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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157467
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】光導波路装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/26 20060101AFI20241030BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20241030BHJP
   G02B 6/13 20060101ALI20241030BHJP
   G02B 6/138 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
G02B6/26
G02B6/122
G02B6/122 311
G02B6/13
G02B6/138
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071858
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】福原 素之
(72)【発明者】
【氏名】兼田 悠
(72)【発明者】
【氏名】山本 和尚
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
【Fターム(参考)】
2H137AB01
2H137BA35
2H137BA45
2H137BA53
2H137BA55
2H137CA19B
2H137CA56
2H137CB03
2H137CB24
2H137EA07
2H137HA11
2H147BB02
2H147BE15
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14C
2H147EA16A
2H147EA16B
2H147EA17A
2H147EA17B
2H147EA19A
2H147EA19B
2H147EA20A
2H147EA20B
2H147EA20C
2H147FA25
2H147FB04
2H147FE02
2H147FF05
2H147GA17
(57)【要約】
【課題】シリコン導波路とコア層との位置精度に優れた光導波路装置を提供する。
【解決手段】本光導波路装置は、支持体、前記支持体の上に形成された第1クラッド層、前記第1クラッド層の上に形成されたコア層、及び前記コア層を選択的に被覆する第2クラッド層、を備えた光導波路基板と、シリコン基板、及び前記シリコン基板の一方の面側に設けられたシリコン導波路、を備えたシリコンフォトニクスチップと、を有し、前記シリコン導波路の光導波方向の一端側の厚さ方向の一部又は全部が、前記第2クラッド層から露出する前記コア層に埋め込まれて前記コア層と光結合し、平面視で前記シリコン基板と重なる領域の前記コア層の厚さは、平面視で前記シリコン基板と重ならない領域の前記コア層の厚さよりも薄く、前記光導波方向と垂直な方向において、前記シリコン基板と接する部分の前記コア層の第1幅は、前記第2クラッド層に被覆されている部分の前記コア層の第2幅よりも広い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、前記支持体の上に形成された第1クラッド層、前記第1クラッド層の上に形成されたコア層、及び前記コア層を選択的に被覆する第2クラッド層、を備えた光導波路基板と、
シリコン基板、及び前記シリコン基板の一方の面側に設けられたシリコン導波路、を備えたシリコンフォトニクスチップと、を有し、
前記シリコン導波路の光導波方向の一端側の厚さ方向の一部又は全部が、前記第2クラッド層から露出する前記コア層に埋め込まれて前記コア層と光結合し、
平面視で前記シリコン基板と重なる領域の前記コア層の厚さは、平面視で前記シリコン基板と重ならない領域の前記コア層の厚さよりも薄く、
前記光導波方向と垂直な方向において、前記シリコン基板と接する部分の前記コア層の第1幅は、前記第2クラッド層に被覆されている部分の前記コア層の第2幅よりも広い、光導波路装置。
【請求項2】
前記光導波方向の一端側の厚さ方向の全部が、前記第2クラッド層から露出する前記コア層に埋め込まれている、請求項1に記載の光導波路装置。
【請求項3】
前記第1幅は、前記第2幅の1.05倍以上1.2倍以下である、請求項1又は2に記載の光導波路装置。
【請求項4】
