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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157227
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241030BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241030BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20241030BHJP
【FI】
H01L21/78 B
H01L21/78 V
H01L21/78 Q
H01L21/304 631
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071458
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩平
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CA06
4E168DA02
4E168HA01
4E168JA12
5F057AA01
5F057BA11
5F057BB03
5F057CA14
5F057CA32
5F057DA11
5F057DA22
5F057DA31
5F057FA28
5F057FA30
5F063AA02
5F063CB03
5F063CB07
5F063CB24
5F063CB28
5F063CB29
5F063CC05
5F063DD27
5F063DD64
5F063DD81
5F063DD86
5F063DE03
5F063DE34
5F063DG03
5F063FF01
5F063FF33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】第一の面と反対側の第二の面とを有し、該第一の面に分割予定ラインを備えたウエーハを個々のチップに分割するウエーハの加工方法を提供する。
【解決手段】レーザー光線照射手段23における加工方法は、ウエーハ10の第一の面10aに保護部材を配設する工程と、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線LBの集光点をウエーハの第二の面10b側から内部に位置付けて照射して、第一の面に近い側に分割の起点となる第一の改質層を形成する工程と、ウエーハに外力を付与してウエーハを個々のチップに分割する工程と、改質層形成工程の前に、改質層形成によってウエーハの第一の面側が膨張して、生じる湾曲を抑制すべく透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をウエーハの第二の面に近い側に位置付けて少なくとも環状の改質層110aを含む第二の改質層を形成する工程と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の面と反対側の第二の面とを有し、該第一の面に分割予定ラインを備えたウエーハを個々のチップに分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの第一の面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、
ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をウエーハの第二の面側から分割予定ラインの内部に位置付けて照射して第一の面に近い側に分割の起点となる第一の改質層を形成する改質層形成工程と、
ウエーハに外力を付与してウエーハを個々のチップに分割する分割工程と、
該改質層形成工程の前に、該改質層形成工程によってウエーハの第一の面側が膨張して第二の面側に生じる湾曲を抑制すべく、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をウエーハの第二の面に近い側に位置付けて照射して、少なくとも環状の改質層を含む第二の改質層を形成する湾曲抑制工程と、を含み構成されるウエーハの加工方法。
【請求項2】
該湾曲抑制工程において形成される第二の改質層は、環状に形成される改質層に加え、放射状に形成される改質層を含む請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該分割工程は、ウエーハの第二の面側を研削して薄化すると共に分割予定ラインの内部に形成された該第一の改質層を起点としてウエーハを個々のチップに分割する請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項4】
ウエーハの第一の面には複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが形成され、
