送受信を行って、それらの結果を比較するものである。常に2回の試験送受信を行う第1動作、及び、1回目の試験送受信の結果に基づいて2回目の試験送受信の要否を判断する第2動作、がユーザーにより選択されてもよいし、状況に応じて自動的に選択されてもよい。
【0025】
実施形態において、選択器は、第1受信スペクトルに含まれる第1谷部分と第2受信スペクトルに含まれる第2谷部分との比較の結果に基づいて、正規送信信号のタイプとして奇関数又は偶関数を選択する。例えば、第1谷部分のレベルと第2谷部分のレベルとが比較されてもよい。
【0026】
実施形態において、試験送信信号及び正規送信信号は、それぞれ、位相反転関係を有する2つの送信信号により構成される。超音波診断装置は、試験送受信過程において2つの送信信号に対応する2つの受信信号の加算により試験受信情報を生成し、正規送受信過程において2つの送信信号に対応する2つの受信信号の加算により超音波画像形成用の正規受信情報を生成する処理回路を有する。この構成は、PI法に従って、1回の試験送受信時に、正相送受信及び逆相送受信を順次実行するものである。
【0027】
実施形態に係る送信波形選択方法は、第1工程及び第2工程を有する。第1工程では、奇関数送信信号及び偶関数送信信号の内で少なくとも一方が試験送信信号として超音波振動子へ出力される。第2工程では、超音波振動子による反射波の受信を経て生成された試験受信情報に基づいて、正規送信信号のタイプとして奇関数又は偶関数が選択される。正規送信信号のタイプとして奇関数が選択された場合には、奇関数送信信号が正規送信信号として超音波振動子へ出力される。正規送信信号のタイプとして偶関数が選択された場合には、偶関数送信信号が正規送信信号として超音波振動子へ出力される。
【0028】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る超音波診断装置が示されている。この超音波診断装置は、例えば、病院等の医療機関において設置され、被検者の超音波検査で用いられるものである。実施形態に係る超音波診断装置は、PI法に従ってハーモニックイメージングを実行する機能を有する。他の方法に従ってハーモニックイメージングが実行されてもよい。
【0029】
図1において、図示されていない超音波プローブは、超音波振動子である振動素子アレイ10を有する。振動素子アレイ10は、一次元に配列された複数の振動素子により構成される。振動素子アレイ10により超音波ビーム(送信ビーム及び受信ビーム)が形成される。超音波ビームは電子走査される。電子走査方式として、電子リニア走査方式、電子セクタ走査方式、等が知られている。超音波プローブ内に二次元振動素子アレイが設けられてもよい。
【0030】
PI法の実行時には、個々の送信アドレスごとに、2回の送受信が連続して実行される。例えば、最初に正相送受信が実行され(符号12を参照)、次に逆相送受信が実行される(符号14を参照)。正相送受信においては正相送信信号が使用され、逆相送受信においては逆相送信信号が使用される。正相送信信号と逆相送信信号は位相反転関係にあり、つまり、それらの送信信号間の位相差はπである。送信順序を逆にしてもよい。
【0031】
実施形態においては、後に詳述するように、正規送受信過程に先立って試験送受信過程が実行される。超音波検査の開始時に又は途中で、試験送受信過程が実行される。後述する第1動作例では、第1試験送受信の実行後に、必要に応じて、第2試験送受信が実行される。後述する第2動作例では、第1試験送受信及び第2試験送受信が連続して実行される。いずれの場合においても、第1試験送受信と第2試験送受信の間で、使用する関数(奇関数,偶関数)が切り換えられる。
【0032】
送信回路16は送信ビームフォーマーであり、具体的には、送信回路16は、振動素子アレイ10に対して複数の送信信号(送信駆動信号)を並列的に出力する電子回路である。送信回路16は、並列配置された複数の送信器を有する。各送信器は、奇関数送信信号ペア及び偶関数送信信号ペアを選択する機能を有する。後述するように、奇関数送信信号ペアは、正相奇関数送信信号(正相奇波形)及び逆相奇関数送信信号(逆相奇波形)により構成される。偶関数送信信号ペアは、正相偶関数送信信号(正相偶波形)及び逆相偶関数送信信号(逆相偶波形)により構成される。