平面視で前記シリコン基板と重なる領域の前記コア層の前記光導波方向と垂直な方向の幅は、前記支持体側から前記シリコン基板側に近づくにつれて徐々に広くなる領域を備える、請求項1又は2に記載の光導波路装置。
【請求項5】
平面視で前記シリコン基板と重なる領域の前記コア層の前記光導波方向と垂直な方向の幅は、前記シリコン基板に最も近い側で最大となる、請求項1又は2に記載の光導波路装置。
【請求項6】
前記シリコン基板と重なる領域に位置する前記コア層の端部は、前記光導波方向に切った縦断面視で、前記シリコン導波路と接する側が、前記第1クラッド層と接する側よりも前記光導波方向に突出している、請求項1又は2に記載の光導波路装置。
【請求項7】
支持体、前記支持体の上に形成された第1クラッド層、前記第1クラッド層の上に形成されたコア層、及び前記コア層を選択的に被覆する第2クラッド層、を備えた光導波路基板と、
シリコン基板、及び前記シリコン基板の一方の面側に設けられたシリコン導波路、を備えたシリコンフォトニクスチップと、
を準備する工程と、
前記シリコン導波路を、前記第2クラッド層から露出する前記コア層と光結合する工程と、を含み
前記光結合する工程は、
前記シリコン導波路の光導波方向の一端側が前記コア層と接するように、前記光導波路基板上に前記シリコンフォトニクスチップを配置する工程と、
前記シリコン基板を前記第1クラッド層の側に押圧し、前記光導波方向の一端側の厚さ方向の一部又は全部を前記コア層に埋め込む工程と、を含み、
前記埋め込む工程では、
平面視で前記シリコン基板と重なる領域の前記コア層の厚さは、平面視で前記シリコン基板と重ならない領域の前記コア層の厚さよりも薄くなり、
かつ、前記光導波方向と垂直な方向において、前記シリコン基板と接する部分の前記コア層の第1幅は、前記第2クラッド層に被覆されている部分の前記コア層の第2幅よりも広くなる、光導波路装置の製造方法。
【請求項8】
前記埋め込む工程では、前記コア層を加熱しながら前記シリコン基板を前記第1クラッド層の側に押圧する、請求項7に記載の光導波路装置の製造方法。
【請求項9】
前記埋め込む工程では、
前記第1幅が前記第2幅の1.05倍以上1.2倍以下となるように、前記シリコン基板を前記第1クラッド層の側に押圧する、請求項7又は8に記載の光導波路装置の製造方法。
【請求項10】
前記光導波路基板を準備する工程は、
前記コア層の全体を被覆する第2クラッド層を形成する工程と、
前記コア層の第1領域を被覆する第2クラッド層を未硬化とし、前記コア層の第2領域を被覆する前記第2クラッド層を硬化させる工程と、
未硬化の前記第2クラッド層を現像液に溶解して除去する工程と、を含み、
前記光結合する工程では、前記第1領域において、前記シリコン導波路を前記コア層と光結合する、請求項7又は8に記載の光導波路装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種のコンピュータやデータ通信などの装置が設置されたデータセンター等において、シリコンフォトニクスチップと光導波路とを有する光導波路装置を用いて光信号の送受信が行われている。このような光導波路装置では、光導波路のコア層とシリコンフォトニクスチップのシリコン導波路とが光結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6909637号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような光導波路装置では、光導波路のコア層と、シリコンフォトニクスチップのシリコン導波路との位置合わせが困難であるため、十分な位置精度が得られない場合があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、シリコン導波路とコア層との位置精度に優れた光導波路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本光導波路装置は、支持体、前記支持体の上に形成された第1クラッド層、前記第1クラッド層の上に形成されたコア層、及び前記コア層を選択的に被覆する第2クラッド層、を備えた光導波路基板と、シリコン基板、及び前記シリコン基板の一方の面側に設けられたシリコン導波路、を備えたシリコンフォトニクスチップと、を有し、前記シリコン導波路の光導波方向の一端側の厚さ方向の一部又は全部が、前記第2クラッド層から露出する前記コア層に埋め込まれて前記コア層と光結合し、平面視で前記シリコン基板と重なる領域の前記コア層の厚さは、平面視で前記シリコン基板と重ならない領域の前記コア層の厚さよりも薄く、前記光導波方向と垂直な方向において、前記シリコン基板と接する部分の前記コア層の第1幅は、前記第2クラッド層に被覆されている部分の前記コア層の第2幅よりも広い。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、シリコン導波路とコア層との位置精度に優れた光導波路装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る光導波路装置を例示する平面図である。
