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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157312
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20241030BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20241030BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20241030BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20241030BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20241030BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20241030BHJP
【FI】
H02G3/30
H02G3/04 081
H01B7/00 301
F16L57/00 A
F16B19/00 Q
B60R16/02 623D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071606
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 弘志
(72)【発明者】
【氏名】城田 照昌
【テーマコード(参考)】
3H024
3J036
5G309
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
3H024AA01
3H024AB02
3H024AC03
3J036AA03
3J036DA12
3J036DB04
5G309AA01
5G309AA09
5G357DA06
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD02
5G357DD05
5G357DG05
5G363AA16
5G363BA02
5G363BA07
5G363DA13
5G363DA15
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】クリップを取り付ける位置の自由度が高いワイヤハーネスを提供すること。
【解決手段】ワイヤハーネスは、直線状の第1部、及び前記第1部から分岐する第2部を備えるケーブルと、前記ケーブルのうち、前記第1部から前記第2部が分岐する分岐部を保護する保護部材と、前記保護部材に取り付けられるクリップと、を備える。前記保護部材は、前記第1部を収容する筒状の第1保護部と、前記第1保護部の外周面から延出され、前記第2部を収容する筒状の第2保護部と、前記保護部材の外周面に設けられた、前記クリップを保持可能なクリップ保持部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状の第1部、及び前記第1部から分岐する第2部を備えるケーブルと、
前記ケーブルのうち、前記第1部から前記第2部が分岐する分岐部を保護する保護部材と、
前記保護部材に取り付けられるクリップと、
を備え、
前記保護部材は、
前記第1部を収容する筒状の第1保護部と、
前記第1保護部の外周面から延出され、前記第2部を収容する筒状の第2保護部と、
前記保護部材の外周面に設けられた、前記クリップを保持可能なクリップ保持部と、
を備える、
ワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスであって、
前記クリップ保持部は、前記第1保護部の外周面に設けられ、
前記第2保護部と前記クリップ保持部とは、前記第1保護部の周方向において並んでいる、
ワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のワイヤハーネスであって、
前記クリップ保持部は、
前記保護部材の外周面に対し、間隔をおいて対向する板状の保持板と、
前記保持板の一方の端部から反対側の端部まで、前記保持板に形成された溝と、
を備える、
ワイヤハーネス。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のワイヤハーネスであって、
前記保護部材は、分割可能な第1分割体及び第2分割体により構成され、
前記第1分割体及び前記第2分割体は、それぞれ、半割りにされた前記第1保護部の一方、及び、半割りにされた前記第2保護部の一方を含む、
ワイヤハーネス。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のワイヤハーネスであって、
前記保護部材は樹脂から成る、
