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特開2024-15735仮固定用フィルム、仮固定用積層体、半導体装置の製造方法、及び仮固定用組成物
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  • 特開-仮固定用フィルム、仮固定用積層体、半導体装置の製造方法、及び仮固定用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015735
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】仮固定用フィルム、仮固定用積層体、半導体装置の製造方法、及び仮固定用組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240130BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118005
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 笑
(72)【発明者】
【氏名】赤須 雄太
(72)【発明者】
【氏名】榎本 哲也
【テーマコード(参考)】
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
5F057AA12
5F057BA11
5F057CA14
5F057DA11
5F057EC07
5F063AA18
5F063EE22
5F063EE43
(57)【要約】
【課題】紫外光を含む光の照射で半導体部材と支持部材とを分離できる仮固定材層を形成することが可能な仮固定用フィルムを提供すること。
【解決手段】半導体部材と支持部材とを仮固定するために用いられる仮固定用フィルム10が開示される。当該仮固定用フィルム10は、水酸基を有する紫外線吸収剤と、水酸基と反応可能な官能基を有する熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂とを含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体部材と支持部材とを仮固定するために用いられる仮固定用フィルムであって、
水酸基を有する紫外線吸収剤と、前記水酸基と反応可能な官能基を有する熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂とを含有する、
仮固定用フィルム。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、
請求項1に記載の仮固定用フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が炭化水素樹脂である、
請求項1に記載の仮固定用フィルム。
【請求項4】
波長308nm及び波長355nmのうち、少なくとも一方の波長における透過率が15%以下である、
請求項1に記載の仮固定用フィルム。
【請求項5】
支持部材と、前記支持部材上に設けられた、請求項1に記載の仮固定用フィルムからなる仮固定材層とを備える、
仮固定用積層体。
【請求項6】
前記仮固定材層上に設けられた硬化性樹脂層をさらに備える、
請求項5に記載の仮固定用積層体。
【請求項7】
支持部材と、第1の硬化性樹脂層と、請求項1に記載の仮固定用フィルムからなる仮固定材層とをこの順に備える、
仮固定用積層体。
【請求項8】
前記仮固定材層上に設けられた第2の硬化性樹脂層をさらに備える、
請求項7に記載の仮固定用積層体。
【請求項9】
請求項5~8のいずれか一項に記載の仮固定用積層体を準備する工程と、
半導体部材を、前記仮固定材層を介して前記支持部材に対して仮固定する工程と、
前記支持部材に対して仮固定された前記半導体部材を加工する工程と、
前記仮固定用積層体の前記仮固定材層に対して前記支持部材側から紫外光を含む光を照射して、前記支持部材から前記半導体部材を分離する工程と、
を備える、
半導体装置の製造方法。
【請求項10】
半導体部材と支持部材とを仮固定するために用いられる仮固定用組成物であって、
水酸基を有する紫外線吸収剤と、前記水酸基と反応可能な官能基を有する熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂とを含有する、
仮固定用組成物。
【請求項11】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、
請求項10に記載の仮固定用組成物。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂が炭化水素樹脂である、
請求項10に記載の仮固定用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、仮固定用フィルム、仮固定用積層体、半導体装置の製造方法、及び仮固定用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造において、半導体ウェハ、半導体チップ等の半導体基板に集積回路を組み入れた後で、半導体基板を有する半導体部材を加工することがある。半導体部材には、例えば、裏面の研削、ダイシングによる個片化等の加工処理が施される。半導体部材は、通常、支持部材に仮固定された状態で加工され、その後で半導体部材が支持部材から分離される。例えば、特許文献1は、仮固定材層に紫外光(紫外レーザー光)を照射することによって、半導体部材を支持部材から分離する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-033814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、紫外光を含む光の照射で半導体部材と支持部材とを分離できる仮固定材層を形成することが可能な仮固定用フィルムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、[1]~[4]に記載の仮固定用フィルム、[5]~[8]に記載の仮固定用積層体、[9]に記載の半導体装置の製造方法、及び[10]~[12]に記載の仮固定用組成物を提供する。
[1]半導体部材と支持部材とを仮固定するために用いられる仮固定用フィルムであって、水酸基を有する紫外線吸収剤と、前記水酸基と反応可能な官能基を有する熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂とを含有する、仮固定用フィルム。
[2]前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、[1]に記載の仮固定用フィルム。
[3]前記熱可塑性樹脂が炭化水素樹脂である、[1]又は[2]に記載の仮固定用フィルム。
[4]波長308nm及び波長355nmのうち、少なくとも一方の波長における透過率が15%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の仮固定用フィルム。
[5]支持部材と、前記支持部材上に設けられた、[1]に記載の仮固定用フィルムからなる仮固定材層とを備える、仮固定用積層体。
[6]前記仮固定材層上に設けられた硬化性樹脂層をさらに備える、[5]に記載の仮固定用積層体。
[7]支持部材と、第1の硬化性樹脂層と、[1]に記載の仮固定用フィルムからなる仮固定材層とをこの順に備える、仮固定用積層体。
[8]前記仮固定材層上に設けられた第2の硬化性樹脂層をさらに備える、[7]に記載の仮固定用積層体。
[9][5]~[8]のいずれかに記載の仮固定用積層体を準備する工程と、半導体部材を、前記仮固定材層を介して前記支持部材に対して仮固定する工程と、前記支持部材に対して仮固定された前記半導体部材を加工する工程と、前記仮固定用積層体の前記仮固定材層に対して前記支持部材側から紫外光を含む光を照射して、前記支持部材から前記半導体部材を分離する工程とを備える、半導体装置の製造方法。
[10]半導体部材と支持部材とを仮固定するために用いられる仮固定用組成物であって、水酸基を有する紫外線吸収剤と、前記水酸基と反応可能な官能基を有する熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂とを含有する、仮固定用組成物。