【0033】
以下においては、場合により、試験送受信において選択された送信信号を試験送信信号と称し、また、正規送受信において選択された送信信号を正規送信信号と称する。
【0034】
受信回路18は受信ビームフォーマーであり、具体的には、受信回路18は、振動素子アレイ10から並列的に出力された複数の受信信号に対して整相加算を適用し、これにより整相加算後の受信信号(受信ビームデータ)を生成する電子回路である。受信回路18は、並列配置された複数の受信器、及び、複数の受信器の出力信号を加算する加算器を有する。各受信器は、プリアンプ及び遅延器を有する。超音波ビームの電子走査に伴って、電子走査方向に並ぶ複数の受信ビームデータが受信回路18から順次出力される。
【0035】
PI法が実行される場合、受信回路18から、受信ビームアドレスごとに、整相加算後の2つの受信ビームデータa,bが出力される。例えば、受信ビームデータaは、正相送信信号に対応するものであり、受信ビームデータbは、逆相送信信号に対応するものである。
【0036】
PI処理回路20は、PI法が実行される場合に機能する電子回路である。PI処理回路20は、2つの受信ビームデータa,bを加算し、高調波成分を支配的に有する加算受信信号を生成する。すなわち、2つの受信ビームデータa,bの加算により、基本波成分が抑圧されつつ高調波成分が抽出される。以下、加算受信信号を受信情報と称する。試験受信過程において、第1試験送受信及び第2試験送受信が順次実行される場合、PI処理回路から第1受信情報及び第2受信情報が順次出力されることになる。
【0037】
通常の送受信過程(正規送受信過程)において、PI処理部から出力された受信情報は、信号処理回路22に入力される。信号処理回路は、バンドパスフィルタ(BPF)、検波回路、対数変換回路等を有する電子回路である。BPFは、高調波成分を通過させる通過帯域特性を有する電子回路である。検波回路は、BPFから出力された受信情報に対して包絡線検波を適用する。対数変換器は、検波回路から出力された受信情報に対して対数変換を適用する。
【0038】
デジタルスキャンコンバータ(DSC)24は、信号処理回路から順次出力される複数の受信情報に基づいて超音波画像を形成する画像形成部である。DSCは、座標変換機能、画素補間機能、等を有する。超音波画像は例えばBモード断層画像である。他の超音波画像が形成されてもよい。例えば、血流画像が形成されてもよい。
【0039】
表示処理部26は、カラー変換機能、画像合成機能等を有する。表示器28には、超音波画像が表示される。PI処理回路20、信号処理回路22、DSC24、及び、表示処理部26がそれぞれプロセッサにより構成されてもよい。それらの機能が、後述するCPUにより実行されてもよい。表示器28は、有機EL表示デバイス、液晶表示器等により構成される。
【0040】
演算制御部30は、プログラムを実行するCPUにより構成される。演算制御部30により、図1に示されている各構成要素の動作が制御される。図1においては、演算制御部30が有する代表的な複数の機能が複数のブロックにより表現されている。実施形態に係る演算制御部30は、スペクトル生成器34、スペクトル分析器36及び関数選択器38として機能する。
【0041】
スペクトル生成器34、スペクトル分析器36及び関数選択器38は、試験送受信過程において動作する。スペクトル生成器34は、受信情報の周波数解析により受信スペクトルを生成する。その際にはFFT演算が実行される。試験送受信過程において2回の試験送受信が実行される場合、スペクトル生成器34は、第1受信情報に基づいて第1受信スペクトルを生成し、第2受信情報に基づいて第2受信スペクトルを生成する。
【0042】