図2】第1実施形態に係る光導波路装置を例示する断面図である。
図3】第1実施形態に係る光導波路装置の製造工程を例示する図(その1)である。
図4】第1実施形態に係る光導波路装置の製造工程を例示する図(その2)である。
図5】第1実施形態に係る光導波路装置の製造工程を例示する図(その3)である。
図6】第1実施形態に係る光導波路装置の製造工程を例示する図(その4)である。
図7】第1実施形態に係る光導波路装置の製造工程を例示する図(その5)である。
図8】第1実施形態に係る光導波路装置の製造工程を例示する図(その6)である。
図9】変形例に係る光導波路装置を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
[光導波路装置]
図1は、第1実施形態に係る光導波路装置を例示する平面図である。図2は、第1実施形態に係る光導波路装置を例示する断面図であり、図2(a)は図1のA-A線に沿う断面、図2(b)は図1のB-B線に沿う断面を示している。
【0011】
図1及び図2を参照すると、光導波路装置1は、光導波路基板10と、シリコンフォトニクスチップ20とを有する。光導波路基板10は、支持体11、第1クラッド層12、コア層13、及び第2クラッド層14を備えている。
【0012】
支持体11は、第1クラッド層12、コア層13、及び第2クラッド層14を形成するための基体となる部分である。支持体11は、例えば、ガラスエポキシ樹脂などの絶縁樹脂材料から形成される。支持体11は、剛性の強いリジッド基板であってもよく、あるいは、剛性の弱いフレキシブル基板であってもよい。支持体11は、ガラス基板であってもよい。有機基板は熱による収縮や吸湿等により変形しやすいが、ガラス基板を用いると変形を低減することができる。支持体11は、シリコン基板やセラミック基板であってもよい。支持体11には、電気回路が形成されていてもよい。
【0013】
第1クラッド層12は、支持体11の上に形成されている。第1クラッド層12の厚さは、例えば、10μm~30μm程度とすることができる。第1クラッド層12の屈折率は、例えば、1.5程度とすることができる。第1クラッド層12は、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリノルボルネン樹脂等の感光性樹脂から形成することができる。
【0014】
コア層13は、第1クラッド層12の上に形成されている。コア層13の屈折率は、第1クラッド層12の屈折率よりも高く、例えば、1.6程度とすることができる。コア層13は、例えば、第1クラッド層12の材料として例示した中から適宜選択した材料により形成することができる。
【0015】
なお、光導波路装置1では4個のコア層13が所定間隔で並置されている構
造を示しているが、複数のコア層13が所定間隔で並置されている構造、あるい
は1個のコア層13のみが設けられた構造であってもよい。又、コア層13は直線状に形成しなくてもよく、湾曲する部分を含んでいてもよい。隣接するコア層13の間隔は、一定であってもよいし、一定でなくてもよい。
【0016】
第2クラッド層14は、第1クラッド層12上に形成され、コア層13を選択的に被覆する。第2クラッド層14の厚さは、例えば、10μm~30μm程度とすることができる。第2クラッド層14の屈折率は、例えば、1.5程度とすることができる。第2クラッド層14は、硬化した感光性樹脂である。第2クラッド層14は、例えば、第1クラッド層12の材料として例示した中から適宜選択した材料により形成することができる。
【0017】
なお、コア層13において、第2クラッド層14から露出する領域を第1領域Ra、第2クラッド層14に被覆される領域を第2領域Rbと称する。第1領域Raは、シリコンフォトニクスチップ20との光結合部として使用することができる。
【0018】
シリコンフォトニクスチップ20は、シリコン基板21、及びシリコン基板21の一方の面側に設けられたシリコン導波路22を備えている。シリコン導波路22は、シリコンチップに作り込まれた微細な光導波路であり、シリコンチップに光回路などを集積化するシリコンフォトニクス技術に使用される。
【0019】