ワイヤハーネス。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のワイヤハーネスであって、
前記クリップは樹脂から成る、
ワイヤハーネス。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のワイヤハーネスであって、
前記クリップ保持部は、ブラケットも取り付け可能である、
ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にワイヤハーネスが開示されている。ワイヤハーネスは、自動車等の車両に使用される。ワイヤハーネスは、ケーブルと、保護部材とを備える。保護部材は中空の部材である。保護部材は、その内部にケーブルの一部を収容する。図9A及び図9Bに示すように、ケーブル103は、直線状の第1部107と、その第1部107から分岐する第2部109とを備える場合がある。その場合、保護部材105は、第1部107から第2部109が分岐する分岐部121を保護する。保護部材105は、筒状の第1保護部123と、筒状の第2保護部125とを備える。第2保護部125は、第1保護部123の外周面から延出されている。第1保護部123と第2保護部125とは、例えば、T字型の形状を有する。第1保護部123は第1部107を収容する。第2保護部125は第2部109を収容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-191480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9Bに示すように、第1保護部123にバンドタイプのクリップ183を取り付け、そのクリップ183を車体鋼板184に固定することがある。図9A及び図9Bに示すように、クリップ183が備えるバンド185は、第1保護部123の外周面に、第1保護部123の周方向Cに沿って巻かれる。
【0005】
図9Aに示す特定部187は、第1保護部123の一部である。特定部187と、第2保護部125とは、第1保護部123の周方向Cにおいて並んでいる。第2保護部125が障害となるため、特定部187には、バンド185を巻くことができない。そのため、特定部187には、クリップ183を取り付けることができない。よって、保護部材105にクリップ183を取り付ける位置は制約されてしまう。また、保護部材105にクリップ183を取り付ける位置が制約されることにより、車体鋼板184にクリップ183を固定する位置も制約されてしまう。
【0006】
本開示の1つの局面では、クリップを取り付ける位置の自由度が高いワイヤハーネスを提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの局面は、直線状の第1部、及び前記第1部から分岐する第2部を備えるケーブルと、前記ケーブルのうち、前記第1部から前記第2部が分岐する分岐部を保護する保護部材と、前記保護部材に取り付けられるクリップと、を備えるワイヤハーネスである。
【0008】
前記保護部材は、前記第1部を収容する筒状の第1保護部と、前記第1保護部の外周面から延出され、前記第2部を収容する筒状の第2保護部と、前記保護部材の外周面に設けられた、前記クリップを保持可能なクリップ保持部と備える。
【0009】
本開示の1つの局面であるワイヤハーネスでは、保護部材にクリップを取り付ける位置の自由度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ワイヤハーネスの構成を表す平面図である。
図2図1における視点PIIから見た保護部材の構成を表す説明図である。
図3図1における視点PIIIから見た保護部材の構成を表す説明図である。
図4図1における視点PIIから見た保護部材及びクリップの構成を表す説明図である。
図5図1における視点PIIIから見た保護部材及びクリップの構成を表す説明図である。
図6】第1実施形態における図4に示すVI-VI断面での断面図である。
図7】別形態における図4に示すVI-VI断面での断面図である。
図8】保護部材の別形態を表す説明図である。
図9図9Aは、従来のワイヤハーネスの構成を表す説明図であり、図9Bは、図9Aにおける視点PIXBから見た従来のワイヤハーネスの構成を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
1.ワイヤハーネス1の構成
ワイヤハーネス1の構成を、図1図6に基づき説明する。図1に示すように、ワイヤハーネス1は、ケーブル3と、保護部材5と、を備える。
【0012】