スペクトル分析器36は、受信スペクトルを分析するものであり、具体的には、スペクトル分析器36は、受信スペクトルに含まれる2つのピーク(低周波数側の第1ピーク及び高周波数側の第2ピーク)を特定し、続いて、2つのピークの間の谷部分のレベルを特定する。実施形態においては、スペクトル分析器36は、2つのピークの間にある最小値を検出し、それを谷部分のレベルとして特定する。スペクトル分析器36は、谷部分のレベルつまり最小値を評価する機能も有している。後述する第1動作例において、スペクトル分析器36は、第1試験送受信後に、第2試験送受信を行うか否かを判定する機能も有している。
【0043】
関数選択器38は、スペクトル分析器36の分析結果に基づいて、正規送受信過程において使用する送信信号のタイプを選択する機能を有している。関数選択器38が送信信号のタイプとして奇関数を選択した場合、送信回路16から奇関数送信信号(実際には奇関数送信信号ペア)が出力される。関数選択器38が送信信号のタイプとして偶関数を選択した場合、送信回路16から偶関数送信信号(実際には偶関数送信信号ペア)が出力される。関数選択器38は、試験送受信過程において、送信信号のタイプを選択する機能も有する。
【0044】
スペクトル生成器34、スペクトル分析器36及び関数選択器38がそれぞれ専用プロセッサ又は専用電子回路により構成されてもよい。スペクトル生成器34が生成した受信スペクトルが表示器28に表示されてもよい。関数選択器38が選択した関数(奇関数、偶関数)が表示器28に表示されてもよい。
【0045】
図2には、送信回路16の構成例が示されている。送信回路16は、複数の送信器39を有する。複数の送信器39は、振動素子アレイ10を構成する複数の振動素子10aに接続されている。
【0046】
図示の構成例において、各送信器39は、波形生成器40、遅延回路42、及び、リニアアンプ44を有する。各波形生成器40は、第1送信信号ペア及び第2送信信号ペアを生成する機能を有する。第1送信信号ペアは、奇関数送信信号ペアであり、それは正相奇関数送信信号(正相奇波形)A1及び逆相奇関数送信信号(逆相奇波形)A2により構成される。それらの送信信号は位相反転関係にある。第2送信信号ペアは、偶関数送信信号ペアであり、それは正相偶関数送信信号(正相偶波形)B1及び逆相偶関数送信信号(逆相偶波形)B2により構成される。それらの送信信号も位相反転関係にある。
【0047】
上述した関数選択器の制御に従って、各波形生成器40から第1送信信号ペア又は第2送信信号ペアが出力される。実際には、いずれのペアが出力される場合においても、例えば、最初に正相送信信号が出力され、続いて、逆相送信信号が出力される。
【0048】
各遅延回路42は、各波形生成器から出力された送信信号に対して、送信ビームを形成するための遅延処理を適用する。各リニアアンプ44は遅延処理後の各送信信号を増幅する。複数の送信信号が複数の振動素子10aに供給されると、生体内へ超音波が放射される。生体内からの反射波は複数の振動素子10aにより受信される。これにより、複数の振動素子10aから受信回路18へ複数の受信信号が並列的に出力される。
【0049】
図3には、コンピュータシミュレーションにより生成された波形セット、具体的には偶関数送信信号を含む第1波形セットが示されている。横軸は時間軸であり、縦軸は振幅軸である。符号56は時間軸上の原点を示している。
【0050】
符号50は、偶関数送信信号(正相偶波形又は逆相偶波形)を示している。符号52は、偶関数送信信号50を振動素子に与えることにより生成される超音波信号を示している。符号54は、偶関数送信信号50に由来する受信情報(PI処理で生成される加算受信信号)を示している。受信情報54の計算に際して、生体内での位相シフトは考慮されていない。
【0051】
図4には、コンピュータシミュレーションにより生成された波形セット、具体的には奇関数送信信号を含む第2波形セットが示されている。上記同様に、横軸は時間軸であり、縦軸は振幅軸である。符号64は時間軸上の原点を示している。
【0052】