該湾曲抑制工程の第二の改質層は、該外周余剰領域に対応する領域に形成される請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一の面と反対側の第二の面とを有し、該第一の面に分割予定ラインを備えたウエーハを個々のチップに分割するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、レーザー加工装置によって分割の起点が形成されて個々のチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
レーザー加工装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを相対的に加工送りする送り手段と、を含み構成されていて、高精度に分割予定ラインの内部に分割の起点となる改質層を形成することができる(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-000931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ウエーハの裏面側から分割予定ラインに沿ってレーザー光線の集光点をウエーハの表面に近い側に位置付けて照射して改質層を形成すると、ウエーハの表面側が全体的に膨張して、ウエーハに表面側に凸となり裏面側が凹となる湾曲が生じて、チャックテーブルにウエーハが適切に保持されないことから、レーザー光線の集光点が適正な位置に位置付けられず、所望の位置に正確に改質層を形成できないという問題が生じる。当該問題は、ウエーハの表面に近い側に改質層を形成すると共に、該改質層から表面側の分割予定ラインに至るクラックを伸展させる場合に特に影響が大きくなる。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、レーザー光線の集光点をウエーハの表面に近い側に位置付けて照射して改質層を形成し分割の起点とする場合であっても、ウエーハの表面側が膨張し、裏面側に湾曲が生じて、レーザー光線の集光点を適正な位置に位置付けられなくなるという問題を解消できるウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、第一の面と反対側の第二の面とを有し、該第一の面に分割予定ラインを備えたウエーハを個々のチップに分割するウエーハの加工方法であって、ウエーハの第一の面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をウエーハの第二の面側から分割予定ラインの内部に位置付けて照射して第一の面に近い側に分割の起点となる第一の改質層を形成する改質層形成工程と、ウエーハに外力を付与してウエーハを個々のチップに分割する分割工程と、該改質層形成工程の前に、該改質層形成工程によってウエーハの第一の面側が膨張して第二の面側に生じる湾曲を抑制すべく、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をウエーハの第二の面に近い側に位置付けて照射して、少なくとも環状の改質層を含む第二の改質層を形成する湾曲抑制工程と、を含み構成されるウエーハの加工方法が提供される。
【0008】
該湾曲抑制工程において形成される第二の改質層は、環状に形成される改質層に加え、放射状に形成される改質層を含むことが好ましい。また、該分割工程は、ウエーハの第二の面側を研削して薄化すると共に分割予定ラインの内部に形成された該第一の改質層を起点としてウエーハを個々のチップに分割する工程であることが好ましい。さらに、該ウエーハの第一の面には複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが形成され、該湾曲抑制工程の第二の改質層は、該外周余剰領域に対応する領域に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウエーハの加工方法は、第一の面と反対側の第二の面とを有し、該第一の面に分割予定ラインを備えたウエーハを個々のチップに分割するウエーハの加工方法であって、ウエーハの第一の面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をウエーハの第二の面側から分割予定ラインの内部に位置付けて照射して第一の面に近い側に分割の起点となる第一の改質層を形成する改質層形成工程と、ウエーハに外力を付与してウエーハを個々のチップに分割する分割工程と、該改質層形成工程の前に、該改質層形成工程によってウエーハの第一の面側が膨張して第二の面側に生じる湾曲を抑制すべく、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をウエーハの第二の面に近い側に位置付けて照射して、少なくとも環状の改質層を含む第二の改質層を形成する湾曲抑制工程と、を含み構成されることから、改質層形成工程を実施することにより発生するウエーハの第一の面側が凸となり第二の面側が凹となる湾曲を生じさせる力が抑制され、改質層形成工程を実施する際に、レーザー光線の集光点が適正な位置に位置付けられず、第一の改質層が所望の位置に形成されないという問題が解消するウエーハの加工方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】保護部材配設工程の実施態様を示す斜視図である。