[11]前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、[10]に記載の仮固定用組成物。
[12]前記熱可塑性樹脂が炭化水素樹脂である、[10]又は[11]に記載の仮固定用組成物。
【0006】
上記の仮固定用フィルムによれば、紫外光を含む光の照射によって半導体部材と支持部材とを分離することができ、仮固定材層の形成に好適である。このような仮固定用フィルムを用いることにより、紫外光を含む光の照射によって半導体部材と支持部材とを分離することができる理由は、必ずしも定かではないが、本発明者らは、例えば、以下のように推察している。まず、仮固定用フィルムを加熱等で処理することによって、水酸基を有する紫外線吸収剤と、水酸基と反応可能な官能基を有する熱硬化性樹脂とが反応して、紫外線吸収剤を取り込みながら高分子量成分を含む硬化物を形成する。次いで、紫外光を含む光の照射によって、紫外線吸収剤がこれらの光エネルギーを吸収し、例えば、熱エネルギーによる高分子量成分の分子鎖の切断等により、高分子量成分の低分子量化(硬化物の溶融)が進行し、半導体部材と支持部材との分離が可能になると推察される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、紫外光を含む光の照射で半導体部材と支持部材とを分離できる仮固定材層を形成することが可能な仮固定用フィルムが提供される。また、本開示によれば、このような仮固定用フィルムを用いた仮固定用積層体及び半導体装置の製造方法が提供される。さらに、本開示によれば、仮固定用フィルムを形成するために有用な仮固定用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、仮固定用フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
図2図2(a)、図2(b)、及び図2(c)は、仮固定用積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
図4図4(a)、図4(b)、及び図4(c)は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の実施形態について説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。
【0010】
本開示における数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0012】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリル共重合体等の他の類似表現についても同様である。
【0013】
本明細書中、以下で例示する材料は、特に断らない限り、条件に該当する範囲で、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。各成分の含有量は、各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、当該複数の物質の合計量を意味する。
【0014】
[仮固定用フィルム]
図1は、仮固定用フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。図1に示される仮固定用フィルム10は、半導体部材と支持部材とを仮固定するために用いられるものである。より具体的には、仮固定用フィルム10は、半導体装置の製造において、半導体部材を加工する間、半導体部材を支持部材に対して一時的に固定するための層(仮固定材層)を形成するために用いられるものである。仮固定用フィルム10は、水酸基を有する紫外線吸収剤(以下、「(A)成分」という場合がある。)と、水酸基と反応可能な官能基を有する熱硬化性樹脂(以下、「(B)成分」という場合がある。)と、熱可塑性樹脂(以下、「(C)成分」という場合がある。)とを含有する。
【0015】
(A)成分:水酸基を有する紫外線吸収剤
(A)成分は、紫外光(紫外線)を含む光を吸収する成分であり得る。(A)成分は、200~400nmの波長(近紫外光)を含む光を吸収する成分であってもよい。(A)成分は、水酸基を有することから、(B)成分との相互作用により、仮固定用フィルムからブリードアウトが発生し難い傾向にある。また、仮固定用フィルムを加熱等で処理することによって、(A)成分と、(B)成分とが反応して、(A)成分を取り込みながら高分子量成分を含む硬化物を形成すると推測される。そのため、(A)成分を用いることによって、仮固定用フィルム中の紫外線吸収剤成分の分散性を向上させることが期待できる。
【0016】
水酸基を有する紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン骨格を有するトリアジン系紫外線吸収剤;2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ターシャリ-ブチル-4-メチルフェノール等のベンゾトリアゾール骨格を有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;[2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)フェニル](フェニル)メタノン等のベンゾフェノン骨格を有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中でも、(A)成分は、トリアジン系紫外線吸収剤又はベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であってよく、トリアジン系紫外線吸収剤であってもよい。トリアジン系紫外線吸収剤は、例えば、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジンであってよい。
【0017】
(A)成分は、特に制限されないが、例えば、仮固定用フィルムにおいて、波長308nm及び波長355nmのうち、少なくとも一方の波長における透過率が15%以下となるように添加することが好ましい。(A)成分の含有量は、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して、0.5~40質量部であってよい。(A)成分の含有量が、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して、0.5質量部以上であると、紫外光を含む光の照射によって半導体部材と支持部材とを分離し易い傾向にあり、40質量部以下であると、硬化阻害が起こり難く、高耐熱性を保持できる傾向にある。(A)成分の含有量は、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して、1質量部以上、1.5質量部以上、又は2質量部以上であってもよく、30質量部以下、20質量部以下、又は15質量部以下であってもよい。
【0018】
(B)成分:水酸基と反応可能な官能基を有する熱硬化性樹脂
(B)成分は、水酸基と反応可能な官能基を有し、熱によって硬化する樹脂を意味し、後述の(C)成分を包含しない概念である。水酸基と反応可能な官能基としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。(B)成分としては、例えば、エポキシ樹脂;オキセタン樹脂;エポキシ基、オキセタニル基等を有するアクリル樹脂などが挙げられる。これらのうち、(B)成分は、耐熱性、作業性、及び信頼性により優れることから、エポキシ樹脂であってよい。
【0019】
エポキシ樹脂は、硬化して耐熱作用を有するものであれば特に限定されない。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。また、エポキシ樹脂は、例えば、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、又は複素環含有エポキシ樹脂であってもよい。これらの中でも、エポキシ樹脂は、耐熱性及び耐候性の観点から、脂環式エポキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0020】