ケーブル3は、直線状の第1部7と、第1部7から分岐する第2部9とを備える。ケーブル3は、複数の電線がシース11により被覆された被覆部13を備える。被覆部13の端部から、第1電線15及び第2電線17が引き出されている。第1電線15及び第2電線17は、シース11により被覆されていない。被覆部13及び第1電線15の形態は直線状である。第1部7は、被覆部13と第1電線15とにより構成される。第2電線17は、第1部7から分岐している。第2部9は第2電線17により構成される。第1部7と第2部9とが成す角度は、直角であってもよいし、鋭角であってもよいし、鈍角であってもよい。
【0013】
保護部材5は、ケーブル3における分岐部21を保護する部材である。分岐部21は、ケーブル3のうち、第1部7から第2部9が分岐する部分である。保護部材5は中空の部材である。保護部材5は、例えば、樹脂から成る。樹脂として、例えば、ナイロン等が挙げられる。保護部材5の材料である樹脂は、ゴム材より硬いことが好ましい。
【0014】
図1図5に示すように、保護部材5は、第1保護部23を備える。第1保護部23は、中空の円筒状の部分である。図1に示すように、第1保護部23は、分岐部21のうち、第1部7を収容する。
【0015】
保護部材5は、第2保護部25を備える。第2保護部25は、第1保護部23の外周面から延出されている。第1保護部23の軸方向と第2保護部25の軸方向とが成す角度は、直角であってもよいし、鋭角であってもよいし、鈍角であってもよい。第1保護部23と第2保護部25とは、例えば、T字型の形状を有する。第2保護部25は、中空の円筒状の部分である。第2保護部25の内部と、第1保護部23の内部とは連通している。図1に示すように、第2保護部25は、分岐部21のうち、第2部9を収容する。
【0016】
図1図5に示すように、保護部材5は、クリップ保持部27を備える。クリップ保持部27は、後述するクリップ83を保持可能な部材である。クリップ保持部27は、保護部材5の外周面に設けられている。本実施形態では、クリップ保持部27は、第1保護部23の外周面に設けられている。
【0017】
本実施形態では、図1図3図5に示すように、第2保護部25とクリップ保持部27とは、第1保護部23の周方向Cにおいて並んでいる。例えば、周方向Cにおいて、クリップ保持部27の全体が、第2保護部25と並んでいてもよいし、クリップ保持部27の一部が、第2保護部25と並んでいてもよい。また、本実施形態では、図3図5に示すように、第2保護部25の軸方向にある視点から見たとき、クリップ保持部27は、第2保護部25と並ぶ位置にある。
【0018】
図2図5に示すように、クリップ保持部27は、保持板31と、2つの脚部33とを備える。図3図5に示すように、保持板31は、第1保護部23の軸方向に沿って延びる板状の部材である。保持板31は、第1保護部23の外周面に対し、間隔をおいて対向している。図2図4に示すように、2つの脚部33は、それぞれ、保持板31の周方向Cにおける端部と、第1保護部23とを接続している。
【0019】
保持板31には溝35が形成されている。溝35は、第1保護部23の軸方向に沿って延びている。溝35は、第1保護部23の軸方向において、保持板31の一方の端部から反対側の端部まで達している。溝35は、保持板31を厚み方向において貫通している。図2に示すように、周方向Cにおいて、溝35は保持板31の中央に位置する。
【0020】
図2図5に示すように、第1保護部23の外周面のうち、保持板31と対向する部分には、2つの突起41、43が形成されている。突起41、43は、その周囲よりも第1保護部23の外周方向に突出している。図3図5に示すように、突起41、43は、間隔をおいて、第1保護部23の軸方向に沿って並んでいる。突起41の表面は、突起43に近づくほど徐々に高くなるように傾斜している。突起41のうち、突起43の側の端部は、急峻な段差となっている。
【0021】
突起43の表面は、突起41に近づくほど徐々に高くなるように傾斜している。突起43のうち、突起41の側の端部は、急峻な段差となっている。
図2図5に示すように、保護部材5は、第1分割体51及び第2分割体53により構成される。第1分割体51及び第2分割体53は、それぞれ、半割りにされた第1保護部23の一方、及び、半割りにされた第2保護部25の一方を含む。半割りにされた形状とは、筒状の部材を、筒の軸を通る断面で2分割した形状を意味する。
【0022】
図2図4に示すように、第1分割体51と、第2分割体53とは、ヒンジ55により回動可能に接続されている。ヒンジ55は、第1保護部23の外周面のうち、第2保護部25とは反対側の部分に位置する。ヒンジ55は、第1分割体51と第2分割体53とに跨って設けられている。ヒンジ55を回動軸として、第1分割体51に対し第2分割体53を回動させることで、保護部材5を開閉することができる。
【0023】