図2】レーザー加工装置のチャックテーブルにウエーハを保持する態様を示す斜視図である。
図3】(a)湾曲抑制工程の実施態様を示す斜視図、(b)(a)に示す湾曲抑制工程におけるウエーハの一部拡大断面図である。
図4】(a)第二の改質層の形態を示す概略平面図及び一部拡大断面図、(b)第二の改質層の別の形態を示す概略平面図及び一部拡大断面図である。
図5】(a)図4(a)に示す第二の改質層に放射状の改質層を形成した形態を示す概略平面図、(b)図4(b)に示す第二の改質層に放射状の改質層を形成した形態を示す概略平面図である。
図6】(a)改質層形成工程の実施態様を示す斜視図、(b)(a)に示す実施態様の一部拡大断面図である。
図7】(a)分割工程の実施態様を示す斜視図、(b)分割工程によって個々のチップに分割されたウエーハを示す斜視図である。
図8】テープ貼り替え工程の実施態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に基づいて構成されるウエーハの加工方法に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0012】
本実施形態のウエーハの加工方法によって加工される被加工物は、例えば、図1に示すような第一の面(以下「表面」という)10aと、反対側の第二の面(以下「裏面」という)10bと、を有するシリコン(Si)のウエーハ10である。図示のウエーハ10の表面10aには、複数のデバイス12が分割予定ライン14によって区画され形成された中央寄りのデバイス領域16Aと、該デバイス領域16Aを囲繞する外周余剰領域16Bとが形成されている。なお、図1では、デバイス領域16Aと外周余剰領域16Bとを区分する境界線15が一点鎖線で示されているが、該境界線15は、説明の都合上記載したものであり、実際にウエーハ10に形成されたものではない。
【0013】
上記したウエーハ10を用意したならば、図1に示すように、ウエーハ10の表面10aに、デバイス12を保護する保護部材として機能する保護テープTを配設する(保護部材配設工程)。
【0014】
上記した保護部材配設工程を実施して保護テープTと一体とされたウエーハ10に対し、後述する第一の改質層を形成する改質層形成工程と、該第一の改質層を分割の起点として個々のチップに分割する分割工程を実施する。ここで、本実施形態では、該改質層形成工程によって形成される第一の改質層によってウエーハ10の表面10a側が膨張して裏面10b側に生じる凹状の湾曲が発生することを抑制すべく、該改質層形成工程を実施する前に、以下に説明する第二の改質層を形成する湾曲抑制工程を実施する。
【0015】
本実施形態の湾曲抑制工程を実施するに際し、上記したウエーハ10を、図2に示すレーザー加工装置20(一部のみを示している)に搬送し、保護テープT側を下方に、裏面10b側を上方に向けて、チャックテーブル21に載置する。チャックテーブル21は、枠体21bと、該枠体21bに囲繞された吸着チャック21aとを備えている。該吸着チャック21aは、通気性を有するポーラス部材によって形成され、枠体21bは、図示を省略する吸引手段に接続されている。該吸引手段を作動することにより、吸着チャック21aに負圧を生成して、ウエーハ10を吸引保持することができる。
【0016】
レーザー加工装置20は、上記したチャックテーブル21に加え、図3(a)に示すように、チャックテーブル21に保持されたウエーハ10にレーザー光線LBを照射するレーザー光線照射手段23を備え、さらに、該チャックテーブル21とレーザー光線照射手段23とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、チャックテーブル21とレーザー光線照射手段23とを相対的にX軸方向と直交するY軸方向に加工送りするY軸送り手段と、該保持手段を矢印R1で示す方向に回転させる回転駆動手段と、赤外線をチャックテーブル21に向けて照射すると共に反射した赤外線の反射光を受光することができる赤外線CCDカメラを含むアライメント手段と、を備えている(いずれも図示は省略する)。上記したレーザー光線照射手段23によって照射されるレーザー光線LBは、ウエーハ10を構成するシリコンに対して透過性を有する波長のレーザー光線である。
【0017】
上記のチャックテーブル21に吸引保持されたウエーハ10は、X軸送り手段によって上記のアライメント手段の直下に位置付けられて撮像され、後述する改質層形成工程によって第一の改質層が形成される加工位置、及びこの湾曲抑制工程によって形成される第二の改質層が形成される加工位置を検出する。検出された該加工位置の情報は、図示を省略する制御手段に記憶される。
【0018】