(B)成分としてのエポキシ樹脂は、それ単独で用いてもよく、エポキシ樹脂の硬化剤(以下、「(b)成分」という場合がある。)と併用して用いてもよい。(b)成分としては、例えば、アミン、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、ビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)、フェノール樹脂(フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂等)等が挙げられる。
【0021】
(B)成分(エポキシ樹脂とエポキシ樹脂の硬化剤とを併用する場合、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂の硬化剤の合計)の含有量は、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して、10~60質量部であってよい。(B)成分の含有量は、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して、15質量部以上又は20質量部以上であってもよく、50質量部以下又は40質量部以下であってもよい。(B)成分の含有量が上記範囲にあると、仮固定材層の薄膜形成性、平坦性、耐熱性等により優れる傾向にある。
【0022】
(C)成分:熱可塑性樹脂
(C)成分は、熱可塑性を有する樹脂、又は少なくとも未硬化状態において熱可塑性を有し、加熱後に架橋構造を形成する樹脂であってよい。(C)成分としては、例えば、炭化水素樹脂、フェノキシ樹脂、アクリルゴム、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、石油樹脂等が挙げられる。これらのうち、(C)成分は、炭化水素樹脂、フェノキシ樹脂、又はアクリルゴムであってよく、炭化水素樹脂であってもよい。
【0023】
炭化水素樹脂は、主骨格が炭化水素で構成される樹脂である。このような炭化水素樹脂としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・スチレン共重合体、エチレン・ノルボルネン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・1-ブテン・非共役ジエン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン・非共役ジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)等が挙げられる。これらの炭化水素樹脂は、水添処理が施されていてもよい。また、これらの炭化水素樹脂は、無水マレイン酸等によってカルボキシ変性されていてもよい。これらのうち、炭化水素樹脂は、スチレンに由来するモノマー単位を含む炭化水素樹脂(スチレン系樹脂)を含んでいてもよく、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)を含んでいてもよい。
【0024】
(C)成分のTgは、-100~500℃、-50~300℃、又は-50~50℃であってよい。(C)成分のTgが500℃以下であると、フィルム状の仮固定材を形成したときに、柔軟性を確保し易く、低温貼付性を向上させることができる傾向にある。(C)成分のTgが-100℃以上であると、フィルム状の仮固定材を形成したときに、柔軟性が高くなり過ぎることによる取扱性及び剥離性の低下を抑制できる傾向にある。
【0025】
(C)成分のTgは、示差走査熱量測定(DSC)によって得られる中間点ガラス転移温度値である。(C)成分のTgは、具体的には、昇温速度10℃/分、測定温度-80~80℃の条件で熱量変化を測定し、JIS K 7121に準拠した方法によって算出される中間点ガラス転移温度である。
【0026】
(C)成分の重量平均分子量(Mw)は、1万~500万又は10万~200万であってよい。重量平均分子量が1万以上であると、形成される仮固定材層の耐熱性を確保し易くなる傾向にある。重量平均分子量が500万以下であると、フィルム状の仮固定材層又は樹脂層を形成したときに、フローの低下及び貼付性の低下を抑制し易い傾向にある。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0027】
(C)成分の含有量は、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して、40~90質量部であってよい。(C)成分の含有量は、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して、50質量部以上又は60質量部以上であってもよく、85質量部以下又は80質量部以下あってもよい。(C)成分の含有量が上記範囲にあると、仮固定材層の薄膜形成性及び平坦性により優れる傾向にある。
【0028】
(B)成分及び(C)成分は、仮固定用フィルムの主成分であり得る。(B)成分及び(C)成分の含有量の合計は、仮固定用フィルム全量(又は仮固定用組成物全量)を基準として、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってよい。
【0029】
その他の成分
仮固定用フィルム10は、その他の成分として、エポキシ樹脂等の(B)成分の硬化反応を促進する硬化促進剤;重合性モノマー;重合開始剤;絶縁性フィラー;増感剤;酸化防止剤等をさらに含有していてもよい。
【0030】
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール-テトラフェニルボレート、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7-テトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0031】
硬化促進剤の含有量は、(B)成分の総量100質量部に対して、0.01~5質量部であってよい。硬化促進剤の含有量がこのような範囲内にあると、(B)成分の硬化性及び硬化後の耐熱性がより優れる傾向にある。硬化促進剤の含有量は、貯蔵弾性率を調整し易いことから、(B)成分の総量100質量部に対して、0.1質量部以上又は0.3質量部以上であってもよく、3質量部以下又は1質量部以下であってもよい。
【0032】
重合性モノマーは、加熱又は紫外光等の照射によって重合するものであれば特に制限されない。重合性モノマーは、材料の選択性及び入手の容易さの観点から、例えば、エチレン性不飽和基等の重合性官能基を有する化合物であってよい。重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート、ハロゲン化ビニリデン、ビニルエーテル、ビニルエステル、ビニルピリジン、ビニルアミド、アリール化ビニル等が挙げられる。これらのうち、重合性モノマーは、(メタ)アクリレートであってもよい。(メタ)アクリレートは、単官能(1官能)、2官能、又は3官能以上のいずれであってもよいが、充分な硬化性を得る観点から、2官能以上の(メタ)アクリレートであってもよい。
【0033】
重合性モノマーの含有量は、仮固定用フィルム全量(又は仮固定用組成物全量)を基準として、例えば、0~50質量部であってよい。
【0034】
重合開始剤は、加熱又は紫外光等の照射によって重合を開始させるものであれば特に制限されない。例えば、重合性モノマーとして、エチレン性不飽和基を有する化合物を用いる場合、重合性開始剤は熱ラジカル重合開始剤又は光ラジカル重合開始剤であってよい。
【0035】
重合開始剤の含有量は、重合性モノマーの総量100質量部に対して、0.01~5質量部であってよい。
【0036】
絶縁性フィラーは、樹脂層に低熱膨張性、低吸湿性を付与する目的で添加され得る。絶縁性フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、セラミック等の非金属無機フィラーなどが挙げられる。絶縁性フィラーは、溶剤との分散性の観点から、その表面が表面処理剤で処理された粒子であってもよい。表面処理剤は、例えば、シランカップリング剤であってよい。
【0037】