図2図5に示すように、保護部材5は、2つのロック部61を備える。2つのロック部61は、第1分割体51と第2分割体53とが閉じた状態を維持する機能を有する。2つのロック部61は、第2保護部25に設けられている。図3図5に示すように、2つのロック部61の位置は、第2保護部25の軸方向にある視点から見たとき、第2保護部25を挟んで対向する位置である。また、2つのロック部61の位置は、それぞれ、第1分割体51と第2分割体53との境界の付近の位置である。
【0024】
2つのロック部61は同様の構成を備える。ロック部61は、第1ロック部材63を備える。第1ロック部材63は、第1分割体51の外周面のうち、第2分割体53の側の部分から、第2分割体53の方向に延出された板状の部材である。第1ロック部材63は、弾性変形可能な材料から成る。
【0025】
第1ロック部材63は、外側表面65に突出部67を備える。外側表面65は、外側方向にある第1ロック部材63の表面である。外側方向とは、第1ロック部材63の延出方向に直交する方向であって、第2保護部25から遠ざかる方向である。
【0026】
突出部67は、外側表面65のうち、第1ロック部材63の先端の側に設けられている。突出部67は、その周囲より、外側方向に突出した部分である。図3図5に示すように、第1ロック部材63の先端の付近の形状は、第2保護部25の軸方向にある視点から見て、先細りの形状である。
【0027】
ロック部61は、第2ロック部材69を備える。第2ロック部材69は、第2分割体53の外周面のうち、第1分割体51の側の部分に設けられている。第2ロック部材69は、外側方向に隆起した本体部71を備える。本体部71には孔73が形成されている。孔73は、第1ロック部材63の延出方向と平行に延びており、本体部71を貫通している。
【0028】
第1分割体51と第2分割体53とを閉じたとき、第1ロック部材63は、孔73に差し込まれる。第1ロック部材63の先端は、孔73を通過する。第1ロック部材63は、孔73に差し込まれたとき、内側方向に弾性変形している。内側方向とは、外側方向の反対方向である。第1ロック部材63が孔73に差し込まれたとき、第1ロック部材63の外側表面65は、弾性変形により生じる復元力により、孔73における、外側方向にある内面に押し付けられる。
【0029】
第1ロック部材63を孔73に差し込み、突出部67が孔73を通過すると、第1ロック部材63のうち、突出部67の付近の部分は、前記の復元力により、外側方向に移動する。外側方向に移動することで、突出部67の位置は、孔73よりも外側方向にある位置となる。その結果、突出部67は、本体部71における当接部81に引っ掛かる。当接部81は、本体部71の表面のうち、孔73の出口付近の表面であって、孔73よりも外側方向にある部分である。
【0030】
突出部67が当接部81に引っ掛かることにより、第1ロック部材63は第2ロック部材69から抜け難くなる。その結果、ロック部61により、第1分割体51と第2分割体53とは、閉じた状態でロックされる。
【0031】
図4図6に示すように、ワイヤハーネス1は、クリップ83を備える。クリップ83は、車両鋼板等に固定することが可能な部材である。クリップ83は、例えば、樹脂から成る。樹脂として、例えば、ナイロン等が挙げられる。クリップ83の材料である樹脂は、ゴム材より硬いことが好ましい。
【0032】
クリップ83は、基板85と、軸部87と、基板側脚部89と、軸部側脚部91と、ロック用突起部93と、を備える。基板85は平らな板状の部材である。基板85の一方の主面を第1面85Aとし、その反対側の主面を第2面85Bとする。
【0033】
軸部87は、第1面85Aにおける中心から、基板85と直交する方向に延出された棒状の部材である。基板側脚部89は、第1面85Aから延出された板状の部材である。クリップ83は2つの基板側脚部89を備える。軸部87の軸方向にある視点から見たとき、2つの基板側脚部89は、軸部87の両側に設けられている。2つの基板側脚部89の間隔は、第1面85Aから離れるほど大きい。基板側脚部89は、弾性変形可能な材料から成る。
【0034】
軸部側脚部91は、軸部87の先端付近から延出された板状の部材である。クリップ83は2つの軸部側脚部91を備える。2つの軸部側脚部91は、軸部87の両側に設けられている。2つの軸部側脚部91は、それぞれ、それらの先端にゆくほど、第1面85Aに近づくように延びている。2つの軸部側脚部91の間隔は、第1面85Aに近づくほど大きい。軸部側脚部91は、弾性変形可能な材料から成る。ロック用突起部93は、第2面85Bの中心に設けられた突起である。
【0035】
クリップ83は、クリップ保持部27により保持される。クリップ83がクリップ保持部27により保持されたとき、基板85は、保持板31と第1保護部23との隙間に差し込まれている。また、ロック用突起部93は、突起41、43の間に収容されている。
【0036】