符号58は、奇関数送信信号(正相奇波形又は逆相奇波形)を示している。符号60は、奇関数送信信号58を振動素子に与えることにより生成される超音波信号を示している。符号62は、奇関数送信信号58に由来する受信情報を示している。受信情報62の計算に際して、生体内での位相シフトは考慮されていない。
【0053】
図5には、コンピュータシミュレーションにより生成されたスペクトルセット、具体的には、上記の偶関数送信信号を含む第1波形セットに対応する第1スペクトルセットが示されている。横軸は周波数軸である。縦軸はゲイン(パワー)を示している。
【0054】
符号66は、偶関数送信信号の送信スペクトルを示している。符号68は、偶関数送信信号を振動素子に与えることにより生成される超音波信号の送信スペクトルを示している。符号70は、偶関数送信信号に由来する受信情報の受信スペクトルを示している。ここでは、生体内での位相シフトは考慮されていない。
【0055】
受信スペクトル70は、低周波数側ピークとしての第1ピークp1及び高周波数側ピークとしての第2ピークp2を有する。また、受信スペクトル70は、第1ピークp1と第2ピークp2との間の谷部分(落ち込み部分)p3を有する。L1は第1ピークp1のレベルを示しており、L2は第2ピークp2のレベルを示し、L3は谷部分のレベル(最小値)を示している。L3は、L1及びL2よりも低いが、比較的に大きい。すなわち、受信スペクトル70において、落ち込み部分の落ち込み量は比較的に小さい。
【0056】
なお、符号72は、バンドパスフィルタの通過帯域特性を示している。符号74は、BPF通過後の受信情報の受信スペクトルを示している。
【0057】
図6には、コンピュータシミュレーションにより生成されたスペクトルセット、具体的には、上記の奇関数送信信号を含む第2波形セットに対応する第2スペクトルセットが示されている。上記同様に、横軸は周波数軸であり、縦軸はゲイン(パワー)を示している。
【0058】
符号76は、奇関数送信信号の送信スペクトルを示している。符号78は、奇関数送信信号を振動素子に与えることにより生成される超音波信号の送信スペクトルを示している。符号80は、奇関数送信信号に由来する受信情報の受信スペクトルを示している。ここでは、生体内における位相シフトは考慮されていない。
【0059】
受信スペクトル80は、低周波数側ピークとしての第1ピークp4及び高周波数側ピークとしての第2ピークp5を有する。また、受信スペクトル80は、第1ピークp4と第2ピークp5との間の谷部分(落ち込み部分)p6を有する。L4は第1ピークp4のレベルを示しており、L5は第2ピークp5のレベルを示し、L6は谷部分のレベル(最小値)を示している。L6は、L4及びL5よりもかなり低い。すなわち、受信スペクトル80において、落ち込み部分の落ち込み量はかなり大きい。それを原因として超音波画像の画質低下が生じ得る。
【0060】
なお、符号82は、バンドパスフィルタの通過帯域特性を示している。符号84は、BPF通過後の受信情報の受信スペクトルを示している。
【0061】
生体内において、顕著な位相シフトが生じる場合、偶関数送信信号を使用したのにもかかわらず、図6に示したような受信スペクトルが生じ得る。すなわち、受信スペクトルにおいて大きな落ち込み部分が生じ得る。その場合には、奇関数送信信号を使用することが望まれる。すなわち、奇関数送信信号を使用すれば、図5に示したような良好な受信スペクトルを得られる。一方、生体内において、顕著な位相シフトが生じない場合、偶関数送信信号を使用することが望まれる。その場合、図5に示したような良好な受信スペクトルを得られる。
【0062】
生体内での位相シフトの有無や程度は、生体組織の性状や構造、超音波ビームの性質、等に依存する。そこで、実施形態においては、正規送受信に先立って試験的送受信が実行されている。すなわち、生体内の状況を反映した受信スペクトルの取得及び評価により最適な関数が選択されている。
【0063】
図7には、ビーム走査面90内に設定される幾つかの参照領域が例示されている。θは電子走査方向を示しており、rは深さ方向を示している。