絶縁性フィラーの含有量は、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して、0.1~20質量部であってよい。絶縁性フィラーの含有量が上記範囲内であると、光透過を妨げることなく耐熱性をより向上させることができる傾向にある。また、絶縁性フィラーの含有量が上記範囲内であると、軽剥離性にも寄与する可能性がある。
【0038】
増感剤としては、例えば、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ベンゾピレン、フルオランテン、ルブレン、ピレン、キサントン、インダンスレン、チオキサンテン-9-オン、2-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オン、4-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オン、1-クロロ-4‐プロポキシチオキサントン等が挙げられる。
【0039】
増感剤の含有量は、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して、0.01~10質量部であってよい。増感剤の含有量が上記範囲内であると、(B)成分の特性及び薄膜性への影響が少ない傾向にある。
【0040】
酸化防止剤としては、例えば、ベンゾキノン、ハイドロキノン等のキノン誘導体、4-メトキシフェノール、4-t-ブチルカテコール等のフェノール誘導体(ヒンダードフェノール誘導体)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等のアミノキシル誘導体、テトラメチルピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン誘導体などが挙げられる。
【0041】
酸化防止剤の含有量は、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して、0.1~10質量部であってよい。酸化防止剤の含有量が上記範囲内であると、(B)成分の分解を抑制し、汚染を防ぐことができる傾向にある。
【0042】
仮固定用フィルム10の厚さは、応力緩和の観点から、例えば、0.1μm以上、1μm以上、又は5μm以上であってよく、200μm以下、100μm以下、又は50μm以下であってよい。
【0043】
仮固定用フィルム10において、波長308nm及び波長355nmのうち、少なくとも一方の波長における透過率は15%以下であってよい。仮固定用フィルム10は、波長355nmの光に対する透過率が15%以下であることが好ましい。波長308nm及び波長355nmのいずれか一方の光の透過性が低い仮固定用フィルムは、紫外光を含む光を効率的に吸収するため、当該光の照射によって半導体部材と支持部材とを分離することができる。波長308nmの光に対する透過率は、12%以下、10%以下、8%以下、5%以下、又は3%以下であってもよい。波長355nmの光に対する透過率は、12%以下、10%以下、8%以下、5%以下、又は3%以下であってもよい。当該透過率は、仮固定用フィルム10の厚さを大きくする、仮固定用フィルム10中の(A)成分の含有量を増やす等によって、所定の波長(波長308nm又は波長355nm)の光に対する透過率を低下させることができ、所定の範囲(15%以下)に調整し易い傾向にある。なお、本明細書において、波長308nm又は波長355nmの光に対する透過率は、仮固定用フィルム10に対して一方の主面側から所定の波長を有する光(波長308nm又は波長355nmを主波長として有する光)を入射させたときの、入射光の強度に対する透過光の強度の割合を意味する。
【0044】
このような仮固定用フィルム10によれば、紫外光を含む光の照射で半導体部材と支持部材とを分離できる仮固定材層を形成することが可能となる。
【0045】
[仮固定用フィルムの製造方法]
仮固定用フィルム10は、例えば、まず、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び必要に応じてその他の成分を、溶剤中で撹拌混合、混錬等を行うことによって、溶解又は分散させ、仮固定用組成物のワニスを調製する。その後、離型処理を施した支持フィルム上に、仮固定用組成物のワニスをナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター、コンマコーター、ダイコーター等を用いて塗工した後、加熱によって溶剤を揮発させることによって、支持フィルム上に仮固定用組成物からなる仮固定用フィルム10を形成することができる。仮固定用フィルム10は、支持フィルムと反対側の面に積層された保護フィルムを備えていてもよい。仮固定用フィルム10の厚さは、仮固定用組成物のワニスの塗工量を調整することによって調整することができる。
【0046】
仮固定用組成物のワニスの調製において使用される溶剤は、各成分を均一に溶解又は分散し得る特性を有するものであれば特に制限されない。このような溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、p-シメン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;メチルシクロヘキサンなどの環状アルカン;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミドなどが挙げられる。これらのうち、溶剤は、溶解性及び沸点の観点から、トルエン、キシレン、ヘプタン、又はシクロヘキサノンであってもよい。ワニス中の固形成分濃度は、ワニスの全質量を基準として、10~80質量%であってよい。
【0047】
仮固定用組成物のワニスの調製の際の撹拌混合又は混錬は、例えば、撹拌機、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル、ホモディスパー等を用いて行うことができる。
【0048】
支持フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスルホン、液晶ポリマのフィルム等が挙げられる。これらの支持フィルムは、離型処理が施されていてもよい。支持フィルムの厚さは、例えば、1~250μmであってよい。
【0049】
支持フィルムへ塗工した仮固定用組成物のワニスから溶剤を揮発させる際の加熱条件は、使用する溶剤等に合わせて適宜設定することができる。加熱条件は、例えば、40~120℃の加熱温度で0.1~30分の加熱時間であってよい。
【0050】
保護フィルムは、上記の支持フィルムで例示したものが挙げられる。保護フィルムの厚さは、例えば、1~250μmであってよい。
【0051】
[仮固定用積層体及びその製造方法]
仮固定用積層体は、支持部材と、上記の仮固定用フィルムからなる仮固定材層とを備えているのであればその構成については特に制限されない。図2(a)、図2(b)、及び図2(c)は、仮固定用積層体の一実施形態を示す模式断面図である。仮固定用積層体の構成としては、例えば、図2(a)に示される仮固定用積層体20の構成、図2(b)に示される仮固定用積層体70の構成、図2(c)に示される仮固定用積層体80の構成等が挙げられる。仮固定用積層体20は、支持部材22と、支持部材22上に設けられた、仮固定用フィルム10からなる仮固定材層10Aとを備えている。仮固定用積層体20において、仮固定材層10Aは、支持部材22とは反対側に表面S1を有しており、半導体部材は、仮固定材層10Aの表面S1上に配置される。仮固定用積層体70は、支持部材22と、仮固定用フィルム10からなる仮固定材層10Aと、硬化性樹脂フィルムからなる硬化性樹脂層12とをこの順に備えている。仮固定用積層体70において、硬化性樹脂層12は、仮固定材層10Aとは反対側に表面S2を有しており、半導体部材は、硬化性樹脂層12の表面S2上に配置される。仮固定用積層体80は、支持部材22と、第1の硬化性樹脂フィルムからなる第1の硬化性樹脂層14と、仮固定用フィルム10からなる仮固定材層10Aと、第2の硬化性樹脂フィルムからなる第2の硬化性樹脂層16とをこの順に備えている。仮固定用積層体80において、第2の硬化性樹脂層16は、仮固定材層10Aとは反対側に表面S3を有しており、半導体部材は、第2の硬化性樹脂層16の表面S3上に配置される。また、これら以外の仮固定用積層体の構成としては、例えば、支持部材と、硬化性樹脂層(第1の硬化性樹脂層14)と、仮固定用フィルムからなる仮固定材層とをこの順に備える構成等が挙げられる。このような仮固定用積層体によれば、少なくとも仮固定材層10Aを備えることから、紫外光を含む光の照射で半導体部材と支持部材とを分離することが可能となる。以下では、主に図2(a)に示される仮固定用積層体20を用いた態様を例として詳細に説明する。