2つの基板側脚部89及び軸部87は、溝35の長手方向に沿って並んでいる。2つの基板側脚部89及び軸部87は、それぞれ、溝35を通り、保持板31よりも、第1保護部23の外周方向に突出している。2つの軸部側脚部91は、保持板31よりも、第1保護部23の外周方向にある。
【0037】
クリップ83をクリップ保持部27に取り付けるとき、図5に示す第1方向X1、又は第2方向X2から、基板85を、保持板31と第1保護部23との隙間に差し込む。第1方向X1、及び第2方向X2は、それぞれ、第1保護部23の軸方向に平行である。第2方向X2は第1方向X1の反対方向である。
【0038】
基板85を、保持板31と第1保護部23との隙間に差し込むとき、2つの基板側脚部89及び軸部87は、溝35に進入する。なお、溝35は、第1保護部23の軸方向において、保持板31の一方の端部から他方の端部まで達しているので、第1方向X1、及び第2方向X2のいずれの方向からクリップ83を取り付ける場合でも、2つの基板側脚部89及び軸部87を、溝35に進入させることができる。
【0039】
第1方向X1から、基板85を保持板31と第1保護部23との隙間に差し込んだ場合、ロック用突起部93は、突起41を乗り越え、突起43の手前で停止する。突起41の表面は、突起43に近づくほど徐々に高くなるように傾斜しているので、ロック用突起部93は、第1方向X1から突起41を容易に乗り越えられる。突起43のうち、突起41の側の端部は急峻な段差となっているので、ロック用突起部93は、第1方向X1からは突起43を乗り越え難い。また、突起41のうち、突起43の側の端部は急峻な段差となっているので、ロック用突起部93は、第1方向X1から突起41を乗り越えた後に戻ろうとしても、突起41を乗り越え難い。その結果、ロック用突起部93は、突起41、43の間に収容される。ロック用突起部93が突起41、43の間に収容されることで、クリップ83はクリップ保持部27から抜け難くなる。
【0040】
また、第2方向X2から、基板85を保持板31と第1保護部23との隙間に差し込んだ場合、ロック用突起部93は、突起43を乗り越え、突起41の手前で停止する。突起43の表面は、突起41に近づくほど徐々に高くなるように傾斜しているので、ロック用突起部93は、第2方向X2から突起43を容易に乗り越えられる。突起41のうち、突起43の側の端部は、急峻な段差となっているので、ロック用突起部93は、第2方向X2からは突起41を乗り越え難い。また、突起43のうち、突起41の側の端部は急峻な段差となっているので、ロック用突起部93は、第2方向X2から突起43を乗り越えた後に戻ろうとしても、突起43を乗り越え難い。その結果、ロック用突起部93は、突起41、43の間に収容される。ロック用突起部93が突起41、43の間に収容されることで、クリップ83はクリップ保持部27から抜け難くなる。
【0041】
クリップ83を車両鋼板に固定する方法は、例えば、以下の方法である。軸部87のうち、先端側の一部を車両鋼板の孔に差し込む。2つの軸部側脚部91は車両鋼板の孔を通過する。2つの軸部側脚部91は、車両鋼板の孔を通過しているときは、それらの間隔が狭まるように弾性変形し、車両鋼板の孔を通過した後は広がる。2つの基板側脚部89は、車両鋼板の孔を通過しない。2つの軸部側脚部91と、2つの基板側脚部89とは、車両用鋼板の両側から、車両用鋼板に当接する。その結果、クリップ83は車両用鋼板に固定される。
【0042】
2.ワイヤハーネス1が奏する効果
(1A)保護部材5において、クリップ保持部27を設ける位置は制約されない。そのため、保護部材5にクリップ83を取り付ける位置の自由度が高い。自由度が高いとは、例えば、クリップ83を取り付ける位置に関する制約が少ないことを意味する。
【0043】
(1B)従来は、第1保護部23の外周面のうち、周方向Cにおいて第2保護部25と並んでいる位置にはクリップを取り付けることは困難であった。保護部材5は、第1保護部23の外周面のうち、周方向Cにおいて第2保護部25と並んでいる位置にもクリップ保持部27を取り付けることができる。その場合、保護部材5は、第1保護部23の外周面のうち、周方向Cにおいて第2保護部25と並んでいる位置にもクリップ83を取り付けることができる。
【0044】
(1C)クリップ保持部27は、保持板31と、溝35とを備える。溝35は、第1保護部23の軸方向において、保持板31の一方の端部から反対側の端部まで達している。そのため、図5に示す第1方向X1、及び第2方向X1のいずれの方向からも、クリップ83をクリップ保持部27に取り付けることができる。
【0045】
(1D)保護部材5は、分割可能な第1分割体51及び第2分割体53により構成される。そのため、保護部材5を分岐部21に取り付ける作業、及び分岐部21から保護部材5を取り外す作業が容易である。
【0046】
(1E)保護部材5は樹脂から成る。そのため、保護部材5が軽量でありながらも、分岐部21の形状を維持する効果、分岐部21を保護し、分岐部21の外傷を抑制する効果、及び保護部材5の成形形状が自在になる効果が一層高い。