シリコンフォトニクスチップ20は、シリコン導波路22をコア層13の側に向けて、光導波路基板10上に配置されている。シリコン導波路22の光導波方向Dの一端側の厚さ方向の一部又は全部は、第2クラッド層14から露出するコア層13に埋め込まれてコア層13と光結合している。シリコン導波路22とコア層13はアディアバティック結合されている。
【0020】
シリコン導波路22の光導波方向Dの一端側の厚さ方向の全部が、第2クラッド層14から露出するコア層13に埋め込まれていることが好ましい。シリコン導波路22からの染み出し光は、シリコン導波路22の下面から生じるが、側面からも生じるため、シリコン導波路22の全部がコア層13に埋め込まれることにより、光結合効率を向上することができる。
【0021】
シリコン基板21の厚さは、例えば、100μm~800μm程度である。シリコン導波路22は、例えば、シリコン基板21上に設けられた保護膜上に設けることができる。保護膜は、例えば、SiOやSiO等から形成することができる。保護膜の厚さは、例えば、2μm~6μm程度である。
【0022】
平面視で、シリコン導波路22の一端側は、例えば、テーパー形状になっていてもよい。すなわち、平面視で、シリコン導波路22のコア層13と光結合する側は、徐々に幅が狭くなってもよい。このような形状により、シリコン導波路22とコア層13との光結合効率を向上できる。シリコン導波路22の幅は、テーパー形状の部分以外では、例えば、200nm~500nm程度である。テーパー形状の部分の先端の幅は、例えば、一定幅の部分の1/2から1/4程度である。シリコン導波路22の厚さは一定である。シリコン導波路22の厚さは、例えば、20nm~300nm程度である。
【0023】
光導波路装置1では、平面視でシリコン基板21と重なる領域のコア層13の厚さT1は、平面視でシリコン基板21と重ならない領域のコア層13の厚さT2よりも薄い。コア層13の厚さT1は、例えば、4μm~9μmとすることができる。コア層13の厚さT2は、例えば、5μm~10μmとすることができる。
【0024】
また、光導波路装置1では、光導波方向Dと垂直な方向において、シリコン基板21と接する部分のコア層13の第1幅W1は、第2クラッド層14に被覆されている部分のコア層の第2幅W2よりも広い。第1幅W1が第2幅W2よりも広いことにより、光導波方向Dと垂直な方向におけるシリコン導波路22とコア層13との位置決め精度が緩和され、シリコン導波路22をコア層13に埋め込むことが容易となる。その結果、シリコン導波路22とコア層13との位置精度に優れた光導波路装置1を実現することができる。また、コア層13とシリコンフォトニクスチップ20との接触面積が増えるため、コア層13とシリコンフォトニクスチップ20との密着性を向上できる。
【0025】
コア層13の第2幅W2は、例えば、5μm~10μm程度とすることができる。第1幅W1は、第2幅W2の1.05倍以上であることが好ましい。例えば第1幅W1が第2幅W2の1.05倍であれば、コア層13の第2幅W2が5μmの場合、第1幅W1は5.25μmとなる。シリコン導波路22の幅は0.5μm以下程度であるため、0.25μmの拡幅は、シリコン導波路22とコア層13との位置決め精度の緩和に十分な効果を発揮する。また、第1幅W1は、第2幅W2の1.2倍以下であることが好ましい。第1幅W1を広くし過ぎると、結果としてコア層13の厚さT1が薄くなり、コア層13が光導波路として機能できないおそれがあるが、第1幅W1が第2幅W2の1.2倍以下であれば、コア層13が光導波路として機能するために十分な厚さT1を確保できる。
【0026】
光導波路装置1では、平面視でシリコン基板21と重なる領域のコア層13の光導波方向Dと垂直な方向の幅は、支持体11側からシリコン基板21側に近づくにつれて徐々に広くなる領域を備えてもよい。そして、平面視でシリコン基板21と重なる領域のコア層13の光導波方向Dと垂直な方向の幅は、シリコン基板21に最も近い側で最大となることが好ましい。これにより、第1幅W1を広くしやすくなる。
【0027】
また、シリコン基板21と重なる領域に位置するコア層13の端部は、光導波方向Dに切った縦断面視(図2(a)参照)で、シリコン導波路22と接する側が、第1クラッド層12と接する側よりも光導波方向Dに突出していることが好ましい。これにより、コア層13とシリコンフォトニクスチップ20との接触面積が増えるため、コア層13とシリコンフォトニクスチップ20との密着性を向上できる。
【0028】
なお、第1領域Raにおいて、コア層13の側面を被覆する樹脂部を設けてもよい。樹脂部は、例えば、第2クラッド層14と同様の樹脂材料を用いて形成することができる。