【0052】
仮固定用積層体20の製造方法は、所定の構成を有する仮固定用積層体が得られるのであれば特に制限されない。仮固定用積層体20は、例えば、支持部材22上に仮固定用フィルム10を貼り付けて、仮固定材層10Aを形成する工程を含む方法によって得ることができる。
【0053】
支持部材22は、高い透過率を有し、半導体部材の加工時に受ける負荷に耐え得る板状体である。支持部材22としては、例えば、無機ガラス基板、透明樹脂基板等が挙げられる。
【0054】
支持部材22の厚さは、例えば、0.1~2.0mmであってよい。支持部材22の厚さが0.1mm以上であると、ハンドリングが容易となる傾向にある。支持部材22の厚さが2.0mm以下であると、材料費を抑制することができる傾向にある。
【0055】
支持部材22上に仮固定用フィルム10を貼り付ける方法としては、例えば、加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネート等の方法が挙げられる。ラミネートは、例えば、0~120℃の温度条件下で行うことができる。
【0056】
仮固定材層10Aは、仮固定用フィルム10からなる層であり得る。仮固定材層10Aの厚さは、応力緩和の観点から、例えば、0.1μm以上、1μm以上、又は5μm以上であってよく、200μm以下、100μm以下、又は50μm以下であってよい。
【0057】
仮固定用積層体70は、支持部材22と、仮固定材層10Aと、硬化性樹脂層12とをこの順に備えている。仮固定用積層体70において、硬化性樹脂層12を備えることによって、半導体部材への熱ダメージを抑制し易い傾向にある。また、半導体部材への仮固定用フィルム等の樹脂の焼き付きを抑制できるため、半導体部材から樹脂残渣を除去し易い傾向にある。仮固定用積層体80は、支持部材22と、第1の硬化性樹脂層14と、仮固定材層10Aと、第2の硬化性樹脂層16とをこの順に備えている。仮固定用積層体80において、第1の硬化性樹脂層14を備えることによって、支持部材への放熱が低減し、光照射のエネルギーが効率よく熱に変換され易くなる傾向にある。また、支持部材への仮固定用フィルム等の樹脂の焼き付きを抑制できるため、支持部材から樹脂残渣を除去し易い傾向にある。
【0058】
硬化性樹脂層12を形成するための硬化性樹脂フィルム、第1の硬化性樹脂層14を形成するための第1の硬化性樹脂フィルム、及び第2の硬化性樹脂層16を形成するための第2の硬化性樹脂フィルムは、それぞれ硬化性を示す樹脂フィルムであれば特に制限されない。硬化性樹脂フィルム、第1の硬化性樹脂フィルム、及び第2の硬化性樹脂フィルムは、上記仮固定用フィルム10において、(A)成分を除いた成分で構成されるもの(すなわち、(B)成分、(C)成分、及びその他の成分を含有するもの(ただし、(A)成分を除く。))であってよい。なお、硬化性樹脂フィルム、第1の硬化性樹脂フィルム、及び第2の硬化性樹脂フィルムは、(A)成分を含有しないことが好ましい。硬化性樹脂フィルム、第1の硬化性樹脂フィルム、及び第2の硬化性樹脂フィルムは、同一のものであってよい。
【0059】
硬化性樹脂フィルム、第1の硬化性樹脂フィルム、及び第2の硬化性樹脂フィルムにおける各成分((B)成分、(C)成分、その他の成分等)の好ましい態様は、仮固定用フィルム10における各成分((B)成分、(C)成分、その他の成分等)の好ましい態様と同様である。したがって、ここでは、重複する説明を省略する。
【0060】
硬化性樹脂フィルム、第1の硬化性樹脂フィルム、及び第2の硬化性樹脂フィルムにおいて、(B)成分(エポキシ樹脂とエポキシ樹脂の硬化剤とを併用する場合、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂の硬化剤の合計)の含有量は、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して、10~90質量部であってよい。(B)成分の含有量は、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して、15質量部以上又は20質量部以上であってもよく、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、又は40質量部以下であってもよい。
【0061】
硬化性樹脂フィルム、第1の硬化性樹脂フィルム、及び第2の硬化性樹脂フィルムにおいて、(C)成分の含有量は、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して、10~90質量部であってよい。(B)成分の含有量は、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、50質量部以上、又は60質量部以上であってもよく、85質量部以下又は80質量部以下であってもよい。
【0062】
(B)成分及び(C)成分は、硬化性樹脂フィルム、第1の硬化性樹脂フィルム、及び第2の硬化性樹脂フィルムのそれぞれの主成分であり得る。(B)成分及び(C)成分の含有量の合計は、硬化性樹脂フィルム全量、第1の硬化性樹脂フィルム全量、又は第2の硬化性樹脂フィルム全量を基準として、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってよい。
【0063】
硬化性樹脂フィルム、第1の硬化性樹脂フィルム、及び第2の硬化性樹脂フィルムにおいて、その他の成分の含有量は、仮固定用フィルム10におけるその他の成分の含有量と同様であってよい。
【0064】
硬化性樹脂フィルム及び第2の硬化性樹脂フィルムは、断熱性及び取扱性を両立する観点から、例えば、0.1μm以上、1μm以上、又は5μm以上であってよく、200μm以下、100μm以下、又は50μm以下であってよい。
【0065】
第1の硬化性樹脂フィルムは、断熱性及び光透過性を両立する観点から、例えば、0.1μm以上、1μm以上、又は5μm以上であってよく、200μm以下、100μm以下、又は50μm以下であってよい。
【0066】
第1の硬化性樹脂フィルムにおいて、波長308nm及び波長355nmのうち、少なくとも一方の波長における透過率は80%以上であってよい。第1の硬化性樹脂フィルムの当該透過率がこのような範囲にあることにより、仮固定用積層体に対して支持部材側から照射される光が透過し易くなり、分離性の低下を抑制することができる。
【0067】
仮固定用積層体70,80の製造方法は、所定の構成を有する仮固定用積層体が得られるのであれば特に制限されない。仮固定用積層体70は、例えば、支持部材22上に仮固定用フィルム10を貼り付けて、仮固定材層10Aを形成する工程と、仮固定材層10A上に硬化性樹脂フィルムを貼り付けて、硬化性樹脂層12を形成する工程とを含む方法によって得ることができる。仮固定用積層体80は、支持部材22上に第1の硬化性樹脂フィルムを貼り付けて、第1の硬化性樹脂層14を形成する工程と、第1の硬化性樹脂層14上に仮固定用フィルム10を貼り付けて、仮固定材層10Aを形成する工程と、仮固定材層10A上に第2の硬化性樹脂フィルムを貼り付けて、第2の硬化性樹脂層16を形成する工程とを含む方法によって得ることができる。
【0068】
[半導体装置の製造方法]
一実施形態の半導体装置の製造方法は、上記の仮固定用積層体を準備する工程(準備工程)と、半導体部材を、仮固定材層を介して支持部材に対して仮固定する工程(仮固定工程)と、支持部材に対して仮固定された半導体部材を加工する工程(加工工程)と、仮固定用積層体の仮固定材層に対して支持部材側から紫外光を含む光を照射して、支持部材から半導体部材を分離する工程(分離工程)とを備える。以下では、主に図2(a)に示される仮固定用積層体20を用いた態様を例として詳細に説明する。
【0069】
(準備工程)
準備工程では、半導体装置を製造するために、半導体部材を加工する間、半導体部材を支持部材に対して仮固定するための仮固定用積層体20が準備される。