上記したアライメント手段によって検出された第二の改質層を形成する加工位置の情報に基づき、第二の改質層を形成する加工開始位置にレーザー光線照射手段23の集光器23aを位置付ける。なお、第二の改質層を形成する加工位置は、図3(a)に示すように、上記した外周余剰領域16Bに対応する領域に設定され、レーザー光線照射手段23の集光器23aを、外周余剰領域16Bの所定の加工開始位置に位置付ける。レーザー光線照射手段23から照射されるレーザー光線LBの集光点は、図3(b)に示すように、ウエーハ10の内部であって、ウエーハ10の厚み方向でみたとき、上方に露出する裏面10b側に近い位置に位置付けられる。なお、該集光点を位置付ける位置は、ウエーハ10の外周端部側を形成する面取り部10c(図3(b)を参照)を避けるように、例えば、外周端部から1.0~2.0mmの領域を避けた内側の外周余剰領域16Bに設定される。
【0019】
上記したように、レーザー光線LBの集光点を位置付けたならば、図3(a)に示すように、レーザー光線照射手段23を作動してレーザー光線LBを照射すると共に、チャックテーブル21を矢印R1で示す方向に回転して、図3(b)に示すように、第二の改質層として環状の改質層110aを形成する。該環状の改質層110aは、図4(a)に示すように、平面視で外周余剰領域16Bに形成された環状の改質層であり、その中心は、ウエーハ10の中心と一致するように形成される。
【0020】
なお、上記した環状の改質層110aを形成すべくレーザー加工装置20によって実施されるレーザー加工条件は、例えば以下のように設定される。
波長 :1342nm
繰り返し周波数 :90kHz
平均出力 :1.2W
円周送り速度 :500mm/秒
【0021】
図3(b)に示すように、ウエーハ10の厚み方向でみたとき、環状の改質層110aを裏面10b側に近い位置に形成することにより、ウエーハ10において、裏面10b側が凸となるように湾曲する力が作用する。このように、ウエーハ10に上記した環状の改質層110aを形成した場合、ウエーハ10には、表面10aが凹となるように湾曲する力が作用するが、チャックテーブル21の吸着チャック21aと該表面10aとの間で閉空間が形成されることから、該吸着チャック21aに作用する吸引用の負圧が外部に逃げることなく、ウエーハ10は、チャックテーブル21に適正に吸引保持される。
【0022】
図3図4(a)に基づき説明した上記の実施形態では、第二の改質層として、外周余剰領域16Bに対応する領域に環状の改質層110aを1条形成するものであったが、第二の改質層の形態はこれに限定されない。例えば、図4(b)に示すように、外周余剰領域16Bに形成した上記の環状の改質層110aに加え、環状の改質層110aと同心円状の環状の改質層110bを、上記の環状の改質層110aと同様の加工手順により形成し、2条の環状の改質層110a、110bを形成するものであってもよい。さらに、前記した2条の環状の改質層を形成することに限定されず、3条以上の環状の改質層を形成するものであってもよい。
【0023】
また、上記した第二の改質層は、上記した環状の改質層110a、110bを形成することに加え、図5(a)、(b)に示すように、放射状に形成される改質層120a、又は120bを含んでいてもよい。該放射状の改質層120a、120bは、上記した環状の改質層110a、110bと同様に、外周余剰領域16Bに形成されると共に、ウエーハ10の厚み方向でみたときに、ウエーハ10の第二の面、すなわち裏面10bに近い側に形成される。図5(a)は、図4(a)に示す1条の環状の改質層110aが形成されたウエーハ10に対して放射状の改質層120aを形成したものであり、図5(b)は、図4(b)に示す2条の環状の改質層110a、110bが形成されたウエーハ10に対して、放射状の改質層120bを形成したものである。このような放射状の改質層120a、120bを形成することにより、ウエーハ10において、より強く裏面10b側が凸となるように湾曲する力が作用する。上記したように第二の改質層を形成することで湾曲抑制工程が完了する。
【0024】
上記したように、湾曲抑制工程を実施したならば、図6(a)、(b)を参照しながら以下に説明する第一の改質層を形成する改質層形成工程を実施する。
【0025】
改質層形成工程は、ウエーハ10を個々のチップに分割するための起点となる第一の改質層を形成する工程であり、図6(a)に示すように、上記の湾曲抑制工程を実施したレーザー加工装置20によってウエーハ10をチャックテーブル21に保持したまま、それに続けて実施することが可能である。本実施形態の改質層形成工程を実施するに際し、上記したアライメント手段によって検出された分割予定ライン14に基づいて所定方向の分割予定ライン14をX軸方向に整合させる。次いで、所定の分割予定ライン14の加工開始位置にレーザー光線照射手段23の集光器23aを位置付け、ウエーハ10の裏面10b側から、分割予定ライン14に対応するウエーハ10の内部であって表面10aに近い側に集光点を位置付けて照射すると共に、上記したX軸送り手段を作動して、該保持手段と共にウエーハ10をX軸方向に加工送りして、ウエーハ10の所定の分割予定ライン14に沿って第一の改質層130を形成する。図6(b)に示すように、第一の改質層130は、ウエーハ10の厚み方向でみて、第一の面、すなわち表面10aに近い側に形成される。なお、図6(a)では、説明の都合上、上記した環状の改質層110a、110bは省略している。