(1F)クリップ83は樹脂から成る。そのため、クリップ83を軽量化することができる。
(1G)クリップ保持部27は保持板31を備える。保持板31は、第1保護部23の外周面に対し、間隔をおいて対向している。保持板31と第1保護部23の外周面との隙間に、クリップ83以外の部材を差し込むことができる。クリップ83以外の部材として、例えば、板状部材等が挙げられる。板状部材として、例えば、ブラケット等が挙げられる。
【0047】
(1H)クリップ83を車両用鋼板等に固定した状態で、第2部9が、その軸方向に引っ張られた場合を想定する。引張力は、第1部7と第2部9との交点に作用する。引張力は、車両用鋼板等に固定されたクリップ83を中心として、ワイヤハーネス1を回転させようとする。
【0048】
保護部材5は、第1保護部23の外周面のうち、周方向Cにおいて第2保護部25と並んでいる位置にクリップ83を取り付けることができる。その場合、引張力が作用する位置と、クリップ83の位置とが近いため、上記の引張力が生じても、クリップ83を中心としてワイヤハーネス1が回転してしまうことを抑制できる。
【0049】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0050】
(1)クリップ83の形態は第1実施形態のものに限定されない。クリップ83の形態として、公知のクリップの中から適宜選択して用いることができる。
(2)クリップ保持部27の位置は、第1実施形態とは異なる位置であってもよい。例えば、クリップ保持部27の位置は、第1保護部23の外周面上の位置であって、第1保護部23の周方向Cにおいて第2保護部25と並ばない位置であってもよい。また、クリップ保持部27の位置は、第2保護部25の外周面上の位置であってもよい。
【0051】
(3)クリップ保持部27の形態は、第1実施形態とは異なる形態であってもよい。
(4)突起41、43の形態は、図7に示すものであってもよい。突起41は、高さが一定である平坦部41Aを備える。平坦部41Aは、突起43の側の端部まで設けられている。突起41のうち、突起43とは反対側の部分は、突起43に近づくほど徐々に高くなるように傾斜している。突起41のうち、突起43の側の端部は、急峻な段差となっている。
【0052】
突起43は、高さが一定である平坦部43Aを備える。平坦部43Aは、突起41の側の端部まで設けられている。突起43のうち、突起41とは反対側の部分は、突起41に近づくほど徐々に高くなるように傾斜している。突起43のうち、突起41の側の端部は、急峻な段差となっている。図7に示す形態の突起41、43も、第1実施形態の突起41、43と同様の効果を奏する。
【0053】
(5)図8に示すように、保護部材5は、第1保護部23のクリップ保持部27に加えて、第2保護部25にもクリップ保持部27を備えていてもよい。第2保護部25のクリップ保持部27は、例えば、第1保護部23のクリップ保持部27と同様の構成を有する。例えば、第2保護部25のクリップ保持部27において、溝35は、第2保護部25の軸方向に沿って延びている。
【0054】
例えば、第1保護部23のクリップ保持部27にクリップ83を取り付け、第2保護部25のクリップ保持部27に他の部材を取り付けることができる。他の部材として、例えば、板状部材等が挙げられる。板状部材として、例えば、ブラケット等が挙げられる。
(6)第1保護部23、又は第2保護部25の、軸方向に直交する断面での断面形状は、円以外の形状であってもよく、例えば、楕円、矩形等であってもよい。
【0055】
(7)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0056】
(8)上述したワイヤハーネス1の他、当該ワイヤハーネス1を構成要素とするシステム、ワイヤハーネス1の製造方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0057】
1…ワイヤハーネス、3…ケーブル、5…保護部材、7…第1部、9…第2部、11…シース、13…被覆部、15…第1電線、17…第2電線、21…分岐部、23…第1保護部、25…第2保護部、27…クリップ保持部、31…保持板、33…脚部、35…溝、41、43…突起、51…第1分割体、53…第2分割体、55…ヒンジ、61…ロック部、63…第1ロック部材、65…外側表面、67…突出部、69…第2ロック部材、71…本体部、73…孔、81…当接部、83…クリップ、85…基板、85A…第1面、85B…第2面、87…軸部、89…基板側脚部、91…軸部側脚部、93…ロック用突起部
図1
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図9