【0070】
(仮固定工程)
図3(a)及び図3(b)は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。仮固定工程では、半導体部材40が、仮固定材層10Aを介して支持部材22に対して仮固定される。仮固定材層10Aは、仮固定材層10Aの支持部材22とは反対側の表面S1を有している。仮固定工程では、例えば、仮固定材層10A上に半導体部材40が配置された状態(図3(a)参照)で仮固定材層10A(仮固定用フィルム10)を硬化させることによって、半導体部材40を支持部材22に対して仮固定することができる(図3(b)参照)。言い換えると、半導体部材40が、仮固定用フィルム10の硬化物からなる仮固定材層10Acを介して支持部材22に対して一時的に接着され得る。このようにして、仮固定用積層体20cと、仮固定用積層体20c上に設けられた半導体部材40とを備える積層体30が形成される。
【0071】
半導体部材40は、半導体ウェハ、半導体チップ等の半導体基板42を有する部材であってよい。半導体部材40は、例えば、再配線層44と半導体基板42とを有する再配線層付き半導体チップであってよい。半導体部材40が再配線層付き半導体チップである場合、再配線層付き半導体チップは、再配線層が仮固定材層10A側に位置する向きで、仮固定材層10Aを介して支持部材22に対して仮固定される。半導体部材40は、外部接続端子をさらに有していてもよい。図3(a)の例では、複数の半導体部材40が仮固定材層10Aに配置されているが、半導体部材40の数は1個であってもよい。半導体部材40の厚さは、半導体装置の小型化、薄型化に加えて、搬送時、加工工程等の際の割れ抑制の観点から、1~1000μm、10~500μm、又は20~200μmであってもよい。
【0072】
仮固定材層10A上に配置された半導体部材40は、例えば、真空プレス機又は真空ラミネータを用いて仮固定材層10Aに対して圧着される。真空プレス機を用いる場合、圧着の条件は、気圧1hPa以下、圧着圧力1MPa、圧着温度120~200℃、及び保持時間100~300秒であってよい。真空ラミネータを用いる場合、圧着の条件は、例えば、気圧1hPa以下、圧着温度60~180℃又は80~150℃、ラミネート圧力0.01~1.0MPa又は0.1~0.7MPa、保持時間1~600秒又は30~300秒であってよい。
【0073】
仮固定材層10A上に半導体部材40が配置された後、仮固定材層10A中の(B)成分を熱硬化又は光硬化させることによって、半導体部材40が、仮固定用フィルム10の硬化物を含む仮固定材層10Acを介して、支持部材22に対して仮固定される。熱硬化の条件は、例えば、300℃以下又は100~250℃で、1~180分又は1~120分であってよい。
【0074】
(加工工程)
図4(a)、図4(b)及び図4(c)は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。加工工程では、支持部材22に対して仮固定された半導体部材40が加工される。図4(a)は、半導体基板の薄化を含む加工の例を示す。半導体部材の加工は、これに限定されず、例えば、半導体基板の薄化、半導体部材の分割(ダイシング)、貫通電極(シリコン貫通電極)の形成、エッチング処理、めっきリフロー処理、スパッタリング処理、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0075】
半導体部材40の加工の後、図4(b)に示されるように、加工された半導体部材40を封止する封止層50が形成される。封止層50は、半導体素子の製造のために通常用いられる封止材を用いて形成することができる。例えば、封止層50を熱硬化性樹脂組成物によって形成してもよい。封止層50に用いられる熱硬化性樹脂組成物としては、例えば、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルジエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂等のエポキシ樹脂などが挙げられる。封止層50及び封止層50を形成するための熱硬化性樹脂組成物は、フィラー、及び/又は難燃剤等の添加剤を含んでもよい。
【0076】
封止層50は、例えば、固形材、液状材、細粒材、又は封止フィルムを用いて形成される。封止フィルムを用いる場合、コンプレッション封止成形機、真空ラミネート装置等が用いられる。例えば、これら装置を用いて、40~180℃(又は60~150℃)、0.1~10MPa(又は0.5~8MPa)、かつ0.5~10分の条件で熱溶融させた封止フィルムで半導体部材40を被覆することによって、封止層50を形成することができる。封止フィルムの厚さは、封止層50が加工後の半導体部材40の厚さ以上になるように調整される。封止フィルムの厚さは、50~2000μm、70~1500μm、又は100~1000μmであってよい。
【0077】
封止層50を形成した後、図4(c)に示されるように、封止層50及び仮固定材層10Acを、半導体部材40を1個ずつ含む複数の部分に分割してもよい。
【0078】
図5(a)及び図5(b)は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。図5(a)に示されるように、仮固定用積層体20cに対して支持部材22側から光Aを照射して、支持部材22から半導体部材40を分離する。光Aは、紫外光を含む光であってよく、200~400nmの波長(近紫外光)を含む光であってもよい。光Aの照射によって、仮固定材層10Ac中の(A)成分が光Aを吸収して、例えば、熱エネルギーによる高分子量成分の分子鎖の切断等により、高分子量成分の低分子量化(硬化物の溶融)が進行し得る。このような現象が主な原因となって、仮固定材層10Acの凝集剥離等が発生して、半導体部材40が支持部材22から容易に分離し得る。半導体部材40を支持部材22から分離するために、光Aの照射とともに、半導体部材40に対して応力をわずかに加えてもよい。
【0079】
分離工程における光Aの光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、レーザー等が挙げられる。これらの中でも、光Aの光源は、レーザーであってよい。
【0080】
レーザーとしては、例えば、YAGレーザー等の固体レーザー、色素レーザー等の液体レーザー、エキシマレーザー等の気体レーザーなどが挙げられる。これらの中でも、レーザーは、エキシマレーザーであってよい。
【0081】
エキシマレーザーとしては、例えば、ArFエキシマレーザー(発振波長:193nm)、KrFエキシマレーザー(発振波長:248nm)、XeClエキシマレーザー(発振波長:308nm)、XeFエキシマレーザー(発振波長:351nm)等が挙げられる。
【0082】
レーザーの照射条件は、印加電圧、パルス幅、照射時間、照射距離(光源と仮固定材層との距離)、照射エネルギー等を含み、照射回数等に応じてこれらを任意に設定することができる。レーザーの照射条件は、半導体部材40のダメージを低減する観点から、少ない回数で半導体部材40を分離できる照射条件を設定してもよい。
【0083】
分離した半導体部材40上に、仮固定材層10Acの一部(又は硬化した硬化性樹脂層の一部)が残渣として付着することがある。付着した残渣は、図5(b)に示されるように除去される。付着した残渣は、例えば、溶剤で洗浄することにより除去されてもよいし、ピールにより剥離されてもよい。溶剤としては、特に制限されないが、エタノール、メタノール、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン等が挙げられる。付着した残渣の除去のために、半導体部材40を溶剤に浸漬させてもよいし、超音波洗浄を行ってもよい。100℃以下程度の低温で半導体部材40を加熱してもよい。
【0084】
以上の例示された方法によって、加工された半導体部材40を備える半導体素子60を得ることができる。得られた半導体素子60を他の半導体素子又は半導体素子搭載用基板に接続することによって半導体装置を製造することができる。
【0085】
[仮固定用組成物]