【0026】
上記のように所定の分割予定ライン14に対応する位置に沿って第一の改質層130を形成したならば、上記したY軸送り手段を作動して、ウエーハ10をY軸方向に分割予定ライン14の間隔だけ割り出し送りして、Y軸方向で隣接する未加工の分割予定ライン14を集光器23aの直下に位置付ける。なお、本実施形態のウエーハ10の分割予定ライン14は、デバイス12を構成するチップの寸法に対応する5mmの間隔で形成されており、Y軸方向に割り出し送りする際の間隔は5mmである。そして、上記したのと同様にしてレーザー光線LBの集光点を、分割予定ライン14に対応するウエーハ10の内部であって表面10aに近い側に位置付けて該レーザー光線LBを照射し、ウエーハ10をX軸方向に加工送りして第一の改質層130を形成する。同様にして、ウエーハ10をX軸方向、及びY軸方向に加工送りして、X軸方向に沿うすべての分割予定ライン14に沿って第一の改質層130を形成する。次いで、ウエーハ10を90度回転させて、既に第一の改質層130を形成した分割予定ライン14に直交する方向の未加工の分割予定ライン14をX軸方向に整合させる。そして、残りの各分割予定ライン14に対応するウエーハ10の内部に、上記したのと同様にしてレーザー光線LBの集光点を位置付けて照射して、ウエーハ10に形成された全ての分割予定ライン14に対応するウエーハ10の内部に改質層130を形成する、以上により改質層形成工程が完了する。
【0027】
上記したレーザー加工装置20によって分割の起点となる第一の改質層130を形成すべく実施されるレーザー加工条件は、例えば以下のように設定される。なお、図示はしていないが、第一の改質層130を形成する際に、該第一の改質層130から表面10aに延びるクラックが形成されるように加工条件を設定してもよい。
波長 :1342nm
繰り返し周波数 :90kHz
平均出力 :1.2W
加工送り速度 :700mm/秒
【0028】
上記した改質層形成工程では、ウエーハ10を個々のチップに分割する際の分割の起点となる第一の改質層130をウエーハ10の表面10aに近い側に形成している。これにより、ウエーハ10の表面10a側が全体的に膨張して、ウエーハ10に表面10a側が凸となり裏面10b側が凹となる湾曲を生じさせる力が作用する。しかし、本実施形態では、該改質層形成工程を実施する前に、上記した湾曲抑制工程を実施しており、裏面10b側に凸となり表面10a側が凹となる湾曲を生じさせる力を生じさせている。この結果、上記した改質層形成工程を実施することにより発生するウエーハ10の表面10a側が凸となり裏面10b側が凹となる湾曲を生じさせる力が抑制される。これにより、改質層形成工程を実施する際に、ウエーハ10が湾曲して、レーザー光線LBの集光点が適正な位置に位置付けられず、第一の改質層130が所望の位置に形成されないという問題が解消する。
【0029】
上記した改質層形成工程によって第一の改質層130を形成したならば、ウエーハ10に対して外力を付与して個々のチップに分割する分割工程を実施する。該分割工程は、例えば、図7(a)、(b)を参照しながら以下に説明するように実施される。なお、図7(a)、(b)では、第一の改質層130、第二の改質層110a、110bの記載は省略している。
【0030】
該分割工程を実施するに際し、改質層形成工程によって第一の改質層130が形成されたウエーハ10を、図7に示す研削装置30(一部のみを示している)に搬送する。研削装置30は、チャックテーブル31と、該チャックテーブル31上に吸引保持されたウエーハ10の裏面10bを研削して薄化するための研削手段32とを備えている。研削手段32は、図示しない回転駆動機構により回転させられる回転スピンドル33と、回転スピンドル33の下端に装着されたホイールマウント34と、ホイールマウント34に取り付けられ、下面側に複数の研削砥石36が環状に配設された研削ホイール35と、を備えている。
【0031】
ウエーハ10の保護テープTが貼着された側をチャックテーブル31に載置して吸引保持したならば、研削手段32の回転スピンドル33を図7(a)において矢印R3で示す方向に、例えば6000rpmで回転させつつ、チャックテーブル31を矢印R4で示す方向に、例えば300rpmで回転させる。そして、図示しない研削水供給手段により、研削水をウエーハ10の裏面10b上に供給しつつ、研削砥石36をウエーハ10の裏面10bに当接させ、研削ホイール35を、例えば1μm/秒の研削送り速度で下方に向けて研削送りする。この際、図示しない接触式又は非接触式の測定ゲージによりウエーハ10の厚みを測定しながら研削を進めることができ、ウエーハ10の裏面10bを所定量研削する。この結果、ウエーハ10が薄化されると共に外力が付与されて、上記した第一の改質層130に沿って表面10a側にクラックが伸展して、個々のチップ12’に分割される。ウエーハ10が個々のチップ12’に分割され所定の厚みに形成されたならば、研削手段30を停止し、図示を省略する洗浄、乾燥工程等を経て、ウエーハ10を個々のチップ12’に分割する分割工程が完了し、本実施形態のウエーハの加工方法が完了する。