【0029】
光導波路基板10において、シリコン導波路22とコア層13が光結合している側と反対側の端面(図2の左側の端面)には、コネクタ等(図示せず)が結合されていてもよい。また、シリコンフォトニクスチップ20において、シリコン導波路22とコア層13が光結合している側と反対側(図2の右側)には、半導体素子等が実装された配線基板(図示せず)が接続されていてもよい。
【0030】
[光導波路装置の製造方法]
次に、光導波路装置1の製造方法について説明する。図3図8は、第1実施形態に係る光導波路装置の製造工程を例示する図である。
【0031】
第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法では、図3に示すように、まず、支持体11を準備する。支持体11は、例えば、複数の製品領域Rが区画された多面取り用の大型基板であり、最終的に製品領域Rの外周部に沿って切断されて個々の光導波路装置が得られる。支持体11は、例えば、ガラスエポキシ樹脂などの絶縁樹脂材料から形成される。支持体11は、剛性の強いリジッド基板であってもよく、あるいは、剛性の弱いフレキシブル基板であってもよい。
【0032】
図4は、図3のC-C線に沿う断面を示している。図4(a)に示す工程では、支持体11の上に第1クラッド層12を形成する。第1クラッド層12は、感光性樹脂に紫外光を照射した後に、150℃~200℃の温度で加熱処理して、感光性樹脂を硬化させることにより得られる。
【0033】
第1クラッド層12は、図3に示した複数の製品領域Rが区画された支持体11の全面に形成される。第1クラッド層12をパターニングして外形を調整する場合は、フォトマスクを介して感光性樹脂に紫外線を照射し、現像することにより第1クラッド層12が得られる。
【0034】
感光性樹脂の形成方法としては、樹脂シートを貼付してもよいし、あるいは、液状樹脂を塗布してもよい。第1クラッド層12の厚さは、例えば、10μm~30μm程度である。
【0035】
次に、図4(b)に示す工程では、第1クラッド層12の上に、並置された複数の細長状のコア層13を形成する。具体的には、第1クラッド層12の上にコア層13を得るための感光性樹脂を形成し、フォトマスクを介して感光性樹脂に紫外線を照射し、現像した後に、感光性樹脂を150℃~200℃程度の温度で加熱処理することにより硬化させる。
【0036】
これにより、複数のコア層13が第1クラッド層12の上に帯状パターンとして並んで配置される。コア層13の幅は例えば5μm~10μmに設定され、コア層13の厚さは例えば5μm~10μmに設定される。本実施形態では、シングルモードの光導波路を得るために、微小な断面積を有するコア層13が形成される。
【0037】
複数のコア層13は、前述した図3の複数の製品領域Rの間の領域を跨ぐように各製品領域Rに横方向に延在して配置される。
【0038】
次に、図4(c)に示す工程では、第1クラッド層12及びコア層13の上に第2クラッド層14を得るための感光性樹脂14sを形成する。感光性樹脂14sは、コア層13の上面及び側面を被覆し、上面が平坦になって形成される。
【0039】
感光性樹脂14sとしては、例えば、ネガ型の感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを使用することができる。前述した第1クラッド層12及びコア層13についても、同様な感光性樹脂が使用される。
【0040】
感光性樹脂14sは、光硬化に寄与する反応性官能基と、熱硬化に寄与する反応性官能基とを含み、光硬化及び熱硬化によって硬化する。
【0041】
次に、図5に示すように、フォトマスク300を準備し、感光性樹脂14s上に配置する。図5には、前述した図3の一つの製品領域Rに対応する領域のフォトマスク300が部分的に描かれている。フォトマスク300は遮光部300aと透光部300bとを備えている。
【0042】
フォトマスク300の遮光部300aは、図3の各製品領域R内の第1領域Raに対応して配置され、第1領域Raに配置された感光性樹脂14sを露光せずに未硬化部とするために使用される。
【0043】
また、フォトマスク300の透光部300bは、図3の各製品領域Rの第2領域Rbに対応して配置され、第2領域Rbに配置される感光性樹脂14sを露光して硬化部にするために使用される。
【0044】