一実施形態の仮固定用組成物は、半導体部材と支持部材とを仮固定するために用いられる。仮固定用組成物は、水酸基を有する紫外線吸収剤と、前記水酸基と反応可能な官能基を有する熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂とを含有する。熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂であってよい。熱可塑性樹脂は、炭化水素樹脂であってよい。
【0086】
仮固定用組成物における各成分((A)成分、(B)成分、(C)成分、その他の成分等)の好ましい態様は、仮固定用フィルム10における各成分((A)成分、(B)成分、(C)成分、その他の成分等)の好ましい態様と同様である。したがって、ここでは、重複する説明を省略する。また、仮固定用組成物における各成分の含有量は、仮固定用フィルムにおける各成分の含有量と同様であってよい。
【実施例0087】
以下、本開示について実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0088】
[仮固定用フィルムの作製及び評価]
(実施例1-1~1-3及び比較例1-1、1-2)
(実施例2-1~2-6)
<仮固定用フィルムの作製>
仮固定用フィルムの作製においては、以下の材料を用いた。
【0089】
(A)成分:水酸基を有する紫外線吸収剤
(A-1)2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン(トリアジン系紫外線吸収剤、商品名:LA-F70、株式会社ADEKA製)
(A-2)2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、商品名:LA-24、株式会社ADEKA製)
(B)成分:水酸基と反応可能な官能基を有する熱硬化性樹脂
(B-1)ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(商品名:HP7200H、DIC株式会社製)、(B-1)成分は、50質量%濃度のシクロヘキサノン溶液として用いた。
(C)成分:熱可塑性樹脂
(C-1)無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(商品名:FG1924GT、クレイトンポリマージャパン株式会社製、スチレン含有量:13質量%)、(C-1)成分は、25質量%濃度のキシレン溶液として用いた。
(C-2)無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(商品名:FG1901GT、クレイトンポリマージャパン株式会社製、スチレン含有量:30質量%)、(C-2)成分は、25質量%濃度のキシレン溶液として用いた。
その他の成分
(D)硬化促進剤
(D-1)イミダゾール誘導体(商品名:2PZ-CN、四国化成工業株式会社製)、(D-1)成分は、10質量%濃度のシクロヘキサノン溶液として用いた。
(E)酸化防止剤
(E-1)ヒンダードフェノール誘導体(商品名:AO-60、株式会社ADEKA製)、10質量%濃度のシクロヘキサノン溶液として用いた。
【0090】
表1及び表2に示す材料を表1及び表2に示す質量部(表1及び表2の数値は不揮発分量を意味する。)で用いた。これを、溶剤としてのトルエン302.4質量部及びシクロヘキサノン4.5質量部と混合して、仮固定用組成物のワニスを得た。得られた仮固定用組成物のワニスを、精密塗工機を用いて、支持フィルム(ピューレックスA31B(商品名、軽剥離タイプ、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、東洋紡フイルムソリューション株式会社、厚さ:38μm))の離型処理面に塗工した。塗膜を100℃で10分加熱することによって溶剤を除去して、表1及び表2に示す厚さの実施例1-1~1-9及び比較例1-1、1-2の仮固定用フィルムを得た。得られた仮固定用フィルムの支持フィルムとは反対側の面に、保護フィルム(ピューレックスA70J(商品名、重剥離タイプ、PETフィルム、東洋紡フイルムソリューション株式会社、厚さ:38μm))を、仮固定用フィルムにその離型処理面が接する向きで貼り合わせた。
【0091】
<仮固定用フィルムの評価>
実施例1-1~1-3及び比較例1-1、1-2、並びに実施例2-1~2-6の仮固定用フィルムを用いて、波長308nm又は波長355nmに対する透過率を測定した。仮固定用フィルムを5cm角に切り出すことによって、測定用サンプルを得た。測定装置としては、紫外可視近赤外分光光度計SolidSpec-3700(株式会社島津製作所)を用い、測定用サンプルに対して一方の主面側から波長308nm又は波長355nmの光を入射させたときの、入射光の強度に対する透過光の強度の割合を透過率として算出した。結果を表1及び表2に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
[仮固定用積層体及び試験用積層体の作製(i)]
(実施例3-1~3-3及び比較例3-1、3-2)
<仮固定用積層体の作製>
実施例1-1~1-3及び比較例1-1、1-2の仮固定用フィルムを用いて、それぞれの仮固定用積層体を作製した。仮固定用フィルムから支持フィルムを剥がし、仮固定用フィルムを支持部材としてのガラス基板(商品名:イーグルXG、CORNING社製、サイズ:20mm×20mm、厚さ:0.7mm)上に、真空加圧式ラミネータを用いて、圧力0.5MPa、温度100℃、及び加圧時間60秒の条件で積層することによって、実施例3-1~3-3及び比較例3-1、3-2の仮固定用積層体を作製した。
【0095】
<試験用積層体の作製>
次いで、実施例3-1~3-3及び比較例3-1、3-2の仮固定用積層体の仮固定用フィルムからなる仮固定材層側の保護フィルムを剥がし、仮固定材層上に、半導体部材としてのシリコンウェハ(サイズ:20mm×20mm、厚さ:150μm)を、真空加圧式ラミネータを用いて、圧力0.5MPa、温度100℃、及び加圧時間60秒の条件で積層した。その後、200℃で1時間加熱することによって仮固定材層を硬化させて、支持部材に対して仮固定された半導体部材を有する、実施例3-1~3-3及び比較例3-1、3-2の試験用積層体を作製した。
【0096】
[仮固定用積層体及び試験用積層体の作製(ii)]
(実施例4-1~4-8)
<硬化性樹脂フィルムの作製>
硬化性樹脂フィルムの作製においては、以下の材料を用いた。
【0097】
(B)成分:水酸基と反応可能な官能基を有する熱硬化性樹脂
(B-1)ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(商品名:HP7200H、DIC株式会社製)、(B-1)成分は、50質量%濃度のシクロヘキサノン溶液として用いた。
(B-2)o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:N-500P-10、DIC株式会社製)、(B-2)成分は、50質量%濃度のシクロヘキサノン溶液として用いた。
(B-3)ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(商品名:YL983U、三菱ケミカル株式会社製)、(B-3)成分は、希釈せずにそのまま用いた。
(b)成分:エポキシ樹脂の硬化剤
(b-1)フェノールノボラック樹脂(商品名:MEH-7800、明和化成株式会社製)、(b-1)成分は、50質量%濃度のシクロヘキサノン溶液として用いた。
(C)成分:熱可塑性樹脂
(C-1)無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(商品名:FG1924GT、クレイトンポリマージャパン株式会社製、スチレン含有量:13質量%)、(C-1)成分は、25質量%濃度のキシレン溶液として用いた。
(C-2)無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(商品名:FG1901GT、クレイトンポリマージャパン株式会社製、スチレン含有量:30質量%)、(C-2)成分は、25質量%濃度のキシレン溶液として用いた。
(C-3)ビフェニルフルオレン型フェノキシ樹脂(商品名:FX293、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、(C-3)成分は、15質量%濃度のシクロヘキサノン溶液として用いた。