【0064】
符号92は、第1例に係る二次元参照領域を示している。二次元参照領域92は、図7において、ビーム走査面90内の中央部に設定されているが、それが他の位置に設定されてもよい。符号94は、第2例に係る一次元参照領域を示している。一次元参照領域94は、図7において、ビーム走査面90の中心線C上に設定されているが、それが他の位置に設定されてもよい。
【0065】
二次元参照領域92又は一次元参照領域94から得られた受信情報(平均化又は積算された受信情報)に基づいて、受信スペクトルが生成される。なお、二次元参照領域92及び一次元参照領域94の位置は、自動的に又はマニュアルで設定される。それらのサイズも、自動的に又はマニュアルで設定される。ビーム走査面90内に複数の参照領域を設定し、参照領域ごとに最適な関数候補を判定し、複数の判定結果に基づいて正式送受信過程で使用する関数が判定されてもよい。
【0066】
図8には、第1動作例が示されている。S100は試験送受信過程を示し、S102は正規送受信過程を示している。
【0067】
S10では、奇関数送信信号を用いて第1試験送受信が実行される。これにより、超音波が生体内へ放射される。具体的には、S10では、正相奇関数送信信号及び逆相奇関数送信信号が順次選択される。
【0068】
S11では、生体内からの反射波の受信により受信情報が生成され、受信情報に基づいて受信スペクトルが生成される。具体的には、S11では、正相奇関数送信信号に対応する受信信号及び逆相奇関数送信信号に対応する受信信号が順次取得され、それら2つの受信信号の加算により第1受信情報が生成される。第1受信情報の周波数解析により第1受信スペクトルが生成される。S12では、第1受信スペクトルにおいて、2つのピークの間の最小値(第1最小値)が谷部分のレベルとして特定される。
【0069】
例えば、第1ピーク(低周波数側ピーク又は2つのピークの内で低い方)のレベルから-10dBに相当するレベルが第1閾値とされ、最小値が第1閾値を超える場合に、関数維持条件が満たされたと判定される。あるいは、第2ピーク(高周波数側ピーク又は2つのピークの内で高い方)のレベルから-20dBに相当するレベルが第2閾値として定められ、最小値が第1閾値及び第2閾値の両方を超える場合に、関数維持条件が満たされたと判定される。他の閾値又は他の条件が定められてもよい。
【0070】
S14では、関数維持条件が満たされたか否かが判断される。関数維持条件が満たされた場合、S15において、奇関数の選択が維持される。すなわち、正規送受信で使用する関数として、換言すれば、正規送信信号のタイプとして、奇関数が判断される。一方、S14において、関数維持条件が満たされないと判断された場合、S16において、偶関数が選択された上で、第2試験送受信が実行される。具体的には、正相偶関数送信信号を用いた送受信及び逆相偶関数送信信号を用いた送受信が順次実行される。
【0071】
S18では、第2試験送受信により得られた第2受信情報に基づいて第2受信スペクトルが生成され、その第2受信スペクトルが分析される。具体的には、第2受信スペクトルにおいて2つのピークの間の最小値(第2最小値)が特定される。続いて、S18では、第1最小値及び第2最小値が比較される。ここでは、第1最小値をAと表現し、第2最小値をBと表現する。
【0072】
S20において、第1最小値Aが第2最小値Bよりも大きいと判断された場合、S22において、正規送受信で使用する関数として、つまり、正規送信信号のタイプとして、奇関数が選択される。S20において、第2最小値Bが第1最小値Aよりも大きいと判断された場合(あるいは第2最小値Bが第1最小値A以上であると判断された場合)、S24において、正規送受信で使用する関数として、つまり、正規送信信号のタイプとして、偶関数が選択される。
【0073】