次に、図6(a)及び図6(b)に示す工程では、フォトマスク300を介して感光性樹脂14sに紫外線Lを照射し、感光性樹脂14sを部分的に硬化させる。図6(a)では、フォトマスク300の透光部300bを通して、各製品領域Rの第2領域Rbの感光性樹脂14sに紫外線Lが照射されて露光され、各製品領域Rの第2領域Rbの感光性樹脂14sが硬化する。このとき、各製品領域Rの第1領域Raの感光性樹脂14sはフォトマスク300の遮光部300aによって遮光されるため、露光されずに未硬化の状態に維持される。
【0045】
この時点では、露光した感光性樹脂14sを現像液で処理せずに、各製品領域Rの第1領域Raに配置された感光性樹脂14sの未露光部分を未硬化部として残しておく。
【0046】
その後に、150℃~200℃の温度で加熱処理(ポストベーク)を行う。これにより、第1クラッド層12及びコア層13の上に第2クラッド層14が形成される。第2クラッド層14の厚みは、例えば、10μm~30μm程度である。
【0047】
その後、フォトマスク300を除去することにより、図6(b)に示すように、各製品領域Rの第1領域Raに第2クラッド層14の未硬化部14aがそれぞれ配置される。また、各製品領域Rの第2領域Rbに第2クラッド層14の硬化部14bが配置される。
【0048】
第2クラッド層14の硬化部14bは、感光性樹脂14sが光硬化及び熱硬化によって完全に硬化して得られる。また、第2クラッド層14の未硬化部14aは、感光性樹脂14sが露光されずに150℃~200℃の温度で加熱処理されるだけで得られるため、未硬化の状態で維持される。第2クラッド層14の未硬化部14aと硬化部14bとは一体的に繋がって形成される。
【0049】
これにより、第1クラッド層12と、第1クラッド層12の上に形成されたコア層13と、第1クラッド層12及びコア層13の上に形成された第2クラッド層14とにより、光導波路が構築される。コア層13の屈折率は、第1クラッド層12及び第2クラッド層14の屈折率よりも高くなるように設定される。
【0050】
本実施形態では、第2クラッド層14の未硬化部14a及び硬化部14bをネガ型の感光性樹脂である感光性樹脂14sをから形成している。
【0051】
この他に、第2クラッド層14の未硬化部14a及び硬化部14bをポジ型の感光性樹脂から形成してもよい。
【0052】
ネガ型は、光照射された露光部分が架橋反応により溶解性から不溶解性に変質し、未露光部分(未硬化部)が現像液で除去され、露光部分が硬化部として残される。
【0053】
逆に、ポジ型は、光照射された露光部分(未硬化部)がアルカリ不溶性から可溶性に化学変化し、現像液で除去され、未露光部分が硬化部として残される。
【0054】
ポジ型の感光性樹脂を使用する場合は、前述した図5のネガ用のフォトマスクを白黒反転させたポジ用のフォトマスクが使用される。そして、ポジ型の感光性樹脂にポジ用のフォトマスクを介して露光する。
【0055】
これにより、ポジ型の感光性樹脂の露光部分が第2クラッド層14の現像液に溶解する未硬化部14aになる。また、ポジ型の感光性樹脂の未露光部分が熱硬化して第2クラッド層14の硬化部14bになる。
【0056】
以上のように、第2クラッド層14は、ネガ型の感光性樹脂(感光性樹脂14s)から形成してもよいし、ポジ型の感光性樹脂から形成してもよい。そして、第2クラッド層14の未硬化部14aは、ネガ用又はポジ用の現像液に溶解して除去される特性を有する。一方、第2クラッド層14の硬化部14bは、ネガ用又はポジ用の現像液に溶解しない特性を有する。
【0057】
次に、各製品領域Rの外周部に沿って、第2クラッド層14、コア層13、第1クラッド層12、及び支持体11を切削装置の回転ブレードなどによって切断して個片化する。これにより、コア層13の延在方向の第2クラッド層14、コア層13、第1クラッド層12、及び支持体11の各端面は、切断面からなり、面一になった面で形成される。
【0058】
その後、図6(c)に示すように、第2クラッド層14を現像液で処理することにより、第2クラッド層14の未硬化部14aを除去して、コア層13を第2クラッド層14から露出させることができる。これにより、光導波路基板10が完成する。
【0059】
第2クラッド層14がネガ型の感光性樹脂から形成される場合は、第2クラッド層14の未硬化部14aはネガ用の現像液に溶解させて除去することができる。また、第2クラッド層14がポジ型の感光性樹脂から形成される場合は、第2クラッド層14の未硬化部14aはポジ用の現像液に溶解させて除去することができる。
【0060】