(C-4)アクリルゴム(商品名:HTR-860-P3、ナガセケムテックス株式会社製)、(C-4)成分は、12質量%濃度のメチルエチルケトン溶液として用いた。
(D)硬化促進剤
(D-1)イミダゾール誘導体(商品名:2PZ-CN、四国化成工業株式会社製)、(D-1)成分は、10質量%濃度のシクロヘキサノン溶液として用いた。
(E)酸化防止剤
(E-1)ヒンダードフェノール誘導体(商品名:AO-60、株式会社ADEKA製)、10質量%濃度のシクロヘキサノン溶液として用いた。
【0098】
表3に示す材料を表3に示す質量部(表3の数値は不揮発分量を意味する。)で用いた。これを、溶剤としてのトルエン302.4質量部及びシクロヘキサノン4.5質量部と混合して、仮固定用組成物のワニスを得た。得られた仮固定用組成物のワニスを、精密塗工機を用いて、支持フィルム(ピューレックスA31B(商品名、軽剥離タイプ、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、東洋紡フイルムソリューション株式会社、厚さ:38μm))の離型処理面に塗工した。塗膜を100℃で10分加熱することによって溶剤を除去して、厚さ30μmの製造例1~3の硬化性樹脂フィルムを得た。得られた硬化性樹脂フィルムの支持フィルムとは反対側の面に、保護フィルム(ピューレックスA70J(商品名、重剥離タイプ、PETフィルム、東洋紡フイルムソリューション株式会社、厚さ:38μm))を、硬化性樹脂フィルムにその離型処理面が接する向きで貼り合わせた。
【0099】
【表3】
【0100】
<仮固定用積層体の作製>
実施例2-1~2-6の仮固定用フィルム及び製造例1~3の硬化性樹脂フィルムを用いて表5に示す構成の仮固定用積層体を作製した。それぞれのフィルムから支持フィルムを剥がし、露出した表面同士を、加圧式ロールラミネータを用いて、圧力0.2MPa、温度100℃、速度0.2m/minの条件で貼り合わせることで、二層フィルムを得た。次いで、二層フィルムの仮固定用フィルム側の保護フィルムを剥がし、上記の[仮固定用積層体及び試験用積層体の作製(i)]の<仮固定用積層体の作製>と同様にして、その剥離面が支持部材に接する向きで二層フィルムを積層することによって、支持部材、仮固定材層、及び硬化性樹脂層をこの順に備える、実施例4-1~4-8の仮固定用積層体を作製した。
【0101】
<試験用積層体の作製>
次いで、上記の[仮固定用積層体及び試験用積層体の作製(i)]の<試験用積層体の作製>と同様にして、硬化性樹脂層上に半導体部材を積層し、同様の条件で、仮固定材層及び硬化性樹脂層を硬化させて、実施例4-1~4-8の試験用積層体を作製した。
【0102】
[仮固定用積層体及び試験用積層体の作製(iii)]
(実施例5-1~5-3)
<第1の硬化性樹脂フィルム及び第2の硬化性樹脂フィルムの準備>
第1の硬化性樹脂フィルム及び第2の硬化性樹脂フィルムとして、製造例1の第1の硬化性樹脂フィルムを準備した。
【0103】
<仮固定用積層体の作製>
実施例2-1~2-3の仮固定用フィルム、第1の硬化性樹脂フィルム、及び第2の硬化性樹脂フィルムを用いて表6に示す構成の仮固定用積層体を作製した。まず、上記の[仮固定用積層体及び試験用積層体の作製(ii)]の<仮固定用積層体の作製>と同様にして、実施例2-1~2-3の仮固定用フィルム及び上記の第1の硬化性樹脂フィルムからなる二層フィルムを得た。次いで、二層フィルムの実施例1-3の仮固定用フィルムからなる仮固定材層側の保護フィルム及び第2の硬化性樹脂フィルムの支持フィルムを剥がし、露出した表面同士を、加圧式ロールラミネータを用いて、圧力0.2MPa、温度100℃、速度0.2m/minの条件で貼り合わせることで、三層フィルムを得た。次いで、三層フィルムの第1の硬化性樹脂フィルム側の保護フィルムを剥がし、上記の[仮固定用積層体及び試験用積層体の作製(i)]の<仮固定用積層体の作製>と同様にして、その剥離面が支持部材に接する向きで三層フィルムを積層することによって、支持部材、第1の硬化性樹脂層、仮固定材層、及び第2の硬化性樹脂層をこの順に備える、実施例5-1~5-3の仮固定用積層体を作製した。
【0104】
<試験用積層体の作製>
次いで、上記の[仮固定用積層体及び試験用積層体の作製(i)]の<試験用積層体の作製>と同様にして、第2の硬化性樹脂層上に半導体部材を積層し、同様の条件で、仮固定材層、第1の硬化性樹脂層、及び第2の硬化性樹脂層を硬化させて、実施例5-1~5-3の試験用積層体を作製した。
【0105】
[試験用積層体の評価]
<分離性の評価>
各試験用積層体について、波長355nm又は波長308nmの条件で紫外レーザー光を照射し、半導体部材を支持部材から分離する際の分離性を評価した。
【0106】
・波長355nmの試験条件
各試験用積層体について、UVレーザーマーカー(株式会社レーザーワークス製のPU-L3A、ビーム径:20μm)を用いて、波長355nmの条件で紫外レーザー光を照射した。レーザーによる光照射は、試験用積層体の支持部材(ガラス基板)側から行い、照射時間は、5cm角あたり5分間を目安とした。分離性の評価は、レーザーによる光照射後に、シリコンウェハに外力を加えることでガラス基板から分離した場合を分離性に優れるとして「A」、外力を加えてもシリコンウェハがガラス基板から分離しなかった場合を「B」と評価した。結果を表4、表5、及び表6に示す。なお、分離性の評価が「A」であった場合は、積算光量(mJ/cm)も併記した。
【0107】
・波長308nmの試験条件
各試験用積層体について、KrFエキシマレーザーを用いて、波長:308nm、パルスエネルギー:1300mJ/cm、及び繰り返し周波数:30kHzの紫外パルスレーザー光を照射した。KrFエキシマレーザーは、Optec社製のIPEX-848を用い、レーザーによる光照射は、試験用積層体の支持部材(ガラス基板)側から、スキャン速度:18.5mm/sで支持部材の全面に照射した。分離性の評価は、レーザーによる光照射後に、シリコンウェハに外力を加えることでガラス基板から分離した場合を分離性に優れるとして「A」、外力を加えてもシリコンウェハがガラス基板から分離しなかった場合を「B」と評価した。結果を表4、表5、及び表6に示す。なお、分離性の評価が「A」であった場合は、積算光量(mJ/cm)も併記した。
【0108】
<残渣の除去性の評価>
上記の分離性の評価を実施した後、支持部材(ガラス基板)側に付着した残渣(主に、硬化した仮固定材層の残渣及び硬化した第1の硬化性樹脂層の残渣)、及び、半導体部材(シリコンウェハ)側に付着した残渣(主に、硬化した仮固定材層の残渣、硬化した硬化性樹脂層の残渣、及び硬化した第2の硬化性樹脂層の残渣)の除去性を評価した。支持部材側に付着した残渣については、ウェスでのふき取りを行い、残渣の除去が極めて容易であった場合を「A」、除去が容易であった場合を「B」、除去が可能であった場合を「C」、除去が不充分であった場合を「D」と評価した。結果を表4、表5、及び表6に示す。また、半導体部材側に付着した残渣については、引き剥がし(ピールオフ)を行い、残渣の除去が極めて容易であった場合を「A」、除去が容易であった場合を「B」、除去が可能であった場合を「C」、除去が不充分であった場合を「D」と評価した。結果を表4、表5、及び表6に示す。
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
表4、表5、及び表6に示すように、実施例1-1~1-3及び実施例2-1~2-6の仮固定用フィルムからなる仮固定材層を備える仮固定用積層体(試験用積層体)は、分離性の点で優れていた。これらの結果から、本開示の仮固定用フィルムが、紫外光を含む光の照射で半導体部材と支持部材とを分離できる仮固定材層を形成することが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0113】
10…仮固定用フィルム、10A,10Ac…仮固定材層、12…硬化性樹脂層、14…第1の硬化性樹脂層、16…第2の硬化性樹脂層、20,70,80,20c…仮固定用積層体、22…支持部材、30…積層体、40…半導体部材、42…半導体基板、44…再配線層、50…封止層、60…半導体素子。
図1
図2
図3
図4
図5