【0032】
上記したウエーハの加工方法によってウエーハ10を個々のチップ12’に分割したならば、必要に応じて、図8を参照しながら以下に説明するテープ貼り替え工程を実施してもよい。該テープ貼り替え工程を実施するに際し、図8に示すようなウエーハ10を収容可能な開口部Faを有する環状のフレームFを用意し、上記の如く分割工程が施されたウエーハ10の裏面10b側を下方に向けて、該開口部Faの中央に位置付ける。次いで、ウエーハ10の裏面10bと、フレームFの裏面とを共に貼着する粘着テープT2によって、ウエーハ10とフレームFとを支持する。図示のようにウエーハ10が粘着テープT2を介してフレームFに支持されたならば、図示のようにウエーハ10の表面10aから保護テープT1を剥離して露出させる。以上により、テープ貼り替え工程が完了する。これにより、ウエーハ10が粘着テープT2を介してフレームFに支持されて表面10aが露出し、個々に分割されたチップ12’をウエーハ10からピックアップし易くなり、例えば、次工程のボンディング工程を実施することが容易になる。
【0033】
なお、上記した実施形態では、第二の改質層を構成する環状の改質層110a、110b、放射状の改質層120a、120b等を、ウエーハ10の外周余剰領域16Bに形成したが、本発明は、該第二の改質層を、外周余剰領域16Bに形成することに限定されない。すなわち、上記した第二の改質層を外周余剰領域16Bに形成することに替えて、デバイス領域16Aに第二の改質層を形成するか、又は外周余剰領域16Bに上記した第二の改質層を形成することに加えて、デバイス領域16Aに対しても第二の改質層として機能する改質層を形成するようにしてもよい。デバイス領域16Aに形成される該第二の改質層は、上記した実施形態と同様に、環状の改質層であってもよく、放射状の改質層であってもよい。このように湾曲抑制工程においてデバイス領域16Aに上記の第二の改質層を形成する場合は、上記した研削装置30を使用して裏面10bを研削して個々のチップ12’に分割する際に、デバイス領域16Aに形成された該第二の改質層が除去される深さ位置に形成されるようにする。なお、デバイス領域16Aに形成された第二の改質層は、改質層形成工程において第一の改質層を形成する際のレーザー光線の照射の妨げになるおそれがある。よって、湾曲抑制工程において第二の改質層を形成する際には、分割予定ライン14と交差する位置に該第二の改質層を形成しないようにすることが好ましい。これにより、第二の改質層が、改質層形成工程において第一の改質層を形成する際のレーザー加工の妨げになるという問題が回避される。
【0034】
また、本発明の分割工程は、上記した研削装置30によってウエーハ10の裏面10b側を研削すると共に薄化することで外力を付与して個々のチップ12’に分割することに限定されない。例えば、上記した研削装置30によってウエーハ10の裏面10bを研削することに替えて、図8に基づき説明したように、テープ貼り替え工程を実施することでウエーハ10が粘着テープT2を介してフレームFに支持された状態とし、ウエーハ10に対して外力を付与すべく該粘着テープT2を放射状に拡張することにより、上記した第一の改質層130に沿ってウエーハ10を個々のチップ12’に分割するようにしてもよい。また、これに替えて、柔軟性のあるマットにウエーハ10を載置すると共にウエーハ10の裏面10bに対して図示しないローラーを転がすことで、外力となる押圧力を付与して第一の改質層130を起点として個々のチップ12’に分割するようにしてもよい。
【0035】
なお、上記したように、湾曲抑制工程において第二の改質層を形成する領域と分割工程を実施する方法とは、種々の組み合わせが想定されるが、該分割工程を、研削装置30によってウエーハ10の裏面10bを研削することによらず実施する場合、例えば、図8に基づき説明したテープ貼り替え工程を実施して、粘着テープT2を放射状に拡張することにより実施して個々のチップ12’に分割する場合は、デバイス12が形成されたデバイス領域16Aに第二の改質層を形成することは回避することが好ましい。
【符号の説明】
【0036】
10:ウエーハ
10a:表面(第一の面)
10b:裏面(第二の面)
10c:面取り部
12:デバイス
12’:チップ
14:分割予定ライン
15:境界線
16A:デバイス領域
16B:外周余剰領域
20:レーザー加工装置
21:チャックテーブル
21a:吸着チャック
21b:枠体
23:レーザー光線照射手段
23a:集光器
30:研削装置
31:チャックテーブル
32:研削手段
35:研削ホイール
36:研削砥石
110a、110b:環状の改質層(第二の改質層)
120a、120b:放射状の改質層(第二の改質層)
130:第一の改質層
F:フレーム
T1:保護テープ
T2:粘着テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8