次に、図7及び図8に示す工程では、シリコンフォトニクスチップ20を準備し、シリコン導波路22を、第2クラッド層14から露出するコア層13と光結合する。まず、図7及び図8の矢印上側に示すように、シリコン導波路22の光導波方向Dの一端側がコア層13と接するように、光導波路基板10上にシリコンフォトニクスチップ20を配置する。シリコン導波路22とコア層13との位置合わせには、半導体チップの実装等に用いられるアライメントマークを使用したアライメント手法を使用することが好ましい。この工程では、平面視でシリコン基板21と重なる領域のコア層13の厚さT1は、平面視でシリコン基板21と重ならない領域のコア層13の厚さT2と同じである。また、光導波方向Dと垂直な方向において、シリコン基板21と接する部分のコア層13の第1幅W1は、第2クラッド層14に被覆されている部分のコア層13の第2幅W2(図1参照)と同じである。
【0061】
次に、図7及び図8の矢印下側に示すように、シリコン基板21を第1クラッド層12の側に押圧し、シリコン導波路22の光導波方向Dの一端側の厚さ方向の一部又は全部をコア層13に埋め込む。この工程では、コア層13を加熱しながらシリコン基板21を第1クラッド層12の側に押圧することが好ましい。また、この工程では、シリコン導波路22の光導波方向Dの一端側の厚さ方向の全部を第2クラッド層14から露出するコア層13に埋め込むことが好ましい。
【0062】
また、この工程では、平面視でシリコン基板21と重なる領域のコア層13の厚さT1は、平面視でシリコン基板21と重ならない領域のコア層13の厚さT2よりも薄くなる。また、光導波方向Dと垂直な方向において、シリコン基板21と接する部分のコア層13の第1幅W1は、第2クラッド層14に被覆されている部分のコア層13の第2幅W2(図1参照)よりも広くなる。この工程では、第1最大幅W1が第2最大幅W2の1.05倍以上1.2倍以下となるように、シリコン基板21を第1クラッド層12の側に押圧することが好ましい。以上の工程で、光導波路装置1が完成する。
【0063】
この工程では、第1最大幅W1が第2最大幅W2よりも広くなるので、光導波方向Dと垂直な方向においてシリコン導波路22とコア層13との位置に多少のずれが生じたとしても、拡幅されたコア層13にシリコン導波路22を埋め込むことができる。その結果、シリコン導波路22とコア層13との位置精度に優れた光導波路装置1を実現することができる。また、コア層13とシリコンフォトニクスチップ20との接触面積が増えるため、コア層13とシリコンフォトニクスチップ20との密着性を向上できる。
【0064】
〈変形例〉
変形例では、平面視でシリコン基板と重なる部分のコア層の断面形状が異なる光導波路装置の例を示す。なお、変形例において、既に説明した実施形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
【0065】
図9は、変形例に係る光導波路装置を例示する断面図である。図9(a)は図2(a)に相当する断面を示しており、図9(b)は図2(b)に相当する断面を示している。変形例に係る光導波路装置の平面図は、図1と同様である。
【0066】
光導波路装置1Aでは、図9(b)に示す光導波方向Dと垂直な方向の縦断面において、コア層13の形状が略楕円形である。光導波路装置1Aでは、光導波路装置1と同様に、平面視でシリコン基板21と重なる領域のコア層13の厚さT1は、平面視でシリコン基板21と重ならない領域のコア層13の厚さT2よりも薄い。また、光導波路装置1Aでは、光導波路装置1と同様に、光導波方向Dと垂直な方向において、シリコン基板21と接する部分のコア層13の第1幅W1は、第2クラッド層14に被覆されている部分のコア層13の第2幅W2(図1参照)よりも広い。
【0067】
したがって、光導波路装置1Aでは、光導波路装置1と同様に、光導波方向Dと垂直な方向におけるシリコン導波路22とコア層13との位置決め精度が緩和され、シリコン導波路22をコア層13に埋め込むことが容易となる。その結果、シリコン導波路22とコア層13との位置精度に優れた光導波路装置1Aを実現することができる。また、コア層13とシリコンフォトニクスチップ20との接触面積が増えるため、コア層13とシリコンフォトニクスチップ20との密着性を向上できる。
【0068】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0069】
1,1A 光導波路装置
10 光導波路基板
11 支持体
12 第1クラッド層
13 コア層
14 第2クラッド層
14a 未硬化部
14b 硬化部
14s 感光性樹脂
20 シリコンフォトニクスチップ
21 シリコン基板
22 シリコン導波路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9