S26では、以上のように判断された関数(タイプ)に対応する送信信号を用いて正規送受信が実行される。すなわち、奇関数が選択された場合には、正相奇関数送信信号及び逆相奇関数送信信号が使用される。一方、偶関数が選択された場合には、正相偶関数送信信号及び逆相偶関数送信信号が使用される。S26においては、正規送受信により得られる正規受信情報に基づいて超音波画像が形成される。
【0074】
図9には、第2動作例が示されている。S104は試験送受信過程を示し、S106は正規送受信過程を示している。
【0075】
S30Aでは、奇関数が選択され、奇関数送信信号ペアを利用して第1試験送受信が実行される。S30Bは、S30Aの前又は後に実行される。S30Bでは、偶関数送信信号ペアを利用して第2試験送受信が実行される。
【0076】
S32Aでは、奇関数送信信号ペアに由来する第1受信情報が生成され、続いて、第1受信情報から第1受信スペクトルが生成される。S32Bでは、偶関数送信信号ペアに由来する第2受信情報が生成され、続いて、第2受信情報から第2受信スペクトルが生成される。
【0077】
S34Aでは、第1受信スペクトルが分析され、具体的には、第1最小値Aが特定される。S34Bでは、第2受信スペクトルが分析され、具体的には、第2最小値Bが特定される。S36では、第1最小値Aと第2最小値Bが相互に比較される。
【0078】
第1最小値Aの方が第2最小値Bよりも大きい場合、S38Aにおいて、正規送受信で使用する関数として、つまり、正規送信信号のタイプとして、奇関数が選択される。第2最小値の方が第1最小値よりも大きい場合(あるいは第2最小値が第1最小値以上である場合)、S38Bにおいて、正規送受信で使用する関数として、つまり、正規送信信号のタイプとして、偶関数が選択される。
【0079】
S40では、以上のように選択された関数に従って正規送受信が実行される。これにより得られる受信情報(正規受信情報)に基づいて超音波画像が形成される。
【0080】
上記の第1動作例及び第2動作例において、試験送受信過程において、最初に偶関数が選択され、次に奇関数が選択されもよい。第1動作例において、過去の選択実績に基づいて、最初に選択される関数が決定されてもよい。例えば、奇関数の選択数が偶関数の選択数よりも大きい場合、最初に奇関数が選択されてもよい。
【0081】
上記の第1動作例及び第2動作例における試験送受信過程は、例えば、ユーザーが所定ボタンを操作することによって開始され、フリーズ解除の時点で自動的に開始され、プローブが体表から離れたことが判断された場合に自動的に開始され、送信周波数がマニュアルで又は自動的に変更された場合に開始され、あるいは、一定の時間間隔で自動的に開始される。
【0082】
上記の第1動作例及び第2動作例において、第1最小値A及び第2最小値Bのいずれも一定の閾値を超えない場合、ユーザーに対して送信周波数の変更が促されてもよい。その場合には表示器に所定のメッセージが表示されてもよい。あるいは、第1最小値A及び第2最小値Bのいずれも一定の閾値を超えない場合、自動的に送信周波数が変更されてもよい。表示器には、超音波画像と共に、必要に応じて、選択された関数が表示され、また、第1受信スペクトル及び第2受信スペクトルが表示される。
【0083】
受信スペクトルにおいて谷部分が生じる周波数範囲を絞り込める場合、その周波数範囲に適合したBPFを用いて谷部分に相当する信号成分を抽出してもよい。その場合、抽出した信号成分の大きさに基づいて関数を選択し得る。受信スペクトルが1つのピークしか有せず、その受信スペクトルが被検者内の状況に応じて変化する特定の部分を有する場合、その特定の部分の抽出及び参照により、送信信号のタイプが選択されてもよい。BPF等を用いて特定の部分に相当する信号成分が抽出されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10 振動素子アレイ、16 送信回路、18 受信回路、20 PI処理回路、30 演算制御部、34 スペクトル生成器、36 スペクトル分析器、38 関数選択器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9